特許拒絶査定不服審判
2024-019415
イントラ予測装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラム
- 審判番号
- 2024-019415
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-558265
- 請求日
- 2024年12月03日
- 審決日
- 2025年11月12日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本放送協会
- 【請求人代理人】弁理士法人キュリーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 圓道 浩史
- 審判官 伊藤 隆夫
- 審判官 坂東 大五郎
- 分類
- P18 .113-Z (H04N) / P18 .575-Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-558265「イントラ予測装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月27日国際公開、WO2021/100450〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)11月2日(優先権主張 令和元年11月21日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 5月30日付け:拒絶理由通知書
令和6年 8月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 8月30日付け:拒絶査定
令和6年12月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年12月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年12月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。なお、記号A~Cは、分説するために当審で付したものであり、記号A~Cに対応する発明特定事項を、以下、構成A~構成Cという。
【請求項1】
A 画像を分割して得られた輝度ブロック及び色差ブロックをイントラ予測により予測するイントラ予測装置であって、
B 前記色差ブロックの周辺の輝度及び色差のそれぞれの参照画素から算出された予測モデルを用いて、前記色差ブロックの位置と対応する位置の復号済みの輝度ブロックから前記色差ブロックを予測する成分間予測モデル予測部を備え、
C 前記成分間予測モデル予測部は、前記復号済みの輝度ブロックのイントラ予測に適用されたイントラ予測モードである輝度イントラ予測モードに基づいて、前記予測モデルを算出するモードを、予め定められた複数のモードから決定することを特徴とするイントラ予測装置。
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年8月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
【請求項1】
画像を分割して得られた輝度ブロック及び色差ブロックをイントラ予測により予測するイントラ予測装置であって、
前記色差ブロックの周辺の輝度及び色差のそれぞれの参照画素から算出された予測モデルを用いて、前記色差ブロックの位置と対応する位置の復号済みの輝度ブロックから前記色差ブロックを予測する成分間予測モデル予測部を備え、
前記成分間予測モデル予測部は、前記復号済みの輝度ブロックのイントラ予測に適用されたイントラ予測モードである輝度イントラ予測モードに基づいて、前記予測モデルを算出するモードを決定することを特徴とするイントラ予測装置。
2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記予測モデルを算出するモードを決定する」ことについて、「予め定められた複数のモードから」決定する、という事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
本願の優先日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、国際公開第2015/005418号(2015年1月15日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付したものである。
ア「[0015]
(イントラ予測の詳細)
上述のイントラ予測について、以下に詳述する。イントラ予測について、非特許文献1には、色成分ごとに、符号化済みの再構成された画素である参照画素の画素値を用いて符号化対象ブロックの画素値を予測することが示されている。また、輝度成分の予測方法としては、図17に示すように、DCと、Planarと、33方向の方向予測と、の全35種類が示されている。また、色差成分の予測方法としては、輝度成分と同じ予測種別を用いる方法と、輝度成分とは独立したDC、Planar、水平、垂直と、が示されている。これらによれば、色成分ごとに空間的な冗長性を削減することができる。
[0016]
また、非特許文献2には、色成分間の冗長性を削減する手法として、LMモードが示されている。例えばYUV420形式の画像に対してLMモードを利用する場合について、図18を用いて説明する。
[0017]
図18の(A)は、色差成分の画素を示し、図18の(B)は、輝度成分の画素を示す。LMモードでは、図18の(B)の16個の白丸で示される画素において再構成された輝度成分を用いて、以下の数式(1)に示す予測式を用いて色差成分を線形予測する。
[0018]
[図:0001430861000001.jpg]
[0019]
数式(1)において、PLは、輝度成分の画素値を示し、predcは、色差成分の予測画素値を示す。また、αおよびβは、図18の(A)の8個の黒丸と図18の(B)の8個の黒丸とで示される参照画素を用いて求めることのできるパラメータを示し、以下の数式(2)、(3)により定まる。
[0020]
[図:0001430861000002.jpg]
[0021]
[図:0001430861000003.jpg]
[0022]
