審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2024-020129

負極用活物質層及びその製造方法、蓄電デバイス負極用電極合剤ペースト、蓄電デバイス用負極、ならびに蓄電デバイス

審判番号
2024-020129
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-551454
請求日
2024年12月16日
審決日
2026年04月23日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】UBE株式会社
  • 【請求人代理人】伊藤 克博
審判長/審判官
  • 審判長 涌井 智則
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 ▲吉▼澤 雅博
分類
P18 .121-WZ (H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-551454「負極用活物質層及びその製造方法、蓄電デバイス負極用電極合剤ペースト、蓄電デバイス用負極、ならびに蓄電デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日国際公開、WO2021/066101〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)10月1日(優先権主張 令和1年10月2日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。 令和5年 4月25日付け:拒絶理由通知 同年 7月 7日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月26日付け:拒絶理由通知(最後) 同年11月29日 :意見書、手続補正書の提出 令和6年 2月26日付け:拒絶理由通知 同年 6月26日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月17日付け:拒絶査定 同年12月16日 :審判請求書の提出 令和7年 9月11日付け:拒絶理由通知(当審) 同年11月11日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~7に係る発明は、令和7年11月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「カーボン粒子、 シリコンを成分として含み、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なシリコン系粒子、および 主鎖にイミド結合を有する有機高分子であるポリイミド系バインダー を含有する負極活物質層の製造方法であって、 前記カーボン粒子、前記シリコン系粒子、および前記ポリイミド系バインダーを形成するための前駆体を含み、この前駆体の固形分質量が全固形分に対して0.5質量%以上10質量%未満である負極用電極合剤ペーストを、温度80~300℃の範囲で加熱処理し、 多孔度が40%より大きく70%以下である負極活物質層を製造する、 負極活物質層の製造方法 (但し、 前記ポリイミド系バインダーを形成するための前駆体は、下記化学式(I)で表される繰り返し単位を含むポリアミック酸である。 【化1】 [図:0001436848000001.jpg] (式中、Aは、芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び脂環式テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、Bは、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び脂環式ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上である。但し、Bは少なくとも脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基を含む。))。」 第3 令和7年9月11日付け拒絶理由通知の概要 本願の請求項1に対して令和7年9月11日付けで当審が通知した拒絶理由(進歩性)の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~5に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2015/046304号 2.特開2017-10742号公報 3.特開2014-63671号公報 4.特開2017-22145号公報 5.特開2000-173594号公報 第4 引用文献1の記載及び引用発明 1 当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(国際公開第2015/046304号)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 「[0015][態様1:蓄電デバイス用ポリイミドバインダー] 本発明の蓄電デバイス用、特にリチウム二次電池用ポリイミドバインダーは、下記一般式(I)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸の水溶液をイミド化反応させて得られるポリイミドバインダーであって、該ポリイミドの引張弾性率が1.5GPa以上2.7GPa以下であることを特徴とする。 前記ポリアミック酸の水溶液は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られる下記一般式(I)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸(ポリイミド前駆体)が水に溶解したものである。 [0016][化2] [図:0001436848000002.jpg] [0017](式中、Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基から選ばれる一種以上であり、 Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基から選ばれる一種以上である。 但し、前記繰返し単位総量中のBの55モル以上が、分子量500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。)」 「[0019] 本発明で用いられるポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を製造し、このポリアミック酸を加熱、又は触媒を用いて脱水、環化(イミド化)反応を行うことにより製造することができる。本発明で用いられるポリイミドは、好ましくは、水を反応溶媒として、イミダゾール類の存在下に、テトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物)とジアミン成分とを反応させて、ポリアミック酸の水溶液を製造し、このポリアミック酸の水溶液を加熱して、イミド化反応を行うことにより製造することができる。 以下、本発明で用いられるポリアミック酸、ポリイミド等について説明する。」 「[0036]〔ポリアミック酸の水溶液の製造〕 前述の通り、水を反応溶媒として、イミダゾール類の存在下に、好ましくは置換基として2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類の存在下に、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることによって、ポリアミック酸の水溶液(以下、「ポリアミック酸水溶液組成物」ともいう)を極めて簡便に、直接的に製造することができる。」 「[0039]〔ポリイミドバインダーの製造〕 前記のポリアミック酸水溶液組成物は、通常は加熱処理によって水を除去するとともにイミド化(脱水閉環)することによって好適に蓄電デバイス用ポリイミドバインダーを得ることができる。」 「[0044]〔電極シートの製造〕 電極シートは、負極活物質又は正極活物質とポリアミック酸水溶液組成物を混合して電極合剤ペーストを調製し、アルミニウム箔や銅箔等の導電性の集電体上に流延又は塗布し、加熱処理して溶媒を除去して、集電体上に活物質層を形成すると共に、イミド化反応することにより好適に製造することができる。 ・・・(中略)・・・。 [0045] 次に、充放電により可逆的にリチウムイオンを吸蔵及び放出できる電極活物質を用いて得られる電極合剤ペーストを、アルミニウム箔や銅箔等の導電性の集電体上に流延又は塗布して、120~200℃、より好ましくは150~190℃、特に好ましくは160~180℃の温度範囲で加熱処理して、溶媒を除去するとともにイミド化反応することにより電極シートを得ることができる。」 「[0083]〔蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物の作製〕 攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これに1,6-ヘキサメチレンジアミンの20.44g(0.176モル)と、1,2-ジメチルイミダゾ-ルの42.28g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液に4,4’-オキシジフタル酸二無水物の54.56g(0.176モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.4質量%、溶液粘度0.5Pa・sec、対数粘度0.49の表1に記載のバインダーNo.A-1~A-4の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物を得た。 バインダーNo.C-1、C-2については、表1に記載の条件で蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物を得た。 また、バインダーNo.C-3~C-4については、溶媒として1-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いたこと、1,2-ジメチルイミダゾ-ルは使用しなかったこと以外は上記と同様に蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物を得た。バインダーNo.C-5は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の1-メチル-2-ピロリドン溶液を使用して作製した。」 「[0086][表1] [図:0001436848000003.jpg] 」 「[0088]実施例1~8、比較例1~6 〔リチウムイオン二次電池の作製〕 LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2;93質量%、アセチレンブラック(導電剤)3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(バインダー)4質量%を1-メチル-2-ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極No.1の正極シートを作製した。 また、表1に記載の蓄電デバイス用ポリイミドバインダー、ケイ素単体(Si)、ケイ素酸化物(SiO)、人造黒鉛(d002=0.335nm)、アセチレンブラック、繊維状炭素粉末(直径;12nm、繊維長;114nm)を用い、表2に記載の組成で、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、表1に記載の熱硬化条件で加熱、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き負極シートを作製した。