特許拒絶査定不服審判
2024-019399
包装材料及び包装製品
- 審判番号
- 2024-019399
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-035762
- 請求日
- 2024年12月03日
- 審決日
- 2026年06月25日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】浅野 真理
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 佐藤 秀之
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P18 .121-WZ (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-35762「包装材料及び包装製品」拒絶査定不服審判事件〔令和5年5月16日出願公開、特開2023-67994〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月26日に出願した特願2019-58980号の一部を新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 5月 1日付け:拒絶理由通知書
令和6年 7月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年10月11日付け:拒絶査定
(令和6年10月22日 :原査定の謄本の送達)
令和6年12月 3日 :審判請求書の提出
令和8年 3月19日付け:拒絶理由通知書
令和8年 5月13日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
令和8年5月13日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1ポリオレフィン樹脂層、紙基材層、シーラント層が順に積層された包装材料を、胴材、底材、又は胴材及び底材に用いたカップ容器であって、
前記第1ポリオレフィン樹脂層が、前記包装材料の最外面に位置し、
前記第1ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレン樹脂層であり、
前記シーラント層が、前記包装材料の最内面に位置する第2ポリオレフィン樹脂層であり、前記第2ポリオレフィン樹脂層が、化石燃料由来の低密度ポリエチレン樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層であり、前記第2ポリオレフィン樹脂層のメルトフローレートが1~30g/10分であり、前記第2ポリオレフィン樹脂層の厚さが、10~40μmである、カップ容器。」
第3 拒絶の理由
令和8年3月19日付けで当審において通知した拒絶理由は、次の理由を含むものである。
理由(進歩性)
本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
引用文献1 特開平10-194261号公報
引用文献2 特開2018-1608号公報
第4 当審における判断
当審合議体は以下に示すとおり、令和8年5月13日の手続補正書及び意見書の内容を考慮しても、上記第3に記載した拒絶の理由(進歩性)は解消していないと判断する。
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には以下の記載がある。なお、下線は当審で付したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、板紙を基材とし内層および外層がヒートシール可能な熱可塑性樹脂からなる積層シートで形成され、胴部材と底部材を加熱成形して得られる紙製容器に関し、特には紙カップ、紙缶等に関する。」
「【0003】ここで、前記胴部材および底部材の層構成を示すと、一般的にはポリエチレン/板紙/ポリエチレンとすることが多く、使用するポリエチレンは一般的にMFR;2~8、融点;105~115°C、密度;0.91~0.93の物性を有する低密度ポリエチレンが用いられ、内層および外層とも同じ種類のポリエチレンである場合が多い。収納物の種類によっては、内層のポリエチレンと板紙の間に、例えば、アルミニウム箔、ポリエステルフィルム、金属蒸着薄膜層を形成させたポリエステルフィルム等のガスバリヤー層を設けても良い。また、特にバリア性を必要とする紙カップの場合には、成形時の段差の埋め込みや、耐ピンホール性を重視して内層のポリエチレン層の厚みを50~70μm程度に設定することが多い。・・・
・・・
【0005】この時、溶融状態にあるポリエチレンは流動性を有しているので、圧力をかけてカップ底部を成形した際、溶けたポリエチレンの一部がカップ底部の端縁からはみ出すことがあり、その場合には、紙カップは外観不良となり商品価値が著しく低下する。そして、ポリエチレンがはみ出すのは主として胴部材側である(図4参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、胴部材と底部材から構成される紙製容器に関する上記のような問題点に着目してなされたもので、底部材を絞り込み、胴部材と折り込み圧着成形等しても内層の熱可塑性樹脂が容器外側にはみ出してこない外観のきれいな紙製容器を提供することを目的とする。」
「【0015】
【実施例】以下に本発明の実施例をさらに具体的に説明する。
〈実施例1〉胴部材用の内層22、外層23の熱可塑性樹脂としてMFRが1.6のLDPE(軟化点 94°C、融点 109°C、密度 0.920、ミラソン401PC、三井石油化学株式会社製)を、また、底部材用の内層32、外層33の熱可塑性樹脂としてMFRが3.7のLDPE(軟化点 95°C、融点 111°C、密度 0.923、ミラソン16P、三井石油化学株式会社製)を用意する。
【0016】基材21である坪量295g/m2 の板紙の表裏に、内層22として厚さ60μmのMFRが3.7のLDPEを、外層23として厚さ20μmの内層と同じLDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし、胴部材用積層シート20を作製した(図2(a)参照)。
