2021-001513
電池
- 審判番号
- 2021-001513
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-147381外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年02月03日
- 審決日
- 2022年03月29日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】奥田 誠司
- 分類
- P18 .121-Z (H01M) / P18 .571-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月27日(優先権主張 平成27年8月18日)に出願したものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
第2 補正の適否
令和3年2月3日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して本件補正前の請求項1ないし17のうち、請求項12ないし17を削除するものであり、請求項1ないし11については本件補正の前後で変更はない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものであり、新規事項を追加するものではないから、適法になされたものである。
第3 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和3年2月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】第1部分と、第2部分と、を備え、続きを表示(全11行)前記第1部分は、第1の正極層と、第1の負極層と、前記第1の正極層と前記第1の負極層との間に位置する第1の固体電解質層と、を含み、前記第2部分は、第2の正極層と、第2の負極層と、前記第2の正極層と前記第2の負極層との間に位置する第2の固体電解質層と、を含み、前記第1部分と前記第2部分とは、互いに、接しており、前記第2部分は、前記第1部分よりも鋭く曲げられた状態で、配置されており、前記第1の正極層における結着剤の濃度をCp1とし、前記第2の正極層における結着剤の濃度をCp2とし、前記第1の固体電解質層における結着剤の濃度をCe1とし、前記第2の固体電解質層における結着剤の濃度をCe2とし、前記第1の負極層における結着剤の濃度をCn1とし、前記第2の負極層における結着剤の濃度をCn2とすると、Cp1<Cp2、かつ、Ce1<Ce2、かつ、Cn1<Cn2、を満たす、電池。」
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりである。
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)●理由(特許法第29条第2項)について・請求項 1、2、6ないし8続きを表示(全14行)・引用文献等 1、2・請求項 3ないし5、9ないし11・引用文献等 1ないし3・請求項 12ないし17・引用文献等 1ないし4<引用文献等一覧>1.特開2015-103433号公報2.特開2011-192506号公報3.特開2003-045474号公報4.特開2008-097940号公報(周知技術を示す文献)」
第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2015-103433号公報(平成27年6月4日公開、以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
ア 「【0007】・・・(中略)・・・特に、捲回型全固体電池において積層体10のRが小さい部分(例えば、捲き始めの部分)における固体電解質層のバインダー濃度が、Rが大きい部分(例えば、捲き終わりの部分)におけるバインダー濃度よりも高くなるようにするとよい。或いは、積層体を折りたたみ式に捲回する場合は、積層体10のRが小さい部分(折りたたみによる曲部)における固体電解質層のバインダー濃度が、Rの大きい部分(折りたたまれていない平面部)におけるバインダー濃度よりも高くなるようにするとよい。」
イ 「【0011】図2に積層体10の層構成を概略的に示す。図2は、図1(A)におけるII-II矢視断面図である。図2に示すように積層体10は、固体電解質層1の一方側の表面に正極2(正極合材層2a及び正極集電体2b)が積層され、他方側の表面に負極3(負極合材層3a及び負極集電体3b)が積層されている。【0012】正極2は、全固体電池の正極として機能し得るものであればよく、その形態は特に限定されるものではない。正極2は公知の方法により容易に作製可能である。例えば、質量比で、正極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=45:45:9:1となるように配合した正極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを正極集電体2bの表面に塗布し乾燥させることによって作製可能である。