特許拒絶査定不服審判
2024-008040
収穫機械の掻込装置、掻込部材及び収穫機械
- 審判番号
- 2024-008040
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-006299
- 請求日
- 2024年05月15日
- 審決日
- 2026年05月15日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】種村 一幸
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P18 .561-WZ (A01D) / P18 .575-WZ (A01D) / P18 .121-WZ (A01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-6299「収穫機械の掻込装置、掻込部材及び収穫機械」拒絶査定不服審判事件〔令和4年7月29日出願公開、特開2022-110716〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月19日を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 9月26日付け:拒絶理由通知書
同年11月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 2月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月20日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年12月19日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和8年 2月19日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和8年2月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和8年2月19日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和8年2月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲における請求項1及び9の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1及び9の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1)本件補正前の請求項1及び9
「 【請求項1】
回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体と、
前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガと、を備え、
前記掻込体は、
前記回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部と、
前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有し、
前記掻込フィンガは、前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没し、
前記掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部とは、前記回転体の周方向に並んでおり、
前記掻込体は、前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能である、
収穫機械の掻込装置。」
「 【請求項9】
前記掻込体は、前記突起部を複数有し、
前記複数の突起部の前記回転体の前記外周面からの高さは、前記回転軸に沿う方向における位置によって異なる、
請求項1~8のいずれか1項に記載の収穫機械の掻込装置。」
(2)本件補正後の請求項1及び9
「 【請求項1】
回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体と、
前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガと、を備え、
前記掻込体は、
前記回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部と、
前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有し、
前記掻込フィンガは、前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没し、
前記掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部とは、前記回転体の周方向に並んでおり、
前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であって、
前記掻込体は、前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能である、
収穫機械の掻込装置。」
「 【請求項9】
前記掻込体は、前記突起部を複数有し、
前記複数の突起部の前記回転体の前記外周面からの高さは、前記回転軸に沿う方向における位置によって異なる、
請求項1~8のいずれか1項に記載の収穫機械の掻込装置。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「土台部」について、「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であ」るものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1及び9に記載された発明と本件補正後の請求項1及び9に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一ある。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 本件補正の適否(新規事項の追加の有無)
本件補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものであるかについて以下検討する。
(1)当初明細書等に記載された事項
本件補正は、「土台部」について限定するものであるところ、前記「土台部」に関して、当初明細書等には次の記載がある。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
ア 実施形態1
「【0039】
すなわち、掻込装置1は、図1に示すように、掻込体10を備えている。掻込体10は、回転軸Ax1を中心に回転する回転体5の外周面511のうち、フィーダハウス2の取込口21に対応する位置に配置される。掻込体10は、刈り取られた作物を取込口21からフィーダハウス2に掻き込むように機能する。ここで、掻込体10は、土台部11と、突起部12と、を有している。土台部11は、回転軸Ax1に沿って長さを有し、回転体5の外周面511から突出する。突起部12は、土台部11から部分的に突出する。
【0040】
このように本実施形態に係る掻込装置1では、掻込体10が、土台部11と、土台部11から部分的に突出する突起部12とを有することで、フィーダハウス2への作物の掻き込みをより確実に行いやすくなる。要するに、掻込体10は、回転体5の外周面511に配置されているため、回転体5の回転に伴って、回転軸Ax1を中心に回転(公転運動)する。このとき、掻込体10の土台部11を作物に押し付けながら、回転軸Ax1周りで回転体5の外周面511に沿って掻込体10が作物を搬送することにより、掻込体10が取込口21の前方位置を通るタイミングで、フィーダハウス2に作物が掻き込まれる。そして、土台部11からは突起部12が部分的に突出するので、掻込体10の先端は、例えば鋸刃のように、平坦ではなくギザギザの形状となる。そのため、突起部12によれば、平坦な土台部11の先端に対して、作物の適度な引っ掛かり及び作物との適度な摩擦を付与することができる。
【0041】
