特許異議申立
2021-700090
複合建具
- 審判番号
- 2021-700090
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-245613外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6742091
- 請求日
- 2021年01月27日
- 審決日
- 2022年06月02日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.121-YAA(E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6742091号発明「複合建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6742091号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4について訂正することを認める。
特許第6742091号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6742091号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年12月16日にされたものであり、令和2年7月30日にその特許権の設定登録がされ、同年8月19日に特許掲載公報が発行され、令和3年1月27日(受付)に異議申立人 伊澤 武登(以下「申立人」という。)より、その請求項1、2、4に係る特許について特許異議の申立てがされ、当審より、同年5月13日付けで取消理由を通知したところ、同年7月16日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、これに対し、同年9月3日に申立人より意見書が提出された。
その後、当審より、同年11月19日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、令和4年1月21日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、これに対し、同年3月1日に申立人より意見書が提出された。
なお、令和3年7月16日にされた訂正の請求は、令和4年1月21日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「枠体内に障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われ、少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されており、
前記屋内側の垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または前記障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材が取り付けられ、
前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設されていることを特徴とする複合建具。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を、
「枠体内に障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われており、
前記屋内側の垂下片部から屋外側に延びる気密材、または前記障子の上框から屋内側に延びる気密材が取り付けられ、
前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設され、
前記屋内側の垂下片部の先端を囲う前記樹脂部材には断熱層が形成され、
前記樹脂部材に形成された前記断熱層は、前記垂下片部の先端から前記障子の上框に向かって延び、屋外側を向く方向が開口した断面略コの字状の樹脂片部で形成していることを特徴とする複合建具。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を、
「枠体内に障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われており、
前記屋内側の垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または前記障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材が取り付けられ、
前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設され、
前記屋内側の垂下片部の先端を囲う前記樹脂部材には断熱層が形成され、
前記樹脂部材に形成された前記断熱層は、中空のホロー部で形成されていることを特徴とする複合建具。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0007】を
「【0007】
本発明による複合建具は、枠体内に障子を納めた複合建具であって、枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われ、少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されており、前記屋内側の垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または前記障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材が取り付けられ、前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設されていることを特徴とする。
