特許異議申立
2021-700875
内容物の視認性がない超高純度薬品用吹込み成形積層容器
- 審判番号
- 2021-700875
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-234798
- 登録番号
- 6839489
- 請求日
- 2021年09月10日
- 審決日
- 2021年11月29日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】コダマ樹脂工業株式会社
- 【権利者代理人】秋元 輝雄
- 【権利者代理人】秋元 正哉
- 【権利者代理人】吉澤 大輔
- 【異議申立人】和栗 由莉菜
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 嘉章
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 平田 信勝
- 分類
- P1651.121-Y (B65D) / P1651.536-Y (B65D) / P1651.537-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6839489号発明「内容物の視認性がない超高純度薬品用吹込み成形積層容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6839489号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6839489号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成27年12月1日に出願され、令和3年2月17日にその特許権の設定登録がされ、令和3年3月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年9月10日に特許異議申立人和栗由莉菜(以下、「異議申立人」という。)より特許異議の申立がされたものである。
2 本件発明
特許第6839489号の請求項1~3の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
容器の内側から外側に順に、下記の内層、ポリビニルアルコール樹脂を含む酸素バリアー層および遮光性顔料を含む外層を少なくとも積層してなる超高純度薬品用吹込み成形積層容器であって、波長500~800nmの可視光の透過率が1%以下であり、波長200~400nmの紫外線透過率が1%以下であり、かつ貯蔵している薬品中へ容器側から浸出する不純微粒子の個数を示す指数としてのクリーン度が5個/ml以下であり、
前記外層は、更に、下記特性を有する高密度ポリエチレン樹脂と、リン系、サルファー系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤を、前記高密度ポリエチレン樹脂に対して、0.05~0.30質量%含むことを特徴とする内容物の視認性がない超高純度薬品用吹込み成形積層容器。
内層:エチレン、プロピレン、ブテン-1、4-メチル-ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1から選択される少なくとも1種類を含む単独重合体あるいは共重合体から成る下記の特性を有する高密度ポリオレフィン樹脂。
(内層の特性)
中和剤、酸化防止剤、および耐光安定剤を意図的には添加せず、最大含有量0.005質量%以下、
クリーン度:5個/ml以下
密度:950~962Kg/m3
重量平均分子量:18~25万
分子量1,000以下の成分:0.4質量%以下
分子量分布(Mw/Mn):12以下
HL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min):6.5~9.5
(外層に含まれる高密度ポリエチレン樹脂の特性)
密度:940~962Kg/m3
重量平均分子量:22~26万
分子量分布(Mw/Mn):12以下
溶融張力:20~30g
HL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min):5~7
波長500~800nmの可視光の透過率が1%以下
波長200~400nmの紫外線透過率が1%以下
【請求項2】
前記内層と酸素バリアー層および前記酸素バリアー層と外層を無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂から成る接着層により積層してなることを特徴とする請求項1記載の吹込み成形積層容器。
【請求項3】
前記バリアー層が、下記の特性を有する酸素バリアー性に優れたエチレンビニルアルコール共重合樹脂からなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の吹込み成形積層容器。
(特性)
MFR(210℃、2.16Kg荷重 g/10min):2~5
密度(Kg/m3):1.1~1.3
融点(℃):170~200」
3 申立理由の概要
異議申立人は、主たる証拠として次の甲第1号証及び従たる証拠として次の甲第2号証~甲第8号証を提出し、請求項1~3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~3に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
また、異議申立人は、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとともに、特許請求の範囲の記載が、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、請求項1~3に係る特許は特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、請求項1~3に係る特許を取り消すべきものである旨も主張する。
甲第1号証:特開平11-290420号公報
甲第2号証:特開平11-80257号公報
甲第3号証:特開2015-123351号公報
甲第4号証:特開平10-167244号公報
甲第5号証:特開2005-263264号公報
甲第6号証:特開2007-137506号公報
甲第7号証:特開2006-321240号公報
甲第8号証:特開2008-179774号公報
なお、異議申立人からは、参考文献として次の甲第9号証~甲第15-2号証が提出されている。
甲第9号証:「岩波理化学事典 第4版」 第1234ページ 株式会社岩波書店 1989年12月15日
甲第10号証:特開平10-219044号公報
甲第11号証:特開2010-47677号公報
甲第12号証:特開2009-236372号公報
