特許異議申立
2021-701183
タイヤ
- 審判番号
- 2021-701183
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-048849
- 登録番号
- 6891556
- 請求日
- 2021年12月14日
- 審決日
- 2022年09月12日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友ゴム工業株式会社
- 【権利者代理人】住友 慎太郎
- 【権利者代理人】浦 重剛
- 【権利者代理人】苗村 潤
- 【権利者代理人】石原 幸信
- 【権利者代理人】市田 哲
- 【異議申立人】清水 真美子
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(B60C) / P1651.121-YAA(B60C) / P1651.537-YAA(B60C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6891556号発明「タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6891556号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第6891556号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6891556号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成29年3月14日を出願日とする出願であって、令和3年5月31日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和3年12月14日に特許異議申立人 清水 真美子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされ、令和4年3月25日付で取消理由が通知され、同年5月26日に特許権者 住友ゴム工業株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年6月13日付で特許異議申立人に対して特許法第120条の5第5項の規定による訂正請求があった旨の通知を行ったところ、特許異議申立人より何ら応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっているタイヤ。」と記載されているのを、「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっており、前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きいタイヤ。」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~10も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、前記突出部の突出長さは、前記ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さの20%±5%であるタイヤ。」と記載されているのを、「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、前記突出部の突出長さは、前記ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さの20%±5%であり、前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記ブロック本体の前記最小長さは、前記縦ブロック縁の最も前記卜レッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さであり、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きいタイヤ。」に訂正する。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~10も同様に訂正する。
(3) 一群の請求項について
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1に係る請求項1の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1のタイヤにおけるブロックが「トレッド端で区分されるショルダーブロック」であり、「前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁」とを含むものであって、「前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、これらの訂正は、本件特許の明細書の段落【0032】、【0049】、【0051】、【0053】及び図1、4、5の記載からみて、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~10も同様である。
(2) 訂正事項2に係る請求項2の訂正について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項2のタイヤにおけるブロックが「トレッド端で区分されるショルダーブロック」であり、「前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁」とを含むものであって、「前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、これらの訂正は、本件特許の明細書の段落【0032】、【0049】、【0051】、【0053】及び図1、4、5の記載からみて、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~10も同様である。
(3) 一群の請求項について
請求項1及び3ないし10からなる一群の請求項と、請求項2及び3ないし10からなる一群の請求項は、請求項3ないし10で共通するものであるから、請求項1ないし10は一つの一群の請求項である。
(4) 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1~10について特許異議の申立てがされているため、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和4年5月26日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、
前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっており、
前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、
前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、
