特許異議申立
2021-700453
遊技機
- 審判番号
- 2021-700453
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-010152外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6792579
- 請求日
- 2021年05月13日
- 審決日
- 2021年12月21日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】桜田 圭
- 【権利者代理人】鈴木 洋雅
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人平木国際特許事務所
- 分類
- P1651.121-YAA(A63F) / P1651.851-YAA(A63F) / P1651.853-YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の9、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6792579号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6792579号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。
特許第6792579号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6792579号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年1月25日に特許出願されたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 2年11月10日:特許権の設定登録
令和 2年11月25日:特許掲載公報発行
令和 3年 5月13日:特許異議の申立て(特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下、単に「申立人」という))
令和 3年 7月20日:取消理由通知書
令和 3年 9月24日:訂正請求書及び意見書
令和 3年10月 1日:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 3年11月 8日:意見書(申立人)
第2 本件訂正請求について
令和3年9月24日付け訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。
1 訂正請求の内容
本件訂正は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正する以下のとおりのものである。
(1)訂正事項1
特許権者は、本件特許の請求項1に、
「前記所定表示のいずれかに関連する演出を実行する演出実行手段」とあったものを、
「前記所定表示のいずれかに関連する特別演出を実行する演出実行手段」(下線は訂正箇所を示すため合議体が付した。当該「第2 本件訂正請求について」内において以下同じ。)と訂正することを請求する。
(2)訂正事項2
特許権者は、本件特許の請求項1に、
「前記演出実行手段は、
前記複数種類の所定表示のいずれかに対してエフェクト表示を行うことによって、いずれの所定表示に関連した演出が実行されるかを示唆する示唆演出を実行可能であり、
前記示唆演出が実行されるときは、前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示の色と同系統の色の前記エフェクト表示を前記所定表示とは異なる表示に対して実行し、
前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示を振動させることが可能である、」とあったものを、
「前記演出実行手段は、
前記複数種類の所定表示のいずれかに対してエフェクト表示を行うことによって、いずれの所定表示に関連した前記特別演出が実行されるかを示唆する示唆演出を実行可能であり、
前記示唆演出が実行されるときは、前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示の色と同系統の色の前記エフェクト表示を前記所定表示とは異なる表示に対して実行し、
前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示を振動させることが可能であり、」と訂正することを請求する。
(3)訂正事項3
特許権者は、本件特許の請求項1に、上記(2)の訂正後の「前記演出実行手段は、・・・前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示を振動させることが可能であり、」の次に、
「未だ開始されていない可変表示に基づいて、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否か、および、前記有利状態に制御される場合、該有利状態の終了後に通常状態に制御される第1有利状態と、該有利状態の終了後に該通常状態より前記有利状態に制御される確率が高い確変状態に制御される第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段をさらに備え、」を加える訂正を請求する。
(4)訂正事項4
特許権者は、本件特許の請求項1に、上記(3)の訂正により加わった「未だ開始されていない可変表示に基づいて、・・・のいずれかに制御されるかを判定する判定手段をさらに備え、」の次に、
「前記所定表示手段は、前記確変状態において、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、」を加える訂正を請求する。
(5)訂正事項5
特許権者は、本件特許の請求項1に、上記(4)の訂正により加わった「前記所定表示手段は、・・・前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、」の次に、
「前記複数種類の所定表示は、前記特別演出における演出結果が前記第1有利状態に制御されることに対応した第1結果となることを示す第1所定表示と、前記特別演出における演出結果が前記第2有利状態に制御されることに対応した第2結果となることを示す第2所定表示と、を含み、」を加える訂正を請求する。
(6)訂正事項6
特許権者は、本件特許の請求項1に、上記(5)の訂正により加わった「前記複数種類の所定表示は、・・・を含み、」の次に、
「前記所定表示手段は、
前記判定対象となった可変表示に基づいて前記第1有利状態に制御されるか、前記第2有利状態に制御されるかに応じて、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第1所定表示を表示する割合と、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第2所定表示を表示する割合と、が異なり、」を加える訂正を請求する。