数式(2)において、Rは内積計算を示し、数式(3)において、Mは平均値計算を示し、数式(2)、(3)において、P’Cは色差成分の参照画素の画素値を示す。また、P^Lは、輝度と色差との位相を考慮した輝度成分の画素値を示し、以下の数式(4)により定まる。
[0023]
[図:0001430861000004.jpg]
」
イ「[0026]
図20は、上述のLMモードを用いてイントラ予測を行うイントラ予測部20、140のブロック図である。イントラ予測部20、140は、それぞれ、輝度参照画素取得部21、色差参照画素取得部22、予測係数導出部23、および色差線形予測部24を備える。
[0027]
輝度参照画素取得部21は、ローカル復号画像fの輝度成分を入力とする。この輝度参照画素取得部21は、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素の画素値を取得して位相を調整し、輝度参照画素値hとして出力する。
[0028]
色差参照画素取得部22は、ローカル復号画像fの色差成分を入力とする。この色差参照画素取得部22は、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素の画素値を取得して、色差参照画素値iとして出力する。
[0029]
予測係数導出部23は、輝度参照画素値hと、色差参照画素値iと、を入力とする。この予測係数導出部23は、これら入力された画素値を用いて、上述の数式(2)から(4)によりパラメータα、βを求め、予測係数jとして出力する。
[0030]
色差線形予測部24は、ローカル復号画像fの輝度成分と、予測係数jと、を入力とする。この色差線形予測部24は、これら入力された信号を用いて、上述の数式(1)により色差成分の予測画素値を求め、色差予測画素値kとして出力する。」
ウ「[0082]
<第1実施形態>
[動画像符号化装置AAの構成および動作]
図1は、本発明の第1実施形態に係る動画像符号化装置AAのブロック図である。動画像符号化装置AAは、図15に示した従来例に係る動画像符号化装置MMとは、イントラ予測部20の代わりにイントラ予測部20Aを備える点が異なる。なお、動画像符号化装置AAにおいて、動画像符号化装置MMと同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
[0083]
図2は、イントラ予測部20Aのブロック図である。イントラ予測部20Aは、図20に示した従来例に係るイントラ予測部20とは、輝度参照画素取得部21の代わりに適応間引き輝度参照画素取得部21Aを備える点と、色差参照画素取得部22の代わりに適応間引き色差参照画素取得部22Aを備える点と、が異なる。
[0084]
適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、ローカル復号画像fの輝度成分を入力とする。この適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、符号化単位に応じた処理を行って、輝度参照画素値hを生成して出力する。
[0085]
具体的には、符号化単位がCUの最小符号化単位である最小CUブロック以外である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素の画素値を取得して位相を調整し、輝度参照画素値hとして出力する。
[0086]
一方、入力画像aが非YUV420形式の画像でかつ符号化単位が最小CUブロックである場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、まず、ローカル復号画像fを用いて最も入力画像aと類似するように、輝度イントラ予測モードを決定する。次に、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素を、輝度イントラ予測モードに基づいて間引きし、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、輝度参照画素値hとして出力する。
[0087]
適応間引き色差参照画素取得部22Aは、ローカル復号画像fの色差成分を入力とする。この適応間引き色差参照画素取得部22Aは、符号化単位に応じた処理を行って、色差参照画素値iを生成して出力する。
[0088]
具体的には、符号化単位が最小CUブロック以外である場合には、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素の画素値を取得して、色差参照画素値iとして出力する。
[0089]
一方、入力画像aが非YUV420形式の画像でかつ符号化単位が最小CUブロックである場合には、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、まず、ローカル復号画像fを用いて最も入力画像aと類似するように、輝度イントラ予測モードを決定する。次に、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素を、輝度イントラ予測モードに基づいて間引きし、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、色差参照画素値iとして出力する。
[0090]
適応間引き輝度参照画素取得部21Aおよび適応間引き色差参照画素取得部22Aによる輝度イントラ予測モードに基づく参照画素の間引きについて、以下に説明する。ここで、輝度イントラ予測モードを参照することで、輝度成分の予測方法を判別できる。
[0091]
そこで、輝度成分の予測方法が、DC、Planar、または斜め方向の方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素を一様に間引いて間引いた後の参照画素の画素値を取得し、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素を一様に間引いて間引いた後の参照画素の画素値を取得する。この場合について、入力画像aがYUV422形式の画像である場合を図3に示し、入力画像aがYUV444形式の画像である場合を図6に示す。図3、6は、参照画素が一様に間引かれた結果、参照画素の画素値が1つおきに取得されることを示している。なお、斜め方向の方向予測の場合とは、図17の予測モード15から21の場合のことである。
