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特許異議申立

2023-700519

洗浄剤組成物

審判番号
2023-700519
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-167363
登録番号
7178217
請求日
2023年05月18日
審決日
2024年09月10日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】小林製薬株式会社
  • 【権利者代理人】田中 順也
  • 【権利者代理人】水谷 馨也
  • 【権利者代理人】迫田 恭子
  • 【権利者代理人】福井 賢一
  • 【異議申立人】田中 和幸
審判長/審判官
  • 審判長 関根 裕
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 長谷川 真一
分類
P1652.161-YAA(C11D) / P1652.4 -YAA(C11D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条の2、特許法第39条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号、特許法第12条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7178217号発明「洗浄剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7178217号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4、5、6、7、8、9について訂正することを認める。 特許第7178217号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、平成30年9月6日の出願であって、令和4年11月16日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、令和5年5月18日に特許異議申立人 田中 和幸により請求項1、2及び5に対して特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年8月23日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年10月13日に意見書の提出を行い、当審は、同年11月29日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和6年2月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、同年同月15日付けで手続補正指令書(方式)を通知し、特許権者は、同年3月13日に手続補正書を提出し、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月19日付けで特許異議申立人に通知し、それに対して、特許異議申立人は、その指定期間内である同年4月4日に意見書を提出し、当審は、同年5月14日付けで訂正拒絶理由を通知し、それに対して、特許権者は、その指定期間内である同年6月14日に意見書及び手続補正書を提出し、当審は、同年7月16日付けで手続補正指令書(方式)を通知し、特許権者は、同年同月29日に手続補正書を提出し、当審は、同年8月6日付けで手続補正指令書(方式)を通知し、特許権者は、同年8月28日に手続補正書を提出したものである。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 令和6年3月13日提出の手続補正書、同年6月14日提出の手続補正書、同年7月29日提出の手続補正書及び同年8月28日提出の手続補正書により補正された同年2月2日提出の訂正請求書による本件訂正は、以下の訂正事項1~8からなるものである。訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)」と記載されているのを、「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「更に1-カルボンを含む、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000001.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]、 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及びl-カルボンを含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「更に1-カルボンを含む、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、 「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000002.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]、 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及びl-カルボンを含み、 前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである、洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。」と記載し、新たに請求項6とする。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「水洗トイレの便器の洗浄に使用される、請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000003.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]及び ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含む、水洗トイレの便器の洗浄に使用される洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に「水洗トイレの便器の洗浄に使用される、請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、 「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000004.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]及び ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含み、 前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである、水洗トイレの便器の洗浄に使用される洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。」と記載し、新たに請求項7とする。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4に「水洗トイレの便器の洗浄に使用される、請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。」とあるうち、請求項3を引用し、かつ請求項3が請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000005.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]、 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び1-カルボンを含む、水洗トイレの便器の洗浄に使用される洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。」と記載し、新たに請求項8とする。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4に「水洗トイレの便器の洗浄に使用される、請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。」とあるうち、請求項3を引用し、請求項3が請求項2を引用し、かつ請求項2が請求項1を引用するものについて、 独立形式に改め、 「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000006.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]、 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及び1-カルボンを含み、 前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである、水洗トイレの便器の洗浄に使用される洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。」