特許異議申立
2023-700280
不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法
- 審判番号
- 2023-700280
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-191317
- 登録番号
- 7138420
- 請求日
- 2023年03月14日
- 審決日
- 2023年09月27日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大王製紙株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人永井国際特許事務所
- 【異議申立人】白井 雅恵
- 【異議申立人】坂本 麻衣子
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 窪田 治彦
- 審判官 関口 哲生
- 分類
- P1651.536-Y (A47L) / P1651.537-Y (A47L) / P1651.121-Y (A47L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7138420号発明「不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7138420号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
1 特許第7138420号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
平成29年 9月29日 出願
令和 4年 9月 8日 特許権の設定登録
令和 4年 9月16日 特許掲載公報
令和 5年 3月14日 特許異議申立人白井雅恵による特許異議
の申立て(申立番号01、甲第1~第9号
証)
令和 5年 3月15日 特許異議申立人坂本麻衣子による特許異
議の申立て(申立番号02、甲第1~第1
5号証)
令和 5年 4月11日 特許異議申立人坂本麻衣子による手続補
正書の提出(申立番号02)
令和 5年 5月 2日 特許異議申立人坂本麻衣子による手続補
正書の提出(申立番号02、甲第15証の
1~3)
令和 5年 6月14日付け 取消理由通知書
令和 5年 8月18日 特許権者による意見書の提出(参考資料
1~10)
2 なお、異議申立人が特許異議申立書とともに提出した証拠方法は以下のとおりである。申立番号、証拠番号に従い、01甲1などという。
(1) 異議申立人白井(申立番号01)
01甲1 金子令子、“容器包装・おもちゃの安全性”、日本調理科学会誌、日本調理科学会、2012年、Vol.45、No.2、p.153-159
01甲2 特開2002-275752号公報 (02甲1)
01甲3 “日本工業規格 一般長繊維不織布試験方法 L1906-1994”、財団法人日本規格協会、平成6年9月30日、第1刷、p.1-16 (02甲6)
01甲4 登録実用新案第3157042号公報 (02甲13)
01甲5 特開平10-165343号公報
01甲6 特開2006-56582号公報 (02甲9)
01甲7 特開平10-174671号公報
01甲8 特開平10-138378号公報
01甲9 特開平11-61623号公報
(2) 異議申立人坂本(申立番号02)
02甲1 特開2002-275752号公報 (01甲2)
02甲2 特開平9-78434号公報
02甲3 特開平8-269858号公報
02甲4 特開平6-341047号公報
02甲5 特開2002-69826号公報
02甲6 “日本工業規格 一般長繊維不織布試験方法 L1906-1994”、財団法人日本規格協会、平成6年9月30日、第1刷、p.1-16 (01甲3)
02甲7 特開平9-296347号公報
02甲8 食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)(抜粋)、p.1、2、8、35、37
02甲9 特開2006-56582号公報 (01甲6)
02甲10 米国特許出願公開第2005/0112980号明細書
02甲11 特表2004-513256号公報
02甲12 特開2011-168909号公報
02甲13 登録実用新案第3157042号公報 (01甲4)
02甲14 特開平5-179545号公報
02甲15の1 “繊維に関するデーター集”、[online]、日本化学繊維協会、[2023年4月10日検索]、インターネット <URL:https://www.jcfa.gr.jp/img/about_kasen/knowledge/data/index/fiber_data.pdf>
02甲15の2 神前政幸、“糸の品質改善のために”、社団法人日本繊維機械学会、昭和38年3月25日、p.86-90
02甲15の3 我妻直夫、“繊維の物性と紡績理論”、工業技術院繊維工業試験所、昭和35年2月、p.304-305
3 特許権者が意見書とともに提出した参考資料は、以下のとおりである。資料番号に従い、「参1」などという。
参1 繊維学会編、“繊維便覧”、丸善株式会社、平成6年3月25日、第2版、p.347-354
参2 三浦義人、外1名、“ニードルパンチ式不織布の研究 第2報 パンチ布の引張り特性”、繊維学会誌、22巻10号、昭和41年3月3日、p.452-458
参3 本発明によるパルプ混合不織布の電子顕微鏡写真(断面)
参4の1 食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)(抜粋)、p.1-53
参4の2 日本食品衛生学会編、“食品安全の事典”、株式会社朝倉書店、2010年2月25日、第2刷、p.370-374
参5 特開2007-217580号公報
参6 特開2007-332225号公報
参7 特開2010-53187号公報
参8 再公表特許WO2004/104088号
参9の1 特開平9-296347号公報
参9の2 特許第3677865号公報
参10の1 オールタイム お料理ふきんのカタログ、[online]、東京メディカル株式会社、インターネット <URL:http://www.tokyo-medical.com/kitchen/12.html>
参10の2 参10の1の文書のプロパティ
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりである。
【請求項1】
合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスターであり、
坪量が40~70g/m2であり、
スパンボンド不織布の目付量が10~25g/m2であり、
パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が20~40質量%であり、
乾燥引張強度が、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであり、
前記スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、着色繊維であり、
かつ、前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される、
ことを特徴とする不織布ダスター。
【請求項2】
パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含み、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmである、請求項1記載の不織布ダスター。
【請求項3】
着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、合成樹脂繊維による目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布の上に、乾燥パルプシートを積層する積層工程と、
ノズル径0.5~1.5mmφのノズルから乾燥パルプシート面に100~110barの圧力で水流を噴射する水流絡合工程と、
を有し、
合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色する工程を有さず、
乾燥引張強度が、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであり、前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される不織布ダスターとする、
ことを特徴とする不織布ダスターの製造方法。
【請求項4】
パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含み、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmである、請求項3記載の不織布ダスターの製造方法。
第3 取消理由の概要
本件特許に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
1 取消理由1
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(1) 請求項1には、「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスター」と記載されているが、「不織布ダスター」に関し、物としての構造を明確に特定することができない。
よって、請求項1、2に係る発明は明確でない。
(2) 請求項1には、「前記スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、着色繊維であり」と記載されており、請求項3には、「着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、合成樹脂繊維による目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布」と記載されているが、当該溶出試験に関し、溶媒の種類以外の条件について特定されていないから、「スパンボンド不織布」を構成する「合成樹脂繊維」が、「色付け」に関し、どのような繊維であるか明確に特定することができない。
よって、請求項1~4に係る発明は明確でない。
2 取消理由2
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が次の点で不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。すなわち、請求項1~4に係る発明は、前記1(2)で指摘した事項が特定されているが、発明の詳細な説明には、当該溶出試験に関し、溶媒の種類以外の条件について記載されていないから、当該溶出試験の内容を具体的に把握することができない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~4に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない。
第4 取消理由について
1 取消理由1(36条6項2号)について
(1) 「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスター」との記載について
ア 請求項1には、「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスター」と記載されている。ここで、「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布」とは、スパンボンド法により得られる合成樹脂繊維による不織布であることを意味し、「不織布ダスター」は、そのような「スパンボンド不織布」に対して「パルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる」ものであることを意味していると解される。
請求項1に係る発明は、「不織布ダスター」という物の発明であるが、上記記載は、製造に関して経時的な要素の記載がある場合、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
そこで、当該製造方法が記載されていることにより、当該「不織布ダスター」のどのような構造若しくは特性を表しているのかについて検討する。
イ 本件特許明細書の記載
まず、本件特許明細書の記載をみると、請求項1における当該記載に関し、以下の記載がある(下線は当審にて付与した。)。
・「【0016】
本実施形態の不織布ダスターは、合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布である。係るパルプ混合不織布は、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維とパルプ繊維との絡合により繊維同士の絡みが良好で一体の不織布シートを構成しながら、表裏が完全に同質にならずスパンボンド不織布面とパルプ繊維面とを有する。スパンボンド不織布は、ペレット原料を直接紡糸して不織布を製造するスパンボンド法により得られる不織布であり、長繊維であり寸法安定性に優れる。また、ノーバインダー不織布として、バインダーを使用せずに形成することができる。」
・「【0029】
次いで、ウォータージェット技術、ウォーターニードル技術等とも称されるスパンレース技術に準じて、スパンボンド不織布と乾燥パルプシートとが積層された積層シートの乾燥パルプシート面に水を噴射して打ち付け、乾燥パルプシートにおけるパルプ繊維の結合を破壊するとともにスパンボンド不織布の合成樹脂繊維と乾燥パルプシートのパルプ繊維とを水流絡合させる工程を行う。ここで、本実施形態のパルプ混合不織布としての不織布ダスターの製造方法では、特に水流を噴射するノズルのノズル径0.5~1.5mmφのノズルとする。より好ましくは、0.75~1.25mmφである。水圧については必ずしも限定されないが、100~110bar程度が望ましい。これは一般的な圧(80~90bar)より高い値である。なお、適宜の調整は合成樹脂繊維の種類等によって行う。このノズル径は、従来パルプ混合不織布の製造方法よりも小さい。本実施形態では、目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布上に積層した繊維配向性の少ない乾燥パルプシートに対して小径のノズルから水流を噴射して打ち付けることで、合成樹脂繊維とパルプ繊維との絡合が良好となり、とりわけスパンボンド不織布面側へのパルプ繊維の入り込みが良好となってパルプ繊維面におけるパルプ繊維が離脱し難いものとなる。特に、好ましい合成樹脂繊維の構成及びパルプ繊維の構成をとる場合に、水流による繊維の動きが良好で、効果的に本実施形態に係るダスターが製造できる。すなわち、乾燥パルプシートがNBKPを95質量%以上含み、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維の太さが18~22μmであるのが望ましい。」
ウ 不織布に関する技術常識について
(ア) 「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布」について
既に述べたとおり(前記ア)、「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布」とは、スパンボンド法により得られる合成樹脂繊維による不織布であることを意味するところ、参1によれば、以下のことがわかる。
・不織布とは、短繊維又はフィラメント(及び孔あきフィルム)を機械的、熱的、化学的な手段を用いて接着又は交絡させて作るシート状又はウェブ構造のものであること(347頁右欄下から14行~下から10行)。
・ウェブを形成する方法には、湿式、乾式、直接法があり、直接法は、紡糸直結方式ともいわれ、溶融高分子溶液から紡糸された繊維を集めて直接ウェブとする工程で、スパンボンド法とメルトブローン法がその代表的な方法であること、スパンボンド法は、シャワーのノズルに似た細い穴を多数有する紡糸口金から多数のフィラメントを押し出し、それらを走行するベルト上に集めてウェブとするもので、高温状態のフィラメントはフィラメントどうしで熱融着し、連続フィラメントが構成されること(348頁右欄3行~349頁右欄16行)。
[図:0001402786000001.jpg]
このように、スパンボンド不織布とは、連続フィラメントで構成され、フィラメントどうしで熱融着しているウェブ構造を有する不織布である。
また、製造技術の違いがそのまま各種不織布の構造や性質に直結しており(参1・351頁右欄12~22行)、製造技術の特定によって不織布の構造が明らかとなると解される。
なお、スパンボンド不織布の上記のような構造は、電子顕微鏡写真で確認することができ、フィラメントの流れ方向(MD方向)にはほとんど伸びを示さない点からも、他の不織布との違いを確認することできる。
そして、以上のような事項は、当業者にとって技術常識であると認められる。
(イ) 「スパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流されたパルプ混合不織布」について
既に述べたとおり(前記ア)、「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスター」とは、「不織布ダスター」が、「スパンボンド不織布」に対して「パルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる」ものであることを意味しているところ、参1によれば、以下のことがわかる。
・スパンボンド法、メルトブローン法によるウェブを別として、ウェブ中の繊維どうしを接着させ、強度を与える必要があるが、接着剤を用いたり、機械的に繊維を絡ませたり、熱で融着させたり、糸で縫うなどの方法が考えられるところ、機械的にウェブ中の繊維を接着させる方法にニードルパンチ法とスパンレース法があり、スパンレース法は高速ジェット水流を利用してウェブ中の繊維どうしを互いに絡ませる方法で、水流交絡法ともいわれ、繊維どうしが単に絡み合って接着しているだけであること(349頁右欄18行~350頁右欄18行)