正極2に含有される正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウムを用いることができ、電解質としては、例えば、質量比で、Li2S:P2S5=50:50~100:0となるようにLi2S及びP2S5を混合して作製した固体電解質等を用いることができる。また、導電助剤としては、例えば、アセチレンブラックを用いることができ、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることができる。正極2の厚さは、例えば30μmとすることができる。【0013】負極3は、全固体電池の負極として機能し得るものであればよく、その形態は特に限定されるものではない。負極3は公知の方法により容易に作製可能である。例えば、質量比で、負極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=47:47:5:1となるように配合した負極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを負極集電体3bの表面に塗布し乾燥させることによって作製可能である。負極3に含有される負極活物質としては、例えば、グラファイトカーボンを用いることができ、電解質、導電助剤、バインダーとしては、正極2にて用いられるものと同様のものを用いることができる。負極3の厚さは、例えば35μmとすることができる。【0014】固体電解質層1は、全固体電池に適用可能な公知の固体電解質とともにバインダーを含む層である。固体電解質層1に含まれる固体電解質やバインダーは正極2や負極3で使用可能なものと同様のものとすることができる。本発明においては、固体電解質層1の捲回方向におけるバインダー濃度が異なることに特徴がある。」
ウ 「【0016】このことに鑑み、本発明では、端部X側において、固体電解質層1のバインダー濃度を端部Y側よりも高くし、固体電解質層1の柔軟性を確保するものとする。これにより、全固体電池100とした場合に端部X側における固体電解質層1の割れを防ぐことができ、内部短絡を防止できる。一方、Rの大きい端部Y側においては、バインダーの濃度が小さいため、内部抵抗を低減することができ、電池性能(特に出力特性、入力特性)を向上させることができる。【0017】捲回方向にバインダー濃度が異なる固体電解質層1は、例えば、以下の通りにして形成可能である。すなわち、固体電解質を含むスラリーとバインダー溶液とを混練機に供給し、混練機からコーターに、固体電解質及びバインダーを含むスラリーを供給して、上記した正極2又は負極3の表面に塗工し、その後乾燥させることで、固体電解質層1を電極表面に形成する。ここで、コーターでの塗工中に、混練機へ供給するバインダー溶液の量を変化させる(或いは、供給するバインダー溶液におけるバインダー濃度を変化させる)ことで、コーターから塗工されるスラリーに含まれるバインダーの濃度を変化させることができる。例えば、捲回方向に沿ってスラリーを塗工する場合、一端から他端に向かってスラリーに含まれるバインダーの濃度を徐々に増加或いは減少させることで、捲回方向にバインダー濃度が増加或いは減少してなる固体電解質層1を容易に形成可能である。」
エ 「【0019】以上のようにして、正極2又は負極3の表面に固体電解質層1を形成した後、固体電解質層1の表面に負極3又は正極2を貼り合わせて任意にプレスすることにより、積層体10を容易に作製可能である。その後、積層体10を帯状に切り取り(或いは、例えば正極集電体2bや負極集電体3bとして帯状のものを用いた場合は、積層体10は自ずと帯状となる)、固体電解質層1のバインダー濃度が高い部分が捲回後におけるRの小さな部分に相当するように捲回することで、捲回型全固体電池を製造することができる。【0020】尚、図1では、積層体10を略円柱状に捲回してなる全固体電池100において、捲回中心となる始端側(端部X側)における固体電解質層1のバインダー濃度が、捲回終端側(端部Y側)における濃度よりも高くなる形態について説明したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。積層体10を折りたたむようにして捲回して(或いは積層体10を平板に巻き付けるようにして)全固体電池を得る場合は、折りたたみの曲部(或いは平板の端部)におけるRが小さくなるため、この部分における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度を、平面部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度よりも高くなるようにするとよい。この場合、積層体10は、固体電解質層1に含まれるバインダー濃度が、捲回方向において一定の間隔で変化する(捲回方向においてバインダー濃度が濃い部分と薄い部分とが繰り返される)ように調整される。」
オ 「図2[図:0001384743000001.jpg]」
