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特許異議申立

2021-700087

透明導電フィルム積層体及びその加工方法

審判番号
2021-700087
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-526457
登録番号
6732161
請求日
2021年01月26日
審決日
2022年07月21日
公報発行日
2022年10月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】昭和電工株式会社
  • 【権利者代理人】在原 元司
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 大島 祥吾
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.113-YAA(H01B) / P1651.121-YAA(H01B) / P1651.537-YAA(H01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第184条の13
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6732161号発明「透明導電フィルム積層体及びその加工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6732161号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、〔8〕について訂正することを認める。 特許第6732161号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6732161号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)12月24日(優先権主張 令和1年6月20日)を国際出願日とする特願2020-526457号に係る出願であって、令和2年7月9日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年1月26日に特許異議申立人 渡辺 陽子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年5月21日付けで取消理由通知が通知され、同年7月30日に本件特許の特許権者である昭和電工株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書が提出され、その後、同年10月25日付けで取消理由通知<決定の予告>が通知され、同年12月23日に特許権者より訂正請求がされると共に意見書が提出され、令和4年1月27日付けで通知された訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)に対し、同年3月1日に特許異議申立人より意見書が提出され、さらに特許権者に対して同年4月4日付けでされた審尋に対し、同年同月21日に特許権者より意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年12月23日付けの本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「・・・前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上・・・」 と記載されているのを、 「・・・前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上・・・」 に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項8に 「前記透明樹脂フィルムに粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記キャリアフィルムが積層されている側とは反対側の主面上に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 前記オーバーコート層に粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムに積層されたキャリアフィルムを剥離する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記透明導電層が積層された主面とは反対側の主面に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 を備える、請求項3に記載の透明導電フィルム積層体の製造方法。」 と記載されているのを、 「キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの両方の主面に金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序に積層されて構成され、前記透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであり、前記透明導電フィルム積層体は、前記オーバーコート層が最外層となるように、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上かつ150μm以下であることを特徴とする透明導電フィルム積層体の製造方法であって、 前記透明樹脂フィルムに粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記キャリアフィルムが積層されている側とは反対側の主面上に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 前記オーバーコート層に粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムに積層されたキャリアフィルムを剥離する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記透明導電層が積層された主面とは反対側の主面に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 を備える、透明導電フィルム積層体の製造方法。」 に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1及び2による訂正は、訂正前の請求項1ないし8を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2ないし8は、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1ないし8は一群の請求項であって、訂正事項1及び2による訂正は、一群の請求項〔1ないし8〕について請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1に係る請求項1の訂正について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の「透明樹脂フィルムの厚みT1」に対する「保護フィルムの厚みT2」の比について、「5倍以上」を「5.4倍以上」と数値範囲を狭めるものある。 したがって、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の【表1】の実施例3にT2/T1が5.4倍と記載されていることから、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。 さらに、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7についても同様である。 (2)訂正事項2に係る請求項8の訂正について 訂正事項2に係る請求項8の訂正については、訂正前の請求項8の記載が訂正前の請求項3の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 また、訂正事項2に係る請求項8の訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。 4 別の訂正単位とする求め 訂正後の請求項8は、独立形式請求項となったことから、請求項〔1ないし7〕とは別の訂正単位とすることを求めている。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、〔8〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし8を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、令和3年12月23日に請求された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの一方又は両方の主面に金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序に積層されて構成され、前記透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであり、前記透明導電フィルム積層体は、前記オーバーコート層が最外層となるように、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上かつ150μm以下であることを特徴とする透明導電フィルム積層体。 【請求項2】 前記金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序で、前記透明樹脂フィルムの一方の主面に積層されている、請求項1に記載の透明導電フィルム積層体。 【請求項3】 前記金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序で、前記透明樹脂フィルムの両方の主面にそれぞれ積層されている、請求項1に記載の透明導電フィルム積層体。 【請求項4】 前記保護フィルムが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる請求項1~3のいずれかに記載の透明導電フィルム積層体。 【請求項5】 前記透明導電層に含まれる金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである請求項1~4のいずれかに記載の透明導電フィルム積層体。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか一項に記載の透明導電フィルム積層体を加熱加工する工程と、前記透明導電フィルム積層体の透明導電フィルムとキャリアフィルムとを剥離する工程と、を含む透明導電フィルム積層体の加工方法。 【請求項7】 前記加熱加工する工程は、オーバーコート層の上に導電ペーストにより形成した導電ペーストパターンを乾燥及び/または熱硬化し導電パターンを形成する工程である、請求項6に記載の透明導電フィルム積層体の加工方法。 【請求項8】 キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの両方の主面に金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序に積層されて構成され、前記透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであり、前記透明導電フィルム積層体は、前記オーバーコート層が最外層となるように、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上かつ150μm以下であることを特徴とする透明導電フィルム積層体の製造方法であって、 前記透明樹脂フィルムに粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記キャリアフィルムが積層されている側とは反対側の主面上に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 前記オーバーコート層に粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムに積層されたキャリアフィルムを剥離する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記透明導電層が積層された主面とは反対側の主面に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 を備える、透明導電フィルム積層体の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審からの取消理由<決定の予告>の概要 1 特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和3年1月26日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性について) 本件特許の請求項1、2、5、6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性について) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(甲第2号証を主引用文献とする進歩性について) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由4(甲第3号証を主引用出願とする拡大先願について) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の甲第3号証に示される日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由5(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下のとおりである。 ア 透明樹脂フィルム及び保護フィルムの厚み 本件特許の請求項1に係る発明は、透明樹脂フィルムの厚みが5~25μm、保護フィルムの厚みが透明樹脂フィルムの厚みT1 の5倍以上かつ150μm以下であると特 定しているが、出願時の技術常識に照らしても、本件本件特許の請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 本件特許明細書には、保護フィルムの厚みが実質的に125μmの例しか記載されておらず(比較例では極めて低い50μmの例しかない。)、例えば、技術常識に照らして、透明樹脂フィルムと保護フィルムの厚みがそれぞれ5μm、25μmの場合にカールが抑制できるとは考えられず、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の課題を達成できない範囲を含んでいる。 本件特許の請求項2ないし8に係る発明についても同様である。 イ シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度 本件特許の請求項1に係る発明は、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度を特定していない。 本件特許明細書には、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が130~170℃ でない場合、カールの発生量や向きを制御できないことが記載されているが(段落33)、本件特許の請求項1に係る発明はシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度を特定しておらず、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題(カール抑制)を解決するための手段が反映されておらず、サポート要件に違反している。 本件特許の請求項2ないし8に係る発明についても同様である。 ウ オーバーコート層 本件特許の請求項1に係る発明は、オーバーコート層の材料、酸価を特定していない。 本件特許明細書には、オーバーコート層の硬化膜を形成するカルボキシ基を含有するポリウレタンの酸価が10~140mg-KOH/gの範囲内 でない場合、基材フィルムの反り等の問題を起こすことが記載されているが(段落49)、本件特許の請求項1に係る発明は、カルボキシ基を含有するポリウレタンの酸価を特定しておらず、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題(カール抑制)を解決するための手段が反映されておらず、サポート要件に違反している。 本件特許の請求項2ないし8に係る発明についても同様である。 (6)証拠方法 甲第1号証:特開2016-32935号公報 甲第2号証:特開2008-251529号公報 甲第3号証:PCT/JP2018/047666号 (国際公開第2019/131679号) 甲第4号証:特開2017-130419号公報 甲第5号証:特開2016-52775号公報 甲第6号証:特開2016-210974号公報 甲第7号証:特開2016-107504号公報 甲第8号証:特開2003-205567号公報 甲第9号証:特開2018-60607号公報 甲第10号証:国際公開第2013/161997号 甲第11号証:特開2014-191894号公報 甲第12号証:特開2016-173714号公報 以下、順に「甲1」ないし「甲12」という。 2 取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由の概要 当審が令和3年10月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりであり、特許異議申立書に記載した申立理由4(甲第3号証を根拠とする拡大先願について)を含むものである。 取消理由2(拡大先願).本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願の優先日前の日本語特許出願であって、その優先日後に国際公開がされた甲3に示される日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先日前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13で読み替えられた同法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 当審は、以下に述べるように、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、取消理由(決定の予告)で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由(決定の予告)について (1)甲3を国際公開公報として引用する国際出願(以下、「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された事項及び先願発明 先願は、本件特許の出願の優先日前の日本語特許出願であって、その優先日後に国際公開がされたものであって、しかも、この出願の発明者がその優先日前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもない。 ア 先願明細書等に記載された事項(摘記については、先願の国際公開公報である国際公開第2019/131679号を用いた。また、以下、下線は当審で付与した。) 