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特許異議申立

2024-700060

研磨用組成物

審判番号
2024-700060
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-178518
登録番号
7319157
請求日
2024年01月25日
審決日
2024年04月15日
公報発行日
2024年05月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社フジミインコーポレーテッド
  • 【権利者代理人】安部 誠
  • 【権利者代理人】大井 道子
  • 【権利者代理人】谷 征史
  • 【異議申立人】和田 直人
審判長/審判官
  • 審判長 畑中 高行
  • 審判官 千葉 輝久
  • 審判官 高橋 宣博
分類
P1651.113-Y (G11B) / P1651.121-Y (G11B) / P1651.537-Y (G11B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7319157号発明「研磨用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7319157号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7319157号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和元年9月30日に出願され、令和5年7月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年1月25日に特許異議申立人和田直人(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 磁気ディスク基板の一次研磨用組成物であって、 砥粒としてのシリカ粒子、酸、酸化剤および水を含み、 研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤をさらに含み、 前記シリカ残低減剤は、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であって、温度30℃において100mLの純水に対して1gが完全に溶解する水溶解性を有する、研磨用組成物。 【請求項2】 前記砥粒の平均アスペクト比は1.1以上である、請求項1に記載の研磨用組成物。 【請求項3】 前記砥粒は、光透過式遠心沈降法により得られる重量基準の粒度分布に基づく累積99%粒子径(D99)が150nm以上である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。 【請求項4】 前記シリカ残低減剤として、前記リン酸エステルおよび/または前記亜リン酸エステルを含み、 前記リン酸エステルおよび/または前記亜リン酸エステルは、そのリン酸エステル結合で結合した有機基を有しており、該有機基は、エーテル結合を含んでよい炭素原子数が6以下の有機基から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。 【請求項5】 前記シリカ残低減剤が有する前記有機基は、炭素原子数が4以下であるアルキル基、または、炭素原子数が6以下であるアルコキシアルキル基である、請求項4に記載の研磨用組成物。 【請求項6】 前記シリカ残低減剤として前記有機ホスホン酸化合物を含み、 前記有機ホスホン酸化合物はニトリロトリス(メチレンホスホン酸)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。 【請求項7】 前記酸は、リン酸、ホスホン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨用組成物。 【請求項8】 前記酸化剤は過酸化水素を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨用組成物。 第3 申立理由の概要 1 本件発明1~3、6~8は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、請求項1~3、6~8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 本件特許請求の範囲の請求項1~8の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、請求項1~8に係る特許は、同法同条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 証拠方法 甲第1号証 特開2016-27517号公報 甲第2号証 特開2009-120850号公報 甲第3号証 特開2002-327170号公報 甲第4号証 特開2017-182860号公報 甲第5号証 特開2014-116057号公報 甲第6号証 [職場のあんぜんサイト]化学物質:1-ヒドロキシエタン-1,1-ジイルビス(ホスホン酸) (https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/2809-21-4.html) 甲第7号証 [環境省_化学物質の環境リスク評価 第9巻] (https://www.env.go.jp/chemi/report/h23-01/index.html) 第4 証拠について (1)甲第1号証 甲第1号証には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審により付与したものである。 「【技術分野】 【0001】 本開示は、磁気ディスク基板用研磨液組成物、磁気ディスク基板の研磨方法、及び、磁気ディスク基板の製造方法に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 磁気ディスク基板の研磨工程においてアルミナ粒子を使用しない粗研磨工程及び仕上げ研磨工程を採用すれば、残留アルミナ(例えば、アルミナ付着、アルミナ突き刺さり)を無くすことができるから突起欠陥が低減する。しかし、アルミナ粒子に換えてシリカ粒子で粗研磨工程を行う場合、長周期欠陥を除去できないという問題が新たに発生することが見出された。アルミナ粒子で粗研磨工程を行う場合には、一般に、長周期欠陥の問題は起らない。長周期欠陥の除去率は基板収率と相関性が高いため、粗研磨工程において長周期欠陥の除去率のより一層の向上が望まれる。 【0008】 特許文献1は、所定のパラメータで規定される非球状シリカ粒子を砥粒として粗研磨を行えば、実質的にアルミナ粒子を含まない場合であっても、粗研磨の研磨時間を大幅に長期化することなく粗研磨後の長波長うねりを低減できることを開示する。しかしながら、長周期欠陥については、より一層の除去率の向上が望まれる。 