(2)上記「(1)アないしオ」によれば、引用文献1には次の技術事項が記載されている。
ア 段落【0011】には「図2に示すように積層体10は、固体電解質層1の一方側の表面に正極2(正極合材層2a及び正極集電体2b)が積層され、他方側の表面に負極3(負極合材層3a及び負極集電体3b)が積層されている。」と記載され、図2から、正極合材層2a及び正極集電体2bからなる正極2、及び、負極合材層3a及び負極集電体3bからなる負極3が見てとれ、さらに、積層体10は、固体電解質層1の一方側の表面に正極合材層2a及び正極集電体2bが順に積層され、他方側の表面に負極合材層3a及び負極集電体3b順に積層された構造であることが見てとれる。
イ 段落【0012】には「正極2は」「作製可能である。質量比で、正極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=45:45:9:1となるように配合した正極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを正極集電体2bの表面に塗布し乾燥させることによって作製可能である。」及び「正極2に含有される」「電解質としては、例えば、質量比で、Li2S:P2S5=50:50~100:0となるようにLi2S及びP2S5を混合して作製した固体電解質等を用いることができる。」と記載されている。
そして、上記アの「正極合材層2a及び正極集電体2bからなる正極2」を鑑みれば、「質量比で、正極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=45:45:9:1となるように配合した正極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを正極集電体2bの表面に塗布し乾燥させることによって」、「正極合材層2a及び正極集電体2bからなる正極2」を作製すること、並びに「電解質としては」「質量比で、Li2S:P2S5=50:50~100:0となるようにLi2S及びP2S5を混合して作製した固体電解質」を用いることが記載されている。
ウ 段落【0013】には「負極3」「は作製可能である。質量比で、負極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=47:47:5:1となるように配合した負極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを負極集電体3bの表面に塗布し乾燥させることによって作製可能である。」及び「負極3に含有される」「電解質」「としては、正極2にて用いられるものと同様のものを用いることができる。」と記載されている。
そして、上記アの「負極合材層3a及び負極集電体3bからなる負極3」を鑑みれば、「質量比で、負極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=47:47:5:1となるように配合した負極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを負極集電体3bの表面に塗布し乾燥させることによって」、「負極合材層3a及び負極集電体3bからなる負極3」を作製すること、並びに「負極3に含有される」「電解質」「としては、正極2にて用いられるものと同様のものを用いる」ことが記載されている。
エ 段落【0014】には「固体電解質層1に含まれる固体電解質」「は正極2や負極3で使用可能なものと同様のものとすることができる。」と記載されている。
オ 段落【0017】には「固体電解質を含むスラリーとバインダー溶液とを混練機に供給し、混練機からコーターに、固体電解質及びバインダーを含むスラリーを供給して、上記した正極2又は負極3の表面に塗工し、その後乾燥させることで、固体電解質層1を電極表面に形成する。」と記載され、「ここで、コーターでの塗工中に、混練機へ供給するバインダー溶液の量を変化させる」「ことで、コーターから塗工されるスラリーに含まれるバインダーの濃度を変化させる」と記載されている。
よって、「固体電解質を含むスラリーとバインダー溶液とを混練機に供給し、混練機からコーターに、固体電解質及びバインダーを含むスラリーを供給して、上記した正極2又は負極3の表面に塗工し」、その際、「コーターでの塗工中に、混練機へ供給するバインダー溶液の量を変化させる」「ことで、コーターから塗工されるスラリーに含まれるバインダーの濃度を変化させる」ようにし、「その後乾燥させることで、固体電解質層1を」形成することが記載されている。
カ 段落【0019】には「正極2又は負極3の表面に固体電解質層1を形成した後、固体電解質層1の表面に負極3又は正極2を貼り合わせて任意にプレスすることにより、積層体10を」「作製可能である」ことが記載されている。
