特許異議申立
2021-700824
繊維柔軟剤組成物
- 審判番号
- 2021-700824
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-095118
- 登録番号
- 6833248
- 請求日
- 2021年08月23日
- 審決日
- 2022年09月06日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【権利者代理人】渡部 崇
- 【権利者代理人】塩尻 一尋
- 【異議申立人】田中 和幸
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 杉江 渉
- 分類
- P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.536-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6833248号発明「繊維柔軟剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6833248号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第6833248号の請求項1、2、4、5、7~12に係る特許を維持する。
特許第6833248号の請求項3、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6833248号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成27年2月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成26年2月25日、同年2月25日、同年4月30日、同年4月30日、同年8月8日、同年8月8日、同年8月8日、同年8月8日、平成27年2月23日、同年2月23日 韓国)を国際出願日とする特願2016-554281号の一部を、令和1年5月21日に新たな特許出願としたものであって、令和3年2月5日に特許権の設定登録(特許掲載公報令和3年2月24日発行)がされ、その後、その特許について、令和3年8月23日に特許異議申立人田中和幸(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和3年12月24日付けで取消理由が通知され、令和4年4月27日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、この本件訂正請求について申立人に意見を求めたが、意見書は提出されなかった。
第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6833248号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「グルコース系ポリマー及びアクリル系ポリマーよりなる群から選択された1つ以上である陽イオン性ポリマー」と記載されているのを、「グルコース系ポリマー及びアクリルコポリマーよりなる群から選択された1つ以上である陽イオン性ポリマー」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「陽イオン性ポリマーと;有機酸と;香料とを含む」と記載されているのを、「陽イオン性ポリマーと;有機酸と;香料とを含み、有機酸は繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%で含まれる、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
2.訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~12が、それぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(2)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「アクリル系ポリマー」について、「アクリルコポリマー」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項1は、本件特許の願書に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の請求項3に、「アクリル系ポリマーは、アクリル酸ポリマー、アクリルコポリマー及びアクリル化シリコンよりなる群から選択された1つ以上である」と記載されており、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の有機酸の含有量について、「繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%で含まれる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項2は、本件特許明細書等の【0027】に「前記有機酸の含量は、特に制限されず、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して1~20重量%、5~15重量%または8~12重量%で含まれることができる。」と記載されており、下限を「5重量%」、上限を「20重量%」としたものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は、それぞれ本件訂正前の請求項3及び6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3及び4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなはない。
3.本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1、2、4、5、7~12に係る発明(以下「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、7~12に記載された、次のとおりのものである。
【請求項1】