[0092]
また、輝度成分の予測方法が、水平または水平に近い方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの左側の参照画素のみ画素値を取得し、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの左側の参照画素のみ画素値を取得する。この場合について、入力画像aがYUV422形式の画像である場合を図4に示し、入力画像aがYUV444形式の画像である場合を図7に示す。なお、水平または水平に近い方向予測の場合とは、図17の予測モード2から14の場合のことである。
[0093]
また、輝度成分の予測方法が、垂直または垂直に近い方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの上側の参照画素のみ画素値を取得し、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの上側の参照画素のみ画素値を取得する。この場合について、入力画像aがYUV422形式の画像である場合を図5に示し、入力画像aがYUV444形式の画像である場合を図8に示す。なお、垂直または垂直に近い方向予測の場合とは、図17の予測モード22から34の場合のことである。」
エ「[図2]
[図:0001430861000005.jpg]
」
オ 引用発明
上記ア~エの事項を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、記号a~mは説明のために当審で付したものであり、記号a~mに対応する事項を、以下、構成a~構成mという。また、各構成の末尾の括弧内に対応する記載箇所を示した。
(引用発明)
a イントラ予測部20Aであって([0083])、
b イントラ予測は、色成分ごとに、符号化済みの再構成された画素である参照画素の画素値を用いて符号化対象ブロックの画素値を予測することであり([0015])、
c 輝度成分の予測方法としては、DCと、Planarと、33方向の方向予測と、の全35種類があり([0015])、
d LMモードでは、再構成された輝度成分を用いて、以下の数式(1)に示す予測式を用いて色差成分を線形予測し([0017])、
[図:0001430861000006.jpg]
([0018])、
数式(1)において、PLは、輝度成分の画素値を示し、predcは、色差成分の予測画素値を示し([0019])、
e イントラ予測部20Aは、適応間引き輝度参照画素取得部21A、適応間引き色差参照画素取得部22A、予測係数導出部23、および色差線形予測部24を備え([0083]、[0026]、[図2])、
f 入力画像aが非YUV420形式の画像でかつ符号化単位が最小CUブロックである場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、まず、ローカル復号画像fを用いて最も入力画像aと類似するように、輝度イントラ予測モードを決定し、次に、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素を、輝度イントラ予測モードに基づいて間引きし、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、輝度参照画素値hとして出力し([0086])、
g 入力画像aが非YUV420形式の画像でかつ符号化単位が最小CUブロックである場合には、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、まず、ローカル復号画像fを用いて最も入力画像aと類似するように、輝度イントラ予測モードを決定し、次に、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素を、輝度イントラ予測モードに基づいて間引きし、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、色差参照画素値iとして出力し([0089])、
h 適応間引き輝度参照画素取得部21Aおよび適応間引き色差参照画素取得部22Aによる輝度イントラ予測モードに基づく参照画素の間引きでは、輝度イントラ予測モードを参照することで、輝度成分の予測方法を判別できて([0090])、
i 輝度成分の予測方法が、DC、Planar、または斜め方向の方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素を一様に間引いて間引いた後の参照画素の画素値を取得し、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素を一様に間引いて間引いた後の参照画素の画素値を取得し([0091])、
j 輝度成分の予測方法が、水平または水平に近い方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの左側の参照画素のみ画素値を取得し、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの左側の参照画素のみ画素値を取得し([0092])、
k 輝度成分の予測方法が、垂直または垂直に近い方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの上側の参照画素のみ画素値を取得し、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの上側の参照画素のみ画素値を取得し([0093])、
l 予測係数導出部23は、輝度参照画素値hと、色差参照画素値iと、を入力とし、これら入力された画素値を用いて、パラメータα、βを求め、予測係数jとして出力し([0029])、
m 色差線形予測部24は、ローカル復号画像fの輝度成分と、予測係数jと、を入力とし、これら入力された信号を用いて、上述の数式(1)により色差成分の予測画素値を求め、色差予測画素値kとして出力する([0030])、
a イントラ予測部20A。
(3)対比
以下、本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 構成Aについて
