特許無効審判
2020-800116
茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを具えた茶刈機
- 審判番号
- 2020-800116
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2004-235170
- 登録番号
- 4349999
- 請求日
- 2020年11月30日
- 審決日
- 2022年08月08日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】落合刃物工業 株式会社
- 【請求人代理人】小橋 立昌
- 【請求人代理人】山下 幸彦
- 【被請求人】カワサキ機工 株式会社
- 【被請求人代理人】東山 喬彦
- 【被請求人代理人】東山 裕樹
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 前川 慎喜
- 分類
- P1123.113-YAA(A01D) / P1123.121-YAA(A01D) / P1123.537-YAA(A01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法36条6項1号特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第123条第1項第2号、特許法第134条の2第1項、特許法第123条第1項第4号、特許法第29条第1項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4349999号発明「茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを具えた茶刈機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第4349999号の明細書及び特許請求の範囲を令和3年12月6日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-15〕について訂正することを認める。
本件審判請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4349999号(以下「本件特許」という。平成16年8月12日出願、平成21年7月31日登録、請求項の数は15である。)の特許請求の範囲の請求項1ないし3、7ないし9及び13に係る発明の特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 2年11月30日 審判請求書提出
令和 3年 2月16日 審判事件答弁書提出
令和 3年 4月23日 審理事項通知(起案日)
令和 3年 5月12日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
令和 3年 5月26日 請求人より口頭審理陳述要領書、上申書提出
令和 3年 6月 9日 被請求人より口頭審理陳述要領書(第2回)提出
令和 3年 6月23日 第1回口頭審理
令和 3年 7月 8日 請求人より上申書提出
令和 3年 7月 8日 被請求人より上申書提出
令和 3年 9月27日 審決の予告(起案日)
令和 3年12月 6日 被請求人より訂正請求書の提出
令和 4年 2月 9日 請求人より審判事件弁駁書の提出
令和 4年 3月28日 手続補正指令(起案日)
令和 4年 4月22日 被請求人より手続補正書提出
なお、令和4年4月22日付け手続補正書は、令和3年12月6日付け訂正請求書の内容を、当該訂正請求書に添付して提出された訂正明細書の内容と整合するように訂正事項を補正し、訂正事項が訂正要件に適合していることについての説明を記載するものであって、補正された訂正の内容は、令和3年12月6日付け訂正請求書に添付して提出された訂正明細書において実質的に示されたものと同じであるから、請求人に弁駁書の提出を求めなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
被請求人は、令和3年12月6日に訂正請求書を、令和4年4月22日に手続補正書を提出して、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6、7~15について一群の請求項ごとに訂正(以下「本件訂正」という。)することを求めた。
その訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正の内容を示すために当審が付したものである。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「 刈り取り後の茶枝葉(A) を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、前記刈刃(22)の後方側から移送ダクト(6) に背面風(W) を送り込むことによって、」と記載されているのを、
「 刈り取り後の茶枝葉(A) を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W) のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6) に送り込むことによって、」に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「 また、この装置には、前記刈刃(22)の後方から移送ダクト(6) 内に背面風(W) を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(6) 内に背面風(W)を送り込むことによって、」と記載されているのを、
「 また、この装置には、前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6) 内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W) を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(6) 内に背面風(W) のみを送り込むことによって、」に訂正する(請求項7の記載を直接的または間接的に引用する請求項8~10、13~15も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13において「 前記移送装置(5) は、請求項7、8、9、10、11または12記載の装置が適用されて成ることを特徴とする茶刈機。」と記載されているのを、
「 前記移送装置(5) は、請求項7、8、9または10記載の装置が適用されて成ることを特徴とする茶刈機。」に訂正する。
(8)訂正事項8
ア 訂正事項8-1
訂正前の明細書の段落【0052】に「すなわち先の図1~4に示した実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送するものであった。しかしながら、摘採する茶芽の生育状態、移送路の状況(上昇移送距離等)、背面風Wを生起させる送風機17の能力等によっては、例えば図5、8に示すように背面風Wに加えて、刈刃22の正面側(刈り取り方向正面側)からも移送風(これを正面風W1とする)を補助的に作用させることが可能である。この場合、正面風W1を生じさせる正面ダクト9を移送ダクト6の正面側に密着状態に設けることが好ましく、これに因み上記ダクトユニット5Aは、移送ダクト6、背面ダクト7、正面ダクト9とによって主に構成される。」と記載されているのを、
「すなわち先の図1~4に示した実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送するものであり、これが本発明の大きな特徴である。しかしながら、摘採する茶芽の生育状態、移送路の状況(上昇移送距離等)、背面風Wを生起させる送風機17の能力等によっては、例えば図5、8に示すように背面風Wに加えて、刈刃22の正面側(刈り取り方向正面側)からも移送風(これを正面風W1とする)を補助的に作用させることが可能であり、このような正面風W1を補助的に作用させること自体、設計上、全く問題なく採り得る構成である。因みに、このような構成を採った場合には、正面風W1を生じさせる正面ダクト9を移送ダクト6の正面側に密着状態に設けることが好ましく、これに因み上記ダクトユニット5Aは、移送ダクト6、背面ダクト7、正面ダクト9とによって主に構成される。」に訂正する。
イ 訂正事項8-2
訂正前の明細書の段落【0054】に「 このように、本実施例では、」と記載されているのを、
「 このように、上記図5に示した、本発明に関連する参考例では、」に訂正する。
ウ 訂正事項8-3
訂正前の明細書の段落【0058】に「、例えば図7(b)に示すように、刈刃22から背面風Wの吹出口38までの距離が比較的長いものにも本発明を適用することが可能である。この場合、上述したように、背面風Wによる負圧吸引作用は幾らか低下することが考えられるため、刈刃22の前方側には、正面ダクト9による分岐ノズル47を設け、刈刃前方からの送風を補助的に行うことが好ましい。」と記載されているのを、
「、例えば図7(b)に示すように、刈刃22から背面風Wの吹出口38までの距離が比較的長いものにも、背面風Wによる移送手法を適用することは可能である。この際、上述したように、背面風Wによる負圧吸引作用は幾らか低下することが考えられるため、その場合には、刈刃22の前方側に、正面ダクト9による分岐ノズル47を設け、刈刃前方からの送風を補助的に行うことが設計上、何ら支障なく採り得る構成である。」に訂正する。
エ 訂正事項8-4
訂正前の明細書の段落【0059】の最後に「 ここで上記図8は、正面風W1を生じさせる正面ダクト9を更に設け、背面風Wに加えて正面風W1を補助的に作用させるようにした構成例であるが、正面風W1を補助的に作用させること自体は、設計上、問題なく採り得るものの、上述したように本発明に関連する参考例となる。」という記載を追加する。
オ 訂正事項8-5
訂正前の明細書の段落【0064】に「【図5】移送ダクトの前側に正面ダクトを密着状態に設け、刈刃前方側から正面風を補助的に作用させるようにした移送装置の他の実施例を示す背面図(a)、側面断面図(b)、並びに正面図(c)である。」と記載されているのを、
「【図5】移送ダクトの前側に正面ダクトを密着状態に設け、刈刃前方側から正面風を補助的に作用させるようにした移送装置の構成例(本発明に関連する参考例)を示す背面図(a)、側面断面図(b)、並びに正面図(c)である。」に訂正する。
カ 訂正事項8-6
訂正前の明細書の段落【0064】に「【図7】本発明の移送手法を小型もしくは簡易型の乗用式摘採機に適用し、刈刃後方からの背面風によって、刈り取り後の茶葉を刈刃の後方側に移送するようにした他の実施例を示す説明図(a)、並びに刈刃から背面風の吹出口までの距離が比較的長い場合の移送手法を示す説明図(b)である。」と記載されているのを、
「【図7】本発明の移送手法を小型もしくは簡易型の乗用式摘採機に適用し、刈刃後方からの背面風によって、刈り取り後の茶葉を刈刃の後方側に移送するようにした他の実施例を示す説明図(a)、並びに刈刃から背面風の吹出口までの距離が比較的長い場合、刈刃前方に設けた分岐ノズルから補助的に送風を行うようにした移送手法(本発明に関連する参考例)を示す説明図(b)である。」に訂正する。
キ 訂正事項8-7
訂正前の明細書の段落【0027】に「、刈刃前方から作用させる正面風の送風力を格段に低減できる、もしくはこのような正面風を全く省略でき、」と記載されているのを、
「、刈刃前方から作用させる正面風を全く省略でき、」に訂正する。
ク 訂正事項8-8
訂正前の明細書の段落【0006】に「 刈り取り後の茶枝葉(A) を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、前記刈刃(22)の後方側から移送ダクト(6) に背面風(W) を送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにしたことを特徴として成るものである。」と記載されているのを、
「 刈り取り後の茶枝葉(A) を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W) のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6) に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにしたことを特徴として成るものである。」に訂正する。
ケ 訂正項8-9
訂正前の明細書の段落【0012】に「 また、この装置には、前記刈刃(22)の後方から移送ダクト(6) 内に背面風(W) を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(6) 内に背面風(W) を送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A) を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものであることを特徴として成るものである。」と記載されているのを、
「 また、この装置には、前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6) 内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W) を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(6) 内に背面風(W) のみを送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A) を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものであることを特徴として成るものである。」に訂正する。
コ 訂正事項8-10
訂正前の明細書の段落【0012】に「 前記移送装置(5) は、請求項7、8、9、10、11または12記載の装置が適用されて成ることを特徴として成るものである。」と記載されているのを、
「 前記移送装置(5) は、請求項7、8、9または10記載の装置が適用されて成ることを特徴として成るものである。」に訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の明細書の段落【0010】、【0011】、【0016】、【0017】、【0025】、【0026】の記載を全て削除する。
(10)明細書に係る訂正事項と特許請求の範囲との関係について
ア 訂正事項8-1ないし訂正事項8-7は、特許請求の範囲の請求項1~6、7~15に関係する。
イ 訂正事項8-8は、請求項1及びこの請求項1を直接または間接的に引用する請求項2~4に関係する。
ウ 訂正事項8-9は、請求項7及びこの請求項7を直接または間接的に引用する請求項8~10に関係する。
エ 訂正事項8-10は、請求項13及びこの請求項13を直接または間接的に引用する請求項14、15に関係する。
オ 訂正事項9のうち明細書の段落【0010】を削除した訂正は、請求項5に関係する。
カ 訂正事項9のうち明細書の段落【0011】を削除した訂正は、請求項6に関係する。
キ 訂正事項9のうち明細書の段落【0016】を削除した訂正は、請求項11に関係する。
ク 訂正事項9のうち明細書の段落【0017】を削除した訂正は、請求項12に関係する。
ケ 訂正事項9のうち明細書の段落【0025】を削除した訂正は、請求項5、11に関係する。
コ 訂正事項9のうち明細書の段落【0026】を削除した訂正は、請求項6、12に関係する。
2 本件訂正請求に対する請求人の主張
本件訂正請求の適否について請求人は特に主張していない。
3 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無について
