特許異議申立
2021-700889
電力変換装置
- 審判番号
- 2021-700889
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-013390
- 登録番号
- 6844725
- 請求日
- 2021年09月15日
- 審決日
- 2022年12月07日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】安孫子 勉
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 山澤 宏
- 審判官 篠原 功一
- 分類
- P1652.113-YAA(H02M) / P1652.121-YAA(H02M) / P1652.537-YAA(H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6844725号発明「電力変換装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6844725号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15、18、22、23〕について訂正することを認める。
特許第6844725号の請求項1-4、6、8-10、22、23に係る特許を維持する。
特許第6844725号の請求項5、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6844725号の請求項1乃至23に係る特許についての出願は、令和2年1月30日(優先権主張 平成31年1月30日)の出願であって、令和3年3月1日にその特許権の設定登録がされ、令和3年3月17日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申し立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 9月15日 :特許異議申立人 安孫子 勉(以下、「申立人」という。)による請求項1-10、22、23に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年12月24日付け:取消理由通知書
令和4年 3月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 4月26日 :申立人による意見書の提出
令和4年 6月 7日付け:訂正拒絶理由通知書
令和4年 7月11日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和4年 7月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年10月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年11月15日 :申立人による意見書の提出
なお、令和4年10月6日に訂正の請求がなされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和4年3月4日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨及び内容
令和4年10月6日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6844725号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-15、18、22、23について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「互いに直列に接続された抵抗(51)及び半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と」
と記載されているのを、
「互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)と、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2-4、6、9-15、18、22、23も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6において、
「請求項1から請求項5のいずれか1項において、」
と記載されているのを、
「請求項1から請求項4のいずれか1項において、」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求8において、
「互いに直列に接続された抵抗(51)及び半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と、」
と記載されているのを、
「互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)と、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9-15、18、22、23も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9において、
「請求項1から請求項8のいずれか1項において、」
と記載されているのを、
「請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8のいずれか1項において、」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10において、
「請求項1から請求項8のいずれか1項において、」
と記載されているのを、
「請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8のいずれか1項において、」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11において、
「請求項1から請求項8のいずれか1項において、」
と記載されているのを、
「請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8のいずれか1項において、」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13において、
「請求項1から請求項12のいずれか1項において、」
と記載されているのを、
「請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8から請求項12のいずれか1項において、」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項22において、
「請求項1から請求項21のいずれか1項において、」
と記載されているのを、
「請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8から請求項21のいずれか1項において、」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項23において、
「請求項1から請求項22のいずれか1つにおいて、」
と記載されているのを、
「請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8から請求項22のいずれか1つにおいて、」に訂正する。
2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項2-4、6、9-15、18、22、23は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1-4、6、9-15、18、22、23に対応する訂正後の請求項1-4、6、9-15、18、22、23は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項6、9-15、18、22、23は請求項5を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項5、6、9-15、18、22、23に対応する訂正後の請求項5、6、9-15、18、22、23は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項9-15、18、22、23は請求項7を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項7、9-15、18、22、23に対応する訂正後の請求項7、9-15、18、22、23は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項9-15、18、22、23は請求項8を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項8-15、18、22、23に対応する訂正後の請求項8-15、18、22、23は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、共通する請求項9-15、18、22、23を有するこれらの「一群の請求項」は、請求項1-15、18、22、23からなる一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「半導体素子(52)」を、「オンオフする半導体素子(52)」としてその動作を限定し、さらに、訂正前の請求項1の「上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)」を「上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)」として制御の対象をより限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付した明細書(以下、単に「本件特許明細書」という。)の段落【0078】には、「上記第2制御部(70)は、2つの設定器(72,73)と、2つの比較器(74,75)と、1つの判定器(76)とを有する。」と記載され、さらに、段落【0082】には、「・・・。判定器(76)の出力端子は、半導体素子(52)の入力端子と接続され、判定器(76)が出力する動作信号(G_OVDPOR)は、半導体素子(52)に印加される。半導体素子(52)はオンまたはオフし、過電圧保護回路(50)は動作または動作を停止する。」と記載されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項1は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項6が請求項1-5の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2による訂正前の請求項5の削除に伴って、引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は、請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
オ 訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項8の「半導体素子(52)」を、「オンオフする半導体素子(52)」としてその動作を限定し、さらに、訂正前の請求項8の「上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)」を「上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)」として制御の対象をより限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0078】には、「上記第2制御部(70)は、2つの設定器(72,73)と、2つの比較器(74,75)と、1つの判定器(76)とを有する。」と記載され、さらに、段落【0082】には、「・・・。判定器(76)の出力端子は、半導体素子(52)の入力端子と接続され、判定器(76)が出力する動作信号(G_OVDPOR)は、半導体素子(52)に印加される。半導体素子(52)はオンまたはオフし、過電圧保護回路(50)は動作または動作を停止する。」と記載されている。したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項5は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
カ 訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項9が請求項1-8の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、4による訂正前の請求項5、7の削除に伴って、引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
キ 訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項10が請求項1-8の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、4による訂正前の請求項5、7の削除に伴って、引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ク 訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項11が請求項1-8の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、4による訂正前の請求項5、7の削除に伴って、引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ケ 訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項13が請求項1-12の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、4による訂正前の請求項5、7の削除に伴って、引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
コ 訂正事項10について
訂正事項10は、訂正前の請求項22が請求項1-21の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、4による訂正前の請求項5、7の削除に伴って、引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
サ 訂正事項11について
訂正事項11は、訂正前の請求項23が請求項1-22の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2、4による訂正前の請求項5、7の削除に伴って、引用する請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
ア 訂正事項1について
本件においては、訂正前の請求項1-10、22、23に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して訂正される、訂正後の請求項1-4、6、9、10、22、23については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して訂正される、訂正後の請求項11-15、18については、特許異議の申立ての対象となっていないので、独立特許要件が課されるため、以下検討する。
