特許拒絶査定不服審判
2021-011363
イントラ予測装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラム
- 審判番号
- 2021-011363
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-509373外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月25日
- 審決日
- 2023年04月04日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本放送協会
- 【請求人代理人】弁理士法人キュリーズ
- 分類
- P18 .161-Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2特許法184条の4第3項特許法184条の13
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第184条の4第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-509373「イントラ予測装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年10月 3日国際公開、WO2019/189904〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)3月29日(優先権主張 平成30年3月30日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年10月15日 :手続補正書の提出
令和2年11月20日付け:拒絶理由通知書
令和3年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 3月 3日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和3年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 5月20日付け:令和3年5月10日の手続補正についての補正の却下の決定、
拒絶査定
令和3年 8月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1-4に係る発明は、令和3年8月25日提出の手続補正書における手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。(なお、記号A-C3は、本願発明の発明特定事項を分説するために当審にて付した。以下「構成A」-「構成C3」という。)
「 【請求項1】
A 動画像を構成するフレーム単位の画像を分割して得られた各ブロックに対するイントラ予測を行うイントラ予測装置であって、
B イントラ予測の対象ブロックに適用するイントラ予測モードを選択する予測モード選択部と、
C 前記選択されたイントラ予測モードが、参照画素位置が整数画素位置ではない方向性予測である場合、予測画素の生成に用いる4タップ内挿フィルタの種別として、ガウシアンフィルタ及びキュービックフィルタのいずれか一方を決定するフィルタ決定部と、
を備え、
C 前記フィルタ決定部は、
C1 マッピングテーブルを保持しており、
C2 前記対象ブロックの特定の画素について、参照画素からの距離に対応する値と、前記選択されたイントラ予測モードに対応する値との比較結果に応じて、前記ガウシアンフィルタ及び前記キュービックフィルタのいずれか一方を決定し、
C3 前記マッピングテーブルを用いて、前記比較に用いる値を導出する、
A イントラ予測装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-4に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記1.の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)、というものである。
(外国語特許出願)
PCT/KR2018/000226
(国際公開第2018/221817号、特表2020-517190号公報)
第4 先願明細書等の記載及び先願発明
1 先願明細書等に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の外国語特許出願であって、本願の出願後に国際公開されたPCT/KR2018/000226(国際公開第2018/221817号、2018年(平成30年)1月5日国際出願、2018年(平成30年)12月6日国際公開)(以下、「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。なお、先願明細書等は韓国語によって記載されていることから、国際公開第2018/221817号のパテントファミリーである特表2020-517190号公報の対応する段落の記載を括弧内に日本語翻訳文として記載した。また、下線は、当審にて付したものである。
(1)「
[図:0001397483000001.jpg]
」
(【0005】
本発明の他の技術的課題は、現在ブロック内の対象サンプルに対する補間フィルタを選択するイントラ予測方法及び装置を提供することにある。)
(2)
「
[図:0001397483000002.jpg]
」
(【0021】
図1を参照すると、ビデオエンコーディング装置100は、ピクチャ分割部105、予測部110、残差処理部120、エントロピーエンコーディング部130、加算部140、フィルタ部150及びメモリ160を含むことができる。残差処理部120は、減算部121、変換部122、量子化部123、再整列部124、逆量子化部125及び逆変換部126を含むことができる。
【0022】
ピクチャ分割部105は、入力されたピクチャを少なくとも一つの処理ユニット(processing unit)に分割できる。)
(3)
「
[図:0001397483000003.jpg]
[図:0001397483000004.jpg]
」
(【0025】
予測部110は、処理対象ブロック(以下、現在ブロックという)に対する予測を実行し、前記現在ブロックに対する予測サンプルを含む予測ブロックを生成することができる。予測部110で実行される予測の単位は、コーディングブロック、または変換ブロック、または予測ブロックである。
【0026】
予測部110は、現在ブロックにイントラ予測が適用されるか、インター予測が適用されるかを決定することができる。一例として、予測部110は、CU単位にイントラ予測またはインター予測が適用されるかを決定することができる。
【0027】
