特許異議申立
2021-700107
紫外線硬化型組成物および記録物
- 審判番号
- 2021-700107
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-224702
- 登録番号
- 6733153
- 請求日
- 2021年01月29日
- 審決日
- 2022年05月26日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】セイコーエプソン株式会社
- 【権利者代理人】増田 達哉
- 【権利者代理人】朝比 一夫
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.536-ZAA(C09D) / P1651.537-ZAA(C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6733153号発明「紫外線硬化型組成物および記録物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6733153号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第6733153号の請求項1-8、10-12に係る特許を取り消す。
特許第6733153号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6733153号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成27年11月17日に出願され、令和2年7月13日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~12に係る特許に対し、令和3年1月29日に特許異議申立人 渡辺陽子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年4月14日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年6月21日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、同年7月14日付けで手続補正指令書(方式)が通知され、特許権者は、その指定期間内である同年8月6日に手続補正書を提出し、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年9月1日付けで特許異議申立人に通知し、これに対し、特許異議申立人は、その指定期間内である同年10月6日に意見書を提出した。当審は、同年11月17日付けで取消理由を通知(決定の予告)し、特許権者は、その指定期間内である令和4年1月19日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、同年1月26日付けで手続補正指令書(方式)が通知され、特許権者は、その指定期間内である同年2月22日に手続補正書(以下、この手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を提出し、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年3月1日付けで特許異議申立人に通知し、これに対し、特許異議申立人は、その指定期間内である同年4月7日に意見書を提出した。
なお、令和3年8月6日付けの手続補正書により補正された令和3年6月21日付けの訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨について
令和4年4月7日付けの手続補正により補正された訂正請求による訂正の「請求の趣旨」は、「特許第6733153号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~5からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「重合性化合物と、表面処理が施された金属粉末と、チクソ性抑制剤としてのリン酸系分散剤とを含み、
せん断速度1000sec-1における粘度η1[mPa・s]と、1000sec-1のせん断速度でせん断応力を10分間加え続けた後に、せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2[mPa・s]との間で、η2-η1≦3の関係を満足することを特徴とする紫外線硬化型組成物。」を、「重合性化合物と、表面処理が施された金属粉末と、チクソ性抑制剤としてのリン酸系分散剤とを含み、
前記重合性化合物として、脂環構造を有するモノマーを含み、
紫外線硬化型組成物中における前記重合性化合物の含有率が68質量%以上99質量%以下であり、
前記金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)100nm以上1.2μm以下であり
前記金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)が300nm以上4.0μm以下であり、
紫外線硬化型組成物中における前記金属粉末の含有率が0.9質量%以上29質量%以下であり、
回転式粘度計(アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて、せん断速度を1000sec-1としたときの粘度η1[mPa・s]と、1000sec-1のせん断速度でせん断応力を10分間加え続けた後に、せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2[mPa・s]との間で、η2-η1≦3の関係を満足することを特徴とする紫外線硬化型組成物。」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10の「請求項9」を、「請求項1ないし8のいずれか1項」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項11の「請求項9または10」を、「請求項1ないし8および10のいずれか1項」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12の「請求項1ないし11のいずれか1項」を、「請求項1ないし8、10および11のいずれか1項」と訂正する。
3 一群の請求項について
請求項2~12は、請求項1を引用するものであり、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「重合性化合物」について紫外線硬化型組成物中に含まれることのみを特定しており、「金属粉末」について「表面処理が施された」ものであることを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「前記重合性化合物として、脂環構造を有するモノマーを含み、
紫外線硬化型組成物中における前記重合性化合物の含有率が68質量%以上99質量%以下であり、
前記金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)100nm以上1.2μm以下であり
前記金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)が300nm以上4.0μm以下であり、
紫外線硬化型組成物中における前記金属粉末の含有率が0.9質量%以上29質量%以下であり」との特定により、訂正後の請求項1に係る発明における重合性化合物の化学構造および含有率、ならびに、金属粉末のD10、D90および含有率を具体的に特定し、更に限定するものである。