(ア)訂正後の請求項11、12について
訂正後の請求項11に記載された発明において特定されている「上記制御回路(60,70)は、
上記スイッチング動作を停止中の上記インバータ回路(40)に上記コンデンサ(31)を介して印加される入力電圧が、第4所定値以上となった場合、上記半導体素子(52)をオンさせて上記過電圧保護回路(50)を動作させ、上記過電圧保護回路(50)の動作開始後、上記スイッチング動作を停止中の上記インバータ回路(40)における複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうち、少なくとも1つをオフからオンに切り替える」ことは、申立人の提出した各証拠には記載も示唆もされておらず、当業者に自明のことでもないから、訂正後の請求項11に係る発明および同項を引用する請求項12に係る発明は、いずれも新規性および進歩性を有する発明である。また、他に訂正後の請求項11および12に係る発明について特許を受けることができないとする理由は見当たらない。
よって、訂正後の請求項11および12に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
(イ)訂正後の請求項13-15について
訂正後の請求項13に記載された発明において特定されている「上記制御回路(60,70)は、上記過電圧保護回路(50)の動作中に、上記インバータ回路(40)の平均出力電力の絶対値が、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のすべてをオフにした場合に比べて小さくなるように、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうちの少なくとも1つをオンさせるオン制御を実行する」ことは、申立人の提出した各証拠には記載も示唆もされておらず、当業者に自明のことでもないから、訂正後の請求項13に係る発明および同項を引用する請求項14、15に係る発明は、いずれも新規性および進歩性を有する発明である。また、他に訂正後の請求項13-15に係る発明について特許を受けることができないとする理由は見当たらない。
よって、訂正後の請求項13-15に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
(ウ)訂正後の請求項18について
訂正後の請求項18に係る発明は、請求項13から請求項17を引用するものであるが、独立請求項である請求項16、17については訂正が行われていないことから、請求項16、17を引用する請求項18も訂正が行われていない。そして、請求項13-15を引用する請求項18に関して、上記(イ)で述べたように請求項13-15は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、請求項13-15を引用する請求項18も、同様に、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
イ 訂正事項2-4、6、7について
本件においては、訂正前の請求項1-10、22、23に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項5-7、9、10に係る訂正事項2-4、6、7に関して訂正される、訂正後の請求項5-7、9、10については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
ウ 訂正事項5について
本件においては、訂正前の請求項1-10、22、23に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項8に係る訂正事項5に関して訂正される、訂正後の請求項8-10、22、23については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項8に係る訂正事項5に関して訂正される、訂正後の請求項11-15、18については、特許異議の申立ての対象となっていなかったため、独立特許要件が課されるところ、上記アで述べた理由と同じ理由により、訂正後の請求項11-15、18は、独立特許要件を満たす。
エ 訂正事項8について
訂正事項8に関して訂正される訂正後の請求項11については、特許異議の申立ての対象となっていなかったため、独立特許要件が課されるところ、上記ア(ア)で述べた理由と同じ理由により、訂正後の請求項11は、独立特許要件を満たす。
オ 訂正事項9について
訂正事項9に関して訂正される訂正後の請求項13については、特許異議の申立ての対象となっていなかったため、独立特許要件が課されるところ、上記ア(イ)で述べた理由と同じ理由により、訂正後の請求項13は、独立特許要件を満たす。
カ 訂正事項10、11について
本件においては、訂正前の請求項1-10、22、23に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項22、23に係る訂正事項10、11に関して訂正される、訂正後の請求項22、23については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項、及び同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1-15、18、22、23〕について訂正することを認める。
第3 当審の判断
1 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-23に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」-「本件特許発明23」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-23に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、下線は訂正された箇所を示す。)。
「【請求項1】
交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記コンデンサ(31)の容量をC、上記コンデンサ(31)の耐電圧をVc1、上記スイッチング動作中のコンデンサ(31)のピーク電圧をVc2、上記負荷に蓄えられる最大の磁気エネルギーをEとした場合に、下式が成り立つことを特徴とする電力変換装置。
C(Vc12-Vc22)/2<E
【請求項2】
請求項1において、
上記コンデンサ(31)の容量は、上記スイッチング素子(41a~46a)のスイッチング周期間における当該コンデンサ(31)の電圧変動を、該コンデンサ(31)の電圧の平均値の1/10以下に抑えるように設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記コンバータ回路(20)、上記インバータ回路(40)、上記過電圧保護回路(50)、及び上記制御回路(60,70)は、同一基板に実装されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項において、
少なくとも上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)は、同一パッケージ(P1)内に収められている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】 (削除)
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項において、
上記制御回路(60,70)は、上記インバータ回路(40)による負荷への電力供給を停止させるときに、上記過電圧保護回路(50)を動作させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】 (削除)
【請求項8】
交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記制御回路(60,70)は、上記コンデンサ(31)を含む回路で共振が発生する期間の一部において、上記過電圧保護回路(50)を動作させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8のいずれか1項において、
上記制御回路(60,70)は、
上記インバータ回路(40)に上記コンデンサ(31)を介して印加される入力電圧が、第1所定値以上となった場合、上記半導体素子(52)をオンさせて上記過電圧保護回路(50)を動作させ、
上記過電圧保護回路(50)の動作開始後、上記インバータ回路(40)に印加される上記入力電圧が、第2所定値以下となった場合、上記半導体素子(52)をオフさせて上記過電圧保護回路(50)の動作を停止させ、
上記第2所定値は、上記第1所定値よりも低く設定されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1から請求項4、請求項6、及び請求8のいずれか1項において、
上記制御回路(60,70)は、
上記インバータ回路(40)に上記コンデンサ(31)を介して印加される入力電圧が、第3所定値以上となった場合、上記半導体素子(52)をオンさせて上記過電圧保護回路(50)の動作を開始させ、
上記過電圧保護回路(50)が動作を開始してから所定時間経過した場合、上記半導体素子(52)をオフさせて上記過電圧保護回路(50)の動作を停止させる、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項1から請求項4、請求項6、及び請求8のいずれか1項において、
上記制御回路(60,70)は、
上記スイッチング動作を停止中の上記インバータ回路(40)に上記コンデンサ(31)を介して印加される入力電圧が、第4所定値以上となった場合、上記半導体素子(52)をオンさせて上記過電圧保護回路(50)を動作させ、
上記過電圧保護回路(50)の動作開始後、上記スイッチング動作を停止中の上記インバータ回路(40)における複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうち、少なくとも1つをオフからオンに切り替える、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項11において、
上記制御回路(60,70)は、上記スイッチング素子(41a~46a)の少なくとも1つをオンさせた後、上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)をオフさせて上記過電圧保護回路(50)の動作を停止させる
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8から請求12のいずれか1項において、
上記制御回路(60,70)は、上記過電圧保護回路(50)の動作中に、上記インバータ回路(40)の平均出力電力の絶対値が、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のすべてをオフにした場合に比べて小さくなるように、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうちの少なくとも1つをオンさせるオン制御を実行することを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項13において、
上記オン制御は、上記インバータ回路(40)の平均出力電力が略零となるように行われることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項13又は14において、
上記オン制御は、上記インバータ回路(40)を零ベクトルの状態とするものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及び半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記制御回路(60,70)は、上記過電圧保護回路(50)の動作中に、上記インバータ回路(40)の平均出力電力の絶対値が、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のすべてをオフにした場合に比べて小さくなるように、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうちの少なくとも1つをオンさせるオン制御を、上記スイッチング素子(41a~46a)のスイッチング周期において、上記インバータ回路(40)の出力電力が正と負に切り替えられ、かつ各スイッチング周期における上記インバータ回路(40)の平均出力電力が略零となるように実行することを特徴とする電力変換装置。
【請求項17】
交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及び半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記制御回路(60,70)は、上記過電圧保護回路(50)の動作中に、上記インバータ回路(40)の平均出力電力の絶対値が、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のすべてをオフにした場合に比べて小さくなるように、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうちの少なくとも1つをオンさせるオン制御を、上記スイッチング素子(41a~46a)の複数の連続するスイッチング周期内において、上記インバータ回路(40)の出力電力が正と負に切り替えられ、かつ当該複数の連続するスイッチング周期内における上記インバータ回路(40)の平均出力電力が略零となるように実行することを特徴とする電力変換装置。
【請求項18】
請求項13から請求項17のいずれか1項において、
上記オン制御は、上記インバータ回路(40)から上記コンデンサ(31)に流れる電流、及び上記コンデンサ(31)の電圧のうちの少なくとも一方に基づいて、上記スイッチング素子(41a~46a)を制御するスイッチング信号を制御するものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項19】
交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及び半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記制御回路(60,70)は、上記過電圧保護回路(50)の動作中に、上記インバータ回路(40)の平均出力電力の絶対値が、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のすべてをオフにした場合に比べて小さくなるように、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうちの少なくとも1つをオンさせるオン制御を実行し、
上記オン制御中における上記スイッチング素子(41a~46a)のスイッチング周期は、上記負荷への電力供給中における上記スイッチング周期よりも短く設定されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項20】
