特許拒絶査定不服審判
2023-004080
ビデオエンコードおよびデコード方法、および装置
- 審判番号
- 2023-004080
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-517692外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月09日
- 審決日
- 2024年02月16日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .16 -Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2特許法184条の4第3項特許法184条の13
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第184条の4第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-517692「ビデオエンコードおよびデコード方法、および装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月20日国際公開、WO2020/034330、令和 4年 1月11日国内公表、特表2022-502955〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)9月28日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 5月24日 :国際出願翻訳文及び手続補正書の提出
令和 4年 6月28日付け:拒絶理由通知
同年 9月21日 :手続補正書および意見書の提出
同年11月 8日付け:拒絶査定
令和 5年 3月 9日 :審判請求書および手続補正書の提出
同年 4月 7日 :前置報告
第2 本件発明
令和5年3月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という)により補正された請求項1ないし20のうち、請求項6に記載された発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。(なお、本件発明の各構成の符号は、請求項の記載を分説するために当審で付したものであり、請求項の記載を符号A、A1~A3、Bを用いて、以下、「構成A」、「構成A1」~「構成A3」、「構成B」と称する。)
【請求項6】
A ビデオまたは画像処理において画像をデコードする方法であって、
B 前記画像は、複数のタイルに分割されており、前記複数のタイルの各々は、複数のスライスに分割されており、
A 前記方法は、
A1 ビットストリーム内のスライスのヘッダからタイル識別子を取得することであって、前記タイル識別子は、前記スライスが存在するタイルを示す、ことと、
A2 前記ビットストリーム内の前記スライスの前記ヘッダから第2のアドレスを取得することであって、前記第2のアドレスは、前記タイル内の前記スライスの場所を示す、ことと、
A3 前記タイル識別子および前記第2のアドレスに基づいて、前記画像内の前記スライスの場所を示す前記スライスの第1のアドレスを決定することと
A を含む、方法。
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-20に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記1.の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)、というものである。
1.PCT/EP2019/051394号、特願2020-540550号(国際公開第2019/145262号、特表2021-512534号公報)
第4 当審の判断
1 先願および先願発明
(1) 先願について
先願である、国際出願PCT/EP2019/051394号は、本件出願日以前の2018年1月25日を出願日とする欧州特許出願18153516を優先権主張の基礎とする外国語特許出願であって、本件出願後に国際公開2019/145262号として国際公開がされ、その後特願2020-540550号として国内移行した後、特表2021-512534号として公表された外国語特許出願である。
先願の優先権主張の基礎出願の明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「先願の優先権主張の基礎となる出願の明細書等」という。)と、先願の国際出願の明細書、請求の範囲、又は図面(以下、「先願明細書等」という。)とを比較すると、両者は先願の優先権主張の基礎となる出願の明細書等の図4、図6、図10における「tile_id_in_pps[i]」、「tile_id_in_sh」、「area_id_in_sh」と記載されている行のうち、「Descriptor」と記載されている、黒塗りされた列の部分を除き共通している。
そうすると、先願の優先権主張の基礎となる出願の明細書等と、先願明細書等との間の共通する範囲においては、先願の優先権主張日の基礎となる出願の優先権主張の効果が及ぶものである。
ここで、先願の優先権主張の基礎となる出願の明細書等と先願明細書等に共通して記載された事項から、先願に記載された発明を認定し、特許法第29条の2の規定の適用に関しては、先願は、先願の優先権基礎出願の出願日である、2018年1月25日に出願がなされたものとして扱う。以下の各摘記記載の末尾の頁数及び行数は、先願明細書等に係る国際公開のものである。また、()内に仮訳を付すとともに、上記特表2021-512534号の公表特許公報における、当該仮訳に対応する記載箇所を、段落番号を示す【】付き数字で示している。
(2) 先願に記載されている事項
先願明細書には、以下の記載がある。(下線は強調のために当審で付した。)
ア 「A first embodiment of the present application is described with respect to Fig.1. Fig.1 shows a datastream 10 and a sub-picture-specific datastream 12 derived therefrom by sub-picture extraction 14. Datastream 10 might have been generated by an encoder 16. In particular, encoder 16 has encoded into the datastream 10 a picture 18....
In encoding picture 18 into datastream 10, encoder 16 obeys or uses a coding path 22 which traverses picture 18 from a picture onset position 24 which, as depicted in Fig.1, may be located at the top left-hand corner of picture 18, towards, for instance, an opposite picture corner such as the bottom right-hand corner in order to continue with traversing another picture of video 20, for instance....Accordingly, each slice 26 in datastream 10 which contains data of picture 18 covers, or has encoded thereinto, a corresponding portion, i.e. a slice 28 of picture 18 wherein the slices 28 of picture 18 are traversed by coding path 22 sequentially without interleaving slices 28. In other words, coding path 22 traverses each of the slices 28 into which picture 18 is subdivided merely once.
As also depicted in Fig. 1, encoder 16 obeys, in coding picture 18 into datastream 10, also a subdivision of picture 18 into segments 30. Fig.1 exemplarily illustrates a subdivision of picture 18 into four segments 30 arranged, exemplarily, in a 2x2 array.... As far as the relationship between slices 28 on the one hand and segments 30 on the other hand is concerned, slices 28 either completely cover one or more segments 30 or are merely within one segment 30 only. Merely for illustration purposes, Fig.1 shows that each segment 30 is composed of two slices 28. This, in turn, means that coding path 22 traverses segments 30 sequentially, i.e. each segment 30 is traversed by coding path 22 completely before coding path 30 traverses a next segment 30 in coding order.
Thus, encoder 16 encodes picture 18 in units of slices 28 into datastream 10. Each slice 26 in datastream 10 has, thus, the corresponding picture slice 28 encoded thereinto. Each slice 26 comprises payload data 32 which encodes the content of the corresponding slice portion 28 of picture 18 in form of, for instance, one or more of prediction parameters such as prediction mode distinguishing, for instance, between intra or inter-coding mode, motion parameters for intra-predicted blocks, intra-prediction sub-modes for intra- predicted blocks, subdivision information for subdividing picture 18 into blocks, and residual data such as transform coefficients which represent the prediction residual...