前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、
前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、
前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、
前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きいタイヤ。
【請求項2】
トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、
前記突出部の突出長さは、前記ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さの20%±5%であり、
前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、
前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、
前記ブロック本体の前記最小長さは、前記縦ブロック縁の最も前記卜レッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さであり、
前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、
前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、
前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きいタイヤ。
【請求項3】
前記突出部は、前記ブロック本体のタイヤ周方向の一方側に形成されている請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記突出部は、前記ブロック本体のタイヤ周方向の一方側のコーナ部を含んで形成されている請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっており、
前記トレッド部の平面視において、前記突出部は、前記突出先端に向かって前記長さが漸減する台形状である請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1部分の前記主溝の長手方向に沿った最大長さBは、前記ブロック本体の前記主溝の長手方向に沿った最大長さAの50%±5%である請求項5記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1部分の前記主溝の長手方向に沿った最大長さBと、前記第1部分の前記主溝の長手方向に沿った最小長さCとの和(B+C)は、前記ブロック本体の前記主溝の長手方向に沿った最大長さAの100%±5%である請求項5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2部分の前記主溝の長手方向に沿った最小長さDは、前記第1部分の前記主溝の長手方向に沿った最大長さBの30%±5%である請求項5乃至7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記主溝の溝底を基準として、前記第2部分のタイヤ半径方向の高さは、前記第1部分のタイヤ半径方向の高さの50%±5%である請求項1乃至8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ブロックは、ショルダーブロックである請求項1乃至9のいずれかに記載のタイヤ。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年12月14日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第1号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5及び10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5、8及び10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5、8及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由2-1(甲第2号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし5及び8ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし5及び8ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由3-1(甲第3号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由3-2(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由4-1(甲第4号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし5及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし5及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 申立理由4-2(甲第4号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1、3ないし5及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし5及び8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 証拠方法
甲第1号証:特開2003-154812号公報
甲第2号証:米国意匠特許発明第684525号明細書
甲第3号証:特表2002-528333号公報
甲第4号証:国際公開第2012/043036号
以下、順に「甲1」のようにいう。
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載に概ねしたがった。
第5 令和4年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要
請求項1ないし10に係る特許に対して、当審が令和4年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。(なお、特許異議申立理由のうち、申立理由1-1のうち請求項1、3ないし5及び10の部分、申立理由1-2ないし2-2、申立理由3-1のうち請求項1及び3ないし7の部分、申立理由3-2のうち請求項1ないし7の部分、申立理由4-1および4-2は、取消理由に包含される。)
1 取消理由1(明確性要件)
本件特許の請求項2ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、取消理由2の具体的理由は概略次のとおりである。
