特許異議申立
2023-700415
水溶性フィルム及び薬剤包装体
- 審判番号
- 2023-700415
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-223437
- 登録番号
- 7161277
- 請求日
- 2023年04月24日
- 審決日
- 2023年07月11日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】西藤 征彦
- 【権利者代理人】井▲崎▼ 愛佳
- 【権利者代理人】西藤 優子
- 【権利者代理人】寺尾 茂泰
- 【異議申立人】和栗 由莉菜
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-Y (B65D) / P1651.121-Y (B65D) / P1651.161-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7161277号発明「水溶性フィルム及び薬剤包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7161277号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7161277号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成28年11月16日(優先権主張 平成27年11月19日)の出願であって、令和4年10月18日にその特許権の設定登録がされ、令和4年10月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年4月24日に特許異議申立人和栗由莉菜(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7161277号の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5であり、23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度140℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X1)が11.0N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しないことを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5であり、23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度145℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X2)が11.5N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しないことを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項3】
可塑剤(B)の含有量が、ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して20重量部以上であることを特徴とする請求項1または2記載の水溶性フィルム。
【請求項4】
水溶性フィルムの含水率が3~15重量%であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の水溶性フィルム。
【請求項5】
薬剤包装に用いることを特徴とする請求項1~4いずれか記載の水溶性フィルム。
【請求項6】
請求項1~5いずれか記載の水溶性フィルムで、液体洗剤が包装されてなることを特徴とする薬剤包装体。
【請求項7】
液体洗剤が、水に溶解又は分散させた時のpH値が6~12で、水分量が15重量%以下であることを特徴とする請求項6記載の薬剤包装体。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲第1-1号証~甲第9号証(以下「甲1-1」等という。)を提出し、請求項1~7に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。
1 申立理由1(新規性)
本件発明1~3及び5~7は、甲1-1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~3及び5~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(進歩性)
本件発明1~7は、甲1-1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 申立理由3(拡大先願1)
本件発明1~7は、本件特許の優先日前を優先日とする他の特許出願(PCT/US2016/015768)であって、本件特許の優先日後に国際公開(甲4-1)がされた他の特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13)。
4 申立理由4(拡大先願2)
本件発明1~7は、本件特許の優先日前を優先日とする他の特許出願(PCT/US2015/055210)であって、本件特許の優先日後に国際公開(甲5-1)がされた他の特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13)。
[引用文献等一覧]
甲1-1:特願2003-417980号の拒絶査定不服審判の審判請求書
甲1-2:特開2005-179390号公報
甲1-3:特許第4630396号公報
甲1-4:特願2003-417980号の特許メモ(作成日:平成22年10月25日)
甲1-5:異議2021-700638の異議の決定
甲1-6:異議2022-700630の異議の決定
甲2:特許・実用新案審査基準「第III部第2章第3節 新規性・進歩性の審査の進め方」、特許庁、2022年(令和4年)5月20日
甲3:特表2013-518009号公報
甲4-1:国際公開第2016/160116号
甲4-2:特表2018-517834号公報
甲5-1:国際公開第2016/061026号
甲5-2:特表2007-531088号公報
甲6:社団法人有機合成化学協会、「有機化合物辞典」、株式会社講談社、1985年(昭和60年)11月1日、252、253、261、262、438、882ページ
