2021-700605
免震装置と鋼管柱との接合構造および免震建物
- 審判番号
- 2021-700605
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-244951外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6832048
- 請求日
- 2021年06月25日
- 審決日
- 2021年12月13日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (E04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
1 手続の経緯
特許第6832048号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成28年12月17日に出願され、令和3年2月3日にその特許権の設定登録がされ、同年2月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年6月25日に特許異議申立人花村太(以下「申立人」という。)は特許異議の申立てを行った。
2 本件発明
特許第6832048号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】免震装置と鋼管柱との接合構造であって、免震装置と、当該免震装置の上に設けられた鋼管柱と、続きを表示(全17行)当該鋼管柱の柱脚部の周囲に形成された鉄筋コンクリート体と、を備え、前記免震装置は、一端側にフランジを備え、前記鋼管柱は、柱脚部が拡径された筒状の鋼管と、当該鋼管の一端面に接合されたベースプレートと、前記鋼管の内部に設けられた内ダイヤフラムと、前記ベースプレートの上面および/または前記内ダイヤフラムの上面に立設される補強リブと、前記鋼管の内部にコンクリートが充填されて形成されたコンクリート体と、を備え、前記鋼管柱のベースプレートは、前記免震装置のフランジに連結部材で接合され、当該前記連結部材は、前記ベースプレートの上の前記鉄筋コンクリート体に埋設されることを特徴とする免震装置と鋼管柱との接合構造。【請求項2】前記鋼管柱には、柱主筋およびせん断補強筋が配筋されており、前記柱主筋は、前記内ダイヤフラムに設けられた貫通孔に挿通されて、前記内ダイヤフラムの上下のコンクリート体に埋設されることを特徴とする請求項1に記載の免震装置と鋼管柱との接合構造。【請求項3】中間階に免震装置が設けられた免震建物であって、免震装置が設けられた下部構造体と、当該免震装置に水平移動可能に支持された上部構造体と、を備え、前記下部構造体と前記上部構造体との間には、請求項1または2に記載の免震装置と鋼管柱との接合構造が設けられることを特徴とする免震建物。」
3 申立理由の概要
申立人は、本件発明1及び3に対して、主たる証拠として甲第1号証、従たる証拠として甲第2号証を、本件発明2に対して、さらに甲第3号証及び甲第4号証を提出し、請求項1~3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~3に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
なお、同時に提出された甲第5号証は、本件特許出願の審査過程における拒絶理由通知書であって、特許異議申立書には、甲第5号証を用いた容易性に関する説明は見当たらない。
4 証拠の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は、特許異議の決定で付した。)
ア 「【技術分野】【0001】本発明は、柱免震装置接合構造、及び該柱免震装置接合構造を備える免震構造物に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】【0005】本発明は、上記の事実を考慮し、免震装置と柱との接合部における鉛直荷重の伝達性能を向上することを目的とする。」
