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特許異議申立

2021-700906

熱収縮性フィルムの製造方法

審判番号
2021-700906
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-165958
登録番号
6849141
請求日
2021年09月17日
審決日
2022年09月15日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】西藤 征彦
  • 【権利者代理人】井▲崎▼ 愛佳
  • 【権利者代理人】西藤 優子
  • 【権利者代理人】寺尾 茂泰
  • 【権利者】株式会社フジシールインターナショナル
  • 【権利者代理人】西藤 征彦
  • 【権利者代理人】井▲崎▼ 愛佳
  • 【権利者代理人】西藤 優子
  • 【権利者代理人】寺尾 茂泰
  • 【異議申立人】藤下 万実
  • 【異議申立人】綾本 寛美
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 植前 充司
  • 審判官 奥田 雄介
分類
P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6849141号発明「熱収縮性フィルムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6849141号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔7-15〕について訂正することを認める。 特許第6849141号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 主な手続の経緯 特許第6849141号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし18に係る特許についての出願は、令和2年9月30日の出願(国内優先権主張 同年5月27日(以下、「優先日」という。))であって、令和3年3月8日にその特許権の設定登録(請求項の数18)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、同年9月17日に特許異議申立人 藤下 万実(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされるとともに、同年同月24日に特許異議申立人 綾本 寛美(以下、「特許異議申立人B」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされた。 その後の経緯は、次のとおりである。 令和3年12月23日付け:取消理由通知 令和4年 2月24日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求 同年 3月14日付け:手続補正指令(方式) 同年 4月 7日 :特許権者による補正書(方式)の提出 同年 6月30日付け:訂正請求があった旨の通知 同年 7月22日 :特許異議申立人Aによる意見書の提出 なお、令和4年6月30日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、特許異議申立人Bからは、何ら応答がなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年2月24日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1ないし6のとおりである。なお、下線は、訂正箇所について付したものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項7に、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含む請求項4~6のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」と記載されているのを、 「前記ポリエステル系樹脂(Aが、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含む請求項4または6記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」 に訂正する。 併せて、請求項7を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項7を訂正したことに伴う訂正をする。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項8に、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基としてエチレングリコール残基を含む請求項4~7のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」と記載されているのを、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基としてエチレングリコール残基を含む請求項4、6、7のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」 に訂正する。 併せて、請求項8を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項8を訂正したことに伴う訂正をする。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項9に、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4~8のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」と記載されているのを、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4、6~8のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」 に訂正する。 併せて、請求項9を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項9を訂正したことに伴う訂正をする。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10に、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、およびネオペンチルグリコール残基の少なくとも一方を必須成分として含む請求項4~8のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」と記載されているのを、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、およびネオペンチルグリコール残基の少なくとも一方を必須成分として含む請求項4、6~8のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」 に訂正する。 併せて、請求項10を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項10を訂正したことに伴う訂正をする。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項14に、 「前記樹脂組成物(Z2)が前記ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む請求項13に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」と記載されているのを、 「前記樹脂組成物(Z2)がポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む請求項13に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」に訂正する。 併せて、請求項14を引用する請求項15についても、請求項14を訂正したことに伴う訂正をする。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項15に、 「前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、およびネオペンチルグリコール残基の少なくとも一方を含む請求項14に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」と記載されているのを、 「前記樹脂組成物(Z2)に含まれるポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、およびネオペンチルグリコール残基の少なくとも一方を含む請求項14に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。」 に訂正する。 なお、本件訂正により記載を訂正する請求項7ないし15について、訂正前の請求項13は請求項1ないし12を直接または間接的に引用するものであり、請求項14は請求項13を、請求項15は請求項14を、それぞれ直接引用するものであるから、請求項7ないし15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項7の訂正は、請求項7が引用する請求項を4又は6に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項1に係る請求項7の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項の追加でもないことは明らかである。 請求項7を直接又は間接的に引用する他の請求項についての訂正も同様である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項8の訂正は、請求項8が引用する請求項を4、6、7のいずれかに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2に係る請求項8の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項の追加でもないことは明らかである。 