本発明によれば、金属上枠の屋内側の垂下片部の先端と少なくとも屋内側の面を樹脂部材で囲っているために垂下片部の表面温度が高くなり、屋外側から流入する冷気によって垂下片部に結露することを低減できる。
なお、垂下片部の表面を囲う樹脂部材は屋内側の面でもよいし屋内外両側の面でもよい。垂下片部の両側の面を樹脂部材で囲うようにすれば表面温度を高くできるため、冷気による垂下片部の結露の発生を一層抑制できる。
また、垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材を取り付けて、障子または垂下片部等に接触させることで、屋外からの冷気が屋内側に伝達されることをより一層抑制できる。」に訂正する。
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1~4は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、一群の請求項1~4についてするものである。
なお、特許権者は、訂正後の請求項3、4についての訂正が認められる場合には請求項3、4を請求項1、2とは別途訂正することを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部」の「屋外側」の「面」、すなわち「垂下片部の屋外面」が「樹脂部材で囲われ」ていると記載されていたのを、さらに「少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されて」いることを特定することで、垂下片部の屋外面の構成をさらに限定するとともに、訂正前の請求項1に記載のあった「前記屋内側の垂下片部から屋外側に延びる気密材」が「前記障子の上框に当接する」こと、及び、訂正前の請求項1に記載のあった「前記障子の上框から屋内側に延びる気密材」が「前記屋内側の垂下片部に当接する」ことをそれぞれ特定することで、気密材の構成をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項1により追加された「少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されて」いることは、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の段落【0007】に「垂下片部の表面を囲う樹脂部材は屋内側の面でもよいし屋内外両側の面でもよい」こと、「垂下片部の両側の面を樹脂部材で囲うようにすれば表面温度を高くできるため、冷気による垂下片部の結露の発生を一層抑制できる」ことが記載されており、技術常識を踏まえれば、垂下片部の屋内側の面及び屋外側の面に断熱層が形成されているといえることが自明である。また、訂正事項1により追加された「前記屋内側の垂下片部から屋外側に延びる気密材」が「前記障子の上框に当接する」こと、及び、「前記障子の上框から屋内側に延びる気密材」が「前記屋内側の垂下片部に当接する」ことについて、本件明細書の段落【0038】に「上述した各実施形態では気密材を形成するシール部材36、36Aを屋内側垂下片部15dや中間レール部15cの受け部35に設けて内外障子7,8の上框10に当接させるようにしたが、これとは逆に上框10にシール部材36、36Aを取り付けて屋内側垂下片部15dや中間レール部15cに当接させてシールするようにしてもよい」と記載されている。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3が他の請求項(請求項2)の記載を引用して記載していたのを当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
なお、請求項3は特許異議申立ての対象とされていないが、訂正事項2は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものではなく特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項4が他の請求項(請求項2)の記載を引用して記載していたのを、当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、訂正事項3は、訂正前の請求項4に記載のあった「前記屋内側の垂下片部から屋外側に延びる気密材」が「前記障子の上框に当接する」こと、及び、訂正前の請求項4に記載のあった「前記障子の上框から屋内側に延びる気密材」が「前記屋内側の垂下片部に当接する」ことをそれぞれ特定することで気密材の構成をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項3は、上記アのとおり、他の請求項の記載を引用して記載していたのを、当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3により追加された「前記屋内側の垂下片部から屋外側に延びる気密材」が「前記障子の上框に当接する」こと、及び、「前記障子の上框から屋内側に延びる気密材」が「前記屋内側の垂下片部に当接する」ことについては、本件明細書の段落【0038】に、上記(1)ウで摘記したとおりの記載がある。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1において請求項1の記載を訂正するのに伴い、明細書の段落【0007】の記載をこれに整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、上記(1)ウで検討したのと同様の理由により、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