イントラ予測の場合、予測部110は、現在ブロックが属するピクチャ(以下、現在ピクチャ)内の現在ブロック外部の参照サンプルに基づいて現在ブロックに対する予測サンプルを誘導することができる。このとき、予測部110は、(i)現在ブロックの隣接(neighboring)参照サンプルの平均(average)または補間(interpolation)に基づいて予測サンプルを誘導することができ、(ii)現在ブロックの隣接参照サンプルのうち予測サンプルに対して特定の(予測)方向に存在する参照サンプルに基づいて前記予測サンプルを誘導することもできる。(i)の場合は非方向性モードまたは非角度モードと呼ばれ、(ii)の場合は方向性(directional)モードまたは角度(angular)モードと呼ばれる。イントラ予測における予測モードは、例えば、33個の方向性予測モードと少なくとも2個以上の非方向性モードを有することができる。非方向性モードは、DC予測モード及びプラナーモード(Planarモード)を含むことができる。予測部110は、隣接ブロックに適用された予測モードを利用し、現在ブロックに適用される予測モードを決定することもできる。)
(4)
「
[図:0001397483000005.jpg]
」
(【0078】
ここで、イントラ予測モードは、2個の非方向性イントラ予測モードと33個の方向性イントラ予測モードを含むことができる。前記非方向性イントラ予測モードは、プラナー(planar)イントラ予測モード及びDCイントラ予測モードを含むことができ、前記方向性イントラ予測モードは、2番乃至34番のイントラ予測モードを含むことができる。前記プラナーイントラ予測モードはプラナーモードと呼ばれ、前記DCイントラ予測モードはDCモードと呼ばれる。また、10番のイントラ予測モードは、水平イントラ予測モード(horizontal intra prediction mode)または水平モードを示し、26番のイントラ予測モードは、垂直イントラ予測モード(vertical intra prediction mode)または垂直モードを示し、これを基準にして方向性イントラモード(angular intra mode)の予測方向を角度で表現できる。即ち、10番のイントラ予測モードに対応する水平基準角度0゜を基準にして各イントラ予測モードに対応する相対的角度を表現することができ、26番のイントラ予測モードに対応する垂直基準角度0゜を基準にして各イントラ予測モードに対応する相対的角度を表現することができる。)
(5)
「
[図:0001397483000006.jpg]
」
(【0090】
一方、現在ブロックに対して方向性イントラ予測モードに基づいて予測が実行される場合、前述した内容のように前記現在ブロックの対象サンプルを基準にして前記現在ブロックの方向性イントラ予測モードの予測方向に整数サンプル単位の参照サンプルが存在しない場合、即ち、前記対象サンプルを基準にして前記方向性イントラ予測モードの予測方向に位置する参照サンプルの位置が分数サンプル(fractional sample)の位置である場合、前記参照サンプルの左右の整数サンプル間の補間を介して前記参照サンプルのサンプル値が導出されることができ、前記導出された参照サンプルに基づいて前記対象サンプルの予測サンプルが導出されることができる。前記整数サンプルは、前記参照サンプルの位置に隣接して位置する整数サンプルの位置の隣接サンプルを示すことができる。
【0091】
この場合、前記参照サンプルの左右の前記整数サンプル間の補間は、多様な補間フィルタのうちの一つに基づいて導出されることができる。例えば、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタに基づいて前記補間が実行されることができ、または精巧な補間フィルタに基づいて前記補間が実行されることもできる。前記低域通過フィルタ効果がある補間フィルタは、リニアフィルタ(linear filter)またはガウシアンフィルタ(Gaussian filter)などを示すことができ、前記精巧な補間フィルタは、スプラインフィルタ(spline filter)を示すことができる。前記スプラインフィルタは、キュービックフィルタ(cubic filter)とも呼ばれる。前記補間フィルタは、4タップ(4-tap)補間フィルタである。前記4タップ補間フィルタは、4個の加重値に基づいて4個の整数サンプルに対する補間が実行されるフィルタを示すことができる。前記補間フィルタに基づいて実行される前記整数サンプル間の補間は、以下の数式のように示すことができる。)
(6)
「
[図:0001397483000007.jpg]
[図:0001397483000008.jpg]
」
(【0122】
図11は、前記現在ブロックの対象サンプルと参照サンプルとの距離に基づいて補間フィルタを選択する一例を示す。エンコーディング装置/デコーディング装置は、前記現在ブロックに対するイントラ予測モードを導出することができ、前記イントラ予測モードが方向性イントラ予測モードかどうかを判断することができる(S1100)。前記方向性イントラ予測モードは、角予測で表すこともできる。前記イントラ予測モードが非方向性イントラ予測モードである場合、エンコーディング/デコーディング装置は、前記イントラ予測モードに基づいて前記現在ブロックのイントラ予測を実行することができる。
【0123】
前記イントラ予測モードが方向性イントラ予測モードである場合、エンコーディング装置/デコーディング装置は、前記現在ブロックの対象サンプルと参照サンプルとの距離が閾値(threshold)より小さいかどうかを判断することができる(S1110)。前記参照サンプルは、前記対象サンプルを基準にして前記現在ブロックのイントラ予測モードの予測方向に位置する隣接サンプルを示すことができる。また、前記閾値は、前述した内容のように前記現在ブロックのサイズ、前記現在ブロックのイントラ予測モード、または正方形/非正方形ブロックの可否などに基づいて導出されることができる。また、前記閾値に対する情報がシグナリングされることができ、前記シグナリングされた閾値に対する情報に基づいて前記現在ブロックの前記閾値が導出されることもできる。
【0124】
前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より小さくない場合、即ち、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より大きいまたは同じ場合、エンコーディング装置/デコーディング装置は、ガウシアンフィルタ(gaussian filter)を前記現在ブロックの補間フィルタとして選択することができ、前記ガウシアンフィルタに基づいて前記現在ブロック内の対象サンプルの参照サンプルを導出することができる(S1120)。ここで、前記ガウシアンフィルタは、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタのうちの一つであり、前記ガウシアンフィルタ以外の低域通過フィルタ効果がある補間フィルタに基づいて前記対象サンプルの参照サンプルが導出されることもできる。例えば、前記現在ブロックのサイズが前記閾値より大きいまたは同じ場合、エンコーディング装置/デコーディング装置は、前記現在ブロックの補間フィルタを線形フィルタ(linear filter)として選択することができ、前記線形フィルタに基づいて前記現在ブロック内の対象サンプルの参照サンプルを導出することができる。
