特許異議申立
2021-700536
摘採機
- 審判番号
- 2021-700536
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-179846
- 登録番号
- 6849985
- 請求日
- 2021年06月01日
- 審決日
- 2021年12月03日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】落合刃物工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 エビス国際特許事務所
- 【異議申立人】カワサキ機工 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 長井 真一
- 分類
- P1651.121-Y (A01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6849985号発明「摘採機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6849985号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
本件特許6849985号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成28年9月14日に特許出願され、令和3年3月9日にその特許権の設定登録がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし6に係る特許に対し、同年6月1日に特許異議申立人カワサキ機工株式会社(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
2 本件発明
本件特許の請求項1ないし6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
畝を跨いで走行する走行機と、
畝から摘採物を刈り取る刈刃と、
刈刃によって刈り取られた摘採物を搬送する空気の流れを生じさせる送風手段と、
送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクトと、
送風手段及び搬送ダクトによって搬送された摘採物を収容する袋状の収容体が載置されると共に作業者がその上に載って作業可能な載置面を有する載置台と、を備え、
搬送ダクトには、収容体が取り付け可能であって、取り付けられた収容体内に向かって搬送された摘採物を放出する放出口が設けられ、
放出口は、載置台における作業者が載る載置面から上方に間隔をおいて設けられている
摘採機。
【請求項2】
放出口は、略水平方向に向けられ、
前記間隔は、載置台上の作業者が屈む姿勢となることなく、放出口に対する茶袋の着脱を行うことができるように設定された距離以上である
請求項1に記載の摘採機。
【請求項3】
搬送ダクトの上方には、摘採物が収容された収容体を載置することが可能な荷台が設けられている
請求項1または2に記載の摘採機。
【請求項4】
搬送ダクト及び載置台は、荷台に対して上下方向に移動可能である
請求項3に記載の摘採機。
【請求項5】
放出口は、荷台の端部よりも載置台側に張り出している
請求項3または4に記載の摘採機。
【請求項6】
刈刃によって刈り取った摘採物を畝と畝との間に落とす刈落とし装置を備え、
刈落とし装置は、一端側の開口が放出口に接続され、他端側の開口が畝と畝との間に位置し、摘採物を案内する案内ダクトを有し、
案内ダクトは、載置台の載置面に取り付けられる
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の摘採機。」
3 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の(1)に示す申立理由を主張するとともに、証拠として、以下の(2)に示す各甲号証を提出している(以下、各甲号証を「甲1」等ということがある。)。
(1)申立ての理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証及び甲第3号証に示された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明3ないし5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に示された周知技術及び甲第4号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に示された周知技術及び甲第5号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
(2)申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証 特開2005-295890号公報
甲第2号証 特開2010-136663号公報
甲第3号証 実願昭47-86374号
