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特許拒絶査定不服審判

2021-014787

バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体及び断熱容器

審判番号
2021-014787
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-184583外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年11月01日
審決日
2022年12月26日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
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特願2020-184583「バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体及び断熱容器」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月20日出願公開、特開2021-75056〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続きの経緯 本願は、令和2年11月4日(優先権主張 令和1年11月6日)の出願であって、その後の手続きの概要は、以下のとおりである。 拒絶理由通知 令和3年 1月20日付け 意見書及び手続補正書の提出 令和3年 5月17日 拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和3年 7月29日付け 審判請求書の提出 令和3年11月 1日 第2 本願の請求項1ないし3に係る発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和3年5月17日提出の手続補正書で補正された、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された以下のとおりであると認められる。 「 【請求項1】 少なくとも、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリオレフィン樹脂からなる発泡層と、紙基材層と、密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下の中高密度ポリオレフィン樹脂からなる非発泡層とを順に備える積層体であって、 低密度ポリオレフィン樹脂および/または中高密度ポリオレフィン樹脂がバイオマスポリエチレン樹脂を含み、且つバイオマス度が5%以上であることを特徴とする積層体。 ただし、低密度ポリオレフィン樹脂は密度0.918g/cm3のバイオマスポリエチレン樹脂を含み、且つ中高密度ポリオレフィン樹脂は密度0.918g/cm3のバイオマスポリエチレン樹脂と密度0.959g/cm3のバイオマスポリエチレン樹脂と混合して得られる樹脂である。 【請求項2】 請求項1記載の積層体を加熱発泡させてなる発泡積層体。 【請求項3】 請求項2記載の発泡積層体からなる発泡断熱容器。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)に対する拒絶の理由は、以下のとおりである。 本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献2、4~5に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献2.特開2018-69683号公報 引用文献4.特開2018-51788号公報 引用文献5.特開2016-27171号公報 第4 当審の判断 1.引用文献の記載等 (1)引用文献2 原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-69683号公報(平成30年5月10日出願公開)には、次の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 少なくとも(A)層/紙基材層/(B)層を含み、(A)層が下記(i)~(iii)を満たす低密度ポリエチレン(a)、(B)層がJIS K6922-1(1997年)により測定された密度が930kg/m3以上970kg/m3以下であるポリエチレン系樹脂(b)から構成されることを特徴とする発泡用積層体。 (i)JIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFR)が5g/10分以上50g/10分以下 (ii)JIS K6922-1(1997年)により測定した密度が910kg/m3以上930kg/m3以下 (iii)紙基材の非接着面における水との静的接触角が104°以上115°以下 ・・・・ 【請求項4】 請求項1~3のいずれかに記載の発泡用積層体の(A)層が発泡していることを特徴とする発泡積層体。 【請求項5】 少なくとも胴部材が請求項4に記載の発泡積層体であることを特徴とする断熱紙容器。」。」(「・・・」が文の省略を意味する。