構成a~dによれば、引用発明は「イントラ予測部20A」(構成a)であり、「イントラ予測は、色成分ごとに、符号化済みの再構成された画素である参照画素の画素値を用いて符号化対象ブロックの画素値を予測することであり」(構成b)、「輝度成分の予測方法としては、DCと、Planarと、33方向の方向予測と、の全35種類があり」(構成c)、「LMモードでは、再構成された輝度成分を用いて、以下の数式(1)に示す予測式を用いて色差成分を線形予測」(構成d)する。
ここで、構成cの「輝度成分の予測方法」と、構成dの「色差成分を線形予測」することは、構成bの「色成分ごとに、……符号化対象ブロックの画素値を予測すること」に含まれるといえるから、構成cの「輝度成分」は「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を意味し、また、構成dの「色差成分」は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」を意味するといえる。
そうすると、構成aの「イントラ予測部20A」は、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」と「色差成分」を、イントラ予測により予測するものといえる。
ここで、当該「符号化対象ブロック」が、画像を分割して得られるものであることは、当業者にとって明らかであるから、当該「符号化対象ブロック」の「輝度成分」は、構成Aの「画像を分割して得られた輝度ブロック」に相当し、当該「符号化対象ブロック」の「色差成分」は、構成Aの「画像を分割して得られた」「色差ブロック」に相当する。
よって、構成aの「イントラ予測部20A」は、構成Aの「画像を分割して得られた輝度ブロック及び色差ブロックをイントラ予測により予測するイントラ予測装置」に相当する。
以上によれば、本件補正発明と引用発明は、「画像を分割して得られた輝度ブロック及び色差ブロックをイントラ予測により予測するイントラ予測装置」である点で一致する。
イ 構成Bについて
(ア)まず、構成Bの「参照画素」について検討する。
構成f、gの「色差予測対象ブロック」は、構成dの「LMモード」で「数式(1)に示す予測式を用いて色差成分を線形予測」する際の予測の対象となるものといえ、また、上記アで述べたとおり、構成dの「色差成分」は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」を意味するといえるから、構成f、gの「色差予測対象ブロック」は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」を指しているといえ、構成Bの「前記色差ブロック」に相当する。
また、構成fの「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素」は、色差予測対象ブロックの周囲にある画素に対応する輝度の参照画素ともいえるから、構成Bの「前記色差ブロックの周辺の輝度」の「参照画素」に相当する。
さらに、構成gの「色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素」は、色差予測対象ブロックの周囲にある色差の参照画素といえるから、構成Bの「前記色差ブロックの周辺」の「色差」の「参照画素」に相当する。
よって、構成fの「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素」、及び、構成gの「色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素」を併せたものは、構成Bの「前記色差ブロックの周辺の輝度及び色差のそれぞれの参照画素」に相当する。
(イ)次に、構成Bの「予測モデル」について検討する。
構成fによれば、「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素」から「輝度参照画素値h」が得られ、構成gによれば、「色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素」から「色差参照画素値i」が得られるから、これらを併せると、構成fの「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素」及び構成gの「色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素」から、「輝度参照画素値h」及び「色差参照画素値i」が得られるといえる。
さらに、構成lによれば、「輝度参照画素値h」及び「色差参照画素値i」から「パラメータα、β」が求められ、当該「パラメータα、β」を構成dの数式(1)に代入して得られた数式(1)の右辺は、再構成された輝度成分から色差成分を線形予測するためのモデルといえるから、当該数式(1)の右辺は、構成Bの「予測モデル」に相当する。
したがって、上記(ア)を合わせて以上をまとめると、引用発明において、構成fの「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素」及び構成gの「色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素」から得られた数式(1)の右辺は、構成Bの「前記色差ブロックの周辺の輝度及び色差のそれぞれの参照画素から算出された予測モデル」に相当する。
(ウ)次に、構成Bの「予測モデル」を用いた「予測」について検討する。
構成d及び動画像符号化の技術分野の技術常識によれば、数式(1)の左辺のpredc[x,y]は、位置[x,y]における色差成分の予測画素値を示し、右辺のPL[2x,2y]は、位置[2x,2y]における輝度成分の画素値を示し、右辺のPL[2x,2y+1]は、位置[2x,2y+1]における輝度成分の画素値を示すものといえる。
そして、輝度成分の位置[2x,2y]及び[2x,2y+1]が、色差成分の位置[x,y]と対応することは自明であるから、数式(1)は、色差成分の位置[x,y]と対応する位置[2x,2y]及び[2x,2y+1]の輝度成分の画素値から、前記色差成分の画素値を予測するための数式といえる。
