特許異議申立
2021-700895
赤外発光装置
- 審判番号
- 2021-700895
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-529532
- 登録番号
- 6850885
- 請求日
- 2021年09月16日
- 審決日
- 2022年08月22日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ルミレッズ ホールディング ベーフェー
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【権利者代理人】大貫 進介
- 【異議申立人】武田 早代子
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 加々美 一恵
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P1652.121-YAA(H01L) / P1652.113-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6850885号発明「赤外発光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6850885号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第6850885号の請求項1~5、8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6850885号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年9月13日に出願され、令和3年3月10日にその特許権の設定登録がされ、令和3年3月31日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯の概要は、次のとおりである。
令和 3年 9月16日 :特許異議申立人武田早代子(以下「申立人」という。)による請求項1~5、8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 12月23日付け:取消理由通知書
令和 4年 4月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)の提出
なお、当審は、特許法120条の5第5項の規定に基づき、申立人に対して相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は、指定期間内に意見書を提出しなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は特許権者が付したものである。)。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1-8〕に対して請求されている。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「赤外光を放射する第1の蛍光体と、」を
「赤外光を放射する第1の蛍光体であって、RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1である、第1の蛍光体と、」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項6を独立請求項形式に書き改め、
「第1の光を放射する光源と、
前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、
を有する装置であって、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射する第1の蛍光体と、
前記第1の光を吸収し、可視光である第3の光を放射する第2の蛍光体と、
を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第2の光を放射し、
前記第1の蛍光体は、前記第3の光を吸収して、第4の光を放射し、
前記第2の光および前記第4の光は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有し、
前記第1の蛍光体は、ガラスまたはアモルファス材料を有する、装置。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項7を独立請求項形式に書き改め、
「第1の光を放射する光源と、
前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、
を有する装置であって、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射する第1の蛍光体と、
前記第1の光を吸収し、可視光である第3の光を放射する第2の蛍光体と、
を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第2の光を放射し、
前記第1の蛍光体は、前記第3の光を吸収して、第4の光を放射し、
前記第2の光および前記第4の光は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有し、
前記第1の蛍光体は、RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1である、装置。」に訂正する。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、請求項1において、「赤外光を放射する第1の蛍光体と、」を「赤外光を放射する第1の蛍光体であってRE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1、第1の蛍光体と、」に訂正するもので、第1の蛍光体を限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
