特許訂正審判
2021-390162
照明装置
- 審判番号
- 2021-390162
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2006-308259外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 4457100
- 請求日
- 2021年10月11日
- 審決日
- 2022年06月28日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 アイテックシステム
- 【請求人代理人】鮫島 正洋
- 【請求人代理人】杉尾 雄一
- 【請求人代理人】市橋 景子
- 【請求人代理人】柳 順一郎
- 分類
- P141 .121-Z (G01N) / P141 .856-Z (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第4457100号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第4457100号(以下「本件特許」という。)は、平成18年11月14日(優先権主張 平成18年1月30日)に出願された特願2006-308259号の請求項1ないし10に係る発明について、平成22年2月12日に特許権の設定登録がされた。
その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成24年6月26日 無効審判2012-800035号(以下「無効審判1」という。)における訂正請求
同年10月18日付け 無効審判1について、訂正を認め請求不成立とする審決
同年11月28日 同審決の確定
平成25年5月10日 無効審判2012-800105号(以下「無効審判2」という。)における訂正請求
同年7月23日付け 無効審判2について、訂正を認め請求成立とする審決
同年8月1日 同審決のうち、請求項3を削除する訂正を認める部分の確定
同月28日 同審決に対する審決取消訴訟の提起 平成25年(行ケ)第10242号(以下「取消訴訟1」という。)
平成26年7月17日 取消訴訟1について、審決取消とする判決言渡し
同年9月18日 同判決の確定
平成28年2月1日 無効審判2015-800004号(以下「無効審判3」という。)における訂正請求
平成29年9月5日 無効審判3について、訂正を認め請求成立とする審決
同年10月28日 同審決に対する審決取消訴訟の提起 平成29年(行ケ)第10186号(以下「取消訴訟2」という。)
平成30年6月11日 無効審判2及び無効審判3について、請求取下
同月22日 取消訴訟2について、訴え取下
令和3年10月11日 本件訂正審判の請求
同年11月17日 上申書の提出
同年12月13日付け 訂正拒絶理由通知
令和4年1月17日 訂正拒絶理由に対する意見書(以下「意見書」という。)の提出
同年2月25日 上申書(以下「上申書2」という。)の提出
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4457100号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5及び10について訂正することを認める、との審決を求めるというものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項5に、「前記受光レンズ部をロッドレンズにおける各LED側の面によって構成したことを特徴とする」と記載されているのを、「前記受光レンズ部をロッドレンズにおける各LED側の面によって構成し、前記拡散レンズは、前記撮像位置における光量のむらを低減するようにしたことを特徴とする」に訂正する(請求項5の記載を直接的に引用する請求項10も同様に訂正する)。
第4 訂正拒絶理由の概要
当審が令和3年12月13日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
本件訂正後の請求項5及び10に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項、及び本件特許の優先日前において周知な事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立特許要件を満たさない。
したがって、訂正事項は特許法第126条第7項の規定に適合しないから、本件訂正は認められない。
引用文献1:特開昭62-147587号公報
引用文献2:特開2000-280267号公報
周知例1:特開平7-193685号公報
周知例2:特開平7-248541号公報
周知例3:特開平1-144771号公報
第5 当審の判断
1 訂正の目的
訂正事項は、請求項5において、「前記拡散レンズは、前記撮像位置における光量のむらを低減するようにした」との限定を付加して特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
2 新規事項の有無について
(1)本件特許に係る出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付加した。
「【0005】
しかしながら、後者の照明装置では、光源として複数のLEDを使用しているので、集光位置において各LEDの並設方向に光量のむらを生じ、例えば他の部分より光量が少ない部分がラインセンサカメラによって欠陥として認識され、ラインセンサカメラによる欠陥の検知を正確に行うことができないという問題点があった。
・・・
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定方向に並設された複数の光源の光を無用に減衰させることなく所定の位置に線状に集光させることができ、しかも集光位置における光量のむらを低減することのできる照明装置を提供することにある。
・・・
【0009】
これにより、拡散レンズによってLEDの光が主に各LEDの並設方向に拡散することから、所定方向に並設された複数のLEDの光が無用に減衰することなく所定の位置に線状に集光するとともに、集光位置における光量のむらが低減する。また、集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、受光レンズ部は各LED側に凸面状に形成されるとともに各LEDの並設方向に延びるように形成されているので、例えば各LEDがX方向に並設されるとともに各LEDが下方に向かって光を照射するように設けられている場合は、各LEDにおける所定の照射角度範囲から照射された光が受光レンズ部においてX方向と直交するY方向の内側に向かって屈折するとともに、この屈折によって光が集光レンズ内を下方に向かって進み、集光レンズの下面を通過した光が集光位置に集光する。このため、各LEDの所定の照射角度範囲から照射された光はほとんど減衰することなく集光位置に照射される。また、拡散レンズが複数のレンズ部から形成され、各レンズ部が、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置されるとともに、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成されているので、光は拡散レンズの各レンズを通過する際に各LEDの並設方向と直交する方向にはほとんど拡散されず、主に各LEDの並設方向に拡散される。さらに、各レンズ部は互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成されているので、各LEDの並設方向への光の拡散が効果的に行われる。
・・・
【0047】
以上のように構成された照明装置において、各LED100によってロッドレンズ110に光を照射すると、照射された光はロッドレンズ110を通過して集光位置L2に集光される。この時、ロッドレンズ110の下側に拡散レンズ40が配置されているので、第1実施形態に示すように、ロッドレンズ110を通過した光は拡散レンズ40によって主にX方向に拡散されて無用にY方向に拡散されることがない。このため、X方向に並設された複数のLED100の光を無用に減衰させることなく集光位置L2に集光させることができ、集光位置L2における光量のむらを低減することができる。これにより、例えば連続的に成形されて長手方向に高速で移動する帯状部材の表面に各LED100の光を集光させるとともに、光の照射されている部分をラインセンサカメラで撮像することにより、帯状部材の欠陥を高速且つ確実に検知することができる。」
