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特許拒絶査定不服審判

2021-016867

内視鏡及び光学アダプタ

審判番号
2021-016867
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-149936外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月07日
審決日
2022年12月12日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-149936「内視鏡及び光学アダプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日出願公開、特開2019- 28366〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成29年8月2日の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。

令和 3年 2月22日付け:拒絶理由の通知
令和 3年 5月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 6月24日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
令和 3年 8月20日 :意見書の提出
令和 3年 9月24日付け:拒絶査定
令和 3年12月 7日 :審判請求書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし16に係る発明は、令和3年5月6日に提出された手続補正書でした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「被検体内に挿入可能な挿入部を有する内視鏡において、
前記挿入部の先端側に設けられ、画像を取得する撮像素子を有する先端部と、
該先端部に着脱可能な光学アダプタと、
前記先端部に装着された前記光学アダプタから入射した光を前記撮像素子に投影する撮像光学系と、
を有し、
前記撮像光学系は、第1のピント位置と前記第1のピント位置よりも近点である第2のピント位置で観察対象を撮像可能であり、前記第1のピント位置で前記観察対象を撮像するときの平行平板である透過性領域と、前記第2のピント位置で前記観察対象を撮像するときの絞りとを有し、前記撮像光学系の光路中に前記透過性領域又は前記絞りが配置可能な光学部材を有し、
前記光学部材が前記光学アダプタ内に設けられている、内視鏡。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の請求項1についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、その出願日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1.特開平4-208915号公報