また、構成dにおいて数式(1)に示す予測式を用いて色差成分を線形予測することは、構成bの「色成分ごとに、……符号化対象ブロックの画素値を予測すること」に含まれるから(上記ア)、数式(1)の左辺における「色差成分」の位置[x,y]は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」内の位置といえ、さらに、数式(1)により予測される色差成分の画素値は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の画素値といえる。
一方、構成mによれば、「ローカル復号画像fの輝度成分」を用いて数式(1)により色差成分の予測画素値を求めているから、数式(1)の右辺の「輝度成分」は、「ローカル復号画像fの輝度成分」である。
さらに、構成cの「輝度成分」が「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を意味する(上記ア)のと同様に、構成mの「輝度成分」も「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を意味することを考慮すると、数式(1)の右辺の「輝度成分」は、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」をローカル復号したものである、「ローカル復号画像fの輝度成分」であるといえる。
以上をまとめると、数式(1)は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置[x,y]と対応する、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」をローカル復号したものである、「ローカル復号画像fの輝度成分」の位置[2x,2y]及び[2x,2y+1]の画素値から、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置[x,y]の画素値を予測するための数式といえる。
その上、構成bの「イントラ予測は、……符号化対象ブロックの画素値を予測する」ことを考慮すると、構成mの「色差線形予測部24は、ローカル復号画像fの輝度成分と、予測係数jと、を入力とし、これら入力された信号を用いて、上述の数式(1)により色差成分の予測画素値を求め、色差予測画素値kとして出力する」ということは、「符号化対象ブロック」の各画素に対して行われるものであり、「符号化対象ブロック」単位で見れば、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」をローカル復号したものである、「ローカル復号画像fの輝度成分」から、「符号化対象ブロック」の「色差成分」を予測することであるといえる。
そして、当該「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」をローカル復号したものである、「ローカル復号画像fの輝度成分」は、構成Bの「前記色差ブロックの位置と対応する位置の復号済みの輝度ブロック」に相当する。
よって、上記(ア)、(イ)も考慮すると、構成mの「色差線形予測部24は、ローカル復号画像fの輝度成分と、予測係数jと、を入力とし、これら入力された信号を用いて、上述の数式(1)により色差成分の予測画素値を求め、色差予測画素値kとして出力する」ということは、構成Bの「前記色差ブロックの周辺の輝度及び色差のそれぞれの参照画素から算出された予測モデルを用いて、前記色差ブロックの位置と対応する位置の復号済みの輝度ブロックから前記色差ブロックを予測する」ことに相当する。
(エ)次に、構成f,g,l及び上記(ア)、(イ)によれば、引用発明の「適応間引き輝度参照画素取得部21A」、「適応間引き色差参照画素取得部22A」、及び「予測係数導出部23」は協働して、「前記色差ブロックの周辺の輝度及び色差のそれぞれの参照画素から」「予測モデル」を「算出」するものといえ、また構成m及び上記(ウ)によれば、引用発明の「色差線形予測部24」は、当該 「算出された予測モデルを用いて、前記色差ブロックの位置と対応する位置の復号済みの輝度ブロックから前記色差ブロックを予測する」ものといえるから、引用発明の構成eの「適応間引き輝度参照画素取得部21A、適応間引き色差参照画素取得部22A、予測係数導出部23、および色差線形予測部24」を併せたものは、構成Bの「成分間予測モデル予測部」に相当する。
(オ)以上によれば、本件補正発明と引用発明は、「前記色差ブロックの周辺の輝度及び色差のそれぞれの参照画素から算出された予測モデルを用いて、前記色差ブロックの位置と対応する位置の復号済みの輝度ブロックから前記色差ブロックを予測する成分間予測モデル予測部」を備える点で一致する。
ウ 構成Cについて
(ア)まず、本件補正発明における「前記予測モデルを算出するモード」及び「予め定められた複数のモード」の技術的意味について検討する。
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「 【0040】
さらに、色差ブロックに特有なイントラ予測モードとして、予測対象の色差ブロックの周辺にある輝度及び色差のそれぞれの参照画素から算出された線形モデルを用いて、当該色差ブロックの位置と対応する位置にある復号済みの輝度ブロックから当該色差ブロックを予測する成分間線形モデル予測(CCLM)がある。CCLMでは、線形モデルの算出に用いる輝度及び色差の参照画素の位置(以下、「線形モデル算出画素位置」と呼ぶ)が異なる3つのCCLMモードの中から選択可能になっている。
【0041】
図3は、本実施形態に係る3つのCCLMモードを示す図である。図3において、線形モデル算出画素位置が4つの画素位置である一例を示している。
【0042】
図3(a)に示すLT_CCLMモードは、予測対象の色差ブロックの上側及び左側の両方の位置を線形モデル算出画素位置とするCCLMモードである。イントラ予測部172は、LT_CCLMモードを選択した場合、すなわち、予測対象の色差ブロックの上側及び左側の両方の位置を線形モデル算出画素位置として選択した場合、図3(a)に示す上側及び左側の参照画素#1乃至#4を用いて線形モデルを算出する。
【0043】
図3(b)に示すT_CCLMモードは、予測対象の色差ブロックの上側の位置を線形モデル算出画素位置とするCCLMモードである。イントラ予測部172は、T_CCLMモードを選択した場合、すなわち、予測対象の色差ブロックの上側の位置を線形モデル算出画素位置として選択した場合、図3(b)に示す上側の参照画素#1乃至#4を用いて線形モデルを算出する。
