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特許異議申立

2021-700805

水処理剤

審判番号
2021-700805
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-007092
登録番号
6835106
請求日
2021年08月16日
審決日
2022年03月15日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】栗田工業株式会社
  • 【権利者代理人】渡邊 薫
  • 【異議申立人】伊藤 賢一
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 大光 太朗
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.536-Y (C02F) / P1651.161-Y (C02F) / P1651.113-Y (C02F) / P1651.121-Y (C02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6835106号発明「水処理剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6835106号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6835106号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成31年1月18日を出願日とする出願であり、令和3年2月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、令和3年8月16日に特許異議申立人伊藤賢一(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、同年11月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月8日に特許権者より意見書の提出があり、令和4年1月5日付けで異議申立人に対し審尋がされ、その指定期間内である同年2月1日に異議申立人より意見書が提出されたものである。 第2 本件発明 請求項1~3に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 次の成分(a)~(c); (a)クロラミン化合物 6~24質量% (b)臭化物塩 (c)ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.71g-COOH/g-ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマー 1~18質量%; を含有し、当該(c)カルボキシル基ポリマーが、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体であり、pH10以上である、水処理剤。 【請求項2】 前記クロラミン化合物と臭化物塩のモル比が、1:0.1~1.0である、請求項1記載の水処理剤。 【請求項3】 前記水処理剤が、スライムコントロール用、防食用又はスケール防止用の少なくともいずれかである、請求項1又は2記載の水処理剤。」 第3 令和3年11月1日付けで通知した取消理由及びこの取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要 1 令和3年11月1日付けで通知した取消理由の概要 (1)特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)(以下、「取消理由」という。) 本件明細書の記載からは、本件発明1において特定されているクロラミン化合物の濃度を求めることができないので、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~3について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない。 2 取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要 (1)特許法第29条の2所定の規定違反(拡大先願)(以下、「申立理由1」という。) 本件発明1~3は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記(3)の甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下では、これらをまとめて単に「甲1明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 (2)特許法第29条第1項所定の規定違反(新規性欠如)(以下、「申立理由2」という。) 本件発明1~3は、下記(3)の甲第2号証に記載された発明であって、特許第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (3)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由3」という。) 本件発明1~3は、下記甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 甲第1号証:特願2017-243961号(特開2019-108310号) 甲第2号証:特開2017-25046号公報 甲第3号証:特開平4-356580号公報 甲第4号証:Liz Harrelson et.al, “A Review of the Cooling Water Methods for Sodium Hypochlorite Activation of Sodium Bromide into a Hypobromous Acid - Hypobromite Biocide”, 72nd Annual International Water Conference 2011, 2011年11月13-17日, No. IWC-11-47 甲第5号証:特開2010-58079号公報 (以下、甲各号証を単に「甲1」などという。) 第4 当審の判断 1 取消理由(特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反))について ア 本件発明1~3の水処理剤は、クロラミン化合物の濃度により特定されるものである。そして、本件発明1~3において、発明が実施することができるとは、本件発明1~3において特定される水処理剤を製造することができるということであるから、以下、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~3における水処理剤を製造することができるか否かを検討する。 イ 本件明細書の【発明を実施するための形態】には、水処理剤に含有されるクロラミン化合物として、「特に限定されないが、例えば、以下の反応式(1),(2)に示すような反応で次亜塩素酸(HOCl)と1級アミノ基を有する化合物(XNH2)とを反応させて得られる、アミノ基の水素原子が塩素原子に置換した化合物(XNHCl)であるものが好ましい。」(【0019】)、「本発明に用いられるクロラミン化合物は、特に限定されないが、1級アミノ基を有する化合物、アンモニア、及びアンモニウム塩のいずれか(以下、これらを「NH2系化合物」ともいう)と、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩とを混合することにより生成させて得られるものが好ましい。」(【0020】)、「これらのNH2系化合物の中でもスルファミン酸(より好適には、NH2SO2OH)が好ましい。スルファミン酸を用いてモノクロロスルファミンを生成させると安定なクロラミン化合物となる。」