キ 段落【0019】には「積層体10を帯状に切り取り」と記載され、段落【0020】には「積層体10を折りたたむようにして捲回して」「全固体電池を得る場合は、折りたたみの曲部」「におけるRが小さくなるため、この部分における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度を、平面部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度よりも高くなるようにする」、「この場合、積層体10は」「捲回方向においてバインダー濃度が濃い部分と薄い部分とが繰り返される」「ように調整される。」と記載されている。
さらに、段落【0007】には「積層体を折りたたみ式に捲回する場合は、積層体10のRが小さい部分(折りたたみによる曲部)における固体電解質層のバインダー濃度が、Rの大きい部分(折りたたまれていない平面部)におけるバインダー濃度よりも高くなるようにする」と記載され、「折りたたみによる曲部」は「Rが小さい部分」であり、「折りたたまれていない平面部」は「Rの大きい部分」であると認められる。
よって、「積層体10を帯状に切り取り」、「折りたたむようにして捲回して」得られる、「積層体10のRが小さい」「折りたたみの曲部」「における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度」が、「Rの大きい」「平面部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度よりも高くなるように」され、「捲回方向においてバインダー濃度が濃い部分と薄い部分とが繰り返され」た「全固体電池」が記載されている。
(3)上記「(2)アないしキ」によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「質量比で、正極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=45:45:9:1となるように配合した正極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを正極集電体2bの表面に塗布し乾燥させることによって、正極合材層2a及び正極集電体2bからなる正極2を作製し、ここで、正極2に含有される電解質としては、質量比でLi2S:P2S5=50:50~100:0となるようにLi2S及びP2S5を混合して作製した固体電解質を用い、質量比で、負極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=47:47:5:1となるように配合した負極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを負極集電体3bの表面に塗布し乾燥させることによって、負極合材層3a及び負極集電体3bからなる負極3を作製し、ここで、負極3に含有される電解質としては、正極2にて用いられるものと同様のものを用い、続きを表示(全11行)固体電解質を含むスラリーとバインダー溶液とを混練機に供給し、混練機からコーターに、固体電解質及びバインダーを含むスラリーを供給して、上記した正極2又は負極3の表面に塗工し、その際、コーターでの塗工中に混練機へ供給するバインダー溶液の量を変化させることで、コーターから塗工されるスラリーに含まれるバインダーの濃度を変化させ、その後乾燥させることで、固体電解質層1を形成し、ここで、固体電解質層1に含まれる固体電解質は正極2や負極3で使用可能なものと同様のものとし、正極2又は負極3の表面に固体電解質層1を形成した後、固体電解質層1の表面に負極3又は正極2を貼り合わせて任意にプレスすることにより、積層体10を作製し、積層体10は、固体電解質層1の一方側の表面に正極合材層2a及び正極集電体2bが順に積層され、他方側の表面に負極合材層3a及び負極集電体3b順に積層された構造であり、その後、積層体10を帯状に切り取り、折りたたむようにして捲回して得られる、積層体10のRが小さい折りたたみの曲部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度が、Rの大きい平面部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度よりも高くなるようにされ、捲回方向においてバインダー濃度が濃い部分と薄い部分とが繰り返された全固体電池。」
2 引用文献2
(1)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2011-192506号公報(平成23年9月29日公開、以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0011】以上のように本発明の非水系二次電池用電極板は、短冊状の電極板の電極合剤層に含まれる結着材の含有量を電極群として巻回する巻始め側を多く、且つ、巻終り側を少なくすることで、曲率の大きな巻回型の非水系二次電池の電極板の巻始め側の電極合剤層が集電体より剥れないよう密着強度を持たせるよう結着材の含有量を他の電極板の電極合剤層中の結着材の含有量より多めに構成し、電極板の全面において集電体から電極合剤層が脱落することを防ぎ、かつ曲率が小さい電極板の巻終り側の電極合剤層の結着材の含有量を少なく構成することで、高容量で且つ、電池寿命の長い非水系二次電池を提供することができる。」