【0044】
図3(c)に示すL_CCLMモードは、予測対象の色差ブロックの左側の位置を線形モデル算出画素位置とするCCLMモードである。イントラ予測部172は、T_CCLMモード(当審注:段落0041から0044の文脈から「L_CCLMモード」の誤記と認める。)を選択した場合、すなわち、予測対象の色差ブロックの左側の位置を線形モデル算出画素位置として選択した場合、図3(c)に示す左側の参照画素#1乃至#4を用いて線形モデルを算出する。」
当該各記載によれば、本件補正発明において、CCLMでは、線形モデルの算出に用いる輝度及び色差の参照画素の位置(以下、「線形モデル算出画素位置」と呼ぶ)が異なる3つのCCLMモードの中から選択可能になっており、LT_CCLMモードは、予測対象の色差ブロックの上側及び左側の両方の位置を線形モデル算出画素位置とするCCLMモードであり、LT_CCLMモードを選択した場合、上側及び左側の参照画素#1乃至#4を用いて線形モデルを算出し、また、T_CCLMモードは、予測対象の色差ブロックの上側の位置を線形モデル算出画素位置とするCCLMモードであり、T_CCLMモードを選択した場合、上側の参照画素#1乃至#4を用いて線形モデルを算出し、さらに、L_CCLMモードは、予測対象の色差ブロックの左側の位置を線形モデル算出画素位置とするCCLMモードであり、L_CCLMモードを選択した場合、左側の参照画素#1乃至#4を用いて線形モデルを算出する、といえる。
よって、本件補正発明における、「前記予測モデルを算出するモード」及び「予め定められた複数のモード」という記載には、線形モデルの算出に用いる輝度及び色差の参照画素の位置が異なる3つのモードが含まれると解される。
(イ)次に、引用発明における「輝度イントラ予測モード」について検討する。
構成fによれば、「適応間引き輝度参照画素取得部21A」は、「まず、ローカル復号画像fを用いて最も入力画像aと類似するように、輝度イントラ予測モードを決定し、次に、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素を、輝度イントラ予測モードに基づいて間引きし、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、輝度参照画素値hとして出力」している。
ここで、構成fにおける「輝度イントラ予測モード」は、「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素を、輝度イントラ予測モードに基づいて間引き」するために用いられるものであるから、当該「輝度イントラ予測モード」は、「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロック」のイントラ予測モードであると解するのが相当である。
また、構成mが、「符号化対象ブロック」単位で見れば、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」をローカル復号したものである、「ローカル復号画像fの輝度成分」から、「符号化対象ブロック」の「色差成分」を予測することであるといえる(上記イ(ウ))ことを考慮すると、構成fの「色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロック」は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」をローカル復号したものである、「ローカル復号画像fの輝度成分」であるといえる。
そして、通常、「輝度イントラ予測モード」とは、輝度のブロックをイントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられるものであるから、構成fの「輝度イントラ予測モード」は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を、イントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられるものであるといえる。
次に、構成gによれば、「適応間引き色差参照画素取得部22A」は、「まず、ローカル復号画像fを用いて最も入力画像aと類似するように、輝度イントラ予測モードを決定し、次に、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素を、輝度イントラ予測モードに基づいて間引きし、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、色差参照画素値iとして出力」している。
ここで、構成gの「輝度イントラ予測モード」について検討すると、構成gの「輝度イントラ予測モード」は、構成fの「輝度イントラ予測モード」と同様に、「まず、ローカル復号画像fを用いて最も入力画像aと類似するように、輝度イントラ予測モードを決定し」という手法により得られるものであるから、構成fの「輝度イントラ予測モード」と同一のものを指していると解するのが相当である。
よって、構成gの「輝度イントラ予測モード」も、構成fの「輝度イントラ予測モード」と同様に、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を、イントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられるものであるといえる。
そして、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」をローカル復号したものである、「ローカル復号画像fの輝度成分」は、構成Bの「前記色差ブロックの位置と対応する位置の復号済みの輝度ブロック」に相当する(上記イ(ウ))のであるから、構成Cの「前記復号済みの輝度ブロック」にも相当する。
また、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を、イントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられるものである、構成f、gの「輝度イントラ予測モード」は、構成Cの「前記復号済みの輝度ブロックのイントラ予測に適用されたイントラ予測モードである輝度イントラ予測モード」に相当する。