請求項8を直接又は間接的に引用する他の請求項についての訂正も同様である。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項9の訂正は、請求項9が引用する請求項を4、6~8のいずれかに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項3に係る請求項9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項の追加でもないことは明らかである。 請求項9を直接又は間接的に引用する他の請求項についての訂正も同様である。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る請求項10の訂正は、請求項10が引用する請求項を4、6~8のいずれかに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項4に係る請求項10の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項の追加でもないことは明らかである。 請求項10を直接又は間接的に引用する他の請求項についての訂正も同様である。 (5)訂正事項5について 訂正事項5に係る請求項14の訂正は、「前記」の参照先が明らかではないことに伴い、不明確な表現を改め、当該「前記」との記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項5に係る請求項14の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0091】、【0092】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。 この訂正事項5に係る請求項14の訂正は、「前記ポリエステル系樹脂(A)」との記載から「前記」を削除するものであるから、形式的には特許請求の範囲を拡張しているようにも捉えられ得るところ、「樹脂組成物(Z2)」は「前記包装資材(P)からなる原料を含まない」もの(請求項13)であるから、請求項14でいう「樹脂組成物(Z2)」に「主成分として含」まれる「ポリエステル系樹脂(A)」は、ポリエステル系樹脂であること以上の具体的な何かを特定するものではないことは明らかである。 してみると、訂正事項5に係る請求項14の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項14を引用する請求項15についての訂正も同様である。 (6)訂正事項6について 訂正事項6に係る請求項15の訂正は、「ポリエステル系樹脂(A)」について「樹脂組成物(Z2)に含まれる」ものであることを明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項6に係る請求項15の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0092】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 3 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔7-15〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、訂正後の本件特許の請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明18」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)からなる層(I)を少なくとも1層有し、前記包装資材(P)が印刷層を有する熱収縮性フィルムの製造方法であって、前記包装資材(P)に、印刷インキの剥離処理(a)、裁断処理(b)、粉砕処理(c)および乾燥処理(d)の少なくとも1種の処理を行いフラフ(Pf)およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を得る工程、得られたフラフ(Pf)およびリペレット(Pf)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)を用いて熱収縮性フィルムを製造する工程を備え、得られた熱収縮性フィルムのJIS K0115(2004)に準拠した分光光度測定における光線透過率が、測定波長400~800nmにおいて85%以上であり、JIS K7136(2000)に準拠して測定されたヘーズ値が13.8%以下である熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項2】 前記包装資材(P)が、熱収縮性フィルムである請求項1記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項3】 前記包装資材(P)が、成形品または容器に装着されたものである請求項1または2記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項4】 前記包装資材(P)が、ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む請求項1~3のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項5】 前記樹脂組成物(Z1)が、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を0.7質量%以下含む請求項1~4のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項6】 前記樹脂組成物(Z1)が、ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む請求項1~5のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項7】 前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を含む請求項4または6記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項8】 前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基としてエチレングリコール残基を含む請求項4、6、7のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項9】 前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ネオペンチルグリコール残基、1,4-ブタンジオール残基、ジエチレングリコール残基から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4、6~8のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項10】 前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、およびネオペンチルグリコール残基の少なくとも一方を必須成分として含む請求項4、6~8のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項11】 前記熱収縮性フィルムの100℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が30%以上である請求項1~10のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項12】 前記熱収縮性フィルムの主収縮方向の引張弾性率が5500MPa以下である請求項1~11のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項13】 前記熱収縮性フィルムが、前記包装資材(P)からなる原料を含まない樹脂組成物(Z2)からなる層(II)と、前記層(I)の少なくとも2層からなる請求項1~12のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項14】 前記樹脂組成物(Z2)がポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む請求項13に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項15】 前記樹脂組成物(Z2)に含まれるポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、およびネオペンチルグリコール残基の少なくとも一方を含む請求項14に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項16】 包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)からなる層(I)を少なくとも1層有し、前記層(I)が、ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含み、上記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基としてネオペンチルグリコール残基を含む熱収縮性フィルムの製造方法であって、前記包装資材(P)に、印刷インキの剥離処理(a)、裁断処理(b)、粉砕処理(c)および乾燥処理(d)の少なくとも1種の処理を行いフラフ(Pf)およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を得る工程、得られたフラフ(Pf)およびリペレット(Pf)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)を用いて熱収縮性フィルムを製造する工程を備え、得られた熱収縮性フィルムのJIS K0115(2004)に準拠した分光光度測定における光線透過率が、測定波長400~800nmにおいて85%以上であり、JIS K7136(2000)に準拠して測定されたヘーズ値が13.8%以下である熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項17】 前記熱収縮性フィルムの主収縮方向の引張弾性率が4000MPa以下である請求項16に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 【請求項18】 前記ポリエステル系樹脂(A)が、ジオール残基として1,4-シクロヘキサンジメタノール残基とネオペンチルグリコール残基を含む請求項16または17に記載の熱収縮性フィルムの製造方法。 