引用文献2.特開平3-231234号公報

第4 引用文献の記載事項

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1 引用文献1について

(1)原査定が引用した引用文献1(特開平4-208915号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「【0005】又、実開昭58-86616号公報は、焦点調節操作の改良を目的にしている為、予め焦点調節をされた対物光学系全体を2種類保持し、しかも、それらは対物光学系の切り替え動作を繰り返す。ところで、対物光学系のレンズ群には、通常時は、焦点位置に影響を及ぼすレンズが少なくとも1枚存在する。この従来技術ではこの焦点位置に特に影響を及ぼすレンズも含めて切換動作を繰り返す為、経時的に焦点位置がずれないように特に堅牢に保持する必要があった。この為、対物光学系のレンズ保持装置が大型化・複雑化する欠点があった。
【0006】本発明は上記のような問題点を解決するために為されたもので、工業用の内視鏡装置、或いは、医療用の内視鏡装置に於いて、挿入部先端部を太径にすることなく簡単な構成で、遠くの検査対象を観察する時と、近くの検査対象を観察する時の双方で、検査対象に内視鏡装置を挿入し直すこともなく、挿入した状態で夫々に適した対物光学系を任意に選択できる内視鏡装置を提供することを目的とする。」
「【0017】図4乃至図8は本発明の第2実施例に係わり、図4は先端光学アダプタを持つ電子内視鏡システム23に本発明を適用した例である。本システム23は電子内視鏡24、光源25、カメラコントロールユニット26、モニタ27から構成される。図5は内視鏡先端部28の断面を示す。内視鏡本体29の外周部には先端光学アダプタ30を着脱自在に取り付けるためのロックリング31が設けられており、アダプタ本体32に設けた雌ねじ33は前記ロックリング31のロックネジ34に嵌合する。本実施例はこの先端光学アダプタ30に上記レンズ系交換手段35を設けた構成となっている。
【0018】内視鏡本体29の開口部36にはフレキシブル基板37に半田付けされた撮像素子38が固定されている。前記フレキシブル基板37には信号線39を束ねているケーブル40が電気的に接続されている。又、前記開口部36に平行に設けられている開口部41にはライトガイドファイババンドル42が設けられている。開口部36には撮像素子38の受光側からアダプタ本体32に至る間に対物光学系43が配置されている。又、ライトガイドファイババンドル42と光学アダプタ本体32の間には照明光を伝えるロッドレンズ44が設けられ、更にその先端には照明レンズ45が配置されている。対物光学系43の一部にはレンズ系交換手段35に保持されたレンズ8aと明るさ絞り9a及びレンズ8bと明るさ絞り9bとが含まれている。ここで用いたレンズと明るさ絞りの組は第1実施例のものと同じである。
【0019】図6に示すようにベース46は回動軸11を中心にして2個のストッパ12a、12bの間で回動ができる。この回動軸11にはベース46を任意に回動させるためのモータ47のシャフト48が嵌入され、該シャフト48はピン49によりベース46に固定されている。モータ47の電力線50a,50bは先端光学アダプタ30の接点51に導かれている。接点51は金属性の先端光学アダプタ30と電気的に絶縁する為にプラスチック性の絶縁物Aが覆設されている。一方内視鏡本体29側には電極52が設けられ、該電極52は金属性の内視鏡本体29と電気的に絶縁する為にプラスチック性の絶縁物B,Cが覆設されている。
【0020】更に、電極52は圧縮ばね53により、常時、図5中の左方向に付勢されている。先端光学アダプタ30を内視鏡本体29に取り付けると、図示しない凹凸状の位置決め機構により接点51と電極52は接触し、圧縮ばね53の付勢力により確実に導通するようになっている。尚、図中には接点51、電極52は1組しか示されていないが、勿論、モータ47の電力線50a、50bの本数すなわち2組設けてある。又、図6に示すように、ベース46には窪み54aと窪み54bが設けられており、これらの窪み54a、54bに押さえ部55が嵌合するように構成された板ばね56がアダプタ本体32に固着されている。窪み54a、54bはベース46が左右どちらかのストッパ12a,12bに当接したときに板ばね56の押さえ部55が、夫々、窪み54a、54bに嵌合する位置になっている。尚、窪み54a、54bの形状は板ばね56の押さえ部55の形状とは一致しておらず、常に板ばね56がベース46をストッパ12a又は12bに押しつける力が働くよう僅かにずれている。この構造により、レンズ8aと明るさ絞り9a、又は、レンズ8bと明るさ絞り9bとが対物光学系43の中で安定して光軸を一致するように配置される。