本件特許の特許登録時の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0016】には、「ある実施例では、NIR蛍光体108は、極性空間群6321において結晶化する、三方晶カルシウムガロゲルマネート構造群に属するホスト格子を有する。好適なカルシウムガロゲルマネート材料は、組成範囲RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1である。」と記載されている。
よって訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
上記ア、イに照らせば、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正後の請求項1について特許異議申立てがされているので、当該請求項に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。訂正後の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項2~5、8に記載された発明についても、同様である。
オ 小括
よって、訂正事項1は訂正要件を満たす。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1のみを引用する訂正前の請求項6を独立形式とする訂正である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する引用関係の解消を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項2は、引用関係の解消のみを目的とする訂正であるから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
上記ア、イに照らせば、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件
訂正事項2は、引用関係の解消のみを目的とする訂正であるから、独立特許要件は課されない。
オ 小括
よって、訂正事項2は訂正要件を満たす。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項1のみを引用する訂正前の請求項7を独立形式とする訂正である。
よって、訂正事項3は、特許法120条の5第2項ただし書第4号に規定する、引用関係の解消を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、引用関係の解消のみを目的とする訂正であるから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
上記ア、イに照らせば、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件
訂正事項3は、引用関係の解消のみを目的とする訂正であるから、独立特許要件は課されない。
オ 小括
よって、訂正事項3は訂正要件を満たす。
3 訂正の適否の小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。また、本件訂正には、独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1~8に係る発明(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明8」といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
第1の光を放射する光源と、
前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、
を有する装置であって、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射する第の蛍光体であって、RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1である、第1の蛍光体と、
前記第1の光を吸収し、可視光である第3の光を放射する第2の蛍光体と、
を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第2の光を放射し、
前記第1の蛍光体は、前記第3の光を吸収して、第4の光を放射し、
前記第2の光および前記第4の光は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有する、
装置。
【請求項2】
前記第1の光は青色光であり、前記第3の光は赤色光である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の蛍光体は、Cr(III)ドーパントを有し、
該Cr(III)ドーパントは、4A2→4T1電子遷移を介して前記第1の光により励起され、4A2→4T2電子遷移を介して前記第3の光により励起される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体は、2以上の置換位置にドーパントを有する、規則構造で構成された結晶化蛍光体材料を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の蛍光体は、
固溶体の一つと、
異なる結晶タイプが異なる放射チャネルを介して放射する、混合結晶タイプの蛍光体と、
を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第1の光を放射する光源と、
前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、
を有する装置であって、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射する第1の蛍光体と、
前記第1の光を吸収し、可視光である第3の光を放射する第2の蛍光体と、