(ウ)次に、引用発明において、輝度成分の予測方法が、DC、Planar、または斜め方向の方向予測である場合について検討する。
構成iによれば、輝度成分の予測方法が、DC、Planar、または斜め方向の方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの周囲にある参照画素を一様に間引いて間引いた後の参照画素の画素値を取得し、また、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの周囲にある参照画素を一様に間引いて間引いた後の参照画素の画素値を取得している。
そして、構成f、gによれば、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、輝度参照画素値hとして出力し、また、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、色差参照画素値iとして出力している。
そして、構成l、mによれば、予測係数導出部23は、輝度参照画素値hと、色差参照画素値iと、を入力とし、これら入力された画素値を用いて、パラメータα、βを求め、数式(1)の右辺におけるα、βとしている。
そして、数式(1)の右辺が構成Bの「予測モデル」に相当すること(上記イ(イ))を考慮すると「輝度成分の予測方法が、DC、Planar、または斜め方向の方向予測である場合」における、構成i、f、g、l、mの動作を行う状態は、「予測モデルを算出するモード」といえ、このようなモードは、装置内において予め定められているといえるから、「予め定められた一のモード」であるといえる。
(エ)次に、引用発明において、輝度成分の予測方法が、水平または水平に近い方向予測である場合について検討する。
構成jによれば、輝度成分の予測方法が、水平または水平に近い方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの左側の参照画素のみ画素値を取得し、また、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの左側の参照画素のみ画素値を取得している。
そして、構成f、gによれば、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、輝度参照画素値hとして出力し、また、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、色差参照画素値iとして出力している。
そして、構成l、mによれば、予測係数導出部23は、輝度参照画素値hと、色差参照画素値iと、を入力とし、これら入力された画素値を用いて、パラメータα、βを求め、数式(1)の右辺におけるα、βとしている。
そして、数式(1)の右辺が構成Bの「予測モデル」に相当すること(上記イ(イ))を考慮すると「輝度成分の予測方法が、水平または水平に近い方向予測である場合」における、構成j、f、g、l、mの動作を行う状態は、「予測モデルを算出するモード」といえ、このようなモードは、装置内において予め定められているといえるから、「予め定められた一のモード」であるといえる。
(オ)次に、引用発明において、輝度成分の予測方法が、垂直または垂直に近い方向予測である場合について検討する。
構成kによれば、輝度成分の予測方法が、垂直または垂直に近い方向予測である場合には、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、色差予測対象ブロックに対応する輝度ブロックの上側の参照画素のみ画素値を取得し、また、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、色差予測対象ブロックの上側の参照画素のみ画素値を取得している。
そして、構成f、gによれば、適応間引き輝度参照画素取得部21Aは、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、輝度参照画素値hとして出力し、また、適応間引き色差参照画素取得部22Aは、間引いた後の参照画素の画素値を取得し、色差参照画素値iとして出力している。
そして、構成l、mによれば、予測係数導出部23は、輝度参照画素値hと、色差参照画素値iと、を入力とし、これら入力された画素値を用いて、パラメータα、βを求め、数式(1)の右辺におけるα、βとしている。
そして、数式(1)の右辺が構成Bの「予測モデル」に相当すること(上記イ(イ))を考慮すると「輝度成分の予測方法が、垂直または垂直に近い方向予測である場合」における、構成k、f、g、l、mの動作を行う状態は、「予測モデルを算出するモード」といえ、このようなモードは、装置内において予め定められているといえるから、「予め定められた一のモード」であるといえる。
(カ)次に、モードの決定について検討する。
構成hによれば、引用発明では、「適応間引き輝度参照画素取得部21Aおよび適応間引き色差参照画素取得部22Aによる輝度イントラ予測モードに基づく参照画素の間引きでは、輝度イントラ予測モードを参照することで、輝度成分の予測方法を判別でき」る。
ここで、「適応間引き輝度参照画素取得部21Aおよび適応間引き色差参照画素取得部22Aによる輝度イントラ予測モードに基づく参照画素の間引き」とは、構成f、gにおける参照画素の間引きである。
また、上記(イ)で述べたとおり、構成f、gの「輝度イントラ予測モード」は、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を、イントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられるものである。
よって、適応間引き輝度参照画素取得部21Aおよび適応間引き色差参照画素取得部22Aは、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を、イントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられる「輝度イントラ予測モード」を参照することで、輝度成分の予測方法を判別するといえる。