なお、上記(2)、(3)のとおり、訂正後の請求項3、4についての訂正は認められるから、請求項3、4について請求項1、2とは別途訂正することを認める。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正請求による訂正は認容されるので、本件特許の請求項1、2、4に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に合わせて「本件発明1」などという。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
枠体内に障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われ、少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されており、
前記屋内側の垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または前記障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材が取り付けられ、
前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設されていることを特徴とする複合建具。
【請求項2】
前記屋内側の垂下片部の先端を囲う前記樹脂部材には断熱層が形成されている請求項1に記載された複合建具。
【請求項4】
枠体内に障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われており、
前記屋内側の垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または前記障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材が取り付けられ、
前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設され、
前記屋内側の垂下片部の先端を囲う前記樹脂部材には断熱層が形成され、
前記樹脂部材に形成された前記断熱層は、中空のホロー部で形成されていることを特徴とする複合建具。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和3年11月19日付けで令和3年7月16日付け訂正請求書による訂正後の請求項1、2について特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
●理由2(甲第2号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証ないし甲第5号証に示される周知技術に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第2号証:特開2012-31591号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2008-231774号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2002-161671号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2002-168059号公報(以下「甲5」という。)
2 各甲号証について
(1)甲2について
甲2には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様)。
ア「【0014】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には第1の実施形態におけるサッシの縦断面図を、図2には第1の実施形態におけるサッシの横断面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、本実施形態のサッシは、方形状に枠組みしてなる枠体1内に内障子2と外障子3を引き違い状に納めてなる引き違いサッシである。内障子2と外障子3は、いずれも方形状の框体4内にガラス板からなるパネル体5を納めて構成されている。
【0015】
枠体1は、上枠10と下枠11及び左右の縦枠12、12からなり、これらの部材で上下左右の辺を構成している。また、枠体1を構成する上枠10と下枠11及び縦枠12は、それぞれいずれも金属製の室内枠部材20と室外枠部材21とを、樹脂製のブリッジ材22で連結して構成されている。これにより、室外側に露出する室外枠部材21と室内側に露出する室内枠部材20との間を断熱し、サッシの断熱性能を高くすることができる。
【0016】
室内枠部材20は、枠体1のうち室内側面を構成している。一方、室外枠部材21は、枠体1のうち、内障子2と外障子3を納める部分を構成している。上下左右各辺の室外枠部材21には、それぞれ外周面にアンカー部材8が固定されており、このアンカー部材8が建物駆体に対して固定され、これによって枠体1を固定している。
【0017】
上枠10の室外枠部材21には、外障子3を案内する外レール10aが形成されている。また、外レール10aの室内側であって上枠10内周面の中央位置には、中央フィン10bが形成されている。この中央フィン10bより室内側には、室外枠部材21と室内枠部材20とによって凹状案内部10cが形成される。内障子2の上辺には、案内部材2aが設けられており、この案内部材2aが凹状案内部10cに当接し、摺動することにより内障子2が上枠10により長手方向に案内される。下枠11の室外枠部材21には、内レール11aと外レール11bが形成されており、それぞれ内障子2と外障子3を載置させ、長手方向に案内可能としている。