陽イオン界面活性剤を含まない、グルコース系ポリマー及びアクリルコポリマーよりなる群から選択された1つ以上である陽イオン性ポリマーと;有機酸と;香料とを含み、有機酸は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%で含まれる、繊維柔軟剤組成物。
【請求項2】
グルコース系ポリマーは、ポリクオタニウム、グア、スターチ及びローカストビーン系よりなる群から選択された1つ以上である、請求項1に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項4】
陽イオン性ポリマーは、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して0.1~3重量%で含まれる、請求項1に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項5】
有機酸は、クエン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸及び乳酸よりなる群から選択された1つ以上である、請求項1に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項7】
香料は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して0.1~3重量%で含まれる、請求項1に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項8】
花発酵酢をさらに含む、請求項1に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項9】
花発酵酢は、桃の花、杏の花、アカシアの花、カモミールの花、ジャスミンの花及び蓮の花よりなるグループから選択された1つ以上の花びらを水洗及び乾燥し、酢及び糖水と混合し、3日~7日間発酵させて得たものである、請求項8に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項10】
花発酵酢は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して0.001~10重量%で含まれる、請求項9に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項11】
酢をさらに含む、請求項1に記載の繊維柔軟剤組成物。
【請求項12】
酢は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して0.1~10重量%で含まれる、請求項11に記載の繊維柔軟剤組成物。
第4 特許異議の申立てについての判断
1.取消理由の概要
(1)明確性要件及び実施可能要件に係る理由
請求項3の「アクリル酸ポリマー」は、一般的に陰イオン性の官能基を有するポリマーであるから、「陽イオン性ポリマー」とする記載は、明確でない。また、発明の詳細な説明には、「アクリル酸ポリマー」であって「陽イオンポリマー」であるものの具体例が記載されておらず、当業者が「アクリル酸ポリマー」を選択して請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
請求項3の「アクリル化シリコン」が、どのような化合物を指すのか明確でない。また、発明の詳細な説明には、当該「アクリル化シリコン」の具体的な化合物名も記載されておらず、当業者が「アクリル化シリコン」を選択して請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(2)新規性及び進歩性に係る理由
本件特許の請求項1、2、4~7に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて利用可能になった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、この発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
<引用文献等>
甲第1号証:国際公開第2013/036662号(以下「甲1」という。)
2.取消理由についての判断
(1)明確性要件及び実施可能要件に係る取消理由について
訂正前の請求項3の、「アクリル系ポリマーは、アクリル酸ポリマー、アクリルコポリマー及びアクリル化シリコンよりなる群より選択された1つ以上である」との記載のうち、「アクリル酸ポリマー」及び「アクリル化シリコン」の記載に不備があったが、本件訂正により、請求項3が削除され、請求項1の「アクリル系ポリマー」は、「アクリルコポリマー」に限定された。
これにより、明確性要件及び実施可能要件に係る取消理由は、理由のないものとなった。
(2)新規性及び進歩性に係る取消理由について
ア 甲1には、対応する公表特許公報(甲2:特表2014-529693号公報)を参考に日本語に訳すと、次の事項が記載されている。
「[0009] 1つの態様において、固体の繊維処理組成物(「STTC」)を提供する。STTCは核、核を少なくとも部分的に取り囲むコーティング、およびコーティングの外側表面上で部分的または完全に露出されるようにコーティングと物理的に結合されている流動性補助剤を含む。核は、水溶性担体であり得る担体を含むこともできる。核は水溶性であり得る。コーティングは、水溶性ポリマー、着色剤、および着色剤安定化剤を含み得る。コーティングは、香料(本明細書において交換可能かつ等価に芳香剤と呼んでもよい)も含み得る。流動性補助剤は布地柔軟剤を含み得る。」
「[0013] さらなる態様は、繊維にSTTCで香りをつける方法である。
[0014] 別の態様は、繊維をSTTCで柔軟化する方法である。
[0015] 別の態様は、繊維にSTTCで香りをつける、例えば、繊維に芳香剤を送達する方法である。
[0016] さらに別の態様は、繊維にSTTCで香りをつけ、繊維を柔軟化する方法である。
(中略)
[0018]さらなる態様は、繊維をクリーニング剤組成物でクリーニングする方法である。」
