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特許異議申立

2021-700981

研磨用組成物、磁気ディスク基板の製造方法および磁気ディスクの研磨方法

審判番号
2021-700981
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-070453
登録番号
6864519
請求日
2021年10月12日
審決日
2022年08月01日
公報発行日
2022年11月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社フジミインコーポレーテッド
  • 【権利者代理人】安部 誠
  • 【権利者代理人】大井 道子
  • 【権利者代理人】谷 征史
  • 【権利者代理人】福富 俊輔
  • 【異議申立人】藤本 博基
審判長/審判官
  • 審判長 五十嵐 努
  • 審判官 新井 寛
  • 審判官 樫本 剛
分類
P1651.113-YAA(G11B) / P1651.121-YAA(G11B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6864519号発明「研磨用組成物、磁気ディスク基板の製造方法および磁気ディスクの研磨方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6864519号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第6864519号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6864519号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成29年3月31日の出願であって、令和3年4月6日にその特許権の設定登録がされ、同年4月28日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許について、同年10月12日に特許異議申立人 藤本 博基(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。 その後の経緯は次のとおりである。 令和3年12月24日付け:特許異議申立人に対する審尋 令和4年 1月19日 :特許異議申立人による回答書の提出 同年 2月21日付け:取消理由通知書 同年 4月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 6月10日 :特許異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨、訂正の内容 (1)請求の趣旨 令和4年4月26日に特許権者により行われた、願書に添付した特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、特許第6864519号の特許請求の範囲を、本訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める、というものである。 (2)訂正の内容 本件訂正の内容は、以下ア及びイのとおりである。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記砥粒は、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比が1~1.25であり、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5が30nm以下であり、かつ、全粒子の平均アスペクト比が1~1.30である」と記載されているのを、「前記砥粒は、TEM画像から求められる、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比が1~1.25であり、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5が30nm以下であり、かつ、全粒子の平均アスペクト比が1~1.30である」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記砥粒は、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5と累積50%粒子径D50との関係が、次式:0.3≦D5/D50;を満たす」と記載されているのを、「前記砥粒は、TEM画像から求められる小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5と累積50%粒子径D50との関係が、次式:0.3≦D5/D50;を満たす」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~5も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~5は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 そして、訂正事項1、2は、一群の請求項〔1~5〕についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明における砥粒の、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5、及び、全粒子の平均アスペクト比を、TEM画像から求められるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。