【0009】 そこで、本開示は、一又は複数の実施形態において、非球状シリカ粒子を砥粒とする粗研磨において、粗研磨における研磨速度を大きく損ねることなく、粗研磨後の基板表面の長周期欠陥を低減できる磁気ディスク基板用研磨液組成物を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本開示は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板の製造方法あって、 (1)研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程、 (2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程、及び、 (3)工程(2)で得られた基板を、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを用いて研磨する工程を有し、前記工程(1)と(3)を別の研磨機で行い、 (i)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iは、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有し、 (ii)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iにおいて、前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比A/Bが80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が98.0質量%を超え、 (iii)前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、 (iv)前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、 (v)前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、 (vi)前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、磁気ディスク基板の製造方法に関する。」 「【発明の効果】 【0014】 本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法は、アルミナ粒子を使用しないから粗研磨後及び仕上げ研磨後の突起欠陥を大幅に低減できる。そして、本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、粗研磨における研磨速度を大きく損ねることなく、粗研磨後の基板表面の長周期欠陥を低減できるという効果が奏され、基板の生産性を維持しつつ、基板収率を向上しうる。」 「【0019】 本開示において「長周期欠陥」とは、Ni―Pめっきアルミニウム基板の製造工程で発生するPED(polish enhanced defect)及びグラインド傷を含む。PEDは、アルミニウム基板にめっき成膜する工程におけるアニール工程で、基板表面に付着した水や異物に起因するアニール不足の部分をいう。グラインド傷は、めっき前のアルミニウム基板をグラインドする工程(グラインド工程)におけると砥石の削り痕をいう。長周期欠陥及びその除去率は、一又は複数の実施形態において、実施例に記載の測定器を用いて測定できる。 【0020】 本開示において、「突起欠陥」は、主に、粗研磨工程後及び仕上げ研磨工程後の残留砥粒、砥粒付着、及び砥粒突き刺さりに由来すると考えられる基板表面の欠陥のことをいう。基板表面の突起欠陥は、例えば、研磨後に得られる基板表面の顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察等、表面欠陥検査装置により評価することができ、具体的には実施例に記載した方法で評価できる。」 「【0056】 [酸] 研磨液組成物Iは、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する。研磨液組成物Iにおける酸の使用は、酸及び又はその塩の使用を含む。 【0057】 本開示において「リン酸類」は、リン酸、及び、リン酸骨格を持つ他の類似化合物群をいう。前記類似化合物群としては、一又は複数の実施形態において、ピロリン酸が挙げられる。本開示において、特に説明のない場合「リン酸」は、一又は複数の実施形態において、無機リン酸が挙げられる。本開示において、特に説明のない場合「ホスホン酸」は、一又は複数の実施形態において、無機ホスホン酸が挙げられる。 【0058】 本開示において「有機ホスホン酸」は、一又は複数の実施形態において、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。 【0059】 リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの塩は単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。研磨液組成物Iの酸としては、一又は複数の実施形態において、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、リン酸、又はHEDPが好ましい。」 以上、特に下線部の記載によれば、次のことがいえる。 段落【0010】によれば、(1)~(3)の工程を有する磁気ディスク基板の製造方法における(1)の行程は粗研磨であるから、研磨液組成物Iは、粗研磨に用いる磁気ディスク基板用研磨液組成物であり、(i)~(vi)の組成を有するものである。 さらに、段落【0009】、【0014】、【0058】、【0059】の下線部の記載に基づけば、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、(【0009】)などは、対応する段落番号を示す。 [引用発明] 粗研磨における研磨速度を大きく損ねることなく、粗研磨後の基板表面の長周期欠陥を低減できる磁気ディスク基板用研磨液組成物であって、(【0009】) 粗研磨に用いる研磨液組成物Iは、 (i)非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有し、 (ii)前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比A/Bが80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が98.0質量%を超え、 (iii)前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、 (iv)前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、 (v)前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、 (vi)前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種であり、(【0010】) 有機ホスホン酸は、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、及びこれらの組み合わせが挙げられ、(【0058】) 研磨液組成物Iの酸としては、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、リン酸、又はHEDPが好ましく、(【0059】) アルミナ粒子を使用しないから粗研磨後及び仕上げ研磨後の突起欠陥を大幅に低減できる、(【0014】、【0007】) 磁気ディスク基板用研磨液組成物。