特許異議申立
2023-700809
磁気ディスク基板用研磨剤組成物
- 審判番号
- 2023-700809
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-008288
- 登録番号
- 7219097
- 請求日
- 2023年08月04日
- 審決日
- 2024年03月22日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】山口精研工業株式会社
- 【権利者代理人】渡邉 一平
- 【異議申立人】柏木 里美
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 千葉 輝久
- 審判官 樫本 剛
- 分類
- P1652.113-Z (G11B) / P1652.121-Z (G11B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7219097号発明「磁気ディスク基板用研磨剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7219097号の請求項1、2、3、4に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7219097号の請求項1-12に係る特許についての出願は、平成31年1月22日に出願され、令和5年1月30日にその特許権の設定登録がされ、令和5年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1-4に係る特許について、令和5年8月4日に特許異議申立人柏木里美により特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年12月18日(起案日)(発送日は令和5年12月21日)に取消理由を通知したが、これに対して特許権者からの応答はなかった。
第2 取消理由の概要
特許異議申立書に記載した特許異議申立理由に基づいて、請求項1-4に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1 請求項1-3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1-3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2 請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証 特開2016-84428号公報
甲第2号証 特開2010-135052号公報
第3 当審の判断
1 請求項1について
(1)本件発明1
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。なお、後述する請求項2-4についても同様に「本件発明2」-「本件発明4」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、水を含有する研磨剤組成物であり、
前記水溶性高分子化合物が、少なくともカルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体であり、
前記水溶性高分子化合物のカルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位とスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の量比が、mol比で90:10~10:90の範囲であり、
前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1,000~1,000,000である無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる磁気ディスク基板用研磨剤組成物。」
(2)甲第1号証、引用発明1
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「【0001】
本発明は、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板用研磨液組成物、これを用いた磁気ディスク基板の研磨方法及び磁気ディスク基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスクドライブは小型化・大容量化が進み、高記録密度化が求められている。高記録密度化するために、単位記録面積を縮小し、弱くなった磁気信号の検出感度を向上するため、磁気ヘッドの浮上高さをより低くするための技術開発が進められている。磁気ディスク基板には、磁気ヘッドの低浮上化と記録面積の確保に対応するため、平滑性及び平坦性の向上(表面粗さ、うねり、端面ダレの低減)と欠陥低減(スクラッチ、突起、ピット等の低減)に対する要求が厳しくなっている。」
「【0014】
[共重合体]
本開示に係る研磨液組成物は、研磨速度を損なうことなく研磨後の研磨表面のスクラッチ及びナノ欠陥を低減し、かつ、研磨パットの摩耗を抑制する観点から、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構成単位(A)、及び、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和スルホン酸化合物又はその塩に由来する構成単位(B)を有する共重合体(以下、「本開示に係る共重合体」ともいう)を含有する。本開示に係る共重合体は、水溶性であって、本開示に係る研磨液組成物に溶解する。」
「【0017】
[構成単位(A)]
本開示に係る共重合体の構成単位(A)は、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構成単位であって、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらの塩から選択される一種類又は複数種類に由来する構成単位である。構成単位(A)は、一又は複数の実施形態において、下記一般式(I)で表すことができる。
【0018】
[図:0001411333000001.jpg]