And even further, it should be noted that, in addition to the slices' 26 slice headers 34 which are described in more detail below, datastream 10 comprises further information containing higher level coding parameters which is called parameter set in the following.」(第5頁第16行から第7頁第5行、第7頁第34行から第36行)
(仮訳:
【0014】
本出願の第1の実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、データストリーム10、およびサブピクチャ抽出14によってそこから導出されるサブピクチャ特有のデータストリーム12を示す。データストリーム10は、エンコーダ16によって生成されたものでありうる。特に、エンコーダ16は、データストリーム10内にピクチャ18を符号化した。・・・
【0015】
ピクチャ18をデータストリーム10内に符号化する際、エンコーダ16は、図1に示すように、ピクチャ18の左上隅に位置し得るピクチャの開始位置24から、たとえば、ビデオ20の別のピクチャへ続けて横断するために、たとえば、右下隅などの反対のピクチャ隅に向かってピクチャ18を横断する符号化経路22に従うかまたはそれを使用する。・・・したがって、ピクチャ18のデータを含むデータストリーム10内の各スライス26は、対応する部分、すなわち、ピクチャ18のスライス28をカバーするか、または符号化しており、ピクチャ18のスライス28は、スライス28をインターリーブせずに、符号化経路22によって連続的に横断される。言い換えれば、符号化経路22は、ピクチャ18が細分化されたスライス28の各々を一度だけ横断する。
【0016】
やはり図1に示すように、エンコーダ16は、ピクチャ18をデータストリーム10へと符号化する際に、ピクチャ18のセグメント30への細分化も行う。図1は、例えば、2x2アレイに配置された4個のセグメント30へのピクチャの細分化を例示的に示す。・・・一方がスライス28で他方がセグメント30の関係が考慮される限り、スライス28は、1つまたは複数のセグメント30を完全にカバーするか、または単に1個のセグメント30内のみに存在する。単なる例示のために、図1は、各セグメント30が2個のスライス28から構成されることを示す。これは、符号化経路22がセグメント30を連続的に横断すること、すなわち、符号化経路22が符号化順序で次のセグメント30を横断する前に、各セグメント30がコーディング経路22によって完全に横断されることを意味する。
【0017】
このようにして、エンコーダ16は、ピクチャ18をスライス28単位でデータストリーム10内に符号化する。データストリーム10内の各スライス26は、したがって、符号化された対応するピクチャスライス28を有する。たとえば、各スライス26は、ピクチャ18の対応するスライス部分28のコンテンツを、たとえば、イントラ符号化モードまたはインター符号化モードを区別する予測モードなどの予測パラメータ、イントラ予測ブロックに対する動きパラメータ、イントラ予測ブロックに対するイントラ予測サブモード、ピクチャ18をブロックに細分化するための細分化情報、および、予測残差を表す変換係数などの残差データのうちの1つまたは複数の形で符号化するペイロードデータ32を有する。
・・・
【0019】
なおさらに、下記でより詳細に説明するスライス26のスライスヘッダ34に加えて、データストリーム10は、以下でパラメータセットと呼ばれる、より高いレベルの符号化パラメータを含むさらなる情報を含むことに留意されたい。)
イ 「After having described the general framework for the coding of datastream 10, the description proceeds with a description of the slice header 34 and its content. In particular, encoder 16 provides each slice header 34 with a start position information which indicates a starting position 40 from which onwards the picture 18 is, along the coding path 22, encoded into the respective slice 26 comprising the respective slice header 34....
Favorably, however, the start position information 42 indicates the starting position 40 of the slice 26 within the slice header 34 of which the start position information 42 is contained, in a manner relative to an onset position 44 at which the coding path 22 starts traversing the segment 30 the starting position 40 is located in as indicated by an arrow 46 in Fig.1, exemplarily. The relative indication of the starting position 40 alleviates the sub-picture extraction 14 as explained further below.
In order to compensate for the relative indication of the starting position 40 by the start position information 42, and its associated ambiguity, the slice header 34 additionally comprises segment information 48 which indicates thesegment 30 the starting position 40 of the slice 26 is located in to which the segment information 48 belongs. In the example of Fig. 1 , for instance, the slice 28, which the starting position 40 is pointed to by arrow 46, is located within the segment 30 indexed by the capital letter “B" in Fig. 1 and accordingly, segment information 48 of that slice would indicate that this slice 26 belongs to segment B.Together, start position information 42 and segment information 48, thus, suffice to determine the absolute position of the starting position 40 within picture 18, i.e. the relative position or starting position 40 with respect to the origin, namely the picture onset position 24.」(第8頁第28行から第9頁第21行)
(仮訳:【0021】
データストリーム10の符号化に関する一般的な枠組みを説明した後で、スライスヘッダ34およびそのコンテンツの説明に進む。具体的には、エンコーダ16は、各スライスヘッダ34に、そこから先でピクチャ18が、符号化経路22に沿って、それぞれのスライスヘッダ34を含むそれぞれのスライス26に符号化される開始位置40を示す開始位置情報を提供する。・・・
【0022】
しかしながら、好ましくは、開始位置情報42は、開始位置情報42が含まれるスライスヘッダ34内のスライス26の開始位置40を、例示的に図1の矢印46によって示すように、開始位置40が位置するセグメント30を符号化経路22がなぞり始めるセグメントの開始位置44に対して相対的に示す。開始位置40の相対的な指示は、下記でさらに説明するように、サブピクチャ抽出14を緩和軽減する。
【0023】
開始位置情報42による開始位置40の相対的な指示、およびそれに伴う曖昧さを補うために、スライスヘッダ34は、追加で、セグメント情報48が属する、スライス26の開始位置40が位置するセグメント30を示すセグメント情報48を含む。図1の例では、たとえば、開始位置40が矢印46によって示されているスライス28は、図1で大文字Bによってインデックス付けされたセグメント30内に位置し、それに応じて、そのスライスのセグメント情報48は、このスライス26がセグメントBに属することを示すことになる。したがって、開始位置情報42およびセグメント情報48を合わせると、ピクチャ18内のスライスの開始位置40の絶対位置、すなわち、起点、すなわち、ピクチャの開始位置24に対する相対位置または開始位置40を決定するのに十分である。)