イ 「【0013】
本発明の第1の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した正極板または少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合材層を形成した負極板からなる非水系二次電池用電極板であって、電極板の電極合剤層に含まれる結着材の含有量を電極群として巻回する巻始め側を多く、且つ、巻終り側を少なくすることにより、曲率の大きな電極板の巻始め側および曲率の小さな電極板の巻終り側の電極合剤層の集電体への密着強度をそれぞれの曲率に応じて個別に最適化が可能となる。
(2)上記「(1)ア及びイ」によれば、引用文献2には次の技術事項が記載されている。
段落【0013】には「電極板の電極合剤層に含まれる結着材の含有量を電極群として巻回する巻始め側を多く、且つ、巻終り側を少なくすることにより、曲率の大きな電極板の巻始め側および曲率の小さな電極板の巻終り側の電極合剤層の集電体への密着強度をそれぞれの曲率に応じて個別に最適化が可能となる」と記載され、段落【0011】には「電極板の全面において集電体から電極合剤層が脱落することを防ぎ」「高容量で且つ、電池寿命の長い非水系二次電池を提供することができる。」と記載されている。
ここで、段落【0013】には「曲率の大きな電極板の巻始め側および曲率の小さな電極板の巻終り側」と記載されているから、「巻始め側」は「曲率が大きな」部分であり、「巻終り側」は「曲率の小さな」部分である。
また、段落【0013】には「正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した正極板」及び「負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合材層を形成した負極板」と記載されているから、「正極板」は「正極集電体」の上に「正極合剤層」が形成されたものであり、「負極板」は「負極集電体」の上に「負極合剤層」が形成されたものである。
そして、段落【0013】には「少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した」及び「少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合材層を形成した」と記載されているから、「正極合剤層」は「活物質」、「導電材」及び「結着材」を含むものであり、「負極合剤層」は「活物質」、「導電材」及び「結着材」を含むものである。
さらに、段落【0013】には「正極板または」「負極板からなる非水系二次電池用電極板であって、電極板の電極合剤層に含まれる結着材の含有量を電極群として巻回する巻始め側を多く、且つ、巻終り側を少なくする」と記載されている。してみると、「電極板」は「正極板」及び「負極板」からなるものであるから、「電極合剤層」は「正極合剤層」または「負極合剤層」からなるものであり、「集電体」は「正極集電体」または「負極集電体」からなるものである。
よって、引用文献2には、正極集電体の上に活物質、導電材及び結着材を含む正極合剤層が形成された正極板、または、負極集電体の上に活物質、導電材及び結着材を含む負極合剤層が形成された負極板からなる電極板において、正極合剤層または負極合剤層からなる電極合剤層に含まれる結着材の含有量を、電極群として巻回する曲率が大きい巻始め側を多く、且つ、曲率が小さい巻終り側を少なくすることにより、電極板の全面において正極集電体または負極集電体からなる集電体から電極合剤層が脱落することを防ぎ、高容量で且つ、電池寿命の長い非水系二次電池を提供できることが記載されている。
第6 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「バインダー」は、本願発明の「結着剤」に相当する。
(2)引用発明の「捲回方向においてバインダー濃度が濃い部分と薄い部分とが繰り返された」構造は、「固体電解質層1に含まれるバインダー濃度が」「高くなるようにされ」た「折りたたみの曲部」と「平面部」とが繰り返された構造である。よって、「積層体10」は「折りたたみの曲部」と「平面部」とが繰り返されたものであるから、「折りたたみの曲部」と「平面部」とは互いに接するものである。
また、引用発明の「折りたたみの曲部」は、「Rが小さい」折りたたまれた「曲部」であるから、「平面部」よりも鋭く曲げられた形状であると認められる。
してみると、引用発明の「折りたたみの曲部」及び「平面部」は、本願発明の「第2部分」及び「第1部分」に相当する。また、引用発明の「積層体10を帯状に切り取り、折りたたむようにして捲回して得られる、積層体10のRが小さい折りたたみの曲部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度が、Rの大きい平面部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度よりも高くなるようにされ、捲回方向においてバインダー濃度が濃い部分と薄い部分とが繰り返された」構造は、本願発明の「前記第1部分と前記第2部分とは、互いに、接しており、前記第2部分は、前記第1部分よりも鋭く曲げられた状態で、配置され」ることに相当する。