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表3の実施例2として記載の組成の非水電解液を加えて、実施例1~8、比較例1~6の2032型コイン電池を作製した。なお、実施例8では、バインダーとしてA-2とSBRを混合して負極合剤ペーストを作製した以外は、実施例2と同様に負極シートを作製した。」 「[0090][表2] [図:0001436848000004.jpg] 」 2 引用文献1の上記記載によれば、引用文献1には、次の事項が記載されている。 (1)段落[0044]、[0045]によれば、引用文献1には、負極活物質とポリアミック酸水溶液組成物とを混合して電極合剤ペーストを調製し、集電体上に流延又は塗布し、160~180℃の温度範囲で加熱処理して溶媒を除去するとともにイミド化反応させ、集電体上に活物質層を形成する電極シートの製造方法が記載されており、該電極シートは、負極活物質を有するから、負極シートといえる。 また、段落[0015]、[0019]、[0036]、[0039]によれば、ポリアミック酸水溶液組成物(ポリアミック酸の水溶液)を加熱してイミド化反応させてポリイミドバインダーが得られるものであるといえる。 してみると、引用文献1には、負極活物質とポリアミック酸水溶液組成物とを混合して合剤ペーストを調製し、集電体上に流延又は塗布し、160~180℃の温度範囲で加熱処理して、溶媒を除去するとともにポリアミック酸水溶液組成物をイミド化反応させポリイミドバインダーを得て、集電体上に活物質層を形成する負極シートの製造方法が記載されているといえる。 (2)段落[0015]~[0017]によれば、ポリアミック酸水溶液組成物は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られる下記一般式(I)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸(ポリイミド前駆体)が水に溶解されたものである。 [図:0001436848000005.jpg] (式中、Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基から選ばれる一種以上であり、 Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基から選ばれる一種以上である。 但し、前記繰返し単位総量中のBの55モル以上が、分子量500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。) (3)段落[0088]の記載、段落[0090]の表2によれば、実施例5として、ケイ素単体(Si)60質量%、人造黒鉛20質量%、繊維状炭素粉末5質量%、バインダーNo.A-2 10質量%、及び、SBR5質量%を用いて負極合剤ペーストを調製し、この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、所定の熱硬化条件で加熱、乾燥、加圧処理する負極シートの製造工程が記載されているといえる。 そして、段落[0083]の記載、段落[0086]の表1によれば、バインダーNo.A-2は、蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物であり、該表1によれば、バインダーNo.A-2の熱硬化条件は、最大温度170℃である。 してみると、引用文献1には、ケイ素単体(Si)60質量%、人造黒鉛20質量%、繊維状炭素粉末5質量%、バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物10質量%、及び、SBR5質量%を用いて負極合剤ペーストを調製し、この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、最大温度170℃の熱硬化条件で加熱、乾燥、加圧処理する負極シートの製造工程が記載されているといえる。 (4)段落[0083]によれば、バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物は、溶媒として水425gに1,6-ヘキサメチレンジアミン20.44g(0.176モル)と、1,2-ジメチルイミダゾ-ルの42.28g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え攪拌し、溶解させ、この溶液に4,4’-オキシジフタル酸二無水物の54.56g(0.176モル)を加え、撹拌して得られるものであり、その固形分濃度は12.4質量%である。 (5)よって、上記(1)~(4)により、引用文献1には、実施例5に基づく次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「負極活物質とポリアミック酸水溶液組成物とを混合して合剤ペーストを調製し、集電体上に流延又は塗布し、160~180℃の温度範囲で加熱処理して、溶媒を除去するとともにポリアミック酸水溶液組成物をイミド化反応させポリイミドバインダーを得て、集電体上に活物質層を形成する負極シートの製造方法であって、 ポリアミック酸水溶液組成物は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られる下記一般式(I)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸(ポリイミド前駆体)が水に溶解されたものであり、 負極シートは、ケイ素単体(Si)60質量%、人造黒鉛20質量%、繊維状炭素粉末5質量%、バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物10質量%、及び、SBR5質量%を用いて負極合剤ペーストを調製し、この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、最大温度170℃の熱硬化条件で加熱、乾燥、加圧処理して製造され、 バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物は、溶媒として水425gに1,6-ヘキサメチレンジアミン20.44g(0.176モル)と、1,2-ジメチルイミダゾ-ルの42.28g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え攪拌し、溶解させ、この溶液に4,4’-オキシジフタル酸二無水物の54.56g(0.176モル)を加え、撹拌して得られるものであり、その固形分濃度は12.4質量%である、 負極シートの製造方法。 [図:0001436848000006.jpg] (式中、Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基から選ばれる一種以上であり、 Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基から選ばれる一種以上である。 但し、前記繰返し単位総量中のBの55モル以上が、分子量500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。)」 第5 対比・判断 1 対比 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 ア 本願明細書(段落[0029]を参照。)の「本発明におけるカーボン粒子は、通常、リチウムイオン電池などの負極活物質層中に添加されるものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛および人造黒鉛等の黒鉛、・・・等を挙げることができる。」との記載によれば、本願発明の「カーボン粒子」は人造黒鉛を含む。 そうすると、引用発明の負極シートに用いられる「人造黒鉛」は、本願発明の「カーボン粒子」に相当する。 イ 引用発明の負極シートに用いられる「ケイ素単体(Si)」は、リチウムイオン吸蔵・放出可能な負極活物質粒子であるといえるから、本願発明の「リチウムイオンを吸蔵・放出可能なシリコン系粒子」に相当する。 ウ 「ポリイミド系バインダー」に関し、本願明細書には、以下の記載がある。 「[0014](ポリイミド系バインダー) 本発明の負極活物質層中に含有されるポリイミド系バインダーは、主鎖にイミド結合を有する有機高分子である。・・・。また、本発明において、負極活物質層中の「ポリイミド系バインダー」を形成するための物質を、「前駆体」といい、・・・。 [0015] 「前駆体」は、・・・、または加熱もしくは化学反応により主鎖にイミド結合を有する有機高分子を形成しうる高分子または化合物である。・・・。加熱もしくは化学反応により主鎖にイミド結合を有する有機高分子を形成しうる高分子または化合物である「前駆体」としては、ポリアミック酸等が挙げられる。」 「[0017] たとえば、加熱もしくは化学反応により主鎖にイミド結合を有する有機高分子を形成しうる前駆体としては、ポリアミック酸、特に、下記化学式(I)で表される繰り返し単位を含むポリアミック酸が好ましい。 【0018】 [化2] [図:0001436848000007.jpg] (式中、Aは、芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び脂環式テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、Bは、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び脂環式ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上である。)」 上記記載から、本願発明の「主鎖にイミド結合を有する有機高分子であるポリイミド系バインダー」は、「前駆体」である「化学式(I)で表される繰り返し単位を含むポリアミック酸」(「化学式(I)」は省略。)を「加熱もしくは化学反応により形成」されるものを含む。 ここで、引用発明の「ポリイミドバインダー」は「一般式(I)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸(ポリイミド前駆体)が水に溶解された」「ポリアミック酸水溶液組成物をイミド化反応させ」て得られるものであり、該「一般式(I)」(式は省略。)は、本願発明の「化学式(I)」に相当する(後記キ参照。)。 そうすると、引用発明の「一般式(I)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸(ポリイミド前駆体)が水に溶解された」「ポリアミック酸水溶液組成物をイミド化反応させ」て得られる「ポリイミドバインダー」は、本願発明の「主鎖にイミド結合を有する有機高分子であるポリイミド系バインダー」に相当する。 エ 引用発明では、「負極活物質とポリアミック酸水溶液組成物とを混合して合剤ペーストを調製し、集電体上に流延又は塗布し、160~180℃の温度範囲で加熱処理して、溶媒を除去するとともにポリアミック酸水溶液組成物をイミド化反応させポリイミドバインダーを得て、集電体上に活物質層を形成」されることから、形成された「活物質層」には「負極活物質」と「ポリイミドバインダー」が含まれるといえる。 そうすると、引用発明において、「ケイ素単体(Si)」、「人造黒鉛」、「蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物」を用いて「負極合剤ペーストを調製し、この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、最大温度170℃の熱硬化条件で加熱、乾燥、加圧処理して製造され」ることにより、「ケイ素単体(Si)」、「人造黒鉛」及び「ポリイミドバインダー」が含まれる「活物質層」が形成されるといえる。 