ウ 「The decoder 38 which receives datastream 10 is able to decode the start position information 42 of a respective slice 26 from datastream 10 and to locate, using the start position information 42, the starting position 40 of the respective slice relative to the onset position 44 of the segment the starting position 40 is located in. Further, decoder 38 decodes from datastream 10 the corresponding segment information 48 of the respective slice 26 so that the decoder 38 knows about the segment 30 the onset position 44 belongs to relative to which the start position information 42 indicates the starting position 40. The decoder 38 is, thus, able to locate the onset position 44 on the basis of the parameter set 36 which indicates the subdivision of picture 18 into segments 30 and accordingly, combine the relative position indication of the starting position 40, indicated relative to the onset position 44, with the position of the onset position 44 within picture 18 which combination yields the absolute position of starting position 40 within picture 18 relative to the picture onset position 24.」(第10頁第23行から第35行)
(仮訳:【0024】
データストリーム10を受信するデコーダ38は、データストリーム10からそれぞれのスライス26の開始位置情報42を復号し、開始位置情報42を使用して、開始位置40が位置するセグメントの開始位置44に対して、それぞれの開始位置40を位置特定することができる。さらに、デコーダ38が、それに対して開始位置情報42が開始位置40を示すセグメントの開始位置44が属するセグメント30に関して知るよう、デコーダ38は、データストリーム10から、それぞれのスライス26の対応するセグメント情報48を復号する。デコーダ38は、したがって、セグメント30へのピクチャ18の細分化を示すパラメータセット36に基づいて、セグメントの開始位置44を位置特定し、それに応じて、セグメントの開始位置44に対して示されるスライスの開始位置40の相対位置指示を、ピクチャ18内のセグメントの開始位置44と組み合わせることができ、この組合せは、ピクチャの開始位置24に対するピクチャ18内のスライスの開始位置40の絶対位置をもたらす。」
エ 「In the following, a first variant, variant A, of a modification of HEVC framework is described. As outlined above with respect to Fig. 1, according to this variant, the slice segment addresses are signaled relative to the first CTU of the respective tile or composition of tiles, i.e. the current segment 30, as opposed to signal slice segment addresses relative to the first CTU of the picture. “First" means, when using the HEVC coding order, the left-most and top-most CTU.」(第15頁第35行から第16頁第3行)
(仮訳:【0035】
以下では、HEVCフレームワークの修正の第1の変形形態、変形形態Aについて説明する。図1に関して上記で概説したように、この変形形態によれば、スライスセグメントアドレスは、ピクチャの第1のCTUに対するスライスセグメントアドレスをシグナリングするのではなく、それぞれのタイルまたはタイルの構成の第1のCTU、すなわち、現在のセグメント30に対してシグナリングされる。「第1の」は、HEVC符号化順序を使用するとき、一番左および一番上のCTUを意味する。)
オ 「The list TileSliceSegBaseAddr[k] for k ranging from 0 to ((num_tile_rows_minus1 +1 ) * ( num_tile_columns_minus1 +1) -1), inclusive, specifying the slice segment address offset in tile scan of the first slice segment of the k-th tile within the picture in bitstream order in units of CTBs, is derived as follows (pseudo code 5):
TileSliceSegBaseAddr[0]=0
for(k=1;k<=((num_tile_rows_minus1+1)*(num_tile_columns_minus1+1)-1);k++)
TileSliceSegBaseAddr[k]=TileSliceSegBaseAddr[k-1]+TileSizeInCtbsY[k-1]
TileSliceSegBaseAddr[ i ] is a vector containing entries 0... N-1 with N being the number of segments 30, with the ith entry indicating the address of the onset position 44 of the ith segment in raster scan segment order 116, measured as the number of blocks 64 along coding path from the picture onset position 24 to the segment onset position 44.
Here, ”tile scan" denotes the scan 22 as depicted in Fig. 1. The TileSliceSegBaseAddr denotes the afore-mentioned base addresses of the onset positions 44 of the segments which, according to the present example, are equal to tiles. The computations denoted above may be used be decoders 38 and 52, respectively, to compute the base addresses. If a sub-picture decoding applies, the number of segments and their arrangement is to be adapted.
Fig. 6 illustrates as to how the slice segment headers, i.e. the afore-mentioned slice headers 34, could look like. In particular, here, the slice header 34 comprises a flag 120, namely first_slicesegment_in_area_flag which, together with a syntax element slice_segment_address 122 forms the start position information 42. Merely if flag 120 is not set, slice_segment_address is presentand indicates the offset of the slice start position 40 from the onset position 44 of the corresponding segment/tile 30. The latter is indicated by the segment information 48 which comprises merely one syntax element 124, namely tile_id_in_sh which assumes values out of the domain of values defined in parameter set 70 of Fig. 4, namely by way of the syntax elements 114....