(【0001】) (2)甲第2号証 甲第2号証には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 一次粒子の平均粒径が200nm以下であるコロイダルシリカ、過酸化水素、pK1が2以下の酸及び/又はその塩、及び水を含有してなる磁気ディスク基板用研磨液組成物であって、前記pK1が2以下の酸が、有機ホスホン酸を含む有機酸からなり、その塩が周期律表(長周期型)1Aに属する金属又はアンモニウムとの塩であり、該研磨液組成物の酸価(Y)が20mgKOH/g以下、0.2mgKOH/g以上である磁気ディスク基板用研磨液組成物。」 「【0022】 本発明に用いられる酸及び/又はその塩としては、その酸のpK1が2以下の化合物が好ましく、微小スクラッチを低減する観点から、pK1が1.5以下、より好ましくは1以下、最も好ましくはpK1で表せない程の強い酸性を示す化合物が望ましい。その例としては、硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、アミド硫酸等の無機酸及びその塩、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1,-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸等の有機ホスホン酸及びその塩、グルタミン酸、ピコリン酸、アスパラギン酸等のアミノカルボン酸及びその塩、シュウ酸、ニトロ酢酸、マレイン酸、オキサロ酢酸等のカルボン酸及びその塩等が挙げられる。中でも、微小スクラッチを低減する観点から、無機酸や有機ホスホン酸及びその塩が好ましい。また、無機酸及びその塩の中では、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸及びそれらの塩がより好ましい。有機ホスホン酸及びその塩の中では、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びそれらの塩がより好ましい。これらの酸及びその塩は単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。ここで、pK1とは有機化合物または無機化合物の酸解離定数(25℃)の逆数の対数値を通常PKaと表し、そのうちの第一酸解離定数の逆数の対数値をpK1としている。各化合物のpK1は例えば改訂4版化学便覧(基礎編)II、pp316-325(日本化学会編)等に記載されている。なお、本発明においては、微小スクラッチの低減と研磨速度の両立の観点から、その酸のpK1が2以下の酸及び/又はその塩を用いることが特に好ましい。」 「【0041】 本発明の研磨液組成物のpHは、被加工物の種類や要求性能に応じて適宜決定することが好ましい。被研磨物の材質により一概に限定はできないが、一般に金属材料では研磨速度を向上させる観点からpHは酸性が好ましく、7.0 未満が好ましく、より好ましくは6.0 以下、さらに好ましくは5.0 以下、特に好ましくは4.0 以下であることが望ましい。また、人体への影響や機械の腐食性の観点から、pHは1.0 以上であることが好ましく、より好ましくは1.2 以上、さらに好ましくは1.4 以上、特に好ましくは1.6 以上である。特にニッケル-リン(Ni-P)メッキされたアルミニウム合金基板等の金属を主対象とした精密部品基板においては、研磨速度の観点から、pHは酸性にすることが好ましく、研磨速度を向上させる観点からpHは4.5 以下が好ましく、より好ましくは4.0 以下、さらに好ましくは3.5 以下、特に好ましくは3.0 以下である。従って、重視する目的に合わせてpHを設定すればよいが、特にNi-Pメッキされたアルミニウム合金基板等の金属を対象とした精密部品基板においては、前記観点を総合して、pHは1.0 ~4.5 が好ましく、より好ましくは1.2 ~4.0 、さらに好ましくは1.4~3.5 、特に好ましくは1.6 ~3.0 である。pHは硝酸、硫酸等の無機酸やシュウ酸等の有機酸、アンモニウム塩、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アミン等の塩基性物質を適宜、所望量で配合することにより調整することができる。」 「【0053】 本発明の研磨液組成物は、ポリッシング工程において特に効果があるが、これ以外の研磨工程、例えば、ラッピング工程等にも同様に適用することができる。」 「【0055】 実施例1~18 表1に示すように市販のコロイダルシリカ(A(平均粒径50nm):日本化学工業製、B(平均粒径80nm):スタルクヴイテック(株)製、C(平均粒径20nm):デュポン(株)製)、35重量% 過酸化水素(旭電化製)、60重量% 硝酸(和光純薬工業(株)製、pK1は0以下)、98重量% 硫酸(和光純薬工業(株)製、pK1は0以下)等の各成分を所定量と、残りを水として合計100 重量% となるように調製した。混合する順番は、まず硝酸又は硫酸を水で希釈した水溶液に過酸化水素を、次いで残りの成分を混合し、最後にコロイダルシリカスラリーをゲル化しないように撹拌しながらすばやく加え調製した。 なお、表中、HEDPは1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(ソルーシア・ジャパン製)、ATMPはアミノトリ(メチレンホスホン酸)(ソルーシア・ジャパン製)を示す。」 (3)甲第3号証 甲第3号証には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 研磨材、酸化剤、研磨促進剤としての有機ホスホン酸及び水を含有してなる研磨液組成物。 【請求項2】 研磨材がコロイダルシリカであり、酸化剤が過酸化水素である請求項1記載の研磨液組成物。」 「【請求項5】 被研磨基板が磁気ディスク用基板である請求項4記載の基板の製造方法。」 「【0002】 【従来の技術】近年のメモリーハードディスクドライブには、高容量・小径化が求められ記録密度を上げるために磁気ヘッドの浮上量を低下させたり、単位記録面積を小さくすることが強いられている。それに伴い、磁気ディスク用基板の製造工程においても研磨後に要求される表面品質は年々厳しくなってきており、ヘッドの低浮上に対応して、表面粗さ、微小うねり、ロールオフ、突起の低減や単位記録面積の減少に対応して許容されるスクラッチ、ピットの大きさと深さがますます小さくなってきている。」 