2021-700879
液晶性樹脂組成物、及び当該液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクター
- 審判番号
- 2021-700879
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-526338外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6841978
- 請求日
- 2021年09月10日
- 審決日
- 2021年12月20日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ポリプラスチックス株式会社
- 【権利者代理人】正林 真之
- 【権利者代理人】林 一好
- 【異議申立人】森田 弘潤
- 分類
- P1651.537-Y (C08L) / P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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特許第6841978号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、令和1年10月31日(優先権主張:平成30年11月15日、日本国)を国際出願日とする特許出願(特願2020-526338号)に係るものであって、令和3年2月22日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年3月10日である。)。
その後、令和3年9月10日に、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、特許異議申立人である森田弘潤(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第6841978号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~6に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】(A)液晶性樹脂と、(B)繊維状ウォラストナイトと、(C)マイカと、を含み、エポキシ基含有共重合体を含まない液晶性樹脂組成物であって、前記(A)液晶性樹脂が、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであり、前記(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比は、8以上であり、 前記液晶性樹脂組成物全体に対して、続きを表示(全41行)前記(A)液晶性樹脂の含有量は、62.5~72.5質量%、前記(B)繊維状ウォラストナイトの含有量は、2.5~15質量%、前記(C)マイカの含有量は、17.5~30質量%、前記(B)繊維状ウォラストナイト及び前記(C)マイカの合計の含有量は、27.5~37.5質量%である、液晶性樹脂組成物。【請求項2】(A)液晶性樹脂と、(B)繊維状ウォラストナイトと、(C)マイカと、を含む液晶性樹脂組成物であって、前記(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比は、8以上であり、前記液晶性樹脂組成物全体に対して、前記(A)液晶性樹脂の含有量は、62.5~72.5質量%、前記(B)繊維状ウォラストナイトの含有量は、2.5~15質量%、前記(C)マイカの含有量は、17.5~30質量%、前記(B)繊維状ウォラストナイト及び前記(C)マイカの合計の含有量は、27.5~37.5質量%であり、(A)液晶性樹脂は、必須の構成成分として、下記構成単位(I)~(VI)からなり、全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は50~70モル%であり、全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は10.25~22.25モル%であり、全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、全構成単位に対して構成単位(V)の含有量は5.75~23.75モル%であり、全構成単位に対して構成単位(VI)の含有量は1~7モル%であり、全構成単位に対して構成単位(II)と構成単位(IV)との合計の含有量は1モル%以上5モル%未満であり、全構成単位に対して構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は100モル%であり、構成単位(V)と構成単位(VI)との合計に対する構成単位(VI)のモル比が0.04~0.37である、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドである、液晶性樹脂組成物。【化1】[図:0001384193000001.jpg]【請求項3】製品全長が30mm未満であり、製品高さが5mm未満であるコネクター用である請求項1又は2に記載の液晶性樹脂組成物。【請求項4】請求項1から3のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物の成形品を含み、製品全長が30mm未満であり、製品高さが5mm未満であるコネクター。【請求項5】低背狭ピッチコネクターである請求項4に記載のコネクター。【請求項6】ピッチ間距離が0.5mm以下であり、製品全長が3.5mm以上30mm未満であり、製品高さが1.5mm以下であり、基板対基板コネクター又はフレキシブルプリント基板用コネクターである低背狭ピッチコネクターである請求項4又は5に記載のコネクター。」
第3 異議申立ての理由の概要及び証拠方法
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異議申立ての理由の概要は、以下のとおりである。
1 申立理由の概要
(1)申立理由1(明確性)
ア 本件の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記「第5 当審の判断」「1 申立理由1(明確性)について」「(1)申立理由1の概要」に記載した点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
よって、本件発明1~6に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記「第5 当審の判断」「2 申立理由2(サポート要件)について」「(1)申立理由2の概要」に記載した点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件発明1~6に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3
3-1(新規性) 本件発明1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3-2(進歩性) 本件発明1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証及び甲第10号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 証拠方法
(1)異議申立書とともに提出された証拠方法
https://www.sumitomo-chem.co.jp/sep/products/lcp/lcp_gu_connector.html
(2)当審の職権調査により発見した証拠方法
参考文献1:巴工業株式会社のウェブサイト、“米国産ウォラストナイト(ワラストナイト) [和名:珪灰石]”、[online]、[2020年3月16日出力]、インターネット、<URL: https://www.tomo-e.co.jp/chemical/products/detail.php?page=3&id=25QU020>
(異議2020-700212号の特許異議申立書とともに提出された甲第5号証)
第4 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性樹脂組成物、及び当該液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクターに関する。
・・・
【0003】
特に、近年のエレクトロニクス機器の小型化及び薄型化に伴い、エレクトロニクス機器を構成する電子部品(コネクター等)の低背化及び狭ピッチ化に対するニーズがある。例えば、特許文献1には、マイカ及びガラス繊維で強化された液晶性樹脂組成物から成形されたコネクターが開示されている。このようなコネクターは、耐熱性、そり変形の抑制、流動性、寸法安定性等が要求される、基板対基板コネクターや、フレキシブルプリント基板(FPC)とフレキシブルフラットケーブル(FFC)とを接続するために使用されるフレキシブルプリント基板用コネクター等として採用されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の液晶性樹脂組成物から、コネクターを成形しようとすると、組成物の耐熱性、機械的強度、そり変形の抑制、及び流動性が十分ではなく加工性に劣るため、低背化及び狭ピッチ化に対するニーズに対応した低背狭ピッチコネクターの製造が困難であった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び機械的強度に優れ、そり変形が抑制されたコネクターの製造を実現できる、流動性が良好な液晶性樹脂組成物、及び当該液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、所定の含有量で、液晶性樹脂と、繊維状ウォラストナイトと、マイカと、を組み合わせ、繊維状ウォラストナイトのアスペクト比を所定の範囲とすることで上記の課題を解決できることを見出した。具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
・・・
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性及び機械的強度に優れ、そり変形が抑制されたコネクターの製造を実現できる、流動性が良好な液晶性樹脂組成物、及び当該液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクターが提供される。」
(本b)「【0017】
[(A)液晶性樹脂]
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性樹脂は直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0018】
上記のような(A)液晶性樹脂の種類としては特に限定されず、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。(A)液晶性樹脂としては、60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1質量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、更に好ましくは2.0~10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが好ましく使用される。
【0019】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドは、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
・・・
【0022】
本発明に適用できる最も好ましい(A)液晶性樹脂は、必須の構成成分として、下記構成単位(I)~(VI)からなり、
全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は50~70モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は10.25~22.25モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(V)の含有量は5.75~23.75モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(VI)の含有量は1~7モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(II)と構成単位(IV)との合計の含有量は1モル%以上5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は100モル%であり、
構成単位(V)と構成単位(VI)との合計に対する構成単位(VI)のモル比が0.04~0.37である、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドである。
【0023】
【化4】
・・・
【0026】