・ニードルパンチ法は、フック(鈎)の付いた多数の針(ニードル)を垂直にウェブに突き刺したり引き上げたりすることを繰り返し、ウェブ中の繊維どうしを互いに絡ませることで接着させる方法であること(350頁左欄14行~右欄3行)
[図:0001402786000002.jpg]
参2によれば、ニードルパンチ法による不織布は、その製造技術に起因して、ニードルの痕跡がみられ、表面には毛羽立ちがみられる。
(参2 図2)
[図:0001402786000003.jpg]
このように、水流交絡法により製造された不織布は、繊維どうしが単に絡み合って接着しているだけのもので、そうすると、スパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布とは、スパンボンド不織布の一方の面に、パルプ繊維面が、繊維どうし(パルプ繊維とパルプ繊維、合成樹脂繊維とパルプ繊維)が単に絡み合って接着しているだけのように存在している不織布であることがわかる(参3)。
また、製造技術の違いがそのまま各種不織布の構造や性質に直結しており(前記(ア))、製造技術の特定によって不織布の構造が明らかとなると解される。
そして、以上のような事項は、当業者にとって技術常識であると認められる。
なお、本件発明の不織布ダスターには、ニードルの痕跡や表面(特に下面)に毛羽立ちはみられず(参3)、ニードルパンチ法による不織布とは、その構造が異なる。
(参3)
[図:0001402786000004.jpg]
エ 以上のような本件特許明細書の記載と技術常識を踏まえ、請求項1における当該記載をみると、「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスター」とは、合成樹脂繊維の連続フィラメントで構成され、フィラメントどうしで熱融着しているウェブ構造を有する不織布の一方の面に、パルプ繊維面が、繊維どうし(パルプ繊維とパルプ繊維、合成樹脂繊維とパルプ繊維)が単に絡み合って接着しているだけのように存在し、表裏が完全に同質にならずスパンボンド不織布面とパルプ繊維面とを有する不織布ダスターであることがわかる。
請求項1には、製造に関して経時的な要素の記載、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載があり、その物の製造方法が記載されているといえるが、当該製造方法による物の構造又は特性等が、本件特許明細書の記載及び技術常識を加えて判断すれば、一義的に明らかであると認められ、第三者の利益が不当に害されることが生じないものと認められる。
そうすると、当該記載から、「不織布ダスター」に関し、物としての構造を明確に特定することができないとはいえず、請求項1、2に係る発明が明確でないとは認められない。
(2) 溶出試験について
ア 請求項1、3には、合成樹脂繊維に関し、「着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である」記載されているところ、当該溶出試験に関し、溶媒の種類、溶出物の量以外の条件について特定されていない。
イ 本件特許明細書の記載
まず、本件特許明細書の記載をみると、以下の記載がある(下線は当審にて付与した。)。
・「【0002】
惣菜や弁当の製造工場、スーパーマーケットのバックヤードでは、不織布製のダスターが多く使われている。この種の不織布製ダスターに用いられる不織布としては、レーヨン繊維又はレーヨン繊維と合成樹脂繊維を水流により交絡させたスパンレース法によるレーヨン不織布が主流であるが、パルプ繊維と合成樹脂製の不織布とを水流により交絡させたパルプ混合不織布も用いられる。
【0003】
他方で、不織布ダスターは、使用場所や拭き取り対象物によって異なるダスターを使い分けしやすいように、表裏に視認しやすい色柄が設けられている。この色柄は、片面から印刷によって形成されるのが一般的である。ダスターは、密度が疎であるため、片面から印刷しても裏面にまでインキが浸透して表裏に容易に色柄を形成することができる。」
・「【0018】
スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維は、パルプ繊維と水流絡合可能なものであり、ダスター用途に問題がないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等が挙げられる。複数の樹脂からなる繊維、例えば、芯鞘構造を有する合成樹脂繊維であってもよい。好ましくは、安価で軽量かつ十分な強度を発現でき、水流によって絡合しやすいポリエチレン繊維又はポリプロピレン繊維である。合成樹脂繊維の太さは、18~22μmであるのが望ましい。パルプ繊維、特に針葉樹由来のパルプとの絡合が強固でパルプ繊維が脱落し難いものとなる。なお、繊維長は、カヤニ/ファイバーラボにて測定し、繊維太さは、電子顕微鏡にて観察し測定する。」
・「【0020】
ここで、本実施形態の不織布ダスターは、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされた着色繊維となっている。特に、上記の目付量とすることで着色された合成樹脂繊維が十分な色の濃さとなって視認できるようになる。係る着色繊維は、着色剤が練り込まれた着色ペレット原料を紡糸してスパンボンド不織布を製造するか、ペレット原料に着色剤を混合して紡糸してスパンボンド不織布を製造すればよい。着色剤は、合成樹脂材の着色剤として用いられるもののなから適宜選択することができる。但し、摩擦による色落ちに関係なく、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸、水に対する溶出試験においてヘプタンは150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸、水で30μg/ml以下である必要がある。」
このような記載からすると、本件発明の不織布ダスターは、少なくとも食品関係の用途を想定し、好適な合成樹脂繊維としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維があげられており、そのような用途、素材を前提として溶出試験が特定されているものと解される。
ウ 溶出試験に関する技術常識について
食品又はその原料は、採取から喫食までの各段階において、さまざまな「物」に接触するところ、食品衛生法では、食品や添加物が直接接触するすべての物を、「器具」、「容器」、「包装」とよび、法律の適用対象とし、器具・容器包装の安全性確保のため、「営業上使用する器具および容器包装は、清潔で衛生的でなければならない」との原則が示され、食品衛生法の規定に基づき、食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)において、器具・容器包装の規格基準が定められている(参4の2)。
そして、当該食品、添加物等の規格基準によれば、器具・容器包装の溶出試験に関し、以下のように規定されている(参4の1)。
・「
[図:0001402786000005.jpg]
」(第3B5(8頁))
・「
[図:0001402786000006.jpg]
[図:0001402786000007.jpg]
」(第3B10(21~22頁))
・「
[図:0001402786000008.jpg]
」(第3D2(1)(32頁))
・「
[図:0001402786000009.jpg]
」(第3D2(2)4.(35頁))
このように、食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)において、器具及び容器包装について、溶出試験により蒸発残留物の量を測定する試験(蒸発残留物試験)が、浸出溶液として、ヘプタン、20%エタノール、水及び4%酢酸を用いて行われること、20%エタノール、水又は4%酢酸の場合は、試料の表面積1cm2につき2mlの割合の浸出用液を60℃に加温して用い、60℃に保ちながら30分間放置する方法で行われ、ヘプタンの場合は、温度及び時間につき25℃に保ちながら1時間放置する方法で行われること、ポリエチレン及びポリプロピレンを主成分とする合成樹脂製の器具又は容器包装の場合の蒸発残留物の量は、20%エタノール、水又は4%酢酸のときは、30μg/ml以下でなければならず、ヘプタンのときは、150μg/ml以下でなければならないことが規定されていることがわかる。
そして、当該試験は、食品に接触する器具・容器包装に係る技術分野において、技術常識であると認められる(01甲1、01甲6(02甲9)、02甲7、参5~10)。
エ 以上のような本件特許明細書の記載と技術常識を踏まえ、請求項1、3における溶出試験に係る記載を検討すると、本件発明は、食品関係の用途を想定していること(前記イ)、不織布ダスターが食品に直接接触することも想定されること(参10)からすると、その溶出試験として、当該食品、添加物等の規格基準に規定の溶出試験に準じたものが適用されるものと解される。
そして、請求項1、3に記載された溶媒の種類、溶出物の量が、当該食品、添加物等の規格基準に規定の溶出試験と同じであることに照らせば、請求項1、3に記載された溶出試験が、当該食品、添加物等の規格基準に規定の溶出試験であることは明らかである。
請求項1、3には、溶出試験に関し、溶媒の種類、溶出物の量以外の条件について特定されていないが、本件特許明細書及び技術常識を加えて判断すれば、当該溶出試験の内容は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。
そうすると、「スパンボンド不織布」を構成する「合成樹脂繊維」が、「色付け」に関し、どのような繊維であるか明確に特定することができないとはいえず、請求項1~4に係る発明が明確でないとは認められない。
(3) 他に、請求項1~4において、不明確な点は認められない。
以上のとおりであるから、請求項1~4に係る発明が明確でないとは認められない。
2 取消理由2(36条4項1号)について
本件発明は、請求項1、3に記載された溶出試験について特定されているところ、発明の詳細な説明における当該溶出試験の記載は既に述べたとおりであり(前記1(2)ア)、当該溶出試験に関し、溶媒の種類、溶出物の量以外の条件について記載されていない。
しかしながら、既に述べたとおり、技術常識を踏まえると、当該溶出試験が、食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)であることは明らかである(前記1(2)エ)。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載には、当該溶出試験に関し、溶媒の種類、溶出物の量以外の条件について記載されていないものの、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づけば、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明をどのように実施をするかを理解することができるものと認められる。
他に、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明をどのように実施をするかを理解することができないとすべき点は認められない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとは認められない。
第5 異議申立人白井(申立番号01)に係る特許異議の申立ての理由のうち取消理由通知において採用しなかった理由について
1 取消理由通知において採用しなかった理由は、概ね、次のとおりである。
(1) 本件発明は、明確でないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(2) 本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
(3) 本件発明に対応する発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
(4) 本件発明は、01甲2に記載された発明及び周知慣用技術(01甲4~9)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
2 36条6項2号(明確性要件)について
(1) 「スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維」について
申立人は、請求項1に「前記スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ」ると記載されていることについて、着色料を練り込むことによって製造した着色繊維は、それとは別の方法で着色した合成樹脂繊維と比較して、物としてどういった違いがあるのか明らかでない、などと主張している。
しかしながら、請求項1の「合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず」との記載も併せてみれば、スパンボンド不織布の合成樹脂繊維において、着色料が合成樹脂繊維の外表面上ではなく合成樹脂繊維の内部に存在するものであることが理解でき、どのような合成樹脂繊維であるか明確に特定することができるから、本件発明1、2は、物としての構成が不明確であるとは認められない。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(2) 「パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」という構成について
申立人は、請求項1、3に「パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」と記載されていることについて、どの程度であれば「パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」といえるのか、その基準があいまいである、などと主張している。
しかしながら、本件発明は、表裏での使い分けがしやすいことを課題としているところ(後記第6・3(1)ア(イ))、「色の差が視認される」ことも、表裏での使い分けがしやすいか否かで判断されること、当業者が技術常識として備えている基準をもとに判断されることは明らかで、請求項や発明の詳細な説明に明記がないからといって、直ちに、本件発明が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(3) 乾燥パルプシートとパルプ繊維の関係について
申立人は、請求項3に「乾燥パルプシート」と「パルプ繊維」の関係が規定されていないから、本件発明3、4は不明確である、などと主張している。
しかしながら、当該「パルプ繊維」が「乾燥パルプシート」を構成するパルプ繊維であることは、請求項3の記載全体をみれば明らかである。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(4) 以上のとおり、本件発明は不明確であるとはいえず、明確性要件を満たしていないとは認められない。
3 36条6項1号(サポート要件)について
(1) 「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布」について
申立人は、実施例1、2に関し、どのような着色料をどのような方法でポリプロピレンに練りこんだのか、ポリプロピレンに練りこんだ着色料はどれだけ溶出したのか、どのような色や太さを有する合成樹脂繊維であったのか不明であるから、実施例1、2が本件発明に該当しているのか理解できない、などと主張している。
しかしながら、本件発明は、表裏での使い分けがしやすいことを課題としているところ(後記第6・3(1)ア(イ))、練りこまれる着色料が、表裏での使い分けがしやすいものであることは明らかで、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2が、表裏での使い分けがしやすくなる着色料が練り込まれた着色ペレット原料を紡糸してスパンボンド法によって不織布を製造するか、ペレット原料に着色料を混合して紡糸してスパンボンド法によって不織布を製造するかにより得られたものであること(【0027】)、着色料の溶出量が、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸、水に対する溶出試験においてヘプタンは150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸、水で30μg/ml以下であること(【0020】)、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmであること(【0018】、【0021】)がわかり、実施例1、2が本件発明に該当しているといえる。
そして、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載を総合すると、本件発明は、課題を解決することができるものと認められる。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(2) 「パルプ繊維」について
申立人は、発明の詳細な説明に、実施例1、2で使用したパルプ繊維の詳細が記載されていない、などと主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載(【0021】、【0022】)から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2が、パルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、スパンボンド不織布を構成する着色繊維と色が異なること、パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含むことがわかる上、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載を総合すると、本件発明は、課題を解決することができるものと認められる。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(3) 「パルプ混合不織布」について