(【0022】)と記載され、クロラミン化合物は、特に限定されないが、アミノ基の水素原子が塩素原子に置換した化合物(XNHCl)であるものが好ましく、スルファミン酸等のNH2系化合物と、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩とを混合することにより生成させて得られるものが好ましいと記載されている。 また、本件明細書の【0029】には、「NH2系化合物と次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩を混合してクロラミン化合物を生成させる場合、NH2系化合物と次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩とは、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩由来の有効塩素(Cl2)と、NH2系化合物由来の窒素原子Nとのモル比であるCl2/Nモル比が、0.1~1となるように用いることが、クロラミンの生成効率と安定性の観点において好ましい。Cl2/Nモル比が、上記上限以下であると遊離塩素が生成するのを抑えることができ」と記載されており、遊離塩素の生成を抑えるため、クロラミン化合物の原料のモル比を調整することが記載されている。 さらに、本件明細書の【実施例】として、「次亜塩素酸及びスルファミン酸(HN2SO2OH)とを反応させて得られた」クロラミンを試験例1~28の水処理剤に用いたことが記載されている(【0070】)。 また、同【0071】には、各試験例に使用した各測定方法として、クロラミン、次亜塩素酸、次亜臭素酸の合計の濃度(全酸化剤濃度)をDPDtotal試薬で測定し、遊離塩素をグリシンと反応させた後、残った次亜臭素酸の合計の濃度をDPDfree試薬で測定することが記載され、DPD法は、JIS K 0400-33-10:1999 N,N-ジエチル-1,4-フェニレンジアミンを用いるDPD法に準じて行うことが記載されている。 ウ ここで、本件発明の水処理剤を製造するためには、(ii)水処理剤中のクロラミン化合物の濃度の把握、が必要であるが、その前提として、どの様な化合物をクロラミン化合物とするのかの理解が重要であるから、はじめに(i)クロラミン化合物について検討し、次に(ii)の点を検討する。 エ (i)クロラミン化合物について (ア)特許権者が令和3年12月8日に提出した意見書に添付された乙第1号証(澤村, “塩素の反応性と水のクロリネーション”, 衛生化学, 1980, 26(2), p.63-73)には、以下の記載がある。 ・「Soperら4-7)は、アンモニアその他各種窒素化合物のN-クロラミンの加水分解によるHOCl生成に関して検討している。これらのデータも含めて、Robson8)は表1(抜粋)に示すようにN-クロラミンの加水分解定数をまとめている。 [図:0001384175000001.jpg] 」(65頁左欄) 上記記載から、クロラミン化合物が、「Trichloroisocyanuric acid」、「Dichloramine-T」、「Chloramine-T」等、窒素原子への塩素の結合数にかかわらず、アンモニアその他各種窒素化合物のN-クロラミンを示すものであることが理解できる。 (イ)また、同意見書に添付された乙第2号証(奥村, “スルファミン酸による結合塩素の異常生成”, 水道協会雑誌, 1997年10月, 第66巻, 第10号, 21~29頁)には、以下の記載がある。 ・「「クロラミン」は一般にはアンモニアのクロラミンを指すが、ここでは窒素化合物の窒素原子に塩素が結合した化合物の略称とした。」 (ウ)上記(ア)、(イ)から、「クロラミン化合物」がアンモニアその他各種窒素化合物の窒素に塩素が結合し、その塩素の結合数に制限のない、N-クロラミン一般を指すものであることは、本件出願時における技術常識であったと認められる。 (エ)本件明細書においては、上記イのとおり、「クロラミン化合物」は特に限定されないとの記載があるが(【0020】)、「クロラミン化合物」の具体的な定義はない。しかしながら、上記(ウ)のとおり、本件出願時の技術常識を参酌すれば、「クロラミン化合物」はアンモニアその他各種窒素化合物の窒素に塩素が結合している(結合数にかかわらず)N-クロラミンであると理解できるから、当該技術常識によれば、本件発明の「クロラミン化合物」は、モノクロロスルファミン酸、ジクロロスルファミン酸等のアンモニアその他各種窒素化合物の各種N-クロラミンとして理解できるものである。 オ (ii)水処理剤中のクロラミン化合物の濃度の把握 (ア)上記イのとおり、本件明細書の【0071】によれば、クロラミン、次亜塩素酸、次亜臭素酸の合計の濃度(全酸化剤濃度)をDPDtotal試薬で測定でき、次亜臭素酸の濃度は、「遊離塩素をグリシンと反応させた後、残った次亜臭素酸をDPDfree試薬で測定」できると理解できる。 また、上記イのとおり、同【0022】には、クロラミン化合物は、スルファミン酸等のNH2系化合物と、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩とを混合することにより生成されることが記載され、同【0029】の記載によれば、「次亜塩素酸由来の有効塩素(Cl2)と、NH2系化合物由来の窒素原子Nとのモル比であるCl2/Nモル比が、0.1~1となるように用いる」、すなわち、塩素数がジクロラミン化合物となる当量数以下とされているように調整され、本件発明のクロラミン化合物の生成において、遊離塩素の発生を抑制するように原料のモル比が調整されていることがみてとれる。 以上から、次の点を理解することができる。 ・クロラミン、次亜塩素酸、次亜臭素酸の合計(全酸化剤濃度)から次亜臭素酸の濃度を差し引くことで、クロラミン、次亜塩素酸を合わせた濃度が把握できる。 ・次亜塩素酸はクロラミンの生成に使用されることで消費されるとともに、反応後、遊離塩素が発生しないように抑制されているため、本件発明の水処理剤において、含有成分として次亜塩素酸は存在しないか、非常に低い濃度で存在している可能性が高い。 そうすると、水処理剤中に次亜塩素酸が存在しない場合においては、クロラミン、次亜塩素酸、次亜臭素酸の合計(全酸化剤濃度)から次亜臭素酸の濃度を差し引くことで、クロラミンの濃度は把握できるし、水処理剤中に次亜塩素酸が低い濃度で存在する場合であっても、クロラミンのおおよその濃度は把握できるといえる。さらに、本件発明のクロラミン化合物の濃度範囲が6~24質量%と一定の幅が存在するのであるから、水処理剤中の次亜塩素酸の濃度が厳密に把握できないとしても、当業者であれば、当該範囲に収まるようにクロラミン化合物の濃度を調整することが、過度な試行錯誤を要するものとまではいえないというべきである。 以上のとおり、(ii)水処理剤中のクロラミン化合物の濃度を把握することができるものと認められる。 (イ)なお、水処理剤中のクロラミン化合物の濃度を把握することができることは、上記(ア)のとおりであるが、下記のとおり本件出願時の技術常識からも、水処理剤中のクロラミン化合物の濃度を把握することができると認められる。 上記エ(ア)で示した乙第1号証には、以下の記載がある。 (1a)「 [図:0001384175000002.jpg] 」(66頁) また、上記エ(イ)で示した乙第2号証には、以下の記載がある。 (2a)「アンモニアのモノクロラミン、ジクロラミンはDPD法による残留塩素濃度の測定において、遊離塩素濃度を測定度、0.1% KI、ついでKI結晶を添加することにより分離定量できる1)。」(23頁右欄) 上記(1a)及び(2a)の記載によれば、DPD法により、KIの濃度を条件を変えることにより、遊離塩素と、モノクロラミン及びジクロラミン等のクロラミン化合物とを、分離定量する測定法は、本件出願時の技術常識であると認められる。 そうすると、当該技術常識を参酌したとしても、本件発明の水処理剤中のクロラミン化合物の濃度は、把握することができたものと認められる。 