・・・
【0024】
図1及び図2に示すように、枠体1の室内側面には、四周に渡ってアングル部材6が設けられる。アングル部材6は、枠体1の上下左右の各辺に当接し、それぞれ固定ネジ25によるネジ止めによって固定される。
【0025】
室内枠部材20と室外枠部材21は、ブリッジ材22のみで連結されることにより、断熱性を高くすることができるが、その一方で、火災の際には樹脂製のブリッジ材22が脱落して、室内枠部材20も脱落する可能性がある。これを防止するため、枠体1の四辺それぞれにおいて、室内枠部材20と室外枠部材21を連結する。本実施形態においては、上枠10と縦枠12については、連結ネジ26による連結をなし、下枠11については、連結部材27による連結をなしている。
【0026】
図4には、図1のうち上枠10付近の拡大図を示している。この図では、室内枠部材20と室外枠部材21を連結する連結ネジ26は省略している。図4に示すように、アングル部材6を固定するための固定ネジ25は、室内枠部材20の固定面部23から2本のブリッジ材22の間の領域に挿通され固着されている。固定ネジ25の先端は、ブリッジ材22の間の領域に止まるようにされており、アングル部材6と室外枠部材21とが、金属材からなる固定ネジ25で接続されないようにして、断熱性の低下を防止している。
【0027】
また、図4では省略しているが、図1に示すように、室内枠部材20と室外枠部材21とを防火のために連結する連結ネジ26も、固定ネジ25が挿通される位置と長手方向のみが異なる同位置に挿通される。固定ネジ25は、室内枠部材20の室内面に形成された凹部に頭部が納まるように配置されており、アングル部材6との干渉を防止している。
・・・
【0032】
枠体1の内周面には、ブリッジ材22を隠して意匠性を向上させるため、樹脂製のブリッジ材カバー24が四辺にそれぞれ設けられる。図1に示すように、上枠10には内外中央位置に中央フィン10bが形成されており、この中央フィン10bと室内側面とに渡るように、ブリッジ材カバー24が設けられている。また、下枠11については、内レール11aと室内側面との間に渡るように、ブリッジ材カバー24が設けられている。」
イ 図1、図4は、次のものである。
「【図1】
[図:0001388343000001.jpg]
【図4】
[図:0001388343000002.jpg]
」
ウ 上記アの【0016】に「室内枠部材20は、枠体1のうち室内側面を構成」することが記載されているところ、上記イの図1及び図4からは、室内枠部材20におけるブリッジ材22により連結される室内側の部材の下方に垂下片が形成されていることを看て取ることができるとともに、その垂下片の下端には、内障子2の上辺に設けられた案内部材2aを構成する両側の壁のうちの室内側の壁の室内側面に向かって延び、これに当接するシール材が設けられていること、ブリッジ材カバー24は室内側において垂下片の室外側面に当接することが看て取れる。
上記アないしウによれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「【甲2発明】
方形状に枠組みしてなる枠体1内に内障子2と外障子3を引き違い状に納めてなる引き違いサッシであって、
枠体1を構成する上枠10と下枠11及び縦枠12は、金属製の室内枠部材20と室外枠部材21とを、樹脂製のブリッジ材22で連結して構成され、室内枠部材20は、枠体1のうち室内側面を構成し、
室内枠部材20におけるブリッジ材22により連結される室内側の部材の下方に垂下片が形成されており、その垂下片の下端には、内障子2の上辺に設けられた案内部材2aを構成する両側の壁のうち室内側の壁の室内側面に向かって延び、これに当接するシール材が設けられており、
枠体1の内周面には、ブリッジ材22を隠して意匠性を向上させるため、樹脂製のブリッジ材カバー24が四辺にそれぞれ設けられ、上枠10には内外中央位置に中央フィン10bが形成されており、この中央フィン10bと室内側面とに渡るように、ブリッジ材カバー24が設けられ、ブリッジ材カバー24は室内側において垂下片の室外側面に当接しており、
室外枠部材21と室内枠部材20とによって凹状案内部10cが形成されており、内障子2の上辺には、案内部材2aが設けられており、この案内部材2aが凹状案内部10cに当接し、摺動することにより内障子2が上枠10により長手方向に案内される、
引き違いサッシ。」
(2)甲3について
甲3には、以下の記載がある。
ア「【0012】
枠体1は、上枠10と下枠11及び左右の縦枠12、12を方形状に枠組みしてなるものであり、それぞれ室内端部にはアングル部13が設けられている。各アングル部13より室内側にはそれぞれ額縁材8が取付けられて、枠体1が建物開口部内に納められている。
【0013】
また、枠体1を構成する各枠材は、金属枠材の室内側に樹脂枠材を配設して構成されている。上枠10は、室外側の金属上枠20と、その室内側に設けられる樹脂上枠21とからなっている。下枠11は、室外側の金属下枠22と、その室内側に設けられる樹脂下枠23とからなっている。縦枠12は、室外側の金属縦枠24と、その室内側に設けられる樹脂縦枠25とからなっている。前述のアングル部13は、樹脂上枠21と樹脂下枠23及び樹脂縦枠25の室内端部にそれぞれ設けられている。
・・・
【0015】