「[0206][第2の実施形態] 以下、本発明の第2の実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムについて、図面を参照しながら説明する。図14は本実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図であり、図15は図14に示される保護フィルム付き導電性フィルムの一部の拡大図であり、図16は図14に示される保護フィルムの平面図であり、図17~図19は本実施形態に係る他の保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図である。 [0207] <<<保護フィルム付き導電性フィルム>>> 図14に示される保護フィルム付き導電性フィルム110は、導電性フィルム120と、導電性フィルム120の第1の面120Aに剥離可能に設けられた第1の保護フィルム130と、導電性フィルム120における第1の面120Aとは反対側の面である第2の面120Bに剥離可能に設けられた第2の保護フィルム140とを備えている。図14に示される保護フィルム付き導電性フィルム110は、導電性フィルム120の片面(第1の面120A)のみに第1の保護フィルム130が設けられているが、導電性フィルムの両面に第1の保護フィルムが剥離可能に設けられていてもよい。また、導電性フィルムの裏面に第1の保護フィルムを設けずに、導電性フィルムの表面に第1の保護フィルムを設けてもよい。 [0208] 保護フィルム付き導電性フィルム110に対し150℃で60分間加熱する加熱試験を行ったとき、加熱試験後における保護フィルム付き導電性フィルム10のカール量が、±14mm以内となっている。ただし、保護フィルム付き導電性フィルム110のように第1の保護フィルムの他に第2の保護フィルムが設けられている場合には、第2の保護フィルムは耐熱性を有さないので、加熱試験は、第2の保護フィルムを剥離した状態で行うものとする。加熱試験は、縦340mm×横340mmの大きさに切り出した保護フィルム付き導電性フィルム10を用いて行うものとする。加熱試験は、加熱装置(製品名「HISPEC横型 200℃シリーズ」、楠本化成株式会社製)を用いて行うことができる。その際、保護フィルム付き導電性フィルム110を加熱装置内に第1の保護フィルム130が下側となるように配置する。そして、加熱装置から保護フィルム付き導電性フィルム10を取り出し、安定的なカール量を測る観点から加熱終了時から10分経過後に25℃、相対湿度50%の環境下でカール量の測定を行う。保護フィルム付き導電性フィルムのカール量は、加熱試験後の保護フィルム付き導電性フィルムを、下側が第1の保護フィルムとなるように、平らな台の上に置き、保護フィルム付き導電性フィルムの四隅が台から浮き上がる場合には、四隅の浮き上がりの高さの平均値とし、また保護フィルム付き導電性フィルムの中央部が台から浮き上がる場合には、保護フィルム付き導電性フィルムの中央部のうち最も台から離れた箇所の高さとする。なお、台に第1の保護フィルムを下側となるように置いた場合、保護フィルム付き導電性フィルムの上面が凹状にカールする場合を正(+)とし、保護フィルム付き導電性フィルムの上面が凸状にカールする場合を負(-)とする。カール量は、±12mm以内、±10mm以内、±8mm以内、±6mm以内、または±4mm以内であることがより好ましい。」 「[0216] <<光透過性基材等>> 光透過性基材121は光透過性基材13と同様であり、第1の導電部122は第1の導電部11と同様であり、第2の導電部123は第2の導電部14と同様であり、樹脂層124は、樹脂層12と同様であり、導電性繊維125、127は導電性繊維15、17と同様であり、光透過性樹脂126、127は光透過性樹脂16、18と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。」 「[0217] <<第1の保護フィルム>> 第1の保護フィルム130は、耐熱保護フィルムである。本明細書における「耐熱保護フィルム」とは、150℃で60分間の加熱で溶融しないフィルムを意味する。保護フィルムが、150℃で60分間の加熱で溶融しないフィルムであるか否かは、実際に150℃で60分間加熱することによって目視により確認してもよく、または熱機械分析装置(TMA)を用いた分析によって確認することができる。第1の保護フィルム130は、軟化点が150℃以上に存在するものであることが好ましい。第1の保護フィルムの軟化点が150℃以上に存在するか否かは、熱機械分析装置(TMA)を用いた分析によって確認することができる。 ・・・略・・・ [0221] 第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材121の厚みの300%以下であることが好ましい。第1の保護フィルム130の厚みが、光透過性基材121の厚みの300%以下であれば、後工程において傷や折れ等が無く搬送できる。第1の保護フィルムは薄い方がフレキシブル性は良好であるが、薄すぎると、第1の方向および第2の方向における第1の保護フィルムと光透過性基材の熱収縮率差の絶対値が0.3%を超えるおそれがある。このため、第1の保護フィルム130の厚みの下限は、光透過性基材121の厚みの10%以上であることが好ましい。さらに、第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材121の厚みの20%以上250%以下であることが好ましく、30%以上250%以下であることがより好ましい。第1の保護フィルム130の厚みが、光透過性基材121の厚みの20%以上250%以下であれば、第1の方向D1および第2の方向D2における第1の保護フィルム130の熱収縮率がそれぞれ±0.7%以内になりやすく、第1の方向D1および第2の方向D2における上記熱収縮率差の絶対値がそれぞれ0.3%以下になりやすいためにカールをより抑制できる。 [0222] 具体的には、第1の保護フィルム130の厚みは、25μm以上150μm以下であることが好ましい。第1の保護フィルム130の厚みが25μm以上であれば、導電性フィルム120を保護する機能を十分に発揮することができ、また第1の保護フィルム130の厚みが150μm以下であれば、ロール径の肥大および搬送時の第1の保護フィルム130の剥離を抑制できる。第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材121の厚みと同様の方法によって測定することができる。第1の保護フィルム130の厚みの下限は、フィルム搬送時の折れを抑制できる観点から、50μm以上であることが好ましく、上限は125μm以下が好ましい。第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材13の厚みの測定方法と同様の方法によって測定することができる。 [0223] 第1の保護フィルム130は、樹脂基材と樹脂基材の一方の面側に設けられた粘着層から構成することが可能である。第1の保護フィルム130の樹脂基材を構成する樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。例えば、光透過性基材121がポリエステル系樹脂からなる基材である場合には、カールをより抑制する観点から、ポリエステル系樹脂から樹脂基材を構成することが好ましい。なお、第1の保護フィルムとして、自己粘着型の樹脂フィルムを用いてもよい。 ・・・<略>・・・ [0227]<<<他の保護フィルム付き導電性フィルム>>> 図14に示される保護フィルム付き導電性フィルム110は、光透過性基材121の片面側にのみ樹脂層124を備えているが、図17に示されるように、光透過性基材の両面側に樹脂層を備えていてもよい。具体的には、図17に示される保護フィルム付き導電性フィルム160における導電性フィルム170は、光透過性基材121と導電部123の間に樹脂層171をさらに備えている。」 「[0262]<<保護フィルム付き導電性フィルムの用途>> 保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200の用途は、特に限定されないが、例えば、センサやタッチパネル等が挙げられる。保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200を、タッチパネルのセンサとして用いる場合、保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200は、例えば、以下のようにして加工される。まず、保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200から第2の保護フィルム140を剥離して、導電性フィルム120および第1の保護フィルム130、190、210からなる積層体を得る。積層体は、搬送による導電性フィルム120の傷付き防止のために、第1の保護フィルム130、190、210はライン接触側(下側)になるように配置される。積層体を得た後、150℃で60分間加熱して、光透過性基材121を予め熱収縮させる。 [0263] 次いで、導電部123の表面123Aに導電性ペーストをスクリーン印刷等によって塗布する。導電性ペーストとしては、例えば、銀ペーストが挙げられる。導電性ペーストを塗布した後、130℃で30分間加熱して、導電性ペーストを焼成して、取出配線を形成する。 [0264] 取出配線を形成した後、導電部123における所定の領域にレーザー光(例えば、赤外線レーザー)を照射して、導電部123をパターニングする。所定の領域にレーザー光を照射すると、レーザー光の熱によってこの領域に含まれる導電性繊維125が昇華し、昇華した導電性繊維125は、光透過性樹脂26を突き破って光透過性樹脂126外に放出される。これにより、導電部123が所定形状にパターニングされる。 [0265] その後、導電性フィルム120から第1の保護フィルム130を剥離し、上記と同様の手順で、取出配線の形成および導電部122のパターニングを行う。」 「実施例 [0272] 本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。 [0273]<ハードコート層用組成物の調製> まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物を得た。 (ハードコート層用組成物1) ・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬株式会社製):15質量部 ・ポリメチルメタクリレート(ポリマー、重量平均分子量75,000):15量部 ・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1.5質量部 ・メチルエチルケトン(MEK):50質量部 ・シクロヘキサノン:18.5質量部 [0274](ハードコート層用組成物2) ・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬株式会社製):15質量部 ・ポリメチルメタクリレート(ポリマー、重量平均分子量75,000):15質量部 ・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標) OXE01」、BASFジャパン社製):1.5質量部 ・メチルエチルケトン(MEK):50質量部 ・シクロヘキサノン:18.5質量部 ・・・略・・・ [0276] <銀ナノワイヤ含有組成物の調製> (銀ナノワイヤ含有組成物1) 還元剤としてエチレングリコール(EG)を、有機保護剤としてポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量130万、アルドリッチ社製)を使用し、下記に示した核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ含有組成物を調製した。 [0277] 1.核形成工程 反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0モル/L)2.0mLを、一定の流量で1分間かけて添加した。その後、160℃で10分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)10.0mLを一定の流量で10分間かけて添加した。 [0278] 2.粒子成長工程 上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10-1モル/L)100mLと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)100mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。この粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。 [0279] 3.脱塩水洗工程 粒子成長工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すとともに、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して、銀ナノワイヤ分散液を調製した。最後に、銀ナノワイヤ濃度が0.1質量%となるようにエタノールで希釈し、銀ナノワイヤ含有組成物1を得た。 [0280] 銀ナノワイヤ含有組成物1中における銀ナノワイヤの繊維径および繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの繊維径は30nmであり、繊維長は15μmであった。銀ナノワイヤの繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めた。上記繊維径の測定の際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」とした。また、銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、500~2000万倍にて100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」、SE検出器を「混合」とした。銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、TE検出器は予め抜いておいた。銀ナノワイヤの繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ含有組成物1を、組成物の分散媒に合わせてエタノールで銀ナノワイヤの濃度を0.05質量%以下に希釈した。さらに、この希釈した銀ナノワイヤ含有組成物1をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ(Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C 10 STEM Cu100Pグリッド仕様」)上に1滴滴下し、室温で乾燥させ、上記条件で観察し、観察画像データとした。これを元に算術平均値を求めた。銀ナノワイヤの繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ含有組成物1をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製した。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出した。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM株式会社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付けた。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタして、導通を得た。なお、以下の銀ナノワイヤの繊維径および繊維長も同様にして求めた。 ・・・略・・・ [0283] <光透過性樹脂用組成物の調製> 下記に示す組成となるように各成分を配合して、光透過性樹脂用組成物1を得た。 (光透過性樹脂用組成物1) ・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬株式会社製):5質量部 ・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.25質量部 ・メチルエチルケトン(MEK):70質量部 ・シクロヘキサノン:24.75質量部 ・・・略・・・ [0335] <<実施例Bおよび比較例B>> <実施例B1> まず、片面のみに下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)である光透過性基材を準備し、光透過性基材の下地層の表面に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。 [0336] ハードコート層を形成した後、ハードコート層を除電した。除電は、電圧印加式除電器(製品名「SJ-H156A」、キーエンス株式会社製)を用いて行われた。上記除電器は、ハードコート層との距離が50mmとなるように設置された。 [0337] ハードコート層を除電した後、光透過性基材における下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/m2となるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。 [0338] 次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部を得た。 [0339] 第2の導電部を形成した後、第2の導電部の表面に剥離可能に厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムを設けた。 [0340] 第2の保護フィルムを設けた後、ハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/m2になるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、ハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。 [0341] 次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得た。 [0342] 第1の導電部を形成した後、第1の導電部の表面に剥離可能に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルムを設けて、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。 ・・・略・・・ [0365] <実施例B10> 実施例B10においては、光透過性基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)の代わりに、厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16」、日本ゼオン株式会社製)を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、導電性フィルムを得た。」 「 [図:0001389367000001.jpg] 」 「 [図:0001389367000002.jpg] 」 「 [図:0001389367000003.jpg] 」 イ 先願発明 先願明細書等には、その実施例B10を整理すると、以下の発明が記載されているといえる。 