申立人は、実施例1、2が「パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」ものであるか不明である、実施例1、2におけるノズル径や水圧が明らかにされていない、実施例1、2の結果からは、本件発明は、乾燥引張強度に関し、請求項1、3に規定された数値範囲の全範囲にわたって課題を解決することができるものであるか不明である、不織布ダスターの坪量、スパンボンド不織布の目付量、パルプ繊維とスパンボンド不織布の質量割合に関し、請求項1、3に規定された数値範囲の全範囲にわたって課題を解決することができるものであるか不明であるなどと主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載(【0021】、【0022】)から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2が、「パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」ものあることがわかる。
また、「本実施形態」に関する記載(【0029】)から、実施例1、2が、ノズル径0.5~1.5mmφのノズルから100~110barの圧力で水流を噴射すること(請求項3)により製造されたものであることがわかる。
そして、「本実施形態」に関する記載(【0023】)から、乾燥引張強度に関し、請求項1、3に規定された数値範囲に設定することにより、拭き取りに関し十分な強度が得られ、「不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法を提供する」との課題を解決することができるものと認められる。比較例が乾燥引張強度に関する数値範囲内に存することから、本件発明が不織布として比較例よりも劣ることにはならず、本件発明が課題を解決することができないものであるとは認められない。
さらに、「本実施形態」に関する記載(【0019】)から、不織布ダスターの坪量、スパンボンド不織布の目付量、パルプ繊維とスパンボンド不織布の質量割合に関し、請求項1、3に規定された数値範囲の全範囲において、課題を解決することができることは理解できる。
加えて、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載を総合すると、本件発明は、課題を解決することができるものと認められる。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(4) 以上のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されていないとはいえず、サポート要件を満たしていないとは認められない。
4 36条4項1号(実施可能要件)について
(1) 「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布」について
申立人は、発明の詳細な説明には、実施例に関し、どのようにしてスパンボンド不織布を製造したのか具体的に記載されていないから、発明の詳細な説明の記載からは、本件発明によって優れた不織布ダスターを実際に製造することができるのかわからない、などと主張している。
しかしながら、「本実施形態」の記載(【0027】)から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2が、着色料が練り込まれた着色ペレット原料を紡糸してスパンボンド法によって不織布を製造するか、ペレット原料に着色料を混合して紡糸してスパンボンド法によって不織布を製造するかにより得られたものであることがわかる。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(2) 「パルプ繊維」について
申立人は、発明の詳細な説明には、実施例1、2で使用したパルプ繊維に関し、パルプの原料、種類、漂白の有無、パルプ繊維の色がどういったものであるかなどがわからない、乾燥パルプシートとしてどのようなものを使用したかわからないなどと主張している。
しかしながら、「本実施形態」に関する記載(【0021】、【0022】)から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2が、パルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、スパンボンド不織布を構成する着色繊維と色が異なること、パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプであるとともにNBKPを95質量%以上含むことがわかる。
また、「本実施形態」に関する記載(【0028】)から、実施例1、2において、使用した乾燥パルプシートが、水にパルプ繊維を分散懸濁させたパルプ溶解液を搬送平面上に吐出し、加熱ドラムで圧縮乾燥させてシート状にしたものであることがわかる。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(3) 「パルプ混合不織布」について
申立人は、発明の詳細な説明に、どのように「パルプ繊維面」と「スパンボンド不織布面」の色の差を評価するのかが具体的に記載されていない、実施例1、2において「パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」ものであるか不明である、実施例1、2、比較例1において使用したノズルの径、水流の圧力が不明である、実施例1、2の結果からは、乾燥引張強度に関し、請求項1、3に規定された数値範囲の全域にわたって本件発明を実施することができるとは考えられない、不織布ダスターの坪量、スパンボンド不織布の目付量、パルプ繊維とスパンボンド不織布の質量割合に関し、請求項1、3に規定された数値範囲の全範囲にわたって本件発明を実施することができるとは考えられない、などと主張している。
しかしながら、本件発明は、表裏での使い分けがしやすいことを課題としているところ(後記第6・3(1)ア(イ))、「パルプ繊維面」と「スパンボンド不織布面」の色の差も、表裏での使い分けがしやすいか否かで判断されること、当業者が技術常識として備えている基準をもとに判断されることは明らかで、発明の詳細な説明に明記がないからといって、直ちに、本件発明を実施することができないものとは認められない。
また、「本実施形態」に関する記載(【0021】、【0022】)から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2は、「パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」ものあることがわかる。
そして、「本実施形態」に関する記載(【0029】)から、実施例1、2が、ノズル径0.5~1.5mmφのノズルから100~110barの圧力で水流を噴射すること(請求項3)により製造されたものであることがわかる。
さらに、「本実施形態」に関する記載(【0023】)から、乾燥引張強度に関し、請求項1、3に規定された数値範囲に設定することにより、拭き取りに関し十分な強度が得られるものと認められ、比較例が乾燥引張強度に関する数値範囲内に存することから、本件発明を実施することができないことにはならない。
加えて、「本実施形態」に関する記載(【0019】)から、不織布ダスターの坪量、スパンボンド不織布の目付量、パルプ繊維とスパンボンド不織布の質量割合に関し、請求項1、3に規定された数値範囲の全範囲において、本件発明を実施することができることは理解できる。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(4) 以上のとおり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとはいえず、実施可能要件を満たしていないとは認められない。
5 29条2項(進歩性)について
(1) 01甲2について
01甲2(02甲1)には、後記の事項が記載されており、01甲2には、02甲1発明1、02甲1発明2が記載されているものと認められる(後記第6・2(1))。
(2) 01甲4~7、9について
ア 01甲4について
01甲4(02甲13)には、後記の事項が記載されている(後記第6・2(2)カ)。
イ 01甲5について
01甲5には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 熱可塑性樹脂を溶融紡糸し、多数の連続長繊維フィラメントを捕集してウェブとした後、該ウェブに規則的な融着区域を設けて得られるスパンボンド不織布からなる清掃用シートにおいて、該連続長繊維フィラメントが半径0.1~0.5mmの屈曲部を、スパンボンド不織布の単位面積当たり50~1000個/cm2有し、スパンボンド不織布の融着区域の該不織布全表面に対する面積比率が5~20面積%で、融着区域により囲まれたもしくは隣接する融着区域の中心を結ぶ線で囲まれた非融着区域の平均面積が0.25~6.0cm2で、かつ、該スパンボンド不織布の密度が0.05~0.15g/cm3であることを特徴とする清掃用シート。」
・「【0009】本発明の連続長繊維フィラメントに使用される熱可塑性樹脂としては、一般的に、長繊維紡糸用として市販されている熱可塑性重合体であれば、特に、限定されず、ポリプロピレン重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体等を挙げることができ、これらの中から適宜選択して用いられる。又、溶融紡糸に際しては、必要に応じて、前記熱可塑性樹脂へ、潤滑剤、顔料、安定剤、難燃剤、抗菌剤等を添加しても良い。連続長繊維フィラメントの断面形状は、円形のみでなく、三角形、四角形等の異形断面形状であっても良い。」
ウ 01甲6について
01甲6(02甲9)には、後記の事項が記載されている(後記第6・2(2)イ)。
エ 01甲7について
01甲7には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られる多数の連続フィラメント群を延伸、開繊して、捕集・堆積したウェブに熱エンボスによる連続フィラメント同士が熱融着している区域が散点状に設けられたスパンボンド不織布からなる清掃用シートにおいて、前記不織布の厚み方向で、熱融着区域が存在せず、連続フィラメント相互間が交絡している一表面と、連続フィラメント同士が融着している区域が散点状に存在する他の表面との間が、該フィラメントの交絡と熱融着が連続的に変化して形成されていることを特徴とする清掃用シート。」
・「【0010】
【発明の実施の形態】本発明の連続フィラメントに使用される熱可塑性樹脂は、公知の樹脂をそのまま使用することができ、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を挙げることができ、これらの中から適宜選択して用いられる。又、熱可塑性樹脂には必要に応じて、潤滑剤、顔料、難燃剤、抗菌剤等を添加して用いても良い。本発明に用いられる連続長繊維からなるスパンボンド不織布は、公知の溶融押出し紡糸装置を用いて製造することが可能で、連続長繊維フィラメントの断面形状は、円形のみでなく、三角形、四角形等の異形断面形状であっても良い。」
オ 01甲9について
01甲9には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 熱可塑性樹脂の連続フィラメントからなるスパンボンド不織布と木材パルプを湿式抄紙後乾燥して得られる紙シートを積層後、高圧水ジェット流を施すことにより、スパンボンド不織布の連続フィラメントと紙シートのパルプ繊維を相互に交絡させた後、該交絡シートの紙シート側に熱可塑性樹脂を細孔を通じて吐出し、高温、高速ガスで微細化した繊維を吹き付けて得られる複合不織布であって、該紙シートにはカチオン系消臭剤が付与されていることを特徴とする複合不織布の製造方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は各種エアフィルターに好適に用いられる消臭性能を有する複合不織布及びその製造方法に関する。」
・「【0007】
【発明の実施の形態】 まず、本発明においては熱可塑性樹脂の連続フィラメントからなるスパンボンド不織布を準備する。熱可塑性樹脂は、公知の樹脂をそのまま使用することができ、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を挙げることができ、これらの中から適宜選択して用いられる。又、熱可塑性樹脂には必要に応じて、潤滑剤、顔料、難燃剤、抗菌剤等を添加して用いてもよい。」
(3) 本件発明1について
以下、この項において、02甲1発明1(後記第6・2(1)イ)を「01甲2発明1」といいかえて、検討する。
ア 対比
本件発明1と01甲2発明1とを、その機能に照らして対比すると、本件発明1と01甲2発明1とは、後記一致点1の点で一致し、後記相違点1、2の点で相違するものと認められる(後記第6・2(3)ア)。
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
a 01甲2発明1において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、動機付けがあるとは認められない(後記第6・2(3)イ(ア)a)。
b 01甲4(02甲13、後記第6・2(2)カ)には、誤って食品に混入したとき視認できるように青色に染色されているウェットワイパーが記載され、溶融した不織布原料の中に着色剤を直接混ぜ込んで製造する原着が好ましいことが記載されているが、01甲2発明1とは前提の構造が異なる(後記第6・2(3)イ(ア)c)。
また、01甲5(前記(2)イ)には、スパンボンド不織布からなる清掃用シートが記載され、溶融紡糸に際し、顔料等を添加してもよい旨記載されているが、顔料を添加することの目的について特段記載されておらず、01甲2発明1とは前提の構造が異なる(後記第6・2(3)イ(ア)d)。
01甲6(02甲9、後記第6・2(2)イ)には、不透水性吸収シートが記載され、耐水層11は、耐水性を有するパルプ紙で、染料などにより着色したものが挙げられること、生鮮食品に直接触れるので、食品衛生法に基づく「食品、添加物等の規格基準」に適合するものが好ましいことが記載されているが、不織布ダスターではなく、パルプ紙からなる耐水層を染料などにより着色したもので、01甲2発明1とは用途、前提の構造が異なる(後記第6・2(3)イ(ア)c)。
このように、01甲4、5には、不織布の合成樹脂繊維に着色料を練り込む点について記載、示唆があり、01甲6には、着色する点について記載、示唆はあるものの、これらの記載によって、01甲2発明1において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、特段動機付けられるものとは認められない。
c その他の証拠(01甲1、3、7~9、02甲2~5、7、8、10~12、14、15)をみても同様で、上記の証拠に記載された事項が知られていたとしても、01甲2発明1において、相違点2に係る構成とすることについて、動機付けられるものとは認められない(後記第6・2(3)イ(ア)b~d)。
d そして、本件発明1は、相違点2に係る構成を備えることにより、格別な効果を奏するものである(後記第6・2(3)イ(ア)e)。
そうすると、01甲2発明1において、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(イ) 以上のとおりであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明1は、01甲2発明1及び01甲1、3~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(4) 本件発明2について
以下、この項において、02甲1発明1(後記第6・2(1)イ)を「01甲2発明1」といいかえて、検討する。
本件発明2は、本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、01甲2発明1及び01甲1、3~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(5) 本件発明3について
以下、この項において、02甲1発明2(後記第6・2(1)イ)を「01甲2発明2」といいかえて、検討する。
ア 対比
本件発明3と01甲2発明2とを、その機能に照らして対比すると、本件発明3と01甲2発明2とは後記一致点2の点で一致し、後記相違点3~5の点で相違するものと認められる(後記第6・2(5)ア)。
イ 判断
(ア) まず、相違点3について判断する。
a 01甲2発明2において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、動機付けがあるとは認められない(後記第6・2(5)イ(ア)a)。
b 01甲4、5には、不織布の合成樹脂繊維に着色料を練り込む点について記載、示唆があり、01甲6には、着色する点について記載、示唆はあるものの、これらの記載によって、01甲2発明2において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、特段動機付けられるものとは認められない。(前記(3)イ(ア)b)。
c その他の証拠(01甲1、3、6~9、02甲2~5、7、8、10~12、14、15)をみても同様で、上記の証拠に記載された事項が知られていたとしても、01甲2発明2において、相違点3に係る構成とすることについて、動機付けられるものとは認められない(後記第6・2(5)イ(ア)b~d)。
d そして、本件発明3は、相違点3に係る構成を備えることにより、格別な効果を奏するものである(後記第6・2(5)イ(ア)e)。