tile_id_in_sh specifies the index of the tile that the slice segment belongs to. The value of area_id_in_sh shall be in the range of 0 to 255. When area_id_in_sh is not present, it is infered to be equal to 0. No more than one tile within a picture shall have the same value of tile_id_in_sh.」(第21頁第26行から第22頁第23行、第23頁第31行から第34行)
(仮訳:【0057】
ビットストリーム順序で、ピクチャ内の第k番目のタイルの第1のスライスセグメントのタイル走査においてスライスセグメントアドレスオフセットをCTB単位で指定する、両端値を含む、0から((num_tile_rows_minus1+1)*(num_tile_columns_minus1+1)-1)に及ぶ範囲のkに対するリストTileSliceSegBaseAddr[k]は、以下の(疑似コード5)の通り導出される。
TileSliceSegBaseAddr[0]=0
for(k=1;k<=((num_tile_rows_minus1+1)*(num_tile_columns_minus1+1)-1);k++)
TileSliceSegBaseAddr[k]=TileSliceSegBaseAddr[k-1]+TileSizeInCtbsY[k-1]
【0058】
TileSliceSegBaseAddr[i]は、成分0…N-1を含むベクトルであり、Nは、セグメント30の数であり、第i番目の成分は、ピクチャの開始位置24からセグメントの開始位置44までの符号化経路に沿ったブロック64の数として測定された、ラスタ走査セグメント順序116の第i番目のセグメントの開始位置44のアドレスを示す。
【0059】
ここで、「タイル走査」は、図1に示したような走査22を示す。TileSliceSegBaseAddrは、この例によれば、タイルに等しい、セグメントの開始位置44の前述のベースアドレスを示す。上記で示した計算は、ベースアドレスを計算するためにデコーダ38および52によってそれぞれ使用され得る。サブピクチャ復号が適用される場合、セグメントの数およびそれらの配置は、適応可能であるものとする。
【0060】
図6は、スライスセグメントヘッダ、すなわち、前述のスライスヘッダ34がどのようになり得るかを示す。具体的には、ここで、スライスヘッダ34は、シンタックス要素slice_segment_address122と共に開始位置情報42を形成するフラグ120、すなわち、first_slice_segment_in_area_flagを含む。単にフラグ120が設定されていない場合は、slice_segment_addressが存在し、対応するセグメント/タイル30の開始位置44からのスライス開始位置40のオフセットを示す。後者、すなわち、対応するセグメント/タイル30の開始位置44は、単に1つのシンタックス要素124、すなわちtile_id_in_shから構成されるセグメント情報48によって示され、シンタックス要素114によって図4のパラメータセット70で定義された値の領域外の値を想定している。
・・・
【0065】
tile_id_in_shは、スライスセグメントが属するタイルのインデックスを規定する。area_id_in_shの値は、0から255に及ぶ範囲とする。area_id_in_shが存在しないとき、それは0に等しいと推論される。ピクチャ内の2個以上のタイルは、tile_id_in_shの同じ値を有さないものとする。」
カ 「The variable CtbAddrInRs, specifying a coding tree block address in coding tree block raster scan of a picture, is set equal to CtbAddrTsToRs[ slice_segment_address + (slice_segment_base_addr_per_tile_enable_flag ? TileSliceSegBaseAddr[ tileidxTileidMap[ tile_id_in_sh ] ] : 0 ) ]. The variable CtbAddrInTs, specifying a coding tree block address in tile scan, is set equal to CtbAddrRsToTs[ CtbAddrInRs ]. The variable CuQpDeltaVal, specifying the difference between a luma quantization parameter for the coding unit containing cu_qp_delta_abs and its prediction, is set equal to 0. The variables CuQpOffsetCb and CuQpOffsetCr, specifying values to be used when determining the respective values of the Qp'Cb and Qp'Cr quantization parameters for the coding unit containing cu_chroma_qp_offset_flag , are both set equal to 0. Thus, in case of relative indication mode 46, tileIdxTileIdMap[ tile_id_in_sh ] maps the tile_id_in_sh of a currently decoded/encoded slice, comprised by its segment information 48, onto the correct tileIdx, i.e. references the correct segment in picture 18 or 54, and TileSliceSegBaseAddr yields for this segment the base address which is then to be added to the relative slice address, slice_segment_address, of its start position information 42 to yield to address of this slice.CtbAddrTsToRs merely translates the address measured along coding path 22 into the an address measured along a raster scan block order among blocks 64. The decoder and encoder may use pseude codes 5 to compute the base addresses of the segment onset positions 44, or, in case of explicit information exemplified hereinafter, merely the encoder.」(第24頁第26行から第25頁第9行)
(仮訳:【0069】