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂を、液晶性樹脂組成物中に、液晶性樹脂組成物全体に対して62.5~72.5質量%含む。(A)液晶性樹脂の含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して62.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化しやすく、また、液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体の曲げ歪が小さくなる恐れがあるため好ましくない。(A)液晶性樹脂の含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して72.5質量%超であると、液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体の曲げ弾性率及びそり変形抑制効果が低下するため好ましくない。本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂を、液晶性樹脂組成物中に、液晶性樹脂組成物全体に対して63.5~71.5質量%含むことが好ましく、65~70質量%含むことがより好ましい。」
(本c)「【0027】
[(B)繊維状ウォラストナイト]
(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比、即ち、平均繊維長/平均繊維径の値は8以上である。上記アスペクト比は、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体の曲げ弾性率及びそり変形抑制効果等の観点から、好ましくは10~25であり、より好ましくは15~20である。
【0028】
(B)繊維状ウォラストナイトとしては、特に限定されず、例えば、公知の繊維状ウォラストナイトを用いることができる。(B)繊維状ウォラストナイトは、1種単独で使用してもよく、アスペクト比、平均繊維長、平均繊維径等が異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維径は好ましくは3.0~50μmであり、より好ましい平均繊維径は4.5~40μmである。上記平均繊維径が3.0μm以上であると、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体は、十分な機械的強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維径が50μm以下であると、上記成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。なお、本明細書において、平均繊維径としては、繊維状ウォラストナイトを走査型電子顕微鏡で観察し、100本の繊維状ウォラストナイトについて繊維径を測定した値の平均を採用する。
【0030】
(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維長は好ましくは30~800μmであり、より好ましい平均繊維長は50~600μmである。上記平均繊維長が30μm以上であると、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体は、十分な機械的強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維長が800μm以下であると、上記成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。なお、本明細書において、平均繊維長としては、繊維状ウォラストナイトの実体顕微鏡画像10枚をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により、実体顕微鏡画像1枚ごとに100本の繊維状ウォラストナイト、即ち、合計1000本の繊維状ウォラストナイトについて繊維長を測定した値の平均を採用する。
【0031】
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(B)繊維状ウォラストナイトを、液晶性樹脂組成物中に、液晶性樹脂組成物全体に対して2.5~15質量%含む。(B)繊維状ウォラストナイトの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して2.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体のそり変形、特にリフロー後のそり変形が大きくなる恐れがあるため好ましくない。(B)繊維状ウォラストナイトの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して15質量%超であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化しやすく、また、液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体の曲げ歪が小さくなる恐れがあるため好ましくない。本発明における(B)繊維状ウォラストナイトは、液晶性樹脂組成物中に、液晶性樹脂組成物全体に対して3~13質量%含まれることが好ましく、5~10質量%含まれることがより好ましい。」
(本d)「【0032】
[(C)マイカ]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、マイカが含まれる。本発明に係る液晶性樹脂組成物にマイカが含まれることにより、十分な曲げ弾性率を有し、かつ、そり変形が抑制された成形体を得ることができる。マイカは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
マイカは、液晶性樹脂組成物全体に対して17.5~30質量%含まれる。マイカの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して17.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物から得られる成形体の曲げ弾性率向上及びそり変形抑制が十分ではないため好ましくない。マイカの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して30質量%超であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化し、液晶性樹脂組成物の成形が困難になる可能性があるため好ましくない。マイカは、液晶性樹脂組成物中に、液晶性樹脂組成物全体に対して18.5~27.5質量%含まれることが好ましく、20~25質量%含まれることがより好ましい。
・・・
【0037】
本発明において使用できるマイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒子径が10~100μmであるものが好ましく、平均粒子径が20~80μmであるものが特に好ましい。マイカの平均粒子径が10μm以上であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。マイカの平均粒子径が100μm以下であると、成形体の剛性の向上が十分となりやすく、ウェルド強度も十分となりやすいため好ましい。更に、マイカの平均粒子径が100μm以下であると、本発明のコネクター等を成形するのに十分な流動性を確保しやすい。
【0038】
本発明において使用できるマイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.3μmであることが特に好ましい。マイカの厚みが0.01μm以上であると、液晶性樹脂組成物の溶融加工の際にマイカが割れにくくなるため、成形体の剛性が向上しやすい可能性があるため好ましい。マイカの厚みが1μm以下であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。
・・・
【0040】
本発明に係る液晶性樹脂組成物において、(B)繊維状ウォラストナイト及び(C)マイカの合計の含有量は、液晶性樹脂組成物全体に対して27.5~37.5質量%である。上記含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して27.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体の曲げ弾性率及びそり変形抑制効果が低下するため好ましくない。上記含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して37.5質量%超であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化しやすく、また、液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体の曲げ歪が小さくなる恐れがあるため好ましくない。上記含有量は、液晶性樹脂組成物全体に対して28.0~36.5質量%であることが好ましく、28.5~35質量%であることがより好ましい。」
(本e)「【0041】
[その他の成分]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、即ち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等のその他の成分も要求性能に応じ適宜添加することができる。その他の成分は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
(本f)「【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
<実施例1~5、比較例1~7>
下記の実施例及び比較例において、液晶性樹脂LCP1及び2は、以下の通りにして製造した。その際、ペレットの融点及び溶融粘度の測定は、それぞれ下記の条件で行った。
【0054】
[融点の測定]
TAインスツルメント社製DSCにて、液晶性樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
【0055】
[溶融粘度の測定]
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性樹脂の溶融粘度を測定した。なお、測定温度は、LCP1については360℃、LCP2については380℃であった。
【0056】
(LCP1の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸:1385g(60モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸:88g(2.8モル%)(HNA)
(III)テレフタル酸:504g(18.15モル%)(TA)
(IV)イソフタル酸:19g(0.7モル%)(IA)
(V)4,4’-ジヒドロキシビフェニル:415g(13.35モル%)(BP)
(VI)N-アセチル-p-アミノフェノール:126g(5モル%)(APAP)
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(即ち、1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は345℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
【0057】
(LCP2の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸:1040g(48モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸:89g(3モル%)(HNA)
(III)テレフタル酸:547g(21モル%)(TA)
(IV)イソフタル酸:91g(3.5モル%)(IA)
(V)4,4’-ジヒドロキシビフェニル:716g(24.5モル%)(BP)
【0058】
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(即ち、667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は355℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
【0059】
(液晶性樹脂以外の成分)
・繊維状充填剤
・板状充填剤
マイカ;(株)山口雲母工業製AB-25S、平均粒子径25μm
タルク;松村産業(株)製クラウンタルクPP、平均粒子径10μm
【0060】
上記で得られた各液晶性樹脂と、上述した液晶性樹脂以外の成分とを二軸押出機を使用して混合し、液晶性樹脂組成物を得た。各成分の配合量は表1及び表2に示した通りである。なお、以下、表中の配合量に関する「%」は質量%を示す。また、液晶性樹脂組成物を得る際の押出条件は下記の通りである。
[押出条件]
〔実施例1~4、比較例1~7〕
メインフィード口に設けられたシリンダーの温度を250℃とし、他のシリンダーの温度はすべて360℃とした。液晶性樹脂はすべてをメインフィード口から供給した。また、充填剤はサイドフィード口から供給した。
〔実施例5〕
メインフィード口に設けられたシリンダーの温度を250℃とし、他のシリンダーの温度はすべて370℃とした。液晶性樹脂はすべてをメインフィード口から供給した。また、充填剤はサイドフィード口から供給した。
【0061】
(液晶性樹脂組成物の溶融粘度の測定)
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性樹脂組成物の溶融粘度を測定した。なお、測定温度は、LCP1を使用した液晶性樹脂組成物については360℃、LCP2を使用した液晶性樹脂組成物については380℃であった。結果を表1及び表2に示す。
【0062】