そうすると、01甲2発明2において、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(イ) 以上のとおりであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明3は、01甲2発明2及び01甲1、3~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(6) 本件発明4について
以下、この項において、02甲1発明2(後記第6・2(1)イ)を「01甲2発明2」といいかえて、検討する。
本件発明4は、本件発明3を特定するための事項を全て含むものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明4は、本件発明3と同様の理由により、01甲2発明2及び01甲1、3~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
第6 異議申立人坂本(申立番号02)に係る特許異議の申立ての理由のうち取消理由通知において採用しなかった理由についてについて
1 取消理由通知において採用しなかった理由は、概ね、次のとおりである。
(1) 本件発明は、02甲1に記載された発明、02甲5、10、7に記載された事項及び周知技術(02甲2~4、6、8、9、11~15等)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(2) 本件発明に対応する発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
(3) 本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
(4) 本件発明は、明確でないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
2 29条2項(進歩性)について
(1) 02甲1について
ア 02甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。)。
・「【請求項1】 支持網上にスパンボンド不織布を載せ、その表面に紙シートを積層後、該紙シートの表面からスパンボンド不織布側に向けて高圧水柱流を施すことにより、該紙シートを構成するパルプとスパンボンド不織布を構成する連続繊維とを交絡させて製造した複合不織布において、
該紙シートのMD方向に平行に測定した表面粗さ(SMD)が、4.0~15.0μmの範囲である紙シートを用いたことを特徴とする複合不織布。」
・「【請求項4】 支持網上にスパンボンド不織布を載せ、その表面に紙シートを積層後、該紙シートの表面からスパンボンド不織布側に向けて高圧水柱流を施すことにより、該紙シートを構成するパルプとスパンボンド不織布を構成する連続繊維とを交絡させて複合不織布を製造する方法において、
該紙シートのMD方向に平行な方向に沿って測定した表面粗さ(SMD)が、4.0~15.0μmの範囲である紙シートを用いたことを特徴とする複合不織布の製造方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、湿潤時のみならず、非湿潤状態においても柔軟で風合いに優れ、キッチンタオル、ワイパー、テーブルカバー、ディナー用マット等の雑貨用シート、ドリップ吸収材や包装材料等に好適に使用できる複合不織布に関するものである。」
・「【0006】
【発明が解決しようとする課題】 本発明者は、複合不織布に使用する材料、製法を鋭意検討した結果、紙シートとして、ある特定の表面凹凸の変動(SMD)を有する紙シートを用いることで、湿潤状態のみならず、非湿潤状態においても柔軟で風合いの良好なシートが得られることを見出し、本発明を完成させた。したがって、本発明の目的は、湿潤時のみならず、非湿潤状態においても柔軟で風合いに優れ、キッチンタオル、ワイパー、テーブルカバー、ディナー用マット等の雑貨用シート、ドリップ吸収材や包装材料等に好適に使用できる複合不織布を提供することである。」
・「【0012】
【発明の実施の形態】 本発明においては、従来公知のスパンボンド不織布を準備する。スパンボンド不織布は、従来公知の熱可塑性樹脂を原料とした連続繊維で構成されている。例えば、ポリオレフィン系連続繊維、ポリエステル系連続繊維、ポリアミド系連続繊維、ポリアクリル酸エステル系連続繊維を挙げることができるし、複数種類のポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂をブレンドした連続繊維や、これら樹脂を複数種類組み合わせた、芯鞘型複合連続繊維やサイドバイサイド型複合連続繊維、割繊型複合連続繊維等の複合紡糸連続繊維であっても良い。さらに、スパンボンド不織布の一つとして最近多様な用途に使用されている、スパンボンド不織布の層間にメルトブロー不織布層を配置した、いわゆるSMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)不織布を使用しても良く、本発明はこのようなSMSを使用する場合を含むものである。
・「【0014】スパンボンド不織布の坪量は、5~30g/m2であることが好ましい。スパンボンド不織布の坪量が30g/m2を超えると、スパンボンド不織布と紙シートとの積層体に高圧水柱流を施した場合、高圧水柱流が該スパンボンド不織布を通過しづらくなり、連続繊維とパルプの交絡が阻害されるばかりでなく、紙シートを構成するパルプが、スパンボンド不織布の裏面(紙シートと当接していない面)に移動しにくくなる、得られた複合シートを拭き布として使用する場合には、パルプの少ない面における吸水性が低下する傾向が生じる。また、支持網の下に位置するサクションノズルから、スパンボンド不織布を通して、スパンボンド不織布と紙シートとの積層体表面の水を吸引除去する能力が低下するために、高圧水柱流のエネルギーが表面の水をはね飛ばすために使用されるため、エネルギーのロスが発生するばかりでなく、シートの地合も低下する傾向がある。
【0015】逆に、スパンボンド不織布の坪量が5g/m2未満になると、スパンボンド不織布の強度が低下
し、そのために複合化後のシートの強度が低下するため適さない。更に、連続繊維の堆積量が少ないために、連続繊維相互間の間隙が大きくなっており、高圧水柱流を施したときに、その間隙からパルプ繊維が流失してしまい適さない。」
・「【0017】以上のようにして準備したスパンボンド不織布の片面に、紙シートを積層する。この紙シートはパルプを湿式抄紙してえられるものであり、パルプは従来公知の任意のものを使用することができるが、入手が容易で、安価であることから、木材パルプを使用することが好ましい。」
・「【0025】紙シートの坪量は、任意に決定しうる事項であるが、特にJIS P 8124に示された方法で測定した坪量が、10~120g/m2の範囲の紙シートを使用するのが好ましい。紙シートの坪量が10g/m2未満では、パルプ繊維の絶対量が少なく、得られる複合シートに十分な吸水性や保水性を与え難くなる。逆に、紙シートの坪量が120g/m2を超えると、パルプ繊維の絶対量が多すぎて、紙シートに高圧水柱流を施しても、1本1本のパルプに連続繊維と交絡しうる程度の運動量を与え難くなるので適さない。更にパルプの絶対量が多すぎると、得られる複合不織布の柔軟性が低下するばかりでなく、多数のパルプの吸脱湿により、放置された環境の湿度変化によって、シートにカールが発生する恐れが生じ、好ましくない。
【0026】紙シートを構成するパルプ繊維としては、針葉樹および広葉樹木材を、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイト法等で蒸解した化学パルプ、またはグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプを、晒あるいは未晒の状態で、単独であるいは混合して使用することができる。針葉樹パルプと広葉樹パルプの重量配合比は、好ましくは、針葉樹パルプ/広葉樹パルプ=100/0~20/80、さらに好ましくは100/0~40/60であるが、針葉樹パルプ100%であるのがもっとも好ましい。広葉樹パルプが80%を超えると、高圧水流によるパルプの流失量が増加し、不経済である。」
・「【0028】紙シートは、あらかじめ準備したスパンボンド不織布表面に積層される。この際、スパンボンド不織布の坪量と、紙シートの坪量の比は、以下のようにするのが好ましい。すなわち、スパンボンド不織布の坪量とJIS P 8124に示された方法で測定した紙シートの坪量の比が、紙シート/スパンボンド不織布=1/1~19/1となるようにするのが好ましい。紙シートの坪量が減り、紙シート/スパンボンド不織布=1/1未満になると、スパンボンド不織布の連続繊維の量に対して、相対的にパルプの量が少なくなり、複合不織布の吸水性、保水性が低下する傾向が生じる。また、連続繊維に対して、廉価なパルプの量が少なくなることによって、得られる複合不織布が高価になるという傾向が生じる。逆に、紙シート/スパンボンド不織布=19/1を超えて、紙シートの坪量が重くなると、紙シートを構成するパルプのすべてが連続繊維に交絡することが難しくなり、得られる複合不織布を湿潤させて使用したときに、パルプ繊維が脱落しやすくなる傾向がある。」
・「【0030】支持網上にスパンボンド不織布、次いで紙シートを積層した後、紙シートの表面からスパンボンド不織布の側に向けて、高圧水柱流を施す。すなわち、積層物の表面側から、スパンボンド不織布側へ高圧水柱流が貫通するようにして、高圧水柱流を施す。この高圧水柱流は、微細な直径のノズル孔を通して、高圧水で水を噴出させて得られるものである。例えば、孔径0.01~3mmの範囲のノズル孔を通して、20×105~150×105Pa(20~150kgf/cm2)程度の範囲の圧力で水を噴出させて得られる。」
・「【0034】
【実施例】 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>ポリプロピレンスパンボンド不織布を準備した。このスパンボンド不織布を構成する連続繊維の繊度は、2.2dtexであり、スパンボンド不織布の坪量は12g/m2、熱融着点の面積の合計が不織布表面積全体に占める割合は、13.6%であった。このスパンボンド不織布の上に、カナダ標準フリーネス(CSF)が660mlの針葉樹晒クラフトパルプを湿式抄紙して得られた紙シートを積層した。この紙シートは、ヤンキードライヤーを有する所謂ヤンキー抄紙機により製造され、ドライクレープ法によりクレープ加工が施されており、SMDは5.1μm、坪量は30g/m2であった。この積層体を、紙シートが上に位置し、スパンボンド不織布が下に位置するようにして、プラスチック糸で形成された移送用支持網状に戴置した。この支持網は、構成する縦糸と横糸の直径がそれぞれ0.50mm、0.55mmの平織(一重織)で、縦糸と横糸の一インチ当たりの本数は、いずれも18本であった。尚、縦糸はシートの流れ方向に平行な糸で、横糸は縦糸に直角な糸を意味する。
【0035】次いで、積層体を載せたこの搬送用支持網を、30m/minの速度で移送させながら、孔径0.15mmのノズル孔が装置の巾方向(CD方向)に1mmの間隔で並んでいる高圧水柱流噴出装置を、シートの流れ方向(MD方向)に3列設置した高圧水柱流処理装置を用いて、紙シート表面に390×104Pa(40kgf/cm2)の水圧で高圧水柱流処理を施した。以上のようにして、紙シートを構成しているパルプとスパンボンド不織布を構成している連続繊維を交絡させ、両者が一体化された複合不織布を得た。
【0036】<実施例2>ポリプロピレンスパンボンド不織布を準備した。このスパンボンド不織布を構成する連続繊維の繊度は、2.2dtexであり、スパンボンド不織布の坪量は12g/m2、熱融着点の面積の合計が不織布表面積全体に占める割合は、13.6%であった。このスパンボンド不織布の上に、カナダ標準フリーネスが660mlの針葉樹晒クラフトパルプを湿式抄紙して得られた紙シートを積層した。この紙シートは、ヤンキードライヤーを有する所謂ヤンキー抄紙機により製造され、ドライクレープ法によりクレープ加工が施されており、SMDは8.8μm、坪量は30g/m2であった。この積層体を、紙シートが上に位置し、スパンボンド不織布が下に位置するようにして、プラスチック糸で形成された移送用支持網状に戴置した。この支持網は、構成する縦糸と横糸の直径がそれぞれ0.50mm、0.55mmの平織(一重織)で、縦糸と横糸の一インチ当たりの本数は、いずれも18本であった。尚、縦糸はシートの流れ方向に平行な糸で、横糸は縦糸に直角な糸を意味する。
【0037】次いで、積層体を載せたこの搬送用支持網を、30m/minの速度で移送させながら、孔径0.15mmのノズル孔が装置の巾方向(CD方向)に1mmの間隔で並んでいる高圧水柱流噴出装置を、シートの流れ方向(MD方向)に3列設置した高圧水柱流処理装置を用いて、紙シート表面に390×104Pa (40kgf/cm2)の水圧で高圧水柱流処理を施した。以上のようにして、紙シートを構成しているパルプとスパンボンド不織布を構成している連続繊維を交絡させ、両者が一体化された複合不織布を得た。
【0038】<実施例3>ポリプロピレンスパンボンド不織布を準備した。このスパンボンド不織布を構成する連続繊維の繊度は、2.2dtexであり、スパンボンド不織布の坪量は12g/m2、熱融着点の面積の合計が不織布表面積全体に占める割合は、13.6%であった。このスパンボンド不織布の上に、カナダ標準フリーネスが660mlの針葉樹晒クラフトパルプを湿式抄紙して得られた紙シートを積層した。この紙シートは、多筒式ドライヤーを有する長網抄紙機により抄造され、抄造後、一対の凹凸ロールによりエンボス加工が施されており、SMDは13.8μm、坪量は30g/m2であった。この積層体を、紙シートが上に位置し、スパンボンド不織布が下に位置するようにして、プラスチック糸で形成された移送用支持網状に戴置した。この支持網は、構成する縦糸と横糸の直径がそれぞれ0.50mm、0.55mmの平織(一重織)で、縦糸と横糸の一インチ当たりの本数は、いずれも18本であった。尚、縦糸はシートの流れ方向に平行な糸で、横糸は縦糸に直角な糸を意味する。
【0039】次いで、積層体を載せたこの搬送用支持網を、30m/minの速度で移送させながら、孔径0.15mmのノズル孔が装置の巾方向(CD方向)に1mmの間隔で並んでいる高圧水柱流噴出装置を、シートの流れ方向(MD方向)に3列設置した高圧水柱流処理装置を用いて、紙シート表面に390×104Pa(40kgf/cm2)の水圧で高圧水柱流処理を施した。以上のようにして、紙シートを構成しているパルプとスパンボンド不織布を構成している連続繊維を交絡させ、両者が一体化された複合不織布を得た。」
・「【0049】(5)引張強度(N)、湿潤引張強度(N)
JIS L 1906の引張強さ(標準時、湿潤時)に準じて測定した。
【0050】
【表1】
[図:0001402786000010.jpg]
」
・「【0052】
【発明の効果】 以上説明したように、本発明にかかる複合不織布は、湿潤時のみならず、非湿潤状態においても柔軟であり、さらに風合いにも優れたものであり、キッチンタオル、ワイパー、テーブルカバー、ディナー用マット等の雑貨用シート、ドリップ吸収材や包装材料等に好適に使用できるという効果を奏する。また、本発明にかかる複合不織布の製造方法は、紙シートのパルプ繊維とスパンボンド不織とを交絡させる過程において特定の紙シートを用いることにより、上記のような優れた複合不織布を製造できるという効果を奏する。」
イ 実施例1~3に関し、次のことがわかる。
・スパンボンド不織布の坪量が12g/m2で、積層される紙シートの坪量が30g/m2であるから、複合不織布の坪量は42g/m2(=12g/m2+30g/m2)で、複合不織布におけるそれぞれの割合は、紙シート71%(=(30g/m2/42g/m2)×100)、スパンボンド不織布29%(=(12g/m2/42g/m2)×100)であること
・複合不織布のJIS L 1906の標準時引張強度が、実施例1で、MD方向:39.0N、CD方向:18.6N、実施例2で、MD方向:38.1N、CD方向:20.2N、実施例3で、MD方向:37.9N、CD方向:19.8Nであり、測定幅は5cmであるから(02甲6・2頁)、25mm幅に換算すると、実施例1で、MD方向:1,950cN/25mm、CD方向:930cN/25mm、実施例2で、MD方向:1,905cN/25mm、CD方向:1,010cN/25mm、実施例3で、MD方向:1,895cN/25mm、CD方向:990cN/25mmであること
・紙シート表面に390×104Paの水圧で高圧水柱処理を施したものであるから、barに換算すると、39barの水圧で高圧水柱処理を施したものであること
そうすると、02甲1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、それぞれ、「02甲1発明1」、「02甲1発明2」という。)。
(02甲1発明1)
「 ポリプロピレン繊維によるスパンボンド不織布に対して針葉樹晒クラフトパルプ繊維が一方面から高圧水柱流を施すことにより交絡された複合不織布からなるワイパーであり、
坪量が42g/m2であり、
スパンボンド不織布の目付量が12g/m2であり、
針葉樹晒クラフトパルプ繊維の割合が71%、スパンボンド不織布の割合が29%であり、
標準時引張強度が、MD方向で1,895~1,950cN/25mm、CD方向で930~1,010cN/25mmである、
ワイパー。」
(02甲1発明2)
「ポリプロピレン繊維による目付量12g/m2のスパンボンド不織布の上に、針葉樹晒クラフトパルプから得られた紙シートを積層する積層工程と、
孔径0.15mmのノズルから紙シート面に39barの圧力で水流を噴射する水流絡合工程と、
を有し、
標準時引張強度が、MD方向で1,895~1,950cN/25mm、CD方向で930~1,010cN/25mmであるワイパーとする、
ワイパーの製造方法。」
(2) 02甲7、9~14について
ア 02甲7について