(2)本件明細書等の上記記載から、光源として複数のLEDを使用している照明装置では、集光位置において各LEDの並設方向に光量のむらを生じるという問題があること、ロッドレンズ110を通過したLEDの光を拡散レンズにより主に各LEDの並設方向に拡散することにより、集光位置における光量のむらを低減することができること、光の照射されている部分をラインセンサカメラで撮像することが読み取れる。
そして、光の照射されている部分は集光位置であると解されるから、ラインセンサカメラで撮像する位置は、集光位置であるといえる。
そうすると、本件明細書等の記載から、ロッドレンズによる集光位置における各LEDの並設方向の光量のむらを、拡散レンズにより低減し、光量のむらが低減された集光位置をラインセンサカメラで撮像することが理解できる。
したがって、集光レンズをロッドレンズとした場合に、拡散レンズは撮像位置における光量のむらを低減することは、本件明細書等に記載した事項であって、訂正事項は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。
3 特許請求の範囲の実質拡張又は変更について
上記1で述べたとおり、訂正事項は、「前記拡散レンズ」について、「前記撮像位置における光量のむらを低減するようにした」との限定を付加するものであるから、発明を特定するための事項を入替えるものではなく、発明の対象や目的の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。
4 独立特許要件
上記1に記載したとおり、訂正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項5及び10に記載されている事項により特定される発明が、特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件訂正発明
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項5に記載されている事項により特定される発明のうち、請求項1の記載を引用して特定される発明を、以下「本件訂正発明5」という。
また、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項10に記載されている事項により特定される発明のうち、請求項1の記載を引用する請求項5の記載を引用して特定される発明を、以下「本件訂正発明10」という。
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、5及び10の記載は、以下のとおりである。
【請求項1】
所定方向に並設された複数のLEDと、各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズとを備え、各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に集光し、これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において、
この照明装置は、前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズを備えると共に、前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、
受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し、
前記拡散レンズを複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、
前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した
ことを特徴とするラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置。
【請求項5】
前記集光レンズを各LEDの並設方向に延びるロッドレンズから形成し、
前記受光レンズ部をロッドレンズにおける各LED側の面によって構成し、
前記拡散レンズは、前記撮像位置における光量のむらを低減するようにした
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の照明装置。
【請求項10】
前記各レンズ部を前記所定の面上に不規則に並べて配置した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の照明装置。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明等
ア(ア)本件特許の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-147587号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。以下同様。)。
(引1-ア) 第1頁左下欄12行~第2頁左上欄1行
「〔発明の利用分野〕
本発明は、光センサ装置に関し、特に現金自動取引装置等の紙葉類取扱装置において、照明光量の損失を少くし受光感度を高めて、紙葉類を透過又は反射した光パターンを判定する光センサ装置に関するものである。
〔発明の背景〕
紙幣等の紙葉に光を照射して透過光や反射光を測定することにより該紙葉に印刷された図柄や該紙葉の汚損状態等を検出する装置としては、例えば特開昭58-223890号、特開昭58-86681号公報記載のものが知られている。
すなわち、従来は第5図に示すように、光源1からの光束を拡散板としてのスリ硝子2により拡散させ、この拡散した光を紙葉3に照射し、透過した光を受光体4で検出する方式が採られている。
しかし、従来のこのような方式では、光源1からの光束がスリ硝子2によってランダムに散乱させられてしまうため、特に受光体4がライン状の視野を有するイメージセンサ等において、受光体4に入射する光量が減少し、受光体4の感度が低下するため大容量の光源を必要とするという問題があった。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、このような従来の問題を改善し紙葉の状態を光学的に検出する光センサ装置において、簡単かつ安価な方法により受光体への入射光束を増加させた高感度の光センサ装置を提供することにある。」
(引1-イ) 第2頁左上欄1行~右下欄9行
「〔発明の概要〕
上記目的を達成するため、本発明の光センサ装置は、ライン状に配列した光源列と、ライン状の視野をもつ受光体とを有し、前二者間に置かれた紙葉の状態を光学的に検出する光センサ装置において、前記光源列と前記紙葉との中間に平行した線状の細溝を刻設した透明体を設置して光束を拡散させたことに特徴がある。
〔発明の実施例〕
以下、本発明の実施例を図面により詳細に説明する。
第1図は本発明の一実施例を示す光センサの概略構成図である。
同図において、10は白熱電球あるいは赤色LEDをライン状に複数個設置した照明用光源列、3は紙幣等の紙葉、5は光束を均一にするための拡散板たるヘアラインシート、6は集光レンズ、7は受光体たるイメージセンサである。
以上の構成の下で、光源列10からの光束はヘアラインシート5により均一拡散され、紙葉3を透過した透過光は集光レンズ6を介してイメージセンサ7によってライン状のイメージとして検出される。
第2図は第1図のヘアラインシート5の説明図である。
本発明による拡散板は、ポリカーボネイト等の透明プラスチック板に図に示すように上下方向に複数の平行なスリキズのヘアラインを施した(以下、ヘアライン加工という)ヘアラインシートである。
このヘアラインシート5を用いることにより光源列11からヘアラインシート5を透過した光束は、上下方向への拡散が抑制され、その反射効果として左右方向への拡散が増大したものとなる。
また、光源を同図に示すようにライン状に複数配置した光源列11とすることによって、光束はヘアラインシート5により一層強く左右方向に拡散されるので、左右方向への均一性が増大した照明が可能となる。更に、前記ヘアライン加工によるスリキズによって拡散を制御することができるので、左右方向の長方形部分のみを照明することが実現できる。
このようにして、第1図のように受光体としてライン状のイメージセンサ7を用いた場合は、光源1から受光体5(当審注:「受光体5」は、「受光体4」又は「受光体」の誤記と認める。)への照明は効率の高いものとなる。実験によれば、イメージセンサ7の受ける光量は従来のスリ硝子を拡散板とする場合に比較して、実験によれば約10倍となる。
第3図は第1図のヘアラインシート5を2枚とした場合の説明図である。
すなわち、同図に示すように、ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシートを該ヘアライン方向が交差するように、重ね合せたのを拡散板としたものである。