交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及び半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記制御回路(60,70)は、上記過電圧保護回路(50)の動作中に、上記インバータ回路(40)の平均出力電力の絶対値が、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のすべてをオフにした場合に比べて小さくなるように、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうちの少なくとも1つをオンさせるオン制御を実行し、
上記負荷は、磁石モータであり、
上記オン制御中における上記負荷のd軸電流をId、上記負荷のq軸電流をIq、上記負荷の磁石に不可逆減磁を起こすd軸電流の大きさの最小値をIm、上記磁石の磁束をΦm、上記負荷のd軸インダクタンスをLdとした場合に、上記オン制御は、下式が成り立つように行われることを特徴とする電力変換装置。
(Id+Φm/Ld)2+Iq2<Im2
【請求項21】
交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及び半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記制御回路(60,70)は、上記過電圧保護回路(50)の動作中に、上記インバータ回路(40)の平均出力電力の絶対値が、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のすべてをオフにした場合に比べて小さくなるように、複数の上記スイッチング素子(41a~46a)のうちの少なくとも1つをオンさせるオン制御を実行し、
上記オン制御中における上記負荷のdq軸電流ベクトルの大きさをIdq、上記負荷の磁石に不可逆減磁を起こすd軸電流の大きさの最小値をIm、上記磁石の磁束をΦm、上記負荷のd軸インダクタンスをLdとした場合に、上記オン制御は、下式が成り立つように行われることを特徴とする電力変換装置。
Idq<Im-Φm/Ld
【請求項22】
請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8から請求21のいずれか1項において、
上記スイッチング素子(41a~46a)は、炭化珪素、窒化ガリウム又はダイヤモンドを含むワイドバンドギャップ半導体を主材料とした素子である
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項23】
請求項1から請求項4、請求項6、及び請求項8から請求22のいずれか1つにおいて、
上記半導体素子(52)は、炭化珪素、窒化ガリウム又はダイヤモンドを含むワイドバンドギャップ半導体を主材料とした素子である
ことを特徴とする電力変換装置。」
2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
令和4年7月29日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
ア (理由1)請求項1、3、4、6、22、23(いずれも当該請求項より前に記載した請求項を引用するものに限る。例えば、請求項6であれば、請求項1、1及び3、1及び4、1及び3及び4を引用するものに限る。)に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3、4、6、22、23に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ (理由2)請求項7、8、22、23(いずれも当該請求項より前に記載した請求項を引用するものに限る。)に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7、8、22、23に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ (理由3)本件特許は、特許請求の範囲の請求項7に記載の「上記交流電源(1)の電圧が急上昇した直後に上記コンデンサ(31)が充電される期間の一部」が具体的にどの期間を意味するのか不明確であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
< 引 用 文 献 等 一 覧 >
引用文献1:特開2014-131446号公報(甲第1号証)
(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同じ。)
A 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のように直流リンク部に比較的容量の小さいコンデンサを設けると、該直流リンク部に印加される電圧が、コンデンサの耐圧を超えやすくなる。そうなると、該コンデンサの耐用寿命が短くなってしまう虞がある。
【0009】
また、上述のように直流リンク部に設けられるコンデンサの容量を小さくすると、該コンデンサに蓄積可能な電荷量が減少するため、直流リンク部の電圧が減少しやすくなる。その結果、モータを駆動させるのに十分な電力を供給できなくなる虞が生じる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンバータ回路の出力に比較的小容量のコンデンサが並列に接続されている電力変換装置において、コンデンサの過剰な電圧上昇やモータへの電圧不足に起因して該電力変換装置の信頼性が損なわれるのを回避することである。」
B「【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0042】
《発明の実施形態1》
-全体構成-
発明の実施形態1に係る電力変換装置(1)は、図1に示すように、コンバータ回路(2)、直流リンク部(3)、RCD回路(4)、直列回路(5)、インバータ回路(6)、及びコントローラ(10)を備えている。この電力変換装置(1)は、単相の交流電源(7)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、同期モータ(8)に供給する。なお、本実施形態1の同期モータ(8)は、三相交流モータであり、例えば、空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動するために用いられる。また、交流電源(7)には、リアクタ(7a)が直列に接続されている。
【0043】
コンバータ回路(2)は、交流電源(7)に接続され、交流電源(7)が出力した交流を直流に全波整流する。この例では、コンバータ回路(2)は、複数(本実施形態では4つ)のダイオード(D1~D4)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。これらのダイオード(D1~D4)は、交流電源(7)の交流電圧を全波整流して、直流電圧に変換する。
【0044】
直流リンク部(3)は、第1コンデンサ(3a)を備えている。この第1コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)の出力に並列接続され、該第1コンデンサ(3a)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧(vdc))がインバータ回路(6)の入力ノードに接続されている。第1コンデンサ(3a)は、例えばフィルムコンデンサによって構成されている。第1コンデンサ(3a)は、インバータ回路(6)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じる電圧の変動を平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、第1コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない、比較的小容量のコンデンサである。そのため、通常の負荷状態において、直流リンク部(3)が出力する直流リンク電圧(vdc)は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。この例では、交流電源(7)は単相交流電源なので、直流電圧(vdc)は、電源周波数(例えば50Hz)の2倍の周波数で脈動する。
【0045】
インバータ回路(6)は、入力ノードが直流リンク部(3)の第1コンデンサ(3a)に並列に接続され、直流リンク部(3)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続された同期モータ(8)に供給する。実施形態1のインバータ回路(6)は、複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)がブリッジ結線されて構成されている。このインバータ回路(6)は、三相交流を同期モータ(8)に出力するので、6個のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えている。詳しくは、インバータ回路(6)は、直列に接続された2つのスイッチング素子を有するスイッチングレグを3つ備えている。各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)と下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)との中点が、それぞれ同期モータ(8)の各相のコイル(図示省略)に接続されている。また、各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)には、還流ダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)が逆並列に接続されている。インバータ回路(6)は、これらのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、直流リンク部(3)から入力された直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして三相交流電圧に変換し、同期モータ(8)へ供給する。このオンオフ動作の制御は、コントローラ(10)のインバータ回路制御部(13)が行う。
【0046】
RCD回路(4)は、コンバータ回路(2)の出力に並列に接続されている。このRCD回路(4)は、交流電源(7)をオンしたときに発生するリアクタ(7a)及び第1コンデンサ(3a)の共振に起因する直流リンク部(3)の電圧上昇を抑制するためのものである。RCD回路(4)は、直列に接続されたダイオード(4a)、抵抗(4b)、及び第2コンデンサ(4c)を備えている。ダイオード(4a)は、アノード側が上記コンバータ回路(2)の出力の高圧側に接続され、カソード側が抵抗(4b)の一端側に接続されている。抵抗(4b)は、他端側が第2コンデンサ(4c)の一端側に接続されている。第2コンデンサ(4c)は、他端側がコンバータ回路(2)の出力の低圧側に接続されている。第2コンデンサ(4c)には、コントローラ(10)に電力を供給するためのコントローラ用電源(15)が並列に接続されている。これにより、第2コンデンサ(4c)に蓄積された電荷を、コントローラ(10)の電源として利用できる。
【0047】
直列回路(5)は、コンバータ回路(2)の出力に並列に接続されている。直列回路(5)は、スイッチとしてのリレー(5a)と上記第2コンデンサ(4c)とが直列に接続されたものである。リレー(5a)は、一端がコンバータ回路(2)の出力の高圧側に接続され、他端がRCD回路(4)の抵抗(4b)と第2コンデンサ(4c)との間に接続されている。
【0048】
コントローラ(10)は、出力部(11)と、制御部(12)とを備えている。コントローラ(10)は、コントローラ用電源(15)によって駆動される。
【0049】
制御部(12)は、インバータ回路制御部(13)と、スイッチ制御部としてのリレー制御部(14)とを備えている。インバータ回路制御部(13)は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を制御するためのものである。リレー制御部(14)は、リレー(5a)の開閉を制御するためのものである。
【0050】
出力部(11)は、インバータ回路制御部(13)がスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を開始すると、オン信号Sonをリレー制御部(14)へ送信する。オン信号Sonを受信したリレー制御部(14)は、リレー(5a)をオンする。つまり、リレー(5a)は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作開始直後にオン状態になる。また、出力部(11)は、同期モータ(8)が強制同期運転から位置検出運転に切り換わったときに、オフ信号Soffをリレー制御部(14)へ送信する。オフ信号Soffを受信したリレー制御部(14)は、リレー(5a)をオフする。
【0051】
更に、出力部(11)は、インバータ回路制御部(13)が同期モータ(8)を停止するためにスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を停止すると、オン信号Sonをリレー制御部(14)へ送信する。オン信号Sonを受信したリレー制御部(14)は、リレー(5a)をオンする。つまり、リレー(5a)は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作停止直後にオン状態になる。」
C 「【0073】
また、同期モータ(8)の駆動を停止するためにインバータ回路(6)のスイッチング動作が停止されると、同期モータ(8)のコイルから電流が直流リンク部(3)側へ流れ込むため、第1コンデンサ(3a)が過電圧になりやすい。
【0074】
これに対して、本実施形態では、インバータ回路(6)のスイッチング動作が停止した後に、出力部(11)が駆動信号Sonをリレー制御部(14)へ送信する。これにより、リレー(5a)がオン状態になる。その結果、第1コンデンサ(3a)と並列に第2コンデンサ(4c)を接続することができるので、同期モータ(8)のコイルから直流リンク部(3)側へ流れ込む電流に起因する直流リンク部(3)の電圧の上昇を抑制できる。また、インバータ回路(6)のスイッチング動作停止時にリレー(5a)をオンすることで、同期モータ(8)からの回生電流が第2コンデンサ(4c)に流れやすくなるため、直流リンク部(3)の電圧上昇をより低減できる。なお、インバータ回路(6)のスイッチング動作が停止した後、リレー(5a)をオンさせるタイミングは、直流リング部(3)の電圧が過電圧とならない程度の所定のタイミングに設定される。
【0075】
また、インバータ回路(6)のスイッチング動作の停止と同時に、あるいはスイッチング動作の停止よりも前にリレー(5a)がオン状態となるようにリレー(5a)を制御してもよい。こうすると、第1コンデンサ(3a)の過剰な電圧上昇をより確実に抑制できる。
【0076】
-実施形態1の効果-
以上のように、実施形態1に係る電力変換装置(1)によれば、同期モータ(8)が比較的低い力率で動作する強制同期運転中に、リレー(5a)がオン状態になる。これにより、同期モータ(8)から直流リンク部(3)へ流れ込む電力に起因する第1コンデンサ(3a)の過電圧を抑制できる。その結果、比較的簡単な構成で第1コンデンサ(3a)の耐用寿命を長くでき、電力変換装置(1)の製品寿命を長くできる。また、リレー(5a)が省略された構成と比べると、第1コンデンサ(3a)の過電圧を抑制しつつ、より負荷が大きいモータを起動させることができる。」
D 「【0084】
《発明の実施形態3》