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要 特許異議申立人A及び特許異議申立人Bが、特許異議申立書において、請求項1ないし18に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、それぞれ次のとおりである。 1 特許異議申立人Aが申し立てた特許異議申立理由の要旨 特許異議申立人Aが申し立てた請求項1ないし18に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨(下記(1)~(4))及び証拠方法(同(5))は、次のとおりである。 (1)申立理由A1(甲A1号証に基づく新規性・進歩性) 本件発明16ないし18は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件発明1ないし18は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A1号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由A2(甲A2号証に基づく進歩性) 本件発明1ないし18は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A2号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由A3(実施可能要件) 本件特許の請求項12ないし15、17及び18に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由A3は、概略次のとおりである。 本件特許明細書には、請求項12及び請求項17に記載の引張弾性率の測定方法が記載されていない。引張弾性率は測定条件により値が異なってくる。従って、当業者は、引張弾性率を正確に測定することができず、請求項12、17及びこれら請求項を引用する請求項13~15、18に係る発明を、容易に実施できない。 (4)申立理由A4(明確性要件) 本件特許の請求項7ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由A4は、概略次のとおりである。 (A4-1) 本件請求項7~10は、請求項5に従属し、請求項5は請求項1~4のいずれか一項に従属している。請求項7~10には「前記ポリエステル系樹脂(A)」が記載されているが、請求項1~3及び5には「ポリエステル系樹脂(A)」が記載されていない。従って、請求項7~10、及び、それらの請求項を直接または間接的に引用する請求項11~13に係る発明が不明確である。 本件請求項14は、請求項13に従属し、請求項13は請求項1~12のいずれか一項に従属している。請求項14には「前記ポリエステル系樹脂(A)」が記載されているが、請求項1~3及び5には「ポリエステル系樹脂(A)」が記載されていない。従って、請求項14及び当該請求項14を引用する請求項15に係る発明が不明確である。 (A4-2) 本件請求項7~10は、請求項6に従属し、請求項6は請求項4,5に従属している。かかる従属による発明は、「前記ポリエステル系樹脂(A)」が、「包装資材のポリエステル系樹脂」と「樹脂組成物(Z1)のポリエステル系樹脂」のどちらを意味するか不明である。 本件請求項14は、請求項13に従属し、請求項13は請求項1~12のいずれか一項に従属している。請求項14の一部の発明は「包装資材のポリエステル系樹脂(A)」を、一部の発明は「樹脂組成物(Z1)のポリエステル系樹脂(A)」を、一部の発明は両方のポリエステル系樹脂を含む。請求項14の「前記ポリエステル系樹脂(A)」が、どのポリエステル系樹脂(A)であるか不明である。また、いずれにしても、包装資材のポリエステル系樹脂(A)も、樹脂組成物(Z1)のポリエステル系樹脂(A)も、リサイクルした樹脂を含むので、樹脂組成物(Z2)は必ず包装資材からなるリサイクルした樹脂を含むと読めるが、請求項13には「樹脂組成物(Z2)は、前記包装資材(P)からなる原料を含まない」旨記載されていて、矛盾する。 本件請求項15も請求項14と同様に不明である。請求項15は請求項10の文言と全く同じである。従って、請求項15のポリエステル系樹脂(A)は請求項10のポリエステル系樹脂(A)と異ならなくてはならない。 (5) 証拠方法 甲A1号証:国際公開第2019/188922号 甲A2号証:特開2002-60518号公報 甲A3号証:国際公開第2019/212241号 甲A4号証:特表2020-521823号公報 甲A5号証:特開平11-231792号公報 甲A6号証:特開2012-36273号公報 甲A7号証:特開2005-205906号公報 なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。以下、「甲A1」等という。 2 特許異議申立人Bが申し立てた特許異議申立理由の要旨 特許異議申立人Bが申し立てた請求項1ないし18に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨(下記(1)~(4))及び証拠方法(同(5))は、次のとおりである。 (1) 申立理由B1(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし18に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由B1は、概略次のとおりである。 (B1-1)どのようなプロセスを経て得られた樹脂組成物(Z1)であれば、本件特許の請求項1、16に係る「光線透過率」、「ヘーズ値」の数値範囲を満足できるのかが、発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明1~18は、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (B1-2)【実施例】の欄には、「ポリエステル系樹脂」以外の樹脂を材料とする樹脂組成物については記載されておらず、「ポリエステル系樹脂」以外の樹脂を材料とする樹脂組成物からなる包装資材から、どうすれば本件特許の請求項1に係る「光線透過率」、「ヘーズ値」の数値範囲を満足する熱収縮性フィルムを製造できるのかを、出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できず、当業者が本件発明1ないし3、5及び11ないし13の実施をすることができない。 (2) 申立理由B2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由B2は、概略次のとおりである。 (B2-1)どのようなプロセスを経て得られた樹脂組成物(Z1)であれば、本件特許の請求項1、16に係る「光線透過率」、「ヘーズ値」の数値範囲を満足できるのかが、発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明1ないし18は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (B2-2)【実施例】の欄には、「ポリエステル系樹脂」以外の樹脂を材料とする樹脂組成物については記載されていないから、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1ないし3、5及び11ないし13の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。 (B2-3)【実施例】の欄には、本件特許の請求項5に係る「0.7質量%以下」との数値限定の根拠が示されていないため、本件発明5ないし15は発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (3) 申立理由B3(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし18に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由B3は、概略次のとおりである。 (B3-1)どのようなプロセスを経て得られた樹脂組成物(Z1)であれば、本件特許の請求項1、16に係る「光線透過率」、「ヘーズ値」の数値範囲を満足できるのかが、発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明1~18は明確ではない。 (B3-2)【実施例】の欄には、「ポリエステル系樹脂」以外の樹脂を材料とする樹脂組成物については記載されていないから、「ポリエステル系樹脂」以外の樹脂が、本件発明1ないし3、5及び11ないし13に含まれると明確に把握できない。 (B3-3)【実施例】の欄には、本件特許の請求項5に係る「0.7質量%以下」との数値限定の根拠が示されていないため、本件発明5ないし15は明確でない。 (4) 申立理由B4(甲B1号証ないし甲B5号証に基づく新規性・進歩性) 本件発明1ないし4、6ないし11及び16は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B1号証ないし甲B5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件発明1ないし18は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲B1号証ないし甲B5号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5) 証拠方法 甲B1号証:特開平11-235770号公報 甲B2号証:特開平11-333952号公報 甲B3号証:特開2000-879号公報 甲B4号証:特開2001-58622号公報 甲B5号証:特開2002-32024号公報 甲B6号証:特開2006-15745号公報 甲B7号証:特開2009-161625号公報 甲B8号証:特表平6-500963号公報 甲B9号証:特開2007-2008号公報 甲B10号証:Web記事(下記URLのWebアーカイブ(Wayback Machine)(2019/11/1 13:01:59時点の内容をarchive.orgからダウンロードしたPDF)である。