本実施例においては、光源1からの光量は多少低下するが、反面、光の上下方向への拡散が増大するため、見かけ上光源1の光放射幅が拡大される。このため、光源1の光軸と受光体7の光軸とにズレが発生しても、受光体の感度は急激には低下しないので、量産に好適な透過光センサを実現できる。
第4図は反射光センサにヘアラインシートを用いた場合の概略構成図である。
本実施例においては、光源1自体での散乱による照明の均一化を更にヘアラインシート5が左右方向に拡散を助長するため、光源1と受光体間の距離を小くしても均一な照明となり、高感度の反射光センサを実現できる。」
(引1-ウ) 第2頁右下欄10~15行
「〔発明の効果〕
以上説明したように本発明によれば、紙葉の状態を光学的に検出する光センサ装置において、簡単かつ安価な方法により受光体への入射光束を増加させることが可能となり、低容量の光源により高感度の光センサ装置を実現できる。」
(引1-エ) 第1図
「
[図:0001394726000001.jpg]
」
(引1-オ) 第2図
「
[図:0001394726000002.jpg]
」
(引1-カ) 第3図
「
[図:0001394726000003.jpg]
」
(引1-キ) 第4図
「
[図:0001394726000004.jpg]
」
(イ)上記(引1-イ)の「10は白熱電球あるいは赤色LEDをライン状に複数個設置した照明用光源列」との記載から、「ライン状に配列した光源列」として、「赤色LEDをライン状に複数個設置した照明用光源列10」を備えた態様が読み取れる。
(ウ)上記(引1-イ)の「光源列10からの光束はヘアラインシート5により均一拡散され、紙葉3を透過し」との記載によれば、「光源列10からの光束はヘアラインシート5により均一拡散され、紙葉3」に照射されることから、「光源列10」及び「ヘアラインシート5」である「拡散板」は、照明装置を構成するものといえる。
(エ)a 上記(引1-イ)の「第3図は第1図のヘアラインシート5を2枚とした場合の説明図である。
すなわち、同図に示すように、ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシートを該ヘアライン方向が交差するように、重ね合せたのを拡散板としたものである。
本実施例においては、光源1からの光量は多少低下するが、反面、光の上下方向への拡散が増大するため、見かけ上光源1の光放射幅が拡大される。このため、光源1の光軸と受光体7の光軸とにズレが発生しても、受光体の感度は急激には低下しないので、量産に好適な透過光センサを実現できる。」との記載から、「ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシートを該ヘアライン方向が交差するように、重ね合せたのを拡散板」とする理由は、「光源1の光軸と受光体7の光軸とにズレが発生しても、受光体の感度は急激には低下しない」ようにして「量産に好適な透過光センサを実現」するためであることが読み取れる。
b そして、第4図に示される反射光センサにおいても、光源1の光軸と受光体たるイメージセンサ7の光軸とが所定の幾何学的関係を満たさない場合には、イメージセンサ7の感度が低下することは明らかであるから、第3図に示されるヘアラインシート5を2枚とする態様は、第4図に示される反射光センサにおいても採用することを想定したものであると解される。
c また、(引1-イ)の上記記載における「光の上下方向への拡散が増大する」は、(引1-イ)の第2図に係る記載である「ヘアラインシート5を用いることにより光源列11からヘアラインシート5を透過した光束は、上下方向への拡散が抑制され、その反射効果として左右方向への拡散が増大したものとなる」との単独のヘアラインシート5を用いた場合との比較についての記載であり、光を専ら上下方向に拡散させることを意味する記載ではなく、光束の左右方向への拡散を増大させ、当該方向への均一性が増大した照明を可能としつつ、単独のヘアラインシートを用いた場合よりも光束の上下方向への拡散を増大させて見かけ上の光源1の光放射幅を拡大させることを意味するものと解される。
(オ)上記(引1-キ)の第4図から、反射光センサの場合には、照明用光源列により紙葉3をライン状に照明する領域を、イメージセンサ7により撮像することが見て取れる。また、光源である赤色LEDの配列方向が左右方向であり、それと直交する方向が上下方向であることが見て取れる。
(カ)上記(イ)ないし(オ)を踏まえると、上記(引1-ア)ないし(引1-キ)の記載から、引用文献1には、
「 赤色LEDをライン状に複数個設置した照明用光源列10と、ライン状の視野をもつイメージセンサ7とを有し、照明用光源列10により紙葉3をライン状に照明する領域を、イメージセンサ7により撮像することにより、紙葉の状態を光学的に検出する反射光センサ装置の照明装置であって、
照明装置は、赤色LEDをライン状に複数個設置した照明用光源列10と、光束を均一にするための拡散板とを有し、
拡散板は、透明プラスチック板に複数の平行なスリキズのヘアラインを施したヘアラインシート5であり、ヘアラインシート5を透過した光束は、赤色LEDの配列方向と直交する方向への拡散が抑制され、赤色LEDの配列方向への拡散が増大したものとなり、ヘアライン加工によるスリキズによって拡散を制御することができるので、赤色LEDの配列方向の長方形部分のみを照明することが実現でき、
拡散板は、赤色LEDの配列方向と直交する方向に複数の平行なスリキズのヘアラインを施した単独のヘアラインシート5で構成してもよいが、照明用光源列10の光軸とイメージセンサ7の光軸とにズレが発生しても、受光体の感度が急激には低下せず、量産に好適な反射光センサを実現するために、ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシート5を該ヘアライン方向が交差するように重ね合せたもので構成し、光束の赤色LEDの配列方向への拡散を増大させ、当該方向への均一性が増大した照明を可能としつつ、単独のヘアラインシートを用いた場合よりも、見かけ上の光放射幅が拡大されるようにした、
照明装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
イ(ア)本件特許の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-280267号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(引2-ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光拡散体に関し、さらに詳しくは特に背面投射型表示装置あるいは前面投射型表示装置のスクリーンを初めとする各種スクリーン、液晶ディスプレイ等のバックライトからの光を拡散するための光拡散体、映写スクリーンに使用される光拡散体、広告用電飾看板バックライト用支持体、照明用カバー体等に好適な光拡散体の製造方法に関する。」
(引2-イ) 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、煩瑣な製造プロセスを用いることなく、かつ拡散角度の異方性の制御など光拡散体の設計変形も容易に行うことができる、高解像度・高透過率を有する光拡散体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の光拡散体の製造方法を提供することにより達成される。
(1)表面が不規則な微小凹凸形状を有する原型にモールド樹脂材料を注型し、その後離型して、前記微小凹凸形状が転写されたモールドを作製し、次いで前記微小凹凸形状が転写されたモールドを延伸し、その後延伸したモールドに硬化性樹脂を流し込み次いで樹脂を硬化させ、硬化後、離型してレプリカを得ることを特徴とする光拡散体の製造方法。上記の微小凹凸形状が転写されたモールドを、1方向にあるいは2つの方向に引き伸ばすことができる。上記モールド樹脂材料としては、硬化性シリコーン樹脂が好ましく用いられる。また、上記のモールドに注型する硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂が好ましく用いられる。また、上記の微小凹凸形状を有する原型として、その表面に、ビーズがバインダーにより結合されている原型、磨りガラス、あるいは紙を用いることができる。」