よって、上記ア~ウも踏まえれば、引用発明において、「ケイ素単体(Si)」、「人造黒鉛」及び「ポリイミドバインダー」が含まれる「活物質層」が形成される「負極シートの製造方法」は、本願発明の「カーボン粒子、シリコンを成分として含み、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なシリコン系粒子、および主鎖にイミド結合を有する有機高分子であるポリイミド系バインダーを含有する負極活物質層の製造方法」に相当する。 オ 引用発明の「ポリイミドバインダー」を得るための「ポリアミック酸水溶液組成物」に含まれる「ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)」は、本願発明の「ポリイミド系バインダーを形成するための前駆体」に相当する。 そして、引用発明において「合剤ペースト」を「加熱処理」する際の温度範囲は「160~180℃」であり、また、「バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物」を含む「負極合剤ペースト」を「加熱」「処理」する際の「熱硬化条件」は「最大170℃」であるところ、両温度は、本願発明の「負極用電極合剤ペースト」の「加熱処理」する温度である「80~300℃」の範囲内に含まれる。 そうすると、上記ア~ウも踏まえれば、引用発明において、「ケイ素単体(Si)」、「人造黒鉛」、「ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)」を含む「蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物」を用いて「負極合剤ペーストを調製し、この負極合剤ペースト」を「最大温度170℃の熱硬化条件で加熱」処理することと、本願発明の「カーボン粒子、前記シリコン系粒子、および前記ポリイミド系バインダーを形成するための前駆体を含み、この前駆体の固形分質量が全固形分に対して0.5質量%以上10質量%未満である負極用電極合剤ペーストを、温度80~300℃の範囲で加熱処理」することとは、「カーボン粒子、前記シリコン系粒子、および前記ポリイミド系バインダーを形成するための前駆体を含む負極用電極合剤ペーストを、温度170℃で加熱処理」する点で共通する。 カ 引用発明の「負極活物質とポリアミック酸水溶液組成物とを混合して合剤ペーストを調製し」、「加熱処理して」「集電体上に活物質層を形成する」ことと、本願発明の「多孔度が40%より大きく70%以下である負極活物質層を製造する」こととは、「負極活物質層を製造する」点で共通する。 キ 引用発明の「下記一般式(I)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸(ポリイミド前駆体)」(「一般式(I)」は省略。)は、本願発明の「下記化学式(I)で表される繰り返し単位を含むポリアミック酸である」「前駆体」(「化学式(I)」は省略。)に相当する。 また、引用発明の「式中、Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基から選ばれる一種以上であり、Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基から選ばれる一種以上である。但し、前記繰返し単位総量中のBの55モル以上が、分子量500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である」ことは、本願発明の「式中、Aは、芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び脂環式テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、Bは、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び脂環式ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上である。但し、Bは少なくとも脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基を含む」ことに含まれる。 (2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明との一致点、及び、相違点は以下のとおりである。 「カーボン粒子、 シリコンを成分として含み、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なシリコン系粒子、および 主鎖にイミド結合を有する有機高分子であるポリイミド系バインダー を含有する負極活物質層の製造方法であって、 前記カーボン粒子、前記シリコン系粒子、および前記ポリイミド系バインダーを形成するための前駆体を含む負極用電極合剤ペーストを、温度80~300℃の範囲で加熱処理し、 負極活物質層を製造する、 負極活物質層の製造方法 (但し、 前記ポリイミド系バインダーを形成するための前駆体は、下記化学式(I)で表される繰り返し単位を含むポリアミック酸である。 【化1】 [図:0001436848000008.jpg] (式中、Aは、芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び脂環式テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、Bは、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び脂環式ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上である。但し、Bは少なくとも脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基を含む。))。 (相違点1) 前駆体に関し、本願発明は「固形分質量」が「負極用電極合剤ペースト」の「全固形分に対して0.5質量%以上10質量%未満である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点2) 負極活物質層に関し、本願発明は「多孔度が40%より大きく70%以下である」の対し、引用発明はその旨特定されていない点。 