特許異議申立
2021-700670
高圧加工米および該高圧加工米を含む食品用または医薬用組成物
- 審判番号
- 2021-700670
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-150558外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6847457
- 請求日
- 2021年07月12日
- 審決日
- 2022年01月07日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】国立大学法人信州大学
- 【権利者代理人】葛和 清司
- 【異議申立人】株式会社 かどまさや
- 【異議申立人代理人】福島 一
- 分類
- P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6847457号発明「高圧加工米および該高圧加工米を含む食品用または医薬用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6847457号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6847457号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年8月9日(優先権主張 平成29年8月9日)の出願であって、令和3年3月5日にその特許権の設定登録がされ、同年3月24日にその特許公報が発行され、その後、令和3年7月12日に株式会社かどまさや(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明は、登録時の特許請求の範囲の請求項1~7の記載からみて、以下のとおりのものと認める(以下「本件発明1」などと、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
高圧加工米を原料として含む、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するための、食品用または医薬用組成物であって、
高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である、前記組成物。
【請求項2】
水に浸漬された籾または玄米を加温する工程をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
高圧加工米を製粉した米粉を原料として含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
糠成分が、ポリフェノール類、チアミン、ナイアシン、遊離アミノ酸、γ-アミノ酪酸およびフィチン酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
インターバル速歩トレーニングと併用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である高圧加工米であって、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するための、前記高圧加工米。
【請求項7】
請求項6に記載の高圧加工米を炊飯してなる、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するための、米飯。」
第3 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
特許異議申立人が申し立てた理由の概要は次のとおりである。
[理由1]本件特許発明1~7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載の技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
[理由2]本件特許発明1~7の請求項には、物の製造方法が記載されており、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に十分な記載がなく、また、特許権者からの主張・立証が不十分であり、その存在を認める理由は見いだせないから、本件特許発明1ないし本件特許発明7は明確でないため、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。
よって、本件特許発明1~7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
提示された証拠方法は次のとおりである。
甲第1号証:特開2015-61517号公報(以下「甲1」という。下記甲各号証についても同様。)
甲第2号証:「インターバル速歩 無理せず続けられる効果的な運動療法」、[online]、2013年4月8日、糖尿病ネットワーク、[2021年7月4日検索]、インターネット<URL:https://dm-net.co.jp/calendar/2013/019923.php>
甲第3号証:「The effects of free-living interval-walking training on glycemic control, body composition, and physical fitness in type 2 diabetic patients: a randomized, controlled trial」、[online]、2012年9月21日、Diabetes Care,2013 Feb,36(2),228-36、[2021年7月10日検索]、インターネット<URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23002086/>