したがって、掻込体10が作物に対して空回りするような状態が生じにくくなり、回転体5の回転時における掻込体10による作物の掻込効率が向上し、フィーダハウス2への作物の掻き込みをより確実に行いやすい、という利点がある。その結果、本実施形態に係る掻込装置1によれば、作物の滞留を生じにくくすることができる。
【0042】
さらに詳細に説明すると、掻込体10は、図1の吹き出し内に示すように、左右方向D3に長さを有する矩形状(帯状)の土台部11と、土台部11の先端から部分的に突出する複数の突起部12を有している。掻込体10は、1つの土台部11に対して5つの突起部12を有している。本実施形態では、複数(ここでは5つ)の突起部12の形状は共通である。そして、突起部12は、少なくとも回転軸Ax1に沿う方向の寸法が先端側ほど小さくなる先細り形状である。例えば、図1に示すように、各突起部12は、正面視が略三角形状となるような先細り形状を有する。このような形状によれば、突起部12として必要な強度を維持しつつ、作物の適度な引っ掛かり及び作物との適度な摩擦を、突起部12にて付与しやすくなる。
【0043】
さらに、本実施形態では、掻込体10は、例えば金属板等の、板状の部品にて構成されている。特に、本実施形態では、掻込体10が3つの掻込片100を含んでおり、これら3つの掻込片100の各々が板状の部品からなる。3つの掻込片100は、回転軸Ax1に沿う方向(左右方向D3)に隙間をあけずに並んでいる。そして、3つの掻込片100のうち左右方向D3の両側に位置する掻込片100は、1つの突起部12を有し、中央に位置する掻込片100は、3つの突起部12を有する。そのため、左右方向D3の中央に位置する掻込片100は、左右方向D3の両側に位置する掻込片100に比較して、左右方向D3の寸法が3倍となる。図1の吹き出し内においては、土台部11と突起部12との境界を想像線(二点鎖線)で示しているが、実際には、土台部11と突起部12とはシームレスに連続する。」
「【0059】
[3]掻込体の具体的構成
次に、本実施形態に係る掻込装置1の掻込体10の具体的構成について、図7A及び図7Bを参照して説明する。
【0060】
図7Aに示すように、掻込体10は、正面視矩形状の土台部11と、土台部11の先端(図7Aの上端)から突出する正面視略三角形状の突起部12と、を有している。ここで、突起部12の先端は平坦である。図7Aでは、突起部12を1つのみ有する掻込片100を単体で示している。つまり、図7Aに示すのは土台部11の一部であって、また、掻込体10は、図7Aのような突起部12を、回転軸Ax1に沿う方向(左右方向D3)に複数備えている。図7Aにおいては、土台部11と突起部12との境界を想像線(二点鎖線)で示しているが、実際には、土台部11と突起部12とはシームレスに連続する。
【0061】
ここで、掻込体10の突出方向において、土台部11の寸法L1と、突起部12の寸法L2とでは、土台部11の寸法L1の方が小さい関係にある(L1<L2)。ただし、土台部11の寸法L1と、突起部12の寸法L2との差は比較的小さいことが好ましい。そのため、土台部11の寸法L1は、突起部12の寸法L2以下で、寸法L2の3分の2以上であることが好ましい。さらに、土台部11の寸法L1は、寸法L2の5分の4以上であることがより好ましく、寸法L2の10分の9以上であることがより好ましい。一例として、土台部11の寸法L1が41mmのときに、突起部12の寸法L2は43mmである。」
「【図1】
[図:0001436587000001.jpg]
」
イ 実施形態1の変形例
「【0069】
[5]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0070】
掻込体10の形状及び寸法等は、実施形態1で説明した態様に限らない。例えば、図8A~図8Dに示すように、様々な形状の掻込体10を採用し得る。図8A~図8Dでは、突起部12を1つのみ有する掻込片100を単体で示している。つまり、図8A~図8Dに示すのは土台部11の一部であって、また、掻込体10は、図8A~図8Dのような突起部12を、回転軸Ax1に沿う方向(左右方向D3)に複数備えている。
【0071】
第1変形例に係る掻込体10は、図8Aに示すように、突起部12の先端が平坦ではなく鋭角である。第2変形例に係る掻込体10は、図8Bに示すように、突起部12が先細り形状ではなくピン形状(スパイク形状)である。第3変形例に係る掻込体10は、図8Cに示すように、突起部12が先細り形状ではあるものの、先端側ほど段階的(不連続)に細くなる階段形状である。第4変形例に係る掻込体10は、図8Dに示すように、突起部12の先端が湾曲したR形状である。もちろん、図8A~図8Dは一例に過ぎず、さらに他の形状の掻込体10を採用してもよい。また、掻込装置1は、突起部12の形状が異なる掻込体10を組み合わせてもよく、一例として、掻込装置1は、1つの土台部11に対して、第1変形例に係る掻込体10の突起部12と、第2変形例に係る掻込体10の突起部12とを備えてもよい。
【0072】
また、掻込体10が備える突起部12の数についても、実施形態1で説明した数(5つ)に限らない。例えば、掻込体10は、1つ、2つ、3つ、4つ、又は6つ以上の突起部12を備えていてもよい。さらに、掻込体10が、1又は複数の突起部12を含む複数の掻込片100に分割されることは必須の構成ではなく、1つの掻込片100にて掻込体10が実現さてもよい。」
「
[図:0001436587000002.jpg]
」
「
[図:0001436587000003.jpg]
」
「
[図:0001436587000004.jpg]
」
「
[図:0001436587000005.jpg]
」
ウ 実施形態2
「【0080】
(実施形態2)
本実施形態に係る掻込装置1Aは、図9に示すように、掻込体10の形状が、実施形態1に係る掻込装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0081】
本実施形態では、複数の突起部12の回転体5の外周面511からの高さが、回転軸Ax1に沿う方向における位置によって異なる。つまり、回転体5の外周面511からの高さ(突出量)は、複数の突起部12において均一ではなく、左右方向D3における突起部12の位置によって異なる。この構成によれば、回転体5の回転時に突起部12から作物(穀稈)に作用する力(掻込力)を、回転軸Ax1に沿う方向の位置ごとに調節することが可能となる。これにより、フィーダハウス2への作物の掻き込みをより効率的に実現可能となる。
【0082】
特に、本実施形態では、複数の突起部12の回転体5の外周面511からの高さは、回転軸Ax1に沿う方向における取込口21の中心側ほど高い。つまり、回転体5の外周面511からの高さ(突出量)は、複数の突起部12の中でも、左右方向D3において取込口21の中心に近いほどに大きくなる。図9の例では、掻込体10が7つの突起部12を有しており、このうち取込口21の中心に近い5つの突起部12は、他の2つの突起部12よりも外周面511からの高さ(突出量)が大きい。この構成によれば、回転体5の回転時に突起部12から作物(穀稈)に作用する力(掻込力)を、取込口21の中心側で大きくなるように、調節することが可能となる。これにより、フィーダハウス2への作物の掻き込みをより効率的に実現可能となる。
【0083】
また、本実施形態に係る掻込装置1Aは、上述した事項以外に、1つの掻込片100につき1つの突起部12が設けられている点でも、実施形態1とは相違する。さらに、本実施形態に係る掻込装置1Aは、掻込フィンガ14を備えない点でも、実施形態1とは相違する。実施形態2の構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。」
「【図9】
[図:0001436587000006.jpg]
」
(2)当初明細書等に記載された事項から把握できる事項
ア 実施形態1について
前記(1)ア【0039】~【0042】、【図1】から、第1実施形態として、掻込体10が、回転軸Ax1に沿って長さを有し、回転体5の外周面511から突出する矩形状(帯状)の土台部11と、土台部11の先端から部分的に突出する、形状が共通の複数の突起部12を有していること、即ち、回転体5の外周面511から突出する高さが、回転軸Ax1に沿った方向において均一である土台部11と、土台部11の先端から部分的に突出する、高さが同一である複数の突起部12を有している掻込体10が把握できる。