(7)訂正事項7
特許権者は、本件特許の請求項1に、上記(6)の訂正により加わった「前記所定表示手段は、・・・割合と、が異なり、」の次に、
「前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示を薄く表示し、前記判定対象となった可変表示における前記所定表示を、前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示より濃く表示する、」を加える訂正を請求する。
(8)訂正事項8
特許権者は、本件特許の願書に添付した明細書の【0006】に、
「 (1) 本発明の遊技機は、遊技を行うことが可能な遊技機(たとえば、パチンコ遊技機1等)であって、
互いに内容の異なる複数種類の所定表示(たとえば、第1演出結果画像PH1~第3演出結果画像PH3等)を行うことが可能な所定表示手段(たとえば、演出制御用CPU101等)と、
前記所定表示のいずれかに関連する演出(たとえば、メインキャラクタMCと敵キャラクタECがバトルを行うバトル演出等)を実行する演出実行手段(たとえば、演出制御用CPU101等)と、
を備え、
前記演出実行手段は、
前記複数種類の所定表示のいずれかに対してエフェクト表示を行うことによって、いずれの所定表示に関連した演出が実行されるかを示唆する示唆演出(たとえば、第1演出結果画像PH1~第3演出結果画像PH3がそれぞれ第1エフェクトEF1~第3エフェクトEF3に囲まれる演出等)を実行可能であり、
前記示唆演出が実行されるときは、前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示の色と同系統の色の前記エフェクト表示を前記所定表示とは異なる表示(たとえば、第1演出結果画像PH1~第3演出結果画像PH3がそれぞれ第1エフェクトEF1~第3エフェクトEF3に囲まれる演出以外に、演出表示装置9の内側における第1画面エフェクトSE1~第3画面エフェクトSE3のいずれかの表示等)に対して実行し、
前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示を振動させることが可能である、
ことを特徴とする。」とあったものを、
「 (1) 本発明の遊技機は、遊技を行うことが可能な遊技機(たとえば、パチンコ遊技機1等)であって、
互いに内容の異なる複数種類の所定表示(たとえば、第1演出結果画像PH1~第3演出結果画像PH3等)を行うことが可能な所定表示手段(たとえば、演出制御用CPU101等)と、
前記所定表示のいずれかに関連する特別演出(たとえば、メインキャラクタMCと敵キャラクタECがバトルを行うバトル演出等)を実行する演出実行手段(たとえば、演出制御用CPU101等)と、
を備え、
前記演出実行手段は、
前記複数種類の所定表示のいずれかに対してエフェクト表示を行うことによって、いずれの所定表示に関連した前記特別演出が実行されるかを示唆する示唆演出(たとえば、第1演出結果画像PH1~第3演出結果画像PH3がそれぞれ第1エフェクトEF1~第3エフェクトEF3に囲まれる演出等)を実行可能であり、
前記示唆演出が実行されるときは、前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示の色と同系統の色の前記エフェクト表示を前記所定表示とは異なる表示(たとえば、第1演出結果画像PH1~第3演出結果画像PH3がそれぞれ第1エフェクトEF1~第3エフェクトEF3に囲まれる演出以外に、演出表示装置9の内側における第1画面エフェクトSE1~第3画面エフェクトSE3のいずれかの表示等)に対して実行し、
前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示を振動させることが可能であり、
未だ開始されていない可変表示に基づいて、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否か、および、前記有利状態に制御される場合、該有利状態の終了後に通常状態に制御される第1有利状態と、該有利状態の終了後に該通常状態より前記有利状態に制御される確率が高い確変状態に制御される第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段をさらに備え、
前記所定表示手段は、前記確変状態において、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、
前記複数種類の所定表示は、前記特別演出における演出結果が前記第1有利状態に制御されることに対応した第1結果となることを示す第1所定表示と、前記特別演出における演出結果が前記第2有利状態に制御されることに対応した第2結果となることを示す第2所定表示と、を含み、
前記所定表示手段は、
前記判定対象となった可変表示に基づいて前記第1有利状態に制御されるか、前記第2有利状態に制御されるかに応じて、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第1所定表示を表示する割合と、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第2所定表示を表示する割合と、が異なり、
前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示を薄く表示し、前記判定対象となった可変表示における前記所定表示を、前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示より濃く表示する、
ことを特徴とする。」と訂正することを請求する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記所定表示のいずれかに関連する演出を実行する演出実行手段」を「前記所定表示のいずれかに関連する特別演出を実行する演出実行手段」と訂正することで、訂正前の請求項1の「前記所定表示のいずれかに関連する演出」の名称を「特別演出」と定義して、後続の構成において引用しやすくして、請求項1全体を明確にするものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「所定表示に関連した演出」を訂正事項1に対応させて「所定表示に関連した特別演出」に変更するとともに、各発明特定事項の主体が「演出実行手段」であることを明確にするためにスペースを追加し、後に構成が続くことを明瞭にするものである。