樹脂上枠21には、アングル部13のすぐ室外側部分に、金属上枠20の係合部20aと係合する室内係合部21aが形成され、それよりも室外側には、金属上枠20に取付けられる係合金具50と係合する室外係合部21bが形成されている。これらによって樹脂上枠21は金属上枠20と係合し、固定される。また、障子2の室内面と対向する樹脂上枠21の室外端部には、軟質樹脂からなる気密材21cが一体的に形成されて、障子2の室内面に当接している。これによって気密部材14による気密と合わせ、枠体1と障子2の間で二重に気密し、より気密性を高めることができる。」
イ 図3は、次のものである。
「【図3】
[図:0001388343000003.jpg]
」
ウ 上記アの記載を踏まえると、上記イの【図3】からは、枠体1を構成する上枠10の室外側の金属上枠20の室内側において樹脂上枠21の室外係合部21bの室外側に隣接して垂下する部材の先端と室内側の面が、室内側に設けられる樹脂上枠21で囲われることが看て取れる。
(3)甲4について
甲4には、以下の記載がある。
ア「【0024】窓枠2の各枠11,12,13は、それぞれ非鉄金属であるアルミ製の室外部材11A,12A,13Aと、アルミ製の室内部材11B,12B,13Bと、これらの室外部材11A,12A,13Aおよび室内部材11B,12B,13Bをそれぞれ連結するウレタン樹脂製の断熱部材11C,12C,13Cとで構成されている。
・・・
【0041】この引違い窓200では、外障子6Aおよび内障子6Bを閉めた際に、窓枠2において室内側に露出する室内側露出面部が、室内部材61B~66Bと同じ断熱性部材であるポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製で構成されたカバー材201~204で被覆されている。
【0042】カバー材201は、上枠11の室内部材11Bにおいて室内側に露出する室内側露出面部を被覆するように構成されている。このカバー材201は、室内部材11Bとともに額縁81にビス止めされている。」
イ 図3は、次のものである。
「【図3】
[図:0001388343000004.jpg]
」
ウ 上記アの記載を踏まえると、上記イの【図3】からは、上枠11のアルミ製の室内部材11Bの室内側において垂下する部材の先端と室内側の面が、合成樹脂製で構成されたカバー材201で被覆されることが看て取れる。
(4)甲5について
甲5には、以下の記載がある。
ア「【0010】障子枠1Bは上下枠材11、12及び左右の縦枠材13を方形に枠組みしたもので、上下枠材11、12及び左右の縦枠材13はいずれも、ベースとなる屋外側のアルミニウムによる金属枠部aと、屋内側に露出する合成樹脂による樹脂枠部bとを結合した構造になっている。樹脂枠部bは金属枠部aの係止部位14で係止するとともに、ネジ15で一体に結合している。16は断熱サッシを躯体開口部に固定するための固定ネジである。
【0011】なお、上記可動障子1Aと障子枠1Bの樹脂部bは塩化ビニルやアクリル樹脂等から成形するが、これらの樹脂材には木粉を混入させて木材のような質感を出すようにしてもよい次に、上記障子枠1Bの屋内側には、可動障子1Aの屋内側に面する周縁部を受ける戸当り部Pが形成されている。この戸当り部Pは金属枠部aの屋内側から内方に突出形成された外側縁17と樹脂枠部bの屋外側から内方に突出形成された内側縁18とを重合して成るもので、二重壁構造になっている。
【0012】外側縁17の先端部の外側には嵌合溝20が形成され、嵌合溝20にはタイト材24が嵌合されている。また、外側縁17の先端には係止片21が突出形成されている。これに対し、内側縁18の先端はL字形に屈曲し、屈曲部の先端には鈎状又は溝状の係止部22が形成されている。
【0013】そして、上記外側縁17の係止片21は内側縁18の係止部22に係止している。また、外側縁17と内側縁18とは間隔保持片23を介して一定の間隔に保持され、一部においてネジ15により一体的に結合している。
・・・
【0015】また、外側縁17の屋内側は合成樹脂製の内側縁18に覆われているので、断熱性が高く、室内側が結露することも有効に防止される。」
イ 図1、図3は、次のものである。
「【図1】
[図:0001388343000005.jpg]
【図3】
[図:0001388343000006.jpg]
」
ウ 上記アの記載を踏まえると、上記イの【図1】及び【図3】からは、障子枠1Bの上枠材11は屋外側の金属枠部aの屋内側から内方に突出形成された外側縁17の先端と屋内側の面が、合成樹脂製の内側縁18で覆われることが看て取れる。
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明における「方形状に枠組みしてなる枠体1」、「内障子2と外障子3」は、本件発明1における「枠体1」、「障子」に相当する。甲2発明における「引き違いサッシ」は、これを構成する「枠体1」が「金属製の室内枠部材20と室外枠部材21」及びこれらを「連結」する「樹脂製のブリッジ材22」と、室内枠部材20の「内周面」に「設けられ」る「樹脂製のブリッジ材カバー24」とからなるから、本件発明1における「複合建具」に相当する。
そうすると、甲2発明において「枠体1内」に「内障子2と外障子3」を「引き違い状に納めてなる」「引き違いサッシ」は、本件発明1において「枠体内」に「障子」を「納め」た「複合建具」に相当する。
(イ)甲2発明の「枠体1」を構成する「上枠10」は、「金属製の室内枠部材20と室外枠部材21とを、樹脂製のブリッジ材22で連結して構成され」たものであり、本件発明1における「前記枠体」の「金属上枠」に相当するといえるから、甲2発明の「室内枠部材20におけるブリッジ材22により連結される室内側の部材の下方に」「形成されている」「垂下片」は、本件発明1における「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部」に相当する。