と記載し、新たに請求項9とする。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項5に「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)」と記載されているのを、「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4、6~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 よって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~4及び請求項5についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。 3 訂正の適否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)」ことを特定している。 これに対して、訂正後の請求項1は、「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における洗浄剤組成物を更に限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、特定の洗浄剤組成物を除外するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項1は、引用発明との重なりを除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1、2、5について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1により訂正される訂正後の請求項1及び2に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第12条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に滴合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項2は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 訂正事項2は、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、訂正事項2により訂正される訂正後の請求項3に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項2の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項3は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 訂正事項3は、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、訂正事項3により訂正された訂正後の請求項6に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項4は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 訂正事項4は、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、訂正事項4により訂正された訂正後の請求項4に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項2の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項5は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 訂正事項5は、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、訂正事項5により訂正された訂正後の請求項7に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項3の記載を引用し、かつ訂正前の請求項3が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項6は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 訂正事項6は、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、訂正事項6により訂正された訂正後の請求項8に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項3の記載を引用し、訂正前の請求項3が訂正前の請求項2の記載を引用し、かつ訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1~3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項7は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 訂正事項7は、第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、訂正事項7により訂正された訂正後の請求項9に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項5に係る発明は、「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)」ことを特定している。 これに対して、訂正後の請求項9は、「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロビルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)」との記載により、訂正後の請求項9に係る発明における洗浄剤組成物を更に限定するものである。すなわち、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記アの理由から明らかなように、訂正事項8は、特定の洗浄剤組成物を除外するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項8は、引用発明との重なりを除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1、2、5について特許異議の申立てがされているので、訂正事項8により訂正される訂正後の請求項5に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 別の訂正単位とする求めについて 訂正後の請求項3、4、6~9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正する求めがあり、前記3(3)、(4)、(6)~(9)のとおり訂正が認められるから、別の訂正単位とすることを認める。 5 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許第7178217号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4、5、6、7、8、9について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1-2〕、3、4、5、6、7、8、9について訂正することが認められ、かつ、訂正後の請求項3、4、6~9は、特許異議の申立てのなかった請求項3、4を独立形式の請求項に改めたものであるので、特許異議の申立ての対象は、訂正後の請求項1、2、5であり、それらの請求項に係る発明は、令和6年3月13日提出の手続補正書、同年6月14日提出の手続補正書、同年7月29日提出の手続補正書及び同年8月28日提出の手続補正書により補正された同年2月2日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、5に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下項番順に「本件特許発明1」等といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000007.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]及び ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)。 【請求項2】 前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである、請求項1に記載の洗浄剤組成物。」 「【請求項5】 下記一般式(1)に示す化合物 【化2】 [図:0001417607000008.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)の安全性を向上させる方法であって、 洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる、安全性向上方法。