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件特許の明細書の【0140】、【0148】、【0182】、【0183】、【0184】、【0185】、【0191】及び【0192】の記載に基づいて、「未だ開始されていない可変表示に基づいて、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否か、および、前記有利状態に制御される場合、該有利状態の終了後に通常状態に制御される第1有利状態と、該有利状態の終了後に該通常状態より前記有利状態に制御される確率が高い確変状態に制御される第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段をさらに備え、」という発明特定事項を付加することで、訂正前の請求項1を限定するものである。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件特許の明細書の【0184】、【0186】、【0191】、【0206】及び【0292】の記載に基づいて、「前記所定表示手段は、前記確変状態において、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、」という発明特定事項を付加することで、訂正前の請求項1の「所定表示手段」を限定するものである。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、本件特許の明細書の【0186】の記載に基づいて、「前記複数種類の所定表示は、前記特別演出における演出結果が前記第1有利状態に制御されることに対応した第1結果となることを示す第1所定表示と、前記特別演出における演出結果が前記第2有利状態に制御されることに対応した第2結果となることを示す第2所定表示と、を含み、」という発明特定事項を付加することで、訂正前の請求項1の「複数種類の所定表示」を限定するものである。
(6)訂正事項6
訂正事項6は、本件特許の明細書の【0191】及び【0192】の記載に基づいて、「前記所定表示手段は、前記判定対象となった可変表示に基づいて前記第1有利状態に制御されるか、前記第2有利状態に制御されるかに応じて、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第1所定表示を表示する割合と、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第2所定表示を表示する割合と、が異なり、」という発明特定事項を付加することで、訂正前の請求項1の「所定表示手段」を限定するものである。
(7)訂正事項7
訂正事項7は、本件特許の明細書の【0206】、【0207】及び図15の記載に基づいて、「前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示を薄く表示し、前記判定対象となった可変表示における前記所定表示を、前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示より濃く表示する、」という発明特定事項を付加することで、訂正前の請求項1の「所定表示手段」を限定するものである。
(8)訂正事項8
訂正事項8は、上記訂正事項1ないし7による訂正により、訂正前の請求項1を訂正した結果、訂正前の明細書の【0006】の記載を、訂正後の請求項1に整合させるための訂正である。
(9)上記(1)ないし(8)のとおりであるから、請求項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とし、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(10)小括
上記(1)ないし(9)のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ない8は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第4項の規定に適合し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の明細書、特許請求の範囲について訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、請求項1に係る特許は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。
【請求項1】
A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 互いに内容の異なる複数種類の所定表示を行うことが可能な所定表示手段と、
C 前記所定表示のいずれかに関連する特別演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D 前記演出実行手段は、
E 前記複数種類の所定表示のいずれかに対してエフェクト表示を行うことによって、いずれの所定表示に関連した前記特別演出が実行されるかを示唆する示唆演出を実行可能であり、
F 前記示唆演出が実行されるときは、前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示の色と同系統の色の前記エフェクト表示を前記所定表示とは異なる表示に対して実行し、
G 前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示を振動させることが可能であり、
H 未だ開始されていない可変表示に基づいて、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否か、および、前記有利状態に制御される場合、該有利状態の終了後に通常状態に制御される第1有利状態と、該有利状態の終了後に該通常状態より前記有利状態に制御される確率が高い確変状態に制御される第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段をさらに備え、
I 前記所定表示手段は、前記確変状態において、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、
J 前記複数種類の所定表示は、前記特別演出における演出結果が前記第1有利状態に制御されることに対応した第1結果となることを示す第1所定表示と、前記特別演出における演出結果が前記第2有利状態に制御されることに対応した第2結果となることを示す第2所定表示と、を含み、
K 前記所定表示手段は、
L 前記判定対象となった可変表示に基づいて前記第1有利状態に制御されるか、前記第2有利状態に制御されるかに応じて、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第1所定表示を表示する割合と、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第2所定表示を表示する割合と、が異なり、