【0125】
前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より小さい場合、エンコーディング装置/デコーディング装置は、キュービックフィルタ(cubic filter)を前記現在ブロックの補間フィルタとして選択することができ、前記キュービックフィルタに基づいて前記参照サンプルを導出することができる(S1130)。ここで、前記キュービックフィルタは、前述した内容のように精巧な補間フィルタのうちの一つであり、前記キュービックフィルタ以外の精巧な補間フィルタに基づいて前記対象サンプルの前記参照サンプルが導出されることもできる。また、前記キュービックフィルタは、スプラインフィルタとも呼ばれる。)
(7)
「
[図:0001397483000009.jpg]
・・・
[図:0001397483000010.jpg]
・・・
[図:0001397483000011.jpg]
」
(【0137】
図13は、本発明によるエンコーディング装置によるビデオエンコーディング方法の概略を示す。図13で開示された方法は、図1で開示されたエンコーディング装置により実行されることができる。具体的に、例えば、図13のS1300乃至S1340は、前記エンコーディング装置の予測部により実行されることができ、S1350は、前記エンコーディング装置のエントロピーエンコーディング部により実行されることができる。
【0138】
エンコーディング装置は、現在ブロックに対するイントラ予測モードを決定する(S1300)。エンコーディング装置は、多様なイントラ予測モードを実行することで最適のRDコストを有するイントラ予測モードを前記現在ブロックに対するイントラ予測モードとして導出することができる。前記イントラ予測モードは、2個の非方向性予測モードと33個の方向性予測モードのうちの一つである。前記2個の非方向性予測モードは、イントラDCモード及びイントラプラナーモードを含むことができることは、前述の通りである。または、前記イントラ予測モードは、2個の非方向性イントラ予測モードと65個の方向性イントラ予測モードのうちの一つである。前記2個の非方向性予測モードは、イントラDCモード及びイントラプラナーモードを含むことができることは、前述の通りである。また、前記65個の方向性イントラ予測モードは、垂直の方向性イントラ予測モードと水平方向性イントラ予測モードを含むことができる。前記垂直の方向性イントラ予測モードは、34番のイントラ予測モード乃至66番のイントラ予測モードを含むことができ、前記水平方向性イントラ予測モードは、2番のイントラ予測モード乃至33番のイントラ予測モードを含むことができる。
【0139】
エンコーディング装置は、前記現在ブロックの左側隣接サンプル及び上側隣接サンプルを含む隣接サンプルを導出する(S1310)。エンコーディング装置は、前記現在ブロックの隣接サンプルを導出することができる。前記隣接サンプルは、前記左側隣接サンプル及び前記上側隣接サンプルを含むことができる。また、前記隣接サンプルは、左上側隣接サンプルを含むことができる。前記左側隣接サンプル、前記左上側隣接サンプル、及び前記上側隣接サンプルは、前記現在ブロックのデコーディング時点に既に復元された隣接ブロックから導出されることができる。前記現在ブロックの2N個の前記上側隣接サンプル、左上側隣接サンプル、及び2N個の前記左側隣接サンプルが導出されることができる。ここで、前記現在ブロックのサイズがN×Nであり、前記現在ブロックの左上段(top-left)サンプルのx成分が0及びy成分が0である場合、前記左側隣接サンプルはp[-1][0]乃至p[-1][2N-1]、前記左上側隣接サンプルはp[-1][-1]、前記上側隣接サンプルはp[0][-1]乃至p[2N-1][-1]である。
・・・(中略)・・・
【0141】
エンコーディング装置は、前記現在ブロックの対象サンプルの位置及びイントラ予測モードの予測角度に基づいて、前記隣接サンプルの中で前記対象サンプルの予測のための参照サンプルを導出する(S1320)。エンコーディング装置は、前記現在ブロックの対象サンプルの位置及びイントラ予測モードの予測角度に基づいて前記対象サンプルに対する参照サンプルの位置を導出することができ、前記参照サンプルの位置が分数サンプル(fractional sample)の位置である場合、前記現在ブロックの対象サンプルの位置及びイントラ予測モードの予測角度に基づいて導出された位置に隣接して位置する隣接サンプルを前記対象サンプルの前記参照サンプルとして導出することができる。即ち、前記現在ブロックの対象サンプルの位置及びイントラ予測モードの予測角度に基づいて複数の隣接サンプルを前記対象サンプルの前記参照サンプルとして導出することができる。例えば、4個の隣接サンプルが前記対象サンプルの前記参照サンプルとして導出されることができる。ここで、前記対象サンプルは、イントラ予測が実行される現在ブロック内サンプルを示すことができる。前記イントラ予測モードの予測角度は、前述した表1に基づいて導出されることができ、intraPredAngleは、前記イントラ予測モードから導出された予測角度を示す変数である。
【0142】
エンコーディング装置は、前記対象サンプルに対する補間フィルタ(interpolation filter)を決定する(S1330)。エンコーディング装置は、前記対象サンプルに対する前記補間フィルタを前記現在ブロックのサイズ及び/または前記現在ブロックの前記イントラ予測モードに基づいて決定できる。また、例えば、前記補間フィルタは、前記参照サンプルの位置が分数サンプル(fractional sample)の位置である場合、即ち、複数の参照サンプルが導出された場合に決定されることができる。
・・・(中略)・・・
【0177】
エンコーディング装置は、前記補間フィルタ及び前記参照サンプルに基づいて前記対象サンプルの予測サンプルを導出する(S1340)。エンコーディング装置は、前記対象サンプルの位置及び前記イントラ予測モードの予測角度に基づいて前記補間フィルタのフィルタ係数を導出することができ、前記フィルタ係数及び前記参照サンプルに基づいて前記対象サンプルの前記予測サンプルを導出することができる。例えば、前記現在ブロックの前記隣接サンプルのうち、4個の隣接サンプルが前記参照サンプルとして導出されることができ、前記補間フィルタの4個のフィルタ係数が導出されることができる。エンコーディング装置は、前記フィルタ係数に基づいて前記参照サンプルを補間(interpolation)して前記予測サンプルを導出することができる。前記予測サンプルは、前述した数式1に基づいて導出されることができる。)