【0017】基材31である坪量260g/m2 の板紙の表裏に、内層32として厚さ60μmのMFRが3.7のLDPEを、外層33として厚さ20μmの内層と同じLDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし、底部材用積層シート30を作製した(図2(b)参照)。
【0018】積層シートから紙製容器である紙カップを作製する工程の一例を示す。胴部材用積層シート20を打抜機にセットし、所定の寸法形状を有する扇形の胴部材ブランクを得た。また、底部材用積層シート30は、所定寸法にスリットして底部材巻き取りとした。
【0019】一般的な紙カップ成形機を用いて、先ず胴部材のブランクは下方に向かうに従って先細る円筒状の胴部材2に成形し、また、底部材の巻き取りはほぼ円形状であると共に、外周縁部が下向きに起立する底部材3に打抜き、成形する。つぎに、図3(a)、(b)に示すように、前記胴部材2の下部内面に、前記底部材3の外周縁部の外面を接合させながら胴部材2の内面側と、底部材3の外面側に熱風50を吹き付ける。ついで、底部材の起立した外周部を覆うように胴部材の下端縁部(図では上側端部になる)をインカール金型(図示せず)を用いて内方に折り返し、この折り返した胴部材と底部材の起立した外周部をローレット(図示せず)を用いて圧着すると、折り返した胴部材の内面は底部材の外面に融着して完全な底部構造を有する紙カップとなる。この際、折り返す胴部材の内面側と底部材の起立部は、熱風により溶融状態になっているが、胴部材の内面側のLDPEは底部材の内面側のLDPEに比較して熱流動性が小さいため、胴部材の内層の厚さが60μmあるにも係わらず、折り返した胴部材と底部材の起立部をローレットを用いて圧着しても胴部材内層のLDPEは折り返した胴部材の端縁から底部材の外側にはみ出しは無く、外観のきれいな紙カップであった。
【0020】〈実施例2〉胴部材用の内層22、外層23の熱可塑性樹脂として実施例1で底部材用の内層、外層の熱可塑性樹脂に用いたMFRが3.7ののLDPEを用意する。また、底部材用の内層32、外層33の熱可塑性樹脂としてMFRが7.2のLDPE(軟化点 86°C、融点 106°C、密度 0.917、ミラソン11P、三井石油化学株式会社製)を用意する。
【0021】実施例1と同じ基材(板紙)、方法を用いて胴部材用積層シートと底部材用積層シートとを作製し、実施例1と同様に紙カップを成形したが、底部材の外側にLDPEのはみ出しは見られず外観のきれいな紙カップが作製できた。」
「【図2】
[図:0001437890000001.jpg]
【図3】
[図:0001437890000002.jpg]
【図4】
[図:0001437890000003.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載を参照し、特に実施例2に着目すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内は特に参照した箇所を理解促進のために示したものである。
「胴部材用の内層22、外層23の熱可塑性樹脂としてMFRが3.7のLDPEを、また、底部材用の内層32、外層33の熱可塑性樹脂としてMFRが7.2のLDPEを用意し、(【0015】、【0020】)
基材21である坪量295g/m2の板紙の表裏に、内層22として厚さ60μmのMFRが3.7のLDPEを、外層23として厚さ20μmの内層と同じLDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし、胴部材用積層シート20を作製し、(【0016】、【0021】)
基材31である坪量260g/m2の板紙の表裏に、内層32として厚さ60μmのMFRが7.2のLDPEを、外層33として厚さ20μmの内層と同じLDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし、底部材用積層シート30を作製し、(【0017】、【0021】)
胴部材用積層シート20と底部材用積層シート30から作成した、紙製容器1である紙カップであって、(【0018】、【0021】)
胴部材の内面は底部材の外面に融着した、(【0019】、【0021】)
紙製容器1である紙カップ。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には以下の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である、積層体。
・・・
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を備える液体用紙容器であって、
前記液体用紙容器の最内層が前記第2の熱可塑性樹脂層である、液体用紙容器。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備えた積層体に関し、より詳細には、少なくとも、紙基材層と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とを備える積層体に関する。さらには、該積層体を備える包装製品および液体用紙容器に関する。」
「【発明の効果】
【0017】
本発明による積層体は、少なくとも、紙基材層と、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層とを備えることで、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体と比べて機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体を代替することができる。」
「【0080】
(用途)
本発明による積層体は、液体紙容器、紙カップ、ラベル材料、蓋材等の包装製品に使用することができる。」
「【0096】
[実施例7]
<積層体10の作製>