https://resource-recycling.com/plastics/2019/11/01/how-a-pet-shrink-sleeve-label-passed-recyclability-testing/) 甲B11号証:特開2003-103720号公報 甲B12号証:特開2007-160543号公報 なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。以下、「甲B1」等という。 第5 令和3年12月23日付けで通知した取消理由の概要(明確性) 令和3年12月23日付けで通知した取消理由は、概略、以下のとおりであって、上記申立理由A4-1と概ね同旨である。 請求項7~10に「前記ポリエステル樹脂(A)」と記載されているところ、請求項7~10が請求項4または6を直接または間接的に引用しない場合、上記記載の前に「ポリエステル樹脂(A)」が記載されていないため、明瞭でない。 上記請求項7~10を直接または間接的に引用する請求項11ないし13についても同様の理由により明瞭でない。 また、請求項14に「前記ポリエステル樹脂(A)」と記載されているところ、請求項14が請求項4または6を間接的に引用しない場合、上記記載の前に「ポリエステル樹脂(A)」が記載されていないため、明瞭でない。 したがって、本件発明7ないし15は明確でなく、本件特許の請求項7ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第6 令和3年12月23日付けで通知した取消理由についての当審の判断 当審は、以下に述べるように、令和3年12月23日付けで通知した取消理由には理由がないと判断する。 1 判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 2 上記1の基準に照らすと、ポリエステル系樹脂(A)について具体的に特定する本件発明7~15は、どの樹脂組成物に含まれるポリエステル系樹脂(A)についてであるかが明確に定められており、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 なお、特許異議申立人Aは、令和4年7月22日提出の意見書において、請求項4及び6を引用して特定する本件発明7における「前記ポリエステル系樹脂(A)」は、包装部材(P)のポリエステル系樹脂であるか、樹脂組成物(Z1)のポリエステル系樹脂であるか、またはその両方であるかが明確でない旨の主張を行っている。 しかしながら、請求項7には「前記ポリエステル系樹脂(A)」と記載されており、請求項4及び6を引用する請求項7においては、「前記包装部材(P)」が「主成分として含む」ポリエステル系樹脂と、「前記樹脂組成物(Z1)」が「主成分として含む」ポリエステル系樹脂とが前記されているのであるから、これら両者を意味することは明らかである。 したがって、本件特許の請求項7~15の記載は明確性要件に適合するものであり、特許異議申立人Aの主張は採用できない。 3 まとめ したがって、本件発明7~15は、明確性要件を満たすと判断されるから、本件特許の請求項7~15についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとする取消理由には、理由がない。 第7 採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断 当審は、以下に述べるように、上記申立理由A1~B5にはいずれも理由がないと判断する。 1 主な証拠に記載された事項等 (1)甲A1に記載された事項 甲A1には、「熱収縮性ポリエステル系フィルム」について、次の記載がある。(なお、下線は合議体が付したものである。以下同様。) ・「[0035] 2.6.その他の特性 本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、ボトルのラベル用途や弁当箱等の結束目的で使用するバンディングフィルム用途等に用いられることを考慮すると、5μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上100μmがより好ましい。厚みが200μmを超えると、単にフィルムの面積あたりの重量が増加するだけで経済的でない。一方、厚みが5μmを下回るとフィルムが極端に薄くなるため、チューブ状ラベルにする等の工程で扱い難く(ハンドリング性が悪く)なってしまう。 また、ヘイズ値は2%以上13%以下が好ましい。ヘイズ値が13%を超えると、透明性が不良となり、ラベル作成の際に見栄えが悪くなる虞があるので好ましくない。ヘイズ値は、11%以下がより好ましく、9%以下が更に好ましい。なおヘイズ値は小さいほど好ましいが、実用上必要な滑り性を付与する目的でフィルムに所定量の滑剤を添加せざるを得ないこと等を考慮すると、2%程度が下限になる。」 ・「[0060] [ヘイズ] JIS K7136に準拠して、ヘイズメータ「500A」(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。測定は2回行い、その平均値を求めた。」 ・「[0068] ポリエステル原料Gの製造 飲料用PETボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルタを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルタで濾別して、PETボトルリサイクル原料であるポリエステル原料Bを得た。得られた樹脂の組成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコール=95.0/5.0//98/2(モル%)で、固有粘度は0.70dl/gであった。」 ・「[請求項1] エチレンテレフタレートユニットを全エステルユニット100モル%中、90モル%以上含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムであり、 該エチレンテレフタレートユニットを構成するエチレングリコール及び/またはテレフタル酸の少なくとも一部がバイオマス資源に由来しているか、 あるいはPETボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を含有し、 下記要件(1)~(4)を満たすことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。(1)90℃の温湯中に10秒間収縮させたときの幅方向における熱収縮率が50%以上75%以下 (2)90℃の温湯中に10秒間収縮させたときの長手方向における熱収縮率が-6%以上14%以下 (3)70℃の温湯中に10秒間収縮させたときの長手方向における熱収縮率が-6%以上6%以下 (4)幅方向における厚み斑が1%以上20%以下」 (2)甲A1に記載された発明 (1)の摘記事項、特に請求項1、[0035]、[0060]、[0068]について整理すると、甲A1には以下の発明(以下、「甲A1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲A1発明> PETボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を含有し、JIS K7136に準拠して測定されたヘイズ値が2%以上13%以下である熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法であって、PETボトルを粉砕して得たフレークを溶融及び濾別してPETボトルリサイクル原料を得る工程を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。 (3)甲A2に記載された事項 甲A2には、「リサイクル原料」について、次の記載がある。 ・「【請求項1】 結晶性を下げるためのジオール成分が共重合されたエチレンテレフタレート系樹脂を主成分としたポリエステル系フィルムにコロナ処理を施して、アルカリ熱水処理によるインキの剥離性を高めたことを特徴とするポリエステル系フィルム。」 ・「【0029】(実施例)以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明する。 (熱収縮性フィルムの調製)ジカルボン酸成分がテレフタル酸90モル%とイソフタル酸(IPA)10モル%、グリコール成分がエチレングリコール80モル%と1,4-シクロヘキサンジメタノール20モル%よりなる共重合ポリエステルを270℃で溶融押出して未延伸フイルムを得た。 【0030】その未延伸フイルムを、テンターにより延伸温度70℃の雰囲気下で、横方向に4倍の延伸倍率で1軸延伸し、次いで熱処理を行って厚さ50μmのフイルムを得た。なお、熱処理後、巻き取り前にコロナ処理を行った。コロナ処理度の異なる熱収縮性フィルムを数種類調製し、コロナ処理面にアルカリ可溶性インキで印刷を施した。アルカリ可溶性インキとして「ニューダイエコロSR-F」及び「SR-Cインキ」(大日精化工業(株)製)を使用し、インキ層の厚さを2~15μmとした。また、熱収縮性フィルムは、70℃の温水に10秒間浸漬した際における、縦方向(MD方向)の収縮率が0%で、横方向(TD方向)の収縮率が7%で両方向の収縮率の合計が7%以上であった。 【0031】得られた熱収縮性フィルムを500mlPETボトルの熱収縮性ラベルとするため所定の大きさに切断し、溶媒(例えばテトラヒドロフラン)を使用して両端を接合して筒状の熱収縮性ラベルを形成した。その熱収縮性ラベルをPETボトルにかぶせ、70~80℃の蒸気シュリンクトンネルを(水蒸気炉)を通過させてボトルに装着させた。