特許異議申立
2021-700312
白色発光装置および照明装置
- 審判番号
- 2021-700312
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-160569
- 登録番号
- 6763071
- 請求日
- 2021年03月29日
- 審決日
- 2022年05月20日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ソウル セミコンダクター カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
- 【異議申立人】田村 千佐子
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 山村 浩
- 審判官 杉田 翠
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.113-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6763071号発明「白色発光装置および照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6763071号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~9]について訂正することを認める。
特許第6763071号の請求項1~3、6~9に係る特許を維持する。
特許第6763071号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6763071号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)10月3日(優先権主張 平成24年10月4日、平成24年10月17日、平成24年10月30日)を国際出願日とする出願である特願2014-539617号の一部を2018年(平成30年)3月5日に新たな特許出願とした特願2018-38625号の一部を令和元年9月3日に新たな特許出願としたものであって、令和2年9月11日にその特許権の設定登録がされ、令和2年9月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年 3月29日 :特許異議申立人田村千佐子(以下「申立人」という。)による全請求項に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 7月19日付け:取消理由通知書
令和 3年12月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)の提出
なお、当審は、特許法120条の5第5項の規定に基づき、申立人に対して相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は、指定期間内に意見書を提出しなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は特許権者が付したものである。)。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項[1~9]に対して請求されている。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項[1~9]について請求されたものである。
(1)訂正事項1
請求項1に、
「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、
前記蛍光体層は、420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、
前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、
前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きく、
380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルにおける前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、
前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下である、」と記載されているのを、
「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、
前記蛍光体層は、420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、
前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、
前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きく、
380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、
前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下であり、
380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~3、6~9も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
請求項3に、
「前記白色光の555nmの波長での放射束に対して430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束の比は、0.5以上1.3以下であり、
前記白色光の555nmの波長での放射束に対して380nm以上420nm以下の波長領域でのピーク放射束の比は、0以上1.3以下である」と記載されているのを、
「前記白色光の555nmの波長での分光放射束に対して430nm以上480nm以下の波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束の比は、0.5以上1.3以下であり、
前記白色光の555nmの波長での分光放射束に対して380nm以上420nm以下の波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束の比は、0以上1.3以下である」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~9も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
請求項5を削除する。
(5)訂正事項5
請求項6に、
「請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の白色発光装置。」と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の白色発光装置。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
請求項7に、
「請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の白色発光装置。」と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項3,および請求項6のいずれか1項に記載の白色発光装置。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8及び9も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
請求項8に、
「請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の白色発光装置を具備する照明装置。」と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項3、および請求項6ないし請求項7のいずれか1項に記載の白色発光装置を具備する照明装置。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
請求項9に、
「照射対象物との距離を1.5m以下の条件で使用するタスク照明である、請求項7に記載の照明装置。」と記載されているのを、
「照射対象物との距離を1.5m以下の条件で使用するタスク照明である、請求項8に記載の照明装置。」に訂正する。
(9)訂正事項9
【0033】に、
「発光スペクトルのピーク高さを調整することが好ましい。例えば、555nmの波長での放射束のピーク(ピーク555nm)を1としたとき、555nmの波長での放射束のピークに対して430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束(ピーク430-480nm)の比(ピーク430-480nm/ピーク555nm)は、0.5以上1.3以下であることが好ましい。555nmを基準とするのは、CIE(国際照明委員会)において、人間の目の光に対する感度を視感度と呼び、標準分光比視感度V(λ)として定めており、このCIEが定めた分光視感効率V(λ)において、約555nmの波長の光が最も高い感度で認識することができるとされているためである。430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束(ピーク430-480nm)は、430nm以上480nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピークを示す。ピーク430-480nm/ピーク555nmが0.5未満の場合、発光スペクトル中の青色成分が不足するために演色性が低下するおそれがあり、また目的とする色温度が得られないおそれがある。また、ピーク430-480nm/ピーク555nmが1.3を超える場合、発光スペクトル中の青色成分が多すぎて、必要以上に眩しく感じたり、概日リズムへの影響が懸念される。また、歯科用樹脂が早期に硬化してしまうおそれがある。そのため、ピーク430-480nm/ピーク555nmは、0.5以上1.3以下であることが好ましく、さらに0.5以上1.2以下であることが好ましい。」と記載されているのを、
「発光スペクトルのピーク高さを調整することが好ましい。例えば、555nmの波長での分光放射束(Φ555nm)を1としたとき、555nmの波長での分光放射束に対して430nm以上480nm以下の波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束(Φ430-480nm)の比(Φ430-480nm/Φ555nm)は、0.5以上1.3以下であることが好ましい。555nmを基準とするのは、CIE(国際照明委員会)において、人間の目の光に対する感度を視感度と呼び、標準分光比視感度V(λ)として定めており、このCIEが定めた分光視感効率V(λ)において、約555nmの波長の光が最も高い感度で認識することができるとされているためである。430nm以上480nm以下の波長領域での最大ピーク波長における分光放射束(Φ430-480nm)は、430nm以上480nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピーク波長における分光放射束を示す。Φ430-480nm/Φ555nmが0.5未満の場合、発光スペクトル中の青色成分が不足するために演色性が低下するおそれがあり、また目的とする色温度が得られないおそれがある。また、Φ430-480nm/Φ555nmが1.3を超える場合、発光スペクトル中の青色成分が多すぎて、必要以上に眩しく感じたり、概日リズムへの影響が懸念される。また、歯科用樹脂が早期に硬化してしまうおそれがある。そのため、Φ430-480nm/Φ555nmは、0.5以上1.3以下であることが好ましく、さらに0.5以上1.2以下であることが好ましい。」に訂正する。
(10)訂正事項10
【0034】に、
「555nmの波長での放射束のピーク(ピーク555nm)を1としたとき、555nmの波長での放射束のピークに対して380nm以上420nm以下の波長領域でのピーク放射束(ピーク380-420nm)の比(ピーク380-420nm/ピーク555nm)は、0以上1.3以下であることが好ましい。380nm以上420nm以下の波長領域でのピーク放射束は、380nm以上420nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピークを示す。ピーク380-420nm/ピーク555nmが0の場合、380nm以上420nm以下の波長領域の発光成分が無いことを示す。また、ピーク380-420nm/ピーク555nmが1.3を超える場合、紫外線領域または紫色の可視光領域の光成分が多すぎて必要以上に眩しく感じたり、概日リズムへの影響が懸念される。また、歯科用樹脂が早期に硬化してしまうおそれがある。そのため、ピーク380-420nm/ピーク555nmを0以上1.3以下にすることが好ましく、さらには0以上1.0以下にすることが好ましい。歯科用樹脂は、紫外線領域から青色の可視光領域までの光の量および強さに応じて硬化する。本実施形態の白色発光装置のように、積分値(光の量)と強さ(ピークの高さ)を制御することにより、必要以上に眩しく感じること(ぎらつき感)や概日リズムへの影響を低減することができる。さらには、歯科用照明装置などの照明装置の場合において、歯科用樹脂における必要以上の早期の硬化を防止することができる。」と記載されているのを、