なお、下線は説明のために当審で付したものである。 「【0019】 なお、この明細書中において、D0-5粒子および全粒子の平均アスペクト比はそれぞれ、該当する累積範囲における粒子の個数平均アスペクト比である。D0-5粒子および粒子全体の平均アスペクト比は、具体的には次の方法により求められる。すなわち、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM、日立ハイテクノロジーズ社製STEM HD-2700)を用いて、測定対象の砥粒(1種類の砥粒粒子であってもよく、2種類以上の砥粒粒子の混合物であってもよい。)に含まれるTEMにて観察可能な1000個以上の粒子を、1視野内に100個程度観察可能な倍率(例えば200000倍~400000倍)で撮影し、TEM画像を取得する。そして、各粒子画像に外接する最小の長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を各粒子の長径/短径比(アスペクト比)として算出する。また、各粒子の画像から各粒子の面積を算出し、算出された面積と同一の面積を有する理想円(真円)の直径を各粒子の粒子径として算出する。すなわち、測定対象とする砥粒の累積粒度分布は、当該砥粒を構成する個々の粒子について上記算出された粒子径を横軸に、累積個数(%)を縦軸にプロットすることにより求められる。そして、上記所定個数の粒子のアスペクト比から、小径側からの上記累積粒度分布における所定の累積範囲の粒子の個数平均アスペクト比を算術平均することにより、D0-5粒子および全粒子の平均アスペクト比を求めることができる。上記各アスペクト比は、マウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。後述の実施例についても同様である。」 すなわち、【0019】には、D0-5粒子および粒子全体の平均アスペクト比は、TEMを用いて、測定対象の砥粒に含まれる粒子を撮影し、TEM画像を取得し、各粒子画像に外接する最小の長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を各粒子の長径/短径比(アスペクト比)として算出し、また、各粒子の画像から各粒子の面積を算出し、算出された面積と同一の面積を有する理想円(真円)の直径を各粒子の粒子径として算出し、そして、小径側からの累積粒度分布における所定の累積範囲の粒子の個数平均アスペクト比を算術平均することにより、D0-5粒子および全粒子の平均アスペクト比を求めることが記載されているといえる。 ここで、前記「各粒子画像」及び「各粒子の画像」は「TEM画像」であることが明らかであるから、これらの画像から求められるD0-5粒子および全粒子の平均アスペクト比は、TEM画像から求められるものであるといえる。 さらに、前記「粒子径」は、「各粒子の画像」から算出されることから、TEM画像から求められるものであるということができ、したがって、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5もTEM画像から求められることは自明である。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明における砥粒の、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5、及び、全粒子の平均アスペクト比を、TEM画像から求められるものに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に係る発明における砥粒の、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5と累積50%粒子径D50との関係を、TEM画像から求められるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、訂正事項1により、本件訂正前の請求項1に係る発明における砥粒が、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5、及び、全粒子の平均アスペクト比を、TEM画像から求められるものとされたことに、請求項1を引用する請求項2に係る発明の構成を整合させるために、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5と累積50%粒子径D50も、TEM画像から求められるものであることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 願書に添付した明細書において、累積50%粒子径D50が累積5%粒子径D5と同様にTEM画像から求められることは、上記(1)イからして自明であるから、累積5%粒子径D5と累積50%粒子径D50との関係であるD5/D50が、TEM画像から求められることも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項であるといえる。