紙基材層としてミルクカートン原紙(クリアウォーター社製、坪量400g/m2)を用意し、一方の面にバイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を、320℃の樹脂温度、ライン速度100m/分で溶融押出しラミネートして、第1の熱可塑性樹脂層(バイオマス度:95%、厚さ20μm)を形成した。次に、紙基材層の第1の熱可塑性樹脂層と反対側の面に、サンドラミネート法を用いて、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LC520、密度:0.923g/cm3、MFR:3.6g/10分、バイオマス度:0%)を押出した接着樹脂層(バイオマス度:0%、厚さ15μm)を介して、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、T4100、厚さ12μm)を貼り合わせた。続いて、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアンカーコート剤(東洋モートン社製、EL540/CAT-RT32)を塗布乾燥し、アンカーコート層を形成した。その後、アンカーコート層上に、サンドラミネート法を用いて、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(Braskem社製、SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度:95%)を押出しながら、このポリオレフィン樹脂層(バイオマス度:95%、厚さ20μm)を介して、化石燃料由来のポリエチレンフィルム(大日本印刷社製:SKL、厚さ40μm)を貼り合わせて、第1の熱可塑性樹脂層、紙基材層、接着樹脂層、プラスチックフィルム、アンカーコート層、ポリオレフィン樹脂層、第2の熱可塑性樹脂層が順に積層された積層体10を得た。」
イ 引用文献2に記載された事項
上記アを参照し、特に実施例7に着目すると、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、最内層に位置する第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える、液体紙容器に用いる積層体において、(請求項1、8)
第1の熱可塑性樹脂層をバイオマス由来の低密度ポリエチレンとし、第2の熱可塑性樹脂層を厚さ40μmの化石燃料由来のポリエチレンフィルムとすること。(【0096】)」
2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「基材21」は、「板紙」であるから、本願発明の「紙基材層」に相当する。
引用発明の「内層22」は、「LDPE」を「押し出しラミネーション法によりラミネートし」たものであって、「胴部材の内面は底部材の外面に融着」するものであるから、本願発明の「シーラント層」である「第2ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
引用発明の「外層23」は、「LDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし」たものであるから、本願発明の「第1ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
引用発明の「胴部材用積層シート20」は、本願発明の「包装材料」に相当する。そうすると、引用発明の「胴部材用積層シート20と底部材用積層シート30から作成した、紙製容器1である紙カップ」は、本願発明の「包装材料を、胴材」「に用いたカップ容器」にほかならないから、本願発明の「包装材料を、胴材、底材、又は胴材及び底材に用いたカップ容器」に相当する。
引用発明において、「胴部材用積層シート20」が「基材21である坪量295g/m2の板紙の表裏に、内層22として厚さ60μmのMFRが3.7のLDPEを、外層23として厚さ20μmの内層と同じLDPEを、押し出しラミネーション法によりラミネートし」て「作製」されたことは、本願発明において、「包装材料」が「第1ポリオレフィン樹脂層、紙基材層、シーラント層が順に積層された」こと、「前記第1ポリオレフィン樹脂層が、前記包装材料の最外面に位置」すること、「前記シーラント層が、前記包装材料の最内面に位置する第2ポリオレフィン樹脂層であ」ること、及び「前記第2ポリオレフィン樹脂層のメルトフローレートが1~30g/10分であ」ることに相当し、「前記第1ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレン樹脂層であ」ることと、「第1ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレン樹脂層であ」る限りで一致し、「前記第2ポリオレフィン樹脂層が、化石燃料由来の低密度ポリエチレン樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層であ」ることと、「第2ポリオレフィン樹脂層が、」「低密度ポリエチレン樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層であ」る限りで一致する。
以上を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「第1ポリオレフィン樹脂層、紙基材層、シーラント層が順に積層された包装材料を、胴材、底材、又は胴材及び底材に用いたカップ容器であって、
前記第1ポリオレフィン樹脂層が、前記包装材料の最外面に位置し、
前記第1ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレン樹脂層であり、
前記シーラント層が、前記包装材料の最内面に位置する第2ポリオレフィン樹脂層であり、前記第2ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレン樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層であり、前記第2ポリオレフィン樹脂層のメルトフローレートが1~30g/10分である、カップ容器。」