イ 実施形態1の変形例について
前記(1)イは、実施形態1を前提とした変形例に関する記載であると認められるので、前記アをふまえると、前記(1)イ【0069】~【0072】、【図8A】~【図8D】から、回転体5の外周面511から突出する高さが、回転軸Ax1に沿った方向において均一である土台部11と、土台部11の先端から部分的に突出する、高さが同一である複数の突起部12を有している掻込体10において、形状が異なる複数の突起部12を、回転軸Ax1に沿う方向(左右方向D3)に複数備えているものが把握できる。
ウ 実施形態2について
(ア)前記(1)ウの実施形態2は、前記(1)ウ【0080】の「本実施形態に係る掻込装置1Aは、図9に示すように、掻込体10の形状が、実施形態1に係る掻込装置1と相違する。」との記載、及び前記(1)ウ【0081】の「本実施形態では、複数の突起部12の回転体5の外周面511からの高さが、回転軸Ax1に沿う方向における位置によって異なる。」との記載をふまえると、実施形態2は、複数の突起部12について、回転体5の外周面511からの高さが、回転軸Ax1に沿う方向における位置によって異なる点において実施形態1と相違するものであると認められる。
そして、前記(1)ア【0061】の「ここで、掻込体10の突出方向において、土台部11の寸法L1と、突起部12の寸法L2とでは、土台部11の寸法L1の方が小さい関係にある(L1<L2)。ただし、土台部11の寸法L1と、突起部12の寸法L2との差は比較的小さいことが好ましい。」との記載から、実施形態2においても、掻込体10の突出方向において、土台部11の寸法L1と、突起部12の寸法L2とでは、土台部11の寸法L1の方が小さい関係にあり、土台部11の寸法L1と、突起部12の寸法L2との差が比較的小さいと認められる。
(イ)前記(ア)をふまえると、前記(1)ウ【0080】~【0083】、【図9】から、第2実施形態として、複数の突起部12の回転体5の外周面511からの高さが、回転軸Ax1に沿う方向における位置によって異なる突起部12を有している掻込体10が把握できるものの、その場合に、土台部11の、回転体5の外周面511から突出する高さが、回転軸Ax1に沿った方向において均一であるものは記載も示唆もされているとはいえない。
(3)新規事項の判断
ア 当初明細書等の記載から前記(2)のとおり把握できるものの、前記(1)には、本件補正後の請求項1の記載を引用する請求項9に記載された事項である「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定で」あり、かつ、「前記複数の突起部の前記回転体の前記外周面からの高さは、前記回転軸に沿う方向における位置によって異なる」構成の「掻込体」は記載されていない。
イ また、当初明細書等の他の全記載をみても、「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定で」あり、かつ、「前記複数の突起部の前記回転体の前記外周面からの高さは、前記回転軸に沿う方向における位置によって異なる」構成の「掻込体」は記載も示唆もされていない。
ウ 以上のとおり、請求項1について「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であって、」と補正することを含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
エ したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。
(4)請求人の主張について
ア 意見書の主張内容
請求人は、令和8年2月19日に提出された意見書の1.において、概略次のように主張している。
「請求項1の補正事項「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であって、」は、出願当初の明細書の段落〔0039〕,〔0040〕,〔0042〕,〔0043〕、図1等の記載に基づく事項を特定するものであって、「土台部」との発明特定事項の更なる限定であって、かつ、補正前発明と補正後発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、限定的減縮を目的とする補正です。」
イ 請求人の主張についての検討
請求人が主張する「出願当初の明細書の段落〔0039〕,〔0040〕,〔0042〕,〔0043〕、図1等の記載」は、前記(1)に示した記載に含まれているところ、前記(2)、(3)に示したとおりであるから、請求人の前記主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるとはいえないから、特許法17条の2第3項に規定する要件に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
4 本件補正の適否(独立特許要件)
本件補正により請求項1の記載を引用する請求項9において特定された土台部の突出量についての特定事項が当初明細書等の記載からみて、新たな技術的事項の追加とまでいえず、本件補正が適法な補正であった場合についても検討する。
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、再掲すると次のとおりのものである。
「 【請求項1】
回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体と、
前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガと、を備え、
前記掻込体は、
前記回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部と、
前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有し、
前記掻込フィンガは、前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没し、
前記掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部とは、前記回転体の周方向に並んでおり、
前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であって、
前記掻込体は、前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能である、
収穫機械の掻込装置。」
(2)引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献3
本願出願前の平成19年9月27日に発行された文献である特開2007-244248号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0016】
図1及び図2に示すAは、本発明に係る汎用コンバインを示しており、同汎用コンバインAは、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式の走行部2,2を配設すると共に、機体フレーム1の前端部に刈取部3を搬送部4を介して昇降自在に取り付け、同搬送部4の直後方位置に脱穀部5を配設し、同脱穀部5の直下方位置に揺動選別部6を配設する一方、同揺動選別部6の後方であって、脱穀部5の後方下部に排藁処理部7を配設している。
【0017】
また、汎用コンバインAは、機体フレーム1の前部であって、搬送部4の右側位置に運転部8を配設し、同運転部8の直後方位置であって、脱穀部5の右側位置に穀粒貯留部9を配設し、同穀粒貯留部9に穀粒搬出部10を連通連設すると共に、同穀粒貯留部9の直後方位置に原動機部11を配設している。
【0018】
以下に、汎用コンバインAの各部の構造について説明する。
・・・
【0020】
〔刈取部〕
刈取部3は、図1及び図2に示すように、搬送部4の先端部にプラットフォーム18を連設し、同プラットフォーム18内に左右方向に軸線を向けた横送りオーガ19を回動可能に横架し、同横送りオーガ19の直前方位置に往復駆動型刈刃装置20を横架し、同往復駆動型刈刃装置20の直前方位置にディバイダー21を配置し、同ディバイダー21の上方位置に昇降機構23を介して掻き込みリール22を配置している。」
