特許拒絶査定不服審判
2024-002138
発泡断熱紙容器用シート
- 審判番号
- 2024-002138
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-139603
- 請求日
- 2024年02月07日
- 審決日
- 2026年01月27日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日清食品ホールディングス株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 薫
- 審判官 大野 明良
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P18 .537-WZ (B65D) / P18 .536-WZ (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-139603号「発泡断熱紙容器用シート」拒絶査定不服審判事件〔令和4年3月4日出願公開、特開2022-35356号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年8月20日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 8月 1日付け:拒絶理由通知書
令和5年10月 2日 :意見書の提出
令和5年11月 1日付け:拒絶査定(謄本送達11月7日)
令和6年 2月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 9月12日付け:拒絶理由通知書
令和7年11月10日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、それぞれ令和6年2月7日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「紙基材の少なくとも片面にポリエチレン樹脂をラミネートする発泡断熱紙容器用シートであって、
ポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度と、垂直方向の引張強度との差が1.5N/mm2以下であり、
且つ、
ポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度、及び垂直方向の引張強度が5.0N/mm2以上7.0N/mm2以下である、
ことを特徴とする発泡断熱紙容器用シート。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和7年9月12日付けで、当審が通知した拒絶理由の概要は、次の理由を含むものである。
1 拒絶理由1(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)「ポリエチレン樹脂」の「引張強度」について
請求項1に記載された「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」などのプラスチックの引張特性は、一般に、「厚さ1mm以下のプラスチックフィルム及びシート」、「型成形、押出成形及び注型プラスチック」等について、試験片を作成して測定されるものであるが、これらの形状を有していない「ポリエチレン樹脂」自体の引張特性がどのように測定できるのか理解できず、「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」や「垂直方向の引張強度」がどのようなものであるか不明である。
(2)「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」について
請求項1に記載された「ポリエチレン樹脂」は「紙基材」に「ラミネート」されたものであるが、そのような「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」がどのように測定されたものであるか不明である。
(3)「引張強度」の用語について
請求項1に記載された「引張強度」の用語の意味内容を理解できない。
2 拒絶理由2(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」について
請求項1に記載された「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」に関して、「発泡断熱紙容器用シート」における「紙基材」に「ラミネート」された「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」をどのように測定するのかが記載されていないため、請求項1に係る発明を実施することができない。
(2)「MD強度」、「TD強度」について
請求項1に記載された「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」に関して、発明の詳細な説明の実施例に記載された「MD強度」、「TD強度」を参照しても、請求項1に係る発明を実施することができない。
第4 当審の判断
1 拒絶理由1(明確性)について
請求項1には「ポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度と、垂直方向の引張強度との差が1.5N/mm2以下であり、
且つ、
ポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度、及び垂直方向の引張強度が5.0N/mm2以上7.0N/mm2以下である」と記載されているが、当該記載における「ポリエチレン樹脂」とは、「ポリエチレン樹脂」自体を意味すると認められる。
しかしながら、「引張強度」はプラスチックフィルムやシート等から試験片を作成して測定されるものであって、「ポリエチレン樹脂」自体の「引張強度」を測定することができず、プラスチックフィルムやシートの形状をしていない「ポリエチレン樹脂」について、「流れ方向の引張強度と、垂直方向の引張強度」をどのように定義しているのか明確でない。
仮に、上記記載における「ポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度と、垂直方向の引張強度」が、ラミネート後の「ポリエチレン樹脂」について、何らかの試験片を作成して測定したものであったとしても、その値は試験片の形状や引張強度の測定条件により左右されるところ、請求項1にはその試験片の作成条件や引張強度の測定条件について何ら特定されていない。
この点に関して、発明の詳細な説明の実施例において、サンプルを作成して「流れ方向の引張強度」と「垂直方向の引張強度」を測定しているが、請求項1はこの測定条件が特定されているものでもないし、また、作成されたサンプルと、実施例のシートC1~C8における紙基材にラミネートされた後におけるポリエチレン樹脂とが同じ引張特性を有しているという技術常識があるわけでもない。
以上のとおり、請求項1において、「ポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度と、垂直方向の引張強度」を特定することができない以上、実施品等に係る発泡断熱紙容器用シートが本願発明に含まれるか否かを判断することができないため、第三者にとって不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。
なお、上記第3の1(3)に関して、「引張強度」の用語は、JIS(日本工業規格)等により定義されたものではないが、令和7年11月10日に提出された意見書における主張を踏まえ、JIS K 7127:1999の「4.定義」で参照されたJIS K 7161:1994の「4.定義」における「引張強さ」を意味するものとした。
2 拒絶理由2(実施可能要件)について
(1)上記第3の2(1)について
仮に、請求項1の記載から、「ポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度と、垂直方向の引張強度」が、紙基材にラミネートされたポリエチレン樹脂の流れ方向の引張強度と、垂直方向の引張強度であると理解した場合、発明の詳細な説明には、請求項1の「発泡断熱紙容器用シート」における「紙基材」に「ラミネート」された後の「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」をどのように測定するのかが記載されていないため、請求項1に係る発明を実施することができない。
(2)上記第3の2(2)について
サンプルの試験片である「低密度ポリエチレン樹脂フィルム」について「MD強度」、「TD強度」を測定することで、請求項1の「発泡断熱紙容器用シート」において、「紙基材」に「ラミネート」された「ポリエチレン樹脂」の「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」を測定したことになるという技術常識があるわけではないため、発明の詳細な説明における「MD強度」、「TD強度」の測定方法を参照しても、請求項1に係る発明を実施することができない。
(3)拒絶理由2(実施可能要件)についてのまとめ
よって、発明の詳細な説明は、請求項1について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
3 請求人の主張について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、令和7年11月10日提出の意見書において、「引張強度」の用語は、例えば、特許第7371616号公報、特許第7220067号公報、特許第5914339号公報の特許請求の範囲に用いられているなど、本願出願前から当該分野に用いられた用語であり、当業者にとっては自明な用語である旨主張する。
(2)上記主張について
確かに、樹脂フィルムにおける「引張強度」は、請求人主張のとおり自明である。しかし、本願の請求項1のようなフィルムではない「ポリエチレン樹脂」自体、又は「紙基材」に「ラミネート」された後の「ポリエチレン樹脂」における「流れ方向の引張強度」、「垂直方向の引張強度」はこの限りではない。
(3)小括
よって、請求人の主張は採用できない。
なお、令和7年11月10日提出の手続補正書により、明細書の【0047】における「低密度ポリエチレン樹脂(B1)」の「厚さ」の「70μm」が「50μm」に補正され、請求人は、当該補正が誤記を訂正するものである旨主張する。
しかしながら、補正前の「70μm」の記載が本来「50μm」の意味であることは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から解することができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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