「【0011】シリカ粒子の平均一次粒径は、研磨速度を向上させる観点から、好ましくは0.001 μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.02μm以上であり、表面粗さ(Ra 、Rmax)、うねり(Wa)を低減する観点から好ましくは0.6 μm以下、より好ましくは0.5 μm以下、さらに好ましくは0.3 μm以下、特に好ましくは0.2 μm以下である。該平均一次粒径は、好ましくは0.001 ~0.6 μm、より好ましくは0.001 ~0.5 μm、さらに好ましくは0.01~0.3 μm、特に好ましくは0.02~0.2 μmである。なお、該粒径は走査型電子顕微鏡で観察して(好適には3000倍~100000倍)画像解析を行い、2軸平均径を測定することにより求めることができる。 【0012】さらにシリカ粒子の粒径分布としては、以下に示すものが好ましい。 (1)小粒径側からの積算粒径分布(個数基準)が50% となる粒径(D50) に対する小粒径側からの積算粒径分布(個数基準)が90% となる粒径(D90) の比(D90/D50) が1.3 ~3.0 で、且つD50 が10~600nm 。 【0013】本発明において、前記(1)で示される粒径分布を有するシリカ粒子を含有した研磨液組成物を使用することで、研磨後の基板の表面粗さが小さく、且つ突起や研磨傷等の表面欠陥を発生することなく、経済的な速度で被研磨基板の研磨をすることができるという効果が発現される。」 「【0036】本発明において、有機ホスホン酸は、研磨促進剤として使用される。かかる有機ホスホン酸を使用することで表面品質を向上させ、高速で研磨でき、さらには長期間高速で研磨できるという効果が発現される。有機ホスホン酸としては、表面品質を向上させる観点から分子量が150 以上のものが好ましく、さらに好ましくは200 以上である。有機ホスホン酸中のホスホン酸基の数は、研磨速度向上の観点から2 以上が好ましい。具体的には、1-ヒドロキシエチリデン-1,1- ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸又はそれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、アミノポリ(メチレンホスホン酸)又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩等を挙げることができる。これらの中でも、1-ヒドロキシエチリデン-1,1- ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)又はそれらの塩が好ましい。」 「【0039】尚、前記研磨液組成物中の各成分の濃度は、該組成物製造時の濃度及び使用時の濃度のいずれであってもよい。通常、濃縮液として組成物は製造され、これを使用時に希釈して用いる場合が多い。」 「【0041】本発明の研磨液組成物は、前記研磨材、酸化剤、有機ホスホン酸、水、必要であれば他の成分を公知の方法で混合することにより調製することができる。 【0042】本発明の研磨液組成物のpHは、被加工物の種類や要求性能に応じて適宜決定することが好ましい。例えば、加工機械の腐食性の観点、作業者の安全性の観点から、1.8 ~12が好ましく、さらに好ましくは3 ~10である。被研磨物の材質により一概に限定はできないが、一般的には研磨速度を向上させる観点からpHは6.5 以下、好ましくは6.0 未満、より好ましくは5.9 以下、さらに好ましくは5.5 以下、さらにより好ましくは5 以下、特に好ましくは4以下であり、あるいは研磨速度向上の観点から7.5 以上、好ましくは8.0 以上、より好ましくは9以上であることが望ましい。特にニッケル-リン(Ni-P)メッキされたアルミニウム合金基板等の金属を主対象とした精密部品基板においては、研磨速度の観点から、pHは酸性にすることが好ましく、研磨速度を向上させる観点からpHは6.5 以下、好ましくは6.0 未満、より好ましくは5.9 以下、さらに好ましくは5.5 以下、さらにより好ましくは5 以下、特に好ましくは4以下である。さらに、半導体ウェハや半導体素子等の研磨、特にシリコン基板、ポリシリコン膜、SiO2 膜等の研磨に用いる場合は、研磨速度と表面品質の向上の観点から、好ましくは7 ~12、より好ましくは8 ~12、特に好ましくは9 ~12である。また、シリカ粒子の分散性を向上させ表面品質を向上させる観点から、pHはアルカリ性にすることが好ましく、7.5 以上、好ましくは8.0 以上、より好ましくは9以上である。また、研磨後の洗浄性において砥粒残さを低減する観点から、pHは中性にすることが好ましい。従って、重視する目的に合わせてpHを設定すればよいが、特にNi-Pメッキされたアルミニウム合金基板等の金属を対象とした精密部品基板においては、前記観点を総合して、好ましくは1.8 ~5.5 である。pHは硝酸、硫酸等の無機酸、アンモニウム塩、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アミン等の塩基性物質を適宜、所望量で配合することにより調整することができる。」 「【0054】本発明の研磨液組成物は、ポリッシング工程において特に効果があるが、これ以外の研磨工程、例えば、ラッピング工程等にも同様に適用することができる。」 (4)甲第4号証 甲第4号証には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 シリカ粒子を含む砥粒と、水と、を含む磁気ディスク基板研磨用組成物であって、 前記砥粒の個数平均アスペクト比は1.3以下であり、 前記砥粒の体積基準のアスペクト比分布における累積50%アスペクト比(A50)に対する累積75%アスペクト比(A75)の比(A75/A50)は、1.05以上である、磁気ディスク基板研磨用組成物。」 「【請求項3】 仕上げ研磨工程の前工程で用いられる、請求項1または2に記載の研磨用組成物。」 「【0007】 本発明によると、シリカ粒子を含む砥粒と、水と、を含む磁気ディスク基板研磨用組成物が提供される。前記砥粒の体積基準のアスペクト比分布における累積50%アスペクト比(A50)に対する累積75%アスペクト比(A75)の比(A75/A50)は、1.05以上である。また、前記砥粒の個数平均アスペクト比は1.3以下であることが好ましい。上記の特性を満足する砥粒を含む研磨用組成物によると、磁気ディスク基板の研磨において、高い研磨レートとうねり低減とが高レベルで両立される。」 「【0024】 ここに開示される砥粒としては、個数平均アスペクト比が1.3以下のものを使用することが好ましい。個数平均アスペクト比が小さいことは、測定される個数において支配的となりがちな小径粒子の球形度が高いことを示唆する。そのような個数平均アスペクト比が低い砥粒では、表面品質向上に寄与する小径粒子が転がり性を付与しやすい。この小径粒子の転がり性により加工が安定し、うねりが好ましく低減される。上記砥粒の個数平均アスペクト比は、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.10以下(例えば1.05以下、典型的には1.02以下)である。