を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第2の光を放射し、
前記第1の蛍光体は、前記第3の光を吸収して、第4の光を放射し、
前記第2の光および前記第4の光は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有し、
前記第1の蛍光体は、ガラスまたはアモルファス材料を有する、装置。
【請求項7】
第1の光を放射する光源と、
前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、
を有する装置であって、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射する第1の蛍光体と、
前記第1の光を吸収し、可視光である第3の光を放射する第2の蛍光体と、
を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第2の光を放射し、
前記第1の蛍光体は、前記第3の光を吸収して、第4の光を放射し、
前記第2の光および前記第4の光は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有し、
前記第1の蛍光体は、RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1である、装置。
【請求項8】
前記第1および第2の蛍光体は、透明材料と混合され、前記光源にわたって設置される、請求項1に記載の装置。
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5、8に係る特許に対して、当審が令和3年12月23日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」といい、この通知を「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。
本件訂正前の請求項1~5、8に係る発明は、本件特許に係る優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引 用 文 献 等 一 覧
甲第1号証 国際公開第2016/174236号
甲第2号証 LUMINESCENT MATERIALS、Springer-Verlag社、1994年、p.20-25
甲第3号証 Journal of Materials Chemistry C、The Royal Society of Chemistry、2014年、p.4636-4641
第5 引用文献の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証には、以下の記載があると認められる。(下線は当審で付した。以下同様。)
なお、甲第1号証はドイツ語で記載された国際公開公報であるため、原文の摘記は省略し、その当審訳を、甲第1号証の日本語ファミリー文献である特表2018-518046号公報を参考にして記載する。その際、当該特表2018-518046号公報の段落番号をも示してある。
ア「【請求項 5】
ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子(1)において、
前記素子の動作時に、400nm~500nmの間の一次ビームを放射する半導体チップ(2)と、
変換材料を含有している変換素子(6)と、
を含んでおり、
前記変換材料は、前記素子の動作時に前記半導体チップ(2)から放射される前記一次ビームを、700nm~2,000nmの間の波長の二次ビームに変換し、
前記ホスト材料は、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属酸窒化物およびそれらの組合せを含む化合物のグループから選択されている、
ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子(1)。」(52ページ24~27行)
イ「【0001】
本発明は、変換素子を含んでいる、ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子と、分光計および内視鏡におけるビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子の使用と、変換素子を含んでいる、ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子を製造するための方法と、に関する。」(1ページ5~11行)
ウ「【0010】
本発明の少なくとも1つの実施の形態の課題は、近赤外線領域において広範で連続的な放射スペクトルを備えた変換素子を含んでいる、ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子を提供することである。別の課題は、分光計および内視鏡において使用するための、ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子を提供すること、またビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子の廉価で効率的な製造方法を提示することである。」(4ページ8~18行)
エ「【0013】
ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子が提供される。このビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子は、この素子の動作時に一次ビームを放射する半導体チップと、変換材料を含有している変換素子と、を含んでいる。特に、変換素子は、半導体チップの一次ビームのビーム路内に配置されている。」(5ページ2~7行)
オ「【0035】
例えば、ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子は、発光ダイオード、略してLEDであってよい。換言すれば、素子はこの場合、動作時にインコヒーレントなビームを放射する。LEDを、表面実装型の素子として形成することができる。」(12ページ9~13行)