M 前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示を薄く表示し、前記判定対象となった可変表示における前記所定表示を、前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示より濃く表示する、
N ことを特徴とする遊技機。
なお、AないしNは分説するため合議体が付した。A等が付された事項を以下「特定事項A」等という。
第4 特許異議の申立てについて
特許異議の申立ての理由及び令和3年7月20日付け取消理由通知に記載された取消理由の概要は以下のとおりである。
本件訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開2017-23829号公報
甲第2号証:特開2017-189424号公報
甲第3号証:特開2018-317号公報
甲第4号証:特開2016-10696号公報
甲第5号証:特開2017-79991号公報
(以下、甲第1号証ないし甲第5号証をそれぞれ「甲1」ないし「甲5」という。)
第5 当合議体の判断
1 特許異議申立ての理由及び取消理由通知に記載した取消理由について
(1)甲1
申立人が提出した甲1であり、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された特開2017-23829号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技を行うことが可能なパチンコ遊技機やスロット機等の遊技機に関する。」
イ 「【課題を解決するための手段】
【0010】
(手段1)本発明による遊技機は、遊技を行うことが可能であるとともに、有利度合いが異なる複数種類の遊技状態(例えば、8R通常大当り、8R確変大当り、または16R確変大当りにもとづく大当り遊技状態)に制御することが可能な遊技機であって、特定演出(例えば、大勝利演出、昇格演出、大復活演出、勝利演出、復活演出、敗北演出)を実行する特定演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS3912~S3922,S3924,S2903を実行する部分)と、特定演出の実行中に、複数の演出結果対応画像(例えば、「大勝利」、「勝利」、または「敗北」の文字列を含む画像)を表示した後いずれか1つの演出結果対応画像を選択表示する演出結果対応画像表示手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS3911,S2907~S2913を実行する部分)とを備え、演出結果対応画像表示手段は、有利度合いが高い遊技状態となる場合と有利度合いが低い遊技状態となる場合とで異なる割合により異なる演出結果対応画像を選択表示し、有利度合いが高い遊技状態となる場合に、高い有利度合いに対応した演出結果対応画像を選択表示する場合と、低い有利度合いに対応した演出結果対応画像を選択表示する場合とがあることを特徴とする。そのような構成によれば、特定演出の演出結果を遊技者に明確に伝えることができ、遊技者による特定演出の演出結果の理解度を向上させることができる。
【0011】
(手段2)手段1において、演出結果対応画像表示手段は、特定演出の演出状況に応じて演出結果対応画像の表示態様を変化させる(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、ステップS2909を実行して、最終的に確定表示される演出結果画像を拡大表示する制御を行う)ように構成されていてもよい。そのような構成によれば、演出結果対応画像の表示態様の変化により、特定演出の展開を更にわかりやすくすることができる。」
ウ 「【0121】
図5に示された遊技制御処理におけるステップS25では、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、(1)の大当り種別判定用乱数、および(4)の普通図柄当り判定用乱数を生成するためのカウンタのカウントアップ(1加算)を行う。すなわち、それらが判定用乱数であり、それら以外の乱数が表示用乱数(ランダム2、ランダム3)または初期値用乱数(ランダム5)である。なお、遊技効果を高めるために、上記の乱数以外の乱数も用いてもよい。また、この実施の形態では、大当り判定用乱数として、遊技制御用マイクロコンピュータ560に内蔵されたハードウェア(遊技制御用マイクロコンピュータ560の外部のハードウェアでもよい。)が生成する乱数を用いる。なお、大当り判定用乱数として、ハードウェア乱数ではなく、ソフトウェア乱数を用いてもよい。
【0122】
図7は、大当り判定テーブルを示す説明図である。大当り判定テーブルとは、ROM54に記憶されているデータの集まりであって、ランダムRと比較される大当り判定値が設定されているテーブルである。大当り判定テーブルには、通常状態(確変状態でない遊技状態)において用いられる通常時大当り判定テーブルと、確変状態において用いられる確変時大当り判定テーブルとがある。通常時大当り判定テーブルには、図7の左欄に記載されている各数値が設定され、確変時大当り判定テーブルには、図7の右欄に記載されている各数値が設定されている。図7に記載されている数値が大当り判定値である。
【0123】
CPU56は、所定の時期に、乱数回路503のカウント値を抽出して抽出値を大当り判定用乱数(ランダムR)の値とするのであるが、大当り判定用乱数値が図7に示すいずれかの大当り判定値に一致すると、特別図柄に関して大当り(後述する8R通常大当り、8R確変大当り、16R確変大当り)にすることに決定する。なお、図7に示す「確率」は、大当りになる確率(割合)を示す。また、大当りにするか否か決定するということは、大当り遊技状態に移行させるか否か決定するということであるが、第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bにおける停止図柄を大当り図柄にするか否か決定するということでもある。
【0124】
図8(A),(B)は、ROM54に記憶されている大当り種別判定テーブル131a,131bを示す説明図である。このうち、図8(A)は、遊技球が第1始動入賞口13に入賞したことにもとづく保留記憶を用いて(すなわち、第1特別図柄の変動表示が行われるとき)大当り種別を決定する場合の大当り種別判定テーブル(第1特別図柄用)131aである。また、図8(B)は、遊技球が第2始動入賞口14に入賞したことにもとづく保留記憶を用いて(すなわち、第2特別図柄の変動表示が行われるとき)大当り種別を決定する場合の大当り種別判定テーブル(第2特別図柄用)131bである。
【0125】
大当り種別判定テーブル131a,131bは、可変表示結果を大当り図柄にする旨の判定がなされたときに、大当り種別判定用の乱数(ランダム1)にもとづいて、大当りの種別を「8R通常大当り」、「8R確変大当り」、「16R確変大当り」のうちのいずれかに決定するために参照されるテーブルである。