本件特許の請求項2には「前記突出部の突出長さは、前記ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さの20%±5%である」と記載されており、この記載における「ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さ」は、任意のタイヤ周方向位置におけるブロック本体のタイヤ軸方向の長さのうち、最小のものを意味するものと解される。
しかし、上記請求項2の上記「ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さ」との記載に関し、明細書の段落【0045】には「突出部7の突出長さEは、ブロック本体6のタイヤ軸方向の最小長さFの20%±5%であるのが望ましい。」と記載されている。つまり、上記「ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さ」は、符号Fとして示される長さであるところ、【図4】に符号Fとして示される長さは、タイヤ周方向位置が異なる2点間のタイヤ軸方向長さであって、任意のタイヤ周方向位置におけるブロック本体のタイヤ軸方向の長さを指すものではない。
そうすると、「ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さ」との記載に関し、請求項2の記載と明細書及び図面の記載とはその意味するところが異なるものであり、齟齬をきたすものといえる。よって、請求項2に記載の「ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さ」とはどのように定義される長さであるのかが明確であるとはいえない。
したがって、請求項2、及び、請求項2を直接または間接的に引用する請求項3~10に係る発明は不明確である。
2 取消理由2(甲第1号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし5及び8ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし5及び8ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 取消理由3(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5及び8ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5及び8ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 取消理由4(甲第2号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし5及び8ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし5及び8ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 取消理由5(甲第3号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし7及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし7及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 取消理由6(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 取消理由7(甲第4号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1、3ないし5、8及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし5、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 取消理由8(甲第4号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5、8及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
1 取消理由についての当審の判断
(1) 取消理由1(明確性要件)について
訂正により、「ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さ」が定義された。
よって、取消理由1は解消した。
(2) 取消理由2及び3(甲1を根拠とする新規性・進歩性)について
ア 主な証拠の記載事項等
(ア) 甲1に記載された事項
甲1には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。
「【請求項1】 タイヤトレッド表面にタイヤ周方向に連なる主溝とタイヤ幅方向に延びる横溝とにより形成されるブロックを有する空気入りタイヤにおいて、少なくとも1つの主溝に、ブロック肩部より始端し主溝壁部及び主溝底部を沿い、主溝中心線を越え対向するブロック側で終端し、かつ、タイヤ幅方向断面が始端と終端とを結ぶ直線を越えない形状である補強部が配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。」
「【0011】図1に示すように、主溝1と横溝2とによって、トレッド面には、ブロック3、3’などが形成されている。主溝1には、周方向に間隔をおいて、ブロック3から始まる補強部4とブロック3’から始まる補強部4’が交互に配置されている。なお、ブロックにはサイプが刻まれることが多いが、図では省略している。
【0012】図2(a)は、図1のA-A’断面図で、補強部4の断面を示している。図において、補強部4は、ブロック3の角部Bから始端し、壁部及び溝底部を沿って、中心線GCを越え対向するブロック3’側にあるCで終端している。また、図2(b)に示すように、補強部4は、ブロック3の角部Bよりdだけ溝底方向にあるCから始端してもよい。なお、dは主溝深さの60%以下であることが好ましい。dを大きく採ると剛性を高める効果が得られないからである。dが30~60%では、排水低下が低いために凹部がなくてもよい。
【0013】このように配置された補強部4により、主溝1のタイヤ幅方向の剛性を高める。その結果、ワイピングの発生を抑えることができ、接地面積の低下を防止でき、アイス路面での性能が向上できる。」
「【0015】また、補強部の始端部及び/又は終端部は厚さをもっていてもよい。すなわち、図3に示すように、補強部4の始端部4sが厚さts、終端部4eが厚さteを持つような構造も採用できる。この場合、補強部4の断面形状は、始端部の角B’と終端部の角C’とを結ぶ点線B’C’を越えず、凹状とする。なお、tsやteを厚く採ると、溝容積が低下し排水性を損なうおそれがあるので、2mm以下であることが好ましい。」