以下同様である。) イ「【技術分野】 【0001】 本発明は、生産性が高く、かつ、良好な断熱性と発泡外観を示す発泡用積層体及び発泡積層体に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来から、断熱性を有する容器として、合成樹脂、特にポリスチレンを発泡させたものが多く使用されている。しかし、発泡ポリスチレン容器は、廃棄時の環境への負荷が高い、印刷適性に劣るなどの欠点があり、他の素材への代替が検討されている。そのような中、紙カップ胴部の外周面にコルゲートした紙を貼り合わせて断熱層を形成した容器、同紙カップの胴部外周面にパルプ製の不織布とコート紙との積層体を接合した容器などが開発され、使用されている。 【0003】 しかしながら、いずれの方法も加工、成形が容易でなく、コスト高になるという欠点があった。そこで、水分を含んだ基材の少なくとも一面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、加熱することにより、基材に含まれている水分を利用して合成樹脂フィルムを凹凸に発泡させる技術が考案された(例えば、特許文献1~3参照。)。しかし、このようにして得られる材料は、発泡層の厚みが薄く、断熱性が不十分であった。 【0004】 また、容器胴部材及び底板部材からなり、容器胴部材及び底板部材の原紙の内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあると共に容器胴部材の原紙の外壁面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあり、この低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムを加熱処理して発泡してある断熱紙容器が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。 【0005】 しかし、内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂を有する断熱紙容器では、断熱性は良好なものの、低融点の熱可塑性樹脂をラミネートする際の加工速度を上昇させると発泡外観が悪化し、生産性に劣っていた。 ・・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の目的は、生産性が高く、かつ、良好な断熱性と発泡外観を示す発泡用積層体及び発泡積層体を提供することにある。」 ウ「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の発泡用積層体及び発泡積層体が、生産性が高く、かつ、優れた断熱性と発泡外観を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。 【0009】 すなわち、少なくとも(A)層/紙基材層/(B)層を含み、(A)層が(i)~(iii)を満たす低密度ポリエチレン(a)、(B)層がJIS K6922-1(1997年)により測定された密度が930kg/m3以上970kg/m3以下であるポリエチレン系樹脂(b)から構成されることを特徴とする発泡用積層体に関するものである。 【0010】 (i)JIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFR)が5g/10分以上50g/10分以下 (ii)JIS K6922-1(1997年)により測定した密度が910kg/m3以上930kg/m3以下 (iii)紙基材の非接着面における水との静的接触角が104°以上115°以下 また、上記発泡用積層体の(A)層が発泡していることを特徴とする発泡積層体に関するものである。」 エ「【0012】 本発明の発泡用積層体を構成する低密度ポリエチレン(a)は、高圧法低密度ポリエチレン(c)、直鎖状低密度ポリエチレン(d)又はこれらの組成物から構成される。 ・・・・ 【0016】 低密度ポリエチレン(a)のJIS K6922-1(1997年)により測定された密度(以下、単に密度と略す)は、断熱性及び発泡外観に優れるため、910~930kg/m3の範囲であり、より好ましくは914~925kg/m3、さらに好ましくは916~920kg/m3の範囲である。低密度ポリエチレン(a)の密度が910kg/m3未満では、発泡外観に劣るため好ましくなく、930kg/m3を超える範囲では、断熱性に劣るため好ましくない。」 オ「【0032】 本発明の発泡用積層体を構成するポリエチレン系樹脂(b)の密度は、断熱性、発泡の安定性に優れることから、930~970kg/m3の範囲であり、より好ましくは935~970kg/m3の範囲であり、最も好ましくは945~965kg/m3の範囲である。ポリエチレン系樹脂(b)の密度が930kg/m3未満では、断熱性に劣るため好ましくなく、970kg/m3を超える範囲では、発泡外観に劣るため好ましくない。 【0033】 本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂(b)としては、エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体又はこれらの組成物であり、その分子鎖の形態は直鎖状でもよく、分岐を有していてもよい。このようなポリエチレン系樹脂(b)は、特に限定されるものではなく、前記密度範囲を外れなければよい。 【0034】 エチレン単独重合体としては、中・低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレンが例示することができる。