特許拒絶査定不服審判
2023-018201
顕微鏡のビーム経路内の試料ホルダの厚さを決定する方法
- 審判番号
- 2023-018201
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-234158
- 請求日
- 2023年10月27日
- 審決日
- 2025年04月24日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】宮崎 修
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 後藤 孝平
- 審判官 吉野 三寛
- 分類
- P18 .562-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-234158「顕微鏡のビーム経路内の試料ホルダの厚さを決定する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 7月 4日出願公開、特開2019-109513〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概要
本願は、平成30年12月14日(パリ条約による優先権主張 2017年12月18日(以下「優先日」という。) ドイツ)を出願日とする外国語書面出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
平成31年 2月 4日 :翻訳文の提出
令和 4年10月 5日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 3月13日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月27日 :原査定の謄本の送達)
同年10月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年10月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年3月13日にされた手続補正後をいう。)の請求項1は、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
顕微鏡(1)のビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法であって、
前記試料ホルダは、照明放射(BS)に対して透明であって、前記試料ホルダの内部に試料(5)を収容するために構成されており、
当該方法は、
A:第1界面(OS)及び第2界面(US)を有する前記試料ホルダ(7)を試料平面(4)内に配置するステップであって、前記試料平面(4)はデカルト座標のX軸(X)及びY軸(Y)にまたがるXY平面内にある、ステップと、
B:前記第1界面(OS)及び前記第2界面(US)を前記試料平面(4)と平行に整列させるステップと、
C:前記照明放射(BS)の少なくとも1つのビームを第1光軸(A1)に沿って、照明角度において、整列された前記試料ホルダ(7)上に方向づけるステップであって、前記第1光軸(A1)と、XY平面に対して垂直な参照軸との間の照明角度は、ゼロと異なる、ステップと、
D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値、又は前記照明放射(BS)によって生じる検出放射(DS)の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップと、
E:捕捉された前記少なくとも2つの測定値に応じて、Z軸方向における前記第1界面と第2界面と(OS,US)との相互の間隔を厚さ(d)として特定するステップと、
を含む、方法。」
(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
照明ビーム路のビーム経路内に配置された補正要素(12)を駆動制御して、光シート顕微鏡(1)の前記ビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法であって、
前記試料ホルダは、照明放射(BS)に対して透明であって、前記試料ホルダの内部に試料(5)を収容するために構成されており、
当該方法は、
A:第1界面(OS)及び第2界面(US)を有する前記試料ホルダ(7)を試料平面(4)内に配置するステップであって、前記試料平面(4)はデカルト座標のX軸(X)及びY軸(Y)にまたがるXY平面内にある、ステップと、
B:前記第1界面(OS)及び前記第2界面(US)を前記試料平面(4)と平行に整列させるステップと、
C:前記照明放射(BS)の少なくとも1つのビームを第1光軸(A1)に沿って、照明角度において、整列された前記試料ホルダ(7)上に方向づけるステップであって、前記第1光軸(A1)と、XY平面に対して垂直な参照軸との間の照明角度は、ゼロと異なる、
前記照明放射(BS)は、自己再構築ビーム又は回折のないビームを有する放射であり、固有の構造を有し、したがって構造化されたビーム形状であり、前記照明放射(BS)によって前記試料平面(4)内に光シート(6)が生成され、前記光シート(6)は、前記構造化されたビーム形状の作用による構造化された光シートであり、前記構造化された光シートはテスト格子として使用され、前記試料(5)内の対応する構造化蛍光放射線は、前記試料(5)上にもたらされる構造化された光シート(6)の効果によって励起され、構造化された励起蛍光放射線の信号は検出放射線(DS)として捕捉され、前記テスト格子に、コントラストの画質尺度、シャープネス尺度、信号対雑音比、信号強度及び点広がり関数のパラメータのうち少なくとも1つを適用する、ステップと、
D:前記照明放射(BS)によって生じる検出放射(DS)の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップと、
E:捕捉された前記少なくとも2つの測定値に応じて、Z軸方向における前記第1界面と第2界面と(OS,US)との相互の間隔を厚さ(d)として特定するステップであって、i) 決定された厚さ(d)に応じて、照明放射線(BS)のビーム経路内及び検出放射(DS)のビーム経路内に配置された光学的に作用する補正要素(12)を駆動制御し、それぞれのビーム経路内においてそれらの相対位置を調整し、
ii) 前記補正要素(12)の少なくとも1つの実際の位置を変更し、選択された実際位置のそれぞれに割り当てられた前記画質尺度の測定値を捕捉し、画質尺度の測定値に基づいて前記画質尺度の現在値をそれぞれ決定し、前記画質尺度の所望の値が存在する少なくとも1つの前記補正要素(12)の実際位置を選択する、ステップと、
を含む、方法。」
2 本件補正の適否(新規事項の追加の有無)
本件補正が、平成31年2月4日に提出された外国語書面の翻訳文(以下、単に「翻訳文」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものであるかについて以下検討する。
(1)本件補正の内容
ア 本件補正後の請求項1の記載は、前記1(2)に示したとおりであるところ、本件補正により、
(ア)本件補正前の「顕微鏡(1)のビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法」が、「照明ビーム路のビーム経路内に配置された補正要素(12)を駆動制御して、光シート顕微鏡(1)の前記ビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法」に補正され、
(イ)本件補正前の「C」の「ステップ」が、「前記照明放射(BS)は、自己再構築ビーム又は回折のないビームを有する放射であり、固有の構造を有し、したがって構造化されたビーム形状であり、前記照明放射(BS)によって前記試料平面(4)内に光シート(6)が生成され、前記光シート(6)は、前記構造化されたビーム形状の作用による構造化された光シートであり、前記構造化された光シートはテスト格子として使用され、前記試料(5)内の対応する構造化蛍光放射線は、前記試料(5)上にもたらされる構造化された光シート(6)の効果によって励起され、構造化された励起蛍光放射線の信号は検出放射線(DS)として捕捉され、前記テスト格子に、コントラストの画質尺度、シャープネス尺度、信号対雑音比、信号強度及び点広がり関数のパラメータのうち少なくとも1つを適用する、ステップ」に補正され、