「【0017】補強部の形状は、図4(a)に示すようにブロック3から一定のタイヤ周方向幅で溝底に延びる補強部4のような形状の他、該幅が減少する形状であってもよい。減少の度合いは、段階的であっても漸減的でもよい。例えば、図4(b)及び(c)に示す補強部4のような形状も採用できる。」
「【0020】
【実施例】実施例として本発明に係る空気入りタイヤを試作し、従来例1及び2及び比較例と共に性能を評価した。いずれタイヤも、タイヤサイズは185/70R14で、主溝の幅は7mm、主溝の深さは9.5mmである。従来例1は補強部を主溝に有しないタイヤである。従来例2は補強部を有するが、該補強部は凹部を有さないタイヤである。比較例は凹部を有するが主溝中心線を越えずに終端した補強部を有するタイヤである。なお、いずれのタイヤのパターン展開図も図6(a)に示すとおりである。ただし、5はサイプで、補強部は省略している。
【0021】実施例、比較例、従来例2のいずれにおいても、補強部は、図6(b)に示すように2つのブロックを挟む主溝に2つ配置されている。補強部の周方向長さL1は5.5mmであり、ブロックの周方向長さLは25.0mmである。また、実施例、従来例2において、補強部は主溝中心線を越え1.5mmで終端し、比較例では、補強部は主溝中心線を越えず手前1.0mmで終端している。」
「【図1】
[図:0001392036000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001392036000002.jpg]
【図4】
[図:0001392036000003.jpg]
【図5】
[図:0001392036000004.jpg]
【図6】
[図:0001392036000005.jpg]
」
(イ) 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、請求項1、【0015】、【0017】、【図3】並びに【図4】(b)及び(c)の記載を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」のようにいう。)が記載されているといえる。
「タイヤトレッド表面にタイヤ周方向に連なる主溝とタイヤ幅方向に延びる横溝とにより形成されるブロックを有する空気入りタイヤにおいて、
少なくとも1つの主溝に、ブロック肩部より始端し主溝壁部及び主溝底部を沿い、主溝中心線を越え対向するブロック側で終端し、かつ、タイヤ幅方向断面が始端と終端とを結ぶ直線を越えない形状である補強部が配置されており、
上記補強部は、始端部4sが厚さts、終端部4eが厚さteを持ち、
補強部の形状は、ブロックからタイヤ周方向幅が減少する形状で溝底に延びる空気入りタイヤ。」
イ 判断
(ア) 本件特許発明1について
甲1発明の「補強部」は、ブロックから主溝側に突出しているから、本件特許発明の「突出部」に相当する。
また、甲1の【図3】の記載から見て、甲1発明の「補強部の始端部4s」は、ブロック3と連続する踏面を有することが看取できるため、本件特許発明1に係る「ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分」に相当する。
さらに、甲1発明の上記補強部において、始端部4sの角B’から終端部4eの角C’までの領域に含まれる任意の部分は、始端部4sよりも主溝側に位置しかつ踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置するため、本件特許発明1の「前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分」に相当する。
そして、甲1発明の「補強部」は、ブロックからタイヤ周方向幅が減少する形状で溝底に延びる形状を有するから、本件特許発明1の「前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっている」との発明特定事項を充足する。
してみると、両者は、
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、
前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっているタイヤ」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-1
タイヤのブロックに関し、本件特許発明1は「前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
上記相違点1-1について検討する。
甲1発明のブロックとして示される図1あるいは図6のブロック(符号3)は、いずれも同じ形状であるから、「ブロック本体の最小長さ」が異なる2つのブロックは存在しない。
してみれば、相違点1-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1発明ではない。
また、甲1発明及び他の証拠をみても、「ブロック本体の最小長さ」が異なるブロックで構成しようとする動機付けもないから、本件特許発明1は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2について
上記(ア)にならって、本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含むタイヤ」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-2
突出部の突出長さに関して、本件特許発明2には「前記突出部の突出長さは、前記ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さの20%±5%である」と特定されているのに対し、甲1発明にそのように特定されていない点。
・相違点1-3
タイヤのブロックに関し、本件特許発明2は「前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、先ず相違点1-3について検討する。
相違点1-3は、上記(ア)における相違点1-1と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明ではないし、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明3ないし5及び8ないし10について
本件特許発明3ないし5及び8ないし10はいずれも、請求項1あるいは2を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)及び(イ)で検討のとおり、本件特許発明1及び2はいずれも甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1あるいは2の全ての特定事項を含む本件特許発明3ないし5及び8ないし10についても同様に、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 取消理由2及び3についてのまとめ
上記イの検討のとおりであるから、取消理由2及び3はその理由がない。
(3) 取消理由4(甲2を根拠とする新規性)について