実施形態3の電力変換装置(1)は、直流リンク部(3)に印加される電圧に基づいて、リレー(5a)の開閉が制御されるように構成されている。具体的には、実施形態3の電力変換装置(1)は、直流リンク部(3)に印加される電圧が所定値を超えたときに、リレー(5a)をオン状態にする。
【0085】
実施形態3の電力変換装置(1)のリンク部電圧検出部(30)は、記憶部(30a)と、検出部(30b)と、比較部(30c)と、出力部(30d)とを備えている。
【0086】
記憶部(30a)には、直流リンク部(3)の電圧の閾値(vth1)が記憶されている。この閾値(vth1)としては、第1コンデンサ(3a)の耐電圧よりも余裕をみた、該耐電圧よりも低い値が設定される。検出部(30b)では、直流リンク部(3)の電圧(vdc)が検出される。比較部(30c)は、上記閾値(vth1)と、直流リンク部(3)の電圧(vdc)とを比較する。比較部(30c)において、上記電圧(vdc)が閾値(vth1)以下のとき、出力部(30d)は、リレー制御部(14)へオフ信号Soffを送信する。一方、上記電圧(vdc)が閾値(vth1)を超えた場合、出力部(30d)は、リレー制御部(14)へオン信号Sonを送信し、リレー(5a)がオンする。
【0087】
-実施形態3の効果-
以上のように、実施形態3に係る電力変換装置(1)では、直流リンク部(3)に印加される電圧が、第1コンデンサ(3a)の耐圧から余裕をみた閾値(vth1)を超えたときに、リレー(5a)をオン状態にする。これにより、第1コンデンサ(3a)の過電圧を抑制できる。
【0088】
また、実施形態3の電力変換装置(1)では、リアクタ(7a)と第1コンデンサ(3a)との間で発生する共振に起因する第1コンデンサ(3a)の過電圧や、雷サージ電流に起因する第1コンデンサ(3a)の過電圧を抑制することもできる。」
E 「【図1】
[図:0001395180000001.jpg]
」
(イ)引用発明
A 上記(ア)Bの段落【0043】には、“交流電源(7)が出力した交流を直流に全波整流するコンバータ回路(2)”が記載されている。
B 上記(ア)Bの段落【0045】には、「インバータ回路(6)は、複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)がブリッジ結線されて構成されている」こと、また、「インバータ回路(6)は、入力ノードが直流リンク部(3)の第1コンデンサ(3a)に並列に接続され、直流リンク部(3)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続された同期モータ(8)に供給する」ことが記載されている。
してみると、引用文献1には、“複数のスイッチング素子(Su, Sv, Sw, Sx, Sy, Sz)を有し、第1コンデンサ(3a)を備える直流リンク部(3)の出力を三相交流に変換して同期モータ(8)に供給するインバータ回路(6)”が記載されているといえる。
C 上記(ア)Bの段落【0044】には、「この第1コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)の出力に並列接続され」ていることが記載され、また、図1(上記(ア)E)によれば、“第1コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)の間にあり、インバータ回路(6)に対しても並列に接続されている”ことが看取できる。
さらに、上記(ア)Bの段落【0044】には、「第1コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない、比較的小容量のコンデンサである」こと、また、「第1コンデンサ(3a)は、インバータ回路(6)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じる電圧の変動を平滑化可能な静電容量を有している」ことが記載されている。
してみると、引用文献1には、“コンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)の間においてコンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)それぞれに対し並列に接続され、コンバータ回路(2)によって整流された電圧を平滑化するような静電容量を有さず、インバータ回路(6)のスイッチング素子(Su, Sv, Sw, Sx, Sy, Sz)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じる電圧の変動を平滑化可能な静電容量を有している第1コンデンサ(3a)”が記載されているといえる。
D 上記(ア)Bの段落【0046】には、「RCD回路(4)は、直列に接続されたダイオード(4a)、抵抗(4b)、及び第2コンデンサ(4c)を備えている」こと、また、「第2コンデンサ(4c)には、コントローラ(10)に電力を供給するためのコントローラ用電源(15)が並列に接続されている。これにより、第2コンデンサ(4c)に蓄積された電荷を、コントローラ(10)の電源として利用できる」こと、さらに、「このRCD回路(4)は、交流電源(7)をオンしたときに発生するリアクタ(7a)及び第1コンデンサ(3a)の共振に起因する直流リンク部(3)の電圧上昇を抑制するためのものである」ことが記載されている。また、図1(上記(ア)E)によれば、“RCD回路(4)は、第1コンデンサ(3a)に並列に接続されている”ことが看取できる。
さらに、上記(ア)Bの段落【0047】には、「直列回路(5)は、スイッチとしてのリレー(5a)と上記第2コンデンサ(4c)とが直列に接続されたものである」こと、および、「リレー(5a)は、一端がコンバータ回路(2)の出力の高圧側に接続され、他端がRCD回路(4)の抵抗(4b)と第2コンデンサ(4c)との間に接続されている」ことが記載されている。また、上記(ア)Cの段落【0073】、【0074】には、“同期モータ(8)の駆動を停止するためにインバータ回路(6)のスイッチング動作が停止した後に、リレー(5a)がオン状態になり、第1コンデンサ(3a)と並列に第2コンデンサ(4c)を接続することができ、同期モータ(8)のコイルから直流リンク部(3)側へ流れ込む電流に起因する直流リンク部(3)の電圧の上昇を抑制できる”ことが記載されている。
してみると、引用文献1には、“互いに直列に接続されたダイオード(4a)、抵抗(4b)及びコントローラ(10)の電源として利用できる第2コンデンサ(4c)を有し、第1コンデンサ(3a)に対し並列に接続され、交流電源(7)をオンしたときに発生するリアクタ(7a)及び第1コンデンサ(3a)の共振に起因する直流リンク部(3)の電圧上昇を抑制するRCD回路(4)、及びスイッチとしてのリレー(5a)と第2コンデンサ(4c)とが直列に接続され、リレー(5a)は、一端がコンバータ回路(2)の出力の高圧側に接続され、他端がRCD回路(4)の抵抗(4b)と第2コンデンサ(4c)との間に接続され、同期モータ(8)の駆動を停止するためにインバータ回路(6)のスイッチング動作が停止した後に、リレー(5a)がオン状態になり、第1コンデンサ(3a)と並列に第2コンデンサ(4c)を接続することができ、同期モータ(8)のコイルから直流リンク部(3)側へ流れ込む電流に起因する直流リンク部(3)の電圧の上昇を抑制できる直列回路(5)”が記載されているといえる。
E 上記(ア)Bの段落【0046】、【0048】-【0051】には、“インバータ回路(6)とリレー(5a)を制御するコントローラ(10)”が記載されている。
F 上記(ア)Bの段落【0042】には、「電力変換装置(1)は、・・・、コンバータ回路(2)、直流リンク部(3)、RCD回路(4)、直列回路(5)、インバータ回路(6)、及びコントローラ(10)を備えている」ことが記載され、さらに、段落【0044】には、「直流リンク部(3)は、第1コンデンサ(3a)を備えている」ことが記載されている。
してみると、引用文献1には、“インバータ回路(6)と、第1コンデンサ(3a)と、RCD回路(4)及び直列回路(5)と、コントローラ(10)と、を備える電力変換装置(1)”が記載されているといえる。
上記A乃至Fの記載内容からすると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「交流電源(7)が出力した交流を直流に全波整流するコンバータ回路(2)と、
複数のスイッチング素子(Su, Sv, Sw, Sx, Sy, Sz)を有し、第1コンデンサ(3a)を備える直流リンク部(3)の出力を三相交流に変換して同期モータ(8)に供給するインバータ回路(6)と、
コンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)の間においてコンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)それぞれに対し並列に接続され、コンバータ回路(2)によって整流された電圧を平滑化するような静電容量を有さず、インバータ回路(6)のスイッチング素子(Su, Sv, Sw, Sx, Sy, Sz)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じる電圧の変動を平滑化可能な静電容量を有している第1コンデンサ(3a)と、
互いに直列に接続されたダイオード(4a)、抵抗(4b)及びコントローラ(10)の電源として利用できる第2コンデンサ(4c)を有し、第1コンデンサ(3a)に対し並列に接続され、交流電源(7)をオンしたときに発生するリアクタ(7a)及び第1コンデンサ(3a)の共振に起因する直流リンク部(3)の電圧上昇を抑制するRCD回路(4)、及びスイッチとしてのリレー(5a)と第2コンデンサ(4c)とが直列に接続され、リレー(5a)は、一端がコンバータ回路(2)の出力の高圧側に接続され、他端がRCD回路(4)の抵抗(4b)と第2コンデンサ(4c)との間に接続され、同期モータ(8)の駆動を停止するためにインバータ回路(6)のスイッチング動作が停止した後に、リレー(5a)がオン状態になり、第1コンデンサ(3a)と並列に第2コンデンサ(4c)を接続することができ、同期モータ(8)のコイルから直流リンク部(3)側へ流れ込む電流に起因する直流リンク部(3)の電圧の上昇を抑制できる直列回路(5)と、
インバータ回路(6)とリレー(5a)を制御するコントローラ(10)と、
を備える電力変換装置(1)。」
(3)取消理由についての当審の判断
ア 理由1について(特許法第29条第1項第3号)
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明を対比する。
A 引用発明の「コンバータ回路(2)」は、「交流電源(7)が出力した交流を直流に全波整流する」ものであるから、本件特許発明1の「交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)」に相当する。
B 引用発明の「インバータ回路(6)」は、「複数のスイッチング素子(Su, Sv, Sw, Sx, Sy, Sz)を有し、第1コンデンサ(3a)を備える直流リンク部(3)の出力を三相交流に変換」するものであって、また、「第1コンデンサ(3a)」は「コンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)それぞれに対し並列に接続され」るものであり、引用発明の「インバータ回路(6)」は、「コンバータ回路(2)」が全波整流した直流電力を交流電力に変換しているといえる。
してみると、引用発明の「複数のスイッチング素子(Su, Sv, Sw, Sx, Sy, Sz)」は、本件特許発明1の「複数のスイッチング素子(41a~46a)」に相当し、そして、引用発明の「インバータ回路(6)」は、本件特許発明1の「複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)」に相当する。
C 引用発明の「第1コンデンサ(3a)」は、「コンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)の間においてコンバータ回路(2)及びインバータ回路(6)それぞれに対し並列に接続され、コンバータ回路(2)によって整流された電圧を平滑化するような静電容量を有さず、インバータ回路(6)のスイッチング素子(Su, Sv, Sw, Sx, Sy, Sz)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じる電圧の変動を平滑可能な静電容量を有」するものであるから、本件特許発明1の「上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)」に相当する。
D 引用発明の「RCD回路(4)」は、「互いに直列に接続されたダイオード(4a)、抵抗(4b)及び・・・コンデンサ(4c)を有し、第1コンデンサ(3a)に対し並列に接続され、交流電源(7)をオンしたときに発生するリアクタ(7a)及び第1コンデンサ(3a)の共振に起因する直流リンク部(3)の電圧上昇を抑制する」ものであり、互いに直列に接続された抵抗(4b)及びダイオード(4a)を有し、第1コンデンサ(3a)に対し並列に接続された、直流リンク部(3)を過電圧から保護する回路といえる。また、「直列回路(5)」も、「同期モータ(8)の駆動を停止するためにインバータ回路(6)のスイッチング動作が停止した後に、リレー(5a)がオン状態になり、第1コンデンサ(3a)と並列に第2コンデンサ(4c)を接続することができ、同期モータ(8)のコイルから直流リンク部(3)側へ流れ込む電流に起因する直流リンク部(3)の電圧の上昇を抑制できる」ものであり、直流リンク部(3)を過電圧から保護する回路といえる。
また、ダイオードは半導体素子であって、さらに、加える電圧によってオンオフする素子である。
したがって、引用発明の「抵抗(4b)」、「ダイオード(4a)」は、各々、本件特許発明1の「抵抗(51)」、「オンオフする半導体素子(52)」に相当し、引用発明の「RCD回路(4)」及び「直列回路(5)」と、本件特許発明1の「互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)」とは、後記の点で相違するものの、“互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、回路に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)”の点では共通する。
E 引用発明の「コントローラ(10)」は、「インバータ回路(6)とリレー(5a)を制御する」ものである。
ここで、引用発明の「ダイオード(4a)」は、「コントローラ(10)」によって、オンオフが制御されるものではないから、引用発明の「コントローラ(10)」と、本件特許発明1の「上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)」とは、後記の点で相違するものの、“上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)”の点では共通する。
F 本件特許発明1の「上記コンデンサ(31)の容量をC、上記コンデンサ(31)の耐電圧をVc1、上記スイッチング動作中のコンデンサ(31)のピーク電圧をVc2、上記負荷に蓄えられる最大の磁気エネルギーをEとした場合に、下式が成り立つこと・・・ C(Vc12-Vc22)/2<E」について検討する。