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 本件特許登録時の請求項1、2、5に係る特許に対して、令和5年8月23日付けで通知した取消理由及び同年11月29日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由である。 理由(拡大先願)請求項1、2、5に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、上記の請求項1、2、5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 1 甲号証について 甲第1号証:特願2018-100620号(特開2019-202976号公報) 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 1a「【請求項1】 下記一般式(1)で示される第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤およびポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテルを含有し、第四級アンモニウム塩とポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテルの重量比が1:0.3~1:0.9であり、1重量%水溶液のpHが3.8~6.5である洗浄除菌剤組成物(但しヨウ素分子は含まない)。 【化1】 [図:0001417607000009.jpg] [式中、R1、R2は同一または異なる炭素数8~18の飽和または不飽和のアルキル基;R3は炭素数1~4の飽和または不飽和のアルキル基または-[(CH2)2-O]n-R5(n=1~20);R4は炭素数1~4の飽和または不飽和のアルキル基;R5は水素又は任意に置換されたフェニル;X-は無機酸または有機酸の一価の対イオン(但し塩酸塩を除く)]」 1b「【0001】 本発明は、主に病院や工場等の器具、設備および作業者の手指等の洗浄除菌に用いる洗浄除菌剤組成物に関する。 ・・・ 【0010】 本発明の目的は、高い洗浄力および除菌力を維持しつつ、安定性に優れ、薬剤が残留しにくい洗浄除菌剤組成物を提供することにある。」 1c「【0020】 両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型両性界面活性剤;特に以下のようなものが挙げられる。 【0021】 一般式(2); 【化3】 [図:0001417607000010.jpg] [式中R6は平均炭素数が9~15の分枝を有していてもよい飽和または不飽和のアルキル基であり、R7,R8はメチル基又はエチル基、mは2又は3を表す。] で示されるアルキルアミドベタイン型両性界面活性剤(例えばヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン); ・・・ 【0025】 これらのうちで好ましいものはアルキルアミドベタイン型両性界面活性剤及びアルキルベタイン型両性界面活性剤であるが、特にアルキルアミドベタイン型両性界面活性剤が好ましく、その中でもヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが好ましい。 ・・・ 【0027】 本発明の洗浄除菌剤組成物においては、さらに非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させることが重要である。洗浄除菌剤の分野で用いられる非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル以外に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール等も知られているが、これらの非イオン界面活性剤を本発明で用いるポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテルに代えて使用すると混合時に分離したり、一旦混合されても低温状態では分離が起こるなど、安定性に問題があるため、本発明の洗浄除菌剤組成物に用いることはできない。」 1d「【0038】 以下、実施例により本発明を更に説明する。 【実施例】 【0039】 実施例1~3および比較例1~5 安定性試験 表1-1および表1-2に示す組成の洗浄除菌剤組成物A~Hを調製し、混合直後、1週間保管後、2週間保管後および4週間保管後の安定性(溶状および退色の有無)を目視にて観察した。保管時の温度は0℃および45℃にて行い、混合直後または保管中に濁りまたは退色したものについては、その時点で試験を中止し、その後の観察は行わなかった。実施例および比較例で使用した第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤およびビグアナイド化合物は下記の通りである。また、表中の数値は重量%を表す。 【0040】 第四級アンモニウム塩1:ジデシルメチルポリオキシエチルアンモニウムプロピオン酸塩 第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩 第四級アンモニウム塩3:ジデシルジメチルアンモニウムアジピン酸塩 第四級アンモニウム塩4:ジデシルジメチルアンモニウム塩酸塩 両性界面活性剤:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン 非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル ビグアナイド化合物:ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩 【0041】 結果を表1-1および表1-2に示す。組成物A~Eは、混合時~4週間保管後まで濁りおよび退色を起こさず安定していた。また、組成物Gは混合直後に濁りが発生し、組成物FおよびHは45℃にて1週間保管後に退色した。表中の「○」は濁りおよび退色が観察されなかったことを示し、「×」は濁りおよび退色が観察されたことを示す。 【0042】 【表1-1】 [図:0001417607000011.jpg] 」 3 甲1に記載された発明 (1)甲1発明1 甲1の【表1-1】の「組成物C/実施例3」に着目して、【0040】を合わせみれば、甲1には洗浄除菌剤組成物Cとして「第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、両性界面活性剤:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、エタノール、ビグアナイド化合物:ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩及び水からなる洗浄除菌剤組成物C。」の発明が記載されているといえる(摘記1d参照)。 (2)甲1発明2 甲1には洗浄除菌剤組成物Cを提供する方法として「第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、両性界面活性剤:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、エタノール、ビグアナイド化合物:ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩及び水からなる、薬剤が残留しにくい、洗浄除菌剤組成物Cを提供する方法。」の発明が記載されているといえる(摘記1b、1d参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲1発明1との対比 甲1発明1の「第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩」及び「非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル」は、それぞれ、本件特許発明1の「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000012.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]」及び「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」に相当する。 甲1発明1の「洗浄除菌剤組成物C」は、過酸化水素を含まず、主に病院や工場等の器具、設備および作業者の手指等の洗浄除菌に用いるものであるから(摘記1b参照)、本件特許発明1の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明1は「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000013.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]及び ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 洗浄剤組成物が、本件特許発明1は、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除くと特定されるのに対し、甲1発明1は、第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、両性界面活性剤:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有する点。 