(実開昭49-42062号)のマイクロフィルム
甲第4号証 特開2002-218817号公報
甲第5号証 特開2003-265015号公報
4 各証拠の記載
(1)甲1
ア 記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、茶園管理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12,13に示されるように、従来、茶園の管理作業を行う茶園管理機1には、少なくとも摘採作業によって茶畝から摘採した茶葉を収容して運搬する茶葉収容袋(以下、茶袋という)2を載置するための荷台3が備えられている。
このような荷台3には、図12に示されるように、茶畝を跨ぐように配設された案内板4と補助板5とを備えて構成されているもの、或いは、図13に示されるように、茶畝を跨ぐように配設された案内板4の後部に、左右一対の補助板6,6を機体幅方向に離間させた状態で連結することによって、案内板4の中央部に作業者がアクセスするためのサービスエリア部7が形成されているもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記したこれら従来の茶園管理機にあっては、次のような問題がある。すなわち、図12,13に示されるように、これらの茶園管理機1が傾斜した圃場において摘採作業を行う場合、荷台3に載置した茶袋2は谷側に向かって滑り落ちてしまうという問題がある。そして、谷側に向かって滑り落ちた茶袋2は、補助板5又は6側部に設けられた落下防止枠8によって落下が防止されるものの荷台3上で捩れてしまうために、茶葉の収容を困難なものにしてしまう。また、後者の茶園管理機にあっては、山側の補助板6に載置した茶袋2がサービスエリア部7に落下してしまうという問題もあった。
そして、円滑に茶葉を収容するには、作業者は摘採作業を一時中断して茶袋2の捩れや、サービスエリア部7に落下した茶袋2を元通りに直さなければならないという問題が発生する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、上記した従来の茶園管理機が有している問題点を解決するためになされたものであって、荷台に載置した茶袋の滑りを抑制して茶袋の捩れを防止することのできる茶園管理機を提供することを目的とする。」
(イ)「【実施例】
【0018】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された茶園管理機の正面図、図2は、同例における背面図、図3は、同例における右側面図、図4は、同例における平面図、図5は、係合孔の拡大図、図6は、図5中のA-A矢視断面図である。
【0019】
まず、本発明が適用された茶園管理機について説明する。図1~4に示されるように、茶葉管理機10は、茶畝を跨ぐように形成された門型の機体20と、この機体20の左右両側に設けられた左右一対の油圧式のクローラ走行装置30,30と、茶畝を跨いで走行している間に茶畝から茶葉を摘採し回収する摘採装置50とを備えて構成されている。
・・・
【0028】
摘採装置50は、図1に示されるように、その正面視が摘採を目的として作られた樹形に合わせて弧状(或いは水平)、且つほぼ左右対称となるように形成されている。この摘採装置50の下方側には、茶畝から茶葉を摘採するための刈刃(バリカン刃)51が機体幅方向に往復駆動可能、且つ脱着可能に取り付けられている。この刈刃51は、摘採装置50の上面右端部に装着された刈刃駆動及び送風用エンジン52(図2に図示)によりベルト(図示せず)を介して駆動される。なお、この刈刃51は、油圧ポンプ71によって駆動される油圧式としてもよい。
【0029】
さらに、図3に示されるように、この刈刃駆動及び送風用エンジン52の下部には、風(気流)を発生させる送風機53が一体的に取り付けられている。この送風機53には、機体幅方向に延びる送風ダクト54に風を送り込むためのファンケース55(図1に図示)が一体的に連設されていると共に、送風ダクト54及びファンケース55の下面側には、複数の枝管56が刈刃51の前面に向けて延設されている。このため、刈刃駆動及び送風用エンジン52の駆動に伴って送風機53から発生した風は、送風ダクト54及びファンケース55の枝管56から刈刃51の前面に向かって満遍なく吹き付けられるようになっている。
・・・
【0031】
この摘採装置50の後方には、刈刃51によって茶畝から摘採されたのち枝管56から吹き出される風によって送り込まれた茶葉を収容する茶袋(図12,13参照)の開口部を係止させる棒状のガイド部材61(図2に図示)が機体幅方向に延びるように取り付けられていると共に、茶袋を載置する荷台62が配設されている。
【0032】