「555nmの波長での分光放射束(Φ555nm)を1としたとき、555nmの波長での分光放射束の値に対して380nm以上420nm以下の波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束(Φ380-420nm)の比(Φ380-420nm/Φ555nm)は、0以上1.3以下であることが好ましい。380nm以上420nm以下の波長領域での最大ピーク波長における分光放射束は、380nm以上420nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピークを示す。Φ380-420nm/Φ555nmが0の場合、380nm以上420nm以下の波長領域の発光成分が無いことを示す。また、Φ380-420nm/Φ555nmが1.3を超える場合、紫外線領域または紫色の可視光領域の光成分が多すぎて必要以上に眩しく感じたり、概日リズムへの影響が懸念される。また、歯科用樹脂が早期に硬化してしまうおそれがある。そのため、ピーク380-420nm/ピーク555nmを0以上1.3以下にすることが好ましく、さらには0以上1.0以下にすることが好ましい。歯科用樹脂は、紫外線領域から青色の可視光領域までの光の量および強さに応じて硬化する。本実施形態の白色発光装置のように、積分値(光の量)と強さ(ピークの高さ)を制御することにより、必要以上に眩しく感じること(ぎらつき感)や概日リズムへの影響を低減することができる。さらには、歯科用照明装置などの照明装置の場合において、歯科用樹脂における必要以上の早期の硬化を防止することができる。」に訂正する。
(11)訂正事項11
【0129】に、
「実施例2-1ないし実施例2-4および比較例2-1ないし2-3にかかる白色発光装置において、積分値A(380nm以上780nm以下の放射束積分値)、積分値B(380nm以上480nm以下の放射束積分値)、積分値C(380nm以上429nm以下の放射束積分値)、積分値D(430nm以上480nm以下の放射束積分値)を測定し、積分値B/積分値A、積分値C/積分値A、積分値D/積分値Aを求めた。同様に、発光スペクトルの555nmのピーク放射束に対して430nm以上480nm以下の範囲でのピーク放射束比および380nm以上420nm以下の範囲でのピーク放射束比をそれぞれ求めた。その結果を表5に示す。」と記載されているのを、
「実施例2-1ないし実施例2-4および比較例2-1ないし2-3にかかる白色発光装置において、積分値A(380nm以上780nm以下の放射束積分値)、積分値B(380nm以上480nm以下の放射束積分値)、積分値C(380nm以上429nm以下の放射束積分値)、積分値D(430nm以上480nm以下の放射束積分値)を測定し、積分値B/積分値A、積分値C/積分値A、積分値D/積分値Aを求めた。同様に、発光スペクトルの555nmの分光放射束(Φ555nm)に対して430nm以上480nm以下の範囲での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束(Φ380-420nm)比および380nm以上420nm以下の範囲での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束(Φ380-420nm)の比をそれぞれ求めた。その結果を表5に示す。」と訂正する。
(12)訂正事項12
【0130】に、
「【表5】
[図:0001387470000001.jpg]
」と記載されているのを、
「【表5】
[図:0001387470000002.jpg]
」に訂正する。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1についてのものであって、次の内容からなるものである。
(i)「前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトル」について、技術常識であるPlanckの黒体放射則の式で示されるものと同じか否かが明瞭でなかったのを、本件特許の登録時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0102】の記載を踏まえて、「光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足」する発光スペクトル「B(λ)」であることを明瞭にすること。
(ii)「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」ことを限定すること。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮及び同第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記ア(i)の訂正については、本件明細書等の【0102】に「実施形態の光源の発光スペクトルをA(λ)、実施形態の光源と同一色温度の黒体輻射のスペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足するA(λ)、B(λ)のスペクトルを求め、」と記載されている。
上記ア(ii)の訂正については、本件明細書等の【0020】に「白色光の350nm以上780nm以下の波長領域において、任意の発光強度の極大値に対する、長波長側で該極大値に最近接する発光強度の極小値の比は、極大値を1としたとき、0.7以上であることがより好ましい。」と記載されており、次の2点、つまり、当該訂正では「ピークのすべて」とされているのが当該段落では「任意の発光強度の極大値」とされている点と、波長領域の下限が当該訂正では「380nm」とされているのが当該段落では「350nm」とされている点とを除き、当該段落に記載があるといえる。そして、当該段落の「任意」の意味は、同【0019】の「発光スペクトルにおいて極大値に対する、極大値に最近接する極小値がある場合、すべての極大値に対する極小値の比が、極大値を1としたとき0.5以上になる。」における「すべての極大値に対する」との記載からみて、「すべて」の意味であってよいと解される。また、波長領域の下限については、本件訂正前の請求項1では「前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域」が対象とされており、下限の値が380nmであったことを踏まえると、下限を380nmとすることにより、新たな技術的事項が導入されることはない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項1は、訂正要件を満たす。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項2は、本件訂正前の請求項3についてのものであって、次の内容からなるものである。
(i)「前記白色光の555nmの波長での放射束」(2箇所)を、「前記白色光の555nmの波長での分光放射束」に訂正すること。
(ii)「430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束」及び「380nm以上420nm以下の波長領域でのピーク放射束」の両者における「波長領域でのピーク放射束」を、「波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束」に訂正すること。
(イ)上記(ア)(i)の訂正について、訂正前の「前記白色光の555nmの波長での放射束」の記載は、そのうちの「放射束」の用語が、通常の意味によれば、放射によって単位時間当たり伝搬するエネルギーを表している一方で、「放射束」の対象とされる「555nmの波長」が、幅をもたない1点におけるものであって、エネルギーの大きさを観念し難いことから、明瞭でないものである。そして、「放射束」とは異なり「分光放射束」という概念が存在し、これが放射束を単位波長で規格化したものであることが技術常識であって、訂正前の上記「放射束」を「分光放射束」と理解することに特段の差し支えはない。
したがって、上記(ア)(i)の訂正は、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。
(ウ)上記(ア)(ii)の訂正について、訂正前の「波長領域でのピーク放射束」は、一般的な技術用語ではなく、本件明細書等にもその定義が存在しないことから、明瞭でないものである。
そこで、本件明細書等の記載をさらにみると、その【0030】には「430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束(放射束の最大値)」と記載されており、また、同【0033】には「430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束・・・は、430nm以上480nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピークを示す。」と記載されている。このように、本件明細書等では、「波長領域でのピーク放射束」が、「(波長領域での)放射束の最大値」であることと、「波長領域の中で最も高い発光強度のピーク」であることとが説明されているのであり、「(放射束の)最大値」又は「最も高い発光強度のピーク」が「波長領域」に対して観念されていることから、「波長領域でのピーク放射束」は、波長領域に含まれる波長のうち、最も発光強度が高い波長に対して観念されていると解するのが自然である。そして、「波長領域に含まれる波長のうち、最も発光強度が高い波長」に対応する「波長」は、幅をもたない1点におけるものであることから、その波長における「放射束」は、上記(イ)のとおり、「分光放射束」として表現されるべきものである。
そうすると、訂正前の「波長領域でのピーク放射束」の意味は、本件明細書等の記載及び技術常識に照らせば、訂正後の「波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束」であると理解されるといえる。
したがって、上記(ア)(ii)の訂正は、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。
(エ)よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アによれば、訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項3の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記イのとおり、訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項3の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項2は、訂正要件を満たす。
(3)訂正事項3及び4について
ア 訂正の目的
訂正事項3及び4は、それぞれ、請求項4及び5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項3及び4は、いずれも、請求項を削除するものであるから、このことにより新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項3及び4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項3及び4は、訂正要件を満たす。
(4)訂正事項5~7について
ア 訂正の目的
訂正事項5~7は、それぞれ、本件訂正前の請求項6~8が引用する請求項から、請求項4及び請求項5を削るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項5~7は、いずれも、引用する請求項を削減するものであるから、このことにより新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項5~7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項5~7は、訂正要件を満たす。
(5)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8は、本件訂正前の請求項9の「請求項7に記載の照明装置」を「請求項8に記載の照明装置」に訂正するものである。