下記の方法に基づき、液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクターの物性を測定した。各評価結果を表1及び表2に示す。
【0063】
(荷重たわみ温度)
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形して成形体を得、ISO75-1,2に準拠して荷重たわみ温度を測定した。
[成形条件]
シリンダー温度:
360℃(実施例1~4、比較例1~7)
370℃(実施例5)
【0064】
(曲げ試験)
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形して0.8mm厚の成形体を得、ASTM D790に準拠し、曲げ強度、曲げ歪、及び曲げ弾性率を測定した。
[成形条件]
シリンダー温度:
360℃(実施例1~4、比較例1~7)
370℃(実施例5)
【0065】
(FPCコネクターそり)
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形し(ゲート:トンネルゲート、ゲートサイズ:φ0.4mm)、図1に示すような、全体の大きさ17.6mm×4.00mm×1.16mm、ピッチ間距離0.5mm、ピン孔数30×2ピン、最小肉厚:0.12mmのFPCコネクターを得た。
[成形条件]
360℃-360℃-350℃-340℃(実施例1~4、比較例1~7)
370℃-370℃-360℃-350℃(実施例5)
【0066】
得られたコネクターを水平な机の上に静置し、コネクターの高さをミツトヨ製クイックビジョン404PROCNC画像測定機により測定した。その際、図2において黒丸で示す複数の位置で高さを測定し、最小二乗平面からの最大高さと最小高さとの差をFPCコネクターのそりとした。なお、そりは、下記条件で行ったIRリフローの前後で測定した。
[IRリフロー条件]
プレヒートゾーンの温度条件:150℃
リフローゾーンの温度条件:190℃ ピーク温度:251℃
【0067】
(FPCコネクター最小充填圧力)
図1のFPCコネクターを射出成形する際に良好な成形体を得られる最小の射出充填圧力を最小充填圧力として測定した。
【0068】
【表1】
[図:0001384193000002.jpg]
【0069】
【表2】
[図:0001384193000003.jpg]
【0070】
表1及び表2に示される通り、実施例において、荷重たわみ温度は245℃以上、曲げ歪は2.0%以上、曲げ弾性率は14000MPa以上、リフロー前のFPCコネクターそりは0.030mm未満、リフロー後のFPCコネクターそりは0.090mm未満、FPCコネクター最小充填圧力は75MPa未満であった。よって、本発明に係る液晶性樹脂組成物は、流動性に優れ、この液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクターは、耐熱性及び機械的強度に優れ、そり変形が抑制されていることが確認された。」
2 各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動開始温度300~400℃の液晶性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、流動開始温度が260~350℃であり、且つ液晶性ポリエステル樹脂(A)よりも流動開始温度が低い該液晶性ポリエステル樹脂(B)10~150重量部を混合してなる液晶性ポリエステル樹脂混合物100重量部に対して、
マイカ、又はマイカ及び繊維状充填剤の混合物15~100重量部を配合してなり、
前記液晶性ポリエステル樹脂(A)と前記液晶性ポリエステル樹脂(B)がいずれも、窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物の存在下の反応で製造された液晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、液晶性ポリエステル樹脂組成物。
・・・
【請求項5】
前記液晶性ポリエステル(A)及び前記液晶性ポリエステル(B)がいずれも、
パラヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位と、
4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位と、
テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構造単位とを
有する液晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記液晶性ポリエステル(A)及び前記液晶性ポリエステル(B)がいずれも、
パラヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(I)、
4,4'-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位(II)、
テレフタル酸に由来する構造単位(III)、
及びイソフタル酸に由来する構造単位(IV)を有し、
(II)/(I)のモル比率が0.2~1.0であり、[(III)+(IV)]/(II)のモル比率が0.9~1.1であり、(IV)/(III)のモル比率が0より大きく1以下であって、液晶性ポリエステル樹脂(A)の(IV)/(III)のモル比率(α)と、液晶性ポリエステル樹脂(B)の(IV)/(III)のモル比率(β)との比、α/βが0.1~0.6であることを特徴とする、請求項5に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記繊維状充填剤が、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ及びチタン酸カリウムウィスカから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いてなることを特徴とする、コネクター。
【請求項9】
肉厚0.1mm以下の薄肉部を有することを特徴とする、請求項8記載のコネクター。」
(甲1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクター等の電子部品の製造用に好適な液晶性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
液晶性ポリエステル樹脂は、分子が剛直なため溶融状態においても絡み合いがなく、成形時のせん断により分子鎖が流れ方向に著しく配向し、固化時にもその配向を維持するという特徴により、優れた溶融流動性を有することが知られている。この特徴を活かして、液晶性ポリエステル樹脂に、ガラス繊維などの繊維状補強剤やタルクなどの無機充填剤などを配合した樹脂組成物は、薄肉部を有する成形体、特に、薄肉部を有し、比較的複雑な形状を有するコネクター等の電子部品などを成形する上で好適に使用されている。ところで、近年の表面実装技術の進展や、携帯電話等のモバイル機器に係る軽薄短小化の流れに伴って、使用される電子部品は、より薄肉化が求められ、その形状もより複雑化してきている。このような成形品(コネクター)を成形する樹脂組成物としては、例えば、特許文献1には、特定の製造方法により得られた液晶性ポリエステル樹脂の混合物に無機充填剤を配合して得られる樹脂組成物が開示されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されている樹脂組成物は、薄肉部を有するコネクターの成形に好適に使用することができる。しかしながら、今後、益々超薄肉化が進むコネクターにおいては、より一層の溶融流動性を発現し得る樹脂組成物が求められている。
そこで、本発明の目的は、極めて優れた溶融流動性を有する液晶性ポリエステル樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いてなる、超薄肉部を有するコネクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決し得る液晶性ポリエステル樹脂組成物を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、極めて優れた溶融流動性を有し、超薄肉部を有するコネクターの製造用として好適な液晶性ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。当該樹脂組成物は、超薄肉部を有するだけでなく、比較的長尺状であるコネクターを成形した場合においても、反り量が極めて小さいことから実用性に優れたコネクターを製造することができるため、産業上極めて有用である。」
(甲1c)「【0010】
<液晶性ポリエステル樹脂>
本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂(A)及び液晶性ポリエステル樹脂(B)[以下、まとめて「2つの液晶性ポリエステル樹脂」と呼ぶことがある。]は、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、400℃以下で光学的に異方性を示す溶融体を形成するものである。当該液晶性ポリエステル樹脂としては、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの
等を具体的に挙げることができる。なお、製造上の容易さから、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ジオールの代わりにそれらのエステル形成性誘導体を使用してもよい。エステル形成性誘導体とは、分子内にカルボキシル基を有する、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の場合は、カルボキシル基を、高反応性の酸ハロゲン基や酸無水物などの基に転化したもの、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールとエステルを形成しているもの等を挙げられる。また、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールの場合は、当該フェノール性水酸基を、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基が低級カルボン酸類とエステルを形成しているものも挙げることができる。
・・・
【0018】
次に、2つの液晶性ポリエステル樹脂について好適なものを具体的に説明する。
この2つの液晶性ポリエステル樹脂は、前述の流動開始温度を満足させる観点から、前記例示の中でも、(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、が好ましく、具体的には、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位と、芳香族ジオールに由来する構造単位と、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位とからなる液晶性ポリエステル樹脂が好ましい。この液晶性ポリエステル樹脂は全芳香族液晶性ポリエステル樹脂と呼ばれ、極めて高度の耐熱性を有するものである。
【0019】
以下、本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂を構成する構造単位の具体例を挙げる。
・・・
【0024】
次に、液晶性ポリエステル樹脂の構造単位の組合わせ及び該構造単位の存在比(共重合比)について詳述する。
本発明に適用する液晶性ポリエステル樹脂としては、耐熱性や機械的特性等の特性のバランスから、前記(A1)の構造単位を少なくとも30モル%含むが好ましく、構造単位の組み合わせが、下式の(a)~(f)であるものが好ましい。
・・・
【0025】
次に、好適な液晶性ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明で用いる液晶性ポリエステル樹脂は、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得るアシル化工程と、該アシル化物のアシル基と、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基とが、エステル交換を起こすようにして、液晶性ポリエステルを重合する重合工程とを有し、該アシル化工程及び該重合工程がともに、窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物の存在下の反応で製造された液晶性ポリエステル樹脂であると好ましい。」
(甲1d)「【0043】
<充填剤>
本発明のコネクター用液晶性ポリエステル樹脂組成物に配合される充填剤は、マイカを必須とする。ここで、マイカとは、アルカリ金属を含有するアルミノ珪酸塩のことであり、市場から種々の樹脂充填剤としてのマイカを入手することができる。
本発明で使用されるマイカは、平均粒径は、10~100μmが好ましく、より好ましくは20~50μmである。平均粒径が10μm未満の場合、射出成形時にノズルから樹脂が垂れるため成形加工性に劣る傾向がある。また、平均粒径が100μmより大きい場合、低反り性が不十分となる傾向がある。
【0044】
また、本発明に適用される充填剤は、前記のようなマイカとともに繊維状充填剤を用いることができる。
