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特許異議申立

2023-700244

果実酒及びその製造方法

審判番号
2023-700244
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-132855
登録番号
7130829
請求日
2023年03月02日
審決日
2023年05月22日
公報発行日
2023年06月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】アサヒビール株式会社
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【異議申立人】山本 美映子
審判長/審判官
  • 審判長 磯貝 香苗
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 三上 晶子
分類
P1651.537-Y (C12G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7130829号発明「果実酒及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7130829号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7130829号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成29年2月21日に出願された特願2017―30137号の一部を令和3年8月17日に新たな特許出願(特願2021-132855号)として出願したものであって、令和4年8月26日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年9月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年3月2日に特許異議申立人 山本 美映子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 果汁を加熱することにより濃縮し、濃縮果汁を調製する工程と、 前記濃縮果汁を発酵させて発酵果汁を調製する工程と、 前記発酵果汁のエキス分を3%以下に調整する工程と、 前記発酵果汁のアルコール度数を5.5v/v%~10v/v%に調整する工程と、 前記発酵果汁中の2,5BHMFの含有量を、2.0ppm~30ppmになるように調整する工程と、 を含む、果実酒の製造方法。 【請求項2】 前記果汁が、リンゴ果汁又はブドウ果汁である、請求項1に記載された果実酒の製造方法。 【請求項3】 前記果実酒中の高甘味度甘味料の含有量が、ゼロ又はショ糖換算で0.5w/v%以下である、請求項1又は2に記載の果実酒の製造方法。 【請求項4】 前記果実酒において、エキス分をα%とした場合に、総酸度が、0g/L~(α+5.0)g/Lである、請求項1~3のいずれかに記載された果実酒の製造方法。 【請求項5】 前記果実酒が、炭酸を含有する、請求項1~4のいずれかに記載された果実酒の製造方法。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年3月2日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)加熱濃縮工程 本件特許発明の課題は、本件明細書段落0007の記載を見る限り、「エキス分を3%以下にすることによってドリンカビリティが高まった果実酒において、ドリンカビリティとコクを両立させること」であるものと思料する。 本件特許発明の製造方法は、請求項1に記載されているとおり、「果汁を加熱することにより濃縮し、濃縮果汁を調製する」工程を有し、したがって、果汁を加熱濃縮することが必須の構成要件である。 この点、通常は、明細書に、発明が課題を解決できることを裏付けるための実施例が示される。しかしながら、本件明細書の実施例のいずれにおいても、当該加熱濃縮工程が実施されていない。実施されているのは、せいぜい、加熱濃縮したかどうかが不明である濃縮果汁(実験例1、試験例4)や、ストレート果汁(実験例2、3)を用いた果実酒の製造だけである。 これでは、加熱濃縮工程を実施する本件特許発明が、本件特許発明の課題を解決できるかどうかを理解することができない。 したがって、本件特許発明は、明細書の記載によって十分に裏付けられていない。 (2)ブドウの濃縮果汁を用いる態様 本件特許の請求項2における「前記果汁が、リンゴ果汁又はブドウ果汁である」との記載から明らかなとおり、本件特許発明には、ブドウの濃縮果汁を用いる態様が包含されている。 