当該数式は、本件特許明細書の段落【0100】の記載から、コンデンサ(31)の耐電圧におけるエネルギー(CVc12/2)とスイッチング動作中のピーク電圧におけるエネルギー(CVc22/2)の差、すなわち、コンデンサ(31)の電圧が定常動作電圧を超えて耐電圧に至るまでにコンデンサ(31)が保有可能なエネルギーが、負荷(2)に蓄えられる最大の磁気エネルギーEよりも小さいことを表しており、これは、過電圧保護回路(50)がなければ、インバータ回路(40)のスイッチング停止時に負荷(2)のエネルギーがコンデンサ(31)に吸収されて耐電圧を超えてしまう程度にコンデンサ(31)の容量が小さいことを意味しているものと認められる。
引用文献1には、第1コンデンサ(3a)の容量について本件特許発明1のような数式の明記はないが、当該容量を小容量とすること(段落【0044】)、及び小容量とすることにより生じる弊害を回避するためにRCD回路(4)及び直列回路(5)を設け、スイッチング動作の停止時にリレー(5a)をオンにすることで第1コンデンサ(3a)の耐電圧を超えないようにすることが記載されており(段落【0008】-【0010】、【0074】-【0076】)、第1コンデンサ(3a)として上記数式を満たす容量を有するコンデンサが採用されることは引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められる。
G 引用発明の「電力変換装置(1)」は、「コンバータ回路(2)」と、「インバータ回路(6)」と、「第1コンデンサ(3a)」と、「RCD回路(4)、及び直列回路(5)」と、「コントローラ(10)」とを備えるものであるから、本件特許発明1の「電力変換装置」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「交流電源(1)から出力される交流の電源電力を直流電力に変換するコンバータ回路(20)と、
複数のスイッチング素子(41a~46a)を有し、上記直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータ回路(40)と、
上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)の間において上記コンバータ回路(20)及び上記インバータ回路(40)それぞれに対し並列に接続され、上記コンバータ回路(20)の出力電圧の変動を許容し、スイッチング動作に起因する上記インバータ回路(40)の出力電圧の変動を吸収するコンデンサ(31)と、
互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、回路に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)と、
上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)を制御する制御回路(60,70)と
を備え、
上記コンデンサ(31)の容量をC、上記コンデンサ(31)の耐電圧をVc1、上記スイッチング動作中のコンデンサ(31)のピーク電圧をVc2、上記負荷に蓄えられる最大の磁気エネルギーをEとした場合に、下式が成り立つ、電力変換装置。
C(Vc12-Vc22)/2<E」
(相違点1)
「過電圧保護回路(50)」が、本件特許発明1では、「上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する」ものであるのに対して、引用発明では、「RCD回路(4)」及び「直列回路(5)」が保護する回路が、「インバータ回路(6)」とは特定されていない点。
(相違点2)
「制御回路(60,70)」が、本件特許発明1では、「上記半導体素子(52)のオンオフを制御する」ものであるのに対して、引用発明では、「ダイオード(4a)のオンオフを制御する」ものではない点。
したがって、本件特許発明1は、引用発明と、上記相違点1、2において相違するものであるから、引用文献1に記載された発明ではない。
(イ)本件特許発明3、4、6、22、23について
本件特許発明3、4、6、22、23はいずれも請求項1を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明3、4、6、22、23は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明3、4、6、22、23は、引用文献1に記載された発明ではない。
イ 理由2について(特許法第29条第2項)
(ア)本件特許発明7について
本件訂正請求により請求項7は削除されたから、取消理由の対象となる請求項が存在しない。
(イ)本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明1の
「上記コンデンサ(31)の容量をC、上記コンデンサ(31)の耐電圧をVc1、上記スイッチング動作中のコンデンサ(31)のピーク電圧をVc2、上記負荷に蓄えられる最大の磁気エネルギーをEとした場合に、下式が成り立つ・・・
C(Vc12-Vc22)/2<E」
を、
「上記制御回路(60,70)は、上記コンデンサ(31)を含む回路で共振が発生する期間の一部において、上記過電圧保護回路(50)を動作させる」
としたものであるので、本件特許発明8と引用発明を対比すると、上記相違点1、2に加え、以下の相違点3で相違する。
(相違点3)
本件特許発明8では「上記制御回路(60,70)は、上記コンデンサ(31)を含む回路で共振が発生する期間の一部において、上記過電圧保護回路(50)を動作させる」ものであるのに対して、引用発明ではその旨の特定がされていない点。
事案に鑑み、相違点2について先に検討する。
ダイオードは、外部の制御部によるオンオフの制御をすることはできない素子である。
したがって、引用発明の「制御回路(60,70)」によって、「ダイオード(4a)」のオンオフを制御することはできない。
また、過電圧保護回路として、スイッチング素子と抵抗を直列に接続して、スイッチング素子をオンとすることで過電圧から回路を保護することは周知の技術と認められる。
しかしながら、引用発明の「RCD回路(4)」及び「直列回路(5)」(本件特許発明8の「過電圧保護回路(50)」に相当)を、周知の過電圧保護回路に代える理由がなく、さらに、引用発明の「RCD回路(4)」及び「直列回路(5)」の「第2コンデンサ(4a)」は、コントローラ(10)の電源として利用されるものであり、仮に、周知の過電圧保護回路に代えてしまうと、コントローラ(10)の電源がなくなってしまうことから、周知の過電圧保護回路に代えることには阻害要因があるといえる。
したがって、上記相違点1、3について検討するまでもなく、本件特許発明8は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(ウ)本件特許発明22、23について
本件特許発明22、23はいずれも請求項8を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明22、23は、本件特許発明8の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件特許発明8についての判断と同様の理由により、本件特許発明22、23は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
ウ 理由3について(特許法第36条第6項第2号)
本件訂正請求により請求項7は削除されたことから、取消理由の対象となる請求項が存在しない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等について
(1)申立理由の概要
ア 特許法第29条第2項
請求項1、2、6、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、また、請求項3、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、周知技術(甲第2号証)に基いて、また、請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第3号証に記載された発明に基いて、また、請求項9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第4号証に記載された発明に基いて、また、請求項10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、周知技術(甲第5号証)に基いて、また、請求項22、23に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、周知技術(甲第6号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1-10、22、23に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
< 引用文献等一覧 >
甲第1号証:特開2014-131446号公報(引用文献1)
甲第2号証:特開2015-216746号公報
甲第3号証:Marko Hinkkanen and Jorma Luomi、「Induction Motor Drives Equipped With Diode Rectifier and Small DC-Link Capacitance」、IEEE、2005年
甲第4号証:特開平9-182450号公報
甲第5号証:特開2011-78216号公報
甲第6号証:特開2018-82525号公報
イ 特許法第36条第6項第2号
本件特許の請求項8の記載に「上記制御回路(60,70)は、上記コンデンサ(31)を含む回路で共振が発生する期間の一部において、上記過電圧保護回路(50)を動作させる」とあるが、「期間の一部」が、コンデンサ(31)を含む回路で共振が発生するすべての期間も含まれるのか、それとも、「一部のみ」の意味であって、共振が発生する期間の全部は含まないものであるのかが不明であって、請求項8の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないため、請求項8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(2)各甲号証の記載事項
ア 甲第1号証
甲第1号証の記載事項に関しては、上記「2(2)ア 引用文献1」に記載のとおりである。
イ 甲第2号証
(ア)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
A 「【0038】
(1-2)モータ駆動装置10
モータ駆動装置10は、図1に示すように、整流部21と、平滑コンデンサ22と、電圧検出部23と、電流検出部24と、インバータ25(電力変換装置)と、ゲート駆動回路26と、制御部40とを備えている。これらは、例えば1枚のプリント基板上に実装されてもよい。」
ウ 甲第3号証
(ア)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
A 「Abstract-This paper deals with sensorless vector-controlled induction motor drives that are fed by a frequency converter equipped with a diode front-end rectifier. A small dc-link capacitance is used, which makes it possible to replace the electrolytic capacitors with film capacitors.」(第1498頁左欄1行-5行)
(当審訳:要約-このペーパーでは、ダイオードフロントエンド整流器を備えた周波数変換器から給電されるセンサレスベクトル制御誘導モータードライブについて説明します。小さなDCリンク容量が使用されているため、電解コンデンサをフィルムコンデンサに置き換えることができます。)
B 「I. INTRODUCTION
Frequency converters used in induction motor drives are usually equipped with a cost-effective six-pulse diode rectifier, a voltage-stiff dc link, and a pulse-width-modulated (PWM)inverter.」(第1498頁左欄13行-17行)
(当審訳:I.イントロダクション
誘導電動機ドライブで使用される周波数変換器には、通常、費用対効果の高い6パルスダイオード整流器、電圧剛性の高いDCリンク、およびパルス幅変調(PWM)インバーターが装備されています。)
C 「II. SYSTEM MODEL
A. Diode Rectifier and DC Link
The models of the drive system components are presented in the following. Fig. 1(a) shows a three-phase model of the mains, the diode rectifier, and the dc link.」(第1498頁右欄5行-9行)
(当審訳:II.システムモデル
A.ダイオード整流器とDCリンク
ドライブシステムコンポーネントのモデルを以下に示します。 図1(a)は、主電源、ダイオード整流器、およびDCリンクの3相モデルを示しています。)
D 「
[図:0001395180000002.jpg]
Fig. 1. Mains, diode rectifier, and dc link: (a) typical model; (b) simplified model.」(第1499頁左欄)
E 「TABLE I
DATA OF MOTOR DRIVES
[図:0001395180000003.jpg]
」(第1500頁右欄)
F 「IV. DATA OF EXAMPLE DRIVES
The data of two induction motor drives (2.2 kW and 37 kW) used in simulations are given in Table I. The 2.2-kW drive was also used for laboratory experiments. In this drive, the built-in 8-mH dc choke of a commercial frequency converter was short-circuited, and the original electrolytic capacitors (235 μF in total) were replaced with film capacitors (24 μF in total). The experimental setup was fed by a 500-kVA, 20-kV/400-V, 50-Hz distribution transformer. The unknown parameters Rd and Ld (only needed for simulations) were determined by fitting the simulated mains current to the measured one, as illustrated in Fig. 3. The natural frequency depends on the inductance Ld while
the damping is determined by the resistance Rd.