甲第13号証:特開2007-152712号公報
甲第14号証:特表2004-513844号公報
甲第15-1号証:リオン株式会社製品 光散乱式液中粒子検出器 形式KS-42A 試験成績書 リオン株式会社 2012年5月14日
甲第15-2号証:リオン株式会社製品 光散乱式液中粒子検出器 形式KS-42A 仕様書 リオン株式会社 平成29年3月1日
4 各証拠に記載された事項等
(1)甲第1号証
甲第1号証には、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体および液晶分野で使用される高純度薬品液の貯蔵に用いられる容器と、その容器から高純度薬品液を排出する方法に関するものである。」
イ「【0004】フォトレジスト液を容器中に長期間貯蔵している間に、不純微粒子が浸出し、品質が低下する度合いを示す指標としてクリーン度というものがある。クリーン度は、検査容器に一定期間超純水あるいはフォトレジスト液を貯蔵した後、貯蔵されていた内容液1ml中に粒径0.2μm以上の微粒子がいくつ存在するかを算定して求める。具体的には次式で定義される。」
ウ「【0020】中間層4はポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリエステルおよびポリフェニレンオキシドから選ばれる少なくとも1種類を含む溶媒バリアー性樹脂からなる。高純度薬品液15に用いられる有機溶剤としては、例えば、フォトレジスト液に含有されるメチルエチルケトンなどのケトン類、乳酸エチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類およびエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ類が挙げられる。溶剤バリアー性樹脂は、使用する有機溶剤に応じて選択する。」
エ「【0033】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0034】(実施例1)高純度薬品容器1を以下のようにして試作した。
【0035】内層3の原料には、密度が0.955g/cm3、メルトインデックスが0.15g/10min.で、中和剤、酸化防止剤および耐光安定剤を含まない中圧法により製造されたポリエチレンを使用した。GCPにより測定される重量平均分子量は1×103以下の重合体の含有量は1.41重量%である。
【0036】中間層4の原料には、密度が1.19g/cm3、メルトインデックスが1.3g/10min.で、エチレン共重合比率が32mol%のエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を使用した。
【0037】外層用5の原料には、顔料分散剤として数平均分子量が2×103以上のポリエチレンを0.30重量%含み、密度が0.956g/cm3、メルトインデックスが0.30g/10min.で、ポリエチレンペレト100部に、遮光性顔料としてベンガラ5.3重量%およびカーボンブラック0.2重量%を含むマスターバッチ3重量部をドライブレンドして使用した。
【0038】接着樹脂には、密度が0.94g/cm3、メルトインデックスが0.2g/10min.の接着性ポリオレフイン樹脂(三井化学株式会社製:HB500)を使用した。
【0039】容器1の成形には、4本のスクリューを持つ多層ブロー成形機(BEKUM社製)を用いた。各押出機により各樹脂を200℃で溶融して筒状のパリソンに押出した。押出されたパリソンを金型で挟んで、ブローピンより6kg/cm2の加圧ガスを吹き込み、冷却し、容器1を成形した。試作した容器1は、内層/接着樹脂/中間層/接着樹脂/外層の順で、平均厚みが0.680/0.045/0.050/0.045/0.680mmの4種5層構造であり、容量は4リットルである。
【0040】次に試作した容器1のクリーン度を測定した。容器1に超純水製造装置(商品名:トレピュアLV-10T(東レ株式会社製))で製造した超純水2リットルを入れ、キャップを取り付けて密閉して15秒間振とうし、24時間静置後に5ml採取し、その中に浸出した0.2μm以上の微粒子の数をパーティクルカウンター(タイプ:KL-22(リオン株式会社製))で測定した。」
オ「【表1】
[図:0001384192000001.jpg]
」
カ「【0047】表1に示したように、水中のクリーン度は12個/ml、レジスト1中のクリーン度は8個/ml、6ヶ月後のクリーン度は26個/mlと不純微粒子の浸出が極めて少なかった。
【0048】次に、この容器1の胴部1×4cm角を切り取り、分光光度計(タイプ:Ubest-55(日本分光株式会社製))により波長900~200nmの吸光度を測定した。波長400nm以下における最低吸光度は2.42であり、600nmの吸光度は1.21(透過率10-0.79%)で吸光係数は0.77mm4、400nmの吸光度は2.42(透過率10-0.42%)で吸光係数は1.54mm4と、極めて良好な遮光性を示す。この時のサンプルの厚みは1.57mmであった。」
キ「【図1】
[図:0001384192000002.jpg]
」
ク 甲第1号証の【図1】及び段落【0034】~【0039】より、甲第1号証には、実施例1として、容器の内側から外側に順に、内層3、中間層4及び外層5を積層してなるブロー成形された高純度薬品容器1が記載されていると認められる。
キ 甲第1号証の段落【0004】、【0040】及び段落【0046】の【表1】より、甲第1号証の実施例1の高純度薬品容器1に貯蔵されていた内容液1ml中に容器側から浸出した0.2μm以上の微粒子の数が12個/mlであると認められる。
上記甲第1号証の記載及び上記認定事項から、甲第1号証には、実施例1として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明]
「容器の内側から外側に順に、下記を原料とした内層3、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を原料とした溶媒バリアー性樹脂からなる中間層4及び遮光性顔料をドライブレンドした下記ポリエチレンを原料とした外層5を積層してなるブロー成形された高純度薬品容器1であって、
高純度薬品容器1の波長600nmの透過率が10-0.78%であり、波長400nmの透過率が10-0.42%であり、かつ高純度薬品容器1内容液1ml中に容器側から浸出した0.2μm以上の微粒子の数が12個/mlであるブロー成形された高純度薬品容器1。
内層3:中和剤、酸化防止剤および耐光安定剤を含まない中圧法により製造されたポリエチレンであって、密度が0.955g/cm3、GCPにより測定される重量平均分子量が1×103以下の重合体の含有量が1.41重量%、メルトインデックスが0.15g/10min.