また、上記砥粒の個数平均アスペクト比は、原理上1.00以上であり、研磨レートの観点から、1.01以上であることが好ましい。上記個数平均アスペクト比は、1.10以上であってもよい。」 「【0026】 (平均一次粒子径) ここに開示される砥粒の平均一次粒子径(D1)は特に限定されない。通常は、平均一次粒子径が150nm以下の砥粒が用いられる。上記平均一次粒子径は100nm以下(例えば80nm以下、典型的には70nm未満)であることが適当である。好ましい一態様では、砥粒の平均一次粒子径は60nm未満である。平均一次粒子径が所定値以下である砥粒は、小径粒子を所定以上の割合で含む。そのような砥粒を使用することで、高い研磨レートを得つつ、小径粒子の作用(具体的には、基板表面における加工ポイントの微細化)によって、うねりを好ましく低減することができる。砥粒の平均一次粒子径は、より好ましくは55nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。また、砥粒の平均一次粒子径は、凡そ10nm以上であることが適当であり、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは35nm以上(例えば40nm以上、さらには45nm以上)である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。」 「【0028】 (シリカ粒子) ここに開示される研磨用組成物は、砥粒としてシリカ粒子を含む。上記砥粒に含まれるシリカ粒子は、シリカを主成分とする各種のシリカ粒子であり得る。ここで、シリカを主成分とするシリカ粒子とは、該粒子の90重量%以上(通常は95重量%以上、典型的には98重量%以上)がシリカである粒子をいう。使用し得るシリカ粒子の例としては、特に限定されないが、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等が挙げられる。使用し得るシリカ粒子の例には、さらに、上記シリカ粒子(すなわち、沈降シリカ、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等)を原材料として得られたシリカ粒子が挙げられる。そのようなシリカ粒子の例には、上記原材料のシリカ粒子(以下「原料シリカ」ともいう。)に、加温、乾燥、焼成等の熱処理、オートクレーブ処理等の加圧処理、解砕や粉砕(破砕)等の機械的処理、表面改質(例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾)等から選択される1または2以上の処理を適用して得られたシリカ粒子が含まれ得る。ここに開示される技術における砥粒は、このようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。」 「【0044】 <研磨用組成物> (水) ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。」 「【0046】 (酸) ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤として酸を含む態様で好ましく実施され得る。好適に使用され得る酸の例としては、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1~10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0047】 無機酸の具体例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、スルファミン酸等が挙げられる。 【0048】 有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ニコチン酸、ピコリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。 【0049】 研磨効率の観点から好ましい酸として、リン酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、メタンスルホン酸等が例示される。なかでも硝酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸が好ましい。」 「【0054】 (酸化剤) ここに開示される研磨用組成物には、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。」 「【0068】 (pH) ここに開示される研磨用組成物のpHは特に制限されない。研磨用組成物のpHは、例えば、12.0以下(典型的には0.5~12.0)とすることができ、10.0以下(典型的には0.5~10.0)としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨用組成物のpHは、7.0以下(例えば0.5~7.0)とすることができ、5.0以下(典型的には1.0~5.0)とすることがより好ましく、4.0以下(例えば1.0~4.0)とすることがさらに好ましい。研磨用組成物のpHは、例えば3.0以下(典型的には1.0~3.0、好ましくは1.0~2.0、より好ましくは1.0~1.8)とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni-P基板等の磁気ディスク基板の研磨用(特に一次研磨用)の研磨用組成物に好ましく適用され得る。」 「【0084】 <例1~7> [研磨用組成物の調製] アスペクト比や平均粒子径の異なる複数種類のシリカ粒子(熱処理シリカ、コロイダルシリカA~D)を用意した。これらのシリカ粒子を単独でまたは組み合わせて含む砥粒と、リン酸と、31%過酸化水素水と、脱イオン水とを混合して、砥粒を45g/L、リン酸を12.5g/L、31%過酸化水素水を40g/Lの割合で含む例1~7の研磨用組成物を調製した。各例に係る研磨用組成物のpHは1.5であった。各例で使用した砥粒の種類、物性を表1に示す。」 (5)甲第5号証 甲第5号証には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 少なくとも1種類のシリカ砥粒を含み、前記シリカ砥粒の平均アスペクト比が1.15以上である、磁気ディスク基板用研磨組成物。」 「【請求項7】 前記研磨組成物が研磨促進剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の研磨組成物。 【請求項8】 ニッケルリンめっきが施されたディスク基板の一次研磨に用いられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の研磨組成物。」 「【0014】 ここに開示されるいずれかの研磨組成物の好ましい適用対象として、ニッケルリンめっきが施されたディスク基板(Ni-P基板)が挙げられる。なかでも、Ni-P基板の一次研磨用の研磨組成物として好適である。」 