ア 主な証拠の記載事項等
(ア) 甲2の記載事項
甲2には、「TIRE」に関して、次の事項が記載されている。なお、Fig.5ないし7の○囲い並びにFig.5の○囲い内の濃淡の灰色着色は当審で付したものである。他の証拠についても同様。
「
[図:0001392036000006.jpg]
[図:0001392036000007.jpg]
」
「
[図:0001392036000008.jpg]
」
(イ) 甲2に記載された発明
甲2のFig.1、2の記載から見て、甲2に記載のタイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、上記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、上記トレッド部の平面視において、上記ブロックの少なくとも一つは、上記横溝間のブロック本体と、上記ブロック本体から上記主溝側に突出した突出部とを含むことが看取できる。
また、甲2のFig.5とFig.6または7との記載から見て、上記突出部は、上記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分(○囲い中の薄い灰色で強調した部分)と、上記第1部分よりも上記主溝側に位置しかつ上記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分(○囲い中の濃い灰色で強調した部分)とを含むことが看取できる。
さらに、甲2のFig.5の記載から見て、トレッド部の平面視において、上記突出部は、突出部の上記主溝の長手方向に沿った長さが突出先端に向かって漸減する台形状であることが看取できる。
以上のことをふまえて、上記(ア)の記載から看取される事項を整理すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」のようにいう。)が記載されているといえる。
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、上記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
上記トレッド部の平面視において、上記ブロックの少なくとも一つは、上記横溝間のブロック本体と、上記ブロック本体から上記主溝側に突出した突出部とを含み、
上記突出部は、上記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、上記第1部分よりも上記主溝側に位置しかつ上記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、
上記トレッド部の平面視において、上記突出部は、突出部の上記主溝の長手方向に沿った長さが突出先端に向かって漸減する台形状である
タイヤ。」
イ 判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の突出部は、「突出部の上記主溝の長手方向に沿った長さが突出先端に向かって漸減する台形状」であるから、本件特許発明1の「前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっており」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、
前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっているタイヤ」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点2-1
タイヤのブロックに関し、本件特許発明1は「前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」と特定するのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。
上記相違点2-1について検討する。
甲2発明のFig.5で示されている突出部を有するブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックではないし、ましてや、「ブロック本体の最小長さ」が異なるものとすることの記載も示唆もない。
してみれば、相違点2-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2発明ではない。
(イ) 本件特許発明3ないし5及び8ないし10について
本件特許発明3ないし5及び8ないし10はいずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)で検討のとおり、本件特許発明1は甲2発明ではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明3ないし5及び8ないし10についても同様に、甲2発明ではない。
ウ 取消理由4についてのまとめ
上記イの検討のとおりであるから、取消理由4はその理由がない。
(4) 取消理由5及び6(甲3を根拠とする新規性・進歩性)について
ア 主な証拠の記載事項等
(ア) 甲3の記載事項
甲3には、「自動車用、特に貨物自動車等用タイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【請求項1】 中央クラウン部分とタイヤをホイールリムに固定するための2つのビードにおいて終端する軸方向に対向する2つのサイドウォールとを含むカーカス構造体と;前記カーカス構造体と同軸状に固定されているベルト構造体と;前記ベルト構造体の周りに同軸状に延びており、2つの側方溝と2つの中央溝とから成る4つの連続周方向溝と複数の横断溝とを含むレリーフパターンに成形されているトレッドであって、前記周方向溝と横断溝により軸方向外側の2つのショルダー列と軸方向内側の2つの中間列とタイヤの赤道面に基本的に跨る1つの中央列とから成る少なくとも周方向5つのブロック列を画成しており、各ブロックが周方向に延びる2つの縦辺と走行方向に関して前方に1つと後方に1つの2つの横辺とによって画成される多辺形であるトレッドとを含んで成る自動車タイヤであって、前記トレッドパターンにおいて、(a)各列の各ブロックの縦辺がタイヤの赤道面に対して同じ方向に所定角度α傾斜しており、(b)各列のブロックは隣り合う列のブロックに関して周方向にずれて位置しており、(c)中央列ブロックの対向する縦辺間の軸方向距離に対する各中央周方向溝の幅の比率が20%以上であり、(d)中央周方向溝の幅に対する各側方周方向溝の幅の比率が45%?60%であり、(e)各ブロックの各横辺が第1および第2の直線側方セグメントと、それらの間にある第3の中間連結セグメントとによって形成されており、前記第1および第2セグメントが赤道面に対して傾斜しており、後方辺の輪郭は前方辺を180度回転させた輪郭と同じであることから成る中央列ブロックの補剛手段が設けられており、(f)ショルダー列のブロックと中間列のブロック間に周方向連結を行う弾性手段が設けられていることを特徴とする自動車用タイヤ。」