カ「【0041】
1つの実施の形態によれば、変換材料は、Cr3+および/またはNi2+がドープされたケイ酸塩、アルミン酸塩、没食子酸塩および/またはゲルマニウム酸塩である。このホスト材料において、中央の金属イオンのd軌道と周囲の酸素イオンとの間にむしろ弱い相互作用が生じるように、酸素イオンおよび金属イオンを配置することができる。金属原子に部分的に置き換わるCr3+またはNi2+のような活性剤イオンは、いわゆる弱配位子場によって包囲されており、これによって広帯域の放射が促進される。そのような変換材料を用いることによって、オプトエレクトロニクス素子は、近赤外線スペクトル領域において、広範で連続的な放射スペクトルを供給する。連続的な放射スペクトルとは、放射される波長領域にわたり強度が急激に低下または上昇しないこと、すなわち強度がnmあたり0.1%から5%までを超えて変化しないことを意味している。さらに、広範で連続的な放射スペクトルを、素子の寿命にわたり、例えば5時間から1,000時間までの期間にわたり維持し続けることができる。
【0042】
1つの実施の形態においては、ホスト材料が、EAGa12O19,MgSiO3,AyGa5O(15+y)/2,AE3Ga2Ge4O14,Ln3Ga5GeO14,Ln3Ga5.5D0.5O14,Ga2O3およびMg4D2O9、ただしEA=Mg,Ca,Srおよび/またはBa、A=Li,Na,Kおよび/またはRb、AE=Mg,Ca,Srおよび/またはBa、Ln=La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybおよび/またはLuかつD=Nbおよび/またはTa、を含む化合物のグループから選択されている。有利には、EA=Srおよび/またはBa、A=Naおよび/またはK、AE=Caおよび/またはSr、Ln=LaかつD=Nbである。また、ホスト材料が、分子式EAGa12O19,MgSiO3,AyGa5O(15+y)/2,AE3Ga2Ge4O14,Ln3Ga5GeO14,Ln3Ga5.5Nb0.5O14,Ga2O3またはMg4D2O9において僅かな差異を有している化合物であってもよい。例えば、僅かな量の外来原子がホスト材料内に存在していてもよい。特に、ホスト材料は、Ln3Ga5GeO14およびGa2O3を、有利にはβ-Ga2O3を含有することができるか、またはそれらから成るものであってよい。
(中略)
【0044】
1つの実施の形態においては、変換材料が、Mg1-xNixSiO3,Ay(Ga1-xNix)5O(15+y)/2]-2.5x,AE3(Ga1-xNix)2Ge4O14-x,Ln3(Ga1-xNix)5GeO(28-5x)/2,(Ga1-xNix)2O3-x,Ln6(Ga1-xNix)11DO28-5.5x,(Mg1-xNix)4D2O9およびそれらの組合せ、ただしx=0.0001~0.1、y=0.9~1.9、A=Li,Na,Kおよび/またはRb、AE=Mg,Ca,Srおよび/またはBa、Ln=La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybおよび/またはLuかつD=Nbおよび/またはTa、を含む化合物のグループから選択されている。有利には、A=Naおよび/またはK、AE=Caおよび/またはSr、Ln=LaかつD=Nbである。例えば、変換材料は、Mg1-xNixSiO3、ただしx=0.0001~0.1、である。有利には、変換材料は、Ay(Ga1-xNix)5O(15+y)/2]-2.5x,AE3(Ga1-xNix)2Ge4O14-x,Ln3(Ga1-xNix)5GeO(28-5x)/2,Ln6(Ga1-xNix)11DO28-5.5x,(Mg1-xNix)4D2O9およびそれらの組合せを含む化合物のグループから選択されている。特に有利には、変換材料は、Ay(Ga1-xNix)5O(15+y)/2]-2.5x,AE3(Ga1-xNix)2Ge4O14-x,Ln3(Ga1-xNix)5GeO(28-5x)/2およびそれらの組合せを含む化合物のグループから選択されている。特に、変換材料は、Ln3(Ga1-xNix)5GeO(28-5x)/2および(Ga1-xNix)2O3-xを含有することができるか、またはそれらから成るものであってよい。ここで有利には、(Ga1-xNix)2O3-xが副相であるか、もしくは副相として生じる。
【0045】
1つの実施の形態においては、変換材料が、EA(Ga1-x’Crx’)12O19,(Mg1-x’Crx’)Si(4-x’)/4O3,Ay’(Ga1-x’Crx’)5O(15+y)/2,AE3(Ga1-x’Crx’)2Ge4O14,Ln3(Ga1-x’Crx’)5GeO14,(Ga1-x’Crx’)2O3,Ln6(Ga1-x’Crx’)11DO28,(Mg1-x’Crx’)8/(2-x’)D2O9およびそれらの組合せ、ただしx’=0.0001~0.1、y’=0.9~1.9、EA=Mg,Ca,Srおよび/またはBa、A=Li,Na,Kおよび/またはRb、AE=Mg,Ca,Srおよび/またはBa、Ln=La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybおよび/またはLuかつD=Nbおよび/またはTa、を含む化合物のグループから選択されている。有利には、A=Naおよび/またはK、AE=Caおよび/またはSr、Ln=LaかつD=Nbである。有利には、変換材料は、EA(Ga1-x’Crx’)12O19,Ay’(Ga1-x’Crx’)5O(15+y)/2,AE3(Ga1-x’Crx’)2Ge4O14,Ln3(Ga1-x’Crx’)5GeO14,Ln6(Ga1-x’Crx’)11DO28,(Mg1-x’Crx’)8/(2-x’)D2O9およびそれらの組合せを含む化合物のグループから選択されている。特に有利には、変換材料は、EA(Ga1-x’Crx’)12O19,Ay’(Ga1-x’Crx’)5O(15+y)/2,AE3(Ga1-x’Crx’)2Ge4O14,Ln3(Ga1-x’Crx’)5GeO14およびそれらの組合せを含む化合物のグループから選択されている。例えば、変換材料は、SrGa11.88Cr0.12O19,La3Ga4.975Cr0.025GeO14,La3Ga4.95Cr0.05GeO14,Ca3Ga1.98Cr0.02Ge4O14またはNa1.4Ga4.95Cr0.05O8.2である。特に、変換材料は、Ln3(Ga1-x’Crx’)5GeO14および(Ga1-x’Crx’)2O3を含有することができるか、またはそれらから成るものであってよい。ここで有利には、(Ga1-x’Crx’)2O3が副相であるか、もしくは副相として生じる。」(14ページ24行~17ページ16行)
