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特許異議申立

2022-700046

六方晶窒化ホウ素単結晶、該六方晶窒化ホウ素単結晶を配合した複合材組成物および該複合材組成物を成形してなる放熱部材

審判番号
2022-700046
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-119520
登録番号
6905719
請求日
2022年01月20日
審決日
2022年12月27日
公報発行日
2023年04月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】佐貫 伸一
  • 【権利者代理人】高田 大輔
  • 【権利者代理人】下田 俊明
  • 【権利者】国立大学法人信州大学
  • 【権利者代理人】佐貫 伸一
  • 【権利者代理人】高田 大輔
  • 【権利者代理人】下田 俊明
  • 【異議申立人】松永 健太郎
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 宮澤 尚之
  • 審判官 正 知晃
分類
P1651.536-YAA(C30B) / P1651.537-YAA(C30B) / P1651.852-YAA(C30B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6905719号発明「六方晶窒化ホウ素単結晶、該六方晶窒化ホウ素単結晶を配合した複合材組成物および該複合材組成物を成形してなる放熱部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6905719号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第6905719号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6905719号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成27年2月2日に出願した特願2015-18847号の一部を令和1年6月27日に新たな特許出願として出願され、令和3年6月30日にその特許権の設定登録がされ、同年7月21日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~4に係る特許に対して、令和4年1月20日に特許異議申立人松永健太郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年6月9日付けで取消理由の通知がされ、同年8月9日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年10月14日に申立人により意見書の提出がされた。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年8月9日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~4を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1) 訂正事項1 明細書の段落【0014】に「その粒子の結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅を実測し平均することにより求めることができる。」と記載されているのを、「その粒子の結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅を実測することにより求めることができる。」に訂正する。 (2) 訂正事項2 明細書の段落【0015】に「1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長を平均した値である。」と記載されているのを、「1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長である。」に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 当審は、訂正事項1及び2は、「誤記の訂正」を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない、と判断する。 以下、その理由について詳述する。 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的の適否について (ア) 「誤記の訂正」の適否の判断手法 「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうので、以下、この観点に沿って検討する。 (イ) 特許請求の範囲の記載について a 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1には、「結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅、で定義されるアスペクト比が0.3以上1.5以下であり、自形結晶または半自形結晶である六方晶窒化ホウ素単結晶。」と記載されているところ、当該記載における「アスペクト比」が本来意味していることについて検討する。 b 設定登録時の明細書には、「六方晶窒化ホウ素(h-BN)」は、「絶縁性であるにもかかわらず高い熱伝導性を有することから、このような放熱部材用熱伝導性フィラーとして注目を集めている。」