特許拒絶査定不服審判
2024-015568
バインダー用組成物、バインダー、電極材料、電極及び蓄電デバイス
- 審判番号
- 2024-015568
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-165083
- 請求日
- 2024年09月30日
- 審決日
- 2025年07月17日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社大阪ソーダ
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P18 .121-WZ (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-165083「バインダー用組成物、バインダー、電極材料、電極及び蓄電デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月11日出願公開、特開2022- 57030〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年9月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 6年 2月28日付け:拒絶理由通知
令和 6年 4月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和 6年 7月22日付け:拒絶査定
令和 6年 9月30日 :審判請求書の提出
令和 7年 2月19日付け:当審における拒絶理由通知
令和 7年 4月14日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和6年4月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
[図:0001427711000001.jpg]
(式中、R1は水素、又は炭素数1~4のアルキル基、R2は置換基を有していてもよい芳香族基である。)
で表わされるモノマー、
及び、芳香族ノニオン性乳化剤を含有するバインダー用組成物。」
第3 当審の拒絶理由の概要
本願の請求項1に対して令和7年2月19日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、又は引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2013-097895号公報
2.国際公開第2019/131771号
第4 引用文献2の記載及び引用発明
1 引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。
様。)。
「[0050]
重合体を得る方法としては、一般的な乳化重合法、ソープフリー乳化重合法等を使用することができる。具体的には、攪拌機、及び加熱装置付きの密閉容器に室温でモノマー、乳化剤、重合開始剤、水、必要に応じて分散剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を含んだ組成物を不活性ガス雰囲気下で攪拌することでモノマー等を水に乳化させる。乳化の方法は撹拌、剪断、超音波等による方法等が適用でき、撹拌翼、ホモジナイザー等を使用することができる。次いで、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始させることで、重合体が水に分散した球形の重合体のラテックスを得ることができる。重合時のモノマーの添加方法は、一括仕込みの他に、モノマー滴下やプレエマルジョン滴下等でもよく、これらの方法を2種以上併用してもよい。尚、プレエマルジョン滴下とは先にモノマー、乳化剤、水等を予め乳化させておき、その乳液を滴下していく添加方法を指す。
[0051]
本発明で用いられる乳化剤は特に限定されない。乳化剤は界面活性剤であり、この界面活性剤には反応性基を有する反応性界面活性剤が含まれる。乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤等を使用することができる。
[0052]
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、反応性のノニオン性界面活性剤としては、ラテムルPD-420、430、450(花王社製)、アデカリアソープER(アデカ社製)、アクアロンRN(第一工業製薬社製)、アントックスLMA(日本乳化剤社製)、アントックスEMH(日本乳化剤社製)等が挙げられる。
[0053]
アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル型、カルボン酸型、又はスルホン酸型の金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、リン酸エステル型の界面活性剤等を挙げることができる。硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型が好ましく、硫酸エステル型が特に好ましい。硫酸エステル型のアニオン性界面活性剤の代表例としてはドデシル硫酸等のアルキル硫酸金属塩、アンモニウム、又はアルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸金属塩、アンモニウム塩、又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられ、硫酸エステル型の反応性アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラテムルPD-104、105(花王社製)、アデカリアソープSR(アデカ社製)、アクアロンHS(第一工業製薬社製)、アクアロンKH(第一工業製薬社製)が挙げられる。好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラテムルPD-104等が挙げられる。
[0054]
これらノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤は1種または2種以上用いてもよい。」
「[0126][実施合成例5]
ビーカーに、アクリル酸n-ブチル788.99mmol、メタクリル酸ベンジル419.90mmol、アクリル酸38.21mmol、メタクリル酸89.58mmol、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油製:ブレンマーPE-90)41.99mmol、トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学株式会社:ライトエステル-TMP)21.00mmol、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム2.00g、イオン交換水180g及び重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.36gを入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、55℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを2.3から7.8に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物E(重合転化率97%以上、固形分濃度39.0wt%、凝集量:0.08質量%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.246μmであった。重合体におけるモル比率(mol%)を表1に示す。」
「[0129]
[表1]
[図:0001427711000002.jpg]
」
2 引用発明
実施合成例5に着目すると、引用文献2([0050]、[0126]、表1)には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ベンジル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸と、
乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウムを含有するバインダー用組成物。」
第5 対比
本願発明と引用発明2を対比する。
1 本願発明と引用発明2を対比すると、次のことがいえる。
引用発明2の「メタクリル酸ベンジル」は、本願発明の「下記一般式(1)【化1】(略)(式中、R1は水素、又は炭素数1~4のアルキル基、R2は置換基を有していてもよい芳香族基である。)で表わされるモノマー」に相当する。
2 引用発明2の「乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム」と本願発明の「芳香族ノニオン性乳化剤」とは、「乳化剤」である点で共通する。
但し、乳化剤が、本願発明は「芳香族ノニオン性乳化剤」であるのに対して、引用発明は「ラウリル硫酸ナトリウム」である点で相違する。
以上によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「下記一般式(1)【化1】(略)(式中、R1は水素、又は炭素数1~4のアルキル基、R2は置換基を有していてもよい芳香族基である。)で表わされるモノマー、
及び、乳化剤を含有するバインダー用組成物。」
(相違点)
乳化剤が、本願発明は「芳香族ノニオン性乳化剤」であるのに対して、引用発明は「ラウリル硫酸ナトリウム」である点。
第6 判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、本発明で用いられる乳化剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を使用することができると記載され([0051])、さらに、これらノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤は1種または2種以上用いてもよいことが記載されている([0054])。そして、ノニオン性界面活性剤としては、芳香族ノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルが例示されている([0052])。
ここで、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルは、ともに一般的に使用されている界面活性剤であることに鑑みると(例えば、SIGMA社製トリトンX100,花王社製エマルゲンA-60等)、引用文献2記載の上記示唆に従って、引用発明2において「ラウリル硫酸ナトリウム」に代えて、芳香族ノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル又はポリオキシエチレン多環フェニルエーテルを乳化剤として用いることにして、上記相違点に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、上記相違点に係る構成は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ここで、請求人は令和7年4月14日の意見書において、芳香族ノニオン性乳化剤を含有するという構成により得られる、一般式(1)で表わされるモノマーを構成単位として有する重合体を有するバインダーを用いたバインダー組成物(スラリー)において、分散安定性が良好となるという効果は、本願により初めて得られた知見であり、予想外の顕著な効果であると主張しているが、本願明細書には実施例及び比較例が共に1個しか記載されておらず、確実な効果であると認められず、上記主張を採用できない。
よって、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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