「【0022】
〔搬送部〕
搬送部4は、図1及び図2に示すように、機体フレーム1の前端部に前後方向に伸延するフィーダハウス24を上下回動自在に取り付け、同フィーダハウス24の内部に搬送コンベア25を配設している。
【0023】
このようにして、刈取部3の横送りオーガ19により寄せ集められた穀稈を搬送コンベア25で後方の脱穀部5へ搬送するようにしている。」
「【0041】
〔本発明の要旨〕
上記のような構成において、本発明の要旨は、刈取部3に備えた往復駆動型刈刃装置20に株元部払い体57を配設し、横送りオーガ19のスクリュウ羽根がない部分において滞留しがちな刈取穀稈の株元部分を払うことにより、起立した刈取穀稈を横臥させるようにしたことにある。
【0042】
すなわち、図3及び図3のC-D断面図を示した図4により刈取部3をより詳細に説明すると、プラットフォーム18に設けた横送りオーガ19は、左右方向に軸線を向けたドラム50の外周面に、刈取穀稈を左側方から略中央部寄りに搬送する左側螺旋形スクリュウ羽根51と、刈取穀稈を右側方から略中央部寄りに搬送する右側螺旋形スクリュウ羽根52とを備えている。
【0043】
そして、左・右螺旋形スクリュウ羽根51、52の中央寄り側の終端部間には、ドラム50の円周方向外周面に羽根がない羽根なし部Nを有しており、この羽根なし部Nは、フィーダハウス24の搬入口部53の前方に形成している。
【0044】
また、ドラム50の外周面の複数箇所には、同ドラム50の半径方向外方に向けて棒状のフィンガ54を突設している。
【0045】
このフィンガ54は、ドラム50の回動に伴って、プラットフォーム18内に貯留した刈取穀稈を引っかけながら掻き込んで、フィーダハウス24の搬入口部53へ搬送するようにしている。」
「【0058】
また、羽根なし部Nの前方で起立して停滞する穀稈の掻込みを促進するためには、例えば図9及び図9のG-H断面図を示した図10に示すように、横送りオーガ19の羽根なし部N近傍に、板状の左側掻込板61、右側掻込板62を配設しても良い。
【0059】
すなわち、この両側の掻込板61、62は、ドラム50の表面に、同ドラム50の回動軸と平行であって、半径方向外方に向けて立設しており、左側掻込板61は、左側螺旋形スクリュウ羽根51の中央寄り末端部近傍で同左側螺旋形スクリュウ羽根51と接触させて配設し、また、右側掻込板62は、右側螺旋形スクリュウ羽根52の中央寄り末端部近傍で同右側螺旋形スクリュウ羽根52と接触するように配設している。
【0060】
しかも、両側の掻込板61、62は、図11に示すように、両側に配設した左・右螺旋形スクリュウ羽根51、52の高さよりも低くするとともに、ドラム50の外周面において円周方向に略180度の間隔を置いて配設し、さらに、先端部分を波形状に形成している。
【0061】
したがって、横送りオーガ19が回動すると、羽根なし部N前方で起立した状態の刈取穀稈を、前記掻込板61、62が押し倒し、穀稈を横臥させてフィーダハウス24の内方へ搬送することとなり、刈取穀稈の停滞を防ぐことができる。
【0062】
また、掻込板61、62は、左・右螺旋形スクリュウ羽根51、52の羽根の高さよりも低く形成しているので、横送りオーガ19の横搬送を妨げることなく刈取穀稈の掻き込むことができる。
【0063】
さらに、掻込板61、62の先端部を波形状に形成しているので、起立した穀稈に対して十分な摩擦力を生じさせることができ、効果的に穀稈を押し倒して横臥させることができる。
【0064】
なお、この掻込板61、62はドラム50の表面にボルト等で螺設することで、着脱可能としている。」
「【図9】
[図:0001436587000007.jpg]
」
「【図10】
[図:0001436587000008.jpg]
」
「【図11】
[図:0001436587000009.jpg]
」
(イ)引用文献3の記載より認定できる事項
前記(ア)【0059】の「すなわち、この両側の掻込板61、62は、ドラム50の表面に、同ドラム50の回動軸と平行であって、半径方向外方に向けて立設しており」との記載、前記(ア)【0063】の「さらに、掻込板61、62の先端部を波形状に形成しているので、起立した穀稈に対して十分な摩擦力を生じさせることができ、効果的に穀稈を押し倒して横臥させることができる。」をふまえると、前記(ア)【図11】から、波形状の先端部を除いた掻込板61、62の基部の、ドラム50の外周面からの高さは、ドラム50の回動軸と平行な方向において均一であることが看取できる(以下「認定事項a」という。)。
(ウ)引用発明3
前記(ア)、(イ)から、引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「汎用コンバインAの機体フレーム1に搬送部4を介して取り付けられた刈取部3のプラットフォーム18内に左右方向に軸線を向けて回動可能に横架された横送りオーガ19であって(【0016】、【0020】)、
搬送部4は、フィーダハウス24を取り付け、同フィーダハウス24の内部に搬送コンベア25を配設しており(【0022】)、
横送りオーガ19により寄せ集められた穀稈を搬送コンベア25で後方の脱穀部5へ搬送し(【0023】)、
横送りオーガ19は、左右方向に軸線を向けたドラム50の外周面に、刈取穀稈を左側方から略中央部寄りに搬送する左側螺旋形スクリュウ羽根51と、刈取穀稈を右側方から略中央部寄りに搬送する右側螺旋形スクリュウ羽根52とを備えており(【0042】)、
左側螺旋形スクリュウ羽根51、右側螺旋形スクリュウ羽根52の中央寄り側の終端部間には、ドラム50の円周方向外周面に羽根がない羽根なし部Nを有しており、この羽根なし部Nは、フィーダハウス24の搬入口部53の前方に形成しており(【0043】)、
羽根なし部Nの前方で起立して停滞する穀稈の掻込みを促進するために、横送りオーガ19の羽根なし部N近傍に、板状の左側掻込板61、右側掻込板62を配設し(【0058】)、
横送りオーガ19が回動すると、羽根なし部N前方で起立した状態の刈取穀稈を、掻込板61、62が押し倒し、穀稈を横臥させてフィーダハウス24の内方へ搬送し(【0061】)、
ドラム50の外周面の複数箇所には、同ドラム50の半径方向外方に向けて棒状のフィンガ54を突設しており(【0044】)、
フィンガ54は、ドラム50の回動に伴って、プラットフォーム18内に貯留した刈取穀稈を引っかけながら掻き込んで、フィーダハウス24の搬入口部53へ搬送し(【0045】)、
両側の掻込板61、62は、ドラム50の表面に、同ドラム50の回動軸と平行であって、半径方向外方に向けて立設しており(【0059】)、
両側の掻込板61、62は、先端部を波形状に形成しており(【0060】、【0063】)、波形状の先端部を除いた掻込板61、62の基部の、ドラム50の外周面からの高さは、ドラム50の回動軸と平行な方向において均一であり(認定事項a)、
掻込板61、62はドラム50の表面にボルト等で螺設することで、着脱可能である(【0064】)、
横送りオーガ19。」
イ 引用文献1
本願出願前の平成28年6月2日に発行された文献である特開2016-101101号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、掻込フィンガと櫛状の掻込体とが協働して茎稈作物に掻込作用して、茎稈作物がフィーダハウス内に堅実に掻き込まれるため、機体の移動速度(車速)が速くなっても、刈取茎稈集結空間内に集結された茎稈作物(特に、麦)は、フィーダハウス内へ円滑かつ確実に掻き込まれる。その結果、刈取茎稈集結空間内に茎稈作物が滞留するのを防止することができる。」
「【0016】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示すAは、刈り取った圃場の作物の全量を掻込オーガによりフィーダハウス内に掻き込むようにした収穫機としての普通型コンバイン(以下、単に「コンバイン」と略称する。)である。」
「【0023】
[掻込オーガの構成の説明]
掻込オーガ26は、図3~図6に示すように、穀物ヘッダー21の左右側壁21b,21a間に、ベアリング等の軸受47を介して左右方向に軸線を向けた回転支軸27を、その軸線廻りに回転自在に横架している。回転支軸27の外周には、筒状のオーガ本体28を同心円的に取り付けている。