こと(段落【0002】)、「h-BNは板状結晶であり」、「板面内」と「厚さ方向」で「大きな熱伝導異方性が生じ」、「h-BN板状結晶をフィラーとして樹脂などに配合して複合材組成物を作製する場合、得られた複合材組成物に対して、特定方向には高熱伝導だがそれに垂直な方向には低熱伝導というように、h-BN板状結晶の熱伝導異方性が転写されるという問題が生じる。」こと(段落【0003】)、及び、「仮に、「結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅」で定義されるアスペクト比が1に近いh-BN単結晶をフィラーとして用いることが出来れば、上述のような熱伝導異方性の転写は起こらない」ところ、「上記アスペクト比が1に近いh-BN単結晶を成長させる方法はこれまでに存在しなかった。」こと(段落【0005】)などの背景技術を前提とした上で、「本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、上記アスペクト比が1に近いh-BN単結晶、具体的には上記アスペクト比が0.3以上のh-BN単結晶を提供することを目的」とすること(段落【0008】)が記載されている。 c これらの記載からすれば、前記請求項1に係る発明の主旨は、「熱伝導異方性が転写されるという問題が生じる」「h-BN板状結晶」に代わるものとして、「熱伝導異方性の転写は起こらない」ように「六方晶窒化ホウ素単結晶」自体のアスペクト比を工夫したものであると認められるから、当該請求項1における「アスペクト比」の本来の意味は、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」のアスペクト比であるということができる。 (ウ) 明細書の【実施例】の記載について a 設定登録時の明細書の段落【0037】には、「アスペクト比は、走査型電子顕微鏡(Zeiss Ultra55、加速電圧3kV)を用いて測定された5万倍の画像から、自形および/または半自形の粒子の結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅を実測することにより求めた。」と記載されているところ、当該記載中の「自形および/または半自形の粒子」は、その文字どおり、なにがしかの「粒子」を意味していることは明らかであるから、上記記載は、5万倍のSEM画像の1つの自形又は半自形の粒子に対して、結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅を実測することにより、アスペクト比を求めたことを意味していると理解するのが合理的である。そのため、当該記載中の「アスペクト比」は、1つ結晶粒子のアスペクト比を示しているといえる。 b また、設定登録時の明細書の実施例1には、「原料h-BN粉末としては市販のh-BN原料粉末A(XRD解析(X線源:CuKα)において002面のピーク半値幅が0.67°、酸素濃度8質量%)を、リチウム塩としては市販のLi2CO3粉末(純度99.0%)を用いた。原料h-BN粉末と融点が723℃であるLi2CO3の量は、それぞれ50mol%とした。h-BN原料粉末AとLi2CO3を坩堝に入れ、窒素流通下、1000℃で5時間熱処理を行った。熱処理試料からフラックスを溶解除去(1M塩酸にて不純物を溶解)し、試料Aを得た」こと、及び、「試料Aはh-BN原料粉末Aと異なる構造を持ち、アスペクト比は0.33~1.5の結晶が含有される事が判った」ことが記載されている(段落【0038】)。 ここで、「試料A」について記載された「アスペクト比は0.33~1.5の結晶が含有される事」とは、試料Aは複数の結晶粒子からなっており、それぞれの結晶粒子のアスペクト比が0.33~1.5の範囲のものを含んでいることを意味していると解するのが合理的であるから、実施例1における「アスペクト比」についても、1つ結晶粒子のアスペクト比を示しているといえる。 c さらに、設定登録時の明細書の比較例1には、「試料Bの形状はh-BN原料粉末Bと変わらず板状のままであることが判った。また、試料Bのアスペクト比は0.2以下であった」こと(段落【0039】)、比較例2には、「結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅、で定義されるアスペクト比を算出可能な結晶性を有していなかった」こと(段落【0040】)、及び、比較例3、4には、「結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅、で定義されるアスペクト比を算出可能な結晶性を有していなかった」こと(段落【0041】)がそれぞれ記載されているところ、これらの記載における「アスペクト比」も前記a及びbと同様に解釈することができる。 d 以上のとおり、設定登録時の明細書の【実施例】における「アスペクト比」が本来意味するところについてみても、前記(イ)において検討した、特許請求の範囲の記載中での意味合いと同じであり、両者に矛盾はみられない。 (エ) 明細書の段落【0014】の記載について 設定登録時の明細書の段落【0014】には、「本明細書で規定するアスペクト比は、走査型電子顕微鏡を用いて測定された5万倍の画像から、自形および/または半自形の粒子を選択し、その粒子の結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅を実測し平均することにより求めることができる。」と記載されている。 ここでいう、「本明細書で規定するアスペクト比は」、「その粒子の結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅を実測し平均することにより求める」という事項は、前記(イ)及び(ウ)で検討し理解した、「アスペクト比」の本来の意味とは明らかに異なるものである。 (オ) 訂正の目的の適否の判断 そうすると、訂正事項1に係る明細書の段落【0014】についてする訂正は、「アスペクト比」に関し、単に、その本体の意味内容を示す字句に正すものというべきであり、その訂正によって、訂正前後の記載内容が、客観的にみて異なる意味を表示したものとなったとは言い難い。 したがって、前記(ア)の判断手法に従えば、訂正事項1は、「誤記の訂正」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 「誤記の訂正」を目的とする訂正の適否を判断する際に基準となる明細書、特許請求の範囲又は図面は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面である。 そこで検討するに、願書に最初に添付された明細書には、前記アで検討した設定登録時の明細書の記載内容が記載されていることから、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 設定登録時の請求項1における「アスペクト比」の本来の意味は、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」のアスペクト比であって、段落【0014】の誤記を訂正することによって、その意味することが拡張又は変更されるものでないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的の適否について 設定登録時の明細書及び特許請求の範囲の「ab面の最大幅」及び「結晶c軸方向の最大厚さ」の本来の意味は、前記(1)アでの検討と同様に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1及び2並びに明細書の実施例の記載からして、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」のab面の最大幅及び結晶c軸方向の最大厚さであるということができる。 これに対して、設定登録時の明細書の段落【0015】には、「h-BN単結晶のab面の最大幅、及び結晶c軸方向の最大厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子1粒を拡大し、1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長を平均した値である。」と記載され、特に、当該記載における「一次粒子の最大長を平均した値である」は、「ab面の最大幅」及び「結晶c軸方向の最大厚さ」の本来の意味とは明らかに異なっている。しかしながら、「1粒の粒子を構成している一次粒子」が、h-BN単結晶の1粒の一次粒子を意味していると理解でき、また、前記記載の「ab面の最大幅」及び「結晶c軸方向の最大厚さ」が、前記のとおり、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」のab面の最大幅及び結晶c軸方向の最大厚さを示していることからすれば、段落【0015】の前記記載は、当然に訂正後の「h-BN単結晶のab面の最大幅、及び結晶c軸方向の最大厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子1粒を拡大し、1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長である。」との記載と同一の意味を表示しているものと、客観的に認めることができる。 したがって、訂正事項2は、前記(1)ア(ア)の判断手法に従えば、「誤記の訂正」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 「誤記の訂正」を目的とする訂正の適否を判断する際に基準となる明細書、特許請求の範囲又は図面は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面である。 そこで検討するに、願書に最初に添付された明細書には、前記アで検討した設定登録時の明細書の記載内容が記載されていることから、訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 設定登録時の請求項1又は2における「結晶c軸方向の最大厚さ」及び「結晶ab面の最大幅」の本来の意味は、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」の結晶c軸方向の最大厚さ及び結晶ab面の最大幅であって、段落【0015】の誤記を訂正することによって、その意味することが拡張又は変更されるものでないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 申立人の主張についての検討 ア 申立人の主張の概要 申立人は、(i)請求項1に係る「単結晶」について、甲第2号証(特開2001-354500号公報)を証拠として、単に「アスペクト比」と特定されていれば、それが1つの単結晶のアスペクト比を必ず意味するものでないこと、及び、(ii)明細書の段落【0014】、【0015】及び【0038】の記載が、複数のh-BN結晶の集合体を前提にしているため、段落【0014】の「アスペクト比」や段落【0015】の「ab面の最大幅、及び結晶c軸方向の最大厚さ」が平均値を示しても不合理はないことを論拠にして、訂正事項1及び2は、誤記の訂正を目的とするものでない旨を主張している(令和4年10月14日付け意見書の3(1)参照)。 