「片面のみに下地層を有する厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名『ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16』、日本ゼオン株式会社製)である光透過性基材と、光透過性基材の下地層の表面に形成された膜厚2μmのハードコート層と、光透過性基材における下地層側の面とは反対側の未処理面に形成された光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部と、第2の導電部の表面に剥離可能に設けられた厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名『SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK』、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムと、ハードコート層の表面に形成された光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部と、第1の導電部の表面に剥離可能に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名『CP170U』、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルムを設けて得られた、保護フィルム付き導電性フィルム。」(以下、「先願物発明」という。) また、先願明細書等には、その段落[0262]ないし[0265]の記載より、以下の「先願物発明」を加工する方法発明についても記載されているといえる。 「先願物発明である保護フィルム付き導電性フィルムから第2の保護フィルムを剥離して、導電性フィルムおよび第1の保護フィルムからなる積層体を得、次いで、第2の導電部の表面に導電性ペーストをスクリーン印刷等によって塗布した後、130℃で30分間加熱して、導電性ペーストを焼成して、取出配線を形成し、その後、導電性フィルムから第1の保護フィルムを剥離する、先願物発明の加工方法。」(以下、「先願加工方法発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と先願物発明を対比する。 先願物発明の「片面のみに下地層を有する厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名『ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16』、日本ゼオン株式会社製)である光透過性基材」は、本件特許発明1の「非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであ」る「透明樹脂フィルム」に相当する。また、先願物発明の「銀ナノワイヤ」は、本件特許発明1の「金属ナノワイヤ」に相当する。そうすると、先願物発明の「光透過性基材」及び「光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部」からなるものは、本件特許発明1の「透明導電フィルム」に相当する。 さらに、先願物発明の「第1の導電部の表面に剥離可能に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名『CP170U』、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルム」は、本件特許発明1の「厚みT2が150μm以下」の「保護フィルム」である「キャリアフィルム」に相当する。さらに、先願物発明の「保護フィルム付き導電性フィルム」は、本件特許発明1の「透明導電フィルム積層体」に相当する。 そして、先願物発明の「厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム」の5倍となっている。 そうすると、両者は 「キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの一方又は両方の主面に金属ナノワイヤを含む層が積層されて構成され、前記透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであり、前記透明導電フィルム積層体は、前記オーバーコート層が最外層となるように、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、保護フィルムの厚みT2が150μm以下である透明導電フィルム積層体。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-1> キャリアフィルムについて、本件特許発明1が「保護フィルムの一方の主面に粘着剤層を備えており」と特定しているのに対し、先願物発明はそのような特定がされていない点 <相違点3-2> 透明導電フィルムにおける、透明樹脂フィルムの一方又は両方の主面に積層される層構成について、本件特許発明1が「金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序に積層されて構成され」と特定しているのに対し、先願物発明は、「光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部」となっている点 <相違点3-3> 保護フィルムの厚みT2について、本件特許発明1が「前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上」と特定しているのに対し、先願物発明は、T1の5倍である点 そこで、上記相違点について検討する。 事案に鑑み、<相違点3-3>から検討する。 上記のとおり、先願物発明は、保護フィルムの厚みT2が透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍であって、「5.4倍以上」ではない。 そして、保護フィルムの厚みについて、先願明細書等の段落[0221]には、「第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材121の厚みの300%以下であることが好ましい。第1の保護フィルム130の厚みが、光透過性基材121の厚みの300%以下であれば、後工程において傷や折れ等が無く搬送できる。第1の保護フィルムは薄い方がフレキシブル性は良好であるが、薄すぎると、第1の方向および第2の方向における第1の保護フィルムと光透過性基材の熱収縮率差の絶対値が0.3%を超えるおそれがある。」と、T2/T1=300%以下、すなわち保護フィルムの厚みT2を透明樹脂フィルムの厚みT1の3倍以下とすることしか記載されておらず、5.4倍以上とすることについて記載も示唆もされていない。 よって、当該点は実質的にも相違する。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、先願物発明と同一ないしは実質同一でもない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アに示したのと同様の理由により、先願物発明と同一ないしは実質同一でもない。 ウ 本件特許発明6について 本件特許発明6は、請求項1を引用するものである。 また、先願加工方法発明も先願物発明を引用するものである。 そこで、上記アでの対比を踏まえて、本件特許発明6と先願加工方法発明を対比すると、両者は少なくとも、上記アで示した<相違点3-1>ないし<相違点3-3>で相違するところ、上記アで示したように、<相違点3-3>は実質的な相違点である。 よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明6は、先願加工方法発明と同一ないしは実質同一でもない。 エ 本件特許発明7について 本件特許発明7は、請求項6を引用するものであり、本件特許発明6の発明特定事項を全て有するものであるから、上記ウに示したのと同様の理由により、先願加工方法発明と同一ないしは実質同一でもない。 オ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和4年3月1日付けの意見書の第5ページにおいて、「甲3発明における光透過性基材121の厚みT1は5~45μmで、好ましくは5~35μm、さらに好ましくは5~18μmであり、他方で、第1の保護フィルム130の樹脂基材の厚みT2が25~125μmであり、これらの範囲で当業者は透明導電フィルムの積層体を作れることが明らかであるから・・・略・・・、甲3にはこれらの範囲を備える透明導電フィルムの積層体が記載されている。発明概念は実施例のみに限定されないことは当然のことであり、訂正発明1についても、保護フィルムが125μmの実施例しかなく(表1)、120~130μmが望ましいと記載している(段落108)にも拘わらず、「150μm以下」の範囲を発明の範囲としているのである。そして、甲3において、例えば、上記光透過性基材121の厚みT1が5μmで上記第1の保護フィルム130の樹脂基材の厚みT2が5μm×5.4=27μmの場合、上記光透過性基材121の厚みT1が18μmで上記第1の保護フィルム130の樹脂基材の厚みT2が18μm×5.4=97.2μmの場合、すなわち光透過性基材121の厚みT1が最も好ましい範囲5~18μmで、訂正発明1における「前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フ ィルムの厚みT1の5.4倍以上かつ150μm以下である」に該当する。」と主張している。 しかしながら、上記アで述べたように、先願明細書等には、保護フィルムの厚みT2を透明樹脂フィルムの厚みT1の3倍以下とすることしか記載されていない。 そうすると、保護フィルムの厚みT2を透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上とすることは記載も示唆もされていないし、むしろ5.4倍以上とすることは上記記載からして、阻害要因があるといえる。 よって、特許異議申立人の上記主張は首肯できない。 (3)取消理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。 2 取消理由(決定の予告)において採用しなかった申立理由について (1)申立理由1(甲1を主引用文献とする新規性)及び申立理由2(甲1を主引用文献とする進歩性)について ア 証拠について (ア)甲1に記載された事項及び甲1発明 a 甲1に記載された事項 甲1には、「積層体、導電性積層体及びタッチパネル」について以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 基材フィルムの一方の面上に、一以上の光学機能層を有し、前記基材フィルムの他方の面上に、低接触角層を有し、前記光学機能層の前記基材フィルム側と反対側面上にパターニングされた透明導電層を形成するために用いられる積層体であって、 前記低接触角層の表面に、粘着層付きフィルムを貼り、150℃、60分の条件で加熱後、前記粘着層付きフィルムを剥がしたときの前記低接触角層の表面のJIS K6768(1999)で規定されているぬれ張力が30mN/m以上である ことを特徴とする積層体。 ・・・略・・・ 【請求項10】透明導電層は、インジウム錫酸化物又は導電性繊維状フィラーを含む請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の積層体」 「【0004】 ところで、スパッタリング処理により形成された透明導電層は、必要に応じて、低抵抗化、透明性の向上、及び、耐久性を向上させるために、150℃程度の高温で加熱処理を行って結晶化させることがある。 また、ITO以外の導電性材料として、製造工程での真空プロセスをなくすことでのコスト低減のために、また、透明導電性フィルムの折り曲げ性を向上させるために、例えば、金属繊維、カーボンナノチューブ等を用いた場合においても、110~150℃程度の条件で加熱処理をすることにより、導電材料が重なって存在している部分が、それぞれ融解し密着して導通し、極めて良好に低抵抗化が可能であることが一般的に知られている。 【0005】 また、透明導電性フィルム周辺の配線は、銀ペーストを焼成することにより作成されるので、透明導電性フィルム周辺の配線作成時には、透明導電性フィルムは120~140℃程度の条件で加熱される。 更に、透明導電性フィルムにおいて、パターニング後の加熱による寸法変化で配線の間隔がずれることを抑制するために、パターニング以前に150℃程度の条件で透明導電性フィルムを加熱して、基材の収縮率を調整することがある。」 「【0039】 また、上記粘着層付きフィルムは、後述するパターニングされた透明導電層が形成された後剥離されるが、その剥離強度は10~500mN/25mmであることが好ましい。10mN/25mm未満であると、本発明の積層体の製造過程で粘着層付きフィルムが剥離してしまうことがあり、500mN/25mmを超えると、低接触角層から剥離できないことがある。なお、上記透明導電層が、後述するように、スパッタリング処理後、加熱処理を施して結晶化されたものである場合、上記粘着層付きフィルムは、上記加熱処理を施して導電層を結晶化させた後や、その後の工程で加熱処理を終了した後等、いずれかの後工程において、剥離されることが好ましい。 また、後述する導電性繊維状フィラー等を含む透明導電層においても同様であり、低抵抗化を図るために行う加熱や、後工程の銀ペーストを焼成した後のいずれかの工程で剥離されることが好ましい。」 「【0098】 (実施例1) 厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製、A4300;プライマー層付き)の一方の面上(プライマー層上)に、下記処方のハードコート層組成物を用いて、乾燥後の厚みが2.0μmとなるように塗布し、ハードコート層を形成した。 次いで、下記処方の高屈折率層用組成物、及び、低屈折率層用組成物を用いて、高屈折率層(厚み50nm、屈折率1.68)及び低屈折率層(厚み30nm、屈折率1.48)を順番に、二軸延伸ポリエステルフィルムのハードコート層上に形成した。 なお、ハードコ-ト層、高屈折率層及び低屈折率層からなる光学機能層の乾燥条件は、いずれも70℃、60秒とした。また、ハードコート層用組成物の塗膜、高屈折率層用組成物の塗膜、及び、低屈折率層用組成物の塗膜の夫々を乾燥した後に、それぞれ紫外線照射(150mJ/cm2)を行った。 【0099】 また、上記二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面上に、下記処方の低接触角層用組成物1を塗布して塗膜を形成し、70℃、60秒の条件で乾燥を行うことで、二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面上に厚み20nmの低接触角層が設けられた積層体を得た。 【0100】 <ハードコート層用組成物> ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重量平均分子量580、二重結合当量100) 50部 光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184) 2部 メチルイソブチルケトン 200部 【0101】 <高屈折率層用組成物> ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重量平均分子量580、二重結合当量100) 10部 光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア127) 0.7部 高屈折率粒子含有液(平均粒径10~15nmのジルコニア粒子をメチルエチルケトンに分散させ、固形分30%としたもの) 65部 メチルイソブチルケトン 1000部 【0102】 <低屈折率層用組成物> ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重量平均分子量580、二重結合当量100) 3.5部 光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア127) 1部 低屈折率粒子含有液(平均粒径10~15nmのシリカ粒子をメチルイソブチルケトンに分散させ、固形分30%としたもの) 21.7部 メチルイソブチルケトン 1000部 【0103】 <低接触角層用組成物1> アクリルポリマー溶液(重量平均分子量16万、二重結合当量1000、固形分25%) 16部 メチルイソブチルケトン 1000部 ・・・略・・・ 【0126】 (ぬれ張力) 厚さ125μmの上記二軸延伸ポリエステルフィルム上に、粘着層を形成して粘着層付きフィルムを得た。 上記粘着層を形成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤(綜研化学社製:SKダイン1811L(固形分23%))及びイソシアネート系架橋剤(綜研化学社製:TD75(固形分75%))を用い、アクリル系粘着剤:イソシアネート系架橋剤=100:1(質量比)で混合し、溶媒(酢酸エチル)中に、固形分20%(質量基準)となるよう溶解した粘着剤溶液を用いた。該粘着剤溶液は上記二軸延伸ポリエステルフィルム上に塗工し、100℃で1分間乾燥して粘着層(厚み15μm)を形成した。更に粘着層の面には、再剥離可能な離型フィルムを貼合わせて保護した。 上記粘着層付きフィルムは、上記離型フィルムを剥がした後に使用した。 実施例及び比較例で得られた積層体について、上記粘着層付きフィルムを貼る前における低接触角層の表面のぬれ張力(初期)と、150℃、60分の条件で加熱後、上記粘着層付きフィルムを剥がした後におけるぬれ張力(加熱後)を、JIS K6768(1999)に基づき測定した。 なお、試験用混合液としては、ぬれ張力22.6~73.0mN/mを用意した。 ・・・略・・・ 【0131】 ・・・略・・・ また、実施例1と同様の方法により、厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面上にハードコート層用組成物を用いて塗膜を形成し、ハーフキュア後、転写法にて銀ナノワイヤーを用いた透明導電層を形成した。その後、ハードコート層の硬化を行い、実施例1と同様の方法により、上記二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面上に低接触角層を形成し、導電性積層体を得た。該導電性積層体に対して、透明導電層の低抵抗化を図るための加熱を行ったところ、加熱後のぬれ張力が30N/m以上で、ぬれ張力の差が20mN/m以下であり、所望の貼り付き性能を確保することができた。また、光学特性にも問題はなかった。」 b 甲1発明 甲1の段落【0126】【0131】の実施例1の導電性積層体に着目し、【請求項1】にならって整理すると、甲1には、以下の発明が記載されている。 「厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製、A4300;プライマー層付き)と、その一方の面上(プライマー層上)に形成された、乾燥後の厚みが2.0μmであるハードコート層と、ハードコート層上に形成された銀ナノワイヤーを用いた透明導電層と、前記二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面上に厚み20nmの低接触角層が設けられ、前記低接触角層の表面に、厚さ125μmの上記二軸延伸ポリエステルフィルム上に粘着層を形成した粘着層付きフィルムを貼り、150℃、60分の条件で加熱後、前記粘着層付きフィルムを剥がしたときの前記低接触角層の表面のJIS K6768(1999)で規定されているぬれ張力が30mN/m以上である、導電性積層体。」