中・低圧法エチレン単独重合体は、従来公知の中・低圧イオン重合法により得ることができる。また、高圧法低密度ポリエチレンは、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができる。 ・・・・ 【0037】 これらの中で、ラミネート成形性に優れることから、密度が930~980kg/m3であり、少なくともエチレン・α-オレフィン共重合体、中・低圧法エチレン単独重合体のいずれかからなる中・高密度ポリエチレン(f)10~90重量部とMFRが1~20g/10分、SRが1.50~2.20である高圧法低密度ポリエチレン(g)90~10重量部を含むエチレン系樹脂組成物(h)((f)と(g)の合計は100重量部)を含むことが好ましい。 ・・・・ 【0040】 さらに、中・高密度ポリエチレン(f)の密度は、エチレン系樹脂組成物(h)のラミネート加工性、生産性に優れるため、945~975kg/m3がより好ましい。 ・・・・ 【0042】 また、高圧法低密度ポリエチレン(g)において、エチレン系樹脂組成物(h)の製膜安定性に優れることから、密度は910~935kg/m3の範囲が好ましい。」 カ「【0051】 本発明の発泡用積層体を構成する紙基材については特に限定はないが、低密度ポリエチレン(a)の発泡倍率を向上させることができるため、紙基材の坪量は150~400g/m2が好ましく、更に好ましくは、250~350g/m2である。 【0052】 このような紙基材に含まれる水分については特に制限はないが、低密度ポリエチレン(a)の発泡倍率が向上することから、15~30g/m2であることが好ましく、より好ましくは20~30g/m2、最も好ましくは20~26g/m2である。」 キ「【0066】 本発明の発泡用積層体を加熱することにより、(A)層が発泡した発泡積層体を得ることができる。」 ク 上記摘記事項からみて、また、1kg/m3は0.001g/cm3に等しいことから、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「少なくとも(A)層/紙基材層/(B)層を含み、(A)層が低密度ポリエチレン(a)、(B)層がポリエチレン系樹脂(b)から構成される発泡用積層体であって、 (A)層の低密度ポリエチレン(a)の密度は、0.910~0.930g/cm3の範囲であり、より好ましくは0.914~0.925g/cm3、さらに好ましくは0.916~0.920g/cm3の範囲であり、 (B)層のポリエチレン系樹脂(b)の密度は、0.930~0.970g/cm3の範囲であり、より好ましくは0.935~0.970g/cm3の範囲であり、最も好ましくは0.945~0.965g/cm3の範囲である、 発泡用積層体。」 (2)引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-51788号公報(平成30年4月5日出願公開)には、次の事項が記載されている。 ア「【0004】 ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(特許文献1参照)。」 イ「【0032】 本発明において、基材層中のバイオマス度は、5%以上であり、好ましくは10%以上30%以下であり、より好ましくは15%以上25%以下である。基材層中のバイオマス度が5%以上であれば、従来に比べて化石燃料由来のポリエステルの量を削減し環境負荷を減らすことができる。」 ウ「【0073】 本発明において、好適に使用されるバイオマスポリオレフィンとしては、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:SLL118、密度:0.916g/cm3、MFR:1.0g/10分、バイオマス度87%)等が挙げられる。」 (3)引用文献5の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-27171号公報(平成28年2月18日出願公開)には、次の事項が記載されている。 ア「【0004】 ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。 【0005】 そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(例えば、特許文献1を参照)。」 イ「【0060】 樹脂フィルム 本発明による樹脂フィルムは、上記の樹脂組成物からなり、樹脂組成物がバイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなることで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂フィルムを代替することができる。」 ウ「【0069】 実施例2 バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SHA7260、バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm3、MFR:20g/10分)50質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC701、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm3、MFR:14g/10分)50質量部とをドライブレンドした樹脂(バイオマス度:48%、密度:0.937g/cm3、MFR:17g/10分)を、290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、樹脂フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。」 