荷台62は、図2~4に示されるように、茶畝を跨ぐようにアーム部材28,28間に掛け渡された案内板63と、この案内板63の後部において機体後方に向かって張り出し支持され、機体幅方向に離間した状態で脱着可能、且つ前方に向かって回動可能(折り畳み可能)に連結され、油圧式による折り畳み構造のものよりも軽量化が図られた左右一対の補助板64,64とを備えて構成されている。さらには、荷台62の中央部には、案内板63の中央部に作業者がアクセス可能とするエリア部としてのサービスエリア部65が形成されており、摘採作業の能率向上が図られている。なお、図中にあっては、補助板64,64は互いに非対称に形成されているが、これに限定されるものではない。
【0033】
案内板63は、軽金属、例えばアルミ合金製の板状部材であって、軽量化が図られていると共に、この案内板63の下面側には、機体幅方向に梯子状に延び、且つ上方に向かってアーチ状に湾曲したフレーム構造体(図示せず)が一体的に備えられている。そして、このフレーム構造体(好ましくは、スチール製)の左右両端部がアーム部材28,28に強固に結合固定されることによって、案内板63は、その上面に作業者や茶葉で満杯になった茶袋を載置することが可能な充分な強度を有している。
【0034】
補助板64,64は、案内板63と同様に、軽金属、例えばアルミ合金製の板状部材であって、軽量化が図られていると共に、この補助板64,64の下面側には、補助板64,64をそれぞれ支持する平面視コ字状の支持フレーム(図7,8参照)が一体的に備えられている。この支持フレームは、好ましくは軽合金製とされ、それぞれの補助板64,64上に茶袋を載置することが可能な強度を確保しながらも軽量化が図られている。
【0035】
さらに、これら補助板64,64には、図2~4に示されるように、滑り止め手段として機体前後方向に延びた長尺状(例えば、I字状)の係合孔66が複数設けられている。これらの係合孔66は、補助板64,64が平面視格子状となるように打ち抜き成形されているものであって、補助板64,64の上面、すなわち茶袋載置面に凹凸部を形成すると共に、各係合孔66の左右両側部には、図5,6に示されるように、予め設定された傾斜角度を有する下向きのフランジ部67,67が対向するように一体的に折り曲げ形成されている。」
(ウ)「【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明が適用された茶園管理機の正面図である。
【図2】同例における背面図である。
【図3】同例における右側面図である。
【図4】同例における平面図である。
・・・
【図13】従来の茶園管理機の一例を示した後方斜視図である。」
(エ)【図1】、【図2】、【図3】、【図4】、【図13】は以下のとおり。
「【図1】
[図:0001380947000001.jpg]
【図2】
[図:0001380947000002.jpg]
【図3】
[図:0001380947000003.jpg]
【図4】
[図:0001380947000004.jpg]
【図13】
[図:0001380947000005.jpg]
」
(オ)上記(エ)の図1ないし図4は、それぞれ甲1の茶園管理機の正面図、背面図、右側面図、平面図であり、図13は、従来の茶園管理機の一例を示した後方斜視図である(上記(エ))が、甲1は、従来の茶園管理機が有していた、茶園管理機1が傾斜した圃場において摘採作業を行う場合、荷台3に載置した茶袋2は谷側に向かって滑り落ちてしまうという問題を解決するために荷台に載置した茶袋の滑りを抑制して茶袋の捩れを防止することのできる茶園管理機を提供することを目的(上記(ア))とするものであり、実施例の説明においても「摘採装置50の後方」の「刈刃51によって茶畝から摘採されたのち枝管56から吹き出される風によって送り込まれた茶葉を収容する茶袋」についての説明に従来の茶園管理機を示す図である図12,13が参照されている(上記(イ)段落【0031】)ことから、刈刃によって茶畝から摘採されたのち枝管から吹き出される風によって送り込まれた茶葉を収容する茶袋と荷台の関係については、図1ないし図4の実施例の茶園管理機は、図13の従来の茶園管理機と同様と認められる。
そして、図1ないし図4及び図13からは、枝管56から吹き出される送風機53から発生した風によって、摘採された茶葉は略水平に案内されて茶袋に送り込まれることが看取される。
イ 甲1発明
上記アの記載事項によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「茶畝を跨ぐように形成された門型の機体20と、この機体20の左右両側に設けられた左右一対の油圧式のクローラ走行装置30,30と、茶畝を跨いで走行している間に茶畝から茶葉を摘採し回収する摘採装置50とを備えて構成されている茶葉管理機10であって、
摘採装置50は、茶畝から茶葉を摘採するための刈刃51が取り付けられ、
さらに、風(気流)を発生させる送風機53が取り付けられ、この送風機53には、機体幅方向に延びる送風ダクト54に風を送り込むためのファンケース55が一体的に連設されていると共に、送風ダクト54及びファンケース55の下面側には、複数の枝管56が刈刃51の前面に向けて延設され、送風機53から発生した風は、枝管56から刈刃51の前面に向かって満遍なく吹き付けられるようになっているものであり、