(式(I)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。)
【0019】
[構成単位(B)]
本開示に係る共重合体の構成単位(B)は、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和スルホン酸化合物又はその塩に由来する構成単位である。ポリウレタン製の研磨パッドは通常疎水的であるため、共重合体がヒドロキシ基を含有することにより、研磨液組成物の研磨パッドに対する表面張力が高くなるように制御することができる。」
「【0021】
構成単位(B)は、一又は複数の実施形態において、下記一般式(II)で表すことができる。
【0022】
[図:0001411333000002.jpg]
(式(II)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Yは、任意の有機基であり、sは1~4であり、Xは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。)」
「【0025】
本開示に係る共重合体を構成する構成単位(A)及び(B)の合計に対する構成単位(B)の割合は、一又は複数の実施形態において、研磨速度を損なうことなく研磨後の研磨表面のスクラッチ及びナノ欠陥を低減し、かつ、研磨パットの摩耗を抑制する観点から、15モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、同様の観点から、70モル%以下が好ましく、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下であり、同様の観点から、好ましくは15モル%以上70モル%以下、より好ましくは20モル%以上60モル以下、更に好ましくは30モル%以上50モル%以下である。」
「【0027】
[共重合体の重量平均分子量]
本重合体に係る共重合体の重量平均分子量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度を損なうことなく研磨後の研磨表面のスクラッチ及びナノ欠陥を低減し、かつ、研磨パットの摩耗を抑制する観点から、5,000以上50,000以下であることが好ましく、より好ましくは6000以上400000以下、更に好ましくは7000以上300000以下、より更に好ましくは10000以上20000以下である。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて実施例に記載の方法により測定した値である。」
「【0032】
[シリカ粒子]
本発明の研磨液組成物は、研磨材(砥粒)としてシリカ粒子を含有する。シリカ粒子としては、一又は複数の実施形態において、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、表面修飾したシリカ等が挙げられるが、研磨後の基板のスクラッチ及びナノ突起欠陥の低減の観点から、コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、1種類からなるものであっても、2種類以上のコロイダルシリカを混合したものであってもよい。
【0033】
研磨液組成物におけるシリカ粒子の含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度を損なうことなく研磨後の研磨表面のスクラッチ及びナノ欠陥を低減し、かつ、研磨パットの摩耗を抑制する観点から、研磨材の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上13質量%以下が更に好ましく、4質量%以上10質量%以下が更により好ましい。
【0034】
[研磨材の平均粒径]
本開示における「研磨材の平均粒径」とは、特に言及しない限り、動的光散乱法において検出角90°で測定される散乱強度分布に基づく平均粒径をいう(以下、「散乱強度分布に基づく平均粒径」ともいう)。研磨材の平均粒径は、研磨後の基板表面のスクラッチを低減する観点から、1nm以上40nm以下が好ましく、より好ましくは5nm以上37nm以下、さらに好ましくは10nm以上35nm以下である。なお、研磨材の平均粒径は、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。」
「【0053】
[その他の成分]
本開示に係る研磨液組成物には、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、界面活性剤等が挙げられる。研磨液組成物中のこれら他の任意成分の含有量は、0を超え10質量%以下好ましく、0を超え5質量%以下がより好ましい。但し、本開示の研磨液組成物は、他の成分、とりわけ界面活性剤を含むことなく、研磨後の基板表面のスクラッチ及びナノ突起欠陥の低減効果を発揮し得る。さらに、本開示に係る研磨液組成物は、アルミナ砥粒を含ませることができ、最終研磨工程より前の粗研磨工程に使用することもできる。」
「【0056】
[研磨対象(被研磨基板)]
本開示に係る研磨液組成物が研磨の対象とする被研磨基板は、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板である。「Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板」とは、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板用アルミニウム合金板材の表面を研削後、無電解Ni-Pメッキ処理したものをいう。Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板の表面を研磨し、さらに、スパッタ等でその基板表面に磁性膜を形成することにより磁気ディスク基板を製造することができる。」
「【0059】
被研磨基板の研磨工程が多段階で行われる場合は、本開示に係る研磨液組成物を用いた研磨工程は2段階目以降に行われるのが好ましく、最終研磨工程、いわゆる仕上げ研磨工程で行われるのがより好ましい。その際、前工程の研磨材や研磨液組成物の混入を避けるために、それぞれ別の研磨機を使用してもよく、またそれぞれ別の研磨機を使用した場合では、研磨工程毎に被研磨基板を洗浄することが好ましい。なお、研磨機としては、特に限定されず、磁気ディスク基板研磨用の公知の研磨機が使用できる。」