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に「前記刈刃(22)の後方側から移送ダクト(6)に背面風(W)を送り込む」とあったのを、背面風(W) を「負圧吸引作用を奏する」背面風(W)とし、移送ダクト(6)に送り込む風を背面風「のみ」とし、風を送り込む位置を「前記刈刃(22)の直後方から」として、茶枝葉(A) を刈刃(22)から所定の位置まで移送する態様を減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る訂正は、茶枝葉(A) を刈刃(22)から所定の位置まで移送する態様を減縮するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、願書に添付した明細書の段落【0058】に「また本発明の移送手法は、刈刃後方からの背面風Wによって、その吹出口38付近に負圧を生じさせ、この負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉Aを刈刃後方側に引き寄せ、・・・背面風Wの負圧吸引作用を効率的に利用するには、刈刃22の直後方から背面風Wを作用させる構成が好ましいと考えられる」と記載され、また、同段落【0052】に「・・・図1~4に示した実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送する・・・」と記載されており、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。よって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。
(2)訂正事項2、3、5及び6について
訂正事項2、3、5及び6に係る訂正は、それぞれ、請求項5、6、11及び12を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(3)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項7の背面風(W)を「負圧吸引作用を奏する」背面風(W)とし、「吹出口(38)」から送り込む風を背面風「のみ」とし、風を送り込む位置を「前記刈刃(22)の直後方から」として、茶枝葉(A) を刈刃(22)から所定の位置まで移送する態様を減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4に係る訂正は、茶枝葉(A) を刈刃(22)から所定の位置まで移送する態様を減縮するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そして、願書に添付した明細書の段落【0058】に「また本発明の移送手法は、刈刃後方からの背面風Wによって、その吹出口38付近に負圧を生じさせ、この負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉Aを刈刃後方側に引き寄せ、・・・背面風Wの負圧吸引作用を効率的に利用するには、刈刃22の直後方から背面風Wを作用させる構成が好ましいと考えられる」と記載され、また、同段落【0052】に「・・・図1~4に示した実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送する・・・」と記載されているから、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。よって、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。
(4)訂正事項7について
訂正事項7に係る訂正は、訂正前の請求項13が、請求項7、8、9、10、11または12の記載を引用していたところ、訂正事項5及び6により請求項11及び12が削除されたことに伴って、引用先の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(5)訂正事項8について
ア 訂正事項8-1
訂正事項8-1は、特許請求の範囲の記載が、訂正事項1及び訂正事項4により「前記刈刃(22)の直後方から」背面風「のみ」を送り込むものとなり、背面風に加えて正面風W1をも移送ダクトに送り込んで茶枝葉(A) を移送するものが特許請求の範囲に記載された発明の実施例ではなくなったことから、「前記刈刃(22)の直後方から」背面風「のみ」を送り込むものである図1~4に示した例について「これが本発明の大きな特徴である。」と記載を加えて上記発明の実施例であることを明確にした上で、「図5、8に示すように背面風Wに加えて、刈刃22の正面側(刈り取り方向正面側)からも移送風(これを正面風W1とする)を補助的に作用させる」ものについては、「このような正面風W1を補助的に作用させること自体、設計上、全く問題なく採り得る構成である」と記載を加えて、正面側からも移送風を補助的に作用させるものに関する明細書の記載が参考程度のものであることを示すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項8-1は、上記のとおり、特許請求の範囲の訂正に伴い明細書の記載を整合する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
イ 訂正事項8-2
訂正事項8-2は、特許請求の範囲の記載が、訂正事項1及び訂正事項4により「前記刈刃(22)の直後方から」背面風「のみ」を送り込むものとなり、図5に示した正面側からの移送風を作用させるものが特許請求の範囲に記載された発明の実施例ではなくなったことにともなって、「上記図5に示した、本発明に関連する参考例」との記載を加えることにより、図5に示したものを「本実施例」から「本発明に関連する参考例」に訂正して特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項8-2は、上記のとおり、特許請求の範囲の記載の訂正にともない、明細書の記載を整合する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 訂正事項8-3
訂正事項8-3は、特許請求の範囲の記載が、訂正事項1及び訂正事項4により「前記刈刃(22)の直後方から」背面風「のみ」を送り込むものとなり、図7(b)の刈刃(22)の前方側からの送風を補助的に行うものが、特許請求の範囲に記載された発明の実施例ではなくなったことから、訂正前の「本発明」との記載を「背面風Wによる移送手法」と訂正し、あわせて、「適用することが可能である」の助詞を「が」から「は」に訂正して「適用することが可能である」とし、「上述したように背面風Wによる負圧吸引作用は幾らか低下することが考えられる」のが「背面風Wによる移送手法」を適用した「際」であって、「その場合には、」刈刃22の前方側に、正面ダクト9による分岐ノズル47を設け、刈刃前方からの送風を補助的に行うことが「設計上、何ら支障なく採り得る構成である」ものとする訂正である。
以上のように、訂正事項8-3は、特許請求の範囲の記載が、訂正事項1及び訂正事項4により「前記刈刃(22)の直後方から」背面風「のみ」を送り込むものとなり、背面風に加えて正面風W1をも移送ダクトに送り込んで茶枝葉(A) を移送するものが特許請求の範囲に記載された発明の実施例ではなくなったことに伴い、明細書の記載を整合する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
エ 訂正事項8-4ないし訂正事項8-6
訂正事項8-4ないし訂正事項8-6は、特許請求の範囲の記載が、訂正事項1及び訂正事項4により「前記刈刃(22)の直後方から」背面風「のみ」を送り込むものとなり、図8、図5、図7(b)のものが、特許請求の範囲に記載された発明の実施例では無くなったことから、これら構成例が参考例であるものに訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、8-4ないし訂正事項8-6は、上記のとおり、特許請求の範囲の訂正に伴い明細書の記載を整合する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
オ 訂正事項8-7
訂正事項8-7は、特許請求の範囲の記載が、訂正事項1及び訂正事項4により「前記刈刃(22)の直後方から」背面風「のみ」を送り込むものとなり、正面風W1をも移送ダクトに送り込んで茶枝葉(A) を移送するものが特許請求の範囲に記載された発明の実施例ではなくなったことから、「刈刃前方から作用させる正面風の送風力を格段に低減できる、もしくはこのような正面風を全く省略でき、」と択一的に記載されているうち、「刈刃前方から作用させる正面風の送風力を格段に低減できる」ことについて記載から削除し、「刈刃前方から作用させる正面風を全く省略でき」るもののみの記載として特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項8-7は、上記のとおり、特許請求の範囲の訂正に伴い明細書の記載を整合する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
カ 訂正事項8-8ないし訂正事項8-10
訂正事項8-8ないし訂正事項8-10は、上記訂正事項1、4及び7に係る訂正による特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(6)訂正事項9について
訂正事項9は、上記訂正事項2、3、5及び6に係る訂正による特許請求の範囲の請求項5、6、11及び12の記載の削除に伴い、明細書の【0010】、【0011】、【0016】、【0017】、【0025】及び【0026】の記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
4 独立特許要件及び一群の請求項について
(1)独立特許要件について
ア 請求項1ないし3、7ないし9及び13について
訂正前の1ないし3、7ないし9及び13については、本件特許無効審判事件において無効審判の請求がされているから、それらに対応する訂正後の請求項1ないし3、7ないし9及び13については、独立特許要件は課されない。
イ 請求項4ないし6、10ないし12、14並びに15について
(ア)訂正前の請求項4ないし6、10ないし12、14並びに15は無効審判の請求の対象とされておらず、訂正事項1により実質的に訂正されることとなる訂正後の請求項4ないし6及び訂正事項4により実質的に訂正されることとなる訂正後の7~10、14、15に係る発明については、上記3(1)及び(3)で検討したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるため、独立特許要件が課される。
一方、訂正後において、請求項5、6、11及び12は削除されているので、以下、訂正後の請求項4、10、14及び15に係る発明について検討する。
(イ)請求項4、10、14及び15に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項4】
前記背面ダクト(7) の内部には、導入部(8) から背面ダクト(7) 内に取り込んだ圧力風を、前記刈刃(22)の幅方向に向かって拡がるようにガイドする拡開案内体(40)が取り付けられることを特徴とする請求項3記載の茶枝葉の移送方法。」
「【請求項10】
前記背面ダクト(7) は、導入部(8) から取り込んだ圧力風を、前記刈刃(22)の幅方向に向かって拡げるようにガイドする拡開案内体(40)が、内部に設けられることを特徴とする請求項9記載の茶枝葉の移送装置。」
「【請求項14】
前記茶刈機体は、刈り取り高さを適宜変更し得る複数基のバリカン式の刈刃(22)を具えるとともに、移送装置(5) も各刈刃(22)に応じて複数基設けられ、一回の走行によって多段階の刈り取りが一挙に行えるようにしたことを特徴とする請求項13記載の茶刈機。」
「【請求項15】
前記収容部(4) は、各刈刃(22)毎に収穫した茶葉を別個に収容できるようにしたことを特徴とする請求項14記載の茶刈機。」
(ウ)そして、「背面ダクト(7)」の「内部」に「導入部(8) から」「取り込んだ圧力風を、前記刈刃(22)の幅方向に向かって拡げるようにガイドする拡開案内体(40)」を備えること及び「茶刈機体は、刈り取り高さを適宜変更し得る複数基のバリカン式の刈刃(22)を具えるとともに、移送装置(5) も各刈刃(22)に応じて複数基設けられ、一回の走行によって多段階の刈り取りが一挙に行えるようにしたこと」は、請求人の提出した各証拠には記載も示唆もされていない。また、訂正後の請求項4、10、14及び15に係る発明は、後記第6の3「無効理由1、2について」のとおり、甲1発明及び甲2発明から容易になし得ない、訂正後の請求項1または7の発明特定事項を含んでいるものである。
(エ)よって、訂正後の請求項4、10、14及び15に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
(2)一群の請求項について
ア 本件訂正前の請求項1ないし6について、請求項2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用しているところ、訂正事項1に係る請求項1の訂正に伴って請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6についても同様に訂正されるから、訂正前の請求項1ないし6に対応する訂正後の請求項1ないし6は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1ないし3は、一群の請求項である請求後の請求項1ないし6に対してされたものである。
イ 本件訂正前の請求項7ないし15について、請求項8ないし15は、請求項7を直接又は間接的に引用しているところ、訂正事項4に係る請求項7の訂正に伴って請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8ないし15についても同様に訂正されるから、訂正前の請求項8ないし15に対応する訂正後の請求項8ないし15は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項であり、訂正事項4ないし7は、一群の請求項である請求後の請求項7ないし15に対してされたものである。
(3)明細書の訂正と一群の請求項との関係について
明細書の訂正と一群の請求項との関係について、特許権者の主張は上記1(10)のとおりであり、また、一群の請求項については上記(2)の通りであるから、訂正事項8-1ないし8-7、訂正事項9のうち段落【0025】及び【0026】に係る訂正が、本件訂正後の一群の請求項1ないし6、7ないし15に対してされたものであることは明らかである。
同様に、訂正事項8-8並びに訂正事項9のうち段落【0010】及び【0011】に係る訂正が、本件訂正後の一群の請求項1ないし6に対してされたものであること、訂正事項8-9、訂正事項8-10並びに訂正事項9のうち段落【0016】及び【0017】に係る訂正が、本件訂正後の一群の請求項7ないし15に対してされたものであることは明らかである。
5 訂正の適否のむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-15〕についての訂正を認める。
第3 本件に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし3、7ないし9及び13に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等といい、全体を「本件訂正発明」という。)は訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
本件訂正発明1
「【請求項1】