カ 実施可能要件の判断のまとめ 上記エ、オのとおり、クロラミン化合物を製造することは可能であるし、その他に本件発明の水処理剤を実施可能ではないとする理由も見あたらないから、本件発明が実施可能要件に違反しているとすることはできない。 したがって、取消理由には理由がない。 2 申立理由1(特許法第29条の2所定の規定違反(拡大先願))について (1)甲1明細書等に記載の事項(当審注:「…」は省略を表す。) ア「【請求項1】 (A)臭素化スルファミン酸化合物と(B)塩素化スルファミン酸化合物を含有する殺菌殺藻剤組成物であって、該組成物のpHが13以上であることを特徴とする殺菌殺藻剤組成物。 【請求項2】 前記(A)臭素化スルファミン酸化合物と前記(B)塩素化スルファミン酸化合物の含有モル比が、(A):(B)=5:5~1:9であることを特徴とする請求項1記載の殺菌殺藻剤組成物。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の殺菌殺藻剤組成物を含有し、更に(1)アゾール化合物を含有する水処理剤組成物であって、該組成物のpHが13以上であることを特徴とする水処理剤組成物。 【請求項4】 更に、(2)テロマー及び/又は(3)有機リン酸化合物含有する、請求項3記載の水処理剤組成物。」 イ「【技術分野】 【0001】 本発明は冷却水系、冷温水系、集塵水系、紙パルプ工程水系、製鉄工程水系、金属加工工程水系等の各種用排水系、各種工程水系等における微生物に起因する諸障害を長期にわたって安定的に抑制する殺菌殺藻剤組成物及び殺菌殺藻方法、並びに、殺菌殺藻効果に併せて、水と接触する熱交換器、配管、各種機器類の金属材料の腐食、スケール付着を同時に抑制することができる水処理剤組成物及び水処理方法に関する。」 ウ「【発明が解決しようとする課題】 【0013】 本発明の目的は、長期保管が可能で、優れたスライムコントロール効果が得られる無機系スライムコントロール剤、及び、長期保管が可能で、優れたスライムコントロール効果、防食効果及びスケール防止効果が得られる、一剤化された水処理剤組成物を提供する。」 エ「【発明を実施するための形態】 … 【0024】 本発明の殺菌殺藻剤組成物に用いられる臭素化スルファミン酸化合物は、分解しやすく不安定な次亜臭素酸塩をスルファミン酸又はスルファミン酸誘導体及びそれらの塩によって安定化したものであり、同様に塩素化スルファミン酸化合物は、次亜塩素酸塩をスルファミン酸又はスルファミン酸誘導体及びそれらの塩によって安定化したものである。 【0025】 臭素化スルファミン酸化合物及び塩素化スルファミン酸化合物は、公知の方法により製造することができる。臭素化スルファミン酸は、臭化物と次亜塩素酸塩を反応させて次亜臭素酸塩を生成し、これにスルファミン酸塩を反応させて製造することができる。例えば、特表平11-506139号公報には、約5~70%のアルカリ又はアルカリ土類金属の次亜塩素酸塩水溶液を臭化物イオン源と混合する段階と;臭化物イオン源と次亜塩素酸塩を反応させて、0.5~70重量%のアルカリ又はアルカリ土類金属の次亜臭素酸塩水溶液を形成する段階と;該溶液にアルカリ金属のスルファミン酸塩水溶液を次亜臭素酸塩に対するモル比が0.5~7となる量で添加する段階からなる製造方法が開示されている。また、塩素化スルファミン酸は次亜塩素酸塩とスルファミン酸を反応させて製造することができる。例えば、特開2009-84163号公報には、次亜塩素酸塩にスルファミン酸塩を添加すると、N-モノクロロスルファミン酸塩若しくはN,N-ジクロロスルファミン酸塩を形成し、有効塩素成分が安定化されることが開示されている。 … 【0029】 本発明に用いる臭素化スルファミン酸化合物を製造する方法は、ここに示した方法に限定されないが、製造時の安全性、環境への影響、原料の入手し易さ等を考慮して、臭化物と次亜塩素酸塩を反応させて次亜臭素酸塩水溶液を生成させた後、スルファミン酸又はスルファミン酸誘導体、又はそれらの塩を添加する方法が好ましい。ここで次亜塩素酸塩は、好ましくは次亜塩素酸のアルカリ金属塩であり、臭化物は、好ましくは臭化物のアルカリ金属、あるいは臭化水素酸である。アルカリ金属は、ナトリウム、カリウム及びリチウムからなる群より選択される。 … 【0036】 本発明の殺菌殺藻剤組成物に含有される(A)臭素化スルファミン酸化合物(以下、(A)成分と記すこともある)と(B)塩素化スルファミン酸化合物(以下、(B)成分と記すこともある)は、一連の反応によって混合溶液として製造することも可能であり、また、別個に製造した後に混合することも可能である。混合溶液として製造する場合は、濃度や(A)成分と(B)成分の含有モル比を調整してそのまま本発明の殺菌殺藻剤組成物とすることができ、別個に製造する場合は、(A)成分と(B)成分の混合比率を調整して濃度や含有モル比を合わせることによって本発明の殺菌殺藻剤組成物を調製できる。この場合、(A)成分と(B)成分の混合順序や混合方法には特に制限は無い。 【0037】 本発明の殺菌殺藻剤組成物は(A)成分と(B)成分を含有するが、その好ましい含有モル比は(A):(B)=5:5~1:9である。例えば、(A)成分と(B)成分を一連の反応によって混合液として製造して含有モル比(A):(B)=5:5の殺菌殺藻剤組成物を調製する場合は、まず、臭化物と次亜塩素酸塩を、臭化物1モルに対して次亜塩素酸塩2モルの比率で反応させて、反応生成物の次亜臭素酸塩と未反応の次亜塩素酸塩のモル比が5:5の混合溶液を得る。この混合溶液に、混合溶液中の次亜臭素酸塩と次亜塩素酸塩の合計モルに対応するスルファミン酸を添加して安定化反応を行い、臭素化スルファミン酸化合物((A)成分)と塩素化スルファミン酸化合物((B)成分)が(A):(B)=5:5の混合溶液である本発明の殺菌殺藻剤組成物を調製する。含有モル比が(A):(B)=5:5を超えて(A)成分が(B)成分よりも過剰になると、有効ハロゲンが減少しやすくなり、製品安定性、及びスライムコントロール性能が低下することがある。 … 【0041】 本発明の水処理剤組成物は、本発明の殺菌殺藻剤組成物とアゾール化合物を含有し、更に(2)テロマー及び/又は(3)有機リン酸化合物を含有させることができる。 【0042】 本発明の水処理剤組成物に用いるテロマーは、ビニル重合において、テロゲンと称されるある種の物質を存在させることによって得られる重合度の低い重合体であって、このテロゲンと不飽和単量体(=ビニル単量体)との重合反応は、テロマリゼーションあるいはテロメル化とよばれる。 【0043】 テロゲンとしては、例えば、亜硫酸、水溶性亜硫酸塩、アミンチオール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン等が挙げられるが、本発明の水処理剤組成物に用いるテロマーの重合反応に存在させるテロゲンとしては、亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールが好ましい。 【0044】 この水溶性亜硫酸塩は、水に溶解して亜硫酸イオンや亜硫酸水素イオンを生成するものであれば何でもよく、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸二ナトリウム(ピロ亜硫酸塩ナトリウム)、亜硫酸等が挙げられる。工業的に重亜硫酸ナトリウムとして市販されているものも使用できるが、これは二亜硫酸二ナトリウムが主成分である。 … 【0049】 また、テロマーを形成する不飽和単量体としては、エチレン、スチレン、メタクリル酸メチル等が挙げられるが、本発明の水処理剤組成物に用いるテロマーを形成する不飽和単量体としては、ヒドロキシル基を有さない不飽和単量体が好ましい。ヒドロキシル基を有さない不飽和単量体の中でも、最も好ましくはモノエチレン性不飽和カルボン酸単独あるいはモノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他のヒドロキシル基を有さないモノエチレン性不飽和単量体との組み合わせである。