(ウ)本件補正前の「D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値、又は前記照明放射(BS)によって生じる検出放射(DS)の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップ」が、「D:前記照明放射(BS)によって生じる検出放射(DS)の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップ」に補正され、
(エ)本件補正前の「E:捕捉された前記少なくとも2つの測定値に応じて、Z軸方向における前記第1界面と第2界面と(OS,US)との相互の間隔を厚さ(d)として特定するステップ」が、「E:捕捉された前記少なくとも2つの測定値に応じて、Z軸方向における前記第1界面と第2界面と(OS,US)との相互の間隔を厚さ(d)として特定するステップであって、i) 決定された厚さ(d)に応じて、照明放射線(BS)のビーム経路内及び検出放射(DS)のビーム経路内に配置された光学的に作用する補正要素(12)を駆動制御し、それぞれのビーム経路内においてそれらの相対位置を調整し、
ii) 前記補正要素(12)の少なくとも1つの実際の位置を変更し、選択された実際位置のそれぞれに割り当てられた前記画質尺度の測定値を捕捉し、画質尺度の測定値に基づいて前記画質尺度の現在値をそれぞれ決定し、前記画質尺度の所望の値が存在する少なくとも1つの前記補正要素(12)の実際位置を選択する、ステップ」に補正された。
イ したがって、前記ア(ア)及び同(エ)から、本件補正前の「顕微鏡(1)のビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法」が、「照明ビーム路のビーム経路内に配置された補正要素(12)を駆動制御」することにより行われること、及び「i) 決定された厚さ(d)に応じて、照明放射線(BS)のビーム経路内及び検出放射(DS)のビーム経路内に配置された光学的に作用する補正要素(12)を駆動制御し、それぞれのビーム経路内においてそれらの相対位置を調整」することが追加されたこととなる。以下、ここで追加された、試料ホルダの厚さを決定する方法が照明ビーム路のビーム経路に配置された補正要素(12)を駆動制御することにより行われること(以下「本件照明ビーム経路厚さ決定」という。)とともに、このように決定された厚さに応じて、検出放射(DS)のビーム経路内に配置された光学的に作用する補正要素(12)を駆動制御し、検出放射(DS)のビーム経路内においてその相対位置を調整(以下「本件検出ビーム経路調整」という。)するとの事項、すなわち、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することが翻訳文に記載した事項の範囲内であるかどうかについて検討する。
(2)翻訳文の記載
本件照明ビーム経路厚さ決定及び本件検出ビーム経路調整に関連する記載として、翻訳文には次の記載がある(下線は当合議体が付した。)。
「【請求項1】
顕微鏡(1)のビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法であって、
前記試料ホルダは、照明放射(BS)に対して透明であって、試料(5)を収容するために構成されており、
当該方法は、
A:第1界面(OS)及び第2界面(US)を有する前記試料ホルダ(7)を試料平面(4)内に配置するステップであって、前記試料平面(4)はデカルト座標のX軸(X)及びY軸(Y)にまたがるXY平面内にある、ステップと、
B:前記第1界面(OS)及び前記第2界面(US)を前記試料平面(4)と平行に整列させるステップと、
C:前記照明放射(BS)の少なくとも1つのビームを第1光軸(A1)に沿って、照明角度において、整列された前記試料ホルダ(7)上に方向づけるステップと、
D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値、又は前記照明放射(BS)によって生じる検出放射(DS)の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップと、
E:捕捉された前記少なくとも2つの測定値に応じて、Z軸方向における前記第1界面と第2界面と(OS,US)との相互の間隔を厚さ(d)として特定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記照明放射(BS)の前記ビーム経路、前記反射成分(BSref)のビーム経路及び/又は前記検出放射(DS)のビーム経路に配置された光学的に作用する補正素子(12)は、前記の特定された厚さ(d)に応じて駆動制御され、それぞれのビーム経路内における相対位置が調整される、
請求項1記載の方法。」
「【請求項4】
ステップCにおいて、前記第1光軸(A1)と、XY平面に対して垂直な参照軸との間の照明角度は、ゼロと異なり、
ステップDにおいて、前記試料ホルダ(7)の前記第1界面(OS)から又は前記第2界面(US)から反射される前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)は、所期の相対位置において第1測定値として検出器(9)によって捕捉され、その後、それぞれ他方の界面(OS,US)の反射成分(BSref)が前記所期の相対位置において、第2測定値として前記検出器によって捕捉されるまで、前記試料ホルダ(7)はXY平面に対して垂直に方向づけられた前記Z軸方向に移動され、
ステップEにおいて、前記Z軸方向における移動経路(d’)は、前記第1測定値及び前記第2測定値に基づいて特定され、前記移動経路は、前記所期の相対位置において、前記第1及び第2界面(OS,US)の反射成分(BSref)を捕捉するために必要であり、前記厚さ(d)が特定される、
請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
画質尺度が定義され、
複数の前記補正素子(12)のうちの少なくとも1つの補正素子(12)の実際の配置が変更され、
前記画質尺度の測定値は、選択された実際の配置のそれぞれに割り当てられて捕捉され、
複数の、前記画質尺度の前記測定値に基づいて、それぞれ1つの、前記画質尺度の現在値が特定され、
前記画質尺度の所望の値が存在する、前記少なくとも1つの補正素子(12)の実際の配置が選択される、
請求項2乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記測定値は、コントラストの画質尺度、シャープネス尺度、信号対雑音比、信号強度及び点広がり関数のパラメータのうち少なくとも1つを使用する、
請求項5記載の方法。」
「【発明の概要】
【0012】
本発明は、顕微鏡のビーム経路内の試料ホルダの厚さを決定する方法を提案するという目的に基づく。」
「【0018】
ステップDは、照明放射の反射成分の少なくとも2つの測定値を捕捉するか、又は照明放射によって生じる検出放射の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップに関する。
【0019】
その後、ステップEにおいて、少なくとも2つの捕捉された測定値に応じて、Z軸方向における第1側と第2側面との相互の間隔が、厚さとして特定される。」
「【0022】
本発明による方法では、測定信号が使用され、その値は試料ホルダの厚さによって顕著に影響される。試料ホルダの厚さに関する特定された情報は、有利には、ビーム経路において必要な補正を行うために、例えば収差を低減するために使用することができる。照明放射のビーム経路内、反射成分のビーム経路内及び/又は検出放射のビーム経路内に配置された光学的に有効な補正素子は、特定された厚さに応じて駆動制御されることができ、それらの相対位置及び光学的補正作用はそれぞれのビーム経路内で設定される。