ウ 「【発明を実施するための形態】【0031】以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。【0032】続きを表示(全14行)先ず、第1実施形態について説明する。【0033】図1~図3には、第1実施形態に係る柱免震装置接合構造が適用された免震装置12及び柱14を備える免震構造物10が示されている。免震構造物10は、コンクリート造の基礎(下部構造体)22と、当該基礎22の上方に構築された上部構造体24とを備えている。これらの基礎22と上部構造体24との間に形成された基礎免震層には、免震装置12が設けられている。免震装置12は、鋼板と板状の弾性体とが交互に積層された積層ゴム16と、当該積層ゴム16の上部に設けられた上部プレート18と、積層ゴム16の下部に設けられた下部プレート20とを備えている。免震装置12の下部プレート20に形成された貫通孔(不図示)には、基礎22に埋設されたアンカーボルト26が貫通されており、このアンカーボルト26及びナット28により、下部プレート20が基礎22に固定されている。【0034】免震装置12の上には、上部構造体24を構成する柱14が立てられている。柱14には、上部構造体24の最下階を構成する梁(水平部材)30が接合される仕口部14Aが設けられている。仕口部14Aには、外ダイア形式のダイアフラム34及びガセットプレート36が設けられており、当該仕口部14Aに梁30の端部が接合されている。梁30はH形鋼からなり、その端部がダイアフラム34に溶接されると共に、ガセットプレート36に高力ボルト38及びナット(不図示)で摩擦接合され、柱14との間で応力(せん断力、曲げモーメント等)を伝達可能に接合されている。なお、柱14と梁30との接合には、従来公知の種々の接合構造を採用することができる。【0035】柱14は、角形鋼管からなる筒体40の内部に、コンクリート42を充填して構成されたCFT造とされている。筒体40の下端には、ベースプレート44が設けられている。鋼製のベースプレート44は溶接等で筒体40に接合されており、その中央部に貫通孔44A(図2参照)が形成されている。貫通孔44Aは、平面視にて筒体40内に収まるように形成されており、筒体40の内部に通じている。この貫通孔44Aの大きさを増減することにより、後述する薄板46と上部プレート18との密着面積が調整される。また、ベースプレート44と筒体40とは、ベースプレート44の上面に立設された補強リブ48によって補強されている。なお、補強リブ48は必要に応じて適宜設ければ良い。・・・【0038】ベースプレート44と上部プレート18とは、応力伝達手段としてのボルト50及びナット52によって接合されており、柱14と免震装置12との間で応力(せん断力、曲げモーメント)等が伝達可能となっている。なお、応力伝達手段としては、ボルト50、ナット52に替えて、せん断ピン、PC鋼材、シアキー、溶接等を用いることができる。」
エ 「【0050】次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。【0051】図4には、第2実施形態に係る柱免震装置接合構造が適用された柱62と免震装置12が示されている。柱62は、筒体64の内部にコンクリート42を充填して構成されたCFT造とされている。筒体64は、その側面が鉛直又は略鉛直とされた角形鋼管からなる鉛直部64A、64Bと、これらの鉛直部64A、64Bの間に設けられた傾斜部64Cと、を接合して構成されている。鉛直部64A、64Bと傾斜部64Cとはダイアフラム66、68を介して接合されている。これらのダイアフラム66、68及び傾斜部64Cの側壁には、H形鋼からなる梁70の端部が溶接接合されている。即ち、柱62の仕口部62Aに、傾斜部64Cが設けられている。なお、ダイアフラム66、68は、いわゆる通しダイア形式とされており、各ダイアフラム66、68の中央部にコンクリート42を通すための貫通孔66A、68Aが形成されている。続きを表示(全14行)【0052】傾斜部64Cを構成する各側壁は、鉛直部64Aの下端から下方へ向かって外側へ傾斜し、鉛直部64Bの上端まで延びている。即ち、傾斜部64Cでは、柱62の水平断面積が下方へ向かって徐々に大きくなっている。これにより、平面視にて柱62の下部が積層ゴム16をほぼ包含するようになっている(図5参照)。【0053】次に、第2実施形態の作用について説明する。【0054】柱62を構成する筒体64には、傾斜部64Cが設けられている。この傾斜部64Cによって、柱62の水平断面積が、下方へ向かって徐々に大きくされている。従って、柱62の鉛直荷重が分散されて上部プレート18へ伝達される(図4において矢印X)。よって、傾斜部64Cを設けない場合と比較して、ベースプレート44に発生する応力度が小さくなり、ベースプレート44に求められる性能(剛性、耐力等)が低減されるため、ベースプレート44の板厚や、ベースプレート44と筒体40とを補強する補強リブ48を減らすことができる。また、柱62の水平断面積が大きくなるため、ベースプレート44に形成する貫通孔44Aを大きくすることができる。即ち、薄板46と上部プレート18との密着面積を大きくすることが可能となる。更に、傾斜部64Cを設けたことにより、筒体64の内部に充填可能なコンクリート42の容量が増えるため、薄板46を上部プレート18に圧接するコンクリート42の重量が大きくなる。