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特許異議申立

2023-701302

レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物

審判番号
2023-701302
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-083483
登録番号
7291528
請求日
2023年12月11日
審決日
2024年11月11日
公報発行日
2025年02月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ポリプラスチックス株式会社
  • 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
  • 【異議申立人】東レ 株式会社
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 北澤 健一
  • 審判官 藤井 勲
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7291528号発明「レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7291528号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正することを認める。 特許第7291528号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7291528号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成31年4月25日に出願され、令和5年6月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月15日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許について、令和5年12月11日に特許異議申立人 東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~6)がされたものである。 特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和6年2月27日付け取消理由通知書 同年5月 1日 意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年5月13日付け通知書(申立人宛) 同年6月28日付け取消理由通知書(決定の予告) 同年8月 8日 応対記録 同年8月14日 意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年8月22日付け通知書(申立人宛) 本通知書に対して、申立人からの応答はなかった。 なお、令和6年8月14日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、先にした令和6年5月1日付け訂正請求は取り下げられたものとみなす。 第2 令和6年8月14日付け訂正請求について 1 訂正の内容 令和6年8月14日にした訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の主旨は、「特許第7291528号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」というものであり、その内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「と、を含むこと」と記載されているのを、「と、を含み(但し、エラストマーを除く)」と訂正するとともに、「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」との事項を追加する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項5、6も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」とあるものを独立形式に改め、「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂」と記載されているのを、「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下のポリカーボネート樹脂」と訂正し、さらに「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下であり、」を追加する(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項5、6も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、「1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である、請求項1または2に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めるとともに、「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下であり、」を追加する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~6も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に、「1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である、請求項1または2に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」とあるうち、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、新たに請求項7とするとともに、さらに「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下であり、」を追加する。 (5)一群の請求項について 訂正前の請求項1~6について、請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (6)別の訂正単位とする求め 特許権者は、訂正後の請求項7について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から「エラストマー」を除くとともに、(C)タルクを「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下」であるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正は、本件特許明細書の段落【0030】に基づくものであり、かつ、訂正前の請求項1からエラストマーを除いたものであり、明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2において、訂正前の請求項1に記載された事項を書き下すことにより、訂正前の請求項1を引用しないものとした上で、(B)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を「0.20kPa・s以上」から「0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下」に数値範囲を狭めるとともに、(C)タルクを「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下」であるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 そして、当該訂正は、本件特許明細書の段落【0030】、【0052】に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3において、訂正前の請求項1に記載された事項を書き下すことにより、訂正前の請求項1又は2を引用しないものとした上で、(C)タルクを「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下」であるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 そして、当該訂正は、本件特許明細書の段落【0030】に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3において、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2に記載された事項を書き下し、新たに訂正後の請求項7とした上で、(C)タルクを「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下」であるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 