摘採装置50の後方には、刈刃51によって茶畝から摘採されたのち枝管56から吹き出される風によって送り込まれた茶葉を収容する茶袋の開口部を係止させる棒状のガイド部材61が機体幅方向に延びるように取り付けられていると共に、茶袋を載置する荷台62が配設され、
荷台62は、茶畝を跨ぐようにアーム部材28,28間に掛け渡された案内板63と、この案内板63の後部において機体後方に向かって張り出し支持され、機体幅方向に離間した状態で脱着可能、且つ前方に向かって回動可能(折り畳み可能)に連結され、油圧式による折り畳み構造のものよりも軽量化が図られた左右一対の補助板64,64とを備えて構成され、案内板63は、その上面に作業者や茶葉で満杯になった茶袋を載置することが可能な充分な強度を有し、
枝管56から吹き出される送風機53から発生した風によって、摘採された茶葉は略水平に案内されて茶袋に送り込まれる、
茶葉管理機10。」
(2)甲2
ア 記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉の摘採や枝幹の剪除等を行う茶刈装置に関するものであって、特に本出願人が提案している画期的な茶枝葉移送手法に関し、更にその確実性を高めた改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば茶葉の摘採を行う摘採機としては、いわゆる乗用型摘採機が存在する。このものは、摘採した茶葉の収容部として、大容量のコンテナを搭載したもの、あるいは複数の茶袋を吊り下げ状態に取り付けて収容部を形成するもの等、大量の茶葉を収容できるようにしたものが多い。
そして、このような摘採機にあっては、刈刃で摘採した茶葉Aを収容部まで移動するため多くは送風による手法が採られていた。
従来一般的であったものは、例えば図9に示すように、刈刃22′の前方側に茶葉移送のための分岐ノズル47′付きの送風管を配し、この分岐ノズル47′からの送風によって茶葉Aを移送するものであった(例えば特許文献1参照)。
この手法は、従来から長年にわたって用いられ、確立した技術手段として代替手段による改良の試みなど、正に想定されていなかった。しかしながら本出願人は、斯界における技術常識を打破することにより、派生的に従来甘受されてきた種々の不都合を改善し、種々の利点を奏し得るであろうとの着想の下、当該技術の改善に挑戦し、前記従来型の主要機材である送風管を不要とした手法を案出している。
このものは、特許出願公開2006-50963号公報(特許文献2参照)として開示されており、既にその実用機が市販の途についている。具体的には、刈刃後方にスリット状の吹出口を設け、ここから移送風(背面風)を吹き出し、その流れによって摘採された茶葉を吸い寄せながら且つ上方等の所定の位置に移送してゆくものである。」
(イ)「【符号の説明】
【0044】
1 茶畝跨走型摘採機
・・・
4 収容部
5 移送装置
5A ダクトユニット
・・・
6 移送ダクト
7 背面ダクト
8 導入部
・・・
22 刈刃
・・・
31 移送開始部
・・・
33 吐出口
34 フック
35 分岐部
・・・
47 分岐ノズル
・・・
A 茶葉(茶枝葉)
B 茶袋
・・・」
(ウ)【図9】は以下のとおり。
「【図9】
[図:0001380947000006.jpg]
」
(エ)上記(イ)の符号の説明は実施例に関するものであるが、上記(ア)から図9の従来例においても、実施例と同様のアルファベット及び数字で対応する部材が表現されていると理解できるから、図9のBは茶袋、33′は吐出口であると認められる。
(オ)上記(ア)及び(イ)の記載及び上記(エ)の事項を踏まえると、上記(ウ)の図9からは、「送風管の分岐ノズル47′からの送風によって移送される刈刃22′によって刈り取られた茶葉Aを上方に案内する搬送ダクトに、茶葉を吐出する吐出口33′が設けられ、吐出口33′に茶袋Bが取り付けられる」ことが看取される。
(3)甲3
ア 記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
(ア)「本考案の収納袋は上記のように構成されており、本収納袋は自走式茶摘機に、第1図に示すようにして装着されて使用される。すなわち収納袋本体1の上部開口部を、自走式茶摘機の上部搬送管6の先端部のフランジ5に当てがい締め括り用紐4で、該搬送管6の周りに結びつける。そうすると収納袋は図示のように伸びた状態となり、その下底部は茶摘機14の前方下部に設けられた籠15で支持される。そこで茶摘機14の運転を開始すると、カツタ9で摘採された茶葉は、フアン10の作用で下部搬送管12、蛇管11、上部搬送管6を経て、フランジ5の開口13より収納袋本体1内へ搬送され、順次該収納袋本体1内へ溜められる。この場合茶葉を搬送してきた空気は収納袋本体1の網目から外部へ散逸する。かくして収納袋本体1内が満杯となると、茶摘機14の運転を一時中止し、締め括り用紐4を解いたのち、該紐4で、収納袋本体の上部開口部を締め括つて茶摘機14の籠15から取出す。」(明細書第3頁末行~第5頁第3行)
