特許異議申立
2021-700122
剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベル
- 審判番号
- 2021-700122
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-517612
- 登録番号
- 6740507
- 請求日
- 2021年02月03日
- 審決日
- 2022年11月11日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】リンテック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
- 【異議申立人】高橋 麻衣子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6740507号発明「剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6740507号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
特許第6740507号の請求項9、10、15~19に係る特許を維持する。
特許第6740507号の請求項1~8、11~14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6740507号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)11月11日(優先権主張2018年(平成30年)11月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月28日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月12日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和3年 2月 3日 : 特許異議申立人高橋麻衣子(以下「申立人」
という。)による本件特許に対する特許異議
の申立て
同 年 5月31日付け: 取消理由通知書
同 年 8月 5日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同 年12月 7日 : 申立人による意見書の提出
令和4年 4月27日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
同 年 7月 7日 : 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
同 年 8月23日 : 申立人による意見書の提出
なお、令和4年7月7日の訂正請求により、上記令和3年8月5日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
令和4年7月7日の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9の「前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の剥離紙。」との記載を、「紙基材と、
前記紙基材の片面又は両面に、生分解性樹脂を含む目止め層と、
前記目止め層の少なくとも一方に剥離剤層と、
を備える、ラベル用原紙に用いる剥離紙であり、
前記目止め層が、前記生分解性樹脂を前記目止め層全体に対して100重量%含み、
前記生分解性樹脂が、バイオマス度が35%以上50%以下であるポリブチレンサクシネート系樹脂であり、
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであり、
前記目止め層の厚さは、17μm以上32μm以下であり、
前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とする剥離紙」と訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10、15~19も同様に訂正する。)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項15の「請求項1~10のいずれか1項に記載」との記載を、「請求項9又は10に記載」と訂正する。
(15)訂正事項15
明細書の【0048】の最終行の「及びその誘導体」を削除する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の明細書の【0049】の「及びその誘導体」を削除する。
(17)訂正事項17
明細書の【0051】の「、昭和電工社製ポリブチレンサクシネート樹脂「ビオノーレ」(登録商標)」を削除する。
(18)訂正事項18
明細書の【0053】の「及びその誘導体」、「ビオノーレ1000シリーズ(登録商標:昭和電工(株)製)」、「、ビオノーレ3000シリーズ(登録商標:昭和電工(株)製))」、「(例えば、アオニレックス(登録商標「(株)カネカ製))」、「(例えば、エコフレックス(登録商標:ビー・エー・エス・エフ社製))」、「(例えば、バイオマックス(登録商標:デュポン社製))」、「(例えば、REVODE(登録商標:海正生物材料社製)、Inego(登録商標:ネイチャーワークス社製))」及び「(例えば、CAPA6800(登録商標:パーストープ社製))」を削除する。
(19)訂正事項19
明細書の【0085】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(20)訂正事項20
明細書の【0086】の「実施例2」を「参考例2」に訂正する。
(21)訂正事項21
明細書の【0087】の「実施例3」を「実施例1」に訂正する。
(22)訂正事項22
明細書の【0088】の「実施例4」を「実施例2」に訂正する。
(23)訂正事項23
明細書の【0089】の「実施例5」を「参考例3」に訂正するとともに、同【0089】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(24)訂正事項24
明細書の【0090】の「実施例6」を「参考例4」に訂正するとともに、同【0090】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(25)訂正事項25