(引2-ウ) 「【0008】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳細に説明する。本発明の製造方法により作製される光拡散体は、図1に示すように、その表面に不規則に配置されかつ延伸された凹凸形状を有する、いわゆる微小レンズアレーが形成されていることを特徴としている。図1は本発明の光拡散体の一例について、その表面の微小レンズアレーを示す顕微鏡写真を線画で模式的に示したもので、図中、10は光拡散体を、12は微小レンズアレーを示す。本発明の光拡散体は、前記の不規則に配置された凹凸の1つ1つの凸部においてその凸部の2つ以上の異なる切断面における屈折率が異なることにより、光拡散体として向上した機能を有する。すなわち、本発明の製造方法により製造される光拡散体の凸部は、製造工程においてモールドが延伸を受けることにより、原型における凸部の形状が特定の方向に伸ばされた形状を有している。図2には、本発明の光拡散体の製造において使用する原型の一例について、その表面の微小凹凸の顕微鏡写真を線画で模式的に表したものが示され、図中、14は原型を、16は微小凹凸を示している。この原型の表面に形成された微小凹凸形状の凸部の形状はおおむね半球状である。図3には、図2で示される原型にモールド樹脂を注型することにより作製され、原型の微小凹凸形状が転写されたモールドが示され、また、図4には、前記モールドを一方向に延伸した延伸モールドが示されている。この延伸モールドに硬化性樹脂を流し込み、次いで硬化させて本発明の光拡散体が作製される。
【0009】上記のように本発明の光拡散体は、図2で示されるような原型を用いて図3で示されるようなモールドを作製し、このモールドを一方向に延伸し、図4で示されるような延伸されたモールドを作製し、これに硬化性樹脂を注型・硬化して作ることができるが、使用する原型の凸部形状である半球が一方向に延伸された結果、光拡散体の凸部は前記半球より扁平(切断面の形状の曲率半径が大きい)の細長い形状のものに変わっている。したがって、光拡散体の凸部の、延伸方向と同じ方向の切断面における方が、延伸方向に直角の切断面の方より曲率半径が大きくなる。入射光が、光拡散体の微小凹凸が形成された面の方から反対側に抜ける場合、曲率半径の大きい断面を通過する光は、曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり、光の拡散角度はより狭くなる。つまり、本発明の光拡散体は、拡散角度の異方性を制御することが可能である。これと逆方向に光が通過する場合も同様の原理が作用するので、拡散角度の異方性を制御することができる。したがって、本発明の光拡散体は、光拡散を行うと同時に光を特定の方向に集中的に拡散させることができ、例えば線状の入射光線が本発明の光拡散体に入射すると、強度分布が楕円形の拡散光となって透過することになり、本発明の光拡散体を液晶表示装置のバックライトの光拡散板や各種スクリーンに使用した場合、それらに優れた光拡散機能と正面集光機能を付与することができる。」
(引2-エ) 「【0021】本発明の製造方法においては、不規則に配置された微小凹凸形状を有する原型として微小凹凸の形状やピッチが種々の態様のものを使用することができ、またモールドの延伸条件も種々調節することができるため、原型の有する微小凹凸形状および延伸条件により、拡散角度の異方性の制御など様々に設計変更された光拡散体を煩瑣なプロセスを用いることなく容易にまた安価に製造することができる。また微小凹凸のピッチが10μm以下の原型からも本発明の微小レンズアレイを備えた光拡散体を製造することが可能で、微小凹凸ピッチの小さい原型から容易に高解像度・高透過度の光拡散体を製造することができる。」
(引2-オ) 「【0023】本発明の製造方法によって作製される光拡散体は、上記のように優れた光拡散機能と集光機能を有するため、背面投射型表示装置あるいは前面投射型表示装置のスクリーンを初めとする各種スクリーン、液晶ディスプレイ等のバックライトからの光を拡散するための光拡散体、映写スクリーンに使用される光拡散体、OHPシート用支持体、広告用電飾看板バックライト用支持体、照明用カバー体等の広範な用途に適用することができる。」
(引2-カ) 「【0026】実施例2
この実施例では、ポリエステルフィルムの表面に樹脂ビーズを散布固定したシートを原型として用いる光拡散体の製造を行った。この原型となるシートは、特開平6-67003号公報に記載されている手段で製造された物で、凹凸表面は直径10ないし20μmのほぼ半球面が敷き詰められた形状をしている。そのビーズを設けた側の面に対して実施例1と同様にして、シリコーン樹脂製のフィルム状モールドを作製し、それを実施例1と同様にして延伸モールドを作製した。次いで実施例1と同様にして、エポキシ樹脂フィルムを得た。顕微鏡観察によれば、原型の表面の微小な半球面が、レプリカでは縦横比がほぼ1:4の楕円形に変形されていることが確認できた。このフィルムの微小凹凸面と反対側の面からレーザー光を入射させ透過光の分布を調べ、その拡散特性を評価した。透過光は15度程度正面方向に屈折し、かつ、なめらかに拡散しており、この例の光拡散体も光を楕円形の方向に拡散し、かつ、集光機能を有していることがわかった。」
(引2-キ) 「【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明の光拡散体の製造方法によれば、拡散角度の異方性を制御することが可能でかつ高解像度で高透過率の光拡散体を、煩瑣な製造プロセスを用いることなく作製することができ、光拡散機能と光集光機能を有する光拡散体を容易に製造することができる。また微小凹凸のピッチが10μm以下の原型からも本発明の微小レンズアレイを備えた光拡散体を製造することが可能で、微小凹凸ピッチの小さい原型から容易に高解像度の光拡散体を製造することができる。また原型の微小凹凸の形状やピッチについて、任意のものを容易に作製あるいは選択することができるばかりでなく、延伸の条件を種々変更することにより、様々な特性の光拡散体を得ることができ、したがって光拡散体の設計変更を容易に行うことができる。また、本発明の製造方法により作製された光拡散体をスクリーン等に使用した場合、外観・風合いが極めて優れた商品価値の高いスクリーンとすることができる。」
(引2-ク) 【図1】
「
[図:0001394726000005.jpg]
」
(イ)上記(引2-ク)の【図1】の記載から、光拡散体の微小レンズアレーは、大きさの異なる複数の凸部が不規則に配置されて構成されていることが見てとれる。
(ウ)上記(イ)を踏まえると、上記(引2-ア)ないし(引2-ク)の記載から、引用文献2には、
「 表面に大きさの異なる複数の凸部が不規則に配置されかつ延伸された凹凸形状を有する、いわゆる微小レンズアレーが形成されている光拡散体であって、
表面に形成された微小凹凸形状の凸部の形状がおおむね半球状である原型に、モールド樹脂を注型することにより、原型の微小凹凸形状が転写されたモールドを作製し、前記モールドを一方向に延伸して延伸モールドとし、この延伸モールドに光硬化性樹脂を流し込み、次いで硬化させて作製されたものであり、
光拡散体の凸部は、製造工程においてモールドが延伸を受けることにより、原型における凸部の半球形状が特定の方向に伸ばされた扁平の細長い形状のものに変わっており、
光拡散体の凸部の、延伸方向と同じ方向の切断面における方が、延伸方向に直角の切断面の方より曲率半径が大きく、曲率半径の大きい断面を通過する光は、曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり、光の拡散角度はより狭くなり、これにより拡散角度の異方性を制御することが可能であり、
原型の微小凹凸の形状やピッチについて、任意のものを容易に作製あるいは選択することができ、延伸の条件を種々変更することにより、様々な特性の光拡散体を得ることができ、光拡散体の設計変更を容易に行うことができる、光拡散体。」
という技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
(3)本件訂正発明5についての対比・判断
ア 本件訂正発明5と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ライン状に複数個設置した」「赤色LED」は、本件訂正発明5の「所定方向に並設された複数のLED」に相当する。
(イ)引用発明の「イメージセンサ7」は「ライン状の視野をもつ」ものであり、「照明用光源列10により紙葉3をライン状に照明する領域を」「撮像する」ものであるから、引用発明の「ライン状の視野をもつイメージセンサ7」は、本件訂正発明5の「LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラ」に相当する。
(ウ)引用発明の「赤色LEDをライン状に複数個設置した照明用光源列10」「により紙葉3をライン状に照明する領域」と、本件訂正発明5の「各LEDの光が集光レンズを通過して集光レンズから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置」とは、「各LEDから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置」で共通する。