02甲7には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 原料として、重量分子量分布曲線における分子量が2000以下である低分子量物の重量分率が1%未満、分子量が100万以上の高分子量物の重量分率が1%未満、かつ重量平均分子量が5万~20万であるポリオレフィンを用いたことを特徴とする不織布。」
・「【0008】さらに本発明の不織布は、60℃の20%エタノール水溶液、95℃の水および95℃の4%酢酸水溶液のそれぞれに不織布を浸漬し、30分浸出させた後の溶剤中の蒸発残留物がポリマーの重量に対して重量比率でいずれも2ppm以下であることが、食品衛生法の規格に適合する安全性を確保でき、また溶出物量が少なく臭いの発生を抑制できる点で好ましい。」
・「【0020】本発明の不織布は、分子量2000以下の低分子量物が少ないため、食品衛生法の「包装・容器の規格基準」の溶出試験を容易にクリアできる。この溶出試験方法は、20%エタノール水溶液、水、4%酢酸溶液の3種の浸出溶液による95℃(20%エタノール水溶液は60℃)、30分間の浸出後、溶剤を蒸発させたときの蒸発残留物がポリマーの重量に対して重量比率でいずれも30ppm以下というものである。本発明の不織布は、溶出物の一因である分子量2000以下の低分子量物が少ないため、さらに厳しい条件もクリアできることから、好ましい基準として、蒸発残留物をいずれも2ppm以下とした。蒸発残留物量が小さいということは、不織布が水や他の溶液等に浸漬されたときの溶出物が少ないということであり、飲料水やアルコール飲料等に不織布の臭いが移ったり、不純物が溶出して混入することがないため、飲料水やアルコール飲料等の液体用フィルターとして特に好適である。不織布を液体フィルターとして用いる際には、各溶液に対する蒸発残留物量が1.5ppm以下のものがより好ましく、さらに好ましくは1.0ppm以下である。」
・「【0026】(ハ)蒸発残留物量(溶出物量定量)
昭和57年2月16日厚生省告示第20号の蒸発残留物試験法に準じて測定した。使用温度が100℃を超える場合もあること、またエタノール溶液が最も蒸発残留物量が高いことを考慮し、20%エタノール溶液中に不織布を浸漬し、60℃で30分保持した後の溶剤中の蒸発残留物量を比較した。」
イ 02甲9について
02甲9(01甲6)には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
パルプ紙からなる耐水層と、
プラスチックフィルムからなる不透水層と、
パルプ紙又は不織布からなり、JIS P 8140で規定される吸水量が112g/m2を超える吸水層と、を順に備え、
前記耐水層と前記吸水層がそれぞれ表面層であることを特徴とする不透水性吸収シート。」
・「【0014】
耐水層11は、耐水性を有するパルプ紙である。パルプ紙表面のざらつきによって不透水性吸収シート53が氷等の保冷材の上で滑り、ずれることを防ぐことができる。耐水層11は、パルプ紙に耐水性を持たせるために、硫酸処理をしたり、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素-メラミン樹脂などの湿潤紙力増強剤を付与したり、染料などにより着色したものが挙げられる。耐水性は、WET時の引っ張り強度と水浸透性に判断することが好ましい。WET時の引っ張り強度は、縦0.85kN/m以上、横0.49kN/m以上であるものが好ましい。水浸透性は、JIS P 8122「紙及び板紙-サイズ度試験方法-ステキヒト法」を用い、試験片を4枚重ねにして水(赤インキ)が表面から裏面へ透過するまでの時間を測定した表及び裏の各平均値(日本電色製色差計)が、表で180秒以上、裏で180秒以上のものが好ましい。さらに、生鮮食品に直接触れるので、食品衛生法に基づく「食品、添加物等の規格基準」に適合するものが好ましい。例えば溶出試験において、20V/V%エタノール、4V/V%酢酸、n-ヘプタン、水を溶媒に用いた着色料を検出しないものが好ましい。」
ウ 02甲10について
02甲10には、以下の事項が記載されている(訳は、添付訳による。)。
・「[0002] The present invention refers to a hydroentangled well integrated composite nonwoven material, comprising a mixture of continuous filaments, synthetic staple fibres, and natural fibres.」
(本発明は、連続フィラメント、合成短繊維、天然繊維の混合物からなる水流絡合型高集積複合不織布に関する。)
・「[0003] An ideal wiper should be strong, absorbent, abrasion resistant and exhibit low linting.」
(理想的なワイパーは、強く、吸収性があり、耐摩耗性があり、糸くずが少ないものである必要がある。)
・「[0005] They can e.g. be used as wiping material for household or industrial use, as disposable materials in medical care and for hygiene purposes etc.」
(例えば、家庭用や工業用の拭き取り材として、医療用や衛生用の使い捨て材として使用することができる。)
・「[0016] A preferred material according to the invention comprises a mixture of 10-50% continuous filaments, 5-50% synthetic staple fibres, and 20-85% natural fibres, all percentages calculated by weight of the total nonwoven material. A more preferred material has 15-35% continuous filaments. More preferred is also 5-25% synthteic staple fibres. Also more preferred is 40-75% natural fibres.」
(本発明による好ましい材料は、連続フィラメント10~50%、合成ステープル繊維5~50%、及び天然繊維20~85%の混合物からなり、すべての割合は不織布材料全体の重量で計算される。より好ましい材料は、15~35%の連続フィラメントを有する。また、より好ましいのは5~25%の合成ステープル繊維である。また、より好ましいのは40~75%の天然繊維である。)
・「[0021] A preferred material according to the invention is where at least a part of the synthetic staple fibres are coloured, making up at least 3% of the total weight of the nonwoven, preferably at least 5%.」
(本発明による好ましい材料は、合成短繊維の少なくとも一部が着色されており、不織布の総重量の少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%を占めている。)
・「[0022] A preferred material according to the invention is where the natural fibres consist of pulp fibres, more preferably wood pulp fibres.」
(本発明による好ましい材料は、天然繊維がパルプ繊維、より好ましくは木材パルプ繊維からなる場合である。)
・「[0024] Especially when coloured staple or natural fibres are used the reduced twosidedness can very easily be discerned.」
(特に、着色されたステープルや天然繊維を使用した場合、両面性の低下が非常にわかりやすくなる。)
・「[0039] Meltblown filaments are produced by extruding. molten thermoplastic polymer through fine nozzles in very fine streams and directing converging air flows towards the polymers streams so that they are drawn out into continuous filaments with a very small diameter. Production of meltblown is e.g. described in U.S. Pat. Nos. 3,849,241 or 4,048,364. The fibres can be microfibres or macrofibres depending on their dimensions. Microfibres have a diameter of up to 20 μm, usually 2-12 μm. Macrofibres have a diameter of over 20 μm, usually 20-100 μm.」
(メルトブローフィラメントは、溶融した熱可塑性ポリマーを細いノズルから非常に細い流れで押し出し、収束する空気流をポリマーの流れに向け、非常に小さな直径の連続フィラメントに引き抜くことによって製造される。メルトブローの製造は、例えば、米国特許第3,849,000号明細書、米国特許第3,849,241号明細書または米国特許第4,048,364号明細書に記載されている。繊維は、その寸法に応じて、マイクロファイバー又はマクロファイバーとすることができる。マイクロファイバーは、最大20μm、通常は2~12μmの直径を有する。マクロファイバーは、20μmを超える直径を有し、通常は20~100μmである。)
・「[0041] Spunbond and meltblown filaments are as a group called spunlaid filaments, meaning that they are directly, in situ, laid down on a moving surface to form a web, that further on in the process is bonded. Controlling the 'melt flow index' by choice of polymers and temperature profile is an essential part of controlling the extruding and thereby the filament formation. The spunbond filaments normally are stronger and more even.」
(スパンボンドとメルトブローフィラメントは、スパンレイドフィラメントと呼ばれ、直接、その場で、移動する表面に敷かれてウェブを形成し、さらに工程で結合されることを意味している。ポリマーと温度プロファイルの選択による「メルトフローインデックス」の制御は、押出成形とそれによるフィラメント形成の制御に不可欠な部分である。スパンボンドフィラメントは、通常、より強く、より均一である。)
・「[0043] There are many types of natural fibres … Among the natural fibres possible to use there are primarily the cellulosic fibres such as … pulp.」
(天然繊維には多くの種類があり・・・パルプ等のセルロース系繊維がある。)
・「[0046] Wood pulp fibres are especially well suited to use, and both softwood fibres and hardwood fibres are suitable, and also recycled fibres can be used.」
(木材パルプ繊維が特に好適であり、針葉樹繊維、広葉樹繊維のいずれも使用可能であり、また再生繊維も使用することができる。)
・「[0052] For hydroentangled materials made by traditional wetlaid technology, the strength of the material and its properties like surface abrasion resistance are increased as a function of the fibre length (for the same thickness and polymer of the fibre).」
(従来のウェットレイド技術で作られた水流交絡材料の場合、材料の強度と表面耐摩耗性等の特性は、繊維の長さの関数として増加する(繊維の同じ厚さとポリマーの場合)。)
・「[0055] One general example of a method for producing the material according to the present invention is shown in FIG. 1 and comprises the steps of:
[0056] providing an endless forming fabric 1, where the continuous filaments 2 can be laid down, and excess air be sucked off through the forming fabric, to form the precursor of a web 3;
[0057] advancing the forming fabric with the continuous filaments to a wetlaying stage 4, where a slurry comprising a mixture of natural fibres 5 and staple fibres 6 is wetlaid on and partly into the precursor web of continuous filaments, and excess water is drained off through the forming fabric;
[0058] advancing the forming fabric with the filaments and fibre mixture to a hydroentangling stage 7, where the filaments and fibres are mixed intimately together and bonded into a nonwoven web 8 by the action of many thin jets of high-pressure water impinging on the fibres to mix and entangle them with each other, and entangling water is drained off through the forming fabric;
[0059] advancing the forming fabric to a drying stage (not shown) where the nonwoven web is dried;
[0060] and further advancing the nonwoven web to stages for rolling, cutting, packing, etc.」
(本発明による材料を製造するための方法の一般的な一例は、図1に示され、以下のステップからなる。
連続フィラメント2が敷設され、余分な空気が成形布を通して吸い取られ、ウェブ3の前駆体を形成することができる、エンドレス成形布1を提供する。
天然繊維5とステープル繊維6の混合物からなるスラリーを、連続フィラメントの前駆体ウェブ上及びその一部にウェットレイドし、余分な水を成形布を通して排出する、ウェットレイド段階4へ連続フィラメントの成形布を進める。
ここで、フィラメントと繊維は、繊維に衝突する高圧水の多数の細いジェットの作用により、互いに混合され、不織布ウェブ8に結合され、絡まった水は、形成ファブリックを通して排出される。
形成布を乾燥段階(図示せず)に進め、そこで不織布ウェブを乾燥させる。
さらに、不織布ウェブを圧延、切断、包装などのためのステージに進める。)
(図1)
[図:0001402786000011.jpg]
・「[0065] The basis weight of the formed filament precursor web 3 should be between 2 and 50 g/m2.」
(形成されたフィラメント前駆体ウェブ3の坪量は、2~50g/m2であることが好ましい。)
・「[0073] In the hydroentangling stage 7 the different fibre types will be entangled and a composite nonwoven material 8 is obtained in which all fibre types are substantially homogeneously mixed and integrated with each other. The fine mobile spunlaid filaments are twisted around and entangled with themselves and the other fibres, which gives a material with a very high strength.」