イ 相違点についての検討 <相違点1-1>は実質的な相違点である。 そして、<相違点1-1>は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえない。 ウ 特許異議申立人の主張及び当審の判断について 特許異議申立人は、令和6年4月4日提出の意見書において、当業者であれば、甲1の記載全般から、組成物Cで使用されるヤシ油脂肪酸アミドプロビルジメチルアミノ酢酸ベタイン以外の両性界面活性剤を用いた場合であっても、甲1の発明の課題を解決できる洗浄除菌組成物が得られると認定でき、つまり、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインの代わりに別の両性界面活性剤を使用して洗浄除菌剤組成物を得ることは、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないこと)であると認められると主張する。 しかし、甲1には、両性界面活性剤について、アルキルアミドベタイン型両性界面活性剤としてヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが記載され、アルキルアミドベタイン型両性界面活性剤が好ましく、その中でもヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが好ましいことが、記載されており(摘記1c参照)、実施例においても両性界面活性剤としてヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインのみが用いられており(摘記1d参照)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが最も好ましいものであると理解できるから、甲1において、別の両性界面活性剤は、必ずしも、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインと等価であるとはいえず、そうすると、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインの代わりに別の両性界面活性剤を使用して洗浄除菌剤組成物を得ることは、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないこと)であるとはいえない。 したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 エ 小括 本件特許発明1は、甲1の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明2 本件特許発明2は、本件特許発明1において「前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである」と特定するものであるが、前記本件特許発明1と甲1発明1の<相違点1-1>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2は、甲1の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 (3)本件特許発明5 ア 甲1発明2との対比 甲1発明2の「第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩」及び「非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル」は、それぞれ、本件特許発明5の「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000014.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]」、「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」及び「洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる」に相当する。 甲1発明2の「洗浄除菌剤組成物C」は、過酸化水素を含まず、主に病院や工場等の器具、設備および作業者の手指等の洗浄除菌に用いるものであるから(摘記1b参照)、本件特許発明5の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)」に相当し、甲1発明2の「薬剤が残留しにくい、洗浄除菌剤組成物Cを提供する方法」は、第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテルを含み、薬剤が残留しにくいことにより、安全性が向上されているといえるから、本件特許発明5の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)の安全性を向上させる方法」及び「洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる、安全性向上方法」に相当する。 そうすると、本件特許発明5と甲1発明2は「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000015.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)の安全性を向上させる方法であって、 洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる、安全性向上方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-2> 洗浄剤組成物が、本件特許発明1は、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除くと特定されるのに対し、甲1発明2は、第四級アンモニウム塩2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、両性界面活性剤:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有する点。 イ 相違点についての検討 <相違点1-2>は実質的な相違点である。 そして、<相違点1-2>は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえない。 ウ 特許異議申立人の主張及び当審の判断について 特許異議申立人は前記(1)ウと同じ主張をしており、前記(1)ウと同じ理由により、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 エ 小括 本件特許発明5は、甲1の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人の主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。 理由1(拡大先願)請求項1、2、5に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であって、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一でなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、上記の請求項1、2、5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 甲第2号証:特願2018-159313号(特開2020-33414号公報) 理由2(先願)請求項1、2、5に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許に係る発明と同一の発明であり、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1、2、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 甲第5号証:特許7025762号 第6 前記第5における理由1(拡大先願)について 1 甲号証について 甲第2号証:前記第5 理由1の甲第2号証 甲第3号証:三洋化成株式会社ウェブサイト 製品情報 「サンノニック FN-140(https://www.sanyo-chemical.co.jp/products/228/)、令和5年5月15日 甲第4号証:三洋化成の非イオン界面活性剤 HLB一覧表(https://www.sanyo-chemical.co.jp/products/pdf/hlb.pdf)、令和5年5月15日 2 甲号証の記載について (1)甲第2号証(以下、「甲2」という。)