(イ)第1図の記載は以下のとおり。
「
[図:0001380947000007.jpg]
」
(4)甲4
ア 記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は茶葉の摘採等を行う乗用式茶園管理機に関するものであって、特に後方視界をより確実に得ることができるようにした構造に係るものである。」
(イ)「【0010】この刈刃30の前方上方には多数の分岐管を有する風送管31を有するものであり、摘採作業時にはこの風送管31から前記ファン25によって生起された移送風が供給されて茶葉を後方に移送させるのである。そして前記刈刃30の直接後方には案内フレーム32があり、この案内フレーム32を下面部材としてそれを取り囲むようにトンネル状の案内胴33が構成され、更にこの案内胴33の後方には中継ダクト35が設けられている。
【0011】なおこの中継ダクト35の左右両側における昇降フレーム20Cには詳細な説明は省略するが、適宜コロ201が設けられ、このものが脚部フレーム20Aに沿って転接するように構成され、それらが全体としてチェーン等により上方に引き上げられるような状態で昇降する。なおこの管理機ユニット3自体は、この昇降フレーム20Cに対し比較的簡易に取り外し自在に取り付けられている。また中継ダクト35はその幅方向中央に仕切を有し、各後部開口端に対しフック36が取り付けられるものであり、この中継ダクト35を左右で二分割するように二つの収容袋Sが前記フック36を利用して掛止される。
【0012】また上部フレーム20B上には、摘採作業途中などに茶葉が収容された収容袋を一時的に載置しておくための中央荷台4と、この両側部に固定して設けられる張出荷台5が設けられており、一例としてこれら中央荷台4及び張出荷台5は、左右方向に摺動自在な構成とされている。」
(ウ)【図3】の記載は以下のとおり。
「【図3】
[図:0001380947000008.jpg]
」
(5)甲5
ア 記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0019】先ず、図1及び図2を参照しながら、茶樹の茶葉を摘採する摘採作業を行うコンテナを搭載した乗用型茶葉摘採機について説明する。図1において、1は乗用型茶葉摘採機の乗用車体であり、乗用車体1は左右一対のクローラ走行装置11,11により茶樹畝を跨いで茶樹畝の両側の畝間を走行する 。また、乗用車体1には左右一対の送風機2,2が搭載されており、各送風機2,2はそ れぞれ伸縮ダクト21,21を介してバリカン式の摘採装置3の摘採チャンバー31に連 通され、摘採チャンバー31はさらに左右一対の揚上搬送ダクト4,4を介して左右に対 設された上方搬入部51,51からコンテナ5に連通されており、左右一対の送風機2, 2は乗用車体1に対して固定されているのに対して、摘採装置3,左右一対の揚上搬送ダ クト4,4及びコンテナ5は乗用車体1に対して昇降調節自在に支持されている。なお、 左右一対の送風機2,2は、大型の送風機を1基としてもよく、この場合には、1基の送 風機から分岐ダクトを介して各伸縮ダクト21,21に連通される。 【0020】茶樹の茶葉を摘採する摘採作業を行うコンテナ5を搭載した乗用型茶葉摘採 機は上記のように構成されているから、茶樹畝の高さに応じ、また、茶樹の茶葉を摘採す る摘採作業や茶樹の枝葉を切断する刈りならし作業の作業内容に応じて、摘採装置3の高 さを調節することができるもので、摘採装置3により摘採された摘採チャンバー31内の 摘採茶葉は、左右一対の送風機2,2から各伸縮ダクト21,21を経由された搬送風に より、左右一対の揚上搬送ダクト4,4を介して上方搬入部51,51からコンテナ5内 に搬入されて収容されるものである。
・・・
【0024】次に、図4及び図5を参照して、刈りならし作業時において乗用型茶葉摘採機に誘導排出装置としての誘導ダクト7を設置した第二実施例について説明する。誘導排出装置は、コンテナ5に対設された上方搬入部51,51を個別に覆ってコンテナ5内に着脱可能に装着されるダクト基体71,71と、それぞれのダクト基体71の下流口に基部が接続されたフレキシブルなダクトホース73,73とからなる一対の誘導ダクト7,7により構成されており、各ダクト基体71,71には、揚上搬送ダクト4からの搬送風の風圧を降下させるための金網で覆われた風抜き用の分離口72が設けられ、各ダクトホース73,73は、コンテナ5の下方両側部に設けられた各下方搬出部52,52を経由して茶樹畝Tの畝間に臨む先端部が機体側にダクト装着バンド74により着脱可能に装着される。
【0025】そして、誘導ダクト7のダクト基体71に風抜き用の分離口72が設けられていることにより、摘採装置3で切断された切断枝葉が揚上搬送ダクト4内を搬送風により搬送されて誘導ダクト7により茶樹畝Tの畝間へ誘導排出される際に、分離口72から切断枝葉を搬送する搬送風のほとんどが排出され、分離口72により分離された切断枝葉は、誘導ダクト7のダクトホース73内を落下して茶樹畝Tの畝間への排出時に飛散することなく排出される。また、図示は省略しているが、ダクト装着バンド74を機体に対して幅方向に調節可能に取付けることにより、畝幅の異なる茶樹畝Tの刈りならし作業にも適用可能となる。」