また、訂正前の請求項1に係る特許発明は、粘度に関する条件として、「せん断速度1000sec-1における粘度η1[mPa・s]と、1000sec-1のせん断速度でせん断応力を10分間加え続けた後に、せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2[mPa・s]との間で、η2-η1≦3の関係を満足する」ことのみを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「回転式粘度計(アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて、せん断速度を1000sec-1としたときの粘度η1[mPa・s]と、1000sec-1のせん断速度でせん断応力を10分間加え続けた後に、せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2[mPa・s]との間で、η2-η1≦3の関係を満足する」と特定することにより、訂正後の請求項1に係る発明における粘度の測定条件を具体的に特定し、更に限定するものである。
すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
同様に、訂正後の請求項2~8、10~12は、訂正後の請求項1を引用することにより、訂正後の請求項2~8、10~12に係る発明における重合性化合物の化学構造および含有率、ならびに、金属粉末のD10、D90および含有率を具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「重合性化合物」という発明特定事項について化学構造および含有率を具体的に特定し、「金属粉末」という発明特定事項についてD10、D90および含有率を具体的に特定し、粘度η1[mPa・s]と粘度η2[mPa・s]との間で満たす関係「η2-η1≦3」に係る発明特定事項について、粘度η1および粘度η2についての測定条件を具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する 特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2~8、10~12の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記アの理由から明らかなように、訂正後の請求項1の記載は、訂正前の請求項1との関係で特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないといえる。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2~12の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項2~12に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、訂正前の請求項2~12との関係で 、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
重合性化合物の化学構造および含有率、ならびに、金属粉末のD10、D90および含有率に係る説明として、段落【0142】には、「特に、紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として、脂環構造を有するモノマーを含むのが好ましい。」との記載がなされており、段落【0170】には、「紫外線硬化型組成物中における重合性化合物の含有率は、68質量%以上 99質量%以下であるのが好ましく」との記載がなされており、段落【0130】には、「金属粉末の微 粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)は、100nm以上1.1μm以下であるのが好ましく」との記載がなされており、段落【0132】には、「金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)は、300nm以上 4.0μm以下であるのが好ましく」との記載がなされており、段落【0136】には、「紫外線硬化型組成物中における金属粉末の含有率は、0.9質量%以上29質量%以下であるのが好ましく」との記載がなされており、これらの構成による作用効果も段落【0131】、【0133】、【0137】、【0143】、【0171】に記載されたとおりのものであり、また、粘度の測定条件に係る説明として、段落【0044】には、「なお、本発明では、粘度とは、特に断りのない限り、回転式粘度計(例えば、アントンパール社製、Physica MCR-301等)を用いて、JIS Z 8803に準拠して測定される値のことを指す。」との記載がなされており、段落【0287】には、「各実施例および比較例の紫外線硬化型組成物について、せん断速度1000sec-1における粘度η1[mPa・s]と、1000sec-1のせん断速度でせん断応力を10分間加え続けた後に、せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2[mPa・s]としたときのη2-η1の値・・・を示した。・・・せん断応力を伴う粘度η1およびη2の測定は、回転式粘度計(アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて行った。」との記載がなされているから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項9を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項9を削除するというものであるから 、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項9を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項10が請求項9の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項9が削除されて、訂正事項1で請求項9の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、訂正前の請求項10が請求項9の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項9が削除されて、訂正事項1で請求項9の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項3は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、訂正前の請求項10が請求項9の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項9が削除されて、訂正事項1で請求項9の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項11が請求項9または10の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項9が削除されて、訂正事項1で請求項9の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項11が請求項9または10の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項9が削除されて、訂正事項1で請求項9の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項4は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正前の請求項11が請求項9または10の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項9が削除されて、訂正事項1で請求項9の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項12が請求項1~11の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項9が削除されて請求項9を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、引用する請求項の数を減少するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項5は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、引用する請求項の数を減少するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6733153号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~12に係る発明は、令和4年1月19日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明12」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