2 相違点に対する判断 (1)相違点1について 引用発明の「負極合剤ペースト」は「ケイ素単体(Si):60質量%、人造黒鉛20質量%、繊維状炭素粉末5質量%、バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物10質量%、及び、SBR5質量%を用いて」「調整」されるところ、仮に、「負極合剤ペースト」を1000g調整する場合、各素材の質量は、 ケイ素単体(Si):600g 人造黒鉛 :200g 繊維状炭素粉末 :50g バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物:100g SBR :50g である。 ここで、「バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物」は「固形分濃度は12.4質量%である」ことから、この場合の「バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物」の固形分質量は、12.4g(=100g×12.4/100)である。 そして、「バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物」における「1,6-ヘキサメチレンジアミン」と「4,4’-オキシジフタル酸二無水物」の合計質量の「バインダーNo.A-2の蓄電デバイス用ポリアミック酸水溶液組成物」の全固形質量に対する割合は、64質量%(≒(1,6-ヘキサメチレンジアミン20.44g+4,4’-オキシジフタル酸二無水物54.56g)/(1,6-ヘキサメチレンジアミン20.44g+1,2ジメチルイミダゾール42.28g+4,4’-オキシジフタル酸二無水物54.56g))である。 引用発明における「ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)」は「テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られる」ところ、最大でも「ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)」の固形分質量は、8.1g(≒12.4g×64/100)である。 したがって、「ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)」の固形分質量が「負極合剤ペースト」の全固形分質量に対する割合は、0.9質量%(≒8.1/(600+200+50+8.1+50)×100)であって、本願発明の「0.5質量%以上10質量%未満」の範囲内である。 よって、相違点1は実質的な相違ではない。 (2)相違点2について 当該技術分野において、負極活物質層の多孔度を「40%より大きく70%以下」の範囲内程度に調整することは周知である(例えば、特開2017-10742号公報の段落【0026】の「プレスして目標の多孔度に調整する」、同【0027】の「負極の多孔度は、10~65%とすることが好ましい。」、同【0046】の「負極合材層の多孔度は50%である。」、特開2014-63671号公報の段落【0021】の「多孔度は、40%以上が好ましく、68%以下が好ましい。」、同【0033】の「プレスすることで厚みを調整し、設定した多孔度することができる」、同【0063】の【表1】の実施例1~3、5~8、特開2000-173594号公報の段落【0022】の「電極の合剤層の多孔度を調整する方法としては、加圧ローラーによる圧延度合いによって調整する方法が一般的である」、同【0053】の「(実施例1)以上のようにして、・・・、負極の合剤層の多孔度がそれぞれ・・・、40%、50%、60%となるように電池A1~電池A7を作製した。」、特開平7-312219号公報の段落【0007】の「本発明で用いられる多孔度、電極密度は、・・・、更に圧縮成形時のプレス圧を調節することにより、調整できる。」、【0044】の「多孔度を(1)70%、(2)60%、(3)50%、(4)40%、・・・とする」、を参照。)。 また、負極の多孔度を調整することにより二次電池の放電容量や容量維持率等の電池特性を制御できることも技術常識にすぎない(例えば、特開2014-63671号公報の段落【0021】の「多孔度が38%以上であることにより、・・・容量維持率が十分な非水電解質二次電池とすることができる。」、特開2000-173594号公報の段落【0016】の「負極の合剤層の多孔度を適切に設定することにより、高容量で充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供する」、特開平7-312219号公報の段落【0071】の「実施例1、2、3の結果、本発明の多孔度、電極密度では、放電電圧が高く、充放電サイクルが長く、放電容量が大きいことが示された。」を、各参照。)。 そして、引用発明の「負極シート」は「加圧処理」して製造されていことから、引用発明に周知技術を適用し、引用発明における「負極シート」の「活物質層」の多孔度を「40%より大きく70%以下」の範囲内程度に調整して電池特性の更なる向上を図ることは当業者が容易に想到し得たことである。 してみれば、上記相違点2は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。 (3)まとめ 以上から、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 審判請求人の主張について 1 審判請求人は、令和7年11月11日付け意見書において以下のとおり主張する。 (1)多孔度とバインダーの物性の関係について検討します。多孔度の大きい固まりを考えた場合、多孔度が小さい固まりに比べて粒子同士の接触点が少なくなるので、もろいというのは直感的に理解しているところです。