この場合、繊維状充填剤はいわゆる無機系充填剤が好ましい。また、該繊維状充填剤の平均繊維径は0.1~20μmであると好ましく、0.5~15μmであることがさらに好ましい。平均繊維径が0.1μm未満である場合、反り量の低減と耐熱性の向上効果が不十分となる傾向がある。また平均繊維径が20μmより大きい場合、溶融流動性と低反り性が不十分となる傾向がある。また、平均繊維長は、1~300μmであることが好ましく、5~300μmであることがより好ましい。平均繊維長が1μm未満である場合、耐熱性、力学強度の向上効果が不十分となる傾向がある。また、平均繊維長が300μmより大きい場合には目的とする流動性向上の効果が不十分となる傾向がある。繊維状の無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独でも、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、上述のように充填剤としてマイカを配合するか、マイカ及び繊維状充填剤を配合することにより得ることができる。充填剤の配合量は、液晶性ポリエステル樹脂混合物100重量部に対して、15~100重量部であり、好ましくは25~80重量部である。充填剤の配合量が15重量部以上であれば、得られるコネクターの低反り性が良好となり、一方、充填剤の配合量が100重量部以下であれば、成形時の溶融流動性が良好となり、成形がより容易になる傾向がある。また、充填剤の配合量が前記の範囲であると、コネクターを成形して得た場合、このコネクターの耐熱性も良好になるので、当該コネクターをハンダリフローによって処理する時、膨れ等の形状異常(ブリスター)が生じる恐れもないという利点がある。」
(甲1e)「【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は本実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の物性等は以下の方法により測定した。
【0051】
(1)反り量:射出成形機(日精樹脂工業(株)ES400)を用い、図1に示すようなコネクター成形品を得た。射出成形条件は、シリンダー温度350℃、金型温度70℃、射出速度150mm/秒である。その後、得られたコネクター成形品の底面に対し、長さ方向に0.2mmごと、幅方向に0.5mmごとに平坦度測定モジュール((株)コアーズ)にて、反り量を測定、平均値を算出した。さらに、同コネクター成形品について、50℃で40秒保持した後、270℃まで昇温し、同温度で1分間保持した。次いで、50℃まで降温させるといった熱処理を実施し、熱処理後のコネクター成形品について、前記と同様にして反り量を測定、平均値を算出した。成形後の反り量をリフロー前反り量、熱処理後の反り量をリフロー後反り量とした。
コネクター成形品は、長さ18mm、幅3.5mm、高さ1mmの、53pin(0.3mmピッチ)FPC用コネクターであり、最小肉厚部は0.1mmである。
【0052】
(2)曲げ弾性率:射出成形機(日精樹脂工業(株) PS40E5ASE)を用いてシリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度約75mm/秒で幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状試験片を成形し、ASTM D790に準拠して測定した。
(3)薄肉流動長:図2に示す薄肉流動長金型(0.3mmt)を用い、射出成形機(日精樹脂工業(株) PS10E1ASE)にてシリンダー温度350℃、金型温度130℃、射出速度約90mm/秒で成形した。取り出した成形品の、4個のキャビティー部の長さを測定し、5個の成形品の測定値をもって薄肉流動長とした。
【0053】
製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸 994.5g(7.2モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル 446.9g(2.4モル)、テレフタル酸 299.0g(1.8モル)、イソフタル酸 99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して30分間還流させた。その後、1-メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持し、固相重合を進めた。冷却して液晶性ポリエステル樹脂(A)として用いるLCP1を得た。
LCP1
(II)/(I)のモル比率 :0.3
[(III)+(IV)]/(II)のモル比率 :1.0
(IV)/(III)のモル比率(α) :0.3
【0054】
製造例2
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸 994.5g(7.2モル)、4,4'-ジヒドロキシビフェニル 446.9g(2.4モル)、テレフタル酸 239.2g(1.44モル)、イソフタル酸 159.5g(0.96モル)及び無水酢酸 1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して30分間還流させた。その後、1-メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、240℃で10時間保持し、固相重合を進めた。冷却して液晶性ポリエステル樹脂(B)として用いるLCP2を得た。
LCP2
(液晶性ポリエステル樹脂(A)との差):41℃
(II)/(I)のモル比率 :0.3
[(III)+(IV)]/(II)のモル比率 :1.0
(IV)/(III)のモル比率(β) :0.7
【0055】
実施例1、2
表1に示す重量組成比で、LCP1、LCP2及び充填剤を配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM-30)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒して、液晶性ポリエステル樹脂組成物をペレット状で得た。得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形し、上記(1)~(3)に示すようにして、コネクター成形品、曲げ弾性率測定用棒状試験片、薄肉流動長測定用成形品を得、反り量、曲げ弾性率及び薄肉流動長を測定した。その結果を表2に示す。なお、使用した充填剤は下記のとおりである。
(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm)
【0056】
【表1】
[図:0001384193000004.jpg]
※ 実施例1及び2において、LCP1 100重量部に対する、LCP2は82重量部であり、液晶性ポリエステル樹脂混合物(LCP1+LCP2)100重量部に対して、充填剤は、43重量部である。
【0057】
【表2】
[図:0001384193000005.jpg]
」
(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(甲2a)「【特許請求の範囲】
(1)-50℃~+85℃の温度範囲で、約-5~10μm/m・℃の線熱膨張率を有することを特徴とするサーモトロピック液晶性ポリマーの成形により形成された光学繊維の接続又は終結用部材。
(2)前記液晶性ポリマーが成形材料全量に基づいて5~60重量%の充填材を含有するものである特許請求の範囲第1項記載の光学繊維の接続又は終結用部材。
(3)前記充填材がウォラストナイト又は熔融シリカである特許請求の範囲第2項記載の光学繊維の接続又は終結用部材。
(4)前記部材が着色剤を含有する特許請求の範囲第1項記載の光学繊維の接続又は終結用部材。
(5)前記サーモトロピック液晶性ポリマーが60℃でペンタフルオロフェノールに0.1重量%の濃度で熔解した時に約1.0~15dl/gの対数粘度数を有するものである特許請求の範囲第1項記載の光学繊維の接続又は終結用部材。
(6)前記サーモトロピック液晶性ポリマーが、全芳香族ポリエステル、芳香族-脂肪族ポリエステル、全芳香族ポリ(エステル-アミド)、芳香族-脂肪族ポリ(エステル-アミド)、芳香族ポリアゾメチン、芳香族ポリエステル-カーボネート、およびこれらの混合物よりなる群から選ばれたものである特許請求の範囲第1項記載の光学繊維の接続又は終結用部材。
(7)前記サーモトロピック液品性ポリマーが、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリ(エステル-アミド)、芳香族-脂肪族ポリ(エステル-アミド)、およびこれらの混合物よりなる群から選ばれたものである特許請求の範囲第1項記載の光学繊維の接続又は終結用部材。
・・・
(11)サーモトロピック液晶性ポリマーから成形され、内部に少なくとも1本の光学繊維が配置されている光学繊維の接続又は終結用部材であって、該液晶性ポリマーが該光学繊維と実質的に等しい線熱膨張率を有することを特徴とする光学繊維の接続又は終結用部材。
(12)前記部材内に存在させた光学繊維を、その軸方向が成形した液晶性ポリマーの流れ方向と同方向になるように整列させた特許請求の範囲第11項記載の光学繊維の接続又は終結用部材。」(特許請求の範囲)
(甲2b)「(産業上の利用分野)
本発明は、光学繊維および光学装置用の低損失の接合を行うための部材および方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、低い標体膨張率、および好ましくは内部に配置された光学繊維と実質的に等しい線熱膨張率を示す特定のサーモトロピック液晶性ポリマーから製造された、光学繊維コネクタ、光学繊維スプライス、光学繊維カップラー等の光学繊維の接続又は終結用部材に関する。
・・・
(発明が解決しようとする問題点)
本発明の目的は、望ましくない損失の低下によって、連結または接続効率を維持する光学繊維部材に使用するのに通した熱可塑性材料を提供することである。
本発明の別の目的は、次の特徴の1つ又はそれ以上を有する光学繊維部材に使用するための熱可塑性材料を提供することである。
(a)成形品の流れ方向での線膨張率が望ましくない軸方向及び横方向の力を減少させるように光学繊維と適合する;
(b)著しい温度変化を受けても寸法安定性を維持する;
(c)耐湿性および耐薬品性に加え放射線抵抗性も備えている。」(第3頁左上欄第3行~第4頁右下欄第19行)
(甲2c)「本発明の好適態様において、線熱膨張率の制御が、液晶性ポリマーに正確な量で1種またはそれ以上の充填材料を配合することにより行われる。種々の充填材料を全材料に対して約5~60%またはそれ以上の合計量で、好ましくは約10~30%の量で配合することができる。代表的な充填材無機材料としては、ウォラスナイト・・・マイカ・・・等が挙げられる。ウォラスナイト及び溶融シリカが好適な材料である。」(第5頁左上欄第13行~右上欄第4行)
(甲2d)「本発明の部材の第2の目的は、広範囲の条件にわたって構造的に丈夫なことであり、例えば、特に成形物品の長手又は流れ方向で、例えば、-50~+85℃といった広い温度範囲に本発明の製品をさらした場合であっても、歪みやソリを最小限にしか示さないことである。」(第6頁左上欄第9~14行)
(甲2d)「本発明に用いるウォラスナイトフィブリルは、平均アスペクト比が約1~40:1であり、さらに好ましくは、約3~20:1であり、特に好ましくは約20:1である。適当なウォラスナイトフィブリルが多くの業者から市販されている。」(第9頁左下欄第10~14行)
(甲2e)「以下の実施例は、本発明の具体例として示したものである。ただし、本発明は、実施例に記載の詳細に制限されるものではない。
実施例1
・・・
この全芳香族ポリエステルを使用して、試験用の各種試料を調製した。種々のウォラスナイト繊維15重量%および種々のカーボンブラック5重量%との配合を、両方向回転二軸押出機(・・・)で行った。・・・種々の試料の組成を第1表に示す。
[図:0001384193000006.jpg]
[図:0001384193000007.jpg]
」(第11頁左上欄第1行~右上欄)
(3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(甲3a)「
[図:0001384193000008.jpg]
」(第1頁)
(4)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(甲4a)「
[図:0001384193000009.jpg]
」(第1頁)
(5)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(甲5a)「材料に要求される特性
LSI・・・プリント基板や基板・・・ケーブル、基板・・・基板等を接続する‘’コネクター‘’は昨今の電気製品の軽薄短小化、高性能化に伴い、小型、多極化しています。さらに、基板への実装方法も、240~260℃の高温雰囲気下でハンダ付けする‘’表面実装方式‘’(SMT:Surface Mount Technology)に切り替わりつつあります。」(第1頁「コネクター用途のためのグレード選定ガイド」の第1~5行を参照)
(6)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(甲6a)「1.LCPの一般的な特徴
LCPが小型電子部品等に用いられる一般的な理由として以下のことが挙げられる。
・・・
・電子部品実装法の主流である表面実装(SMT)のハンダリフロー温度240~260℃に耐える」(第13頁下段の左欄第4~13行)
(7)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(甲7a)「【0040】