明細書の【0091】の「実施例7」を「参考例5」に訂正するとともに、同【0091】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(26)訂正事項26
明細書の【0092】の「実施例8」を「参考例6」に訂正するとともに、同【0092】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(27)訂正事項27
明細書の【0096】の「実施例1~8」を「実施例1~2、参考例1~6」に訂正する。
(28)訂正事項28
明細書の【0097】の【表1】について、「実施例1」を「参考例1」に、「実施例2」を「参考例2」に、「実施例3」を「実施例1」に、「実施例4」を「実施例2」に、「実施例5」を「参考例3」に、「実施例6」を「参考例4」に、「実施例7」を「参考例5」に、「実施例8」を「参考例6」に、それぞれ訂正する。
(29)訂正事項29
明細書の【0098】について、実施例1及び2、実施例3及び4、実施例5~8をそれぞれ、参考例1及び2、実施例1及び2、参考例3~6に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~19は、請求項2~19が、請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項について請求されたものである。
また、明細書に係る訂正は、一群の請求項について請求されたものである。
3 本件訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1~8、10~13について
訂正事項1~8、10~13に係る請求項1~8、11~14についての訂正は、請求項の削除であるから特許請求の範囲の減縮であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項9について
(ア)訂正事項9は、訂正前の請求項1及び請求項6を引用する請求項9を、引用関係を解消し独立請求項へ改めることに加えて、
(イ)訂正前の請求項1において「バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層」と選択的に記載されていたうちの「バイオマス由来の樹脂」に係る「前記バイオマス由来の樹脂がバイオマス由来のモノマーが重合してなるバイオマスポリオレフィンを含む」との発明特定事項を削除し、「生分解性樹脂を含む目止め層」に限定し、
(ウ)「剥離紙」が「ラベル用原紙に用いる」ことを限定し、
(エ)訂正前の請求項6において、「前記目止め層が、前記生分解性樹脂を前記目止め層全体に対して50重量%以上含む」との記載において、「50重量%以上」を「100重量%」に限定し、
(オ)「前記生分解性樹脂」が「バイオマス度が35%以上50%以下であるポリブチレンサクシネート系樹脂であり、前記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであ」ることを限定し、
(カ)「前記目止め層の厚さは、17μm以上32μm以下であ」ることを限定するものである。
そして、
前記(ア)については、訂正事項1~8により削除する請求項を引用しない記載へと改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(イ)については、選択的に記載されていた事項のうち一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(ウ)については、本件発明に係る「剥離紙」の用途を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0076】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(エ)については、「生分解性樹脂」の含有割合を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0048】、【0087】、【0088】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(オ)については、「生分解性樹脂」の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0044】、【0048】、【0049】、【0051】、【0087】、【0088】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(カ)については、「目止め層」の厚さを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0056】、【0087】、【0088】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項14
訂正事項14に係る請求項15についての訂正は、訂正事項1~8により削除する請求項を引用しない記載へと改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 訂正事項15~18
訂正事項15~18に係る明細書についての訂正は、訂正事項1~14により特許請求の範囲に含まれなくなった「ポリブチレンサクシネート系樹脂」の「誘導体」に対応する事項を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ 訂正事項19~29
訂正事項19~29に係る明細書についての訂正は、訂正事項1~18の訂正の結果、訂正後の本件発明に該当しない項目を、「実施例●」から「参考例▲」へ記載を改めるとともに、「実施例●」の番号を整えるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)小括
上記のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~19に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
紙基材と、
前記紙基材の片面又は両面に、生分解性樹脂を含む目止め層と、
前記目止め層の少なくとも一方に剥離剤層と、