ここで、当該請求項9には、「請求項7」及び「照明装置」の両文言が存在するところ、「請求項7」は「白色発光装置」に係るものであって「照明装置」に係るものではないことから、当業者であれば、これらの両文言のうち、いずれかに誤記があることを明らかに認識できる。そして、当該請求項9は、「・・・タスク照明である」と特定されていることから、当業者にとっては、これら両文言のうち、「請求項7」の文言が誤記であることが明らかである。その上で、当該請求項9が「照明装置」に係るものであって、「照明装置」に係る先行する請求項は請求項8しか存在しないことから、当業者であれば、上記の誤記を正したものが「請求項8」であることを明らかに認識できる。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号の誤記の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項8は、上記アのとおり、明らかな誤記を訂正するものであるから、このことにより新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記イのとおり、訂正事項8に係る訂正は、明らかな誤記を訂正するにすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項8は、訂正要件を満たす。
(6)訂正事項9について
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項9は、本件訂正前の【0033】についてのものであって、次の内容からなるものである(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(i)「555nmの波長での放射束のピーク」(2箇所)及び「ピーク555nm」(5箇所)を、それぞれ、「555nmの波長での分光放射束」及び「Φ555nm」に訂正すること。
(ii)「430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束」(2箇所)及び「ピーク430-480nm」(6箇所)を、それぞれ、「430nm以上480nm以下の波長領域での最大ピーク波長における分光放射束」及び「Φ430-480nm」に訂正すること。
(iii)(430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束・・・は、)「430nm以上480nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピークを示す」を、「430nm以上480nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピーク波長における分光放射束を示す」に訂正すること。
(イ)上記(ア)(i)の訂正について、まず、訂正前の「555nmの波長での放射束のピーク」の記載は、「555nmの波長」という幅をもたない1点の波長に対して、「放射束」及び「ピーク」という波長の範囲が観念されて初めて意味をもつ概念を当てはめている点で、不合理であって明瞭でないものである。そして、上記(2)ア(イ)で説示したとおり、「放射束」に対してこれを単位波長で規格化した「分光放射束」という概念が存在しており、また、ここでの「ピーク」に特段の意味があることは、本件明細書等の記載からは読み取れない。そうすると、訂正前の「555nmの波長での放射束のピーク」の意味は、本件明細書等の記載及び技術常識に照らせば、「555nmの波長での分光放射束」であると理解されるといえる。
次に、「ピーク555nm」を「Φ555nm」とする訂正は、「ピーク」の文言では何を意味しているのかがわかりにくいことから、上記のとおり「分光放射束」という概念を用いたことに伴って、それが「Φ」で表されることを明瞭に記載したものである。
したがって、上記(ア)(i)の訂正は、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。
(ウ)上記(ア)(ii)の訂正について、訂正前の「波長領域でのピーク放射束」を「最大ピーク波長における分光放射束」にする訂正は、上記(2)ア(ウ)と同様であり、訂正前の「ピーク430-480nm」を「Φ430-480nm」とする訂正は、上記(イ)と同様であるから、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。
(エ)上記(ア)(iii)の訂正は、訂正前の(430nm以上480nm以下の波長領域でのピーク放射束・・・は、)「430nm以上480nm以下の波長領域の中で最も高い発光強度のピークを示す」における「波長領域でのピーク放射束」という明瞭でない記載を「波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束」であると釈明した(上記(2)ア(ウ))ことに伴って、その釈明した内容と必要な範囲で整合させるものであるから、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。
(オ)よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アによれば、訂正事項9に係る訂正は、本件訂正前の【0033】の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記イのとおり、訂正事項9に係る訂正は、本件訂正前の【0033】の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項9は、訂正要件を満たす。
(7)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項10は、本件訂正前の【0034】についてのものであって、次の内容からなるものである。
(i)「555nmの波長での放射束のピーク」(2箇所)及び「ピーク555nm」(冒頭から4箇所)を、それぞれ、「555nmの波長での分光放射束」及び「Φ555nm」に訂正すること。
(ii)「380nm以上420nm以下の波長領域でのピーク放射束」(2箇所)及び「ピーク380-420nm」(冒頭から4箇所)を、それぞれ、「380nm以上420nm以下の波長領域での最大ピーク波長における分光放射束」及び「Φ380-420nm」に訂正すること。
これらの訂正は、それぞれ、訂正事項9の上記(6)ア(ア)(i)及び(ii)の訂正と同様の趣旨のものであるから、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アによれば、訂正事項10に係る訂正は、本件訂正前の【0034】の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記イのとおり、訂正事項10に係る訂正は、本件訂正前の【0034】の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項10は、訂正要件を満たす。
(8)訂正事項11について
ア 訂正の目的
訂正事項11は、本件訂正前の【0129】についてのものであって、次の内容からなるものである。
(i)「555nmのピーク放射束」を、「555nmの分光放射束(Φ555nm)」に訂正すること。
(ii)「430nm以上480nm以下の範囲でのピーク放射束比」及び「380nm以上420nm以下の範囲でのピーク放射束比」を、それぞれ、「430nm以上480nm以下の範囲での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束(Φ380-420nm)比」及び「380nm以上420nm以下の範囲での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束(Φ380-420nm)の比」に訂正すること。
これらの訂正は、訂正事項2の上記(2)ア(ア)(i)及び(ii)の訂正と同様のものであり、また、「(Φ555nm)」等を付加する訂正は、他の記載との整合を図るものである。
よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アによれば、訂正事項11に係る訂正は、本件訂正前の【0129】の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記イのとおり、訂正事項11に係る訂正は、本件訂正前の【0129】の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項11は、訂正要件を満たす。
(9)訂正事項12について
ア 訂正の目的
訂正事項12は、本件訂正前の表5の「ピーク555nm」、「ピーク430-480nm」及び「ピーク380-420nm」を、それぞれ、「Φ555nm」、「Φ430-480nm」及び「Φ380-420nm」に訂正するものであって、訂正事項9の上記(6)ア(ア)(i)及び(ii)並びに訂正事項10の上記(7)ア(ア)(ii)の訂正と同様の趣旨のものであるから、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
上記アによれば、訂正事項12に係る訂正は、本件訂正前の表5の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記イのとおり、訂正事項12に係る訂正は、本件訂正前の表5の明瞭でない記載を、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
よって、訂正事項12は、訂正要件を満たす。
3 訂正の適否についての判断の小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明の認定
本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1~9に係る発明(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明9」といい、これらを総称して「本件訂正発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
[本件訂正発明1]
「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、
前記蛍光体層は、420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、
前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、
前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きく、
380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、
前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下であり、
380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である、白色発光装置。」
[本件訂正発明2]
「前記発光ダイオードは380nm以上420nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する、請求項1に記載の白色発光装置。」
[本件訂正発明3]
「前記白色光の555nmの波長での分光放射束に対して430nm以上480nm以下の波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束の比は、0.5以上1.3以下であり、
前記白色光の555nmの波長での分光放射束に対して380nm以上420nm以下の波長領域での発光スペクトルの最大ピーク波長における分光放射束の比は、0以上1.3以下である請求項1または請求項2に記載の白色発光装置。」
[本件訂正発明4]
(削除)
[本件訂正発明5]
(削除)
[本件訂正発明6]
「前記白色光の特殊演色評価数R9が80以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の白色発光装置。」
[本件訂正発明7]
「前記白色光の相関色温度が3600K以上6400K未満である、請求項1ないし請求項3、および請求項6のいずれか1項に記載の白色発光装置。」
[本件訂正発明8]
「請求項1ないし請求項3、および請求項6ないし請求項7のいずれか1項に記載の白色発光装置を具備する照明装置。」
[本件訂正発明9]
「照射対象物との距離を1.5m以下の条件で使用するタスク照明である、請求項8に記載の照明装置。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由に対する当審の判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~9に係る特許に対して、当審が令和3年7月19日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」といい、この通知を「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。なお、証拠番号を示すときは、「第」及び「号証」を略する。