「【0020】 ここに開示される技術は、平均アスペクト比が1.15以上のシリカ砥粒を少なくとも1種類含む態様で好ましく実施され得る。上記シリカ砥粒の平均アスペクト比は、1.15より大きいことが好ましく、より好ましくは1.17以上、さらに好ましくは1.18以上、特に好ましくは1.20以上である。また、上記シリカ砥粒の平均アスペクト比は、該シリカ砥粒の耐久性(例えば、応力により崩れにくいこと)や研磨の安定性等の観点から、通常は、3.00以下であることが適当であり、2.50以下が好ましく、2.00以下がより好ましい。例えば、平均アスペクト比が1.15より大きく2.00未満(より好ましくは1.17以上1.50以下、さらに好ましくは1.20以上1.50未満)である少なくとも1種類のシリカ砥粒を含む研磨組成物が好ましい。」 「【0061】 <水系溶媒> ここに開示される研磨組成物は、典型的には、砥粒の他に水系溶媒を含有する。ここで水系溶媒とは、水と、水を主成分とする混合溶媒とを包含する概念である。水を主成分とする混合溶媒とは、典型的には、水の含有量が50体積%を超える混合溶媒を指す。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。上記混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール等)を用いることができる。通常は、水系溶媒の80体積%以上(より好ましくは90体積%以上、さらに好ましくは95体積%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒(例えば、99.5~100体積%が水である水系溶媒)が挙げられる。 ここに開示される研磨組成物(典型的にはスラリー状の組成物)は、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が5g/L~500g/Lである形態で好ましく実施され得る。上記NVが10g/L~350g/Lである形態がより好ましい。」 「【0063】 研磨促進剤の例としては、酸化剤、酸およびその塩が挙げられる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩等が挙げられるが、これらに限定されない。このような酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、ペルオキソ二硫酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。」 「【0065】 酸の例としては、鉱酸(硝酸、硫酸、塩酸、リン酸等)や有機酸(炭素原子数が1~10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、メタンスルホン酸、等が挙げられる。このような酸は、典型的には前述の酸化剤と合わせて用いられることにより、研磨促進剤として効果的に作用し得る。研磨効率の観点から好ましい酸として、メタンスルホン酸、硫酸、硝酸、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸等が例示される。なかでも硝酸、メタンスルホン酸が好ましい。 【0066】 キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸およびα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。」 「【0080】 <濃縮液> ここに開示される研磨組成物は、被研磨物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍~50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は、2倍~20倍(典型的には2倍~10倍)程度の濃縮倍率が適当である。」 (6)甲第6号証 甲第6号証には、次の事項が記載されている。 「1-ヒドロキシエタン―1,1-ジイルビス(ホスホン酸) ・・・(中略)・・・ 溶解度 水:69%(20℃)(Merck(14th,2006))」 (7)甲第7号証 甲第7号証には、次の事項が記載されている。 「物質名 ニトリロ-トリメチレン-リン酸 別名 アミノトリメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸 ・・・(中略)・・・ 水溶性 自由混和(25℃)」(第1頁) 第5 当審の判断 1 明確性について (1)水溶解性について ア 申立人の主張 申立人は、本件発明1の研磨用組成物は、「温度30℃において100mLの純水に対して1gが完全に溶解する水溶解性を有する」ことが特定されているが、「完全に溶解する」との記載は、本件発明1の研磨用組成物の水溶解性を規定する上で、比較の基準または程度が不明確な表現であり、特許を受けようとする発明が明確でない旨を主張する。 イ 判断 水溶解性に関し、本件明細書の段落0047には、次のように記載されている。 「なお、温度30℃における純水に対する完全溶解性の評価は、フラスコに100mLの純水を入れ、そこに試料1gを投入し、撹拌混合し、1時間以内に完全に溶解したかどうかを目視で観察し、白濁や沈殿物、相分離(有機相/水相等)の有無から判定することができる。測定は常圧で行われる。試料1gが純水100mLに完全に溶解したか否かの判断が難しい場合は、測定溶液を遠心分離し、上澄み中の試料の有無を分析すればよい。この場合、N=3とすることが望ましい。あるいは、文献等の公知情報や、SDS(Safety Data Sheet)に記載の水に対する溶解度(30℃)が1(g/100mL)以上を示すか、あるいは示唆している場合、上記の水溶解度を満足すると便宜的にみなしてもよい。 後述の実施例においても、上記の条件が採用される。」 また、実施例、比較例に関する、明細書の段落0088の表1は、次のようなものである。 「 [図:0001410255000001.jpg] 」 段落0047の記載によれば、温度30℃における純水に対する完全溶解性の評価は、フラスコに100mLの純水を入れ、そこに試料1gを投入し、撹拌混合し、1時間以内に完全に溶解したかどうかを目視で観察し、白濁や沈殿物、相分離(有機相/水相等)の有無から判定することができるものであり、この限りにおいては不明確なところはない。また、表1において、実施例1乃至13の添加剤(メチルアシッドホスフェートなど)は、水溶解性を有する添加剤であり、比較例3、4の添加剤(リン酸エステル1など)は、水溶解性を有しない添加剤であることが理解でき、添加剤の具体的な種類が特定できる。なお、段落0047の「試料1gが純水100mLに完全に溶解したか否かの判断が難しい場合は、測定溶液を遠心分離し、上澄み中の試料の有無を分析すればよい。この場合、N=3とすることが望ましい。」との記載の意味は必ずしも明確ではないが、この記載の意味が明確でないからといって、上述のように理解できる完全溶解性の評価の仕方や、実施例や比較例で特定できる添加剤の具体的な種類までもが不明となるわけではなく、特許を受けようとする発明が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。 