(エ)引用発明の「ライン状に照明する」と、本件訂正発明5の「線状に集光し」とは、「線状に照射し」で共通する。
(オ)引用発明の「イメージセンサ7により撮像する」「紙葉3」の「領域」を「照明する」「照明装置」は、本件訂正発明5の「前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置」に相当する。
(カ)本件訂正発明5において「撮像位置に線状に集光し」と特定されていることから、本件訂正発明5における「集光位置」は「撮像位置」と同じ位置であるといえる。
また、引用発明の「拡散板」が「照明用光源列10」と「紙葉3」との間に配置されることは明らかである。
引用発明の拡散板は、「ヘアライン加工によるスリキズによって拡散を制御することができる」ことを利用して「赤色LEDの配列方向と直交する方向への拡散が抑制され、赤色LEDの配列方向への拡散が増大」するようにしたものであるところ、当該拡散方向の異方性からみて、引用発明の拡散板は、光束を主に赤色LEDの配列方向へ拡散させるものである。
そして、拡散板を「ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシート5を該ヘアライン方向が交差するように重ね合せたもので構成し」た場合も、「光束の赤色LEDの配列方向への拡散を増大させ、当該方向への均一性が増大した照明を可能としつつ、単独のヘアラインシートを用いた場合よりも、見かけ上の光放射幅が拡大される」ことから、ヘアラインの方向を変えることで拡散方向の異方性を制御することにより、「光束の赤色LEDの配列方向への拡散を増大させ」つつ、「見かけ上の光放射幅が拡大される」程度に「単独のヘアラインシートを用いた場合よりも」赤色LEDの配列方向と直交する方向への拡散が生じるようにしているものであって、光束を主に赤色LEDの配列方向へ拡散させているといえる。
すると、引用発明の「ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシート5を該ヘアライン方向が交差するように重ね合せたもので構成し、光束の赤色LEDの配列方向への拡散を増大させ、当該方向への均一性が増大した照明を可能としつつ、単独のヘアラインシートを用いた場合よりも、見かけ上の光放射幅が拡大されるようにした」「拡散板」と、本件訂正発明5の「前記各LEDから前記集光位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズ」とは、「前記各LEDから前記撮像位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる光拡散器」で共通する。
(キ)引用発明の「拡散板」は「光束を均一にするための」ものであり、「光束の赤色LEDの配列方向への拡散を増大させ、当該方向への均一性が増大した照明を可能と」するものであるところ、上記(ウ)で対比したように引用発明の「照明する領域」は本件訂正発明5の「撮像位置」に相当することから、引用発明の「拡散板」は、本件訂正発明5の「前記拡散レンズ」が備える「前記撮像位置における光量のむらを低減するようにした」に相当する構成を備えている。
イ 一致点及び相違点
よって、本件訂正発明5と引用発明とは、
「 所定方向に並設された複数のLEDを備え、各LEDから所定の距離だけ離れた位置であって前記LEDの並設方向に撮像範囲の長手を有するように配置されたラインセンサカメラの撮像位置に線状に照射し、これにより前記撮像位置を照明しこれをラインセンサカメラで撮像するように構成されたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置において、
この照明装置は、前記各LEDから前記撮像位置までの光の経路中に光を主に各LEDの並設方向に拡散させる光拡散器を備え、
前記光拡散器は、前記撮像位置における光量のむらを低減するようにしたラインセンサカメラ撮像位置照明用の照明装置。」
の発明である点で一致し、次の2点で相違する。
(相違点1)
光を主に各LEDの並設方向に拡散させる光拡散器が、本件訂正発明5においては、「複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した」「拡散レンズ」であるのに対し、引用発明においては、「ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシート5を該ヘアライン方向が交差するように重ね合せた」「拡散板」であって、ヘアラインの方向を傾斜させることにより拡散方向の異方性を制御し、「光束の赤色LEDの配列方向への拡散を増大させ、当該方向への均一性が増大した照明を可能としつつ、単独のヘアラインシートを用いた場合よりも、見かけ上の光放射幅が拡大されるようにした」「拡散板」である点。
(相違点2)
本件訂正発明5は、「各LEDの並設方向に延びるように設けられた集光レンズ」を備え、「前記集光レンズの各LED側の面によって受光レンズ部が形成され、受光レンズ部を、各LED側に凸面状に形成するとともに各LEDの並設方向に延びるように形成し、各LEDにおいて他の照射角度範囲よりも光の照射量を多くした所定の照射角度範囲から照射される光を受光可能に配置し」、「前記集光レンズを各LEDの並設方向に延びるロッドレンズから形成し」、「前記受光レンズ部をロッドレンズにおける各LED側の面によって構成し」ており、「各LEDの光が集光レンズを通過して」「撮像位置に線状に集光」するのに対し、引用発明においては、照明用光源列10により紙葉3をライン状に照明するものの、照明用光源列10からの光束を紙葉3上にライン状に集光させる集光レンズを備えることは特定されていない点。
ウ 判断
(ア)上記各相違点について検討する。
a 相違点1について
(a)上記相違点1に係る本件訂正発明5の発明特定事項である拡散レンズと引用文献2技術事項とを対比する。
引用文献2技術事項の「表面に大きさの異なる複数の凸部が不規則に配置されかつ延伸された凹凸形状を有する、いわゆる微小レンズアレーが形成されている光拡散体」は、本件訂正発明5の「複数のレンズ部から形成し、」「光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し」た「拡散レンズ」に相当する。
引用文献2技術事項の「光拡散体の凸部の、延伸方向と同じ方向の切断面における方が、延伸方向に直角の切断面の方より曲率半径が大きく」と、本件訂正発明5の「各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成する」とは、「各レンズ部を、特定方向への曲率半径が特定方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成する」で共通する。
引用文献2技術事項の「曲率半径の大きい断面を通過する光は、曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり、光の拡散角度はより狭くなり、これにより拡散角度の異方性を制御する」ことは、拡散角度が広い方が光はより拡散されると解されることから、拡散角度の異方性を制御することにより、光が主に「曲率半径の小さい断面」方向に拡散されるように制御しているといえる。
すると、引用文献2技術事項の「曲率半径の大きい断面を通過する光は、曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり、光の拡散角度はより狭くなり、これにより拡散角度の異方性を制御する」と、本件訂正発明5の「光を主に各LEDの並設方向に拡散させる」とは、「光を主に特定方向に拡散させる」で共通する。
引用文献2技術事項の光拡散体の凸部は、「大きさの異なる複数の凸部が不規則に配置され」ているものであるから、互いに近傍に配置された凸部同士で特定方向の曲率半径が異なるといえる。
すると、引用文献2技術事項の「大きさの異なる複数の凸部が不規則に配置され」と、本件訂正発明5の「前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した」とは、「前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で特定方向への曲率半径が異なるように形成した」で共通する。
(b)よって、本件訂正発明5の拡散レンズと引用文献2技術事項とは、