ピクチャのコーディングツリーブロックラスタ走査においてコーディングツリーブロックアドレスを規定する変数CtbAddrInRsは、CtbAddrTsToRs[slice_segment_address+(slice_segment_base_addr_per_tile_enable_flag?TileSliceSegBaseAddr[tileidxTileidMap[tile_id_in_sh]]:0)]に等しく設定される。タイル走査においてコーディングツリーブロックアドレスを規定する変数CtbAddrInTsは、CtbAddrRsToTs[CtbAddrInRs]に等しく設定される。cu_qp_delta_absを含むコーディングユニットに関するルマ量子化パラメータとその予測との間の差異を規定する変数CuQpDeltaValは、0に等しく設定される。cu_chroma_qp_offset_flagを含むコーディングユニットに関するQp’CbおよびQp’Crの量子化パラメータのそれぞれの値を決定するときに使用すべき値を規定する変数CuQpOffsetCbおよびCuQpOffsetCrは、両方とも0に等しく設定される。
したがって、相対的な指示モード46の場合、tileIdxTileIdMap[tile_id_in_sh]は、そのセグメント情報48によって構成される、現在復号/符号化されているスライスのtile_id_in_shを正しいtileIdx上にマッピングする、すなわち、ピクチャ18または54内の正しいセグメントを参照する。
TileSliceSegBaseAddrは、このスライスのアドレスを生成するために、このセグメントに対してのベースアドレスであって、その開始位置情報42の相対スライスアドレスslice_segment_addressに加算されるベースアドレスを生成する。
CtbAddrTsToRsは、符号化経路22に沿って測定されたアドレスをブロック64間でラスタ走査ブロック順序に沿って測定されたアドレスに単に変換する。デコーダおよびエンコーダは、疑似コード5を使用して、セグメントの開始位置44のベースアドレスを計算することができるか、または以下で例示する明示的な情報の場合、単にエンコーダがこれを行い得る。」
(3) 先願に記載された発明
ア データストリーム10に関して、上記(2)アの【0014】から、
「データストリーム10は、エンコーダ16によって生成されたものであ」り、「エンコーダ16は、データストリーム10内にピクチャ18を符号化し」ていること、
上記(2)アの【0015】、【0016】から
「ピクチャ18のデータを含むデータストリーム10内の各スライス26は、」「ピクチャ18のスライス28を」「符号化しており」、「エンコーダ16は、ピクチャ18をデータストリーム10へと符号化する際に、」「ピクチャ18のセグメント30への細分化も行う」ものであって、「スライス28は、」「1個のセグメント30内のみに存在」していること、
がいえる。
また、上記(2)アの【0016】の「4個のセグメント30へのピクチャの細分化を・・・示す。」、「各セグメント30が2個のスライス28から構成される」という記載から、
ピクチャが4つのセグメント30に細分化され、各セグメント30が2個のスライス28から構成されていること、
がいえる。
さらに、上記(2)アの【0017】の「エンコーダ16は、ピクチャ18をスライス28単位でデータストリーム10内に符号化する。データストリーム10内の各スライス26は、したがって、符号化された対応するピクチャスライス28を有する。」という記載から、
ピクチャ18に含まれるスライス28をデータストリーム10内に符号化したものがスライス26であること、
がいえる。
イ 上記(2)イの【0021】、【0022】から、「スライスヘッダ34を含むそれぞれのスライス26に符号化される開始位置40を示す開始位置情報」について、「開始位置情報42は、開始位置情報42が含まれるスライスヘッダ34内のスライス26の開始位置40を、」「セグメントの開始位置44に対して相対的に示」していることがいえる。
次に、上記(2)イの【0023】から、「スライスヘッダ34は、」「セグメント情報48が属する、スライス26の開始位置40が位置するセグメント30を示すセグメント情報48を含」み、「スライスのセグメント情報48は、このスライス26がセグメントBに属することを示すこと」で、「開始位置情報42およびセグメント情報48は、ピクチャ18内のスライス」すなわちスライス26「の開始位置40の絶対位置」「を決定するために十分であ」ることがいえる。
また、上記(2)イの【0019】の「スライス26のスライスヘッダ34に加えて、データストリーム10は」「さらなる情報を含む」という記載から、データストリーム10はスライス26のスライスヘッダ34を含むことがいえる。
ウ 上記イの「スライス26の開始位置40」という事項を踏まえた上記(2)ウの【0024】から、「データストリーム10を受信するデコーダ38は、データストリーム10からそれぞれのスライス26の開始位置情報42を復号し」、「開始位置情報42を使用して、開始位置40」すなわちスライス26の開始位置40「が位置するセグメントの開始位置44に対して、それぞれの開始位置40」すなわちスライス26の開始位置40「を位置特定」し、「それぞれのスライス26の対応するセグメント情報48を復号する」ことで、「セグメントの開始位置44を位置特定し」、「セグメントの開始位置44に対して示されるスライス」すなわちスライス26「の開始位置40の相対位置指示を、ピクチャ18内のセグメントの開始位置44と組み合わせ」、「ピクチャの開始位置24に対するピクチャ18内のスライス」すなわちスライス26「の開始位置40の絶対位置をもたらす」といえる。
エ 上記(2)エの【0035】の「以下では、HEVCフレームワークの修正の第1の変形形態、変形形態Aについて説明する」ことから、【0035】以降はHEVCフレームワークの修正として説明される。
オ 上記(2)オの【0058】から「TileSliceBaseAddr」「は」、「ピクチャの開始位置24からセグメントの開始位置44までの符号化経路に沿ったブロック64の数として測定された、ラスタ走査セグメント順序116の」「セグメントの開始位置44のアドレスを示」しているといえる。
カ 上記(2)オの【0060】から「スライスヘッダ34は、シンタックス要素slice_segment_address122と共に開始位置情報42を形成するフラグ120」「を含」み、「フラグ120が設定されていない場合は、slice_segment_addressが存在し、対応するセグメント/タイル30の開始位置44からのスライス開始位置40のオフセットを示」すこと、「対応するセグメント/タイル30の開始位置44」は「シンタックス要素124、すなわちtile_id_in_shから構成されるセグメント情報48によって示され」るといえる。
さらに、上記(2)オの【0065】から「tile_id_in_shは、スライスセグメントが属するタイルのインデックスを規定」することがいえる。
キ 上記(2)カの【0069】から、
「ピクチャのコーディングツリーブロックラスタ走査においてコーディングツリーブロックアドレスを規定する変数CtbAddrInRsは、CtbAddrTsToRs[slice_segment_address+(slice_segment_base_addr_per_tile_enable_flag?TileSliceSegBaseAddr[tileidxTileidMap[tile_id_in_sh]]:0)]に等しく設定され」ていることがいえる。