「【0070】
[共重合体]
研磨液組成物に使用した(共)重合体は下記のA~Cの水溶性重合体である。これらの重合体の重量平均分子量は下記の条件で測定した。
<共重合体>
A:アクリル酸(AA)/3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)共重合体ナトリウム塩
A1:モル比67/33、重量平均分子量13000
A2:モル比60/40、重量平均分子量18000
B:アクリル酸(AA)/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)共重合体ナトリウム塩
B1:モル比90/10、重量平均分子量18000
B2:モル比80/20、重量平均分子量24000
C:ポリアクリル酸、重量平均分子量19000」
「【0074】
[研磨液組成物の調製方法]
6.0質量%のコロイダルシリカ(平均粒径25nm)、0.4質量%の酸(硫酸)、0.4質量%の酸化剤(過酸化水素)、表1の(共)重合体、水、並びに、必要に応じて、下記表2に記載の複素環芳香族化合物及び脂肪族アミン化合物若しくは脂環式アミン化合物を混合して実施例1~9及び比較例1~5の研磨液組成物を調製した。なお、実施例1、2、7、8及び比較例1及び5には、複素環芳香族化合物及び脂肪族アミン化合物若しくは脂環式アミン化合物を添加していない。また、比較例5には(共)重合体を使用していない。実施例1~9及び比較例1~5の研磨液組成物のpHは1.5であった。なお、pHは、研磨液組成物の25℃における値であって、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM-30G)を用い、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後に測定した数値である。」
「【0076】
[被研磨基板]
被研磨基板としては、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板を予めアルミナ研磨材を含有する研磨液組成物で粗研磨した基板を用いた。なお、この被研磨基板は、厚さが1.27mm、外径が95mm、内径が25mmであり、AFM(Digital Instrument NanoScope IIIa Multi Mode AFM)により測定した中心線平均粗さRaが1nm、長波長うねり(波長0.4~2mm)の振幅は2nm、短波長うねり(波長50~400μm)の振幅は2nmであった。」
「【0081】
[図:0001411333000003.jpg]
」
イ 引用発明1
上記甲第1号証の記載事項(特に、下線部)によれば、次のことがいえる。
・【0001】、【0056】、【0059】によれば、甲第1号証には、磁気ディスク基板用アルミニウム合金板材の表面を研削後、無電解Ni-Pメッキ処理した基板の仕上げ研磨工程で用いられる研磨液組成物の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
・【0032】によれば、甲第1号証に記載された研磨液組成物は、研磨材としてシリカ粒子を含有し、シリカ粒子の一つの例としてコロイダルシリカが挙げられているから、研磨剤としてのシリカ粒子がコロイダルシリカである場合の研磨液組成物の発明を引用発明1として認定すると、引用発明1の研磨液組成物は、コロイダルシリカを含有するといえる。
・【0014】によれば、研磨液組成物は、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構成単位(A)、及び、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和スルホン酸化合物又はその塩に由来する構成単位(B)を有する水溶性共重合体を含有する。
・【0017】、【0018】によれば、共重合体の構成単位(A)は、下記一般式(I)で表すことができる。
[図:0001411333000004.jpg]
(式(I)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。)
・【0019】、【0021】、【0022】によれば、共重合体の構成単位(B)は、下記一般式(II)で表すことができる。
[図:0001411333000005.jpg]
(式(II)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Yは、任意の有機基であり、sは1~4であり、Xは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。)
・【0025】によれば、共重合体を構成する構成単位(A)及び(B)の合計に対する構成単位(B)の割合は、15モル%以上70モル%以下である。
・【0027】によれば、共重合体の重量平均分子量は、5,000以上50,000以下である。
・【0033】によれば、研磨液組成物におけるシリカ粒子の含有量は、1質量%以上15質量%以下であり、上述したように、シリカ粒子はコロイダルシリカであるから、研磨液組成物におけるコロイダルシリカの含有量は、1質量%以上15質量%以下である。
・【0034】によれば、研磨材の平均粒径は、1nm以上40nm以下であり、上述したように、研磨材はコロイダルシリカであるから、コロイダルシリカの平均粒径は、1nm以上40nm以下である。
・【0070】、【0074】、【0076】、【0081】には、甲第1号証に記載された研磨液組成物の発明の実施例について記載されており、それによれば、研磨剤組成物は水を含有するものである。
以上によれば、甲第1号証には、次の引用発明1が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「コロイダルシリカと、水溶性共重合体と、水を含有する研磨液組成物であり、
前記水溶性共重合体は、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構成単位(A)、及び、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和スルホン酸化合物又はその塩に由来する構成単位(B)を有し、