甲第4号証:「玄米を食べるとなぜ肥満解消? メカニズムを解明」、[online]、2012年7月27日、一般社団法人日本生活習慣病予防協会、[2021年7月4日検索]、インターネット<URL:http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2012/002109.php>
甲第5号証:「White rice, brown rice, and risk of type 2 diabetes in US men and women」,[online]、2010年6月14日、Archives of Internal Medicine,2010 Jun 14,170(11),961-9、[2021年7月10日検索]、インターネット<URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20548009/>
甲第6号証:「Blood glucose lowering effects of brown rice in normal and diabetic subjects」、[online]、2009年7月6日、International Journal of Food Sciences and Nutrition,(2006),Volume 57,Issue 3-4, Pages 151-158、[2021年7月10日検索]、インターネット<URL:https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/09637480500410879?journalCode=iijf20>
甲第7号証:特開2010-63454号公報
甲第8号証:特開2015-84658号公報
(特許異議申立人は、記載不備に関する証拠として、甲第8号証を提出している。)
第4 当審の判断
当審は、本件発明1~7に係る特許は、特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠により取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。
1 理由1について
(1)甲各号証の記載事項及び引用発明
ア 甲各号証の記載事項
甲1:
1a)「【請求項1】
高水圧を印加させた加工玄米であって、
水中に入れた玄米に、10MPa~900MPaの静水圧を印加させることで、当該玄米の遊離フェルラ酸量を増加させたことを特徴とする加工玄米。」
1b)「【0010】
ところで、玄米は、稲の果実の籾から籾殻を除去した状態のものであり、外層のぬか層(果皮、種皮、糊粉層)、内層の胚乳及び胚芽から構成されている。この玄米からぬか層を除去すると、胚乳と胚芽からなる胚芽米となり、胚芽米から胚芽を除去すると、白米(精白米)となる。この白米の胚乳には、約70%の澱粉(炭水化物)が含まれており、白米を常圧で炊くことで、この胚乳の澱粉が糊状となる(糊化)。この玄米は、白米と比較して、ぬか層及び胚芽を有するため、人間が必要とする栄養素をバランスよく含有しており、特に、食物繊維やビタミンB群、ビタミンE等を豊富に含んでいる。玄米のぬか層は、一般に、多糖類アラビノキシランの細胞膜で構成されており、この多糖類アラビノキシランには、遊離フェルラ酸(ポリフェノールの1種、4-オキシ3-メトキシケイ皮酸、C10H10O4、フェルラ酸)が結合している(結合したフェルラ酸を結合フェルラ酸と称する)。
【0011】
遊離フェルラ酸は、γ-オリザノール(遊離フェルラ酸とアルコールのエステル)の主成分であり、遊離フェルラ酸の抗酸化力は、通常、γ-オリザノールの抗酸化力よりも優れており、認知症改善・予防、抗癌作用があることが知られている。例えば、米ぬかから精製された遊離フェルラ酸をアルツハイマー型認知症患者に継続して摂取させると、その患者の認知機能が改善されたことが日本老年医学会で報告されている。又、遊離フェルラ酸は、体内のナチュラルキラー細胞を活性化させ、抗癌作用をすることが米国癌学会で報告されている。更に、遊離フェルラ酸は、脂質の酸化を強く抑制し、加熱しても、その抗酸化性は、殆ど消失しない。従って、遊離フェルラ酸は、自立神経失調(胃潰瘍)の改善、脳機能改善効果(脳内グルコース取込量を増加させる)、血漿板凝集抑制作用などの作用がある。
【0012】
一方、玄米のぬか層では、結合フェルラ酸のままであり、遊離フェルラ酸が殆ど存在せず(検出限界以下)、玄米のぬか層が体内に入っても、ぬか層の結合フェルラ酸が、遊離フェルラ酸として切断されること無く、体外に排出される。そのため、従来では、玄米が本来備えている遊離フェルラ酸を有効に活用できないという問題がある。もちろん、上述した特許文献1-7に記載の技術には、玄米と遊離フェルラ酸量との関係について詳細な記載が無い。」
1c)「【0014】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な加工玄米、発酵食品、加工玄米の製造装置、加工玄米の製造方法を完成させた。即ち、高水圧を印加させた加工玄米であって、水中に入れた玄米に、10MPa~900MPaの静水圧を印加させることで、当該玄米の遊離フェルラ酸量を増加させたことを特徴とする。