【0021】前記モータ47への通電は図示しない内視鏡操作部に設けられた切り換えスイッチで行われ、観察者がレンズ系交換手段35を時計方向、反時計方向のどちらにも任意に回動することができる。ベース46が図6中の時計方向に回動しストッパ12aに当接すると、板ばね56の押さえ部55が窪み54bに嵌合し、対物光学系43にはレンズ8bと明るさ絞り9bの光学系が対物光学系43の中で光軸に一致するように安定に配置される。一方、ベース46が反時計方向に回動しストッパ12bに当接すると、板ばね56の押さえ部55が窪み54aに嵌合し、対物光学系43にはレンズ8aと明るさ絞り9aの光学系が対物光学系43の中で光軸に一致するように安定に配置される。尚、ベース46がストッパ12a又は12bに当接しても観察者がスイッチを押し続け、モータ47への通電を続けるとモータ47が加熱し最悪の場合破壊されることがある。これを防止する為、この実施例では図示しないモータ47への電流を検知する検知手段を設け、所定時間を越えて基準値を越える電流が流れ続けると電流をカットする、図示しないモータ保護回路を設けている。
【0022】更に、図5に示すように上記対物光学系43には、順次、第1レンズ57、平行平面板58a、間隔板59、平行平面板58b及びスペーサ60が配設され、ボール61が前記平行平面板58a、58b及び間隔板59により形成される空間に遊装されている。又、レンズ系交換手段35の背後には中間レンズ系があり、そして、その後方の対物光学系43の結像部には赤外線カットフィルタ62、マスク63が順次設けられ、該マスク63は次の前記撮像素子38撮像面に接して配設される。この撮像素子38はその撮像面に結像した光学像を光電変換により画像信号にするもので、ケーブル40により図示しない挿入部を経て上記カメラコントロールユニット26に伝達される。又、図7は前記撮像素子38の撮像面にボール61の軌跡に対応したマスク63が接して設けられている状態を説明するものである。これによって、上記モニタ27には図8に示すような画像が得られ、ボール61の影の位置から画像面内での重力方向を知ることができる。尚、前記マスク63は内視鏡先端に設けずにカメラコントロールユニット26内部で電気的に設けても良い。
【0023】次に、上記第2実施例の動作を図5及び図6を参照して説明する。
【0024】内視鏡本体29の先端部が観察部位の近傍に挿入される(当審注:「挿入さる」は「挿入される」の明らかな誤記であるので、誤記を正した上で摘記した。)と照明レンズ45から出射される照明光は対象物に照射され、その反射光は、順次、第1レンズ57、平行平面板58a及び58bを透過しレンズ系交換手段35に入射する。ここで、遠方を観察する際は、観察者が図示しない内視鏡操作部に設けられた切り換えスイッチを操作し、ベース46が反時計方向に回動するようモータ47に通電すると、ベース46が回動し、ストッパ12bに当接して止まる。同時に、板ばね56の押さえ部55が窪み54aに嵌合し、遠点気味に焦点位置が設定されたレンズ8aと開放に近い明るさ絞り9aを有する光学系が対物光学系43に安定した状態で挿入される。
【0025】一方、近点を観察する際は、観察者が内視鏡操作部に設けられた切り換えスイッチを操作し、ベース46が時計方向に回動するようモータに通電すると板ばね56の押さえ部55の押圧力に抗してベース46が回動し、ストッパ12aに当接して止まる。同時に、板ばね56の押さえ部55が窪み54bに嵌合し、近点気味に焦点位置が設定されたレンズ8bと被写界深度が深くなるよう絞られた明るさ絞り9bとを有する光学系が対物光学系に安定した状態で挿入される。
【0026】このように構成した内視鏡装置によれば、観察対象に遠くから接近する時は遠点に最良焦点位置を有する明るい対物光学系を用い、損傷等を発見し詳細に観察したい時は近点に最良焦点位置を有する観察深度の深い対物光学系を用いて観察できるので、損傷等の目標点を見失うことなく、又、接近しても明るすぎて見えにくいこともなく確実に、且つ、詳細に観察ができる。又、この実施例では、アダプタ本体32の第1レンズ57の近傍に重力検知用のボールを設けただけで重力方向を検知出来るため、既存の先端光学アダプタ交換式の内視鏡装置へ簡単に、且つ、安価に利用できる。又、ボール61を封止した空間内に粘性を持つ液体を封入し、ボール61の振動を少なくしても良い。」
「【図面の簡単な説明】
・・・略・・・
【図6】駆動手段としてモータを用いたレンズ交換手段を挿入部長手方向から見た斜視図。
・・・略・・・」