(8)
「
[図:0001397483000012.jpg]
」
(【0174】
他の一例として、前記対象サンプルに対する前記補間フィルタは、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離に基づいて決定されることができる。ここで、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離は、前記対象サンプルの位置と前記現在ブロックのイントラ予測モードの予測角度に基づいて導出されることができる。例えば、前記対象サンプルの位置と前記イントラ予測モードの予測角度による三角関数値(例えば、tanθ)に基づいて計算されることができる。または、ブロックのサイズ及びイントラ予測モードに対するあらかじめ定義された表に基づいて導出されることができる。または、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離は、垂直距離または水平距離を示すこともできる。即ち、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離は、垂直距離に基づいて導出されることもでき、または水平距離に基づいて導出されることもできる。例えば、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離が垂直距離を示す場合、前記対象サンプルのy成分に基づいて前記距離が導出されることができる。また、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離が水平距離を示す場合、前記対象サンプルのx成分に基づいて前記距離が導出されることができる。)
(9)「
[図:0001397483000013.jpg]
[図:0001397483000014.jpg]
」
(【図1】
[図:0001397483000015.jpg]
)
(10)「
[図:0001397483000016.jpg]
[図:0001397483000017.jpg]
」
(【図11】
[図:0001397483000018.jpg]
)
(11)「
[図:0001397483000019.jpg]
[図:0001397483000020.jpg]
」
(【図13】
[図:0001397483000021.jpg]
)
ア 上記(1)の「技術的課題は、現在ブロック内の対象サンプルに対する補間フィルタを選択するイントラ予測・・・(中略)・・・装置を提供することにある。」という記載によれば、先願明細書等には、技術的課題として、現在ブロック内の対象サンプルに対する補間フィルタを選択するイントラ予測装置を提供することが記載されている。
イ 上記(2)の「ビデオエンコーディング装置100は、ピクチャ分割部105、予測部110、・・・(中略)・・・を含むことができる。」との記載、及び、上記(9)の図1の記載によれば、ビデオエンコーディング装置100は、ピクチャ分割部105及び予測部110を含むものである。
ウ 上記(3)の「予測部110は、処理対象ブロック(以下、現在ブロックという)に対する予測を実行し、前記現在ブロックに対する予測サンプルを含む予測ブロックを生成することができる。」との記載によれば、予測部110は、処理対象ブロックである現在ブロックに対する予測を実行し、前記現在ブロックに対する予測サンプルを含む予測ブロックを生成するものである。
また、上記(3)の「予測部110は、現在ブロックにイントラ予測が適用されるか、インター予測が適用されるかを決定することができる。」との記載によれば、予測部110は、現在ブロックにイントラ予測を適用することを決定することができるものである。
以上を総合すると、予測部110は、処理対象ブロックである現在ブロックにイントラ予測を適用して、前記現在ブロックに対する予測を実行するものであるといえる。
エ 上記(3)の「イントラ予測の場合、予測部110は、現在ブロックが属するピクチャ(以下、現在ピクチャ)内の現在ブロック外部の参照サンプルに基づいて現在ブロックに対する予測サンプルを誘導することができる。」という記載中の「現在ブロックが属するピクチャ」という記載によれば、現在ブロックはピクチャの一部分であるといえる。そして、上記(2)の「ピクチャ分割部105は、入力されたピクチャを少なくとも一つの処理ユニット・・・(中略)・・・に分割できる」という記載や、上記(9)の図1の記載からピクチャ分割部105の出力が予測部110に入力されていることが見てとれることや、ビデオエンコーディングの分野において、ブロックがピクチャを分割した処理ユニット(処理単位)であることは技術常識であることを勘案すると、上記ウで述べた「処理対象ブロックである現在ブロック」は、ピクチャを分割したものであることは明らかである。
オ 上記(3)の「イントラ予測の場合、予測部110は、現在ブロックが属するピクチャ(以下、現在ピクチャ)内の現在ブロック外部の参照サンプルに基づいて現在ブロックに対する予測サンプルを誘導することができる。このとき、予測部110は、(i)現在ブロックの隣接(neighboring)参照サンプルの平均(average)または補間(interpolation)に基づいて予測サンプルを誘導することができ、(ii)現在ブロックの隣接参照サンプルのうち予測サンプルに対して特定の(予測)方向に存在する参照サンプルに基づいて前記予測サンプルを誘導することもできる。(i)の場合は非方向性モードまたは非角度モードと呼ばれ、(ii)の場合は方向性(directional)モードまたは角度(angular)モードと呼ばれる。」との記載によれば、予測部110は、イントラ予測の場合、上記(i)の非方向性モードと上記(ii)の方向性モードによって現在ブロックに対する予測サンプルを誘導することができるものであり、さらに、上記(ii)の方向性モードは、現在ブロックの隣接参照サンプルのうち予測サンプルに対して特定の(予測)方向に存在する参照サンプルに基づいて前記予測サンプルを誘導することができるものである。
ここで、上記(3)の「イントラ予測における予測モードは、例えば、33個の方向性予測モードと少なくとも2個以上の非方向性モードを有することができる。」という記載、及び、上記(4)の「イントラ予測モードは、2個の非方向性イントラ予測モードと33個の方向性イントラ予測モードを含むことができる。」という記載を勘案すると、「イントラ予測における予測モード」は「イントラ予測モード」とも呼ばれ、イントラ予測の場合における上記(i)の「非方向性モード」は、「非方向性イントラ予測モード」とも呼ぶことができ、上記(ii)の「方向性モード」は、「方向性予測モード」あるいは「方向性イントラ予測モード」とも呼ぶことができるものである。