(以下、「甲1物発明」という。) また、甲1には、以下の「甲1物発明」の製造方法の発明が記載されている。 「甲1物発明の製造方法において、厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製、A4300;プライマー層付き)の一方の面上(プライマー層上)に、ハードコート層組成物を用いて塗膜を形成し、ハーフキュア後、転写法にて銀ナノワイヤーを用いた透明導電層を形成し、その後、ハードコート層の硬化を行い、また、上記二軸延伸ポリエステルフィルムの他方の面上に厚み20nmの低接触角層を形成し、前記低接触角層の表面に、厚さ125μmの上記二軸延伸ポリエステルフィルム上に粘着層を形成した粘着層付きフィルムを貼り、150℃、60分の条件で加熱後、前記粘着層付きフィルムを剥がしたときの前記低接触角層の表面のJIS K6768(1999)で規定されているぬれ張力が30mN/m以上である導電性積層体を得る、甲1物発明の製造方法。」(以下、「甲1製造方法発明」という。) さらに、甲1の段落【0039】の記載より、甲1には、以下の「甲1物発明」の加工方法の発明が記載されている。 「甲1物発明である導電性積層体に貼り付けられた粘着層付きフィルムを、低抵抗化を図るために行う加熱や、後工程の銀ペーストを焼成した後のいずれかの工程で剥離される、甲1物発明の加工方法。」(以下、「甲1加工方法発明」という。) (イ)甲4に記載された事項 甲4には、「透明導電性フィルム」について以下の記載がある。 「【請求項1】 透明基材と、該透明基材の一方の面に配置する第1の導電層と、該透明基材の該第1の導電層とは反対側に配置する第2の導電層とを備え、 該第2の導電層の表面抵抗値が、1×104Ω/□~1×1014Ω/□である、 透明導電性フィルム。」 「【0059】F.その他の層 上記透明導電性フィルムは、必要に応じて、任意の適切なその他の層を備え得る。上記その他の層としては、例えば、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、カラーフィルター層等が挙げられる。」 「【0064】 [実施例1] (銀ナノワイヤの合成および銀ナノワイヤを含む第1の導電層形成用組成物の調製) 硝酸銀1.5g、形態調整剤としてのポリビニルピロリドンK-90(ナカライテスク社製、平均分子量:360,000)5.8g、食塩(NaCl)0.04g及びエチレングリコール(180ml)を、環流器及び攪拌機が付いたフラスコに添加し、攪拌しつつ溶解した後、温度をエチレングリコールの沸点近傍である170℃まで昇温し、60分間反応させた。反応終了後、室温下で放置して冷却した。次いで、上記のようにして得られた銀ナノワイヤを含む反応混合物に、該反応混合物の体積が5倍になるまでアセトンを加えた後、該反応混合物を遠心分離した(2000rpm、20分)。この作業を数回繰返し、銀ナノワイヤを得た。得られた銀ナノワイヤは、直径が10nm~60nmであり、長さは1μm~50μmであった。なお、銀ナノワイヤのサイズは、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡「S-4800」を用い、該顕微鏡により無作為に抽出した30個の金属ナノワイヤを観察して長さおよび直径を測定した。純水中に、該銀ナノワイヤ(濃度:0.2重量%)、およびペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル(濃度:0.1重量%)を分散させ、銀ナノワイヤ分散液(第1の導電層形成用組成物)を調製した。 (バインダー樹脂組成物の調製) ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」)3.6重量部、オルガノシリカゾル(日産化学工業社製、商品名「MEK-AC-2140Z」、濃度40%)2.7重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)0.2重量部をシクロペンタノン93重量部で希釈して、固形分濃度5重量%の樹脂組成物を得た。 (第1の導電層の作成) 透明基材としてノルボルネン系シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン株式会社製、商品名「ゼオノア」)を用いた。 この透明基材上に、バーコーター(第一理科株式会社製 製品名「バーコーター No.10」)を用いて上記銀ナノワイヤ分散液を塗布し、120℃の送風乾燥機内で2分間乾燥させた。その後、上記樹脂組成物をWet膜厚6μmでスロットダイにて塗布し、120℃の送風乾燥機内で2分間乾燥させた。次いで、酸素濃度100ppm環境とした紫外光照射装置(Fusion UV Systems社製)で積算照度210mJ/cm2の紫外光を照射して保護層形成用組成物を硬化させて保護層を形成し、第1の導電層/透明基材から構成される積層体A1を得た。この第1の導電層の表面抵抗値は143Ω/□であり、積層体A1の全光線透過率は91.5%であった。 (第2の導電層の形成) 水溶性ポリチオフェン系導電性ポリマーを含有する水溶液(ナガセケムテックス社製、商品名「Denatron P-502RG」、固形分濃度0.8%)を、上記積層体A1における透明基材の第1の導電層とは反対側の面に、乾燥後の厚みが52nmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥して第2の導電層を形成し、第1の導電層/透明基材/第2の導電層から構成される積層体B1を得た。第2の導電層の表面抵抗値は、5.7×106Ω/□であり、積層体B1の全光線透過率は91.3%であった。 (第1の導電層のパターン化) 第1の導電層の表面にドライフィルムレジスト(旭化成株式会社製、商品名「SUNFORT」)を貼り合せ、配線パターンを印刷したガラスマスクを介し、i線単色光源(積算光量80mJ/cm2)で露光したのち、1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を行った。 レジスト面を40℃に昇温したエッチング液(関東化学株式会社製、商品名「混酸ITO-02」)に60秒間浸漬、純水で洗浄したのち、1.9%モノエタノールアミン水溶液を用いてレジストを剥離した。このようにして、銀ナノワイヤを含む導電部と、導電部が除去されて形成された非導電部とから構成される第1の導電層を形成し、透明導電性フィルムIを得た。非導電部の表面抵抗値は測定レンジ上限(1.0×1014Ω/□)以上であった。 得られた透明導電性フィルムを上記評価(3)に供した。評価結果を表1に示す。」 (ウ)甲5に記載された事項 甲5には、「透明導電性フィルム用キャリアフィルム及び積層体」について以下の記載がある。 「【0101】 前記プラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;環状オレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);芳香族ポリエーテル系樹脂などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも特に、前記ポリエステル系樹脂は、強靭性、加工性、透明性等を有するため、これを透明導電性フィルム用のキャリアフィルムに使用することにより、作業性・検査性が向上することとなり、より好ましい態様となる。」 「【0103】 前記支持体の厚みは、25~300μmが一般的に用いられるが、75~200μmが好ましく、より好ましくは80~140μmであり、特に好ましくは90~130μmである。前記範囲内であると、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを、(機能層付き)透明導電性フィルムに貼付して使用することにより、コシがなく、撓みやすい前記透明導電性フィルムの形状を保持することができ、加工工程や搬送工程等において、シワやキズなどの不具合の発生を防止でき、有用である。」 「【0109】 支持体1bとしては、樹脂フィルムや、ガラスなどからなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材(部材)など)などが挙げられ、特に、樹脂フィルムをあげることができる。支持体1bの厚さは、特に限定されないが、10~200μm程度が好ましく、15~150μm程度がより好ましい。 【0110】 前記樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料があげられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状オレフィン系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。」 「【0112】 前記透明導電層1aの構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物や、金属ナノワイヤー(例えば、銀ナノワイヤー)、金属メッシュ等が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOとしては、酸化インジウム80~99重量%及び酸化スズ1~20重量%を含有することが好ましい。」 (エ)甲6に記載された事項 甲6には、「透明導電性フィルム用キャリアフィルム及び積層体」について以下の記載がある。 「【0094】 前記プラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも特に、前記ポリエステル系樹脂は、強靭性、加工性、透明性等を有するため、これを透明導電性フィルム用のキャリアフィルムに使用することにより、作業性・検査性が向上することとなり、より好ましい態様となる。」 「【0096】 前記支持体の厚みは、25~300μmが一般的に用いられるが、75~200μmが好ましく、より好ましくは80~140μmであり、特に好ましくは90~130μmである。前記範囲内であると、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを、(機能層付き)透明導電性フィルムに貼付して使用することにより、コシがなく、撓みやすい前記透明導電性フィルムの形状を保持することができ、加工工程や搬送工程等において、シワやキズ等の不具合の発生を防止でき、有用である。」 「【0102】 透明基材5としては、樹脂フィルムや、ガラス等からなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材(部材)等)等が挙げられ、特に、樹脂フィルムを挙げることができる。透明基材5の厚さは、特に限定されないが、10~200μm程度が好ましく、15~150μm程度がより好ましい。 【0103】 前記樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料が挙げられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。 【0104】 また、前記透明基材5には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電層4等の前記透明基材5に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電層4を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄等により除塵、清浄化してもよい。」 (オ)甲7に記載された事項 甲7には、「透明導電性フィルム積層体及びその用途」について以下の記載がある。 「【0050】 (金属配線) 金属配線は、金属層を透明導電膜上に形成した後、エッチングにより形成することも可能であるが、以下のように感光性金属ペーストを用いて形成するのが好ましい。即ち、金属配線は、透明導電膜がパターン化された後に、後述の感光性導電ペーストを前記透明樹脂フィルム上または前記透明導電膜上に塗布し、感光性金属ペースト層を形成し、フォトマスクを積層または近接させフォトマスクを介して感光性金属ペースト層に露光を行い、次いで現像を行い、パターン形成した後、乾燥工程を経て得られる。つまり、公知のフォトリソグラフィ法等により、金属配線のパターン形成が可能である。」 (カ)甲8に記載された事項 甲8には、「透明導電性フィルム用表面保護フィルム及び透明導電性フィルム」について以下の記載がある。 「【0016】基材フィルム1aとしては、特に制限されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンブレンド物、ポリアミド、ポリイミド、セルロースアセテート、ポリスルフオン、ポリエーテルスルフオンなどがあげられる。なかでも、透明性や耐熱性が要求される場合には、PET、PEN、PPSが好ましい。」 (キ)甲9に記載された事項 甲9には、「導電性フィルム、タッチパネル、および画像表示装置」について以下の記載がある。 「【0052】 <<導電部>> 導電部13の表面13Aは、導電性フィルム10の表面10Aをなしている。導電部13は、図2に示されるように、光透過性樹脂14と、光透過性樹脂14中に配置された複数の導電性繊維15とを含んでいる。本明細書における「導電性繊維」とは、導電性を有し、かつ長さが太さ(例えば直径)に比べて十分に長い形状を持つものであり、例えば、概ね長さが太さの5倍以上のものは導電性繊維に含まれるものとする。また、「導電部」とは、光透過性樹脂と、光透過性樹脂中に配置された複数の導電性繊維を含み、かつ表面から導通可能な部分を意味し、層状のものおよび層状以外のものの両方を含む概念である。導電部13は、光透過性樹脂14中に存在する反応抑制剤をさらに含むことが好ましい。」 「【0059】 <光透過性樹脂> 光透過性樹脂14は、導電部13からの導電性繊維15の脱離を防ぎ、かつ導電部13の耐久性や耐擦傷性を向上させるために、導電性繊維15を覆うものであるが、導電部13の表面13Aから電気的な導通が得られる程度に導電性繊維15を覆うものである。具体的には、上記したように一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、光透過性樹脂14は、一部の導電性繊維15が導電部13の表面13Aから露出するように導電性繊維15を覆っていることが好ましい。一部の導電性繊維15が導電部13の表面13Aに露出するように導電性繊維15を光透過性樹脂14で覆うためには、例えば、光透過性樹脂14の膜厚を調整すればよい。すなわち、光透過性樹脂の膜厚が厚すぎると、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が導電部の表面に露出しなくなってしまい、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。また、光透過性樹脂の膜厚が薄すぎると、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがあり、さらに導電性繊維が、全体として、導電部中において導電部の膜厚の半分の位置より光透過性基材側に偏在しなくなるおそれがある。このため、光透過性樹脂の膜厚を適度な厚みに調節する必要がある。」 「【0072】 上記金属繊維としては、例えば、ステンレススチール、鉄、金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等を細く、長く伸ばす伸線法または切削法により作製された繊維が使用できる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。金属繊維は、繊維径が200nm以下の金属ナノワイヤであることが好ましい。」 「【図2】 [図:0001389367000004.jpg] 」 (ク)甲10に記載された事項 甲10には、「透明導電基板の製造方法、透明導電基板及び静電容量式タッチパネル」について以下の記載がある。 「[0035] X電極用引き回し電極パターン及びX電極パターンが形成された透明フィルム基板10の表面は、X側保護フィルム貼付部20により、保護フィルムロール22から引き出された保護用透明フィルム23が貼付される。また、保護用透明フィルム23を貼り付ける代わりにオーバーコート樹脂を印刷・硬化することによりX電極用引き回し電極パターン及びX電極パターンを被覆することもできる。」 「[0043] 次に、上記X電極用引き回し電極パターン及びX電極パターンが形成された透明フィルム基板10は、Y電極(第二の電極に相当)用引き回し電極パターン形成部24の位置まで移動され、X電極用引き回し電極パターン及びX電極パターンが形成された主面とは異なる主面に、Y電極用引き回し電極パターン形成部24によりY電極用引き回し電極パターンが形成される。Y電極用引き回し電極パターンは、例えば図9に示されるパターンである。Y電極用引き回し電極パターン形成部24は、公知の導電ペーストを使用して、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷のような印刷法によりY電極用引き回し電極パターンを形成し、乾燥する。 [0044] 上記Y電極用引き回し電極パターンが形成された側の透明フィルム基板10の主面には、Y電極パターン形成部26によりY電極パターンが形成される。このY電極パターンは、上記Y電極用引き回し電極パターンに接続するように形成される。なお、Y電極用引き回し電極パターンとY電極パターンとの位置合わせをするために、Y電極用引き回し電極パターン形成部24が適宜な位置合わせのマークを印刷しておくのが好適である。Y電極パターン形成部26も、金属ナノワイヤまたは金属ナノ粒子と、形状保持溶媒とを含む透明導電パターン形成用インクを使用してY電極パターンを形成する。ここで、形状保持溶媒は、上述した分子量及び粘度を有する溶媒である。Y電極パターン形成部26は、上記透明導電パターン形成用インクを使用して、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷のような印刷法によりY電極用引き回し電極パターンを形成し、乾燥する。」 「[0046] Y電極用引き回し電極パターン及びY電極パターンが形成された透明フィルム基板10の表面は、Y側保護フィルム貼付部30により、保護フィルムロール32から引き出された保護用透明フィルム33が貼付される。また、保護用透明フィルム33を貼り付ける代わりにオーバーコート樹脂を印刷・硬化することによりY電極用引き回し電極パターン及びY電極パターンを被覆することもできる。ここで使用できるオーバーコート樹脂は、前述のX電極用引き回し電極パターン及びX電極パターンパターンに適用できるものと同等のものである。」 「[図4] [図:0001389367000005.jpg] 」 (ケ)甲11に記載された事項 甲11には、「透明導電フィルム及びタッチパネル」について以下の記載がある。 「【0080】 上記の透明導電膜積層体は、導電層に対して両面粘着シートの粘着剤層が直接貼り合わされて少なくとも2層以上の積層体が形成されている積層体(図10)である。金属ナノワイヤーを含有する導電層の反対面には、ハードコート層が設けられた積層体(図11)が好ましい。