For the 37-kW drive, the capacitance of 72 μF was used in the simulations.」(第1500頁右欄1行-16行)
(当審訳:IV.ドライブの例のデータ
シミュレーションで使用された2つの誘導モータードライブ (2.2kwと37kw) のデータをテーブルIに示します。2.2kwドライブは実験室での実験にも使用されました。このドライブでは、市販の周波数変換器の内蔵8mH DCチョークが短絡され、元の電解コンデンサ(合計 235μF)がフィルムコンデンサ(合計24μF)に置き換えられました。実験装置は、500kVA、20kV/400V、50Hzの配電変圧器から給電されました。未知のパラメータRdとLd (シミュレーションにのみ必要)は、図3に示すように、シミュレーションされた主電流を測定されたものに適合させることによって決定されました。固有振動数はインダクタンスLdに依存し、滅衰は抵抗Rdによって決定されます。
37kWドライブの場合、シミュレーションでは72μFの静電容量が使用されました。)
G 「VII. CONCLUSION
A small dc-link capacitance can be used in vector-controlled induction motor drives when the natural frequency of the dc link is chosen considerably higher than six times the mains frequency but lower than the switching frequency. No choke is needed at the input or output of the diode rectifier. Simulation and experimental results of a 2.2-kW drive equipped with a dc-link capacitance of 24 μF demonstrate that the drive can be operated in a wide speed and load range. The torque ripple is larger than that in the conventionally dimensioned drive but still within acceptable ranges. Based on simulation results, a small dc-link capacitance can also be used in a 37-kW drive, but the dynamics have to be restricted slightly.」(第1503頁左欄7行-同頁右欄5行)
(当審訳:VII.結論
DCリンクの固有周波数が主周波数の6倍よりかなり高く、スイッチング周波数よりも低く選択されている場合、小さなDCリンク容量をベクトル制御誘導モータードライブで使用できます。ダイオード整流器の入力または出力にチョークは必要ありません。24μFのDCリンク容量を備えた2.2kWドライブのシミュレーションと実験結果は、ドライブが広い速度と負荷範囲で動作できることを示しています。トルクリップルは、従来の寸法のドライブよりも大きくなりますが、それでも許容範囲内です。シミュレーション結果に基づくと、37kWドライブでも小さなDCリンク容量を使用できますが、ダイナミクスをわずかに制限する必要があります。)
エ 甲第4号証
(ア)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
A 「【0002】
【従来の技術】図3は従来技術の説明のため示し、1はPWMインバータ、2は入力電源、3は誘導電動機(以下単に電動機という)、4は過電圧保護回路である。すなわち、PWMインバータ1が入力電源2を得て電動機3を駆動する例であって、過電圧保護回路4を備えてインバータ装置が回生電力により過電圧となることを保護する機能を有している。PWMインバータ1においては、11はインバータ装置に供給される三相交流を直流に平滑する直流平滑部、12は直流平滑部11にて平滑された電力を充電する直流充電部、13は任意の三相交流電力を電動機3に供給する交流電力出力部である。
【0003】また、過電圧保護回路4にて、41はスイッチング素子42により交流電力出力部13の入力側に接続されて回生電力を消費する抵抗器、43は直流充電部12の電圧を検出する電圧検出器,44はPWMインバータ1の入力電源電圧を検出する電圧検出器、45は電圧検出器44出力に比例する基準値を与える基準値発生器、46は比較器である。過電圧保護回路4においては、比較器46にて基準値発生器45出力と電圧検出器43出力が比較され、直流充電部12の電圧が基準値より大きい場合に、スイッチング素子42は直流充電部12の電力を抵抗器2へ流すように効用される。」
B 「【0013】図2は図1の各部動作信号レベルを示すものであって、PWMインバータ1が回生状態で運転される様子を表している。図2においては、時刻T0 からPWMインバータ1が回生状態になり、直流充電部12の直流電圧VDCが上昇している。このとき、一次遅れ器47出力の信号Saがほぼ一定値であるため、差動増幅器48出力の信号Sbは直流電圧VDCの検出値にあわせて上昇し、時刻T1 で予め設定される設定基準器49出力の基準値Scより大となる。ここで、比較器46’はスイッチング素子42の駆動信号Sdを出力する。したがって、抵抗器41に回生電力が通電される期間(T1-T2 )、直流電圧VDCは上昇せず逆に電力が消費されるために、力行状態時の電圧値に向かって減少する。時刻T2 では、直流電圧VDCが一定値以下になって比較器46’出力は自動的に停止され、スイッチング素子42は抵抗器41への通電を停止する。比較器46’では、動作するレベルと動作を停止するレベルにヒステリシス電圧を、設けている。これは、スイッチング素子42の動作周期には限界があるためである。つぎに時刻T2 となったとき、PWMインバータ1が回生状態であれば図示のように再び直流電圧VDCが上昇し、前述の期間(T1-T2 )の動作を、期間(T3-T4 ),(T5-T6 ),(T7-T8 )で繰り返すことになる。時刻T8 以降は、回生状態から力行状態へ移行するときの直流充電部12の直流電圧VDCが通常運転レベルへ自然減少する様子を示している。」
「C 【図3】
[図:0001395180000004.jpg]
」
オ 甲第5号証
(ア)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
A 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリの正極と発電電動機とを接続するケーブルが発電動作中に何らかの原因により外れるなど、急な負荷遮断があった場合、B端子に高い電圧(過電圧)が発生する。このとき、B端子に発生する過電圧(特許文献1ではGパルス)は、スイッチング素子を備えた制御回路にて、負極側アームのスイッチング素子を全て導通させて、発電電動機の電機子巻線を短絡することにより抑制している。
【0007】
特許文献1では、過電圧時に負極側アームの短絡を実現するための手段と負極側アームの短絡解除について詳しく記載されている。過電圧発生時には、負極側アームのスイッチング素子を導通させて発電電動機の電機子巻線を短絡し、短絡解除の条件として、異常電圧検出回路部により過電圧を検出後、所定時間の間、負極側アームの短絡を持続し、所定時間経過後に短絡を解除すると記載されている。特許文献1の手法においては、B端子電圧の過電圧を検出後、所定時間の間、負極側アームのスイッチング素子を導通させて発電電動機の電機子巻線を短絡しているが、界磁巻線の電流を制限していないため、B端子外れが継続している場合、所定時間経過すると、負極側アームの短絡が解除され、発電動作となり、再び、B端子電圧が過電圧となってしまい、安定した電力供給ができなくなってしまうという問題点がある。」
カ 甲第6号証
(ア)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
A 「【0046】
この例では、上アーム側スイッチング素子(TR1,TR3,TR5)は、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体によって構成されている。具体的には、上アーム側スイッチング素子(TR1,TR3,TR5)は、ワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)によって構成されている。」
キ 参考資料1
(ア)参考資料1の記載事項
令和4年4月26日の申立人による意見書で挙げられた参考資料1(特許第4760001号公報)には、以下の事項が記載されている。
A 「【0077】
第3の実施の形態.