インクジェット法により吐出される紫外線硬化型組成物であって、
重合性化合物と、表面処理が施された金属粉末と、チクソ性抑制剤としてのリン酸系分散剤とを含み、
前記重合性化合物として、脂環構造を有するモノマーを含み、
紫外線硬化型組成物中における前記重合性化合物の含有率が68質量%以上99質量%以下であり、
前記金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)が100nm以上1.1μm以下であり、
前記金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)が300nm以上4.0μm以下であり、
紫外線硬化型組成物中における前記金属粉末の含有率が0.9質量%以上29質量%以下であり、
回転式粘度計(例えば、アントンパール社製、Physica MCR-301)を用いて、せん断速度を1000sec-1としたときの粘度η1[mPa・s]と、1000sec-1のせん断速度でせん断応力を10分間加え続けた後に、せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2[mPa・s]との間で、η2-η1≦3の関係を満足することを特徴とする紫外線硬化型組成物。
【請求項2】
紫外線硬化型組成物中における前記チクソ性抑制剤の含有率が0.2質量%以上2.0質量%以下である請求項1に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項3】
前記表面処理は、フッ素系表面処理剤を用いて行われたものである請求項1または2に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項4】
前記フッ素系表面処理剤は、フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸化合物、フッ素置換脂肪酸およびフッ素系イソシアネート化合物からなる群から選択される1種または2種以上である請求項3に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項5】
前記金属粉末の平均粒径が200nm以上3.0μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項6】
前記金属粉末は、構成粒子として、少なくとも表面が主としてAlで構成されたものを含むものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項7】
前記金属粉末の構成粒子は、鱗片状をなすものである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項8】
前記金属粉末の構成粒子の平均厚さが、10nm以上80nm以下である請求項7に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記脂環構造を有するモノマーは、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アダマンチルアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチル アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル アクリレート、メバロン酸ラクトン アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、および、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項11】
前記脂環構造を有するモノマー以外の重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピルアクリレート、および、4-ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし8および10に記載の紫外線硬化型組成物。
【請求項12】
請求項1ないし8、10および11のいずれか1項に記載の紫外線硬化型組成物の硬化物と、
記録媒体とを備えることを特徴とする記録物。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 本件登録時の請求項1~12に係る特許に対して、当審が令和3年4月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(新規性)本件特許の請求項1、2、6、12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2008-88228号公報
甲第2号証:特開2015-89928号公報
甲第3号証:特表2011-508030号公報
甲第4号証:特許2007-169462号公報
甲第5号証:特許2015-89929号公報
理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
理由4(実施可能要件)本件特許の請求項1~12に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
2 本件訂正前の請求項1~12に係る特許に対して、当審が令和3年11月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由4(実施可能要件)本件特許の請求項1~12に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
理由5(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8、10~12に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
第5 前記第4、2における理由4(実施可能要件)についての判断
1.取消理由の概要
特許権者によって提出された上記意見書のとおり、本件特許発明での粘度η2は、回転式粘度計を用いて、せん断速度の設定を1000sec-1から10sec-1に切り替えて測定を行うものである。そして、回転式粘度計のせん断速度を1000sec-1から10sec-1に切り替えた場合、その設定を切り替えると同時に、紫外線硬化型組成物に加わるせん断速度が10sec-1となるのではなく、せん断速度は1000sec-1から10sec-1に向かって連続的に変化し、紫外線硬化型組成物に加わるせん断速度が10sec-1となるまでには、所定の時間を要することも明らかである。そして、当該所定の時間は、紫外線硬化型組成物の条件、より具体的には、例えば、紫外線硬化型組成物の組成、初期状態での粘度や、せん断速度1000sec-1における粘度η1等によって異なる。そのため、本件特許では、「回転式粘度計を用いて、せん断速度の設定を1000sec-1から10sec-1に変更して測定を行う場合において、実際に、紫外線硬化型組成物に加わるせん断速度が10sec-1となった時点での粘度」を、「せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2[mPa/s]として規定している。
そうすると、以下のとおり、「せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2」とは、測定するタイミングの他にせん断速度の減速変化率によっても変化し得るものである。