配向には、成形加工時に固体状態にある充填剤が配合されていることが大きく影響する。そして、配向に大きな影響を与える条件としては、固体充填剤のアスペクト比、及び固体充填剤の含有量、固体充填剤の大きさ、固体充填剤間の相互作用、固体充填剤の組み合わせといったものが挙げられる。固体充填剤に関する条件は、固体充填剤自体が成形体内で配向することに加え、固体充填剤が樹脂の配向にも影響を与えるため、特に配向に大きく影響を与える条件であると言える。固体充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラスビーズ、ミルドファイバー、ガラスフレーク、マイカ、タルク等が用いられる。
【0041】
続いて、固体充填剤のアスペクト比、含有量、サイズ、相互作用がどのように配向に影響を与え、成形体の反り変形量に影響を与えるかについて説明する。」
(8)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
(甲8a)「
[図:0001384193000010.jpg]
」(第1頁第1~10行)
(甲8b)
「[図:0001384193000011.jpg]」(第1頁「ヤマグチ式湿式粉砕シリーズ」の項目)
(9)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
(甲9a)「製造例1(全芳香族ポリエステル液晶樹脂(成分(A)) の合成)
・・・
・(C-2) タルク [松村産業(株)製、 クラウンタルクPP(最大粒子径11/μm、平均アスペクト比6)]」(第13頁第1~23行)
(10)甲第10号証に記載された事項
甲第10号証には、以下の事項が記載されている。
(甲10a)「請求の範囲
[請求項1] (A)液晶性樹脂、
(B)繊維状ウォラストナイト、
(C)エポキシ基含有共重合体、及び
(D)板状充填剤
を含有し、
(A)成分の含有量が55~95.5質量%、(B)成分の含有量が2.5~25質量%、(C)成分の含有量が1.0~4.5質量%、(D)成分の含有量が10~35質量%、(B)成分と(D)成分との合計の含有量が20~37.5質量%であるカメラモジュール用液晶性樹脂組成物。
[請求項2] 前記(C)エポキシ基含有共重合体は、(C1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体及び(C2)エポキシ基含有スチレン系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
[請求項3] 請求項1又は2に記載の組成物からなるカメラモジュール用部品。
[請求項4] 請求項3に記載の部品を備えるカメラモジュール。」
(甲10b)「技術分野
[0001] 本発明は、カメラモジュール用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたカメラモジュールに関する。
・・・
発明が解決しようとする課題
・・・
[0012] 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、表面が起毛しにくく、そり変形が抑制され、機械強度が高く、耐熱性に優れるカメラモジュール用部品を製造するために用いられ、溶融時の流動性が高いカメラモジュール用液晶性樹脂組成物を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0013]本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、液晶性樹脂と繊維状ウォラストナイトとエポキシ基含有共重合体と板状充填剤とを、特定の割合で含有するカメラモジュール用液晶性樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・
発明の効果
[0018] 本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物は、溶融時の流動性が高く、この組成物を原料として、カメラモジュール用部品を製造すれば、表面が起毛しにくく、そり変形が抑制され、機械強度が高く、耐熱性に優れるカメラモジュール用部品が得られる。」
(甲10c)「[0022] [(A)液晶性樹脂]
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
[0023] 上記のような(A)液晶性樹脂の種類としては特に限定されず、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。(A)液晶性樹脂としては、60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1質量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、更に好ましくは2.0~10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが好ましく使用される。
[0024] 本発明に適用できる(A)液晶性樹脂としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドは、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、及び芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
[0025] より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
[0026] 本発明に適用できる(A)液晶性樹脂を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
・・・」
(甲10d)「[(B)繊維状ウォラストナイト]
[0030] 本明細書において、(B)繊維状ウォラストナイトとは、アスペクト比、即ち、平均繊維長/平均繊維径の値が8以上であるウォラストナイトをいう。上記アスペクト比は、成形体表面の起毛抑制効果等の観点から、好ましくは10~25であり、より好ましくは15~20である。なお、本明細書において、アスペクト比が8未満であるウォラストナイトを粒状ウォラストナイトという。
[0031] (B)繊維状ウォラストナイトとしては、特に限定されず、例えば、公知の繊維状ウォラストナイトを用いることができる。(B)繊維状ウォラストナイトは、1種単独で使用してもよく、アスペクト比、平均繊維長、平均繊維径等が異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[0032] (B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維径は好ましくは3.0~50μmであり、より好ましい平均繊維径は4.5~40μmである。上記平均繊維径が3.0μm以上であると、カメラモジュールとして必要な機械強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維径が50μm以下であると、成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。なお、本明細書において、平均繊維径としては、実体顕微鏡画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により測定された値を採用する。
[0033] (B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維長は好ましくは30~800μmであり、より好ましい平均繊維長は50~600μmである。上記平均繊維長が30μm以上であると、カメラモジュールとして必要な機械強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維長が800μm以下であると、成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。なお、本明細書において、平均繊維長としては、実体顕微鏡画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により測定された値を採用する。
[0034] (B)成分の含有量は、本発明のカメラモジュール用液晶性組成物において、2.5~25質量%である。(B)成分の含有量が2.5質量%以上であると、カメラモジュールとして必要な機械強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。(B)成分の含有量が25質量%以下であると、組成物の溶融時の流動性が向上しやすく、成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすく、成形体のそり変形抑制効果が高くなりやすい。より好ましい上記含有量は5~20質量%である。」
(甲10e)「[0048] [(D)板状充填剤]
(D)板状充填剤は、平均粒子径が20~50μmであることが好ましい。上記平均粒子径が20μm以上であると、カメラモジュールとして必要な機械強度及び荷重たわみ温度が確保されやすく、成形体のそり変形抑制効果が高くなりやすい。上記平均粒子径が50μm以下であると、成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。好ましい上記平均粒子径は23~30μmである。なお、本明細書において、平均粒子径としては、レーザ回折/散乱式粒度分布測定法で測定した値を採用する。
[0049] (D)板状充填剤としては、特に限定されず、例えば、マイカ、タルク、ガラスフレーク、黒鉛、各種の金属箔(例えば、アルミ箔、鉄箔、銅箔)等が挙げられる。(D)成分として2種以上を用いてもよい。本発明においては(D)成分として、マイカ及びタルクを使用することが好ましく、マイカを使用することがより好ましい。」
(甲10f)「実施例
[0073] 以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[0074] <液晶性樹脂>
・液晶性ポリエステルアミド樹脂
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で2時間の熱処理を行って、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は334℃、溶融粘度は14.0Pa・sであった。なお、上記ポリマーの溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸;188.4g(60モル%)
(II)2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;21.4g(5モル%)
(III)テレフタル酸;66.8g(17.7モル%)
(IV)4,4’-ジヒドロキシビフェニル;52.2g(12.3モル%)
(V)4-アセトキシアミノフェノール;17.2g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);15mg
アシル化剤(無水酢酸);226.2g
[0075] <液晶性樹脂以外の材料>
・繊維状ウォラストナイト:NYGLOS 8(NYCO Materials社製、アスペクト比17、平均繊維長136μm、平均繊維径8μm)
・粒状ウォラストナイト:NYAD 325(NYCO Materials社製、アスペクト比5、平均繊維長50μm、平均繊維径5μm)
・エポキシ基含有オレフィン系共重合体:ボンドファースト2C(住友化学(株)製、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレートの含有量6質量%)
・エポキシ基不含有共重合体:タフテックM1913(旭化成(株)製、無水マレイン酸変性水添スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)
[0076] <カメラモジュール用液晶性樹脂組成物の製造>
上記成分を、表1又は表2に示す割合で二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、シリンダー温度350℃にて溶融混練し、カメラモジュール用液晶性樹脂組成物ペレットを得た。
・・・
[0083]
[表1]
[図:0001384193000012.jpg]
[0084]
[表2]
[図:0001384193000013.jpg]
」
3.当審の職権調査により発見した証拠に記載された事項
当審の職権調査により発見した参考文献1には、以下の事項が記載されている。
(参1a)「代表分析表
GRADE 繊維長 繊維径 アスペクト比
[μm] [μm] [L/D]
・・・
NYAD 325 50 10 5
・・・
NYAD 1250 9 3 3
NYGLOS 4W 50 4.5 11
・・・」
第5 当審の判断
1 申立理由1(明確性)について
(1)申立理由1の概要
申立理由1の概要は、以下のとおりである。
理由1:本件発明1においては、必須の構成成分として「(B)繊維状ウォラストナイト」が存在するが、そのアスペクト比に関して「前記(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比は、8以上であり」と規定されており、本件明細書の(本c)の段落【0027】によると、「アスペクト比」は「平均繊維長/平均繊維径」と定義されるものである。