ここでモノエチレン性不飽和カルボン酸は、好ましくは、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸等である。また、モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なヒドロキシル基を有さないモノエチレン性不飽和単量体の例としては、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル類、スルホアルキル(メタ)アリルエーテル類、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸等のモノエチレン性不飽和スルホン酸類ならびにその水溶性塩、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸等のモノエチレン性不飽和ホスホン酸類ならびにそれらの水溶性塩、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレートエステル類、アルキル(メタ)アリルエーテル類等が挙げられる。モノエチレン性不飽和カルボン酸やモノエチレン性不飽和スルホン酸の水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が一般的である。尚、不飽和単量体におけるモノエチレン性不飽和カルボン酸の比率は、40~100重量%であることが好ましく、この比率が40重量%未満では、形成されたテロマーが十分なスケール抑制効果を示さない場合がある。 【0050】 本発明の水処理剤組成物に用いるテロマーを形成する、モノエチレン性不飽和カルボン酸と、モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他のヒドロキシル基を有さないモノエチレン性不飽和単量体との組み合わせとして、より好ましいのは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の組み合わせ、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とN-置換(メタ)アクリルアミドの組み合わせである。 … 【0057】 本発明の水処理剤組成物に用いるテロマーの分子量は、好ましくは500~40000の範囲である。」 オ「【実施例】 【0102】 テロマーNo.1A~No.13A、テロマーNo.1B~No.3Bについて、概略を表2に示した。 【0103】 【表2】 [図:0001384175000003.jpg] … 【0125】 5.試験に用いた殺菌殺藻剤組成物の調製 [殺菌殺藻剤組成物1] 臭化ナトリウム0.4gを水7.3g重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12%(Cl2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液25.4gに加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸と次亜塩素酸の混合溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3gに水8.6gを加え、48%水酸化ナトリウム13gを冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を、調製した次亜臭素酸と次亜塩素酸の混合溶液に加えて、pHが13以上になるように48%水酸化ナトリウムを添加した後、水を加え全量を100gとして、室温(20℃)で10分間撹拌し、殺菌殺藻剤組成物1を調製した。この殺菌殺藻剤組成物1は、一連の反応によって調製した(A)成分と(B)成分の混合溶液であり、含有モル比は(A)成分:(B)成分=1:9の配合である。 【0126】 [殺菌殺藻剤組成物2~5] 表4に記載された配合に従って、殺菌殺藻剤組成物1と同様の方法で、殺菌殺藻剤組成物2~殺菌殺藻剤組成物5を調製した。 … 【0147】 (4)アゾール化合物とテロマーを配合した水処理剤組成物の経時安定性(実施例15~30及び比較例9、10) 殺菌殺藻剤組成物2にアゾール化合物1Hを配合した水処理剤組成物1に、更にテロマーを配合した水処理剤組成物7~22の経時安定性試験を実施した。表7に配合と試験の結果を記載した。尚、対照として、殺菌殺藻剤組成物2にアゾール化合物1Hを配合し、テロマーを配合しない水処理剤組成物1の実施例13を記載した。 【0148】 【表7】 [図:0001384175000004.jpg] 」 (2)甲4に記載の事項 ア「To investigate this means of activation, a mixture containing a 1:1 mole ratio of NaBr and NaOCl was prepared by adding 20.02 g of aqueous 40% NaBr to 54.30 g NaOCl (10.66% as Cl2) solution. No additional water was used. The mixture turned yellow indicating that bromine had been generated. The pH of the NaBr/NaOCl mixture was measured to be 12.86. … The stability of the HOBr/OBr- ion in the activated solution was then tracked over the course of an hour. Figure 8 charts the HOBr/OBr- ion content (expressed as Br2) of the mixture on the left ordinate, with time on the abscissa. The same curve also defines the percent conversion of Br- ion into HOBr/OBr- ion on the right ordinate. It can be seen that around 84% of the Br- ion was immediately converted. This maximized between 10-15 minutes where 97% of Br- ion was in the form of HOBr/OBr- ion. The stability of the activated solution started to drop between 30-60 minutes.」(「METHOD 2: ACTIVATION BY DIRECT COMBINATION OF SODIUM BROMIDE AND SODIUM HYPOCHLORITE SOLUTIONS」の第2段落) (当審訳:NaBrとNaOClの各モル比を含む混合物の活性化手段を調べるために、20.02gの40% NaBr水溶液を54.30 gのNaOCl溶液(10.66 %Cl2)に添加することによって調製した。追加の水は使用しなかった。混合物は黄色に変わり、臭素が生成されたことを示した。… 図8の左側の縦軸は、混合物のHOBr/OBr- 含有量(Br2換算)を表し、横軸は時間、同じ曲線の右側の縦軸もBr- のHOBr/OBr-への変換率である。Br-の約84%が直ちに変換されたことがわかる。Br-の97%がHOBr/OBr-の形となり、10~15分間で最大となった。活性化溶液の安定性は、30~60分の間に低下し始めた。) (3)甲1明細書等に記載された発明 ア 上記(1)アの【請求項1】~【請求項4】の記載によれば、甲1明細書等には、(A)臭素化スルファミン酸化合物と(B)塩素化スルファミン酸化合物を含有する殺菌殺藻剤組成物であって、該組成物のpHが13以上であり、前記(A)臭素化スルファミン酸化合物と前記(B)塩素化スルファミン酸化合物の含有モル比が、(A):(B)=5:5~1:9である、前記殺菌殺藻剤組成物を含有し、更に(1)アゾール化合物を含有する水処理剤組成物であって、該組成物のpHが13以上であって、(2)テロマー及び/又は(3)有機リン酸化合物を含有する、水処理剤組成物が記載されている。 