外層5:平均分子量が2×103以上のポリエチレンを0.30重量%含み、密度0.956g/cm3、メルトインデックスが0.30g/10min.」
(2)甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】以下の(1)~(5)の性状を有する高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂。
(1)密度(JIS K6760-1981)が0.94~0.97g/cm3、(2)190℃、21.6kg荷重のメルトフローレート(JIS K7210-1976、条件7)が2~50g/10分、(3)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が8~15、(4)沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.1重量%以下、(5)含有塩素量がポリエチレン樹脂に対して15PPM以下」
イ「【請求項3】ポリエチレン樹脂に対して、(A)中和剤として脂肪酸金属塩類を150PPM以下として添加してなること、および/又は(B)酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を800PPM以下として添加してなることを特徴とする請求項第1項又は第2項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂。」
ウ「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置産業分野、精密工業部品分野及び医薬品等に使用される高純度薬品用容器の製造に好適で、高純度薬品を充填した場合に、薬品への微粒子の発生および金属溶出の極めて少ないポリエチレン容器用樹脂及び高純度薬品容器に関するものである。」
エ「【0003】・・・特開平7-62161号公報および特開平7-257540号公報はポリエチレン樹脂の、炭化水素系溶媒抽出量や低分子成分の含有量を抑え、酸化防止剤、中和剤並びに耐光剤の添加量を制限した容器の提案であるが、ポリエチレン樹脂に残存する触媒成分による灰分の影響に対する改良が不十分であり、薬品に溶出する金属不純物濃度に対する対策が未完成である。また、微粒子のレベルが0.2μm以上と十分でない。」
オ「【0014】該ポリエチレン樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは8?15であり、8未満では分子量分布が狭くて流動性が劣り、また、樹脂の劣化を促進させる。該Mw/Mnが15を超えると、分子量分布が拡大して微粒子の発生原因となる低分子量成分が増加する。また、Mw/Mnが15を超えると、パリソン結合部のピンチオフ部の形状が劣るようになり落下強度が低下する。」
カ「【0018】さらに、本発明に用いられる高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂は、酸化防止剤、耐光安定剤、及び中和剤等の全ての添加剤及び添加物が無添加であることが好ましい。・・・」
キ「【0019】本発明の高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂はブロー成形、射出成形、押出成形、回転成形、押出成形等既知の成形方法により容器状に成型することにより高純度薬品容器となる。特に、クリーンルーム内に設置したブロー成形機を使用し、フィルターで微粒子を取り除いたエアーをブローエアーに用いたブロー成形方法はクリーンな容器を製造するのに好ましい。容器形状および容器の容量は特定しないが、内容物のバリアー性や容器の強度を補強するために、該樹脂を内層に使用し、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、およびポリアミド樹脂等を中間層に使用したり、FRP等を外層にして補強容器にしてもかまわない。
【0020】薬品の種類によっては遮光性容器にする必要があり、本発明のポリエチレン樹脂を内層とし、有機顔料あるいは無機顔料等の遮光性材料を含む層を少なくとも一層含む多層容器としても、また、クリーン度を保てる範囲内で有機顔料あるいは無機顔料を本発明のポリエチレン樹脂に添加してもかまわない。」
ク「【0029】実施例1
(1)固体触媒成分(A)の調製
・・・
【0030】
(2)ポリエチレン樹脂の製造
・・・
【0032】上記した二段重合法により得たパウダーのみを、中和剤及び酸化防止剤等を一切使用せずに、50mmφ造粒機でペレット化しポリエチレン樹脂を得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.956g/cm3であり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが28g/10分であり、GPCより求められるMw/Mnが9.2であり、沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.08%であり、含有塩素量が10PPMであり、灰分量が35PPMであった。
【0033】(3)容器の評価
上記のポリエチレン樹脂を、ブロー成形し、得られた容器を用いて上記した耐薬品性試験及び微粒子数と金属不純物濃度の測定を行った。
【0034】表1に示すように、耐薬品性試験では3週間で容器に変色はない。また、金属不純物濃度は0.01PPB以上の濃度となる金属がなく、保存中の微粒子の増加も少なかった。
【0035】実施例2
第2段目の重合器の水素を対エチレン濃度比0.06モル/モルとして供給した以外は、実施例1と同様に、ヘキサン中でエチレンとブテン-1を共重合して、二段重合法により重合パウダーを得てた。該パウダーのみを、中和剤及び酸化防止剤等を一切使用せずに50mmφ造粒機でペレット化し、ポリエチレン樹脂を得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.955g/cm3であり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが8.5g/10分であり、GPCより求められるMw/Mnが13.5であり、沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.08%であり、含有塩素量が9PPMであり、灰分量が20PPMであった。該ポリエチレン樹脂をブロー成形し、得られた容器を用いて上記した耐薬品性試験及び微粒子数と金属不純物濃度の測定を行った。
【0036】表1に示すように、耐薬品性試験では3週間で容器に変色はない。金属不純物濃度は0.01PPB以上の濃度となる金属がなく、保存中の微粒子の増加も少なかった。」
(3)甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
容器の内側から外側に順に、下記の内層、バリアー兼接着樹脂層、接着性層、バリアー層、接着層および外層を積層してなることを特徴とする耐薬品性吹込み成形積層容器。
内層:フッ素樹脂
バリアー兼接着樹脂層:特殊ポリアミド樹脂
接着性層:無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂
バリアー層:エチレンビニルアルコール共重合樹脂