(水流絡合段階7では、異なる繊維タイプが絡み合い、すべての繊維タイプが実質的に均質に混合され、互いに一体化した複合不織布材料8を得ることができる。微細な移動性スパンレイドフィラメントは、それ自体や他の繊維に絡みつき、非常に高い強度を持つ材料が得られる。)
・「[0079] The entangling stage 7 can include several transverse bars with rows of nozzles from which very fine water jets under very high pressure are directed against the fibrous web to provide an entangling of the fibres. The water jet pressure can then be adapted to have a certain pressure profile with different pressures in the different rows of nozzles.」
(絡め取りステージ7は、ノズルの列を有するいくつかの横棒を含むことができ、そこから非常に高圧の非常に細かい水ジェットが繊維ウェブに対して向けられ、繊維の絡め取りが行われる。ウォータージェット圧力は、ノズルの異なる列で異なる圧力を持つ特定の圧力プロファイルを持つように適合させることができる。)
・「[0086] A composite nonwoven according to the invention can be produced with a total basis weight of 20-120 g/m2 , preferably 50-80 g/m2.」
(本発明による複合不織布は、総坪量20~120g/m2、好ましくは50~80g/m2で製造することができる。)
・「[0089] The secure bonding will result in very good resistance to abrasion.」
(確実な結合によって、耐摩耗性が非常に良好になる。)
・「[0090] As can be seen from the examples the staple fibres can be a mixture of fibres based on different polymers, with different lengths and dtex, and with different colours.」
(実施例から分かるように、ステープル繊維は、異なるポリマーに基づく繊維の混合物であり、異なる長さおよびdtexを有し、異なる色を有するものとすることができる。)
・「[0107] The set-up of Example 1 was repeated with blue coloured shortcut polypropylene staple fibres to study the mixing/integration of the staple fibres with the continuous spunlaid filaments and the pulp depending on the staple fibre length. The total basis weight of the composite material was around 80 g/m2 and the composition was 25% spunlaid filaments, 10% shortcut staple fibres and 65% chemical pulp. The titre of the spunlaid filaments was 2.3 dtex. The lengths of the blue shortcut 1.7 dtex PP staple fibres were 6 and 18 mm respectively.」
(ステープル繊維の長さによる連続スパンレイドフィラメントおよびパルプとの混合/一体化を調べるために、青色に着色したショートカットポリプロピレンステープル繊維で実施例1のセットアップを繰り返した。複合材料の総坪量は約80g/m2、組成はスパンレイドフィラメント25%、ショートカットステープルファイバー10%、化学パルプ65%であった。スパンレイドフィラメントの繊度は2.3dtexであった。1.7dtexのPP短繊維(ブルー)の長さは、それぞれ6mmと18mmであった。)
・「[0108] When the materials were observed visually it was obvious that the free side initially containing the 10% blue coloured staple fibres was more blue (or darker) compared to the fabric side. The lightness and colour of the materials were characterised using a Technidyne, Color Touch model instrument. As shown by the L*-Lightness values in FIG. 3 the fabric side was always lighter compared to the free side-more coloured fibres stayed on the side where they were laid down. As the results for the composites made with the 6 mm fibre compared to the results obtained with the 18 mm fibres show, the difference between the two sides was smaller for the 6 mm long fibres-indicating that the shorter fibres had easier to migrate to the other side. As the B* colour values were evaluated by the instrument a similar result, as seen in FIG. 4, was obtained that showed that the colour difference between the two sides was smaller when the 6 mm long fibres was used instead of the 18 mm long fibres, which also indicates that the shorter fibres had easier to migrate to the other side.」
(素材を目視で観察すると、10%の青色着色ステープル繊維を最初に含むフリー側は、布地側と比較してより青く(または濃く)なっていることが明らかであった。素材の明度および色は、TechnidyneのColor Touchモデル装置を用いて特性評価した。図3のL*-明度値で示されるように、布帛側は自由側と比較して常に明るく、より多くの色の繊維が敷設された側に留まった。また、6mm繊維を用いた複合材と18mm繊維を用いた複合材の結果を比較すると、6mm繊維の方が両面の差が小さく、短い繊維が反対側に移動しやすくなっていることが確認された。また、B*の色値を測定器で評価したところ、図4と同様の結果が得られ、18mmの繊維ではなく6mmの繊維を使用した方が、両者の色差は小さく、このことからも、短い繊維の方が反対側に移動しやすいことがわかる。)
・「[0110] The set-up of Example 1 was repeated with shortcut rayon staple fibres to study the mixing/integration of rayon staple fibres with the continuous spunlaid filaments and the pulp compared to polypropylene staple fibres. The total basis weight of the composite material was around 47 g/m2 and the composition was 25% spunlaid filaments, 10% shortcut rayon staple fibres and 65% chemical pulp.」
(ポリプロピレン短繊維と比較して、レーヨン短繊維と連続スパンレイドフィラメント及びパルプとの混合/一体化を調べるために、ショートカットレーヨン短繊維で実施例1のセットアップを繰り返した。複合材料の総坪量は約47g/m2、組成はスパンレイドフィラメント25%、ショートカットレーヨンステープルファイバー10%、化学パルプ65%であった。)
・「[0113] The set-up of Example 1 was repeated with black coloured shortcut polypropylene staple fibres to study the mixing/integration of the staple fibres with the continuous spunlaid filaments and the pulp depending on the staple fibre length. The total basis weight of the composite material was around 68 g/m2 and the composition was 25% spunlaid filaments, 10% shortcut staple fibres and 65% pulp.」
(実施例1のセットアップを、黒色のショートカットポリプロピレンステープル繊維で繰り返し、ステープル繊維の長さによる連続スパンレイドフィラメント及びパルプとの混合/一体化を研究した。複合材料の総坪量は約68g/m2で、組成はスパンレイドフィラメント25%、ショートカットステープルファイバー10%、パルプ65%であった。)
・「3. The hydroentangled nonwoven material according to claim 1, wherein the mixture is made up of 10-50%, continuous filaments, 20-85%, natural fibres, and 5-50%, synthetic staple fibres, all percentages calculated by weight of the total nonwoven material.」
(3.混合物が、10~50%、連続フィラメント、20~85%、天然繊維、および5~50%、合成短繊維からなり、すべての割合が不織布材料全体の重量で計算される、請求項1に記載の水流絡合不織布材料。)
・「4. The hydroentangled nonwoven material according to claim 1, wherein the continuous filaments are spunlaid filaments.」
(4.連続フィラメントがスパンレイドフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の水流絡合不織布材料。)
・「5. The hydroentangled nonwoven material according to claim 4, wherein the continuous filaments are selected from the group consisting of polypropylene, polyesters, and polylactides.」
(5.連続フィラメントが、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリ乳酸からなる群から選択される、請求項4に記載の水流絡合不織布材料。)
・「6. The hydroentangled nonwoven material according to claim 1, wherein the continuous filaments web part of the composite has a basis weight of at most 40 g/m2.」
(6.複合体の連続フィラメントウェブ部分が、多くとも40g/m2の坪量を有する、請求項1に記載の水流絡合不織布材料。)
・「7. A hydroentangled nonwoven material according to claim 1, wherein the synthetic staple fibres have a length of 4 to 6 mm, and are selected from the group consisting of polyethylene, polypropylene, polyesters, polyamides, polylactides, rayon, and lyocell.」
(7.合成短繊維が4~6mmの長さを有し、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、レーヨン、及びリヨセルからなる群から選択される、請求項1に記載の水流絡合不織布材料。)
・「8. The hydroentangled nonwoven material according to claim 1, wherein a part of the synthetic staple fibres are coloured, making up at least 3% of the total weight of the nonwoven.」
(8.合成短繊維の一部が着色されており、不織布の総重量の3%以上を占める請求項1に記載の水流絡合不織布。)
・「13. The hydroentangled nonwoven material according to claim 8, wherein a part of the synthetic staple fibres are coloured, making up at least 5% of the total weight of the nonwoven.」
(13.合成短繊維の一部が着色されており、不織布の総重量の5%以上を占める請求項8に記載の水流絡合不織布。)
エ 02甲11について
02甲11には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
結合繊維性材料が液体の中で懸濁されている間に、水圧破砕により少なくとも1つの不規則な歪みが発生させられて前記結合繊維性材料から分離された合成材料からなる少なくとも1つの糸要素を含む、リサイクル合成繊維及び繊維状材料を含む、水圧交絡された不織布。」
・「【請求項9】
パルプ繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の水圧交絡された不織布。」
・「【0008】パルプの繊維部材は、木質植物及び/又は非木質植物の繊維パルプとすることができる。パルプは、異なる種類及び/又は量のパルプ繊維の混合としてもよい。本発明は、さらに、水圧交絡された不織布を、少量の、例えば、結合剤、界面活性剤、架橋剤、剥離剤、難燃剤、水和剤、顔料及び/又は染料のような材料で処理することを意図する。」
オ 02甲12について
02甲12には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
表面と裏面とを有する不織布において、前記不織布の裏面側に繊維の毛羽立ちによる模様を有することを特徴とする不織布。
【請求項2】
自動車内装表皮材として使用する、請求項1に記載の不織布。」
・「【0001】
本発明は不織布、特には、自動車内装表皮材として好適に使用できる不織布に関する。」
・「【0024】
本発明の不織布を構成する繊維は特に限定するものではないが、例えば、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ポリウレタン繊維などの合成繊維を1種類、又は2種類以上使用することができる。また、上記のような繊維構成樹脂を2種類以上含む、繊維横断面が芯鞘型、貼合わせ型、海島型、オレンジ型、多層積層型の複合繊維を使用することもできる。特に、ポリエステル原着繊維は変色しにくいため好適に使用することができる。また、繊維横断面が芯鞘型の熱融着性繊維は融着力に優れ、不織布の耐摩耗性や強度を高めることができるため好適に使用できる。特に、熱融着性繊維が顔料で着色されていると、不織布表面の意匠性に優れているため好適である。」
カ 02甲13について
02甲13(01甲4)には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
食品の製造、加工、処理、調理用機械、装置、器具の表面或いは作業者の手を清拭するために、醗酵エタノール、プロピレングリコール、緑茶エキス、醗酵乳酸、安息香酸、安息香酸Na、クエン酸、ブチルパラベンから選ばれた除菌・抗菌成分を有する含浸液を、親水性繊維を含む不織布に含浸させたウエットワイパーであって、
前記不織布は、前記機械、装置、器具によって食品の製造、加工、処理、調理中に、前記ウエットワイパーが誤って食品に混入したとき視認できるように青色に染色されていることを特徴とするカラーウエットワイパー。」
・「【0024】