よって、柱62から上部プレート18へ伝達される鉛直荷重の伝達効率が向上する。【0055】なお、本実施形態では、平面視にて傾斜部64Cが積層ゴム16をほぼ包含しているが、これに限定されない。傾斜部64Cを設けて柱62の水平断面積が大きくすることにより、上記の作用及び効果を得ることができる。従って、平面視にて柱62が積層ゴム16を包含していなくても良い。【0056】また、本実施形態では、柱62の仕口部62Aに傾斜部64Cを設けているが、傾斜部64Cを設ける位置は適宜変更可能である。また、傾斜部64Cの下に鉛直部64Bを設けているが、鉛直部64Bを省略し、傾斜部64Cの下端にベースプレート44を設けても良いし、柱62の全部を傾斜部64Cで構成しても良い。」
オ 図1及び図4は以下のとおり。
「【図1】[図:0001380948000001.jpg]」
「【図4】[図:0001380948000002.jpg]」
カ 上記アないしオからみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されるものと認める。
「免震構造物10が備える免震装置12及び柱62に適用される柱免震装置接合構造であって、鋼板と板状の弾性体とが交互に積層された積層ゴム16と、当該積層ゴム16の上部に設けられた上部プレート18を備える免震装置12と、免震装置12の上に立てられた上部構造体24を構成する柱62と、を備え、柱62は、筒体64の内部にコンクリート42を充填して構成されたCFT造とされ、続きを表示(全11行)筒体64は、その側面が鉛直又は略鉛直とされた角形鋼管からなる鉛直部64A、64Bと、これらの鉛直部64A、64Bの間に設けられた傾斜部64Cと、を接合して構成されており、鉛直部64A、64Bと傾斜部64Cとは、いわゆる通しダイヤ形式とされたダイアフラム66、68を介して接合され、筒体64の下端には、鋼製のベースプレート44が溶接等で接合されており、ベースプレート44と筒体64とは、ベースプレート44の上面に立設された補強リブ48によって補強され、ベースプレート44と上部プレート18とは、応力伝達手段としてのボルト50及びナット52によって接合され、傾斜部64Cでは、柱62の水平断面積が下方へ向かって徐々に大きくなっていることにより、平面視にて柱62の下部が積層ゴム16をほぼ包含するようになっており、従って、柱62の鉛直荷重が分散されて上部プレート18へ伝達されて、ベースプレート44に発生する応力度が小さくなり、ベースプレート44に求められる性能(剛性、耐力等)が低減されるため、ベースプレート44の板厚や、ベースプレート44と筒体40とを補強する補強リブ48を減らすことができる、柱免震装置接合構造。」
(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】【0001】本発明は、鉄柱部分とコンクリート部分の複合構造で構成された下側柱部と、当該下側柱部の上方に配設される上側柱部との間に免震装置が介装された免震構造物を順打ち工法で構築する免震構造物の施工方法に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】【0005】上述した従来の免震構造物の施工方法では、下側柱部のコンクリート打設工事を行って下側柱部を完成させてから、免震装置設置工事を行うが、この下側柱部の施工状況等によっては、免震装置設置工事の開始時期が遅くなる。よって、免震装置を設置した上で行う必要がある上側柱部配設工事並びにこれを起点とする免震装置よりも上層階の躯体工事の開始時期についても、遅くなり、このことは全体工期の長期化の原因となる。【0006】特に、免震装置を中間階に設けるような中間免震構造物では、複数階に亘る下側柱部のコンクリート打設工事がある程度の期間を要するため、この下側柱部のコンクリート打設工事が完了してから免震装置を設置した上で上層階の躯体工事を開始するとなると、全体工期が非常に長引くという問題がある。【0007】この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、鉄柱部分とコンクリート部分の複合構造で構成された下側柱部と、当該下側柱部の上方に配設される上側柱部との間に免震装置が介装された免震構造物を順打ち工法で構築する免震構造物の施工方法において、全体工期の大幅な短縮を実現することができる技術を提供する点にある。」