(イ)【図4】、【図5】の記載は以下のとおり。
「【図4】
[図:0001380947000009.jpg]
【図5】
[図:0001380947000010.jpg]
」
5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「茶畝を跨ぐように形成された門型の機体20」及び「この機体20の左右両側に設けられた左右一対の油圧式のクローラ走行装置30,30」は、本件発明1の「畝を跨いで走行する走行機」に相当する。
(イ)甲1発明の「茶畝から茶葉を摘採するための刈刃51」は、本件発明1の「畝から摘採物を刈り取る刈刃」に相当する。
(ウ)甲1発明は、「刈刃51によって茶畝から摘採された」「茶葉」が「送風機53から発生した」「枝管56から刈刃51の前面に向かって満遍なく吹き付けられ」る「風」によって「摘採装置50の後方」の「茶袋」に「送り込まれ」るものであるから、甲1発明の「風(気流)を発生させる送風機53」は、本件発明1の「刈刃によって刈り取られた摘採物を搬送する空気の流れを生じさせる送風手段」に相当する。
(エ)甲1発明の「茶袋を載置する荷台62」は、「荷台62」が「案内板63」と「左右一対の補助板64,64とを備えて構成され」、「案内板63は、その上面に作業者や茶葉で満杯になった茶袋を載置することが可能な充分な強度を有している」ものであるから、本件発明1の「送風手段及び搬送ダクトによって搬送された摘採物を収容する袋状の収容体が載置されると共に作業者がその上に載って作業可能な載置面を有する載置台」とは、「送風手段によって搬送された摘採物を収容する袋状の収容体が載置されると共に作業者がその上に載って作業可能な載置面を有する載置台」の点で共通する。
(オ)甲1発明の「茶葉管理機10」は、本件発明1の「摘採機」に相当する。
(カ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
畝を跨いで走行する走行機と、
畝から摘採物を刈り取る刈刃と、
刈刃によって刈り取られた摘採物を搬送する空気の流れを生じさせる送風手段と、
送風手段によって搬送された摘採物を収容する袋状の収容体が載置されると共に作業者がその上に載って作業可能な載置面を有する載置台と、を備える、
摘採機。
(相違点)
本件発明1は、「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を有し、「搬送ダクトには、収容体が取り付け可能であって、取り付けられた収容体内に向かって搬送された摘採物を放出する放出口が設けられ、
放出口は、載置台における作業者が載る載置面から上方に間隔をおいて設けられている」もので、摘採物はこの「搬送ダクト」によって搬送されることが特定されるのに対し、
甲1発明は、「送風手段によって搬送される摘採物」は略水平に案内されて茶袋に送り込まれるものであって、「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を有しておらず、そのため、「搬送ダクトには、収容体が取り付け可能であって、取り付けられた収容体内に向かって搬送された摘採物を放出する放出口が設けられ、
放出口は、載置台における作業者が載る載置面から上方に間隔をおいて設けられている」ものでもなく、摘採物はこの「搬送ダクト」によって搬送されるものでもない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)甲2に記載された「送風管の分岐ノズル47′からの送風によって移送される、刈刃22′によって刈り取られた茶葉Aを上方に案内する搬送ダクト」は、「送風」が空気の流れを生じさせる送風手段により生成されることは自明であるから、本件発明1の「送風手段によって搬送される搬送物を上方に案内する搬送ダクト」に相当するといえる。また、甲2に記載された「搬送ダクト」に「吐出口33′」が設けられることは、「吐出口33′」は、「茶袋Bが取り付けられる」ものであるから、本件発明1の「搬送ダクトには、収容体が取り付け可能であって、取り付けられた収容体内に向かって搬送された摘採物を放出する放出口が設けられ、」に相当するといえる。
そうすると、甲2には、上記相違点に係る「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を有し、「搬送ダクトには、収容体が取り付け可能であって、取り付けられた収容体内に向かって搬送された摘採物を放出する放出口が設けられ」ることが記載されているといえる。
(イ)甲3に記載された「カツタ9で摘採された茶葉」、「フアン10」、「下部搬送管12、蛇管11及び上部搬送管6」及び「搬送管6の先端部のフランジ5及びその開口13」は、それぞれ、本件発明1の「搬送される摘採物」、「送風手段」、「搬送ダクト」及び「放出口」に相当し、甲3には、上記相違点に係る「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を有し、「搬送ダクトには、収容体が取り付け可能であって、取り付けられた収容体内に向かって搬送された摘採物を放出する放出口が設けられ」ることが記載されているといえる。