バリカン式の刈刃(22)によって刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を、移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する方法であって、
前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されるものであり、
刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにしたことを特徴とする茶枝葉の移送方法。」
本件訂正発明2
「【請求項2】
前記移送ダクト(6)は、移送開始部(31)が、平面から視て前記刈刃(22)を取り囲むように形成されるものであり、
また前記背面風(W)を前記刈刃(22)の後方から作用させるにあたっては、移送開始部(31)から上昇流として移送ダクト(6)内に送り込むようにしたことを特徴とする請求項1記載の茶枝葉の移送方法。」
本件訂正発明3
「【請求項3】
前記移送ダクト(6)は、刈り取り方向後方側に、移送ダクト(6)に沿う背面ダクト(7)が併設されるとともに、この背面ダクト(7)の上部には、このダクト内に圧力風を取り込む導入部(8)が形成されるものであり、
前記背面風(W)を前記刈刃(22)の後方から作用させるにあたっては、導入部(8)から下向きの圧力風を背面ダクト(7)内に取り込んだ後、移送ダクト(6)の移送開始部(31)から上昇流として移送ダクト(6)内に送り込むようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の茶枝葉の移送方法。」
本件訂正発明7
「【請求項7】
茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を刈り取るバリカン式の刈刃(22)に対して、内部に空気流を流す移送ダクト(6)を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する装置であって、
前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて成り、
また、この装置には、前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W)を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)のみを送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものであることを特徴とする茶枝葉の移送装置。」
本件訂正発明8
「【請求項8】
前記移送ダクト(6)の移送開始部(31)は、平面から視て前記刈刃(22)を取り囲むように形成されて成り、
また前記移送ダクト(6)内に送り込まれる背面風(W)は、上昇流として移送開始部(31)から移送ダクト(6)内に送り込まれて成ることを特徴とする請求項7記載の茶枝葉の移送装置。」
本件訂正発明9
「【請求項9】
前記移送ダクト(6)は、刈り取り方向後方側に、移送ダクト(6)に沿う背面ダクト(7)が併設されるとともに、この背面ダクト(7)の上部には、このダクト内に圧力風を取り込む導入部(8)が形成されるものであり、
前記背面風(W)は、導入部(8)から背面ダクト(7)内に取り込まれた下向きの圧力風が、上昇流として移送開始部(31)から移送ダクト(6)内に送り込まれて成ることを特徴とする請求項7または8記載の茶枝葉の移送装置。」
本件訂正発明13
「【請求項13】
茶畝(T)を跨いで走行する走行機体(2)と、
この走行機体(2)に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、
この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部(4)と、
刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を茶刈機体から収容部(4)まで移送する移送装置(5)とを具え、
目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした茶刈機であって、
前記移送装置(5)は、請求項7、8、9または10記載の装置が適用されて成ることを特徴とする茶刈機。」
第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
(1)請求人は、訂正前の特許第4349999号の特許請求の範囲の請求項1,2,3,7,8,9,13に記載された発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等という。)の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書(以下「請求書」という。))、令和3年5月26日付け口頭審理陳述要領書(以下「請求人陳述書」という。)、同年7月8日付け上申書(以下「請求人上申書」という。)参照。)、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出している。
【無効理由1】新規性欠如(特許法第29条第1項第3号(特許法第123条第1項第2号))
本件発明1、7及び本件発明7を引用する本件発明13は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
【無効理由2】進歩性欠如(特許法第29条第2項(特許法第123条第1項第2号))
本件発明1、7及び本件発明7を引用する本件発明13は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
本件発明2、3、8、9及び本件発明8または9を引用する本件発明13は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
【無効理由3】サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号(特許法第123条第1項第4号))
本件発明1、7及び本件発明7を引用する本件発明13は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしておらず、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(2)その後、被請求人から令和3年12月6日付けで訂正請求がされたのに対して、令和4年2月9日付け弁駁書(以下「弁駁書」という。)を提出し、本件訂正発明1、7及び本件訂正発明7を引用する本件訂正発明13は、依然、上記無効理由1及び無効理由2により、無効とすべきである旨、主張している。
2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開平11-346535号公報
甲第2号証:特開2004-154021号公報
第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨主張し(審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、令和3年5月12日付け口頭審理陳述要領書、同年6月9日付け口頭審理陳述要領書(第2回)、令和3年7月8日付け上申書参照。)、証拠方法として乙第5号証を提出している。
なお、被請求人は、令和3年12月6日に訂正請求書を提出したが、その際には答弁書を提出していない。
2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
乙第5号証:特開2001-95346号公報第1頁
審判事件答弁書に添付した乙第1号証ないし乙第4号証は、参考資料1ないし参考資料4と読み替え、証拠としては取り扱わない(第1回口頭審理調書の審判長の1参照)。
第6 当審の判断
1 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。)
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉の摘採や枝幹の剪除等を行う茶刈機に関するものであって、特にこれら摘採茶葉や剪除枝幹など刈り取り後の茶枝葉の新規な移送手法と、これを適用した茶刈機に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば茶葉の摘採を行う摘採機としては、比較的大型の乗用型摘採機が存在する。このものは、摘採した茶葉の収容部として、大容量のコンテナを搭載したもの、あるいは複数の茶袋を吊り下げ状態に取り付けて収容部を形成する等、大量の茶葉を収容できるようにしたものが多い。
そして、このような摘採機にあっては、例えば図9に示すように、刈刃22′の前方側に茶葉移送のための分岐ノズル47′付きの送風管を配し、この分岐ノズル47′からの送風によって茶葉Aを移送するのが一般的であった。また、刈刃22′から収容部4′まで茶葉Aを移送する移送路は、刈刃22′のほぼ後方に延びる水平移送部Xと、その後に収容部4′の上部に臨むように接続された上昇移送部Yとを具えるのが一般的であった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この際、上昇移送に先立ち、まず茶葉Aを刈刃後方側に水平移送するのは、刈刃前方からの送風形態を採ることに起因する。すなわち、茶葉Aを上昇移送するには、その前までに茶葉Aに、ある程度の流速を持たせる必要があり、このために刈り取り直後の茶葉Aをまず後方側(水平)に送り、充分に加速するものである。言い換えれば水平移送部Xは上昇移送に備えて茶葉Aの流速を増すため、もしくはエネルギーを蓄積するための助走路の作用を担うものである。
しかしながら、このような移送形態(送風形態)では、水平移送部Xを要する分、移送装置5′ひいては摘採機の前後長が長くなり、摘採機の取り回し性を低下させてしまうという問題があった。
このため水平移送部Xを極力短縮、もしくは排除することが考えられるが、分岐ノズル47′からの送風は、茶葉Aを上昇移送するのに充分な送風力を有するものであり、刈刃22′の前方から、このような強力な送風を行っている状態では、急激に移送方向を水平から上向きに切り換えると、茶葉Aに傷みが生じ易く、刈刃前方からの送風形態を採りながら、水平移送部Xを排除することは不可能であった。
【0004】
一方、装置の前後長を短縮化したい、という要請が顕在化するものとしては、二段刈摘採機等の複数段刈茶刈機が挙げられる。ここで二段刈摘採機としては、例えば異なった刈り取り高さに設定できる二基の刈刃を前後に配するとともに、各刈刃毎に上昇移送路を具えたものがある。この際、刈刃同士の前後方向における離反距離が空き過ぎていると、茶畝地の凹凸面が摘採面に現れ易く、刈り取りが綺麗に行えないことがあった。この場合、摘採茶葉の均一性が低下し、収穫した茶芽(例えば新芽)に古葉が混入することがあり、その後の製茶加工も円滑に行えないことがあった。
このため、二段刈摘採機等においても、極力、刈刃同士の前後間隔を狭めることが強く望まれていたが、刈刃前方からの従来の送風形態では、上昇移送部Yの前段に水平移送部Xを要するため、刈刃同士の前後間隔を狭めるには一定の限界が生じていた。
このようなことから、本出願人は、半ば技術常識となっていた、刈刃前方からの送風形態を根本から見直し、送風形態(移送形態)そのものから移送装置ひいては摘採機の短縮化を試みたものである。
【特許文献1】特開2001-95346
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、主に送風形態に着眼し、例えば上昇移送を伴う摘採機等の場合、水平移送部を設けることなく、刈り取り直後、即、茶葉を上昇移送できるようにし、摘採機の前後寸法の短縮化を図り、摘採機をコンパクトに構成できるようにした新規な茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを適用した茶刈機の開発を試みたものである。」
(2)「【発明の効果】
【0021】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。すなわち請求項1または7記載の発明によれば、刈刃後方から移送ダクト内に空気流を送り込んで茶枝葉を所望の部位に移送するため、例えば刈り取り直後の茶枝葉を水平移送せずに、上方等に移送することができ、極めて斬新且つ画期的な移送形態が採り得る。
【0022】
また請求項2または8記載の発明によれば、刈刃後方から上向きの背面風を作用させることによって、刈り取り直後の茶枝葉を水平移送せずに、即、上昇移送することができる。
【0023】
更にまた請求項3または9記載の発明によれば、導入部から背面ダクト内に導入した圧力風を、上向きの背面風として移送ダクト(移送開始部)に送り込むため、刈り取り直後の茶枝葉を、そのまま上昇移送する合理的構成を現実のものとする。また、移送ダクトをほぼ鉛直に立ち上げるように形成した場合には、水平移送路を要しない分、移送装置ひいては茶刈機の前後長を短縮化できる。なお、この短縮化の点について、背面ダクトを移送ダクトに対して密着状態に設けたことも短縮化に寄与する。
・・・
【0027】
また請求項13記載の発明によれば、上述した移送手法を茶刈機に適用するため、例えば刈り取り後の茶枝葉を上昇移送する茶刈機にあっては、刈り取り直後、水平移送部を設けることなく、そのまま茶枝葉を上昇移送することができ、前後長の短縮化が図れ、コンパクトな茶刈機が実現できる。また、上昇移送を伴わない茶刈機、すなわち刈り取り後の茶枝葉を刈刃後方側にそのまま移送する茶刈機にあっては、刈刃前方から作用させる正面風を全く省略でき、シンプルな構造の茶刈機が実現できる。」
(3)「【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べる通りである。なお説明にあたっては、まず本発明の茶刈機として摘採機を例に挙げながら、その全体構成を概略的に説明し、併せて本発明装置である茶枝葉の移送装置について説明する。また、この摘採機としては、刈り取った茶葉Aを上昇移送して収容部に収容する、いわゆる大型の乗用式摘採機(茶畝跨走型摘採機1)を例に挙げて説明する。
なお本発明の移送手法そのものは、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業にも利用でき、このようなことに因み、本発明の名称中や請求項等に記載した「茶枝葉」とは、摘採した茶葉Aと剪除した枝幹とを総称するものである(茶枝葉にも茶葉と同一の符号Aを付す)。また、「茶刈」もしくは「茶刈機」とは、摘採(摘採機)と剪枝(剪枝機)とを総称するものである。なお剪枝作業の具体的形態については後述する。
【実施例】
【0031】
本発明の移送手法を適用した茶畝跨走型摘採機1は、一例として図1、2に示すように、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体2と、この走行機体2によって茶畝T上面に位置するように支持される摘採機体3と、摘採機体3の後方に設けられ摘採した茶葉Aを収容する収容部4と、摘採した茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで移送する移送装置5とを具えて成るものである。以下、各構成部について説明する。
・・・
【0034】
また前記連結フレーム11B上には、刈刃22によって刈り取った茶葉Aを風送するための送風機17を設けるものであって、この送風機17は前記原動機16により直接駆動される。そして、この送風機17からは送風ダクト18を介して圧力風が移送装置5(摘採機体3側)に供給される。なお送風ダクト18は、一部または全部が、フレキシブルダクト18Aによって構成され、移送装置5に接続されている。
なお本実施例では摘採した茶葉Aを茶袋Bに収容する形態を採るため、上記連結フレーム11Bには、茶葉Aでいっぱいになった茶袋Bを仮置きする回動アーム19(図2参照)が設けられ、茶袋Bを載置する際には、この回動アーム19を摘採機の側方に張り出すようにウイング状に拡げ、ここに載せるものである。