そして、当該訂正は、本件特許明細書の段落【0030】に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~6に対して特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1~7について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み(但し、エラストマーを除く)、 (C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下であることを特徴とする、 レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項2】 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み、 (C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下であり、 (B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である、レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項3】 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み、 (C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下であり、 1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である、レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項4】 光線透過率の最大値と最小値との差が5.0%以下である、請求項3に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項5】 (B)ポリカーボネート樹脂の300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.25kPa・s以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項6】 請求項1から5のいずれか一項に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品と、熱可塑性樹脂からなる他の成形品とをレーザー溶着により接合してなる複合成形品。 【請求項7】 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み、 (C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下であり、 (B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00であり、 1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である、レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年12月11日に申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証又は甲第3号証を主引用例とする新規性欠如) 本件発明1~6は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(甲第1号証又は甲第3号証を主引用例とする進歩性欠如) 本件発明1~6は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基づいて、また、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載の技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1、3~6についての特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 「本件特許発明の課題は、レーザー溶着性が高く、成形加工性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びそれを用いた成形品を提供するものであると認められる。成形体のレーザー溶着性を高めるためには、高い光線透過量を有し、かつ光線透過量のばらつきが低い樹脂組成物とすることが必要であると認められるところ、(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa/s以上のポリカーボネート樹脂の配合量が少ない場合(例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、20質量部未満)でも、本願課題を解決できるか本件特許明細書の記載では不明であるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を付与されたものといえる。」(特許異議申立書第23ページ) 4 証拠方法 (1)申立人が提出した証拠方法 申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。 甲第1号証:国際公開第2005/035657号 甲第2号証:実験成績証明書、2023年11月1日、東レ株式会社 甲第3号証:特開2009-132851号公報 甲第4号証:特開2004-291344号公報 以下、甲各号証の番号に応じて、甲第1号証を「甲1」などという。 (2)特許権者が提出した証拠方法 特許権者は、証拠として、以下の文献等を提出する。 ア 令和6年5月1日付け意見書に添付した証拠方法 乙第1号証:日本タルク株式会社 「微粉・汎用タルクMICRO ACEシリーズ/General Purpose Talc」(http://www.nippon-talc.co.jp/products/micro-ace/) イ 令和6年8月14日付け意見書に添付した証拠方法 乙第2号証:日本タルク株式会社カタログ、2008年4月1日(当審注:令和6年8月14日付け意見書第3ページの「2008年4月11日」という記載は、乙第2号証最終ページ右下の記載から「2008年4月1日」の誤記であると認めた。) 以下、乙各号証の番号に応じて、乙第1号証を「乙1」などという。 第5 取消理由通知(決定の予告)の概要 令和6年6月28日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は次のとおりである。 ・甲3を主引用例とする取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1、3~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 当審の判断 特許異議申立書に記載した理由及び当審が通知した取消理由通知(決定の予告)の理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由、及び、申立理由1、2のうち甲3を主引用例とする理由について 申立理由1、2のうち甲3を主引用例とする理由は、取消理由と主引用例を同じくするものであるから、取消理由と併せて検討する。 (1)甲各号証に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項 甲3には、「熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品ならびに複合成形体」に関し、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 (A)ポリエステル樹脂および(B)非晶性樹脂の合計100重量部に対し、(C)流動性改良剤を0.01~10重量部および(F)安定剤を0.01~1重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物。 ・・・ 【請求項4】 (A)ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート共重合体からなるポリブチレンテレフタレート系樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。 【請求項5】 (B)非晶性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。 【請求項6】 さらに(D)充填剤を配合してなる請求項1~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。 【請求項7】 (D)充填剤が、タルクまたはガラス繊維であり、(A)と(B)の合計100重量部に対し、0.01~120重量部配合してなることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。 ・・・ 【請求項11】 請求項1~10のいずれかに記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。 【請求項12】 請求項11に記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物からなるレーザー溶着用成形品。 【請求項13】 請求項12に記載の成形品をレーザー溶着した複合成形体。」 ・「【0076】 本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、機械特性または成形性の点で、(D)充填剤を配合することが好ましい。(D)充填剤の配合量は(A)と(B)成分の合計100重量部に対し、0.01~120重量部の範囲で配合することが流動性および機械物性の点で好ましく、0.1~100重量部の範囲で配合することがより好ましく、5~90重量部の範囲で配合することがさらに好ましい。充填剤の添加量が1重量部未満である場合には、充填剤を添加することによる機械的特性向上効果が少なく、一方、120重量部を超えて添加した場合には、機械的特性の向上には効果があるが、多官能性化合物を添加したとしても樹脂組成物の流動性が低くなるので好ましくない。 【0077】 本発明の樹脂組成物に使用できる(D)充填剤の種類としては、ガラス繊維が好ましく使用することができる。使用できる充填剤としては、これらに限定されず、繊維状、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填剤も混合して使用することができる。具体的には、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、ケナフ繊維、竹繊維、セルロース繊維などの有機系天然繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウムなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられ、なかでもガラス繊維が好ましい。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、カットファイバー、ミルドファイバーなどから選択して用いることができ、断面形状については、丸形、長方形、まゆ型などのいずれでも用いることができる。」 ・「【実施例】 【0106】 ・・・ 【0108】 (A)ポリエステル樹脂 A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S)。 【0109】 (B)非晶性樹脂 B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900) ・・・ 【0110】 (C)3つ以上の官能基を有する化合物 ・・・ C-6:ポリオキシエチレンペンタエリスリトール(分子量400、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数1.5、日本乳化剤(株)製PNT-60U) ・・・ 【0112】 (D)充填剤 D-1:タルク(日本タルク製“ミクロエース”P-6) ・・・ 【0114】 (F)安定剤 F-1:ホスフェート系化合物(ADEKA製“アデカスタブ”AX71)。 【0115】 また、実施例および比較例に用いた評価方法を以下にまとめて示す。 ・・・ 【0123】 (8)レーザー光線透過性 図3に示したLが80mm正方形で、厚みDが3mmのレーザー光線透過性評価試験片を成形した。成形条件はシリンダ温度260℃、金型温度80℃である。図3(a)は、上記レーザ光線透過性評価試験片の平面図であり、(b)は同試験片の側面図である。図3のような成形片のスプルー3およびランナー4の部分をゲート5で切断し、残った部位6をレーザー光線透過性評価試験片とした。試験機は(株)島津製作所製の紫外近赤外分光高度計(UV-3100)を用い、また検出器には積分球を用いた。透過率は透過光量と入射光量の比を百分率で表す。実施例、比較例を示した表中には、近赤外線800~1100nm波長領域の光線透過率を「透過性」として記載した。 【0124】 (9)レーザー溶着性 レーザー溶着性評価試験片は、図3のレーザ光線透過性評価試験片6と同形状の成形品を幅Wが24mm、長さLが70mmに切り出し、レーザー溶着用試験片7とした。 ・・・ 【0125】 レーザー溶着方法は図5に示すように、レーザー光線を透過させる材料を用いたレーザー溶着用試験片7を上部に、下部にはレーザー光線を吸収させる材料を用いたレーザー溶着用試験片8を置き、重ね合わせ、上部よりレーザー光線を照射する。レーザー照射はレーザー溶着軌道9に沿って行い、レーザー溶着条件は、出力15~35W範囲および、レーザー走査速度1~50mm/secの範囲で最も良好な溶着強度が得られる条件で行った。尚、焦点距離は38mm、焦点径は0.6mm固定で実施した。 【0126】 レーザー溶着の可否は「溶着可否」として記載し、レーザー溶着を行い溶着可能な条件において、レーザー光線透過試料の光線入射表面に溶融痕が認められる場合は「×」、溶融痕が認められず、溶着が可能な場合は「○」と記載した。 【0127】 図6(a)は上記方法でレーザー溶着したレーザー溶着強度測定用試験片12の平面図であり、(b)は同試験片の側面図である。レーザー溶着強度測定用試験片は図4に示したレーザー溶着試験片であるレーザー光線透過側試料7とレーザー光線吸収側試料8とが、重ね合わせ長さLを30mmとし、溶着距離Yは20mmとして、重ね合わせて溶着部13で溶着したものである。溶着強度測定には一般的な引張試験器(AG-500B)を用い、該試験片の両端を固定し、溶着部位には引張剪断応力が発生するように引張試験を行った。強度測定時の引張速度は1mm/min、スパンは40mmである。溶着強度は溶着部位が破断したときの応力とした。尚、レーザー光線透過試料へは本発明のレーザー溶着用樹脂組成物を用い、レーザー光線吸収側試料8へは、ポリブチレンテレフタレート樹脂70重量%に対し、ガラス繊維を30重量%、更にはカーボンブラックを0.4重量部添加した材料を用いた。 【0128】 [実施例1~12、比較例1~7] 表1および表2に記載した配合比率で(A)ポリエステル樹脂、(B)非晶性樹脂、(C)流動性改良剤、(D)充填剤および(F)安定剤を一括配合し、L/D=45の二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行いペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を住友重機械工業製射出成形機SG75H-MIVを用い、シリンダー温度250℃、金型温度80で、各種評価用成形品を射出成形した。各評価用成形品を用いて上記評価を行った。 【0129】 評価結果を表1および2に示す。 【0130】 【表1】 [図:0001419333000001.jpg] ・・・ 【0132】 実施例1~12および比較例1~7の結果より、(A)ポリエステル樹脂および(B)非晶性樹脂の合計100重量部に対し、(C)流動性改良剤を0.01~10重量部および(F)安定剤を0.01~1重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物が、流動性および機械特性に優れることがわかる。さらに、実施例7~10より、(F)安定剤を0.03~1重量部配合してなることにより、特に流動性に優れ、(D)充填剤を配合してなることにより、耐熱性にも優れることがわかる。」 イ 甲3に記載された発明 甲3の実施例8及びその特性試験に係る記載に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。なお、甲3の段落【0132】には、各成分量を「(A)ポリエステル樹脂および(B)非晶性樹脂の合計100重量部」として、重量部で記載されていることから、甲3の発明認定にあたり、重量部で表記する。 「以下に記載した配合比率で(A)ポリエステル樹脂、(B)非晶性樹脂、(C)流動性改良剤、(D)充填剤および(F)安定剤を一括配合し、L/D=45の二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行い得られたペレット状の樹脂組成物。 ・A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S) 80重量部 ・B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900) 20重量部 ・C-6:ポリオキシエチレンペンタエリスリトール(分子量400、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数1.5、日本乳化剤(株)製PNT-60U) 0.5重量部 ・D-1:タルク(日本タルク製“ミクロエース”P-6) 0.5重量部 ・F-1:ホスフェート系化合物(ADEKA製“アデカスタブ”AX71) 0.1重量部」(以下、「甲3組成物発明」という。) ウ 甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。なお、文中の丸囲みの数字は、[1]のように表記した。 ・「実験証明書 1. 目的 国際公開第2005/035657号の【0086】項記載のポリカーボネート樹脂「帝人化成(株)製"パンライト"L-1225」、および特開2009-132851号公報の【0109】記載のポリカーボネー卜樹脂「出光興産(株)製"タフロン"A1900」について、特許第7291528号の請求項1に係る発明の下記発明特定事項を満たすか否かについて、確認する。 「300℃、剪断速度1OOOsec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂」 2. 