【0126】
なお、この実施の形態では、図8(A)に示すように、第1特別図柄の変動表示が行われる場合には、「16R確変大当り」に対して10個の判定値が割り当てられているのに対して、図8(B)に示すように、第2特別図柄の変動表示が行われる場合には、「16R確変大当り」に対して20個の判定値が割り当てられている。従って、この実施の形態では、第2特別図柄の変動表示が実行される場合には、第1特別図柄の変動表示が実行される場合と比較して、「16R確変大当り」に決定される割合が若干高い。
【0127】
この実施の形態では、図8(A),(B)に示すように、大当り種別として、「8R通常大当り」、「8R確変大当り」および「16R確変大当り」がある。
【0128】
「8R確変大当り」とは、8ラウンドの大当り遊技状態に制御し、1ラウンドあたり29秒の長期間にわたって大入賞口を開放し、その大当り遊技状態の終了後に確変状態(高確率状態)に移行させる大当りである(この実施の形態では、確変状態に移行されるとともに時短状態にも移行される。後述するステップS167,S168参照)。そして、確変状態に移行した後、次の大当りが発生するまで確変状態が維持される(後述するステップS132参照)。
【0129】
また、「16R確変大当り」とは、16ラウンドの大当り遊技状態に制御し、1ラウンドあたり29秒の長期間にわたって大入賞口を開放し、その大当り遊技状態の終了後に確変状態(高確率状態)に移行させる大当りである(この実施の形態では、確変状態に移行されるとともに時短状態にも移行される。後述するステップS167,S168参照)。そして、確変状態に移行した後、次の大当りが発生するまで確変状態が維持される(後述するステップS132参照)。従って、この実施の形態では、16R確変大当りは、大当り遊技中のラウンド数が多い点(大入賞口の開放回数が多い点)で8R確変大当りよりも有利である。
【0130】
また、「8R通常大当り」とは、8ラウンドの大当り遊技状態に制御し、1ラウンドあたり29秒の長期間にわたって大入賞口を開放し、その大当り遊技状態の終了後に確変状態に移行されず、時短状態にのみ移行される大当りである(後述するステップS169参照)。そして、時短状態に移行した後、特別図柄および演出図柄の変動表示の実行を所定回数(例えば、100回)終了するまで時短状態が維持される(後述するステップS137~S140参照)。なお、この実施の形態では、時短状態に移行した後、所定回数の変動表示の実行を終了する前に大当りが発生した場合にも、時短状態が終了する(後述するステップS132参照)。
【0131】
大当り種別判定テーブル131a,131bには、ランダム1の値と比較される数値であって、「8R通常大当り」、「8R確変大当り」、「16R確変大当り」のそれぞれに対応した判定値(大当り種別判定値)が設定されている。CPU56は、ランダム1の値が大当り種別判定値のいずれかに一致した場合に、大当りの種別を、一致した大当り種別判定値に対応する種別に決定する。」
エ 「【0320】
次いで、第7ラウンド中の演出結果画像の拡大タイミングとなると(ステップS2908参照)、「大勝利」、「勝利」または「敗北」の3種類の演出結果画像のうち、特定演出の演出結果に対応した演出結果画像が拡大表示される(ステップS2909参照)。例えば、特定演出として大勝利演出を実行する場合であれば「大勝利」の演出結果画像が拡大表示され、勝利演出を実行する場合であれば「勝利」の演出結果画像が拡大表示され、敗北演出を実行する場合であれば「敗北」の演出結果画像が拡大表示される。ただし、この実施の形態では、特定演出として昇格演出が実行される場合であれば「勝利」の演出結果画像が拡大表示され、恰も特定演出の演出結果が「勝利」となるかのような表示がなされる。また、特定演出として大復活演出や復活演出が実行される場合であれば「敗北」の演出結果画像が拡大表示され、恰も特定演出の演出結果が「敗北」となるかのような表示がなされる。」
オ 上記アないしエから、甲1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「a 遊技を行うことが可能な遊技機(【0001】)であって、
b 特定演出の実行中に、複数の演出結果対応画像である「大勝利」、「勝利」、または「敗北」の文字列を含む画像のいずれか1つの演出結果対応画像を選択表示する演出結果対応画像表示手段(【0010】)と、
c 特定演出である、大勝利演出、昇格演出、大復活演出、勝利演出、復活演出、敗北演出を実行する特定演出実行手段(【0010】)と、
を有する演出制御用マイクロコンピュータ100(【0010】)を備え、
d 前記演出制御用マイクロコンピュータ100は、
e 特定演出の演出状況に応じて演出結果対応画像の表示態様を変化させ、最終的に確定表示される演出結果画像を拡大表示する制御を行う(【0011】)、すなわち、「大勝利」、「勝利」または「敗北」の3種類の演出結果画像のうち、特定演出の演出結果に対応した演出結果画像が拡大表示し(【0011】、【0320】)、
h 大当り判定用乱数値がいずれかの大当り判定値に一致すると、特別図柄に関して、大当り遊技状態の終了後に確変状態(高確率状態)に移行されない8R通常大当り、大当り遊技状態の終了後に確変状態に移行させる8R確変大当り又は16R確変大当りにすることに保留記憶を用いて決定する(【0123】、【0124】、【0128】ないし【0130】)、
n 遊技機(【0001】)。」(以下「甲1発明」という。)
(2)甲2
申立人が提出した甲2であり、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された特開2017-189424号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機に関し、特に、識別情報の変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機に関する。」
イ 「【0013】
(4) 前記(1)~前記(3)のいずれかの遊技機において、
所定画像(青枠画像11a,緑枠画像11b,赤枠画像11c等)を表示する所定演出(枠画像演出等)を実行可能な所定演出実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100等)をさらに備え、
前記所定演出実行手段は、前記特定演出で導出表示される前記特定組合せを構成する識別情報の種類、および前記特別演出として一旦仮停止表示される識別情報の組合せを構成する識別情報の種類のいずれかに対応した態様の前記所定画像を表示する(図3(b)~(f)に示すように、同色図柄先読み演出や擬似連演出の図柄色と同じ色で枠画像を表示する等)。
【0014】