ウ 「【発明を実施するための形態】【0019】本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態の施工方法(以下「本施工方法」と呼ぶ。)で構築される建物は、図7に示すように、鉄柱部分1aとコンクリート部分1bの複合構造で構成された下側柱部1と、当該下側柱部1の上方に配設される上側柱部3との間に免震装置2が介装された免震構造物として構成され、下方から上方に向けて順にコンクリートを打設する順打ち工法で構築される。続きを表示(全25行)【0020】免震装置2は、鋼材や鉛プラグ等のダンパー(図示省略)を内装する積層ゴム支承等のアイソレータ2cと、このアイソレータ2cの上下に位置する下部フランジ2a及び上部フランジ2bを備えて構成されている。そして、下部フランジ2aが下側柱部1の上端部側に固定されると共に上部フランジ2bが上側柱部3の下端部側に固定される状態で、免震装置2が下側柱部1と上側柱部3との間に介装される。そして、この免震装置2により、地震時において、建物の振動周期を長周期化すると共に、振動エネルギーを減衰することができる。また、この建物は、かかる免震装置2の設置階(以下「免震装置設置階」という。)を、中間階に設けた中間免震構造物として構成されている。【0021】本施工方法の具体的手順は、全体工期の大幅な短縮を実現することができるものとして構成されており、以下、その具体的手順について説明する。本施工方法では、各工事内容の詳細については後述するが、下側柱部鉄柱部分配設工事(図1参照)、免震下部基礎上側部位構築工事(図2参照)、免震装置設置工事(図3参照)、上側柱部配設工事(図4参照)、下側柱部コンクリート打設工事(図5参照)、免震下部基礎下側部位構築工事(図6参照)、及び、免震上部基礎構築工事(図7参照)の各工事を記載の順に行うものとして構成されている。尚、下側柱部鉄柱部分配設工事から免震装置設置工事までの工程が第1工程に相当し、上側柱部配設工事の工程が第2工程に相当し、下側柱部コンクリート打設工事以降の工程が第3工程に相当する。・・・【0029】(免震装置設置工事)図3に示すように、上記免震下部基礎上側部位構築工事に続く本施工方法の免震装置設置工事では、下側柱部1の鉄柱部分1aの上方に免震装置2が設置される。即ち、この免震装置設置工事では、先ず、下側柱部1の鉄柱部分1aの上方に構築された免震下部基礎5の上側部位5aの上端面(具体的にはベースプレート8の上面)である免震装置設置面に免震装置2が載置される。次に、免震装置2の下部フランジ2aに形成されたボルト挿通孔(図示省略)に上方から挿通されたボルト10bが、免震下部基礎5側のナット10aに締結されることで、免震装置2の下部フランジ2aが免震下部基礎5の上端面に固定される。・・・【0031】(上側柱部配設工事)図4に示すように、上記免震装置設置工事に続く本施工方法の上側柱部配設工事では、免震装置2の上方に上側柱部3が配設される。かかる上側柱部3は、免震装置設置階よりも上の上層階に建て込まれ、H形鋼3aからなるS造(鉄骨造)の柱部として構成されている。そして、この工事では、先ず、免震装置2の上部フランジ2bの上面に上側柱部3が載置される。次に、免震装置2の上部フランジ2bに形成されたボルト挿通孔(図示省略)に下方から挿通されたボルト11bが、上側柱部3を構成するH形鋼3aの下端面に接合された接合プレートに接合されたナット11aに締結されることで、免震装置2の上部フランジ2bが上側柱部3の下端面に固定される。・・・【0035】(免震上部基礎構築工事)図7に示すように、上記免震下部基礎下側部位構築工事に続く本施工方法の免震上部基礎構築工事では、免震装置2の上部フランジ2b側に対する免震上部基礎6が構築される。即ち、この工事では、免震装置2の上部フランジ2bよりも上方の所定高さ領域、具体的には免震装置2の上部フランジ2bから免震装置設置階の1つ上の階のスラブ型枠21までの領域において、上側柱部3(H形鋼3a)の周囲に適宜鉄筋及び型枠(図示省略)を配設した上でコンクリートを打設することによって、免震装置2の上部フランジ2b側を支持するための免震上部基礎6が構築される。」
エ 「【0043】(7)本実施形態では、下側柱部1を、形鋼からなる鉄柱部分1aと、その周囲に適宜鉄筋を配設してコンクリートを打設してなるコンクリート部分1bを備えたSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)としたが、鋼管からなる鉄柱部分と、その内部に適宜鉄筋を配設してコンクリートを打設してなるコンクリート部分とからなるCFT構造(コンクリート充填鋼管構造)としても構わない。【0044】(8)本実施形態では、上側柱部3を、S造(鉄骨造)としたが、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造、CFT構造等、如何なる構造を採用しても構わない。」