しかしながら、本件明細書には、ブドウの濃縮果汁を用いた実施例が存在しない。実施例の大部分はリンゴ果汁に関するものであり、ブドウに関する実施例は、白ワインを用いた試験例5だけである。そして、当該白ワインにおいてブドウの濃縮果汁が用いられたかどうかは明らかでない。これでは、ブドウの濃縮果汁を用いた場合に本件特許発明が課題を解決できることを理解することができない。 さらに述べれば、本件明細書の実施例の記載を見ると、ブドウの濃縮果汁を用いた場合には当該課題を解決することができないのではないか、という疑念が強まる。リンゴ果汁に関する実施例の結果を見る限り、濃縮果汁を用いた場合には、コクに関する評価の点数が低く出る傾向がみられるからである。実際、ストレート果汁をベースとして果実酒を製造した場合には、表2に示されたコクの評価値、たとえば、試験例14のように「4.3」というコクの評価値が示された一方で、濃縮果汁だけを用いて試験例14と同じパラメーター(エキス分、総酸度など)を有する果実酒を製造した場合には、表1の試験例3のように、より低い「3.1」という評価スコアしか得られなかった。このことは、ブドウの濃縮果汁を用いた場合には、本件特許発明が課題を解決する能力が低下する可能性を示しており、場合によっては、当該課題を全く解決することができない可能性さえあるといえる。 したがって、本件特許発明は、明細書の記載によって十分に裏付けられていない。 (3)エキス分とアルコール度数の範囲 本件特許発明の製造方法は、発酵果汁のエキス分を3%以下に調整する工程と、発酵果汁のアルコール度数を5.5v/v%~10v/v%に調整する工程を含む。 この点、本件特許の親出願である特願2017-030137号の令和2年12月10日起案拒絶理由通知書(甲第1号証)には、以下のように認定され、エキス分1.5%未満の範囲と、アルコール度数6.55v/v%超の範囲について問題が指摘されている。 『・・・段落[0007]の記載から、ドリンカビリティとコクを両立した果実酒の提供を解決しようとする課題とするものである。 しかしながら、発明の詳細な説明には、実施例として、エキス分が1.5~3%、アルコール度数が5.5~6.55v/v%、2,5BHMFが2.0~30.0ppmのものが、ドリンカビリティとコクがある程度良好であることが示されているものの、2,5BHMFが40.0ppmである実施例26、44の評価として、ドリンカビリティが他の実施例と較べてかなり低いことが示されている。また、ほかに、上記請求項のエキス分、アルコール度数、2,5BHMF含量の数値範囲の全範囲について、ドリンカビリティとコクが両立できることの証拠となる記載はない。 そして、出願時の技術常識では、ドリンカビリティやコクといった、飲料を飲んだときの感覚や風味は、その飲料の配合成分や配合割合に大きく影響を受けると考えられている。 してみると、エキス分やアルコール度数が実施例とは大きく異なるものや、2,5BHMFが40.0ppm付近又はそれ以上のものについて、ドリンカビリティとコクを両立した果実酒とできることが明らかであるとはいえない。 よって、出願時の技術常識を照らしても、上記請求項に係る発明の全範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、上記請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。』 これと同旨の認定は、令和3年7月9日起案の親出願に対する拒絶理由通知書(甲第2号証)にも示されている。そして、異議申立人もこの認定は正しいと考える。すなわち、本件特許発明の内、エキス分が1.5%未満である範囲と、アルコール度数が6.55v/v%を超える範囲においては、実施例を含めた本件明細書の記載を見ても、本件特許発明が当該課題を解決できることを理解することができない。 したがって、本件特許発明は、明細書の記載によって十分に裏付けられていない。 2 証拠方法 甲第1号証:特願2017-030137号の令和2年12月10日起案拒絶理由通知書 甲第2号証:特願2017-030137号の令和3年7月9日起案拒絶理由通知書 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第4 当審の判断 1 サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 2 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の記載は上記第2のとおりである。 