測定方法と結果 (1)試料 国際公開第2005/035657号の【0086】項記載のポリカーボネート樹脂「帝人化成(株)(※現在、帝人(株))製"パンライト"L-1225」、および特開2009-132851号公報の【0109】記載のポリカーボネート樹脂「出光興産(株)製"タフロン"A1900」 (2)測定条件 ・装置:(株)東洋精機製作所キャピログラフ1D ・キャピラリー長 :40mm, 20mm ・キャピラリー径 :1mm ・せん断速度 :1OOOsec-1 ・試験温度 :300℃ ・事前サンプル乾燥条件:120℃×5hr ※一部サンプルにて事前サンプル乾燥を実施。 (3)測定方法 [1]試料 約20gを、300℃に調整し温度が安定したバレル内に投入した。 [2]せん断速度 1OOOsec-1にて、溶融粘度を測定した。 (4)測定結果 表1 国際公開第2005/035657号、および特開2009-132851号公報に記載のポリカーボネート樹脂の溶融粘度 [図:0001419333000002.jpg] 」 (2)本件発明1について 本件発明1と甲3組成物発明とを対比する。 ア 甲3組成物発明の「A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S)」は、本件発明1の「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂」に相当する。 イ 甲3組成物発明の「B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900)」は、甲2の「(4)測定結果」から、300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.28、0.29あるいは0.33(kPa・s)であるから、本件発明1の「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂」に相当する。 ウ 甲3組成物発明の「D-1:タルク(日本タルク製“ミクロエース”P-6)」は、本件発明1の「(C)タルク」と、タルクである限りにおいて一致する。また、甲3組成物発明の「D-1:タルク(日本タルク製“ミクロエース”P-6)」は、「A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S)」80重量部に対して、0.5重量部、すなわち、「A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S)」100重量部に対する配合量を計算すると、0.5×100/80=0.625重量部含まれるから、「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、・・・(C)タルク0.5~3.0質量部と、を含」む本件発明1に相当する。 エ 甲3組成物発明に係る甲3の実施例8において、エラストマーは含まれていないから、甲3組成物発明の樹脂組成物は、「(但し、エラストマーを除く)」点で本件発明1に相当する。 オ 甲3組成物発明に係る甲3の実施例8において、甲3の段落【0124】に「(9)レーザー溶着性」を評価することが記載されているから、甲3組成物発明の「樹脂組成物」は、本件発明1の「レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3組成物発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含む(但し、エラストマーを除く)、 レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点3-1> 本件発明1は、「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」であるのに対し、甲3組成物発明は、そのような特定がない点。 上記相違点3-1について検討する。 甲3には、タルクの粒子径についての記載はなく、甲3組成物発明の「D-1:タルク(日本タルク製“ミクロエース”P-6)」の「レーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」ことを示す具体的な証拠もない。 そして、乙1には、日本タルク株式会社製のミクロエース○R(当審注:丸囲みのRを表す。以下同様。)P-6のレーザー回折法による粒子径D50が4.0μmであることが記載されており、また、乙2には、日本タルク株式会社製のミクロエース○RP-6のレーザー回折法による粒子径D50が4.0μmであることが記載されている。 そうすると、相違点3-1は、実質的な相違点である。 次に、進歩性について検討する。 甲3の【0011】には、「本発明によれば、流動性および機械特性に優れ、好ましい態様においては、レーザー透過性、レーザー溶着性または低そり性にも優れる熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品ならびに複合成形体を提供することができる。」ことが記載されているにとどまり、同【0077】、【0112】には、タルクが充填剤として用いられるものであることも記載されている。 そうすると、甲3に記載された事項を考慮しても、甲3組成物発明において、光線透過率のばらつきを低減するために相違点3-1に係るタルクの粒子径を変更する動機付けはない。また、甲4にも、タルクの粒子径に関する記載はないから、甲4に記載された事項を考慮しても上記判断に影響しない。 したがって、甲3組成物発明において、相違点3-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、本件発明1は、甲3組成物発明ではないし、甲3組成物発明及び甲3、4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明2について 本件発明2と甲3組成物発明とを、上記(2)での検討も踏まえて対比すると、上記(2)のア、ウ、オと同様の関係が成り立つ。 また、甲3組成物発明の「B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900)」は、本件発明2の「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下のポリカーボネート樹脂」と、ポリカーボネート樹脂である限りにおいて一致する。そして、甲3組成物発明は、「A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S) 80重量部」と「B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900) 20重量部」を含むから、「A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S)」1.00に対し、「B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900)」を20/80=0.25であるので、「(B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である」点で本件発明2に一致する。 そうすると、本件発明2と甲3組成物発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)ポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み、 (B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である、レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 そして、以下の点で相違する。 <相違点3-2-1> 本件発明2の「ポリカーボネート樹脂」は、「300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下」であるのに対し、甲3組成物発明の「B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900)」は、甲2の「(4)測定結果」から、300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.28、0.29あるいは0.33(kPa・s)である点。 <相違点3-2-2> 本件発明2は、「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」であるのに対し、甲3組成物発明は、そのような特定がない点。 上記相違点3-2-2は、上記相違点3-1と同様であるから、上記(2)と同様に判断される。 よって、本件発明2は、その余の相違点について検討するまでもなく、上記(2)に説示したものと同様の理由により、甲3組成物発明ではないし、甲3組成物発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件発明3について 本件発明3と甲3組成物発明とを、上記(2)での検討も踏まえて対比すると、上記(2)のア~ウ、オと同様の関係が成り立つ。 