【0024】
オーガ本体28の外周面の左側部には、刈り取った穀稈を右側方へ搬送する螺旋羽根形状の左側螺旋搬送片29を突設する一方、オーガ本体28の外周面の右側部には、刈り取った穀稈を左側方へ搬送する螺旋羽根形状の右側螺旋搬送片30を突設している。左側螺旋搬送片29の搬送終端部と、右側螺旋搬送片30の搬送終端部との間には、刈り取った茎稈作物が集結される刈取茎稈集結空間31を、オーガ本体28の外周面に沿わせて円筒状に形成している。しかも、刈取茎稈集結空間31は、フィーダハウス19の前端開口部20の直前方に位置させて形成して、前端開口部20と前後方向に符合させている。前端開口部20は、穀物ヘッダー21とフィーダハウス19とが連通する連通口となしている。
【0025】
刈取茎稈集結空間31内には、左右一対の直棒状の掻込突片である掻込フィンガ33,33を、オーガ本体28の周廻りに一定の間隔をあけて複数対(本実施形態では、四対)配設している。オーガ本体28内には、出没機構32を配設しており、出没機構32に掻込フィンガ33の基端部を連動連結している。そして、出没機構32は、掻込フィンガ33をオーガ本体28から間欠的に放射方向(オーガ本体28の半径方向)に向けて出没させるようにしている。
【0026】
すなわち、出没機構32は、オーガ本体28の回動作動と連動して、オーガ本体28の周面上部と周面前部において、オーガ本体28から掻込フィンガ33を突出作動させるとともに、オーガ本体28の周面下部と周面後部において、オーガ本体28内に掻込フィンガ33を没入作動させるようにしている。この際、掻込フィンガ33は、前方に向く位置において、オーガ本体28から最大限に突出される一方、後方に向く位置において、オーガ本体28内に没入されるようにしている。」
「【0028】
[本実施形態の特徴的な構成の説明]
本実施形態の特徴的な構成について、図3~図7を参照しながら説明する。すなわち、掻込オーガ26は、前記したように、穀物ヘッダー21内に、左右方向に軸線を向けた円筒状のオーガ本体28を回転可能に横架している。オーガ本体28の外周面には、左側螺旋搬送片29と右側螺旋搬送片30を突設して形成している。そして、両螺旋搬送片29,30の内側端同士の間には、刈り取った茎稈作物が集結される刈取茎稈集結空間31を形成している。刈取茎稈集結空間31は、穀物ヘッダー21とフィーダハウス19とが連通する連通口としての前端開口部20に、前後方向に符合させて形成している。刈取茎稈集結空間31が形成されているオーガ本体28の外周面の部分には、複数の出没式の掻込フィンガ33と、固定式の掻込体40を配設している。」
「【0030】
このように構成した掻込オーガ26では、刈取茎稈集結空間31が形成されているオーガ本体28の外周面の部分に、複数の出没式の掻込フィンガ33と、固定式の掻込体40を配設し、掻込体40を、オーガ本体28の外周面からその軸線方向に間隔をあけて多数の棒状の突出片42を突出させて櫛状に形成しているため、掻込フィンガ33と櫛状の掻込体40とが協働して茎稈作物に掻込作用して、茎稈作物がフィーダハウス19内に堅実に掻き込まれる。そのため、機体の移動速度(車速)が速くなっても、刈取茎稈集結空間31内に集結された茎稈作物(特に、麦)は、フィーダハウス19内へ円滑かつ確実に掻き込まれる。その結果、刈取茎稈集結空間31内に茎稈作物が滞留するのを防止することができる。」
「【0034】
[本実施形態の特徴的な構成のより具体的な説明]
(掻込体の構成の説明)
上記した本実施形態の特徴的な構成である掻込体40の構成について、図3~図7を参照しながらより具体的に説明する。すなわち、刈取茎稈集結空間31が形成されているオーガ本体28の部分には、前記したように、左右一対の掻込フィンガ33,33がオーガ本体28の周廻りに一定の間隔をあけて四対配設されている。そして、このオーガ本体28の部分には、オーガ本体28の周廻りに隣接する掻込フィンガ33の間に位置させて、四個の掻込体40を配設している。しかも、各掻込体40は、相互に左右方向に位置ずれさせて配設している。
【0035】
掻込体40は、左右方向に延伸する細幅板状の取付片41と、取付片41の上面に、その延伸方向に一定の間隔をあけて多数(本実施形態では、12本)突設した突出片42とから形成している。取付片41には、その延伸方向に間隔をあけて四個の取付孔43を形成している。取付片41は、各取付孔43を介してオーガ本体28の外周面に取付ボルト44により取り付けている。突出片42は、取付片41の延伸方向である左右方向と直交する方向の軸線を有する棒状の取付基部42aと、取付基部42aから上方へ立ち上げて形成し、かつ、上下方向の軸線を有する棒状の突出部42bとから一体成形している。各取付基部42aは、取付片41の上面に溶接して一体的に取り付けている。各突出部42bは、正面視にて、平行状態に左側方に傾倒させて、傾倒角θ2を設けている。本実施形態では、傾倒角θ2を45度に形成している。そして、各突出部42bは、左側面視にて、オーガ本体28の回転方向Rに対して後退角θ1を設けている。Wは、各突出部42bの掻込作用幅であり、掻込作用幅Wは、オーガ本体28の外周面への突出部42bの投影幅であって、刈取茎稈集結空間31内に集結された茎稈作物に突出部42bが掻込作用する作用幅である。」
「【図3】
[図:0001436587000010.jpg]
」
「【図7】
[図:0001436587000011.jpg]
」
(イ)引用文献1の記載より認定できる事項
前記(ア)【図3】から、オーガ本体28の周廻り方向において、掻込体40と掻込フィンガ33が対向していることが看取できる(以下「認定事項b」という。)。
(ウ)引用発明1
前記(ア)、(イ)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「刈り取った圃場の作物の全量を掻込オーガ26によりフィーダハウス内に掻き込むようにした収穫機の掻込オーガ26であって(【0016】)、
穀物ヘッダー21内に、左右方向に軸線を向けた円筒状のオーガ本体28を回転可能に横架しており(【0028】)、
オーガ本体28の外周面には、刈り取った茎稈作物が集結される刈取茎稈集結空間31が形成されており、刈取茎稈集結空間31は、穀物ヘッダー21とフィーダハウス19とが連通する連通口としての前端開口部20に、前後方向に符合しており(【0028】)、
刈取茎稈集結空間31が形成されているオーガ本体28の外周面の部分には、複数の掻込フィンガ33と、掻込体40が配設されており(【0028】)、
掻込フィンガ33と掻込体40とが協働して茎稈作物に掻込作用して、茎稈作物がフィーダハウス19内に掻き込まれ(【0030】)、
掻込体40は、左右方向に延伸する細幅板状の取付片41と、取付片41の上面に、その延伸方向に一定の間隔をあけて12本突設した突出片42とから形成されており(【0035】)、
オーガ本体28内には、出没機構32を配設しており、出没機構32は、オーガ本体28の回動作動と連動して、掻込フィンガ33をオーガ本体28から間欠的にオーガ本体28の半径方向に向けて出没させ(【0025】、【0026】)、
オーガ本体28の周廻り方向において、掻込体40と掻込フィンガ33が対向しており(認定事項b)、
取付片41には、その延伸方向に間隔をあけて四個の取付孔43が形成されており、取付片41は、各取付孔43を介してオーガ本体28の外周面に取付ボルト44により取り付けられており(【0035】)、
刈取茎稈集結空間31内に茎稈作物が滞留するのを防止することができる(【0014】)、
掻込オーガ26。」
(3)対比
本願補正発明と引用発明3を対比する。
ア 後者の「汎用コンバインA」、「フィーダハウス24」、及び「フィーダハウス24の搬入口部53」は、前者の「収穫機械」、「フィーダハウス」、及び「フィーダハウスの取込口」に相当する。
イ 後者の「ドラム50」は、「左右方向に軸線を向け」、「回動」するものであるから、前者の「回転軸を中心に回転する回転体」に相当する。
ウ 後者の「羽根なし部N」は、「フィーダハウス24の搬入口部53の前方に形成」されたものであるから、「羽根なし部N近傍」に「配設」された「左側掻込板61」及び「右側掻込板62」は共に、「フィーダハウス24の搬入口部53」に対応する位置に形成されたものであるといえる。