イ (i)の論拠について 前記(1)ア(イ)で検討したとおり、明細書に記載された発明が解決しようとする課題をふまえれば、請求項1における「アスペクト比」の本来の意味は、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」のアスペクト比であるということができるから、甲第2号証の記載に関わらず、前記(i)の論拠は採用できない。 ウ (ii)の論拠について 前記(1)ア及び(2)アで検討したとおり、請求項1における「アスペクト比」、「ab面の最大幅」及び「結晶c軸方向の最大厚さ」の本来の意味は、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」に対するものである。そして、このことは、複数の六方晶窒化ホウ素単結晶の集合体における、それぞれの単結晶粒子に対するものであって、段落【0014】、【0015】及び【0038】の記載の前提とも矛盾しないから、前記(ii)の論拠は採用できない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅、で定義されるアスペクト比が0.3以上1.5以下であり、自形結晶または半自形結晶である六方晶窒化ホウ素単結晶。 【請求項2】 前記結晶ab面の最大幅が100nm以上である請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素単結晶。 【請求項3】 請求項1又は2に記載された六方晶窒化ホウ素単結晶をマトリクスに配合させてなる、複合材組成物。 【請求項4】 請求項3に記載の複合材組成物を成形してなる、放熱部材。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和4年6月9日付けで特許権者に通知した取消理由は、要するに、設定登録時の明細書の段落【0014】及び【0015】の「アスペクト比」、「結晶c軸方向の最大厚さ」及び「結晶ab面の最大幅」に関する記載が、本件発明1における「結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅、で定義されるアスペクト比」が特定された「自形結晶または半自形結晶である六方晶窒化ホウ素単結晶」の解釈と矛盾するため、本件発明1における「六方晶窒化ホウ素単結晶」及び「アスペクト比」の意義が不明確であることを論拠として、設定登録時の請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである。 2 取消理由に対する当審の判断 本件訂正により、設定登録時の明細書の段落【0014】は、「本明細書で規定するアスペクト比は、走査型電子顕微鏡を用いて測定された5万倍の画像から、自形および/または半自形の粒子を選択し、その粒子の結晶c軸方向の最大厚さ/結晶ab面の最大幅を実測することにより求めることができる。」に、また、同【0015】は、「h-BN単結晶のab面の最大幅、及び結晶c軸方向の最大厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子1粒を拡大し、1粒の粒子を構成している一次粒子について、画像上で観察できる一次粒子の最大長である。」に、それぞれ訂正され、本件発明1の解釈と矛盾することがなくなったため、本件発明1における「六方晶窒化ホウ素単結晶」及び「アスペクト比」が、それぞれ、1つの単結晶粒子である「六方晶窒化ホウ素単結晶」及びそのアスペクト比を示していることが明確になった。 したがって、本件発明1~4に係る特許請求の範囲の記載は明確性要件を満足する。 3 申立人の主張についての検討 (1) 申立人の主張の概要 申立人は、特許請求の範囲の記載の明確性要件に関して、(i)1粒の粒子が複数の一次粒子から構成されている場合には、その一次粒子同士の境界の判断基準が不明であるため、その「アスペクト比」が一義的に決定できないこと、及び、(ii)1粒の粒子に対して、「アスペクト比」と「自形結晶または半自形結晶である」ことを同時に判断できないことを論拠にして、本件発明1~4は明確でない旨を主張している(特許異議申立書の3(4)イ(イ)、令和4年10月14日付け意見書の3(2)参照)。 (2) (i)の論拠について 本件訂正により訂正された明細書(以下、「本件明細書」といい、願書に添付された図面を「本件図面」という。)には、走査型電子顕微鏡(SEM)測定で観察される1粒の粒子が、複数の一次粒子(h-BN単結晶粒子)から構成されることについて記載されていないし、また、本件図面の【図4】の右上図及び左上図において、申立人が指摘する「筋(線)」が粒界であることを示す証拠もないので、前記(i)の論拠は、前提において誤っており採用できない。 (3) (ii)の論拠について 本件明細書の段落【0017】に「ここで自形結晶とは結晶構造を反映した結晶面で囲まれた結晶のことであり、半自形結晶とは結晶の一部が結晶構造を反映した結晶面で囲まれた結晶のことであり、他形結晶とは結晶に結晶構造を反映した面が現れていない結晶のことである。」と記載されているように、「自形結晶または半自形結晶」と「他形結晶」とは、結晶構造を反映した面の有無によって判断できるから、本件図面の【図5】のように結晶ab面が正面を向いている結晶に限らず、同【図4】の左上図のように、「アスペクト比」を測定する画像からでも、「自形結晶または半自形結晶」は判断できるから、前記(ii)の論拠は採用できない。 