オ 図7は以下のとおり。
「【図7】[図:0001380948000003.jpg]」
上記図7から、ナット11a及びボルト11bが、免震上部基礎6に埋設されていることが看取できる。
カ 上記アないしオからみて、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「鉄柱部分1aとコンクリート部分1bの複合構造で構成された下側柱部1と、当該下側柱部1の上方に配設される上側柱部3との間に免震装置2が介装された免震構造物として構成され、下方から上方に向けて順にコンクリートを打設する順打ち工法で構築される建物であって、免震装置2は、積層ゴム支承等のアイソレータ2cと、このアイソレータ2cの上下に位置する下部フランジ2a及び上部フランジ2bを備えて構成され、下部フランジ2aが下側柱部1の上端部側に固定されると共に上部フランジ2bが上側柱部3の下端部側に固定される状態で、免震装置2が下側柱部1と上側柱部3との間に介装されており、施工方法の具体的手順は、下側柱部鉄柱部分配設工事、免震下部基礎上側部位構築工事、免震装置設置工事、上側柱部配設工事、下側柱部コンクリート打設工事、免震下部基礎下側部位構築工事、及び、免震上部基礎構築工事の各工事を順に行うものとして構成されており、免震装置設置工事では、下側柱部1の鉄柱部分1aの上方に構築された免震下部基礎5の上側部位5aの上端面である免震装置設置面に免震装置2が載置・固定され、上側柱部配設工事では、免震装置2の上部フランジ2bの上面に上側柱部3が載置され、次に、免震装置2の上部フランジ2bに形成されたボルト挿通孔に下方から挿通されたボルト11bが、上側柱部3を構成するH形鋼3aの下端面に接合された接合プレートに接合されたナット11aに締結されることで、免震装置2の上部フランジ2bが上側柱部3の下端面に固定され、免震上部基礎構築工事では、免震装置2の上部フランジ2bから免震装置設置階の1つ上の階のスラブ型枠21までの領域において、上側柱部3(H形鋼3a)の周囲に適宜鉄筋及び型枠を配設した上でコンクリートを打設することによって、免震装置2の上部フランジ2b側を支持するための免震上部基礎6が構築され、ナット11a及びボルト11bが、免震上部基礎6に埋設されている、建物。」
5 当審の判断
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明において、「柱62は、筒体64の内部にコンクリート42を充填して構成されたCFT造とされ」ていることから、甲1発明の「免震装置12及び柱62に適用される柱免震装置接合構造」及び「免震装置12の上に立てられた上部構造体24を構成する柱62」は、本件発明1の「免震装置と鋼管柱との接合構造」及び「免震装置の上に設けられた鋼管柱」に相当する。
(イ)甲1発明の「免震装置12」が「積層ゴム16の上部に設けられた上部プレート18を備える」ことは、本件発明1の「前記免震装置は、一端側にフランジを備え」ることに相当する。
(ウ)甲1発明の「柱62は、筒体64の内部にコンクリート42を充填して構成されたCFT造とされ、筒体64は、その側面が鉛直又は略鉛直とされた角形鋼管からなる鉛直部64A、64Bと、これらの鉛直部64A、64Bの間に設けられた傾斜部64Cと、を接合して構成されており、鉛直部64A、64Bと傾斜部64Cとは、いわゆる通しダイヤ形式とされたダイアフラム66、68を介して接合され、筒体64の下端には、鋼製のベースプレート44が溶接等で接合されており、ベースプレート44と筒体64とは、ベースプレート44の上面に立設された補強リブ48によって補強され」ることと、
本件発明1の「前記鋼管柱は、柱脚部が拡径された筒状の鋼管と、当該鋼管の一端面に接合されたベースプレートと、前記鋼管の内部に設けられた内ダイヤフラムと、前記ベースプレートの上面および/または前記内ダイヤフラムの上面に立設される補強リブと、前記鋼管の内部にコンクリートが充填されて形成されたコンクリート体と、を備え」ることとは、
「前記鋼管柱は、柱脚部が拡径された筒状の鋼管と、当該鋼管の一端面に接合されたベースプレートと、前記鋼管の内部に設けられたダイヤフラムと、前記ベースプレートの上面に立設される補強リブと、前記鋼管の内部にコンクリートが充填されて形成されたコンクリート体と、を備え」ることで共通する。
(エ)甲1発明の「ベースプレート44と上部プレート18とは、応力伝達手段としてのボルト50及びナット52によって接合され」ることは、本件発明1の「前記鋼管柱のベースプレートは、前記免震装置のフランジに連結部材で接合され」ることに相当する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、本件発明1と甲1発明とは、