[相違点1]
第1ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレン樹脂層であることに関して、本願発明では、「前記第1ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレン樹脂層であ」るのに対して、引用発明では、「外層23」のLDPEの由来が不明である点。
[相違点2]
第2ポリオレフィン樹脂層が、低密度ポリエチレン樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層であることに関して、本願発明では、「前記第2ポリオレフィン樹脂層が、化石燃料由来の低密度ポリエチレン樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層であ」るのに対して、引用発明では、内層22のLDPEの由来が不明である点。
[相違点3]
本願発明では、「前記第2ポリオレフィン樹脂層の厚さが、10~40μmである」のに対し、引用発明では、内層22が「厚さ60μm」である点。
3 判断
(1)相違点1、2について
相違点1、2は、密接に関連するのでまとめて検討する。
積層体を構成する材料として、地球温暖化防止や環境負荷低減等の観点からプラスチックや樹脂製品等の原料としてバイオマス由来のものを使用することは、本願出願時における一般的な課題である。
ここで、引用発明と、上記1(2)イで示した引用文献2記載事項は、ポリエチレンからなる外層、紙基材層、ポリエチレンからなる最内層をこの順に備えてなる液体用紙容器に関するものである点で共通するものであり、バイオマス由来に関する上記の一般的な課題を踏まえると、引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けは十分に存在するものである。
そうすると、引用発明に引用文献2記載事項を適用することで、相違点1、2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点3について
引用発明の胴部材用積層シート20の内層22の厚さは、当業者が適宜調整し得た設計的事項にすぎない。そうすると、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば適宜なし得た事項である。
そして、引用文献2記載事項として示したように、引用文献2には「第2の熱可塑性樹脂層を厚さ40μmの化石燃料由来のポリエチレンフィルムとすること。」が記載されていることから、液体用紙容器の内層の厚さの本願発明の数値範囲が格別なものとは認められない。
特に、引用発明が解決しようとする課題が「ポリエチレンがはみ出すのは主として胴部材側である(図4参照)。・・・本発明は、・・・底部材を絞り込み、胴部材と折り込み圧着成形等しても内層の熱可塑性樹脂が容器外側にはみ出してこない外観のきれいな紙製容器を提供すること」(【0005】~【0006】)であることからすると、当業者であれば、引用発明において、熱可塑性樹脂からなる内層の厚さを減少させる設計変更について検討し得るものと認められ、ましてやそのような設計変更について阻害要因が存在するものとはいえない。
(3)効果の予測性について
相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(4)令和8年5月13日の意見書における請求人の主張について
ア 請求人は、引用文献1の【0011】には、内層と外層とは同種類の熱可塑性樹脂を使用することが望ましいことが記載されており、環境負荷低減等の観点からバイオマス由来のものを引用発明において使用する場合、内層22及び外層23の両方にバイオマス由来の樹脂を使用しようとするはずであり、内層22及び外層23の両方にバイオマス由来の樹脂を使用する場合よりも環境負荷低減への寄与の程度が小さい形態を敢えて採用する動機付けはない、と主張する。
しかしながら、引用文献1の【0011】には、請求人が引用する記載に続いて「例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂等が好ましく使用でき」と記載されていることや、引用文献1には熱可塑性樹脂の由来(バイオマス又は化石燃料)についての記載も示唆もないから、引用文献1の【0011】の上記記載における「同種類」とは由来のことを意味しないことは明らかである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
イ 請求人は、引用文献1の【0003】に「内層のポリエチレン層の厚みを50~70μm程度に設定することが多い」と記載されているように、引用発明における内層22の厚さは、50~70μmに調整することが一般的であるから、10~40μmを採用して本願発明に至る動機付けはない、と主張する。
しかしながら、【0003】は、従来の技術について示されたものであり、引用文献1で開示しようとする紙製容器に直ちに結びつくものではない。そして、【0003】には「収納物の種類によっては、内層のポリエチレンと板紙の間に、・・・ガスバリヤー層を設けても良い。また、特にバリア性を必要とする紙カップの場合には、成形時の段差の埋め込みや、耐ピンホール性を重視して内層のポリエチレン層の厚みを50~70μm程度に設定することが多い。」と記載されているものであるところ、【0006】で示される【発明が解決しようとする課題】は、「底部材を絞り込み、胴部材と折り込み圧着成形等しても内層の熱可塑性樹脂が容器外側にはみ出してこない外観のきれいな紙製容器を提供すること」であるし、引用発明も上記のようなガスバリヤー層を有するものではないから、本願発明及び本願発明が解決しようとする課題が、【0003】でいう「特にバリア性を必要とする紙カップ」を志向しているわけではないことは明らかである。
したがって、請求人の上記主張も採用できない。
4 小括
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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