図4~6は以下のとおりである。

[図:0001394667000001.jpg]

[図:0001394667000002.jpg]

[図:0001394667000003.jpg]

(2)引用発明

上記(1)によれば、引用文献1には、第2実施例(図4~6)に係る電子内視鏡24について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明等の認定に用いた段落の段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。

「先端光学アダプタ30を持つ電子内視鏡24であって、
内視鏡本体29の外周部には先端光学アダプタ30が着脱自在に取り付けられており、
先端光学アダプタ30にレンズ系交換手段35を設けた構成となっており、(【0017】)
内視鏡本体29の開口部36には撮像素子38が固定されており、
続きを表示(全17行)
開口部36には撮像素子38の受光側からアダプタ本体32に至る間に対物光学系43が配置されており、
対物光学系43の一部にはレンズ系交換手段35に保持されたレンズ8aと明るさ絞り9a及びレンズ8bと明るさ絞り9bとが含まれており、(【0018】)
レンズ系交換手段35については、(【図面の簡単な説明】の【図6】)
ベース46は回動軸11を中心にして2個のストッパ12a、12bの間で回動ができ、(【0019】)
ベース46には窪み54aと窪み54bが設けられており、これらの窪み54a、54bに押さえ部55が嵌合するように構成された板ばね56がアダプタ本体32に固着されており、窪み54a、54bはベース46が左右どちらかのストッパ12a,12bに当接したときに板ばね56の押さえ部55が、夫々、窪み54a、54bに嵌合する位置になっており、尚、窪み54a、54bの形状は板ばね56の押さえ部55の形状とは一致しておらず、常に板ばね56がベース46をストッパ12a又は12bに押しつける力が働くよう僅かにずれており、この構造により、レンズ8aと明るさ絞り9a、又は、レンズ8bと明るさ絞り9bとが対物光学系43の中で安定して光軸を一致するように配置されるものであり、(【0020】)
観察者がレンズ系交換手段35を時計方向、反時計方向のどちらにも任意に回動することができ、
ベース46が時計方向に回動しストッパ12aに当接すると、板ばね56の押さえ部55が窪み54bに嵌合し、対物光学系43にはレンズ8bと明るさ絞り9bの光学系が対物光学系43の中で光軸に一致するように安定に配置され、
ベース46が反時計方向に回動しストッパ12bに当接すると、板ばね56の押さえ部55が窪み54aに嵌合し、対物光学系43にはレンズ8aと明るさ絞り9aの光学系が対物光学系43の中で光軸に一致するように安定に配置され、(【0021】)
内視鏡本体29の先端部が観察部位の近傍に挿入されると照明レンズ45から出射される照明光は対象物に照射され、その反射光は、レンズ系交換手段35に入射し、
遠方を観察する際は、観察者が内視鏡操作部に設けられた切り換えスイッチを操作し、ベース46が反時計方向に回動するようモータ47に通電すると、ベース46が回動し、ストッパ12bに当接して止まり、同時に、板ばね56の押さえ部55が窪み54aに嵌合し、遠点気味に焦点位置が設定されたレンズ8aと開放に近い明るさ絞り9aを有する光学系が対物光学系43に安定した状態で挿入され、(【0024】)
近点を観察する際は、観察者が内視鏡操作部に設けられた切り換えスイッチを操作し、ベース46が時計方向に回動するようモータに通電すると板ばね56の押さえ部55の押圧力に抗してベース46が回動し、ストッパ12aに当接して止まり、同時に、板ばね56の押さえ部55が窪み54bに嵌合し、近点気味に焦点位置が設定されたレンズ8bと被写界深度が深くなるよう絞られた明るさ絞り9bとを有する光学系が対物光学系に安定した状態で挿入され、(【0025】)
観察対象に遠くから接近する時は遠点に最良焦点位置を有する明るい対物光学系を用い、損傷等を発見し詳細に観察したい時は近点に最良焦点位置を有する観察深度の深い対物光学系を用いて観察できるので、損傷等の目標点を見失うことなく、又、接近しても明るすぎて見えにくいこともなく確実に、且つ、詳細に観察ができる、(【0026】)
電子内視鏡24。」

2 引用文献2について

(1)原査定が引用した引用文献2(特開平3-231234号公報)には、以下の事項が記載されている。

「〔産業上の利用分野〕
本発明はカメラの制御方法に係り、特に自動合焦システムを簡易で且つ繰り返し誤差の少ない機構とすることができるカメラの制御方法に関する。 〔従来の技術〕
一般に、自動合焦機構は被写体距離に応じてレンズをヘリコイドねじにより繰り出すことによってピント調節を行っている。また、被写体距離に応じて絞りを制御することは公知である。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記従来の自動合焦機構は、レンズを移動させるため機械的ストップ誤差が入りやすく、許容錯乱円直径が小さくなりレンズの移動制御量が小さくなってくると、このストップ誤差が問題となってくる。
また、従来のカメラ技術では、合焦制御と絞りとが有機的に組み合わさっていないため、合焦範囲を広くして撮影するということがなされていない。 本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、被写体に対して自動合焦システムを簡易で且つ繰り返し誤差の少ない機構とするとともに、被写体側での深度を可能な限り広くすることができるカメラの制御方法を提供することを目的とする。
〔課題を解決する為の手段〕
本発明は、前記目的を達成する為に、撮影レンズの光軸上に1又は複数の平行平板光学素子を出し入れすることにより該撮影レンズのピント位置を調節するようにしたカメラの制御方法において、被写体の距離及び明るさを示す測距値及び測光値を測定し、前記測定した測距値に基づいて前記平行平板光学素子の出し入れを選択するとともに、前記測定した測距値及び測光値に基づいて絞りの選択及びシャッタ速度の決定を行うようにしたことを特徴としている。
〔作用〕
本発明によれば、撮影レンズの光軸上に平行平板光学素子を出し入れすることにより、ピント位置を調節するようにしている。そして、この平行平板素子の出し入れは、測距した被写体距離に基づいて選択するようにしている。この合焦システムによるピント位置調節は、平行平板光学素子の出し入れによって行われるため、その繰り返し誤差は皆無である。また、測定した被写体の距離及び明るさに基づいて絞りの選択を行うようにしている。この絞りの選択に際し、明るい被写体ではその絞りを選択できる範囲が広がるが、この場合には、最も被写界深度の深い絞りを選択するようにしている。」(2頁右欄7行~3頁右上欄下から6行)
「次に、本発明に係るカメラの制御方法について詳述する。
前述したように、Tレンズ20の後方に平行ガラス128を出し入れすることによって、第18図及び第19図に示すように平行ガラス128が退避している状態では、物点Aが撮像面に結像し、平行ガラス128が入った状態では物点Aよりも遠い物点Bが撮像面に結像することになる。
即ち、平行ガラス128の出し入れにより2点の合焦点が設定できる。尚、平行ガラス128を入れた場合には、Tレンズ202を、L×(1-1n)だけ撮像面側に繰り込んだのと同じ効果が得られる。ここで、Lは平行ガラス128の厚さ、nは平行ガラス128の屈折率である。」(8頁右上欄16行~左下欄8行)
「〔発明の効果〕
以上説明したように本発明に係るカメラの制御方法によれば、平行平板光学素子の出し入れによって撮影レンズのピント位置を選択するようにしたため、自動合焦システムの簡易化が図れると共に、ピント位置の繰り返し誤差が生じないという利点があり、被写体側での深度を可能な限り深くすることができる。」(9頁左上欄下から7行~右上欄1行)