そうすると、甲2発明において、「枠体1の内周面」に「ブリッジ材22を隠して意匠性を向上させるため、樹脂製のブリッジ材カバー24」が設けられ、「ブリッジ材カバー24」が、「上枠10」の「内外中央位置」に「形成され」た「中央フィン10bと室内側面とに渡るように」「設けられ、ブリッジ材カバー24は室内側において垂下片に当接」していることと、本件発明1において、「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われ、少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されて」いることとは、「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部」の「屋外側」に「樹脂部材」が配置されている点で共通する。
(ウ)甲2発明において、「室内枠部材20におけるブリッジ材22により連結される室内側の部材の下方に」「形成されている」「垂下片」の「下端」に「設けられている」「内障子2の上辺に設けられた案内部材2aを構成する両側の壁のうち室内側の壁の室内側面に向かって延び、これに当接するシール材」を備える構成は、本件発明1における「前記屋内側の垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または前記障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材が取り付けられ」ている構成に相当する。
(エ)甲2発明において、「室外枠部材21と室内枠部材20とによって」「凹状案内部10c」が「形成され」ることは、「室内枠部材20におけるブリッジ材22により連結される室内側の部材の下方に」「形成されている」「垂下片」によって、「凹状案内部10c」が「形成され」ることを意味する。また、「内障子2の上辺」に「案内部材2aが設けられ」ることは、障子の上辺には一般に金属上框が設けられていることを踏まえると、「内障子2の金属上框」に「案内部材2aが設けられ」ることを意味する。
そうすると、甲2発明において、「室外枠部材21と室内枠部材20とによって凹状案内部10cが形成されており、内障子2の上辺には、案内部材2aが設けられ、この案内部材2aが凹状案内部10cに当接し、摺動することにより内障子2が上枠10により長手方向に案内される」ように構成されていることは、本件発明1において、「前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設されている」ことに相当する。
以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
枠体内に障子を納めた複合建具であって、
前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の屋外側に樹脂部材が配置されており、
前記屋内側の垂下片部から屋外側に延び前記障子の上框に当接する気密材、または前記障子の上框から屋内側に延び前記屋内側の垂下片部に当接する気密材が取り付けられ、
前記垂下片部は、前記障子の金属上框と対向する位置まで延設されている複合建具。
【相違点1】
「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部」について、
本件発明1では、「垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われ、少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されて」いるのに対し、
甲2発明では、「垂下片部の先端と屋内側」が「樹脂部材で囲われ」ておらず、「少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成されて」いるのか明らかでない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲2発明における「樹脂製のブリッジ材カバー24」について、甲2の段落【0032】には、ブリッジ材22を隠して意匠性を向上させるためのものであることは記載されているものの、樹脂部材で囲われた「断熱層」を形成することは記載も示唆もされていない。また、甲2の段落【0025】には、室内枠部材20と室外枠部材21はブリッジ材22のみで連結されることにより断熱性を高くすることができるとの記載があるように、甲2発明においては、ブリッジ材22のみを用いて室内枠部材20と室外枠部材21とを連結することで断熱性を確保し得るものと認められる。
以上に述べた事情を踏まえると、甲2発明においてブリッジ材22のみを用いて室内枠部材20と室外枠部材21とを連結することで断熱性を確保しているのを補うべく、甲2発明における垂下片部の「屋外面」にブリッジ材カバー24を当接させるのみでなく、「少なくとも垂下片部の屋外面に前記樹脂部材で囲われた断熱層が形成」するように構成する動機付けはなく、垂下片部の「先端と屋内側の面を樹脂部材で囲う」ようにする動機付けも見当たらない。このことは、「枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部」の「先端と屋内側の面」を樹脂部材で囲うことで気密性や断熱性を高めることが甲3ないし甲5等により周知技術と認められるとしても、上記事情に鑑みれば、甲2発明においてかかる周知技術を採用する動機付けがあるとまでは認められない。