【0035】
次に摘採機体3について説明する。このものは茶葉Aの摘採を実質的に行うものであり、刈刃22を主要部材として成るものである。この刈刃22は、例えば上下一対の刈刃体22Aと、これら刈刃体22Aを摺動自在に支持する刈刃支持フレーム22Bと、刈刃体22Aを偏心板やエキセントリックシャフト等によって往復摺動させる駆動部22Cとを具えて成り、上下一対の刈刃体22Aを交互に往復動させることで、各刈刃体22Aに形成した刃(歯)のバリカン作用により茶葉Aを刈り取るものである(図2参照)。」
(4)「【0040】
次に本発明装置である茶枝葉Aの移送装置5について説明する。移送装置5は、刈り取った茶葉Aを所定の位置に向けて移送する部位であり、ここでは茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで中継移送するものである。具体的には刈り取り直後の茶葉Aを収容部4に向けて刈刃22のほぼ真上に上昇移送する形態を採る。ここで、茶葉Aの移送は空気流、つまりダクト内に圧力風を送り込んで収容部4に移送するものであり、ここでは複数のダクト部材を用いることに因み、これらをダクトユニット5Aと総称する。
【0041】
ダクトユニット5Aは、一例として図1~3に示すように、移送ダクト6と背面ダクト7とを主要部材として成るものである。このうち移送ダクト6は、刈刃22の直上部からほぼ真っ直ぐに立ち上げられた後、収容部4上方に臨むように形成されるものである。また背面ダクト7は、刈刃22の後方側、すなわち摘採方向に対して後方となる刈刃22の背面側から、前記移送ダクト6内に上昇流となる圧力風(これを背面風Wとする)を送り込むものである。以下、これら移送ダクト6や背面ダクト7等について更に詳細に説明する。
【0042】
まず移送ダクト6について説明する。このものは、上述したように刈刃22のほぼ真上に立ち上げられ、刈り取り直後の茶葉Aを収容部4まで上昇移送するものである。ここで移送ダクト6において茶葉Aの移送が開始される部位(下部)を移送開始部31とし、茶葉Aの移送が終わる部位(上部)を移送終端部32とするものであり、この移送終端部32には収容部4に臨む吐出口33が形成される。また、本実施例では、移送開始部31は、下方側に開口され、平面から視て、刈刃22を取り囲むように形成されている。一方、移送終端部32は、吐出口33が収容部4に臨むように適宜湾曲形成されるものであり、更にこの吐出口33には茶袋Bの開放端側を取り付けるフック34が設けられる。
【0043】
なお移送ダクト6は、移送開始部31から吐出口33(移送終端部32)に至る移送途中において、幅寸法や断面積等を急激に変化させないことが好ましく、これは移送に伴う茶葉Aの傷みを極力低減させるためである。また、移送路は、例えば図3(a)に示すように、途中部分が二股状に分岐するように形成され、この分岐部35に前記送風機17からの圧力風を背面ダクト7に取り込む導入部8が設けられる(導入部8については後述する)。分岐部35は、上昇移送する茶葉Aを左右に分ける部位となるため、分岐部35に茶葉Aが当たっても極力茶葉Aが傷まないように、滑らかなR状つまり移送路としては略U字状を成し、スムーズに茶葉Aを左右に振り分けるようにすることが好ましい。
【0044】
また、このような移送ダクト6(ダクトユニット5A)は、少なくとも一部が入れ子状もしくはフレキシブル状に形成され、刈刃22とともに上下動できる構成が望ましい。
以上述べたように、本実施例では、茶葉Aを上昇移送するにあたり刈刃後方側への移送を伴わないため、移送装置5ひいては摘採機の前後長を短縮化できるものであるが、これに加え、摘採機を側面から視た場合、上記導入部8を、移送ダクト6とほぼ重なるように設けたことも、ダクトユニット5A(移送装置5)としての厚み(摘採機の前後方向に相当する寸法)を薄くすることができ、摘採機の前後長短縮化に寄与するものである。
【0045】
次に背面ダクト7について説明する。このものは、上述したように刈刃22の後方側から移送ダクト6(移送開始部31)内に背面風Wを送り込むダクトであり、移送ダクト6の背面側に密着状態に設けられる。ここで図中符号38は、背面風Wを移送ダクト6内に送り込む吹出口である。
なお、本実施例では、別体構成の移送ダクト6と背面ダクト7とを張設してダクトユニット5Aを形成するものであるが、上述した構成上、これらは一体的に形成することも可能であり、その場合には、移送ダクト6の後方壁面は、背面ダクト7の前方壁面と共通化させることが可能である。」
(5)「【0049】
本発明の茶刈機の一例であり、また本発明の移送手法を適用した茶畝跨走型摘採機1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、このような摘採機における茶葉Aの移送態様を説明しながら、実質的に本発明方法である茶枝葉の移送方法について説明する。なお、説明にあたっては、背面風Wの形成過程を説明した後、これによる茶葉Aの移送態様について説明する。
【0050】
(1)背面風の形成過程
背面風Wを生じさせるには、まず走行機体2上の原動機16を駆動し、送風機17によって圧力風を生起する。生起された圧力風は、その後、送風ダクト18(フレキシブルダクト18A)を通して導入部8に導かれ、ここでガイド板43に案内されて、導入口39から背面ダクト7内に取り込まれる。背面ダクト7内に導入された圧力風は、次いで、背面ダクト7内に設けられた拡開案内体40によって、刈刃22の幅方向にほぼ均一に拡がるようにガイドされ、刈刃後方の吹出口38から背面風Wとして移送ダクト6(移送開始部31)内に送り込まれる。この背面風Wは、刈刃22の後方から、ほぼ真上に向かう上昇流であり、少なくとも茶葉Aを移送ダクト6の吐出口33(移送終端部32)まで搬送する移送能力を有する。
【0051】
(2)茶葉の移送態様
このような背面風Wによって、茶葉Aは、一例として図4に示すように、刈り取り直後、まず刈刃22の後方側に引き寄せられる。これは、刈刃22の後方から背面風Wを吹き出すことにより、刈刃22の後方付近、具体的には、背面風Wの吹出口38近傍に負圧が形成され、茶葉Aが刈刃部分から吹出口38側に引き寄せられるものと考えられる(以下、これを背面風Wの負圧吸引作用と称する)。そして、吹出口38側に引き付けられた茶葉Aは、その後、上昇流を形成する背面風Wに乗って、移送ダクト6内を上昇し、吐出口33から収容部4に設けられた茶袋B内に収容される。
〔他の実施例〕
【0052】
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち先の図1~4に示した実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送するものであり、これが本発明の大きな特徴である。しかしながら、摘採する茶芽の生育状態、移送路の状況(上昇移送距離等)、背面風Wを生起させる送風機17の能力等によっては、例えば図5、8に示すように背面風Wに加えて、刈刃22の正面側(刈り取り方向正面側)からも移送風(これを正面風W1とする)を補助的に作用させることが可能であり、このような正面風W1を補助的に作用させること自体、設計上、全く問題なく採り得る構成である。因みに、このような構成を採った場合には、正面風W1を生じさせる正面ダクト9を移送ダクト6の正面側に密着状態に設けることが好ましく、これに因み上記ダクトユニット5Aは、移送ダクト6、背面ダクト7、正面ダクト9とによって主に構成される。
【0053】
なお正面風W1を生じさせるにあたっては、例えば上記図5(b)に併せて示すように、導入部8のガイド板43を、二枚の傾斜板により、側面視、山形状に形成するものである。すなわち導入部8に取り込んだ圧力風をガイド板43(二枚の傾斜板)によって、背面ダクト7と正面ダクト9とに振り分けるようにするものである。なおここで二枚の傾斜板を各別に表示する場合には、その作用から背面ガイド板43Aと正面ガイド板43Bとして区別する。また、この場合、例えば背面ガイド板43Aと正面ガイド板43Bの合わせ位置、すなわちガイド板43の頂上の位置によって、背面風Wと正面風W1の流量バランスが決定でき、ガイド板43が、背面風Wと正面風W1との風量の調整作用をも担うものである。もちろん茶葉Aの上昇移送は、主に背面風Wが担うため、背面ダクト7に導入する風量(流量)が多く、大部分を占めるのが一般的である。
また、このようなことから正面ダクト9にも導入部8から圧力風を取り込む導入口46が、移送ダクト6側の壁面に開口されるものである。」
(6)「【0058】
また本発明の移送手法は、刈刃後方からの背面風Wによって、その吹出口38付近に負圧を生じさせ、この負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉Aを刈刃後方側に引き寄せ、その後は茶枝葉Aを背面風Wに乗せて、収容部4など適宜の部位に移送するものである。このため、背面風Wの負圧吸引作用を効率的に利用するには、刈刃22の直後方から背面風Wを作用させる構成が好ましいと考えられるが、例えば図7(b)に示すように、刈刃22から背面風Wの吹出口38までの距離が比較的長いものにも、背面風Wによる移送手段を適用することは可能である。この際、上述したように、背面風Wによる負圧吸引作用は幾らか低下することが考えられるため、その場合には、刈刃22の前方側に、正面ダクト9による分岐ノズル47を設け、刈刃前方からの送風を補助的に行うことが設計上、何ら支障なく採り得る構成である。なお、この場合、上述したように、分岐ノズル47による送風を行っても、従来、前方から風を送り込んでいた送風力と比較すれば、分岐ノズル47の送風力は、極めて少ない送風力で済むと考えられる。」
(7)「【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の移送手法と、これを適用した本発明の茶刈機(摘採機)とを併せて示す説明図である。
【図2】本発明の茶刈機の一例である摘採機を示す側面図(a)、並びに正面図(b)である。
【図3】本発明の茶枝葉の移送装置を示す斜視図(a)、並びに導入部を拡大して示す斜視図(b)である。
【図4】刈刃後方から上向きの背面風を作用させることによって、刈り取り直後の茶葉を刈刃のほぼ真上に上昇移送する様子を示す説明図である。
【図5】移送ダクトの前側に正面ダクトを密着状態に設け、刈刃前方側から正面風を補助的に作用させるようにした移送装置の構成例(本発明に関連する参考例)を示す背面図(a)、側面断面図(b)、並びに正面図(c)である。
【図6】移送ダクトの横から圧力風を供給する移送装置の他の実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明の移送手法を小型もしくは簡易型の乗用式摘採機に適用し、刈刃後方からの背面風によって、刈り取り後の茶葉を刈刃の後方側に移送するようにした他の実施例を示す説明図(a)、並びに刈刃から背面風の吹出口までの距離が比較的長い場合、刈刃前方に設けた分岐ノズルから補助的に送風を行うようにした移送手法(本発明に関する参考例)を示す説明図(b)である。
【図8】本発明の移送手法を適用した二段刈摘採機を示す側面図(a)、並びに正面図(b)である。
【図9】従来の摘採機の移送手法を示す説明図である。」
(8)図1、図7(b)は以下のとおり。
【図1】
[図:0001400865000001.jpg]
【図7】(b)
[図:0001400865000002.jpg]
2 各証拠について
(1)甲第1号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】 茶畝を跨ぐように走行する走行機体と、茶畝上面に位置するように走行機体に取り付けられて茶葉の摘採を行う摘採機体と、この摘採機体の後方に設けられ茶葉を収容する収容部と、前記摘採機体から収容部まで茶葉を移送する中継移送装置とを具えて成り、走行機体の進行に伴い、摘採機体によって摘採した茶葉を中継移送装置を介して収容部に送り込むようにした茶葉摘採機において、前記中継移送装置と前記収容部との接続位置は中継移送装置の始端より上方に設定され、且つ中継移送装置による移送は摘採機体における刈刃後方への茶葉の移送態様を維持したまま、収容部まで至らせることを特徴とする茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造。
【請求項2】 前記中継移送装置と前記収容部とは、その接続部を側面から見て上方に突き出すような山形に屈折させた状態に接続されていることを特徴とする請求項1記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造。
【請求項3】 前記中継移送装置は、摘採機体から収容部まで摘採作用部とほぼ同じ幅寸法を有し、摘採した茶葉の移送態様を維持することを特徴とする請求項1または2記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造。
【請求項4】 前記中継移送装置は、ダクト状に形成され、移送風が吹き込まれることを特徴とする請求項1、2または3記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造。
【請求項5】 前記中継移送装置の茶葉吐出口には、複数の収葉袋を並設し、一挙に大量の茶葉を収容可能としたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造。
【請求項6】 前記走行機体は、クローラ等により走行する乗用式であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造。」
イ「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は茶畝を跨いで走行する走行機体に、茶葉の摘採を行う摘採機体を搭載した茶葉摘採機に関するものであって、特に収穫した茶葉を傷めることなく一挙に大量の茶葉を収容可能とする新規な茶葉収容構造に係るものである。」
ウ「【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち請求項1記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造は、茶畝を跨ぐように走行する走行機体と、茶畝上面に位置するように走行機体に取り付けられて茶葉の摘採を行う摘採機体と、この摘採機体の後方に設けられ茶葉を収容する収容部と、前記摘採機体から収容部まで茶葉を移送する中継移送装置とを具えて成り、走行機体の進行に伴い、摘採機体によって摘採した茶葉を中継移送装置を介して収容部に送り込むようにした茶葉摘採機において、前記中継移送装置と前記収容部との接続位置は中継移送装置の始端より上方に設定され、且つ中継移送装置による移送は摘採機体における刈刃後方への茶葉の移送態様を維持したまま、収容部まで至らせることを特徴として成るものである。この発明によれば、摘採作業の効率を低下させずに一挙に大量の茶葉を収容することが可能となる。また茶葉の移送態様を途中で変化させないため移送部分が狭められることもなく、茶葉に傷みを生じさせることもない。
・・・
【0007】更にまた請求項3記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記中継移送装置は、摘採機体から収容部まで摘採作用部とほぼ同じ幅寸法を有し、摘採した茶葉の移送態様を維持することを特徴として成るものである。この発明によれば、摘採した茶葉に傷みを生じさせることなく、一挙に大量の茶葉を収容する具体的構造を可能とする。
【0008】また請求項4記載の茶畝跨走型茶葉摘採機における茶葉収容構造は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記中継移送装置は、ダクト状に形成され、移送風が吹き込まれることを特徴として成るものである。この発明によれば、摘採した茶葉を収葉袋に収容する際、茶葉の飛散を防止しより確実に茶葉を収容し得る。」