甲7-1:特許庁、「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第17版〕」、社団法人発明協会、2008年(平成20年)5月30日、79~83ページ
甲7-2:吉藤耕朔、「特許法概説〔第13版〕」、株式会社有斐閣、1998年(平成10年)12月10日、80~84ページ
甲7-3:中山信弘、「注解特許法〔第三版〕【上巻】」、株式会社青林書院、平成13年7月10日、234~240ページ
甲8-1:国際公開第2014/197415号
甲8-2:特表2016-529335号公報
甲9:特開2005-194295号公報
第4 当審の判断
1 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について
(1)引用文献の記載、及び引用発明
ア 甲1-1
甲1-1には次の記載がある。
(ア)4ページ
「
[図:0001400513000001.jpg]
」
(イ)5ページ
「
[図:0001400513000002.jpg]
」
(ウ)6ページ
「
[図:0001400513000003.jpg]
」
イ 甲1-3
甲1-3には、次の事項が記載されている(下線は、強調のため当審が付した。)。
「【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)、可塑剤(B)及び亜硫酸塩(C)を含有してなり、
可塑剤(B)は、(1)グリセリン(B1)と、(2)ジグリセリン及び/又はトリメチロールプロパン(B2)を含み、
ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対する可塑剤(B)の含有量が5~50重量部であり、
亜硫酸塩(C)が、亜硫酸アルカリ金属塩であり、
可塑剤(B)に対する亜硫酸塩(C)の含有割合(C/B:重量比)が0.02を越えて0.35以下である、水溶性フィルム。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、アニオン性基変性量1~10モル%のアニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1記載の水溶性フィルム。
【請求項3】
アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項2記載の水溶性フィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも称する)系樹脂を主成分とする水溶性フィルムに関し、さらに詳しくは、製膜時の着色が少なく、かつ薬剤と接触しても経時的な着色が少ない水溶性フィルムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、製膜時の着色が少なく、かつ、薬剤と接触しても経時的な着色が少ない、PVA系樹脂を主成分とする水溶性フィルムを提供することにある。」
「【0039】
本発明においては、少なくとも特定の2種類の可塑剤(B)を併用することが必要である。可塑剤が1種類の場合、フィルムの製膜直後から亜硫酸塩がフィルム表面に析出したり、フィルムの強度が低下するなどの不都合が生じる。
【0040】
本発明で用いる可塑剤(B)としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、N-メチルピロリドン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、還元麦芽糖水あめ類、還元乳糖、還元水あめ(還元澱粉糖化物)等も挙げられるが、本発明では特に、少なくとも
(1)グリセリン(B1)と、
(2)ジグリセリン及び/又はトリメチロールプロパン(B2)を含んでなることが必要である。
【0042】
上記可塑剤(B1)及び可塑剤(B2)を含んでなる可塑剤(B)においては、B1及びB2の含有割合(B2/B1;重量比)が15/85~85/15であることが好ましく、特には20/80~80/20、更には25/75~75/25であることが好ましい。該含有割合が15/85未満では耐ブロッキング性が低下する傾向にあり、一方、85/15を越えると経時的柔軟性が低下する傾向がある。」
上記記載から、特に【請求項1】~【請求項3】の記載に着目すると、甲1-3には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリビニルアルコール系樹脂(A)、可塑剤(B)及び亜硫酸塩(C)を含有してなり、
可塑剤(B)は、(1)グリセリン(B1)と、(2)ジグリセリン及び/又はトリメチロールプロパン(B2)を含み、
ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対する可塑剤(B)の含有量が5~50重量部であり、
亜硫酸塩(C)が、亜硫酸アルカリ金属塩であり、
可塑剤(B)に対する亜硫酸塩(C)の含有割合(C/B:重量比)が0.02を越えて0.35以下であり、
ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、アニオン性基変性量1~10モル%のアニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂であり、
アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂である、水溶性フィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ポリビニルアルコール系樹脂(A)」は本件発明1の「ポリビニルアルコール系樹脂(A)」に相当し、以下同様に、「可塑剤(B)」は「可塑剤(B)」に、「水溶性フィルム」は「水溶性フィルム」に、それぞれ相当する。
甲1発明において、「ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、アニオン性基変性量1~10モル%のアニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂であり、アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂である」ことは、本件発明1において、「上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有」することに相当する。