【0023】
補正素子は、例えば、制御されて相互に移動可能な複数のアルバレスプレート(アルヴァレスマニピュレータとも称される)であり、従って、相互に正確に位置決めされたアルバレスプレートの光学作用として、複数の対物レンズ、照明放射・検出放射の波長及び/又は試料ホルダの特定の組み合わせの収差は、低減され又は完全に補償されることもできる。補正素子として、これに加えて又は代えて、制御されて変形可能なミラーアレイ(変形可能ミラー)、駆動制御可能なミラーアレイ又はマイクロミラーアレイ(デジタルミラーデバイス)及び/又は光変調器(空間光変調器、SLM)を使用することができる。
【0024】
本発明による方法を、その中の1つの構成において実施するために用いられる光学配置、特に倒立光シート配置は、例えば任意に、照明放射のビーム経路内に補正素子を有する。この、複数の部品、例えば2枚のアルバレスプレートを含み得る補正素子は、収差の静的補正のために設計されることができる。検出放射のビーム経路において、補正素子はその光学的作用に関して制御されて変更可能に構成されており、従って、生じ得る収差は、補正素子の相応の駆動制御によって影響を受け、特に低減されることができる。種々のビーム経路内の補正素子は、類似であるか、又は完全に同一であることもできる。照明放射及び検出放射のビーム経路内に、複数の補正素子を設けることもでき、それらは駆動制御可能であり、それらの共同の光学的作用は収差の減少を引き起こす。」
「【0028】
本発明による方法のさらなる構成において、照明放射として自己再構成ビーム又は非回折ビーム(non-diffractive beams)を用いることができ、それは、例えば、ベッセルビーム、マチュービーム、Sinc3ビーム、格子光シート、コヒーレントベッセルビーム、セクションベッセルビーム、又はエアリービームの形態で構成されることができ、試料ホルダ上に方向づけられることができる。」
「【0030】
以下で詳述するように、ガウシアンビームから逸脱するビーム形状、例えばSinc3ビームは、画質尺度のシャープネス及び/又はコントラストの分析のために(fuer die Analyse der Bildguetemasse Schaerfe und/oder Kontrast)特に適した、固有の構造化を有する。
【0031】
特に、主に均一な蛍光放出を呈する試料領域においては、構造化されたビーム形状によって構造化された光シート自身がテスト格子として用いられることができる。例えばコントラストは、かかる格子に基づいて最大化されることができる。この目的のために、試料は構造化された光シートで照明され、試料に印加される構造化された照明放射の異なる強度は、相応に、試料内の構造化された蛍光励起を起こさせる又は起こさせることができる。構造化されて励起された蛍光放射の信号は、検出放射として、適切な検出器によって捕捉され、最大信号強度がImaxとして、最小信号強度がIminとして特定されて記憶される。格子構造の変調深さは、Imax-Imin/Imax+Iminの関係によって分析されることができる。しかしながら、このテスト構造に、後述する画質基準(Bildguetekriterien)を適用することも可能である。」
「【0038】
方法のさらなる構成において、補正素子の少なくとも1つを位置決めするための基準(Kriterium)として用いられる画質尺度が定められる。複数の補正素子のうちの少なくとも1つの、現在の実際の配置は、その際、段階的に又は連続的に補正される。複数の補正要素のうちの少なくとも1つの、選択された実際の配置の各々には、関連する実際の配置において捕捉された画質尺度の測定値が割り当てられ、記憶される。画質尺度の現在値は、画質尺度の測定値に基づいてそれぞれ特定される。評価のための画質尺度のこれらの現在値がある場合、所望の画質尺度、即ち画質尺度の所望の値を得られる、少なくとも1つの補正素子の実際の配置が選択される。選択された実際の配置は、将来の所望の配置として設定されることができる。」
「【0050】
反復的に検査されるべきパラメータ空間が大きすぎるか、又は、システムが全体的最小‐例えば、試料ホルダ7の最適傾斜及び最適焦点位置‐に向けて反復的に最適化されることができず、その代り局所的最小にとどまることが常に起こり得る。従って、画質評価の方法が、本方法の上述した構成の1つと組み合わせて実施されると有利である。ここで、先ず、例えば上述の方法によって、試料ホルダ7の傾斜及びZ軸Zの方向の実際の位置が粗く位置決めされる。その後、微調整は、画質評価によって実施される。この方法は、従来の顕微鏡システムに適していない。」
「0070】
図2には、光シート顕微鏡のために実装され、アルバレスプレート及びメニスカスレンズ10の形態の補正素子12を有する倒立顕微鏡1の例示的実施形態が示される。角度α1及びα2は、それぞれ45°である。補正素子12は、主に試料ホルダ7の基部による照明放射BSの傾いた経路のために発生しうる収差の補正に役立つ。任意のメニスカスレンズ10は、空気から浸漬媒体18へ及び流体8への照明放射BSの推移(Uebergang)を支援し、検出放射DSのためには流体8から浸漬媒体18へ及び空気への推移を支援する。」
「【0089】
試料ホルダ7を通過する照明放射BSの傾斜経路の場合に発生する収差は、主に試料ホルダの厚さd、即ち第1及び第2の側面OS、USの間の距離に依存する。このことから、複数の補正素子12を互いに対して移動することによって収差補正を厚さdに適合するために、補正素子12(図2)は例えば照明対物レンズ2及び/又は検出対物レンズ3内に変位可能に配置される。」
「【0101】
図6には、厚さdと、予め既知でない厚さdを有する試料ホルダ7のシャープネス画質尺度と、の間の関係が例示的に示される。複数の補正要素12又は少なくとも検出放射DSのビーム経路内にある補正要素12は、インクリメンタルに試料ホルダ7の可能な厚さdに調整される。インクリメントの幅は、160μmの厚さdから始まる5μmとして選択される。検出放射DSによって捕捉された像のシャープネスは、1つ以上の補正素子12のこのようにして選択された各設定によって特定される。測定値のグラフ図において、1つ以上の補正素子12の設定におけるシャープネス画質尺度の最大値が達成され、公称厚さ175μmを有する試料ホルダ7の収差が補償されることが認識できる。従って、175μmの実際の厚さdが推定されることができる。
【0102】
図7は、厚さdを決定し、少なくとも1つの補正要素12を厚さdの関数として調整する、本発明による方法の一連の構成のフローチャートを示す。
【0103】
任意に、画質尺度(画質メトリック)の初期値は、ユーザによって入力されることができるか、又は、例えば反射成分BSrefを用いた厚さ決定に基づいて予め与えられることができる。このようにして特定され、又は予め与えられた厚さdは、初期値として、少なくとも1つの修正素子12の第1設定として用いられる。その後、補正素子12は、より大きな厚さdに対応する設定にされる。この設定で特定された画質尺度の値が増加すると、次々に、より大きな厚さdに対応する設定が選択される。このループは、画質尺度の値がもう増加しなくなるか、又は再び低下するまで繰り返すことができる。
【0104】
少なくとも1つの補正素子12の設定を選択した後に画質尺度の値が低下すると、前の設定に対して減少した厚さdに割り当てられた設定が選択される。画質尺度が最大である設定が見つかると、少なくとも1つの補正要素12が設定され、制御ループは停止されることができる。それを満たすことによって制御ループが終了される、中断基準が設定されていれば有利である。したがって、例えば、画質尺度値の最小差を設定することができ、この最小差を下回る場合に終了が引き起こされる。」
「【図2】
[図:0001427291000001.jpg]
」
「【図6】
[図:0001427291000002.jpg]
」
「【図7】
[図:0001427291000003.jpg]
」
(3)新規事項の判断
ア 明示的な記載の有無
まず、翻訳文には、本件照明ビーム経路厚さ決定について、明示的な記載はない。したがって、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することについても明示的な記載はない。