エ「【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお説明にあたっては本発明を適用した茶葉摘採機1を概略的に説明した後、この茶葉摘採機1の作動態様について説明しながら実質的に本発明の茶葉収容構造について説明する。茶葉摘採機1は、図1、2に示すように一例として茶畝T上を跨ぐように走行する走行機体2と、茶畝T上面に位置するように走行機体2に取り付けられて茶葉Aの摘採を行う摘採機体3と、この摘採機体3から離れた後方に設けられ茶葉Aを収容する収容部4と、摘採機体3から収容部4まで茶葉Aを移送する中継移送装置5とを具えて成るものである。また中継移送装置5の吐出側には摘採した茶葉Aを収容する収葉袋6が取り付けられ、茶葉収容時には安定的に収容部4上に載置される。なおこの収葉袋6を茶葉Aを収容していない状態のものと、収容したものとに区別して示す場合には未収容収葉袋を6a、収容済収葉袋を6bとして区別する。以下各構成部について説明する。
【0012】まず走行機体2について説明する。この走行機体2は茶畝Tを跨ぐように概ね門形状に形成されたフレーム部21を骨格部材とし、このフレーム部21に対し下方にクローラ22を設けるとともに上方に摘採機体3が取り付けられる。そしてこのクローラ22や摘採機体3を駆動させるためのコントロールユニット23やエンジンユニット24あるいは摘採機体3及び中継移送装置5等の昇降に関与するスライダ25やウインチ26あるいは作業者が座る操縦者用シート27等がフレーム部21に設けられる。なおこの実施の形態では、茶葉摘採機1として操縦者用シート27を設けた乗用式のものを適用するが、この他にも例えば作業者が搭乗することなく摘採作業が行えるいわゆるレール走行式の摘採機を適用することも可能である。
【0013】次に摘採機体3について説明する。この摘採機体3は、その上方に一例として平行に二本の摘採機フレームパイプ31を配設すると共に、その下方に茶畝T上面の円弧にほぼ合うように摘採機フレーム基板32を平行に設け、更に摘採機フレームパイプ31の片側の寄った位置に摘採機エンジン33を搭載する。そしてこの摘採機エンジン33によって一例としてバリカン刃を適用した刈刃34が駆動されるとともに、摘採機エンジン33の下方に一体的に組み付けたファンからの送風を摘採機フレーム基板32上に吹き出すための送風ダクト35を刈刃34の斜め上前方に配設する。なお刈刃34は、摘採機フレーム基板32の前方ほぼ延長上に設けられるものである。そしてこの摘採機体3における摘採機フレームパイプ31と摘採機フレーム基板32とにより区画され、摘採された茶葉Aが中継移送装置5によって上昇移送されるまでの部分を摘採作用部36とする。
【0014】次に収容部4について説明する。収容部4は、最終的に茶葉Aを収容する部分であり、摘採した茶葉Aを収容した収容済収葉袋6bを載置する部分である。そして収容部4は、金属部材等を適宜組み合わせて成る載置台41を具え、この載置台41が一例として後方下がりの傾斜を有するように形成され、後述する中継移送装置5と共に側面視で山形に屈折した状態を呈するように接続される。このため中継移送装置5から吐き出された茶葉Aは、収葉袋6内に落下しやすくなり、一つの収葉袋6により多くの茶葉Aが収容される。そして載置台41の途中部分には、フラット状の作業台42を形成し、未収容収葉袋6aの取り付けや収容済収葉袋6bを降ろす際の作業の足場としている。また載置台41の両側端からは、ガイドフレーム43が立ち上げられ、収容途中あるいは収容後の収葉袋6の側傍部への落下を防止している。なお収容部4と中継移送装置5との接続は山形に屈折させるものであるが、本明細書に記載するこの山形とは収容部4と中継移送装置5とのどちらか一方あるいは双方を鉛直状態に配する場合を含むものである。すなわち例えば収容部4のみをほぼ鉛直に形成し、中継移送装置5から吐き出された茶葉Aが収葉袋6内をほぼ鉛直に安定的に落下させる形態等が採り得る。
【0015】次に中継移送装置5について説明する。中継移送装置5は、摘採機体3と共にスライダ25によって昇降自在に支持され、摘採機体3により摘採された茶葉Aを収容部4まで移送するためのものであり、吹き上げファン51と、送風ダクト52と、収容部4との接続口53とを具えて成るものである。吹き上げファン51は、一例として図3、4に示すように走行機体2上部の左右に二基設けられ、別途モータ等により駆動され送風ダクト52内に風を送るものである。
【0016】送風ダクト52は、摘採した茶葉Aを摘採作用部36たる刈刃34後方部から収容部4まで風送するものであり、具体的には吹き上げファン51から送り出された風が、茶葉摘採機1の側部を回り込むようにして摘採作用部36に達し、この部分で茶葉Aと合流し、合流後この茶葉Aを茶葉移送路52aを経由させて収容部4まで風送するものである。この茶葉移送路52aは、移送途中で茶葉Aを傷めることがないように摘採作用部36とほぼ同じ幅寸法を有するように構成され、また収容部4に接続される接続口53側を上方に突き出すように配され、茶葉Aを上昇移送するものである。また茶葉移送路52a内面には、移送中の茶葉Aの張り付き防止あるいは移送抵抗の軽減を図るためにメッキあるいはトリテトラフッ化エチレン(商品名テフロン:デュポン社の登録商標)等が形成されている。更に茶葉Aの収容状態が、操縦者用シート27に座った作業者から監視できるように茶葉移送路52aの途中に監視窓52bが設けられる。なお茶葉移送路52aには、その傾斜部上方あるいは下方に補助ファンを設けることが可能であり、また上述したように茶葉移送路52aそのものを鉛直方向に立ち上げるように配する形態も採り得る。
【0017】接続口53は、茶葉移送路52a内を上昇移送されてきた茶葉Aの出口に相当する部分であり、摘採作用部36とほぼ同じ幅寸法を有するものである。そしてこの接続口53は、一例として二本のサイドメンバ53aに対して、複数のクロスメンバ53bを取り付けて概ね梯子状に形成され、六区画に区分けされた茶葉吐出口54を具えて成り、この茶葉吐出口54に収葉袋6が六袋並列状に取り付けられ、茶葉Aを六ケ所に分割して一挙に大量に収容できるように構成されている。また両側から収葉袋6が取り付けられるクロスメンバ53bの前方にはクロスメンバ53b前面への茶葉Aの張り付きを防止し、各収葉袋6に分割して茶葉Aを収容する回転分割具55が設けられている。なおこの実施の形態では、茶葉Aを収容部4まで移送するのに吹き上げファン51により風送する移送形態をとるが、例えばコンベヤ等により茶葉Aを上昇させる移送形態等が採り得る。」
オ「【0019】(2)茶葉摘採
以上のような装着作業が終了すると、作業者が操縦者用シート27に座りエンジンユニット24を始動させ、コントロールユニット23により操作してクローラ22や摘採機エンジン33等を駆動させ、茶葉Aの摘採を開始する。その際茶葉Aは、図5(a)に示すように送風ダクト35から排出される風により摘採作用部36の後方に送られる。次いで茶葉Aは、図5(b)に示すように送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風により茶葉移送路52a内を上昇移送され、収葉袋6が取り付けられた茶葉吐出口54に至る。ここで茶葉移送路52aは、摘採作用部36とほぼ同じ幅寸法を有することにより移送態様が維持されており、従って移送途中で茶葉Aが集約されることがなく、茶葉Aに傷みを生じさせることがない。また茶葉吐出口54の前方に回転分割具55が設けられているため接続口53に茶葉Aが張り付くことがない。その後茶葉Aは、各収葉袋6に分割して収容されるが、図5(c)に示すように収容部4が後方下がりの傾斜を有するように形成されるため、より多くの茶葉Aが収葉袋6内を落下するように収容されていく。」
カ 図1、図5は以下のとおり。
[図:0001400865000003.jpg]
[図:0001400865000004.jpg]
キ 上記エの記載を踏まえると、上記カの【図1】からは、送風ダクト52からの吹出口は、摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口していることが看取される。
ク 上記アないしキによれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「茶畝T上を跨ぐように走行する走行機体2と、走行機体2に取り付けられて茶葉Aの摘採を行う摘採機体3と、この摘採機体3から離れた後方に設けられ茶葉Aを収容する収容部4と、摘採機体3から収容部4まで茶葉Aを移送する中継移送装置5とを具えて成る茶葉摘採機1であって、
摘採機体3は、平行に二本の摘採機フレームパイプ31を配設すると共に、その下方に摘採機フレーム基板32を平行に設け、バリカン刃を適用した刈刃34は、摘採機フレーム基板32の前方ほぼ延長上に設けられ、ファンからの送風を摘採機フレーム基板32上に吹き出すための送風ダクト35を刈刃34の斜め上前方に配設し、摘採機体3における摘採機フレームパイプ31と摘採機フレーム基板32とにより区画され、摘採された茶葉Aが中継移送装置5によって上昇移送されるまでの部分を摘採作用部36とするものであり、
収容部4は、金属部材等を適宜組み合わせて成る載置台41を具え、摘採した茶葉Aを収容した収容済収葉袋6bを載置する部分であり、
中継移送装置5は、吹き上げファン51と、送風ダクト52と、収容部4との接続口53とを具えて成り、
吹き上げファン51は、送風ダクト52内に風を送るものであり、
送風ダクト52は、摘採した茶葉Aを摘採作用部36たる刈刃34後方部から収容部4まで風送するものであり、具体的には吹き上げファン51から送り出された風が、茶葉摘採機1の側部を回り込むようにして摘採作用部36に達し、この部分で茶葉Aと合流し、合流後この茶葉Aを茶葉移送路52aを経由させて収容部4まで風送するもので、この茶葉移送路52aは、移送途中で茶葉Aを傷めることがないように摘採作用部36とほぼ同じ幅寸法を有するように構成され、また収容部4に接続される接続口53側を上方に突き出すように配され、茶葉Aを上昇移送するものであり、
送風ダクト52からの吹出口は、摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口し、
接続口53は、茶葉移送路52a内を上昇移送されてきた茶葉Aの出口に相当する部分で、茶葉吐出口54を具えて成り、この茶葉吐出口54に収葉袋6が取り付けられ、茶葉Aを収容できるように構成され、
茶葉Aの摘採を開始すると、茶葉Aは、送風ダクト35から排出される風により摘採作用部36の後方に送られ、次いで、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風により茶葉移送路52a内を上昇移送され、収葉袋6が取り付けられた茶葉吐出口54に至る、
茶葉摘採機1。」
(2)甲第2号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
茶畝を跨いだ門型枠の機体を茶畝に沿って走行しながら茶葉の摘採を行なう走行型茶葉摘採機において、門型枠下方に摘採装置を設け、摘採装置後方に茶葉収容装置を設け、摘採装置後部に摘採した茶葉を茶葉収容装置の上部に運ぶ為の略垂直な輸送ダクトを設け、上昇する風が通っている輸送ダクト内に刈刃で摘採した茶葉を回転体で送り込み、茶葉を上方に飛ばすことを特徴とする走行型茶葉摘採機の茶葉輸送装置。
【請求項2】
刈刃はバリカン型の刈刃、回転体は回転ブラシであることを特徴とする請求項1記載の走行型茶葉摘採機の茶葉輸送装置。
・・・
【請求項7】
輸送ダクトの底から吹き上げる圧力風の吹出口は回転体の外周に接して設けた半円形の底板の長手方向の全長に渡って設けてあり、底辺の吹出口に向かって上方から扇状に広がる送風ダクトで回転体の長手方向の全長に平均に圧力風が送られるように吹き降し、底部で180°方向転換し、輸送ダクト内を上方に吹き上げる構造としたことを特徴とした請求項1、2、3、4、5または6記載の走行型茶葉摘採機の茶葉輸送装置。」
イ 「【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に請求項1の手段では、「茶畝を跨いだ門型枠の機体を茶畝に沿って走行しながら茶葉の摘採を行なう走行型茶葉摘採機において、門型枠下方に摘採装置を設け、摘採装置後方に茶葉収容装置を設け、摘採装置後部に摘採した茶葉を茶葉収容装置の上部に運ぶ為の略垂直な輸送ダクトを設け、上昇する風が通っている輸送ダクト内に刈刃で摘採した茶葉を回転体で送り込み、茶葉を上方に飛ばす」という手段を用いる。摘採された茶葉を摘採装置後方の輸送ダクトに送り込む為に回転体を用いることにより、摘採した茶葉を後方に吹き飛ばすために、バリカン型刈刃の前方に設けた櫛状に枝管のついた送風管が不要となり、この送風管へ圧力風を送る為のファンが不要となり、ファンは1ヶでよいことになる。又、櫛状の送風管で茶葉を押し倒し、刈り跡がまだらになるのを防ぐことが出来る。
・・・
【0015】
請求項7記載の手段では、「輸送ダクトの底から吹き上げる圧力風の吹出口は回転体の外周に接して設けた半円形の底板の長手方向の全長に渡って設けてあり、底辺の吹出口に向かって上方から扇状に広がる送風ダクトで回転体の長手方向の全長に平均に圧力風が送られるように吹き降し、底部で180°方向転換し、輸送ダクト内を上方に吹き上げる構造とする」という手段をとる。輸送ダクトの底から吹き上げる圧力風は吹出口の全長に渡って均一な強さでなくてはならない。圧力風の供給ダクトを扇状に広げて、吹出口の全長に合わせておけば、供給する圧力風を全長に渡って均一な強さにすることが出来る。圧力風をこのように吹き降し、その先端で180°反転して輸送ダクトの底から吹き上げることによって、摘採装置の狭い空間内に吹上げ用の圧力風の供給ダクトを収めることができる。」
ウ 「【0016】
【発明の実施の形態】
図面に従って、実施の形態を説明する。図1はこの発明の茶葉輸送装置を設けた走行茶葉摘採機の実施例を示す正面図、図2は側面図、図3はバリカン型の刈刃とブラシ状の回転体を具えた摘採装置の拡大断面図、図4は回転体として回転刃を設けた摘採装置の拡大断面図、図5は輸送ダクトの下端を摘採装置の背面から見た立面図である。
【0017】
茶畝1を挟んで2本のクローラ型の走行装置2、3を門型枠4でつなぎ、門型枠4の下に摘採装置5を設けてある。摘採装置5の後方には、茶葉収容装置6が設けてある。摘採装置5と茶葉収容装置6はフレキシブルな輸送ダクト7、8でつながっている。門型枠4の上には、ファン9、10が設置してあり、フレキシブルな送風ダクト11、12で摘採装置5と接続されている。摘採装置は中央部で2分割されており、送風ダクト11、12の先端部は扇状のフード13、14となって、摘採装置5の背面に接続している。輸送ダクト7、8の上端は下面が開放されたフード15、16となっており、茶葉収容装置6の上部に設置する。輸送ダクト7、8の下端は扇状のフード19、20となって、摘採装置5の上部に接続されている。茶葉収容装置6には、複数の茶袋17が上面を開放されてセットされている。茶葉収容装置6は支柱18を中心として回転し、フード15、16から落下する茶葉をセットされた全部の茶袋17に受けることが出来るようになっている。
【0018】
21はバリカン型の刈刃であり、上下2枚のノコギリ状の刈刃が水平に往復運動し、茶葉を切断する構造となっている。刈刃21の上には、回転軸22を中心として回転する回転体23が設けてあり、回転体23の先端にはブラシ24が取り付けてある。ブラシ24の先端は回転方向に対して角度αだけ遅らせて取り付けてある。25は回転体の先端に沿って設けてある底板であり、圧力風の吹出口26に臨んでいる。送風ダクト11、12の先端フード13、14は下端で180°向きを変え、吹出口26となって、底板25と接続している。