・・・
【0022】
即ち、本発明は、高水圧を印加させた加工玄米であって、水中に入れた玄米に、10MPa(100atm)~900MPa(9000atm)の静水圧を印加させることで、当該玄米の遊離フェルラ酸量を増加させることを特徴とする。これにより、高水圧の印加に基づいて、前記玄米のぬか層の多糖質アラビノキシランに結合した結合フェルラ酸を強制的に切断させて、当該玄米の遊離フェルラ酸量を、通常の玄米と比較して顕著に増加させることが可能となる。そして、ユーザが本発明の加工玄米を食すると、今まで活用されていなかった遊離フェルラ酸を容易に摂取することが可能となり、認知症の改善・予防、抗癌作用の効果を期待することが可能となる。」
1d)「【0026】
ここで、本発明で使用する玄米は、通常の玄米であれば、特に限定は無い。例えば、発芽前の玄米、発芽後の玄米、うるち玄米、もち玄米等が挙げられる。又、玄米の形態は、特に限定は無く、玄米そのままでも、玄米の破砕物や紛体物でも構わない。又、玄米を入れる水の種類は、特に限定は無い。例えば、前記水は、通常の飲料水、栄養素を水に添加した栄養水が挙げられる。ここで、玄米を栄養水に入れて高水圧を印加すると、玄米の内部に栄養素を強制的に浸透させることが可能となり、加工玄米の栄養価を更に高めることが可能となる。
・・・
【0028】
又、玄米に静水圧を印加する際の水温は、特に限定は無い。例えば、前記水温は、-5度~40度の範囲内が好ましく、0度から35度の範囲内が更に好ましく、5度から25度の範囲内が最も好ましい。通常、高水圧を水に印加すれば、水温は全体として10度程度上昇する場合があり、この場合、玄米が熱で変性する可能性がある。そのため、前記水温を、常温又は常温よりやや低い水温にすることで、上述の高水圧の印加に伴う温度上昇を防止し、前記玄米の熱変性を確実に防止して、当該玄米の遊離フェルラ酸量を顕著に増加させることが可能となる。一方、前記水温は40度を超過すると、玄米が熱で炊けた状態になり、静水圧が結合フェルラ酸の切断に寄与しない場合があり、好ましくない。」
1e)「【0036】
<加工玄米を原料とした発酵食品>
本発明の加工玄米の利用方法は、特に限定は無い。例えば、加工玄米をそのまま又は白米と混合して、常圧で炊いて食しても良いし、食品の原料(原材料)として利用しても良い。ここで、前記食品は、例えば、パン、酒、酒粕、チョコレート菓子、氷菓、煎餅等の米華、ビーフン等の麺類等が挙げられる。又、加工玄米を原料とする場合、その形態は、特に限定は無い。例えば、加工玄米そのまま利用(添加)しても、加工玄米の破砕物や紛体物を利用しても構わない。」
1f)「【0059】
本発明の製造方法を図1に示す製造装置を用いて詳細に説明すると、先ず、図2Aに示すように、製造者が、前記受圧部10の開口部10aを介して、収容部10bの内部に、所定量の玄米Bを入れるとともに、当該玄米Bが水中で浸されるまで、ホースで水Wを入れる。ここで、玄米Bを収容部10bの内部に入れる際に、例えば、図1Bに示すように、耐圧性の袋に所定量の玄米Bと所定量の水Wとを入れておき、この袋を収容部10bの内部に入れるようにする。これにより、玄米Bに浸透する水Wを、収容部10bの内壁に接触しない清潔な水にすることが出来る。又、収容部10bの内部に、前記袋を入れた後に、水Wを入れる場合、内部が水Wで満杯になるように水Wを入れると、内部の空気が抜けて好ましい。」
甲2:
2a)「速歩きとゆっくり歩きを数分間で交互に繰り返す「インターバル速歩」が、2型糖尿病など生活習慣病のリスクの高い中高年も効果的に行える運動法として注目されている。」(1/4頁本文1~3行)
2b)「インターバル速歩により血糖値が低下 CGMによる血糖測定で判明
2型糖尿病患者を対象とした介入試験もデンマークで行われた。コペンハーゲン大学保健科学部のKristian Karstoft氏らが、「Diabetes Care」2013年2月号に発表した。
被験者を、▽運動を行わないコントロール群(8人)、▽普通歩行群(12人)、▽インターバル速歩群(12人)に分け、4ヵ月間追跡し比較した。歩行群と速歩群は、1回60分のウォーキングを週5回行った。
試験に参加した2型糖尿病患者の年齢は57~61歳、体格指数(BMI)は29.0~29.7、試験開始時のHbA1cは普通歩行群が6.6%、インターバル速歩群が6.9%だった。
4ヵ月後、インターバル速歩群ではVO2maxが16%上昇したほか、体格指数(BMI)と体脂肪が減少し、体重は4kg減少した。普通歩行群では、ほとんど変化はなかった。
また、持続血糖モニター(CGM)による血糖測定も行った。インターバル速歩群では平均血糖値が14.4mg/dL(0.8mmol/L)、最高血糖値が50.4mg/dL(2.8mmol/L)それぞれ低下した。一方、普通歩行群では変化しなかった。
また、β細胞機能を反映するディスポジション指数(DI値)は普通歩行群に比べ、インターバル速歩群が有意に高くなっており、血糖改善に寄与した可能性が示唆された。」(2/4頁5~19行)
甲3(訳文で示す。):
3a)「2型糖尿病患者の血糖コントロール、体組成、および体力に対する自由生活インターバルウォーキングトレーニングの効果:ランダム化比較試験」(表題)
3b)「概要
目的:2型糖尿病患者における自由生活歩行トレーニングの実現可能性を評価し、体力、体組成、および血糖コントロールに対するインターバルウォーキングトレーニングと連続ウォーキングトレーニングの効果を調査すること。