接着層:無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂
外層:超高分子量高密度ポリエチレン樹脂」
イ「【請求項4】
前記超高分子量高密度ポリエチレン樹脂は、ポリエチレンあるいはエチレン-α-オレフィン共重合体からなり、下記特性を有する超高分子量高密度ポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の耐薬品性吹込み成形積層容器。
(特性)
密度:940~962Kg/m3
重量平均分子量:220,000~260,000
分子量分布(Mw/Mn):12以下
溶融張力:18~30g」
ウ「【0001】
本発明は、耐薬品性吹込み成形積層容器に関するものであり、さらに詳しくは、耐薬品性や機械的強度などに優れ、保管貯蔵している薬品や香料などの中への不純粒子の浸出が少なく、すなわちクリーン度が良好な(不純パーティクル溶出量が非常に少ない) 吹込み成形(ブロー成形)積層容器であって、超高純度薬品容器としても使用可能な耐薬品性吹込み成形積層容器に関するものである。」
エ「【0005】
また、薬品を容器中に長期間貯蔵している間に、容器を形成している樹脂組成物から内容物である薬品中に不純微粒子が浸出し、この不純微粒子が内容物を不純化する度合いを示す指数としてクリーン度というものがある。
クリーン度は、いったん検査容器を成形し、その検査容器に一定期間超純水を貯蔵した後、樹脂製の容器が貯蔵していた水1ml中に粒径0.2μm以上の微粒子がいくつ存在するかを算定して求める。」
オ「【0006】
・・・従来は、クリーン度が500 個/ml未満であると、半導体、液晶の品質および歩留りを向上することができるとされていた。しかし現在はさらに厳しくなり、5 個/ml以下が要求される場合が多くなっている。」
カ「【0033】
本発明で使用するバリアー層のエチレンビニルアルコール共重合樹脂(エチレン24~44モル%共重合)とは、エチレンビニルアルコール共重合を加水分解しほぼ完全にケン化した樹脂であり、保香性に優れるなど、優れたガスバリアー性を有するので薬品、化粧品などの容器包装材に広く用いられており、油類、有機溶剤などへの抵抗性が高く、特に下記の特性を有するエチレンビニルアルコール共重合樹脂を用いることにより酸素バリアー性を確保できとともに、MFR、融点などが超高分子量高密度ポリエチレン樹脂と近く安定成形性に優れるので好ましく使用できる。バリアー層のエチレンビニルアルコール共重合樹脂の例としては、具体的には、例えば、(株)クラレ製のF171B(エチレン32モル%共重合、融点183℃、ケン化率99.99%)を挙げることができる。
【0034】
(特性)
MFR(210℃、2.16Kg荷重 g/10min):2~5
密度(Kg/m3):1.1~1.3
融点(℃):170~200(ISO1346)
・・・」
キ「【0045】
(実施例1)
内層としてMFR25g/10min、比重1.74,融点200℃のフッ素樹脂(ダイキン工業(株)製RP-5000)を使用し、フッ素樹脂との接着機能を有した添加剤フリーの特殊ポリアミド樹脂(ダイセルエボニック(株)製Z4887) (バリアー兼接着樹脂)を用い、そしてバリアー樹脂(エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂F171B:(株)クラレ製)と、特殊ポリアミド樹脂との接着機能を有する接着性層として無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(日本ポリエチレン(株)FT71A) を用い、そして前記バリアー樹脂と、前記フッ素樹脂や前記ポリアミド樹脂の溶融張力低下を補うために使用する最外層となる超高分子量高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン(株)製HB111R)(HL-MFR6g/10min、密度946Kg/m3、重量平均分子量25万、溶融張力25g)との接着機能を有する接着層として無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(日本ポリエチレン(株)FT71A)を使用して、下記の成形条件でドローダウンなどの問題がなく、6層からなる本発明の耐薬品性吹込み成形積層容器(質量122g、内層50μm、特殊ポリアミド樹脂層400μm、接着性層40μm、バリアー樹脂層40μm、接着層500μm、外層750μm、全肉厚1.42mm、容量1300CC)を成形した。ただし、前記接着層の無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(日本ポリエチレン(株)FT71A)は、本発明の耐薬品性吹込み成形積層容器の回収物を接着層全体に対して30質量%配合してある。」
(4)甲第4号証
甲第4号証には、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高純度の薬品、溶剤その他の物質を収容するためのクリーン容器に関するものである。」
イ「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は次のクリーン容器である。
(1) 少なくとも容器内層がシングルサイト触媒により製造されたポリエチレンを含むポリエチレン組成物からなることを特徴とするクリーン容器。
(2) シングルサイト触媒により製造されたポリエチレンの単層構造からなることを特徴とするクリーン容器。
(3) 容器内層がシングルサイト触媒により製造されたポリエチレンからなり、容器外層がチタン系触媒またはクロム系触媒で製造されたポリエチレンからなることを特徴とするクリーン容器。」
ウ「【0038】実施例1
ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドからなるメタロセン触媒とメチルアルミノキサンで製造された密度0.974g/cm3の高密度ポリエチレンを用いブロー成形により容量1000mlの容器を製造した。この時の容器壁の厚みは1mmである。この容器に超純水(商品名:トレピュアLV-10T(東レ株式会社製))500mlを入れ、15秒間振とう洗浄して排水した。この振とう洗浄を5回繰り返した。5回目の洗浄水から5ml採取し、その中に浸出した0.2μm以上の微粒子の数をパーティクルカウンター(タイプ:KL-22(リオン株式会社製))で測定し、水中の微粒子数(個/ml)を、〔カウント数(個)×超純水の水量500(ml)〕/〔サンプリング量5(ml)×容器容量1000(ml)〕の式で算出する方法で水洗微粒子を測定したところ、微粒子は検出されなかった。また、超純水をいれる前に沸騰パラキシレンを500mlいれて1分間振とうした後排出し、上記と同様に超純水を500ml入れて、同様の試験方法で溶洗微粒子の数を測定したところ、微粒子は検出されなかった。また、この容器に10重量%ノニオン系界面活性剤を入れて65℃で2000時間保管し、ESCRテストをしたところ、容器は割れなかった。」
エ「【0040】実施例2