「[0038] 繊維を処理する行為は、例えば:i)香料を繊維に適用すること;ii)繊維を柔軟化すること;iii)香料を繊維に適用し、繊維を柔軟化すること;iv)繊維をクリーニングすること;v)繊維を乾燥中の静電気蓄積に対して抵抗性にすること;もしくはvi)繊維をクリーニングし、香料を繊維に適用し、繊維を柔軟化し、繊維を乾燥中の静電気蓄積に対して抵抗性にすること;またはそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数を意味し得る。」
「考察
固体の繊維処理組成物
[0045] 1つの態様において、固体の繊維処理組成物(「STTC」)を提供する。STTCは、例えば、繊維を処理するために用いることができる。」
「[0144] 1つの態様において、STTCは香料を含む。」
「[0148] 存在する場合、香料は、例えば、STTCの重量に基づき、約0.1重量%から約10重量%の量で含まれ得る。香料は、例えば、STTCの重量に基づき、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、または約9.0重量%の量で含まれ得る。
[0149] 香料は、例えば、STTCの重量に基づき、約0.1重量%から約10重量%、約0.1重量%から約9重量%、約0.1重量%から約8重量%、約0.1重量%から約7重量%、約0.1重量%から約6重量%、約0.1重量%から約5重量%、約0.1重量%から約4重量%、約0.1重量%から約3重量%、約0.1重量%から約2重量%、または約0.1重量%から約1重量%の量で含まれ得る。
[0150] 香料は、例えば、STTCの重量に基づき、約1重量%から約10重量%、約2重量%から約10重量%、約3重量%から約10重量%、約4重量%から約10重量%、約5重量%から約10重量%、約6重量%から約10重量%、約7重量%から約10重量%、約8重量%から約10重量%、または約9重量%から約10重量%の量で含まれ得る。
[0151] 香料は、例えば、STTCの重量に基づき、約4重量%から約6重量%、約3重量%から約7重量%、約2重量%から約8重量%、または約1重量%から約9重量%の量で含まれ得る。」
「[0213] 着色剤安定化剤は、個別に、例えば、STTC、組成物、またはコーティングの重量に基づき、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、または約2.0重量%の量で存在し得る。
[0214] 着色剤安定化剤は、STTC、組成物、またはコーティング中に、個別に、例えば、STTC、組成物、またはコーティングの重量に基づき、約0.1重量%から約1.9重量%、約0.1重量%から約1.8重量%、約0.1重量%から約1.7重量%、約0.1重量%から約1.6重量%、約0.1重量%から約1.5重量%、約0.1重量%から約1.4重量%、約0.1重量%から約1.3重量%、約0.1重量%から約1.2重量%、約0.1重量%から約1.1重量%、約0.1重量%から約1.0重量%、約0.1重量%から約0.9重量%、約0.1重量%から約0.8重量%、約0.1重量%から約0.7重量%、約0.1重量%から約0.6重量%、約0.1重量%から約0.5重量%、約0.1重量%から約0.4重量%、約0.1重量%から約0.3重量%、または約0.1重量%から約0.2重量%の量で存在し得る。」
「流動性補助剤
[0221] 1つの態様において、流動性補助剤は布地柔軟剤を含む。」
「[0225] さらなる態様において、布地柔軟剤はポリシロキサン、繊維柔軟化クレー、カチオンポリマー、またはそれらの任意の組み合わせである。」
「[0239] 本発明のカチオンポリマーは、アミン塩または4級アンモニウム塩であり得る。好ましくは、カチオンポリマーは4級アンモニウム塩である。これらには、多糖、ポリクオタニウム-10、UCAREポリマーJR-400、UCAREポリマーLR-400、デンプンなどの天然ポリマーのカチオン誘導体およびカチオンビニルピリジンまたは塩化ビニルピリジニウムのポリマーおよびコポリマーなどの特定のカチオン合成ポリマーとのそれらのコポリマーが含まれる。」
「処理した繊維
[0369] 本発明の1つの態様において、STTCまたはSWCCAまたはLTTCによって処理した繊維を提供する。
[0370] 繊維を処理する行為は、例えば:i)香料を繊維に適用すること;ii)繊維を柔軟化すること;iii)香料を繊維に適用し、繊維を柔軟化すること;iv)繊維をクリーニングすること;v)繊維を乾燥中の静電気蓄積に対して抵抗性にすること;もしくはvi)繊維をクリーニングし、香料を繊維に適用し、繊維を柔軟化し、繊維を乾燥中の静電気蓄積に対して抵抗性にすること;またはそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数を意味し得る。」
「実施例2:香料および布地柔軟剤を含有する固体の繊維処理組成物の生成
[0378] 13gのポリエチレングリコール8000(「PEG 8000」)を、撹拌装置を備えた加熱容器内で融解させた。融解したPEG 8000に、0.25gのクエン酸、2.40gの香料(High Five ACM 190991(Firmenich))、および0.00650gのMilliken Liquitint(登録商標) Royal MC着色剤を、撹拌しながら加え、均質に混合された融解コーティング混合物を生成した。
[0379] 融解コーティング混合物を79.354gのプレッツェルソルト(Morton)顆粒上に注いだ。塩顆粒および融解コーティング混合物を撹拌し、それによりコーティングした塩顆粒を得た。
[0380] 次いで、コーティングした塩顆粒を、コーティングが粘着性のままであるように冷却し、2.75gの硫酸ナトリウムおよび2.24gのカチオンポリマーUCARE LR-400、カチオンHECポリマーをコーティングした顆粒の外部コーティング表面に適用して、固体の繊維処理組成物を得た。」
イ 甲1には、特に実施例2に着目すると、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「13gのポリエチレングリコール8000(「PEG 8000」)を、撹拌装置を備えた加熱容器内で融解させ、
融解したPEG 8000に、0.25gのクエン酸、2.40gの香料および0.00650gの着色剤を、撹拌しながら加え、均質に混合された融解コーティング混合物を生成し、