(1)明確性要件違反
本件訂正前の請求項1~9に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)新規性欠如
本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許に係る優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各請求項に係る発明についての特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものである。
(3)進歩性欠如
本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許に係る優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、本件特許に係る優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1:特開2006-49799号公報(甲1)
引用文献2:特開2011-71333号公報(甲2)
引用文献3:特開2011-176300号公報(甲3)
引用文献4:特表2010-511978号公報(甲4、周知例)
引用文献5:特開2010-231924号公報(甲5、周知例)
引用文献6:阪口 忠雄,“発光の理論”,照明学会雑誌,一般社団法人 照明学会,昭和48年,第57巻,第11号,p.4-p.10(甲6、周知例)
引用文献7:国際公開第2008/153120号(甲7、周知例)
2 明確性要件違反について
(1)取消理由通知は、本件訂正前の請求項1に記載された「前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトル」の意味について、技術常識であるPlanckの黒体放射則の式に基づく発光スペクトルであるという理解と、本件明細書等の【0102】に記載された「B(λ)」、つまり、「光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトル」であって、「光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足」する「B(λ)」であるという理解とがあり得るが、両者が整合しているのかが不明であるため、請求項1の当該記載は明確でない旨説示したものであるが、本件訂正により、後者の意味であることが明確にされたため、当該取消理由は解消した。
(2)取消理由通知は、本件訂正前の請求項3に記載された「前記白色光の555nmの波長での放射束」の意味について、「放射束」を一般的に用いられる意味である「ある面を単位時間あたりに通過する放射エネルギーの値」と解した上の理解と、本件明細書等の【0033】等に記載された「555nmの波長での放射束のピーク」というその意味が理解し難いものに基づく理解とがあり得るが、両者が整合しているのかが不明であるため、請求項3の当該記載は明確でない旨説示したものであるが、本件訂正により、「前記白色光の555nmの波長での分光放射束」というその意味が明確であるものに訂正されたため、当該取消理由は解消した。
(3)取消理由通知は、本件訂正前の請求項4及び5に記載された「任意の発光強度の極大値に対する」の「任意の」の意味が「全ての」ということなのか「少なくとも1つの」ということなのかが不明である旨説示したものであるが、本件訂正により、請求項4及び5が削除されたため、当該取消理由は解消した。
なお、訂正後の請求項1に対して、「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて」という記載が追加されることになったが、「任意の」の文言は使用されていない。
(4)取消理由通知は、本件訂正前の請求項9に記載された「請求項7に記載の照明装置」について、「請求項7」が「照明装置」ではなく「白色発光装置」を特定していることから整合しておらず、よって、請求項9の当該記載が明確でない旨説示したものであるが、本件訂正により、「請求項8に記載の照明装置」という整合したものに訂正されたため、当該取消理由は解消した。
3 新規性欠如・進歩性欠如について
(1)引用文献に記載された事項の認定
ア 引用文献1(甲1)について
(ア)引用文献1には次の記載がある。
a 「【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、高い光束と高い演色性とを両立する発光装置、特に、暖色系の白色光を放つ発光装置を提供するものである。」
b 「【0088】
図6~図11は、・・・(中略)・・・本発明の発光装置の実施形態である照明・表示装置を組み込んだ具体例を示す図である。・・・(中略)・・・図8は、発光部11を有し、スイッチ13によってON-OFF制御や光量制御可能な卓上スタンド型の照明装置の斜視図である。・・・(中略)・・・」
c 「【実施例3】
【0125】
本実施例では、実施例1又は2で説明した青色LEDチップ26の代わりに、GaInNを発光層として405nm付近に発光ピークを有する発光を放つ紫色LEDチップを導通搭載して、図24及び図25に示すカード型の照明モジュール光源を作製し、発光特性を評価した。本実施例の出力光は、少なくとも、上記紫色LEDチップが放つ光によって励起されて発光した、蛍光体層3に含まれる蛍光体が放つ光を主体にしてなる混色光である。さらに、この出力光は、蛍光体の種類と量を適宜選択することにより、任意の白色光を得られた。
【0126】
以下、本実施例の蛍光体層3について詳説する。
【0127】
蛍光体層3は、蛍光体を添加したエポキシ樹脂を乾固して形成した。本実施例では、蛍光体として、波長625nm付近に発光ピークを有するSrAlSiN3:Eu2+赤色蛍光体(中心粒径:2.2μm、最大内部量子効率:60%、405nm励起下での内部量子効率:約60%)と、波長535nm付近に発光ピークを有する(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+緑色蛍光体(中心粒径:15.2μm、最大内部量子効率:97%、405nm励起下での内部量子効率:約97%)と、波長450nm付近に発光ピークを有するBaMgAl10O17:Eu2+青色蛍光体(中心粒径:8.5μm、最大内部量子効率:約100%、405nm励起下での内部量子効率:約100%)の3種類を用い、エポキシ樹脂には、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(主材)と、脂環式酸無水物を主成分とするエポキシ樹脂(硬化材)の二液混合型のエポキシ樹脂を用いた。なお、上記SrAlSiN3:Eu2+赤色蛍光体は、製造条件が未だ最適化されていないために、内部量子効率は低いが、今後製造条件の最適化によって、1.5倍以上の内部量子効率の改善が可能である。SrAlSiN3:Eu2+赤色蛍光体と(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+緑色蛍光体とBaMgAl10O17:Eu2+青色蛍光体は、重量割合、約6:11:30で混合し、この混合蛍光体とエポキシ樹脂とは重量割合、約1:3(蛍光体濃度=25重量%)で混合した。
【0128】
(比較例2)
蛍光体に波長626nm付近に発光ピークを有するLa2O2S:Eu3+赤色蛍光体(中心粒径:9.3μm、最大内部量子効率:84%、405nm励起下での内部量子効率:約50%)と、波長535nm付近に発光ピークを有する(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+緑色蛍光体(中心粒径:15.2μm、最大内部量子効率:97%、405nm励起下での内部量子効率:約97%)と、波長450nm付近に発光ピークを有するBaMgAl10O17:Eu2+青色蛍光体(中心粒径:8.5μm、最大内部量子効率:約100%、405nm励起下での内部量子効率:約100%)の3種類を用いて、カード型の照明モジュール光源を実施例3と同様に作製した。蛍光体層3としては、La2O2S:Eu3+赤色蛍光体と(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+緑色蛍光体とBaMgAl10O17:Eu2+青色蛍光とを重量割合、約155:20:33で混合し、この混合蛍光体とエポキシ樹脂とを重量割合、約1:3(蛍光体濃度=25重量%)で混合したものを用いた。そして実施例3と同様に、半導体発光素子に電流を流すことにより出力光を得て、その発光特性を評価した。
【0129】
蛍光体層3の厚さは、等しい光色(相関色温度約3800K、duv、色度)の白色光を得るため、実施例3と比較例2、共に、厚さ約500μmに形成した。
【0130】
以下、実施例3と比較例2にかかる発光装置の発光特性を説明する。
【0131】
図34、図35に実施例3及び比較例2の発光スペクトルをそれぞれ示した。図34、図35からわかるように、実施例3及び比較例2の発光装置は、いずれも405nm付近、450nm付近、535nm付近、625nm付近に発光ピークを有する白色系の光、すなわち、紫色光と青色光と緑色光と赤色光の混色によって白色光を放つ。なお、405nm付近の発光ピークは、上記紫色発光素子の光の漏れであり、450nm付近、535nm付近、及び625nm付近の発光ピークは蛍光体によって、上記紫色光が波長変換された光である。
【0132】
表2に、実施例3と比較例2の発光装置の発光特性を示す。
【0133】
[図:0001387470000003.jpg]
【0134】
表2のduvは白色光の黒体放射軌跡からのずれを示す指数である。Raは平均演色評価数、R1~R15は特殊演色評価数であり、基準光で見た色を100として、試験光が試験色をどれだけ忠実に再現しているかを示す。特にR9は、赤色の特殊演色評価数である。
【0135】
蛍光体の製造条件が最適化されておらず、最大内部量子効率が60%と性能の低い赤色蛍光体を用いているにも関わらず、実施例3は、ほぼ等しい光色(相関色温度、duv及び色度)の条件下で、比較例2よりも相対光束が17%高い白色系光を放った。比較例2で用いた赤色蛍光体の最大内部量子効率は83%であり、発光装置の出力効率はさらに約20%改善される可能性はあるが、実施例3で用いた赤色蛍光体の場合では、最大内部量子効率は60%であり、発光装置の白色出力はさらに約65%以上改善できる余地がある。すなわち、理論的にも、最終的には、実施例3の、発光装置の材料構成の方が高い光束の白色系光を放つことになる。
【0136】
また、実施例3の発光装置は、少なくとも上記した蛍光体を組み合わせて、相関色温度3800Kの白色光を放つように構成した場合には、比較例2よりも大きなRaを示した。また、R9だけでなくR1~R15の全ての特殊演色評価数において、比較例2よりも大きな数値が得られた。このことは、実施例3が、演色性の極めて良好な白色光を放つことを示すものである。
【0137】
なお、実施例3の発光装置は、R1~R15の特殊演色評価数の数値が、いずれも80以上の演色性の高い白色光を放つ発光装置であり、太陽光に近い光を放つことを示している。このような発光装置は、特に医療用に適するものであり、例えば内視鏡用等に応用可能なLED光源を提供するとともに、太陽光に近い光の下で診断可能な、優れた内視鏡システムを提供することもできるようになる。」
d 「【0148】
図40には、光束とRaの特に好ましい相関色温度4500K(duv=0)の暖色系白色光を放つ実施例3の発光装置の、発光スペクトルのシミュレーションデータを示した。この発光スペクトルの場合、色度(x,y)は(0.3608,0.3635)であり、Raが96、R1が98、R2及びR6~R8が97、R3、R10及びR11が91、R4及びR14が94、R5、R13及びR15が99、R9及びR12が88である。これより、R1~R15の全ての特殊演色評価数が85以上の演色性の良好な白色光を放つ発光装置を提供できることがわかる。この発光スペクトルの形状は、紫色LEDによる400~410nmの波長領域の発光ピークと、希土類イオンの5d-4f電子遷移に基づく発光を放つ実施例3のRGB蛍光体による440~460nm、520~540nm及び610~640nmの波長領域の発光ピークとの強度の比率、400~410nm:440~460nm:520~540nm:610~640nmが、8~10:12~14:15~17:16~18である。本発明の好ましい形態の一つは、発光ピークが上記比率の発光スペクトルの形状を有する暖色系白色光を放つことを特徴とする発光装置である。なお、上述の希土類イオンの5d-4f電子遷移に基づく発光を放つ蛍光体とは、主にEu2+又はCe3+の希土類イオンを発光中心イオンとして含む蛍光体を示す。このような蛍光体は、発光ピークの波長が同じ場合、蛍光体母体の種類に関わらず、似通った発光スペクトルの形状になる。
【0149】