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドからなるメタロセン触媒で製造された密度0.920g/cm3の線状低密度ポリエチレン(エチレン・ヘキセン-1共重合体)を内層、比較例1で用いたチタン系触媒で製造された高密度ポリエチレンを外層とする二層積層構造の容量1000mlの容器をブロー成形法により製造した。この容器の内層は0.2mm、外層は0.8mmであった。そして実施例1と同様に微粒子を測定したところ、水洗微粒子および溶洗微粒子とも検出されなかった。またESCRテストをしたところ、容器は割れなかった。」
(5)甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
フォトレジスト組成物を貯蔵するプラスチック製のフォトレジスト用容器であって、
前記フォトレジスト組成物の貯蔵6ヶ月経過後の前記フォトレジスト組成物中に存在する前記プラスチック由来の粒径0.3μmを超える微粒子の平均個数を300.0個/mL以下とする低汚染特性を有することを特徴とするフォトレジスト組成物用容器。」
イ「【請求項4】
前記プラスチックが、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、8~15である高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物用容器。」
ウ「【0022】
前記高密度ポリエチレンのゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、5~20が好ましく、8~15であることがより好ましい。Mw/Mnが5未満だと流動性が劣るため作業性が悪く、また、成型が困難となる。さらに、樹脂の劣化を促進させる。一方、Mw/Mnが20を超えると、低分子量のものを多く含むこととなり微粒子が発生しやすくなる。」
エ「【0039】
〔実施例1〕
高密度ポリエチレンとして東ソー社製8D01A(商品名)を用い、クリーンエアでブロー成型して円筒形状で、内容積200L容量のフォトレジスト組成物用容器を作製した。なお、使用した高密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、14程度であり、分子量は220~230×103、密度は0.956g/cm3である。」
オ「【0041】
表1は、上記フォトレジスト組成物中の平均微粒子数を測定した結果である。平均微粒子数は、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後に、異物サンプルを採取しパーティクルカウンタにて異物数を測定した。微粒子は、粒径が0.25μmを超える大きさのものを測定し、その中でも0.3μmを超えるものの数も計測した。その結果を示したものが表1である。なお、表中の「初期」とは保存直後のことを指す。」
カ「【0042】
【表1】
[図:0001384192000003.jpg]
」
(6)甲第6号証
甲第6号証には、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、高品質の液体を充填して輸送したり貯蔵したりする多層プラスチック容器に関するものである。」
イ「【0010】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1の多層プラスチック容器は、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種のガスバリア性樹脂層が熱可塑性樹脂層に挟み込まれている多層からなる筒状の胴体と、該胴体の下端から該多層が該胴体の底面の中央に向いて延び、そこで下向きに該多層ごと先細りに引き出され熱融着により該底面を塞いで、形成している底体とからなり、その熱融着部位の肉厚が少なくとも1.5mmであり、該熱融着部位の周囲が該多層ごと該胴体の内空へ向いて盛り上がっていることを特徴とする。」
ウ「【0025】
最外層15を形成するポリエチレンには、着色剤、紫外線防止剤、酸化防止剤のような添加剤を、適宜加えてもよい。最外層15に印刷したりラベルを貼付したりしてもよい。熱可塑性樹脂層11・15は、単層であっても複層であってもよい。ガスバリア性樹脂層13の内外で熱可塑性樹脂層11・15の各層厚の比は、1:3であることが好ましい。」
エ「【0031】
(実施例1)
多層中の最内層および最外層の原料として、酸化防止剤と中和剤とを含有し、密度が0.951g/cm3でメルトフローレートが0.20g/10分であるポリエチレンからなる熱可塑性樹脂を用いた。多層中のガスバリア性樹脂層の原料として、密度が1.19g/cm3でメルトフローレートが1.3g/10分であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いた。それらを接着する接着樹脂として、密度が0.914g/cm3でメルトフローレートが1.4g/10分であるポリエチレンに、無水マレイン酸がグラフト重合した樹脂を用いた。」
(7)甲第7号証
甲第7号証には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
ASTM D1238(190℃:2160g)におけるメルトフローレート(MFR)が0.001~0.5g/10分、密度が0.945~0.980g/cm3のポリエチレン樹脂(a1)を含む基層(A1)、
不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性された変性エチレン・α-オレフィン共重合体(a2)を含む接着層(A2)、および
エチレン・ビニルアルコール共重合体(b)を含むバリヤー層(B)
を含む多層積層体であって、上記接着層(A2)が下記特性を有することを特徴とするポリエチレン系多層積層体。
1) 接着層の密度:0.900~0.940g/cm3
2) 接着層全体のグラフト変性量:0.2~2重量%
3) 接着層全体のASTM D1238(190℃:2160g)におけるメルトフローレート(MFR):1.0g/10分以下
【請求項2】
請求項1記載の多層積層体を粉砕した樹脂組成物(c)を含む組成物層(C)をさらに含む請求項1記載の多層積層体。」
イ「【0001】
本発明は、ポリエチレン系多層積層体、この多層積層体からなる容器、特にガソリンタンクに関するものである。」
ウ「【0014】
本発明で用いるポリエチレン樹脂(a1)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したMw/Mnが20以上であると、成形性と耐衝撃強度が優れるため好ましい。本発明において用いる基層(A1)はこのようにポリエチレン樹脂(a1)を主成分として含む樹脂であり、このほかに後述の酸化防止剤(d)、金属化合物(e)、その他の公知の添加剤を含有していてもよい。」
エ「【0037】
本発明で使用するエチレン・ビニルアルコール共重合体(b)はエポキシ化合物、イソシアネート化合物等で変性されていてもよい。バリヤー層(B)はエチレン・ビニルアルコール共重合体(b)を主成分として含むが、エチレン・ビニルアルコール共重合体(b)のほか本発明の目的を損なわない範囲で他の重合体、例えばポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アイオノマー樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が混合されていてもよい。また後述の酸化防止剤(d)、金属化合物(e)、その他の公知の添加剤を含有していてもよい。」