また、上記(2)カの【0069】から、さらに、「TileSliceSegBaseAddrは、このスライスのアドレスを生成するために、このセグメントに対してのベースアドレスであって、その開始位置情報42の相対スライスアドレスslice_segment_addressに加算されるベースアドレスを生成し」「CtbAddrTsToRsは、符号化経路22に沿って測定されたアドレスをブロック64間でラスタ走査ブロック順序に沿って測定されたアドレスに」「変換する」ことがいえる。
上記ア~キを踏まえると、上記(2)によれば、先願には、次の発明(以下、「先願発明」という)が記載されているものと認められる。先願発明の各構成は、符号a~hを用いて、以下、「構成(a)」~「構成(h)」と称する。また、()内の記号は、上記ア~キを指す。)
(a) データストリーム10を受信するデコーダ38は、データストリーム10からそれぞれのスライス26の開始位置情報42を復号し、開始位置情報42を使用して、スライス26の開始位置40が位置するセグメントの開始位置44に対して、それぞれのスライス26の開始位置40を位置特定し、それぞれのスライス26の対応するセグメント情報48を復号し、セグメントの開始位置44を位置特定し、セグメントの開始位置44に対して示されるスライス26の開始位置40の相対位置指示を、ピクチャ18内のセグメントの開始位置44と組み合わせ、ピクチャの開始位置24に対するピクチャ18内のスライス26の開始位置40の絶対位置をもたらすものであって(ウ)、
(b) データストリーム10は、エンコーダ16によって生成されたものであり、エンコーダ16は、データストリーム10内にピクチャ18を符号化しており(ア)、
エンコーダ16は、ピクチャ18をデータストリーム10へと符号化する際に、ピクチャ18のセグメント30への細分化も行うものであって、スライス28は、1個のセグメント30内のみに存在しており(ア)、
ピクチャ18のデータを含むデータストリーム10内の各スライス26は、ピクチャ18のスライス28を符号化しており(ア)、
ピクチャ18に含まれるスライス28をデータストリーム10内に符号化したものがスライス26であって(ア)、
エンコーダ16は、ピクチャ18をデータストリーム10へと符号化する際に、ピクチャ18が4個のセグメント30に細分化され、各セグメント30が2個のスライス28から構成されており(ア)、
(c) データストリーム10は、スライス26のスライスヘッダ34を含み(イ)、スライスヘッダ34は、セグメント情報48が属する、スライス26の開始位置40が位置するセグメント30を示すセグメント情報48を含み(イ)、
(d) スライスヘッダ34を含むそれぞれのスライス26に符号化される開始位置40を示す開始位置情報42は、開始位置情報42が含まれるスライスヘッダ34内のスライス26の開始位置40を、セグメントの開始位置44に対して相対的に示しており(イ)、
(e) スライスのセグメント情報48は、開始位置情報42およびセグメント情報48を合わせると、ピクチャ18内のスライスの開始位置40の絶対位置を決定するために十分であり(イ)、
(f) TileSliceSegBaseAddrは、ピクチャの開始位置24からセグメントの開始位置44までの符号化経路に沿ったブロック64の数として測定された、ラスタ走査セグメント順序116のセグメントの開始位置44のアドレスを示し(オ)、
(g) スライスヘッダ34は、シンタックス要素slice_segment_address122と共に開始位置情報42を形成するフラグ120を含み、フラグ120が設定されていない場合は、slice_segment_addressが存在し、対応するセグメント/タイル30の開始位置44からのスライス開始位置40のオフセットを示し、対応するセグメント/タイル30の開始位置44は、シンタックス要素124、すなわちtile_id_in_shから構成されるセグメント情報48によって示されており(カ)、
tile_id_in_shは、スライスセグメントが属するタイルのインデックスを規定するものであり(カ)、
(h) ピクチャのコーディングツリーブロックラスタ走査においてコーディングツリーブロックアドレスを規定する変数CtbAddrInRsは、CtbAddrTsToRs[slice_segment_address+(slice_segment_base_addr_per_tile_enable_flag?TileSliceSegBaseAddr[tileidxTileidMap[tile_id_in_sh]]:0)]に等しく設定されており(キ)、
TileSliceSegBaseAddrは、このスライスのアドレスを生成するために、このセグメントに対してのベースアドレスであって、その開始位置情報42の相対スライスアドレスslice_segment_addressに加算されるベースアドレスを生成し(キ)、
CtbAddrTsToRsは、符号化経路22に沿って測定されたアドレスをブロック64間でラスタ走査ブロック順序に沿って測定されたアドレスに変換する(キ)、
(a) HEVCのフレームワークの修正に関する(エ)、デコーダ38(ウ)。
(4)先願発明における技術水準
上記先願発明はHEVCフレームワークの修正に関するものであるところ、動画像符号化の国際規格HEVCに関する技術水準として、大久保、鈴木、高村、中條、インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書、株式会社インプレスジャパン、2013年10月21日発行、第201頁-第203頁には以下の記載がある。
[図:0001412840000001.jpg]
[図:0001412840000002.jpg]
[図:0001412840000003.jpg]
上記箇所のうち、とりわけ第201頁の第6行から第8行の記載から、
・ピクチャのタイル分割に関して、タイルはピクチャを矩形領域に分割すること、
第202頁の第17行から第203頁の第1行及び図7-6中の囲みの記載から、
・スライスとタイルの関係について、1つのタイルは1つ以上のスライスを含むこと、1つのタイルが1つ以上のスライスを含む例として、タイル1がスライス1とスライス2に分割されており、タイルが複数のスライスに分割することができること、
がいえる。(以下、これらを「先願発明における技術水準」という。)
2 本件発明と先願発明との対比
次に、本件発明と先願発明とを対比する。
(1)構成(a)の「データストリーム10を受信するデコーダ38」は「データストリーム10からそれぞれのスライス26の開始位置情報42」や「それぞれのスライス26の対応するセグメント情報48を復号する」ものであるところ、構成(b)の「データストリーム10は、エンコーダ16によって生成されたものであり、エンコーダ16は、データストリーム10内にピクチャ18を符号化して」いることから、先願発明の「デコーダ38」は、「ピクチャ」すなわち画像をデコードするものである点で、本件発明の構成Aの「ビデオまたは画像処理において画像をデコードする方法」と、「ビデオまたは画像処理において画像をデコードする」点で共通する。
ただし、本件発明の構成Aは画像をデコードする「方法」を特定するのに対して、先願発明は画像をデコードする「デコーダ」という物の発明を特定する事項である点で、一応相違する。
(2)構成(b)に特定されるように、「ピクチャ18をデータストリーム10へと符号化する際に、ピクチャ18が4個のセグメントに細分化され、その1つ1つをセグメント30と呼び、例として各セグメント30が2個のスライス28から構成されて」いる。
ここで、構成(g)の「セグメント/タイル30」という事項にあるように、セグメント30はタイル30とも呼ばれることを踏まえると、先願発明はピクチャ18が4個のタイル30に細分化され、各タイル30が2個のスライスから構成されているといえるから、本件発明の構成Bと「前記画像は、複数のタイルに分割されており、前記複数のタイルの各々は、複数のスライスから構成されている」点で共通する。