を備える、ラベル用原紙に用いる剥離紙であり、
前記目止め層が、前記生分解性樹脂を前記目止め層全体に対して100重量%含み、
前記生分解性樹脂が、バイオマス度が35%以上50%以下であるポリブチレンサクシネート系樹脂であり、
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであり、
前記目止め層の厚さは、17μm以上32μm以下であり、
前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とする剥離紙。」
【請求項10】
前記シリコーン系剥離剤が、エマルション型又は無溶剤型のシリコーン系剥離剤であることを特徴とする請求項9に記載の剥離紙。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
請求項9又は10に記載の剥離紙と、粘着剤層と、ラベル用基材と、を有してなることを特徴とするラベル用原紙。
【請求項16】
前記粘着剤層がバイオマス粘着剤を含むことを特徴とする請求項15に記載のラベル用原紙。
【請求項17】
前記バイオマス粘着剤は、粘着付与剤を含み、前記粘着付与剤は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、前記粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上であることを特徴とする、請求項16に記載のラベル用原紙。
【請求項18】
前記ラベル用原紙は、紙又はバイオマス樹脂フィルムであることを特徴とする請求項15~17のいずれか1項に記載のラベル用原紙。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか1項に記載のラベル用原紙を用いたことを特徴とするラベル。」
第4 令和4年4月27日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
(進歩性)本件特許の請求項5、6、9~19に係る発明は、その出願前に、日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平7-44104号公報(甲第1号証)
引用文献2:実願昭58-22398号(実開昭59-149944号)の
マイクロフィルム(甲第2号証)
引用文献3:特開2017-196780号公報(甲第5号証)
引用文献4:特開2018-1608号公報(甲第6号証)
引用文献5:特開2012-203022号公報(当審にて追加した文献)
参考資料1:大島一史,総論―バイオプラスチック開発の進展と実用化・普
及に向けた今後の課題,プラスチックス・エージ,株式会社プ
ラスチックス・エージ,平成27年5月1日,Vol.61,
p.38(申立人が提出した参考資料1)
参考資料2:木村良晴, グリーンポリマーの化学合成,高分子,社団法人
高分子学会,2001年6月,50巻,6月号 p.372(
申立人が提出した参考資料2)
参考資料3:特開平6-171050号公報(申立人が提出した参考資料3
)
(明確性)本件特許の特許請求の範囲の記載は下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
本件特許の請求項5には「前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート系樹脂及びその誘導体の中から選ばれ、」とあるが、「その誘導体」の記載が指すものが明らかではない。
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 引用文献に記載された事項、引用発明
(1)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のために、当審が付した。
ア 「【請求項1】 生分解性ポリマー層からなる粘着ラベル基材上に粘着剤層が積層されてなる生分解性粘着ラベル本体と、生分解性ポリマー層からなる剥離シート基材上に剥離剤層が積層されてなる生分解性剥離シートとからなり、前記生分解性粘着ラベル本体と前記生分解性剥離シートとが、生分解性粘着ラベル本体の粘着剤層と剥離シートの生分解性剥離剤層とが接するように積層されていることを特徴とする生分解性粘着ラベル。」
イ 「【請求項6】 前記剥離シート基材が生分解性ポリマー層と紙層との積層シートであり、かつ、該生分解性ポリマー層上に前記剥離剤層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の生分解性粘着ラベル。」
ウ 「【0010】一方、剥離シート基材は、生分解性ポリマー層のみから構成されていてもよい。また、この剥離シート基材は、生分解性ポリマー層と紙層との積層体であってもよく、生分解性ポリマー層/紙層/生分解性ポリマー層の積層体であってもよい。
【0011】
【発明の具体的説明】本発明に係る生分解性粘着ラベルの具体例を図1~図3に示す。図1に示す生分解性粘着ラベル10は、生分解性粘着ラベル本体20と、生分解性剥離シート30とから形成されている。」
エ 「【0012】このうち、生分解性ポリマー層aは、生分解性ポリマーから形成されている限り、どのような生分解性ポリマーを用いることもできるが、具体的には下記のような生分解性ポリマーから形成されていることが好ましい。
【0013】a)3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステル(商品名 バイオポール、英国ICI社製)なお、この直鎖状ポリエステル(バイオポール)は、Alcaligenes Europhusによる糖発酵によって得られる。
【0014】・・・
・・・
g)ポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリグリコリッドあるいはこれらの誘導体などの生分解性ポリマー
・・・。」
オ 「【0017】また、上記粘着ラベル基材1の片面には粘着剤層2が形成されているが、このような粘着剤層2を形成しうる粘着剤としては、例えばロジンおよびその誘導体(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステルなど)、テルペンおよびその誘導体(α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂およびこれらの水添物)から選ばれた1種または2種以上の粘着付与性樹脂と天然ゴムとの混合物からなる粘着剤が挙げられる。このうち、天然ゴムは、固形であってもラテックス状であってもよい。なお、粘着剤中では、天然ゴム100重量部に対し、1~150重量部の粘着付与性樹脂が配合されていることが好ましい。