イ 【0018】~【0022】についての検討
【0022】には、【0018】・【0019】のステップD及びEで特定された試料ホルダの厚さに関する特定された情報が、ビーム経路において必要な補正を行うために、使用することができ、「検出放射のビーム経路内に配置された光学的に有効な補正素子は、特定された厚さに応じて駆動制御される」こと、すなわち、本件検出ビーム経路調整が記載されている。
一方で、【0018】・【0019】には、照明ビーム路のビーム経路に配置された補正要素(12)を駆動制御することにより試料ホルダの厚さを決定すること、すなわち、本件照明ビーム経路厚さ決定が記載されておらず、【0022】の本件検出ビーム経路調整が本件照明ビーム厚さ決定で決定された厚さに応じてなされるものかどうかは不明であるから、【0018】~【0022】の記載は、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することを開示するものではない。
ウ 【0038】についての検討
【0038】には、画質尺度の測定値に基づいて現在値が特定されること、選択された実際の配置が、将来の所望の配置として設定されることができること等が記載されているが、当該記載は、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することを開示するものではない。
エ 【0101】~【0104】、【図6】及び【図7】についての検討
【0101】の記載について検討すると、「複数の補正要素12又は少なくとも検出放射DSのビーム経路内にある補正要素12」は、「インクリメンタルに試料ホルダ7の可能な厚さdに調整され」、「検出放射DSによって捕捉された像のシャープネスは、1つ以上の補正素子12のこのようにして選択された各設定によって特定される」こと、及び【図6】に示されるような「厚さdと、予め既知でない厚さdを有する試料ホルダ7のシャープネス画質尺度と、の間の関係」から、「1つ以上の補正素子12の設定におけるシャープネス画質尺度の最大値が達成され、公称厚さ175μmを有する試料ホルダ7の収差が補償されること」及び「175μmの実際の厚さdが推定されること」が理解できる。
ここで、「複数の補正要素12又は少なくとも検出放射DSのビーム経路内にある補正要素12」との記載について検討すると、(i)「複数の補正要素12」(すなわち、照明放射BSのビーム経路及び検出放射DSのビーム経路にそれぞれ配置された補正要素12(【0089】・【図2】)のそれぞれを駆動調整して、シャープネス画質尺度の最大値が達成され、試料ホルダ7の「厚さd」が推定されること、又は(ii)「検出放射DSのビーム経路内にある補正要素12」を駆動調整して、シャープネス画質尺度の最大値が達成され、試料ホルダ7の「厚さd」が推定されること、が記載されていると認められる。このうち、(i)の照明放射BSのビーム経路に配置された補正要素12を駆動調整して、シャープネス画質尺度の最大値が達成され、試料ホルダ7の「厚さd」が推定される旨の記載は、本件照明ビーム経路厚さ決定を開示するものである。
【0102】~【0104】にはビーム経路内にある補正要素を駆動制御し、ビーム経路内においてその相対位置を設定することについては記載がないが、【0022】の記載を踏まえれば、【0101】で推定した厚さに基づいて、ビーム経路内にある補正要素の相対位置を設定することは理解できる。しかしながら、前記(i)の本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さdに基づいて、照明放射BSのビーム経路及び検出放射DSのビーム経路のうち、どちらのビーム経路にある補正要素の相対位置を設定するのか明らかではないから、技術常識に基づけばどのビーム経路の補正要素の相対位置を設定することが開示されているといえるのかを検討する。
【0101】においては、本件照明ビーム経路厚さ決定は、「複数の補正要素12」(すなわち、照明放射BSのビーム経路及び検出放射DSのビーム経路にそれぞれ配置された補正要素12)のそれぞれを駆動調整することにより厚さを決定する形態としてのみ開示されている。そして、そのような形態においては、照明経路と検出経路における試料ホルダの厚さは、両経路の位置が異なることから必ずしも一致するものではないことを踏まえれば、「複数の補正要素12」のそれぞれを駆動調整することにより厚さを決定し、この厚さに基づいて複数の補正要素12の相対位置をそれぞれのビーム経路内で設定する際には、それぞれの補正要素で決定した厚さに応じて、それぞれ対応する補正要素のビーム経路内での相対位置の設定を行うと考えるのが自然であり、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整するとは考えられない。
したがって、【0022】の記載を踏まえて検討しても、【0101】~【0104】には、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することは開示されておらず、当業者に自明な事項であるとも認められない。
オ 小括
(ア)前記ア~エに示したとおり、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することは、翻訳文に明示的な記載がなく、翻訳文の段落【0022】、【0038】、【0101】~【00104】、【図6】及び【図7】の記載を総合しても、実質的に記載されているともいえないし、自明であるとも認められない。そして、翻訳文には、【0101】以外には本件照明ビーム経路厚さ決定についての記載は存在しないから、翻訳文の全記載を総合しても、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することは開示されていない。
(イ)これに対し、請求人は、本件補正に係る事項は翻訳文の請求項2、4、6、【0028】、【0030】、【0031】に記載されている旨主張するが、これらの箇所には本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することは開示されておらず、採用できない。
(ウ)したがって、本件補正により追加された、本件照明ビーム経路厚さ決定で決定された厚さに応じて、本件検出ビーム経路調整することは、翻訳文に記載がなく、翻訳文の記載から自明でもないから、本件補正は、翻訳文に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
(4)本件補正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、翻訳文に記載された事項の範囲内においてしたものであるとはいえないから、特許法17条の2第3項に規定する要件に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年3月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その優先日前に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献2に記載された発明及び引用文献3~5に例示される周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献一覧>
2.特表2017-513063号公報
3.国際公開第2017/175783号(周知技術を示す文献)
4.特開2011-242292号公報(周知技術を示す文献)
5.米国特許第4902902号明細書(周知技術を示す文献)
3 引用文献の記載事項および引用発明の認定
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、優先日前に発行された引用文献2(特表2017-513063号公報)には、次の記載がある(下線は当合議体が付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