そして、「平均繊維径」について、本件明細書の(本c)の段落【0029】には「本明細書において、平均繊維径としては、繊維状ウォラストナイトを走査型電子顕微鏡で観察し、100本の繊維状ウォラストナイトについて繊維径を測定した値の平均を採用する」(当審注:異議申立書では、当該記載の箇所について段落【0030】とされているが、段落【0029】の誤記である。)と記載されているところ、(1a)「ウォラストナイト」の形状は、甲第3号証の上記摘記に記載されているとおり、その結晶形態は「三斜晶系」であり、甲第4号証の上記摘記の記載から、三斜晶系では対称性が非常に小さいため、どのような長さをもって「繊維径」とするのか明らかでない。
また、(1b)「平均繊維径」及び「平均繊維長」の「平均」について、どのような分布を基にどのように算出するのか、本件明細書に記載されておらず、明らかではない。
さらに、(1c)電子顕微鏡を用いて観察を行う場合に、レンズの特性や倍率等の測定条件について本件明細書には何ら特定されておらず、不明確である。
(2)判断
本件発明1の「繊維状ウォラストナイト」の「アスペクト比」について、本件明細書の(本c)の段落【0027】によると、「アスペクト比」は「平均繊維長/平均繊維径」と定義され、「平均繊維長」及び「平均繊維径」の測定について、本件明細書の(本c)の段落【0029】には「本明細書において、平均繊維径としては、繊維状ウォラストナイトを走査型電子顕微鏡で観察し、100本の繊維状ウォラストナイトについて繊維径を測定した値の平均を採用する」と記載され、段落【0030】には「本明細書において、平均繊維長としては、繊維状ウォラストナイトの実体顕微鏡画像10枚をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により、実体顕微鏡画像1枚ごとに100本の繊維状ウォラストナイト、即ち、合計1000本の繊維状ウォラストナイトについて繊維長を測定した値の平均を採用する」と、測定の方法及び「平均」の算出方法について明確に記載されているから、本件発明1の「繊維状ウォラストナイト」の「アスペクト比」の測定方法については、本件明細書の上記摘記から明確であるといえる。
以下、上記申立人の主張について検討する。
まず、上記(1c)について、樹脂組成物の充填剤の「粒径」や「平均繊維長」、「平均繊維径」を観察する手段として、「走査型電子顕微鏡」を用いる方法は周知の方法であり、レンズの特性や倍率等の測定条件の設定は、当業者がごく一般的に行うことである。そして、段落【0029】及び【0030】に記載される「100本の繊維状ウォラストナイト」や「繊維状ウォラストナイトの実体顕微鏡画像10枚をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により、実体顕微鏡画像1枚ごとに100本の繊維状ウォラストナイト、即ち、合計1000本の繊維状ウォラストナイト」を観察できるように、「走査型電子顕微鏡」の測定条件を設定することも当業者がごく一般的に行うことであると認められる。
次に、上記(1b)について、「平均繊維径」の「平均」については、段落【0029】には「100本の繊維状ウォラストナイトについて繊維径を測定した値の平均を採用する」と記載されており、観察して測定した「100本の繊維状ウォラストナイト」の「繊維径」の測定値の平均値(通常算出平均値)を意図していることは明らかである。同様に、「平均繊維長」の「平均」についても、段落【0030】には「合計1000本の繊維状ウォラストナイトについて繊維長を測定した値の平均を採用する」と記載されていることから、観察して測定した「1000本の繊維状ウォラストナイトについて繊維長」の測定値の平均値(通常算出平均値)を意図していることは明らかである。
さらに、上記(1a)について、本件発明1の「繊維状ウォラストナイト」の「アスペクト比」について、本件明細書の(本c)の段落【0027】には「繊維状ウォラストナイトのアスペクト比、即ち、平均繊維長/平均繊維径の値は8以上である。上記アスペクト比は、・・・、好ましくは10~25であり、より好ましくは15~20である」と記載されており、アスペクト比が1~2桁で表記されていること、また、「平均繊維径」は100本の繊維の平均値であり、「平均繊維長」は1000本の繊維の平均値であることからすれば、1本1本の繊維の繊維径や繊維長は、せいぜい上二桁程度の測定値を求めればよく、それ以上高度に精密な測定値を求める必要はないといえる。申立人の指摘のとおり、確かに「繊維状ウォラストナイト」は、「三斜晶系」であるといえるものの、上述のとおり、1本1本の繊維の「繊維径」もせいぜい上二桁程度の測定値でよいと当業者であれば理解できるし、また、この程度の測定値であれば「繊維状ウォラストナイト」の結晶形態に影響されることなく、上記段落【0029】及び【0030】に記載される観察及び測定方法により測定できると理解できるから、この点についても不明確であるとはいえない。
(3)まとめ
したがって、申立理由1は、理由がない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)申立理由2の概要
申立理由2の概要は、以下のとおりである。
理由2a:本件発明の課題である「耐熱性」、「機械的強度」、「リフロー前のソリの値」及び「リフロー後のソリの値」、「流動性が良好な液晶樹脂組成物」についてそれぞれ、本願発明の裏付けとして記載されている本件明細書の実施例と比較例をみると、比較例の方が優れた値になっている例もあり、本件明細書の記載からは、比較例に対する実施例の作用効果の顕著性を読み取ることは出来ず、また、技術常識を踏まえても、本件発明の効果の優位性を認識することはできない。
また、特に、「耐熱性」に関しては、甲第5号証及び甲第6号証の上記摘記からみて、コネクターに要求される液晶性組成物は、実用上240~260℃の高温に耐えられる耐熱性が要求されるところ、本件明細書の段落【0070】には「実施例において、荷重たわみ温度は245℃以上」と記載されているが、実用上必要な耐熱性を有しないことは明らかである。
理由2b:本件発明1では、本願発明2と異なり、「(A)液晶性樹脂」に関し、「芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであり」とのみ特定されているが、本願発明1の実施例に相当する実施例5は、「耐熱性」についての「荷重たわみ温度」、「機械的強度」についての「曲げ強度」及び「曲げ弾性率」、「リフロー前後の反り」の評価についても実施例1~4に比べて明らかに悪い値になっており、また、比較例との比較においても悪い値になっているものもある。
また、実施例5の僅か1例を以て、LCP1以外の「芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミド」を用いた場合全般について、サポートされているとは考えられない。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明3~6も同様である。
理由2c:本件発明においては、「マイカ」を必須の構成成分として規定しているが、その形状やサイズは特定されていない。甲第7号証の(甲7a)の記載及び本件明細書の(本d)の段落【0037】及び【0038】の記載、甲第8号証の(甲8a)の記載、及び、本件明細書の実施例及び比較例において実施例で用いられた「マイカ;(株)山口雲母工業製AB-25S、平均粒子径25μm」のアスペクト比が80であり(甲第8号証の(8b)を参照)と比較例5で用いた「タルク;松村産業(株)製クラウンタルクPP、平均粒子径10μm」の平均アスペクト比が6程度である(甲第9号証の(甲9a)を参照)ことからみて、マイカのアスペクト比等の形状やサイズが重要であるといえるところ、本件明細書の実施例で示された効果が、形状やサイズの異なる他のマイカを用いた場合にも当てはまるとは到底考えられない。
本件明細書の(本f)の比較例6では、「ウォラストナイト2:NYAD 325(NYCO Materials社製、アスペクト比5、平均繊維長50μm、平均繊維径5μm)を用いているが、このアスペクト比は10(=50μm/5μm)であり、本件発明の実施例といえるところ、比較例6は、耐熱性や機械的強度に関する結果から、本件発明の解決できるものとはいえない。
また、本件発明の「(B)繊維状ウォラストナイト」の「アスペクト比は、8以上」であるところ、本件明細書の(本f)の実施例で用いられた「(B)繊維状ウォラストナイト」は、「ウォラストナイト1:NYGLOS 8(NYCO Materials社製、アスペクト比17、平均繊維長136μm、平均繊維径8μm)」の「アスペクト比17」の僅か1例のみで、本件発明の「アスペクト比は、8以上」という極めて広範囲がサポートされているとは到底認められない。
さらに、本件発明の「(B)繊維状ウォラストナイト」についてはそのサイズが特定されていないが、本件明細書の(本c)の段落【0029】~【0030】に記載からみて、「(B)繊維状ウォラストナイト」のサイズの値自体も本件発明の技術的課題解決に不可欠な要素であるといえるところ、本件発明の実施例で用いられた「ウォラストナイト1」とは異なるサイズの場合でも、本件明細書の実施例と同等の効果を奏するとはいえる根拠も、そのような技術常識も存在しない。
(2)判断
ア 特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点から検討する。
イ 判断
(ア)本件発明の課題について
本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0006】の記載からみて、「耐熱性及び機械的強度に優れ、そり変形が抑制されたコネクターの製造を実現できる、流動性が良好な液晶性樹脂組成物、及び当該液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクターを提供すること」であるといえる。
(イ)理由2aについて
本件発明の課題は、上記(ア)で記載したとおりであるところ、本件明細書の(本f)の段落【0070】の「表1及び表2に示される通り、実施例において、荷重たわみ温度は245℃以上、曲げ歪は2.0%以上、曲げ弾性率は14000MPa以上、リフロー前のFPCコネクターそりは0.030mm未満、リフロー後のFPCコネクターそりは0.090mm未満、FPCコネクター最小充填圧力は75MPa未満であった。よって、本発明に係る液晶性樹脂組成物は、流動性に優れ、この液晶性樹脂組成物の成形品を含むコネクターは、耐熱性及び機械的強度に優れ、そり変形が抑制されていることが確認された。」との記載からみて、本件発明は、「耐熱性」、「機械的強度」、「そり変形」の「抑制」、「流動性」の全てについて従来にない顕著な効果を奏することを意図するのではなく、これらの全ての課題について、段落【0070】に記載されるような一定水準以上のものを得ることを意図するものであると理解できる。そして、その解決手段について、本件明細書の(本a)の段落【0007】に記載のとおり、「所定の含有量で、液晶性樹脂と、繊維状ウォラストナイトと、マイカと、を組み合わせ、繊維状ウォラストナイトのアスペクト比を所定の範囲とすることで上記の課題を解決できることを見出した」ものであるといえる。
これらのことを踏まえて、本件明細書の(本f)の段落【0068】~【0069】の【表1】~【表2】の実施例をみると、実施例1~5は、上記段落【0070】に記載される「耐熱性」、「機械的強度」、「そり変形」の「抑制」、「流動性」に関する評価値を全て満たすものである。一方、比較例をみると、「液晶性樹脂」が過多である比較例1、比較例4は、「FPCコネクターそり(リフロー後)」の値が「0.106」、「0.150」と実施例1~5の「0.060~0.089」と比べて大きなものとなっている。また、「液晶性樹脂」が過小である比較例2~3は、「曲げ歪み」が「1.6」、「1.5」と実施例1~5の「2.0~2.6」と大きく低下するものとなっている。また、マイカを含まない比較例5と、本件発明の「アスペクト比」を満たさない「ウォラストナイト2」を用いた比較例6の「曲げ弾性率」は「13500」、「13000」と、実施例1~5の「14100~15800」に比べて劣るものとなっている。さらに、「繊維状充填剤」として「繊維状ウォラストナイト」ではなく「ミルドファイバー:日東紡(株)製PF70E001、繊維径10μm、平均繊維長70μm(メーカー公称値)」を用いた比較例7~9は「FPCコネクター最小充填圧力」が「91」、「85」、「88」と、実施例1~5の「68~73」に比べて大きなものとなっている。
申立人の指摘するとおり、確かに、本件発明の課題に関係する「耐熱性」、「機械的強度」、「そり変形」の「抑制」、「流動性」の個別の課題によっては、比較例の値の方が実施例よりも優れる場合はあるものの、本件発明1~2の発明特定事項を満たす実施例は、上述したとおり、本件発明の課題に関係する上記のすべての個別の課題について一定水準以上のものが得られることを確認できる。
そうすると、本件発明1~2及びこれを直接的又は間接的に引用する本件発明3~6は、本件発明の上記課題を解決できるものであると理解できるといえる。
次に、「耐熱性」に関して、甲第5号証及び甲第6号証の記載からみて、本件明細書の段落【0070】の「荷重たわみ温度は245℃以上」の基準は実用上必要な耐熱性を有しないことについて、甲第5号証及び甲第6号証の「240~260℃」の高温雰囲気下の温度は「表面実装層方式(SMT)」での使用を前提した記載である。そして、「荷重たわみ温度は245℃以上」の「液晶性樹脂」は、「240~260℃」より低い温度での実装方式には用いることができるといえるから、実用上必要な耐熱性を有しないとまではいえない。
したがって、申立人が主張する理由2aを採用することはできない。
(ウ)理由2bについて