3 発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、おおむね次の記載がある。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、果実酒及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 果実酒は、果汁を発酵させて得られる飲料である。代表的な果実酒として、ブドウ酒(ワイン)が挙げられる。ブドウ酒以外の果実酒として、リンゴ酒もよく知られている。リンゴ酒は、シードル(フランス)もしくはサイダー(イギリス)と呼ばれており、世界中で愛飲されている。 【0003】 図1は、複数の市販のリンゴ酒に関する、アルコール度数とエキス分の分析結果を示すグラフである。図1から、市販の一般的なシードルには、比較的アルコール度数が高く(約4%以上)かつエキス分が低い(3超~7%)製品と、比較的アルコール度数が低く(約4%以下)かつエキス分が高い(8%以上のもの)製品とが存在することが見て取れる。なお、エキス分が3%以下の製品は、市販品としては見つからない。 【0004】 一方、特開2015-104349号公報(特許文献1)には、飲み応えとキレの付与された低エキス分のリンゴ果実酒を得ることを課題とした発明が開示されている。当該文献には、高甘味度甘味料および酸味料を含有するリンゴ果実酒であって、エキス分の総量が2.5w/v%以下であり、かつpH2.95~3.65である、リンゴ果実酒が開示されている。 ・・・(略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 一般的なシードルには、ドリンカビリティに関する課題がある。尚、ドリンカビリティとは、飲料の飲み易さ(どれだけごくごく飲み易いか)を意味する。 【0007】 本件発明者は、シードルがドリンカビリティに欠ける理由は、エキス分が高いからであると考えた。図1に示されるように、一般的なシードルには3%を超えるエキス分が含まれており、このエキス分の高さにより、ドリンカビリティに欠けていると考えられる。そこで、本件発明者は、エキス分を3%以下にすることにより、ドリンカビリティを高めようと試みた。しかしながら、エキス分を3%以下とした場合には、ドリンカビリティは高まるものの、飲料が水っぽくなり、コクが失われた。 そこで、本発明の課題は、ドリンカビリティとコクとを両立した果実酒及びその製造方法を提供することにある。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0008】 上記課題を解決するため、本発明では、以下の構成を採用する。 〔1〕エキス分が3%以下であり、アルコール度数が5.5v/v%以上であり、2,5BHMF(2,5-bishydroxymethylfuran)を2.0ppm以上含有する、果実酒。 〔2〕2,5BHMFの含有量が2.0ppm~30ppmである、前記〔1〕に記載の果実酒。 〔3〕リンゴ酒又はブドウ酒である、前記〔1〕又は〔2〕に記載された果実酒。 〔4〕高甘味度甘味料の含有量が、ゼロ又はショ糖換算で0.5w/v%以下である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載された果実酒。 〔5〕エキス分をα%とした場合に、総酸度が、0g/L~(α+5.0)g/Lである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載された果実酒。 〔6〕炭酸を含有する、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載された果実酒。 〔7〕果汁を調製する工程と、 前記果汁を発酵させて発酵果汁を調製する工程と、 前記発酵果汁のエキス分を3%以下に調整する工程と、 前記発酵果汁のアルコール度数を5.5%以上に調整する工程と、 を含む、果実酒の製造方法。 〔8〕前記果汁を調製する工程が、濃縮果汁を前記果汁として調製する工程を含んでいる、前記〔7〕に記載の果実酒の製造方法。 〔9〕更に、前記発酵果汁中の2,5BHMFの含有量を、2.0ppm以上になるように調整する工程を含む、前記〔7〕又は〔8〕に記載の果実酒の製造方法。 〔10〕前記果汁が、リンゴ果汁又はブドウ果汁である、前記〔7〕乃至〔9〕のいずれかに記載された果実酒の製造方法。」 ・「【0011】 本発明の果実酒は、エキス分が3%以下であり、アルコール度数が5.5%以上である。エキス分を3%以下とし、アルコール度数を5.5%以上とすることにより、ドリンカビリティを損なうことなく、コクを付与することができる。」 ・「【0013】 (エキス分) エキス分は、果実酒中に含まれる不揮発性固形分の含有量を示すパラメータである。エキス分の多くは糖分である。発酵中、酵母が糖類からアルコールを生成するため、発酵中にエキス分が減少する。 エキス分が3%以下であることにより、果実酒のドリンカビリティを高めることができる。好ましくは、エキス分は、1%以上3%以下であり、より好ましくは1.5%以上3%以下、更に好ましくは2%以上3%以下である。 エキス分とは、温度15度のときにおいて原容量100立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。エキス分は国税庁所定分析法に従い、比重とアルコール分を測定し、間接法によって算出することができる。 【0014】 (アルコール度数) 本発明の果実酒のアルコール度数は、上述の通り、5.5%以上である。好ましくは、アルコール度数は、5.5%以上15%以下、より好ましくは5.5%以上12.5%以下、更に好ましくは5.5%以上10.0%以下である。アルコール度数を5.5%以上とすることにより、エキス分が3%以下であっても、果実酒にコクを付与することができる。尚、本発明において、アルコール度数とは、飲料中のエタノール濃度(v/v%)を指す。 【0015】 (2.5BHMF) 本発明の果実酒には、2,5BHMF(2,5bishydroxymethylfuran)が含まれていることが好ましい。本発明者は、2,5BHMFが果実酒のコクに関与することを見出した。果実酒に2,5BHMFを適量(例えば、2.0ppm以上)含有させることによって、ドリンカビリティを損なうことなく、コクを付与することができる。 果実酒中における2.5BHMFの含有量は、好ましくは2.0ppm以上、より好ましくは2.0ppm以上30.0ppm以下、更に好ましくは2.0ppm以上15.0ppm以下である。このような含有量で2.5BHMFが含まれていると、ドリンカビリティを損なうことなく、コクを付与することができる。」 ・「【0017】 (高甘味度甘味料) 果実酒には、高甘味度甘味料が含まれていてもよいが、その含有量は微量であることが好ましい。具体的には、果実酒における高甘味度甘味料の含有量は、ショ糖換算で、好ましくは0.5w/v%以下、より好ましくは0w/v%(非含有)である。 ・・・(略)・・・ 【0018】 (酸味料) 果実酒には、果汁由来の酸以外に酸味料が含まれていてもよい。・・・(略)・・・酸味料は、エキス分をα%とした場合に、総酸度が0g/L~(α+5.0)g/L、好ましくは0g/L~(α+4.0)g/L、さらに好ましくは0g/L~(α+3.0)g/Lとなるような量で用いられるのが好ましい。・・・(略)・・・ 【0021】 (その他の成分等) ・・・(略)・・・ また、果実酒は、炭酸を含有しても含有しなくてもよい。炭酸飲料とする場合、炭酸ガス圧は、好ましくは2.0~3.5ガスボリューム、より好ましくは2.5~3.2ガスボリュームである。」 ・「【0022】 (製造方法) 本発明に係る果実酒は、例えば、以下の方法により調製することができる。 【0023】 1:発酵前液の調製 まず、果汁を用意する。果汁は、例えば、生果から粉砕、搾汁工程を経て得ることができる。また、このようにして得られた果汁を一度濃縮し、濃縮果汁を原料として用いてもよい。好ましくは、果汁として、濃縮果汁が用いられる。濃縮果汁として、5HMF濃度を所定の濃度含む果汁が好ましい。 既述のように、果汁を加熱することにより、5HMFを生成させることができるため、濃縮前の果汁から濃縮果汁を得る際の加熱条件などを調整することにより、所望の5HMF濃度を有する濃縮果汁を得ることができる。次いで、濃縮果汁に、必要に応じて糖類及び酸味料、発酵助成剤等を加えた後、水と混合して希釈する。例えば、濃縮果汁を、5HMF濃度が1~100ppm、好ましくは1~50ppm、より好ましくは1~30ppmになるように希釈することにより、発酵前液を得る。 【0024】 2:発酵 発酵前液に、酵母を加えて、発酵させる。例えば、5℃~30℃で、5日から30日間かけて、発酵させて、アルコールを生成させる。発酵前液として所定の濃度の5HMFを含む果汁を用いた場合には、発酵により、5HMFを還元させ、これにより、所望する濃度の2,5BHMFを得ることができる。一方で、2.5BHMFは、外部添加、すなわち果汁以外の由来としてもよい。 【0025】 3:果実酒の調製 その後、必要に応じて、ろ過を行い、エキス分、総酸度、及びアルコール度数を調整することにより、目的とする果実酒を得ることができる。