本考案のカラーウエットワイパーにおいて、不織布の染色方法としては、綿や糸の状態で染める先染め方法が好ましく、中でも溶融した不織布原料の中に着色剤を直接混ぜ込んで製造する原着が好ましい。これは不織布の染色において、通常行われているビーム染色、液流染色、ジッカー染色、ディッピング染色などと比較し、摩擦や含浸液への着色剤の溶解によって、色落ちや色移り、変色が少ないからである。」
キ 02甲14について
・「【請求項1】 約30重量パーセント以下の不織連続フィラメント支持体と、約70重量パーセント以上のパルプ繊維を含むことを特徴とする水圧による交絡によって形成されたパルプ含有率の高い不織複合布。」
・「【請求項15】 請求項13において、前記連続フィラメント不織支持体は連続スパンボンデッド・フィラメントの不織ウエブであることを特徴とする不織複合布。」
・「【0018】本発明は、不織複合布を、少量の材料、例えば、結合剤、界面活性剤、架橋剤、剥離剤、燃焼遅延剤、水和剤および/または色素等で処理することも意図している。このような処理を行う代わりに、および/またはこのような処理に加えてさらに、本発明は、各種の粒子、例えば、活性炭、粘土、スターチ、および超吸収体を不織複合布に付加することも意図している。」
・「【0028】連続フィラメントの不織支持体20は供給ロール22から巻き出されて、この供給ロール22がそこに付されている方向に回転するのに伴って、矢印で示す方向に移動する。不織支持体20は、スタック・ローラ28、30から形成されているS形ロール列26のニップ部24を通過する。不織支持体20は公知の連続フィラメント不織押し出し工程、例えば公知の溶剤スピニング工程あるいは溶融スピニング工程により形成することができ、供給ロールに巻き取られることなく、ただちにニップ部16を通過する。この連続フィラメント不織支持体20はスパンボンド処理によって形成された連続溶融スパンフィラメントの不織ウエブであることが好ましい。このスパンボンドフィラメントは、溶融スピンが可能なポリマーあるいはコーポリマー、またはそれらのブレンドから形成することができる。例えば、スパンボンドフィラメントは、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリウレタン類、A-BおよびA-B-A’ブロック・コーポリマー類(ここに、AおよびA’は熱可塑性エンドブロックであり、Bはエラストマー・ミッドブロックである。)、エチレンと少なくとの1種類のビニルモノマーのコーポリマー類(ビニルモノマーとしては、ビニルアセテート類、不飽和脂肪族モノカルボン酸類およびこれらのモノカルボン酸類のエステル類等がある。)から形成することができる。フィラメントが、ポリオレフィン、例えばポリプロピレンから形成される場合には、不織支持体20の秤量は約3.5から約70gsmになる。さらに言及すると、不織支持体20の秤量は約10から約35gsmとなる。ポリマー類には、色素、酸化防止剤、流動促進剤、安定剤などの材料が含まれる。」
(3) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と02甲1発明1とを、その機能に照らして対比する。
(ア) 02甲1発明1における、「ポリプロピレン繊維」、「針葉樹晒クラフトパルプ繊維」、「高圧水柱流を施すことにより交絡された」点、「複合不織布」、「ワイパー」は、それぞれ、本件発明1における、「合成樹脂繊維」、「パルプ繊維」、「水流絡合された」点、「パルプ混合不織布」、「不織布ダスター」に相当する。
(イ) 02甲1発明1は、「坪量が42g/m2」であり、「スパンボンド不織布の目付量が12g/m2」であり、「針葉樹晒クラフトパルプ繊維の割合が71%、スパンボンド不織布の割合が29%」であるから、本件発明1と同様に、「坪量が40~70g/m2」であり、「スパンボンド不織布の目付量が10~25g/m2」であり、「パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が20~40質量%」である。
(ウ) そうすると、本件発明1と02甲1発明1とは、次の点で一致し、相違するものと認められる。
(一致点1)
「合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布に対してパルプ繊維が一方面から水流絡合されたパルプ混合不織布からなる不織布ダスターであり、
坪量が40~70g/m2であり、
スパンボンド不織布の目付量が10~25g/m2であり、
パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が20~40質量%である、
不織布ダスター。」
(相違点1)
本件発明1は、「乾燥引張強度」が、「縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mm」であるのに対し、02甲1発明1では、標準時引張強度が、MD方向で1,895~1,950cN/25mm、CD方向で930~1,010cN/25mmである点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、着色繊維であり」、「かつ、前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」のに対し、02甲1発明1では、そのように構成されていない点。
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
a 02甲1(01甲2、前記(1))によれば、02甲1に記載された複合不織布は、湿潤時のみならず、非湿潤状態においても柔軟で風合いに優れ、キッチンタオル、ワイパー、テーブルカバー、ディナー用マット等の雑貨用シート、ドリップ吸収材や包装材料等に好適に使用できる複合不織布を提供することを目的としたもので(【0006】)、02甲1には複合不織布を着色する点について記載、示唆は特段ないから、02甲1発明1において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、動機付けがあるとは認められない。
b 02甲10(前記(2)ウ)には、スパンレイドフィラメントである連続フィラメント、天然繊維、合成短繊維からなる、水流絡合不織布材料が記載されており、合成短繊維の一部を着色すること、それにより両面性の低下が非常にわかりやすくなること、青色に着色した合成短繊維側が青くなっていることなどが記載されている。しかしながら、それにとどまり、連続フィラメントについて、着色料を練り込むことで色付けする点については、記載、示唆はない。
c 02甲12(前記(2)オ)には、表面と裏面とを有する不織布において、裏面側に繊維の毛羽立ちによる模様を有するものが記載されており(【請求項1】)、ポリエステル原着繊維が変色しにくいため好適に使用することができる旨記載されているが(【0024】)、自動車内装用表皮材に使用する不織布であって(【請求項2】、【0001】)、着色は不織布表面の意匠性に着目したものであり、02甲1発明1とは、用途、前提の構造が異なる上、課題に共通性があるとも認められない。
02甲13(01甲4、前記(2)カ)には、除菌・抗菌成分を有する含浸液を不織布に含浸させたウェットワイパーであって、誤って食品に混入したとき視認できるように青色に染色されているものが記載されており(【請求項1】)、溶融した不織布原料の中に着色剤を直接混ぜ込んで製造する原着が好ましいことが記載されているが(【0024】)、02甲1発明1とは前提の構造が異なる。
02甲14には、連続スパンボンデッド・フィラメントの不織ウェブである不織連続フィラメント支持体と、パルプ繊維を含む、水圧による交絡によって形成された不織複合布が記載されており(【請求項1】、【請求項15】)、不織複合布を少量の色素等で処理すること(【0018】)、不織支持体のポリマー類に色素等の材料が含まれること(【0028】)が記載されているが、色素で処理すること、色素が含まれることの目的について特段記載されていない。
02甲7(前記(2)ア)には、原料として、重量分子量分布曲線における分子量が2000以下である低分子量物の重量分率が1%未満、分子量が100万以上の高分子量物の重量分率が1%未満、かつ重量平均分子量が5万~20万であるポリオレフィンを用いた不織布が記載され(【請求項1】)、60℃の20%エタノール水溶液、95℃の水および95℃の4%酢酸水溶液のそれぞれに不織布を浸漬し、30分浸出させた後の溶剤中の蒸発残留物がポリマーの重量に対して重量比率でいずれも2ppm以下であることが、食品衛生法の規格に適合する安全性を確保でき、また溶出物量が少なく臭いの発生を抑制できる点で好ましい旨記載されているが(【0008】、【0020】、【0026】)、02甲1発明1とは前提の構造が異なる上、着色についても不明である。
02甲9(01甲6、前記(2)イ)には、パルプ紙からなる耐水層と、プラスチックフィルムからなる不透水層と、パルプ紙又は不織布からなる吸水層と、を順に備え、耐水層と吸水層がそれぞれ表面層である不透水性吸収シートが記載され(【請求項1】)、耐水層11は、耐水性を有するパルプ紙で、染料などにより着色したものが挙げられること、さらに、生鮮食品に直接触れるので、食品衛生法に基づく「食品、添加物等の規格基準」に適合するものが好ましく、例えば溶出試験において、20V/V%エタノール、4V/V%酢酸、n-ヘプタン、水を溶媒に用いた着色料を検出しないものが好ましいことが記載されているが(【0014】)、不織布ダスターではなく、パルプ紙からなる耐水層を染料などにより着色したもので、02甲1発明1とは用途、前提の構造が異なる。
02甲11(前記(2)エ)には、結合繊維性材料が液体の中で懸濁されている間に、水圧破砕により少なくとも1つの不規則な歪みが発生させられて結合繊維性材料から分離された合成材料からなる少なくとも1つの糸要素を含む、リサイクル合成繊維及び繊維状材料を含む、水圧交絡された不織布であって、パルプ繊維をさらに含むものが記載され(【請求項1】、【請求項9】)、水圧交絡された不織布を、少量の顔料、染料のような材料で処理することを意図する旨記載されているが(【0008】)、02甲1発明1とは、前提の構造が異なる上、不織布を、少量の顔料、染料のような材料で処理することの目的について特段記載されていない。
このように、02甲12~14には、不織布の合成樹脂繊維に着色料を練り込む点について記載、示唆があり、02甲7、9、11には、着色する点について記載、示唆はあるものの、これらの記載によって、02甲1発明1において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、特段動機付けられるものとは認められない。
d その他の証拠(02甲2~6、8、15、01甲1、5、7~9)をみても同様である。
例えば、01甲5(前記第5・5(2)イ)には、熱可塑性樹脂を溶融紡糸し、多数の連続長フィラメントを捕集してウェブとした後、該ウェブに規則的な融着区域を設けて得られるスパンボンド不織布からなる清掃用シートが記載されており(【請求項1】)、溶融紡糸に際しては、必要に応じて、顔料等を添加してもよい旨記載されているが(【0009】)、02甲1発明1とは前提の構造が異なる上、顔料を添加することの目的について特段記載されていない。
01甲7(前記第5・5(2)エ)には、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られる多数の連続フィラメント群を延伸、開繊して、捕集・堆積したウェブに熱エンボスによる連続フィラメント同士が熱融着している区域が散点状に設けられたスパンボンド不織布からなる清掃用シートが記載され(【請求項1】)、熱可塑性樹脂には、必要に応じて、顔料等を添加して用いても良い旨記載されているが(【0010】)、02甲1発明1とは前提の構造が異なる上、顔料を添加することの目的について特段記載されていない。
01甲9(前記第5・5(2)オ)には、スパンボンド不織布の連続フィラメントと紙シートのパルプ繊維を相互に交絡させた複合不織布が記載されており(【請求項1】)、熱可塑性樹脂には、必要に応じて、顔料等を添加して用いても良い旨記載されているが(【0007】)、各種エアフィルターに好適に用いられるもので(【0001】)、02甲1発明1とは前提の用途が異なる上、顔料を添加することの目的について特段記載されていない。
たとえ、上記の証拠に記載された事項が知られていたとしても、02甲1発明1において、ポリプロピレン繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である、着色繊維であり、かつ、針葉樹晒クラフトパルプ繊維とポリプロピレン繊維の色が異なり、ポリプロピレン繊維及び針葉樹晒クラフトパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、針葉樹晒クラフトパルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認されるようにすること、すなわち、相違点2に係る構成とすることについて、動機付けられるものとは認められない。
e そして、本件発明1は、相違点2に係る構成を備えることにより、「表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難いパルプ混合不織布としての不織布ダスター…を提供する」(本件特許明細書【0014】)、「摩擦時における色落ちが非常に発生し難い。摩擦時における色落ちが非常に発生し難い。そして、特にパルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差がはっきりと視認しやすい。さらに、スパンボンド不織布面とパルプ繊維面とで地合いに明確な差があるため二つ折り、四つ折りした際においても表裏を認識しやすい。」(同【0022】)といった、格別な効果を奏するものである。
そうすると、02甲1発明1において、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(イ) 以上のとおりであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明1は、02甲1発明1及び02甲2~15に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(4) 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、02甲1発明1及び02甲2~15に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(5) 本件発明3について
ア 対比
本件発明3と02甲1発明2とを、その機能に照らして対比する。
(ア) 02甲1発明2における、「ポリプロピレン繊維」、「針葉樹晒クラフトパルプ繊維から得られた紙シート」、「積層工程」は、それぞれ、本件発明3における、「合成樹脂繊維」、「乾燥パルプシート」、「積層工程」に相当する。
また、02甲1発明2の「スパンボンド不織布」は「目付量12g/m2」であるから、本件発明3と同様に、目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布である。
(イ) 02甲1発明2の「水流絡合工程」は、「孔径0.15mmのノズルから紙シート面に39barの圧力で水流を噴射する」ものであるから、本件発明3の「水流絡合工程」と、「ノズルから乾燥パルプシート面に」「水流を噴射する」点で共通する。
(ウ) 02甲1発明2の「ワイパー」は、本件発明3の「不織布ダスター」に相当する。
(エ) そうすると、本件発明3と02甲1発明2とは、次の点で一致し、相違するものと認められる。
(一致点2)
「合成樹脂繊維による目付量10~25g/m2のスパンボンド不織布の上に、乾燥パルプシートを積層する積層工程と、
ノズルから乾燥パルプシート面に水流を噴射する水流絡合工程と、
を有する、
不織布ダスターの製造方法。」
(相違点3)
本件発明3は、スパンボンド不織布の合成樹脂が「着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下である」合成樹脂であり、「合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色する工程を有さず」、「前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」不織布ダスターとするのに対し、02甲1発明2はそのように構成されていない点。
(相違点4)
本件発明3は、水流絡合工程において、「ノズル径0.5~1.5mmφ」のノズルから乾燥パルプシート面に「100~110barの圧力で」水流を噴射するのに対し、02甲1発明2では、孔径0.15mmのノズルから紙シート面に39barの圧力で水流を噴射する点。
(相違点5)
本件発明3は、「乾燥引張強度」が、「縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mm」である不織布ダスターとするのに対し、02甲1発明2では、標準時引張強度が、MD方向で1,895~1,950cN/25mm、CD方向で930~1,010cN/25mmであるワイパーとする点。
イ 判断
(ア) まず、相違点3について判断する。
a 02甲1に記載された複合不織布は、湿潤時のみならず、非湿潤状態においても柔軟で風合いに優れ、キッチンタオル、ワイパー、テーブルカバー、ディナー用マット等の雑貨用シート、ドリップ吸収材や包装材料等に好適に使用できる複合不織布について着色することを目的としたもので(前記(3)イ(ア)a)、02甲1には複合不織布を着色する点について記載、示唆は特段ないから、02甲1発明2において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、動機付けがあるとは認められない。
b 02甲10には、スパンレイドフィラメントである連続フィラメント、天然繊維、合成短繊維からなる、水流絡合不織布材料に関し、合成短繊維の一部を着色すること、それにより両面性の低下が非常にわかりやすくなること、青色に着色した合成短繊維側が青くなっていることなどが記載されているが、水流絡合不織布材料の連続フィラメントについて、着色料を練り込むことで色付けする点については、記載、示唆はない(前記(3)イ(ア)b)。