本件発明1の「芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミド」である「液晶性樹脂」は、本願発明2の「液晶性樹脂」を満たすものである樹脂以外の樹脂として、請求人の主張するとおり、実施例5の例しか記載されていない。
しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、本件発明の課題は、「耐熱性」、「機械的強度」、「そり変形」の「抑制」、「流動性」の個別の課題全てについて顕著な効果を奏することを意図するのではなく、これらのすべての課題について、本件明細書の(本f)の段落【0070】に記載されるような一定水準以上のものを得ることを意図するものであると理解できる。そして、本件明細書の(本f)の実施例5も、「耐熱性」、「機械的強度」、「そり変形」の「抑制」、「流動性」のすべての課題について、本件明細書の(本f)の段落【0070】に記載される一定水準以上のものであることが確認されているから、本件発明の上記課題を解決できるものといえる。
また、上記(イ)で述べたとおり、本件発明は、「所定の含有量で、液晶性樹脂と、繊維状ウォラストナイトと、マイカと、を組み合わせ、繊維状ウォラストナイトのアスペクト比を所定の範囲とすることで上記の課題を解決できることを見出した」(本件明細書の(本a)の段落【0007】)ものであるところ、本件明細書の(本f)の「LCP1」を用いた実施例1~4と比較例1~9との比較から、「所定の含有量で、液晶性樹脂と、繊維状ウォラストナイトと、マイカと、を組み合わせ、繊維状ウォラストナイトのアスペクト比を所定の範囲」とすることで本件発明の上記課題を解決できることを確認できている。そうすると、実施例5で用いられている「LCP2」以外の「芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミド」を用いた場合であっても、実施例1~4と比較例1~9との結果の比較から「所定の含有量で、液晶性樹脂と、繊維状ウォラストナイトと、マイカと、を組み合わせ、繊維状ウォラストナイトのアスペクト比を所定の範囲」としたものであれば、そうでないものに比べて、「耐熱性」、「機械的強度」、「そり変形」の「抑制」、「流動性」のすべての課題について、一定水準以上のものが得られることは、当業者であれば推測できるといえる。
したがって、申立人が主張する理由2bも採用することはできない。
(エ)理由2cについて
本件発明は、本件明細書の(本a)の段落【0003】の「特に、近年のエレクトロニクス機器の小型化及び薄型化に伴い、エレクトロニクス機器を構成する電子部品(コネクター等)の低背化及び狭ピッチ化に対するニーズがある」との記載からみて、「低背化及び狭ピッチ化」された「コネクター」の成形等に用いられる「樹脂組成物」に係るものであるといえる。
そして、本件明細書の(本d)の段落【0032】の「本発明に係る液晶性樹脂組成物にマイカが含まれることにより、十分な曲げ弾性率を有し、かつ、そり変形が抑制された成形体を得ることができる」との記載、段落【0033】の「マイカの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して17.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物から得られる成形体の曲げ弾性率向上及びそり変形抑制が十分ではないため好ましくない。マイカの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して30質量%超であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化し、液晶性樹脂組成物の成形が困難になる可能性があるため好ましくない」との記載からみて、「マイカ」は「十分な曲げ弾性率を有し、かつ、そり変形が抑制された成形体を得る」ためのものであり、「流動性」を「悪化」させないものである必要があることが理解できる。
そして、「マイカ」の形状やサイズについて、本件明細書の段落【0037】には「本発明において使用できるマイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒子径が10~100μmであるものが好ましく、平均粒子径が20~80μmであるものが特に好ましい。マイカの平均粒子径が10μm以上であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。マイカの平均粒子径が100μm以下であると、成形体の剛性の向上が十分となりやすく、ウェルド強度も十分となりやすいため好ましい。更に、マイカの平均粒子径が100μm以下であると、本発明のコネクター等を成形するのに十分な流動性を確保しやすい」ことが、段落【0038】には「本発明において使用できるマイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.3μmであることが特に好ましい。マイカの厚みが0.01μm以上であると、液晶性樹脂組成物の溶融加工の際にマイカが割れにくくなるため、成形体の剛性が向上しやすい可能性があるため好ましい。マイカの厚みが1μm以下であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい」ことが記載されている。
本件発明1~2には、「マイカ」の形状やサイズについて特定はされていないものの、「低背化及び狭ピッチ化」された「コネクター」の成形等に用いられる「樹脂組成物」に係るものであること、「十分な曲げ弾性率を有し、かつ、そり変形が抑制された成形体を得る」ためのものであり、「流動性」を「悪化」させないものである必要があることを踏まえれば、段落【0037】及び【0038】に記載された程度の「平均粒子径」、「厚み」を有するものを用いる必要があることは当業者であれば理解できるし、そのような形状やサイズの「マイカ」を用いれば、本件発明の課題を解決できることは当業者であれば理解できる。
したがって、申立人が主張する理由2cも採用することはできない。
(オ)理由2dについて
まず、本件明細書の(本f)の比較例6の「ウォラストナイト2:NYAD 325(NYCO Materials社製、アスペクト比5、平均繊維長50μm、平均繊維径5μm)」について、参考情報1の(参a)の記載からみて、「NYAD 325」は、「繊維長」が「50μm」、「繊維径」が「10μm」、「アスペクト比」が「5」であり、本件発明の「(B)繊維状ウォラストナイト」の「アスペクト比8以上」の発明特定事項を満たすものではないことから、比較例であるといえる。
次に、本件発明の「(B)繊維状ウォラストナイト」の「アスペクト比」について、本件明細書の(本c)の段落【0027】には「(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比、即ち、平均繊維長/平均繊維径の値は8以上である。上記アスペクト比は、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体の曲げ弾性率及びそり変形抑制効果等の観点から、好ましくは10~25であり、より好ましくは15~20である」と、「アスペクト比」は「成形体の曲げ弾性率及びそり変形抑制効果」の観点から特定されることが記載されている。また、本件明細書の(本f)の実施例の実施例4と比較例6とを比較すると、両者は、実施例4が「ウォラストナイト1:・・・、アスペクト比17・・・)」を用いるのに対し、比較例6が「ウォラストナイト2:・・・、アスペクト比5・・・)」を用いる点でのみ相違するが、「成形体の曲げ弾性率及びそり変形抑制効果」が優れていることが確認できる。
そうすると、実施例4と比較例6の結果及び段落【0027】の記載から、「(B)繊維状ウォラストナイト」の「アスペクト比」が「8以上」であれば、そうでない場合に比べて、「成形体の曲げ弾性率及びそり変形抑制効果」が優れたものになることは当業者であれば理解できるといえる。
次に、「(B)繊維状ウォラストナイト」のサイズについて、上記「(エ)理由2cについて」で述べたとおり、本件発明は、本件明細書の(本a)の段落【0003】の記載からみて、「低背化及び狭ピッチ化」された「コネクター」の成形等に用いられる「樹脂組成物」に係るものであるといえる。
また、本件明細書の(本c)の段落【0029】の「(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維径は好ましくは3.0~50μmであり、より好ましい平均繊維径は4.5~40μmである。上記平均繊維径が3.0μm以上であると、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体は、十分な機械的強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維径が50μm以下であると、上記成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい」との記載、段落【0030】の「(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維長は好ましくは30~800μmであり、より好ましい平均繊維長は50~600μmである。上記平均繊維長が30μm以上であると、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形体は、十分な機械的強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維長が800μm以下であると、上記成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい」との記載からみて、「(B)繊維状ウォラストナイト」は、「機械的強度及び荷重たわみ温度」を確保するためのものであり、そのサイズについては「成形体表面の起毛抑制効果」に留意すべきものであるといえる。
本件発明1~2には、「(B)繊維状ウォラストナイト」のサイズについて特定はされていないものの、「低背化及び狭ピッチ化」された「コネクター」の成形等に用いられる「樹脂組成物」に係るものであること、「機械的強度及び荷重たわみ温度」を確保するためのものであり、「成形体表面の起毛抑制効果」に留意すべきものであることを踏まえれば、段落【0029】及び【0030】に記載された程度の「平均繊維長」及び「平均繊維径」を有するものを用いる必要があることは当業者であれば理解できるし、そのようなサイズの「(B)繊維状ウォラストナイト」を用いれば、本件発明の課題を解決できることは当業者であれば理解できる。
また、申立人は、この点についての具体的な反証を示していない。
したがって、申立人が主張する理由2dも採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、申立理由2a~2dのいずれも、理由がない。
3 申立理由3-1(新規性)及び3-2(進歩性)について
(1)甲第1号証に記載された発明について
甲第1号証の(甲1e)の段落【0055】及び【0056】の【表1】の実施例2に着目すると、
「LCP1 38.5重量%LCP2 31.5重量%マイカ(山口雲母工業所製AB-25S(平均粒径:24μm)) 20.0重量%GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm) 10.0重量%を配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM-30)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒して、得た液晶性ポリエステル樹脂組成物」の発明が記載されている。
そして、「LCP1」は、段落【0053】の記載からみて、p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た「液晶性ポリエステル樹脂(A)」であるといえる。
同様に、「LCP2」は、段落【0054】の記載からみて、p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た「液晶性ポリエステル樹脂(B)」であるといえる。
そうすると、甲第1号証には、
「LCP1(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(A)) 38.5重量%LCP2(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(B)) 31.5重量%マイカ(山口雲母工業所製AB-25S(平均粒径:24μm)) 20.0重量%GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm) 10.0重量%を配合した後、2軸押出機を用いて、シリンダー温度340℃で造粒して、得た液晶性ポリエステル樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「LCP1(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(A))」及び「LCP2(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(B))」は、その構成単位である「p-ヒドロキシ安息香酸」、「4,4'-ジヒドロキシビフェニル」、「テレフタル酸」」及び「イソフタル酸」のいずれも「芳香族化合物」であり、このうち「p-ヒドロキシ安息香酸」は「芳香族ヒドロキシカルボン酸」であるから、本件発明1の「(A)液晶性樹脂」であって「芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル」であるものに相当する。