- 光シートを有する照明ビーム経路を経由して試料キャリア上の媒質(2)中に配置された試料(3)を照明する照明対物レンズ(5)を有する照明光学系であって、前記照明対物レンズ(5)及び前記光シートの光軸(6)が、前記試料が配置されるフラットな基準表面(4)の法線に対して、ゼロとは異なる照明角度(β)をなす1つの平面内に位置している、照明光学系と、
- 検出ビーム経路内に検出対物レンズ(7)を有する検出光学系であって、その光軸(8)が、前記基準表面(4)の法線に対して、ゼロとは異なる検出角度(δ)をなす、検出光学系と、
- 前記媒質(2)を前記照明対物レンズ(5)及び前記検出対物レンズ(7)から分離する、既定の厚さを有すると共に既定の材料から製造される、少なくとも1つの層を有する分離層システムであって、該分離層システムは、少なくとも照明及び検出のために前記照明対物レンズ(5)及び前記検出対物レンズ(7)からアクセス可能なエリア内において、前記基準表面(4)に対して平行に配置された表面によって前記媒質(2)と接触状態にある、分離層システムと
を備える光シート顕微鏡のための構成であって、
- 前記検出対物レンズ(7)は、前記ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入される第1適応型光学検出補正要素を備え、且つ/又は、
- 前記照明対物レンズ(5)は、前記ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入される第1適応型光学照明補正要素を備え、
- これにより、検出対象の光又は前記試料を照明するための光が、前記分離層システムの境界表面を傾斜して通過することに起因して発生する収差は、規定の範囲の検出角度(δ)又は照明角度(β)について、及び/又は、規定の範囲の前記分離層システムの前記少なくとも1つの層の厚さについて、低減されることを特徴とする、光シート顕微鏡のための構成。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光シート顕微鏡のための構成に関する。このような構成は、試料キャリア上の媒質中に配置された試料を、照明ビーム経路を経由して照明する照明対物レンズを有する照明光学系を備えている。照明は光シートによって実行される。照明対物レンズの光軸と光シートとは、試料キャリア(液体を受け入れる側壁を有する試料容器としてもしばしば設計される)が配置されるフラットな基準表面の法線に対して、ゼロとは異なる照明角度をなす1つの平面内に位置している。これに加えて、この構成は、検出ビーム経路内に検出対物レンズを有する検出光学系をも備えている。この場合にも、検出対物レンズの光軸は、基準表面の法線に対して、ゼロとは異なる検出角度をなしている。更には、この構成は、照明対物レンズ及び検出対物レンズから媒質を分離する、既定の厚さを有すると共に既定の材料から製造される、少なくとも1つの層を有する分離層システムをも備えている。分離層システムは、1つの表面が基準表面に対して平行になるように配置されており、またこの表面によって、少なくとも照明又は検出のために照明対物レンズ及び検出対物レンズからアクセス可能なエリア内において媒質と接触状態にある。」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本発明の目的は、可能な限り単純であり、かつ、補正の際に種々のカバーガラスの厚さ及び/又は種々の入射角度を考慮する能力をも有する補正要素を通じて、物体キャリア、試料容器の基部、又はカバーガラスを通じた照明光及び検出光の急勾配の通過に起因して発生する結像誤差を補正するために、可能な限り小型で費用効率の優れた解決策を提供するという点にある。また、有利には、既存の対物レンズの更なる使用も可能である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、検出対物レンズが、ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入される第1適応型光学検出補正要素を備え、且つ/又は、照明対物レンズが、ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入される第1適応型光学照明補正要素を備えるという点において、冒頭において記述されているタイプの光シート顕微鏡のための構成について、実現される。第1照明補正要素及び第1検出補正要素の両方により、検出対象の光又は試料を照射するための光が分離層システムの境界表面を傾斜して通過することに起因して生じる収差を、検出角度又は照明角度の既定のエリアについて低減することができる。代替的には、又はこれに加えて、このような光が傾斜して通過する際に生じる収差を、分離層システムの少なくとも1つの層の厚さの既定のエリアについて、低減することもできる。これは、様々な方法によって実現することができる。
【0024】
カバーガラスの厚さの通常の既定のエリアは、例えば約170μmの平均厚さを中心として、例えば±30μmを有する。この範囲内において、上述の収差は、NA=1.0の開口数を有する通常の検出対物レンズの場合、第1検出補正要素によって、或いは第1照明補正要素によって、低減又は排除することができる。また、市販されているカバーガラス又は試料キャリアのその他の平均厚さを既定することも可能であり、構成に応じて、厚さの範囲を更に大きく又は小さく選択することもできる。」
「【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】 光シート顕微鏡のための構成の基本的なセットアップである。
【図2】 全体図における検出対物レンズの第1実施形態である。
【図3】 検出対物レンズの前部レンズのエリア内のビームプロファイルである。
【図4a】 第1実施形態における波面誤差の図である。
【図4b】 第1実施形態における波面誤差の図である。
【図4c】 第1実施形態における波面誤差の図である。
【図5】 全体図における検出対物レンズの更なる実施形態である。
【図6】 更なる実施形態における波面誤差の図である。」
「【0063】
まず、図1には、光シート顕微鏡のための構成の基本的なセットアップが示されている。この構成は、媒質2中に配置された試料3を受け入れる試料容器1を備えている。ここで、試料容器1は、フラットな基準表面4との関係において配置されている。また、この構成は、光シートを有する照明ビーム経路を経由して試料3を照明する照明対物レンズ5を有する照明光学系を備えている。照明対物レンズ5及び光シートの光軸(非球面又は自由形状の光学要素を使用する場合には主光軸)6は、基準表面4の法線に対して、ゼロとは異なる照明角度βをなす1つの平面内に位置している。また、この構成は、検出ビーム経路内に検出対物レンズ7を有する検出光学系を備えており、その光軸8は、基準表面の法線に対して、ゼロとは異なる検出角度δをなしている。また、この構成は、既定の厚さを有すると共に既定の材料から製造される、少なくとも1つの層を有する分離層システムを備えている。分離層システムは、媒質2を照明対物レンズ5及び検出対物レンズ7から分離する。分離層システムは、少なくとも照明及び検出のために照明対物レンズ5及び検出対物レンズ7からアクセス可能であるエリア内で、基準表面4に対して平行に配置された表面において媒質2と接触するように形成されている。
【0064】
この場合において、試料容器は、上方に向かって開放すると共に媒質2によって充填されたペトリ皿として形成されている。汚染を防止するために、照明対物レンズ5及び検出対物レンズ7は、試料容器1の上方に配置することも可能であり(この場合においては、カバーガラスが使用されない範囲で、媒質2の表面と物体との間の空気層のみが分離層システムを形成する)、或いは、図1に示されているように、試料容器1の下方に配置することもできる。この場合においては、分離層システムは、一方においては、試料容器と対物レンズとの間の層によって形成され、他方においては、1.0とは異なる屈折率を有する材料から製造される試料容器1の透明な基部によっても形成される。試料容器1と対物レンズとの間の層は、例えば浸漬媒質によって形成することもできる。
【0065】