共重合体の構成単位(A)は、下記一般式(I)で表すことができ、
[図:0001411333000006.jpg]
(式(I)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。)
共重合体の構成単位(B)は、下記一般式(II)で表すことができ、
[図:0001411333000007.jpg]
(式(II)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Yは、任意の有機基であり、sは1~4であり、Xは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子(1/2原子)、アンモニウム又は有機アンモニウムである。)
共重合体を構成する構成単位(A)及び(B)の合計に対する構成単位(B)の割合は、15モル%以上70モル%以下であり、
共重合体の重量平均分子量は、5,000以上50,000以下であり、
研磨液組成物におけるコロイダルシリカの含有量は、1質量%以上15質量%以下であり、
コロイダルシリカの平均粒径は、1nm以上40nm以下である、
磁気ディスク基板用アルミニウム合金板材の表面を研削後、無電解Ni-Pメッキ処理した基板の仕上げ研磨工程で用いられる研磨液組成物。」
(3)本件発明1と引用発明1との対比
ア 組成物
引用発明1は、「コロイダルシリカと、水溶性共重合体と、水を含有する研磨液組成物」であり、共重合体は高分子化合物である。
したがって、本件発明1と引用発明1は、「コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、水を含有する研磨剤組成物」である点で一致する。
イ 共重合体
引用発明1は、「前記水溶性共重合体は、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構成単位(A)、及び、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和スルホン酸化合物又はその塩に由来する構成単位(B)」を有しており、「共重合体の構成単位(A)」は、一般式(I)によれば、-COOXを含んでいることから、「カルボン酸基を有する単量体」であり、また、「共重合体の構成単位(B)」は、一般式(II)によれば、-SO3Xを含んでいることから、「スルホン酸基を有する単量体」である。
したがって、本件発明1と引用発明1は、「前記水溶性高分子化合物が、少なくともカルボン酸基を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体」である点で一致する。
ウ 量比
引用発明1は、「共重合体を構成する構成単位(A)及び(B)の合計に対する構成単位(B)の割合は、15モル%以上70モル%以下」であるから、本件発明1の「前記水溶性高分子化合物のカルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位とスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の量比が、mol比で90:10~10:90の範囲」であることと量比の数値が重なっている。
したがって、本件発明1と引用発明1は、「前記水溶性高分子化合物のカルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位とスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の量比が、mol比で90:10~10:90の範囲」である点で一致する。
エ 重量平均分子量
引用発明1は、「共重合体の重量平均分子量は、5,000以上50,000以下」であるから、本件発明1の「前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1,000~1,000,000である」ことと分子量の数値が重なっている。
したがって、本件発明1と引用発明1は、「前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が1,000~1,000,000である」である点で一致する。
オ 用途
引用発明1は、「磁気ディスク基板用アルミニウム合金板材の表面を研削後、無電解Ni-Pメッキ処理した基板の仕上げ研磨工程で用いられる研磨液組成物」であるところ、これは本件発明1の「無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる磁気ディスク基板用研磨剤組成物」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1は、「無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の仕上げ研磨に用いられる磁気ディスク基板用研磨剤組成物」である点で一致する。
(4)小括
以上によれば、本件発明1と引用発明1とは全ての発明特定事項で一致するから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である。
2 請求項2について
(1)本件発明2
本件発明2は、請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項2】
前記コロイダルシリカの平均粒子径(D50)が1~100nmであり、組成物中の濃度が1~50質量%である請求項1に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。」
(2)本件発明2と引用発明1との対比
ア 平均粒子径
引用発明1は、「コロイダルシリカの平均粒径は、1nm以上40nm以下」であるから、研磨剤としてのコロイダルシリカの平均粒子径の数値が本件発明2と重なっている。
したがって、本件発明2と引用発明1とは、「前記コロイダルシリカの平均粒子径(D50)が1~100nm」である点で一致する。
イ 濃度