エキス分、総酸度、及びアルコール度数は、例えば、水、アルコール、糖類、及び酸味料を添加することにより、調整することができる。また、香料を用いて、香味を調整することも可能である。更に、必要に応じて炭酸ガスを注入し、炭酸飲料としても良い。」 ・「【0028】 [実験例1] ふじりんご濃縮果汁(Brix70)400gに、果糖ブドウ糖液糖(Brix 75)350gを混合した。更に、全量が4Lになるように水を加え、原料液を調製した。調製した原料液を、5分間煮沸した後、高温で静置した。次いで、冷却後に酵母を10×10 6cell/Lになるように添加して発酵させた。発酵後の液のアルコール度数は7.6%であり、エキス分は1.8%であり、総酸度は2.6g/Lであり、2,5BHMF濃度は5.0ppmであった。 次いで、発酵後の液に対して、デプス濾過(30S)を実施した。更に、水、果糖ブドウ糖液糖、及びリンゴ酸を加え、アルコール度数、エキス分、総酸度、及び2,5BHMF濃度を所定の値になるように調整した。また、炭酸ガスを、2.8ガスボリュームになるように添加し、試験例1乃至10に係る果実酒を得た。 尚、総酸度及びアルコール度数は、国税庁所定分析法に従って分析した。具体的には、検体10mlをとり、pH計(pH計を備えた自動滴定装置を含む)を用いて、N/10 水酸化ナトリウム溶液でpH8.2になるまで滴定し、求められるリンゴ酸換算の値を総酸度とした。 【0029】 得られた試験例1乃至10に係る飲料について、6名のパネリストにより官能検査により、コク感を評価した。コクに関する官能評価は、以下の5段階の基準を用いて行い、6名のパネリストの平均値を結果とし、3点以上を効果ありとした。 1:全く感じない 2:感じない 3:感じる 4:強く感じる 5:とても強く感じる 【0030】 試験例1乃至10の特性値及び官能検査結果を表1に示す。表1に示されように、アルコール度数が5.5%以上である試験例3~5、及び8~10の飲料においては、エキス分が3%以下であるにも関わらず、コクの評価結果が3.0を超えていた。すなわち、エキス分が3%以下であるにもかかわらず、十分なコクを有していた。 【0031】 [実験例2] 濃縮果汁に代えて、ふじりんごを搾汁したストレート果汁を使用し、実験例1と同様の方法で発酵を行い、ストレート果汁由来の発酵液を得た。発酵後の果実酒に対して、デプス濾過(30S)を実施した。得られた果実酒のアルコール度数は8.1%であり、エキス分は1.6%であり、総酸度は2.6g/Lであり、2,5BHMF濃度は1.5ppmであった。 次に、得られたストレート果汁由来の発酵液と、実験例1において得られた発酵後の液を混合し、2,5BHMF濃度を所定の濃度になるように調整した。また、果糖ブドウ糖液糖、リンゴ酸及び水を用いて、エキス分、総酸度及びアルコール度数を調整した。また、炭酸ガスを添加した(炭酸ガス圧=2.8ガスボリューム)。これにより、2,5BHMF濃度、エキス分、及び総酸度が異なる試験例11乃至18に係る果実酒を得た。得られた試験例11乃至18に係る果実酒について、実験例1と同様に官能検査を実施した。 【0032】 試験例11乃至18の特性値及び官能検査結果を表2に示す。表2に示されるように、2,5BHMF濃度が2.0ppm以上である試験例12~14及び16~18の飲料においては、エキス分が3%以下であるにもかかわらず、コクが感じられた。 【0033】 [実験例3] りんごストレート果汁から作った果実酒(2,5BHMF濃度0ppm、アルコール度数4.7%、エキス6.0%、酸度3.6g/L)をベースとして使用した。これに、2,5BHMF、アルコール、果糖ブドウ糖液糖、及びリンゴ酸を加えて、2,5BHMF濃度、アルコール度数、エキス分、及び総酸度を所定濃度になるように調整した。さらに、炭酸ガスを添加し(炭酸ガス圧=2.8ガスボリューム)、試験例19乃至33に係る果実酒を得た。 得られた試験例19乃至33に係る果実酒について、実験例1と同様にコクに関する官能検査を実施した。また、コクに加えて、ドリンカビリティについても評価した。ドリンカビリティについては、下記の5段階の評価基準で評価し、6名のパネリストの平均値を結果とした。尚、数値が大きい程、ドリンカビリティが高い(ごくごく飲み易い)ことを意味している。 1:全く感じない 2:感じない 3:感じる 4:強く感じる 5:とても強く感じる 【0034】 試験例19乃至33の特性値及び官能検査結果を表3-1及び表3-2に示す。表3-1及び表3-2に示されるように、2.5BHMFの含有量が2.0ppm以上である試験例21乃至26及び試験例29乃至34の果実酒は、コクの評価結果が3.0以上であり、2.5BHMFの含有量がコクに関与していることが確認された。