このような構成によれば、特定演出や特別演出の演出効果を高め、演出の興趣を向上することができる。」
ウ 上記ア及びイからみて、甲2には、次の事項が記載されているものと認められる。
「a パチンコ遊技機等の遊技機であって(【0001】)、
e 所定画像(青枠画像11a、緑枠画像11b、赤枠画像11c等)を表示する所定演出(枠画像演出等)を実行可能な所定演出実行手段(演出制御用マイクロコンピュータ100等)を備え、前記所定演出実行手段は、前記特定演出で導出表示される前記特定組合せを構成する識別情報の種類、および前記特別演出として一旦仮停止表示される識別情報の組合せを構成する識別情報の種類のいずれかに対応した態様の前記所定画像を表示する、具体的には、同色図柄先読み演出や擬似連演出の図柄色と同じ色で枠画像を表示することにより(【0013】)、特定演出や特別演出の演出効果を高め、演出の興趣を向上させた(【0014】)、
g 遊技機(【0001】)。」(以下「甲2記載の技術事項」という。)
(3)甲3
申立人が提出した甲3であり、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された特開2018-317号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機に関する。」
イ 「【0151】
図18は、キャラクタ「箱」を用いて保留表示Hの表示が行われる場合の表示例を示している。例えば図18(A)に示すように、飾り図柄の可変表示が行われているときに、保留表示部18cには保留番号「1」~「4」の保留表示Hがあり、いずれの保留表示Hも保留表示部18cに含まれる第1表示部18c1にて表示されている。このとき第1始動入賞または第2始動入賞の発生に伴い、第2表示部18c2にて新たな保留表示Hが開始されるときには、例えば図18(B)に示すように、保留番号「5」に対応する表示部位にて、キャラクタ「箱」を示す演出画像の表示を、保留表示画像HGPを用いた保留表示Hとする。このときには、キャラクタ「箱」を示す表示に用いられたキャラクタ画像DG1をそのまま用いて保留表示Hとしてもよいし、キャラクタ画像DG1とは異なる演出画像を用いて保留表示Hとしてもよい。保留表示Hを表示する場合には、例えばキャラクタ「箱」の振動を示す表示といった、演出画像を用いたエフェクト表示などにより、保留表示Hが表示されていることを認識可能にすればよい。」
(4)甲4
申立人が提出した甲4であり、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された特開2016-10696号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機に関する。」
イ 「【0330】
例えば、第1始動条件の成立によるある保留情報について、保留表示予告演出の実行タイミングとして「保留1個消化タイミング」を決定し、続いて、図28または図29の設定例に従って先読み予告パターンの決定処理(ステップS713)を行った結果、例えば「HHP2」が選択された場合には、RAM122などに設けられる先読み予告パターン記憶用のバッファなどに、「保留1個消化タイミング」にて保留表示予告演出を実行する旨の情報と、ステップS713にて決定した「HHP2」と、当該第1始動条件の保留情報を記憶するバッファ番号とをセットし、先読み予告実行中フラグをオン状態とする。保留表示を追加するタイミングでは、「保留1個消化タイミング」にて保留表示予告演出を実行する旨の情報がセットされているため、当該保留情報の保留表示として第1始動入賞記憶表示エリア5HLに初期色(白色)の保留表示を追加する。その後、当該保留表示を最初に移動させるときに(ステップS627、ステップS628を実行するとき)、「保留1個消化タイミング」にて保留表示予告演出を実行する旨の情報と、ステップS713にて決定した「HHP2」とに基づいて、保留表示を初期色(白色)から青色にて変更すればよい。なお、保留表示の変更に際し、例えば、保留表示の変更を示唆する演出(例えば、表示色の変更前に保留表示を動作(例えば振動)させる演出、音声による演出)を付加してもよい。なお、「保留2個消化タイミング」を決定した後に「HHP1」以外の保留表示パターンが選択された場合も同様である。」
(5)甲5
申立人が提出した甲5であり、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された特開2017-79991号公報には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関するものである。」
イ 「【0122】
また、例えば、図17(c)に示すように、演出用役物装置31の可動部31a、31b及び演出用役物装置32の可動部32a、32bの作動に合わせて、画像表示装置7の画像表示領域とされる第2の画像表示領域62を同一比率で縮小したうえで小刻みに振動させたり、図17(d)に示すように演出用役物装置31の可動部31bと演出用役物装置32の可動部32aの作動に合わせて、画像表示装置7の画像表示領域とされる第2の画像表示領域62を一方向(この場合は時計回り方向)に回転させたりすることも可能である。」
ウ 「【0132】
このような本実施形態の遊技機1では、演出用役物装置31、32の作動に合わせて画像表示装置7の画像表示領域を第1の画像表示領域61から第2の画像表示領域62に縮小(又は拡大)したり、第2の画像表示領域62から第1の画像表示領域61に拡大(又は縮小)したりする遊技演出を実現することが可能になる。
また、本実施形態の遊技機1では、図17に示したように、画像表示装置7の画像表示領域の一方だけを縮小したり、画像表示領域を振動させたり、或いは画像表示領域を回転させたりすることもできるので、面白みのある遊技演出を実現することができる。」
(6)周知の事項
上記(3)ないし(5)からみて、以下の事項が周知であると認められる。
「エフェクト表示として、所定表示を振動させることにより、演出効果を高める、遊技機。」(以下「周知技術」という。)
(7)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 本件発明の特定事項A、Nについて
甲1発明の「遊技を行うことが可能な遊技機」は、本件発明の「遊技を行うことが可能な遊技機」に相当する。
そうすると、甲1発明のa、nは、それぞれ本件発明の特定事項A、Nに相当する。
イ 本件発明の特定事項Bについて
甲1発明の「複数種類の演出結果対応画像」は、「大勝利」、「勝利」、または「敗北」の文字列を含む画像であるから、本件発明の「互いに内容の異なる複数種類の所定表示」に相当する。
また、甲1発明のbの「複数の演出結果対応画像である「大勝利」、「勝利」、または「敗北」の文字列を含む画像のいずれか1つの演出結果対応画像を選択表示する演出結果対応画像表示手段」は、本件発明の「互いに内容の異なる複数種類の所定表示を行うことが可能な所定表示手段」に相当する。