第18図、第19図は以下のとおりである。

[図:0001394667000004.jpg]

(2)引用文献2に記載された技術的事項

上記(1)によれば、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「自動合焦システムを簡易で且つ繰り返し誤差の少ない機構とすることができるカメラの制御方法に関するものであって、(〔産業上の利用分野〕)
被写体距離に応じてレンズをヘリコイドねじにより繰り出す従来の自動合焦機構は、レンズを移動させるため機械的ストップ誤差が入りやすいという課題があるところ、(〔従来の技術〕・〔発明が解決しようとする課題〕)
この課題を解決するために、撮影レンズの光軸上に平行平板光学素子を出し入れすることにより、ピント位置を調節するようにしたので、自動合焦システムの簡易化が図れるとともに、ピント位置の繰り返し誤差が生じないこと、(〔課題を解決する為の手段〕・〔発明の効果〕)
さらに、平行ガラスが入った状態では、平行ガラスが退避している状態よりも遠い物点が撮像面に結像すること。(8頁右上欄下から2行~左下欄4行)」

第5 対比並びに一致点及び相違点の認定

1 対比

本願発明と引用発明を対比する。

(1)本願発明の「検体内に挿入可能な挿入部を有する内視鏡において、」との特定事項について

引用発明の「電子内視鏡24」は、本願発明の「内視鏡」に相当する。

引用発明は、「内視鏡本体29の先端部が観察部位の近傍に挿入される」ものであるから、本願発明でいう「検体内に挿入可能な挿入部」を有することが明らかである。

よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。

(2)本願発明の「前記挿入部の先端側に設けられ、画像を取得する撮像素子を有する先端部と、該先端部に着脱可能な光学アダプタと、前記先端部に装着された前記光学アダプタから入射した光を前記撮像素子に投影する撮像光学系と、を有し、」との特定事項について

ア 引用発明の「撮像素子38」は、本願発明の「画像を取得する撮像素子」に相当する。

引用発明の「内視鏡本体29の先端部」は、本願発明の「前記挿入部の先端側に設けられ」た「先端部」に相当する。

引用発明の当該「撮像素子38」は、「内視鏡本体29の開口部36」に固定されており、当該「内視鏡本体29の開口部36」は、内視鏡本体29の先端部に存在すると解されるから、当該「撮像素子38」は、本願発明でいう「先端部」に有されている。

イ 引用発明の「先端光学アダプタ30」は、本願発明の「光学アダプタ」に相当する。

引用発明の当該「先端光学アダプタ30」は、「内視鏡本体29」(上記アのとおり、その「先端部」が本願発明の「先端部」に相当。)の「外周部」に「着脱自在に取り付けられて」いるから、本願発明でいう「該先端部に着脱可能な」ものといえる。

ウ 引用発明には、「撮像素子38の受光側からアダプタ本体32に至る間に対物光学系43が配置されて」いるところ、当該「対物光学系43」が本願発明の「撮像光学系」に相当する。そして、当該「対物光学系43」が、本願発明でいう「前記先端部に装着された前記光学アダプタから入射した光を前記撮像素子に投影する」ものであることは、明らかである。