検出対物レンズ7及び照明対物レンズ5は、基準表面4に対して傾斜しており、また特に試料容器1の基部に対して傾斜しているため、図示しない光源がその背後に配置される照明対物レンズ5からの光が、分離層システムを通じて試料3上に導かれ、試料3によって放出された光(例えば、散乱されて反射された蛍光によって誘発された光、又は一般的に放出された光)が、検出対物レンズ7の方向に傾斜して分離層システムを同様に通過した際に、強い収差が生じる。
【0066】
これらの収差、及び検出対物レンズの変化する入射角度、すなわち変化する検出角度を通じて生じた収差、及び/又は、分離層システムの少なくとも1つの層(ここでは試料容器の基部)の変化する厚さを通じて生じる収差を補正又は克服するために、検出対物レンズ7は、ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入することもできる、第1適応型光学検出補正要素を備える。同様に、照明対物レンズ5も、このような第1適応型光学照明補正要素を備えることが可能である。ただし、ここでは照明対物レンズ5のみが基本的に図示されている。その理由は、検出対物レンズ7に関係するすべての実施形態が、類似の方式によって照明対物レンズにも適用することができるからである。
【0067】
第1適応型光学検出補正要素は、ここでは第1波面マニピュレータ9として形成されている。波面マニピュレータ9によれば、検出対象の光が分離層システムの境界表面を傾斜して通過することに起因して生じる収差を、検出角度に依存した状態において、且つ/又は、分離層システムの少なくとも1つの層の厚さに依存した状態において、低減することができる。従って、換言すれば、分離層システムの少なくとも1つの層の厚さが変化する際に生じる収差、及び/又は、検出角度、すなわち検出物体7の入射角度が変化する際に生じる収差は、それぞれ既定の範囲内の入射角度及び厚さにおいて、補正又は低減することができる。従って、波面マニピュレータ9は、その境界が個々のマニピュレータの実際の設計に依存する特定の範囲内において、変化する層の厚さを通じて生じる収差、且つ/又は、変化する入射角度を通じて生じる収差を補正する。
【0068】
基部と検出対物レンズ7との間の層は、例えば空気であってもよい。媒質の間の屈折率の大きな変化に起因して、補正対象の回転非対称誤差は、互いに類似する屈折率を有する媒質を使用する場合との比較において相対的に大きくなり、0.8~1.0の開口数の実現は、この場合においては技術的に非常に複雑化する。従って、ペトリ皿の基部と対物レンズとの間には、好ましくは、例えば水などの浸漬媒質が存在する。また、上方から観察した際に、媒質2が基部又は対応するカバーガラスによって浸漬媒質から分離されている場合には、例えば、生物学的試料に対する敵対的な環境を表すものなど、その他の浸漬媒質を使用することもできる。類似の屈折率を有する材料が、媒質2、カバーガラス又は容器基部、及びカバーガラスと対物レンズとの間の浸漬媒質について選択される場合には、大きな開口数についての補正も、自由形状表面によって相対的に簡単に実現することができる。」
「【0071】
図2及び図3を参照しながら、光シート顕微鏡のための構成の一部分である検出対物レンズ7の第1の実施形態について、更に詳細に説明する。照明対物レンズ5についても、類似の考え方とアプローチを採用することができる。図2に示されている検出対物レンズ7は、ビーム経路内に第1適応型光学検出補正要素を備えており、これは波面マニピュレータ9として設計されている。図3は、前部レンズのエリア内の対応するセクションを示している。異なる線は、異なる物体地点から発せられる光束に対応している。検出対物レンズ7は、1.0の開口数を有しており、厚さ0.15mm~0.19mmのカバーガラスを32°で透過する際の悪影響についての補正のすべてが、単一の波面マニピュレータ9によっておこなわれる。この波面マニピュレータ9は、検出対物レンズ7の瞳孔の近傍、すなわちビーム経路がコリメートされる平面内に配置される。対応するチューブレンズ系と共に、約39倍の倍率を実現することができる。検出対物レンズ7は、水中における浸漬用に設計されている。すなわち、カバーガラス/容器基部からなる分離層システムと空気の代わりに、ここではカバーガラス/容器基部からなる分離層システムと水が使用される。図2の子午線状の断面において示されている検出対物レンズ7は、正確に1つの波面マニピュレータ9を備えている。そしてこれは、相互の関係において横断方向に動くことができる2つの自由形状要素を有している。この場合、第1のものは、0.15mm~0.19mmのカバーガラスの厚さに対応する139μm~177μmの範囲内の横方向調節経路を実現する。これに対応して、第2の自由形状要素は、カバーガラスの厚さが0.15mmのときの-139μmから、カバーガラスの厚さが0.19mmのときの-177μmまでの範囲内における、同一サイズの反対の調節経路を実現する。従って、平均的なカバーガラスの厚さ0.17mmの場合、この実施形態の例においては、自由形状表面は、相互の関係における中立位置には位置しておらず、平均的なカバーガラスの厚さについて補償するために、ゼロ位置から各々158μm及び-158μmの調節経路だけ既にシフトされている。
【0072】
例示用のシステムによれば、主対物レンズ軸8と基準表面4の法線との間の固定された角度δが32°のときに、約0.15mm~0.19mmの厚さのカバーガラスの場合に生じる悪影響について、事実上、完全に補償することができる。これにより、実質的に回折制限された結像が行われる。また、当然のことながら、波面マニピュレータ9は、更に大きな調節範囲によって使用することもできるであろうが、その場合には、調節経路はもはやカバーガラスの厚さに対する良好な線形近似状態において動作せず、残留波面誤差が相対的に非常に大きな状態で残る。」
「【図1】
[図:0001427291000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001427291000005.jpg]
」
(2)引用文献2の記載から当業者が把握できる事項
【0067】には、「第1適応型光学検出補正要素」としての「第1波面マニピュレータ9」を用いて、「分離層システムの少なくとも1つの層の厚さが変化する際に生じる収差、及び/又は、検出角度、すなわち検出物体7の入射角度が変化する際に生じる収差」「を補正する」ことが記載されており、当該記載及び【請求項1】から、当業者は、「光シート顕微鏡の構成において収差を補正する方法」を把握することができる。
(3)引用発明の認定
前記(1)及び(2)から、引用文献2には、【請求項1】、【0063】~【0090】、【図1】及び【図2】に記載の第1実施形態に係る光シート顕微鏡において収差を補正する方法について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。
<引用発明>
「光シートを有する照明ビーム経路を経由して試料キャリア上の媒質(2)中に配置された試料(3)を照明する照明対物レンズ(5)を有する照明光学系であって、前記照明対物レンズ(5)及び前記光シートの光軸(6)が、前記試料が配置されるフラットな基準表面(4)の法線に対して、ゼロとは異なる照明角度(β)をなす1つの平面内に位置している、照明光学系と、
検出ビーム経路内に検出対物レンズ(7)を有する検出光学系であって、その光軸(8)が、前記基準表面(4)の法線に対して、ゼロとは異なる検出角度(δ)をなす、検出光学系と、
前記媒質(2)を前記照明対物レンズ(5)及び前記検出対物レンズ(7)から分離する、既定の厚さを有すると共に既定の材料から製造される、少なくとも1つの層を有する分離層システムであって、該分離層システムは、少なくとも照明及び検出のために前記照明対物レンズ(5)及び前記検出対物レンズ(7)からアクセス可能なエリア内において、前記基準表面(4)に対して平行に配置された表面によって前記媒質(2)と接触状態にある、分離層システムと
を備える光シート顕微鏡のための構成であって、
前記検出対物レンズ(7)は、前記ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入される第1適応型光学検出補正要素を備え、且つ、