そうすると、本件発明3と甲3組成物発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上の ポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含む、 レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 そして、以下の点で相違する。 <相違点3-3-1> 本件発明3は、「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」であるのに対し、甲3組成物発明は、そのような特定がない点。 <相違点3-3-2> 本件発明3は、「1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である」のに対し、甲3組成物発明は、そのような特定がない点。 上記相違点3-3-1は、上記相違点3-1と同様であるから、上記(2)と同様に判断される。 よって、本件発明3は、その余の相違点について検討するまでもなく、上記(2)に説示したものと同様の理由により、甲3組成物発明ではないし、甲3組成物発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)本件発明4について 本件発明4は、本件発明3を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、上記(4)に説示したものと同様の理由により、甲3組成物発明ではないし、甲3組成物発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (6)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1~4を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1~4の発明特定事項を全て有するものであるから、上記(2)~(5)に説示したものと同様の理由により、甲3組成物発明ではないし、甲3組成物発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (7)本件発明6について 本件発明6は、本件発明1から5のいずれかのレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品と、熱可塑性樹脂からなる他の成形品とをレーザー溶着により接合してなる複合成形品に係るものであるが、上記相違点3-1の構成を有するものであるので、上記(2)に説示したものと同様の理由により、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (8)本件発明7について 本件発明7と甲3組成物発明とを、上記(2)での検討も踏まえて対比すると、上記(2)のア~ウ、オと同様の関係が成り立つ。 また、甲3組成物発明は、「A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S) 80重量部」と「B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900) 20重量部」を含むから、「A-1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S)」1.00に対し、「B-1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900)」を20/80=0.25であるので、「(B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である」点で本件発明7に一致する。 そうすると、本件発明7と甲3組成物発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上の ポリカーボネート樹脂と、 (C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み、 (B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される 割合が0.20/1.00~0.80/1.00である、 レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 そして、以下の点で相違する。 <相違点3-7-1> 本件発明7は、「(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」であるのに対し、甲3組成物発明は、そのような特定がない点。 <相違点3-7-2> 本件発明7は、「1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である」のに対し、甲3組成物発明は、そのような特定がない点。 上記相違点3-7-1は、上記相違点3-1と同様であるから、上記(2)と同様に判断される。 よって、本件発明7は、その余の相違点について検討するまでもなく、上記(2)に説示したものと同様の理由により、甲3組成物発明ではないし、甲3組成物発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (9)取消理由、及び、申立理由1、2のうち甲3を主引用例とする理由についてのまとめ 上記(2)~(8)のとおりであるから、取消理由、及び、申立理由1、2のうち甲3を主引用例とする理由はその理由がない。 2 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立理由について (1)申立理由1、2のうち甲1を主引用例とする理由について ア 甲各号証に記載された事項等 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、「レーザ溶着用樹脂組成物及び成形品」に関し、以下の事項が記載されている。 ・「請求の範囲 [1] ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、ポリカーボネート系樹脂(C)と、可塑剤(D)とを含むレーザー溶着用樹脂組成物。 ・・・ [6] ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)100重量部に対して、エラストマー(B)1~50重量部と、ポリカーボネート系樹脂(C)5~100重量部と、可塑剤(D)1~10重量部とを含む請求項1記載の樹脂組成物。 ・・・ [9] さらに、核剤(F)を含む請求項1記載の樹脂組成物。 ・・・ [12] 請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形品と、相手材の樹脂成形品とがレーザ溶着により接合されている複合成形品。」 ・「[0001] 本発明は、レーザー溶着性が高く、成形加工性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びそれを用いた成形品に関する。」 ・「[0058] 核剤(F) 核剤(F)としては、無機核剤(例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩;タルクなどの板状無機物又は珪酸塩;炭化ケイ素などの金属炭化物;窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化タンタルなどの金属窒化物など)が一般的に使用されるが、有機核剤を使用してもよい。核剤(例えば、無機核剤)の平均粒子径は、例えば、0.01~10μm、好ましくは0.01~5μm(例えば、0.01~2μm)、さらに好ましくは0.01~1μm程度であってもよい。 [0059] ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)100重量部に対する核剤(F)の割合は、0.001~5重量部(例えば、0.01~5重量部)、好ましくは0.01~3重量部(例えば、0.01~2重量部)、さらに好ましくは0.01~1重量部(例えば、0.01~0.5重量部)程度であってもよい。」 ・「[0084] 実施例1~10及び比較例1~2 実施例及び比較例では、以下のPBT系樹脂(A)、エラストマー(B)、ポリカーボネート系樹脂(C)、可塑剤(D)、充填剤又は補強剤(E)、核剤(F)、および着色剤を用いた。 [0085] PBT系樹脂(A) (A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂 テレフタル酸と1,4ブタンジオールとの反応において、テレフタル酸の一部(12.5mol%)に代えて、共重合成分としてのDMI 12.5mol%を用い、変性ポリブチレンテレフタレートを調製した。 [0086] エラストマー(B) (B-1)エポキシ基含有ポリスチレン系熱可塑性エラストマーESBS[ダイセル化学工業(株)製「エポフレンドAT504」] (B-2)ポリエステル系熱可塑性エラストマー[東洋紡(株)製「GP200」] (B-3)ポリスチレン系熱可塑性エラストマー[クラレ(株)製「セプトン4055」] ポリカーボネート系樹脂(C) (C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225」) 可塑剤(D) (D-1)芳香族多価カルボン酸エステル[旭電化工業(株)製 アデカサイザー UL-100] (D-2)アクリル系可塑剤[東亜合成(株)製 ARUFON UP-1020] (D-3)スチレン-アクリル系流動性改良剤[東亜合成(株)製 ARUFON XFM910] 充填剤又は補強剤(E) (E-1)ガラス繊維[日東紡績(株)製「CS3J-948SJ、平均繊維径φ11μm、平均繊維長400μm] 核剤(F) (F-1)窒化ホウ素[川崎製鉄(株)製FS-1] (F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A] 着色剤 紫色染顔料[クラリアントジャパン製 SANDOPLAST VIOLET RSB] 黄色染顔料[クラリアントジャパン製 SANDOPLAST YELLOW 2G] 表1に示す割合(重量比)で、各成分を2軸押出機(日本製鋼所製,30mmφ)により260℃で混練し、ペレットを作製した。