の記載について 2a「【請求項1】 (A-1)ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリアミノプロピルビグアナイド塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、(A-2)1種以上のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩からなる(A)陽イオン界面活性剤、および (B-1)HLB値が10.5~12.5である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる(B)非イオン界面活性剤を含有し、 (A)と(B)の重量比が、1:0.5~1:1.5であり、且つ、1重量%水溶液を調製した際のpHが、2.5~5である洗浄除菌剤組成物。」 2b「【0001】 本発明は、主に食品工場等の器具、設備および作業者の手指や踏み込み槽での長靴等の洗浄除菌に用いる洗浄除菌剤組成物に関する。 ・・・ 【0011】 本発明の目的は、洗浄と除菌が同時に達成されるとともに、すすぎ性に優れ、かつ、保管時の退色が抑制された洗浄除菌剤組成物を提供することにある。」 2c「【0039】 実施例1および比較例1 (安定性試験1(溶状);方法) 表1-1に示す組成の本発明の洗浄除菌剤組成物I~IIIを(A)陽イオン界面活性剤に、40℃の温度に加温した(B)非イオン界面活性剤を溶解させて調製し、混合直後および1週間保管後の溶状を目視にて観察した(実施例1)。また、比較例として表1-2に示す組成物IV~IXを実施例1と同様に調製し、実施例1と同様に観察した(比較例1)。保管時の温度は0℃および45℃にて行い、混合直後または保管中に分離したものについては、分離した時点で試験を中止し、その後の観察は行わなかった。実施例および比較例で使用した陽イオン界面活性剤1~5および非イオン界面活性剤1、2は下記の通りである。また、表中の数値は重量%を表す。 【0040】 陽イオン界面活性剤1:ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩 陽イオン界面活性剤2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩 陽イオン界面活性剤3:ジデシルメチルポリオキシエチルアンモニウムプロピオン酸塩 陽イオン界面活性剤4:ジデシルジメチルアンモニウムアジピン酸塩 陽イオン界面活性剤5:ジデシルジメチルアンモニウム塩酸塩 非イオン界面活性剤1:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=11.7、曇点=34℃) 非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃) 【0041】 (安定性試験1(溶状);結果) 結果を表1-1および表1-2に示す。本発明の洗浄除菌剤組成物I~IIIおよび比較例中VII~IXは、混合時~1週間保管後まで分離等を起こさず安定していた。また、比較例中 、VIは混合時に分離した。IV、Vは混合時には良好であったが、保管時に不安定となり分離した。尚、表中の「○」は分離および濁りが観察されなかったことを示し、「×」は分離および濁りが観察されたことを示す。 【0042】 実施例2および比較例2 (安定性試験2(退色);方法) 実施例1で調製した本発明の洗浄除菌剤組成物I~IIIについて、1週間および4週間保管後の退色具合を目視にて観察した(実施例2)。また、比較例1で調製した組成物IV~IXについても、実施例2と同様に観察した(比較例2)。 【0043】 (安定性試験2(退色);結果) 結果を表1-1および表1-2に示す。本発明の洗浄除菌剤組成物I~IIIは、4週間保管後まで退色を起こさず安定していた。また、比較例中、IV、V、VIII、IXは1週間保管後(45℃)に、VIIは4週間保管後(45℃)に退色が観察された。尚、表中の「○」は退色が観察されなかったことを示し、「×」は退色が観察されたことを示す。 【0044】 (すすぎ性試験;方法) 実施例1で調製した本発明の洗浄除菌剤組成物I~IIIを、それぞれ水で5%濃度に希釈し、希釈液を調製した。調製した希釈液に金属片(SUS403:30×50mm)の下部3cm程度を浸した後、液切りを行い、空のビーカー内に立て置いた。ビーカーにラップをかけて蓋をした状態で、室温で一晩放置した後、金属片を流水で3秒間水洗した。処理後の金属片について、濃度確認試験紙(Vantocil Test Strips)を用いて、表面の残留組成物の濃度を下記評価基準にて評価した。また、比較例1で調製した組成物IV~IXについても同様に評価した。 【0045】 <評価基準> ○:3ppm未満 ×:3ppm以上 【0046】 (すすぎ性試験;結果) 結果を表1-1および表1-2に示す。本発明の洗浄除菌剤組成物I~IIIを用いた試験では、残留組成物の濃度が低く、良好なすすぎ性を示した。また、比較例中、V~VII、IXを用いた試験では、組成物の残留が確認された。 【0047】 【表1-1】 [図:0001417607000016.jpg] 」 (2)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a「 [図:0001417607000017.jpg] ・・・ [図:0001417607000018.jpg] 」 (3)甲第4号証(以下、「甲4」という。) 4a「 [図:0001417607000019.jpg] ・・・ [図:0001417607000020.jpg] 」 3 甲2に記載された発明 (1)甲2発明1 甲2には洗浄除菌剤組成物I~IIIとして「陽イオン界面活性剤2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃)、エタノール及び水からなる洗浄除菌剤組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照)。 (2)甲2発明2 甲2には洗浄除菌剤組成物I~IIIを提供する方法として「陽イオン界面活性剤2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃)、エタノール及び水からなる、すすぎ性に優れる、洗浄除菌剤組成物を提供する方法。」の発明が記載されているといえる(摘記2b、2c参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲2発明1との対比 甲2発明1の「陽イオン界面活性剤2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩」は本件特許発明1の「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000021.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]」に相当する。 甲2発明1の「洗浄除菌剤組成物I~III」は、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを含まず、過酸化水素を含まず、主に食品工場等の器具、設備および作業者の手指や踏み込み槽での長靴等の洗浄除菌に用いるものであるから、本件特許発明1の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明1は「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000022.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。] を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 洗浄剤組成物が、本件特許発明1はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含むのに対し、甲2発明1は非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃を含む点。 イ 相違点についての検討 <相違点2-1>について 甲3にはサンノニックFN-140の曇点が81℃であることが記載され(摘記3a参照)、甲4にはサンノニックFN-140のHLB値が13.8~14.0であることが記載されており(摘記4a)、サンノニックFN-140は本件特許発明1において実際に使用されているポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであるが、甲2発明1は非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃が、前記甲3及び甲4の記載をみても、サンノニックFN-140であるとすることはできない。 そうすると、この点は実質的な相違点である。 そして、この相違点は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明1は、甲2の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明2 本件特許発明2は、本件特許発明1において「前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである」と特定するものであるが、前記本件特許発明1と甲2発明1の<相違点2-1>と同じ相違点を有するものであり、本件特許発明2は、甲2の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 (3)本件特許発明5 (ア)甲2発明2との対比 甲2発明2の「陽イオン界面活性剤2:ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩」は本件特許発明5の「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000023.