グリセリンの融点は17.8℃、ソルビトールの融点は95℃であるから、甲1発明の「可塑剤(B)は、(1)グリセリン(B1)と、(2)ジグリセリン及び/又はトリメチロールプロパン(B2)を含」むことと、本件発明1の「上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5であ」ることとは、可塑剤(B)が、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有する限りで一致する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有する水溶性フィルム。
[相違点1-1]
可塑剤(B)が、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有することに関して、本件発明1は「上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5であ」るのに対して、甲1発明は「可塑剤(B)は、(1)グリセリン(B1)と、(2)ジグリセリン及び/又はトリメチロールプロパン(B2)を含」む点。
[相違点1-2]
本件発明1は、「23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度140℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X1)が11.0N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しない」のに対して、甲1発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
相違点1-2について検討するに、相違点1-2は実質的な相違点である。
また、相違点1-2に係る本件発明1の構成について、甲1-3や他の証拠には記載も示唆もされておらず、また優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有する水溶性フィルム。
[相違点2-1]
可塑剤(B)が、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有することに関して、本件発明2は「上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5であ」るのに対して、甲1発明は「可塑剤(B)は、(1)グリセリン(B1)と、(2)ジグリセリン及び/又はトリメチロールプロパン(B2)を含」む点。
[相違点2-2]
本件発明2は、「23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度145℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X2)が11.5N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しない」のに対して、甲1発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
相違点2-2について検討するに、相違点2-2に係る本件発明2の構成について、甲1-3や他の証拠には記載も示唆もされておらず、また優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、甲1発明において、相違点2-2に係る本件発明2の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明3~7について
本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)、(3)で検討したのと同じ理由により、本件発明3、5~7は、甲1-3に記載された発明ではなく、また、本件発明3~7は、当業者が甲1-3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立人の主張について
申立人は、甲1-1の記載に基づいて、甲1-3の実施例1(【0071】)における「トリメチロールプロパン」を「ソルビトール」に替えたものを甲1-1発明として認定した上で、本件発明1と甲1-1発明は化学的構成が共通する以上、化学的物性は同じになる旨を主張している(特許異議申立書15ページ16行~21ページ8行)。
まず、甲1-1に、「例えば、実施例1におけるグリセリン(B1)25重量部とトリメチロールプロパン(B2)12重量部との組み合わせを、グリセリン25重量部とソルビトール12重量部との組み合わせに変更した場合、得られた水溶性フィルムには、亜硫酸ソーダやソルビトールの析出が観察され、外観の良好なフィルムが得られませんでした。かかる結果からも、本願発明における特定可塑剤の2種(B1、B2)組み合わせに特徴があることが充分に理解できます。」(甲1-1の5ページ末行~6ページ5行)と記載されていることを踏まえると、甲1-3の実施例1における「トリメチロールプロパン」を「ソルビトール」に替えることには阻害要因がある。
また、仮に、申立人が主張するように、甲1-3の実施例1の「トリメチロールプロパン」を「ソルビトール」に替えたものを甲1-1発明としたとしても、「多価アルコール(b2)に対する多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)」は0.48(=12/25)であり、本件発明1と申立人が認定した甲1-1発明は上記(2)で示した相違点1-1に係る化学的構成が異なる。
また、仮に、申立人が主張するように本件発明1と甲1-1発明の化学的構成が共通したとしても、本件特許明細書の【0088】に、「かくして得られるPVA系フィルム(水溶性フィルム)は、上記の破断強度(X1)及び破断強度(X2)の少なくとも一方を満足することが重要であり、かかる破断強度を上記範囲にコントロールするには、例えば、(1)可塑剤(B)の全量を比較的少なめにして可塑剤(b2)の割合を多くする方法、(2)可塑剤(B)の全量を比較的多めにして可塑剤(b1)の割合を多くする方法、等が挙げられる。中でも水溶性フィルムの諸物性を保持したまま上記物性をコントロールできる点で上記(2)の方法が好ましい。」と記載されているように、含まれる化学物質が同じであっても、その含有量や含有割合によって破断強度(X1)、(X2)は変わり得るため、本件発明1と甲1-1発明は上記(2)で示した相違点2-1に係る化学的物性が同じになるとは限らない。