したがって、本件特許請求の範囲の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~8の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 (2)平均アスペクト比について ア 申立人の主張 申立人は、本件発明2の研磨用組成物は、「前記砥粒の平均アスペクト比は1.1以上である」ことが特定されているが、「平均アスペクト比」の下限値のみが特定され上限値は特定されていないため、平均アスペクト比が最大でどの程度までが許容されるかについて、明確な基準が示されておらず、発明の範囲が不明確であり、特許を受けようとする発明が明確でない旨を主張する。 イ 判断 本件発明2は、本件発明1を引用する発明であるところ、本件発明1は、研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤として請求項1に規定された特定のシリカ残低減剤を用いることにより、「シリカ砥粒を使用する一次研磨用組成物」において、「加工性とシリカ残留低減とは、一方を改善しようとすれば他方が悪化してしまう相反関係にあり、その両立は容易ではない」との課題を解決する発明であって、請求項1に記載された発明特定事項により特定される明確な発明である。本件発明2は、明確な発明である本件発明1に、さらに、砥粒の平均アスペクト比は1.1以上である、との限定を加えたものであって、限定した技術事項自体は明確なものであり、限定したことにより発明が不明確となるものではない。 確かに、請求人が主張するとおり、本件発明2の研磨用組成物は、「前記砥粒の平均アスペクト比は1.1以上である」ことが特定されているが、「平均アスペクト比」の下限値のみが特定され上限値は特定されていないため、平均アスペクト比が最大でどの程度までが許容されるかについて、明確な基準は示されていない。 しかしながら、上述したように、本件発明は、特定のシリカ残低減剤を用いることにより上記課題を解決する発明であって、砥粒の平均アスペクト比は上記課題の解決との関連がなく、平均アスペクト比の上限値が特定されていないからといって、発明が明確でないとはいえない(請求項1は、下限値も特定されていない。)。 したがって、本件特許請求の範囲の請求項2及び請求項2を引用する請求項3~8の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 (3)累積99%粒子径(D99)について ア 申立人の主張 申立人は、本件発明3の研磨用組成物は、砥粒の「累積99%粒子径(D99)が150nm以上である」ことが特定されているが、「累積99%粒子径(D99)」の下限値のみが特定され上限値は特定されていないため、累積99%粒子径(D99)が最大でどの程度までが許容されるかについて、明確な基準が示されておらず、発明の範囲が不明確であり、特許を受けようとする発明が明確でない旨を主張する。 イ 判断 本件発明3は、本件発明1を引用する発明であるところ、本件発明1は、研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤として請求項1に規定された特定のシリカ残低減剤を用いることにより、「シリカ砥粒を使用する一次研磨用組成物」において、「加工性とシリカ残留低減とは、一方を改善しようとすれば他方が悪化してしまう相反関係にあり、その両立は容易ではない」との課題を解決する発明であって、請求項1に記載された発明特定事項により特定される明確な発明である。本件発明3は、明確な発明である本件発明1に、さらに、砥粒の累積99%粒子径(D99)が150nm以上である、との限定を加えたものであって、限定した技術事項自体は明確なものであり、限定したことにより発明が不明確となるものではない。 確かに、請求人が主張するとおり、本件発明3の研磨用組成物は、砥粒の「累積99%粒子径(D99)が150nm以上である」ことが特定されているが、「累積99%粒子径(D99)」の下限値のみが特定され上限値は特定されていないため、累積99%粒子径(D99)が最大でどの程度までが許容されるかについて、明確な基準は示されていない。 しかしながら、上述したように、本件発明は、特定のシリカ残低減剤を用いることにより上記課題を解決する発明であって、砥粒の累積99%粒子径(D99)は上記課題の解決との関連がなく、累積99%粒子径(D99)の上限値が特定されていないからといって、発明が明確でないとはいえない(請求項1は、下限値も特定されていない。)。 したがって、本件特許請求の範囲の請求項3及び請求項3を引用する請求項4~8の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 2 新規性・進歩性について (1)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明との対比 (ア)研磨用組成物 引用発明の「磁気ディスク基板用研磨液組成物」は、「粗研磨に用いる研磨液組成物I」であるから、本件発明1の「磁気ディスク基板の一次研磨用組成物」に相当する。 よって、本件発明1と引用発明は、「磁気ディスク基板の一次研磨用組成物」である点で一致する。 (イ)組成 引用発明の「研磨液組成物I」は、「(i)非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有」し、「非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B」は、砥粒として含まれているものである。 よって、本件発明1と引用発明は、「砥粒としてのシリカ粒子、酸、酸化剤および水」を含む点で一致する。 (ウ)シリカ残低減剤 本件発明1は、「研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤をさらに含み、前記シリカ残低減剤は、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であって、温度30℃において100mLの純水に対して1gが完全に溶解する水溶解性を有する」のに対し、引用発明は、そのようなものではない点で両者は相違する。 (エ)一致点、相違点 以上、(ア)~(ウ)をまとめると、本件発明1と引用発明には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 磁気ディスク基板の一次研磨用組成物であって、 砥粒としてのシリカ粒子、酸、酸化剤および水を含む、 研磨用組成物。 [相違点] 本件発明1は、「研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤をさらに含み、前記シリカ残低減剤は、リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であって、温度30℃において100mLの純水に対して1gが完全に溶解する水溶解性を有する」のに対し、引用発明は、そのようなものではない点。 