得られたペレットを射出成形機((株)東芝製)により、シリンダー温度260℃及び金型温度80℃の条件で射出成形し、試験片A(縦80mm×横80mm×厚さ2mm,サイドゲート,ゲート幅2mm)を成形した。 [0087] また、前記試験片Aに対する被溶着体Bとして、前記ペレット100重量部と黒色着色用カーボンブラック(ウィンテックポリマー(株)製,商品名「2020C」)5重量部とを用いて射出成形し、肉厚2mmの箱形試験体Bを作製した。この箱形試験体Bは、長さ80mm、幅40mm及び高さ20mmの長方体状であり、上端面が開口している。また、下端面には、レーザー溶着により封止した後、内圧を加えるための孔(φ10mm)をボール盤を用いて形成した。なお、試験体Bはレーザ光による発熱体として作用する。 [0088] 図1に示すように、箱形試験体B(4)の開口端部に試験片A(3)を重ねて接触させ、レーザ溶着機(ライスター社製)を用いて、レーザ発振器のヘッダ(1)からのレーザ光(2)の焦点を調整して、試験片Aと箱形試験体Bとの接触面に線幅1.5mmで集光させた。そして、試験片A(3)側から、波長940nmのレーザ光を走査速度10mm/秒の条件で照射して溶着し、箱形試験体Bの開口部が試験片A(3)で封止されたボックス状複合体を作製した。 [0089] (1)気密性(均一溶着性) レーザ溶着により得られた試験片Aと試験体Bとのボックス状複合体について、水中にて内圧0.02MPaを30秒間加え、接合部での気泡の発生の有無により気密性を評価した。 [0090] (2)光線透過率 試験片Aの各部位について、分光光度計[日本分光(株)製「V570」]を用いて波長940nmでの光透過率(%)を測定し、光透過率の最大値と最小値との差(変動幅、%)を算出した。 [0091] 実施例及び比較例の結果を表1に示す。 [0092][表1] [図:0001419333000003.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 甲1の実施例9に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。なお、各成分が[表1]において、重量比で記載されているため、各成分を甲1の請求の範囲の請求項6の記載に倣い「重量部」にて表記する。 「以下に示す各成分を2軸押出機(日本製鋼所製,30mmφ)により260℃で混練して作製したペレット。 PBT樹脂である(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂 100重量部 エラストマーである(B-2)ポリエステル系熱可塑性エラストマー[東洋紡(株)製「GP200」] 10重量部 PC系樹脂である(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225」) 25重量部 可塑剤である(D-1)芳香族多価カルボン酸エステル[旭電化工業(株)製 アデカサイザー UL-100] 4重量部 充填剤又は補強剤である(E-1)ガラス繊維[日東紡績(株)製「CS3J-948SJ、平均繊維径φ11μm、平均繊維長400μm] 60重量部 核剤である(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A] 0.2重量部」(以下、「甲1発明」という。) (ウ)甲2に記載された事項 前記1(1)ウに記載のとおり。 イ 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「PBT樹脂である(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂」に関し、DMI変性については、本件特許明細書の段落【0016】の「ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分としてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、例えば、イソフタル酸、・・・等のC8-14の芳香族ジカルボン酸・・・を用いることができる。」との記載及び【0017】の「これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸・・・がより好ましい。」との記載から、甲1発明の「ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂」は、本件発明1の「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂」に相当する。 (イ)甲1発明の「PC系樹脂である(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225」)」は、甲2の「(4)測定結果」から、300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.39あるいは0.46(kPa・s)であるから、本件発明1の「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂」に相当する。 (ウ)甲1発明の「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」は、本件発明1の「(C)タルク」と、タルクである限りにおいて一致する。 (エ)甲1発明に係る甲1の実施例9において、甲1の段落[0088]に「試験片A(3)側から、波長940nmのレーザ光を走査速度10mm/秒の条件で照射して溶着」することが記載されているから、甲1発明の「ペレット」は、本件発明1の「レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルクと、を含む、 レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点1-1-1> 本件発明1は、「但し、エラストマーを除く」のに対し、甲1発明は、「エラストマーである(B-2)ポリエステル系熱可塑性エラストマー[東洋紡(株)製「GP200」]」を含む点。 <相違点1-1-2> 本件発明1は、「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、・・・(C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み・・・、(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」のに対し、甲1発明は、「(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂」100重量部に対して、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」0.2重量部を含み、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」の粒子径についての特定がない点。 そこで、上記相違点1-1-1について検討する。 甲1は、その請求項1に記載されるように、「エラストマー」を必須成分として含む発明に関するものであり、[0008]には、「本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、PBT系樹脂とポリカーボネート系樹脂とエラストマーと可塑剤とを組み合わせて射出成形すると、成形品の部位に依存することなくレーザ光に対する透過率が高く、しかも均一であり、PBT系樹脂組成物の成形品と相手材(樹脂成形品)とを界面で均一かつ強固にレーザ溶着できることを見出し、本発明を完成した。」ことも記載されている。 そうすると、上記相違点1-1-1は、実質的な相違点である。 次に、進歩性について検討すると、甲1発明において甲1の[0008]に記載の課題を解決するために、必須の成分である「エラストマー」を除く動機付けがあるとはいえないから、甲1発明において「エラストマーを除く」という構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明2について 本件発明2と甲1発明とを、上記イでの検討も踏まえて対比すると、上記イの(ア)、(ウ)、(エ)と同様の関係が成り立つ。 また、甲1発明の「PC系樹脂である(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225」)」は、本件発明2の「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下のポリカーボネート樹脂」と、ポリカーボネート樹脂である限りにおいて一致する。