そうすると、甲1発明のbは、本件発明の特定事項Bに相当する。
ウ 本件発明の特定事項Cについて
甲1発明は、複数の演出結果対応画像(所定表示)である「大勝利」、「勝利」又は「敗北」のうち、いずれか1つの演出結果対応画像を選択表示するものであって、その際の「いずれか1つの演出結果対応画像を選択表示する」ことは、選択された演出結果対応画像(所定表示)に関連する大勝利演出、勝利演出又は敗北演出等を実行する、すなわち、本件発明の「所定表示のいずれかに関連する演出を実行」することに相当する。
そうすると、甲1発明のcの「特定演出である、大勝利演出、昇格演出、大復活演出、勝利演出、復活演出、敗北演出を実行する特定演出実行手段」は、本件発明の特定事項Cの「前記所定表示のいずれかに関連する演出を実行する演出実行手段」に相当する。
エ 本件発明の特定事項D、Eについて
上記ウからみて、甲1発明の「d 前記演出制御用マイクロコンピュータ100」が本件発明の「D 前記演出実行手段」を備えることは明らかである。
また、甲1発明のeの「特定演出の演出状況に応じて演出結果対応画像の表示態様を変化させ、最終的に確定表示される演出結果画像を拡大表示する」ことは、演出結果対応画像(所定表示)に関連して有利度合いの高低について遊技者に期待を与える演出の態様、すなわち示唆演出を示しているものであるから、本件発明の特定事項Eの「いずれの所定表示に関連した演出が実行されるかを示唆する示唆演出を実行可能であ」ることを含む。
また、甲1発明の「特定演出の演出状況に応じて演出結果対応画像の表示態様を変化させ、最終的に確定表示される演出結果画像を拡大表示する制御を行う」ことは、一般に、音声や画像に対して加工処理を施し、何らかの効果を追加することを「エフェクト」と称することが技術常識であることを踏まえると、本件発明の特定事項Eの「前記複数種類の所定表示のいずれかに対してエフェクト表示を行うこと」を含む。
そうすると、甲1発明のd、eは、本件発明の特定事項D、Eを備えている。
オ 甲1発明のhの「大当り遊技状態の終了後に確変状態(高確率状態)に移行されない8R通常大当り」、「大当り遊技状態の終了後に確変状態に移行させる8R確変大当り又は16R確変大当り」は、それぞれ本件発明の「該有利状態の終了後に通常状態に制御される第1有利状態」、「該有利状態の終了後に該通常状態より前記有利状態に制御される確率が高い確変状態に制御される第2有利状態」に相当する。
また、甲1発明のhにおいて、大当り遊技状態の終了後に確変状態(高確率状態)に移行されない8R通常大当り(第1有利状態)、大当り遊技状態の終了後に確変状態に移行させる8R確変大当り又は16R確変大当り(第2有利状態)に決定する際に保留記憶を用いているのであるから、甲1発明のhは、未だ開始されていない可変表示に基づいて、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否かを決定しているといえる。
そうすると、甲1発明のhは、本件発明の「未だ開始されていない可変表示に基づいて、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否か、および、前記有利状態に制御される場合、該有利状態の終了後に通常状態に制御される第1有利状態と、該有利状態の終了後に該通常状態より前記有利状態に制御される確率が高い確変状態に制御される第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段をさらに備え、」との特定事項に相当する。
カ 上記アないしオからみて、本件発明と甲1発明とは、
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 互いに内容の異なる複数種類の所定表示を行うことが可能な所定表示手段と、
C 前記所定表示のいずれかに関連する特別演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D 前記演出実行手段は、
E 前記複数種類の所定表示のいずれかに対してエフェクト表示を行うことによって、いずれの所定表示に関連した前記特別演出が実行されるかを示唆する示唆演出を実行可能であり、
H 未だ開始されていない可変表示に基づいて、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否か、および、前記有利状態に制御される場合、該有利状態の終了後に通常状態に制御される第1有利状態と、該有利状態の終了後に該通常状態より前記有利状態に制御される確率が高い確変状態に制御される第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段をさらに備える、
N 遊技機。」である点(以下「一致点」という。)で一致し、次の点で相違する。
・相違点1(特定事項F)
「示唆演出が実行されるときは、」
本件発明では、「前記所定表示に対して行った前記エフェクト表示の色と同系統の色の前記エフェクト表示を前記所定表示とは異なる表示に対して実行し」ているのに対し、
甲1発明では、演出結果対応画像(所定表示)に対して行った拡大表示(エフェクト表示)の色と同系統の色のエフェクト表示を前記演出結果対応画像(所定表示)とは異なる表示に対して実行しているかどうかが明らかでない点。
・相違点2(特定事項G)
「所定表示に対して行ったエフェクト表示を」
本件発明では、「振動させることが可能である」のに対し、
甲1発明では、「振動させることが可能である」かどうかが明らかでない点。
・相違点3(特定事項IないしM)
「所定表示手段」に関し、
本件発明では、
「前記所定表示手段は、前記確変状態において、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、
前記複数種類の所定表示は、前記特別演出における演出結果が前記第1有利状態に制御されることに対応した第1結果となることを示す第1所定表示と、前記特別演出における演出結果が前記第2有利状態に制御されることに対応した第2結果となることを示す第2所定表示と、を含み、
前記所定表示手段は、
前記判定対象となった可変表示に基づいて前記第1有利状態に制御されるか、前記第2有利状態に制御されるかに応じて、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第1所定表示を表示する割合と、該判定対象となった可変表示が開始される以前に前記第2所定表示を表示する割合と、が異なり、
前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示を薄く表示し、前記判定対象となった可変表示における前記所定表示を、前記判定対象となった可変表示が開始される以前の前記所定表示より濃く表示する」のに対し、