イ 上記アの「テロマー」は、同エの【0042】の記載によれば、ビニル重合において、テロゲンと称されるある種の物質を存在させることによって得られる重合度の低い重合体であると理解でき、同エの【0049】の記載によれば、本件発明の水処理剤組成物に用いるテロマーを形成する不飽和単量体としては、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸が好ましいものであると理解でき、同オの【0103】の実施例によれば、テロマーとして、アクリル酸(No.10A)、マレイン酸(No.3B)が、テロマーを形成する不飽和単量体として用いられると理解できる。 そうすると、甲1明細書等には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 <甲1発明> 「(A)臭素化スルファミン酸化合物と(B)塩素化スルファミン酸化合物を含有する殺菌殺藻剤組成物であって、該組成物のpHが13以上であり、前記(A)臭素化スルファミン酸化合物と前記(B)塩素化スルファミン酸化合物の含有モル比が、(A):(B)=5:5~1:9である、前記殺菌殺藻剤組成物を含有し、更に(1)アゾール化合物を含有する水処理剤組成物であって、該組成物のpHが13以上であって、(2)テロマー及び/又は(3)有機リン酸化合物含有する、水処理剤組成物であって、 前記テロマーは、アクリル酸、マレイン酸の不飽和単量体から形成されるものである、水処理剤組成物。」 (4)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「塩素化スルファミン酸」は、次亜塩素酸塩とスルファミン酸を反応させて製造する「N-モノクロロスルファミン酸塩」若しくは「N,N-ジクロロスルファミン酸塩」等を示すものであるから(上記(1)エの【0025】)、本件発明1の「(a)クロラミン化合物」に含まれ、甲1発明の「アクリル酸、マレイン酸の不飽和単量体から形成される」「テロマー」は、アクリル酸、マレイン酸等の不飽和単量体を重合して得られる低い重合度の重合体であり、アクリル酸、マレイン酸由来のカルボキシル基を有するものであるから、本件発明1の「マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体」である「カルボキシル基ポリマー」に相当するといえる。また、甲1発明の「水処理剤組成物」は、水中に添加することで水系の殺菌殺藻する処理剤そのものであるといえるから、本件発明1の「水処理剤」に相当する。さらに、甲1発明の水処理剤組成物のpHは13以上であるから、本件発明1の水処理剤のpH10以上に包含される。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、「クロラミン化合物と、カルボキシル基ポリマーを含有し、当該カルボキシル基ポリマーが、マレイン酸系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸系重合体であり、pH10以上である、水処理剤。」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1の水処理剤は、臭化物塩を含むのに対し、甲1発明の水処理剤組成物は、臭化物塩を含むか否か不明である点。 <相違点2> 本件発明1では、ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.71g-COOH/g―ポリマー以下に特定されているのに対し、甲1発明の「アクリル酸、マレイン酸の不飽和単量体から形成される」「テロマー」のカルボキシル基含有率が0.71g-COOH/g―ポリマー以下であるか否か不明である点。 <相違点3> 本件発明1では、クロラミン化合物が6~24質量%、ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.71g-COOH/g―ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマーが1~18質量%と特定されているのに対し、甲1発明では、当該特定事項を有するか否か不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点1及び相違点3について検討する。 相違点1が実質的な相違点であるか否かを検討する。甲1明細書等には、水処理剤組成物が「臭化物塩」を含むことについての直接的な記載はないが、臭化物に関する記載が上記(1)エの【0025】、【0029】、【0037】にあるため、これらの記載について、以下に検討する。まず、同【0025】の記載から、臭化物は次亜塩素酸塩と反応させて次亜臭素酸塩を生成するために使用され、同【0029】によると、臭化物は、好ましくは臭化物のアルカリ金属であり、同【0037】によると、臭化物と次亜塩素酸塩を、臭化物1モルに対して次亜塩素酸塩2モルの比率で反応させて、反応生成物の次亜臭素酸塩と未反応の次亜塩素酸塩のモル比が5:5の混合溶液を得ると理解できる。これらの記載を総合的に勘案すると、臭化物は、次亜臭素酸塩を生成するための原料であり、反応によって消費されるものである上記の反応モル比(臭化物1モルに対して次亜塩素酸2モルで反応し、次亜臭素酸塩と未反応の次亜塩素酸塩のモル比が5:5ということは臭化物全量が反応している)から、水処理剤組成物の有効成分として含有されるものではないと理解することができる。そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点である。 次に相違点3が実質的な相違点であるか否かを検討すると、甲1明細書等には、相違点3に係るクロラミン化合物、カルボキシル基ポリマーの含有量についての記載は見当たらない。そうすると、上記相違点3は、実質的な相違点である。 以上のとおり、上記相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と同一であるということはできない。 なお、異議申立人は、甲4の記載を根拠に、甲1発明において、未反応の臭化物や、次亜臭素酸や結合臭素化合物の分解で生じた臭化物が存在すると主張するが、甲4に記載される事項は、NaBr(臭化物としての臭化ナトリウム)とNaOCl(次亜塩素酸ナトリウム)が1:1のモル比で混合された溶液におけるHOBr/OBr-イオンの安定性に関するものであって、甲1明細書等のように、臭化物と次亜塩素酸塩とを臭化物1モルに対して次亜塩素酸塩2モルの比率で反応させて得られた「次亜臭素酸塩」が、未反応の次亜塩素酸塩とモル比5:5で混合溶液として共存する場合において、当該「次亜臭素酸塩」がどのような安定性を示すのかを教示するものではない。 以上のとおり、甲4は、甲1発明の水処理剤組成物において、臭化物塩成分を含有することを証明するものとは認められない。よって、異議申立人の主張は採用し得ない。 (5)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、「水処理剤」に係る発明であるが、いずれの発明も、発明特定事項に、少なくとも本件発明1の「水処理剤」に係る事項を含むため、本件発明2及び3は、甲1発明と同一であるということはできない。 (6)申立理由1に関するまとめ 以上のとおり、申立理由1には理由がない。 3 申立理由2(特許法第29条第1項第3号(新規性欠如))及び申立理由3(特許法第29条第2項(進歩性欠如))について 事案に鑑み、申立理由2及び申立理由3を併せて検討する。 (1)甲2、3、5に記載の事項 ア 甲2に記載の事項 (ア)「【請求項1】 (A)次亜臭素酸及び/又は次亜臭素酸塩とスルファミン酸及び/又はスルファミン酸塩の反応により得られる結合臭素化合物と、(B)(1)亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールからなる群から選択されるテロゲンとヒドロキシル基を有さない不飽和単量体の反応で得られるテロマー、(2)次亜リン酸及び/又は水溶性次亜リン酸塩とヒドロキシル基を有さない不飽和単量体との反応で得られる有機ホスフィン酸化合物、及び(3)ヒドロキシル基及びアミノ基を有さない有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される1種以上とを、有効成分として含み、組成物のpHを13以上とすることを特徴とする、水系における水処理剤組成物。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は冷却水系、冷温水系、集塵水系、紙パルプ工程水系、製鉄工程水系、金属加工工程水系等の各種用排水系、各種工程水系等における微生物に起因する諸障害を抑制し、併せて水と接触する熱交換器、配管、各種機器類の金属材料の腐食、スケール付着を同時に抑制することができる、貯蔵安定性が改善された一液の水処理剤組成物に関する。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明の課題は、各種製造業の工程水系、冷却水系、及び洗浄水等の各種用排水系における微生物障害、スケール障害及び腐食障害を抑制する一液の水処理剤組成物であって、30℃以上の温度環境下においても配合された結合臭素化合物の分解が少なく、1箇月間以上貯蔵可能な、貯蔵安定性が改善された水処理剤組成物を提供することにある。」 (エ)「【発明を実施するための形態】 … 【0021】 本発明の結合臭素化合物を製造する方法は、ここに示した方法に限定されないが、製造時の安全性、環境への影響、原料の入手し易さ等を考慮して、臭化物イオン源となる化合物と次亜塩素酸塩を反応させて次亜臭素酸塩水溶液を生成させた後、スルファミン酸塩を添加する方法が好ましい。ここで次亜塩素酸塩は、好ましくはアルカリ金属の次亜塩素酸塩であり、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウムからなる群より選択される。臭化物イオン源となる化合物は、好ましくはアルカリ金属の臭化物あるいは臭化水素酸であり、アルカリ金属の臭化物は、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウムからなる群より選択される。 … 【0024】 本発明の(A)成分の結合臭素化合物は、N-ブロモスルファミン酸が主成分であるが、該結合臭素化合物生成反応において副生する結合塩素化合物のN-クロロスルファミン酸を含んでいてもよい。 【0025】 本発明の(B)成分の(1)亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールからなる群から選択されるテロゲンとヒドロキシル基を有さない不飽和単量体の反応で得られるテロマーは、テロマリゼーションあるいはテロメル化とよばれる反応を用いることにより製造することができ、例えば、適当な開始剤、酸素、紫外線等のもとで亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールからなる群から選択されるテロゲンとヒドロキシル基を有さない不飽和単量体を含む水溶液を不活性ガスの存在下で加熱することにより製造することができる。その反応メカニズムは、反応の開始段階においては、開始剤や紫外線等の作用によりテロゲンラジカルが生成し、次いでテロゲンラジカルに不飽和単量体が結合したポリマーラジカルが生成する。次いで、ポリマーラジカルへの新たな不飽和単量体のラジカル付加反応(テロマーの成長反応)あるいはポリマーラジカルからテロゲンへラジカルが移動する連鎖移動反応(テロマーの成長停止反応)が起こるが、ここで生成したテロゲンラジカルは再び上記の反応を繰り返す。ここで製造されたテロマーは、テロマー末端のテロゲン残基に1個以上の不飽和単量体が付加した化合物である。不飽和単量体に対するテロゲンの濃度比が高いほど、テロゲンに付加する不飽和単量体の分子数が少なくなることから、テロゲンは分子量調節剤として作用する。 【0026】 本発明者は、亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールからなる群から選択されるテロゲンを用いて製造したテロマーは、テロゲンを用いないで製造した付加重合物や本発明に含まれないテロゲン(例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール等のメルカプト化合物、イソプロピルアルコール等の2級アルコ-ル類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物等)を用いて製造したテロマーと比較して、結合臭素化合物と混合したときの貯蔵安定性が著しく優れていることを見出した。 【0027】 本発明のテロマーの製造に用いられるヒドロキシル基を有さない不飽和単量体は、好ましくはモノエチレン性不飽和カルボン酸単独あるいはモノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他のヒドロキシル基を有さないモノエチレン性不飽和単量体との組み合わせである。ここでモノエチレン性不飽和カルボン酸は、好ましくは、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸等である。一方、モノエチレン性不飽和カルボン酸としてイタコン酸を用いたテロマーでは、水処理剤組成物の貯蔵安定性が劣るため好ましくない。 … 【0030】 本発明の(B)成分の(1)亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールからなる群から選択されるテロゲンとヒドロキシル基を有さない不飽和単量体の反応で得られるテロマーの分子量は、好ましくは500~40000の範囲である。分子量が40000を超えると(A)成分である結合臭素化合物の貯蔵安定性の改善効果が低下し、また分子量が500未満ではスケール抑制効果が小さくなりいずれも好ましくないことがある。」 (オ)「【実施例】 … 【0070】 (結合臭素化合物No.A-2) 臭化ナトリウム3.7重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム12.9重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を該次亜臭素酸水溶液に加えて、室温(20℃)で10分間撹拌して、結合臭素化合物の水溶液である結合臭素化合物No.A-2を得た。 … 【0072】 (結合臭素化合物No.A-4) 臭化ナトリウム2.9重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム12.9重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を該次亜臭素酸水溶液に加えて、室温(20℃)で10分間撹拌して、結合臭素化合物の水溶液である結合臭素化合物No.A-4を得た。 … 【0138】 【表6】 [図:0001384175000005.jpg] 」 イ 甲3に記載の事項 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 水性系の中にシリカまたは珪酸塩の形成が蔓延するのを防止するための方法であって、前記系に、 a)重量平均分子量約1000~約25000の、(メタ)アクリル酸またはマレイン酸またはそれらの塩の水溶性コポリマーまたはターポリマー、但し、コポリマーは 1)約20~約85重量%の(メタ)アクリル酸またはマレイン酸と、 2)約11超~約80重量%の(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸またはスチレンスルホン酸、または 3)約5~約30重量%の(メタ)アクリルアミドまたは置換(メタ)アクリルアミド、または4)約30~約60重量%のイソブチレンまたはジイソブチレンとから構成されており、そしてターポリマーは 1)約30~約80重量%の(メタ)アクリル酸またはマレイン酸と、 2)約11超~約65重量%の(メタ)アクリルアミノメチルプロパンスルホン酸またはスチレンスルホン酸と、 3)約5~約30重量%の(メタ)アクリルアミドまたは置換(メタ)アクリルアミド、または4)約5~約30重量%のビニルアルコール、アリルアルコール、ビニルもしくはアリルアルコールのエステル、ビニルエステル、スチレン、イソブチレンまたはジイソブチレン、または 5)(メタ)アクリルアミノメチルプロパンスルホン酸が存在する場合に約3~約30重量%のスチレンスルホン酸 とから構成されている、 b)マグネシウムイオン、 c)前記コポリマーまたはターポリマーと、アルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンとの混合物、d)重量平均分子量約1000~約25000のポリ(メタ)アクリル酸またはポリマレイン酸またはそれらの塩と、アルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンとの混合物 からなる群から選択されたスケール抑制剤の有効量を添加することを特徴とする前記方法。」 (イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は水性系中でのシリカおよび珪酸塩の付着問題を制御するための方法に関する。特に、本発明は表面上に珪酸マグネシウムやその他の珪酸塩やシリカスケールが堆積するのを抑制するために特定の低分子量の水溶性の(メタ)アクリル酸系またはマレイン酸系重合体とアルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンを使用することに関する。」 (ウ)「【0019】本発明の目的は、系中に蓄積を許されるシリカの濃度を制限することによって又はシリカ堆積物を労力で除去することによってシリカスケールを処置している機械的手法に代わって、添加剤を使用する化学的方法を提供することである。」 (エ)「【0024】 【発明の詳細】… 【0047】本発明に有効な低分子量コポリマーおよびターポリマーを合成するための更に別の方法は米国特許第3,646,099号に記載されており、その開示も本願明細書の記載の一部として組み入れられる。この方法はシアノ含有オリゴマーの合成に関するものである;しかしながら、本発明に有効な低分子量のポリマーを製造するのにも応用できる。この方法は重合分子量調節剤として重亜硫酸塩を使用しており、それによって製造されて得られた重合体はスルホネート末端基を有している。好ましい重亜硫酸塩は単量体の重量に対して3~20重量%の濃度の重亜硫酸ナトリウムである。遊離基重合開始剤は過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、またはt-ブチルヒドロペルオキシドである。開始剤濃度は単量体に対して約0.2~約10重量%である。重合温度は好ましくは20℃~65℃であり、そして水性溶剤中のポリマーの濃度は溶液の全重量に対して25~55重量%である。」 ウ 甲5に記載の事項 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 アニオン性ポリマーと、ホスホン酸化合物と、スライム抑制剤と、を含有し、 前記アニオン性ポリマーは、モノマー単位として、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩と、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩と、を有する共重合体であり、 前記共重合体における2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び/又はその塩からなるモノマー単位の含有割合は10モル%以上である水処理剤。 【請求項2】 前記ホスホン酸化合物は、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸及び/又はその塩である請求項1記載の水処理剤。 【請求項3】 前記スライム抑制剤は、塩素系酸化剤、スルファミン酸化合物、及びアゾール系化合物を含有する請求項1又は2記載の水処理剤。 【請求項4】 13以上のpHを有し、且つ、前記水処理剤の全質量に対して、(a)有効塩素含有量1~8質量%の次亜塩素酸ナトリウム、(b)1.5~9質量%のスルファミン酸、(c)2.5~20質量%の水酸化ナトリウム、(d)0.05~3質量のアゾール系化合物、(e)固形分濃度2~10質量%のアニオン性ポリマー、及び(f)固形分濃度0.5~4質量%のホスホン酸化合物を含有する請求項3記載の水処理剤。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、冷却水系等の水系の水処理技術に関し、特に水系へのスケール付着を抑制する技術に関する。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし、従来のスケール抑制剤では、水質条件によってはスケール付着の抑制作用が不充分になる場合があった。このため、スケール付着を確実に抑制するためには、スケールの原因になる水質因子(例えば、pH、カルシウム硬度、マグネシウム硬度、酸消費量、イオン状シリカ濃度)を所定値以下に制限する必要がある。すると、冷却対象水の濃縮度を低く抑えざるを得ず、水資源の有効活用の点で好ましくなく、また、上記の水質因子の許容範囲が狭いため、運転条件の自由度が狭い。 【0006】 本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、広範な水質条件において、特に過酷な水質条件においてもスケール付着の抑制能を発揮できる水処理剤及び水処理方法を提供することを目的とする。」 (エ)「【発明を実施するための最良の形態】 … 【0032】 次亜塩素酸イオン及びスルファミン酸は、次式のように反応して、N-モノクロロスルファミン酸イオン又はN,N-ジクロロスルファミン酸イオンを形成し、塩素系酸化剤の有効成分が安定化する点で好ましい。 ClO-+H2NSO3H→HClNSO3-+H2O 2ClO-+H2NSO3H+H+→Cl2NSO3-+2H2O」 (オ)「【実施例】 … 【0049】 また、試験水の水質は、pH9.0、カルシウム硬度150~200mgCaCO3/L、シリカ150~200mgSiO2/Lであった。また、水処理剤としては、アクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸/t-ブチルアクリルアミド共重合体(分子量約10000)を14質量%、リン酸ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)を21質量%、1,2,3-ベンゾトリアゾールを1質量%、48%水酸化カリウム溶液を3質量%、スルファミン酸を1.4質量%、及び水を59.6質量%含有する基本液と、下記の成分を併用した。なお、安定化塩素は、スルファミン酸12質量%、12%次亜塩素酸ナトリウム溶液60質量%、1,2,3-ベンゾトリアゾール1.5質量%、48%水酸化ナトリウム溶液19.3質量%、及び水7.5質量%を用いて生成した。 