2.対比 (1)本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「紙基材層」は、本願発明の「紙基材層」に相当し、引用発明の「発泡用積層体」は、加熱・発泡させて紙カップ等の容器に用いるもの(引用文献2の【0002】、【0007】)であるから、同じく加熱・発泡させて容器に用いる本願発明の「積層体」に相当する。 引用発明の「0.910~0.930g/cm3の範囲であり、より好ましくは0.914~0.925g/cm3、さらに好ましくは0.916~0.920g/cm3の範囲」の低密度ポリエチレン(a)から構成された(A)層について、ポリエチレンはポリオレフィンに該当するものであり、さらに好ましいとされる「0.916~0.920g/cm3の範囲」は「密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満」に含まれ、上記(A)層は加熱することにより発泡する層(引用文献2の【0066】)であるから、本願発明の「密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリオレフィン樹脂からなる発泡層」に相当する。 引用発明の「密度0.930g/cm3以上0.970g/cm3以下であるポリエチレン系樹脂(b)」から構成された(B)層と、本願発明の「密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下の中高密度ポリオレフィン樹脂からなる非発泡層」とは、「密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下であるポリオレフィン樹脂から構成された層」という限りで一致する。 また、以上を踏まえると、引用発明の「少なくとも(A)層/紙基材層/(B)層を含」んでなる「発泡用積層体」は、本願発明の「密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリオレフィン樹脂からなる発泡層」と、「紙基材層」と、「密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下であるポリオレフィン樹脂から構成された層」とを「順に備える積層体」に相当する。 (2)一致点 「少なくとも、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリオレフィン樹脂からなる発泡層と、紙基材層と、密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下であるポリオレフィン樹脂から構成された層を順に備える積層体。」 (3)相違点 《相違点1》 密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下であるポリオレフィン樹脂から構成された層に関し、本願発明が「密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下の中高密度ポリオレフィン樹脂からなる非発泡層」であるのに対し、引用発明は「密度0.930g/cm3以上0.970g/cm3以下であるポリエチレン系樹脂(b)」から構成された(B)層である点。 《相違点2》 本願発明が「低密度ポリオレフィン樹脂および/または中高密度ポリオレフィン樹脂がバイオマスポリエチレン樹脂を含み、且つバイオマス度が5%以上である」のに対し、引用発明は、バイオマスに係る樹脂を含むか特定されていない点。 《相違点3》 本願発明が「低密度ポリオレフィン樹脂は密度0.918g/cm3のバイオマスポリエチレン樹脂を含み、且つ中高密度ポリオレフィン樹脂は密度0.918g/cm3のバイオマスポリエチレン樹脂と密度0.959g/cm3のバイオマスポリエチレン樹脂と混合して得られる樹脂である」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。 3.判断 (1)相違点1について ア 本願発明の「密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下の中高密度ポリオレフィン樹脂からなる非発泡層」の技術的意義について (ア)本願発明の「密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下の中高密度ポリオレフィン樹脂からなる非発泡層」と「密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリオレフィン樹脂からなる発泡層」の間に配置される紙基材層について、本件明細書の段落【0012】には、「ポリエチレンを好適に発泡させる観点から紙基材に含まれる水分は5~10重量%が好ましく、6~8重量%がより好ましい。」と記載されている。 (イ)他方、紙基材に積層された低密度エチレン樹脂層を発泡させた容器に用いる積層体において、低密度ポリオレフィン樹脂層を好適に発泡させるために、紙基材を挟んで低密度エチレン樹脂層の反対側の層に紙基材から発生する水蒸気を遮断し、低密度ポリエチレン樹脂層に送るように機能する層を配置することが周知技術である。 上記周知技術を示す文献として、例えば、原査定で引用された引用文献1(国際公開第2019/186640号)には次の記載がある。 「[0004] 上記特許文献1に開示されている断熱容器を含め、一般の断熱容器やこれを成形するための断熱容器用積層体は、基材となる紙の表面に発泡させるための樹脂(特許文献1においては低密度ポリエチレン)を設け、裏面側にも別の樹脂(特許文献1においては中密度ポリエチレン)を設けることで断熱容器用積層体とし、これを加熱することにより紙に含まれる水分を蒸発させ、この水蒸気によって表面側の樹脂(特許文献1においては低密度ポリエチレン)を発泡せしめる、いわゆる水蒸気発泡によって製造されている。」 [0026] 図1に示すように、本実施形態にかかる断熱容器用積層体10Aは、外面側から、印刷層15、表面層16、カバー層11A、および紙から構成される基材層12を、この順に隣接して積層されているとともに、前記カバー層11Aが積層されていない側の基材層12の面に、当該基材層12を構成する紙から発生する水蒸気を遮断する水蒸気遮断層13が少なくとも積層されていることで構成されている。なお、表面層16は、必須の層ではなく、任意に形成可能な層である。」 「[0070] (水蒸気遮断層) 本実施形態にかかる断熱容器用積層体10A、10にあっては、基材層12の内面側に水蒸気遮断層13が設けられている。当該層は、基材層12を構成する紙から発生する水蒸気を遮断し、発生した水蒸気を効率良くカバー層11A側に送るために機能する層であり、したがって当該機能を有する層であれば、特に限定されることはない。例えば、カバー層を構成する樹脂よりも融点が5度以上高い樹脂を用いることにより、水蒸気遮断機能に優れており、加えてピンホール耐性にも優れている。 [0071] このような水蒸気遮断層13の材質としては、例えばポリエチレン系樹脂(C)やクレー(D)やポリプロピレンを挙げることができる。 [0072] 中でも、水蒸気遮断層13としては、ポリエチレン系樹脂(C)が好ましく、断熱性に優れることから、密度が925~970kg/m3の範囲が好ましく、より好ましくは930~970kg/m3、更に好ましくは935~965kg/m3である。」 (ウ)上記引用文献1に示される周知の技術を踏まえると、本願発明の「密度0.93g/cm3以上、0.97g/cm3以下の中高密度ポリオレフィン樹脂からなる非発泡層」は、紙基材層から発生する水蒸気を遮断し、「密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリオレフィン樹脂からなる発泡層」に送るように機能するものであると理解できる。 イ 一方、引用文献2には、「低密度ポリエチレン(a)の発泡倍率を向上させることができるため、紙基材の坪量は150~400g/m2が好ましく、更に好ましくは、250~350g/m2である。このような紙基材に含まれる水分については特に制限はないが、低密度ポリエチレン(a)の発泡倍率が向上することから、15~30g/m2であることが好ましく、より好ましくは20~30g/m2、最も好ましくは20~26g/m2である。」(【0051】、【0052】)と、「本発明の発泡用積層体を加熱することにより、(A)層が発泡した発泡積層体を得ることができる。」(【0066】)と記載され、紙基材が含有する水分が、低密度ポリエチレン(a)で構成される(A)層が発泡することに用いられる旨記載されている。 引用文献2には、「密度0.930g/cm3以上0.970g/cm3以下であるポリエチレン系樹脂(b)」から構成された(B)層が、発泡するか否か記載されていないが、上記アで示した周知技術を踏まえると、紙基材層から発生する水蒸気を(B)層で遮断し、(A)層の低密度ポリエチレン(a)の発泡倍率を向上させるものと理解することができる。水蒸気を(B)層で遮断して(A)層の低密度ポリエチレン(a)の発泡倍率を向上させることは、(B)層に水蒸気が入らず、水蒸気を(A)層に向けることを意味するから、(B)層は、水蒸気が入らないため発泡せず、非発泡層にあたるとするのが相当である。 よって、相違点1は実質的な相違点ではない。 ウ 仮に、引用発明の(B)層が非発泡層ではないとしても、(A)層の低密度ポリエチレンの発泡倍率を上げることに動機付けがあり、発生した水蒸気を効率良く発泡層側に送るために、引用発明の(B)層を930~970kg/m3(0.930g/cm3~0.970g/cm3)のポリエチレン系樹脂からなる非発泡層とすることは、引用文献1に記載された技術的事項から当業者であれば容易に想到できるものである。 (2)相違点2について 地球温暖化防止等の観点から、プラスチックや樹脂製品等の原料としてバイオマスを使用するようにすることは、文献を示すまでもなく一般的な課題である。 その課題の解決のため、引用文献4(上記1.(2)【0032】)及び引用文献5(上記1.(3)【0060】)の記載からみて、包装材等に用いられるポリエチレンの原料として、環境負荷の低減を考慮し、例えばバイオマス度が5%以上となるよう、化石燃料由来のものからバイオマス由来のものに置換することには動機付けがあるといえる よって、本願発明の相違点1に係る構成は、引用発明、引用文献4及び引用文献5の記載事項からみて、当業者が容易に想到し得たものである。 (3)相違点3について ア 引用発明の「ポリエチレン系樹脂(b)」について、引用文献2には、中・低圧法エチレン単独重合体からなる中・高密度ポリエチレン(f)を10~90重量部、高圧法低密度ポリエチレン(g)を90~10重量部を含むエチレン系樹脂組成物(h)((f)と(g)の合計は100重量部)を含むことが好ましいと(【0037】)、さらに、中・高密度ポリエチレン(f)の密度は、エチレン系樹脂組成物(h)のラミネート加工性、生産性に優れるため、945~975kg/m3(0.945~0.975g/cm3)がより好ましいと(【0040】)、高圧法低密度ポリエチレン(g)の密度は、エチレン系樹脂組成物(h)の製膜安定性に優れることから、0.910~0.935kg/m3の範囲が好ましいと(【0042】)、それぞれ記載されている。 この引用文献2の、引用発明の「ポリエチレン系樹脂(b)」の樹脂選定に係る示唆に基づき、市販され入手可能なバイオマス樹脂の中から、中・高密度ポリエチレン(f)として密度0.945~0.975g/cm3の範囲の樹脂を、高圧法低密度ポリエチレン(g)として密度0.910~0.935g/cm3の範囲の樹脂を、それぞれ選択し、混合して「ポリエチレン系樹脂(b)」を構成することは、当業者が容易に成し得ることである。 イ そして、引用文献4(上記1.(2)【0073】)には、密度0.918g/cm3のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製 商品名:SBC818)が、引用文献5(上記1.(3)【0069】)には、密度0.955g/cm3のバイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製 商品名:SHA7260)がそれぞれ具体的に記載されていることから、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとして密度0.918g/cm3であるもの、バイオマス由来の中高密度ポリエチレンとして密度0.955g/cm3に近い密度0.959g/cm3であるものは、それぞれ当業者が採用し得る樹脂材料であると理解できる。 なお、本願発明の密度0.959g/cm3のバイオマス由来の中高密度ポリエチレンとして、本願明細書(【0031】、【0032】)には、ブラスケム社製のバイオマスポリエチレン(SHA7260)が例示されているが、ブラスケム社のHP(「SUSTAINABLE SOLUTION FOR A CIRCULAR ECONOMY」、[online]、Braskem、[令和4年8月10日検索]、インターネット<URL:https://www.braskem.com.br/products-catalog?key=136>)に掲示されるバイオマスポリエチレンのカタログには、バイオマスポリエチレン(SHA7260)の密度は、「0.955g/cm3」と記載されている。 ウ 引用発明の「低密度ポリエチレン(a)」についても、密度についてさらに好ましいとされる「0.916~0.920g/cm3の範囲」に合致するバイオマスポリエチレンとして、上記イにおいて、高圧法低密度ポリエチレン(g)の樹脂として選択した、密度0.918g/cm3のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製 商品名:SBC818)を選択することも、当業者が適宜成し得たものである。 エ そうすると、本願発明の相違点3に係る構成は、引用発明、並びに引用文献2、引用文献4及び引用文献5の記載事項からみて、当業者が容易に想到し得たものである。 (4)効果に関して 審判請求人は、出願当時のみならず昨今の技術水準を鑑みると、化石燃料由来製品からバイオマス由来製品への代替が求められている中、実用化されている技術や製品が少ないがために、化石燃料由来製品から紙製品への移行が見受けられるところ、本願発明において、バイオマス由来の樹脂を使用しても化石燃料由来の樹脂を使用した発泡性積層体と同等の発泡性、ラミネート性、発泡後外観を有することは、従来技術にはない顕著な効果といえるものであることを説明して、本願発明は進歩性を有する旨主張している。 しかし、化石燃料に由来するポリエチレンも、バイオマスに由来するポリエチレンも、得られたポリエチレンとしては同一の化合物であるところ、一般に同一化合物から製造された物であればその物性も同一であり、また、上記引用文献5(上記1.(3))には、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなるポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないことが記載されていることから、上記バイオマス由来の樹脂を使用しても化石燃料由来の樹脂を使用した発泡性積層体と同等の発泡性、ラミネート性、発泡後外観を有することは、当業者が予測するとおりの結果であり、従来技術にない顕著な効果とまではいえない。 よって、審判請求人の上記主張は採用できず、本願発明が進歩性を有するとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-014787

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