そして、上記(3)の「イントラ予測における予測モードは、例えば、33個の方向性予測モードと少なくとも2個以上の非方向性モードを有することができる。」という記載、及び、上記(4)の「イントラ予測モードは、2個の非方向性イントラ予測モードと33個の方向性イントラ予測モードを含むことができる。」という記載によれば、イントラ予測モードは、33個の方向性イントラ予測モードと少なくとも2個以上の非方向性イントラ予測モードを有するものである。
以上を総合すると、予測部110が実行するイントラ予測における予測モード、すなわち、イントラ予測モードは、33個の方向性イントラ予測モードと少なくとも2個以上の非方向性イントラ予測モードを有するものであり、前記方向性イントラ予測モードは、現在ブロックの隣接参照サンプルのうち予測サンプルに対して特定の(予測)方向に存在する参照サンプルに基づいて前記予測サンプルを誘導することができるものであるといえる。
カ 上記(5)の「現在ブロックに対して方向性イントラ予測モードに基づいて予測が実行される場合、・・・(中略)・・・前記現在ブロックの対象サンプルを基準にして前記現在ブロックの方向性イントラ予測モードの予測方向に整数サンプル単位の参照サンプルが存在しない場合、即ち、前記対象サンプルを基準にして前記方向性イントラ予測モードの予測方向に位置する参照サンプルの位置が分数サンプル(fractional sample)の位置である場合、前記参照サンプルの左右の整数サンプル間の補間を介して前記参照サンプルのサンプル値が導出されることができ、前記導出された参照サンプルに基づいて前記対象サンプルの予測サンプルが導出されることができる。」との記載によれば、現在ブロックに対して方向性イントラ予測モードに基づいて予測が実行される場合において、前記現在ブロックの対象サンプルを基準にして前記現在ブロックの方向性イントラ予測モードの予測方向に整数サンプル単位の参照サンプルが存在しない場合、即ち、参照サンプルの位置が分数サンプルの位置である場合、前記参照サンプルの左右の整数サンプル間の補間を介して前記参照サンプルのサンプル値が導出され、前記導出された参照サンプルに基づいて前記対象サンプルの予測サンプルが導出されるといえる。
キ 上記(5)の「前記参照サンプルの左右の前記整数サンプル間の補間は、多様な補間フィルタのうちの一つに基づいて導出されることができる。例えば、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタに基づいて前記補間が実行されることができ、または精巧な補間フィルタに基づいて前記補間が実行されることもできる。前記低域通過フィルタ効果がある補間フィルタは、・・・(中略)・・・ガウシアンフィルタ(Gaussian filter)などを示すことができ、前記精巧な補間フィルタは、スプラインフィルタ(spline filter)を示すことができる。前記スプラインフィルタは、キュービックフィルタ(cubic filter)とも呼ばれる。」との記載によれば、参照サンプルの左右の前記整数サンプル間の補間は、多様な補間フィルタのうちの一つに基づいて導出されることができ、前記補間フィルタは、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタであるガウシアンフィルタまたは精巧な補間フィルタであるスプラインフィルタであり、当該スプラインフィルタはキュービックフィルタとも呼ばれるものである。
また、上記(5)の「前記補間フィルタは、4タップ(4-tap)補間フィルタである。前記4タップ補間フィルタは、4個の加重値に基づいて4個の整数サンプルに対する補間が実行されるフィルタを示すことができる。」との記載によれば、参照サンプルの左右の前記整数サンプル間の補間に用いる補間フィルタは、4個の加重値に基づいて4個の整数サンプルに対する補間が実行される4タップ補間フィルタである。
以上を総合すると、上記カで述べた「参照サンプルの左右の整数サンプル間の補間」は、多様な補間フィルタのうちの一つに基づいて導出されることができ、前記補間フィルタは、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタであるガウシアンフィルタまたは精巧な補間フィルタであるキュービックフィルタであり、また、前記補間フィルタは、4個の加重値に基づいて4個の整数サンプルに対する補間が実行される4タップ補間フィルタであるといえる。
ク 上記(6)の「エンコーディング装置/デコーディング装置は、前記現在ブロックに対するイントラ予測モードを導出することができ、前記イントラ予測モードが方向性イントラ予測モードかどうかを判断することができる(S1100)」及び上記(7)の「エンコーディング装置は、現在ブロックに対するイントラ予測モードを決定する(S1300)。」との記載によれば、エンコーディング装置は、現在ブロックに対するイントラ予測モードを決定するものであるといえる。
ケ 上記(6)の「図11は、前記現在ブロックの対象サンプルと参照サンプルとの距離に基づいて補間フィルタを選択する一例を示す。エンコーディング装置/デコーディング装置は、前記現在ブロックに対するイントラ予測モードを導出することができ、前記イントラ予測モードが方向性イントラ予測モードかどうかを判断することができる(S1100)」、「前記イントラ予測モードが方向性イントラ予測モードである場合、エンコーディング装置/デコーディング装置は、前記現在ブロックの対象サンプルと参照サンプルとの距離が閾値(threshold)より小さいかどうかを判断することができる(S1110)」、「前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より小さくない場合、即ち、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より大きいまたは同じ場合、エンコーディング装置/デコーディング装置は、ガウシアンフィルタ(gaussian filter)を前記現在ブロックの補間フィルタとして選択することができ、前記ガウシアンフィルタに基づいて前記現在ブロック内の対象サンプルの参照サンプルを導出することができる(S1120)」、「前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より小さい場合、エンコーディング装置/デコーディング装置は、キュービックフィルタ(cubic filter)を前記現在ブロックの補間フィルタとして選択することができ、前記キュービックフィルタに基づいて前記参照サンプルを導出することができる(S1130)」、及び、上記(11)の図11の記載によれば、現在ブロックに対するイントラ予測モードが方向性イントラ予測モードである場合、前記現在ブロックの対象サンプルと参照サンプルとの距離が閾値より小さいかどうかを判断し、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より大きいまたは同じ場合、ガウシアンフィルタを前記現在ブロックの補間フィルタとして選択し、前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が前記閾値より小さい場合、キュービックフィルタを前記現在ブロックの補間フィルタとして選択することが記載されているといえる。