(3)引用発明の「正極合材層2a」は「正極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=45:45:9:1となるように配合した正極合剤をた溶媒に入れてスラリーとし、これを正極集電体2bの表面に塗布し乾燥させ」たものであるから、「正極活物質」及び「バインダー」を含むものである。また、引用発明の「負極合材層3a」は「質量比で、負極活物質:電解質:導電助剤:バインダー=47:47:5:1となるように配合した負極合剤を溶媒に入れてスラリーとし、これを負極集電体3bの表面に塗布し乾燥させ」たものであるから、「負極活物質」及び「バインダー」を含むものである。
一方、本願明細書の段落【0021】には「正極合剤層(正極層)は、正極活物質と、無機固体電解質と、結着剤とを含みうる。」及び「負極合剤層(負極層)は、負極活物質と、無機固体電解質と、結着剤とを含みうる。」と記載されているから、本願発明の「正極層」は「正極活物質」及び「結着剤」とを含むものであり、「負極層」は「負極活物質」及び「結着剤」を含むものである。
よって、引用発明の「正極合材層2a」及び「負極合材層2b」は、本願発明の「正極層」及び「負極層」に相当する。
(4)引用発明は「積層体10は、固体電解質層1の一方側の表面に正極合材層2a及び正極集電体2bが順に積層され、他方側の表面に負極合材層3a及び負極集電体3b順に積層された構造であ」るから、「積層体10」は、「正極合材層2a」、「負極合材層3a」、並びに、「正極合材層2a」と「負極合材層3a」との間に位置する「固体電解質層1」を含むものである。よって、「捲回」された「積層体10」の「折りたたみの曲部」及び「平面部」の双方は、「正極合材層2a」、「負極合材層3a」、並びに、「正極合材層2a」と「負極合材層3a」との間に位置する「固体電解質層1」を含むものである。
してみると、引用発明の「平面部」の「正極合材層2a」、「負極合材層3a」、並びに、「正極合材層2a」と「負極合材層3a」との間に位置する「固体電解質層1」は、それぞれ本願発明の「第1の正極層」、「第1の負極層」、並びに、「前記第1の正極層と前記第1の負極層との間に位置する第1の固体電解質層」に相当し、引用発明の「折りたたみの曲部」の「正極合材層2a」、「負極合材層3a」、並びに、「正極合材層2a」と「負極合材層3a」との間に位置する「固体電解質層1」は、それぞれ本願発明の「第2の正極層」、「第2の負極層」、並びに、「前記第2の正極層と前記第2の負極層との間に位置する第2の固体電解質層」に相当する。
そして、引用発明の「積層体10は、固体電解質層1の一方側の表面に正極合材層2a及び正極集電体2bが順に積層され、他方側の表面に負極合材層3a及び負極集電体3b順に積層された構造であり、その後、積層体10を帯状に切り取り、折りたたむようにして捲回して得られる、積層体10のRが小さい折りたたみの曲部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度が、Rの大きい平面部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度よりも高くなるようにされ、捲回方向においてバインダー濃度が濃い部分と薄い部分とが繰り返された」ことは、本願発明の「前記第1部分は、第1の正極層と、第1の負極層と、前記第1の正極層と前記第1の負極層との間に位置する第1の固体電解質層と、を含み、前記第2部分は、第2の正極層と、第2の負極層と、前記第2の正極層と前記第2の負極層との間に位置する第2の固体電解質層と、を含」むことに相当する。
(5)引用発明の「積層体10のRが小さい折りたたみの曲部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度が、Rの大きい平面部における固体電解質層1に含まれるバインダー濃度よりも高」いことは、本願発明の「前記第1の固体電解質層における結着剤の濃度をCe1とし、前記第2の固体電解質層における結着剤の濃度をCe2と」すると、「Ce1<Ce2」「を満たす」ことに相当する。
しかし、引用発明は「正極合材層2a」及び「負極合材層3a」の「バインダー」の濃度は一定であり、本願発明の「前記第1の正極層における結着剤の濃度をCp1とし、前記第2の正極層における結着剤の濃度をCp2とし、」「前記第1の負極層における結着剤の濃度をCn1とし、前記第2の負極層における結着剤の濃度をCn2とすると、Cp1<Cp2」「かつ、Cn1<Cn2、を満たす」構成を備えない点で相違する。