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]」、「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」及び「洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる」に相当する。 甲2発明2の「非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃)」は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルか否か不明であるから、本件特許発明5の「ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く」に相当する。 甲2発明2の「非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃)」は、本件特許発明5の「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」と「ポリオキシアルキレンアルキルエーテル」の限りにおいて一致し、甲2発明2の「洗浄除菌剤組成物I~III」は、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを含まず、過酸化水素を含まず、主に食品工場等の器具、設備および作業者の手指や踏み込み槽での長靴等の洗浄除菌に用いるものであるから、本件特許発明5の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)」に相当し、甲2発明2の「すすぎ性に優れる、洗浄除菌剤組成物を提供する方法」は、すすぎ性に優れれば、安全性が向上されているといえるから、本件特許発明5の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる、安全性向上方法を除く)の安全性を向上させる方法」及び「洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させる、安全性向上方法」に相当する。 そうすると、本件特許発明5と甲2発明2は「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000024.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)の安全性を向上させる方法であって、 洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物を含有させる、安全性向上方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-2> 洗浄剤組成物がポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、本件特許発明5はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含むのに対し、甲2発明2は非イオン界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB値=13.9、曇点=81℃を含む点。 イ 相違点についての検討 <相違点2-2>について <相違点2-2>は、前記(1)アの<相違点2-1>と同じであり、前記(1)イで検討したとおり、この点は実質的な相違点であるし、この相違点は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明5は、甲2の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 第7 前記第5における理由2(先願)について 1 甲号証について 甲第5号証:前記第5 理由2の甲第2号証 2 甲第5号証(以下、「甲5」という。)の記載について 5a「【請求項1】 (A-1)ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリアミノプロピルビグアナイド塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、(A-2)1種以上のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩からなる(A)陽イオン界面活性剤、および (B-1)HLB値が10.5~12.5である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる(B)非イオン界面活性剤を含有し、 (A)と(B)の重量比が、1:0.5~1:1.5であり、且つ、1重量%水溶液を調製した際のpHが、2.5~5である洗浄除菌剤組成物。 ・・・ 【請求項4】 (A-2)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩が、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩である請求項1~3いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物。 ・・・ 【請求項9】 (A-1)ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリアミノプロピルビグアニド塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、(A-2)1種以上のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩からなる(A)陽イオン界面活性剤、および (B-1)HLB値が10.5~12.5である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる(B)非イオン界面活性剤を含有し、 (A)と(B)の重量比が、1:0.5~1:1.5であり、且つ、1重量%水溶液を調製した際のpHが、2.5~5である洗浄除菌剤組成物の製造方法であって、 (A)陽イオン界面活性剤に、35~45℃の温度に加温した(B)非イオン界面活性剤を溶解させる工程を含む方法。」 5b「【0025】 (B-2)HLB値が13.0~15.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、サンノニックFN-140、セドランFF-220、ナロアクティーCL-120(以上、三洋化成工業株式会社製)、エマルゲン109P、エマルゲン220、エマルゲン320P、エマルゲンLS-110(以上、花王株式会社製)、ブラウノンEL-1509、ブラウノンCH-315L、ブラウノンEN-1513.5、ブラウノンEN914、セフティカットLI-3085、ファインサーフD-85(以上、青木油脂工業株式会社製)が挙げられる。混合時に濁りや分離を生じ難い点で、2重量%水溶液の曇点が65~95℃であるものが好ましく、70~90℃であるものがより好ましく、75~85℃であるものがさらに好ましい。」 3 甲5に係る発明 (1)甲5発明1 甲5の請求項1を引用する請求項4に係る発明は、請求項1を引用せずに書き下すと「(A-1)ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリアミノプロピルビグアナイド塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、(A-2)1種以上のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩からなる(A)陽イオン界面活性剤、および (B-1)HLB値が10.5~12.5である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる(B)非イオン界面活性剤を含有し、 (A)と(B)の重量比が、1:0.5~1:1.5であり、且つ、1重量%水溶液を調製した際のpHが、2.5~5である洗浄除菌剤組成物であって、(A-2)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩が、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩である洗浄除菌剤組成物。」である。 (2)甲5発明2 甲5の請求項9に係る発明は「(A-1)ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリアミノプロピルビグアニド塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物と、(A-2)1種以上のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩からなる(A)陽イオン界面活性剤、および (B-1)HLB値が10.5~12.5である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる(B)非イオン界面活性剤を含有し、 (A)と(B)の重量比が、1:0.5~1:1.5であり、且つ、1重量%水溶液を調製した際のpHが、2.5~5である洗浄除菌剤組成物の製造方法であって、 (A)陽イオン界面活性剤に、35~45℃の温度に加温した(B)非イオン界面活性剤を溶解させる工程を含む方法。」である。 3 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲5発明1との対比 甲5発明1の「(A-2)1種以上のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩」及び「(A-2)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩が、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩である」は本件特許発明1の「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000025.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]に相当する。 甲5発明1の「洗浄除菌剤組成物」は、過酸化水素を含まないもの、及び衣料用以外のものを含むことは、明らかであり、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するもの以外のものを含むといえるから、本件特許発明1の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲5発明1は「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000026.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。] を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5-1> 洗浄剤組成物が、本件特許発明1はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含むのに対し、甲5発明1は(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む点。 イ 相違点についての検討 <相違点5-1>について 甲5には(B-2)HLB値が13.0~15.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしてサンノニックFN-140が記載され、サンノニックFN-140は本件特許発明1において実際に使用されているポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであるが、甲5発明1において(B-2)HLB値が13.0~15.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルがサンノニックFN-140であるとまではいえないから、この点は実質的な相違点である。 ウ 小括 本件特許発明1は、甲5の出願に係る発明と同一の発明であるとはいえないから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明2 本件特許発明2は、本件特許発明1において「前記一般式(1)に示す化合物がジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェートである」と特定するものであるが、前記本件特許発明1と甲5発明1の<相違点5-1>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2は、甲5の出願に係る発明と同一の発明であるとはいえないから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものではない。 (3)本件特許発明5 ア 甲5発明2との対比 甲5発明2の「(A-2)1種以上のジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムメチル硫酸塩」及び「(A)陽イオン界面活性剤」は本件特許発明5の「下記一般式(1)に示す化合物 【化1】 [図:0001417607000027.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]に相当する。 甲5発明2の「(B-1)HLB値が10.5~12.5である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる(B)非イオン界面活性剤」は、本件特許発明5の「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」と「ポリオキシアルキレンアルキルエーテル」の限りにおいて一致し、甲5発明2の「洗浄除菌剤組成物」は、過酸化水素を含まないもの、及び衣料用以外のものを含むことは、明らかであり、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するもの以外のものを含むといえるから、本件特許発明5の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)」に相当する。 甲5発明2の「洗浄除菌剤組成物の製造方法」は、本件特許発明5の「洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のものを除く)の安全性を向上させる方法」と「方法」の限りにおいて一致する。 甲5発明2の「(A)陽イオン界面活性剤に」及び「(B)非イオン界面活性剤を溶解させる工程」は、本件特許発明5の「洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有させる」と「洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させる」限りにおいて一致する。 そうすると、本件特許発明5と甲5発明2は「下記一般式(1)に示す化合物 【化2】 [図:0001417607000028.jpg] [一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数6~18のアルキル基を示し、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基を示し、R5は、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子を示す。]を含む洗浄剤組成物(ただし、過酸化水素を含むもの、及び衣料用のもの、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含有するものを除く)の方法であって、 洗浄剤組成物に前記一般式(1)に示す化合物とポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有させる、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5-2> 本件特許発明5は洗浄剤組成物の安全性を向上させる方法であるのに対し、甲5発明2は洗浄剤組成物の製造方法である点。 <相違点5-3> 洗浄剤組成物のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、本件特許発明5はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含むのに対し、甲5発明2は(B-2)HLB値が13.0~15.0である1種以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む点。 イ 相違点についての検討 <相違点5-2>について 甲5発明2の洗浄剤組成物の製造方法を洗浄剤組成物の安全性を向上させる方法とはいえないから、この点は実質的な相違点である。 <相違点5-3>について 前記(1)ア<相違点5-1>と同じであり、前記(1)イ<相違点5-1>についてで検討したとおり、この点は実質的な相違点である。 ウ 小括 本件特許発明5は、甲5の出願に係る発明と同一の発明であるとはいえないから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものではない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、令和5年8月23日付けの取消理由通知に記載した取消理由、同年11月29日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1、2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700519

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