ただし、タイルと複数のスライスの関係について、本件発明の構成Bは、「タイルの各々は、複数のスライスに分割されている」のに対して、先願発明は「タイルの各々は、複数のスライスに分割されている」かどうかは特定されていない点で一応相違する。
(3-1)構成(a)に特定されるように「デコーダ38は」「それぞれのスライス26の対応するセグメント情報48を復号」するものであり、構成(c)に特定されるように「データストリーム10は、スライス26のスライスヘッダ34を含み」、構成(c)に特定されるように「スライスヘッダ34は」「セグメント情報48を含」むことから、先願発明において、デコーダ38はデータストリーム10に含まれるスライスヘッダ34からセグメント情報48を復号するものといえる。
ここで、構成(g)に特定されるように、「セグメント情報48」は「tile_id_in_shから構成される」ものであって、「tile_id_in_shは、スライスセグメントが属するタイルのインデックスを規定する」ことから、先願発明の「デコーダ38は」「データストリーム10に含まれるスライスヘッダ34に含まれる」「セグメント情報48を復号」し、「スライスセグメントが属するタイルのインデックスを規定する」「tile_id_in_sh」を取得するものであるということができる。
そうすると、先願発明の「スライスセグメントが属するタイルのインデックスを規定する」「tile_id_in_sh」は「スライスが存在するタイルを示す識別子」ということができるから、先願発明は、本件発明の構成A1と同様に、「ビットストリーム内のスライスのヘッダからタイル識別子を取得することであって、前記タイル識別子は、前記スライスが存在するタイルを示す」という処理を行うものといえる。
(3-2)構成(f)に特定されるように、「TileSliceSegBaseAddrは、ピクチャの開始位置24からセグメントの開始位置44までの符号化経路に沿ったブロック64の数として測定された、ラスタ走査セグメント順序116のセグメントの開始位置44のアドレスを示」す。
ここで、(2)において示したとおり、「セグメント」とはタイルのことであるから、TileSliceSegBaseAddrは、ピクチャの開始位置24から、測定されたタイルの開始位置44までのアドレスであって、ブロック64の数として測定されたアドレスであることがいえる。
(4)構成(a)に特定されるように、「デコーダ38は」「データストリーム10からそれぞれのスライス26の開始位置情報42を復号」するものである。
次に、構成(a)に特定されるように、「開始位置情報42を使用して、スライス26の開始位置40が位置するセグメントの開始位置44に対して、それぞれのスライス26の開始位置40を位置特定」する。
ここで、(2)において示したとおり、「セグメント」とはタイルのことであるから、デコーダ38は、開始位置情報42を使用して、タイルの開始位置44に対するそれぞれのスライスの開始位置40を特定することになる。
すなわち、デコーダは、タイルの開始位置44に対するスライスの開始位置40を特定するために、「開始位置情報42を使用」するといえる。
したがって、「開始位置情報42」とは、タイル内のスライスの場所を特定するためのアドレス情報であるということができる。
さらに、構成(d)に「開始位置情報42が含まれるスライスヘッダ34」と特定されることから、「開始位置情報42」はスライスヘッダ34に含まれており、スライスヘッダ34から得るものといえる。
以上のことから、先願発明の構成(a)、(d)は、本件発明の構成A2の「前記ビットストリーム内の前記スライスの前記ヘッダから第2のアドレスを取得することであって、前記第2のアドレスは、前記タイル内の前記スライスの場所を示す」ことを含むものといえる。
(5)構成(h)から、
(i)ピクチャのコーディングツリーブロッククラスタ走査においてコーディングツリーブロックアドレスを規定するCtbAddrInRsとは、ピクチャの先頭からコーディングツリーブロックの走査を行うことで、所定のコーディングツリーブロックに到達したときのアドレス値といえ、コーディングツリーブロックのピクチャ内の場所を示すものということができる。
また、構成(h)の「CtbAddrInRsは、CtbAddrTsToRsを用いてCtbAddrTsToRs[slice_segment_address+(slice_segment_base_addr_per_tile_enable_flag?TileSliceSegBaseAddr[tileidxTileidMap[tile_id_in_sh]]:0)]に等しく設定されて」いることから、
(ii)CtbAddrInRsは、slice_segment_base_addr_per_tile_enable_flagが1のとき、
・slice_segment_address、及び
・TileSliceSegBaseAddr[tileidxTileidMap[tile_id_in_sh]]
を加算することによって導出した、CtbAddrTsToRsの引数である、符号化経路22に沿って測定されたアドレスを、ブロック64間でラスタ走査ブロック順序に沿って測定されたアドレスに変換することで得られるといえる。
次に、構成(h)の「開始位置情報42の相対スライスアドレスslice_segment_address」について、上記(4)から、開始位置情報42とはタイル内のスライスの場所を特定するためのアドレス情報であることがいえることとあわせると、
(iii)slice_segment_addressはタイル内のスライスの場所を特定するためのアドレス情報である、
といえる。
また、上記(3-1)から、
(iv)tile_id_in_shはスライスが存在するタイルを示す識別子である、ことがいえる。
さらに、上記(3-2)及び上記(iv)とあわせると、
(v)TileSliceSegBaseAddr[tileidxTileidMap[tile_id_in_sh]]は、ピクチャの開始位置24から測定されたタイルの開始位置44のアドレスであって、ブロック64の数として測定されたアドレスであり、スライスが存在するタイルを示す識別子であるtile_id_in_shを用いて導出することがいえる。
そして、上記(i)~(v)を総合すると、
先願発明のピクチャ内のコーディングツリーブロックの場所を示す変数CtbAddrInRsは、
タイル内のスライスの場所を特定するためのアドレス情報slice_segment_addressと、ピクチャの開始位置から測定されたタイルの開始位置のアドレス情報であり、スライスが存在するタイルを示す識別子を用いて導出される、TileSliceSegBaseAddr[tileidxTileidMap[tile_id_in_sh]]を加算したものを、
ブロック64間でラスタ走査ブロック順序に沿って測定されたアドレスに変換したアドレスであるといえる。
これは、ピクチャの開始位置から測定されたスライスの場所を特定するためのアドレス情報に他ならない。
すなわち、先願発明では、タイル識別子とタイル内のスライスのアドレスに基づいて画像内のスライスのアドレスを決定しているものということができ、本件発明の構成A3と同じ構成を具備するといえる。
(6)まとめ
以上の(1)~(5)の対比に基づき、本件発明と先願発明とを比較すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A’ ビデオまたは画像処理において画像をデコードすることについて、
B’ 前記画像は、複数のタイルに分割されており、前記複数のタイルの各々は、複数のスライスから構成されており、