引用発明1は、「研磨液組成物におけるコロイダルシリカの含有量は、1質量%以上15質量%以下」であるから、コロイダルシリカの濃度の数値が本件発明2と重なっている。
したがって、本件発明2と引用発明1とは、「前記コロイダルシリカ」の「組成物中の濃度が1~50質量%である」である点で一致する。
ウ 請求項1の引用
本件発明2は、請求項1の記載を引用するものであり、上記「1 請求項1について」で述べたように、請求項1の記載により特定される本件発明1と引用発明1とは全ての発明特定事項で一致する。
(3)小括
以上によれば、本件発明2と引用発明1とは全ての発明特定事項で一致するから、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明である。
3 請求項3について
(1)本件発明3
本件発明3は、請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項3】
前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が5,000~600,000である請求項1または2に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。」
(2)本件発明3と引用発明1との対比
ア 重量平均分子量
引用発明1は、「共重合体の重量平均分子量は、5,000以上50,000以下」であるから、本件発明3の「前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が5,000~600,000である」ことと分子量の数値が重なっている。
したがって、本件発明3と引用発明1とは、「前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が5,000~600,000である」点で一致する。
イ 請求項1、2の引用
本件発明3は、請求項1または2の記載を引用するものであり、上記「1 請求項1について」、「2 請求項2について」で述べたように、請求項1の記載により特定される本件発明1、請求項2の記載により特定される本件発明2は何れも引用発明1と全ての発明特定事項で一致する。
(3)小括
以上によれば、本件発明3と引用発明1とは全ての発明特定事項で一致するから、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明である。
4 請求項4について
(1)本件発明4
本件発明4は、請求項4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項4】
前記研磨剤組成物が、さらに界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤がスルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤である請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。」
(2)引用発明1、甲第2号証
ア 引用発明1
引用発明1は、上記「1 請求項1について」、「2 請求項2について」、「3 請求項3について」において、本件発明1-3と対比して全ての発明特定事項で一致するとした発明である。
イ 甲第2号証
(ア)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「【0001】
本発明は、磁気ディスク基板等の研磨に用いられる研磨剤組成物及び磁気ディスク基板の研磨方法に関する。」
「【0007】
本発明の課題は、表面精度を向上させるためにスクラッチ等を低減することができ、研磨工程において発泡が少なく、効率よく研磨することができる研磨剤組成物及び磁気ディスク基板の研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、研磨剤組成物が、界面活性剤として、分子中に繰り返し単位と、スルホン酸(塩)基とを有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤を含むことにより、上記課題を解決しうることを見いだした。すなわち、本発明によれば、以下の研磨剤組成物及び磁気ディスク基板の研磨方法が提供される。」
(3)対比
本件発明4と引用発明1とを対比すると、両者は次の相違点で相違し、その余の点では一致する。
相違点
本件発明4は、「前記研磨剤組成物が、さらに界面活性剤を含有し、前記界面活性剤がスルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤である」のに対し、引用発明1は、そうではない点。
(4)判断
相違点について検討する。
甲第1号証の【0002】によれば、磁気ディスク基板には、スクラッチの低減に対する厳しい要求がある。また、甲第1号証の【0053】によれば、引用発明1の磁気ディスク基板の研磨液組成物は、必要に応じて界面活性剤を配合することができるものである。
一方で、甲第2号証には、上記下線部によれば、磁気ディスク基板等の研磨に用いられる研磨剤組成物において、磁気ディスク基板のスクラッチを低減するという課題を解決するために、研磨剤組成物に、界面活性剤として、分子中に繰り返し単位と、スルホン酸(塩)基とを有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤を含むようにする技術事項が記載されている。
そうすると、引用発明1において、磁気ディスク基板のスクラッチを低減するという課題を解決するために、甲第2号証に記載された技術事項を適用し、研磨剤組成物に、界面活性剤として、分子中に繰り返し単位と、スルホン酸(塩)基とを有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン界面活性剤を含むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、本件発明4は、引用発明1および甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、請求項1-4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700809