そして、本件発明2と甲1-1発明との対比においても上記のことがいえる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
2 申立理由3(拡大先願1)について
(1)甲4-1の記載、及び先願発明1
甲4-1(甲4-1の翻訳は、甲4-1の国内公表に係る甲4-2による。)には次の記載がある。
ア 明細書
「【0023】
・・・本明細書で使用するとき、特に指定のない限り、「PHR」という用語は、水溶性フィルム内の水溶性ポリマー(または樹脂;PVOHまたはそうでなければ)の百部当たりの、同定された要素の組成の部数を指すことを意図する。」
「【0049】
別例では、グリセロール、ソルビトール、及びトリメチロールプロパンの組み合わせの中で、可塑剤の総量は、約25重量%~約50重量%、または約30重量%~約45重量%、または約35重量%~約45重量%、または約40重量%~約45重量%、例えば、42重量%の範囲内であり得る。これらの範囲は、概して、可塑剤のうちの2つ(ソルビトール及びTMP)(グリセロール)が室温であり、1つ(グリセロール)が液体であるため、より高い。任意に、グリセロールは、約5重量%~約40重量%、または10重量%~約35重量%、または約15重量%~約30重量%、例えば、約20重量%の量で使用することができる。任意に、ソルビトールは、約1重量%~約20重量%、または約3重量%~約20重量%、または約5重量%~約15重量%、例えば、10重量%の量で使用することができる。任意に、トリメチロールプロパンは、約1重量%~約25重量%、または約2重量%~約20重量%、または約5重量%~約15重量%、例えば、約10重量%の量で使用することができる。
【0050】
別の態様では、可塑剤の量は、PHRにおいて特徴付けられ得る。それ故に、例えば、グリセロール、ソルビトール、及びトリメチロールプロパン(TMP)の組み合わせで、可塑剤の総量は、例えば、少なくとも30PHR、または少なくとも35PHRであり得る。可塑剤の総量は、例えば、最大で40PHRまたは45PHRまたは50PHRであり得る。可塑剤の総量は、例えば、30~50PHR、約32.5PH~約42.5PHR、または35~45PHR、または35~40PHRの範囲内、または30PHR超及び45PHR未満、または40PHR~50PHRであり得る。可塑剤の総量は、37.5PHRであり得る。」
「【0077】
残留水分
水溶性フィルムは、カールフィッシャー滴定によって測定される、少なくとも4重量%、例えば、約4~約10重量%の範囲内の残留含水量をさらに有し得る。」
「【0127】
パケット
本フィルムは、洗浄活性剤を含む洗濯組成物を含有し、それによりパウチを形成するパケットを作成するために有用である。洗浄活性剤は、粉体、ゲル、ペースト、液体、錠剤、またはそれらの任意の組み合わせのような任意の形態をとり得る。フィルムはまた、改善された湿式処理及び低温水残留が所望される任意の他の適用のためにも有用である。フィルムは、パウチ及び/またはパケットの少なくとも1つの側壁、任意にパウチ及び/またはパケット全体、好ましくは、少なくとも1つの側壁の外壁を形成する。」
「【0129】
本開示のパウチは、少なくとも1つの密封された区画を備え得る。そのため、パウチは、単一の区画または複数の区画を備え得る。水溶性パウチは、界面に封止された2層の水溶性ポリマーフィルムから、またはそれ自体の上に折り重ねられて密封された単一のフィルムによって形成され得る。フィルムのうちの1つまたはその両方とも、上述のPVOHフィルムを含む。フィルムは、水性環境への放出のための任意の所望の組成物を含む内部パウチ容器容積を画定する。組成物は、特に限定されず、例えば、以下に記載される様々な洗浄組成物のうちのいずれかを含む。複数の区画を含む実施形態では、各区画は、同一の及び/または異なる組成物を収容し得る。一方、組成物は、液体、固体、及びそれらの組み合わせ(例えば液体中に懸濁された固体)を含むが、これらには限定されない、任意の好適な形態をとり得る。いくつかの実施形態では、パウチは、第1、第2、及び第3の区画を備え、その各々は、異なる第1、第2、及び第3の組成物をそれぞれ収容する。液体洗剤が、具体的には、企図される。」
「【0165】
溶媒系
本組成物における溶媒系は、水単独または水と有機溶媒の混合物を含む溶媒系であり得る。好ましい有機溶媒は、1,2-プロパンジオール、エタノール、グリセロール、ジプロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及びそれらの混合物を含む。他の低級アルコール、C1~C4アルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン及びトリエタノールアミンも、使用することができる。溶媒系は、例えば、本開示の無水固体実施形態から存在し得ないが、より典型的には、約0.1%~約98%、好ましくは少なくとも約1%~約50%、さらに通常、約5%~約25%の範囲内のレベルで存在する。典型的には、本組成物は、特に液体の形態であるとき、組成物の重量で、50%未満の水、好ましくは約0.1%~約20%の水、またはより好ましくは約0.5%~約15%、または約5%~約12%の水を含む。」
「【0167】
有用な組成物のpHは、約2~約12、約4~約12、約5.5~約9.5、約6~約8.5、または約6.5~約8.2であり得る。洗濯洗剤組成物は、約6~約10、約6.5~約8.5、約7~約7.5、または約8~約10のpHを有し得る。自動食器洗浄組成物は、約8~約12のpHを有し得る。洗濯洗剤添加剤組成物は、約4~約8のpHを有し得る。布地増強剤は、約2または4~約8、または約2~約4、または約2.5~約3.5、または約2.7~約3.3のpHを有し得る。」
「【0231】
以下の実施例では、PVOH樹脂PVOH-1~PVOH-6は、以下の表2に記載される特定を有する。
[図:0001400513000004.jpg]
」
「【0261】
実施例4
実施例4-1~4-18によるフィルムは、グリセロール、ソルビトール、及び少量のプロピレングリコールを含むTMPの組み合わせのための様々な範囲の可塑剤タイプ及び濃度の例として、表10及び表11中に提供される。実施例は、他の添加剤を含む、ある種のポリビニルアルコールコポリマー樹脂製剤において提供されるが、様々な可塑剤製剤は、本明細書の開示と一致する代替のフィルム製剤に適用できる。例えば、可塑剤レベルがアニオン性ポリビニルアルコールコポリマーに適用できることが企図される。非樹脂成分は、PHRの単位において記載される。
