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特許異議申立

2021-700389

セルロースナノファイバーの製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法

審判番号
2021-700389
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-240754
登録番号
6776111
請求日
2021年04月27日
審決日
2022年02月08日
公報発行日
2022年05月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大王製紙株式会社
  • 【権利者代理人】天野 一規
  • 【異議申立人】戸塚 清貴
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 平野 崇
  • 審判官 井上 茂夫
分類
P1651.121-YAA(D01F) / P1651.537-YAA(D01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6776111号発明「セルロースナノファイバーの製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6776111号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを認める。 特許第6776111号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6776111号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成28年12月12日に出願され、令和2年10月9日にその特許権の設定登録がされ、同年10月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年4月27日に特許異議申立人戸塚清貴(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年7月16日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年9月10日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)がされ、これに対して、同年11月5日に申立人より意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 本件訂正請求は、特許第6776111号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを求める、というものであって、その内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 訂正前の請求項4に「高圧ホモジナイザーを用いてスラリー中のパルプ繊維を微細化処理する工程と、上記パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーが、サニタリー配管によって移送される工程とを備え、上記スラリー固形分濃度が、0.1質量%以上8.0質量%以下であるセルロースナノファイバーの製造方法。」と記載されているのを、「高圧ホモジナイザーを用いてスラリー中のパルプ繊維を微細化処理する工程と、上記パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーが、ガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管によって上記スラリーを貯留するタンクに移送される工程とを備え、上記スラリー固形分濃度が、0.1質量%以上8.0質量%以下であるセルロースナノファイバーの製造方法。」と訂正する。 2 訂正要件の判断 (1)訂正の目的 上記訂正は、訂正前の請求項4の「サニタリー配管」について、「ガスケットを装着した継手を介して接続される」ことを特定し、微細化処理が行われたスラリーがサニタリー配管によって移送される先を、「スラリーを貯留するタンク」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項の有無 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)には、「配管6、(中略)及び配管32は、ガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管である。」(【0019】)、「タンク10及びタンク20には、スラリーが貯留される。」(【0024】)、「T3工程では、高圧ホモジナイザー5により微細化処理が行われたスラリーを、タンク20の底部へサニタリー配管によって移送してタンク20の底部から流入する。」(【0054】)ことが記載されており、サニタリー配管が「ガスケットを装着した継手を介して接続される」こと、「スラリーがタンクに貯留される」こと、「微細化処理が行われたスラリーがサニタリー配管によってタンクに移送される」ことは、いずれも本件明細書等に記載された事項の範囲内のものである。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更 上記訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正後の請求項4について訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~4を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 スラリー中のパルプ繊維を微細化処理するセルロースナノファイバーの製造装置であって、 上記スラリー中のパルプ繊維を微細化処理する高圧ホモジナイザーと、 上記高圧ホモジナイザーを用いてパルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーが貯留されるタンクと、 上記高圧ホモジナイザー及び上記タンクに連結される配管と を備え、 上記配管がガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管であるセルロースナノファイバーの製造装置。 【請求項2】 上記ガスケットがフッ素系樹脂を材料とする請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造装置。 