c 02甲12~14には、不織布の合成樹脂繊維に着色料を練り込む点について記載、示唆があり、02甲7、9、11には、着色する点について記載、示唆はあるものの、これらの記載によって、02甲1発明2において、ポリプロピレン繊維について、着色料を練り込むことも含め色付けすることに関し、特段動機付けられるものとは認められない(前記(3)イ(ア)c)。
d その他の証拠(02甲2~6、8、15、01甲1、5、7~9)をみても同様で(前記(3)イ(ア)d)、上記の証拠に記載された事項が知られていたとしても、02甲1発明2において、ポリプロピレン繊維について、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下であるものとし、ポリプロピレン繊維及び針葉樹晒クラフトパルプ繊維がインキによって外的に着色する工程を有さず、針葉樹晒クラフトパルプ繊維とポリプロピレン繊維の色が異なり、針葉樹晒クラフトパルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認されるワイパーとすること、すなわち、相違点3に係る構成とすることについて、動機付けられるものとは認められない。
e そして、本件発明3は、相違点3に係る構成を備えることにより、「表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難いパルプ混合不織布としての…不織布ダスターの製造方法を提供する」(本件特許明細書【0014】)、製造される不織布ダスターが「摩擦時における色落ちが非常に発生し難い。摩擦時における色落ちが非常に発生し難い。そして、特にパルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差がはっきりと視認しやすい。さらに、スパンボンド不織布面とパルプ繊維面とで地合いに明確な差があるため二つ折り、四つ折りした際においても表裏を認識しやすい。」(同【0022】)といった、格別な効果を奏するものである。
そうすると、02甲1発明2において、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
(イ) 以上のとおりであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明3は、02甲1発明2及び02甲2~15に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(6) 本件発明4について
本件発明4は、本件発明3を特定するための事項を全て含むものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明4は、本件発明3と同様の理由により、02甲1発明2及び02甲2~15に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
3 36条4項1号(実施可能要件)及び36条6項1号(サポート要件)について
(1) 本件発明1について
ア 数値限定の数値範囲について
(ア) 申立人は、本件発明1に関し数値限定されている以下の点について、本件発明1の数値範囲全体にわたって課題が解決できているのか不明である、などと主張している。
・「坪量が40~70g/m2」であること。
・「スパンボンド不織布の目付量が10~25g/m2」であること。
・「パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が20~40質量%」であること。
・「乾燥引張強度が、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mm」であること。
・「前記スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされ、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸及び水に対する溶出試験において、ヘプタンが150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸及び水が30μg/ml以下」であること。
(イ) 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題に関し、以下の記載がある。
・「惣菜や弁当の製造工場、スーパーマーケットのバックヤードでは、不織布製のダスターが多く使われている。…パルプ繊維と合成樹脂製の不織布とを水流により交絡させたパルプ混合不織布も用いられる。」(【0002】)ところ、「不織布ダスターは、使用場所や拭き取り対象物によって異なるダスターを使い分けしやすいように、表裏に視認しやすい色柄が設けられている。この色柄は、片面から印刷によって形成されるのが一般的である。ダスターは、密度が疎であるため、片面から印刷しても裏面にまでインキが浸透して表裏に容易に色柄を形成することができる。」(【0003】)が、「従来の色柄付きのダスターは、消毒等に使用されるアルコールや次亜塩素酸等の薬液によって色落ちすることがあるという問題があった。」(【0004】)
・「異なるダスターを使用するほどでもないが同じ部分を使用したくない場合などにおいて、ダスターの表裏面で使い分けをしたいということもあるが、従来の色柄付きダスターは、表裏の色柄が同じであるため、表裏での使い分けがし難いという問題があった。…表裏に別の色柄を設けることも考えられるが上記のとおりダスターに用いられる不織布は密度が疎であるためインキが裏面に浸透しやすく、表裏別の印刷をすることが難しく、また、表裏別の印刷を行うとコストも高くなる。」(【0005】)
・「特にパルプ混合不織布のダスターは、合成樹脂繊維の不織布からバインダー臭が異臭として感じられることがあった。」(【0006】)
・「そこで、本発明の主たる課題は、吸液性と耐摩耗性に優れ、表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難いパルプ混合不織布としての不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法を提供することにある。」(【0008】)
そして、本件発明は、請求項1~4に記載された事項を備えることにより、「吸液性と耐摩耗性に優れ、表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難いパルプ混合不織布としての不織布ダスター及び不織布ダスターの製造方法が提供される。」(【0014】)といった効果を奏するものである。
また、発明の詳細な説明には、「本実施形態」に関し、以下の記載がある。
・「本実施形態に係る不織布ダスターの坪量は、40~70g/m2である。…拭き取りに必要な強度及び十分な吸液性となる。…また、パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が30~40質量%である。このパルプ配合割合は、高い数値であり、吸液性の点で優れるようになる。…また、スパンボンド不織布における合成樹脂繊維の目付量が10~25g/m2と低く、スパンボンド不織布の割合が30~40質量%であるため、パルプ繊維の吸水性を十分に発揮できる。さらに、この目付量であることによりパルプ繊維層とスパンボンド不織布層との一体性が高く、耐摩耗性が高く特にパルプ繊維面を使用した際におけるパルプ繊維落ちが発生し難くなる。さらに、スパンボンド不織布であることからバインダー成分を必要ないためバインダーに起因する異臭が発生しないものとなる。また、バインダーを用いてもその目付量が低いことからバインダーの使用量を少なくできバインダーに起因する異臭の発生もし難いものとなる。」(【0019】)
・「ここで、本実施形態の不織布ダスターは、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされた着色繊維となっている。特に、上記の目付量とすることで着色された合成樹脂繊維が十分な色の濃さとなって視認できるようになる。…但し、摩擦による色落ちに関係なく、ヘプタン、20%エタノール、4%酢酸、水に対する溶出試験においてヘプタンは150μg/ml以下、20%エタノール、4%酢酸、水で30μg/ml以下である必要がある。」(【0020】)
・「本実施形態の不織布ダスターでは、特に、パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なる。このようにパルプ繊維とスパンボンド不織布の繊維の色が異なると、本実施形態の不織布ダスターでは表裏が異なる色として視認されるようになる。」(【0021】)
・「本実施形態の不織布ダスターでは、パルプ繊維とスパンボンド不織布との絡合による一体性が高いうえ、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維やパルプ繊維がインキ等によって外的に着色されておらず、合成樹脂繊維が着色料が練りこまれて色付けされた着色繊維となっていることから摩擦時における色落ちが非常に発生し難い。そして、特にパルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差がはっきりと視認しやすい。さらに、スパンボンド不織布面とパルプ繊維面とで地合いに明確な差があるため二つ折り、四つ折りした際においても表裏を認識しやすい。また、実施形態の不織布ダスターは、スパンボンド不織布面は耐摩耗性に優れるとともに油に対してなじみやすく、また、パルプ繊維面は柔らかく水となじみやすいため表裏の使い分けもしやすい。」(【0022】)
・「ここで、本実施形態の不織布ダスターは、乾燥引張強度の縦横比が3.0以下、好ましくは2.5以下であるのが望ましい。縦方向及び横方向の具体的な乾燥引張強度は、必ずしも限定されないが、縦方向で2,000~3,400cN/25mm、横方向で700~1,600cN/25mmであるのが望ましい。この範囲であれば拭き取りに十分な強度である。」(【0023】)
発明の詳細な説明には、上記「本実施形態」の実施例である実施例1、2の試験結果が示され(【表1】)、「実施例1及び実施例2は、耐摩耗強度試験時における色落ちが発生していない。また、色泣きの試験においても実施例1及び実施例2は、5級の評価でまったく色泣きがない。」(【0039】)、「実施例1及び実施例2は、スパンボンド不織布面においては、非常に高い耐摩耗強度を有しており、パルプ繊維面における耐摩耗強度も、…これらの従来例と同様に使用ができる。」(【0040】)、「実施例1及び実施例2は、パルプ繊維と合成樹脂繊維との絡合がしっかりしたものとなっており、色落ち等の発生もなく、スパンボンド不織布面及びパルプ繊維面において十分な使用が可能で使い分けができる。」(【0041】)、「さらに、実施例と比較例とを比較してみると、実施例において縦方向及び横方向の乾燥引張強度が特段低いということもなく、また、吸水量や吸油量も十分に発現している。これらの結果からすると本発明の実施例は、吸液性と耐摩耗性に優れ、表裏での使い分けがしやすく、また色落ちがし難い不織布ダスターとなっている。」(【0042】)と記載されている。
(【表1】)
[図:0001402786000012.jpg]
このように、発明の詳細な説明には、本件発明1について、「本実施形態」が開示されており、「本実施形態」に関する記載によれば、本件発明1は、上記課題を解決することができるものであることがわかる。
確かに、発明の詳細な説明に記載された実施例は二例であるが、「本実施形態」に関する記載を総合すると、本件発明1において特定されている数値限定の全範囲において、課題を解決することができることは理解でき、そうではないとする特段の事情も認められない。なお、実施例1、2における合成樹脂の溶出量は明らかにされていないものの、耐摩耗強度、色泣きの試験結果から、実施例1、2は色落ちが発生していないことがわかり、色落ちがし難いとする課題を解決していることが理解できる。
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載を総合すると、本件発明1は、数値限定についても含め、課題を解決することができるものと認められる。
また、発明の詳細な説明には、数値限定についても含め、本件発明1をどのように実施をするかを理解することができないとすべき点は認められない。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
イ 実施例及び比較例の条件設定について
申立人は、実施例及び比較例の条件設定が適切でないため、本件発明1で規定された数値範囲の臨界的意義の存否を確認することができない、などと主張している。
しかしながら、本件発明1で規定された数値範囲の臨界的意義の存否が明らかでないとしても、既に述べたとおり(前記ア)、本件発明1は、数値範囲内において課題を解決することができるものであり、どのように実施をするかを理解することができるものである。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
ウ 「前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」点について
申立人は、「着色繊維の色が異なり」、「色の差が視認される」ことについて、課題が解決できる程度の十分な記載がされていないし、実施例においても、十分にサポートされていない、などと主張している。
本件発明1は、既に述べたとおり、表裏での使い分けがしやすいことを課題としているところ(前記ア(イ))、「着色繊維の色が異なり」、「色の差が視認される」(人の目視により確認される)ことも、表裏での使い分けがしやすいか否かで判断されること、当業者が技術常識として備えている基準をもとに判断されることは明らかで、発明の詳細な説明に明記がないからといって、直ちに、本件発明1が課題を解決することができないものとは認められない。
また、本件発明1をどのように実施をするかを理解することができないというほどの事情も認められない。
以上の点は、本件発明2~4についても同様である。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(2) 本件発明2について
申立人は、実施例1、2は、パルプ繊維が非着色であってISO白色度が85%以上の漂白パルプを使用したものであるか不明で、NBKPを95%以上含有したパルプ繊維であるかも不明であり、合成樹脂繊維が白色以外の色に着色されているものであって、その太さが18~22μmである繊維を使用したのか不明であるから、本件発明2は、実施可能要件、サポート要件を満たしていない、などと主張している。
しかしながら、「本実施形態」に関する記載(【0017】、【0021】、【0029】)から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2が上記の事項を備えていることがわかる上、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載を総合すると、本件発明2は、課題を解決することができるものと認められる。
また、本件発明2をどのように実施をするかを理解することができないというほどの事情も認められない。
この点は、本件発明4についても同様である。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(3) 本件発明3について
申立人は、実施例1、2は、ノズル径、水圧が不明であるから、実施可能要件、サポート要件を満たしていない、などと主張している。
しかしながら、「本実施形態」に関する記載(【0029】)から、「本実施形態」の実施例である実施例1、2が、ノズル径0.5~1.5mmφのノズルから100~110barの圧力で水流を噴射すること(請求項3)により製造されたものであることがわかる上、発明の詳細な説明の「本実施形態」に関する記載を総合すると、本件発明3をどのように実施をするかを理解することができないというほどの事情も認められない。
また、本件発明3は、課題を解決することができるものと認められる。
この点は、本件発明4についても同様である。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(4) 以上のとおり、本件発明は、対応する発明の詳細な説明の記載が、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとはいえず、実施可能要件を満たしていないとは認められない。
また、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えているとはいえず、サポート要件を満たしていないとは認められない。
4 36条6項2号(明確性要件)について
申立人は、本件発明1の「前記パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なり、合成樹脂繊維及びパルプ繊維がインキによって外的に着色されておらず、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される」点に関し、「着色繊維の色が異な」ること、「色の差が視認される」ことの意味するところが不明確である、などと主張している。
しかしながら、上記の点が、パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なること、パルプ繊維面とスパンボンド不織布面の色の差が視認される(人の目視により確認される)ものであることを意味することは明らかで、特段不明確なところはない。
この点は、本件発明2~4についても同様である。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
以上のとおり、本件発明は不明確であるとはいえず、明確性要件を満たしていないとは認められない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700280