特許拒絶査定不服審判
2024-015415
積層体および包装体
- 審判番号
- 2024-015415
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-141176
- 請求日
- 2024年09月26日
- 審決日
- 2026年05月12日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】浅野 真理
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 宮地 匡人
- 分類
- P18 .121-Z (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-141176「積層体および包装体」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月22日出願公開、特開2021-24112〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年7月31日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 5月 9日 :手続補正書の提出
令和5年 2月24日付け:拒絶理由通知書
令和5年 4月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 7月31日付け:拒絶理由通知書
令和5年10月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 1月12日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 6月25日付け:令和6年3月18日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年 6月28日 :原査定の謄本の送達
令和6年 9月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年9月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年9月26日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを少なくとも備える積層体であって、
前記基材がポリエステルから構成され、
前記ヒートシール層が、結晶化度12%以下であり、ガラス転移温度が60℃以上、90℃以下であるポリエステルを含むヒートシール剤からなる層を含み、
前記ヒートシール層の厚さが1μm以上5μm以下であり、
前記基材が、前記ポリエステルとして、リサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)を含み、
前記積層体全体におけるポリエステルの含有量が60質量%以上であり、
前記積層体全体に含まれるポリエステルに対するリサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)の含有量が80質量%以上であることを特徴とする、積層体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年10月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを少なくとも備える積層体であって、
前記基材がポリエステルから構成され、
前記ヒートシール層が、ポリエステルを含むヒートシール剤からなる層を含み、
前記ヒートシール層の厚さが1μm以上5μm以下であり、
前記基材が、前記ポリエステルとして、リサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)を含み、
前記積層体全体におけるポリエステルの含有量が60質量%以上であり、
前記積層体全体に含まれるポリエステルに対するリサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)の含有量が80質量%以上であることを特徴とする、積層体。」
2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、次の補正事項を含むものである。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1に記載された「ヒートシール層」を構成する「ポリエステルを含むヒートシール剤」について、「結晶化度12%以下であ」るとする補正(以下「補正事項1」という。)。
イ 補正事項2
本件補正前の請求項1に記載された「ヒートシール層」を構成する「ポリエステルを含むヒートシール剤」について、「ガラス転移温度が60℃以上、90℃以下である」とする補正(以下「補正事項2」という。)。
(2)補正事項1について
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0046】には、ポリエステルフィルムにより形成されるヒートシール層に関して、ポリエステルの結晶化度は、12%以下であることが好ましいことが記載されている。
しかしながら、当初明細書等の記載全体を参酌しても、「ポリエステルを含むヒートシール剤」により形成される「ヒートシール層」に関して、結晶化度に関する記載は認められない。
すなわち、当初明細書等には、ポリエステルフィルムにより形成されるヒートシール層に関しては、ポリエステルの結晶化度は12%以下であることが記載されているものの、ポリエステルを含むヒートシール剤により形成されるヒートシール層に関しては、結晶化度に関する記載はなく、示唆する記載もない。
そうすると、補正事項1に係る「ヒートシール剤」は、当初明細書等に記載されていないし、記載されたに等しい事項であるともいえない。
したがって、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
(3)補正事項2について
当初明細書等の【0047】には、ポリエステルフィルムにより形成されるヒートシール層に関して、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、60℃以上、90℃以下であることが好ましいことが記載されている。
しかしながら、当初明細書等の【0119】には、「ポリエステルを含むヒートシール剤」により形成される「ヒートシール層」に関して、ポリエステルを含むヒートシール剤として、「ユニチカ(株)製、エリーテルKT-0507、Mn17000、Tg-25℃」を使用することが唯一記載されているものの、当該ヒートシール剤のガラス転移温度は-25℃であるから、当初明細書等の記載全体を参酌しても、ガラス転移温度が60℃以上、90℃以下であるヒートシール剤は記載されていない。