また、シールド機能を有したフィルム積層体(図12)を具備した透明導電膜積層体とすることもできる。」 「【図12】 [図:0001389367000006.jpg] 」 (コ)甲12に記載された事項 甲12には、「導電積層体およびそれを用いたタッチパネル」について以下の記載がある。 「【0080】 [タッチパネル] 次に、本発明のタッチパネルについて説明する。本発明のタッチパネルは本発明の導電積層体を用いてなる。導電積層体108の概略断面図を図1に示す。図1の説明は図2と併せて行う。図2は本発明の抵抗膜式タッチパネルの一例を示す概略断面図である。抵抗膜式タッチパネルは、一例として下部電極202上に、上部電極201が枠状の両面接着テープ206によって固定された構成である。上部電極を構成する基材102上には、アンダーコート層103(103a、103b両方とも含む)、カーボンナノチューブ層105、オーバーコート層106がこの順に積層されており、また下部電極を構成する基材203上には、ITO層204が積層されている。上部及び下部電極の導電層同士が空間207を挟むように対向して面状に形成されている。空間207には、一定間隔でドットスペーサー205を設けてあり、これによって、上側と下側の導電層の間隙を保持している。基材102の上面はペン209や指の先が接触する面であり、傷つきを防止するためにハードコート層101が設けられる。このタッチパネルは、電源208にて電圧をかけ、ペン209や指の先でハードコート層101の表面を押して荷重をかけることで、接触した部分から電気が流れ動作する。以上の構成からなるタッチパネルは、例えば、リード線と駆動ユニットを取り付け、液晶ディスプレイの前面に組み込んで用いられる。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1物発明を対比する。 甲1物発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製、A4300;プライマー層付き)」、「銀ナノワイヤー」、「透明導電層」、「導電性積層体」は、各々、本件特許発明1の「透明樹脂フィルム」、「金属ナノワイヤ」、「透明導電層」、「透明導電フィルム積層体」に相当する。 また、甲1物発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム上に粘着層を形成した粘着層付きフィルム」は、本件特許発明1の「保護フィルムと、保護フィルムの一方の主面に粘着剤層を備えて」おり、「前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからな」る「キャリアフィルム」に相当し、厚さも「125μm」の点で一致する。 そうすると、両者は 「キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの一方又は両方の主面に金属ナノワイヤを含む透明導電層と、がこの順序に積層されて構成され、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が125μmである、透明導電フィルム積層体。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1-1> 保護フィルムの厚みT2について、本件特許発明1が「前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上」と特定されているのに対し、甲1物発明は、厚みT1の1.25倍である点 <相違点1-1-2> 透明樹脂フィルムについて、本件特許発明1は、「厚みT1」が「5~25μm」である「非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり」と特定されているのに対し、甲1物発明は「厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製、A4300;プライマー層付き)」である点 <相違点1-1-3> 透明導電層について、本件特許発明1が「バインダー樹脂を含む」と特定されているのに対し、甲1物発明はそのような特定がされていない点 <相違点1-1-4> 本件特許発明1が「最外層となる」「オーバーコート層」を備えていると特定されているのに対し、甲1物発明はそのような特定がされていない点 そこで、上記相違点について検討する。 <相違点1-1-1>を検討する。 当該相違点は、両者の数値自体が異なるため、実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1に記載された発明であるとはいえない。 ついで、本件特許発明1の進歩性について検討する。 甲1、さらには特許異議申立書に添付された他の証拠にも、「前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上」とする関係性について記載も示唆もされていないことから、甲1物発明において、T2/T1のが1.25倍であるものを5.4倍以上とする動機付けはない。 そして、本件特許発明1は、当該相違点に係る発明特定事項を備えることにより、「透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後も透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体を提供する事ができる。」(段落【0022】)という効果を奏するものである。 よって、甲1物発明おいて、当該相違点に係る発明特定事項を導き出すことは当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記(ア)で示したのと同様、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記(ア)で示したのと同様、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (ウ)本件特許発明6について 本件特許発明6は、請求項1を引用するものである。 また、甲1加工方法発明も甲1物発明を引用するものである。 そこで、上記(ア)での対比を踏まえて、本件特許発明6と甲1加工方法発明を対比すると、両者は少なくとも、上記(ア)で示した<相違点1-1-1>ないし<相違点1-1-4>で相違する。 しかしながら、上記(ア)で示したように、<相違点1-1-1>は実質的な相違点であり、また、当該相違点に係る発明特定事項を当業者が容易に想到し得たものではい。 よって、本件特許発明6は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (エ)本件特許発明7について 本件特許発明7は、請求項6を引用するものであり、本件特許発明6の発明特定事項を全て有するものであるから、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (オ)本件特許発明8について 甲1製造方法発明は、甲1物発明を引用するものである。 そこで、上記(ア)での対比を踏まえて、本件特許発明8と甲1製造方法発明を対比すると、両者は、 「キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの一方の主面に金属ナノワイヤを含む透明導電層と、がこの順序に積層されて構成され、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が125μmである、透明導電フィルム積層体の製造方法」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-8-1> 保護フィルムの厚T2について、本件特許発明8が「前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上」と特定されているのに対し、甲1製造方法発明は、厚みT1の1.25倍である点 <相違点1-8-2> 透明樹脂フィルムについて、本件特許発明8が「厚みT1」が「5~25μm」である「非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり」と特定しているのに対し、甲1製造方法発明は「厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製、A4300;プライマー層付き)」である点 <相違点1-8-3> 透明導電層について、本件特許発明8が「バインダー樹脂を含む」と特定しているのに対し、甲1製造方法発明はそのような特定がされていない点 <相違点1-8-4> 本件特許発明8が「最外層となる」「オーバーコート層」を備えているのに対し、甲1製造方法発明はそのような特定がされていない点 <相違点1-8-5> 透明導電層の積層箇所について、本件特許発明8が「透明樹脂フィルムの両方の主面に」と特定しているのに対し、甲1製造方法発明は「透明樹脂フィルムの一方の主面に」である点 <相違点1-8-6> 製造方法について、本件特許発明8が「前記透明樹脂フィルムに粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記キャリアフィルムが積層されている側とは反対側の主面上に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 前記オーバーコート層に粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムに積層されたキャリアフィルムを剥離する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記透明導電層が積層された主面とは反対側の主面に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 を備える」と特定しているのに対し、甲1製造方法発明は上記一連の工程の特定がされていない点 そこで、上記相違点について検討する。 <相違点1-8-1>を検討する。 上記(ア)で示したのと同様、甲1、さらには特許異議申立書に添付された他の証拠にも、「前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上」とする関係性について記載も示唆もされていないことから、甲1製造方法発明において、T2/T1のが1.25倍であるものを5倍以上とする動機付けはない。 そして、本件特許発明8は、当該相違点に係る発明特定事項を備えることにより、「透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後も透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体を提供する事ができる。」(段落【0022】)という効果を奏するものである。 よって、甲1製造方法発明おいて、当該相違点に係る発明特定事項を導き出すことは当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、本件特許発明8は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 異議申立人の主張について 異議申立人は、令和4年3月1日付けの意見書の第8ページにおいて、「甲1には、基材フィルムの厚みが5~300μmであること(段落74、75)、及び粘着層付きフィルムの基材の厚みが125μmであること(段落126)が記載されており、基材フィルムの厚みが5~23.1μmの場合に粘着層付きフィルムの基材の厚みがその「5.4倍以上」に該当し、訂正発明1は、依然として甲1に記載された発明であり、又は甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえた発明である。」と主張している。 たしかに甲1には、基材フィルムとして、5~300μmの厚みを取り得ることについて記載されてはいる。しかしながら、甲1及び特許異議申立書に添付された他の証拠のいずれにも、基材フィルムの厚みと粘着層付きフィルムの厚みとの関係性については一切触れられておらず、特に「前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍、あるいは5.4倍以上かつ150μm以下」とすること、及び当該関係性をとることにより「透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後も透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体を提供する事ができる。」という効果を奏することについて記載も示唆もされていない。 よって、本件特許発明1、2、5及び6は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、本件特許発明1ないし8は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。 エ 取消理由1、2についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、5及び6は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、5及び6に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。また、本件特許発明1ないし8は、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。 (2)申立理由3(甲2を主引用文献とする進歩性について) ア 甲2に記載された事項及び甲2発明 (ア)甲2に記載された事項 甲2には、「粘着剤層付き透明導電性フィルムおよびその製造方法」について以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透明プラスチックフィルム基材の一方の面にアモルファス透明導電性薄膜が設けられたアモルファス透明導電性積層体と、前記透明プラスチックフィルム基材の他方の面に粘着剤層を介して設けられた、少なくともフィルム基材を有する離型フィルムとを有し、 前記離型フィルムの厚みが、前記アモルファス透明導電性積層体の厚みより大きく、 前記アモルファス透明導電性積層体のMD方向の熱収縮率から前記離型フィルムのMD方向の熱収縮率を引いた値が、-0.3~0.45%であることを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルム。 【請求項2】 アモルファス透明導電性薄膜は、少なくとも1層のアンダーコート層を介して、透明プラスチックフィルム基材の一方の面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。 【請求項3】 アモルファス透明導電性薄膜は、酸化インジウム90~99重量%および酸化スズ1~10重量%を含有する金属酸化物により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。 【請求項4】 前記透明プラスチックフィルム基材の厚みが、10~40μmであり、 前記離型フィルムの厚みが、50~100μmである請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。 の粘着剤層付き透明導電性フィルム。 ・・・略・・・ 【請求項10】 粘着剤層付き透明導電性フィルムは、140℃で1.5時間加熱した後のカールが25mm以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。 【請求項11】 粘着剤層は、離型フィルムを剥離した後に、他の基材に貼り合わせるものであることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。 【請求項12】 アモルファス透明導電性薄膜は、結晶化加工処理がなされた後において、粘着剤層から離型フィルムを剥離して、他の基材に貼り合わせるものであることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。」 「【背景技術】 【0002】 従来、透明導電性薄膜としては、ガラス上に酸化インジウム薄膜を形成した、いわゆる導電性ガラスがよく知られているが、導電性ガラスは基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣り、用途によっては使用できない場合がある。そのため、近年では可撓性、加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であることなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムをはじめとする各種のプラスチックフィルムを基材とした透明導電性フィルムが使用されている。 【0003】 前記透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を設け、かつ、透明プラスチックフィルム基材の他方の面には粘着剤層を介して透明基体を貼りあわせた透明導電性積層体として用いられている(特許文献1、2)。 【特許文献1】特開平2-66809号公報 【特許文献2】特開平2-129808号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 前記透明導電性フィルムは、タッチパネルに留まらず、各種用途への展開が期待されている。しかし、透明導電性フィルムが、前記のような透明導電性積層体では、加工性が劣り、十分に用途展開を図ることが難しい。 【0005】 また、透明導電性フィルムを電極などの用途で用いる際には、結晶質透明導電性フィルムとして用いられることが多いが、エッチングなどの加工性においては、アモルファス透明導電性フィルムの方が優れていることが知られている。一般に、アモルファス状態から結晶質状態にするためには、加熱処理が行われている。しかしながら、液晶パネルやタッチパネル等の被着体に透明導電性フィルムを貼り合わせた後に加熱処理する場合は、加熱処理によって被着体に不良が発生する場合がある。 【0006】 また、貼り合わせ工程を考慮すると、加熱処理後に透明導電性フィルムに別途粘着剤層を形成するよりも、あらかじめ透明導電性フィルムに粘着剤層を介して離型フィルムを設けておくことが好ましい。 【0007】 他方、透明導電性フィルムは薄型化が求められているが、薄型の透明導電性フィルムは、加熱処理によりカールが発生し易く、加熱処理を経てもカールの発生が少ない粘着剤層付き透明導電性フィルムが求められていた。 【0008】 本発明は、加工性の良好な透明導電性フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0026】 本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材の一方の面にアモルファス透明導電性薄膜を有している。通常、透明導電性フィルムでは、透明導電性薄膜として、結晶性の透明導電性薄膜が用いられているが、本発明では、アモルファス透明導電性薄膜を用いている。アモルファス透明導電性薄膜は、結晶性の透明導電性薄膜に比べて、加工性に優れており、透明導電性フィルムとしての用途展開を広げることができる。」 「【0030】 本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図1の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材1の一方の面に透明導電性薄膜2が設けられた透明導電性積層体10と、透明プラスチックフィルム基材1の他方の面に粘着剤層3を介して設けられた、離型フィルム4とを含む。