ここで、上記(6)の「前記閾値は、・・・(中略)・・・前記現在ブロックのイントラ予測モード・・・(中略)・・・に基づいて導出されることができる。」との記載によれば、前記閾値は、現在ブロックのイントラ予測モードに基づいて導出されるものである。
コ 上記(7)の「図13は、本発明によるエンコーディング装置によるビデオエンコーディング方法の概略を示す。図13で開示された方法は、図1で開示されたエンコーディング装置により実行されることができる。具体的に、例えば、図13のS1300乃至S1340は、前記エンコーディング装置の予測部により実行されることができ、」との記載によれば、上記(11)の図13のS1300乃至S1340は、エンコーディング装置の予測部により実行されるものであるといえる。
すなわち、上記(7)には「エンコーディング装置は、現在ブロックに対するイントラ予測モードを決定する(S1300)」こと、「エンコーディング装置は、前記現在ブロックの左側隣接サンプル及び上側隣接サンプルを含む隣接サンプルを導出する(S1310)」こと、「エンコーディング装置は、前記現在ブロックの対象サンプルの位置及びイントラ予測モードの予測角度に基づいて、前記隣接サンプルの中で前記対象サンプルの予測のための参照サンプルを導出する(S1320)」こと、「エンコーディング装置は、前記対象サンプルに対する補間フィルタ(interpolation filter)を決定する(S1330)」こと、「エンコーディング装置は、前記補間フィルタ及び前記参照サンプルに基づいて前記対象サンプルの予測サンプルを導出する(S1340)」ことが記載されているが、それらはいずれもエンコーディング装置の予測部により実行されるものであるといえる。
そうすると、上記クで説示した現在ブロックに対するイントラ予測モードの決定や、上記カで説示した参照サンプルのサンプル値の導出及び対象サンプルの予測サンプルの導出や、上記ケで説示した補間フィルタの選択や、それらの導出や選択に必要な処理は、エンコーディング装置の予測部により実行されるものであるといえる。
2 先願明細書等に記載された発明
上記1のイで説示したとおり、ビデオエンコーディング装置100は、ピクチャ分割部105及び予測部110を含むものであるが、上記1のアで説示したとおり、現在ブロック内の対象サンプルに対する補間フィルタを選択するイントラ予測装置を提供することが技術的課題であることを勘案し、ビデオエンコーディング装置100における予測部110に着目して、上記1の(1)ないし(7)、(9)ないし(11)で摘記した事項及びアないしコで説示した事項を総合すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。(なお、記号a-jは、先願発明の発明特定事項を分説するために当審にて付した。以下「構成a」-「構成j」という。)。
「a ビデオエンコーディング装置における予測部であって、
b 前記予測部は、処理対象ブロックである現在ブロックにイントラ予測を適用して、前記現在ブロックに対する予測を実行するものであり、
c 前記現在ブロックは、ピクチャを分割したものであり、
d 前記イントラ予測における予測モードであるイントラ予測モードは、33個の方向性イントラ予測モードと少なくとも2個以上の非方向性イントラ予測モードを有するものであり、
e 前記方向性イントラ予測モードは、前記現在ブロックの隣接参照サンプルのうち予測サンプルに対して特定の予測方向に存在する参照サンプルに基づいて前記予測サンプルを誘導することができるものであり、
f 前記現在ブロックに対する前記イントラ予測モードを決定し、
g 前記現在ブロックに対して前記方向性イントラ予測モードに基づいて予測が実行される場合において、前記現在ブロックの対象サンプルを基準にして前記現在ブロックの前記方向性イントラ予測モードの予測方向に整数サンプル単位の参照サンプルが存在しない場合、即ち、参照サンプルの位置が分数サンプルの位置である場合、前記参照サンプルの左右の整数サンプル間の補間を介して前記参照サンプルのサンプル値が導出され、前記導出された前記参照サンプルに基づいて前記予測サンプルが導出され、
h 参照サンプルの左右の整数サンプル間の前記補間は、多様な補間フィルタのうちの一つに基づいて導出されることができ、前記補間フィルタは、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタであるガウシアンフィルタまたは精巧な補間フィルタであるキュービックフィルタであり、また、前記補間フィルタは、4個の加重値に基づいて4個の整数サンプルに対する補間が実行される4タップ補間フィルタであり、
i 前記現在ブロックに対するイントラ予測モードが前記方向性イントラ予測モードである場合、前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が閾値より小さいかどうかを判断し、前記距離が前記閾値より大きいまたは同じ場合、前記ガウシアンフィルタを前記補間フィルタとして選択し、前記距離が前記閾値より小さい場合、前記キュービックフィルタを前記補間フィルタとして選択し、
j 前記閾値は、前記現在ブロックの前記イントラ予測モードに基づいて導出される、
a 予測部。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と先願発明とを、以下で対比する。
(1)本願発明の構成Aについて
ア 先願発明の構成aの「ビデオエンコーディング装置」における「ビデオ」及び構成cの「ピクチャ」は、技術常識を勘案すると、本願発明の構成Aにおける「動画像」及び「動画像を構成するフレーム単位の画像」にそれぞれ相当する。
イ 先願発明の構成bの「現在ブロック」における「ブロック」は、ピクチャを分割したものであるから、上記アで説示した関係を勘案すると、本願発明の構成Aの「動画像を構成するフレーム単位の画像を分割して得られた各ブロック」における「ブロック」に相当する。
ウ 先願発明の構成bの「イントラ予測」は、本願発明の構成Aの「イントラ予測」に相当する。そして、先願発明の構成aの「予測部」は、構成bによれば処理対象ブロックである現在ブロックにイントラ予測を適用して、前記現在ブロックに対する予測を実行するものであるから、「イントラ予測装置」であるといえる。