甲1発明では、そのような特定がなく、特に「大勝利」、「勝利」、または「敗北」の文字列を含む画像のいずれか1つの演出結果対応画像(所定表示)を選択表示するものであるが、「確変状態において」且つ「判定対象となった可変表示が開始される以前に」「表示可能であ」るとの特定がない点。
(8)本件発明についての判断
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
ア 甲1発明は、「大勝利」、「勝利」、または「敗北」の文字列を含む画像のいずれか1つの演出結果対応画像(所定表示)を選択表示するものであるが、「確変状態において」且つ「判定対象となった可変表示が開始される以前に」「表示可能であ」るとの特定がないものである。
イ それに加え、甲1の実施形態を参酌しても、「大勝利」、「勝利」、または「敗北」の文字列を含む画像のいずれか1つの演出結果対応画像(所定表示)を表示するのは、大当り遊技中の第7ラウンドであり(甲1の【0319】、【0320】)、確変状態でも、可変表示の開始される前の状態でもない。
ウ さらに、上記相違点3に係る本件発明の特定事項のうち、特に特定事項Iの「前記所定表示手段は、前記確変状態において、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、」は、甲2ないし甲5にも記載がなく、周知であるともいえない。
エ してみると、本件発明は、特定事項Iを含み、さらに該特定事項Iと関連する特定事項JないしLを備えるものであるから、甲1発明、甲2記載の技術事項及び甲3ないし甲5等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるということができない。
オ したがって、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明の構成となすことは当業者が甲2記載の技術事項及び周知技術に基づいて容易になし得たものではない。
カ よって、相違点1及び2の容易想到性について検討するまでもなく、本件発明は、甲1に記載された発明、甲2記載の技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(9)小括
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によって請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立人の主張について
(1)令和3年11月8日付け意見書の「(2)意見の具体的な内容」(意見書2ページ11行ないし6ページ9行)において申立人は以下のとおり概ね主張している。
「以下、訂正事項6についての意見の具体的な内容について述べる。
・・・略・・・
以上の明細書等の記載からすると、本件特許の実施の態様として、本件特許の訂正事項6に係る「前記所定表示手段は、第1有利状態に制御されるか、第2有利状態に制御されるかに応じて、第1所定表示を表示する割合と第2所定表示を表示する割合と、が異なり」との技術的事項は、「変動種別に応じて、図13(A)に示す先読み予告演出なしと予告演出有の場合の決定割合のとおりに先読み結果を選択、決定」し、「また、決定された先読み予告演出なしと予告演出有の場合の先読み結果に応じて、図13(B)に示す所定表示を決定」したときの状態をただ単に記述していると解するしかない。
そうすると、訂正事項6に係る前記技術的事項である「第1所定表示を表示する割合と第2所定表示を表示する割合と、が異なり」という状態を得るためには、先読み予告演出のための手段が介在することが必要となり、まさにそれが特許請求の範囲に反映されて記載されるべき解決手段ということになる。
しかし、訂正事項6に係る前記技術的事項は、そのような先読み予告演出手段を限定しておらず、それを介在しないものを含んでいるので、明細書に記載した事項の範囲内における技術的事項には当たらない。
したがって、少なくとも、明細書等に記載された、変動種別により、先読み予告演出の有無と先読み結果とを決定することや、先読み予告演出の有無と先読み結果、すなわち先読み結果等とにより所定表示が決定されることを、本件特許発明の解決手段として特許請求の範囲の記載に明確に反映させない限り、前記機能を果たす所定表示手段の外延は、本件特許の明細書等に記載された事項の範囲を超えることとなる。
したがって、訂正事項6に係る「前記所定表示手段」は、本件特許明細書等に記載されている事項の範囲内におけるものではなく(新規事項)、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるので、訂正事項6は、特許法第120条の9において準用する同第126条第5項及び第6項の規定に適合するものではない。
よって、本件訂正は、不適法な訂正であり、認められるべきではない。」
(2)申立人の主張について検討する。
本件発明は、「未だ開始されていない可変表示に基づいて、・・・第1有利状態と、・・・第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段を・・・備え、」(特定事項H)(下線は合議体が付した。以下同様。)、「前記所定表示手段は、前記確変状態において、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、前記複数種類の所定表示のうち少なくとも一部を表示可能であり、」(特定事項I)、「前記複数種類の所定表示は、前記特別演出における演出結果が前記第1有利状態に制御されることに対応した第1結果となることを示す第1所定表示と、前記特別演出における演出結果が前記第2有利状態に制御されることに対応した第2結果となることを示す第2所定表示と、を含み、」と特定されている。
このような本件発明の特定によれば、未だ開始されていない可変表示に基づいて、第1有利状態と第2有利状態と、のいずれかに制御されるかを判定する判定手段を備え、所定表示手段は、前記判定手段による判定結果に基づいて、判定対象となった可変表示が開始される以前に、第1所定表示又は第2所定表示を表示可能なものであり、「先読み」の文言が明示されていないとしても、先読み結果等により所定表示を決定する、すなわち、先読み予告演出のための手段を実質的に備えるといえる。
してみると、訂正事項6に係る「前記所定表示手段」は、本件特許明細書等に記載されている事項の範囲内におけるものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項6は、特許法第120条の9において準用する同第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであり、申立人の主張を採用することができない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700453