【請求項3】 固形分濃度が0.1質量% 以上8.0質量% 以下であるスラリー中のパルプ繊維を微細化処理する請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造装置。 【請求項4】 高圧ホモジナイザーを用いてスラリー中のパルプ繊維を微細化処理する工程と、 上記パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーが、ガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管によって上記スラリーを貯留するタンクに移送される工程と を備え、 上記スラリー固形分濃度が、0.1質量%以上8.0質量%以下であるセルロースナノファイバーの製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項4に係る特許に対して、当審が令和3年7月16日付けで特許権者に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (進歩性)本件特許の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に例示される周知技術に基いて(以下、各甲号証を「甲1」等ともいう。)、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲1:特開2013-185122号公報 甲6:LEPI規格・標準委員会 液体フィードシステム部会編,「ユーザーのための液体フィードシステムガイドブック-ポンプ、バルブ、配管・継手類、サニタリーシステム-」,初版第1刷,アンクベル・ジャパン株式会社,2008年10月,p.120~131 2 当審の判断 (1)甲1、甲6の記載 ア 甲1について 甲1には、次の記載がある。 「【請求項1】 アニオン変性されたセルロースが高圧ホモジナイザーで処理されることを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。」 「【0011】 本発明において、高圧ホモジナイザーとは、ポンプにより流体に加圧(高圧)し、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させることにより、粒子間の衝突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化・分散・解細・粉砕・超微細化を行う装置である。」 「【0016】 (実施例1) パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(LBKP、日本製紙(株)製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で88g加え、パルプ固形濃度が15%になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウムを117g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.05のアニオン変性されたセルロースを得た。その後、アニオン変性したパルプを固形濃度1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で5回処理し、セルロース分散液を得た。」 以上を総合すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 (甲1発明) 「固形濃度1%のアニオン変性したパルプを高圧ホモジナイザーにより乳化・分散・解細・粉砕・超微細化処理し、セルロース分散液を得る工程を備えたセルロースナノファイバーの製造方法。」 イ 甲6について 甲6には、次の記載がある。 「5.1 サニタリーとは サニタリーの技術は乳業を起源とし、その後は飲料・食品全般・医薬品・化粧品・半導体その他の産業界のニーズのなかで発達してきたが、サニタリー(Sanitariy)とは「衛生的な」という意味であり、現在ではサニタリーパイプ、サニタリー継手、サニタリーポンプ、サニタリータンク、サニタリー撹拌機、サニタリーストレーナ、サニタリー計測器(圧力計・液面計・温度計・流量計・・・・・・)、サニタリーホース・その他等さまざまな機器にサニタリーの名が用いられている。」(第120頁第1~8行) 「(サニタリーの要件) 表面 ・機械加工、バフ研磨、BA(光輝焼鈍)、EP(電解研磨)仕上げ等によって、表面が滑らかに仕上げられている。(表面粗さが小さい。) ・・・(中略)・・・ ・液溜りや、エアーポケットのない構造(液溜り部があると、そこに残留した液が腐敗する危険性・次工程の液とコンタミを起こす可能性がある。また、液溜りやエアーポケット部では、CIPやSIPによる洗浄・殺菌が不十分になりやすい)。」(第120頁第18行~第121頁第2行) 「5.6 サニタリー配管材料 (1)サニタリーパイプ サニタリーパイプは、口径1.0S-6.5Sは前記のJIS G 3447規格品である。 小口径(8A・10A・15A)及び6.5S超の口径についてはこの規格にないため、TPと称している配管用ステンレス鋼管(JIS G 3459)のSch10Sの素管をサニタリー加工したものである。 (2)サニタリー継手 サニタリーのパイプ・エルボ・チーズ・機器等を相互に接続する方法として下記の種類がある。 ・・・(中略)・・・ <2>(当審注:<2>は丸に数字の2を意味する。以下同様。)ヘルール式(クランプユニオン継手) 分解・組立を前提とし、溶接式ヘルール+ヘルールガスケット+クランプの組合せで接続する方法。(図5.6.1-3参照)」(第126頁第8~26行) 「 [図:0001384108000001.jpg] [図:0001384108000002.jpg] 」(第127頁) 「<3>ネジ式(ネジユニオン継手) 分解・組立を前提とし、溶接式ネジスリープ+溶接式ライナ+L型ガスケット+六角ナット(または溝付丸ナット)の組み合わせで接続する方法。(図5.6.4、5参照)」(第128頁第1~3行) 「 [図:0001384108000003.jpg] 」(第128頁) 「<4>フランジ式(サニタリーフランジ継手) 分解・組立を前提とし、固定フランジ+ラップジョイント+ルーズフランジ+L型ガスケット+ボルト・ナットの組み合わせで接続する方法。(図5.6.6、7参照)」(第128頁第10~13行) 「 [図:0001384108000004.jpg] 」(第129頁) 「<6>サニタリーガスケット サニタリーガスケットは、ヘルール継手用のヘルールガスケットとネジ継手・サニタリーフランジ継手用のL型ガスケットの2種類がある。 ヘルールガスケットとL型ガスケットとは、厚みが違うため、配管施工に際しパイプ切断長さも違ってくるので注意が必要。 