図41には、光束とRaの特に好ましい相関色温度5500K(duv=0)の白色光を放つ実施例3の発光装置の、発光スペクトルのシミュレーションデータを示した。この発光スペクトルの場合、色度(x,y)は(0.3324,0.3410)であり、Raが96、R1及びR13が98、R2及びR8及びR15が97、R3及びR12が90、R4が92、R5が99、R6が96、R7が95、R9及びR14が94、R10及びR11が91である。すなわち、本発明によれば、R1~R15の全ての特殊演色評価数が90以上の、例えば医療用途に適する、太陽光に近い白色光を放つ発光装置も提供可能である。なお、この発光スペクトルの形状は、紫色LEDによる400~410nmの波長領域の発光ピークと、希土類イオンの5d-4f電子遷移に基づく発光を放つ実施例3のRGB蛍光体による440~460nm、520~540nm及び610~640nmの波長領域における発光ピークとの強度の比率、400~410nm:440~460nm:520~540nm:610~640nmが、4~6:9~11:8~10:7~9である。本発明の好ましい形態の一つは、発光ピークが上記比率の発光スペクトルの形状を有する白色光を放つことを特徴とする発光装置である。」
e 図34は次のものである。
[図:0001387470000004.jpg]
f 図40は次のものである。
[図:0001387470000005.jpg]
g 図41は次のものである。
[図:0001387470000006.jpg]
(イ)上記(ア)によれば、引用文献1には、実施例3(図34(相関色温度3800K)、図40(相関色温度4500K)及び図41(相関色温度5500K))の発光装置に関して、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(括弧書きは、参考までに、記載の根拠を示したものである。以下同じ。)。
「白色光を放つ発光装置であって、(【0008】)
405nm付近に発光ピークを有する発光を放つ紫色LEDチップを導通搭載し、(【0125】)
紫色LEDチップが放つ光によって励起されて発光した、蛍光体層3に含まれる蛍光体が放つ光の混色光であって、この出力光は、蛍光体の種類と量を適宜選択することにより、任意の白色光を得られるものであって、(【0125】)
蛍光体層3に、波長625nm付近に発光ピークを有する赤色蛍光体と、波長535nm付近に発光ピークを有する緑色蛍光体と、波長450nm付近に発光ピークを有する青色蛍光体を添加しており、(【0127】)
発光スペクトルは、図34、図40又は図41で表されるものであって、
発光スペクトルの白色光の相関色温度は、それぞれ、3800K、4500K又は5500Kであり、(【0133】、【0148】、【0149】)
発光スペクトルの白色光の平均演色評価数Raは、それぞれ、96、96、96であり、(【0133】、【0148】、【0149】)
発光スペクトルの白色光の特殊演色評価数R9は、それぞれ、83、88、94である、(【0133】、【0148】、【0149】)
白色光を放つ発光装置。」
イ 引用文献2(甲2)について
(ア)引用文献2には、次の記載がある。
a 「【0009】
本発明はこの問題を解決しようとしてなされたものであり、白色光の成分となる青色光の発生源として青色蛍光体を用いて色温度の高い白色光を発生させる白色発光装置のための、青色に関する演色性改善方法を提供することを、主たる目的とする。本発明は、また、青色に関する演色性の改善された色温度の高い白色光を発生させる、白色発光装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明において「青色蛍光体」とは、発光ピーク波長を360nm以上435nm以下の範囲に有する半導体発光素子で励起したとき、波長440nm以上490nm以下の範囲内に主発光ピーク波長を有する青色光を放出する蛍光体をいう。青色光は、CIE色度図(特公昭48-22117号公報の第2図参照)にいう「紫がかった青色」、「青色」、「緑色を帯びた青色」または「青緑色」に該当する色調の光を含む。
本発明において「青色波長域」とは、波長440nm以上490nm以下の波長領域をいう。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、次の方法が提供される:
相関色温度4500K以上の白色光を放出する白色発光装置のための演色性改善方法であって、
前記白色光は、半導体発光素子により励起される青色蛍光体からの発光を成分に含むとともに、そのスペクトルの青色波長域にピーク波長ΛB(nm)を有しており、
前記青色蛍光体は、発光ピーク波長がλB(nm)、発光強度が波長λBより長波長側において波長λBにおける値の半分となる波長がλB+ΔλB(nm)であり、
λB<ΛB<490となるように、下記(A)に規定する第1蛍光体により前記青色蛍光体からの発光の一部を吸収させる、方法。
(A)第1蛍光体は、波長λBの光を吸収して異なる波長の可視光に変換することができ、その励起スペクトルの強度が、波長λB-ΔλBからλBまでの範囲内ではλBにおける強度の90%以上であり、かつ、波長λBからλB+ΔλBにかけてλBにおける強度の半分未満となるまで減少している。
・・・(中略)・・・
【0019】
本発明にいう白色発光装置は、半導体発光素子を蛍光体の励起源として備え、蛍光体が放出するルミネッセント光を成分として白色光を生成する構成を備えた、あらゆる発光装置を包含する。
・・・(中略)・・・
【0023】
白色発光装置の典型例は白色LEDである。最も一般的な白色LEDでは、砲弾型、SMD型などのパッケージにLEDチップが実装され、そのLEDチップの表面を覆う透光性の樹脂コーティング中に粒子状の蛍光体が添加される。白色LEDを部品として含む照明装置(室内灯、屋外灯、懐中電灯、ヘッドライトなどを含む)も、本発明にいう白色発光装置の範疇に入る。」
b 「【0044】
白色LED1の出力光の特殊演色評価数R12(青色に関する演色性の指標)の改善度を高めるために、青領域の波長シフトは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。ただし、ΛBが490nmを超えると演色性の低下が生じる恐れがあることに注意すべきである。青領域の波長シフト後のΛBは、好ましくは460nm以上、より好ましくは470nm以上である。
白色LED1の色温度を調整するために、「第1蛍光体」の他に、緑色蛍光体、橙色蛍光体、赤色蛍光体等をコーティング40に適宜含有等させることが可能である。
【0045】
[実験例1]
シリコーン樹脂を主成分とする透明なバインダに、Eu付活アルミン酸塩系青色蛍光体BaMgAl10O17:Eu(略称:BAM)と、Eu付活アルカリ土類シリケート系緑色蛍光体(Ba,Sr)2SiO4:Eu(略称:BSS)と、Eu付活酸窒化物系赤色蛍光体(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu(略称:CASON)とを、表2に示す配合量で混合することにより、蛍光体ペーストを作製した。
【0046】
【表2】
[図:0001387470000007.jpg]
・・・(中略)・・・
【0048】
次に、サファイア基板を用いて形成された350μm角、発光ピーク波長403nmのInGaN系LEDチップをSMD型パッケージに実装し、実装したLEDチップの表面を上記蛍光体ペーストで被覆した。続いて、加熱処理を行うことにより蛍光体ペーストを硬化させ、白色LEDを得た。
【0049】
得られた白色LEDに対し、LEDチップ1個あたり36mAの電流を印加したときの発光特性を調べた。CIE色度座標値、相関色温度、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R12についての評価結果を表3に示す。発光スペクトルは図3に示す通りであり、青色領域に存在する発光ピークの波長ΛBは468nmであった。
【0050】
【表3】
[図:0001387470000008.jpg]
・・・(中略)・・・
【0052】
[実験例3]
BSSに代えてEu付活BSON系緑色蛍光体(略称:BSON)を用いるとともに、バインダと各蛍光体の配合量を表2に示す通りとした他は、実験例1と同様にして蛍光体ペーストを作製した。 蛍光体ペーストに使用したBSONについて測定した励起スペクトルにおいては、波長455nm(λB)における強度を100%としたとき、波長423nm(λB-ΔλB)と波長455nmの間での強度は100%~115%であり、また、波長487nm(λB+ΔλB)における強度は42%であった。波長455nmから487nmにかけて、励起スペクトルの強度は単調に減少していた。使用した蛍光体BSONの励起スペクトルを図5に示す。
【0053】
蛍光体ペーストを上記の通り変更した他は実験例1と同様にして、白色LEDを作製し、発光特性を調べた。CIE色度座標値、相関色温度、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R12についての評価結果を表3に示す。発光スペクトルは図6に示す通りであり、青色領域に存在する発光ピークの波長ΛBは468nmであった。」
c 図3は次のものである。
[図:0001387470000009.jpg]
d 図6は次のものである。
[図:0001387470000010.jpg]
(イ)上記(ア)によれば、引用文献2には、実験例1(図3)及び実験例3(図6)の白色LEDに関して、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「白色光を発生させる白色発光装置であって、(【0009】)
発光ピーク波長403nmのLEDチップをSMD型パッケージに実装し、(【0048】)
LEDチップを蛍光体の励起源として備え、蛍光体が放出するルミネッセント光を成分として白色光を生成する構成を備え、(【0019】)
蛍光体を含有したコーティング40であって、(【0044】)
コーティング40に、
波長440nm以上490nm以下の範囲内に主発光ピーク波長を有する青色光を放出する青色蛍光体と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体とを混合するものであり、(【0010】・【0045】)
発光スペクトルは、図3又は図6で表されるものであって、
発光スペクトルの白色光の相関色温度は、それぞれ、5429K又は5388Kであり、(【0050】)
発光スペクトルの白色光の平均演色評価数Raは、それぞれ、98、98である、(【0050】)
白色発光装置。」
ウ 引用文献3(甲3)について
(ア)引用文献3には、次の記載がある。
a 「【0001】
本発明は、スペクトルの異なる第1及び第2の白色光源を備える半導体発光装置、当該半導体発光装置を複数備えた発光モジュール,及び当該発光モジュールを備える照明装置に関する。
・・・(中略)・・・
【0027】
図1Aは、発光モジュール30(後述する図7を参照。)を構成する半導体発光装置(以下、「白色LED」という)8内の、パッケージ1の概略構成の斜視図であり、図1Bは、パッケージ1に設けられた半導体発光素子(以下、「LEDチップ」という)3A、3Bに電力を供給する配線20A、20Bの実装状態を示す図である。また、図1Cは、図1A及び図1Bに示すパッケージ1を電気的記号を用いて模式化した図である。更に、図2は、図1Aに示す白色LED8において、上記配線20A、20Bを含む面で切断した場合の断面図である。
【0028】
図1Aに示すように、白色LED8はパッケージ1を含んで構成され、該パッケージ1は、基板2上に配置された環状且つ円錐台形状のリフレクタ10を有する。このリフレクタ10は、後述する各分割領域部12からの出力光の一部を、白色LED8の出射方向に導く機能を有するとともに、パッケージ1の本体としての機能も果たす。なお、リフレクタ10の円錐台形状の上面側は、白色LED8による光の出射方向となり、開口部13を形成している。一方で、リフレクタ10の円錐台形状の下面側は基板2が配置され、詳細は後述するがLEDチップへの電力供給のための配線が敷設等されている(当該配線は図1Aには図示せず)。
・・・(中略)・・・
【0031】
また、図1Aに示すパッケージ1は、一体となった部材中に分割領域部12Aと12Bを含む構造体であるが、このようなパッケージ1を用いることは必須ではない。分割領域部としての構成を備える二つの構造体(パッケージ)を並置して、一方を分割領域部12A、他方を分割領域部12Bとして機能させることが可能である。」
b 「【0039】
次に、蛍光部14について詳細に説明する。本実施形態に係る白色LED8は、白色光を出力することを目的とし、特に、白色LED8の発光色が、UCS(u、v)表色系(CIE1960)のuv色度図において、黒体輻射軌跡からの偏差duvができるだけ小さくなるように、好ましくは-0.02≦duv≦0.02を満たすように、LEDチップ3と蛍光体の組み合わせを選択する。尚、本発明における黒体輻射軌跡からの偏差duvは、JIS Z8725(光源の分布温度及び色温度・相関色温度の測定方法)の5.4項の備考の定義に従う。但し、黒体輻射軌跡は絶対的な基準ではない。人工的な規格に応じた発光色(人為的に定められた基準光からの偏差で規格化された発光色)が要求される場合がある。」