参考文献1(日本印刷学会誌 せん断履歴依存性 分散系のレオロジ 1993年発行)の85頁右上から7~21行目には、「塗料、印刷インキのように、せん断を与えることによって一時的にせん断応力が低下するが、静置すると再び元の状態に回復し,粘稠度も元に戻るような軟化と回復を含む現象もまたチキソトロピーの範疇に入れられる。このような物質のせん断応力とせん断速度との関係はせん断履歴に依存しており、一義的には決まらない。この物質に図2で示されるようにせん断を一定の速度である値まで上昇させ、その後同様な速度で下降させると、図3のようにせん断速度上昇時と下降時とでは対応するトルクの変化は異なった経路を通り、ヒステリシス曲線が得られる。この面積の大小がチキソトロピー性の目安になるが、この面積はせん断速度の掃引時間が遅いほど狭くなる。この現象の本質は分散粒子の形成する構造の性質と量であり、特にその破壊と再生に関する時間的問題である。」が記載されており、粘度は、その粘度測定時のせん断速度のみならず、そのせん断速度に到達するまでのせん断速度の速度変化率によっても変化し得る(参考文献1の85頁右下図2、図3も参照)。
[図:0001389368000001.jpg]
このため、1000sec-1から10sec-1に切り替えて実際に10sec-1となったときの粘度をη2としてもせん断速度の減速変化率が異なっていれば、測定値が異なり得ることとなる。
そうすると、本件特許発明1において回転式粘度計が特定され、かつ、それによりせん断速度の減速変化率が一定であることが出願時の技術常識であるならまだしも、本件特許発明1においてそのような特定もなく、かつ、そのような出願時の技術常識も不明である以上、そのような本件特許発明1で特定されるη2-η1の値が変化し得るものとなるといえるので、当業者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されているとはいえない。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~8、10~12についても同様である。
2.判断
本件訂正により本件特許発明1は、粘度η1、粘度η2の測定に用いる回転式粘度計が、アントンパール社製のPhysica MCR-301に特定された。
しかし、上記第4 1.のとおり、「せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2」はせん断速度の減速変化率によって変化し得るものであるが、本件特許発明1において、せん断速度の減速変化率までは特定されておらず、また、回転式粘度計を特定することによりせん断速度の減速変化率が同一となるという出願時の技術常識があることについての特許権者からの主張及び立証もない。
そうすると、本件特許発明1において回転式粘度計が特定されても、そのような本件特許発明1で特定されるη2-η1の値が変化し得るものとなるといえるので、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件特許発明1の実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されているとはいえない。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~8、10~12についても同様である。
3.特許権者の主張に対して
特許権者は、令和4年1月19日付けの意見書において、「物性値の測定に求められる測定機器は、一般に、高い再現性が要求され、同一機種で、同一の条件で測定を行った場合、機器の個体間での測定値の差は、十分に小さいものであることが技術常識である。
したがって、特定の機種の回転式粘度計、すなわち、アントンパール社製のPhysica MCR-301を用いて、同一の紫外線硬化型組成物に対して、同一の条件でせん断速度を設定、変更して、粘度η1、粘度η2を測定した場合、紫外線硬化型組成物は同一の挙動を示し、1000sec-1から10sec-1へのせん断速度の減速変化率は同一となり、粘度η1、粘度η2も同一となることも技術常識である。」と主張する。(下線は当審が付した。)
しかし、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件特許発明1の実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されていることは、特許権者に立証責任があるところ、特許権者は、アントンパール社製のPhysica MCR-301を用いて、同一の紫外線硬化型組成物に対して、同一の条件でせん断速度を設定、変更して、粘度η1、粘度η2を測定した場合、紫外線硬化型組成物は同一の挙動を示し、1000sec-1から10sec-1へのせん断速度の減速変化率は同一となり、粘度η1、粘度η2も同一となることの根拠を示して立証しておらず、粘度η1、粘度η2も同一となるか否かは不明であるといわざるをえない。
また、上記「同一の条件」とはどのような条件であるのか不明であるから、回転粘度計が特定されても、粘度η1、粘度η2も同一となるか否かは不明であるといわざるをえない。
そうすると、上記2.のとおり、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件特許発明1の実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されているとはいえず、特許権者の上記主張は採用できない。
第6 前記第4、2における理由5(明確性要件)についての判断
1.取消理由の概要
上記第5(令和3年11月17日付けの取消理由通知(決定の予告)における実施可能要件)のとおり、「せん断速度を10sec-1とした状態で測定して求められる粘度η2」とは、測定するタイミングの他にせん断速度の減速変化率によっても変化し得るものであるから、1000sec-1から10sec-1に切り替えて実際に10sec-1となったときの粘度をη2としてもせん断速度の減速変化率が異なっていれば、測定値が異なり得ることとなり、本件特許発明1で特定されるη2-η1の値が変化し得るものとなるといえる。
そうすると、本件特許発明1において回転式粘度計が特定され、かつ、それによりせん断速度の減速変化率が一定であることが出願時の技術常識であるならまだしも、本件特許発明1においてそのような特定もなく、かつ、そのような出願時の技術常識も不明である以上、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であると言わざるを得ず、特許法第36条第6項第2号に適合しない。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~8、10~12も不明確である。
2.判断
本件特許発明1が明確であることは、特許権者に立証責任があるところ、上記第5 2.で判断したとおり、粘度η1、粘度η2も同一となるか否かは不明であるといわざるをえないので、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというほかない。
3.特許権者の主張
特許権者は、粘度η1、粘度η2について、上記第5 3.と同様の主張により、本件特許発明2~8、10~12は明確であると主張する。
しかし、上記第5 3.と同様の理由により、粘度η1、粘度η2も同一となるか否かは不明であるといわざるをえないから、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというほかなく、特許権者の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~8、10~12に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8、10~12に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
訂正前の請求項9は本件訂正により削除されたため、請求項9についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700107