・・・
【0021】なお、上記のような粘着剤塗布液の溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチルなどが用いられる。一方、生分解性剥離シート30では、生分解性ポリマー層aのみからなる剥離シート基材3上に剥離剤層4が積層されている。
【0022】このような生分解性ポリマー層aのみで構成された剥離シート基材3の厚さは、通常、12~125μmであり、好ましくは25~100μmである。そして、上記のような生分解性ポリマー層aのみで構成された剥離シート基材3は、生分解性剥離シート30を土中に廃棄しても自然環境を破壊することがないので、本発明にとって好ましいものである。
【0023】また、剥離剤層4を形成しうる剥離剤としては、シェラック、天然ワックス、カゼイン、スターチ等の天然化合物からなる剥離剤、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、シリコーン等の合成剥離剤の1種または2種以上が用いられる。
・・・
【0027】図2に示す生分解性粘着ラベル10は、生分解性粘着ラベル本体20の粘着ラベル基材1を除いては図1の生分解性粘着ラベル10と同様である。図2に示された生分解性粘着ラベル本体20では、粘着ラベル基材1が生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層シートから構成されている。
【0028】このうち、生分解性ポリマー層aおよびその厚さは、上述したものと同一である。また、紙層bとしては、通常、50~150g/m2、好ましくは60~100g/m2の紙が用いられる。
【0029】このような生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層シートから構成された粘着ラベル基材1は、例えば、生分解性ポリマー層aを紙シートbに押出成形機で100~300℃の温度でラミネートするなどの方法によって得られる。
・・・
【0033】図4に示す生分解性粘着ラベル10は、生分解性剥離シート30の剥離シート基材3を除いては図1の生分解性粘着ラベル10と同様である。図4に示された生分解性剥離シート30では、剥離シート基材3が生分解性ポリマー層aと紙シートbとの積層体で構成され、生分解性ポリマー層a上に剥離層4が形成されている。
【0034】このうち、生分解性ポリマー層aおよびその厚さは、上述したものと同一である。また、紙層bとしては、通常、50~150g/m2、好ましくは60~100g/m2の紙が用いられる。
【0035】このような生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層体で構成された生分解性剥離シート基材3は、図2に示す粘着ラベル基材1と同様の方法で得ることができる。」
カ 「【0041】
【実施例】生分解性ポリマー層として厚さ70μmの3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ琥珀酸との共重合体で構成されたフィルム(「バイオポール」、英国ICI社製)の片面に、5×10-5torrの真空度でアルミニウムを蒸着してアルミニウム薄膜を形成した。
【0042】このアルミニウム薄膜上に、粘着剤として天然ゴムとテルペン系樹脂との混合物を20%の濃度で含むトルエン溶液をコンマコーターで塗布して付着量30g/m2の粘着剤層を形成し、生分解性粘着ラベル本体を得た。
【0043】次いで、坪量80g/m2の上質紙(リンテック(株)社製)に上記生分解性ポリマー層を加熱温度200℃で押出成形機でラミネートすることにより、生分解性ポリマー層と紙シートとからなる剥離シート基材を得た。
【0044】この剥離シート基材の生分解性ポリマー層上にシリコーン系剥離剤(商品名SRX244、東レシリコーン(株)社製)を用いて剥離剤層を形成し、生分解性剥離シートを得た。
【0045】上記生分解性粘着ラベル本体の粘着剤層と生分解性剥離シートの剥離剤層とを重ね合わせて貼着して生分解性粘着ラベルを得た。・・・」
キ 「【図1】
[図:0001393969000001.jpg]
【図2】
[図:0001393969000002.jpg]
【図3】
[図:0001393969000003.jpg]
【図4】
[図:0001393969000004.jpg]
」
上記カ記載の実施例の積層構造において、製造に係る参考とし、上記エ記載の好ましいとされる生分解性ポリマーと、上記オ記載の基材の厚さに着目すると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「生分解性ポリマー層からなる粘着ラベル基材1上に粘着剤層2が積層されてなる生分解性粘着ラベル本体20と、該ラベル本体20の粘着剤層2と生分解性剥離シート30の剥離剤層4とが接するように、前記生分解性粘着ラベル本体20に積層される生分解性剥離シート30とを備えた生分解性粘着ラベル10であって、
前記生分解性剥離シート30は、
剥離剤層4と剥離シート基材3とが積層されてなり、
前記剥離シート基材3は、生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層シートであり、かつ、該生分解性ポリマー層a上に剥離剤層4が形成され、
前記剥離シート基材3の生分解性ポリマー層aの厚さは12~125μmである
生分解性粘着ラベル10。」
(2)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「2.実用新案登録請求の範囲
1 紙の片面若しくは両面に(A)DSC(differential scanning calorimeter示差走査熱量計)による融点120℃以上の中密度ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレンと、