4 小括 以上のとおりであるから、前記取消理由に理由はない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 標記の特許異議申立理由の概要 標記の特許異議申立理由は、要するに、(i)「アスペクト比」がどのように測定された値であるのかを一義的に理解できないため、特定の「アスペクト比」の六方晶窒化ホウ素を作れることの裏付けがないこと、(ii)甲第1号証(宮崎祐治他、窒化ホウ素常圧焼結体の組織及び微構造、日本セラミックス協会学術論文誌、1991年、第99巻、第7号、第582~585頁)の記載事項をふまえると、透過型電子顕微鏡(TEM)測定での電子線回折パターンの結果(本件図面の【図2】)のみでは単結晶であると判断できないため、六方晶窒化ホウ素「単結晶」を作れることの裏付けがないこと、及び、(iii)同一の測定対象に対して、SEM測定による「アスペクト比」の測定をしつつ、TEM測定での電子線回折により「単結晶」であることの確認する方法が記載されていないため、特定の「アスペクト比」を有する六方晶窒化ホウ素「単結晶」を作れることの裏付けがないことを論拠として、設定登録時の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が設定登録時の請求項1~4に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、当該発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、設定登録時の請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)及び同条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである(特許異議申立書の3(4)ウ及びエ参照)。 2 特許異議申立理由についての判断 (1) (i)の論拠について 本件明細書の段落【0014】、【0015】及び【0037】には、「アスペクト比」の測定方法が記載されており、さらに、段落【0038】には、前記第2の2(1)ア(ウ)bで判断したとおり、実施例1で得られた試料Aが、複数の結晶粒子からなっており、それぞれの結晶粒子のアスペクト比が0.33~1.5の範囲のものを含んでいることが記載され、本件発明1に相当する「六方晶窒化ホウ素単結晶」を作れることが裏付けているから、前記(i)の論拠は採用できない。 (2) (ii)の論拠について 甲第1号証には、図3(Fig.3)及び図4(Fig.4)に「BN常圧焼結体」の「TEM透過像」及び「電子線回折像」、さらに、第584頁左欄第1~7行に「以上の結果より,BN常圧焼結体の透過像で観察された柱状物及び形態のはっきりしないものは,同一のBNの平板結晶粒であることが分かった.前者はBNのc軸が薄片平面に平行であるもの,後者はそうでないものであった.また,それらBN粒子は単結晶ではなく,粒子平面に平行な亀裂(空隙)を多く含み,それは0.1~2μmの薄片状BNの積層した多結晶粒子であった.」と記載されているところ、本件明細書の実施例1の「h-BN単結晶」と甲第1号証に記載の「BN常圧焼結体」では、電子線回折測定の対象が異なるし、さらに、当該測定の条件の異同も明らかでないことから、甲第1号証の前記記載を根拠にして、本件明細書の実施例1の「h-BN単結晶」が単結晶でないとは断定できない。 そして、本件明細書の実施例1では、TEMによる電子線回折測定に加えて、粉末X線回折測定で結晶性の確認を行い、さらに、SEM測定で「自形結晶」又は「半自形結晶」であることを確認していることから、当業者であれば、本件明細書の実施例1の「h-BN単結晶」が単結晶であることを認識できる。 したがって、前記(ii)の論拠は採用できない。 (3) (iii)の論拠について 前記(2)で検討したとおり、本件明細書の実施例1では、TEMによる電子線回折測定や粉末X線回折測定に加えて、SEM測定での「自形結晶」又は「半自形結晶」であることの観察によって、単結晶であることを確認できるから、SEM測定において、同一の測定対象に対して、「アスペクト比」の測定と、「単結晶」であることの確認をできることは、当業者にとって明らかである。 したがって、前記(iii)の論拠は採用できない。 3 小括 以上のとおりであるから、前記(i)~(iii)を論拠とする特許異議申立理由に理由はない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。 また、他に当該請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700046

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    共通の審決分類: 536・C30B、537・C30B、852・C30B
  • 2026-700010異議申立 / 2026-06-19 / 訂正認容ポリシリコンロッドの製造方法
    共通の審決分類: 536・C30B、537・C30B
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    共通の審決分類: 536・C30B、537・C30B
  • 2024-007294拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)ダイヤモンド基板及びその製造方法
    共通の審決分類: 536・C30B、537・C30B
  • 2024-009567拒絶査定不服審判 / 2026-01-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)大口径炭化ケイ素ウェハ
    共通の審決分類: 536・C30B、537・C30B

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