イ 相違点についての検討 引用発明が含有する酸は、「リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種であり、有機ホスホン酸は、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる」ものである。 引用発明が含有する上記酸には、本件発明1が含むシリカ残低減剤の「有機ホスホン酸化合物」に相当する「有機ホスホン酸」も挙げられており、特に、引用発明の「アミノトリ(メチレンホスホン酸)」は、本件発明1の実施例12、13の「ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)」である。 しかしながら、引用発明が含有する酸は、本件発明1が含む酸と同じ研磨促進剤であって、研磨促進剤である酸として複数の例が挙げられ、「有機ホスホン酸」は、その一例に過ぎないものであり、その一例の酸がシリカ残低減剤としての作用を有することは、引用文献1には、全く記載乃至示唆はされていない。引用発明は、「粗研磨後及び仕上げ研磨後の突起欠陥を大幅に低減できる」ものである(段落【0020】の下線部の記載によれば、「突起欠陥」は、主に、粗研磨工程後及び仕上げ研磨工程後の残留砥粒、砥粒付着、及び砥粒突き刺さりに由来すると考えられる基板表面の欠陥のことをいう。)が、研磨後の突起欠陥(特に、残留砥粒)を大幅に低減できるのは、砥粒として「アルミナ粒子を使用しない」ためであり、「有機ホスホン酸」の含有とは関係がない。 したがって、引用発明の「有機ホスホン酸」が、本件発明1の「リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であって、温度30℃において100mLの純水に対して1gが完全に溶解する水溶解性を有する」、「研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤」に相当するものであるとはいえない。 また、甲第2号証~甲第7号証に記載された技術を勘案しても、引用発明において、「リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であって、温度30℃において100mLの純水に対して1gが完全に溶解する水溶解性を有する」、「研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤」をさらに含むようにすることは当業者が容易に想到し得たということもできない。 本件発明1は、上記相違点に係る構成を採用することにより、一次研磨における加工性を損なうことなくシリカ残留を低減することができるという格別の効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (2)本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであって、引用する請求項1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加するものである。 したがって、上記「(1)本件発明1について」と同じ判断により、請求項2~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 第6 申立人の主張について 1 シリカ残低減剤について 申立人は、以下のように主張している。 「甲1発明には、研磨液組成物Iを使用することにより、「粗研磨後の突起欠陥を大幅に低減できる。(段落0014)」という作用効果が開示されている。 甲1発明において「突起欠陥」とは、段落0020に開示されるように、「粗研磨行程後及び仕上げ研磨行程後の残留砥粒、砥粒付着、及び砥粒突き刺さりに由来すると考えられる基板表面の欠陥のことをいう。」と定義されている。 また、段落0043には、「突起欠陥低減の観点から、球状シリカ粒子Bは、コロイダルシリカが好ましい。」と開示されている。 すなわち、甲1発明には、研磨行程後或いは仕上げ研磨行程後における基板表面の「残留砥粒」及び「砥粒付着」は、本件特許発明1における“シリカ残”に相当することは明らかである。 更に、甲1発明の研磨液組成物Iには、「研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、リン酸類、ホスホン酸類、有機ホスホン酸類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する。」ことが開示されている。(段落0056)。 すなわち、甲1発明における研磨液組成物Iは、本件特許発明1におけるシリカ残低減剤と同一の機能を有すると認められる「リン酸類、ホスホン酸類、有機ホスホン酸類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸(以下、「リン酸類等」と称す。)」を含有している(事項C及び事項Dに相当)。」(特許異議申立書第57頁下から4行目-第58頁下から9行目) しかしながら、甲第1号証における「残留砥粒」及び「砥粒付着」が、本件発明1の「シリカ残」に相当するものであるとしても、残留砥粒などを大幅に低減できるのは、砥粒として「アルミナ粒子を使用しない」ためであり、研磨促進剤である酸の例として挙げられたものに過ぎない、有機ホスホン酸を含むリン酸類等の含有とは関係がないのは上述したとおりである。 したがって、甲第1号証における研磨液組成物Iが、本件発明1におけるシリカ残低減剤(事項C及び事項D)を含有しているとはいえない。 2 水溶解性について 申立人は、以下のように主張している。 「甲1発明において、シリカ残低減剤として機能するリン酸類等の酸が、本件特許発明1の事項Eによって規定される「水溶解性」の要件を満たす蓋然性は極めて高い。」(特許異議申立書第59頁下から6行目-下から4行目) 「シリカ残低減剤として使用可能なリン酸類等、特に、有機ホスホン酸化合物の一種であるHEDPは、本件特許発明1における事項Eの水溶解性の要件を満たす蓋然性が高い。」(特許異議申立書第60頁下から5行目-下から3行目) しかしながら、仮に、甲1発明のリン酸類等の酸や、有機ホスホン酸化合物の一種であるHEDPが、本件特許発明1における事項Eの水溶解性の要件を満たすものであることがいえたとしても、上述したように、これらは本件発明1におけるシリカ残低減剤といえるものではないから、結局、甲第1号証には、本件発明1の「リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であって、温度30℃において100mLの純水に対して1gが完全に溶解する水溶解性を有する」、「研磨後の基板上のシリカ残を低減するシリカ残低減剤」を含むこと(事項C、事項D及び事項E)が記載されているとはいえず、結論は変わらない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700060

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