すなわち、当初明細書等には、ポリエステルフィルムにより形成されるヒートシール層に関しては、ポリエステルのガラス転移温度が60℃以上、90℃以下であることが記載されているものの、ポリエステルを含むヒートシール剤により形成されるヒートシール層に関しては、ガラス転移温度が60℃以上、90℃以下である点の記載はなく、示唆する記載もない。
そうすると、補正事項2に係る「ヒートシール剤」は、当初明細書等に記載されていないし、記載されたに等しい事項であるともいえない。
したがって、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年10月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載(上記第2[理由]1(2))により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、以下の引用文献3、8、9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献等一覧>
引用文献3 国際公開第2015/146496号
引用文献8 特開2011-184642号公報
引用文献9 特開2009-84380号公報
3 引用文献の記載事項、発明
(1)引用文献3
ア 引用文献3の記載
引用文献3には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。「・・・」は省略を表す。以下同様。)。
「[請求項1] 基材フィルムの片面に、無機薄膜層が積層された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有し、二軸延伸されてなるポリエステルフィルムであり、以下の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。
・・・」
「[0013] 基材フィルムの厚みの下限は好ましくは8μmであり、より好ましくは10μmであり、さらに好ましくは12μmである。8μm未満であるとフィルムとしての強度が不足となることがあるので好ましくない。上限は好ましくは200μmであり、より好ましくは50μmであり、さらに好ましくは30μmである。200μmを超えると厚くなりすぎて加工が困難となることがある。」
「[0023] フィルムに対するペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは50重量%であり、より好ましくは65重量%であり、さらに好ましくは75重量%である。50重量%未満であるとリサイクル樹脂の活用としては、含有率に乏しく、環境保護への貢献の点であまり好ましくない。ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは95重量%であり、より好ましくは90重量%であり、さらに好ましくは85重量%である。95重量%を超えるとフィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を十分に添加することができない場合があり、あまり好ましくない。なお、フィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を添加する場合に用いるマスターバッチ(高濃度含有樹脂)としてペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることもできる。」
「[0055] 無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、加工性及びガスバリア性の観点から、アルミニウムを含む材料を使用することが好ましい。アルミニウムを含む材料としては、例えば純度の高いアルミニウム(99.9mol%以上)や他の添加元素を含むアルミニウム合金、酸化アルミニウムなどの無機酸化物などが挙げられ、複数の金属や金属と無機酸化物の併用、複数の無機酸化物の組み合わせでも良い。無機薄膜層を形成する材料の組み合わせとしては特に限定されないが、例えば、高純度アルミニウムとアルミニウム合金、添加元素が異なる2種のアルミニウム合金(マグネシウム、シリコン、チタン、カルシウム、マンガン等の添加元素)、アルミニウム合金と酸化アルミニウム、酸化アルミニウムと酸化チタン、酸化ケイ素と酸化アルミニウムなどが挙げられるが、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素(シリカ)と酸化アルミニウム(アルミナ)との複合酸化物が好ましい。
[0056]この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20%以上70%以下の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合があり、一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
[0057] 無機薄膜層の膜厚は、通常1nm以上800nm以下、好ましくは5nm以上500nm以下である。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、800nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。」
「[0062] 本発明の積層フィルムを用いてなる無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムには、上記基材フィルムおよび無機薄膜層のほかに、必要に応じて、公知のガスバリア性積層フィルムが備えている種々の層を設けることができる。
例えば、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを包装材材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルムの外側(無機薄膜層のある面の反対面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。」
「[0067]本発明の積層フィルムは、無機薄膜層以外の上述した各層を有する態様をも包含する。」
「[0081](実施例1)
(ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の調整)
飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルタを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルタで濾別して、ポリエステル再生原料を得た。得られた樹脂の構成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=97.0/3.0//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は0.70dl/gであった。これをポリエステルAとする。
[0082](フィルムの作製)
ポリエステルBとしてテレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を、ポリエステルCとして、ポリエステルBに平均粒子径1.5μmの不定形シリカを0.3%含有するマスターバッチとしてものを作製した。各原料は、33Paの減圧下、125℃で8時間乾燥した。それらをA/B/C=70/20/10(重量比)となるよう混合したものを、一軸押出機に投入した。押出機から、メルトライン、フィルタおよびT-ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から30秒間は樹脂の温度が305℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。
[0083]T-ダイから押し出された溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、それを引き続き118℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に1.41倍延伸し(MD1)、さらに128℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に2.92倍延伸(MD2)した。その縦延伸したシートをテンターに導き、121℃で予熱した後に、131℃で4.3倍横延伸した。引き続き熱固定として、180℃、リラックスなし(0%)で2.5秒行った(TS1)後に引き続き231℃、リラックス5%、3.0秒行った(TS2)後に引き続き222℃、リラックスなしで2.5秒行った(TS3)。引き続き、同じテンター内で、120℃で6.0秒間の冷却を行い、最終的にワインダーで巻き取ることで厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。」
イ 引用文献3に記載されていると認められる事項
上記アの[0081]~[0083]から、基材フィルムの作成に使用されるリサイクルされたポリエステル樹脂は、メカニカルリサイクルされたものといえる。
ウ 引用発明
上記ア、イから、引用文献3には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「基材フィルムの片面に、無機薄膜層及びヒートシール性樹脂層が積層された積層フィルムであって、([請求項1]、[0062]及び[0067])
前記基材フィルムが、ペットボトルからメカニカルリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有し、二軸延伸されてなるポリエステルフィルムである、([請求項1]、上記イ)
積層フィルム。」
(2)周知技術
ア 引用文献8の記載
「【0062】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、被膜形成能に優れており、また、密着性、接着性、耐加水分解性に非常に優れている。したがって、前記のようにして得られたポリエステル樹脂被膜は、例えば、液体の包装やボイル処理を行う包装等の、高湿条件化で使用する包装フィルムのヒートシール剤やプライマー層として非常に有用である。」
「【0064】
・・・
(9)ポリエステル樹脂被膜の造膜性
二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、厚さ38μm)のコロナ処理面に、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542-AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、150℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させ、膜厚が1μmのポリエステル樹脂被膜を形成した。ポリエステル樹脂被膜を目視にて観察し、以下のように造膜性を評価した。なお、ポリエステル被膜の膜厚は、厚み計(ユニオンツール社製、「MICROFINE」)を用いて、フィルムの厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いてフィルム上にポリエステル樹脂被膜を形成した後、このポリエステル樹脂被膜を有するフィルムの厚みを同様の方法で測定し、その差をポリエステル樹脂被膜の膜厚とした。
・・・」
イ 引用文献9の記載
「【0023】
本発明におけるポリエステル樹脂のガラス転移温度は30℃以下であることが必要である。ガラス転移温度が30℃を超えると、得られたポリエステル樹脂水性分散体を用いた被膜の接着強度が得られにくい。通常、これらポリエステル樹脂水性分散体は、基材となるフィルム、シートに塗工し、塗工面同士を合わせ、熱圧着を行うことで接着されるが、基材への熱履歴を避けるため、低温で熱圧着されることが望まれ、また、短時間で多量の熱圧着処理を行う場合は、短時間で十分な接着強度が得られることが必要とされる。ガラス転移温度が30℃以下であれば、ポリエステル等の基材フィルム、シートに対する熱履歴を抑制し、かつ熱圧着時間を短くして多くの熱圧着処理を行うことができ、また必要な接着強度が得られるため、そのような特性を持つポリエステル樹脂を用いたポリエステル樹脂水性分散体は、作業適性を向上させ、優れた接着性能を得られるため好ましい。」
「【0062】
・・・
(9)ポリエステル樹脂被膜の接着性
PETフィルム(ユニチカ株式会社製、厚さ38μm)に水分散体を卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542-AB型、マイヤーバー装着)を用いてコートし、130℃の熱風オーブン中で1分乾燥して厚さ3μmの樹脂皮膜を形成した後、23℃の室温に取り出し、コート面とコート面が接触するように重ねて、ヒートプレス機にて、130℃、シール圧0.1MPa、30秒間圧着した。このサンプルを引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い20℃の雰囲気で、剥離面の角度90度、剥離速度50mm/分、剥離幅25mmの剥離強度を測定した。なお、測定サンプルは、20℃の温度で十分に前調整してから剥離試験に供した。剥離強度が1N/25mm以上のものを実用的な剥離強度を有すると判断し合格とした。」