【0019】次に、摘採作業について説明する。摘採装置5は油圧駆動により上下可能となっている。走行装置2、3を畝間に合わせ、摘採装置5を上下させて、刈刃21を摘採面に合わせ刈刃21を駆動させると共に、回転体23を回転させる。次いで、送風ファン9、10を駆動させると、圧力風が発生し、送風ダクト11、12を通り、吹出口26から輸送ダクト7、8へ吹き上げる。次いで、茶葉収容装置6をゆっくりと回転させる。機体を茶畝1に沿って走行させると、回転体23のブラシ24の回転によって、茶葉はバリカン型刈刃21の方へ寄せられて、刈刃21によって切断される。切断された茶葉は、ブラシ24によって底板25に沿って吹出口26が送り込まれる。吹出口26では、下方から吹き上げられている圧力風により、上方へ吹き飛ばされ、フード19、20を通って、輸送ダクト7、8内を上昇し、フード15、16部分で落下し、回転している茶袋17内へ収容される。」
エ 図1、図2、図3、図5は以下のとおり。
[図:0001400865000005.jpg]
【図2】
[図:0001400865000006.jpg]
[図:0001400865000007.jpg]
[図:0001400865000008.jpg]
オ 上記ウの記載を踏まえると、上記エの図3及び図5からは、送風ダクト11、12の先端部の扇状の先端フード13、14は、刈り取り方向後方側に、輸送ダクト7、8の下端の扇状のフード19、20に沿って併設され、上部に送風ダクト11、12が接続されていることが看取される。
カ 上記アないしオによれば、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「茶葉輸送装置を設けた走行茶葉摘採機であって、
茶畝1を挟んで2本のクローラ型の走行装置2、3を門型枠4でつなぎ、門型枠4の下に摘採装置5を設けてあり、摘採装置5の後方には、茶葉収容装置6が設けてあり、摘採装置5と茶葉収容装置6はフレキシブルな輸送ダクト7、8でつながっていて、
門型枠4の上には、ファン9、10が設置してあり、フレキシブルな送風ダクト11、12で摘採装置5と接続され、送風ダクト11、12の先端部は扇状のフード13、14となって、摘採装置5の背面に接続し、輸送ダクト7、8の上端は下面が開放されたフード15、16となっており、輸送ダクト7、8の下端は扇状のフード19、20となって、摘採装置5の上部に接続され、茶葉収容装置6には、複数の茶袋17が上面を開放されてセットされ、フード15、16から落下する茶葉をセットされた全部の茶袋17に受けることが出来るようになっており、
バリカン型の刈刃21の上には、回転軸22を中心として回転する回転体23が設けてあり、回転体23の先端にはブラシ24が取り付けてあり、回転体の先端に沿って設けてある底板25は圧力風の吹出口26に臨んでいて、送風ダクト11、12の先端フード13、14は下端で180°向きを変え、吹出口26となって、底板25と接続し、
送風ダクト11、12の先端部の扇状の先端フード13、14は、刈り取り方向後方側に、輸送ダクト7、8の下端の扇状のフード19、20に沿って併設され、上部に送風ダクト11、12が接続されており、
摘採作業は、送風ファン9、10を駆動させると、圧力風が発生し、送風ダクト11、12を通り、吹出口26から輸送ダクト7、8へ吹き上げ、機体を茶畝1に沿って走行させると、回転体23のブラシ24の回転によって、茶葉はバリカン型刈刃21の方へ寄せられて、刈刃21によって切断され、切断された茶葉は、ブラシ24によって底板25に沿う吹出口26に送り込まれ、吹出口26では、下方から吹き上げられている圧力風により、上方へ吹き飛ばされ、フード19、20を通って、輸送ダクト7、8内を上昇し、フード15、16部分で落下し、回転している茶袋17内へ収容される、
走行茶葉摘採機。」
3 無効理由1、2について
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「バリカン刃を適用した刈刃34」は、本件訂正発明1の「バリカン式の刈刃(22)」に相当する。
(イ)甲1発明の「茶葉A」は、「バリカン刃を適用した刈刃34」によって「摘採され」るものであるから、本件訂正発明1の「バリカン式の刈刃(22)によって刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)」に相当する。
(ウ)甲1発明の「摘採作用部36」及び「茶葉移送路52a」は、「バリカン刃を適用した刈刃34」によって「摘採され」た「茶葉A」を「茶葉吐出口54まで移送する」ためのものであるから、本件訂正発明1の「移送ダクト(6)」に相当する。
(エ)甲1発明の「送風ダクト35から排出される風」(以下「送風ダクト35風」という。)及び「送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風」(以下「送風ダクト52風」という。)は、いずれも「ファン」から送られた風であり、それぞれ、「摘採作用部36」及び「茶葉移送路52a」に向けて吹き出されるものであるから、本件訂正発明1の「移送ダクト(6)内に流す圧力風」に相当する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)の対比及び「茶葉A」が「送風ダクト35風」及び「送風ダクト52風」のみによって「茶葉吐出口54」まで移送されることを踏まえると、甲1発明の「茶葉Aは、送風ダクト35から排出される風により摘採作用部36の後方に送られ、次いで、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風により茶葉移送路52a内を上昇移送され、収葉袋6が取り付けられた茶葉吐出口54に至る」ことは、本件訂正発明1の「バリカン式の刈刃(22)によって刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を、移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する方法」に相当する。
(カ)甲1発明の「バリカン刃を適用した刈刃34は、摘採機フレーム基板32の前方ほぼ延長上に設けられ」るものであるから、上記(ウ)の対比を踏まえると、甲1発明の「摘採作用部36」の「刈刃34」側の端部は、本件訂正発明1の「そのダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)」に相当する。
(キ)甲1発明は、「摘採機体3は、平行に二本の摘採機フレームパイプ31を配設すると共に、その下方に摘採機フレーム基板32を平行に設け」たものであるから、上記(カ)の対比を踏まえると、甲1発明の「摘採作用部36」の「摘採機フレーム基板32」の「刈刃34」側の端部の下部は、本件訂正発明1の「移送開始部(31)の下部」に相当し、甲1発明において「バリカン刃を適用した刈刃34は、摘採機フレーム基板32の前方ほぼ延長上に設けられ」ることは、本件訂正発明1の「前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A) の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されるものであ」ることに相当する。
(ク)甲1発明の「送風ダクト52風」は、「刈刃34」の後方側から送り込まれるものであるから、本件訂正発明1の「背面風(W) 」に相当する。
そして、甲1発明の「送風ダクト52風」は、「送風ダクト52」の「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口し」た「吹出口」から吹き出され、「摘採作用部36に達し、この部分で茶葉Aと合流し、合流後この茶葉Aを」「茶葉移送路52a内を茶葉吐出口54まで茶葉Aを上昇移送」し、「収容部4まで風送する」ものであって、茶葉移送路52a内において、茶葉Aを茶葉吐出口54まで上昇移送することができる風速と風量を有する空気流であるから、茶葉移送路52a内に吹き出した際に、その吹出口近傍に負圧が生じ、生じた負圧に応じた吸引作用を奏するものと認められる。
そうすると、甲1発明の「送風ダクト52風」は、本件訂正発明1の「負圧吸引作用を奏する背面風」に相当する。
(ケ)上記(ウ)及び(ク)の対比を踏まえると、甲1発明の「バリカン刃を適用した刈刃34」によって「摘採され」た「茶葉A」を「茶葉吐出口54まで移送する」にあたり、「茶葉Aは、送風ダクト35から排出される風により摘採作用部36の後方に送られ、次いで、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風により茶葉移送路52a内を上昇移送され、収葉袋6が取り付けられた茶葉吐出口54に至る」ことと、本件訂正発明1の「刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにした」こととは、「刈り取り後の茶枝葉(A)を刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、背面風(W)を刈刃(22)の後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにした」ことで共通する。
(コ)以上を総合すると、本件訂正発明1と甲1発明の茶葉摘採機1における茶葉の移送方法とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
バリカン式の刈刃(22)によって刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を、移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する方法であって、
前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されるものであり、
刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、前記刈刃(22)の後方側から移送ダクト(6)に背面風(W)を送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにした茶枝葉の移送方法。
(相違点1)
刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたって、茶枝葉(A)の移送を、本件訂正発明1は「負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込む」ことによって行うのに対し、甲1発明は、「刈刃34の斜め上前方に配設し」た「送風ダクト35」から排出される風である「送風ダクト35風」により「摘採作用部36の後方に送」り、次いで、「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」する「吹出口」から吹き出される「送風ダクト52風」によって「茶葉移送路52a内を上昇移送」して「茶葉吐出口54」まで移送する点。
イ 判断
(ア)新規性について
本件訂正発明1と甲1発明とには、上記相違点1があり、かつ、上記相違点1の構成が設計上の微差であると判断できる理由も存在しないから、本件訂正発明1と甲1発明とは同一ではない。
(イ)進歩性について
a 甲1発明には、「刈刃34」によって「摘採され」た「茶葉A」を「茶葉吐出口54」まで移送するにあたり、「送風ダクト52風」のみを「刈刃の直後方」から送り込むことによって行うことについて何らの記載も示唆もない。つまり、甲1には、「送風ダクト35風」を省くことについて何ら記載されておらず、また、甲1発明は、「送風ダクト35風」により茶葉Aを摘採作用部36の後方に送るものであるから、「送風ダクト35風」を省く理由もない。
b よって、相違点1に係る本件訂正発明1の構成は、当業者といえども、甲1発明から容易になし得たものではない。
c また、甲2発明も、「刈刃21によって切断され、切断された茶葉」は、「ブラシ24」によって吹出口26に送り込まれ、「吹出口26」から「圧力風」により「茶袋17内」に移送されるものであるから、刈刃から茶袋17までの移送を「吹出口26」からの「圧力風」のみによって行うことについて記載も示唆もないし、甲2発明において、「ブラシ24」を省く理由もない。
d そうすると、相違点1に係る本件訂正発明1の構成は、当業者といえども、甲1発明および甲2発明から容易になし得たものではない。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張
請求人は、弁駁書において、本件訂正発明1は甲1発明と実質的に同一であるか、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることについて、概略以下の主張をしている。
a 新規性について
本件訂正発明1の「負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって」は、「のみ」によって「負圧吸引作用を奏する背面風(W)だけを刈刃の直後方から移送ダクトに送り込む」ことが特定されているのであり、「茶枝葉(A)の移送を行うようにした」ことの原因は、それだけではなく他にもあると解釈できる。
甲1発明の「送風ダクト52風」は、本件訂正発明1の「負圧吸引作用を奏する背面風(W)」に相当する。甲1発明においては、「刈刃34」の後方にある「吹出口」から吹き出される風は「送風ダクト52風」のみである。また、「吹出口」は、「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口し」ており、「刈刃34」は「敵採機フレーム基板32」の前方に設けられているので、「吹出口」は「刈刃34」の後方のそれほど離れていないところにあって「直後方」にあると言える。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは同一である。(弁駁書第2頁下から7行~第5頁第9行)
b 進歩性について
仮に本件訂正発明1が「背面風(W)のみ」が、「茶枝葉(A)」の移送を行うようにした」ことの原因を背面風だけに限定していると解されるとしても、甲1発明における「送風ダクト52風」が「負圧吸引作用を奏する背面風」であることが認められている以上、「送風ダクト52風」の風力を高めることで、甲1発明において、「送風ダクト35風」を省くことは、当業者が設計上普通になし得ることである。(弁駁書第5頁第10~15行)
(イ)主張の検討
a 上記(ア)aについて
(a)本件訂正発明1は、「刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにした」と特定しているものであり、当該記載から、茶枝葉(A)の移送は、「刈刃(22)から所定の位置までの移送」にあたっては、「負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって」行うものと理解できる。
(b)そして、甲1発明は、上記イで検討したように、「刈刃34の斜め上前方に配設し」た「送風ダクト35」から排出される風である「送風ダクト35風」により「茶葉A」を「摘採作用部36の後方に送」り、次いで、「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」する「吹出口」から吹き出される「送風ダクト52風」によって「茶葉移送路52a内を上昇移送」して「茶葉吐出口54」まで移送するものであるから、刈刃34から茶葉吐出口54までの移送は、「送風ダクト52風」のみで行うものではなく、また、「送風ダクト52風」が「刈刃の直後方から」送り込まれているものでもない。
よって、請求人の上記(ア)aに係る主張は採用できない。
b 上記(ア)bについて
(a)甲1発明は「摘採機体3から収容部4まで茶葉Aを移送する中継移送装置5」を「具えて成る茶葉摘採機1」であって、「茶葉A」は「送風ダクト35風」により「摘採機体3」の「摘採作用部36の後方」に送られ、「送風ダクト52風」によって「茶葉移送路52a内を上昇移送され」、「茶葉吐出口54」まで移送されるものであるところ、「刈刃34」から「茶葉吐出口54」までの移送を「送風ダクト35風」を省いて「送風ダクト52風」のみによって行うことを記載ないし示唆する証拠は無く、また、「送風ダクト35風」を省く動機付けも存在しない。