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に係る発明における砥粒の、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5と累積50%粒子径D50との関係を、TEM画像から求められるものに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 4 独立特許要件について 本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1及び2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定(独立特許要件)は課されない。 5 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおり、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 (本件訂正発明1)【請求項1】 シリカ粒子を含む砥粒と、水と、を含む研磨用組成物であって、 前記砥粒は、TEM画像から求められる、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比が1~1.25であり、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5が30nm以下であり、かつ、全粒子の平均アスペクト比が1~1.30である、研磨用組成物。 (本件訂正発明2)【請求項2】 前記砥粒は、TEM画像から求められる、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5と累積50%粒子径D50との関係が、次式:0.3≦D5/D50;を満たす、請求項1に記載の研磨用組成物。 (本件訂正発明3)【請求項3】 磁気ディスク基板の研磨に用いられる、請求項1または2に記載の研磨用組成物。 (本件訂正発明4)【請求項4】 請求項1~3の何れか一項に記載の研磨用組成物を用意すること、および、 前記研磨用組成物を磁気ディスク基板に供給して該磁気ディスク基板を研磨することを含む、磁気ディスク基板の製造方法。 (本件訂正発明5)【請求項5】 請求項1~3の何れか一項に記載の研磨用組成物を磁気ディスク基板に供給して該磁気ディスク基板を研磨することを含む、磁気ディスク基板の研磨方法。 第4 特許異議の申立てについて 1 特許異議申立理由の概要 特許異議申立て理由の概要は、以下のとおりである。 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 また、本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開2013-082584号公報 甲第2号証:甲第1号証の図2の解析内容及び解析結果 2 取消理由の概要 令和4年2月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。 また、本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。 3 甲号証 (1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、次の記載がある。なお、下線は、甲第1号証に元々付されている【0091】の「実施例1」の下線を除き、説明のために当審で付したものである。 「【0025】 本発明は、本発明シリカ粒子を含む研磨剤も包含する。特に、電子材料を研磨する電子材料研磨材として好適に用いることができる。例えば、シリコンウエハ研磨、LSI製造プロセスに於ける化学的機械的研磨(CMP)、フォトマスクブランクス研磨、ハードディスク研磨等が挙げられる。 【0026】 研磨剤の使用に際しては、公知の研磨剤と同様にして実施すれば良い。例えば、シリコンウエハを研磨する際は、用途等に応じて濃度を調整した上、研磨機の常盤にセットされた研磨パッド上に滴下すればよい。 2.球状の高純度シリカ粒子の製造方法 本発明のシリカ粒子は、蒸留精製により高純度に精製可能なケイ酸アルキルをシリカ原料として製造する。好ましくは、シリカ原料として、高純度に精製可能で、かつ反応性が高く、無触媒でも容易に加水分解されるテトラメチルオルトシリケートが望ましい。 【0027】 具体的には、1)水又はpH12以下のアルカリ水からなる母液を調製する工程及び 2)ケイ酸アルキルを加水分解して得られた加水分解液を前記母液に添加する工程 を含む球状の高純度単分散シリカ粒子の製造方法であって、 前記加水分解の温度が20℃以下である製造方法により製造する。」 「【0091】 実施例1 (1)活性硅酸水溶液調製 4つ口フラスコ(容量2L)にテトラメチルオルソシリケート(TMOS)342.0gを計り取り、10℃に温度調整した。このTMOSを、予め10℃に温度調節した純水1158.0gに攪拌下に加えた。当初は不透明であった反応液が30分後には加水分解の進行により透明な均一溶液となった。そのまま溶液温度を10±2℃に保持しながら1時間経過するまで継続し、シリカ分9wt%のTMOS加水分解液(活性硅酸水溶液)を調製した。活性硅酸水溶液は、加水分解によって生成したシラノール基の示す酸性のため、そのpHは約4.4~4.5であった。 (2)真球状粒子調製 温度計及びジムロート冷却管、蒸気温確認用温度計を付けたトの字管、活性硅酸水溶液フィード管、攪拌機を取り付けた4つ口フラスコ(10L)に純水7500g、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を4.9mmol加え、母液とした。母液のpHは10.41であった。これを加熱し、リフラックス状態となったところで活性硅酸水溶液のフィードを開始した。添加速度は8.3mL/分(6gシリカ/時/kg 母液)とした。以後pH8を保持するよ う1N-TMAH水溶液を1時間毎に添加した。フィード開始後3時間経過したところで再度調製した活性硅酸水溶液に交換し添加を継続し、合計6時間のフィードを行った。 【0092】 活性硅酸水溶液のフィード終了後、残留メタノールを水置換/除去後、加熱濃縮を行い、固形分20%まで濃縮する。濃縮後、混合セルロース3μmメンブランフィルター(東洋濾紙株式会社製)でろ過した。結果を表1にまとめた。なお、一次粒子径は、2727/比表面積値によって換算される一次粒子径を表した。また、動的光散乱法(大塚電子株式会社製ELS8000)で測定した粒子径を二次粒子径として示した。 【0093】 得られた真球状粒子の物性を表1に示すとともに、SEM観察像を図2に示す。」 「【0101】 【表1】 [図:0001390564000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001390564000002.jpg] 」 (2)図面に記載された技術的事項 甲第2号証(甲第1号証の図2の解析内容及び解析結果)のとおり、甲第1号証の図2のSEM画像を画像解析ソフトMacViewに取り込み、他の粒子の裏に隠れていない、及び、SEM画像粒中に粒子全体が映っている(画像の端で、粒子の一部が見切れたりしていない)粒子のみを解析対象粒子として、粒子150個を、本件特許明細書の【0013】及び【0019】に記載の解析方法と同様の解析方法に従い解析した結果は、D0-5粒子の平均アスペクト比が1.08、D5相当粒子径が25.2nm、全粒子の平均アスペクト比が1.10、D5相当粒子径/D50相当粒子径が0.8である。 (3)甲第1号証に記載された発明 【0026】、【0027】によれば、引用文献1における「本発明のシリカ粒子」は、ケイ酸アルキル、望ましくはテトラメチルオルトシリケートをシリカ原料として、ケイ酸アルキルを加水分解して得られた加水分解液をpH12以下の母液に添加することにより得られるものである。 そして、【0093】の「真球状粒子」は、【0091】、【0092】より、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)加水分解液を、pH10.41の母液にフィード、すなわち、添加することにより得られるものであるから「本発明のシリカ粒子」であり、これが【0025】における「研磨剤」が含む「本発明シリカ粒子」に該当することは明らかである。 したがって、以上を考慮すると、上記(1)及び(2)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、符号a~dは、説明のために当審で付したものであり、以下、「構成a」~「構成d」という。また、各構成の末尾の括弧内に、対応する明細書又は図面の記載箇所を示した。 (甲1発明) a シリカ粒子を含む研磨剤であって、(【0025】) b SEM画像から求められる、前記シリカ粒子である真球状粒子のD0-5粒子の平均アスペクト比が1.08、D5相当粒子径が25.2nm、全粒子の平均アスペクト比が1.10、D5相当粒子径/D50相当粒子径が0.8であり、(【0026】、【0027】、【0091】~【0093】、【図2】) c SEM画像解析による前記シリカ粒子である真球状粒子の粒子径が28.2nmであり、(【0093】、【0101】【表1】) d 電子材料を研磨する電子材料研磨材として好適に用いることができ、(【0025】) e 研磨剤の使用に際しては、シリコンウエハを研磨する際は、用途等に応じて濃度を調整した上、研磨機の常盤にセットされた研磨パッド上に滴下すればよい、(【0026】) a 研磨剤。 4 当審の判断 (1)本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 構成a、dより、研磨剤はシリカ粒子を含み、電子材料の研磨に用いるものであることから、甲1発明の「シリカ粒子」は、砥粒として用いられるものであり、本件特許発明の「シリカ粒子を含む砥粒」に相当する。 また、構成eより、研磨剤の使用に際しては用途等に応じて濃度を調整した上、滴下するものであることから、甲1発明の「研磨剤」は液状のものである。そして、研磨剤に水を含ませ液状にして用いることが研磨の技術分野において広く行われている技術常識であることを考慮すれば、甲1発明の「研磨剤」は、水を含むものであるということができる。 したがって、甲1発明の「研磨剤」は、本件訂正発明1の「シリカ粒子を含む砥粒と、水と、を含む研磨用組成物」である点で一致する。 構成bより、甲1発明の研磨剤の真球状粒子は、SEM画像から求められる、真球状粒子のD0-5粒子の平均アスペクト比が1.08、D5相当粒子径が25.2nm、全粒子の平均アスペクト比が1.10である。 