(ウ)甲2及び甲3に記載の搬送ダクトは、刈刃より上部にある収容体の入口まで摘採物を搬送する際に摘採物を上方に案内するものであり、刈刃より上部にある収容体の入口に対して摘採物を搬送するために「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を備えることは周知技術であるといえる。
(エ)しかし、甲1発明は、「刈刃」によって刈り取られた「摘採物」である茶葉は、略水平に案内されるものであって、上部に搬送する必要がないものである。
そうすると、刈刃より上部にある収容体の入口に対して摘採物を搬送するために「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を備えることが甲2及び甲3で示される周知技術であるとしても、甲1発明は、茶葉は、略水平に案内されるものであり、放出口が設けられるべき収容体の入口が刈刃より上部となるものではないから、当該周知技術を甲1発明に適用する動機付けはない。
(オ)また、甲1発明は、「荷台に載置した茶袋の滑りを抑制」するために「荷台上に載置した収容手段の滑り止めを行う滑り止め手段を備える」ようにしたものであるから、荷台の上の「茶袋」(袋状の収容体)が「滑りを抑制」しうる程度の面積で載置されることを前提としたものといえる。
一方、甲2及び甲3は、「袋状の収容体」(甲2の茶袋B、甲3の収納袋本体1)の入口が刈刃の上方に設けられることに関連して、「袋状の収容体」が上下方向に長いものとなっており、「袋状の収容体」と載置台の載置面との関係について、甲2は、収納体(茶袋)を「吊り下げ状態に取り付け」ることを想定しているため載置台を有さず、甲3は下底部を籠15で支持したもので、「袋状の収容体」の容量に比して籠15に載置される面の面積は小さいものとなっている。
そうすると、甲2、甲3に記載の「袋状の収容体」がその入口が上方に設けられることに関連して、上下方向に長いものとなっており、荷台を必要としない、または荷台と接する面が小さいものとなっていることは、「荷台に載置した茶袋の滑りを抑制」するために荷台の上の「茶袋」(袋状の収容体)が「滑りを抑制」しうる程度の面積で載置されることを前提とする甲1発明に甲2ないし甲3に記載された発明を適用する際の阻害要因といえる。
(カ)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に示された周知技術から当業者が容易に想到できたものとはいえない。
ウ まとめ
本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2ないし6について
ア 本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。
イ 甲4の乗用式茶園管理機は、甲1発明と同様に茶葉が略水平に案内されるものであるが、搬送ダクト(中継ダクト35)は略水平に設けられているものであり、本件発明1の相違点に係る茶葉を「上方に案内する」搬送ダクトを開示しない。
ウ 甲5に記載された「送風機2,2」、「茶葉」、「揚上搬送ダクト4,4」、「コンテナ5」及び「揚上搬送ダクト4,4」の「上方搬入部51,51」に取付られる部分は、それぞれ、本件発明1の「送風手段」、「搬送される摘採物」、「搬送ダクト」、「収容体」及び「放出口」に相当し、甲5には、上記相違点に係る、「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を有し、「搬送ダクトには、収容体が取り付け可能であって、取り付けられた収容体内に向かって搬送された摘採物を放出する放出口が設けられ」ることが記載されているといえる。
しかし、甲5も、甲2、甲3同様、刈刃より上部にある収容体の入口まで摘採物を搬送する際に摘採物を上方に案内するものであり、上記(1)イ(エ)で検討したのと同様の理由により、甲1発明に適用する動機付けがない。
また、甲5の乗用型茶葉摘採機は、収容体が「コンテナ5」であって、甲1発明の前提となる「滑りを抑制」すべき「茶袋」を有さないから、その適用には阻害要因を有する。
エ そうすると、甲4及び甲5にも、甲1発明の摘採機において「送風手段によって搬送される摘採物を上方に案内する搬送ダクト」を備えることについて、記載も示唆もされていないから、上記(1)と同様の理由により、甲1発明及び甲2及び甲3に示された周知技術に基いて、または、甲1発明、甲2及び甲3に示された周知技術及び甲4または甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 むすび
以上のとおり申立人が申し立てた特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700536