その後、ラベルを装着したPETボトルを粉砕機で粉砕してフレーク状にした後、70℃のアルカリ水溶液(1.5%NaOH)に所定時間(例えば、15分)攪拌しながら浸漬した後、ラベルのインキの剥離状態を目視で観察した。結果を表1に示す。」 ・「【0039】実施の形態は前記に限らず、例えば、以下のようにしてもよい。 ○ コロナ処理は片面だけでなく両面に行ってもよい。 ○ 熱収縮性フィルムに限らず、通常のポリエステル系フィルムにアルカリ水溶液によるインキの剥離性を高めるためのコロナ処理を施してもよい。この場合、アルカリ可溶性インキを使用して印刷を施したものをリサイクルする際、70~75℃のアルカリ水溶液で処理することによりインキがポリエステル系フィルムから悪くても90%以上剥離される。従って、リサイクル原料とした際にインキが製品の物性や外観を低下させることを防止できる。」 (4)甲A2に記載された発明 甲A2の記載、特に【0029】~【0031】、【0039】の記載を整理すると、甲A2には次の発明(以下、「甲A2発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲A2発明> アルカリ可溶性インキで印刷が施されたラベルを装着したPETボトルを、粉砕機で粉砕してフレーク状にした後、アルカリ水溶液に浸漬する工程を有するリサイクル原料の製造方法。 (5)甲B3に記載された事項 甲B3には、「フィルム」について、次の記載がある。 ・「【0071】上記のようにして得られたボトルは内容物が充填され、さらにアルカリ性温湯中で除去できるインキ層を有するラベルが装着され、本発明の形態のボトルとなる。本発明のラベルを装着したボトルは、ボトルとしての用途が終了した後、回収され、典型的にはボトル洗浄を行った後に粉砕を行い、次いでアルカリ温湯中でインキ層を除去し、そのまま水洗・乾燥し、必要により風選を行い、ボトルとラベルの混合フレークを得る。これを押出機により再生ペレットに再生して利用することができる。 【0072】押し出し再生ペレット化は、通常押し出し機を用いてホッパー部より前記混合フレークを投入し、ポリエチレンテレフタレートの場合、シリンダー温度260~320℃程度でノズルから押し出され、カットされて再生ペレットとなる。 【0073】本発明のボトルを用いた再生ペレットは、環状3量体オリゴマーの含有量が少なく、紡糸、押し出し成形、射出成形などを行う場合に金型やノズル等に環状3量体オリゴマーが付着したり、製品そのものに付着することが少なく高品質の繊維、フィルム、成型品が得られる。また、金型やノズル等のオリゴマーの付着が少ないため、掃除の頻度も少なく、従来のボトルから得られた再生ペレットを用いた場合に比較し、生産性の大幅な向上ができる。」 ・「【0080】アルカリ温湯中で除去可能なラベルの製造例 シュリンクEX(東洋インキ社製)にエチレングリコールモノブチルエーテルを1.0重量%(乾燥後)添加したインキを各色用意した。厚さ50μmのポリエステル系熱収縮フィルム(ラベル加工後に周方向となる方向の熱収縮率72%:東洋紡績社製S5630)に緑、金、白色を順にグラビア印刷でベタ印刷を行い60℃のオーブンで乾燥を行った。インキ層の厚みは合計10μmであった。印刷フィルムを溶剤を用いて、ボトルの最大外周+20mmのチューブ状に接着加工を行い、カットして幅12cmのラベルを作製した。 【0081】実施例 オリゴマー量0.35重量%、極限粘度0.8 、の水処理によるゲルマニウム触媒失活ポリエチレンテレフタレートを用い、2リットルのボトルを成形した。ボトル胴部のオリゴマー量は0.37重量%、極限粘度0.75、アセトアルデヒド量5ppm、DEG 含有量 2.0モル%、固相重合速度0.0027dl/g・hr、ガラス転移点温度77℃、融点 255℃、昇温結晶化温度 145℃であった。このボトルにラベルを装着したのち、シュレッダーでラベルごと約1cm角に切断し、フレークを作成した。これを95℃、3%水酸化ナトリウム水溶液に30分間撹拌しながら浸漬しておいた。ラベルからインキは完全に除去されていた。フレークを引き上げ、水洗を3回行った後、140 ℃、5torr で5時間窒素雰囲気下で乾燥させた。このフレークを、30mmφの二軸押し出し機(池貝鉄鋼株式会社製)を用いて再ペレット化した。シリンダー温度は290℃平均滞留時間は 150秒であった。再生ペレットのオリゴマー含有量は0.39重量%であった。」 (6)甲B3に記載された発明 甲B3に記載された事項、特に【0071】~【0073】、【0080】~【0081】の記載を整理すると、甲B3には以下の発明(以下、「甲B3発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲B3発明> インキ層を形成されたラベルから前記インキ層を除去する工程と、前記ラベルから再生ペレットを得る工程と、得られた再生ペレットからフィルムを製造する工程を有するフィルムの製造方法。 2 申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)について (1)本件発明16について ア 対比 本件発明16と甲A1発明とを対比すると、両者の一致点、相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・一致点 資材を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)からなる層(I)を少なくとも1層有し、前記層(I)が、ポリエステル系樹脂(A)を主成分として含む熱収縮性フィルムの製造方法であって、前記資材に、印刷インキの剥離処理(a)、裁断処理(b)、粉砕処理(c)および乾燥処理(d)の少なくとも1種の処理を行いフラフ(Pf)およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を得る工程、得られたフラフ(Pf)およびリペレット(Pf)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)を用いて熱収縮性フィルムを製造する工程を備え、得られた熱収縮性フィルムのJIS K7136(2000)に準拠して測定されたヘーズ値が13.8%以下である熱収縮性フィルムの製造方法。 ・相違点A1-1 出発原料としての資材について、本件発明16が「包装資材(P)」と特定するのに対し、甲A1発明はそのような特定を有しない点。 ・相違点A1-2 ポリエステル系樹脂(A)について、本件発明16が「ジオール残基としてネオペンチルグリコール残基を含む」と特定するのに対し、甲A1発明はそのような特定を有しない点。 ・相違点A1-3 得られた熱収縮性フィルムのJIS K0115(2004)に準拠した分光光度測定における光線透過率について、本件発明1が「測定波長400~800nmにおいて85%以上」と特定するのに対し、甲A1発明はそのような特定を有しない点。 イ 判断 まず相違点A1-1について検討すると、甲A1には包装資材を出発原料とする点について記載されていないから、相違点A1-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明16は、甲A1発明ではない。 そして、他の証拠を見ても、甲A1発明において相違点A1-1に係る本件発明16の構成を採用することが当業者にとって容易に想到しえたこととはいえない。仮に容易に想到しえたことであったとしても、相違点A1-3に係る光線透過率を満たすとはいえないし、甲A1発明において光線透過率を調整する動機もない。 よって、本件発明16は甲A1発明ではないし、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 なお、甲A1の比較例9を中心に甲A1発明を認定したとしても、同様に判断される。 (2)本件発明17、18について 上記第3のとおり、本件発明17、18は、請求項16を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、本件発明16の特定事項を全て有するものである。 そして、上記(1)のとおり、本件発明16が甲A1発明ではなく、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、本件発明17、18も、甲A1発明であるか又は甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲A1発明とを対比すると、それらの一致点、相違点は、それぞれ次のとおりである。 ・一致点 資材を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)からなる層(I)を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムの製造方法であって、前記資材に、印刷インキの剥離処理(a)、裁断処理(b)、粉砕処理(c)および乾燥処理(d)の少なくとも1種の処理を行いフラフ(Pf)およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を得る工程、得られたフラフ(Pf)およびリペレット(Pf)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)を用いて熱収縮性フィルムを製造する工程を備え、得られた熱収縮性フィルムのJIS K7136(2000)に準拠して測定されたヘーズ値が13.8%以下である熱収縮性フィルムの製造方法。 ・相違点A1-4 出発原料としての資材について、本件発明1が「包装資材(P)」であって「印刷層を有する」と特定するのに対し、甲A1発明はそのような特定を有しない点。 ・相違点A1-5 得られた熱収縮性フィルムのJIS K0115(2004)に準拠した分光光度測定における光線透過率について、本件発明1が「測定波長400~800nmにおいて85%以上」と特定するのに対し、甲A1発明はそのような特定を有しない点。 イ 判断 相違点A1-4は上記(1)アの相違点A1-1にさらに包装資材(P)が「印刷層を有する」との特定事項が加わったものであり、相違点A1-5は相違点A1-2と同じものであるから、いずれも上記(1)イと同様に判断される。 よって、本件発明1は、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~15について 上記第3のとおり、本件発明2~15は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、本件発明1の特定事項を全て有するものである。 