[図:0001400513000005.jpg]
[図:0001400513000006.jpg]
」
イ 特許請求の範囲
「【請求項26】
水溶性ポリビニルアルコールと、グリセロール、ソルビトール、及びトリメチロールプロパンを含む可塑剤ブレンドとの混合物を含む、水溶性フィルムであって、
(i)前記可塑剤ブレンドが、30PHR超であり、45PHR未満の量で存在するか、または
(ii)前記可塑剤ブレンドが、約40PHR~50PHRの量で存在し、かつ個々の成分が、
22.5PHR<グリセロール<23.3PHR、
10.3PHR<ソルビトール<15.0PHR、及び
7.5PHR<トリメチロールプロパン<10.2PHRである、水溶性フィルム。
・・・
【請求項31】
前記水溶性ポリビニルアルコール樹脂が、アニオン性基で変性されたポリビニルアルコールを含む、請求項26~30のいずれか1項に記載の水溶性フィルム。
32 前記アニオン性モノマーが、マレイン酸モノメチルを含む、請求項31に記載の水溶性フィルム。」
上記記載から、特に実施例4-3、4-5、4-14、4-17に着目して、請求項26の記載に沿って整理すると、甲4-1には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。
「マレイン酸コポリマーである水溶性ポリビニルアルコールと、グリセロール、ソルビトール、及びトリメチロールプロパンを含む可塑剤ブレンドとの混合物を含む、水溶性フィルムであって、
前記可塑剤ブレンドが、
(実施例4-3)グリセロール可塑剤15.0PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤10.0PHR、トリメチロールプロパン可塑剤5.0PHR、
(実施例4-5)グリセロール可塑剤18.8PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤12.5PHR、トリメチロールプロパン可塑剤6.3PHR、
(実施例4-14)グリセロール可塑剤19.8PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤10.4PHR、トリメチロールプロパン可塑剤7.3PHR、
又は(実施例4-17)グリセロール可塑剤22.5PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤15.0PHR、トリメチロールプロパン可塑剤7.5PHR
である、水溶性フィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「マレイン酸コポリマーである水溶性ポリビニルアルコール」は本件発明1の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有」する「ポリビニルアルコール系樹脂(A)」に相当し、以下同様に、「可塑剤ブレンド」は「可塑剤(B)」に、「水溶性フィルム」は「水溶性フィルム」に、それぞれ相当する。
グリセロールの融点は17.8℃、プロピレングリコールの融点は-59℃、ソルビトールの融点は95℃、トリメチロールプロパンの融点は58℃であるから、甲4発明の「前記可塑剤ブレンドが、(実施例4-3)グリセロール可塑剤15.0PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤10.0PHR、トリメチロールプロパン可塑剤5.0PHR、(実施例4-5)グリセロール可塑剤18.8PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤12.5PHR、トリメチロールプロパン可塑剤6.3PHR、(実施例4-14)グリセロール可塑剤19.8PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤10.4PHR、トリメチロールプロパン可塑剤7.3PHR、又は(実施例4-17)グリセロール可塑剤22.5PHR、プロピレングリコール可塑剤0.4PHR、ソルビトール可塑剤15.0PHR、トリメチロールプロパン可塑剤7.5PHRである」ことは、本件発明1の「上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5であ」ることに相当する。
以上のことから、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3]
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5である水溶性フィルム。
[相違点3]
本件発明1は、「23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度140℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X1)が11.0N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しない」のに対して、甲4発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
甲4-1や他の証拠を参照しても、甲4発明が相違点3に係る本件発明1の構成となるとはいえず、相違点3は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲4発明と同一でない。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点4]
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5である水溶性フィルム。
[相違点4]
本件発明2は、「23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度145℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X2)が11.5N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しない」のに対して、甲4発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