前記照明対物レンズ(5)は、前記ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入される第1適応型光学照明補正要素を備え、
これにより、検出対象の光又は前記試料を照明するための光が、前記分離層システムの境界表面を傾斜して通過することに起因して発生する収差は、規定の範囲の検出角度(δ)又は照明角度(β)について、及び、規定の範囲の前記分離層システムの前記少なくとも1つの層の厚さについて、低減される光シート顕微鏡のための構成において、(【請求項1】)
媒質2中に配置された試料3を受け入れる試料容器1を備えており、試料容器1は、フラットな基準表面4との関係において配置されており、(【0063】)
試料容器は、上方に向かって開放すると共に媒質2によって充填されたペトリ皿として形成されており、照明対物レンズ5及び検出対物レンズ7は、試料容器1の下方に配置することもでき、この場合においては、分離層システムは、一方においては、試料容器と対物レンズとの間の層によって形成され、他方においては、1.0とは異なる屈折率を有する材料から製造される試料容器1の透明な基部によっても形成され、(【0064】)
検出対物レンズ7及び照明対物レンズ5は、基準表面4に対して傾斜しており、また特に試料容器1の基部に対して傾斜しているため、光源がその背後に配置される照明対物レンズ5からの光が、分離層システムを通じて試料3上に導かれ、試料3によって放出された光が、検出対物レンズ7の方向に傾斜して分離層システムを同様に通過した際に、強い収差が生じ、(【0065】)
これらの収差、及び検出対物レンズの変化する入射角度、すなわち変化する検出角度を通じて生じた収差、及び、分離層システムの少なくとも1つの層(ここでは試料容器の基部)の変化する厚さを通じて生じる収差を補正又は克服するために、検出対物レンズ7は、ビーム経路内に配置されるか又はその内部に導入することもできる、第1適応型光学検出補正要素を備え、同様に、照明対物レンズ5も、このような第1適応型光学照明補正要素を備え、(【0066】)
第1適応型光学検出補正要素は、ここでは第1波面マニピュレータ9として形成されており、波面マニピュレータ9によれば、検出対象の光が分離層システムの境界表面を傾斜して通過することに起因して生じる収差を、検出角度に依存した状態において、且つ、分離層システムの少なくとも1つの層の厚さに依存した状態において、低減することができ、波面マニピュレータ9は、その境界が個々のマニピュレータの実際の設計に依存する特定の範囲内において、変化する層の厚さを通じて生じる収差、且つ/又は、変化する入射角度を通じて生じる収差を補正し、(【0067】)
波面マニピュレータ9は、相互の関係において横断方向に動くことができる2つの自由形状要素を有しており、第1のものは、0.15mm~0.19mmのカバーガラスの厚さに対応する139μm~177μmの範囲内の横方向調節経路を実現し、これに対応して、第2の自由形状要素は、カバーガラスの厚さが0.15mmのときの-139μmから、カバーガラスの厚さが0.19mmのときの-177μmまでの範囲内における、同一サイズの反対の調節経路を実現し、(【0071】)
主対物レンズ軸8と基準表面4の法線との間の固定された角度δが32°のときに、約0.15mm~0.19mmの厚さのカバーガラスの場合に生じる悪影響について、事実上、完全に補償することができる、(【0072】)
光シート顕微鏡の構成において収差を補正する方法(前記(2))」
4 対比
(1)本願発明の「顕微鏡(1)のビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法であって、」及び「方法」との特定事項について
ア 引用発明の「光シート顕微鏡」及び「試料容器1」は、それぞれ、本願発明の「顕微鏡(1)」及び「試料ホルダ(7)」に相当する。
イ 前記アから、本願発明と引用発明は「顕微鏡(1)」に係る「方法」である点で共通するものの、本願発明は「顕微鏡(1)のビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法」であるのに対して、引用発明は「光シート顕微鏡の構成において収差を補正する方法」である。
(2)本願発明の「前記試料ホルダは、照明放射(BS)に対して透明であって、前記試料ホルダの内部に試料(5)を収容するために構成されており、」との特定事項について
ア 引用発明の「光源がその背後に配置される照明対物レンズ5からの光」及び「試料3」は、それぞれ、本願発明の「照明放射(BS)」及び「試料(5)」に相当する。
イ 引用発明は、「光源がその背後に配置される照明対物レンズ5からの光が、分離層システムを通じて試料3上に導かれ、試料3によって放出された光が、検出対物レンズ7の方向に傾斜して分離層システムを同様に通過」するものであることから、引用発明の「分離層システム」は、「光源がその背後に配置される照明対物レンズ5からの光」(本願発明の「照明放射(BS)」に相当。)が通過するものであることが理解できる。
このことと、引用発明の「試料容器1」が「透明な基部」を有していること、及び「分離層システム」が「試料容器1の透明な基部によって」形成されていることを踏まえれば、引用発明の「試料容器1」は、光源がその背後に配置される照明対物レンズ5からの光」(本願発明の「照明放射(BS)」に相当。)に対して「透明」であるといえる。
ウ 引用発明の「試料容器1」は、「媒質2中に配置された試料3を受け入れる」ものであって、「上方に向かって開放すると共に媒質2によって充填されたペトリ皿として形成されて」いるため、当該「ペトリ皿」の内部に試料3を収容するものであるといえる。
エ 前記ア~ウから、引用発明は前記特定事項を備える。
(3)本願発明の「当該方法は、A:第1界面(OS)及び第2界面(US)を有する前記試料ホルダ(7)を試料平面(4)内に配置するステップであって、前記試料平面(4)はデカルト座標のX軸(X)及びY軸(Y)にまたがるXY平面内にある、ステップと、」「を含む、」との特定事項について
ア 引用発明の「既定の厚さを有すると共に既定の材料から製造される、少なくとも1つの層を有する分離層システム」における「少なくとも1つの層」は「試料容器の基部」であることから、「試料容器1」の「基部」は、「既定の厚さを有する」ものである。
したがって、引用発明の「試料容器1の基部」は層を構成する上面及び下面を有するといえ、前記上面及び下面は、それぞれ、本願発明の「第1界面(OS)」及び「第2界面(US)」に相当する。
イ 引用発明の「基準表面4」は、「前記試料が配置されるフラットな」ものであるから、本願発明の「試料平面(4)」に相当する。
また、引用発明の「試料容器」は、「媒質2中に配置された試料3を受け入れる」ものである以上、「前記試料が配置されるフラットな基準平面」内に配置されることが理解できるから、引用発明は、本願発明でいう「前記試料ホルダ(7)を試料平面(4)内に配置するステップ」を備えている。
ウ 引用発明の「基準表面4」は、2次元状の「面」を構成するものであって、この面に対して、座標系をどのように定義するかは任意性があるため、基準表面4が位置する平面における1方向をX軸、当該X軸と直交する方向をY軸とすることができる。したがって、引用発明は、本願発明でいう「前記試料平面(4)はデカルト座標のX軸(X)及びY軸(Y)にまたがるXY平面内にある」ことを満たす。
エ 前記ア~ウから、引用発明は前記特定事項を備える。
(4)本願発明の「B:前記第1界面(OS)及び前記第2界面(US)を前記試料平面(4)と平行に整列させるステップと、」「を含む、」との特定事項について
引用発明の「分離層システム」は、「前記基準表面(4)に対して平行に配置された表面によって前記媒質(2)と接触状態にある」ものであって、当該分離層システムは、「上方に向かって開放すると共に媒質2によって充填されたペトリ皿として形成され」た「試料容器1」の「透明な基部」によっても形成されるものであるため、引用発明において、分離層システムを形成する「試料容器1」の「透明な基部」は、基準表面(4)に対して「平行に配置され」ているといえる。