(B)DSCによる融点100℃以上のリニアー低密度ポリエチレン若しくは高圧法低密度ポリエチレンとから成る平均密度0.930~0.950g/cm3の(A)(B)混合樹脂層が設けられ、且つ紙と該混合樹脂層との接着強度が80g/20mm以上である剥離紙用基材。」
イ 「本考案では、中密度ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレンと、高圧法低密度ポリエチレン若しくはリニアー低密度ポリエチレンとの混合樹脂が目止め層として用いられなければならない。」(明細書4ページ9行~同ページ12行)
ウ 「また、本考案における高圧法低密度ポリエチレン若しくはリニアー低密度ポリエチレンはDSCによる融点が100℃以上でなければならない。100℃未満であると良好な耐熱性が得られない。なお、密度としては0.910~0.925g/cm3、メルトフローレートとしては2~25g/10分のものが使用される。」(明細書6ページ17行~7ページ3行)
エ 「本考案の剥離紙用基材のポリエチレン表面には剥離剤との密着性を更に向上させる目的で、コロナ放電処理を行なうことも可能である。」(明細書8ページ2~4行)
以上に摘記した事項を総合すると、上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「紙の片面若しくは両面に、目止め層として、
(A)DSC(differential scanning calorimeter示差走査熱量計)による融点120℃以上の中密度ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレンと、
(B)DSCによる融点100℃以上のリニアー低密度ポリエチレン若しくは高圧法低密度ポリエチレンとから成る平均密度0.930~0.950g/cm3の(A)(B)混合樹脂層が設けられ、且つ紙と該混合樹脂層との接着強度が80g/20mm以上である剥離紙用基材。」
(3)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
少なくとも、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である、積層体。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層が、化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含む、請求項1に記載の積層体。」
イ 「【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。」
ウ 「【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン樹脂の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたバイオマスポリオレフィン(以下、単に「バイオマスポリオレフィン」ということがある)を含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン(以下、単に「化石燃料由来のポリオレフィン」ということがある)からなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。」
エ 「【0036】
バイオマスポリオレフィンは、好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下、より好ましくは0.912g/cm3以上0.928g/cm3以下、さらに好ましくは0.915g/cm3以上0.925g/cm3以下の密度を有するものである。バイオマスポリオレフィンの密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-198のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。バイオマスポリオレフィンの密度が0.91g/cm3以上あれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の剛性を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。また、バイオマスポリオレフィンの密度が0.93g/cm3以下であれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の透明性や機械的強度を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。」
(4)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である、積層体。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層が、化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含む、請求項1に記載の積層体。」
イ 「【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目
されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン樹脂の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたバイオマスポリオレフィン(以下、単に「バイオマスポリオレフィン」ということがある)を含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン(以下、単に「化石燃料由来のポリオレフィン」ということがある)からなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。」
エ 「【0036】