甲4-1や他の証拠を参照しても、甲4発明が相違点4に係る本件発明2の構成となるとはいえず、相違点4は実質的な相違点である。
したがって、本件発明2は、甲4発明と同一でない。
(4)本件発明3~7について
本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)、(3)で検討したのと同じ理由により、本件発明3~7は、甲4-1に記載された発明と同一でない。
3 申立理由4(拡大先願2)について
(1)先願発明2
甲5-1(甲5-1の翻訳は、甲5-1の国内公表に係る甲5-2による。)の【0197】の記載から、特に実施例4のフィルム1、5、9に着目すると、甲5-1には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリビニルアルコールコポリマーのブレンドと、グリセリン、ソルビトール及びジプロピレングリコールを含む可塑剤とをベースにした水溶性フィルムであって、
ポリビニルアルコールコポリマーのブレンドは、マレイン酸モノメチル(ナトリウム塩)コモノマー(MMM)を含む第1の部分的に加水分解したPVOHコポリマーと、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(ナトリウム塩)コモノマー(AMPS)を含む第2の部分的に加水分解したPVOHコポリマーとの80重量%/20重量%のブレンドであり、
可塑剤が、
(フィルム1)グリセリン可塑剤8.6phr、ソルビトール可塑剤17.0phr、ジプロピレングリコール可塑剤4.0phr、
(フィルム5)グリセリン可塑剤10.8phr、ソルビトール可塑剤21.3phr、ジプロピレングリコール可塑剤5.0phr、
又は(フィルム9)グリセリン可塑剤12.9phr、ソルビトール可塑剤25.5phr、ジプロピレングリコール可塑剤6.0phr
である、水溶性フィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「マレイン酸モノメチル(ナトリウム塩)コモノマー(MMM)を含む第1の部分的に加水分解したPVOHコポリマーと、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(ナトリウム塩)コモノマー(AMPS)を含む第2の部分的に加水分解したPVOHコポリマーとの80重量%/20重量%のブレンドであ」る「ポリビニルアルコールコポリマーのブレンド」は本件発明1の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有」する「ポリビニルアルコール系樹脂(A)」に相当し、同様に、「水溶性フィルム」は「水溶性フィルム」に相当する。
グリセリンの融点は17.8℃、ソルビトールの融点は95℃、ジプロピレングリコールの融点は-40℃であるから、甲5発明の「可塑剤が、(フィルム1)グリセリン可塑剤8.6phr、ソルビトール可塑剤17.0phr、ジプロピレングリコール可塑剤4.0phr、(フィルム5)グリセリン可塑剤10.8phr、ソルビトール可塑剤21.3phr、ジプロピレングリコール可塑剤5.0phr、又は(フィルム9)グリセリン可塑剤12.9phr、ソルビトール可塑剤25.5phr、ジプロピレングリコール可塑剤6.0phrである」ことは、本件発明1の「上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5であ」ることに相当する。
以上のことから、本件発明1と甲5発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点5]
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5である水溶性フィルム。
[相違点5]
本件発明1は、「23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度140℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X1)が11.0N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しない」のに対して、甲5発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
甲5-1や他の証拠を参照しても、甲5発明が相違点5に係る本件発明1の構成となるとはいえず、相違点5は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲5発明と同一でない。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲5発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点6]
ポリビニルアルコール系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、上記可塑剤(B)が、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)を含有し、上記多価アルコール(b2)に対する上記多価アルコール(b1)の含有重量割合(b1/b2)が0.5~5である水溶性フィルム。
[相違点6]
本件発明2は、「23℃、40%RHの環境下に1日調湿した2枚の水溶性フィルムを重ね合わせ、温度145℃、圧力0.65MPa、時間1.5秒、シール幅1.5mmの条件で1回ヒートシールした後、23℃、40%RHの環境下に2時間放置したときに、ヒートシール部分を剥離した時の破断強度(X2)が11.5N/15mm以上で、かつ、かかる剥離時に界面剥離しない」のに対して、甲5発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
甲5-1や他の証拠を参照しても、甲5発明が相違点6に係る本件発明2の構成となるとはいえず、相違点6は実質的な相違点である。
したがって、本件発明2は、甲5発明と同一でない。
(4)本件発明3~7について
本件発明3~7は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)、(3)で検討したのと同じ理由により、本件発明3~7は、甲5-1に記載された発明と同一でない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700415