また、構成cよりSEM画像解析による粒子径が28.2nmであり、ここで、甲1明細書の表1を参照すると、標準偏差と併記される当該粒子径が全粒子の平均を指すものであると解することが相当であり、また、図2のSEM観察像の粒子径からD5相当粒子径は全粒子の平均粒子径よりも小さいことが明らかであることからすれば、甲1発明のD5相当粒子径は、少なくとも28.2nmより小さいといえる。 しかしながら、これらはTEM画像から求められるものではないため、本件訂正発明1においては、砥粒は、TEM画像から求められる、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比が1~1.25であり、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5が30nm以下であり、かつ、全粒子の平均アスペクト比が1~1.30であるのに対し、甲1発明においては、SEM画像から求められる、D0-5粒子の平均アスペクト比が1.08、D5相当粒子径が25.2nmであるか、又は少なくとも28.2nmより小さく、全粒子の平均アスペクト比が1.10である点で、本件訂正発明1と相違する。 したがって、本件訂正発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。 〔一致点〕 シリカ粒子を含む砥粒と、水と、を含む研磨用組成物。 〔相違点〕 本件訂正発明1においては、砥粒は、TEM画像から求められる、小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比が1~1.25であり、小径側からの前記累積粒度分布における累積5%粒子径D5が30nm以下であり、かつ、全粒子の平均アスペクト比が1~1.30であるのに対し、甲1発明においては、SEM画像から求められる、D0-5粒子の平均アスペクト比が1.08、D5相当粒子径が25.2nmであるか、又は少なくとも28.2nmより小さく、全粒子の平均アスペクト比が1.10である点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)本件訂正発明1と甲1発明が同一であるか否かについて 一般に、TEMは、試料切片を透過した電子線を検出して結像し、観察像を得るものである一方、SEMは、試料の表面に電子線を照射し、反射した電子を検出して結像し、観察像を得るものである。 ここで、特許異議申立人が令和4年6月10日に意見書と共に提出した、甲第3号証(特開2007-153732号公報)の、実施例7のコロイダルシリカについて、20万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子像を示す図5と、20万倍の走査型顕微鏡(SEM)で観察された粒子像を示す図6の解析結果を示す甲第4号証(甲第3号証の図5及び図6の解析内容及び解析結果)によると、図5からは全粒子の平均アスペクト比が1.07、D0-5粒子の平均アスペクト比が1.12、全粒子の平均粒子径が47.9nm、粒子径D5が37.8nmである一方、図6からは全粒子の平均アスペクト比が1.08、D0-5粒子の平均アスペクト比が1.07、全粒子の平均粒子径が49.2nm、粒子径D5が44.2nmであり、両者は異なる値となっている。このように、観察像を得るための原理が異なるTEM観察像とSEM観察像からから求められるアスペクト比及び粒子径は相違する場合があるといえる。 また、当該相違の傾向や程度も明らかではないから、甲1発明のシリカ粒子を、TEM画像を用いて解析した場合に、D0-5粒子の平均アスペクト比が1~1.25、D5相当粒子径が30nm以下、全粒子の平均アスペクト比が1~1.30となる蓋然性が高いとはいえない。 ここで、特許異議申立人は、令和4年6月10日に提出した意見書において、以下のとおり主張している。 「本件特許発明は、依然として、甲第1号証に記載された発明である事を、以下に説明します。 ・・・ [図:0001390564000003.jpg] この様に、甲第3号証、及び甲第4号証に基づくと、TEMで観察された粒子像とSEMで観察された粒子像とを比較すると、「小径側からの個数基準の累積粒度分布における累積0~5%のD0-5粒子の平均アスペクト比」、及び「全粒子の平均アスペクト比」に、明確な差が生じない事が把握出来ます。 更に、画像解析から、SEMで観察された粒子像(図6)において、「30nm以下」の粒子のアスペクト比「1.05」は、全粒子の平均アスペクト比「1.08」と比べて、SEMで観察された粒子像においても、小径の粒子のアスペクト比と全体の粒子のアスペクト比との間で、明確な差が生じていない事も把握出来ます。 すると、「SEMは、TEMと比較して分解能が低く、粒子形状を正確に把握しにくい傾向にあります」事は無く、また、「SEM」は、「小径でアスペクト比の大きい粒子の像(特にエッジ部分)は実際よりもぼやけ、粒子は丸めに映し出されやすいという性質を有します」事も有りません。そして、「SEMでは、TEMと比較して、粒子のアスペクト比など粒子形状を正確に把握しにくい傾向にあります」事も有りません。 この様に、SEMで観察された粒子像から求めた粒子の平均アスペクト比から、TEMで観察された粒子像から求められる平均アスペクト比を把握する事は出来ます。」 上記主張について検討する。 甲第4号証によれば、図5における測定対象の粒子の個数は29個であり、そのうち、D0-5粒子は1個、図6における測定対象の粒子の個数は50個であり、そのうち、D0-5粒子は3個である。