そして、甲1発明は、「PBT樹脂である(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂 100重量部」と「PC系樹脂である(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225」) 25重量部」を含むから、「(B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である」点で本件発明2に一致する。 そうすると、本件発明2と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、 (B)ポリカーボネート樹脂と、 (C)タルクと、を含み、 (B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である、レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点1-2-1> 本件発明2の「ポリカーボネート樹脂」は、「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下」であるのに対し、甲1発明の「PC系樹脂である(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225」)」は、甲2の「(4)測定結果」から、300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.39あるいは0.46(kPa・s)である点。 <相違点1-2-2> 本件発明2は、「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、・・・(C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み・・・、(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」のに対し、甲1発明は、「(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂」100重量部に対して、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」0.2重量部を含み、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」の粒子径についての特定がない点。 そこで、上記相違点1-2-1について検討する。 甲1の[0035]~[0037]には、ポリカーボネート系樹脂についての説明があるが、ポリカーボネート系樹脂を得るための反応や原料化合物の説明、ポリカーボネート系樹脂の使用量の説明にとどまり、ポリカーボネート系樹脂の溶融粘度については記載も示唆もされていない。 そうすると、上記相違点1-2-1は、実質的な相違点である。 次に、進歩性について検討すると、甲1発明において「ポリカーボネート系樹脂」の溶融粘度に着目する動機付けがあるとはいえないから、甲1発明において「(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上0.27kPa・s以下のポリカーボネート樹脂」を含むという構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 本件発明3について 本件発明3と甲1発明とを、上記イでの検討も踏まえて対比すると、上記イの(ア)~(エ)と同様の関係が成り立つ。 そうすると、本件発明3と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルクと、を含む、 レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点1-3-1> 本件発明3は、「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、・・・(C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み・・・、(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」のに対し、甲1発明は、「(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂」100重量部に対して、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」0.2重量部を含み、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」の粒子径についての特定がない点。 <相違点1-3-2> 本件発明3は、「1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。 そこで、上記相違点1-3-1について検討する。 甲1には、甲1発明の「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」の粒子径が記載されておらず、また、甲1発明の「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」の「レーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」ことを示す具体的な証拠もない。 そうすると、上記相違点1-3-1は、実質的な相違点である。 次に、相違点について検討する。 甲1には、課題について、[0006]に「本発明の目的は、PBT系樹脂をベースとしながらも、均一溶着性が高く、均一に溶着可能なレーザ溶着用PBT系樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。」ことが記載されるにとどまる。また、甲1には、[0058]に「核剤(例えば、無機核剤)の平均粒子径は、例えば、0.01~10μm、好ましくは0.01~5μm(例えば、0.01~2μm)、さらに好ましくは0.01~1μm程度であってもよい。」ことが記載され、[0059]に「ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)100重量部に対する核剤(F)の割合は、0.001~5重量部(例えば、0.01~5重量部)、好ましくは0.01~3重量部(例えば、0.01~2重量部)、さらに好ましくは0.01~1重量部(例えば、0.01~0.5重量部)程度であってもよい。」ことは記載されているものの、単に核剤の平均粒子径や割合の範囲が記載されているだけであって、そのような範囲とする目的あるいは効果までは明記されていない。 そうすると、甲1に記載された事項を考慮しても、甲1発明において、光線透過率のばらつきを低減するために相違点1-3-1に係るタルクの平均粒子径や割合を調節する動機付けはない。 したがって、甲1発明において、相違点1-3-1に係る本件発明3の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 オ 本件発明4について 本件発明4は、本件発明3を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、上記エに説示したものと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 カ 本件発明5について 本件発明5は、本件発明1~4を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1~4の発明特定事項を全て有するものであるから、上記イ~オに説示したものと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 キ 本件発明6について 本件発明6は、本件発明1から5のいずれかのレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品と、熱可塑性樹脂からなる他の成形品とをレーザー溶着により接合してなる複合成形品に係るものであるが、上記相違点1-1-1、上記相違点1-2-1あるいは上記相違点1-3-1の構成を有するものであるので、上記イ~カに説示したものと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ク 本件発明7について 本件発明7と甲1発明とを、上記イでの検討も踏まえて対比すると、上記イの(ア)~(エ)と同様の関係が成り立つ。 また、甲1発明は、「PBT樹脂である(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂 100重量部」と「PC系樹脂である(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL1225」) 25重量部」を含むから、「(B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である」点で本件発明7に一致する。 