A1 ビットストリーム内のスライスのヘッダからタイル識別子を取得することであって、前記タイル識別子は、前記スライスが存在するタイルを示す、ことと、
A2 前記ビットストリーム内の前記スライスの前記ヘッダから第2のアドレスを取得することであって、前記第2のアドレスは、前記タイル内の前記スライスの場所を示す、ことと、
A3 前記タイル識別子および前記第2のアドレスに基づいて、前記画像内の前記スライスの場所を示す前記スライスの第1のアドレスを決定することと
A’ を含む、デコードすることについての技術。
(相違点1)
ビデオ又は画像処理において画像をデコードすることについて、本件発明は「画像をデコードする方法」という方法の発明であるのに対して、先願発明は「デコーダ」という物の発明である点。
(相違点2)
複数のタイルの各々が複数のスライスから構成されている場合において、タイルと複数のスライスの関係について、本件発明は、「タイルの各々は、複数のスライスに分割されている」のに対して、先願発明は「タイルの各々は、複数のスライスに分割されている」かどうかは特定されていない点。
3 相違点に対する判断
上記相違点について検討する。
相違点1について、先願発明における「デコーダ」も、本件発明と同様に「ビットストリーム内のスライスのヘッダからタイル識別子を取得」し、「前記ビットストリーム内の前記スライスの前記ヘッダから第2のアドレスを取得」し、「前記タイル識別子および前記第2のアドレスに基づいて、前記画像内の前記スライスの場所を示す前記スライスの第1のアドレスを決定する」という処理を行うものであって、本件発明のデコードする処理を実行するものであるから、本件発明と先願発明とはカテゴリ表現が相違するにすぎない。
したがって、相違点1は実質的なものではない。
また、相違点2について、上記に示すHEVCにおける画像の分割に関する先願発明の技術水準を踏まえると、ピクチャをタイル分割した場合に得られるタイルについて、1つのタイルが複数のスライスを含む関係にある場合は、このタイルは複数のスライスに分割されているものということができる。
そうすると、HEVCの修正フレームワークに関する先願発明において、ピクチャ18が4個のタイル30に細分化され、各タイル30が2個のスライスから構成されているというのは、ピクチャがタイルに分割され、さらに各タイルが複数のスライスに分割されているものということができる。
これは本件発明の「画像は、複数のタイルに分割されており、前記複数のタイルの各々は、複数のスライスに分割されて」いることに他ならない。
したがって、相違点2もまた実質的なものではない。
以上のことから、本件発明と先願発明は実質的に同一の発明であるといえる。
4 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和5年3月9日付け審判請求書の「3.3 理由1(特許法第29条の2)について」において、以下の主張を行っている。
「はじめに、先願1は、補正前の請求項1に規定される「前記複数のタイルの各々を複数のスライスに分割すること」を開示していません。その理由は、以下に示すとおりです。
補正前の請求項1は、2つの分割すること、すなわち、(1)「画像を複数のタイルに分割すること」、および、(2)「前記複数のタイルの各々を複数のスライスに分割すること」を規定しています。先願1は、画像を複数のタイルに分割することを記載しています。例えば、先願1の翻訳文の段落[0016]には、「エンコーダ16は、ピクチャ18をデータストリーム10へと符号化する際に、やはりピクチャ18のセグメント30への細分化に従う」と記載されています(強調のため下線を追加しました)。
しかしながら、先願1は、複数のタイルの各々を複数のスライスに分割することを開示していません。
先願1は、補正前の請求項1に規定されるように「複数のタイルの各々を複数のスライスに分割することを開示する代わりに、画像を複数のスライスに細分割することを開示しています。例えば、先願1の翻訳文の段落[0017]には、「エンコーダ16は、ピクチャ18をスライス28単位でデータストリーム10内に符号化する」と記載されています(強調のため下線を追加しました)。このように、先願1は、補正前の請求項1に規定されるように、画像を複数のタイルに分割し、その後、複数のタイルの各々を複数のスライスに分割することではなく、画像(ピクチャ)を複数の別々の方法で分割することに完全に依拠した分割システムを開示しています。
先願1に記載の分割方法と補正前の請求項1に規定される分割方法との相違点は、複数のタイルと複数のスライスとの間の重複が異なるという技術的な効果をもたらします。例えば、先願1の翻訳文の段落[0016]には、「一方がスライス28で他方がセグメント30の関係が考慮される限り、スライス28は、1つまたは複数のセグメント30を完全にカバーするか、または単に1個のセグメント30内のみに存在する」と記載されています(強調のため下線を追加しました)。また、先願1の翻訳文の段落[0033]では、セグメントが「1つまたは複数のタイル」として定義されています。仮に、補正前の請求項1に規定されるように、先願1の複数のタイルの各々が複数のスライスに分割されるとすると、1つのスライスが複数のセグメントを「完全にカバーする」ことは不可能になってしまいます。
さらに、拒絶査定では、先願1の翻訳文の段落[0038]が引用されています。先願1の翻訳文の段落[0038]には、「図3は、・・・タイル88のうちの1個のタイル、すなわち、・・・2個のスライス26を示す」と記載されています。しかしながら、先願1は、この結果が、「前記複数のタイルの各々を複数のスライスに分割すること」からもたらされることを開示していません。その代わりに、先願1の2個のスライス26は、そのタイル内にあります。その理由は、別個の分割手続きがそのタイル内にあるいくつかのスライス26をもたらすことがあるピクチャ全体に対して行われるからです。
従って、先願1は、補正前の請求項1に係る発明を開示していないというべきです。
少なくとも以上の理由から、補正前の請求項1およびこれに従属する請求項に対する先願1に基づく拒絶理由は解消されるべきです。
(中略)
以上の理由から、理由1(特許法第29条の2)は解消されるべきです。」
上記主張について検討する。
上記3の相違点2についての検討で示したように、上記1に示すHEVCにおける画像の分割に関する先願発明の技術水準を踏まえると、ピクチャをタイル分割した場合に得られるタイルについて、1つのタイルが複数のスライスを含む関係にある場合は、このタイルは複数のスライスに分割されているものということができる
そうすると、HEVCの修正フレームワークに関する先願発明において、ピクチャ18が4個のタイル30に細分化され、各タイル30が2個のスライスから構成されているといえる。
これは、上記主張のように「別個の分割手続きがそのタイル内にあるいくつかのスライス26をもたらすことがあるピクチャ全体に対して行われる」のではなく、ピクチャがタイルに分割され、さらに各タイルが複数のスライスに分割された結果によるものである。
そして、このことは、本件発明の「画像は、複数のタイルに分割されており、前記複数のタイルの各々は、複数のスライスに分割されて」いることに他ならない。
また、先願発明は構成(b)のとおり「スライス28は」「1個のセグメント内にのみ存在する」上に「各セグメント30が2個のスライス28から構成されて」いるのであって、上記主張における「スライス28は、1つまたは複数のセグメント30を完全にカバーする」ことは、先願発明とは異なる実施形態の説明にすぎない。
以上のとおり、審判請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-004080