また、2.5BHMFの含有量が2.0ppm以上30.0ppm以下の範囲では、ドリンカビリティも良好であり、2.0ppm以上15.0ppm以下の範囲では、ドリンカビリティが更に良好であった。すなわち、2.5BHMFを含有させることにより、ドリンカビリティを損なうことなく、コクを付与できることが判った。 【0035】 [試験例4] 3000Lスケールのビール醸造用パイロットプラントにて、リンゴ濃縮果汁315kgと果糖ブドウ糖液糖287kgとを混合し、更に水を加えて3200Lに調整し、原料となる果汁を調製した。調製した果汁を5分間煮沸した後、高温静置した。その後、果汁を冷却し、発酵前液を得た。発酵前液の5HMF濃度は、12.3ppmであった。次いで、酵母を20×106Cell/mlになるように、発酵前液に添加して、12℃で発酵させた。発酵後、1週間-1℃で静置し、その後に、珪藻土濾過を実施した。濾過液に対して、果糖ブドウ糖液糖及びリンゴ酸を添加することにより、エキス分を2.9%に調整し、総酸度を3.2g/Lに調整した。更に、アルコール度数を5.8%になるよう水で希釈して調節し、炭酸ガスを加え(炭酸ガス圧=2.8ガスボリューム)、試験例4に係る果実酒を得た。得られた果実酒中の2.5BHMF濃度は、6.5ppmであった。得られた果実酒について、パネリスト6名により、実施例3と同様に官能評価を実施した。結果を表4に示す。 表4に示されるように、試験例4に係る果実酒は、コクとドリンカビリティがいずれも3点以上であった。すなわち、量産スケールにおいても、コクとドリンカビリティに優れた果実酒が得られていた。 【0036】 [試験例5] 市販の白ワイン(サンタ・ヘレナ・アルパカ・シャルドネ・セミヨン)を、アルコール度数が5.5%になるように希釈した。これに2.5BHMFを添加し、2.5BHMFが異なる試験例35乃至38に係る果実酒を得た。尚、エキス分は1.5%、総酸度は3.0g/Lであった。また、炭酸ガスは添加しなかった。得られた果実酒について、実験例1の方法と同様に、パネリスト6名により、官能検査を実施した。結果を表5に示す。 【0037】 表5に示されるように、白ワインを用いた場合、即ち原料が白ぶどうである果実酒においても、2.5BHMFを添加することにより、エキス分が3%以下であってもコクがある果実酒が得られることが理解される。 【0038】 【表1】 [図:0001398322000001.jpg] 【0039】 【表2】 [図:0001398322000002.jpg] 【0040】 【表3ー1】 [図:0001398322000003.jpg] 【表3ー2】 [図:0001398322000004.jpg] 【表4】 [図:0001398322000005.jpg] 【表5】 [図:0001398322000006.jpg] 」 4 サポート要件の判断 発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明1ないし5の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「ドリンカビリティとコクとを両立した果実酒の製造方法を提供すること」である。 発明の詳細な説明の【0011】には、「エキス分を3%以下とし、アルコール度数を5.5%以上とすることにより、ドリンカビリティを損なうことなく、コクを付与することができる。」と記載されている。 発明の詳細な説明の【0008】、【0017】、【0018】及び【0021】ないし【0025】には、本件特許発明1ないし5に対応する事項が記載されている。 発明の詳細な説明の【0013】には、「エキス分が3%以下であることにより、果実酒のドリンカビリティを高めることができる。」と記載されている。 発明の詳細な説明の【0014】には、「本発明の果実酒のアルコール度数は、上述の通り、5.5%以上である。好ましくは、アルコール度数は、5.5%以上15%以下、より好ましくは5.5%以上12.5%以下、更に好ましくは5.5%以上10.0%以下である。アルコール度数を5.5%以上とすることにより、エキス分が3%以下であっても、果実酒にコクを付与することができる。」と記載されている。 発明の詳細な説明の【0015】には、「本発明者は、2,5BHMFが果実酒のコクに関与することを見出した。果実酒に2,5BHMFを適量(例えば、2.0ppm以上)含有させることによって、ドリンカビリティを損なうことなく、コクを付与することができる。」及び「果実酒中における2.5BHMFの含有量は、好ましくは2.0ppm以上、より好ましくは2.0ppm以上30.0ppm以下、更に好ましくは2.0ppm以上15.0ppm以下である。