「光を主に特定方向に拡散させる拡散レンズであって、複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、特定方向への曲率半径が特定方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に並ぶように配置し、前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で特定方向への曲率半径が異なるように形成した拡散レンズ」
である点において一致する。
(c)上記ア(カ)で述べたように、引用発明の拡散板は、ヘアラインの方向を変えることで拡散方向の異方性を制御することにより、「光束の赤色LEDの配列方向への拡散を増大させ」つつ、赤色LEDの配列方向と直交する方向への拡散も生じさせるものであるから、一方向への拡散の大きさとそれに直交する方向への拡散の大きさを異ならせた異方性を有するものである。
また、上記(a)で述べたように、引用文献2技術事項は、「曲率半径の大きい断面を通過する光は、曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり、光の拡散角度はより狭くなり、これにより拡散角度の異方性を制御する」ことより、光が主に「曲率半径の小さい断面」方向に拡散され、これと直交する「曲率半径の大きい断面」方向への拡散を少なくするものであるから、一方向への拡散の大きさとそれに直交する方向への拡散の大きさを異ならせた異方性を有するものである。
すると、引用発明の拡散板と引用文献2技術事項とは、一方向への拡散の大きさとそれに直交する方向への拡散の大きさを異ならせた異方性を有する透過型光拡散器として共通するものである。
(d)引用文献2技術事項は、「原型の微小凹凸の形状やピッチについて、任意のものを容易に作製あるいは選択することができ、延伸の条件を種々変更することにより、様々な特性の光拡散体を得ることができ、光拡散体の設計変更を容易に行うことができる」ものであるところ、上記(引2-イ)の段落【0007】に「上記の微小凹凸形状を有する原型として、その表面に、ビーズがバインダーにより結合されている原型、磨りガラス、あるいは紙を用いることができる。」と記載されていることから、引用文献2技術事項は、磨りガラスと同程度の拡散機能を有するものを包含しているといえる。
また、上記(引2-カ)の段落【0026】に「原型となるシートは・・・凹凸表面は直径10ないし20μmのほぼ半球面が敷き詰められた形状をしている」、上記(引2-キ)の段落【0028】に「微小凹凸のピッチが10μm以下の原型からも本発明の微小レンズアレイを備えた光拡散体を製造することが可能」と記載されているように、引用文献2技術事項の光拡散体は、10μm程度の微小レンズのアレーが形成されているものも製造可能なものである。
そして、上記(引2-オ)に「【0023】本発明の製造方法によって作製される光拡散体は、上記のように優れた光拡散機能と集光機能を有するため、背面投射型表示装置あるいは前面投射型表示装置のスクリーンを初めとする各種スクリーン、液晶ディスプレイ等のバックライトからの光を拡散するための光拡散体、映写スクリーンに使用される光拡散体、OHPシート用支持体、広告用電飾看板バックライト用支持体、照明用カバー体等の広範な用途に適用することができる。」とあるように、引用文献2技術事項は、様々な用途に用いられる汎用性を有するものであり、用途に応じて設計可能なものである。
(e)機能的に同等又はより優れた部品への置換は、当業者の創作能力においてなし得ることであるから、スリ硝子を拡散板とすると光束がランダムに散乱させられてしまうため受光量が減少し、大容量の光源が必要となるという課題(上記(引1-ア)参照)に対処する引用発明において、引用発明の拡散板と一方向への拡散の大きさとそれに直交する方向への拡散の大きさを異ならせた異方性を有する透過型光拡散器として共通する機能を有する引用文献2技術事項を拡散板として採用し、上記相違点1における本件訂正発明5の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
b 相違点2について
(a)引用発明のようにLEDをライン状に複数個設置した照明用光源列によりライン状の領域を照明する照明装置において、照明用光源列からの光を有効に活用して照射位置での輝度を向上させるべく、照明用光源列と照射位置との間に各LEDの並設方向に延びるレンズを配置して照明用光源列からの光を線状に集光させることは慣用されており、当該レンズとしてロッドレンズを用いることも本件特許の優先日前において周知な事項である(例えば、特開平7-193685号公報の【0026】及び【図1】、特開平7-248541号公報の【0029】及び【図2】並びに特開平1-144771号公報の第2頁左下欄8行~右下欄1行及び第1図参照。)。
したがって、引用発明をロッドレンズを備えたものとすることは、当業者が容易に想起し得ることである。
(b)加えて、上記a(e)で指摘したように、引用発明は、スリ硝子を拡散板とすると光束がランダムに散乱させられてしまうため受光量が減少し、大容量の光源が必要となるという課題(上記(引1-ア)参照)に対処することを前提としており、照明用光源列10の光量を有効活用することは自明の課題であるといえる。
引用文献1の第1図、第2図及び第4図では、光源1からの光束は直線状に図示されているが、一般に、LEDの光束はレーザ光のように強い指向性を有しておらず、光軸を中心とする照度分布を有している。そのため、集光手段を用いずに照明用光源列10により紙葉3を照射した場合、ライン状の照明領域の幅はイメージセンサ7のライン状の視野の幅よりも相当程度広くなることが想定され、照明用光源列10の光量を十分に有効活用することができないものと解される。
また、引用発明は「照明用光源列10の光軸とイメージセンサ7の光軸とにずれが生じても受光体の感度が急激には低下」しないようにするものであるところ、照明用光源列10による光束をライン状に集光させずに紙葉3を照射するのであれば、照明領域は幅の広いライン状となり、中心軸付近では相当程度の幅内において照度が高くなり、照明用光源列10の光軸とイメージセンサ7の光軸とが多少ずれたとしても、受光量の低下に対する影響は少ないものと解されることから、引用発明は、拡散板が存在しない状態においては、照明用光源列10による照明領域が細いライン状となることが想定されているものと解される。
これは、引用文献1の第1図及び第4図において、光源1による照射位置がライン状に図示されていることと整合する。
以上のことから、引用発明には、ロッドレンズを採用する動機があるといえる。
さらに、引用発明において照明用光源列10と拡散板との間に照明用光源列10の光束を有効活用するための集光手段を設けたとしても、拡散板による照射幅を拡大するという効果は得られるのであるから、引用発明において、ロッドレンズを採用することを阻害する事情があるとは認められない。
(c)そして、ロッドレンズを用いる場合、ロッドレンズの照明用光源列10側は、当然凸面となる。
また、LEDが照射角度範囲に応じて照射量が異なることは技術常識であり、照射量が多い所定の照射角度範囲から照射される光がロッドレンズに入射するように配置することは、当業者であれば当然考慮すべきことにすぎない。
(d)したがって、引用発明において、照明用光源列10からの光を有効に活用し照射位置での輝度を向上させるために、照明用光源列10と拡散板との間に各LEDの並設方向に延びるようにロッドレンズを配置し、上記相違点2に係る本件訂正発明5の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
c 本件訂正発明5の奏する作用効果
本件訂正発明5によってもたらされる効果は、引用文献1及び2の記載事項、並びに本件特許の優先日前において周知な事項から当業者が予測し得る程度のものである。
エ 以上のとおりであるから、本件訂正発明5は、引用発明、引用文献2技術事項、及び本件特許の優先日前において周知な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件訂正発明5は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
よって、訂正事項は特許法第126条第7項の規定に適合しない。
(4)本件訂正発明10についての対比・判断
ア 本件訂正発明10と引用発明とを対比する。
(ア)本件訂正発明10の発明特定事項のうち、請求項5の記載を引用して特定される事項についての引用発明との対比は、上記(3)アの本件訂正発明5と引用発明との対比と同様である。
(イ)引用発明の「拡散板」は、本件訂正発明10の「前記各レンズ部を前記所定の面上に不規則に並べて配置した」に相当する構成を備えていない。
イ 一致点及び相違点