したがって、前記(3)アも踏まえれば、引用発明は前記特定事項を備える。
(5)本願発明の「C:前記照明放射(BS)の少なくとも1つのビームを第1光軸(A1)に沿って、照明角度において、整列された前記試料ホルダ(7)上に方向づけるステップであって、前記第1光軸(A1)と、XY平面に対して垂直な参照軸との間の照明角度は、ゼロと異なる、ステップと、」「を含む、」との特定事項について
ア 引用発明の「前記照明対物レンズ(5)及び前記光シートの光軸(6)」、「基準表面(4)の法線」及び「照明角度(β)」は、それぞれ、本願発明の「第1光軸(A1)」、「XY平面に対して垂直な参照軸」及び「照明角度」に相当する。
イ また、引用発明は、「光シートを有する照明ビーム経路を経由して試料キャリア上の媒質(2)中に配置された試料(3)を照明する照明対物レンズ(5)を有する照明光学系であって、前記照明対物レンズ(5)及び前記光シートの光軸(6)が、前記試料が配置されるフラットな基準表面(4)の法線に対して、ゼロとは異なる照明角度(β)をなす1つの平面内に位置している」ものである。
ウ 前記ア及びイから、引用発明は前記特定事項を備える。
(6)本願発明の「D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値、又は前記照明放射(BS)によって生じる検出放射(DS)の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップと、」「を含む、」との特定事項について
引用発明は前記特定事項を有していない。
(7)本願発明の「E:捕捉された前記少なくとも2つの測定値に応じて、Z軸方向における前記第1界面と第2界面と(OS,US)との相互の間隔を厚さ(d)として特定するステップと、を含む、」との特定事項について
引用発明は前記特定事項を有していない。
(8)前記(1)~(7)によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「顕微鏡(1)に係る方法であって、
試料ホルダは、照明放射(BS)に対して透明であって、前記試料ホルダの内部に試料(5)を収容するために構成されており、
当該方法は、
A:第1界面(OS)及び第2界面(US)を有する前記試料ホルダ(7)を試料平面(4)内に配置するステップであって、前記試料平面(4)はデカルト座標のX軸(X)及びY軸(Y)にまたがるXY平面内にある、ステップと、
B:前記第1界面(OS)及び前記第2界面(US)を前記試料平面(4)と平行に整列させるステップと、
C:前記照明放射(BS)の少なくとも1つのビームを第1光軸(A1)に沿って、照明角度において、整列された前記試料ホルダ(7)上に方向づけるステップであって、前記第1光軸(A1)と、XY平面に対して垂直な参照軸との間の照明角度は、ゼロと異なる、ステップと、
を含む、方法。」である点。
<相違点>
顕微鏡(1)に係る方法について、本願発明が「顕微鏡(1)のビーム経路内の試料ホルダ(7)の厚さ(d)を決定する方法」であって、「D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値、又は前記照明放射(BS)によって生じる検出放射(DS)の少なくとも2つの測定値を捕捉するステップと、
E:捕捉された前記少なくとも2つの測定値に応じて、Z軸方向における前記第1界面と第2界面と(OS,US)との相互の間隔を厚さ(d)として特定するステップと、を含む」のに対して、引用発明は「光シート顕微鏡の構成において収差を補正する方法」である点。
5 判断
(1)相違点について
引用発明の「検出対物レンズ7」が備える「第1適応型光学検出補正要素」及び「照明対物レンズ5」が備える「第1適応型光学照明補正要素」は、「検出対物レンズ7及び照明対物レンズ5は、基準表面4に対して傾斜しており、また特に試料容器1の基部に対して傾斜しているため、光源がその背後に配置される照明対物レンズ5からの光が、分離層システムを通じて試料3上に導かれ、試料3によって放出された光が、検出対物レンズ7の方向に傾斜して分離層システムを同様に通過した際に、強い収差が生じ、これらの収差、及び検出対物レンズの変化する入射角度、すなわち変化する検出角度を通じて生じた収差、及び、分離層システムの少なくとも1つの層(ここでは試料容器の基部)の変化する厚さを通じて生じる収差を補正又は克服する」ために検出対物レンズ7及び照明対物レンズ45が備えるものである。
そして、引用発明は、「波面マニピュレータ9は、その境界が個々のマニピュレータの実際の設計に依存する特定の範囲内において、変化する層の厚さを通じて生じる収差、且つ/又は、変化する入射角度を通じて生じる収差を補正し」、「波面マニピュレータ9は、相互の関係において横断方向に動くことができる2つの自由形状要素を有して」おり、厚さに応じて横断方向の移動量が決定されるものであることが理解できるから、当業者は、引用発明において適切に収差を補正する横断方向の移動量を決定するために、容器基部からなる分離層システムの厚みを把握する動機を有する。
また、試料保持体の厚さにばらつきがあることは技術常識である(必要であれば、特開2008-276070号公報(令和4年10月5日付け拒絶理由通知書で引用された文献である。)の【0001】~【0003】等、拒絶査定で周知技術を示す文献として引用された引用文献3(国際公開第2017/175783号)の[0004]、[0005]及び[0025]等を参照。)。
そして、板状の透明体の厚みを当該透明体の上面及び下面における反射成分の2つの測定値を捕捉して特定することは周知技術であり(前記引用文献3の[0023]、[0026]~[0031]、[0048]、[図3]、[図4]等([0029]、[図3]及び[図4]における第1底面91において反射した第1反射光81及び第2底面92において反射した第2反射光82を検出することは、本願発明の「D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値」「を捕捉する」ことに相当する。)、拒絶査定で周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特開2011-242292号公報)の【0043】~【0046】、【0050】、【図4】等(【図4】における測定対象物1の表面反射光である測定用光13と、測定対象物1の裏面反射光である測定用光15を測定することは、本願発明の「D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値」「を捕捉する」ことに相当する。)、拒絶査定で周知技術を示す文献として引用された引用文献5(米国特許第4902902号明細書)の第3欄第3行-第56行、図2等(図2におけるガラス板11の上面で反射したビーム13と、ガラス板11の下面で反射したビーム14を測定することは、本願発明の「D:前記照明放射(BS)の反射成分(BSref)の少なくとも2つの測定値」「を捕捉する」ことに相当する。)を参照。)、引用発明から出発した当業者が前述の動機に基づいて、前記周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明に上記周知技術を適用した構成は、分離層システム、すなわち、試料容器の基部の正確な厚さを測定するために、基部の上面で反射した反射成分と基部の下面で反射した反射成分の2つの測定値を補足するステップと、前記2つの測定値に応じて基部の厚さを特定するステップを備えることとなり、相違点に係る本願発明の構成に至ることとなる。
(2)効果について
本願発明の作用効果としては、本願発明の構成が奏するものとして、当業者が予測困難であり、格別顕著なものとは、認めることができない。
(3)請求人の主張について
請求人は、本件補正後の請求項1の記載に基づいて、前記第2の2(1)ア(イ)の特定事項が引用文献2~7には開示も示唆もされていない旨主張するが、前記第2のとおり、本件補正は却下されており、当該主張は本願発明の特定事項に基づくものではない。
(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-018201