このような含有量で2.5BHMFが含まれていると、ドリンカビリティを損なうことなく、コクを付与することができる。」と記載されている。 発明の詳細な説明の【0028】ないし【0040】において、「エキス分」が「3%以下」、「アルコール度数」が「5.5v/v%~10v/v%」及び「2,5BHMFの含有量」が「2.0ppm~30ppm」に調整された「果実酒」が、「エキス分」が「3%以下」であっても「コク」があるという官能評価結果を示すことを確認している。 そうすると、当業者は、「エキス分」が「3%以下」、「アルコール度数」が「5.5v/v%~10v/v%」及び「2,5BHMFの含有量」が「2.0ppm~30ppm」に調整された「果実酒」の「製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし5は上記発明の課題を解決できると認識できる「果実酒」の「製造方法」をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 5 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の申立理由における主張について検討するに、以下のとおり、いずれも採用できない。 (1)申立理由の(1)の主張について 上記4のとおり、当業者は、「エキス分」が「3%以下」、「アルコール度数」が「5.5v/v%~10v/v%」及び「2,5BHMFの含有量」が「2.0ppm~30ppm」に調整された「果実酒」の「製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 すなわち、「果汁の加熱濃縮工程」の有無は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲の認定とは関係がない。 また、上記発明の課題を解決できると認識できる「果実酒」の「製造方法」であっても、「果汁の加熱濃縮工程」の有無で、発明の課題を解決できない場合があることを示す具体的な証拠もない。 したがって、申立理由の(1)の主張は採用できない。 (2)申立理由の(2)の主張について 上記4のとおり、当業者は、「エキス分」が「3%以下」、「アルコール度数」が「5.5v/v%~10v/v%」及び「2,5BHMFの含有量」が「2.0ppm~30ppm」に調整された「果実酒」の「製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 他方、「果実酒」の原料が何かで、「エキス分」、「アルコール」及び「2,5BHMF」の機能や作用が異なるといった技術常識はなく、「果実酒」の原料が何であっても、「エキス分」、「アルコール」及び「2,5BHMF」は同様に機能又は作用すると考えられるから、「濃縮果汁」が「リンゴ果汁」であるか「ブドウ果汁」であるかは、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲の認定とは関係がない。 また、上記発明の課題を解決できると認識できる「果実酒」の「製造方法」であっても、「ブドウの濃縮果汁」を用いた場合には、発明の課題を解決できないことを示す具体的な証拠もない。 したがって、申立理由の(2)の主張は採用できない。 (3)申立理由の(3)の主張について 上記4のとおり、当業者は、「エキス分」が「3%以下」、「アルコール度数」が「5.5v/v%~10v/v%」及び「2,5BHMFの含有量」が「2.0ppm~30ppm」に調整された「果実酒」の「製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、「エキス分」や「アルコール度数」の範囲が実施例とは大きく異なっていても、上記発明の課題を解決できると認識できる「果実酒」の「製造方法」であれば、実施例と同様の効果を奏し、多少は発明の課題を解決できると当業者は理解する。 他方、上記発明の課題を解決できると認識できる「果実酒」の「製造方法」であっても、「エキス分」や「アルコール度数」の範囲が実施例とは大きく異なる場合には、発明の課題を解決できないことを示す具体的な証拠もない。 したがって、申立理由の(3)の主張は採用できない。 6 むすび したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由によっては取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700244

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