エ 後者の「左側掻込板61」及び「右側掻込板62」は共に、「ドラム50の円周方向外周面に羽根がない羽根なし部N」の近傍に「配設」されたものであって、「羽根なし部N前方で起立した状態の刈取穀稈」を、「押し倒し、穀稈を横臥させてフィーダハウス24の内方へ搬送」するものであるから、前記イ、ウをふまえると、前者の「掻込体」と後者の「左側掻込板61」又は「右側掻込板62」は、「前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体」である点で一致する。
オ 後者の「フィンガ54」は、「ドラム50の外周面の複数箇所」に「突設」されたものであって、「ドラム50の回動に伴って、プラットフォーム18内に貯留した刈取穀稈を引っかけながら掻き込」むものであるから、前者の「前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガ」に相当する。
カ 後者の「横送りオーガ19」は、「汎用コンバインA」に設けられたものであって、「フィンガ54」及び「左側掻込板61」、「右側掻込板62」が配設された「ドラム50」を有するものであるから、前者の「収穫機械の掻込装置」と後者の「横送りオーガ19」は、「回転体と、掻込体と、掻込フィンガを備える収穫機械の掻込装置」である点で一致する。
キ 後者の「左側掻込板61」及び「右側掻込板62」は共に、「ドラム50の表面に、同ドラム50の回動軸と平行であって、半径方向外方に向けて立設して」いるものであって、「波形状の先端部」と「波形状の先端部を除いた」「基部」を有するものであるから、後者の「「波形状の先端部を除いた」「基部」」は、前者の「前記回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部」に相当する。
ク 後者の「左側掻込板61」及び「右側掻込板62」は共に、「波形状の先端部」と「波形状の先端部を除いた」「基部」を有するものであって、「波形状」との形状をふまえると、後者の「波形状の先端部」は、前者の「前記土台部から部分的に突出する突起部」に相当する。
ケ 前記キ、クをふまえると、前者の「掻込体」と後者の「左側掻込板61」又は「右側掻込板62」は、「前記回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部と、前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有」するものである点で一致する。
コ 後者の「左側掻込板61」及び「右側掻込板62」は共に、「波形状の先端部を除いた」「基部」の「ドラム50の外周面からの高さ」が、「ドラム50の回動軸と平行な方向において均一であ」るから、前者の「収穫機械の掻込装置」と後者の「横送りオーガ19」は、「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定」のものである点で一致する。
サ 後者の「左側掻込板61」及び「右側掻込板62」は共に、「波形状の先端部」を有するものであるから、前記クにおいて、前者の「前記土台部から部分的に突出する突起部」に相当する突出部分が「所定数」あるといえる。
そうすると、後者の「左側掻込板61」及び「右側掻込板62」は共に、「ドラム50の表面にボルト等で螺設することで、着脱可能」なものであるから、「所定数」の突出部分を一つのまとまりとして着脱可能であるといえる。
そして、前記ケをふまえると、前者の「掻込体」と後者の「左側掻込板61」又は「右側掻込板62」は、「前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能」なものである点で一致する。
シ したがって、本願補正発明と引用発明3は、
「回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体と、
前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガと、を備え、
前記掻込体は、
前記回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部と、
前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有し、
前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であって、
前記掻込体は、前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能である、
収穫機械の掻込装置。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明は「前記掻込フィンガは、前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没」するのに対して、引用発明3の「フィンガ54」は、そのような動作をするのか不明である点。
[相違点2]
本願補正発明は「前記掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部とは、前記回転体の周方向に並んで」いるのに対して、引用発明3は、そのような構成であるのか不明である点。
(4)判断
相違点1、2について併せて検討する。
ア 引用発明1の「掻込フィンガ33」は、「オーガ本体28の外周面の部分」に配設され、「オーガ本体28」の回動作動と連動して「オーガ本体28」の半径方向に向けて出没させられるものであるから、本願補正発明の「掻込フィンガ」と引用発明1の「掻込フィンガ33」は、「前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没」するものである点で一致する。
イ 引用発明1の「掻込フィンガ33」は、「オーガ本体28の周廻り方向」において、「掻込体40」と対向するものであって、「オーガ本体28」の周方向に並んでいるといえるので、本願補正発明の「掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部」と引用発明1の「「掻込体40」、及び「掻込フィンガ33」の少なくとも一部」は、「前記回転体の周方向に並んで」いるものである点で一致する。
ウ 引用発明3と引用発明1は、収穫機の掻込オーガに関する技術という点で技術分野が共通する。
また、引用発明3は、プラットフォーム18内に刈取穀稈が停滞するのを防止することが課題であるところ、引用発明1も刈取茎稈集結空間31内に作物が滞留するのを防止する技術であるから、引用発明3に引用発明1を適用する動機付けがあるといえる。
してみると、引用発明3の「左側掻込板61」、「右側掻込板62」、「フィンガ54」に引用発明3を適用し、相違点1、2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願補正発明の効果は、引用発明3、及び引用発明1から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(5)独立特許要件の判断についてのまとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明3、及び引用文献1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において示したとおり、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるとはいえないから、特許法17条の2第3項に規定する要件に違反するものである。
そして、本件補正が当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるとしても、前記4において示したとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものでもある。
したがって、本件補正は、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年5月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、再掲すると次のとおりのものである。
「 【請求項1】