オ「【0044】
組成物層(C)は、上記エチレン系共重合体(a)およびエチレン・ビニルアルコール共重合体(b)を含むポリエチレン系樹脂組成物(c)を主成分として含むが、このほか必要により後述の酸化防止剤(d)、金属化合物(e)、その他の公知の添加剤を含んでいてもよい。組成物層(C)としてはリグラインドを使用することができ、この場合、(A1)、(A2)、(B)のすべての成分を全量リグラインド物から供給することもできるし、新品と混合して使用することもできる。」
カ「【0046】
《酸化防止剤(d)》
本発明において基層(A1)、接着層(A2)、バリヤー層(B)、組成物層(C)に好ましく配合される酸化防止剤(d)としては、通常ポリオレフィンに用いられているフェノール系抗酸化剤、燐系抗酸化剤、硫黄系抗酸化剤等を単独でまたは組合せて使用することができるが、フェノール系抗酸化剤と燐系抗酸化剤とを組合せて使用するのが好ましい。」
キ「【0049】
前記硫黄系抗酸化剤としては、ジラウリル-チオジプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTP)等が例示される。酸化防止剤(d)の配合量は、(a1)、(a2)、(b)または(c)100重量部に対して0.01~0.5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.01~0.3重量部である。2種以上の酸化防止剤(d)を併用する場合は、合計量が上記範囲となるように配合する。本発明ではフェノール系抗酸化剤と燐系抗酸化剤との併用が好ましいが、この場合のフェノール系抗酸化剤と燐系抗酸化剤との重量比は5:1~1:5であるのが好ましい。」
ク「【0074】
《積層体の製造》:
最外層から、基層(A1)として高密度ポリエチレン[HDPE:ハイゼックス8200B、三井化学(株)製、商標、密度=0.956g/cm3、ASTM D1238によるMFR(190℃:2160g)=0.03g/10分]、接着層(A2)として変性エチレン・α-オレフィン系共重合体AD-1、バリヤー層(B)としてエチレン・ビニルアルコール共重合体[EVOH:エバールEP-F101A、(株)クラレ製、商標、MFR(ASTM D1238、190℃、2160g)=1.3g/10分、密度1.19g/cm3、エチレン含有量=32モル%、ケン化度=100%]、接着層(A2)として変性エチレン・α-オレフィン系共重合体(AD-1)、基層(A1)として高密度ポリエチレン[HDPE:ハイゼックス8200B、三井化学(株)製、商標、密度=0.956g/cm3、ASTM D1238によるMFR(190℃:2160g)=0.03g/10分]の順にダイス内で積層するように設けられている4種6層のブロー成形機を用いて成形温度230℃で以下の厚み比(重量換算)となるように高さ150mm、内容量500mlのボトルを成形した。
A1/A2/B/A2/A1=45/2/5/2/46(%)」
(8)甲第8号証
甲第8号証には、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明は、微粒子や溶出成分が少なく、成形機等の金属の腐食を抑え、かつ成形した容器、フィルムの変色を抑え、更に容器に充填あるいはフィルムで包装した内容物の腐食や変色を抑えたポリエチレン樹脂組成物に関するものである。また、本発明のポリエチレン樹脂組成物はクリーン性を要求される容器包装用の樹脂材料として好適である。」
イ「【0051】
次に、本発明ではゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定した分子量1000以下の量が0.5w%以下が好ましく、0.4w%以下がさらに好ましく、0.3w%以下がより好ましい。該量はポリエチレンに含まれる低分子量成分やワックスの量を示しており、該低分子量成分やワックスは高純度薬品中に溶出して微粒子の原因となりクリーン度を悪化させる。該量を0.5w%以下とすることでクリーン度を満足することができる。」
5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「内層3」、「外層5」及び「ブロー成形された高純度薬品容器1」は、それぞれ本件発明1の「内層」、「外層」及び「高純度薬品用吹込み成形積層容器」に相当する。
甲1発明の「エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂」は、本件発明1の「ポリビニルアルコール樹脂」に相当する。また、甲1発明の「溶媒バリアー性樹脂からなる中間層4」は、「バリアー性中間層」という限度で本件発明1の「酸素バリアー層」と一致する。
甲1発明の「遮光性顔料」は、本件発明1の「遮光性顔料」に相当する。
したがって、甲1発明の「容器の内側から外側に順に、下記を原料とした内層3、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を原料とした溶媒バリアー性樹脂からなる中間層4及び遮光性顔料をドライブレンドした下記ポリエチレンを原料とした外層5を積層してなるブロー成形された高純度薬品容器1」は、本件発明1の「容器の内側から外側に順に、下記の内層、ポリビニルアルコール樹脂を含む酸素バリアー層および遮光性顔料を含む外層を少なくとも積層してなる超高純度薬品用吹込み成形積層容器」との対比において、「容器の内側から外側に順に、内層、ポリビニルアルコール樹脂を含むバリアー性中間層および遮光性顔料を含む外層を少なくとも積層してなる超高純度薬品用吹込み成形積層容器」との限度で一致する。
甲1発明の「高純度薬品容器1内容液1ml中に容器側から浸出した0.2μm以上の微粒子の数」は、技術的に見て、本件発明1の「貯蔵している薬品中へ容器側から浸出する不純微粒子の個数を示す指数としてのクリーン度」に相当する。
したがって、甲1発明の「ブロー成形された高純度薬品容器1であって」、「高純度薬品容器1内容液1ml中に容器側から浸出した0.2μm以上の微粒子の数が12個/mlである」ことは、本件発明1の「超高純度薬品用吹込み成形積層容器であって」、「貯蔵している薬品中へ容器側から浸出する不純微粒子の個数を示す指数としてのクリーン度が5個/ml以下」であることとの対比において、「超高純度薬品用吹込み成形積層容器であって」、「貯蔵している薬品中へ容器側から浸出する不純微粒子の個数を示す指数としてのクリーン度が所定値」であるとの限度で一致する。
甲1発明の「中和剤、酸化防止剤および耐光安定剤を含まない中圧法により製造されたポリエチレンであって、密度が0.955g/cm3」の「内層3」は、本件発明1の「内層:エチレン、プロピレン、ブテン-1、4-メチル-ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1から選択される少なくとも1種類を含む単独重合体あるいは共重合体から成る下記の特性を有する高密度ポリオレフィン樹脂。
(内層の特性)中和剤、酸化防止剤、および耐光安定剤を意図的には添加せず、最大含有量0.005質量%以下、
密度:950~962Kg/m3」に相当する。
甲1発明の「下記ポリエチレンを原料とした外層5
外層5:密度0.956g/cm3」は、本件発明1の「前記外層は、更に、下記特性を有する高密度ポリエチレン樹脂