そして、適応間引き輝度参照画素取得部21Aおよび適応間引き色差参照画素取得部22Aは、当該「輝度イントラ予測モード」を参照することにより判別された「輝度成分の予測方法」が、「DC、Planar、または斜め方向の方向予測である」か(構成i)、「水平または水平に近い方向予測である」か(構成j)、あるいは「垂直または垂直に近い方向予測である」か(構成k)に応じて、上記(ウ)の動作を行う状態、(エ)の動作を行う状態、(オ)の動作を行う状態の中から一の状態を決定しているといえる。
以上によれば、構成eの「適応間引き輝度参照画素取得部21A、適応間引き色差参照画素取得部22A」は、協働して、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を、イントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられる「輝度イントラ予測モード」を参照することで、輝度成分の予測方法を判別し、当該輝度成分の予測方法に基づいて、上記(ウ)の動作を行う状態、(エ)の動作を行う状態、(オ)の動作を行う状態の中から一の状態を決定しているといえる。
そして、上記イ(エ)で述べたとおり、引用発明の構成eの「適応間引き輝度参照画素取得部21A、適応間引き色差参照画素取得部22A、予測係数導出部23、および色差線形予測部24」を併せたものは、構成Bの「成分間予測モデル予測部」に相当するから、構成eのうちの、「適応間引き輝度参照画素取得部21A、適応間引き色差参照画素取得部22A」が、協働して、「符号化対象ブロック」の「色差成分」の位置と対応する位置の、「符号化対象ブロック」の「輝度成分」を、イントラ予測により符号化及びローカル復号する際に用いられる「輝度イントラ予測モード」を参照することで、輝度成分の予測方法を判別し、当該輝度成分の予測方法に基づいて、上記(ウ)の動作を行う状態、(エ)の動作を行う状態、(オ)の動作を行う状態の中から一の状態を決定することは、構成Cの「前記成分間予測モデル予測部は、前記復号済みの輝度ブロックのイントラ予測に適用されたイントラ予測モードである輝度イントラ予測モードに基づいて、前記予測モデルを算出するモードを、予め定められた複数のモードから決定する」ことに相当する。
(キ)以上によれば、本件補正発明と引用発明は、「前記成分間予測モデル予測部は、前記復号済みの輝度ブロックのイントラ予測に適用されたイントラ予測モードである輝度イントラ予測モードに基づいて、前記予測モデルを算出するモードを、予め定められた複数のモードから決定する」点で一致する。
(4)対比のまとめ
以上によれば、本件補正発明と引用発明は構成A~Cのすべての点において一致し、相違点はない。
(5)本件補正の適否についての判断
よって、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(6)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下の主張を行っている。
「(b)本願発明と引用発明との対比
本願の請求項1に係る発明(本願発明1)は、「前記成分間予測モデル予測部は、前記復号済みの輝度ブロックのイントラ予測に適用されたイントラ予測モードである輝度イントラ予測モードに基づいて、前記予測モデルを算出するモードを、予め定められた複数のモードから決定する」という特徴的な構成を有しています。
このような構成によれば、予測モデルを算出するモードの情報を画像符号化装置から画像復号装置側へ伝送する必要がなくなり、伝送するべき付加情報の増大を抑制可能であり、符号化効率を向上させることができるという効果が奏されます。
これに対し、引用発明1は、輝度成分の予測モードに基づいて線形予測モデルにおけるパラメータを計算するものの、予測モデルを算出するモードを、予め定められた複数のモードから決定することについて開示も示唆もされておらず、上記特徴的な構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。
また、引用発明2にも、上記特徴的な構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。
このように、本願発明1は、引用発明1及び2とは構成及び効果の点で異なっており、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に想到できた発明には該当しないと思料致します。」
当該主張について検討すると、上記(3)ウで述べたとおりであり、本件補正発明と引用発明は、「前記成分間予測モデル予測部は、前記復号済みの輝度ブロックのイントラ予測に適用されたイントラ予測モードである輝度イントラ予測モードに基づいて、前記予測モデルを算出するモードを、予め定められた複数のモードから決定する」点で一致するといえる。
また、引用発明でも、予測モデルを算出するモードの情報は、画像符号化装置から画像復号装置側へ伝送されていないから、「伝送するべき付加情報の増大を抑制可能であり、符号化効率を向上させることができる」という効果は、格別なものとはいえない。
よって、請求人の主張は採用することができない。
3 本件補正についてのむすび
以上によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年12月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年8月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうちの理由1は、概略、以下の理由を含むものである。
(新規性)この出願の請求項1~5、7~9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2015/005418号
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「予め定められた複数のモードから」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに当該限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)~(5)に記載したとおり、引用発明であるから、本願発明も、引用発明である。
よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-019415