そして、上記(3)のとおり、本件発明1が甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~15も、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立人Aの主張する申立理由A1には理由がない。 3 申立理由A2(甲A2に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲A2発明とを対比すると、それらの一致点、相違点は、それぞれ次のとおりである。 ・一致点 包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)の製造方法であって、前記包装資材(P)が印刷層を有し、前記包装資材(P)に、印刷インキの剥離処理(a)、裁断処理(b)、粉砕処理(c)および乾燥処理(d)の少なくとも1種の処理を行う工程を有する樹脂組成物の製造方法。 ・相違点A2-1 本件発明1が「得られたフラフ(Pf)およびリペレット(Pf)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)を用いて熱収縮性フィルムを製造する工程」を備えており製造する対象物について「熱収縮性フィルム」と特定するとともに、得られた熱収縮性フィルムの光学的性質について「JIS K0115(2004)に準拠した分光光度測定における光線透過率が、測定波長400~800nmにおいて85%以上であり、JIS K7136(2000)に準拠して測定されたヘーズ値が13.8%以下である」と特定するのに対し、甲A2発明はそのような特定を有しない点。 イ 判断 相違点A2-1について検討すると、甲A2にはリサイクル原料の用途について記載されておらず、また、当該リサイクル原料を用いて製造された熱収縮性フィルムの光学的性質がいかなるものであるか明らかではない。そして、甲A2には「分光光度測定における光線透過率」や「ヘーズ値」に着目する記載もないから、甲A2発明において、相違点A2-1に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、本件発明1は、甲A2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~18について 本件発明2~15は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、本件発明1の特定事項を全て有するものである。 また、本件発明16~18と甲A2発明とを対比した場合にも、上記相違点A2-1が存在している。 そして、上記(2)のとおり、相違点A2-1に係る本件発明1の構成が、甲A2発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものといえない以上、本件発明2~18も、甲A2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立人Aの主張する申立理由A2には理由がない。 4 申立理由A3(実施可能要件)について (1)判断基準 本件発明12~15、17、18は熱収縮性フィルムの製造方法という物を生産する方法の発明である。 物を生産する方法の発明において、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物を使用することができる程度の記載があることを要する。 これを踏まえ、以下検討する。 (2)発明の詳細な説明の記載 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、次のとおりの記載がある。なお、下線は当審で付した。以下同様。 ・「【0009】 本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、包装資材を出発原料として用いた場合や、いかなる色の印刷が施された包装資材を出発原料として用いた場合においても、高い透明性や優れた外観を有する熱収縮性フィルムを提供することにある。また、該熱収縮性フィルムを用いてなる包装資材、包装資材が装着された成形品または容器を提供することにある。」 ・「【0024】 ここで、出発原料となる包装資材(P)は、熱収縮性フィルムであることがサーキュラーエコノミーの観点から好ましい。 【0025】 前記包装資材(P)を構成する樹脂組成物は、特に限定されるものではない。前記包装資材(P)を、構成する樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。なかでも、後述するポリエステル系樹脂(A)が好ましく、ポリエステル系樹脂(A)を主成分としてなる樹脂組成物から構成されていることがより好ましい。」 ・「【0048】 一方で、包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、リペレット(Pr)を用いる場合は、包装資材(P)の表面(容器と接しない面)に塗布されているオーバーコートを考慮しなければならない。このオーバーコートは通常、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が塗布されていることが多いが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、アルカリ水に対し耐性を有するため、上述した印刷インキの剥離処理(a)において除去されない場合がある。また、前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、包装資材(P)の主成分である樹脂と非相溶であることから、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量によっては、得られる熱収縮性フィルムの透明性が低くなる傾向がある。そのため、前記樹脂組成物(Z1)においては、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量を考慮しなければならない。 【0049】 したがって、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量は、樹脂組成物(Z1)中、0.7質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量は、少なければ少ない方が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量が前記数値以下であることにより熱収縮性フィルムの透明性を維持することができる傾向がある。また、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が前記数値を超える場合は、得られる熱収縮性フィルムの透明性を低下させる傾向がある。 これは、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の平均屈折率が1.490~1.500程度であること、および、樹脂組成物(Z1)の主成分である樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂との溶融混錬において両者が非相溶であるため、両者の界面で散乱が生じるためである。」 ・「【0052】 本発明の第1の態様において、前記樹脂組成物(Z1)を、主成分として構成する樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、第1の態様においては前記樹脂組成物(Z1)が、ポリエステル系樹脂(A)を主成分としてなる樹脂組成物であることが好ましい。」 ・「【0081】 〔熱収縮性フィルムの製造方法〕 本発明の熱収縮性フィルムは、前記樹脂組成物(Z1)を用いて従来公知の製造方法により製造することができる。また、本発明の熱収縮性フィルムの形態は特に限定されず、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や印刷の容易さの観点から、平面状の形態であることが好ましい。 【0082】 前記平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物(Z1)を溶融し、Tダイ等の口金から平面状に溶融樹脂を押出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸フィルムを得た後、得られた未延伸フィルムを少なくとも1方向に延伸をし、その後、アニール、冷却、必要に応じてコロナ放電処理等を経る工程により、平面状の熱収縮性フィルムを製造する方法が挙げられる。 【0083】 また、押出機を用いて樹脂組成物(Z1)を溶融し、丸ダイ等の口金からチューブ状に溶融樹脂を押出し、空冷装置や水冷装置で冷却固化して未延伸フィルムを得た後、チューブラー法により加熱されたトンネル炉内でチューブに内圧を掛け、風船状に膨らませることにより少なくとも1方向に延伸を行い、その後、アニール、冷却したチューブ状延伸フィルムを切り開くことにより平面状のフィルムを製造することもできる。 【0084】 本発明の第1~3の態様に係る熱収縮性フィルムは、包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)からなる層(I)を少なくとも1層有すればよいため、例えば、複数の押出機を用いて、共押出を行うことにより前記層(I)と、その他の層を有する積層フィルムも同様に製造できる。 【0085】 延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、長間隔延伸法等により、少なくとも1方向に延伸する方法が挙げられる。また、延伸は、これらの延伸方法の組み合わせで行うこともでき、縦方向のみ延伸してもよく、横方向のみ延伸してもよく、縦方向に延伸した後、横方向に延伸してもよく、横方向に延伸した後、縦方向に延伸してもよい。また、同じ方向に2回以上延伸してもよい。さらには、縦方向に延伸した後、横方向に延伸し、さらに縦方向に延伸してもよい。また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。