バイオマスポリオレフィンは、好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下、より好ましくは0.912g/cm3以上0.928g/cm3以下、さらに好ましくは0.915g/cm3以上0.925g/cm3以下の密度を有するものである。バイオマスポリオレフィンの密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。バイオマスポリオレフィンの密度が0.91g/cm3以上あれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の剛性を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。また、バイオマスポリオレフィンの密度が0.93g/cm3以下であれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の透明性や機械的強度を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。」
(5)引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【0026】
剥離紙は、一般的には基材となる紙と、接着剤層に接触する剥離層と、剥離剤が基剤に浸透するのを防止する目止め層からなる。基材には、用途により半晒紙、上質紙、グラシン紙などを用いる。目止め層にはポリエチレン系が多く用いられ、厚みは数~数十μmである。」
(6)参考資料1
参考資料1には、次の事項が記載されている。
ア 「バイオマス(以降“BP”)由来のプラスチック、いわゆる“バイオマスプラスチック”、更には生分解性プラスチック(以降“BdP”)を含むバイオプラスチック(以降、これらを総称して“BP”)について、国の普及に向けた政策、及び民間による工業化を前提とする実用化に向けた取組み経緯と上市資材を概観し、普及に向けた課題・論点を整理する。」(P.32左欄)
イ 「(2)ポリブチレンサクシネート
実質唯一のBdPとして市場を形成しているポリブチレンサクシネート(PBS)は、コハク酸と1.4-ブタンジオール(1.4-BD)からの縮合反応で合成される(1992年に昭和高分子(当時)と昭和電工によって開発された我が国初の軟質系BdP)。コハク酸は一般にはマレイン酸経由で合成されるが、BM由来とする技術、すなわちバイオコハク酸が開発され、海外では商業生産が始まっている。昭和電工から「ビオノーレ」(別途詳細解説を参照)、三菱化学から(GSプラ)として上市されているタイプは、・・・生ごみ回収袋やマルチフィルム、更には包装資材や土嚢など土木資材としての展開に実績を持っている。」(P.38右欄)
(7)参考資料2
参考資料2には、次の事項が記載されている。
「4.3 ポリコハク酸ブチレン(PBS)
コハク酸ジメチル(DMS)とブタンジオール(BD)の重縮合によって得られるPBSは、“Non-Carothers’Polymers”のひとつであり、性能的に問題があるとして開発から見放されてきた高分子材料である。実際に、その融点は120℃前後であり、実用上からもやや低いと思われる。ところが、高重合体の開発が行われてみると、結構強い素材となることが分かってきた。一般に、重縮合法では分子量を上昇させることが困難であり、実用に耐える高分子量体を得るには工夫がいる。その工夫のひとつは、ジイソシアネートを鎖延長剤に用いた重付加による分子量増加である。第一段目の重縮合で分子量10,000~20,000程度のPBSを合成し、それをたとえばヘキサメチレンジイソシアネートと反応させて鎖延長を行い、分子量200,000程度のPBS誘導体を得る。このようにして開発されたものがビオノーレ○Rである。ビオノーレには、PBSおよびPESの鎖延長されたもののほかに、アジピン酸をコモノマーとして含むpoly(butylene succinate/adipate)(PBSA)を鎖延長したものがある。」(注:「○R」は登録商標を示すマーク。)(P.372)
(8)参考資料3
参考資料3には、次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】紙または布等の基材の合成樹脂を積層したラミネートは各種の用途に用いられている。例えば剥離基材としては、従来紙または布の片面もしくは両面に目止め層として315~345℃で通常高圧法で得られる長鎖分岐を有する低密度ポリエチレンあるいは低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンをブレンドした中密度ポリエチレンあるいは低密度ポリエチレンとポリプロピレンをブレンドした組成物が用いられ、該目止め層の上に剥離層が設けられたものがよく知られている。」
イ 「【0006】更に使用済みの紙カップ、紙トレー等は、紙に微生物分解性のないポリオレフィン組成物が積層されているため土中に埋めても分解せず、また紙を回収しようとする場合はこの使用済みの紙カップ及び紙トレーをアルカリ水溶液中に浸漬しポリオレフィン組成物を分離するという非常に面倒で人手とコストを要するため紙と一緒に生分解するような撥水層用組成物が強く求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、剥離用基材の目止め層として、溶融コーティング時の発煙を少なくするためには低温で成形でき、しかも紙または布等の基材に接着、密着性のよいポリマーであって、しかも自然界のごくあたり前の土中の微生物により容易に分解させられるようなポリマーで目止めされた剥離基材の開発、並びに高温度積層による製品基材に残るポリオレフィンの酸化劣化臭と多量の煙の発生の問題を解決し、併せて紙製容器に微生物分解性を付与して使用済み容器の廃棄に伴う非分解性物質が蓄積する自然界環境の保全に有利な紙容器用基材の開発を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、温度190℃、剪断速度100(sec-1)における溶融粘度が1.0×103~1.0×105ポイズであり、融点が70~200℃である脂肪族ポリエステル樹脂を、基材に溶融押出コーティングしたことを特徴とする剥離基材を開発することにより、さらに温度190℃、剪断速度100(sec-1)における溶融粘度が1.0×103~1.0×105ポイズであり、融点が85~200℃とした脂肪族ポリエステル樹脂を、原紙に積層したことを特徴とする紙製容器用基材を開発することにより、上記のそれぞれの目的を達成した。