これについて、学術文献では、添付資料(「材料」第17巻昭和43年6月号;第177号540頁~544頁)に示すとおり、充填粉体の引張強度に関して、Rumpfによって次式が提案されています。 [図:0001436848000009.jpg] σz: 引張強度 (g/cm2), ε: 空隙率 (-), H: 見掛けの1接触点あたりの付着力 (g), Dp: 試料の平均粒子径 (cm) つまり、多孔度=空隙率εが大きいほど(1に近いほど)、引張弾性率σzが小さくなる、つまり壊れやすいということを示しています。 それでは、多孔度が大きくても固まりが壊れにくい(もろくない)ようにするためにどうすれば良いかを考えると、式(2)でHを大きくすればよい、つまり1接触点あたりの付着力を大きくすれば、引張弾性率が大きくなって壊れにくくなることが理解できます。 そこで再度引用文献の検討に戻ります。引用文献2には前述のとおり「ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドの弾性率は、3GPa以上が好ましい。また、伸び率は、25%以下が好ましい。」と記載されていることから、実際にこのような特性のバインダーを使用していると考えられます。それによって、負極活物質層中で、大きな1接点あたりの付着力を達成できており、多孔度50%としても問題が起きていないと推定されます。 一方、引用発明で使用されたバインダーNo.A-2は弾性率が小さく、そのため1接点あたりの付着力が小さくなるので、多孔度の大きな負極活物質層で使用するバインダーには不向きであることが明らかです。 当業者であれば、引用文献1に加えて引用文献2も参照できるはずです。当業者であれば、多孔度を大きくするためにはより強靱なバインダーが必要になることを理解しているので、引用文献1に記載されている物性が劣っているバインダーを選択して、敢えて多孔度の大きな負極活物質層の製造に使用することは、全く考えられないことです。 従って、引用文献2~5に多孔度の大きな負極活物質層が記載されていたとしても、引用発明において本願発明の多孔度の範囲「40%より大きく70%以下」を採用することはないと思料します。(3頁目8~22行) (2)添付の実験成績証明書(対応アメリカ出願で提出した宣誓書に示すように、比較実験例1として、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを反応させて得たポリアミック酸をバインダー前駆体とする実験、および比較実験例2として、ジアミン成分として芳香族と脂環式の混合物として得られたポリアミック酸をバインダー前駆体とする実験を行いました。 [図:0001436848000010.jpg] 比較実験例1と本願実施例1との比較から、同程度の活物質多孔度において、本願の脂肪族ジアミン由来構造を含むポリアミック酸を使用した負極は、芳香族ジアミン由来構造を含むポリアミック酸を使用した負極に比べて、30サイクル後の容量維持率および初期充放電効率のどちらも高く、優れていることがわかります。 [図:0001436848000011.jpg] 比較実験例2の結果から、ジアミン成分が脂環式ジアミンを含むポリアミック酸水溶液を使用したポリイミドバインダー、即ち、脂肪族ジアミン由来構造を含まず脂環式ジアミン由来構造を含むポリイミドバインダーは、多孔度が本願範囲を満たすように負極を形成しても、本願実施例と比較して、初期充放電効率が小さく、容量維持率に関しては、わずか8サイクルで急激に悪化することがわかります。 以上のとおり、本願発明による効果は、引用文献から予想することはできません。 2 審判請求人の主張について検討する。 (1)主張(1)について ア 審判請求書に添付された資料は、「粉体充てん層の引張強度による付着力の測定」に係るものであり、そもそもバインダについて一切記載されていないことから、多孔度とバインダーの物性の関係を裏付ける証拠として適格性を欠いており、審判請求人の添付資料を前提とした主張は前提を欠いている。 イ また、審判請求人は、引用文献2(段落【0025】)の「ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドの弾性率は3GPa以上が好ましい。」との記載に基づき、引用発明で使用されたバインダーNo.A-2は弾性率が小さく、物性が劣っている旨主張する。 しかしながら、ポリイミド系バインダは他のバインダに比べて弾性率が大きいことは、文献を挙げるまでもなく技術常識であることから、バインダーNo.A-2は、引張弾性率が3GPaより小さいことを理由に、バインダーとして強靱ではなく物性が劣っているとは必ずしもいえない。 そして、拒絶理由通知で提示した引用文献2(特開2017-10742号公報の段落【0027】)には、「負極の多孔度は、10~65%とすることが好ましい。」と記載されているところ、負極の多孔度を調整する上で、バインダーの弾性率を3GPa以上することが必須の要件であることは何等記載されておらず、同引用文献2に記載された実施例においても弾性率は特定されていない。 ウ さらに、引用発明における「活物質層」の多孔度を、周知技術のように40~70%の範囲内程度とすることはできないことを裏付ける客観的な証拠も提出されていない。 エ したがって、審判請求人の主張(1)は採用できない。 (2)主張(2)について ア 審判請求人は、実験成績証明書を提示し、同程度の活物質多孔度において、本願の脂肪族ジアミン由来構造を含むポリアミック酸を使用した負極は、芳香族ジアミン由来構造又は脂環式ジアミン由来構造を含むポリアミック酸を使用した負極に比べて、30サイクル後の容量維持率および初期充放電効率のどちらも高く、優れている旨主張する。 しかしながら、ジアミン成分について、本願明細書段落[0023]に「ジアミン成分は、特に制限されるものではなく、目的とする負極活物質層の多孔度、所望の蓄電デバイスの特性を考慮して適宜選択できるものである。」