ウ 周知技術
上記ア及びイより以下の事項は周知技術(以下、単に「周知技術」という。)である。
「ポリエステルフィルムの一方の面に、ポリエステル樹脂水性分散体のヒートシール剤を用いて厚さ1~3μmのヒートシール層を形成すること。」
4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「基材フィルム」、「ヒートシール性樹脂層」、「積層フィルム」は、それぞれ、本願発明の「基材」、「ヒートシール層」、「積層体」に相当する。そうすると、引用発明の「基材フィルムの片面に、無機薄膜層及びヒートシール性樹脂層が積層された積層フィルム」は、本願発明の「基材と、ヒートシール層とを少なくとも備える積層体」に相当する。
・引用発明の「前記基材フィルムが、」「二軸延伸されてなるポリエステルフィルムである」事項は、本願発明の「前記基材がポリエステルから構成され」る事項に相当する。
・引用発明の「ペットボトルからメカニカルリサイクルされたポリエステル樹脂」は、本願発明の「リサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)」に相当するから、引用発明の「前記基材フィルムが、ペットボトルからメカニカルリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有」する事項は、本願発明の「前記基材が、前記ポリエステルとして、リサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)を含」む事項に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
基材と、ヒートシール層とを少なくとも備える積層体であって、
前記基材がポリエステルから構成され、
前記基材が、前記ポリエステルとして、リサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)を含む、
積層体。
<相違点>
本願発明では、「ヒートシール層が、ポリエステルを含むヒートシール剤からなる層を含み、ヒートシール層の厚さが1μm以上5μm以下であり、」「積層体全体におけるポリエステルの含有量が60質量%以上であり、積層体全体に含まれるポリエステルに対するリサイクルポリエステル(但し、ケミカルリサイクルポリエステルは除く)の含有量が80質量%以上である」のに対して、引用発明では、ヒートシール性樹脂層及び積層フィルムがそのような構成を有するか不明な点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
上記3(2)ウで周知技術として示したように、「ポリエステルフィルムの一方の面に、ポリエステル樹脂水性分散体のヒートシール剤を用いて厚さ1~3μmのヒートシール層を形成すること。」は周知技術である。そして、引用発明も当該周知技術も、ともに、ポリエステルフィルムの一方の面にヒートシール性樹脂層を積層するものであるから、引用発明の「ヒートシール性樹脂層」に、当該周知技術を適用する動機付けは十分存在するものである。
そうすると、引用発明の「ヒートシール性樹脂層」に周知技術を適用することで、「ヒートシール性樹脂層」が、ポリエステル樹脂水性分散体のヒートシール剤からなる層を含み、「ヒートシール性樹脂層」の厚さが1μm以上3μm以下とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、引用文献3には、基材フィルムの厚みが好ましくは12μm以上30μm以下であり([0013])、無機薄膜層の膜厚が好ましくは5nm以上500nm以下であること([0057])が記載されており、当該記載を参考にして、引用発明の「基材フィルム」及び「無機薄膜層」の厚さをそのような厚さとすることも、当業者が容易に想到し得たことである。そして、積層フィルム全体におけるポリエステルの含有量が最も小さくなるように、基材フィルムの厚みを下限である12μmとし、ヒートシール性樹脂層の厚さを下限である1μmとし、無機薄膜層の膜厚を上限である500nmとした場合においても、積層フィルム全体におけるポリエステルの含有量は約96質量%(=(12+1)/(12+0.5+1))と計算できるから、相違点に係る本願発明の数値範囲である60質量%以上を満たすこととなる。仮に上記計算が正確でないものとしても、リサイクル性を向上させるために上記相違点に係る本願発明の数値範囲とすることは当業者が容易になし得たことである。
さらに、引用発明の「基材フィルム」は、「ペットボトルからメカニカルリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有」するところ、引用文献3には、環境保護への貢献を考慮して、基材フィルムに対するペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の下限が好ましくは75重量%であることが記載されており([0023])、当該記載を参考にして、引用発明の基材フィルムに対するリサイクルポリエステルの含有量を75重量%以上とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、仮に上限である95重量%まで大きくし、メカニカルリサイクルポリエステルの含有量が最大となるように、基材フィルムの厚みを上限である30μmとし、ヒートシール性樹脂層の厚さを下限である1μmとした場合においては、積層フィルム全体に含まれるポリエステルに対するメカニカルリサイクルポリエステルの含有量は約92重量%(=30×0.95/(30+1))と計算できるから、相違点に係る本願発明の数値範囲である80質量%以上とすることは、当業者が容易になし得たことである。仮に上記計算が正確でないものとしても、環境保護への貢献の観点(引用文献3の[0023])から上記相違点に係る本願発明の数値範囲とすることは当業者が容易になし得たことである。
したがって、引用発明の「ヒートシール性樹脂層」に周知技術を適用し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(3)小括
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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