c 「【0091】
<実験例>
以下、本発明に関して行われた実験例について説明する。最初に、今回の実験に使用したパッケージを説明する。実験に使用したパッケージは、例えば図1に示したパッケージ1とほぼ同様の外観構成を備えており、基板2の部材はアルミナを主成分としたセラミクスから構成され、その表面側に金をベースとした電極がメッキされている。LEDチップ3はこの電極上にフリップチップ実装されている。また、パッケージ1のリフレクタ10は、間仕切り11で二つの穴(分割領域部12A,12B)に分けられ、分割領域部12A,12Bをなす穴は、2種類の蛍光体ペーストでそれぞれ封止され、LEDチップ3が蛍光体ペーストで被覆された状態となっている。
【0092】
各分割領域部12A,12Bには、LEDチップ3が5つずつフリップチップ実装されており、各分割領域部12A,12Bに設けられた5つのLEDチップ3が励起源として蛍光体ペーストを励起し、2種類の白色光が混合された合成白色光を得ることができる。蛍光体ペーストとは、シリコーン樹脂と蛍光体を混合してなるものである。なお、パッケージ1内に設けられた電気配線は、各分割領域部12A,12に設けられた5つのLEDチップ3が並列になるように設けられ、且つ分割領域部12毎に出力(発光)を制御できるように、分割領域部12間で電気的に独立している。これにより、各分割領域部12A,12Bに設けられた5つのLEDチップ3の発光を個別に制御することができ、1パッケージで、色味(色温度)の異なる白色光を分割領域部12A,12Bの夫々から発することができる。
【0093】
実験に使用したLEDチップ3の発光ピーク波長は402nmであり、蛍光体ペーストで各分割領域部12を封止する前の状態のパッケージ1に120mAの電流を投入したとき130mWの放射束が得られた。
【0094】
蛍光体ペーストの作製に使用した蛍光体は、Eu付活アルミン酸塩系の青色蛍光体であるBaMgAl10O17:Eu→Ba0.7Eu0.3MgAl10O17(略称:BAM)と、Eu付活アルカリ土類ケイ酸塩系の緑色蛍光体である(Ba,Sr)2SiO4:Eu→Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO4(略称:BSS)と、Eu付活酸窒化物系の赤色蛍光体である(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3 :Eu→(1-x)Ca0.9925Eu0.0075AlSiN3・xSi2N2O(x=0.09~0.12)(略称:CASON)である。
【0095】
蛍光体ペーストは低色温度・高色温度それぞれの色温度に発光するように調合し、ディスペンサを使用して各穴(分割領域部12)を封止した。このとき封止した重量と、作製した蛍光体ペーストの配合を、図19に示す。
【0096】
なお、実験で使用したパッケージ1は、分割領域部12A側のLEDチップ3Aを単独で発光させたときに2500Kの白色光が得られるようにし、分割領域部12B側のLEDチップ3Bを単独で発光させたときに5900Kの白色光が得られるようにした。以上のようにして、実験用のパッケージ1を作製した。
・・・(中略)・・・
【0099】
各電圧/電流発生器62A及び62BによるPWM制御時のパルス周期は、100msに設定した。そして、分割領域12A(2500K)側のパルス幅を100(CW:Continuous Wave)[ms],90,80,・・・,0(電源OFF)の順番で変化させる(10msずつ印加時間を短くする)一方で、分割領域部12B(5900K)側のパルス幅を0(電源OFF),10[ms],・・・90,100(CW)の順番で変化させた(印加時間を10msずつ長くした)。そして、分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比(印加時間(通電時間)の比)が、1:0(Scan1),9:1(Scan2),8:2(Scan3),・・・,1:9(Scan10),0:1(Scan11)であるときの光束を積分球(例えばLabsphere社製)71で測定した。
【0100】
図21は、今回の実験に使用したパッケージ1(白色光ランプ)の発光スペクトルの変化を示す。どのパルス幅比(Scan1~12:パルス幅条件1~12と称する)においても、640nm付近に最大ピークが表れ、470nm付近に第2のピークが現れる結果となった。もっとも、パッケージ1に適用される蛍光体の種類によってスペクトルの傾向は異なると考えられる。
・・・(中略)・・・
【0104】
図25は、今回の実験結果をまとめた表である。今回の実験では、上述したように分割領域部12A側(LEDチップ3A)の駆動電圧Vopを3.185Vとし、分割領域部12B側(LEDチップ3B)側の駆動電圧Vopを3.23Vとした。電流値は、32~35mA程度とした。今回の実験結果では、光束の変動は約2.8%程度に収まっている。平均演色評価数(Color Rend Index: Ra)の悪化も見られなかった。」
d 図19は次のものである。
[図:0001387470000011.jpg]
e 図21は次のものである。
[図:0001387470000012.jpg]
f 図25は次のものである。
[図:0001387470000013.jpg]
(イ)上記(ア)によれば、引用文献3には、図21のScan11に関して、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「白色LED8であって、(【0027】)
白色LED8はパッケージ1を含んで構成され、(【0028】)
パッケージ1は、一体となった部材中に分割領域部12Aと12Bを含む構造体であり、(【0031】)
分割領域部12Bには、LEDチップ3が実装されており、(【0092】)
LEDチップ3の発光ピーク波長は402nmであり、(【0093】)
分割領域部12Bをなす穴は、蛍光体ペーストで封止され、(【0091】)
LEDチップ3が励起源として蛍光体ペーストを励起し、白色光を得ることができ、(【0092】)
蛍光体ペーストの作製に使用した蛍光体は、青色蛍光体と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体であり、(【0094】)
分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比を0:1とするものであって、(【0099】)
発光スペクトルは図21のScan11で表されるものであり、
発光スペクトルの白色光の相関色温度は5882Kであり、(【図25】のScan11)
発光スペクトルの白色光の平均演色評価数Raは93.4である、(【図25】のScaan11)
白色LED8。」
エ 引用文献6(甲6)について
引用文献6(9頁の「4.2 温度放射」)には、Planckの放射則が記載されている。
(2)引用発明1を主引用発明としたときの新規性欠如・進歩性欠如
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
a 本件訂正発明1の「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、」との特定事項について
引用発明1の「405nm付近に発光ピークを有する発光を放つ紫色LEDチップ」は、本件訂正発明1でいう「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオード」に相当する。
したがって、引用発明1は、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
b 本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、前記蛍光体層は、420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、」との特定事項について
引用発明1の「蛍光体層3」並びに「「赤色蛍光体」、「緑色蛍光体」及び「青色蛍光体」」は、それぞれ、本件訂正発明1の「蛍光体層」及び「複数の蛍光体」に相当する。
そして、引用発明1の「蛍光体層3」は、「紫色LEDチップが放つ光によって励起されて発光した、蛍光体層3に含まれる蛍光体が放つ光の混色光であって、この出力光は、蛍光体の種類と量を適宜選択することにより、任意の白色光を得られるもの」であるから、本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する」「蛍光体層」といえる。
さらに、引用発明1の蛍光体は、「波長625nm付近に発光ピークを有する赤色蛍光体と、波長535nm付近に発光ピークを有する緑色蛍光体と、波長450nm付近に発光ピークを有する青色蛍光体」であるから、本件訂正発明1でいう「420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する」ものである。
したがって、引用発明1は、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
c 本件訂正発明1の「前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、」との特定事項について
引用発明1は、「発光スペクトルの白色光の相関色温度は、3800K、4500K又は5500Kであ」るから、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
d 本件訂正発明1の「前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きく、」との特定事項について
引用発明1は、「発光スペクトルの白色光の平均演色評価数Raは、それぞれ、96、96、96であ」るから、引用発明1は、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
e 本件訂正発明1の「380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、」との特定事項について
引用発明1が上記特定事項を備えるのかは不明である。
f 本件訂正発明1の「前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下であり」との特定事項について
引用発明1が上記特定事項を備えるのかは不明である。
g 本件訂正発明1の「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」との特定事項について
引用発明1が上記特定事項を備えるのかは不明である。
h 本件訂正発明1の「白色発光装置」との特定事項について
引用発明1の「白色光を放つ発光装置」は、本件訂正発明1の「白色発光装置」に相当する。
(イ)一致点及び相違点の認定
上記(ア)によれば、本件訂正発明1と引用発明1とは、
「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、
前記蛍光体層は、420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、
前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、
前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きい、
白色発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]本件訂正発明1は「380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下である」のに対し、引用発明1はそうであるのか不明である点。
[相違点2]本件訂正発明1は「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」のに対し、引用発明1はそうであるのか不明である点。
(ウ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点2より判断する。
引用文献1の図34、図40及び図41において、相違点2に係る構成のうち、「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピーク」であって、「前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」「ピーク」を見て取ることができるとしても、その「ピークのすべて」において、当該「極大値に対する」「極小値の比」が「0.7以上である」ことを見て取ることはできず、そのように構成する動機も見いだせない。