よって、本件訂正発明10と引用発明とは、本件訂正発明5と引用発明との一致点と同じ点で一致し、上記相違点2に加えて以下の点で相違する。
(相違点1’)
光を主に各LEDの並設方向に拡散させる光拡散器が、本件訂正発明10においては、「複数のレンズ部から形成し、各レンズ部を、各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成するとともに、光の経路と交差する所定の面上に不規則に並べて配置し、前記各レンズ部を、互いに近傍に配置されたレンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成した」「拡散レンズ」であるのに対し、引用発明においては、「ヘアラインを約30度斜方向に施した2枚のヘアラインシート5を該ヘアライン方向が交差するように重ね合せた」「拡散板」である点。
ウ 判断
(ア)上記各相違点について検討する。
a 相違点1’について
上記相違点1’は、上記相違点1の各レンズ部の所定の面上における並び配置について、「不規則」である点を追加したものである。
しかしながら、引用文献2技術事項の「凸部が不規則に配置され」ていることは、本件訂正発明10の「各レンズを」「不規則に並べて配置した」ことに相当する。
そうすると、上記(3)ウ(ア)aで検討した相違点1と同じ理由により、引用発明において、引用発明の拡散版と共通する機能を有する引用文献2技術事項を拡散板として採用し、上記相違点1’における本件訂正発明10の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
b 相違点2については、上記(3)ウ(ア)bで検討したとおりである。
c 本件訂正発明10の奏する作用効果
本件訂正発明10によってもたらされる効果は、引用文献1及び2の記載事項、並びに本件特許の優先日前において周知な事項から当業者が予測し得る程度のものである。
エ 以上のとおりであるから、本件訂正発明10は、引用発明、引用文献2技術事項、及び本件特許の優先日前において周知な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件訂正発明10は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
よって、訂正事項は特許法第126条第7項の規定に適合しない。
5 請求人の主張について
(1)請求人は、意見書及び上申書2において、おおむね以下の主張をする。
ア 訂正拒絶理由通知書では、引用文献1が属するマシンビジョンの技術分野と、引用文献2が属するヒューマンビジョンの技術分野の相違を看過しており、両技術分野が相違していることを踏まえれば、当業者は、引用発明に、引用文献2技術事項の拡散板を採用しようとはしない。
また、引用文献2は、ヒューマンビジョンにおける技術分野に限定した汎用性しか有さないことから、当業者は、引用発明に、引用文献2技術事項の拡散板を採用しようとはしない。(意見書3頁8~18行)
(ア)マシンビジョンで取得した画像の画像分析は、コンピュータが基準値に合致するかといったデジタル的・画一的な判断に用いられることから、マシンビジョンでは画像分析の封象となる画像に高い要求水準が課されるため、照明の重要性は相対的に高い。
これに対して、ヒューマンビジョンにおいては、品質の悪い画像であっても、人間の脳の補正によって適正な画像として認識され、マシンビジョンの場合のように画像解析を行わないことから、ヒューマンビジョンの技術分野においては、照明の重要性は相対的に低い。
このように、マシンビジョン(とりわけラインセンサカメラ)の技術分野とヒューマンビジョンの技術分野とでは、要求される課題が大きく異なる。(意見書10頁11~20行)
(イ)高速検査を実現する際にマシンビジョンで必要とされる光量はヒューマンビジョンで必要となる光量と比べて格段に大きく、また、正確な検査を実現する際にマシンビジョンで必要となる光量むらの低減の程度はヒューマンビジョンで必要となる光量むらの低減よりも格段に高いレベルであることから、マシンビジョンの技術分野において用いられる拡散板の作用機能は、ヒューマンビジョンの技術分野で用いられる拡散板の作用機能とは求められるレベルが大きく異なる。(意見書10頁下から2行~11頁5行)
(ウ)引用文献2技術事項は、磨りガラスと同程度の拡散機能を有するか否かは全く不明であり、訂正拒絶理由通知書15頁(d)が、引用文献2の段落【0007】の記載を根拠に、「引用文献2技術事項は、磨りガラスと同程度の拡散機能を有するものを包含しているといえる。」と認定したことは誤りである。(意見書13頁9~13行)
(エ)マシンビジョンの分野の当業者は、引用文献2技術事項が、高精度で光量むらの低減を図ることが必要となるマシンビジョンの技術分野で求められる拡散特性が得られるように製造可能なものとは認識しない。
したがって、引用文献2技術事項の光拡散体は、所望の拡散特性が得られるように製造可能なものとしても、せいぜい、ヒューマンビジョンにおける技術分野において求められる拡散特性が得られるという程度にしか認識しない。(意見書14頁4~9行)
(オ)引用文献2には、その用途としては、段落【0001】、【0002】及び【0023】にヒューマンビジョンが多数列挙されているものの、マシンビジョンの用途は1つも列挙されていないことから、ヒューマンビジョンの技術分野に属するものであり、マシンビジョンの用途は全く想定されていない。
したがって、引用文献2技術的事項は、マシンビジョンを前提とする引用発明に適用する用途は、全く想定されていない。(意見書14頁下から8行~15頁18行)
イ 本件訂正発明5の効果は顕著なものである。(意見書16頁14~15行)
(ア)従来技術においては、十分な光量の確保と光量むらの低減とを両立したラインセンサカメラ用照明装置は存在しなかった。(意見書16頁下から5行~下から4行)
(イ)甲70の4頁~5頁、甲71の5頁から明らかなとおり、LEDの並設方向に対し傾き0°として配置した1枚のヘアライン加工板と、LEDの並設方向に対し直行する方向から各30°に傾け交差して配置した2枚のヘアライン加工板とを用いると、輝度分布が、45%から24%に改善されるとしても、照度が101%から85%に大きく低減し、本件発明に係る「拡散レンズ1」の100%と比較すると、大きく光量が低減する。
本件訂正発明5の「拡散レンズ」は、光量むらが少なく、実用化できるものであるに対し、引用発明の各30°に傾け交差して配置した2枚のヘアライン加工板を拡散板に用いる構成は、光量むらが大きく使い物にならず、実用化もできない程度のものであることは明らかである。(意見書19頁11行~19頁末行、上申書2の2頁5行~3頁6行)
ロッドレンズのみ(拡散手段なし)
[図:0001394726000006.jpg]
ロッドレンズ及び1枚のヘアライン加工板1(0°)
[図:0001394726000007.jpg]
ロッドレンズ及び2枚のヘアライン加工板2(30°)
[図:0001394726000008.jpg]
ロッドレンズ及び本件訂正発明5に係る「拡散レンズ1」
[図:0001394726000009.jpg]
ロッドレンズ及び本件訂正発明5に係る「拡散レンズ2」
[図:0001394726000010.jpg]
(甲第71号証の7~12頁)
(ウ)引用文献1に記載された引用発明の2枚のヘアライン加工板を拡散板に用いる構成及び本件訂正発明5の「拡散レンズ」のそれぞれを用い場合に、縦横が約0.2mm~0.4mmのキズサンプルを欠陥として検出できるか否かの分析を行った。その結果、引用文献1に記載された引用発明の2枚のヘアライン加工板を拡散板に用いる構成は、下限閾値を117~122の間で変更しても、サンプルキズが薄く、欠陥として検出することができず、下限閾値を127~137の間で変更しても、サンプルキズが欠陥として検出可能となるものの併せて光量むらにより生じた黒いスジも欠陥として検出されるため、正確にサンプルキズを欠陥として検出できない。これに対し、本件訂正発明5の「拡散レンズ」は、「拡散レンズ1」は、少なくとも下限閾値185から215の間で、「拡散レンズ2」は、少なくとも下限閾値175から205の間で、サンプルキズを欠陥として適切に検出できる。
上記のとおり、サンプルキズの大きさは縦横が約0.2mm~0.4mmの大きさである。例えば、液晶パネルの品質検査の場合、パネルに上記の大きさのキズが存在すると、縦横が約0.2mm~0.4mmもの範囲で液晶のドットが欠けてしまい、色が表示されない部分が生じることから、上記の大きさのキズを検知できなければ、品質検査の意味をなさない。また、別の例えとして、液晶パネルに用いる導電性フィルムに上記の大きさのキズが存在する場合は、縦横が約0.2mm~0.4mmもの範囲に導電性のパターンが形成されないことから、電気特性が変化し、製品として使い物にならないこととなる。したがつて、引用文献1に記載された引用発明の2枚のヘアライン加工板を拡散板に用いる構成を用いて、正確な品質検査を行うことはできない。(上申書2の3頁下から3行~4頁下から9行)