したがって、測定対象の粒子の個数、特にD0-5粒子の個数が十分な証拠を示すものであるとはいえず、甲第3号証の図5及び図6の解析結果から、TEMで観察された粒子像とSEMで観察された粒子像とを比較して、直ちに、D0-5粒子の平均アスペクト比、及び、全粒子の平均アスペクト比に、明確な差が生じない事が把握できるとはいえない。 また、甲第1発明における粒子は、構成bより真球状であり、また、構成eより粒子径が28.2nmである。 一方で、甲第3号証の【0065】に「実施例3及び7のコロイダルシリカはその粒子表面に多数の小突起が存在してあたかも金平糖のような形状となっている」と記載されているように、甲第3号証の実施例7のコロイダルシリカは金平糖のような形状であり、また、甲第4号証によれば、図5において測定された粒子径の全粒子平均が47.9nm、図6において測定された粒子径の全粒子平均が49.2nmであり、甲1発明における粒子に比べて大きな粒子である。 したがって、甲第1発明と甲第3号証の実施例7とでは粒子の形状や大きさが異なるため、仮に、甲第3号証の粒子を測定した結果から、TEMで観察された粒子像とSEMで観察された粒子像とを比較して、D0-5粒子の平均アスペクト比、及び、全粒子の平均アスペクト比に、明確な差が生じないことが把握できたとしても、甲第1号証の粒子において同じく明確な差が生じないとは必ずしもいえない。 さらに、図6において30nm以下の粒子は1個であり、SEMで観察された粒子像における小径の粒子のアスペクト比の傾向を把握するための十分なサンプル数が確保されているとはいえないから、図6における30nm以下の粒子のアスペクト比1.05を、全粒子の平均アスペクト比1.08と比べることにより、直ちに、小径の粒子のアスペクト比と全体の粒子のアスペクト比との間で、明確な差が生じていない事が把握できるとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 以上から、上記相違点を含む本件訂正発明1は、甲1発明であるとはいえない。 (イ)本件訂正発明1が甲1発明に基づいて当業者が容易に想到しうるものであるか否かについて 本件訂正発明1が解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0005】にあるように、研磨後の表面に存在するスクラッチの数を効果的に低減し得る研磨用組成物を提供することである。 そして、上記課題を解決するために、本件訂正発明1においては、本件特許明細書の【0014】に記載されているように、砥粒の粒子全体の平均アスペクト比を1~1.30を満たすようにすることで、球形か球形に近い砥粒が転がり移動しやすくなり加工が安定し、研磨後の表面品質が向上するようにし、また、D0-5粒子の平均アスペクト比が1~1.25とすることで、楔となり得る小径の粒子をより球形に近い形状にし、研磨時において局所的に砥粒が転がりにくくなる事象を生じ難くし、これによりスクラッチを低減している。 さらに、本件訂正発明1においては、本件特許明細書の【0021】に記載されているように、累積5%粒子径D5を30nm以下とすることで、スクラッチ低減効果をよりよく発揮している。 一方で、甲1発明が解決しようとする課題は、甲1明細書の【0008】、【0013】から、高純度且つ緻密な球状のシリカ粒子であって、単分散性が良好(CV値が20以下)な球状のシリカ粒子とその製造方法を提供することである。 そして、上記課題を解決するために、甲1発明においては、甲1明細書の【0088】、【0091】、【0092】に記載されているように、製造方法において金属不純物が混入する機会がないことで、比較的高純度なシリカ粒子となっている。 また、甲1発明においては、甲1明細書の【0041】、【0091】に記載されているように、緻密なシリカ粒子が形成されるように、ケイ酸アルキルであるテトラメチルオルソシリケートの加水分解液の母液への添加速度を41gシリカ/時/kg母液以下である6gシリカ/時/kg母液とし、さらに、甲1明細書の【0040】、【0091】に記載されているように、シリカ粒子の単分散性を向上するために、加水分解の温度を好ましい範囲である15℃以下である10±2℃としている。 以上のとおり、本件訂正発明1と甲1発明とでは、解決しようとする課題が異なり、また、甲1発明においては、甲1発明の課題の解決のためにシリカ粒子のアスペクト比や粒子径を調整していない。 したがって、甲1発明においては、D0-5粒子の平均アスペクト比、D5相当粒子径及び全粒子の平均アスペクト比を本件訂正発明1の数値範囲に変更する動機がない。 また、上記相違点に係る本件訂正発明1の構成が、本件特許の出願前において周知技術であるともいえない。 したがって、本件訂正発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到しうるものであるとはいえない。 (2)本件訂正発明2~5について 本件訂正発明2~5も、上記相違点に係る構成と同じ構成を備えるものであるから、上記(1)と同じ理由により、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到しうるものであるともいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700981

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