【0009】本発明で言う脂肪族ポリエステルとは、グリコール類と脂肪族多塩基酸またはその酸無水物とから合成されるポリエステルを主成分とするものであり、分子量を充分に高くするため、両端にヒドロキシル基を有する比較的高分子量のポリエステルプレポリマーを合成した後カップリング剤により、さらにこれらプレポリマーをカップリングさせたものである。」
ウ 「【0044】
【実施例】
(実施例1)700Lの反応器を窒素置換してから、1,4-ブタンジオール183kg、コハク酸224kgを仕込んだ。窒素気流中において昇温を行い、195~210℃にて3.0時間、更に窒素を停止して15~5mmHgの減圧下に3.5時間にわたり脱水縮合によるエステル化反応を行った。採取された試料は、酸価が6.3mg/g、数平均分子量(Mn)が5,200、また重量平均分子量(Mw)が10,100であった。引き続いて、常圧の窒素気流下に触媒のテトライソプロポキシチタン3.4gを添加した。温度を上昇させ、温度215~220℃で5~0.2mmHgの減圧下に7.5時間、脱グリコール反応を行った。採取された試料は数平均分子量(Mn)が18,600、また重量平均分子量(Mw)が50,300であった。このポリエステル(A1)は凝縮水を除くと収量は339kgであった。
【0045】ポリエステル(A1)339kgを入れた反応器にヘキサメチレンジイソシアナート4070gを添加し、180~200℃で1時間カップリング反応を行った。粘度は急速に増大したが、ゲル化は生じなかった。次いで抗酸化剤としてイルガノックス1010(チバガイギー社製)を1700g及び滑剤としてステアリン酸カルシウムを1700g加えて更に30分間撹拌を続けた。この反応生成物をエクストルーダーにて水中に押出し、カッターで裁断してペレットにした。90℃で6時間、真空乾燥した後のポリエステル(B1)の収量は270kgであった。
【0046】得られたポリエステル(B1)は、わずかにアイボリー調の白色ワックス状結晶で、融点が110℃、数平均分子量(Mn)が29,500、重量平均分子量(Mw)が127,000、MFR(190℃)は9.2g/10分、オルトクロロフェノールの10%溶液の粘度は170ポイズ、温度190℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度は8.0×103ポイズであった。平均分子量の測定は、Shodex GPC System-11(昭和電工(株)製ゲルクロマトグラフィー),溶媒はCF3 COONaのヘキサフロロイソプロピルアルコール5ミリモル溶液、濃度0.1重量%、検量線は昭和電工(株)製PMMA標準サンプル Shodex Standard M-75で行った。次いでこのポリエステル樹脂(B1)をスクリュー径50mmφ、L/D=28の押出機に幅320mmのT-ダイを用い、ダイリップギャップ0.8mm、エアギャップ120mm、樹脂温度220℃で押出し、速度150m/minで供給される上質紙(70g/m2)上に20μmの厚みでラミネートし、剥離基材を製造した。」
2 進歩性に係る取消理由についての判断
(1)本件発明9と引用発明1との対比
本件発明9と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「紙層b」、「剥離剤層4」、「生分解性剥離シート30」は、本件発明9の「紙基材」、「剥離剤層」、「剥離紙」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「生分解性剥離シート30」は「該ラベル本体20の粘着剤層2と剥離シート30の剥離剤層4とが接するように、前記生分解性粘着ラベル本体20に積層される」ものであるから、本件発明9の「ラベル用原紙に用いる剥離紙」に相当する。
そして、引用発明1の「生分解性ポリマー層a」と、本件発明9の「生分解性樹脂を含む目止め層」とは、「生分解性樹脂を含む」「層」という限りにおいて一致する。
したがって、本件発明9と引用発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点1、2で相違する。
[一致点]
「紙基材と、前記紙基材の片面に、生分解性樹脂を含む層と、
前記層の少なくとも一方に剥剤層と、
を備える、ラベル用原紙に用いる剥離紙。」
[相違点1]
生分解性樹脂を含む層について、本件発明9は「バイオマス度が35%以上50%以下であ」り「バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであ」る「生分解性樹脂を」「層全体に対して100重量%含み、」「厚さ」が「17μm以上32μm以下であ」る「目止め層」であるのに対し、引用発明1の「生分解性ポリマー層a」は、由来が不明であり、「目止め」を行うか否かが明らかでなく、厚さが「12~125μm」である点。
[相違点2]
剥離剤層について、本件発明9は「シリコーン系剥離剤を含む」のに対し、引用発明1ではかかる構成が特定されていない点。
(2)判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、生分解性ポリマーの例として、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステル(【0013】)やポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリグリコリッドあるいはこれらの誘導体(【0014】)について記載されているが、本件発明9で特定する「ポリブチレンサクシネート又はポリブチレンサクシネート・アジペート」とすること及び「バイオマス由来」とすることの記載はないし、加えて、「バイオマス度が35%以上50%以下であ」ること及び「生分解性樹脂を」「層全体に対して100重量%含み」といった具体化手段についての記載もない。さらには、引用文献1の生分解性ポリマーが目止め層であることの記載もない。そうすると、参考資料1の生分解性樹脂であるポリブチレンサクシネート(PBS)及び参考資料2のPBS誘導体の記載、並びに、参考資料3の目止め層として生分解性ポリマーに係る脂肪族ポリエステルを用いることの記載があるとしても、これらの記載の存在が、引用文献1の実施例に係る3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステルや他の例示される材料とは異なる特定の材料とし、さらに当該材料をバイオマス由来とし、そのバイオマス度を特定の数値にしつつ、さらに目止め層として用いるよう構成することの着想を動機付けるものとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明15~19について