2 上記1によれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「第1部分と、第2部分と、を備え、前記第1部分は、第1の正極層と、第1の負極層と、前記第1の正極層と前記第1の負極層との間に位置する第1の固体電解質層と、を含み、前記第2部分は、第2の正極層と、第2の負極層と、前記第2の正極層と前記第2の負極層との間に位置する第2の固体電解質層と、を含み、前記第1部分と前記第2部分とは、互いに、接しており、前記第2部分は、前記第1部分よりも鋭く曲げられた状態で、配置されており、前記第1の固体電解質層における結着剤の濃度をCe1とし、前記第2の固体電解質層における結着剤の濃度をCe2とすると、Ce1<Ce2、を満たす、電池。」
(相違点)
本願発明は「前記第1の正極層における結着剤の濃度をCp1とし、前記第2の正極層における結着剤の濃度をCp2とし、」「前記第1の負極層における結着剤の濃度をCn1とし、前記第2の負極層における結着剤の濃度をCn2とすると、Cp1<Cp2」「かつ、Cn1<Cn2、を満たす」のに対し、引用発明はそのような構成を備えない点。
第7 判断
1 相違点について
引用発明は「正極合材層2a及び正極集電体2bからなる正極2」と「負極合材層3a及び負極集電体3bからなる負極3」を有するものであり、また、「電池」の発明であるから、「正極合材層2a」及び「負極合材層3a」が「正極集電体2b」及び「負極集電体3b」から脱落しないこと、及び、高容量で長寿命であることが望ましいことは、当業者にとって明らかである。さらに、引用発明は、「積層体10」の「Rが小さい」部分及び「Rの大きい」部分がそれぞれ「正極合材層2a」及び「負極合材層3a」を備えるものである。
そして、引用文献2に記載された技術事項は電極板の全面において正極集電体または負極集電体からなる集電体から電極合剤層が脱落することを防ぐこと、並びに、高容量及び長い電池寿命を実現することを課題とするものであり、また、曲率が大きい部分及び曲率が小さい部分が正極合剤層又は負極合剤層を備える点で引用発明と共通するから、引用発明において上記課題を解決するために、引用文献2に記載された技術事項を適用し、引用発明を「正極2」の「正極合材層2a」及び「負極3」の「負極合材層3a」に含まれる「バインダー」の含有量が、曲率が大きい「Rが小さい折りたたみ曲部」で大きく、曲率が小さい「Rの大きい平面部」で小さいものとして、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
この点について審判請求人は審判請求書において、本願発明は「正極層および負極層の活物質粒子と固体電解質層の固体電解質粒子との間に良好な界面を形成できる」という、予測し得ない効果を奏する点(以下、「主張1」という。)、及び、引用文献1の課題は、全固体電池における「固体電解質層の割れの発生」であるのに対し、引用文献2の課題は、非水系二次電池における「集電体からの電極合材層の脱落」であるから、引用文献1と引用文献2との間で課題並びに作用・機能は共通しない点(以下、「主張2」という。)で、引用文献1に引用文献2を適用して当業者が本願発明に導かれる動機付けはない旨主張している。
まず、主張1について検討する。引用文献2に記載された技術事項を引用発明に適用し「平面部」における「正極合材層2a」及び「負極合材層3a」の「バインダー」の含有量を下げれば、「正極合材層2a」及び「負極合材層3a」における「バインダー」以外の「正極活物質」又は「負極活物質」並びに「導電助材」、「電解質」の濃度が大きくなることは、技術常識から明らかであり、「正極合材層2a」及び「負極合材層3a」における「正極活物質」及び「負極活物質」並びに「電解質」の濃度が大きくなることにより、「正極活物質」及び「負極活物質」と「電解質」との界面が増えることは当業者が予測し得る事項でありる。そして、引用発明において「正極活物質」及び「負極活物質」と「電解質」との界面が増えることは、出願人が主張する「正極層および負極層の活物質粒子と固体電解質層の固体電解質粒子との間に良好な界面を形成できる」ことに他ならないから、主張1に係る効果は引用発明及び引用文献2に記載された技術事項から予測し得た範囲内のものである。よって、主張1を採用することはできない。
次に、主張2について検討する。上記において相違点について検討したとおり、引用発明においても「正極合材層2a」及び「負極合材層3a」が「正極集電体2b」及び「負極集電体3b」から脱落しないことが望ましいことは当業者にとって明らかである。また、当該課題を解決することは、引用文献1に記載された課題である「固体電解質層1」の割れの発生を抑制することと両立し得るものであり、引用発明において引用文献2に記載された技術事項を適用することに阻害要因があるとも認められない。よって、当該課題を解決する引用文献2に記載された技術事項を引用発明に適用する動機付けはあるというべきであるから、主張2を採用することはできない。
以上のとおりであるから、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された技術事項を適用し、本願発明の構成に想到することは、当業者が容易になし得たことである。
第8 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-001513