エ 以上を総合すると、本願発明と先願発明は、「動画像を構成するフレーム単位の画像を分割して得られた各ブロックに対するイントラ予測を行うイントラ予測装置」である点で一致する。
(2)本願発明の構成Bについて
ア 先願発明の構成bの「処理対象ブロックである現在ブロック」はイントラ予測を適用されるものであるから、本願発明の構成Bの「イントラ予測の対象ブロック」に相当する。
イ 先願発明の構成d及びfの「イントラ予測モード」は、イントラ予測における予測モードであって、現在ブロックに対して決定されるものであるから、本願発明Bの「イントラ予測の対象ブロックに適用するイントラ予測モード」に相当する。そして、先願発明の「イントラ予測モード」は、構成dによれば33個の方向性イントラ予測モードと少なくとも2個以上の非方向性イントラ予測モードを有するものであるから、先願発明の構成fの「前記現在ブロックに対する前記イントラ予測モードを決定する」ことは、33個の方向性イントラ予測モードと少なくとも2個以上の非方向性イントラ予測モードの中から現在ブロックに適用するイントラ予測モードを選択することに他ならない。
ウ 以上を総合すると、本願発明と先願発明は、「イントラ予測の対象ブロックに適用するイントラ予測モードを選択する」点で一致し、そうすると、先願発明の「予測部」は、本願発明の「イントラ予測装置」と同様に、その内部に「イントラ予測の対象ブロックに適用するイントラ予測モードを選択する」機能を有する「予測モード選択部」を実質的に有しているといえる。
(3)本願発明の構成Cについて
ア 先願発明の構成dの「方向性イントラ予測モード」は、構成eによれば、「予測サンプルに対して特定の予測方向に存在する参照サンプルに基づいて前記予測サンプルを誘導することができるもの」であるから、本願発明の構成Cの「方向性予測」に含まれるものである。
イ 先願発明の構成gの「整数サンプル単位の参照サンプルが存在しない場合、即ち、参照サンプルの位置が分数サンプルの位置である場合」は、本願発明の構成Cにおける「参照画素位置が整数画素位置ではない」場合に相当する。そうすると、先願発明の構成gの「前記現在ブロックに対して前記方向性イントラ予測モードに基づいて予測が実行される場合において、前記現在ブロックの対象サンプルを基準にして前記現在ブロックの前記方向性イントラ予測モードの予測方向に整数サンプル単位の参照サンプルが存在しない場合、即ち、参照サンプルの位置が分数サンプルの位置である場合」は、本願発明の構成Cの「前記選択されたイントラ予測モードが、参照画素位置が整数画素位置ではない方向性予測である場合」に含まれる。
そして、その場合、先願発明の構成gによれば、「前記参照サンプルの左右の整数サンプル間の補間を介して前記参照サンプルのサンプル値が導出され」るが、これは、本願発明の構成Cの「予測画素の生成」に相当する。
ウ 上記イで説示したとおり、先願発明においては、参照サンプルの左右の整数サンプル間の補間を介して前記参照サンプルのサンプル値が導出されるが、構成hの「参照サンプルの左右の整数サンプル間の前記補間は、多様な補間フィルタのうちの一つに基づいて導出されることができ、前記補間フィルタは、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタであるガウシアンフィルタまたは精巧な補間フィルタであるキュービックフィルタであり」という事項を勘案すると、前記参照サンプルは、低域通過フィルタ効果がある補間フィルタであるガウシアンフィルタまたは精巧な補間フィルタであるキュービックフィルタのうちの一つに基づいて導出されるといえる。ここで、上記「低域通過フィルタ効果がある補間フィルタであるガウシアンフィルタ」及び「精巧な補間フィルタであるスプラインフィルタ」は、本願発明の構成Cにおける「ガウシアンフィルタ」及び「キュービックフィルタ」にそれぞれ相当する。
エ 先願発明の構成hの「前記補間フィルタは、4個の加重値に基づいて4個の整数サンプルに対する補間が実行される4タップ補間フィルタであり」によれば、先願発明の「低域通過フィルタ効果がある補間フィルタであるガウシアンフィルタ」及び「精巧な補間フィルタであるスプラインフィルタ」は、いずれも4タップ補間フィルタであるから、それらは本願発明の構成Cの「4タップ内挿フィルタ」に含まれるものである。
オ 先願発明の構成iの「前記現在ブロックに対するイントラ予測モードが前記方向性イントラ予測モードである場合、前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離が閾値より小さいかどうかを判断し、前記距離が前記閾値より大きいまたは同じ場合、前記ガウシアンフィルタを前記補間フィルタとして選択し、前記距離が前記閾値より小さい場合、前記キュービックフィルタを前記補間フィルタとして選択し」によれば、現在ブロックに対するイントラ予測モードが方向性イントラ予測モードである場合、「ガウシアンフィルタ」又は「キュービックフィルタ」を補間フィルタとして選択しているから、先願発明は、補間フィルタの種別として、ガウシアンフィルタ及びキュービックフィルタのいずれか一方を決定するものであるといえる。
カ 以上を総合すると、本願発明と先願発明は、「前記選択されたイントラ予測モードが、参照画素位置が整数画素位置ではない方向性予測である場合、予測画素の生成に用いる4タップ内挿フィルタの種別として、ガウシアンフィルタ及びキュービックフィルタのいずれか一方を決定する」点で一致し、そうすると、先願発明の「予測部」は、本願発明の「イントラ予測装置」と同様に、その内部に「前記選択されたイントラ予測モードが、参照画素位置が整数画素位置ではない方向性予測である場合、予測画素の生成に用いる4タップ内挿フィルタの種別として、ガウシアンフィルタ及びキュービックフィルタのいずれか一方を決定する」機能を有する「フィルタ決定部」を実質的に有しているといえる。
(4)本願発明の構成C2について
ア 先願発明の構成iの「前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離」における「前記現在ブロックの前記対象サンプル」及び「前記参照サンプル」は、本願発明C2の「前記対象ブロックの特定の画素」及び「参照画素」にそれぞれ相当する。そうすると、先願発明の構成iの閾値と比較される「前記現在ブロックの前記対象サンプルと前記参照サンプルとの距離」は、本願発明の構成Cの「前記対象ブロックの特定の画素について」の「参照画素からの距離に対応する値」に相当する。
イ 先願発明の構成iの「閾値」は、構成jによれば「前記現在ブロックの前記イントラ予測モードに基づいて導出される」ものであるから、当該「閾値」は、現在ブロックに対して選択されたイントラ予測モードに対応する値であるといえる。