そうすると、本件発明7と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、 (B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa・s以上のポリカーボネート樹脂と、 (C)タルクと、を含み、 (B)ポリカーボネート樹脂/(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量比で示される割合が0.20/1.00~0.80/1.00である、 レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 そして、以下の点で相違する。 <相違点1-7-1> 本件発明7は、「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、・・・(C)タルク0.5~3.0質量部と、を含み・・・、(C)タルクのレーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)が、1.0μm以上3.0μm以下である」のに対し、甲1発明は、「(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂」100重量部に対して、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」0.2重量部を含み、「(F-2)タルク[日本タルク(株)製タルク3A]」の粒子径についての特定がない点。 <相違点1-7-2> 本件発明7は、「1mmの厚さを有する成形品において、980nmの波長の光線透過率が40.0%以上である」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。 上記相違点1-7-1は、上記相違点1-3-1と同様であるから、上記エと同様に判断される。 本件発明7は、上記相違点1-3-1の構成を有するものであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、上記エに説示したものと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ケ 申立理由1、2のうち甲1を主引用例とする理由についてのまとめ 上記イ~クのとおりであるから、申立理由1、2のうち甲1を主引用例とする理由はその理由がない。 (2)申立理由3について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 イ サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 本件特許の発明の詳細な説明の【0008】によると、本件発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「レーザー溶着性が高く、成形加工性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びそれを用いた成形品を提供すること」である。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0043】には、「本発明の成形体はレーザー光に対する透過性が高い」ことが記載され、同【0045】には、「成形品は、レーザー溶着性に優れている」ことが記載されている。また、同【0002】には、「ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」とも呼ぶ)系樹脂などのポリアルキレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械的特性、及び成形加工性などの種々の特性に優れるため、多くの用途に利用されている。」(下線は当審による。)と記載されている。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の[実施例]には、組成が異なる実施例と比較例のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を作製し、該ポリブチレンテレフタレート樹脂からなるペレットから射出成形により試験片を作製し、980nmの波長の光線透過率の測定を行い、また、測定した光線透過率についてばらつきを評価したことが示されている。そして、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、所定の溶融粘度を有するポリカーボネート樹脂と、所定の粒子径を有する所定量のタルクを含む実施例は、そうでない比較例よりも、光線透過率及び光線透過率のばらつきに優れることが示されている(【0051】~【0058】)。 ここで、980nmの波長の光線透過率及び光線透過率のばらつきはレーザー溶着性に影響すると考えられ、また、上記試験片は射出成形により得られたものであることや、本件特許の発明の詳細な説明の【0002】に記載されているようにポリブチレンテレフタレート系樹脂はそもそも成形加工性に優れることから、本件発明のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物はレーザー溶着性と成形加工性に優れ、発明の課題を解決することができることを、当業者が認識できる。 よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1~7に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 ウ 申立人の主張について 申立人は、上記第4の3のとおり主張するが、上記イで述べたとおり、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、所定の溶融粘度を有するポリカーボネート樹脂と、所定の粒子径を有する所定量のタルクを含むことにより、発明の課題を解決できることが発明の詳細な説明に記載されているところ、(B)300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が0.20kPa/s以上のポリカーボネート樹脂の配合量が少ない場合(例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、20質量部未満)、上記発明の課題が解決しないことについて、何ら具体的な証拠を示していないことから、上記主張は上記イの判断に影響するものではない。 エ 申立理由3についてのまとめ 上記イ及びウのとおりであるから、申立理由3はその理由がない。 第7 結語 上記第6のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)の理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701302

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  • 2022-700556異議申立 / 2024-02-22 / 訂正認容難燃性樹脂組成物及びその成形品
    同じ当事者: ポリプラスチックス株式会社、東レ 株式会社
  • 2021-700795異議申立 / 2022-10-31 / 訂正認容ポリアリーレンサルファイド系樹脂組成物及びインサート成形品
    同じ当事者: ポリプラスチックス株式会社、東レ 株式会社
  • 2017-700462異議申立 / 2017-08-28 / 維持リレー及びリレー用液晶性樹脂組成物
    同じ当事者: ポリプラスチックス株式会社、東レ 株式会社
  • 2026-700154異議申立 / 2026-05-08 / 維持積層不織布および衛生材料
    同じ当事者: 東レ 株式会社
  • 2025-900246異議申立 / 2026-04-16 / 却下トーレアローズ、トーレ、トーレイアローズ、トーレイ、トーレー、アローズ
    同じ当事者: 東レ 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,513件(113・C08L、121・C08L、537・C08L)
  • 2025-700661異議申立 / 2026-04-30 / 訂正認容ポリプロピレンコーティング組成物
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2025-700469異議申立 / 2026-04-27 / 訂正認容樹脂組成物及び電子部品装置
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2025-700320異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容澱粉含有樹脂組成物、ペレット、フレーク、樹脂成形物、澱粉含有樹脂組成物の製造方法…
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2024-700791異議申立 / 2026-03-26 / 訂正認容導電性組成物および生体センサ
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2024-701168異議申立 / 2026-03-13 / 訂正認容封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L

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