本件発明15~19は、本件発明9の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明15~19は、当業者が引用発明1及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3.明確性に係る取消理由についての判断
本件訂正により、本件発明9、15~19には「その誘導体」との記載は含まれないものとなったから、明確性に係る取消理由は解消された。
第6 取消理由(決定の予告)で通知しなかった特許異議申立理由について
1 新規性及び進歩性に係る申立理由について
申立人は、請求項1~4、7~10に係る発明について、請求項1において目止め層がバイオマス由来の樹脂を含む場合は、引用文献2(甲第2号証)に記載された発明に基づき進歩性を有していないと主張する(申立書の特に27ページの(3)の(ii))。
しかしながら、本件訂正により、目止め層が単にバイオマス由来の樹脂を含むものではなく、生分解性樹脂であることが特定されたため、申立人が主張する上記理由は解消した。
2 サポート要件及び実施可能要件に係る申立理由について
(1)申立人は、請求項1には、「バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層」とあり、目止め層がバイオマス由来の樹脂及び生分解性樹脂の両方を含む態様も含まれ得ることが特定されているところ、本件特許明細書の実施例には、目止め層にバイオマス由来の樹脂若しくは生分解性樹脂のいずれかを含む例しか開示されていないと主張する(申立書48ページの(5)の(i))。
しかしながら、本件訂正により、目止め層を単にバイオマス由来の樹脂とする構成は削除されたため、申立人が主張する上記理由は解消した。
(2)申立人は、請求項3では、目止め層が含むバイオマス由来の樹脂が含むバイオマスポリオレフィンについて「0.910g/cm3以上0.965g/cm3未満の密度を有する」と特定されているところ、本件特許明細書の実施例では、バイオマスポリオレフィンとして、密度0.916g/cm3のものしか開示されていないと主張する(申立書48ページの(5)の(ii))。
しかしながら、本件訂正により、目止め層を単にバイオマス由来の樹脂とする構成は削除されたため、申立人が主張する上記理由は解消した。
(3)申立人は、請求項6の「生分解性樹脂の含有量が目止め層全体に対して50重量%以上である」点について、本件特許明細書には100重量%の実施例しか記載されておらず、50重量%以上100重量%未満の態様についてサポートされておらず、数値範囲の意義も明らかでないでないと主張する(申立書49ページの(5)の(iii))。
しかしながら、本件特許明細書には、「目止め層12中の生分解性樹脂の含有が50重量%以上であれば、剥離紙10の一部が生分解性を有し、従来に比べて環境負荷を削減することができる。」(【0054】)と記載されており、目止め層12中の生分解性樹脂が100重量%未満の範囲においても、環境負荷を削減するという本件発明の解決しようとする課題が解決できることを理解できるし、環境負荷を削減する効果があるという点においては数値範囲の意義も明らかである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)申立人は、請求項9の「前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含む」点及び請求項10の「前記シリコーン系剥離剤が、エマルション型又は無溶剤型のシリコーン系剥離剤である」点について、本件特許明細書の実施例では、シリコーン系剥離剤について一切の情報が開示されていないため、実施例において、エマルション型のシリコーン系剥離剤もしくは無溶剤型のシリコーン系剥離剤を用いた例が開示されているか否かを判断できないと主張する(申立書49ページの(5)の(iv))。
しかしながら、本件特許明細書には「シリコーン系剥離剤は、・・・、環境面の観点から、エマルション型又は無溶剤型が好ましい。」(【0067】)と記載されているのだから、個別の実施例において「シリコン系剥離剤」についての具体的な記載がなくとも、上記【0067】等の記載に基いて、エマルション型か無溶剤型のシリコーン系剥離剤を用いることができることは当業者であれば理解できる。
したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
3 明確性要件に係る申立理由について
申立人は、請求項13及び17の「前記粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上」との記載において、粘着剤層におけるバイオマス度の定義が不明であると主張する(申立書49ページの(6))。
しかしながら、本件特許明細書には、「目止め層12中のバイオマス度が1%以上であれば、従来に比べて環境負荷を減らすことができる。ここで、バイオマス度とは、化石燃料由来の原料とバイオマス由来の原料との混合比率を表す指標であり、放射性炭素(C14)の濃度を測定することにより決定され、下記式で表される。
バイオマス度(%)=C14濃度(pMC)×0.935」(【0043】~【0044】)と記載されている。そして、目止め層の原料の放射性炭素の濃度を測定することができることは明らかである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び申立人が提出した特許異議の申立理由によっては、本件特許の請求項9、10、15~19に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項9、10、15~19に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項1~8、11~14に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1~8、11~14に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700122