エ よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。

(3)本願発明の「前記撮像光学系は、第1のピント位置と前記第1のピント位置よりも近点である第2のピント位置で観察対象を撮像可能であり、前記第1のピント位置で前記観察対象を撮像するときの平行平板である透過性領域と、前記第2のピント位置で前記観察対象を撮像するときの絞りとを有し、前記撮像光学系の光路中に前記透過性領域又は前記絞りが配置可能な光学部材を有し、」との特定事項について

ア 引用発明の「レンズ系交換手段35」は、本願発明の「光学部材」に相当する。

イ(ア)引用発明の当該「レンズ系交換手段35」は、「ベース46」に「レンズ8aと明るさ絞り9a」と「レンズ8bと明るさ絞り9b」とが設けられた構造であって、当該「レンズ8aと明るさ絞り9a」と当該「レンズ8bと明るさ絞り9b」とのいずれかが「対物光学系43」の光軸に一致するように切り替えて配置できるものといえる。そして、当該「レンズ8aと明るさ絞り9a」は「遠点気味に焦点位置が設定されたレンズ8aと開放に近い明るさ絞り9a」であり、当該「レンズ8bと明るさ絞り9b」は「近点気味に焦点位置が設定されたレンズ8bと被写界深度が深くなるよう絞られた明るさ絞り9b」である(以下「レンズ8aと明るさ絞り9a」を「遠点レンズ・絞りa」といい、「レンズ8bと明るさ絞り9b」を「近点レンズ・絞りb」という。)。

(イ)このように、引用発明の遠点レンズ・絞りaは「遠点気味に焦点位置が設定されたレンズ8a」に係るものであるから、引用発明は、遠点レンズ・絞りaが「対物光学系43」の光軸に一致するように配置されたときは、本願発明でいう「前記撮像光学系は、第1のピント位置」「で観察対象を撮像可能であ」るものとなる。

また、引用発明の近点レンズ・絞りbは「近点気味に焦点位置が設定されたレンズ8b」に係るものであるから、引用発明は、近点レンズ・絞りbが「対物光学系43」の光軸に一致するように配置されたときは、本願発明でいう「前記撮像光学系は、」「前記第1のピント位置よりも近点である第2のピント位置で観察対象を撮像可能であ」るものとなる。

(ウ)引用発明の遠点レンズ・絞りa(本願発明でいう「第1のピント位置」での撮像に用いるもの。)のうちの「レンズ8a」は、本願発明の「前記第1のピント位置で前記観察対象を撮像するときの平行平板である透過性領域」とは、「前記第1のピント位置で前記観察対象を撮像するときの」「透過性領域」の点で一致する。

また、引用発明の近点レンズ・絞りb(本願発明でいう「第2のピント位置」での撮像に用いるもの。)のうちの「明るさ絞り9b」は、本願発明の「絞り」に相当し、本願発明でいう「前記第2のピント位置で前記観察対象を撮像するときの」ものといえる。

(エ)引用発明の「レンズ系交換手段35」(本願発明の「光学部材」に相当。)は、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbを設けた構造であるから、上記(イ)及び(ウ)に照らせば、当該「レンズ系交換手段35」は、本願発明でいう「前記第1のピント位置で前記観察対象を撮像するときの」「透過性領域」と「前記第2のピント位置で前記観察対象を撮像するときの絞り」とを有するものといえる。

そして、当該「レンズ系交換手段35」は、遠点レンズ・絞りaと近点レンズ・絞りbとのいずれかが「対物光学系43」の光軸に一致するように切り替えて配置できるものであるから、本願発明でいう「前記撮像光学系の光路中に前記透過性領域又は前記絞りが配置可能な」ものといえる。

ウ 以上によれば、本願発明と引用発明とは、「前記撮像光学系は、第1のピント位置と前記第1のピント位置よりも近点である第2のピント位置で観察対象を撮像可能であり、前記第1のピント位置で前記観察対象を撮像するときの」「透過性領域」と、「前記第2のピント位置で前記観察対象を撮像するときの絞りとを有し、前記撮像光学系の光路中に前記透過性領域又は前記絞りが配置可能な光学部材を有」する点で一致するが、「透過性領域」が、本願発明では「平行平板」であるのに対し、引用発明では「レンズ8a」である。