キ「【0061】
1つの実施の形態によれば、変換素子は、一次ビームを、電磁スペクトルの青色、緑色または赤色の領域にある第2の二次ビームに変換する発光体を含有している。したがって、第2の二次ビームは、可視領域にあり、また近赤外線領域にある二次ビームの他に、外側に向かってビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子の周囲環境に放出される。このことは、周囲環境のどの箇所に近赤外線領域にある二次ビームが入射すべきかが正確に特定されるべき場合には有利であることが分かった。つまり例えば、分光計において素子を使用する場合には、試料の分析すべき領域に正確に焦点合わせすることが可能である。」(21ページ32行~22ページ12行)
ク「【0123】
図5には、励起波長における、すなわち450nmの一次ビームにおける、(Ga,Cr)2O3から成る副相を有している変換材料La3Ga4.975Cr0.025GeO14の反射率(破線)および放射の相対強度(実線)が示されている。変換材料は、約450nmおよび640nmにおいて、最も低い反射を示し、したがって、約450nmおよび620nmにおいて、つまり青色および赤色のスペクトル領域にある一次ビームで最良に励起される。変換材料は、700nmから1050nmの間で広範で連続的な放射を示し、この場合、相対強度は、700nmから約1,000nmまでの範囲において50%を上回る。約780nmの波長において、放射は最大になる。広範な放射は、La3Ga4.975Cr0.025GeO14および(Ga,Cr)2O3の2つの別個の放射帯域の重畳と、使用されるホスト格子の種類に基づく。
【0124】
(Ga,Cr)2O3から成る副相を有している変換材料La3Ga4.975Cr0.025GeO14は、36.27mmolのLa2O3、105.44mmolのGa2O3、42.18mmolのGeO2,2.11mmolのホウ酸および0.527mmolのCr2O3が、ミキサおよびモルタグラインダにおいて混合物に加工されることによって製造された。ミキサとして、二重非対称遠心分離機とも称されるSpeedMixer(商標)が、すなわちミキサカップの二重の回転を基礎とする実験混合システムが使用される。この際、ホウ酸がフラックスとして機能し、これによって反応性/結晶成長が改善される。そのようにして製造された粉末は、コランダム坩堝に移され、950℃で4時間にわたり熱処理される。室温まで冷却された後に、焼結された粉末は、碾かれて篩に掛けられ、続いて1,300℃で4時間にわたり第2の熱処理ステップを受ける。そのようにして得られた、焼結された材料は、モルタグラインダを用いて粉砕され、また比較的粗い粒子(>30μm)を取り除くために、30μmのメッシュサイズを有する分析篩に掛けられる。
【0125】
図6には、励起波長における、すなわち637nmの一次ビームにおける、(Ga,Cr)2O3から成る副相を有している変換材料La3Ga4.975Cr0.025GeO14の反射率(破線)および放射の相対強度(実線)が示されている。波長に依存する反射率は、図5に示したものに相当する。変換材料は、700nmから1050nmの間で広範で連続的な放射を示し、この場合、相対強度は、約780nmから約1,000nmまでの範囲において50%を上回る。約900nmの波長において、放射は最大になる。広範な放射は、La3Ga4.975Cr0.025GeO14および(Ga,Cr)2O3の2つの別個の放射帯域の重畳に基づく。」(38ページ1行~39ページ16行)
ケ 図5「
[図:0001390560000001.jpg]
」
コ 図6「
[図:0001390560000002.jpg]
」
(2)上記(1)の各記載事項を踏まえると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、カッコ内は認定の根拠とした箇所を示す。
(甲1発明)
ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子において、前記素子の動作時に、400nm~500nmの間の一次ビームを放射する半導体チップと、変換材料を含有している変換素子と、を含んでおり、前記変換材料は、前記素子の動作時に前記半導体チップから放射される前記一次ビームを、700nm~2,000nmの間の波長の二次ビームに変換し、前記ホスト材料は、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属酸窒化物およびそれらの組合せを含む化合物のグループから選択されている、ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子であって、(【請求項5】)
前記変換素子は前記半導体チップの一次ビームのビーム路内に配置され、(【0013】)
前記変換素子は、前記一次ビームを、電磁スペクトルの赤色の領域にある第2の二次ビームに変換する発光体を含有している、(【0061】)
ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子。
2 甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。