「【請求項26】 石排除手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。」
「【請求項30】 前記石排除手段が中央の周方向溝にそって配置されていることを特徴とする、請求項26に記載のタイヤ。
【請求項31】 前記石排除手段が、溝の長手方向の片側にのみ狭窄部を設けてなるか、あるいは中間列ブロックの一方の縦辺に沿って狭窄部を設け、次に中央列ブロックの側に狭窄部を設けてなることを特徴とする、請求項30に記載のタイヤ。」
「【0048】
トレッドは(図2)、その2つが中央溝5、2つが側方溝6である4つの連続周方向溝(continuous circumferential grooves)と、複数の横断溝(transverse grooves)とを含み、これらの溝によって周方向に5列のブロック列、すなわち軸方向外側の側方ショルダー列2列と、軸方向内側の中間列2列と、中央列1列のブロックが画成されている。」
「【0050】
中間列およびショルダー列のブロックは、それぞれ横断溝10、11によって画成されており、中央列のブロックは横断溝12によって画成されている。」
「【0079】
この構成は、中央列の各ブロック9が隣接列のブロックに対向する部分において、赤道面に対して角度α傾斜している2つの平行直線セグメント17,18と、赤道面に対してαと反対方向に、異なる大きさの角度だけ傾斜している中間連結セグメント19とで形成されていることによって達成される。」
「【0114】
本発明のその他の有利な実施態様によると、トレッド3は溝を画成する隣接ブロックの間に石排除手段(stone expulsion means)を備えても良い。
【0115】
特に、この石排除手段は溝の壁と壁の間に25度より大きい角度を含み、底部付近に断面の狭窄する部分を有して成る。
【0116】
この断面狭窄部(narrowing of the section)を形成するのは、溝を画成する2つのブロックの一方のみとするのが好ましい。
【0117】
石排除手段は全ての溝に形成しても良いが、好ましい実施態様では、主に中央の周方向溝5に沿って設けると良く、また別の実施態様ではさらに横断溝12沿いにも設けることができる。
【0118】
周方向溝5に沿って形成される石排除手段については、溝の開口部(aperture)が24度以上、一例では27度の角度δを有すると共に、トレッドの全厚みの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の深さを有して成る(図5、図6)。
【0119】
また、この同じ実施態様によると、石排除手段の断面狭窄部25が(図2)、中間列ブロック7の片側の一部、次に中央列ブロック9の2つの側方セグメントの一方と、交互に設けられている。」
「【図2】
[図:0001392036000009.jpg]
【図3】
[図:0001392036000010.jpg]
」
「【図5】
[図:0001392036000011.jpg]
」
(イ) 甲3に記載された発明
上記(ア)の記載事項を整理すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」のようにいう。)が記載されているといえる。
「トレッドに、2つの中央溝5と、複数の横断溝12とを含み、これらの溝によって中央列のブロック9が画成され、
石排除手段の断面狭窄部25が中央列ブロック9の2つの側方セグメントに設けられた
タイヤ。」
イ 判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「中央溝5」、「横断溝12」は、それぞれ本件特許発明1の「主溝」、「横溝」に相当する。
甲3の【図3】に記載から見て、ブロック9は平行直線セグメント17の延長線よりも中央溝5側に突出した部分を含んでいること、当該突出した部分は断面狭窄部25に隣接すること、当該突出した部分と断面狭窄部25とで構成された領域の平面視形状は、上記主溝の長手方向に沿った長さが中央溝5側に向かって漸減する台形状であることが看取できる。なお、下記図は、ブロック9の突出した部分及び断面狭窄部の形状を理解しやすくする目的で、当審が甲3の図3からブロック9を抽出し、平行直線セグメント17の延長線を追加し、この延長線よりも中央溝5側に突出した部分及び断面狭窄部25に着色したものである。
そうすると、甲3発明の突出した部分及び断面狭窄部25は、ブロック9から中央溝5側に突出しているから、本件特許発明の「突出部」に相当し、また、甲3発明の突出した部分のうちブロック9の踏面に連続した部分は、本件特許発明1の「第1部分」に相当し、さらに、甲3発明のブロック9の突出した部分のうち踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する領域(ブロック9の側壁)と断面狭窄部25からなる部分は、本件特許発明1の「第2部分」に相当する。また、甲3の【図3】の記載から見て、甲3発明の突出した部分及び断面狭窄部25の平面視形状は、上記主溝の長手方向に沿った長さが中央溝5側に向かって漸減する台形状であることが看取できるから、甲3発明は、本件特許発明1の「前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっている」との発明特定事項を充足する。
してみると、両者は、
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、
前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっているタイヤ」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点3-1
タイヤのブロックに関し、本件特許発明1は「前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」と特定するのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。
上記相違点3-1について検討する。
甲3発明の突出した部分及び断面狭窄部25を有するブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックではないし、ましてや、「ブロック本体の最小長さ」が異なるものとすることの記載も示唆もない。
してみれば、相違点3-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲3発明ではない。
そして、甲第3号証及び他の証拠をみても、突出した部分及び断面狭窄部25をショルダーブロックに設けること、さらには、「ブロック本体の最小長さ」が異なるブロックで構成しようとする動機付けもないから、本件特許発明1は甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2について
上記(ア)にならって、本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、両者は、