(外層に含まれる高密度ポリエチレン樹脂の特性)
密度:940~962Kg/m3」に相当する。
以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点]
「容器の内側から外側に順に、下記の内層、ポリビニルアルコール樹脂を含むバリアー性中間層および遮光性顔料を含む外層を少なくとも積層してなる超高純度薬品用吹込み成形積層容器であって、貯蔵している薬品中へ容器側から浸出する不純微粒子の個数を示す指数としてのクリーン度が所定値であり、
外層は、更に、下記特性を有する高密度ポリエチレン樹脂からなる、超高純度薬品用吹込み成形積層容器。
内層:エチレン、プロピレン、ブテン-1、4-メチル-ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1から選択される少なくとも1種類を含む単独重合体あるいは共重合体から成る下記の特性を有する高密度ポリオレフィン樹脂。
(内層の特性)
中和剤、酸化防止剤、および耐光安定剤を意図的には添加せず、最大含有量0.005質量%以下、
密度:950~962Kg/m3
(外層に含まれる高密度ポリエチレン樹脂の特性)
密度:940~962Kg/m3」
[相違点1]
本件発明1は、「波長500~800nmの可視光の透過率が1%以下であり、波長200~400nmの紫外線透過率が1%以下であり」「内容部の視認性のない」ものであるのに対し、甲1発明は、「波長600nmの透過率が10-0.78%であり、波長400nmの透過率が10-0.42%」である点。
[相違点2]
本件発明1は、クリーン度が「5個/ml以下」であるのに対し、甲1発明は、「12個/ml」である点。
[相違点3]
本件発明1の「内層」の特性が、更に、「クリーン度:5個/ml以下
重量平均分子量:18~25万
分子量1,000以下の成分:0.4質量%以下
分子量分布(Mw/Mn):12以下
HL―MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min):6.5~9.5」であるのに対し、甲1発明の「内層3」の特性は、「GCPにより測定される重量平均分子量が1×103以下の重合体の含有量が1.41重量%、メルトインデックスが0.15g/10min」であるとはされているものの、クリーン度、重量平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)については、特定されていない点。
[相違点4]
「バリアー性中間層」に関し、本件発明1は「酸素バリアー層」であるのに対し、甲1発明は「溶媒バリアー性樹脂からなる中間層3」である点。
[相違点5]
本件発明1の「外層」が、「リン系、サルファー系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤を、前記高密度ポリエチレン樹脂に対して、0.05~0.30質量%含む」ものとされているのに対し、甲1発明の「外層5」が酸化防止剤を含むものであるとは特定されていない点。
[相違点6]
本件発明1の「外層」の特性が、更に、「重量平均分子量:22~26万
分子量分布(Mw/Mn):12以下
溶融張力:20~30g
HL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min):5~7
波長500~800nmの可視光の透過率が1%以下
波長200~400nmの紫外線透過率が1%以下」とされているのに対し、甲1発明の「外層5」は、「遮光性顔料をドライブレンドした」「ポリエチレン」を原料とするものの、分子量分布(Mw/Mn)、溶融張力、HL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)、波長500~800nmの可視光の透過率及び波長200~400nmの紫外線透過率についは、特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
本件発明1においては、内層を構成する樹脂のクリーン度5個/ml以下とするために、内層の樹脂に含まれる分子量1,000以下の成分比率を0.4質量%以下と設定し、かかる設定値を達成しつつ樹脂成形性の観点をも含めて、内層の重量平均分子量、分子量分布及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)を特定の範囲に設定したものであるといえる(本件特許の明細書の段落【0042】~【0045】を参照。)。
このように、樹脂における分子量1,000以下の成分比率と重量平均分子量、分子量分布及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)は密接に相関関係があり相互に影響を及ぼすとともに、容器のクリーン度に関連するものであるということが当業者における技術的知見であるということができるが、甲第2号証~甲第8号証のいずれの文献にも、吹込み積層容器の樹脂におけるクリーン度、分子量1,000以下の成分比率と重量平均分子量、分子量分布及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)について、高密度ポリオレフィン樹脂の内層のクリーン度を5個/ml以下、内層の樹脂の重量平均分子量を18~25万、分子量1,000以下の成分を0.4質量%以下、分子量分布を12以下及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)を6.5~9.5とすることは記載も示唆もされていない。また、甲第2号証~甲第8号証のいずれの文献にも、高密度ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量、分子量分布及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)を適切に設定することによって、分子量1,000以下の成分比率を容器に要求されるクリーン度が得られるように設定し得るという技術思想の開示もない。
してみると、甲第8号証により、容器の最内層に含まれる分子量1,000以下の成分比率(甲1発明においては、「重量平均分子量が1×103以下の重合体の含有量」が相当する。)が本件発明1におけるクリーン度と密接に関連していることが当業者に既知の技術的事項であり(上記4(8)を参照。)、また、甲第3号証によりクリーン度を5個/ml以下とする容器が記載ないし示唆されているといえるとしても(上記4(3)エ及びオを参照。)、引用発明において、ポリエチレン樹脂の内層のクリーン度を5個/ml以下とするために、内層の樹脂の重量平均分子量を18~25万、分子量1,000以下の成分を0.4質量%以下、分子量分布を12以下及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)を6.5~9.5とすることは、甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、本件発明1は、相違点3に係る構成を具備することにより、「例え隣接する層から移行する不純微粒子があったとしても内容液への浸出するのを内層が防止できる」(本件特許の明細書段落【0122】を参照。)という格別の作用効果を奏するものといえる。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第8号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 異議申立人の主張