なお、甲第2号証は、英語で記載された文献であり、その当審訳を記載する。
(当審訳)「電子数が多い場合は、かなり複雑になる。しかし、選択則を思い出すと、期待される吸収スペクトルを導くことができる。3個のd電子を持つイオン、たとえばCr3+(3d3)の場合、基底準位は4A2である。光吸収は、良い近似として、スピン選択則の観点から、スピン四重項(2S+1=4)準位に対してのみ起こることを示した。これらの遷移のうち、可能なものは3つしかない。4A2→4T2,4T1(4F)及び4T1(4P)。Cr3+イオンの吸収スペクトルは低強度の三つの吸収帯からなる(パリティ選択則)。これを図2.12に示す。スピン禁制遷移は、通常非常に正確な測定でのみ観測できる。」(22ページ4~12行)
「
[図:0001390560000003.jpg]
」(23ページ図2.12)
3 甲第3号証
(1)甲第3号証には、以下の記載がある。
なお、甲第3号証は、英語で記載された文献であり、その当審訳を記載する。
(当審訳)「La3Ga5.5Nb0.5O14:Cr3+中における規則-不規則化マルチサイトCr3+超広帯域近赤外ルミネセンス」(第4636頁、表題)
「La3Ga5.5Nb0.5O14:Cr3+中において、730nmと1030nmを中心とする二つのピークからなる超広帯域近赤外(NIR)600-1300nm発光を達成することができ、これは恐らく、不規則八面体サイト(サイトI)と規則四面体サイト(サイトII)におけるCr3イオンの4T2→4A2遷移にそれぞれ起因する。Cr3+のサイト占有率を、結晶構造、定常および時間分解光ルミネセンス(PL)スペクトル、ラマンスペクトルおよび電子常磁性共鳴(EPR)スペクトルと組み合わせた結晶場理論により推定した。ラマンスペクトルで特徴づけられる規則-不規則構造は、ピーク位置と強度の温度依存性のような二つのピークの光ルミネセンス挙動に明確な影響を及ぼす。~730nmの発光ピークと長い減衰時間を持つ不規則化八面体サイトのCr3+は、より強い結晶場を経験し、規則化四面体サイトより規則-不規則化構造により容易に影響される。この研究は、NIR波長可変レーザーを設計する展望を開くかもしれない。」(第4636頁、要約)
「2.実験
通常の高温固相反応法によりLGNO:0.5% Cr3+組成の粉末試料を合成した。適切な化学最論量の原料La2O3(分析試薬,AR)、Ga2O3(AR)、Nb2O5(AR)およびCr2O3(99.99%)を、メノウ乳鉢で完全に混合した。均一化した混合物を空気中、950℃で4時間、次いで1200℃で4時間予備焼結し、最終的に種々の温度(1300~1400℃)で5時間焼成して反応を完了し、いくつかの中間粉砕を行った。対応する試料をLGCNOl(1300℃)、LGCNO2(1330℃)、LGCNO3(1360℃)、LGCNO4(1380℃)及びLGCNO5(1400℃)と命名した。」(第4636頁右欄第23行~第4637頁左欄第6行)
「3.結果と考察
3.1 LGCNO1-LGCNO5のXRDパターンを図1aに示すが、いずれもLGNO結晶相(ICSDカード番号171503)とよく一致している。ただしLaNb5O14相の痕跡(*印)を除く。この不純物相の形成は、高温でのGaの蒸発によると考えられる。
LGNOはCa-gallogermanate族に属し、空間群P321、格子定数a=b=8.2196A、c=5.1217A、セル体積V=299.67A.12の典型的な六方晶構造で結晶化する。a軸に沿って見たLGNOの結晶構造の断片を図1bに示す。c軸に垂直な四面体層は、小さいサイズの四面体(2d位置)と大きいサイズの四面体(3f位置)から成り、その間にThomson立方体(3e位置)と八面体(1a位置)から形成された中間層がある。La3+イオンは12個の配位子を持ち、3e立方サイトに位置している。Ga3+イオンの一部とすべてのNb5+イオンは統計的に1:1比でla八面体サイトを占有して[Nb0.5Ga0.5]O6を形成し、残りのGa3+イオンは2dと3f四面体サイトを占有する。12,13イオン半径と価数を考慮すると、Cr3+イオンがGa3+サイトを置換すると考えられる。さらに、laサイトに統計的に分布するGa3+とNb5+イオンがこのサイトに不規則な結晶場環境を作るという事実もある。13四面体サイトはすべてGa3+イオンの占有により秩序化している。
[図:0001390560000004.jpg]
図1(a)LGCN01-LGCN05サンプルのXRDパターン。*は、LaNb5O14の回折ピークを示す。(b)a軸に沿って見たLGNOの結晶構造。黄色の八面体は(Ga0.5/Nb0.5)O6を表し、青色およびピンク色の四面体はGaO4を表し、緑色のボールはLaイオンである。」(第4637頁左欄第33行~右欄第21行)
「3.2分光学的性質
図3aは、LGCNOlのPLEおよびPLスペクトルを示す。730nmと1030nmを中心とする二つの広帯域NIR放射をそれぞれ432nmと660nmの励起で最適に観測できた励起波長として466nmを選択することにより、730nmと1030nmの両方でピークを持つ600-1300nmをカバーする超広帯NIR発光を達成できた。730nmと1030nmの発光をモニターすると、300-500nmと500-700nmのブロードバンドからなる二組のPLEスペクトルがありそれぞれCr3+の4A2→4T1と4A2→4T2遷移に帰属する。1,10,11,19,22,23図3bにはよくマッチした吸収スペクトルも示してある。3d3電子配置のTanabe-Sugano(T-S)図によれば、2つのPLバンドは異なるサイトにおけるCr3+イオンの4T2→4A2遷移に起因する。多様な結晶場環境は、また、図3cの配置座標モデルで説明されるように、様々なPLEおよびPL波長をもたらす。432nm励起では、電子は4A2から4T1状態に励起され、その後、4T1と4T2曲線の交点を横切ることによって、4T2状態の平衡配位に非放射的に緩和し、730nmの発光を行う。660nmの励起では、電子は直接4T2状態の平衡配位に緩和し、最終的に1030nmのNIR発光で4A2基底状態に戻る。