融解コーティング混合物を79.354gのプレッツェルソルト顆粒上に注ぎ、
塩顆粒および融解コーティング混合物を撹拌し、それによりコーティングした塩顆粒を得て、
次いで、コーティングした塩顆粒を、コーティングが粘着性のままであるように冷却し、2.75gの硫酸ナトリウムおよび2.24gのカチオンポリマーUCARE LR-400、カチオンHECポリマーをコーティングした顆粒の外部コーティング表面に適用して得た、固体の繊維処理組成物。」
ウ 本件発明1と、引用発明1とを対比する。
引用発明1の「カチオンポリマーUCARE LR-400、カチオンHECポリマー」は、本件発明1の「陽イオン性ポリマー」に相当し、以下、同様に、
引用発明1の「クエン酸」は本件発明1の「有機酸」に、
引用発明1の「香料」は本件発明1の「香料」に、
引用発明1の「固体の繊維処理組成物」は本件発明1の「繊維柔軟剤組成物」に、各々相当する。
また、引用発明1の「固体の繊維処理組成物」には、「陽イオン界面活性剤」が含まれないないことは明らかである。
そうすると、両者は、
<一致点>
「陽イオン界面活性剤を含まない、陽イオン性ポリマーと、有機酸と、香料とを含む繊維柔軟剤組成物。」で一致し、次の相違点1及び相違点2で相違する。
<相違点1>
陽イオン性ポリマーに関し、本件発明1が「グルコース系ポリマー及びアクリルコポリマーよりなる群から選択された1つ以上である」と特定しているのに対し、引用発明1は「カチオンポリマーUCARE LR-400、カチオンHECポリマー」であり、当該ポリマーは本件発明1に特定された内容との異同が直接的には明らかでない点。
<相違点2>
有機酸の含有率に関し、本件発明1が「有機酸は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%で含まれる」のに対し、引用発明1は繊維処理組成物の内、「0.25gのクエン酸」を含む点。
エ 事案に鑑み、上記相違点2から検討する。
本件発明1の「有機酸は繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%で含まれる」ことの技術的意義について、本件特許の発明の詳細な説明には、「本発明において有機酸は、脱臭剤及び洗剤残渣の除去の役目を行う。また、前記有機酸は、柔軟剤本然の(布を柔らかくし、触感を良好にする)役目を行う。」(【0026】)、「前記有機酸の含量は、特に制限されず、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して1~20重量%、5~15重量%または8~12重量%で含まれることができる。前記範囲内で優れた洗濯不溶分成分の洗剤残渣の除去効果を示すことができる。有機酸の含量が20重量%以上でも、優れた洗濯不溶分成分の洗剤残渣の除去効果を示すが、有機酸の含量が高くなるほど、すすぎ水のpHが低くなるため、20重量%以下で使用したことが良い。」(【0028】)と記載されている。
一方、引用発明1は、繊維処理組成物の内、「0.25gのクエン酸」を含むものである。繊維処理組成物の総量に対し「0.25gのクエン酸」は、「0.25%」の含有率に相当するが、この含有率は本件発明1の「5~20重量%」の範囲から外れている。
よって、上記相違点2は実質的なものである。
オ 甲1には、引用発明1の繊維処理組成物にクエン酸を添加することについて、「1つの態様において、着色剤安定化剤はギ酸、クエン酸、乳酸、酢酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、それらの任意の誘導体、またはそれらの任意の組み合わせである。1つの態様において、着色剤安定化剤はクエン酸である。」([0205]、[0206])、「着色剤安定化剤はSTTC、組成物、またはコーティング中に、個別に、例えば、STTC、組成物、またはコーティングの重量に基づき、約0.1重量%から約2.0重量%の量で存在し得る。」([0212])と記載されている。この記載からすると、引用発明1のクエン酸の含有率を、着色剤安定化剤として約0.1重量%から約2.0重量%の範囲で調整し得るが、この範囲も、本件発明1の「5~20重量%」の範囲から外れており、本件発明1のように、有機酸を「5~20重量%」の範囲で含むようにする動機付けはない。
そうすると、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明1に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
カ よって、本件発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明1ではなく、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明2、4、5、7は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明1と同様に、本件発明2、4、5、7も、引用発明1ではなく、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ 以上より、新規性及び進歩性に係る取消理由には、理由がない。
3.取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
ア 進歩性
本件発明1、2、4、5、7、11、12は、甲第5号証(“日常の愛用品*パックスナチュロン”、[online]、2012年7月24日、OL主婦の小さな幸せ、[2021年7月12日検索]、インターネット<URL:https://blog.goo.ne.jp/win022403/e/ebf27e73247b2eb0f76e451414613133> 以下「甲5」という。)に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。(申立書38~45頁)
イ 記載不備
(ア)本件発明1に従属する本件発明11、12の繊維柔軟剤組成物に含まれる有機酸について、本件発明1で規定する有機酸であるのか、本件発明11、12に規定する酢に由来する有機酸であるのかが判然とせず、本件発明11、12における「有機酸」の範囲が不明確である。(申立書45~46頁)