図10は、本発明の第3の実施の形態にかかる多相電流供給回路の一部を示す回路図である。ここではコンバータ2、インバータ4、避雷器7を省略しているが、図1と同様に構成されている。そして本実施の形態においては図1の介在回路3aに置換して、介在回路3dを採用している。
【0078】
介在回路3dは、第1の実施の形態において図1を用いて説明された介在回路3aにおいて、側路34をコンデンサ31に対して並列に接続して追加した構成となっている。側路34は、スイッチング素子たるトランジスタQと抵抗RBとの直列接続を有している。
【0079】
制御回路6は整流電圧vdcに基づいて、トランジスタQのベースにバイアス電圧CNQを供給する。整流電圧vdcが第1所定値を越えるとトランジスタQがオンし、整流電圧vdcが第2所定値(これは第1所定値よりも小さい)を下回るとトランジスタQがオフする。
【0080】
このように整流電圧vdcが第1所定値を越えて上昇するとコンデンサ31に対して抵抗RBが並列接続されるので、コンデンサ31への充電速度を下げ、整流電圧vdcの上昇を抑制することができる。また第2所定値を下回るとコンデンサ31への並列接続は解消され、通常動作におけるコンデンサレスインバータの動作を損なうことがない。」
B 「【図10】
[図:0001395180000005.jpg]
」
ク 参考資料2
(ア)参考資料2の記載事項
令和4年4月26日の申立人による意見書で挙げられた参考資料2(特開2010-239736号公報)には、以下の事項が記載されている。
A 「【0016】
図2は、このブロック図をさらに具体的に表したもので、この発明の実施の形態1における電力変換装置を示す構成図である。図2では、受電は三相交流、インバータ3の出力も三相になっている。トランス9を介して交流系統1に接続された整流回路2は、ダイオードブリッジ回路から構成される。直流母線間には、平滑コンデンサ10とこれと並列にシャント抵抗7とシャントスイッチ6とからなる電圧クランプ回路8が設けられている。更に、シャントスイッチ6の開閉動作を制御するスイッチ制御回路11を設けている。
【0017】
図2ではインバータ3およびシャントスイッチ6のスイッチング素子として、仮にIGBTを記載しているが、これは一例であって、スイッチング素子であれば、例えば、FETなどでも構わないことは言うまでもない。また、シャント抵抗7とシャントスイッチ6とは互いに直列に接続されるが、図1および図2ではシャントスイッチ6が下つまり低電位側になっているが、これはIGBTがエミッタを基準電位として制御を行うことが多いためであり、原理上どちらが上でも構わない。
【0018】
次に、図2を用いて回路の動作について説明する。三相交流波形電圧を受電して、まずトランス9によって、所望の電圧に変換される。このトランス9は、整流回路2と交流系統1とを絶縁する役割もある。トランス9の出力をダイオードブリッジによる整流回路2で直流電圧に変換する。整流回路2の後段には平滑コンデンサ10が設けられ、これによって直流母線部分の電圧が一定値に近くなる。この電圧をインバータ3によって交流波形電圧に変換して負荷4に印加する。
【0019】
通常の動作時、即ち、直流母線間の電圧が、インバータ3の耐電圧を超えるような過電圧でない、またはその恐れがないときには、シャントスイッチ6はOFFであり、電圧クランプ回路8は動作していない。ここで、インバータ3が何らかの理由で急に停止した場合を考える。停止するような状況として、負荷4の異常による保護動作、過電圧あるいは過電流といったインバータ3の保護のための停止、などが考えられる。インバータ3の停止方法にもよるが、一般的にはインバータ3の全スイッチング素子がOFFとなり、直流母線からインバータ3への電流がゼロになる。
このとき、インバータ3の手前から、交流系統1に至るまでに存在する浮遊のインダクタンス5には、急停止前の通常動作時に流れていた電流によるエネルギーが蓄積されている。インバータ3が急停止するとこのエネルギーの行き場が無くなり、インバータ3前段の平滑コンデンサ10に流れ込む。
【0020】
浮遊のインダクタンス5としては、交流系統1の配線やハーネス、トランス9の漏れインダクタンス、回路の浮遊のインダクタンスが考えられ、配線によるインダクタンスとトランス9の漏れインダクタンスが支配的であると考えられる。図に示した浮遊のインダクタンス5は、これらの浮遊成分を代表的に表したものである。
【0021】
平滑コンデンサ10に流れこんだ電流は平滑コンデンサ10の電圧を上昇させる。この上昇が大きい場合、インバータ3の素子耐圧を超える可能性がある。そうならないように、このような状況で電圧が上昇した場合に、スイッチ制御回路11の操作で電圧クランプ回路8が動作する。つまり、シャントスイッチ6をON(閉路)し、電圧クランプ回路8のシャント抵抗7に電流を流す。蓄積されたエネルギーはかなり大きなものである可能性があるので、スイッチング素子で全てのエネルギーを消費させるのは難しい。従って、シャント抵抗7を直列に設け、流れ込む電流のエネルギーをこのシャント抵抗7で消費させる。また、この電圧クランプ回路のインピーダンスをシャント抵抗7の抵抗値で決めることができるので、最適な保護動作が可能となる。
【0022】
電圧クランプ回路8は一定時間ONした後、OFF(開路)にする。電流を流す時間が長すぎるとシャント抵抗7が過熱するため好ましくない。OFFにするタイミングによってはOFFした後、再び電圧が上昇する場合がある。このような場合には再度シャントスイッチ6をONにする。シャント抵抗7の値を適切に選び、最適なタイミングでOFFすれば、OFF後も電圧が上昇せず、回路の適切な保護を行うことができる。OFFするタイミングは、あらかじめ与えておくか、あるいは入力電流の位相を検出してタイミングを制御する方法等がある。」
「【図2】
[図:0001395180000006.jpg]
」
ケ 参考資料3
(ア)参考資料3の記載事項
令和4年4月26日の申立人による意見書で挙げられた参考資料3(実願平1-878号(実開平2-94483号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。
A 「(従来の技術)
一般にインバータ装置では、電動機の過励磁・不足励磁を防ぐため、出力される周波数と電圧とを一定比を保ったまま変化させるV/F一定制御か採用される。このためにPAMインバータ装置では、電圧制御用スイッチング素子を制御してインバータ主回路の直流電圧を広節囲に制御できるようにしている。このうち、例えばチョッパ方式によりインバータ主回路の直流電圧を制御するようにしたPAMインバータ装置の基本構成を第3図に示す。
交流電源1からの交流は整流回路2により整流され、コンデンサ3により平滑化される。直流電流は電圧制御用スイッチング素子たるチョッパトランジスタ4によりオンオフされ、直流リアクトル5及びコンデンサ6により平滑化してインバータ主回路7に供給される。この構成でインバータ主回路7に印加される直流電圧E2、は、チョッパトランジスタ4のオンデューティー比α(0≦α≦1)に応じて変化し、コンデンサ3の端子電圧をE1とすると、0≦E2<E1の範囲で変化させることかできる。そして、インバータ主回路7の直流母線間には抵抗8及び放電用スイッチング素子たる放電用トランジスタ9の直列回路からなる回生電力放電回路10が設けられている。
この回生電力放電回路10の放電用トランジスタ9は、電動機の急減速時に電動機からの回生電力によって主回路電圧が急上昇した場合や、例えば過電圧保護機能が作動してから十分な時間が経過していないためコンデンサ6の端子電圧か未だに高い時点でインバータ装置を再起動させるこのになる場合等、実際の主回路電圧が指令電圧値を上回った場合に導通される。これにて主回路電圧を低下させるのである。このような場合に回生電力放電回路10を作動させる理由は、主回路電圧が高いままであると、V/F比が一定に保たれなくなり、このため電動機か過励磁状態に陥って過電流か流入するおそれがあるため、コンデンサ6の放電により主回路電圧を低下させる必要があるからである。」(明細書2頁4行-4頁3行)
「
[図:0001395180000007.jpg]
第3図」
コ 参考資料4
(ア)参考資料4の記載事項
令和4年4月26日の申立人による意見書で挙げられた参考資料4(Ali Kashefi Kaviani, Brian Hadley,and Behrooz Mirafzal, A TIME-Coordination Approach for Regenerative Energy Saving in Multiaxis Motor-Drive Systems、IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS,VOL.27,NO.2,FEBRUARY 2012,pp.931-941)には、以下の事項が記載されている。
A 「
[図:0001395180000008.jpg]
Fig. 2.A two-axis motor-drive system fed through a common dc-bus.」(第932頁右欄)
B 「 II.System Description
As can be seen in Fig. 2, the case study system consists of a full bridge rectifier, a resistive brake, and two PM synchronous motors fed by two inverters, which are energized from a common dc-bus. This configuration is defined herein as a two-axis motor-drive system. The resistive brake dissipates the regenerative energy and maintains the dc-bus voltage within a reasonable range. The objective is to minimize the dissipated energy in the resistive brake, which subsequently leads to a reduction in the amount of the energy provided from the grid. For simplicity, the two-axis (including; inverters, motors, and loads) are assumed identical, and all of the system losses, including the energy losses (in mechanical and electrical systems), as well as the time delays (in sensing, controlling, and switching processes), are neglected. Meanwhile, the motor loads are assumed to be inertial loads, and the speed profiles follow a trapezoidal-shaped command as shown in Fig. 3. In general, the dc-bus voltage increases when the stored energy in the motor-load inertia is fed back into the electrolytic capacitors connected to the common dc-bus during a regenerative time-interval. In this situation, if the dc-bus voltage exceeds a certain limit, the resistive brake dissipates the extra energy in order to maintain the dc-bus voltage within its nominal range. Also, when the dc-bus voltage exceeds a certain level, the rectifier’s diodes become reverse-biased until the dc-bus voltage drops again and the system begins to absorb energy from the grid.」(第932頁右欄1行-末行)
(当審訳:II.システムの説明