ガスケットの内径は、サニタリーパイプの内径と一致し、継手部に液溜りが生じないように製作されている。」(第129頁第16行~第130頁第3行) (2)対比 甲1発明の「アニオン変性したパルプ」は、本件発明4の「パルプ繊維」に相当し、甲1発明の「高圧ホモジナイザーにより乳化・分散・解細・粉砕・超微細化処理」することは、本件発明4の「高圧ホモジナイザーを用いて微細化処理する」ことに相当し、甲1発明の「セルロース分散液」は、本件発明4の「パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリー」に相当する。 甲1発明のアニオン変性したパルプが有する「固形濃度1%」は、本件発明4の「スラリー固形分濃度が、0.1質量%以上8.0質量%以下」の範囲内である。 そうすると、本件発明4と甲1発明は、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「高圧ホモジナイザーを用いてスラリー中のパルプ繊維を微細化処理する工程を備え、 スラリー固形分濃度が、0.1質量%以上8.0質量%以下であるセルロースナノファイバーの製造方法。」 <相違点> 本件発明4は、「パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーがガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管によって上記スラリーを貯留するタンクに移送される」ことが特定されているのに対し、甲1発明はセルロース分散液の移送形態や移送先について特定されていない点。 (3)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 甲6は、サニタリー配管について記載されているものの、「パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーがガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管によって上記スラリーを貯留するタンクに移送される」点は記載も示唆もない。 また、セルロースナノファイバーの製造方法として、「パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーがガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管によって上記スラリーを貯留するタンクに移送される」構成が、本件特許の出願前に周知であったとする他の証拠も提出されていない。 そうすると、本件発明4の上記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、本件発明4は、甲1発明及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 (4)申立人の主張について 申立人は、令和3年11月5日に提出された意見書において、高圧ホモジナイザーで処理することで得られたセルロース分散液を貯留タンクに一時保管することは至極一般的なことであり、貯留タンクに一時保管しない製造方法を選択する方が困難であること、甲3には、以下の高圧ホモジナイザーMODEL H301DHの写真が掲載されており、高圧ホモジナイザーとタンクが継手を有するサニタリー配管で接続された様子が示されている旨、主張する。 [図:0001384108000005.jpg] 上記主張について検討する。 機械的処理を終えた処理液を、次の工程で使用されるまでの間、貯留タンクに保管することは一般的なことであるとしても、本件発明4の「パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーがガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管によって上記スラリーを貯留するタンクに移送される」構成が、一般的であるとする証拠は提出されておらず、当該具体化された構成についてまで一般的であるか不明である。 また、甲3に記載された写真では、「サニタリー配管で接続」とされた構成が、「ガスケットを装着した継手を介して接続するサニタリー配管」であるかは判別不能であって、甲3から「パルプ繊維の微細化処理が行われたスラリーがガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管によって上記スラリーを貯留するタンクに移送される」構成を把握できない。 よって、申立人の主張は採用できない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立の理由中、取消理由に採用しなかったものは、概略以下のとおりである。 (1)(進歩性)本件訂正前の請求項1~4は、甲1及び甲2(国際公開第2015/133019号)のそれぞれに、出願当時の周知技術等を組み合わせることで、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)(サポート要件)本件訂正前の請求項1~4は、発明の詳細な説明に記載された、発明を解決するための手段が反映されているか否かを、当業者は判断することができないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができない発明である。 2 上記申立理由について検討する。 (1)進歩性について ア 甲1について 上記第4 2(1)アに記載したとおりである。 イ 甲2について 甲2には、次の記載がある。 「【0012】 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、土木作業における止水作業や、原油・ガス等の炭化水素の生産事業の過程においてその回収率を向上させるために適用することができる、セルロース繊維ナノ分散液圧入装置およびそれを用いたセルロース繊維ナノ分散液圧入方法、並びに炭化水素生産方法の提供を目的とする。」 「【0033】 (中略)高圧ホモジナイザー3(スギノマシン社製のスターバースト等)等により針葉樹起源パルプを水中で破砕し、セルロース繊維を高圧分散させた後、バルブa2、a3を開放し、必要に応じ他の添加剤も加え、上記セルロース繊維含有液を希釈し、撹拌機4により、上記セルロース繊維のナノ分散液を調製する。」 「【0076】 《実施例1~12、参考例、比較例1~5》 【0077】 〔セルロース繊維A1(実施例用)の調製〕 (中略)つぎに、上記セルロース繊維に純水を加えて2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理することにより、セルロース繊維A1を調製した。」 