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含むタイヤ」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点3-2
突出部の突出長さに関して、本件特許発明2には「前記突出部の突出長さは、前記ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さの20%±5%である」と特定されているのに対し、甲3発明にそのように特定されていない点。
・相違点3-3
タイヤのブロックに関し、本件特許発明2は「前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」と特定するのに対し、甲3発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、先ず相違点3-3について検討する。
相違点3-3は、上記(ア)における相違点3-1と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲3発明ではないし、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明3ないし7及び9について
本件特許発明3ないし7及び9はいずれも、請求項1あるいは2を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)及び(イ)で検討のとおり、本件特許発明1及び2はいずれも甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1あるいは2の全ての特定事項を含む本件特許発明3ないし7及び9についても同様に、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 取消理由5及び6についてのまとめ
上記イの検討のとおりであるから、取消理由5及び6はその理由がない。
(5) 取消理由7及び8(甲4を根拠とする新規性・進歩性)について
ア 主な証拠の記載事項等
(ア) 甲4の記載事項
甲4には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「[0027]・・・
(センター陸部域)
図1、及び図2に示すように、センター陸部域16には、図面左側の周方向溝14と図面右側の周方向溝14とを連結するように、タイヤ周方向に対して傾斜する方向へ振幅を有しながら延びる波型溝20がタイヤ周方向に複数形成されている。本実施形態の波型溝20は、全体的に右上がりに傾斜して延びているが、全体的に左上がりに傾斜して延びていても良い。
[0028]本実施形態の波型溝20は、略円弧状とされた4つの曲線部分を、互い違いに接続することで構成されており、図面左側から、曲率中心を波型溝20の図面左側に有する第1円弧溝部20A、曲率中心を波型溝20の図面右側に有する第2円弧溝部20B、曲率中心を波型溝20の図面左側に有する第3円弧溝部20C、曲率中心を波型溝20の図面右側に有する第4円弧溝部20Dが図面右側から左側へ順に連続している。」
「[0034]センター陸部域16の斜め方向延在陸部分22には、一方の波型溝20の第1円弧溝部20Aと隣接する他方の波型溝20の第2円弧溝部20Bとを連結するように連結溝24が形成されており、また、一方の波型溝20の第3円弧溝部20Cと隣接する他方の波型溝20の第4円弧溝部20Dとを連結するように連結溝24が形成されている。なお、連結溝24は、略タイヤ周方向に沿って延びている。
[0035]このように、波型溝20と連結溝24とがセンター陸部域16の斜め方向延在陸部分22に形成されることで、トレッド12のタイヤ赤道面CL上には、2つの波型溝20と、2つの連結溝24とで区画されたセンター小陸部分26がタイヤ赤道面CLに沿って複数並び、センター小陸部分26のタイヤ幅方向両側には、2つの波型溝20、1つの連結溝24、及び周方向溝14とで区画された側方小陸部分28がタイヤ周方向に複数並んでいる。」
「[0044]・・・
(段付き傾斜部)
センター小陸部分26の連結溝24に面する先細りのタイヤ周方向端部には、図5A,図5Bに示すように、凹状の曲面36Aを踏面から溝底に向けて複数(本実施形態では2個)連ねた段付き傾斜部36が形成されている。なお、図5Bは、センター小陸部分26のタイヤ周方向端部を、陸部踏面に対して直交すると共に、連結溝24の延び方向に対して直交する方向に断面とした図である。」
「[0056]図6に示すように、本実施形態の側方小陸部分28には、連結溝24側の先細りとなっている端部に、センター小陸部分26と同様の段付き傾斜部36が形成されている。さらに、側方小陸部分28には、周方向溝14と波型溝20とで形成される第3鋭角部分58の鋭角先端部分に面取り56Cが形成され、周方向溝14と太溝部42とで形成される第4鋭角部分60の鋭角先端部分に面取り56Dが形成されている。」
「[図2]
[図:0001392036000012.jpg]
」
「[図5A]
[図:0001392036000013.jpg]
[図5B]
[図:0001392036000014.jpg]
[図6]
[図:0001392036000015.jpg]
」
(イ) 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を、[0027]、[0028]、[0034]、[0035]、[0044]、[0056]、[図2]、[図5A]、[図5B]、[図6]の記載を中心に整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」のようにいう。)が記載されているといえる。
「トレッド12のタイヤ赤道面CL上には、2つの波型溝20と、2つの連結溝24とで区画されたセンター小陸部分26がタイヤ赤道面CLに沿って複数並び、センター小陸部分26のタイヤ幅方向両側には、2つの波型溝20、1つの連結溝24、及び周方向溝14とで区画された側方小陸部分28がタイヤ周方向に複数並んでおり、
センター小陸部分26の連結溝24に面する先細りのタイヤ周方向端部には、凹状の曲面36Aを踏面から溝底に向けて複数連ねた段付き傾斜部36が形成されており、側方小陸部分28にも、連結溝24側の先細りとなっている端部に、センター小陸部分26と同様の段付き傾斜部36が形成されている
タイヤ。」
イ 判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「波型溝20」の周方向に延びる部分と「連結溝24」とで構成された周方向に連続した溝部及び「周方向溝14」は、本件特許発明1の「主溝」に相当し、また、甲4発明の「波型溝20」の上記部分以外は、本件特許発明1の「横溝」に相当し、さらに、甲4発明の「センター小陸部分26」及び「側方小陸部分28」は、本件特許発明1の「ブロック」に相当する。