回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体と、
前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガと、を備え、
前記掻込体は、
前記回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部と、
前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有し、
前記掻込フィンガは、前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没し、
前記掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部とは、前記回転体の周方向に並んでおり、
前記掻込体は、前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能である、
収穫機械の掻込装置。」
2 当審において通知した拒絶の理由の概要
令和7年12月19日付けで当審において通知した拒絶の理由は、以下の拒絶理由を含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2016-101101号公報
2.実願平1-120899号(実開平3-61828号)のマイクロフィルム
3 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定
(1)引用文献1
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献1は、前記第2の4(2)イにおける「引用文献1」に対応する。
したがって、引用文献1に記載された内容は、前記第2の4(2)イに記載したとおりである。
(2)引用文献2
ア 引用文献2に記載された事項
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献2(実願平1-120899号(実開平3-61828号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「〔問題を解決するための手段〕
上記目的を達成する本考案は、刈刃で刈取った穀稈をオーガからフイダーに継送する刈取部を設け、該フイダーの幅方向中心線に対する刈取部の刈幅を一側が広く他側が狭く偏在させた汎用コンバインにおいて、前記オーガの上記フイダーに対向する部位に、刈幅の広い側が低く刈幅の狭い側が高く突出する傾斜状の掻込部を設けてなるものである。」(3頁9~17行)
(イ)「第3図において、汎用コンバインCは、圃場面近くに配設された前方側の刈取部1と、該刈取部1よりも高所に配設された後方側の脱穀部2との間には、刈取部1で刈取つた穀稈を後方の脱穀部2に搬送するためのフイダー3が配設されている。」(5頁1~5行)
(ウ)「第1図に示す如く刈取部1は、フイダー3の幅員よりも広幅の刈幅Hに形成されているが、この刈取部1の刈幅Hは、フイダー3の幅方向中心線Gを基準にして右側が広い刈幅H1となり左側が広い刈幅H2となるよう偏在されているので、刈幅H1側で搬送される穀稈量が刈幅H2側で搬送される穀稈量より多くなつている。
そして、オーガ6には、その両端から中央側に向かう左螺旋6aと右螺旋6bと夫々固定されているが、左螺旋6aと右螺旋6bとが対向する上記フイダー3の幅員に対向する部位には、複数枚の掻込板33が固定された掻込体35が設けられている。この掻込板33は、オーガ6の円筒部からの突出高さがフイダー3の幅方向中心線Gに対して刈幅が広くなるH1側が低く、刈幅が狭くなるH2側が高くなる傾斜状の掻込面となるよう形成されている。
また、第1図~第2図に示す掻込板33は、その掻込面がオーガ軸36の軸芯と平行方向に設けられ、オーガ6の円筒部に対し8枚が放射方向に固定されているが、第4図Aおよび第4図Bに示す如く、この掻込板33の掻込面を、オーガ軸36の軸芯に対し刈幅が狭くなるH2側が次第に回転方向の後位となる捩り角度Qだけ傾斜させた掻込体35を設けてもよく、この場合は、H1側の穀稈をより分散して均平化できる利点がある。
また、この掻込体35は、第5図に示す如く、外径側となる傾斜縁に沿つて波型の凹凸33aを設けてた掻込板33を設けてもよく、この場合は、波型の凹凸33aにより穀稈の分散と均平作用を行うことができる。」(7頁12行~9頁1行)
(エ)「〔考案の効果〕
以上に説明してきたように本考案は、刈刃で刈取つた穀稈をオーガからフイダーに継送する刈取部を設け、該フイダーの幅方向中心線に対する刈取部の刈幅を一側が広く他側が狭く偏在させた汎用コンバインにあつても、前記オーガの上記フイダーに対向する部位に、刈幅の広い側が低く刈幅の狭い側が高く突出する傾斜状の掻込面に形成された掻込部を設けたが故に、刈幅の広い側から多量に搬送される刈取穀稈は、掻込部によつて急激にフイダー側に搬送されることなく、掻込部の突出高さが低い側から徐々に山を崩す如く均平化されながら掻込部により順次フイダーに向けて掻込搬送できる。
これにより、急激に多量の刈取穀稈が搬送されることなくオーガによる搬送負荷が平均化すると共に、搬送される穀稈層の密着が緩和されオーガへの稈詰まりも解消できる。」(11頁3~20行)
(オ)「第1図
[図:0001436587000012.jpg]
」
(カ)「第2図
[図:0001436587000013.jpg]
」
(キ)「第5図
[図:0001436587000014.jpg]
」
イ 引用文献2の記載より認定できる事項
(ア)前記ア(ウ)の「第1図~第2図に示す掻込板33は、その掻込面がオーガ軸36の軸芯と平行方向に設けられ、オーガ6の円筒部に対し8枚が放射方向に固定されているが、第4図Aおよび第4図Bに示す如く、この掻込板33の掻込面を、オーガ軸36の軸芯に対し刈幅が狭くなるH2側が次第に回転方向の後位となる捩り角度Qだけ傾斜させた掻込体35を設けてもよく、この場合は、H1側の穀稈をより分散して均平化できる利点がある。
また、この掻込体35は、第5図に示す如く、外径側となる傾斜縁に沿つて波型の凹凸33aを設けてた掻込板33を設けてもよく、この場合は、波型の凹凸33aにより穀稈の分散と均平作用を行うことができる。」との記載からすると、引用文献2に、掻込面がオーガ軸36の軸芯と平行方向に設けられ、オーガ6の円筒部に対し放射方向に固定され、外径側となる傾斜縁に沿つて波型の凹凸33aを設けた掻込板33が記載されていると認められる。
(イ)前記ア(カ)第2図から、オーガ6の円筒部に対し放射方向の長さが、オーガ6の円筒部の回転方向の厚さよりも長い掻込板33が看取できる。
ウ 前記ア、イから、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「刈刃で刈取った穀稈をオーガ6からフイダー3に継送する刈取部1を設けた汎用コンバインCにおいて(ア(ア))、
オーガ6の、フイダー3の幅員に対向する部位には、複数枚の掻込板33が固定された掻込体35が設けられ(ア(ウ))、
掻込板33は、掻込面がオーガ軸36の軸芯と平行方向に設けられ、オーガ6の円筒部に対し放射方向に固定され、外径側となる傾斜縁に沿つて波型の凹凸33aが設けられており(イ(ア))、オーガ6の円筒部に対し放射方向の長さが、オーガ6の円筒部の回転方向の厚さよりも長く(イ(イ))、
これにより、急激に多量の刈取穀稈が搬送されることなくオーガによる搬送負荷が平均化すると共に、搬送される穀稈層の密着が緩和されオーガへの稈詰まりも解消できる(ア(エ))、
汎用コンバインC。」
4 対比
本願発明と引用発明1を対比する。
(1)後者の「フィーダハウス」、及び「収穫機」は、前者の「フィーダハウス」、及び「収穫機械」に相当する。
(2)後者の「オーガ本体28」は、「左右方向に軸線を向けた円筒状」のものであって、「回転可能」なものであるから、前者の「回転軸を中心に回転する回転体」に相当する。
(3)後者の「掻込体40」は、「刈取茎稈集結空間31が形成されているオーガ本体28の外周面の部分」に配設され、「掻込フィンガ33」と協働して茎稈作物に掻込作用して、茎稈作物を「フィーダハウス19」内に掻き込むものであって、「刈取茎稈集結空間31」は、「穀物ヘッダー21とフィーダハウス19とが連通する連通口としての前端開口部20に、前後方向に符合」しており、「刈り取った茎稈作物が集結される」領域であるから、前者の「掻込体」と後者の「掻込体40」は、「前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体」である点で一致する。