ウ 判断 (ア)甲1を主引用例とする申立理由について 申立人は、甲1の実施例(段落0016)には、アニオン変性したパルプを固形濃度1質量%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で5回処理し、セルロース分散液を得たことが開示されていること、高圧ホモジナイザー工程を経て得られるセルロース分散液は、当然に、タンクに貯留されるものであり、高圧ホモジナイザーとタンクは通常、配管で接続されること、高圧ホモジナイザーとタンクに連結される配管としては、サニタリー配管が常用されており、サニタリー配管がガスケットを装着した継手を介して接続されるものであることは周知の技術である旨主張する。 しかしながら、甲3~5、7には「サニタリー配管」が使用されることは明示されておらず、甲6は、サニタリー配管について記載されているものの、「高圧ホモジナイザーとタンク」との間の配管に常用されていることを示すものではない。 そうすると、本件発明1に係る「上記高圧ホモジナイザー及び上記タンクに連結される配管」が「ガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管」であることが本願出願時に周知の技術であったとは認められない。 したがって、申立人の上記主張は当を得たものではなく、甲1を主引用例とする申立理由を採用できない。 (イ)甲2を主引用例とする申立理由について 申立人は、甲2には、カルボキシメチル化セルロース繊維を高圧ホモジナイザーを用いて圧力100MPaで1回処理すること、セルロース繊維と水が供給された高圧ホモジナイザーは配管により撹拌機4に連結されており、高圧ホモジナイザー3によりセルロース繊維の微細化処理が行われた後には、スラリーが撹拌機4として示される撹拌タンクに送液されることが示されている旨主張する。 しかしながら、甲2記載の「撹拌機4」がタンクであるとしても、高圧ホモジナイザー3と撹拌機4に連結される配管が「ガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管」であることは記載されておらず、上記(ア)でも示したように、「高圧ホモジナイザーとタンクに連結される配管」が「ガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管」であることは、本願出願時に周知の技術であったとは認められない。 したがって、申立人の上記主張は当を得たものではなく、甲2を主引用例とする申立理由を採用できない。 (2)サポート要件について 申立人は、本願発明の課題は、配管の詰まりや汚染の発生を抑制し、セルロースナノファイバーの生産性の向上を図ることにあると解されるが、特定の配管を用いることによりセルロースナノファイバーの生産性が向上することが発明の詳細な説明からは理解することができず、上記課題は、発明の詳細な説明や出願時の技術常識からみて、請求項に係る発明の課題として不合理であり、請求項において、発明の詳細な説明に記載された、発明を解決するための手段が反映されているか否かを、当業者は判断することができないから、本件訂正前の発明1~4は特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができない発明である旨、主張する(特許異議申立書第22頁)。 上記申立人の主張について検討する。 本件明細書等には、次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、機械的処理でセルロースナノファイバーを製造する場合、パルプ等を水に分散させたスラリー中のパルプ繊維に対して複数回の機械的処理が必要となる。機械的処理を行った場合、機械的処理の回数を重ねるごとにセルロースファイバーが微細化されて、セルロースファイバーのスラリーの粘性が高くなることにより非常に流動性が悪くなる。このため、配管内でスラリーが壁面に付着しやすくなるとともに、排出後もスラリーの一部が配管の壁面に残留したままの状態になりやすく、配管の詰まりや汚染が生じやすくなるおそれがある。また、一般の溶接管においては、配管の溶接時に生じた異物が残留してスラリーに混入するおそれもある。従って、セルロースナノファイバーの生産性の向上を図るためには、配管の詰まりや汚染の発生を抑制することが求められる。 【0006】 本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、配管の詰まり及び汚染を抑制してセルロースナノファイバーを効率よく製造することができるセルロースナノファイバーの製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 発明者らは、セルロースナノファイバーの製造において、水分散状態のパルプ等の機械的処理の回数を重ねるごとに粘性が高くなるセルロースファイバーのスラリーを流入及び流出する配管として特定の配管を用いることにより、セルロースナノファイバーの生産性の向上を図ることができることを見出し、本発明の完成に至った。」 「【0019】 配管6、配管9、配管12、配管31、配管7、配管23、配管33、配管36、配管24、配管35、配管8、配管19、配管34、配管22及び配管32は、ガスケットを装着した継手を介して接続されるサニタリー配管である。上記配管が、サニタリー配管であることにより、粘性が非常に高く、流動性が低下して壁面に付着しやすい状態のセルロースファイバーのスラリーを流入及び流出しても、上記配管が、継ぎ目のない構造を有するとともに凹凸のない内壁面を有するので、配管の詰まりが生じやすくなるおそれを改善でき、上記高粘性のスラリーを安定して移送することができる。また、溶接管のように、溶接時に生じた異物が残留してスラリーに混入するおそれを解消できる。従って、効率よくセルロースナノファイバーを製造することができる。」 上記記載からみて、本件発明において「セルロースナノファイバーの生産性の向上を図る」という課題の解決には、配管の詰まりや汚染の発生を抑制することが必要であると解され、本件発明では、その解決手段として、サニタリー配管を採用することによって、配管の詰まりが生じやすくなるおそれを改善でき、且つスラリーの一部が配管の壁面に残留したままの状態となり汚染が生じやすくなるおそれを解消できるという効果を有し、その結果、セルロースナノファイバーの生産性が改善するものと認められる。 そうすると、配管がサニタリー配管であることが特定されている本件発明1~4は、本件明細書等に記載した範囲を超えるものではない。 したがって、申立人の上記サポート要件に係る申立理由は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700389

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