この点、引用文献1の【0137】には、「白色光を放つ発光装置」につき「太陽光に近い光を放つこと」との記載があるものの、当該記載は、引用発明1の発光装置の特性を表しているものにすぎないし、さらなる改良を行うために具体的にどのようにすればよいのかの示唆を与えるものでもない。また、ここでいう「太陽光に近い光」の意味は、当該段落にあるとおり、「R1~R15の特殊演色評価数の数値が、いずれも80以上の演色性の高い白色光」であるということであって、上記の比を設定することとは異なるものであるし、演色性が高いことにより、上記の比が、その「ピークのすべて」において、必然的に大きくなるとも言い難い。
そして、引用文献4~7の記載をみても、上記の説示を左右しない。
よって、当業者が、引用発明1において、相違点2に係る構成に至るとはいえない。
(エ)本件訂正発明1の小括
よって、本件訂正発明1は、引用発明1ではないし、また、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明1及び引用文献1、4~7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明2、3、6~9について
当該各発明は、本件訂正発明1をさらに限定したものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、引用発明1ではなく、また、引用発明1及び引用文献1、4~7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)引用発明2を主引用発明としたときの新規性欠如・進歩性欠如
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
a 本件訂正発明1の「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、」との特定事項について
引用発明2の「SMD型パッケージに実装」される「発光ピーク波長403nmのLEDチップ」は、本件訂正発明1でいう「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオード」に相当する。
したがって、引用発明2は、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
b 本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、前記蛍光体層は、420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、」との特定事項について
引用発明2の「蛍光体を含有したコーティング40」及び「蛍光体」は、それぞれ、本件訂正発明1の「蛍光体層」及び「蛍光体」に相当する。
そして、引用発明2は「LEDチップを蛍光体の励起源として備え、蛍光体が放出するルミネッセント光を成分として白色光を生成する構成」であるから、引用発明2の「蛍光体を含有したコーティング40」は、本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する」「蛍光体層」といえる。
さらに、引用発明2の「蛍光体」は、「波長440nm以上490nm以下の範囲内に主発光ピーク波長を有する青色光を放出する青色蛍光体」と「緑色蛍光体」と「赤色蛍光体」であるから、本件訂正発明1でいう「420nm以上の」「波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体」といえるが、この「波長領域」が「700nm以下」であるかは不明である。
したがって、引用発明2は、本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、前記蛍光体層は、420nm以上の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含」むものの、上記「波長領域」が「700nm以下」であるかは不明である。
c 本件訂正発明1の「前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、」との特定事項について
引用発明2は、「発光スペクトルの白色光の相関色温度は、5429K又は5388Kであ」るから、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
d 本件訂正発明1の「前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きく、」との特定事項について
引用発明2は、「発光スペクトルの白色光の平均演色評価数Raは、それぞれ、98、98であ」るから、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
e 本件訂正発明1の「380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、」との特定事項について
引用発明2が上記特定事項を備えるのかは不明である。
f 本件訂正発明1の「前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下であり」との特定事項について
引用発明2が上記特定事項を備えるのかは不明である。
g 本件訂正発明1の「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」との特定事項について
引用発明2が上記特定事項を備えるのかは不明である。
h 本件訂正発明1の「白色発光装置」との特定事項について
引用発明2の「白色光を発生させる白色発光装置」は、本件訂正発明1の「白色発光装置」に相当する。
(イ)一致点及び相違点の認定
上記(ア)によれば、本件訂正発明1と引用発明2とは、
「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、
前記蛍光体層は、420nm以上の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、
前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、
前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きい、
白色発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点3]蛍光体の発光強度のピークがある波長領域について、本件訂正発明1では、「700nm以下」であるのに対して、引用発明2では、上記波長領域の上限が不明である点。
[相違点4]本件訂正発明1は「380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下である」のに対し、引用発明2はそうであるのか不明である点。
[相違点5]本件訂正発明1は「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」のに対し、引用発明2はそうであるのか不明である点。
(ウ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点5より判断する。
引用文献2の図3及び図6において、相違点2に係る構成のうち、「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピーク」であって、「前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」「ピーク」を見て取ることができるとしても、その「ピークのすべて」において、当該「極大値に対する」「極小値の比」が「0.7以上である」ことを見て取ることはできず、そのように構成する動機も見いだせない。
この点、引用文献2の【0009】には、「青色に関する演色性の改善された色温度の高い白色光を発生させる」との記載があるものの、そのための解決手段は、同【0011】のとおり、特定の第1蛍光体をさらに含むということであって、上記の比を設定することとは異なるものである。また、上記の第1蛍光体をさらに含むことにより、上記の比が、その「ピークのすべて」において、必然的に大きくなるとは言い難い。
そして、引用文献4~7の記載をみても、上記の説示を左右しない。
よって、当業者が、引用発明2において、相違点5に係る構成に至るとはいえない。
(エ)本件訂正発明1の小括
よって、本件訂正発明1は、引用発明2ではないし、また、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明2及び引用文献2、4~7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明2、3、6~9について
当該各発明は、本件訂正発明1をさらに限定したものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、引用発明2ではなく、また、引用発明2及び引用文献2、4~7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)引用発明3を主引用発明としたときの新規性欠如・進歩性欠如
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
a 本件訂正発明1の「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、」との特定事項について
引用発明3の「発光ピーク波長は402nm」である「LEDチップ3」は、本件訂正発明1でいう「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオード」に相当する。
したがって、引用発明3は、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
b 本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、前記蛍光体層は、420nm以上700nm以下の波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、」との特定事項について
引用発明3の「蛍光体ペースト」及び「蛍光体」は、それぞれ、本件訂正発明1の「蛍光体層」及び「蛍光体」に相当する。
そして、引用発明3の「蛍光体ペースト」は、「LEDチップ3が励起源として蛍光体ペーストを励起し、白色光を得ることができ」るから、本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する」「蛍光体層」といえる。
さらに、引用発明3の蛍光体は、「青色蛍光体、および、緑色蛍光体、赤色蛍光体」であるから、本件訂正発明1でいう「波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体」といえるが、上記「波長領域」が「420nm以上700nm以下」であるかは不明である。
したがって、引用発明3は、本件訂正発明1の「前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、前記蛍光体層は、波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含」むものの、上記「波長領域」が「420nm以上700nm以下」であることを備えるかは不明である。
c 本件訂正発明1の「前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、」との特定事項について
引用発明3は、「発光スペクトルの白色光の相関色温度は5882Kであ」るから、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
d 本件訂正発明1の「前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きく、」との特定事項について
引用発明3は、「発光スペクトルの白色光の平均演色評価数Raは93.4であ」るから、本件訂正発明1の上記特定事項を備える。
e 本件訂正発明1の「380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、」との特定事項について
引用発明3が上記特定事項を備えるのかは不明である。
f 本件訂正発明1の「前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下であり」との特定事項について
引用発明3が上記特定事項を備えるのかは不明である。
g 本件訂正発明1の「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」との特定事項について
引用発明3が上記特定事項を備えるのかは不明である。
h 本件訂正発明1の「白色発光装置」との特定事項について
引用発明3の「白色LED8」が、本件訂正発明1の「白色発光装置」に相当する。
(イ)一致点及び相違点の認定
上記(ア)によれば、本件訂正発明1と引用発明3とは、