(b)また、仮に「送風ダクト35風」を省いたとしても、「刈刃34」と「送風ダクト52風」が吹き出される「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」する「吹出口」との間には「摘採機フレーム基板32」が配置されているから、「送風ダクト52風」が「刈刃の直後方から」送り込まれるものとはならない。
(c)以上のとおりであるが、以下、甲1発明において「送風ダクト52風」の風力を高めることで「送風ダクト35風」を省くことの可否について、一応、検討する。
請求人上申書第2頁第5~7行に「入口と出口を有するダクト内に出口側に向けて風を吹き込むことで、入口に負圧吸引作用が生じることは、「エゼクター(或いはエジェクター)」と称される物理現象として極一般に知られている。」と記載されているように、一般に、空気の流れ(風)を利用して負圧吸引を行う際には、入口と出口を有するダクトのような閉じた流路が必要であると認められる(請求人が参考文献として当該上申書に添付して提出した参考資料1(特開平6-200507号公報)、参考文献2(実願昭60-8103号(実開昭61-125390号)のマイクロフィルム)、参考文献3(特開2002-119446号公報)、参考文献4(特開平6-296567号公報)、参考文献5(特開昭63-7890号公報)、参考文献6(実願昭57-115952号(実開昭59-20887号)のマイクロフィルム)においても、負圧吸引効果が生じる流路は、入口と出口を有するダクトのように閉じた流路となっている。)。
一方、甲1発明の「摘採作用部36」は、「摘採機体3における摘採機フレームパイプ31と摘採機フレーム基板32とにより区画され」る程度のものであって、負圧が生じるような閉じた流路とはなっていない。
そうすると、甲1発明の「送風ダクト52風」は、「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間」の吹出口近傍においては負圧を生じ、当該負圧に応じた負圧吸引作用を奏するとしても、「摘採作用部36」の「刈刃34」側の端部においてまで負圧吸引作用を奏するものではなく、「送風ダクト52風」の風力を高めることで「送風ダクト35風」を省くことを当業者が容易に想到できたとはいえない。
よって請求人の上記(ア)bに係る主張は採用できない。
エ 小括
よって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明1は、甲1発明に基いて、または、甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明2、3
本件訂正発明1を引用する本件訂正発明2、3は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、本件訂正発明2、3と甲1発明とは、少なくとも、上記相違点1で相違する。
そして、上記相違点1については、上記(1)イで検討したとおり、甲1発明及び甲2発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件訂正発明2、3は、甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明7
ア 対比
本件訂正発明7と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「茶葉A」は、本件訂正発明7の「茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)」に相当する。
(イ)甲1発明の「バリカン刃を適用した刈刃34」は、本件訂正発明7の「バリカン式の刈刃(22)」に相当する。
(ウ)甲1発明において「茶葉A」は、「摘採機フレーム基板32上に吹き出」される「送風ダクト35から排出される風により、摘採作用部36の後方に送られ、次いで、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風により茶葉移送路52a内を上昇移送され、収葉袋6が取り付けられた茶葉吐出口54に至る」ものであるから、甲1発明の「送風ダクト35風」及び「送風ダクト52風」は、本件訂正発明7の「空気流」に相当し、甲1発明の「摘採作用部36」及び「茶葉移送路52a」は、本件訂正発明7の「移送ダクト(6)」に相当する。
(エ)上記(ウ)の対比及び甲1発明の「茶葉A」が「送風ダクト35風」及び「送風ダクト52風」のみによって茶葉吐出口54に移送されることを踏まえると、甲1発明の摘採機体3の「送風ダクト35」及び「摘採作用部36」並びに「中継移送装置5」は、本件訂正発明7の「茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を刈り取るバリカン式の刈刃(22)に対して、内部に空気流を流す移送ダクト(6)を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する装置」に相当する。
(オ)甲1発明の「摘採作用部36」及び「茶葉移送路52a」は、本件訂正発明7の「移送ダクト(6)」に相当し、甲1発明の「バリカン刃を適用した刈刃34は、摘採機フレーム基板32の前方ほぼ延長上に設けられ」る。そうすると、甲1発明の「摘採作用部36」の「刈刃34」側の端部は、本件訂正発明7の「ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)」に相当する。
(カ)甲1発明は、「摘採機体3は、平行に二本の摘採機フレームパイプ31を配設すると共に、その下方に摘採機フレーム基板32を平行に設け」たものであるから、上記(オ)の対比を踏まえると、甲1発明の「摘採作用部36」の「摘採機フレーム基板32」の「刈刃34」側の端部の下部は、本件訂正発明7の「移送開始部(31)の下部」に相当し、甲1発明において「バリカン刃を適用した刈刃34は、摘採機フレーム基板32の前方ほぼ延長上に設けられ」ることは、本件訂正発明7の「前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて成」ることに相当する。
(キ)甲1発明の「送風ダクト52風」は、「刈刃34」の後方側から送り込まれるものであるから、本件訂正発明7の「背面風(W) 」に相当する。
そして、甲1発明の「送風ダクト52風」は、「送風ダクト52」の「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口し」た「吹出口」から吹き出され、「摘採作用部36に達し、この部分で茶葉Aと合流し、合流後この茶葉Aを」「茶葉移送路52a内を茶葉吐出口54まで茶葉Aを上昇移送」し、「収容部4まで風送する」ものであって、茶葉移送路52a内において、茶葉Aを茶葉吐出口54まで上昇移送することができる風速と風量を有する空気流であるから、茶葉移送路52a内に吹き出した際に、その吹出口近傍に負圧が生じ、生じた負圧に応じた吸引作用を奏するものと認められる。
そうすると、甲1発明の「送風ダクト52風」は、本件訂正発明7の「負圧吸引作用を奏する背面風」に相当する。
(ク)甲1発明の「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」する「送風ダクト52」の「吹出口」は、「摘採機フレーム基板32の前方ほぼ延長上に設けられ」る「刈刃34」の後方に設けられるから、上記(ウ)の対比を踏まえると、本件訂正発明7の「刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W)を送り込む吹出口(38)」と、「刈刃(22)の後方から移送ダクト(6)内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W)を送り込む吹出口(38)」で共通する。
(ケ)上記(ウ)及び(キ)の対比を踏まえると、甲1発明の「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」する「送風ダクト52」の「吹出口」から「吹き上げファン51から送り出された風」を吹き出すことによって「摘採した茶葉Aを摘採作用部36たる刈刃34後方部から収容部4まで風送」することと、本件訂正発明7の「この吹出口(38)から移送ダクト(6)に背面風(W)のみを送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものである」こととは、「この吹出口(38)から移送ダクト(6)に背面風(W)を送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものである」ことで共通する。
(コ)そうすると、本件訂正発明7と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を刈り取るバリカン式の刈刃(22)に対して、内部に空気流を流す移送ダクト(6)を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する装置であって、
前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて成り、
また、この装置には、前記刈刃(22)の後方から移送ダクト(6)内に背面風(W)を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)を送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものである茶枝葉の移送装置。
(相違点2)
本件訂正発明7は、吹出口(38)が、刈刃(22)の「直後方」から背面風(W)を送り込むように設けられ、「この吹出口(38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)のみを送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する」のに対し、甲1発明は、「送風ダクト52風」の「吹出口」は「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」し、「茶葉A」の移送は、「刈刃34の斜め上前方に配設し」た「送風ダクト35」から排出される風である「送風ダクト35風」により「茶葉A」が「摘採作用部36の後方」に送られ、ついで、「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」する「吹出口」から吹き出される「送風ダクト52風」によって「茶葉移送路52a内を上昇移送され」、「茶葉吐出口54」に移送される点。
イ 判断
(ア)新規性について
本件訂正発明7と甲1発明とには、上記相違点2があり、かつ、上記相違点2の構成が設計上の微差であると判断できる理由も存在しないから、本件訂正発明7と甲1発明とは同一ではない。
(イ)進歩性について
a 甲1発明には、「刈刃34」によって「摘採され」た「茶葉A」を「茶葉吐出口54」まで移送するにあたり、「送風ダクト52風」のみを「刈刃の直後方」に設けた吹出口から送り込むことによって刈刃から所定の位置まで移送することについて記載も示唆もない。つまり、甲1には、「送風ダクト35風」を省くことについて何ら記載されておらず、また、甲1発明は、「送風ダクト35風」により茶葉Aを摘採作用部36の後方に送るものであるから、「送風ダクト35風」を省く理由もない。
b よって、相違点2に係る本件訂正発明7の構成は、当業者といえども、甲1発明から容易になし得たものではない。
c また、甲2発明も、「刈刃21によって」「切断された茶葉」は、「ブラシ24」によって吹出口26に送り込まれ、「吹出口26」から「圧力風」により「茶袋17内」に移送されるものであるから、刈刃から茶袋17までの移送を「圧力風」のみによって移送することについて記載も示唆もないし、甲2発明において、「ブラシ24」を省く理由もない。
d そうすると、相違点2に係る本件訂正発明7の構成は、当業者といえども、甲1発明および甲2発明から容易になし得たものではない。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張
請求人は、弁駁書において、本件訂正発明7は甲1発明と実質的に同一であるか、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることについて、概略以下の主張をしている。
a 新規性について
本件訂正発明7における「この吹出口(38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)のみを送り込むことによって」は、吹出口(38)から移送ダクト(6)内に送り込む圧力風が背面風(W)のみであることを特定しているにすぎず、その後段で特定されている「刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する」ことの原因が、背面風(W)に限定していることを特定しているわけではない。また、甲1発明の「送風ダクト52風」は本件訂正発明7の「負圧吸引作用を奏する背面風(W)」に相当し、甲1発明の「吹出口」は、本件訂正発明7の「前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W)を送り込む吹出口(38)」に相当することが明らかである。
そうすると、甲1発明において、「刈刃43」(当審注:「刈刃34」の誤記と認める)の後方に「吹出口」を設けて、「吹出口」から「送風ダクト52風」を吹き出させることで、「摘採した茶葉(A)を摘採作用部36なる刈刃34後方部から収容部まで風送」することは、本件訂正発明7における「この装置には、前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W)を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(38)内に背面風(W)のみを送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものである」に相当し、本件訂正発明7と甲1発明とは同一である。(弁駁書第6頁第13行~第7頁第6行)
b 進歩性について
仮に、本件訂正発明7における「背面風(W)のみ」が、「刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する」ことの原因を背面風だけに限定していると解されるとしても、甲1発明における「送風ダクト52風」が「負圧吸引作用を奏する背面風」であることが認められている以上、「送風ダクト52風」の風力を高めることで、甲1発明において、「送風ダクト35風」を省くことは、当業者が設計上普通になし得ることである。(弁駁書第7頁第7~13行)
(イ)主張の検討
a 上記(ア)aについて
(a)本件訂正発明7は、「この吹出口(38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)のみを送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものである」と特定しているものであり、当該記載から、「刈り取り後の茶枝葉(A)」の「刈刃(22)から所定の位置まで」の移送を、「背面風(W)のみ」によって行うものと理解できる。
(b)一方、甲1発明は、上記イで検討したように、刈刃から所定の位置まで「茶葉A」の移送を、「刈刃34の斜め上前方に配設し」た「送風ダクト35」から排出される風である「送風ダクト35風」により「摘採作用部36の後方」に送り、「摘採機フレーム基板32後端部と茶葉移送路52aの下端部との間に開口」する「吹出口」から吹き出される「送風ダクト52風」によって「茶葉移送路52a内を上昇移送」して「茶葉吐出口54」まで移送するものであるから、刈刃から所定の位置までの移送は、「送風ダクト52風」(背面風)のみで行うものではなく、また、「刈刃の直後方」から「送風ダクト52風」(背面風)を送り込むものでもない。