研究デザインと方法:2型糖尿病の被験者は、対照群(n=8)、連続歩行群(n=12)、または間隔歩行群(n=12)にランダム化されました。トレーニンググループは、週に5セッション(60分/セッション)を処方され、加速度計と心拍数モニターで制御されました。連続歩行者は中程度の強度ですべてのトレーニングを実行しましたが、インターバル歩行者は低強度と高強度で3分間の繰り返しを交互に行いました。4か月の介人の前後に、次の変数が測定されました:VO(2)max、体組成、および血糖コントロール(空腹時血糖、HbA(lc)、経口ブドウ糖負荷試験、および継続的血糖モニタリング[CGM])。
結果:トレーニングの順守は高く(89±4%)、トレーニングのエネルギー消費量と平均強度は同等でした。VO(2)maxは、インターバルウォーキンググループで16.1±3.7%増加しましたが(P<0.05)、連続ウォーキンググループまたはコントロールグループでは変化は観察されませんでした。体重と肥満(脂肪量と内臓脂肪)は、インターバルウォーキンググループのみで減少しました(P<0.05)。血糖コントロール(平均CGM血糖値の上昇と空腹時インスリンの増加)は対照群(P<0.05)で悪化しましたが、平均(P=0.05)と最大(P<0.05)のCGM血糖値はインターバルウォーキング群で減少しました。継続的な歩行者は、血糖コントロールに変化を示しませんでした。
結論:自由生活歩行トレーニングは、2型糖尿病患者で実行可能です。連続歩行は、対照群で見られる血糖の悪化を相殺し、インターバル歩行は、体力、体組成、および血糖コントロールを改善するために、エネルギー消費量が一致する連続歩行よりも優れています。」(概要)
甲4:
4a)「琉球大学の研究グループは、玄米に高濃度に含まれる成分「γ(ガンマ)-オリザノール」が、高脂肪食に対する好みをやわらげ、肥満や2型糖尿病を改善させる効果があることを突き止めたと発表した。」(1/3頁本文1~3行)
4b)「琉球大学の益崎教授(内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)らの研究グループは、玄米に高い濃度で含まれる「γ-オリザノール」という成分に、抗肥満、抗糖尿病効果があることをあきらかにした。研究成果は米国糖尿病学会誌「Diabetes」に発表された。
沖縄県のメタボリックシンドロームの人を対象に、玄米を食べるグループと白米を食べるグループとでどのような違いがあるかを調べた研究がある。玄米をよく食べるグループでは、体重の減量、血糖値の低下、血管年齢の改善などの効果のあるという結果になった。」(1/3頁本文5~14行)
甲5(訳文で示す。):
5a)「白米、玄米、および米国の男性と女性における2型糖尿病のリスク」(表題)
5b)「概要
背景:加工と栄養素の違いにより、玄米と白米は2型糖尿病のリスクに異なる影響を与える可能性があります。医療従事者の追跡調査と看護師の健康調査IおよびIIで、2型糖尿病リスクに関連する白米と玄米の消費量を前向きに調査しました。
方法:これらのコホートの39,765人の男性と157,463人の女性の間で、食事、ライフスタイルの実践、および病状を前向きに確認および更新しました。
結果:年齢やその他のライフスタイルおよび食事の危険因子を多変量調整した後、白米の摂取量が多いと(週に5食以上対月に1食未満)、2型糖尿病のリスクが高くなります:プール相対リスク解析(95%信頼区間[CI])、1.17(1.02-1.36)。対照的に、玄米の摂取量が多い(週に2食以上対月に1食未満) と、2型糖尿病のリスクが低くなりました:プール相対リスク解析、0.89(95%CI、0.81-0.97)。白米の50g/d(調理済み、1日3分の1食に相当)の摂取量を同量の玄米に置き換えると、リスクが16%(95%CI、9%-21%)低くなると推定されました。2型糖尿病の場合、グループと同じ全粒穀物への置き換えは、36%(30%-42%)の糖尿病リスクの低下と関連していました[修正済み]。
結諭:玄米を含む全粒穀物を白米に置き換えると、2型糖尿病のリスクが低下する可能性があります。これらのデータは、2型糖尿病の予防に役立つように、ほとんどの炭水化物摂取量は精製穀物ではなく全粒穀物から摂取する必要があるという推奨を裏付けています。」(概要)
甲6(訳文で示す。):
6a)「正常および糖尿病患者における玄米の血糖降下作用」(表題)
6b)「概要
低血糖反応を引き起こす炭水化物食品は、糖尿病や高脂血症などの慢性疾患の食事管理に有益であることが示されています。この研究では、インビトロでのデンプン消化率を測定し、ランダムクロスオーバー設計で、同じバッチおよび品種の精米と比較した、玄米に対する10人の健康なボランティアと9人の2型糖尿病ボランティアの食後血糖反応を測定しました。インビトロで放出される総糖は、玄米の方が精米よりも23.7%低かった。健康なボランティアでは、玄米のグリセミック面積とグリセミック指数は、精米よりもそれぞれ19.8%と12.1%低く(p<0.05)、糖尿病患者では、それぞれの値が35.2%と35.6%低かった。この効果の一部は、精米と比較して茶色のフィチン酸、ポリフェノール、食物繊維、油の量が多いことと、最小調理時間や糊化の程度など、米サンプルのいくつかの物理化学的特性の違いによるものでした。結論として、玄米は、精米よりも糖尿病患者や高血糖症の人にとって健康に有益な食品です。」(概要)
甲7:
7a)「【請求項1】
外皮付き穀物を加圧下、および/または加温下で、水に浸漬することにより、ポリフェノール成分を増加させると共に外皮から内側に浸透移行させ、内側の可食部分にポリフェノール成分を富化することを特徴とする穀物のポリフェノール富化加工方法。
【請求項2】
前記穀物は、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、ハト麦、米、とうもろこし、アワ、ヒエ、キビ、およびモロコシから選ばれる穀類、または、蕎麦、韃靼蕎麦、およびキノアから選ばれる擬穀類、または、大豆、小豆、緑豆、ササゲ、インゲン豆、落花生、およびカカオ豆から選ばれる豆類であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェノール富化加工方法。」
7b)「【0034】
本発明に用いる穀物のうち穀類としては、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、ハト麦、米、とうもろこし、アワ、ヒエ、キビ、およびモロコシなどを例示することができ、擬穀類としては蕎麦、韃靼蕎麦、およびキノアなどを例示することができる。これらの穀類の穀粒は、可食部分の胚乳を外皮で覆っている。外皮は、例えば、小麦ではふすま、稲ではもみ殻やぬか、蕎麦ではそば殻などともいわれ、食用材料への加工時や製粉時に除去される。また、本発明に用いる穀物のうち豆類としては、大豆、小豆、緑豆、ササゲ、インゲン豆、落花生、およびカカオ豆などを例示することができる。これらの豆類には、果皮や莢ともよばれる外皮があり、可食部分としての豆粒を覆っている。本発明方法は、収穫時にはこのような外皮に包まれて、食用材とするときにこの外皮を除去する穀類、擬穀類、および豆類などの穀物に適用することができる。」
7c)「【0053】
また、この本発明方法により加工された小麦粒から外皮を除去して粒のまま食品としてもよいし、飲料に加工してもよい。このように原材料としての形態は限定されず、さまざまな食品に加工することができる。」
イ 引用発明
甲1には、加工玄米についての記載があるところ(摘示1a~1f)、加工玄米を食品の原料として利用することが記載されているから、甲1には、
「高水圧を印加させた加工玄米であって、水中に入れた玄米に、10MPa~900MPaの静水圧を印加させることで、当該玄米の遊離フェルラ酸量を増加させたことを特徴とする食品用の加工玄米。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
(2)判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「高水圧を印加させた加工玄米」は、本件発明1の「高圧加工米」に相当する。
甲1発明は、「水中に入れた玄米に、10MPa~900MPaの静水圧を印加させる」ものであるところ、甲1には、甲1発明に関する記載として、「水Wを入れる場合、内部が水Wで満杯になるように水Wを入れる」ことが記載されている(摘示1f【0059】)から、本件発明1の「高圧加工米が、籾または玄米を」、「水に浸漬した状態で、加圧する」ことに相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは
「高圧加工米が、籾または玄米を、水に浸漬した状態で、加圧することにより、得られた玄米」に関するものである点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は「高圧加工米を原料として含む、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するための、食品用または医薬用組成物」と特定しているのに対し、甲1発明は、「食品用の加工玄米」である点。
<相違点2>
高圧加工米の加圧について、本件発明1は「該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水」に浸漬した状態で、加圧すると特定しているのに対し、甲1発明はかかる水の量を特定していない点。
<相違点3>
加圧すること及び加圧等により得られる物について、本件発明1は「糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である」と特定しているのに対し、甲1発明は「当該玄米の遊離フェルラ酸量を増加させた」、「加工玄米」である点。
上記相違点について検討する。
甲1は、自律神経失調の改善、脳機能改善効果、血漿板凝集抑制作用などの改善のための遊離フェルラ酸と玄米との関係に着目したものであり(摘示1b)、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するために加工玄米を用いることについて記載も示唆もしていない。
甲2には、インターバル速歩トレーニングにより血糖値が低下することが(摘示2a~2b)、甲3には、インターバル歩行は血糖コントロールを改善することが(摘示3a~3b)、甲4には、玄米に含まれるγ-オリザノールという成分に、抗肥満、抗糖尿病効果があり、玄米をよく食べるグループでは、血糖値の低下等の効果があることが(摘示4a~4b)、甲5には、玄米を含む全粒穀物を白米に対して置き換えると、2型糖尿病のリスクが低下する可能性があることが(摘示5a~5b)、甲6には、インビトロで放出される総糖は、玄米の方が精米よりも低く、玄米は、精米よりも糖尿病患者や高血糖症の人にとって健康に有益な食品であることが(摘示6a~6b)、甲7には、外皮付き穀物を加圧下、および/または加温下で、水に浸漬することにより、ポリフェノール成分を増加させると共に外皮から内側に浸透移行させ、内側の可食部分にポリフェノール成分を富化すること、食用材とするときにこの外皮を除去することが(摘示7a~7c)記載されている。