「免震装置と鋼管柱との接合構造であって、免震装置と、当該免震装置の上に設けられた鋼管柱と、を備え、前記免震装置は、一端側にフランジを備え、前記鋼管柱は、柱脚部が拡径された筒状の鋼管と、当該鋼管の一端面に接合されたベースプレートと、前記鋼管の内部に設けられたダイヤフラムと、前記ベースプレートの上面に立設される補強リブと、前記鋼管の内部にコンクリートが充填されて形成されたコンクリート体と、を備え、前記鋼管柱のベースプレートは、前記免震装置のフランジに連結部材で接合される、免震装置と鋼管柱との接合構造。」で一致するものの、少なくとも甲1発明が、本件発明1の「鋼管柱の柱脚部の周囲に形成された鉄筋コンクリート体と、を備え、」「当該前記連結部材は、前記ベースプレートの上の前記鉄筋コンクリート体に埋設される」との構成を備えていない点で相違する(以下「相違点」という。)。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)甲第2号証には、上記4(2)カで示した甲2発明が記載されており、甲2発明の「免震上部基礎構築工事では、免震装置2の上部フランジ2bから免震装置設置階の1つ上の階のスラブ型枠21までの領域において、上側柱部3(H形鋼3a)の周囲に適宜鉄筋及び型枠を配設した上でコンクリートを打設することによって、免震装置2の上部フランジ2b側を支持するための免震上部基礎6が構築され、ナット11a及びボルト11bが、免震上部基礎6に埋設されている、」ことは、鋼管柱ではないものの、当該相違点のうち「柱脚部の周囲に形成された鉄筋コンクリート体と、を備え、」「当該前記連結部材は、前記ベースプレートの上の前記鉄筋コンクリート体に埋設される」構成に相当する。
しかしながら、甲1発明の筒体64の柱脚部に甲2発明のコンクリートを打設して構築した免震上部基礎6を設ける動機付けとなる記載は、各証拠には見当たらない。しかも、甲2発明の免震上部基礎6は、H型鋼3aの周囲にコンクリートを打設して構築したものである一方、甲1発明の「水平断面積が下方へ向かって徐々に大きくなっていることにより、平面視にて柱62の下部が積層ゴム16をほぼ包含するようになって」いる「筒体64」は、「傾斜部64Cでは、柱62の水平断面積が下方へ向かって徐々に大きくなっていることにより、平面視にて柱62の下部が積層ゴム16をほぼ包含するようになって」いるものであって、それにより、「柱62の鉛直荷重が分散されて上部プレート18へ伝達されて、ベースプレート44に発生する応力度が小さくなり、ベースプレート44に求められる性能(剛性、耐力等)が低減されるため、ベースプレート44の板厚や、ベースプレート44と筒体40とを補強する補強リブ48を減らすことができる」ように措置されたものであるから、甲1発明の該「筒体64」の外周に、さらにコンクリートを打設して免震上部基礎6を構築することは、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、上記相違点に係る本件発明1の構成は、甲1発明に甲2発明を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものではない。
(イ)申立人は、甲2発明は、免震装置が設けられたコンクリート充填鋼管構造に用いられるものであって、甲1発明と技術分野を一にするものであるから、甲2発明を甲1発明に適用することは、容易に想到し得る旨(特許異議申立書16頁2~7行)、主張する。
しかし、甲第2号証には上下の柱部をCFT構造としても構わない旨の記載はあるものの、甲2発明の上側柱部3をCFT構造とした場合にも、上側柱部3がH型鋼3aであった場合と同様に、上側柱部3の周囲にコンクリートを打設して免震上部基礎6が構築されることまでは、甲第2号証には記載されていないから、上部柱部3がCFT構造であると認定した甲2発明は、上部柱部3の周囲にコンクリートを打設して構築した免震上部基礎6を備えたものではない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(ウ)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2及び3
本件発明2及び3は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、本件発明2及び3は、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700605