(ア)特許法第29条第2項について
相違点3に関し、異議申立人は、重量平均分子量については、甲第5号証の実施例1として記載されている容器の高密度ポリエチレンは、分子量が220~230×103と(上記4(5)エを参照。)、本件発明1の内層の樹脂の重量平均分子量18~25万との要件を充足するものが記載されており、分子量分布(Mw/Mn)については、甲第2号証の【請求項1】に高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂の、GPCより求められるMw/Mnが8~15と(上記4(2)アを参照。)、本件発明1の内層の樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が12以下との要件を充足するものが記載され、特に、実施例1として9.2であるものが記載され(上記4(2)クを参照。)、HL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)については、甲第2号証の【請求項1】に高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂の190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが2~50g/10分と(上記4(2)アを参照。)、本件発明1のHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)が6.5~9.5との要件を充足するものが記載され(上記4(2)アを参照。)、特に、実施例2として8.5g/10分であるものが記載され(上記4(2)クを参照。)ているから、甲1発明において、内層のポリエチレンの重量平均分子量、分子量分布及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)を本件発明1の範囲に設定することは、当業者が適宜行う設計上の変更に過ぎない旨主張している(特許異議申立書第31ページ第11行~第33ページ第24行)。
しかしながら、甲第5号証の実施例1として記載されている容器は、高密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は14程度と(上記4(5)エを参照。)、本件発明1の分子量分布(Mw/Mn)12以下であるとの要件を満足しない、また、甲第2号証の実施例1として記載されている高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂の190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートは28g/10分と(上記4(2)クを参照。)、本件発明1のHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)が6.5~9.6であるとの要件を充足しない、さらに、甲第2号証の実施例2として記載されている高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂のGPCより求められるMw/Mnは13.5と(上記4(2)クを参照。)、本件発明1の分子量分布(Mw/Mn)が12以下であるとの要件を充足しない。
上記イで説示のとおり、樹脂における分子量1,000以下の成分比率と重量平均分子量、分子量分布及びHL-MFR(190℃、21.6Kg荷重 g/10min)は密接に相関関係があり相互に影響を及ぼすものであることからすれば、甲第2号証及び甲第5号証に記載された容器を構成する樹脂の特性の一部を個別に切り取って、甲1発明の内層のポリエチレンの特性として設定することの動機付けはないといえる。
したがって、異議申立人の上記主張には理由がない。
(イ)特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号について
異議申立人は、本件特許の発明の詳細な説明の記載に関し、本件発明1は、「超高純度薬品用吹込み成形積層容器のクリーン度が5個/ml以下」と規定され、かつ「内層の特性として、クリーン度:5個/ml以下」と規定されているのに対し、実施例には、超高純度薬品用吹込み成形積層容器を作成してクリーン度を測定した結果が示されている。一方、内層のクリーン度が表2に示されているものの、内層だけを作成した例が示されておらず、したがって、本件発明1~3は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。また、内層のクリーン度を過度の試行錯誤により決定しなければならないから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨主張する(特許異議申立書第38ページ第第21行~第39ページ第4行)。
しかしながら、本件発明1は、「保管貯蔵している超高純度薬品などの中へ容器側から浸出する不純微粒子の個数を示す指数としてのクリーン度が5個/ml以下」とすることを課題の一つとして、斯かる課題を解決するために「超高純度薬品用吹込み成形積層容器のクリーン度が5個/ml以下」、かつ「内層の特性として、クリーン度:5個/ml以下」とすることを発明特定事項として具備したものであるということができる(本件特許の明細書の段落【0021】及び【0022】を参照。)。
そして、本件の明細書の発明の詳細な説明には、発明を実施するための形態として、超高純度薬品用吹込み成形積層容器を作成してクリーン度を測定すること(本件特許の明細書の段落【0083】、【0088】、【0090】、【0103】及び【0108】~【0111】を参照。)、及び、内層だけを作成してクリーン度を測定すること(本件特許の明細書の段落【0089】の「内層に使用した高密度ポリエチレン樹脂のクリーン度は、内層に使用した高密度ポリエチレン樹脂のみを使用して、実施例1と同じ厚さの吹込み成形容器を成形して、後記の試験法によりクリーン度(個数/ml)を測定した。」の記載を参照。)が記載されている。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるし、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
よって、異議申立人の上記主張も理由がない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに発明特定事項を付加したものである。
したがって、本件発明2及び3と甲1発明との間には、少なくとも上記相違点3が存在するから、本件発明2及び3は、上記(1)イと同様の理由により、甲1発明及び甲第2号証~甲第8号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2及び3は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるし、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700875