(4)本願発明の「前記光学部材が前記光学アダプタ内に設けられている、」との特定事項について

引用発明では、「先端光学アダプタ30にレンズ系交換手段35を設けた構成となって」いるところ、当該「レンズ系交換部材35」(本願発明の「光学部材」に相当。)は、当該「先端光学アダプタ30」(本願発明の「光学アダプタ」に相当。)内に設けられているといえる。

よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。

2 一致点及び相違点の認定

上記1によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】

「被検体内に挿入可能な挿入部を有する内視鏡において、
前記挿入部の先端側に設けられ、画像を取得する撮像素子を有する先端部と、
該先端部に着脱可能な光学アダプタと、
前記先端部に装着された前記光学アダプタから入射した光を前記撮像素子に投影する撮像光学系と、
を有し、
前記撮像光学系は、第1のピント位置と前記第1のピント位置よりも近点である第2のピント位置で観察対象を撮像可能であり、前記第1のピント位置で前記観察対象を撮像するときの透過性領域と、前記第2のピント位置で前記観察対象を撮像するときの絞りとを有し、前記撮像光学系の光路中に前記透過性領域又は前記絞りが配置可能な光学部材を有し、
前記光学部材が前記光学アダプタ内に設けられている、内視鏡。」

【相違点】

「前記撮像光学系の光路中に前記透過性領域又は前記絞りが配置可能な光学部材」における「透過性領域」が、本願発明は「平行平板」であるのに、引用発明は「レンズ8a」である点。

第6 判断

1 相違点に対する判断

(1)引用発明において相違点に係る本願発明の構成に至るためには、引用発明の「レンズ系交換手段35」において、「明るさ絞り9a」及び「明るさ絞り9b」をそのまま維持する一方で、「レンズ8a」を「平行平板」に置換するとともに、「レンズ8b」をなくすように変更すれば足りると解される。

そこで、引用発明から出発した当業者が上記変更に至るかを検討する。

(2)引用発明の「レンズ系交換手段35」は、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbという光学要素を対物光学系43の中で光軸に一致するように切り替えて配置するものであるところ、引用発明では、これらの光学要素を、その光軸が対物光学系43の光軸と一致する状態になるように配置しており(以下、何らかの光学要素について、その光軸が、当該光学要素が設けられる光学系の光軸と一致する状態になるように配置することを、当該光学要素について「光軸一致状態配置」をするという。)、併せて、この配置を安定的に得るための工夫がされている。そして、引用発明におけるこれらの工夫は、具体的には、(i)これらの光学要素を設けた「ベース46」が回動できる範囲を画定するための「ストッパ12a」及び「ストッパ12b」を設けること、(ii)「ベース46」に「窪み54a」及び「窪み54b」を設け、「ベース46」が「ストッパ12a」又は「ストッパ12b」の一方に当接したときに、当該「窪み54a」又は「窪み54b」の一方に、「板ばね56」の「押さえ部55」が嵌合するようにすること、(iii)「窪み54a」及び「窪み54b」の形状を「板ばね56」の「押さえ部55」の形状とは一致させず、常に「板ばね56」が「ベース46」を「ストッパ12a」又は「ストッパ12b」のいずれか一方に押しつける力が働くようにさせること、であると認められる。

このように、引用発明では、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbという光学要素について光軸一致状態配置を安定的に得るための工夫がなされていることから、当該光学要素について光軸一致状態配置をすることの必要性が当然の前提として認識されているといえる。しかしながら、他方で、これらの工夫は、上記のとおり、機械的構造を用いたものであるところ、引用発明が属する内視鏡といった機械的な装置の技術分野においては、その製造時や使用時において、加工誤差や取り付け誤差その他の製造時の誤差や部品の変形・劣化等に伴う経時的な誤差といった様々な機械的な誤差が発生することが一般的に知られている。そうすると、引用発明においては、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbという光学要素について光軸一致状態配置を安定的に得るための工夫がなされているといっても、「ストッパ」、「板ばねの押さえ部」、「窪み」及び「ベース」といった機械的な誤差を発生させる要因が含まれている以上、当業者であれば、上記の光軸一致状態配置が安定的になされない可能性があることを想定できる。

このようにして、引用発明に接した当業者は、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbについて、光軸一致状態配置が安定的になされないという課題を認識するということができ、そうである以上、これを解決する動機をもつといえる。