、同段落[0024]に「他の態様として、柔軟性、負極活物質層の形成性、電池特性等の観点でいえば、化学式(I)または(II)において、Y1が脂肪族基を含有することが好ましい。その中でも特に、X1が芳香族基を含有し、Y1の30~80モル%程度脂肪族基を含有するものが好ましい。」と記載されているものの、脂肪族ジアミン由来構造を含むポリアミック酸を用い、多孔度を40~70%とした負極は、他のジアミン由来構造を含むポリアミック酸を用いた負極と比較して、容量維持率および初期充放電効率が優れた効果を奏することは一切記載されていない。 してみると、実験成績証明書に基づく前記主張は、本願明細書に基づくものとはいえない。 イ また、引用文献1の段落[0004]に「このような合金系負極活物質を電極にする際、ポリイミド等の高強度の樹脂を用いるとサイクル特性が向上することが知られている」と記載され、同段落[0088]~[0089]の記載、同段落[0090]の[表2]によれば、「1,6-ヘキサメチレンジアミン」(「脂肪族ジアミン」に相当)と、「4,4’-オキシジフタル酸二無水物」(「テトラカルボン酸」に相当)とを反応させて得られたポリアミック酸水溶液組成物をイミド化反応させ得られたバインダーNo.A-2を使用した電池である実施例5は、他の比較例と比べ、0℃放電容量維持率が向上している。 そして、上記第5の2の(2)のとおり、負極の多孔度を調整することにより二次電池の放電容量や容量維持率等の電池特性を制御できることも技術常識にすぎず、また、上記第5の2の(2)において周知技術として挙げた、特開2014-63671号公報の段落【0031】、【0055】、【0063】の【表1】には、負極のバインダーとしてポリイミド系バインダーを用い、「40%より大きく70%以下」の範囲内程度の多孔度に設定した実施例の二次電池の容量維持率は比較例に比べ優れていることも記載されている。 以上の点を総合勘案すれば、仮に、脂肪族ジアミン由来構造を含むポリアミック酸を用いること、及び、多孔度を40~70%に設定することにより初期充放電効率及び容量維持率が高いという効果を奏するとしても、当該効果が、引用発明に周知技術を適用した構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるとはいえない。 ウ したがって、審判請求人の主張(2)は採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-020129

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決15件(UBE株式会社)
  • 2024-017449拒絶査定不服審判 / 2026-01-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)負極用活物質層及びその製造方法、蓄電デバイス負極用電極合剤ペースト、蓄電デバイス…
    同じ当事者: UBE株式会社
  • 2023-014187拒絶査定不服審判 / 2025-06-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリイミドフィルム並びにフレキシブル電子デバイスお…
    同じ当事者: UBE株式会社
  • 2023-019314拒絶査定不服審判 / 2025-04-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリアミド樹脂組成物
    同じ当事者: UBE株式会社
  • 2023-014519拒絶査定不服審判 / 2024-09-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)蓄電デバイス用ポリイミド系バインダー、電極合剤ペースト、負極活物質層、蓄電デバイ…
    同じ当事者: UBE株式会社
  • 2023-007674拒絶査定不服審判 / 2024-04-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)電極用バインダー、及び電極
    同じ当事者: UBE株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,628件(121・H01M)
  • 2025-004742拒絶査定不服審判 / 2026-08-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)電池とその製造方法
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2025-001567拒絶査定不服審判 / 2026-08-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)電極の製造方法
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2025-002771拒絶査定不服審判 / 2026-08-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)電池、電力消費機器、電池の製造方法及び機器
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2024-019134拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)伝導性炭素骨格を有する硫化炭素カソード
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2025-017025拒絶査定不服審判 / 2026-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)電極活物質、及び当該電極活物質の製造方法
    共通の審決分類: 121・H01M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存