図2は、図1の粘着剤層付き透明導電性フィルムにおいて、透明プラスチックフィルム基材1の一方の面に、アンダーコート層5を介して透明導電性薄膜2が設けられている場合である。なお、図2ではアンダーコート層5が1層記載されているが、アンダーコート層5は複数層設けることができる。 ・・・略・・・ 【0033】 前記透明プラスチックフィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。当該プラスチックフィルムは、通常、1層のフィルムにより形成されている。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂である。 ・・・略・・・ 【0035】 前記透明プラスチックフィルム基材1の厚みは、10~40μmであることが好ましく、20~30μmであることがより好ましい。透明プラスチックフィルム基材1の厚みが10μm未満であると、透明プラスチックフィルム基材1の機械的強度が不足し、この透明プラスチックフィルム基材1をロール状にして、透明導電性薄膜2を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが40μmを超えると、透明導電性薄膜2の製膜加工において透明プラスチックフィルム基材1の投入量を低減させ、またガスや水分の除去工程に弊害を生じ、生産性を損なうおそれがある。また、透明導電性積層体10の薄型化が困難となる。 ・・・略・・・ 【0037】 前記透明導電性薄膜2の構成材料としては特に限定されず、例えば酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどの酸化物が好ましく用いられる。また、透明導電性薄膜2は、アモルファス透明導電性薄膜である。前記材料により、透明導電性薄膜2を形成する場合には、前記材料中の酸化スズを制御する(所定量となるように含有させる)ことにより、透明導電性薄膜2をアモルファスにすることができる。」 「【0056】 前記離型フィルム4は、少なくともフィルム基材を有する。前記フィルム基材の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、紙等を用いることができる。これらのなかでも前記フィルム基材はポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、紙が好ましい。 ・・・略・・・ 【0061】 離型フィルム4の厚みは、前記フィルム基材または、剥離層、移行防止層を有する場合はフィルム基材にそれらの厚みを加えた合計厚みであり、50~100μmであるのが好ましく、60~85μmであるのがより好ましい。厚みを50μm以上とすることにより、粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造工程や、被着体へ貼り合わせる際に、作業性を向上させることができる。また、厚みを100μm以下とすることにより、離型フィルム4を剥がす前の粘着剤層付き透明導電性フィルムの巻回性が良好となる。なお、離型フィルムの厚みが、50μm未満では粘着剤層の変形(打痕)が多くなる傾向にある。一方、100μmより厚くても特に有利な効果はなく、粘着剤層付き透明導電性フィルムの加工性の点からは好ましくない。また、離型フィルム4のフィルム基材の厚みが厚くなると、価格が上がる上、厚手になるとロール巻き取り量も短くなり、経済性、生産性の点からも好ましくない。離型フィルム4は、最終的には廃棄するものなので、上記範囲、即ち粘着剤層付き透明導電性フィルムの加工性が良好な範囲で有効に用いられる。・・・略・・・ 【0064】 また、本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、100mm×100mmサイズで、140℃で1.5時間加熱した後のカールが25mm以下になるものが好ましく、10mm以下になるものがより好ましい。また、同条件で加熱後の熱収縮率がMD、TD共に、1.5%以内であるものが好ましい。カールは、加熱処理後の粘着剤層付き透明導電性フィルムを、平板上に凹状になるようにして23℃の条件下にて3時間放置した後における、粘着剤層付き透明導電性フィルムの4頂点のそれぞれと平板との距離の平均値である。前記のように本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムは、加熱後のカールが小さく、加工性の良好なものを得ることができる。このようにカールの小さい粘着剤層付き透明導電性フィルムは、例えば、離型フィルムのフィルム基材の材料と、透明プラスチックフィルム基材の材料が、同種材料になるように選択することにより得ることができる。」 「【0071】 実施例1 (アンダーコート層の形成) 透明プラスチックフィルム基材として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)の一方の面に、移行防止層(ウレタンアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成,厚さ1μm)を設けてなるものを用いた。なお、用いたPETフィルムは、MD方向の熱収縮率が0.5%であった。当該フィルム基材の他方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂により、厚さが180nmの第一層目のアンダーコート層を形成した。次いで、第一層目のアンダーコート層上に、SiO2を、電子ビーム加熱法により1.33×10-2~2.67×10-2Paの真空度で真空蒸着して、厚さ40nmの第二層目のアンダーコート層(SiO2膜)を形成した。 【0072】 (透明導電性薄膜の形成) 次に、第二層目のアンダーコート層上に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる5.33×10-2Paの雰囲気中で、酸化インジウム95重量%、酸化スズ5重量%を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ20nmのITO膜を形成して、透明導電性積層体を得た。上記ITO膜は、アモルファスであった。なお、得られた透明導電性積層体の一部をサンプリングし、MD方向の熱収縮率を測定したところ、0.5%であった。また、透明導電性積層体の厚み(総厚み)は、26.24μmであった。 【0073】 (粘着剤層付き透明導電性フィルムの作製) 離型フィルムとして、厚さ75μmのPETフィルムの片面に、移行防止層(ウレタンアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成,厚さ1μm)、次いで、シリコーン系剥離層(厚さ1μm)を設けてなるもの(総厚み:77μm)を用いた。なお、用いたPETフィルムは、MD方向の熱収縮率が0.4%であった。また、離型フィルムの曲げ弾性率は、3000MPaであった。また、離型フィルムの一部をサンプリングし、MD方向の熱収縮率を測定したところ、0.4%であった。そして、前記剥離層上に、厚さ25μm、弾性係数10N/cm2の透明なアクリル系の粘着剤層を形成した。粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100重量部に、イソシアネート系架橋剤を1重量部配合してなるものを用いた。上記粘着剤層側に、上記透明導電性積層体の透明導電性薄膜を形成していない側の面を貼り合せて、粘着剤層付き透明導電性フィルムを作製した。この粘着剤層付き透明導電性フィルムは、140℃で1.5時間加熱した後のカールが4頂点平均で5mmであった。また透明導電性薄膜の表面抵抗値は、300Ω/□であった。さらに離型フィルムを剥離し、ガラス板に粘着剤層を介して貼り合わせた状態における全光線透過率を測定したところ、89.0%であった。」 b 甲2発明 甲2の実施例1の粘着剤層付き透明導電性フィルムに着目すると、甲2には、以下の発明が記載されている。 「厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に、移行防止層(ウレタンアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成,厚さ1μm)を設けてなる透明プラスチックフィルム基材と、その他方の面にメラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂により形成された、厚さが180nmの第一層目のアンダーコート層、その上に形成された、厚さ40nmの第二層目のアンダーコート層(SiO2膜)、その上に形成された厚さ20nmのITO膜のアモルファス透明導電性積層体と、離型フィルムとして、厚さ75μmのPETフィルムの片面に、移行防止層(ウレタンアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成,厚さ1μm)、次いで、シリコーン系剥離層(厚さ1μm)を設けてなるもの(総厚み:77μm)を用い、前記剥離層上に、厚さ25μm、弾性係数10N/cm2の透明なアクリル系の粘着剤層を形成し、上記粘着剤層側に、上記透明導電性積層体の透明導電性薄膜を形成していない側の面を貼り合せて作成された、粘着剤層付き透明導電性フィルム」(以下、「甲2物発明」という。) また、甲2には、「甲2物発明」の製造方法について以下の発明が記載されている。 「甲2物発明の製造方法において、透明プラスチックフィルム基材として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)の一方の面に、移行防止層(ウレタンアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成,厚さ1μm)を設けてなるものを用い、当該フィルム基材の他方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂により、厚さが180nmの第一層目のアンダーコート層を形成し、次いで、第一層目のアンダーコート層上に、SiO2を、電子ビーム加熱法により1.33×10-2~2.67×10-2Paの真空度で真空蒸着して、厚さ40nmの第二層目のアンダーコート層(SiO2膜)を形成し、次に、第二層目のアンダーコート層上に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる5.33×10-2Paの雰囲気中で、酸化インジウム95重量%、酸化スズ5重量%を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ20nmのITO膜を形成して、アモルファス透明導電性積層体を得、離型フィルムとして、厚さ75μmのPETフィルムの片面に、移行防止層(ウレタンアクリル系紫外線硬化性樹脂により形成,厚さ1μm)、次いで、シリコーン系剥離層(厚さ1μm)を設けてなるもの(総厚み:77μm)を用い、前記剥離層上に、厚さ25μm、弾性係数10N/cm2の透明なアクリル系の粘着剤層を形成し、上記粘着剤層側に、上記透明導電性積層体の透明導電性薄膜を形成していない側の面を貼り合せて、粘着剤層付き透明導電性フィルムを作製した、甲2物発明の製造方法。」(以下、「甲2製造方法発明」という。) さらに、甲2の【請求項12】、段落【0005】の記載より、甲2には、以下の「甲2物発明」の加工方法の発明が記載されている。 「甲2発明である粘着剤層付き透明導電性フィルムのアモルファス透明導電性薄膜は、結晶化加工処理がなされた後において、粘着剤層から離型フィルムを剥離して、他の基材に貼り合せる、甲2発明の加工方法」(以下、「甲2加工方法発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2物発明を対比する。 甲2物発明の「透明プラスチックフィルム基材」、「ITO膜」、「透明導電性積層体」は、各々、本件特許発明1の「透明樹脂フィルム」、「透明導電層」、「透明導電フィルム」に相当する。また、甲2物発明の「PETフィルム」、「アクリル系の粘着剤層」、「離型フィルム」は、各々、本件特許発明1の「分子骨格に芳香環を有するポリエステルから」なる「保護フィルム」、「粘着剤層」、「キャリアフィルム」に相当する。また、甲2物発明の「粘着剤層付き透明導電性フィルム」は、本件特許発明1の「透明導電フィルム積層体」に相当する。そして、甲2物発明の「離型フィルム」の「PETフィルム」の厚みT2は75μmであり、「透明プラスチックフィルム基材」の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」の厚みT1は25μmであることから、厚みT2が厚みT1の3倍となっている。 そうすると、両者は 「キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの一方の主面に透明導電層が積層されて構成され、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は25μmであり、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が75μmである透明導電フィルム積層体。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1-1> 前記保護フィルムの厚みT2について、本件特許発明1が「前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上」と特定されているのに対し、甲2物発明は厚みT1の3倍となっている点 <相違点2-1-2> 透明樹脂フィルムについて、本件特許発明1が「非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり」と特定されているのに対し、甲2物発明は「ポリエチレンテレフタレートフィルム」である点 <相違点2-1-3> 透明導電層について、本件特許発明1が「金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む」と特定しているのに対し、甲2物発明は「ITO膜」である点 <相違点2-1-4> 本件特許発明1が「最外層となる」「オーバーコート層」を備えているのに対し、甲2物発明はそのような特定がされていない点 そこで、上記相違点について検討する。 <相違点2-1-1>を検討する。 甲2の段落【0061】に、「離型フィルム4の厚みは、前記フィルム基材または、剥離層、移行防止層を有する場合はフィルム基材にそれらの厚みを加えた合計厚みであり、50~100μmであるのが好ましく、60~85μmであるのがより好ましい。厚みを50μm以上とすることにより、粘着剤層付き透明導電性フィルムの製造工程や、被着体へ貼り合わせる際に、作業性を向上させることができる。」と記載されている。 甲2透明樹脂フィルムの厚みT1は25μmであるところ、T2が100μmの場合、厚みT2は厚みT1の4倍にしかならない。 また、甲2、さらには特許異議申立書に添付された他の証拠にも、「前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5.4倍以上」とする関係性について記載も示唆もされていないことから、甲2物発明において、T2/T1が3倍であるものを5.4倍以上とする動機付けはない。 そして、本件特許発明1は、当該相違点に係る発明特定事項を備えることにより、「透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後も透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体を提供する事ができる。」(段落【0022】)という効果を奏するものである。 よって、甲2物発明おいて、当該相違点に係る発明特定事項を導き出すことは当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記(ア)で示したのと同様、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (ウ)本件特許発明6について 本件特許発明6は、請求項1を引用するものである。 また、甲2加工方法発明も甲2物発明を引用するものである。 そこで、上記(ア)での対比を踏まえて、本件特許発明6と甲2加工方法発明を対比すると、両者は少なくとも、上記(ア)で示した<相違点2-1-1>ないし<相違点2-1-4>で相違する。 しかしながら、上記(ア)で示したように、<相違点2-1-1>に係る発明特定事項を当業者が容易に想到し得たものではい。 よって、本件特許発明6は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2に記載された発明であるとはいえないし、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (エ)本件特許発明7について 本件特許発明7は、請求項6を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明6の発明特定事項を全て有するものであるから、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (オ)本件特許発明8について 甲2製造方法発明は、甲2物発明を引用するものである。 そこで、上記(ア)での対比を踏まえて、本件特許発明8と甲2製造方法発明を対比すると、両者は 「キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの一方の主面に透明導電層が積層されて構成され、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は25μmであり、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が75μmである透明導電フィルム積層体の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-8-1> 前記保護フィルムの厚みT2について、本件特許発明8が「前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上」と特定されているのに対し、甲2製造方法発明は厚みT1の3倍となっている点 <相違点2-8-2> 透明樹脂フィルムについて、本件特許発明8が「非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり」と特定されているのに対し、甲2製造方法発明は「ポリエチレンテレフタレートフィルム」である点 <相違点2-8-3> 透明導電層について、本件特許発明8が「金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む」と特定しているのに対し、甲2製造方法発明は「ITO膜」である点 <相違点2-8-4> 本件特許発明8が「最外層となる」「オーバーコート層」を備えているのに対し、甲2製造方法発明はそのような特定がされていない点 <相違点2-8-5> 透明導電層の積層箇所について、本件特許発明8が「透明樹脂フィルムの両方の主面に」と特定しているのに対し、甲2製造方法発明は「透明樹脂フィルムの一方の主面に」である点 <相違点2-8-6> 製造方法について、本件特許発明8が「前記透明樹脂フィルムに粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記キャリアフィルムが積層されている側とは反対側の主面上に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 前記オーバーコート層に粘着剤層を介して前記キャリアフィルムを剥離可能に積層する工程と、 前記透明樹脂フィルムに積層されたキャリアフィルムを剥離する工程と、 前記透明樹脂フィルムの、前記透明導電層が積層された主面とは反対側の主面に前記透明導電層と前記オーバーコート層とを順次形成する工程と、 を備える」と特定しているのに対し、甲2製造方法発明は上記一連の工程の特定がされていない点 そこで、上記相違点について検討する。 <相違点2-8-1>を検討する。 甲2、さらには特許異議申立書に添付された他の証拠にも、「前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上」とする関係性について記載も示唆もされていないことから、甲2製造方法発明において、T2/T1が3倍であるものを5倍以上とする動機付けはない。 そして、本件特許発明8は、当該相違点に係る発明特定事項を備えることにより、「透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後も透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体を提供する事ができる。」(段落【0022】)という効果を奏するものである。 よって、甲2製造方法発明おいて、当該相違点に係る発明特定事項を導き出すことは当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、本件特許発明8は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 異議申立人の主張について 異議申立人は、令和4年3月1日付けの意見書の第8ページにおいて、「甲2には、透明プラスチックフィルム基材1の厚みが10~40μmである こと(段落35、71)、及び離型フイルム4の厚みが50~100μmであること(段落61)が記載されており、透明プラスチックフイルム基材1の厚みが10μm、離型フィルム4の厚みが54μmの場合に、離型フィルム4の厚みが透明プラスチックフィルム基材の厚みの5.4倍に該当し、訂正発明1は、依然として甲2に記載された発明であり、又は甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえた発明である。」と主張している。 たしかに甲2には、各基材フィルム、離型フィルムが上記各厚みを取り得ることについて記載されてはいる。しかしながら、甲2及び特許異議申立書に添付された他の証拠のいずれにも、基材フィルムの厚みと粘着層付きフィルムの厚みとの関係性については一切触れられておらず、特に「前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍、あるいは5.4倍以上」とすること、及び当該関係性をとることにより「透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後も透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体を提供する事ができる。」という効果を奏することについて記載も示唆もされていないのであるから、本件特許発明1ないし8は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。 エ 取消理由3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、取消理由3によっては取り消すことはできない。 (3)申立理由5(サポート要件) ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。 ウ 発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 透明導電フィルムの基材フィルムとしてシクロオレフィン系樹脂フィルムを用い、保護フィルムとしてPETフィルムを用いた場合、両者の熱収縮率や線膨張係数等の違いから、加熱工程中や加熱・放冷後に透明導電フィルム積層体にカール(反り)が発生し易い。その結果、透明導電フィルム積層体を加工搬送する際に、反った透明導電フィルム積層体が乾燥炉の上部または下部に接触するなどの不具合が発生し、安定かつ連続して生産を行うことが困難となる。 【0009】 また、透明導電フィルム積層体を用いてタッチパネルを作製する工程では、銀ペースト等により配線部分をスクリーン印刷等で印刷し、印刷された銀ペーストを乾燥及び/または熱硬化するために加熱する工程がある。この加熱中に透明導電フィルム積層体にカール(反り)が発生すると、銀ペーストが均一に乾燥及び/または熱硬化できないという課題や、パターン精度が不安定になるという課題が発生し、タッチパネル製造の歩留まりが悪化する。 【0010】 また、加熱後もカール(反り)が有ると、カバーガラスや他の電極フィルムへの貼り合わせの位置ずれが発生し、タッチパネルの製造が困難となる。 【0011】 また、透明導電フィルムの基材フィルムとして25μm以下のシクロオレフィン系樹脂フィルムを用い、保護フィルムとしてシクロオレフィン系樹脂フィルムを用いる場合、ある程度の厚い保護フィルムでないと貼り合わせ等のハンドリングが難しく、非常に高額な透明導電性フィルム積層体となるという課題がある。 【0012】 前記特許文献1、特許文献2のいずれにおいても、課題として提示されているのは、加熱して放冷した後に残留しているカールであり、加熱中に生じるカールの抑制については言及されていない。 【0013】 本発明の目的は、透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後の透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体及びその加工方法を提供する事にある。 【課題を解決するための手段】 【0014】 本発明は以下の実施態様を含む。 【0015】 [1]キャリアフィルムと、前記キャリアフィルムに積層された透明導電フィルムと、を含む透明導電フィルム積層体であって、前記キャリアフィルムは、保護フィルムと、その一方の主面に粘着剤層を備えており、前記透明導電フィルムは、透明樹脂フィルムの一方又は両方の主面に金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序に積層されて構成され、前記透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであり、前記透明導電フィルム積層体は、前記オーバーコート層が最外層となるように、前記透明導電フィルムが前記キャリアフィルムの粘着剤層に剥離可能に積層されており、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上かつ150μm以下であることを特徴とする透明導電フィルム積層体。 【0016】 [2]前記金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序で、前記透明樹脂フィルムの一方の主面に積層されている、請求項1に記載の透明導電フィルム積層体。 【0017】 [3]前記金属ナノワイヤ及びバインダー樹脂を含む透明導電層と、オーバーコート層と、がこの順序で、前記透明樹脂フィルムの両方の主面にそれぞれ積層されている、請求項1に記載の透明導電フィルム積層体。 【0018】 [4]前記保護フィルムが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる[1]~[3]のいずれかに記載の透明導電性フィルム積層体。 【0019】 [5]前記透明導電層に含まれる金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである[1]~[4]のいずれかに記載の透明導電性フィルム積層体。 【0020】 [6][1]~[5]のいずれかに記載の透明導電フィルム積層体を加熱加工する工程と、前記透明導電フィルム積層体の透明導電フィルムとキャリアフィルムとを剥離する工程と、を含む透明導電フィルム積層体の加工方法。 【0021】 [7]前記加熱加工する工程は、オーバーコート層の上に導電ペーストにより形成した導電ペーストパターンを乾燥及び/または熱硬化し導電パターンを形成する工程である、[6]に記載の透明導電フィルム積層体の加工方法。 【発明の効果】 【0022】 本発明によれば、透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後も透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体及びその加工方法を提供する事ができる。」 「【0028】 <透明樹脂フィルム3> 透明樹脂フィルム3は、非晶性シクロオレフィン系樹脂により形成されており、高透明性及び低吸水性の特性を有する。透明樹脂フィルム3として非晶性シクロオレフィン系樹脂フィルムを採用することにより、良好な光学特性を有する透明導電フィルムを備えた透明導電フィルム積層体が得られる。 【0029】 非晶性シクロオレフィン系樹脂は、ノルボルネン等のシクロオレフィンを50モル%以上含有する(共)重合体であり、ノルボルネンの水素化開環メタセシス重合型シクロオレフィンポリマー(ZEONOR(登録商標、日本ゼオン社製)、ZEONEX(登録商標、日本ゼオン社製)、ARTON(登録商標、JSR社製)等)やノルボルネン/エチレン付加共重合型シクロオレフィンポリマー(APEL(登録商標、三井化学社製)、TOPAS(登録商標、ポリプラスチックス社製))を用いることができる。 【0030】 具体的には、ZEONOR ZF-14、ZF-16、ARTON RX4500、RH4900、R5000が挙げられる。本明細書において「透明」とは、全光線透過率が70%以上であることを意味する。 【0031】 透明樹脂フィルム3には、表面に予めプラズマ処理、コロナ処理などの処理を施して、透明樹脂フィルム3上に形成される透明導電層4等の密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電層4を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、透明樹脂フィルム3の表面を除塵、清浄化してもよい。 【0032】 透明樹脂フィルム3の厚みT1は、5~25μmの範囲内であり、10~23μmの範囲内であることが好ましく、13~23μmの範囲内であることがより好ましい。透明樹脂フィルム3の厚みが上記範囲の上限値を超えると、折り曲げの際にクラック等が発生しやすい。一方、厚みが上記範囲の下限値未満であると、平滑性と均一な厚みのフィルム作製が困難である。 【0033】 上記透明樹脂フィルム3の非晶性シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、130~170℃の範囲内が好ましい。これにより、乾燥等の加熱工程後におけるカールの発生量や向きが制御できるため、透明導電フィルム積層体の加工搬送が容易となる。」 「【0046】 <オーバーコート層5> 透明導電層4を保護するオーバーコート層5は、硬化性樹脂組成物の硬化膜であることが好ましい。硬化性樹脂組成物としては、(A)カルボキシ基を含有するポリウレタンと、(B)エポキシ化合物と、(C)硬化促進剤と、(D)溶媒と、を含むものが好ましい。硬化性樹脂組成物を上記透明導電層4上に印刷、塗布等により形成し、硬化させてオーバーコート層5を形成する。硬化性樹脂組成物の硬化は、熱硬化性樹脂組成物を加熱・乾燥させることにより行うことができる。 【0047】 上記(A)カルボキシ基を含有するポリウレタンは、その重量平均分子量が1,000~100,000であることが好ましく、2,000~70,000であることがより好ましく、3,000~50,000であると更に好ましい。ここで、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと表記)で測定したポリスチレン換算の値である。分子量が1,000未満では、印刷後の塗膜の伸度、可撓性、並びに強度を損なうことがあり、100,000を超えると溶媒へのポリウレタンの溶解性が低くなる上に、溶解しても粘度が高くなりすぎるために、使用面で制約が大きくなることがある。 【0048】 本明細書においては、特に断りのない限り、GPCの測定条件は以下のとおりである。 装置名:日本分光株式会社製HPLCユニット HSS-2000 カラム:ShodexカラムLF-804 移動相:テトラヒドロフラン 流速 :1.0mL/min 検出器:日本分光株式会社製 RI-2031Plus 温度 :40.0℃ 試料量:サンプルル-プ 100μL 試料濃度:約0.1質量%に調製 【0049】 (A)カルボキシ基を含有するポリウレタンの酸価は10~140mg-KOH/gであることが好ましく、15~130mg-KOH/gであると更に好ましい。酸価が10mg-KOH/g以上であれば、硬化性、耐溶剤性とも良好である。140mg-KOH/g以下であるとポリウレタンとしての溶媒への溶解性が良好であり、所望の粘度に調整し易い。また、硬化物が硬くなりすぎることによる基材フィルムの反り等の問題を起こし難くなる。 【0050】 また、本明細書において、樹脂の酸価は以下の方法により測定した値である。 100ml三角フラスコに試料約0.2gを精密天秤にて精秤し、これにエタノール/トルエン=1/2(質量比)の混合溶媒10mlを加えて溶解する。更に、この容器に指示薬としてフェノールフタレインエタノール溶液を1~3滴添加し、試料が均一になるまで十分に攪拌する。これを、0.1N水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果から下記の計算式を用いて得た値を、樹脂の酸価とする。 酸価(mg-KOH/g)=〔B×f×5.611〕/S B:0.1N水酸化カリウム-エタノール溶液の使用量(mL) f:0.1N水酸化カリウム-エタノール溶液のファクター S:試料の採取量(g)」 「【0107】 <キャリアフィルム10> キャリアフィルム10は、一方の主面に粘着剤層2を有する保護フィルム1である。このキャリアフィルム10は、上記粘着剤層2を介して剥離可能に積層された透明導電フィルム20または30とともに透明導電フィルム積層体を形成する。キャリアフィルム10を透明導電フィルム積層体から剥離する際は、粘着剤は保護フィルム1とともに剥離されてもよいし、保護フィルム1のみが剥離されてもよい。 【0108】 <保護フィルム1> 保護フィルム1には、分子骨格に芳香環を有するポリエステル(以下、「芳香族ポリエステル」と記載)からなるフィルムが用いられる。本発明で用いられる芳香族ポリエステルは、結晶性を有するものであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂が挙げられる。本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂単独であってもよいし、結晶性を有する範囲で、ポリエチレンテレフタレート(PET)以外の他の成分を含んでもよい。例えば、エチレンイソフタレートユニットがエチレンテレフタレートユニットと共重合された共重合体であってもよく、そのガラス転移温度は50~90℃であることが好ましく、60~80℃であることがより好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)にポリエチレンイソフタレート(PEI)等を均一混合したものであってもよい。ポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステルフィルムは通常ニ軸延伸されているため、非晶性の樹脂フィルムに比べて寸法安定性が良好である。保護フィルム1の厚みT2は、透明樹脂フィルム3の厚みT1の5倍以上、すなわち、T2/T1≧5であり、好ましくはT2/T1≧7であり、さらに好ましくはT2/T1≧8である。かつ、T2は150μm以下であり、140μm以下であることが好ましく、130μm以下であることがより好ましい。また、100μm以上であることが好ましく、110μm以上であることがより好ましく、120μm以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、透明導電フィルム積層体が加熱された際に発生するカール、あるいは加熱後冷却された透明導電フィルム積層体のカールを、低レベルに抑制することができ、透明導電フィルム積層体の製造時および透明導電フィルム積層体を用いた後工程での製造上の不具合が発生することがない。また、長尺の透明導電フィルム積層体を製造後ロールへの巻取りをする際の不具合が発生することもない。」 「【実施例】 【0126】 以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。 【0127】 実施例1 <透明樹脂フィルム3の一方の主面に透明導電層4を有する透明導電フィルム20の作製> <銀ナノワイヤの作製> ポリ-N-ビニルピロリドンK-90(株式会社日本触媒製)(0.98g)、AgNO3(1.04g)及びFeCl3(0.8mg)を、エチレングリコール(250ml)に溶解し、150℃で1時間加熱反応した。得られた銀ナノワイヤ粗分散液をメタノール2000mlに分散させ、卓上小型試験機(日本ガイシ株式会社製、セラミック膜フィルター セフィルト使用、膜面積0.24m2、孔径2.0μm、寸法Φ30mm×250mm、ろ過差圧0.01MPa)に流し入れ、循環流速12L/min、分散液温度25℃にてクロスフロー濾過を実施し不純物を除去した後、全体量が100gになるまで濃縮し、銀ナノワイヤ(平均直径:26nm、平均長さ:20μm)のメタノール分散液を得た。得られた銀ナノワイヤの平均径の算出には、電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000F(日本電子株式会社製)を用い、任意に選択した100本の銀ナノワイヤの直径を測定し、その算術平均値を求めた。また、得られた銀ナノワイヤの平均長の算出には、形状測定レーザマイクロスコープVK-X200(キーエンス株式会社製)を用い、任意に選択した100本の銀ナノワイヤの長さを測定し、その算術平均値を求めた。また、上記メタノール、エチレングリコール、AgNO3、FeCl3は富士フイルム和光純薬株式会社製試薬を用いた。 【0128】 <銀ナノワイヤインクの作製> 上記ポリオール法で合成した銀ナノワイヤのメタノール分散液11g(銀ナノワイヤ濃度0.62質量%)、水3.5g、エタノール10.8g(富士フイルム和光純薬株式会社製)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、富士フイルム和光純薬株式会社製)12.8g、プロピレングリコール1.2g(PG、旭硝子株式会社製)、PNVA(登録商標)水溶液(昭和電工株式会社製、固形分濃度10質量%、重量平均分子量90万)0.7gを混合し、ミックスローターVMR-5R(アズワン株式会社製)で1時間、室温、大気雰囲気下で撹拌(回転速度100rpm)して導電性インクとしての銀ナノワイヤインク40gを作製した。 【0129】 得られた銀ナノワイヤインクの銀濃度は、バリアン社製AA280Zゼーマン原子吸光分光光度計により測定した。その結果0.17質量%であった。 