(3)そして、引用文献2には、上記第4の2(2)のとおり、自動合焦システムを簡易で且つ繰り返し誤差の少ない機構とすることができるカメラの制御方法に関するものであって、被写体距離に応じてレンズをヘリコイドねじにより繰り出す従来の自動合焦機構は、レンズを移動させるため機械的ストップ誤差が入りやすいという課題があるところ、この課題を解決するために、撮影レンズの光軸上に平行平板光学素子を出し入れすることにより、ピント位置を調節するようにしたので、自動合焦システムの簡易化が図れるとともに、ピント位置の繰り返し誤差が生じないこと、さらに、平行ガラスが入った状態では、平行ガラスが退避している状態よりも、遠い物点が撮像面に結像すること、という技術的事項が記載されている。

(4)引用発明に接した当業者は、上記(2)のとおり、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbについて光軸一致状態配置が安定的になされないという課題を解決する動機をもつところ、このような動機をもつ当業者は、合焦制御に係る技術分野に属する上記(3)の引用文献2に記載された技術的事項に接することができる。そして、引用発明に接した当業者は、引用文献2に記載された技術的事項が、合焦位置を遠点と近点とで切り替える機能を有する点で共通することを理解できるといえるところ、上記当業者は、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbについて光軸一致状態配置が安定的になされないという引用発明の課題を認識しており、しかも、当該技術的事項で用いられている平行平板光学素子が光軸をもたないことは自明であることから、当業者は、引用発明に当該技術的事項が採用されれば、平行平板光学素子について光軸一致状態配置がそもそも不要になることを通じて、上記課題を解決できることを認識できるといえる。

このようにして、引用発明に接した当業者は、上記課題を解決するために、引用文献2に記載された技術的事項を採用して、引用発明の遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbにおける「レンズ8a」及び「レンズ8b」を、それぞれ、平行平板光学素子が存在する状態及び不存在の状態に置換することを、容易に想到し得る。その際、「明るさ絞り9a」及び「明るさ絞り9b」については、合焦制御のために設けられているのではなく、明るさの調整のために設けられているのであり、しかも、レンズに比べれば光軸上への配置につき求められる精度が高くはないことから、当業者であれば、上記採用の際に、これらをそのまま維持するようにすることができるといえる。

(5)以上の次第で、当業者は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づき、相違点に係る本願発明の構成に至る。

2 効果について

本願発明の効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 請求人の主張について

(1)請求人は、引用発明における「レンズ8a」をあえて平行平板に変更する動機付けはない旨主張し、その根拠として、引用文献1には、本願の願書に添付された明細書(以下「本願明細書」という。)に記載されたところの、機械的駆動機構における製造上の精度や経年変化といった課題について記載も示唆もないことを挙げる。

しかしながら、上記1(2)で説示したとおり、引用発明においても、遠点レンズ・絞りa及び近点レンズ・絞りbについて光軸一致状態配置が安定的になされる必要があることが認識されているのであり、しかも、機械的構造は種々の製造誤差や経時的な誤差をもたらすことが技術常識であるから、引用発明に接した当業者であれば、引用文献1に明記がないとしても、請求人が主張する課題を認識できるといえる。

さらに、請求人は、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項とがピント調整機能として共通しているとしても、そのことをもって、引用発明に当該技術的事項を採用する動機付けとはならない旨主張し、その根拠として、ピント調整機能は、一般的な機能にすぎず、しかも、特定の手法に限定されない様々な解決方法が存在することから、引用発明において、本願明細書に記載された課題が設定されない限り、あえて、様々な解決方法の中から、当該技術的事項を組み合わせる必然性は生じない旨主張するが、引用発明に接した当業者が、請求人が主張する課題を認識できることは上記のとおりであるし、ピント調整機能に関し様々な解決方法が存在するとしても、当業者は、それらに接することができるし、また、上記2(4)で説示したとおりの認識を経て引用文献2に記載された技術的事項を課題解決のために採用できるといえる。

(2)請求人は、引用文献2には、本願発明のような絞りと平行平板が択一的に配置されるように切り替えられる構成が開示されていない旨主張するが、上記1のとおり、当業者は、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を採用することにより相違点に係る本願発明の構成に至る。

4 小括

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

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2021-016867

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