よって、請求人の上記(ア)aに係る主張は採用できない。
b 上記(ア)bについて
上記(ア)bについては、上記(1)ウ(イ)bにおいて本件訂正発明1について検討したのと同様の理由により、甲1発明において「送風ダクト52風」の風力を高めることで「送風ダクト35風」を省くことを当業者が容易に想到できたとはいえない。
よって請求人の上記(ア)bに係る主張は採用できない。
エ 小括
よって、本件訂正発明7は、甲第1号証に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明7は、甲1発明に基いて、または、甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明8、9、13
本件訂正発明7を引用する本件訂正発明8、9、13は、本件訂正発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、本件訂正発明8、9、13と甲1発明とは、少なくとも、上記相違点2で相違する。
そして、上記相違点2については、上記(3)イで検討したとおり、甲1発明から、または、甲1発明及び甲2発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件訂正発明8、9、13は、甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 無効理由3について
(1)サポート要件について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件訂正発明の課題
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、背景技術と発明が解決しようとする課題について、上記1(1)に摘記した事項が記載されており、当該記載からみて、本件訂正発明が解決しようとする課題は、従来、刈刃22’から収容部4’まで茶葉Aを移送するには、刈刃前方からの送風形態を採り、水平移送部Xを要するものであったところ、水平移送部Xを短縮もしくは排除して装置の前後長を短縮化したいという要請があったことを背景に、主に送風形態に着眼し、例えば上昇移送を伴う摘採機等の場合、水平移送部を設けることなく、刈り取り直後、即、茶葉を上昇移送できるようにし、摘採機の前後寸法の短縮化を図り、摘採機をコンパクトに構成できるようにした新規な茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを適用した茶刈機の開発することと認められる。
ウ 本件訂正発明の備える課題解決の手段について
(ア)本件訂正発明1
本件訂正発明1は、課題解決の手段として、「バリカン式の刈刃(22)によって刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を、移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する方法であって、
前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されるものであり、
刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにした」ものである。
(イ)本件訂正発明7
本件訂正発明7は、課題解決の手段として、「茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を刈り取るバリカン式の刈刃(22)に対して、内部に空気流を流す移送ダクト(6)を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する装置であって、
前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて成り、
また、この装置には、前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)内に、負圧吸引作用を奏する背面風(W)を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)のみを送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものである」ようにしたものである。
(ウ)本件訂正発明7を引用する本件訂正発明13
本件訂正発明7を引用する本件訂正発明13は、課題解決の手段として、
「茶畝(T)を跨いで走行する走行機体(2)と、
この走行機体(2)に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、
この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部(4)と、
刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を茶刈機体から収容部(4)まで移送する移送装置(5)とを具え、
目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした茶刈機であって、
前記移送装置(5)は、請求項7の装置が適用されて成る」ようにしたものである。
エ サポート要件の判断
(ア)本件訂正発明1について
a 茶枝葉の移送方法について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、送風機17によって圧力風を生起し、生起された圧力風を、刈刃22の後方から、ほぼ真上に向かう上昇流であり、少なくとも茶葉Aを移送ダクト6の吐出口33(移送終端部32)まで搬送する移送能力を有する背面風Wとして、刈刃後方の吹出口38から、移送ダクト6(移送開始部31)内に送り込むことが記載されている。(上記1(5)段落【0049】~【0051】)
b 刈刃にバリカン式の刈刃が適用されることは、本件特許明細書に「上下一対の刈刃体22Aを交互に往復動させることで、各刈刃体22Aに形成した刃(歯)のバリカン作用により茶葉Aを刈り取るものである」と記載されている。(上記1(3)段落【0035】)
c 本件図面の【図1】からは、移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、刈刃(22)とほぼ同じ高さであることが看取される。
d 背面風の奏する負圧吸引作用について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、図4に示す例において、刈り取り直後、茶葉Aが刈刃22の後方側に引き寄せられる現象がみられ、これは、刈刃22の後方から背面風Wを吹き出すことにより、背面風Wの吹出口38近傍に負圧が形成され、茶葉Aが刈刃部分から吹出口38側に引き寄せられるものと考えられ、これを背面風Wの負圧吸引作用と称することが記載されている。(上記1(5)段落【0051】)
e 背面風「のみ」が移送ダクトに送り込まれることについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、図1~4に示した実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送するものであることが記載され(上記1(5)段落【0051】)、図5、8に示すように背面風Wに加えて、正面風W1を補助的に作用させるものや図7(b)に示すような刈刃22の前方側に、正面ダクト9による分岐ノズル47を設け、刈刃前方からの送風を補助的に行うものが、本件訂正発明の参考例であることが記載されている。(上記1(5)段落【0052】、1(6)段落【0058】、1(7)段落【0064】)。また、本件図面の図1において移送ダクトへの圧力風の吹出口として吹出口38のみが描かれている。
f 背面風を移送ダクトに送り込む位置が刈刃の「直後方」であることについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、背面風Wの負圧吸引作用を効率的に利用するには、刈刃22の直後方から背面風Wを作用させる構成が好ましいと考えられることが記載されている。(上記1(6)段落【0058】)
g そうすると、本件特許明細書には、本件訂正発明1の茶葉の移送方法に係る発明が記載されている。
h そして、当業者は、本件訂正発明1が「刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにした」ことで、「摘採機の前後寸法の短縮化を図」るという本件訂正発明の課題を解決することができると認識することができる。
(イ)本件訂正発明7について
a 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、茶枝葉の移送装置について、
茶枝葉Aの移送装置5は、刈り取った茶葉Aを所定の位置に向けて移送する部位であり、
茶葉Aの移送は空気流、つまりダクト内に圧力風を送り込んで収容部4に移送するものであり、移送ダクト6と背面ダクト7とを主要部材として成り、
移送ダクト6は、刈り取り直後の茶葉Aを収容部4まで上昇移送するものであり、
背面ダクト7は、刈刃22の後方側から移送ダクト6内に背面風Wを送り込むダクトであり、背面風Wを移送ダクト6内に送り込む吹出口38が設けられることが記載される。(上記1(4)段落【0040】~【0045】)
b そして、上記(ア)bないしfの事項を踏まえると、本件特許明細書には、本件訂正発明7の茶葉の移送装置に係る発明が記載されている。
c そして、上記(ア)hで検討したのと同様の理由により、当業者は、本件訂正発明7が、本件訂正発明の課題を解決することができると認識することができる。
(ウ)本件訂正発明13について
a 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、茶刈機について、
本発明の移送手法そのものは、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業にも利用でき、「茶刈機」とは、摘採(摘採機)と剪枝(剪枝機)とを総称するものであること、及び、
本発明の移送手法を適用した茶畝跨走型摘採機1は、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体2と、この走行機体2によって茶畝T上面に位置するように支持される摘採機体3と、摘採機体3の後方に設けられ摘採した茶葉Aを収容する収容部4と、摘採した茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで移送する移送装置5とを具えることが記載されている。(上記1(3)段落【0030】~【0031】)
b そして、上記(イ)の検討を踏まえると、本件特許明細書には、
茶畝(T)を跨いで走行する走行機体(2)と、
この走行機体(2)に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、
この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部(4)と、
刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を茶刈機体から収容部(4)まで移送する移送装置(5)とを具え、
目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした茶刈機であって、本件訂正発明7の茶葉の移送装置が適用されて成る茶刈機に係る発明が記載されている。
c そして、上記(ア)hで検討したのと同様の理由により、当業者は、本件訂正発明7を引用する本件訂正発明13が、本件訂正発明の課題を解決することができると認識することができる。
(2)請求人の主張について
ア 請求人の主張
請求人は、請求書において、訂正前の発明である本件発明1、7及び13について、概略以下の主張をしている。なお、訂正後の発明である本件訂正発明1、7及び13のサポート要件(無効理由3)については、請求人は特に主張をしていない。
(ア)本件発明の課題は、“刈り取った茶枝葉を水平移送させずに上方等に移送することで、摘採機の前後寸法の短縮化を図り、摘採機をコンパクトに構成できるようにすること”にあるが、甲1発明と相違する事項である「前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定される」という構成事項は、摘採機の前後寸法には関与しないことが明らかであり、また、甲1発明のように背面風で茶枝葉を移送するだけでは摘採機の前後寸法を短縮化できないことも明らかであるから、課題解決手段が本件発明1、7に反映されていない。
(イ)本件特許明細書に記載された本件発明の実施例の中には、図7(b)に示される実施例のように、摘採機の前後寸法の短縮化を図ることが考慮されていないものがあり、このような実施例を包含するように特定された本件の前述した請求項の記載が、本件特許明細書に記載された発明の課題を解決するための手段を反映していないことは明らかである。
(ウ)本件請求項1,7の記載は、本件特許の図7(b)とは異なる『「背面風」以外の「圧力風」の構成』を含むこととなるが、上記の発明とは異なる『「背面風」以外の「圧力風」の構成』を包含していることで、発明の詳細な説明に記載された発明を超える権利範囲が請求されている。
イ 請求人の主張の検討
上記主張について検討する。
(ア)課題解決手段の本件訂正発明1、7への反映について
上記ア(ア)の主張は「前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定される」という構成についてのみ着目するものであるが、上記(1)で検討したとおり、本件訂正発明1及び本件訂正発明7は、その全体でみると本件特許の課題を解決することができるものである。
(イ)【図7】(b)の実施例について
【図7】(b)は、訂正前の特許請求の範囲に記載された発明である本件発明1及び7において実施例とされていたところ、訂正後の特許請求の範囲に記載された発明である本件訂正発明1及び7においては、参考例となったので、【図7】(b)が本件発明1及び7の実施例であることを根拠とする主張は、採用することができない。
(ウ)「背面風」以外の「圧力風」の包含について
本件訂正発明1及び7においては、「刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するにあたっては、負圧吸引作用を奏する背面風(W)のみを前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むことによって、茶枝葉(A)の移送を行うようにした」ものであり、刈刃(22)から所定の位置までは背面風のみで移送されるものであるから、「背面風」以外の「圧力風」の構成を包含しているものではなく、請求人の上記主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件訂正発明1、7及び本件訂正発明7を引用する本件訂正発明13は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
第7 むすび
上記第6で検討したとおり、本件訂正発明1、7及び13についての特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものではなく、本件訂正発明1ないし3、7ないし9及び13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、本件訂正発明1、7及び13についての特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしているから、請求人の主張する無効理由には理由がない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-800116