(イ)本件発明1に従属する本件発明8~10における「有機酸」が、本件発明1で規定する「有機酸」に由来するのか、花発酵酢に由来する「有機酸」であるのか区別することができず、本件発明8~10における「有機酸」の範囲が不明確である。(申立書46頁)
(ウ)酢にはクエン酸、酢酸などの有機酸が含まれるため、本件発明の繊維柔軟剤組成物に酢を加える場合に、有機酸の濃度をどのように考えるべきか、発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、発明の詳細な説明では、本件発明11、12をどのように調製すべきかを十分に記載しておらず、当業者が本件発明11、12を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。(申立書47頁)
(エ)本件発明1の繊維柔軟剤組成物に花発酵酢を加えて、本件発明8~10を調製する場合に、有機酸の濃度をどのように考慮して花発酵酢を加えるべきかについて、発明の詳細な説明に十分記載されておらず、当業者が本件発明8~10を実施できる程度に十分かつ明確に記載しているとは認められない。(申立書47~48頁)
(2)上記申立理由についての判断
ア 甲5を主引用例とする進歩性について
(ア)甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認める。
「水、クエン酸、天然ガム、エチルアルコール、ヒノキチオール、香料、クエン酸Naを含み、これにクエン酸を大さじ1杯ほどプラスした、柔軟剤」
(イ)本件発明1と甲5発明を対比すると、次の相違点3、4で少なくとも相違する。
<相違点3>
本件発明1が「グルコース系ポリマー及びアクリルコポリマーよりなる群から選択された1つ以上である陽イオン性ポリマー」を含むのに対し、甲5発明は、このような陽イオン性ポリマーを含むか特定されていない点。
<相違点4>
本件発明1が「有機酸は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%で含まれる」のに対し、甲5発明は、クエン酸の含有量について特定されていない点。
(ウ)上記相違点3、4について検討すると、甲5発明において、「グルコース系ポリマー及びアクリルコポリマーよりなる群から選択された1つ以上である陽イオン性ポリマー」を含むようにする動機付けはないし、クエン酸の含有量について、「繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%で含まれる」ように調整する動機付けもないから、上記相違点3、4に係る本件発明1の構成は、甲5発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)同様に、本件発明2、4、5、7、11、12は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 記載不備について
(ア)本件発明11、12には、繊維柔軟剤組成物が「酢をさらに含」むこと、その含有率が「繊維柔軟剤組成物100重量%に対して0.1~10重量%で含まれる」ことが特定される。
酢は、水にクエン酸や酢酸等の有機酸を含んだものであることは技術常識であり、本件発明11、12の「酢」に含まれる有機酸が、本件発明1の「有機酸」に含まれることは明らかである。その量も、本件発明1の「有機酸は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%」の内に含まれることは明らかであり、本件発明11、12の記載は明確である。
また、酢の大部分は水であり、酢に由来する有機酸の量は、繊維柔軟剤組成物からみて微量であり、繊維柔軟剤組成物に酢を大量に配合することは想定され得ないから、仮に、本件発明11、12に規定される「酢」を本件発明12に規定される「0.1~10重量%」程度配合しても、本件発明1の「有機酸」の含有量である「繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%」に大きな影響を与えることはないといえる。
(イ)本件発明8~10には、繊維柔軟剤組成物が「花発酵酢をさらに含」むこと、「花発酵酢」は、花びらを「酢及び糖水と混合し、3日~7日間発酵させて得たもの」であること、その含有率が「繊維柔軟剤組成物100重量%に対して0.001~10重量%で含まれる」ことが特定される。
花発酵酢は、桃の花等の花びらを、酢及び糖水に混合し発酵させたものであるところ、酢が水にクエン酸や酢酸等の有機酸を含んだものであることは上述のとおりであり、本件発明8~10の「花発酵酢」の酢に含まれる有機酸が、本件発明1の「有機酸」に含まれることは明らかである。その量も、本件発明1の「有機酸は、繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%」の内に含まれることは明らかであり、本件発明8~10の記載は明確である。
また、上記(ア)で述べたように、酢に有機酸が含まれるものの、酢の大部分は水であり、花発酵酢に由来する有機酸の量は、繊維柔軟剤組成物からみて微量であり、繊維柔軟剤組成物に花発酵酢を大量に配合することは想定され得ないから、仮に、本件発明8~10に規定される「花発酵酢」を本件発明10に規定される「0.001~10重量%」程度配合しても、本件発明1の「有機酸」の含有量である「繊維柔軟剤組成物100重量%に対して5~20重量%」に大きな影響を与えることはないといえる。
ウ 以上より、甲5を主引用例とする進歩性及び記載不備に係る上記申立理由は、いずれも採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、2、4、5、7~12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできず、他に請求項1、2、4、5、7~12に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
また、本件訂正により、請求項3、6に係る特許は削除されたため、請求項3、6に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700824