そして、甲1発明の「液晶性ポリエステル樹脂組成物」は、「LCP1」と「LCP2」を合計で70重量%含有するものであるから、本件発明1と同様に、「(A)液晶性樹脂の含有量は、62.5~72.5質量%」の範囲内で含んでいるといえる。
甲1発明の「マイカ(山口雲母工業所製AB-25S(平均粒径:24μm))」は、本件発明1の「(C)マイカ」に相当することは明らかである。
また、甲1発明において、「マイカ(山口雲母工業所製AB-25S(平均粒径:24μm))」は、「20.0重量%」含んでいるから、本件発明1と同様に、「(C)マイカの含有量は、17.5~30質量%」の範囲内で含んでいるといえる。
甲1発明の「GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm))は、本件発明1の「(B)繊維状ウォラストナイト」と繊維状充填剤である限りで一致する。
そして、甲1発明の「GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm))は、甲1発明の「液晶性ポリエステル樹脂組成物」中に「10.0重量%」、「マイカ(山口雲母工業所製AB-25S(平均粒径:24μm))」と合わせて「30.0重量%」含んでおり、本件発明1の「(B)繊維状ウォラストナイト」と同様に、「液晶性樹脂組成物」全体に対して「2.5~15質量%」、「(C)マイカ」との合計の含有量として「27.5~37.5質量%」の範囲で含んでいるといえる。
そして、甲1発明の「液晶性ポリエステル樹脂組成物」に「エポキシ基含有共重合体」が含まれていないことは明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)液晶性樹脂と、(B)繊維状充填剤と、(C)マイカと、を含み、エポキシ基含有共重合体を含まない液晶性樹脂組成物であって、前記(A)液晶性樹脂が、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであり、前記液晶性樹脂組成物全体に対して、前記(A)液晶性樹脂の含有量は、62.5~72.5質量%、前記(B)繊維状充填剤の含有量は、2.5~15質量%、前記(C)マイカの含有量は、17.5~30質量%、前記(B)繊維状充填剤及び前記(C)マイカの合計の含有量は、27.5~37.5質量%である、液晶性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
イ 判断
(ア)相違点1について
上記相違点1について検討する。
まず、甲1発明の「GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm))」は、本件発明の「(B)繊維状ウォラストナイト」とはその材質もアスペクト比も異なる無機充填剤であるから、相違点1は、実質的な相違点であるといえる。
次に、甲1発明において、「GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm))」に代えて「アスペクト比」が「8以上」である「(B)繊維状ウォラストナイト」を用いることが容易に想到し得たかについて検討する。
「繊維状充填剤」に関して、甲第1号証の(甲1d)の段落【0044】には「繊維状充填剤」の好ましい「平均繊維径」及び「平均繊維長」は記載されているものの、「アスペクト比」については言及されていないし、また、「繊維状の無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカが挙げられるが、これらに限定されるものではない」と記載されているものの、列記されたこれらの「繊維状の無機充填剤」の中から、「アスペクト比」が「8以上」である「(B)繊維状ウォラストナイト」を用いる動機付けとなる記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
甲第2号証の上記摘記事項には、「光学繊維コネクタ、光学繊維スプライス、光学繊維カップラー等」等の「光学繊維の接続又は終結用部材」として、「サーモトロピック液晶性ポリマー」に「ウォラストナイト」等の「充填剤」を含有させることが記載されている(特に、(甲2a)及び(甲2b)を参照)。
また、甲第10号証の上記摘記事項には、「カメラモジュール用液晶性樹脂組成物」として、「芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミド」等である「(A)液晶性樹脂」、「(B)繊維状ウォラストナイト」、「(C)エポキシ基含有共重合体」及び「(D)板状充填剤」からなる組成物が記載されており((甲10a)の請求項1を参照)、「(A)液晶性樹脂」として「芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミド」等を用いること((甲10c)の段落[0023]を参照)、「(B)繊維状ウォラストナイト」として「アスペクト比、即ち、平均繊維長/平均繊維径の値が8以上である」ものを用いること((甲10d)の段落[0030]を参照)、「(D)板状充填剤」として「マイカ」が好ましいこと((甲10e)の段落[0049]を参照)も記載されている。
しかしながら、甲1発明の「液晶性ポリエステル樹脂組成物」は、甲第1号証の(甲2a)の段落【0002】の記載からみて「近年の表面実装技術の進展や、携帯電話等のモバイル機器に係る軽薄短小化の流れに伴って、使用される電子部品」である「コネクター」に用いるものであるのに対し、甲第2号証に記載された「サーモトロピック液晶性ポリマー」に「ウォラストナイト」等の「充填剤」を含有させものは「光学繊維の接続又は終結用部材」として用いるものであり、また、甲第10号証の「カメラモジュール用液晶性樹脂組成物」は「カメラモジュール」の材料として用いるものである。
したがって、甲1発明の「液晶性ポリエステル樹脂組成物」と、甲第2号証及び甲第10号証に記載された組成物の用途は明らかに異なるものであるから、甲第2号証及び甲第10号証に「液晶性樹脂」に「ウォラストナイト」を配合することが記載されていたとしても、直ちに、甲1発明において、「アスペクト比」が「8以上」である「(B)繊維状ウォラストナイト」を用いる動機付けになるとはいえない。
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1発明及び甲第1、2、10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。
(イ)本件発明の効果について
上記(ア)で述べたとおり、本願発明1は、甲1発明及び甲第1、2、10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないが、念のため、本願発明1の効果についても確認する。
本件発明1の効果は、上記「2 申立理由2(サポート要件)について」「(2)判断」「(イ)理由2aについて」でも述べたとおり、本件明細書の(本f)の段落【0068】~【0069】の【表1】~【表2】の実施例をみると、本件発明1の実施態様である実施例1~5は、段落【0070】に記載される「耐熱性」、「機械的強度」、「そり変形」の「抑制」、「流動性」に関する評価値を全て満たすものである。
そして、上記相違点1である「(B)繊維状充填剤」として「(B)繊維状ウォラストナイト」を用いた実施例1~3と、「GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm))」を用いた比較例7~9とを比較すると、「FPCコネクター最小充填圧力」について、比較例7~9では85~91であるのに対し、実施例1~3では68~69と顕著に低くなっているといえる。そして、「(B)繊維状充填剤」として「(B)繊維状ウォラストナイト」を用いることにより、「GF(ミルドガラスファイバー 日東紡(株)製PF70E001(平均繊維径:10μm,平均繊維長:70μm))」を用いた場合に比べて、この「FPCコネクター最小充填圧力」が低くなることについては、甲第1、2、10号証のいずれにも記載されておらず、当業者が予測し得た効果であるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1発明及び甲第1、2、10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを、上記「(2)本件発明1について」「ア 対比」での検討を踏まえて対比する。
甲1発明の「LCP1(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(A))」及び「LCP2(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(B))」の構成単位である「p-ヒドロキシ安息香酸」、「4,4'-ジヒドロキシビフェニル」、「テレフタル酸」、「イソフタル酸」は、それぞれ、本件発明2における「構成単位(I)」、「構成単位(V)」、「構成単位(III)」、「構成単位(IV)」を構成する化合物であるといえる。
甲1発明の「LCP1」及び「LCP2」には、本件発明2の「構成単位(II)」及び「構成単位(VI)」を含まないものであるから、甲1発明の「LCP1」及び「LCP2」は、本件発明2の「(A)液晶性樹脂」と「液晶性樹脂」である限りにおいて一致する。
そうすると、甲1発明と本件発明2とは、
「(A)液晶性樹脂と、(B)繊維状充填剤と、(C)マイカと、を含む液晶性樹脂組成物であって、前記液晶性樹脂組成物全体に対して、前記(A)液晶性樹脂の含有量は、62.5~72.5質量%、前記(B)繊維状充填剤の含有量は、2.5~15質量%、前記(C)マイカの含有量は、17.5~30質量%、前記(B)繊維状充填剤及び前記(C)マイカの合計の含有量は、27.5~37.5質量%である、液晶性樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:「(A)液晶性樹脂」について、本件発明2では、「必須の構成成分として、下記構成単位(I)~(VI)からなり、全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は50~70モル%であり、全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は10.25~22.25モル%であり、全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、全構成単位に対して構成単位(V)の含有量は5.75~23.75モル%であり、全構成単位に対して構成単位(VI)の含有量は1~7モル%であり、全構成単位に対して構成単位(II)と構成単位(IV)との合計の含有量は1モル%以上5モル%未満であり、全構成単位に対して構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は100モル%であり、構成単位(V)と構成単位(VI)との合計に対する構成単位(VI)のモル比が0.04~0.37である、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドである
【化1】
[図:0001384193000014.jpg]
」のに対し、甲1発明では、「LCP1(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(A))」及び「LCP2(p-ヒドロキシ安息香酸7.2モル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル2.4モル、テレフタル酸1.44モル、イソフタル酸0.96モルを反応させて得た液晶性ポリエステル樹脂(B))」であり、本件発明2の「構成単位(II)」及び「構成単位(VI)」を含まず、本件発明2の構成単位(I)~(VI)の組成とは異なる点。
イ 判断
上記相違点2は、上記「(2)本件発明1について」「ア 対比」の相違点1と同じ内容であるから、上記「(2)本件発明1について」「ア 判断」で検討したのと同様に、相違点2は、実質的な相違点であり、かつ、甲1発明及び甲第1、2、10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明2は、相違点3について検討するまでもなく、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1発明及び甲第1、2、10号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。
(4)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1及び本件発明2をそれぞれ直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3~6は、上記(2)~(3)で示した理由と同じ理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、2、10号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、申立理由3-1、3-2によっても、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、申立人が主張する異議申立ての理由1~3及び証拠によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700879