【0130】 <透明導電層(銀ナノワイヤ層)4の形成> プラズマ処理装置(積水化学工業株式会社製AP-T03)を用いてプラズマ処理(使用ガス:窒素、搬送速度:50mm/sec、処理時間:6sec、設定電圧:400V)した、透明樹脂フィルム3としてのA4サイズのシクロオレフィンポリマーフィルムZF14-013(ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度136℃[カタログ値]、厚みT1が13μm)上に、TQC自動フィルムアプリケータースタンダード(コーテック株式会社製)とワイヤレスバーOSP-CN-22L(コーテック株式会社製、バー形状/P(溝のピッチ):500μm、H(溝の深さ):42m、材質:SUS304)とを用いて銀ナノワイヤインクを全面に塗布した(塗工速度500mm/sec)。その後、恒温器HISPEC HS350(楠本化成株式会社製)で80℃、1分間、大気雰囲気下で熱風乾燥し、透明導電層4としての厚み90nmの透明導電層(銀ナノワイヤ層)4を形成した。 【0131】 <オーバーコート樹脂の作製> 攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた2L三口フラスコに、ポリオール化合物としてC-1015N(株式会社クラレ製、ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9-ノナンジオール:2-メチル-1,8-オクタンジオール=15:85、分子量964)42.32g、カルボキシ基を含有するジヒドロキシル化合物として2,2-ジメチロールブタン酸(湖州長盛化工製)27.32g、および溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(株式会社ダイセル製)158gを仕込み、90℃で前記2,2-ジメチロールブタン酸を溶解させた。 【0132】 反応液の温度を70℃まで下げ、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてデスモジュール(登録商標)-W(ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン)、住化コベストロウレタン株式会社製)59.69gを30分かけて滴下した。滴下終了後、120℃に昇温し、120℃で6時間反応を行い、イソシアナト基が殆ど消失したことをIRによって確認した後、イソブタノールを0.5g加え、更に120℃にて6時間反応を行った。得られたカルボキシ基含有ポリウレタン(オーバーコート樹脂)のGPCにより求められた重量平均分子量は32300、その樹脂溶液の酸価は35.8mgKOH/gであった。 【0133】 <オーバーコートインクの作製> 上記得られた(A)カルボキシ基含有ポリウレタンの溶液(カルボキシ基含有ポリウレタン含有率:45質量%)10.0gをポリ容器に量り取り、(D)溶媒として1-ヘキサノール85.3gと酢酸エチル85.2gを加え、ミックスローターVMR-5R(アズワン株式会社製)で12時間、室温、大気雰囲気下で撹拌(回転速度100rpm)した。均一であることを目視で確認したのち、(B)エポキシ化合物としてペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(昭和電工株式会社製)0.63g、(C)硬化促進剤として、U-CAT5003(サンアプロ株式会社製)0.31gを加え、再度ミックスローターを用いて1時間撹拌し、オーバーコートインクを得た。オーバーコートインクの固形分中の芳香環含有化合物である硬化促進剤の割合は5.7質量%である。 【0134】 <オーバーコート層5の形成> 透明樹脂フィルム3上に形成した透明導電層(銀ナノワイヤ層)4の上に、TQC自動フィルムアプリケータースタンダード(コーテック株式会社製)により、以下のようにオーバーコートインクを塗布した(塗工速度500mm/sec)。ワイヤレスバーOSP-CN-05Mを用いてウェット膜厚が5μmになるように塗布した。その後、恒温器HISPEC HS350(楠本化成株式会社製)で80℃、1分間、大気雰囲気下で熱風乾燥及び熱硬化し、オーバーコート層5(90nm)を形成した。 【0135】 <キャリアフィルム10の形成> 通常の溶液重合により、ブチルアクリレート/アクリル酸=100/6(質量比)にて重量平均分子量60万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー100質量部に対し、エポキシ系架橋剤6質量部を加えてアクリル系粘着剤を準備した。離型処理されたPETフィルムの離型処理面上に上記アクリル系粘着剤を塗布し、120℃、60秒で加熱して、厚み20μmの粘着剤層2を形成した。次いで、厚みT2が125μmのPETフィルム(保護フィルム1)の片面に離型処理されたPETフィルムを粘着剤層2を介して貼りあわせた。その後、離型処理されたPETフィルムを剥がし、保護フィルム1の一方の面に粘着剤層2を有するキャリアフィルム10を作製した。なお、保護フィルム1として使用したPETフィルムをJIS K7121 プラスチックの転移温度測定方法に準拠して示差走査熱量測定装置DSC1(メトラー・トレド社製)を用いて示差走査熱量測定(DSC)した結果194℃に結晶化に伴うピークを有すること、ガラス転移温度(挿外ガラス転移開始温度)が72℃であることを確認した。 【0136】 <透明樹脂フィルム3の一方の主面に透明導電層4を有する透明導電フィルム積層体の形成> 前記オーバーコート層5形成済みの透明導電フィルム20を構成する透明樹脂フィルム3の透明導電層(銀ナノワイヤ層)4が形成されていない側の面に、キャリアフィルム10を粘着剤層2を介して圧着、積層し、透明導電フィルム積層体を形成した。 【0137】 実施例2 透明導電フィルム20の作製に、透明樹脂フィルム3としてシクロオレフィンポリマーフィルムRX4500(ARTON(登録商標)、JSR株式会社製、ガラス転移温度132℃[カタログ値]、厚みT1が15μm)を用いた以外は実施例1と同条件で検討した。その結果を表1に示す。 【0138】 実施例3 透明導電フィルム20の作製に、透明樹脂フィルム3としてシクロオレフィンポリマーフィルムZF14-023(ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度136℃[カタログ値]、厚みT1が23μm)を用いた以外は実施例1と同条件で検討した。その結果を表1に示す。 【0139】 実施例4 <透明樹脂フィルム3の両方の主面に透明導電層4を有する透明導電フィルム積層体の作製> シクロオレフィンポリマーフィルムZF14-013の一方の主面(第一面)に、実施例1と同条件で透明導電層(銀ナノワイヤ層)4とオーバーコート層5を作製した。続いて、透明導電層4が形成されていないもう一方の主面(第二面)に、実施例1と同条件で透明導電層(銀ナノワイヤ層)4とオーバーコート層5を形成し、透明樹脂フィルム3の両方の主面に透明導電層(銀ナノワイヤ層)4を有する透明導電フィルム30を得た。この透明導電フィルム30の第一面のオーバーコート層5に、キャリアフィルム10を、粘着層2を介して圧着、積層し、透明導電フィルム積層体を形成した。その結果を表1に示す。 【0140】 比較例1 キャリアフィルム10の作製に、保護フィルム1として厚みT2が50μmのPETフィルムを用いた以外は実施例1と同条件で検討した。その結果を表1に示す。 【0141】 比較例2 キャリアフィルム10の作製に、保護フィルム1として厚みT2が50μmのPETフィルムを用いた以外は実施例2と同条件で検討した。その結果を表1に示す。 【0142】 比較例3 透明導電フィルム20の作製に、透明樹脂フィルム3としてシクロオレフィンポリマーフィルムZF14-050(ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度136℃[カタログ値]、厚みT1が50μm)を用いた以外は実施例1と同条件で検討した。その結果を表1に示す。 【0143】 比較例4 透明導電フィルム20の作製に、透明樹脂フィルム3としてシクロオレフィンポリマーフィルムZF14-100(ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン株式会社製、ガラス転移温度136℃[カタログ値]、厚みT1が100μm)を用いた以外は実施例1と同条件で検討した。その結果を表1に示す。 【0144】 比較例5 透明導電フィルム30の作製に、保護フィルム1として厚みT2が50μmのPETフィルムを用いた以外は実施例4と同条件で検討した。その結果を表1に示す。 【0145】 <評価> (1)厚みの測定 厚みは1μm以上の厚みを有するものに関してはマイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。また1μm未満の金属ナノワイヤを含む透明導電層4およびオーバーコート層5の厚みは光干渉法に基づく膜厚測定システムF20-UV(フィルメトリクス株式会社製)を用いて測定した。 【0146】 (2)カール値の測定 実施例及び比較例で得られたA4サイズの透明導電フィルム積層体を長手方向の略中央で裁断して15cm(元のA4サイズの長手方向)×21cm(A4サイズの短手方向)のA5サイズの試験片を作製した。この試験片を、前面扉にガラス窓のついた乾燥機VO-420(Advantec製)に入れ、オーバーコート層5(実施例4と比較例5においては保護フィルム1を積層していないほうのオーバーコート層5を意味する)が上になる状態で100℃、30分加熱した。 【0147】 加熱途中、ガラス窓から透明導電フィルム積層体の凹凸形状を観察した。加熱終了後、オーバーコート層5(実施例4と比較例5においては保護フィルム1を積層していないほうのオーバーコート層5を意味する)が上になる状態で水平な面上に試験片を置き、素早くカール値を定規で計測した。これを加熱中のカール値とした。さらに室温で30分放冷し、カール値を定規で計測した。これを放冷後のカール値とした。 【0148】 図7(a)、(b)には、カール値の測定方法の説明図が示される。図7(a)が、透明導電フィルム積層体が凸にカールする場合であり、図7(b)が、透明導電フィルム積層体が凹にカールする場合である。いずれの場合にも、透明導電フィルム積層体を置いた水平面Hsから最も高い透明導電フィルム積層体の点の高さhmaxを測定し、カール値とした。 【0149】 その結果を表1に示す。表中「フラット」とはカール値が5mm以下であることを意味し、「凸」または「凹」はカール値が5mm超であることを意味する。また、「凸」は透明導電フィルム積層体の中央部が端部に対してオーバーコート層5側(実施例4と比較例5においては保護フィルム1を積層していないほうのオーバーコート層5を意味する)に突出した状態であり、「凹」は透明導電フィルム積層体の中央部が端部に対して保護フィルム1側に突出した状態である。 【0150】 【表1】 [図:0001389367000007.jpg] 【0151】 実施例1~2の透明導電フィルム積層体では加熱中に生じるカール値および放冷後のカール値がともに5mmより小さく(評価◎)、また、実施例3では、加熱中のカール値は20mmであったが、放冷後は5mmより小さく(1mm未満)となった(評価○)。従って、実施例1~3のいずれの場合も、ロール搬送や後工程に障害とならない程度まで変形を抑制することができた。透明導電層4を透明樹脂フィルム3の両面に有する透明導電フィルム30を用いた実施例4でも、加熱中に生じるカール値および放冷後のカール値がともに10mmと小さく(評価○)、ロール搬送や後工程の障害とならない程度まで変形を抑制することができた。 【0152】 一方、比較例1~4の透明導電フィルム積層体では加熱中に30mm以上の凸方向のカールが発生し、ロール搬送や後工程が不可能なほどの変形が生じた(評価×)。さらに、比較例3、4では、放冷後も15mm(比較例3)、20mm(比較例4)と大きな凹方向のカールが残存した(評価×)。透明導電層4を透明樹脂フィルム3の両面に有する透明導電フィルム30を用いた比較例5では、放冷後のカール値が凹方向に50mm残存した(評価×)。表1中の評価の「◎」「〇」「×」の判断基準は、加熱中のカール値が5mm以下かつ放冷後のカール値が1mm以下を「◎」、加熱中のカール値が25mm以下かつ放冷後のカール値が10mm以下を「〇」、加熱中のカール値が25mm超および/または放冷後のカール値が10mm超の場合を「×」とした。」 エ サポート要件の判断 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0013】等によると、本件特許発明1ないし8の解決しようとする課題(以下、「本件特許発明の課題」という。)は、「透明導電フィルムの基材に薄膜のシクロオレフィン系樹脂を用いた場合において、加熱工程中及び加熱工程後の透明導電フィルム積層体のカールを抑制し、その後の工程歩留まりを確保可能な透明導電フィルム積層体及びその加工方法を提供する事」である。 同段落【0108】には、「保護フィルム1の厚みT2は、透明樹脂フィルム3の厚みT1の5倍以上、すなわち、T2/T1≧5であり、好ましくはT2/T1≧7であり、さらに好ましくはT2/T1≧8である。かつ、T2は150μm以下であり、140μm以下であることが好ましく、130μm以下であることがより好ましい。また、100μm以上であることが好ましく、110μm以上であることがより好ましく、120μm以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、透明導電フィルム積層体が加熱された際に発生するカール、あるいは加熱後冷却された透明導電フィルム積層体のカールを、低レベルに抑制することができ、透明導電フィルム積層体の製造時および透明導電フィルム積層体を用いた後工程での製造上の不具合が発生することがない。また、長尺の透明導電フィルム積層体を製造後ロールへの巻取りをする際の不具合が発生することもない。」と記載されている。 そして、【実施例】においては、透明樹脂フィルムの厚みT1が23μm、保護フィルムの厚みT2が125μm、T2/T1が5.4である実施例3、T1が15μm、T2が125μm、T2/T1が8.3である実施例2、T1が13μm、T2が125μm、T2/T1が9.6である実施例1、4は、カール性の評価は◎か○となっているのに対し、T1が15μm、T2が50μm、T2/T1が3.3である比較例2、T1が13μm、T2が50μm、T2/T1が3.9である比較例1、5はカール性の評価は×となっている。 そうすると、当業者は、「透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであり、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上かつ150μm以下であること」により、本件特許発明1の課題を解決できると認識するものである。 そして、本件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものである。 したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし7についても同様である。 さらに、本件件特許発明8もまた、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものである。 よって、本件特許発明1ないし8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 1(5)アないしウの主張をしているので、以下検討する。 ア 主張アについて 上記(4)エで示したように、当業者は、「透明樹脂フィルムは、非晶性シクロオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂フィルムの厚みT1は5~25μmであり、前記保護フィルムは、分子骨格に芳香環を有するポリエステルからなり、前記保護フィルムの厚みT2が前記透明樹脂フィルムの厚みT1の5倍以上かつ150μm以下であること」により、本件発明の課題を解決できると認識するものである。 そして、透明導電フィルム積層体の加熱工程中及び加熱工程後に発生するカールは、透明導電フィルム積層体の各層の弾性率や熱線膨張係数等の特性が異なることを起因とする熱応力により発生することは当業者の技術常識であるところ、本件特許発明の透明樹脂フィルムは「非晶性シクロオレフィン系樹脂」からなり、保護フィルムは「分子骨格に芳香環を有するポリエステル」からなるものと特定されるため、各層の線膨張係数や弾性率の差は大凡一定となる。一方、各層の面積が同じであるから、各層の厚みの比がカール性に関係することが予測されるところ、実施例とその比較例によって、その予測が実証されている。 また、特許異議申立人は、「透明樹脂フィルムと保護フィルムの厚みがそれぞれ5μm、25μmの場合にカールが抑制できない」ことを具体的な証拠をもって立証するものではない。 よって、異議申立人の主張は首肯することができない。 イ 主張イについて 本件特許発明は、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度を特定していないが、シクロオレフィン系樹脂は、ガラス転移温度が130~170℃のものが一般的であるため、発明特定事項として、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が130~170℃であることを特定する必要はない。また、特許異議申立人は、「シクロオレフィン系樹脂として、ガラス転移温度が130~170℃」以外の場合に本件特許発明の課題が解決し得ないことを具体的な証拠をもって立証するものではない。 よって、異議申立人の主張は首肯することができない。 ウ 主張ウについて オーバーコート層について、本件特許明細書の段落【0046】に、「透明導電層4を保護するオーバーコート層5は、硬化性樹脂組成物の硬化膜であることが好ましい。硬化性樹脂組成物としては、(A)カルボキシ基を含有するポリウレタンと、(B)エポキシ化合物と、(C)硬化促進剤と、(D)溶媒と、を含むものが好ましい。」と記載され、その上で、段落【0049】に、「(A)カルボキシ基を含有するポリウレタンの酸価は10~140mg-KOH/gであることが好ましく、15~130mg-KOH/gであると更に好ましい。酸価が10mg-KOH/g以上であれば、硬化性、耐溶剤性とも良好である。140mg-KOH/g以下であるとポリウレタンとしての溶媒への溶解性が良好であり、所望の粘度に調整し易い。また、硬化物が硬くなりすぎることによる基材フィルムの反り等の問題を起こし難くなる。」と記載されている。すなわち、上記記載からすると、特段オーバーコート層が、「(A)カルボキシ基を含有するポリウレタン」を使用することが好ましいことが記載されているだけで、当該ポリウレタンを使用しないと、本件特許発明の課題が解決し得ないことを述べるものではない。 よって、異議申立人の主張は首肯することができない。 (6)申立理由5についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由5によっては取り消すことはできない。 第6 結語 上記第2のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、〔8〕について訂正することを認める。 上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700087

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