ここで、本件発明1は、高圧加工米とすることにより、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するためのものであるところ、甲2~甲7のいずれにも、高圧加工米とすることによって、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強することの知見に関して記載も示唆もない。そして、それが本件優先日における技術常識であるともいえない。
してみると、相違点1に係る本件発明1の技術的事項は、甲1~甲7に記載された事項及び技術常識から当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。
そして、本件発明1は、生活習慣病の治療、予防または改善効果が得られる、運動処方を実施してもなお、生活習慣病の改善効果が頭打ちになっている対象者に対し、生活習慣病の改善効果が得られる、持続的に摂取することにより、生活習慣病の改善の中でも、食事後の血糖上昇が抑制され、血糖調節機能を改善する等の効果を奏するものである(【0012】~【0015】)。
してみると、相違点2、3を検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は本件発明1を引用し、さらに技術的事項を限定した発明である。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明2~5は甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明6について
本件発明1の場合と同様に本件発明6と甲1発明とを対比する。
上記アで述べたことを考慮すると、本件発明6と甲1発明とは、
「籾または玄米を、水に浸漬した状態で、加圧することにより、得られた高圧加工米」に関するものである点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4>
高圧加工米について、本件発明6は「インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するための」と特定しているのに対し、甲1発明はかかる特定をしていない点。
<相違点5>
高圧加工米の加圧について、本件発明6は「該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水」に浸漬した状態で、加圧すると特定しているのに対し、甲1発明はかかる水の量を特定していない点。
<相違点6>
加圧すること及び加圧等により得られる物について、本件発明6は「糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である」と特定しているのに対し、甲1発明は「当該玄米の遊離フェルラ酸量を増加させた」、「加工玄米」である点。
上記相違点について検討するに、相違点4における、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強する点については、上記相違点1と同様の相違点であるから、その判断についても同様である。
また、本件発明6は上記アで述べた本件発明1が奏する効果と同様の効果を奏するものである。
したがって、相違点5、6を検討するまでもなく、本件発明6は甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件発明7について
本件発明7は本件発明6を引用し、さらに技術的事項を限定した発明である。
したがって、本件発明6と同様に、本件発明7は甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載の技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において(特に13頁下から6~最下行)、上記相違点1及び4と同様の相違点について、甲2記載事項ないし甲3記載事項は、インターバル速歩による血糖値上昇抑制効果を示し、甲4記載事項ないし甲6記載事項は、玄米の摂取による血糖値上昇抑制効果を示すため、課題が共通し、作用、機能も共通することから、甲2記載事項ないし甲6記載事項を甲1発明に適用することは、先行技術の単なる寄せ集めに過ぎず、容易に想到し得るものである旨主張するが、上記相違点1、4に関して述べたとおり、甲1~甲7のいずれにも、高圧加工米とすることによって、インターバル速歩トレーニングによる血糖値上昇抑制効果を増強するために用いることは記載も示唆もないから、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、理由1には理由がない。
2 理由2について
(1)特許異議申立人の主張は、概要、以下のとおりである。
本件特許発明1は、「組成物」であるが、本件特許発明1の請求項には、「高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米」という、その物の製造方法が記載されている。
ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られる。