[図:0001390560000005.jpg]
図3(a)LGCNO1サンプルの正規化PLEおよびPLスペクトル、および、(b)RTにおけるその吸収スペクトル(挿入図は595-770nmの吸収バンドの倍率を示す);(c)機構的配置座標図は、星印の有無にかかわらず、異なる結晶場環境における異なる励起および発光チャネルを示す;(d)室温において466nmで励起したLGCNOl試料の時間分解発光スペクトル。」(第4637頁右欄第32行~第4638頁右欄第4行)
「Raman及びEPRスペクトルの結果から、LGNOホストの[GaO6]及び[GaO4]サイトにおけるCr3+イオンの同時占有を確認した。3.2節で述べたように、1030nmの発光を持つCr3+イオンは、730nmの発光を持つものよりも弱い結晶場を経験するはずである。730nmと1030nmのPLピークは、それぞれ八面体と四面体位置のCr3+イオンに由来すると推定した。結晶構造の観点から、このホスト中の5A以下の四面体位置Ga3+-Ga3+距離の存在は、Cr3+-Cr3+結合の形成の可能性を示唆した。31」(第4639頁左欄第15~24行)
「図7は、2つの発光バンドに対する規則-不規則構造の影響を示す焼成温度依存PLスペクトルを示す。か焼温度が1300℃から1400℃に上昇すると、730nmピークの中心はわずかに長波長側にシフトしたが、1030nmピークの位置は変化しなかった。前者は八面体サイトのGa3+/Cr3+/Nb5+の規則-不規則占有に起因し、後者は規則四面体サイトに起因する。
[図:0001390560000006.jpg]
図7 試料LGCN01-LGCN05のPLスペクトル。」(第4639頁右欄第9~17行)
「4.結論
一連のLa3Ga5.5Nb0.5O14:0.5%Cr3+蛍光体を、種々の温度での従来の高温固相反応により合成した。Cr3+の規則-不規則配列に起因する600-1300nmの超広帯域NIR発光が観測され、この発光材料はNIR同調可能固体レーザーの分野での潜在的応用に適している。730nmと1030nmのPLピークは、不規則な八面体(サイトI)サイトと四面体サイト(サイトII)のCr3+の4T2→4A2遷移にそれぞれ起因する。TRES,Raman,EPR及びか焼温度に依存するPLスペクトルの結果から、サイトに関連したPLピークの帰属を推論した。二つの広帯域放射の明確な温度消光特性は、この結論をさらに支持する。粗結晶場とRacahパラメータも計算した。規則-不規則結晶構造によって誘起されたサイト占有率の再配列は、遷移金属イオンの可変ルミネセンスを設計するための戦略と考えられる。」(第4641頁左欄第7~24行)
(2)甲第3号証の図3aから、La3Ga5.5Nb0.5O14:Cr3+の励起スペクトルは、波長730nmでモニターした場合、波長400~470nmの範囲に強いピークを有することが看取できる。さらに、La3Ga5.5Nb0.5O14:Cr3+の発光スペクトルは、波長432nmで励起した場合、波長730nmにピークを有し波長600~1300nmのプロードなバンドスペクトルを有することが看取できる。
第6 対比、判断
1 本件訂正発明1について
(1) 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
ア 本件訂正発明1の「第1の光を放射する光源と、」の特定事項について
甲1発明の「400nm~500nmの間の一次ビームを放射する半導体チップ」の「400nm~500nmの間の一次ビーム」及び「半導体チップ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「第1の光」及び「光源」に相当する。
したがって、甲1発明は、上記特定事項を満たしている。
イ 本件訂正発明1の「前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、」の特定事項について
甲1発明の「変換素子」は、本件発明1の「波長変換構造」に相当する。そして、当該「変換素子」は、「前記半導体チップの一次ビームのビーム路内に配置された」ものであるから、本件訂正発明1でいう「前記光源により放射される光の光路に配置された」ものといえる。
したがって、甲1発明は、上記特定事項を満たしている。
ウ 本件訂正発明1の「前記波長変換構造は、赤外光を放射する第1の蛍光体であって、RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1である、第1の蛍光体と、前記第1の光を吸収し、可視光である第3の光を放射する第2の蛍光体と、を有し、」の特定事項について
甲1発明の「変換素子」は、「前記半導体チップから放射される前記一次ビームを、700nm~2,000nmの間の波長の二次ビームに変換」するものであるから、赤外光を含む光を放射するものである。また、「放射する半導体チップ」からの光を波長変換する際に用いられる材料として蛍光材料を用いることが技術常識であることに照らせば、甲1発明の当該「変換素子」に含有されている「変換材料」が「蛍光体」からなることは甲第1号証に記載されているに等しい。そうすると、甲1発明の当該「変換素子」に含有されている当該「変換材料」は、本件訂正発明1の「赤外光を放射する第1の蛍光体」に相当する。
一方、甲1発明の当該「変換材料」は、「金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属酸窒化物およびそれらの組合せを含む化合物のグループから選択されている」「ホスト材料」を含有するものと解されるが、本件訂正発明1の「RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1」である「蛍光体」(以下「特定蛍光体」ということがある。)ではない。
また、甲1発明は、「前記一次ビームを、電磁スペクトルの赤色の領域にある第2の二次ビームに変換する発光体」を含有しているところ、上記の技術常識にも照らせば、甲1発明の「電磁スペクトルの赤色の領域にある第2の二次ビーム」及び「発光体」はそれぞれ、本件訂正発明1の「可視光である第3の光」及び「第2の蛍光体」に相当する。