図2に示すように、ケーススタディシステムは、フルブリッジ整流器、抵抗ブレーキ、および共通のDCバスから給電される2つのインバーターによって給電される2つのPM同期モーターで構成されています。この構成は、本明細書では2軸モータ駆動システムとして定義されている。抵抗ブレーキは回生エネルギーを消費し、DCバス電圧を妥当な範囲内に維持します。目的は、抵抗ブレーキで消費されるエネルギーを最小限に抑えることです。これにより、グリッドから提供されるエネルギー量が削減されます。簡単にするために、2軸(インバータ、モーター、および負荷を含む)は同一であると想定され、エネルギー損失(機械的および電気的システム)、および時間遅延(センシング、プロセスの制御と切り替え)は無視されます。一方、モーター負荷は慣性負荷と見なされ、速度プロファイルは図3に示すように台形のコマンドに従います。一般に、モーター負荷慣性に蓄積されたエネルギーが回生時間間隔に、共通のDCバスに接続された電解コンデンサにフィードバックされます。この状況では、DCバス電圧が特定の制限を超えると、抵抗ブレーキが余分なエネルギーを放散し、DCバス電圧を公称範囲内に維持します。また、DCバス電圧が特定のレベルを超えると、DCバス電圧が再び低下し、システムがグリッドからエネルギーを吸収し始めるまで、整流器のダイオードが逆バイアスされます。)
(3)取消理由についての当審の判断
ア 理由1について(特許法第29条第2項)
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明を対比すると、上記2(3)ア(ア)で検討したように相違点1、2で相違する。
そして、相違点2については、上記2(3)イ(イ)で検討したように、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(イ)本件特許発明2-4、6、9、10、22、23について
本件特許発明2-4、6、9、10、22、23はいずれも請求項1を直接または間接的に引用するものである。したがって、本件特許発明2-4、6、9、10、22、23は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであって、また、甲第2-6号証には、上記相違点2に係る構成は記載されていないことから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2-4、6、9、10、22、23は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2-6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(ウ)本件特許発明5、7
請求項5、7については、本件訂正請求により請求項5、7は削除されたから、申立ての対象となる請求項が存在しない。
イ 理由2について(特許法第36条第6項第2号)
請求項8の記載には、「一部」のみとは記載されておらず、共振が発生するすべての期間も含まれることは明らかである。
したがって、本件の請求項8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるということはできない。
第4 申立人のその他の主張について
1 申立人の主張
申立人は、令和4年11月15日提出の意見書において、概ね、以下のような主張を行っている。
(1)特許法第29条第1項3号について
ア 本件特許発明1について
引用発明の「抵抗(46)」、「ダイオード(4a)」は、各々、本件特許発明1の「抵抗(51)」、「オンオフする半導体素子(52)」に相当し、「RCD回路(4)」及び「直列回路(5)」は、本件特許発明1の「互いに直列に接続された抵抗(51)及びオンオフする半導体素子(52)を有し、上記コンデンサ(31)に対し並列に接続され、上記インバータ回路(40)を、該インバータ回路(40)に印加される過電圧から保護する過電圧保護回路(50)」に相当する。
また、過電圧保護回路(50)に相当する「直列回路(5)」は、引用文献1(甲第1号証)の段落0047に記載されているように、スイッチとしてのリレー(5a)を有している。さらに、段落0048、0049、0075に記載されているように、コントローラ(10)は、リレー(5a)のオンオフを制御するスイッチ制御部としてのリレー制御部(14)を備えており、オンオフ制御することにより第1コンデンサ(3a)の過剰な電圧上昇をより確実に抑制できる。ここで、リレー(5a)をオンオフすることにより、ダイオード(4a)のオンオフを制御することになる。
したがって、上記引用発明の「コントローラ(10)」は、本件特許発明1の「上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)の上記半等体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60, 70)」に相当する。
また、本件特許発明1は、コンデンサにエネルギーを蓄える構成を排除しておらず、本件特許発明1により、「半導体素子(52)をオンすることで、抵抗(51)によりエネルギーを熱として放出できるので、引用文献1のようにスイッチをオンすることでコンデンサにエネルギーを蓄える構成に比べ、回路部品を小型化できる」といった効果は、必ずしも生じ得るものではない。
以上のとおり、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明であり、取り消されるべきである。(意見書2頁15行-3頁20行)
(2)特許法第29条第2項について
ア 本件特許発明1について
甲第4号証及び参考資料1―4はともに交流電源と負荷との間に設けられ、所定の交流電力を負荷に供給する電力変換装置に関する技術であり、互いに直列に接続された抵抗及びオンオフする半導体素子を有し、コンデンサに対し並列に接続され、制御回路が半導体素子をオンオフ制御する構成が開示されており、上記構成は従来周知の技術事項にすぎない。
したがって、上記の従来周知の技術事項を引用文献1に記載された発明に適用することは当業者にとって適宜なし得ることにすぎない。
引用文献1及び上記の従来周知の技術事項から、過電圧保護回路が、抵抗に接続されたオンオフする能動素子である半導体素子を有し、制御回路が、過電圧保護回路を制御するので、半導体素子を受動素子のダイオードとした場合に比べ、過電圧保護回路を動作させるタイミングや期間を、制御回路の設計によって自由に設定し易くなるという効果を得ることができる。また、半導体素子をオンすることで、抵抗によりエネルギーを熱として放出できるので、回路部品を小型化できる。
以上のとおり、本件特許発明1は、引用文献1及び上記の従来周知の技術事項から当業者が容易に発明できたものであり、取り消されるべきである。(意見書3頁21行-5頁12行)
イ 本件特許発明2について
また、請求項1を引用する請求項2に係る本件特許発明2は、「コンデンサ(31)の容量は、スイッチング素子(41a,~46a)のスイッチング周期間におけるコンデンサ(31)の電圧変励を、コンデンサ(31)の電圧の平均値の1 /10以下に抑えるように設定されている」ことを構成要件としている。しかしながら、1/1 0以下にすることについて、本件特許明細書に、それに対応する効果が記載されておらず、スイッチング周期間における電圧変動をコンデンサ電圧の平均値に対してどの程度抑えるかは当業者が涌宜選択し得る設計的事項に過ぎない。したがって、本件特許発明2は、引用文献 1に記載された発明、又は引用文献1及び従来周知の技術事項から当業者が容易に発明できたものであり、取り消されるべきである。(意見書5頁13行-25行)
ウ 本件特許発明8について
上記イの点に加え、さらに、引用文献1の段落00866、0087に記載されているように、コントローラ(10)は、直流リンク部(3)に印加される電圧が、第1コンデンサ(3a)の耐圧から余裕をみた閾値(vthl)を超えたときに、リレー(5a)をオン状態にし、閾値(vthl)以下のとき、オフ状態にする。すなわち、コントローラ(10)は、交流電源(7)の電圧が急上昇した直後に閾値(vthl)に達すると、リレー(5a)をオン状態にし、閾値(vthl)以下になるとオフ状態にして、第1コンデンサ(3a)が充電される期間の一部において、過電圧保護回路を動作させていることから、本件特許発明8の「上記制御回路(60, 70)は、上記コンデンサ(31)を含む回路で共振が発生する期間の一部において、上記過電圧保護回路(50)を動作させること」に相当する。
以上のとおり、本件特許発明8は、引用文献1から当業者が容易に発明できたものであり、取り消されるべきである。(意見書6頁12行-7頁6行)
エ 本件特許発明9について
上記ウの点に加え、さらに、甲第4号証の段落0013には、過電圧保護回路が動作するレベルと動作を停止するレベルに比較器46’がヒステリシス特性を有することが開示されており、かかる技術を引用文献1に記載された発明に適用して、第2所定値を第1所定値よりも低く設定することは、当業者にとって適宜なし得ることにすぎない。(意見書8頁4行-21行)
オ 本件特許発明10について
上記ウの点に加え、さらに、甲第5号証の段落0006、段落0007に「過電圧を検出後、所定時間の間、負極側アームの短絡を持続し、所定時間経過後に短絡を解除する」と記載されているように、過電圧保護を行うにあたって、所定時間だけ過電圧保護を実施し、所定時間後に過電圧保護を停止することは出願時の周知技術である。
したがって、上記周知技術を引用文献1に記載された発明に適用して、過電圧保護回路(50)が動作を開始して安ら所定時間経過した場合、半導体素子(52)をオフさせて過電圧保護回路(50)の動作を停止させることは、当業者にとって適宜なし得ることにすぎない。(意見書9頁1行-18行)
2 上記主張について検討する。
(1)特許法第29条第1項3号について
確かに、引用発明における、本件特許発明1の過電圧保護回路(50)に対応する「直列回路(5)」は、スイッチとしてのリレー(5a)を有し、コントローラ(10)は、リレー(5a)のオンオフを制御するものである。
しかしながら、ダイオードは、加わる電圧によってオンオフするものであって、制御部等によって外部からオンオフが制御されるものではない。したがって、引用発明において、リレー(5a)のオフとなっている場合でも、ダイオード(4a)に閾値電圧の電圧が印加されなければオフのままであり、また、リレー(5a)のオンとなっている場合でも、何らかの要因でダイオード(4a)に閾値電圧の電圧が印加されてしまえばオンされるものであって、「コントローラ(10)」がリレー(5a)をオンオフすることにより、ダイオード(4a)のオンオフを制御しているとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
(2)特許法第29条第2項について
ア 本件特許発明1について
確かに、甲第4号証及び参考資料1―4に記載されるように、交流電源と負荷との間に設けられ、所定の交流電力を負荷に供給する電力変換装置において、互いに直列に接続された抵抗及びオンオフする半導体素子を有し、コンデンサに対し並列に接続され、制御回路が半導体素子をオンオフ制御する構成は周知の技術にすぎない。
しかしながら、上記第3の2(3)イ(イ)で検討したように、引用発明の「RCD回路(4)」及び「直列回路(5)」の「第2コンデンサ(4a)」は、コントローラ(10)の電源として利用されるものであり、仮に、周知の過電圧保護回路に代えてしまうと、コントローラ(10)の電源がなくなってしまうことから、引用発明の「RCD回路(4)」及び「直列回路(5)」を周知の過電圧保護回路に代えることには阻害要因があるといえる。
したがって、本件特許発明1は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2、8、9、10について
本件特許発明2、8、9、10は、本件特許発明1の、「オンオフする半導体素子(52)」、及び「上記インバータ回路(40)及び上記過電圧保護回路(50)の上記半導体素子(52)のオンオフを制御する制御回路(60,70)」を有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項から当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は、いずれも採用することができない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1-4、6、8-10、22、23に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-4、6、8-10、22、23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求により請求項5、7は削除されたから、請求項5、7に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700889