(4)後者の「掻込フィンガ33」は、「オーガ本体28の外周面の部分」に配設されるものであるから、前記(2)をふまえると、前者の「前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガ」に相当する。
(5)後者の「掻込オーガ26」は、「収穫機」が有するものであって、「掻込フィンガ33」と「掻込体40」が配設された「オーガ本体28」を横架するものであるから、前者の「収穫機械の掻込装置」と後者の「掻込オーガ26」は、「回転体と、掻込体と、掻込フィンガを備える収穫機械の掻込装置」である点で一致する。
(6)後者の「掻込体40」は、「左右方向に延伸する細幅板状の取付片41」と、「取付片41の上面に、その延伸方向に一定の間隔をあけて12本突設した突出片42」から形成されており、「取付片41」は、突起部といえる「突出片42」が突設されている点で後者の「土台部」にあたるといえるので、「左右方向」が「オーガ本体28」の軸線方向であること、及び前記(3)をふまえると、前者の「掻込体」と後者の「掻込体40」は、「前記回転軸に沿って長さを有する土台部と、前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有」するものである点で一致する。
(7)後者の「掻込フィンガ33」は、「オーガ本体28」の回動作動と連動して「オーガ本体28」の半径方向に向けて出没させられるものであるから、前記(4)をふまえると、前者の「掻込フィンガ」と後者の「掻込フィンガ33」は、「前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没」するものである点で一致する。
(8)後者の「掻込オーガ26」は、「オーガ本体28の周廻り方向において、掻込体40と掻込フィンガ33が対向して」いるものであるから、前記(5)をふまえると、前者の「収穫機械の掻込装置」と後者の「掻込オーガ26」は、「前記掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部とは、前記回転体の周方向に並んで」いるものである点で一致する。
(9)後者の「掻込体40」の「取付片41」は、「各取付孔43を介してオーガ本体28の外周面に取付ボルト44により取り付けられ」るものであるから、「掻込体40」が「オーガ本体28」から取り外しができることは自明である。
また、後者の「突出片42」は「12本」突設されているから、「突出片42」は「所定数」突設されているといえる。
そうすると、「掻込体40」は「所定数」の「突出片42」を一つのまとまりとして取り外されるといえる。
そして、前記(6)をふまえると、前者の「掻込体」と後者の「掻込体40」は、「前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能」なものである点で一致する。
(10)したがって、本願発明と引用発明1は、
「回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の外周面のうち、フィーダハウスの取込口に対応する位置に配置され、刈り取られた作物を前記取込口から前記フィーダハウスに掻き込む掻込体と、
前記回転体の前記外周面に配置される掻込フィンガと、を備え、
前記掻込体は、
前記回転軸に沿って長さを有する土台部と、
前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有し、
前記掻込フィンガは、前記回転体の回転に伴って前記回転体の前記外周面から出没し、
前記掻込体と前記掻込フィンガの少なくとも一部とは、前記回転体の周方向に並んでおり、
前記掻込体は、前記回転体に対して取り外し可能に取り付けられており、所定数の前記突起部を単位にして前記回転体から取り外し可能である、
収穫機械の掻込装置。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
[相違点3]
本願発明の「掻込体」が「回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部」を有するのに対し、引用発明1の「掻込体40」の「取付片41」はそのような構成ではない点。
5 判断
相違点3について検討する。
(1)引用文献2技術事項の「オーガ6の円筒部」は、本願発明の「回転体」に相当する。
(2)引用文献2技術事項の「掻込板33」は、「掻込面がオーガ軸36の軸芯と平行方向に設けられ、オーガ6の円筒部に対し放射方向に固定され、外径側となる傾斜縁に沿つて波型の凹凸33aが設けられており、オーガ6の円筒部に対し放射方向の長さが、オーガ6の円筒部の回転方向の厚さよりも長」いものであり、「波型の凹凸33a」のうちの凸部は「掻込板33」の基礎となる部分から部分的に突出して設けられている突起といえるから、本願発明の「掻込体」と引用文献2技術事項の「掻込板33」は、「回転軸に沿って長さを有し、前記回転体の前記外周面から突出し、前記回転体の周方向よりも前記外周面の法線方向に大きい寸法を有する土台部と、前記土台部から部分的に突出する突起部と、を有する掻込体」である点で一致する。
(3)そして、引用発明1と引用文献2技術事項は、収穫機の掻込オーガに関する技術という点で技術分野が共通する。
また、引用発明1は、刈取茎稈集結空間31内に作物が滞留するのを防止することが課題であるところ、引用文献2技術事項もオーガへの稈詰まりを解消する技術であるから、引用発明1に引用文献2技術事項を採用する動機付けがあるといえる。
してみると、引用発明1の「掻込体40」に代えて、引用文献2技術事項の「掻込板33」を採用し、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の効果は、引用発明1、及び引用文献2技術事項から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
6 請求人の主張について
(1)請求人の主張内容
ア 令和8年2月19日に提出された意見書
請求人は、令和8年2月19日に提出された意見書の2.において、概略次のように主張している。
「しかしながら、引用文献2の第5図によれば、本願補正発明1の「土台部」とは異なり、「『掻込板33』の基礎となる部分」は、オーガ6の円筒部の外周面からの突出量が、オーガ6の回転軸方向の一方(第5図では右方側)に向かって増加しているのであって、引用文献2の「掻込板33」は、本願補正発明1の「掻込体」に相当するものとは言えません。そして、引用文献2には、「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であ」るような本願補正発明1の構成については記載も示唆もされていません。」
イ 令和6年5月15日に提出された審判請求書
請求人は、令和6年5月15日に提出された審判請求書の3.(3)(3.3)において、概略次のように主張している。
「本願発明1と引用文献1に記載された発明(引用発明)とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明1では、掻込体が、所定数の突起部を単位にして回転体から取り外し可能であるのに対し、引用発明には、これに相当する構成が存在しない点」
(2)請求人の主張についての検討
ア 前記(1)アの主張について
前記(1)アの主張は、本願補正発明の「前記回転体の前記外周面からの前記土台部の突出量は、前記回転軸方向において一定であって、」との構成に基づくものであり、すなわち、本件補正により補正された構成に基づく主張であるところ、本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、当該主張は、本願発明に係る請求項の記載に基づくものではない。
したがって、前記(1)アの主張は採用できない。
イ 前記(1)イの主張について
前記4(9)で示したとおりであるから、前記(1)イの主張は採用できない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-008040