そして、甲4の[図2]の記載から見て、甲4発明の「センター小陸部分26」及び「側方小陸部分28」は、「連結溝24」に向けて突出した端部を有することが看取できるから、甲4発明の上記端部は、本件特許発明1の「突出部」に相当するとともに、甲4発明の上記端部のうち、踏面と連続した部分、及び、踏面よりもタイヤ径方向内側に位置する段付き傾斜部36は、それぞれ本件特許発明1の「第1部分」、「第2部分」に相当する。さらに、甲4発明の上記端部は先細りした平面形状を有していることから、甲4発明は、本件特許発明1の「前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっている」との発明特定事項を充足する。
してみると、両者は、
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含み、
前記トレッド部の平面視において、前記突出部の前記主溝の長手方向に沿った長さは、突出先端に向かって小さくなっているタイヤ」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点4-1
タイヤのブロックに関し、本件特許発明1は「前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」と特定するのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。
上記相違点4-1について検討する。
甲4発明を示す図面である甲第2号証の図2を参照しても、ショルダーブロックのブロック本体長さとして異なるショルダーブロックを設けることは示されておらず、また示唆されるものでもない。
してみれば、相違点4-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲4発明ではない。
そして、甲4発明及び他の証拠をみても、「ブロック本体の最小長さ」が異なるブロックで構成しようとする動機付けもないから、本件特許発明1は甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2について
上記(ア)にならって、本件特許発明2と甲4発明とを対比すると、両者は、
「トレッド部に、タイヤ周方向に延びる主溝と、前記主溝からタイヤ軸方向に延びる複数の横溝とで区分された複数のブロックが形成されたタイヤであって、
前記トレッド部の平面視において、前記ブロックの少なくとも一つは、前記横溝間のブロック本体と、前記ブロック本体から前記主溝側に突出した突出部とを含み、
前記突出部は、前記ブロック本体と連続する踏面を有する第1部分と、前記第1部分よりも前記主溝側に位置しかつ前記踏面よりもタイヤ半径方向内側に位置する第2部分とを含むタイヤ」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点4-2
突出部の突出長さに関して、本件特許発明2には「前記突出部の突出長さは、前記ブロック本体のタイヤ軸方向の最小長さの20%±5%である」と特定されているのに対し、甲4発明にそのように特定されていない点。
・相違点4-3
タイヤのブロックに関し、本件特許発明2は「前記ブロックは、トレッド端で区分されるショルダーブロックであり、前記ブロックは、前記横溝に沿って延びる1対の横ブロック縁と、前記1対の横ブロック縁間を継いで前記主溝に沿ってのびる縦ブロック縁とを含み、前記縦ブロック縁の最も前記トレッド端側の位置と、前記トレッド端との間のタイヤ軸方向の長さを前記ブロック本体の最小長さとし、前記ショルダーブロックは、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとを含み、前記第1ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF1は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック本体の前記最小長さF2よりも小さく、前記第1ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE1と前記ブロック本体の前記最小長さF1との比(E1/F1)は、第2ショルダーブロックの前記突出部の突出長さE2と前記ブロック本体の前記最小長さF2との比(E2/F2)よりも大きい」と特定するのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、先ず相違点4-3について検討する。
相違点4-3は、上記(ア)における相違点4-1と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲4発明ではないし、また、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明3ないし5、8及び9について
本件特許発明3ないし5、8及び9はいずれも、請求項1あるいは2を直接又は間接的に引用するものである。
そして、上記(ア)及び(イ)で検討のとおり、本件特許発明1及び2はいずれも甲4発明ではなく、また、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1あるいは2の全ての特定事項を含む本件特許発明3ないし5、8及び9についても同様に、甲4発明ではなく、また、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 取消理由7及び8についてのまとめ
上記イの検討のとおりであるから、取消理由7及び8はその理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由1-1のうち請求項2に係る部分、及び、申立理由3-1のうち請求項2に係る部分、申立理由3-2のうち請求項8に係る部分であるので、以下検討する。
(1) 申立理由1-1(甲1を根拠とする新規性)のうち請求項2に係る部分について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、上記1(2)イ(イ)の検討のとおり、相違点1-2及び相違点1-3で相違するものであり、相違点1-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明2は甲1発明ではない。
よって、申立理由1-1のうち請求項2に係る部分についても、その理由がない。
(2) 申立理由3-1(甲3を根拠とする新規性)のうち請求項2に係る部分について
本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、上記1(4)イ(イ)の検討のとおり、相違点3-2及び相違点3-3で相違するものであり、相違点3-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明2は甲3発明ではない。
よって、申立理由3-1のうち請求項2に係る部分についても、その理由がない。
(3) 申立理由3-2(甲3を根拠とする進歩性)のうち請求項8に係る部分について
上記1(4)イ(ウ)と同様に判断されるから、申立理由3-2のうち請求項8に係る部分についても、その理由がない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-701183