「380nm以上480nm以下の波長領域に発光強度のピークを有する光を発する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードの光による励起により白色光を発する蛍光体層と、を具備し、
前記蛍光体層は、波長領域に互いに異なる発光強度のピークを有する複数の蛍光体を含み、
前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であり、
前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大きい、
白色発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点6]蛍光体の発光強度のピークを有する波長領域について、本件訂正発明1では、「420nm以上700nm以下」であるのに対して、引用発明3では、波長領域の上限・下限が不明である点。
[相違点7]本件訂正発明1は「380nm以上490nm以下の波長領域の前記白色光の発光スペクトルにおけるスペクトル強度が最大となる波長をλ*、最大強度をA*とし、光源の発光スペクトルをA(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、光源と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)としたとき、∫A(λ)・V(λ)dλ=∫B(λ)・V(λ)dλを満足し、前記白色光と同一色温度の黒体輻射の発光スペクトルB(λ)における前記波長λ*でのスペクトル強度をB*としたとき、強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下であると共に、前記白色光の380nm以上780nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値A、380nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値B、380nm以上429nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値C、430nm以上480nm以下の波長領域における放射束積分値を積分値Dとしたとき、前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Cの比が0.01以上0.12以下であり、前記積分値Aに対する前記積分値Dの比が0.08以上0.25以下である」のに対し、引用発明3はそうであるのか不明である点。
[相違点8]本件訂正発明1は「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピークのすべてにおいて、前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」のに対し、引用発明3はそうであるのか不明である点。
(ウ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点8より判断する。
引用文献3の図21のScan11において、相違点2に係る構成のうち、「380nm以上780nm以下の波長領域において、前記白色光の発光スペクトルに表れるピーク」であって、「前記ピークにおける発光強度の極大値に対する、長波長側で前記極大値に最近接する極小値の比は、前記極大値を1としたとき、0.7以上である」「ピーク」を見て取ることができるとしても、その「ピークのすべて」において、当該「極大値に対する」「極小値の比」が「0.7以上である」ことを見て取ることはできず、そのように構成する動機も見いだせない。
この点、引用文献3の【0039】には、「白色LED8の発光色が」「黒体輻射軌跡からの偏差duvができるだけ小さくなるように」「LEDチップ3と蛍光体の組み合わせを選択すること」との記載があるものの、当該記載は、そのようにするために具体的にどのようにすればよいのかの示唆を与えるものではない。また、黒体輻射軌跡からの偏差duvをできるだけ小さくすることは、上記の比を設定することとは異なるものであるし、当該偏差ができるだけ小さくなることにより、上記の比が、その「ピークのすべて」において、必然的に大きくなるとも言い難い。
そして、引用文献4~7の記載をみても、上記の説示を左右しない。
よって、当業者が、引用発明3において、相違点8に係る構成に至るとはいえない。
(エ)本件訂正発明1の小括
よって、本件訂正発明1は、引用発明3ではないし、また、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明3及び引用文献3、4~7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明2、3、6~9について
当該各発明は、本件訂正発明1をさらに限定したものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、引用発明3ではなく、また、引用発明3及び引用文献3、4~7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 取消理由通知に記載した取消理由に対する当審の判断に対する小括
したがって、取消理由通知に記載した理由によっては、本件訂正発明1~3、6~9に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に対する当審の判断
1 明確性要件違反の特許異議申立理由について
(1)申立人は、本件訂正前の請求項1における「強度B*に対する強度A*の比(強度A*/強度B*)が1.5以下である」及び「前記積分値Aに対する前記積分値Bの比が0.3以下であ」るとの記載が上限だけを示す数値限定であるので、その範囲が明確でない旨主張するが、そのことをもって、本件訂正発明1の記載が明確でないことにはならない。
(2)明確性要件違反の特許異議申立理由についての小括
よって、明確性要件違反の上記特許異議申立理由は成り立たない。
2 サポート要件違反の特許異議申立理由について
(1)申立人は、本件訂正前の請求項1の記載にサポート要件違反がある旨主張するので検討する。
ア まず、本件訂正発明1が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、本件訂正後の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件訂正明細書等」という。)の記載によれば、「青色の可視光領域の光強度が強いために感じる眩しさ、概日リズムへの影響、歯科治療への影響の少なくとも一つを改善すること」(【0012】)ことであると認められる。ここで、「歯科治療への影響」は、具体的には、従来の歯科用樹脂が、青色LEDの光が強いと早く硬化してしまうこと(【0010】)であるとされている。
そして、本件訂正発明1には、その解決手段として、少なくとも、(i)「前記白色光の相関色温度は、2500K以上7000K未満であ」ること、(ii)「前記白色光の平均演色評価数Raは、85よりも大き」いこと、(iii)強度A*/強度B*が1.5以下であること、(iv)積分値B/積分値Aが0.3以下であること、(v)積分値C/積分値Aが0.01以上0.12以下であること、(vi)積分値D/積分値Aが0.08以上0.25以下であること、が特定されている。
そこで、当業者であれば、上記解決手段により本件課題が解決できると認識できるかどうかについて検討すると、本件訂正明細書等は、(i)~(v)のいずれについても、その技術的意味が理解できるように記載されており、当該技術的意味と本件課題の解決との関係も理解できるといえる。すなわち、(i)の相関色温度の範囲(2500K以上7000K未満)の技術的意味は、太陽光にない色温度となってしまうおそれがあるのを避けること(【0022】)であり、(ii)の平均演色評価数の範囲(85超)の技術的意味は、太陽光の下でみえる自然色とかけ離れた見え方になるのを避けること(【0036】)であり、(iii)の強度A*/強度B*の範囲(1.5以下)の技術的意味は、紫外線領域から青色の可視光領域までの発光成分をなるべく少なくして、ほぼ太陽光に近いスペクトル分布とみなすことができるようにし、この光源を人が不快に感じることはないようにすること(【0024】~【0026】)であり、(iv)の積分値B/積分値Aの範囲(0.3以下)の技術的意味は、発光スペクトル中に380nm以上480nm以下の波長成分が多すぎて、人体への影響や、歯科用樹脂の早期硬化を招くおそれがあるのを避けること(【0031】)であり、(v)及び(vi)の積分値C/積分値Aの範囲(0.01以上0.12以下)及び積分値D/積分値Aの範囲(0.08以上0.25以下)の技術的意味は、演色性を低下させずに色温度を調整すること(【0032】)であって、特に不合理なものは見当たらないし、本件課題の解決との関係性も理解できる。この点、(iii)の技術的意味についての上記説明は、紫外線領域から青色の可視光領域までの発光成分をなるべく少なくするとする一方で、ほぼ太陽光に近いスペクトル分布とみなすことができるともすることから、紫外線領域から青色の可視光領域までの発光成分が少なすぎる場合にどのように考えるべきなのかという問題があり得るところではあるが、(i)、(ii)及び(v)が併せて特定されており、これらの特定からすれば、紫外線領域から青色の可視光領域までの発光成分がある程度は存在することが担保されていることから、上記の問題をもって特に不合理であるとはいえない。
そして、本件訂正明細書等には、実施例1として、(i)の相関色温度が2800K~6500Kであり、(iii)の強度A*/強度B*が0.95~1.50であるものと、実施例2として、(iv)の積分値B/積分値Aが0.19~0.27であり、(v)の積分値C/Aが0.07~0.09であり、(vi)の積分値D/Aが0.12~0.18であるものが記載されている。
このように、本件訂正明細書等では、本件課題の解決手段の技術的意味が、本件課題の解決との関連性をも含めて理解できるように記載されているとともに、相当程度の実施例によって当該技術的意味の妥当性が裏付けられているのであるから、当業者であれば、本件訂正発明1に特定された上記解決手段により本件課題が解決できると認識できるというべきであり、よって、本件訂正発明1の記載はサポート要件を満たしている。
イ これに対し、申立人は、要するに、(iii)~(vi)について、本件訂正明細書等には、本件訂正発明1の解決手段で特定された範囲の全体にまたがるように実施例が存在しないから、当該範囲の全体まで拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張する。しかしながら、上記アで説示したとおり、本件訂正明細書等には、上記解決手段の技術的意味が本件課題の解決との関連性をも含めて理解できるように記載されていることから、上記解決手段で特定された範囲の一部に実施例がないとしても、そのことをもって、本件訂正発明1の記載にサポート要件違反であることにはならない。
さらに、申立人は、(iii)について、本件特許の出願と同日に提出された上申書によれば、当該請求項に記載された発明の課題が、「従来の青色LEDを使った白色発光装置では青色LEDの発光が強すぎるために、必要以上に眩しかったり、概日リズム等で人体に悪影響を受けるなどの様々な問題が生じていることから、そのような必要以上な眩しさや概日リズム等による人体への悪影響を抑制すると共に、被照射物の色合いを自然に感じ取れるようにすること」であることが分かるから、技術常識に照らしても、(強度A*/強度B*)が1よりも大幅に小さい場合において、課題を解決できると認識できるとはいえない旨主張する。しかしながら、特許権者が上申書で主張した内容は、そもそも、上記アの判断を左右するものではないし、また、仮に被照射物の色合いを自然に感じられるようにすることを課題として考慮するとしても、上記アの判断のとおりである。
(2)サポート要件違反の特許異議申立理由についての小括
よって、サポート要件違反の上記特許異議申立理由は成り立たない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に対する当審の判断に対する小括
したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1~3、6~9に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1~3、6~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1~3、6~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項4及び5に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、請求項4及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700312