試験区1:水処理剤(50mg/L)単独 試験区2:水処理剤(50mg/L)+次亜塩素酸ナトリウム(0.5mg/L) 試験区3:水処理剤(50mg/L)+次亜塩素酸ナトリウム(1.0mg/L) 試験区4:水処理剤(50mg/L)+安定化塩素(5mg/L)」 (2)甲2に記載された発明 ア 甲2の上記(1)ア(ア)の【請求項1】には、(A)次亜臭素酸及び/又は次亜臭素酸塩とスルファミン酸及び/又はスルファミン酸塩の反応により得られる結合臭素化合物と、(B)(1)亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールからなる群から選択されるテロゲンとヒドロキシル基を有さない不飽和単量体の反応で得られるテロマー、(2)次亜リン酸及び/又は水溶性次亜リン酸塩とヒドロキシル基を有さない不飽和単量体との反応で得られる有機ホスフィン酸化合物、及び(3)ヒドロキシル基及びアミノ基を有さない有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される1種以上とを、有効成分として含み、組成物のpHを13以上とすることを特徴とする、水系における水処理剤組成物が記載されている。 また、同(エ)の【0021】によれば、結合臭素化合物を製造するには、「臭化物イオン源となる化合物と次亜塩素酸塩を反応させて次亜臭素酸塩水溶液を生成させた後、スルファミン酸塩を添加」しており、「臭化物イオン源となる化合物」として「アルカリ金属の臭化物」が用いられ、同(エ)の【0024】によれば、上記「(A)次亜臭素酸及び/又は次亜臭素酸塩とスルファミン酸及び/又はスルファミン酸塩の反応により得られる結合臭素化合物」は、N-ブロモスルファミン酸が主成分であるが、該結合臭素化合物生成反応において副生する結合塩素化合物のN-クロロスルファミン酸を含んでいてもよいことが理解できる。 そうすると、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 <甲2発明> 「(A)次亜臭素酸及び/又は次亜臭素酸塩とスルファミン酸及び/又はスルファミン酸塩の反応により得られる結合臭素化合物と、(B)(1)亜硫酸、水溶性亜硫酸塩及びアミンチオールからなる群から選択されるテロゲンとヒドロキシル基を有さない不飽和単量体の反応で得られるテロマー、(2)次亜リン酸及び/又は水溶性次亜リン酸塩とヒドロキシル基を有さない不飽和単量体との反応で得られる有機ホスフィン酸化合物、及び(3)ヒドロキシル基及びアミノ基を有さない有機ホスホン酸化合物からなる群から選択される1種以上とを、有効成分として含み、組成物のpHを13以上とすることを特徴とする、水系における水処理剤組成物であって、 結合臭素化合物を製造するには、臭化物イオン源となる化合物と次亜塩素酸塩を反応させて次亜臭素酸塩水溶液を生成させた後、スルファミン酸塩を添加しており、臭化物イオン源となる化合物としてアルカリ金属の臭化物が用いられ、 (A)成分の結合臭素化合物は、N-ブロモスルファミン酸が主成分であるが、該結合臭素化合物生成反応において副生する結合塩素化合物のN-クロロスルファミン酸を含んでいてもよい、水系における水処理剤組成物。」 (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「N-クロロスルファミン酸」は、本件発明1の「クロラミン化合物」に含まれる。また、甲2発明の「水処理剤組成物」は、甲2の上記(1)ア(イ)によれば、水中に添加することで水系の微生物障害やスケール障害を抑制する処理剤そのものであるから、本件発明1の「水処理剤」に相当するといえる。さらに、甲2発明の水処理剤組成物のpHは13以上であるから、本件発明1の水処理剤のpH10以上に包含される。 そうすると両者は、「クロラミン化合物を含有する、pH10以上である、水処理剤。」である点で一致するものの、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点4> 本件発明1の水処理剤は、臭化物塩を含むのに対し、甲2発明の水処理剤組成物は、臭化物塩を含むか否か不明である点。 <相違点5> 本件発明1では、ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.71g-COOH/g―ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマーを含有するのに対し、甲2発明では、当該特定事項を有するか否か不明である点。 <相違点6> 本件発明1では、クロラミン化合物が6~24質量%、ポリマー中のカルボキシル基含有率が0.71g-COOH/g―ポリマー以下であるカルボキシル基ポリマーが1~18質量%と特定されているのに対し、甲2発明では、当該特定事項を有するか否か不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点4及び6を検討する。 まず、相違点4について検討すると、甲2発明において、「結合臭素化合物を製造するには、臭化物イオン源となる化合物と次亜塩素酸塩を反応させて次亜臭素酸塩水溶液を生成させた後、スルファミン酸塩を添加しており、臭化物イオン源となる化合物としてアルカリ金属の臭化物が用いられ」ており、記載上「アルカリ金属の臭化物」は、本件発明1の水処理剤に含有される「臭化物塩」に対応するようにもみえる。しかしながら、甲2発明の「アルカリ金属の臭化物」は、「次亜塩素酸塩を反応させて次亜臭素酸塩水溶液を生成させるもの」であって、当該反応の原料として消費されるものであるから、甲2発明の水処理剤組成物に成分として含有されるものとはいえない。したがって、相違点4は実質的な相違点であると認められる。 さらに、甲2には、甲2発明の水処理剤組成物において、臭化物塩を含有する記載も示唆もないから、甲2発明に基づいて、本件発明1の相違点4に係る構成とする動機付けはない。 次に、相違点6について検討すると、甲2には、相違点6に係るクロラミン化合物、カルボキシル基ポリマーの含有量についての記載は見当たらない。そうすると、上記相違点6は、実質的な相違点である。 さらに、甲2発明の「クロラミン化合物」は、結合臭素化合物生成反応において副生する結合塩素化合物であるN-クロロスルファミン酸であり、水処理剤組成物に含まれてもよいという任意成分にすぎないものである。そして、甲2には、当該任意成分である副生成物の「N-クロロスルファミン酸」の含有割合は記載されておらず、また「副生する」成分であるから、積極的に含有させる成分ではない。そうすると、甲2発明において、本件発明1の相違点6の係る構成を採用する動機付けはない。 また、甲3、4にも、上記相違点4及び6に係る本件発明1の構成に関する記載はないから、甲3、4を考慮したとしても、上記相違点4及び6は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 以上のとおり、上記相違点4及び6に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は「水処理剤」に係る発明であるが、いずれの発明も、発明特定事項に、少なくとも本件発明1の「水処理剤」に係る事項を含むため、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件発明2及び3も、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由2及び3に関するまとめ 以上のとおり、本件発明1~3は、特許法第29条第1項第3号又は同法同条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、申立理由2及び3には理由がない。 第5 むすび 上記第4で検討したとおり、本件特許1~3は、特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、取消理由及び申立理由1~3では、本件特許1~3を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~3を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700805

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