(エ)そして、このように実用化できるか否かという効果の違いは顕著であり、当業者が予測し得る程度のものとはいえないことから、本件訂正発明5は、効果顕著性があるため、進歩性を有する。(意見書20頁1~3行)
ウ 引用発明に対し、ロッドレンズを配置すると、上記「拡散板」により光束の赤色LEDの配列方向と直交する方向への拡散を増大させた光が、ロッドレンズにより、同直交する方向へ集光されることとなり、上記「拡散板」により、同直交する方向へ拡散させる目的に反するものである。したがつて、引用発明に、ロッドレンズを適用することは、阻害要因が存在する。(意見書20頁12~18行)
(2)請求人の上記主張について検討する
ア 請求人は、上記(1)ア(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)において、引用文献1が属するマシンビジョンの技術分野と、引用文献2が属するヒューマンビジョンの技術分野とでは、要求される課題、拡散板に求められる作用・機能のレベルが大きく異なっており、両技術分野は相違するものであり、当業者は引用発明に引用文献2技術事項の拡散板を採用しようとはしない旨主張する。
しかしながら、引用発明のヘアラインシートと引用文献2技術事項の光拡散体とは、透過する光を拡散させるという共通の作用・機能を有するものであり、光の拡散角度の異方性を有する点でも共通するものである。
そして、作用・機能の共通する部材を置換することは、当業者の通常の創作能力においてなし得ることである。
また、引用文献1の上記(引1-ア)、及び本件明細書等の段落【0006】には、従来技術に関して拡散板として「すりガラス」を用いることが記載され、乱反射による光量の低下が問題点として提示されているが、「すりガラス」の奏する拡散効果自体が「マシンビジョンの技術分野」に要求される拡散機能として不十分である旨の指摘はない。そして、上記4(3)ウ(ア)a(d)で述べたように、引用文献2技術事項は、磨りガラスと同程度の拡散機能を有するものを包含しているといえることから、引用文献2技術事項は「マシンビジョンの技術分野」においても使用し得る拡散機能を有するものも想定しているといえる。
さらに、引用文献2技術事項は「原型の微小凹凸の形状やピッチについて、任意のものを容易に作製あるいは選択することができ、延伸の条件を種々変更することにより、様々な特性の光拡散体を得ることができ、光拡散体の設計変更を容易に行うことができる」ものであるところ、上記4(3)ウ(ア)a(d)で述べたように、10μm程度の微小レンズのアレーが形成されているものも作成し得るのであって、本件明細書等の段落【0017】に記載された「例えばX方向の寸法が数十μm~数百μm」という寸法のレンズも作成可能であることからも、引用文献2技術事項は「マシンビジョンの技術分野」においても使用し得るものといえる。
また、本件明細書等の【図5】に示された拡散レンズ40においても各レンズ部42同士の間には相当範囲の平坦部分が存在することが看取されることから、引用文献2の図1に示された光拡散体に広範囲の平坦部が存在することをもって、直ちに「マシンビジョンの技術分野」において使用できないものであるとはいえない。そして、引用文献2技術事項は「ピッチについて」も「選択することができ」るのであるから、平坦部の範囲が少ない光拡散体とすることも可能である。
ヒューマンビジョンであれ、マシンビジョンであれ、拡散板に要求される拡散機能は、受光側の感度・解像度に応じて定められるものであるところ、上述したように引用文献2技術事項はマシンビジョンに要求される拡散機能を達成できるものといえるから、当業者はヒューマンビジョンの技術分野の拡散板をマシンビジョンの技術分野の拡散板として採用しようとはしないという請求人の主張は根拠がない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
イ 請求人は、上記(1)ア(ウ)において、引用文献2技術事項は、磨りガラスと同程度の拡散機能を有するか否かは全く不明である旨主張する。
しかしながら、すりガラス表面の凹凸形状が、おおむね半球状の凸部を有するものではないとしても、引用文献2の段落【0007】には、磨りガラスを原型とすることもできることが記載されており、引用文献2技術事項は、磨りガラスの凹凸と同程度のサイズの凹凸を有する表面を原型とすることができるものである。
そして、引用文献2の段落【0019】に「モールドを一方向に延伸すると、それと直交方向には収縮変形する。したがって、一方向に2倍延伸すると面内の直交方向は約1/2に収縮するので、延伸によって4:1の縦横比に変形する。」と記載されていることから、引用文献2技術事項において、伸長方向と直行する方向の凸部の曲率半径は原型の曲率半径よりも小さくなり、それにより拡散角度は広くなると予測されることから、伸長方向と直行する方向の拡散機能は、伸張しない場合(原型と同じ形状)の拡散機能より向上すると予測される。
そうすると、引用文献2技術事項は、伸長方向と直行する方向の拡散機能として、磨りガラスと少なくとも同程度の拡散機能を有するものを包含しているといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
ウ 請求人は、上記(1)イにおいて、甲第70号証、甲第71号証及び甲第72号証に記載された実験結果を根拠に、本件訂正発明5は、引用発明と比較して顕著な予測できない効果を奏することから、進歩性を有する旨主張する。
しかしながら、効果の予測性は、主引用文献の記載のみに基づいて判断されるものではなく、副引用文献の記載をも含めて判断すべきものである。
そして、引用文献2の「微小凹凸形状を有する原型として、その表面に、ビーズがバインダーにより結合されている原型、磨りガラス、あるいは紙を用いることができる」(【0007】)、「微小凹凸のピッチが10μm以下の原型からも本発明の微小レンズアレイを備えた光拡散体を製造することが可能」(【0021】、【0028】)との記載から、引用文献2技術事項による拡散機能の程度は予測可能であるといえ、引用文献2技術事項を引用発明に採用した場合における照度ムラ低減の効果も予測可能であるといえる。
また、引用文献2の「本発明は光拡散体に関し、さらに詳しくは特に背面投射型表示装置あるいは前面投射型表示装置のスクリーンを初めとする各種スクリーン、液晶ディスプレイ等のバックライトからの光を拡散するための光拡散体、映写スクリーンに使用される光拡散体、広告用電飾看板バックライト用支持体、照明用カバー体等に好適な光拡散体の製造方法に関する」(【0001】)、「高解像度・高透過率を有する光拡散体の製造方法を提供する」(【0006】)との記載から、引用文献2技術事項の光透過性も予測可能であるといえる。
さらに、本件訂正発明5では、拡散レンズを形成する複数のレンズ部の曲率、大きさ、個数、ピッチ及び密度、並びに各LEDのピッチは特定されておらず、「前記拡散レンズは、前記撮像位置における光量のむらを低減するようにした」との特定事項を参酌するに、請求人が主張する本件訂正発明5の奏する効果は、特定の実施例における効果であって、本件訂正発明5全体が奏する効果であるとは認められない。
してみると、本件訂正発明5が、請求人が主張する顕著な予測できない効果を奏するとは認められない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
エ 請求人は、上記(1)ウにおいて、赤色LEDの配列方向と直交する方向への拡散を増大させようとする引用発明において、同方向へ光を集光させるロッドレンズを適用することには阻害要因が存在する旨主張する。
しかしながら、上記4(3)bで説示したとおり、引用発明において、ロッドレンズを採用することを阻害する事情があるとは認められない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
オ 以上のとおりであるから、請求人の主張はいずれも採用することができない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正発明5及び10は、特許法第29条第2項の規定により独立特許要件を満たさないから、訂正事項は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。
したがって、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-390162