エ 本件訂正発明1の「前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第2の光を放射し、」の特定事項について
甲1発明の「変換材料」(本件訂正発明1の「第1の蛍光体」に相当。)は、「400nm~500nmの間の一次ビーム」を「700nm~2,000nmの間の波長の二次ビームに変換」するものであるから、甲1発明の「700nm~2,000nmの間の波長の二次ビーム」は、本件訂正発明1の「第2の光」に相当する。
したがって、甲1発明は、上記特定事項を満たしている。
オ 本件訂正発明1の「前記第1の蛍光体は、前記第3の光を吸収して、第4の光を放射し、」の特定事項について
甲1発明は、「変換材料」(本件訂正発明1の「第1の蛍光体」に相当。)が「電磁スペクトルの赤色の領域にある第2の二次ビーム」(本件訂正発明1の「第3の光」に相当。)を吸収するのか不明であり、それに伴い「第4の光を放射」するのかも不明である。
カ 本件訂正発明1の「前記第2の光および前記第4の光は、赤外放射範囲において異なるピーク波長を有する」の特定事項について
甲1発明の「700nm~2,000nmの間の波長の二次ビーム」(本件訂正発明1の「第2の光」に相当。)は、本件訂正発明1でいう「赤外放射範囲」に属する(上記ウ)といえるとともに、当該範囲において「ピーク波長を有する」といえるものの、上記オで述べたように、甲1発明が、そもそも、「第4の光」を放射するのか不明である。
キ 本件訂正発明1の「装置」の特定事項について
甲1発明の「ビーム放射型のオプトエレクトロニクス素子」は本件訂正発明1の「装置」に相当する。
したがって、甲1発明は、上記特定事項を満たしている。
(2) 一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で一致するとともに相違する。
(一致点)
第1の光を放射する光源と、
前記光源により放射される光の光路に配置された波長変換構造と、
を有する装置であって、
前記波長変換構造は、
赤外光を放射する第1の蛍光体と、
前記第1の光を吸収し、可視光である第3の光を放射する第2の蛍光体と、
を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第1の光を吸収して、第2の光を放射し、
前記第2の光は、赤外放射範囲においてピーク波長を有する、
装置。
(相違点1)
「第1の蛍光体」が、本件訂正発明1では「第3の光を吸収して、第4の光を放射」するとともに、「第4の光」は「赤外放射範囲において」第2の光とは「異なるピーク波長を有する」のに対し、甲1発明ではそうであるのか不明である点。
(相違点2)
「第1の蛍光体」が、本件訂正発明1では「RE3Ga5-x-yASiO14:Cry (RE=La, Nd,Gd,Yb,Tm;A=Al,Sc) を有し、ここで0≦x≦1および0.005≦y≦0.1」である蛍光体(特定蛍光体)であるのに対し、甲1発明ではそうではない点。
(3) 判断
ア 事案に鑑みて、相違点2から検討する。
甲1発明は、第1の蛍光体が特定蛍光体ではなく、甲第1号証~甲第3号証にも特定蛍光体について何らの記載も示唆もない。したがって、甲1発明及び甲第1号証~甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が相違点2に係る構成に至ることはない。
イ これに対し、異議申立人は、本件訂正前の請求項3に係る発明が、甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明1」という。)に基づき進歩性を欠如する旨、本件訂正前の請求項1~5及び8に係る発明が、甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明2」という。)に基づく進歩性を欠如する旨主張するが、以下のとおり採用できない。
すなわち、甲1発明1は、変換材料として「(Ga,Cr)2O3から成る副相を有している変換材料La3Ga4.975Cr0.025GeO14」(甲第1号証の【0123】~【0125】・図5・図6)を用いた発明であり、甲1発明2は、変換材料として、「Ln3Ga5.5GeO14:Cr3+」(同【0041】・【0042】)を用いた発明であるところ、これらの発明で用いられている変換材料はいずれも特定蛍光体ではないし、当該変換材料に基づき当業者が特定蛍光体に至るとすることを根拠付ける証拠もない。
ウ したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件訂正発明2~5、8について
本件訂正発明2~5、8は、いずれも本件訂正発明1を直接又は間接に引用してさらに限定したものである。
そうすると、上記1で説示したことと同様の理由により、本件訂正発明2~5、8は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由通知に記載した取消理由に対する当審の判断の小括
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項第3号の特許異議申立理由について
異議申立人は、本件訂正前の請求項1、2、4、5及び8に係る発明が甲1発明1であるから、新規性を欠如する旨主張しているが、上記第6の1(3)イのとおりである。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての小括
したがって、上記の特許異議申立理由は、理由がない。
第8 むすび
以上によれば、取消理由通知書に係る取消理由及び特許異議申立書に係る特許異議申立理由のいずれによっても、本件訂正発明1~5、8についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1~5、8についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700895