したがって、甲2発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和4年3月1日に提出した意見書の5頁16行~34行において、甲2発明におけるブリッジ材カバー24は、ブリッジ材22を隠すばかりでなく、垂下片の室外側面も空間をあけて覆っていることが図面から看て取れることから、ブリッジ材カバー24と垂下片の室外側面との間に空気層が形成されており、この空気層は断熱層に他ならず、断熱性向上と装飾性向上は同時に成立し得る効果であるという旨主張している。
しかし、甲2からは、ブリッジ材カバー24が係止のために室内側において垂下片の室外側面に当接していることまでは看取できるとしても、甲2発明では、ブリッジ材22を用いて断熱性を確保しているから、甲2発明において、ブリッジ材カバー24を垂下片の屋外面を断熱層を形成するように囲うものとし、さらに、これに加えて、垂下片の「先端と屋内側の面」についても樹脂部材で囲うように構成して気密性や断熱性を高めるなどする動機付けがあるとまでは認められない。
そして、この判断は、申立人が令和3年9月3日に提出した意見書に添付して提出した特開平10-325280号公報(以下「甲8」という。)、特開2001-65244号公報(以下「甲9」という。)、特開2010-281200号公報(以下「甲10」という。)、特開平10-331526号公報(以下「甲11」という。)に記載の内容を参酌しても変わるものではない。
また、甲第1号証(特開平11-280339号公報。以下「甲1」という。)には、取消理由通知(決定の予告)でも認定したとおりの次の発明
(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「【甲1発明】
サッシ枠Aは上枠1と下枠2と左右縦枠3とを方形に枠組みして成り、各枠材1、2、3は屋外側に露出する外側金属枠aと屋内側に露出する内側合成樹脂枠bとから構成され、外障子B1及び内障子B2はサッシ枠Aの内側に配置されており、
障子B2の上框も屋外側の金属部cと屋内側の合成樹脂部dとを結合して一体に構成され、障子B2の上框5の上端には案内溝6が長手方向に開口形成され、障子B2の上框5に開口形成されている案内溝6の両側の壁の上端から上枠金属内レール15に向かってシール部材が延びており、
金属枠aには、障子B1、B2を案内する上枠金属外レール14と上枠金属内レール15とが形成され、屋内側の上枠金属内レール15の両側面には、その基部と先端側に各1対の突条16、17が長手方向に形成され、先端側の突条17は内障子B2の上端に開口形成した案内溝6の先端部と略同位置に形成されており、
合成樹脂枠bは、屋内側の上枠金属内レール15に対応する溝状樹脂部18を有し、金属枠aに形成された屋内側の上枠金属内レール15を溝状樹脂部18の内部に嵌入固定し、
上枠金属内レール15の側面には長手方向に突条16、17が形成されているから、上枠金属内レール15と溝状樹脂部18の内壁との間に空気層20が形成され、上枠金属内レール15から溝状樹脂部18に対する熱の伝導は良好に遮断される、
断熱サッシ。」
しかし、甲1発明は、甲2発明のようにブリッジ材を用いて断熱性を確保するものではないから、甲1の記載の内容を参酌しても上記判断は変わるものではない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
ア 対比、判断
本件発明2は、本件発明1の構成に加えて、「前記屋内側の垂下片部の先端を囲う前記樹脂部材には断熱層が形成されている」という構成を有するものであるから、本件発明2と甲2発明は、上記相違点1と同様の相違点を有している。
そして、上記(1)で検討したのと同様の理由により、甲2発明において、上記相違点1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
イ 小括
したがって、本件発明2は、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明4について
ア 対比、判断
本件発明4と甲2発明とを対比すると、本件発明4は、「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端」「を囲う前記樹脂部材」「に形成された前記断熱層は、中空のホロー部で形成されている」という構成を有しているのに対し、甲2発明はかかる構成を有していない点で相違する。
上記取消理由通知(決定の予告)で検討したとおり、甲3ないし甲5には、金属上枠における屋内側の垂下片部の先端を囲う樹脂部材に断熱層を中空のホロー部により形成することは記載されていない。
また、仮に甲1発明における「溝状樹脂部18」が、上記相違点に相当する構成を示しているとしても、金属上枠における屋内側の垂下片部の先端を囲う樹脂部材を有していない甲2発明において、甲1発明における「溝状樹脂部18」を採用すると、甲2発明において「垂下片の下端」に「設け」ることとしている「シール材」を設けることができなくなるから、甲1発明における「溝状樹脂部18」は、甲2発明において適用を検討するものではない。
したがって、甲1、甲3ないし甲5に記載の技術的事項を参酌しても、甲2発明において、「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端」「を囲う前記樹脂部材」「に形成された前記断熱層は、中空のホロー部で形成されている」という構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことということはできない。以上の判断は、申立人が提出した甲8ないし甲11を参酌しても左右されない。
イ 小括
以上から、本件発明4は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由等について