また、チューブラー成形により内圧によってチューブ状の未延伸フィルムを放射状に延伸してもよい。 【0086】 延伸温度は、熱収縮性フィルムを構成する樹脂の軟化温度や熱収縮性フィルムに要求される収縮特性等によって変える必要があるが、60℃以上130℃以下であることが好ましく、70℃以上120℃以下であることがより好ましく、80℃以上110℃以下であることがさらに好ましい。 【0087】 また、延伸倍率は、熱収縮性フィルムの構成成分、延伸方法、延伸温度、求められる熱収縮率等によって変える必要があるが、主収縮方向の延伸倍率が2倍以上8倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることがより好ましく、4倍以上6倍以下であることがさらに好ましい。 【0088】 本発明の熱収縮性フィルムを容器やトレーのオーバーラップ等の用途に用いる場合、縦方向、および、横方向に延伸されることが好ましい。このとき、主収縮方向は、縦方向でもよく、横方向でもよい。また、食品用容器や飲料用容器等に装着されるラベル等のように、ほぼ一方向の収縮特性を必要とする用途に用いる場合、主収縮方向の1軸に延伸されることが好ましいが、主収縮方向と直交する方向に、1.03倍以上1.5倍以下の延伸倍率で延伸をすることも、良好な収縮特性を付与する点で効果的となる。 また、本発明の熱収縮性フィルムにおいては、主収縮方向が横方向(TD)、主収縮方向と直交する方向が縦方向(MD)であることが好ましい。 【0089】 延伸後は、必要に応じて、熱収縮性フィルムの熱収縮率や諸物性の調整を目的として、50℃以上120℃以下の温度で熱処理や弛緩処理を行うことができる。また、延伸や、熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却することにより、熱収縮性フィルムに収縮特性を付与することができる。さらに、冷却した熱収縮性フィルムは、耳等をトリミングし、巻取り機等を用いて熱収縮性フィルムをコアに巻き付け、フィルムロール状物にすることができる。」 ・「【実施例】 【0130】 以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例、比較例によって何ら限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例、参考例では、熱収縮性フィルムの押出機からの流れ方向を(MD)と表記し、MDの直交方向を(TD)と表記する。 なお、以下の実施例、比較例、参考例に示す測定値、および、評価は次のように行った 【0131】 (1)分光光度測定における光線透過率 得られた熱収縮性フィルムを、JIS K0115(2004)に準拠して測定波長400nm以上800nm以下の光線透過率を測定した。測定は、測定開始波長800nmとし、スキャンスピード300nm/分にて測定波長を測定終了波長400nmまで変化させ、測定波長0.5nm間隔にて、光線透過率を測定した。 このとき、熱収縮性フィルムの光線透過率が、測定波長400nmにおいて85%以上であるものを(○)と判断した。また、熱収縮性フィルムの光線透過率が、測定波長400nmにおいて85%を下回る場合を(×)と判断した。 また、測定波長400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nmにおける光線透過率を代表値として抽出した。 【0132】 (2)熱収縮率 得られた熱収縮性フィルムを、MD200mm、TD10mmの大きさで短冊状に切り取り、MDに対し間隔100mmで標線をマークした。その後、100℃、90℃、80℃、70℃、50℃のそれぞれの温度に設定した温水バスに短冊状フィルムを10秒間それぞれ浸漬し、収縮後の標線間隔を測定し、収縮量(=収縮前の標線間隔-収縮後の標線間隔)を測定した。熱収縮率は、収縮前の標線間隔に対する収縮量の比率(=(収縮量/収縮前の標線間隔)×100%)として算出した。 また、得られた熱収縮性フィルムを、MD10mm、TD200mmの大きさに切り取り、TDに対し間隔100mmで標線をマークした。その後、MDの熱収縮率測定と同様の測定を行い、TDの熱収縮率を測定した。 【0133】 (3)引張破断強度、引張破断伸度 得られた熱収縮性フィルムを、MD120mm、TD15mmの大きさに切り出し、JIS K7127に準拠し、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのMDの引張破断強度、引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を算出した。 また、得られた熱収縮性フィルムを、MD15mm、TD120mmの大きさに切り出し、JIS K7127に準拠し、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのTDの引張破断強度、引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を算出した。 【0134】 (4)全光線透過率、拡散透過率、ヘーズ 得られた熱収縮性フィルムを、JIS K7361-1(1997)に準拠して全光線透過率を測定した。また、JIS K7136(2000)に準拠して拡散透過率、ヘーズ値を測定した。 【0135】 (5)黄色度(YI) 得られた熱収縮性フィルムを、JIS K7373(2006)に準拠して黄色度(YI)を測定した。 【0136】 (6)手切れ性 各実施例および、比較例で得られた熱収縮性フィルムから主収縮方向に50mm 、これに対する直交方向に75mm の大きさに切り出し、主収縮方向より25mmの位置に直交方向に10mmの切れ目を入れた。その後、切れ目の入ったフィルムに関して、切れ目よりフィルムの直交方向に指先で裂き、以下の判断基準で3回測定後の判定を行った。 [判断基準] ○:問題なく、または途中で抵抗を感じながらも、直交方向に直線的に切れたものが2回以上の場合 △:ある程度切れるが、切れ目が主収縮方向に波打ちを生じ、一部湾曲したものが2回以上の場合 ×:殆ど切れず、切れ目が主収縮方向に湾曲したものが2回以上の場合」 ・「【表1】 [図:0001392011000001.jpg] 」 ・「【表3】 [図:0001392011000002.jpg] 」 (3)判断 本件特許の明細書【0025】、【0052】には、本件発明1~18に係る樹脂組成物の主成分として用いられ得る樹脂材料について記載されており、【0049】には「(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量は、少なければ少ない方が好ましい」という指針も示され、【0081】~【0089】には熱収縮性フィルムの製造方法についても記載されている。さらに、本件特許の明細書には実施例についても記載されており、熱収縮性フィルムの有する各種特性に関する試験方法について、特に【0133】には引張特性の具体的な試験方法について記載されるとともに、【表3】にはそれらの試験の測定結果が記載されているから、当業者であれば、これらの記載を参考にすれば、本件発明1~18に係る発明をどのように使用するのか理解できる。また、本件特許の明細書【0009】には、「該熱収縮性フィルムを用いてなる包装資材、包装資材が装着された成形品または容器を提供する」とあり、本件発明1~18に係る製造方法により生産された熱収縮性フィルムをどのように使用するのか記載されているから、当業者であれば本件発明1~18によって製造された物の使用方法を理解できる。 してみると、当業者は、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、その方法を使用し、その方法により生産した物を使用することができるということができるものであり、当業者がその実施にあたり、過度の試行錯誤を要するものともいえない。 よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するものといえる。 なお、特許異議申立人Aは、上記第4のとおり、特許異議申立書において申立理由A3について主張を行っている。 しかしながら、プラスチックにおける引張特性の試験方法、特にフィルム及びシートの引張特性の試験条件はJISK7127に定められたものが広く使用されていること、また、本件特許明細書【0133】においても「引張破断強度」、「引張破断伸度」がJISK7127に準拠していること、本件特許明細書の【表3】に「引張弾性率」が「23℃」において測定されたものであることが記載されていることからみれば、本件特許の「引張弾性率」もJISK7127に準拠しているといえる。 よって、当業者は本件発明12~15、17~18に係る発明を実施できるものといえ、特許異議申立人Aの主張は採用できない。 (4)小括 したがって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たすと判断されるから、特許異議申立人Aの主張する申立理由A3には、理由がない。 5 申立理由A4(明確性)について (1)判断基準 上記第6 1のとおりである。 (2)判断 上記第6 2において述べたとおり、ポリエステル系樹脂(A)について具体的に特定する本件発明7~15は、それぞれどの樹脂組成物に含まれるポリエステル系樹脂(A)についての特定であるかが明確に定められており、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 なお、特許異議申立人Aは、上記第4のとおり、特許異議申立書において(A4-2)について主張している。しかしながら、請求項4及び6を引用して特定する本件発明7~10については、上記第6 2のとおり、「包装資材のポリエステル系樹脂」と「樹脂組成物(Z1)のポリエステル系樹脂」の両者を指すことは明らかであるし、請求項14には「前記ポリエステル系樹脂(A)」という記載はないから、いずれの主張も採用できない。 (3)小括 したがって、本件発明7~15は、明確性要件を満たすと判断されるから、特許異議申立人Aの主張する申立理由A4には、理由がない。 6 申立理由B1(実施可能要件)について (1)判断基準 本件発明1~18は熱収縮性フィルムの製造方法という物を生産する方法の発明であるところ、その判断基準は、上記4(1)のとおりである。 (2)発明の詳細な説明の記載 上記4(2)のとおりである。 (3)判断 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するものであることは、上記4(3)のとおりである。 なお、特許異議申立人Bは、上記第4のとおり、(B1-1)及び(B1-2)について主張するが、いずれも上記判断を左右するものではない。 (4)小括 したがって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たすと判断されるから、特許異議申立人Bの主張する申立理由B1には、理由がない。 7 申立理由B2(サポート要件)について (1)判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)発明の詳細な説明の記載 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、上記4(2)のとおりの記載がある。 (3)判断 本件発明の課題は、「包装資材を出発原料として用いた場合や、いかなる色の印刷が施された包装資材を出発原料として用いた場合においても、高い透明性や優れた外観を有する熱収縮性フィルムを提供すること」(明細書【0009】)である。 そして、本件特許の明細書には「包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、リペレット(Pr)を用いる場合は、包装資材(P)の表面(容器と接しない面)に塗布されているオーバーコートを考慮しなければならない。このオーバーコートは通常、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が塗布されていることが多いが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、アルカリ水に対し耐性を有するため、上述した印刷インキの剥離処理(a)において除去されない場合がある。また、前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、包装資材(P)の主成分である樹脂と非相溶であることから、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量によっては、得られる熱収縮性フィルムの透明性が低くなる傾向がある。」(同【0048】)ことが記載され、そのため、「(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量は、樹脂組成物(Z1)中、0.7質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量は、少なければ少ない方が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量が前記数値以下であることにより熱収縮性フィルムの透明性を維持することができる傾向がある。また、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が前記数値を超える場合は、得られる熱収縮性フィルムの透明性を低下させる傾向がある。」点が記載され(同【0049】)、その原因についても、「(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の平均屈折率が1.490~1.500程度であること、および、樹脂組成物(Z1)の主成分である樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂との溶融混錬において両者が非相溶であるため、両者の界面で散乱が生じるためである。」(同【0049】)ことが説明されており、かつ、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、これらの要件を満たす実施例も記載されている。 これらの記載に接した当業者であれば、「印刷層を有する包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)からなる層(I)を少なくとも1層有」する熱収縮性フィルムにおいて、「JIS K0115(2004)に準拠した分光光度測定における光線透過率が、測定波長400~800nmにおいて85%以上であり、JIS K7136(2000)に準拠して測定されたヘーズ値が13.8%以下」とするという特定事項を満たすことにより、本件発明の課題を解決するものと認識する。 そして、本件発明1及び16はいずれも、これら本件発明の課題を解決すると認識できる特定事項を全て有するものである。 したがって、本件発明1及び16は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1及び16に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 本件発明1又は16の特定事項を全て有する本件発明2~15及び17~18についても同様である。 特許異議申立人Bは、上記第4のとおり、特許異議申立書において(B2-1)ないし(B2-3)について主張するが、いずれも上記判断を左右するものではない。 (4)小括 したがって、本件発明1~18に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満たすと判断されるから、特許異議申立人Bの主張する申立理由B2には、理由がない。 8 申立理由B3(明確性)について (1)判断基準 上記第6 1のとおりである。 (2)判断 上記(1)の基準に照らすと、本件発明1~18はその材料や処理工程、生成物の光学的性質が明確に定められており、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1~18の記載は、明確性要件に適合する。 特許異議申立人Bは、上記第4のとおり、特許異議申立書において(B3-1)ないし(B3-3)について主張するが、いずれも上記判断を左右するものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~18は、明確性要件を満たすと判断されるから、特許異議申立人Bの主張する申立理由B3には、理由がない。 9 申立理由B4(甲B1ないし甲B5に基づく新規性・進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲B3発明とを対比すると、両者の一致点、相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・一致点 包装資材(P)を出発原料として得られるフラフ(Pf)、およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)からなる成分を少なくとも有し、前記包装資材(P)が印刷層を有する樹脂成形体の製造方法であって、前記包装資材(P)に、印刷インキの剥離処理(a)、裁断処理(b)、粉砕処理(c)および乾燥処理(d)の少なくとも1種の処理を行いフラフ(Pf)およびリペレット(Pr)の少なくとも一方を得る工程、得られたフラフ(Pf)およびリペレット(Pf)の少なくとも一方を含む樹脂組成物(Z1)を用いてフィルムを製造する工程を備えるフィルムの製造方法。 ・相違点B3-1 フィルムの熱的性質について、本件発明1が「熱収縮性」と特定するのに対し、甲B3発明はそのような特定を有しない点。 ・相違点B3-2 フィルムの光学的性質について、本件発明1が「JIS K0115(2004)に準拠した分光光度測定における光線透過率が、測定波長400~800nmにおいて85%以上であり、JIS K7136(2000)に準拠して測定されたヘーズ値が13.8%以下」と特定するのに対し、甲B3発明はそのような特定を有しない点。 イ 判断 事案に鑑み、まず相違点B3-2について検討すると、甲B3にはフィルムの光学的性質について記載されていないから、相違点B3-2は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲B3発明ではない。 そして、甲B3発明において、フィルムの光学的性質がいかなるものであるか明らかではなく、相違点B3-2に係る本件発明1の構成である「分光光度測定における光線透過率」や「ヘーズ値」がどの程度の値となるのか一切不明であるし、相違点B3-2に係る本件発明1の構成のように調整する動機もないから、当業者が容易に想到し得たものであるとは到底いえない。 よって、本件発明1は、甲B3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~18について 本件発明2~15は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、本件発明1の特定事項を全て有するものである。 また、本件発明16~18と甲B3発明とを対比した場合にも、上記相違点B3-1及び相違点B3-2が存在している。 そして、上記(1)のとおり、相違点B3-1及び相違点B3-2に係る本件発明1の構成が、甲B3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものといえない以上、本件発明2~18も、甲B3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲B1、甲B2、甲B4、甲B5を主たる引用例とした場合について 甲B1、甲B2、甲B4、甲B5を主たる引用例とした場合においても、甲B3と同様に対比の上、判断される。 (4)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立人Bの主張する申立理由B4には、いずれも理由がない。 第8 むすび したがって,特許異議申立人A及び特許異議申立人Bの主張する特許異議申立理由並びに令和3年12月23日付けで通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~18に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~18に係る特許を取り消すべき理由もない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700906

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