特許権者は、令和2年3月26日提出の意見書において、本願はいわゆるプロダクト・バイ・プロセスクレームが認められるべき典型的な例にあたることを主張している。
しかしながら、本件特許発明1は、成分富化籾、成分富化玄米、又は成分富化精白米の「組成物」であり、その糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化する際に、ことさら化学反応が生じることも無い。実際、特許権者は、本件特許明細書において、外観の比較を試みており、整粒数が増加していることを示している。
すると、出願時において、特許権者は、物の構造又は特性を解析することを試みており、物を特定する基準がないということは全く考えられず、本件特許発明1は、出願時において物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能ということは出来ない。
また、特許権者は、出願時において、表8~10を添付していることから、膨大な時間、費用、労力を要するとも言い難く、本件特許発明1は、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出又は時間を要するということは出来ない。
さらに、特許権者は、同一発明者で、過去、甲8の特許公開公報に係る発明を特許出願しており、その際には、玄米の断面のSEM像を撮影して、玄米の構造又は特性を解析する試みをしている。即ち、物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能とは言えず、また、SEM像の撮影についても、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出又は時間を要するとも考えられない。
そのため、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に十分な記載がなく、また、特許権者からの主張・立証が不十分であり、その存在を認める理由は見いだせない。
(2)そこで、検討する。
本件発明1は、高圧加工米を原料として含む、食品用または医薬用組成物に関するものであるところ、当該高圧米について、「高圧加工米が、籾または玄米を、該籾または玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米である」と特定していることから、特許異議申立人が主張するとおり、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合であるといえる。
そこで、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するか否かについて検討する。
本件発明1に係る「高圧加工米」を構造又は特性により直接特定するためには、「糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化し、得られた成分富化籾または成分富化玄米、あるいは、得られた成分富化籾または成分富化玄米を精米してなる成分富化精白米」において、その構造又は特性を分析し数値化する必要があるところ、成分富化籾、成分富化玄米又は成分富化精白米の製造において、圧力、時間、温度、水分添加量等の処理条件や、精白米を籾から製造するか玄米から製造するか等によって、化学反応が起こるかどうかはともかく(なお、甲1の【0022】の「高水圧の印加に基づいて、前記玄米のぬか層の多糖質アラビノキシランに結合した結合フェルラ酸を強制的に切断させて、当該玄米の遊離フェルラ酸量を、通常の玄米と比較して顕著に増加させることが可能となる」との記載からは、高水圧の印加によって何らかの成分変化が起きることが考えられる。)、少なくとも、糠成分が糠から胚乳に浸透移行し、胚乳における該糠成分が富化される程度に変化が生じるといえ、それに応じて製造される高圧加工米の構造又は特性が異なるものいえ、また、外観(粒の割れ)も異なる(表8~10)といえる。
そして、本件明細書に記載の外観や甲8にも記載のSEM像によっては(甲8においては、SEM像の観察から、でんぷんの形状が口にいれたときの食感や手触り(触感)を向上させるのに寄与しているとしている(甲8、【0032】、【0042】)。)、観察面の視覚的な性質しか理解できず、それらによっては、高圧加工米の構造又は特性を適切に特定することはできないといえるから、本件明細書において、効果の確認は十分に示されている本件発明1の特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載できるとはいえない。
さらに、本件発明1のような高圧加工米について、構造又は特性を特定する当該技術分野における確立された基準が存在するともいえないから、当該高圧加工米を構造又は特性により特定するためには、様々な角度からの分析、解析をする必要があるといえるころ、これには膨大な時間、費用、労力を要するといえる。
してみると、本件発明1の高圧加工米を原料として含む、食品用または医薬用組成物については、その構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するといえる。
したがって、本件発明1は明確であるといえる。
本件発明2~7についても同様である。
よって、理由2には理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700670