1 申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)
申立人は、特許異議申立書において、申立理由1として、訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、その特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるという旨主張する。
しかし、訂正後の本件発明1、2、4は、「前記屋内側の垂下片部から屋外側に延びる気密材」が「前記障子の上框に当接」し、又は「前記障子の上框から屋内側に延びる気密材」が「前記屋内側の垂下片部に当接」するのに対し、甲1発明では、「上枠金属内レール15の屋外側の面に形成された突状16、17」(「前記屋内側の垂下片部から屋外側に延びる気密材」)は「障子B2の上框5」(「前記障子の上框」)に当接しておらず、「障子B2の上框5の屋外側の壁の上端から延びているシール部材」(「前記障子の上框から屋内側に延びる気密材」)も「上枠金属内レール15」(「屋内側の垂下片部」)に当接していない点で少なくとも相違するから、申立理由1に理由がないことは明らかである。
2 申立理由3(甲第6号証又は甲第7号証に基づく進歩性欠如)
申立人は、特許異議申立書において、申立理由3として、訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、以下の甲第6号証又は甲第7号証に記載された発明(以下、それぞれ「甲6発明」、「甲7発明」という。)に、甲1に記載の事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであり(以下「理由3-1」という。)、甲6発明又は甲7発明に、垂下片の先端と室外側を樹脂部材で覆う甲1ないし甲5に記載の周知技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものである(以下「理由3-2」という。)という旨主張する。
・甲第6号証:「70見込ビル用システムサッシ RMG-70 in the
near future RMG-70」カタログ、第1版 2011
年8月、株式会社LIXIL、表紙、目次、68~71頁
、裏表紙 (以下「甲6」という。)
・甲第7号証:特開2013-147808号公報 (以下「甲7」とい
う。)
(1)理由3-1について
申立人は、甲6、甲7には、それぞれ、特許異議申立書の14頁、15頁に記載した次のとおりの甲6発明、甲7発明が記載されていると主張する。
「【甲6発明】
アルミニウム製の枠体内にアルミニウム製の障子を収めた引き違い窓であって、
上枠の屋内側に垂下片部があり、
屋内側の垂下片部から屋外側に延びるヒレ状の気密材が取り付けられ、
垂下片部は、アルミニウム製の障子上框と対向する位置まで延設されている、
アルミニウム製の引き違い窓。」
「【甲7発明】
枠体1に内障子2と外障子3を引き違い窓に収めた引き違い窓のアルミサッシであって、
アルミ製の上枠1aを有し、
上枠1aの下面には、室内側端に室内側片43を設けてあり、
上枠1aの室内側片43の室外側面の下端部には、不燃樹脂からなるタイト材48を取り付けてあり、タイト材48は内障子2の上框2aの室内側面に(屋外側に向けて)摺接しており、
室内側片43は、アルミ製の内障子2の屋外側と対向する位置まで延設されているアルミサッシ。」
本件発明1、2、4と甲6発明又は甲7発明とを対比すると、本件発明1、2、4は、「前記枠体の金属上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側および屋外側の両面が樹脂部材で囲われ」ているという構成を有しているのに対し、甲6発明又は甲7発明は、かかる構成を有していない点で少なくとも相違する。
甲1発明における「溝状樹脂部18」は、上記相違点に相当する構成を有しているとしても、甲6発明又は甲7発明において、甲1発明における「溝状樹脂部18」に係る構成を採用すると、甲6発明が有している「ヒレ状の気密材」、甲7発明が有している「タイト材48」を設けることができなくなるから、甲1発明における「溝状樹脂部18」は、甲6発明又は甲7発明に適用できるものではない。
したがって、本件発明1、2、4は、甲6発明又は甲7発明、及び甲1に記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)理由3-2について
本件発明1、2、4と甲6発明又は甲7発明と対比すると、上記(1)で述べた点において相違する。
甲1発明における「溝状樹脂部18」が甲6発明又は甲7発明に適用できるものではないことは、上記(1)で述べたとおりである。そして、甲2ないし甲5は、上枠における屋内側の垂下片部の先端と屋内側の面を樹脂部材で囲うか(甲3ないし甲5)、屋外側の面にブリッジ材カバー24を係止のために当接させるか(甲2)のいずれかであり、上枠における屋内側の垂下片部の先端、屋内側の面及び屋外側の面を樹脂部材で囲う上記相違点に係る構成が周知技術であるとは認められない。この点の判断は、申立人が提出した甲8ないし甲11を参酌しても左右されない。
したがって、本件発明1、2、4は、甲6発明又は甲7発明及び甲1ないし甲5に記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、2、4に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件請求項1、2、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700090