ウ 先願発明の構成iの「前記距離が前記閾値より大きいまたは同じ場合」及び「前記距離が前記閾値より小さい場合」は、前記距離と前記閾値の比較結果であるといえ、上記(3)のオで説示した事項も勘案すると、先願発明の構成iの「前記距離が前記閾値より大きいまたは同じ場合、前記ガウシアンフィルタを前記補間フィルタとして選択し、前記距離が前記閾値より小さい場合、前記キュービックフィルタを前記補間フィルタとして選択し」は、前記距離と前記閾値の比較結果に応じて、前記ガウシアンフィルタ及び前記キュービックフィルタの選択のいずれか一方を決定することであるといえる。
エ 以上を総合すると、本願発明と先願発明は、「前記対象ブロックの特定の画素について、参照画素からの距離に対応する値と、前記選択されたイントラ予測モードに対応する値との比較結果に応じて、前記ガウシアンフィルタ及び前記キュービックフィルタのいずれか一方を決定し」ている点で一致する。
(5)本願発明の構成C1及びC3について
ア 先願発明の構成jによれば、「前記閾値は、前記現在ブロックの前記イントラ予測モードに基づいて導出される」から、先願発明においても、閾値、すなわち、比較に用いる値を導出しているといえる。
しかしながら、本願発明は「マッピングテーブルを保持しており」(構成C1)、「前記マッピングテーブルを用いて、前記比較に用いる値を導出する」(構成C3)のに対して、先願発明はその旨の特定がない点で相違する。
イ 以上を総合すると、本願発明と先願発明は、「前記比較に用いる値を導出する」点で共通するものの、本願発明は「マッピングテーブルを保持しており」、前記比較に用いる値を導出する際に、「前記マッピングテーブルを用いて」導出するのに対して、先願発明はその旨の特定がない点で相違する。
2 一致点及び相違点
上記1の(1)ないし(5)を総合すると、本願発明と先願発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「A 動画像を構成するフレーム単位の画像を分割して得られた各ブロックに対するイントラ予測を行うイントラ予測装置であって、
B イントラ予測の対象ブロックに適用するイントラ予測モードを選択する予測モード選択部と、
C 前記選択されたイントラ予測モードが、参照画素位置が整数画素位置ではない方向性予測である場合、予測画素の生成に用いる4タップ内挿フィルタの種別として、ガウシアンフィルタ及びキュービックフィルタのいずれか一方を決定するフィルタ決定部と、
を備え、
C 前記フィルタ決定部は、
C2 前記対象ブロックの特定の画素について、参照画素からの距離に対応する値と、前記選択されたイントラ予測モードに対応する値との比較結果に応じて、前記ガウシアンフィルタ及び前記キュービックフィルタのいずれか一方を決定し、
C3’ 前記比較に用いる値を導出する、
A イントラ予測装置。」
<相違点>
フィルタ決定部は、本願発明においては「マッピングテーブルを保持しており」、前記比較に用いる値を導出する際に、「前記マッピングテーブルを用いて」導出するのに対して、先願発明はその旨の特定がない点で相違する。
3 相違点についての判断
上記相違点について、以下で検討する。
あるデータ(以下、「データA」という。)と別のデータ(以下、「データB」という。)を対応づけた表であるマッピングテーブルを用意し、当該マッピングテーブルを用いてデータAに対応するデータBを導出することは周知慣用技術である。例えば、先願明細書においても、上記第4の1(8)に摘記したとおり「前記対象サンプルに対する前記補間フィルタは、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離に基づいて決定されることができる。ここで、前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離は、前記対象サンプルの位置と前記現在ブロックのイントラ予測モードの予測角度に基づいて導出されることができる。例えば、前記対象サンプルの位置と前記イントラ予測モードの予測角度による三角関数値(例えば、tanθ)に基づいて計算されることができる。または、ブロックのサイズ及びイントラ予測モードに対するあらかじめ定義された表に基づいて導出されることができる。」(下線は当審で付与した。)と記載されており、補間フィルタの決定に際して、「前記対象サンプルと前記参照サンプルとの間の距離」を「計算」することに加えて、「ブロックのサイズ及びイントラ予測モードに対するあらかじめ定義された表」に基づいて導出することも例示されている。すなわち、先願明細書にも、計算によりデータを導出することに加えて、マッピングテーブルである「表」を用いてデータを導出することが記載されている。
そうすると、先願発明において、フィルタを決定するための比較に用いるデータである閾値を導出する際に、マッピングテーブルを用意し、当該マッピングテーブルを用いて前記閾値を導出するようにすることは、単に周知慣用技術を採用したにすぎず、新たな作用効果を奏するものではない。
したがって、上記相違点は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎないから、本願発明と先願発明は実質的に同一である。
4 請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、以下のように主張している。
「6.拡大先願(特許法第29条の2)について
審査官殿のご認識の通り、先願明細書(引用文献1)には、マッピングテーブルを用いることが開示されていません。
補正後の請求項1における「前記マッピングテーブルを用いて、前記比較(参照画素からの距離に対応する値と、前記選択されたイントラ予測モードに対応する値との比較)に用いる値を導出する」との事項により、予測画素の生成に用いる4タップ内挿フィルタの種別を適切且つ速やかに決定できるという新たな作用効果が奏されます。
よって、マッピングテーブルに係る相違点は実質的な相違点であるといえ、補正後の請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一の発明ではないものと思料致します。」
そこで、上記主張について検討すると、マッピングテーブルを用いることによって、あるデータから別のデータを適切かつ速やかに導出できることは、マッピングテーブルを用いるという周知慣用技術の広く知られた効果にすぎず、上記3で説示したとおり、先願発明を具体化する際に当該周知慣用技術を採用することによって、当該効果を超える新たな効果を奏するものではないから、上記請求人の主張を採用することはできない。
第6 むすび
上記のとおりであるから、本願発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-011363