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特許無効審判

2020-800119

角栓除去用液状クレンジング剤

審判番号
2020-800119
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2017-073338
登録番号
6271790
請求日
2020年12月11日
審決日
2023年03月27日
公報発行日
2024年09月27日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】株式会社 ユーグレナ
  • 【請求人代理人】秋山 敦
  • 【請求人代理人】福士 智恵子
  • 【請求人代理人】角渕 由英
  • 【請求人代理人】志甫 治宣
  • 【請求人代理人】市川 浩行
  • 【被請求人】村上 博
審判長/審判官
  • 審判長 森井 隆信
  • 審判官 齋藤 恵
  • 審判官 岡崎 美穂
分類
P1113.113-ZAA(A61K) / P1113.121-ZAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第123条第1項第2号、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第123条第1項第4号、特許法第39条第2項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6271790号発明「角栓除去用液状クレンジング剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第6271790号の明細書及び特許請求の範囲を令和4年2月21日提出の手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6271790号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第6271790号発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 出願分割の経緯の概略 本件無効審判の請求に係る特許第6271790号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年11月25日(優先権主張 平成25年12月3日、平成26年4月11日)を出願日とする特願2014-237308号(以下、「親出願」という。)の一部を平成27年5月24日に新たな特許出願とした特願2015-105028号(以下、「子出願」という。)の一部を、平成29年4月2日にさらに新たな特許出願(特願2017-73338号、以下、「本出願」ということもある。)としたものである。 2 本件特許の手続の経緯の概略 (1) 本件特許の出願から設定登録までの経緯 本件特許の請求項1に係る発明についての出願から設定登録までの経緯は以下のとおりである。 平成29年 4月 2日 :特許出願、上申書の提出 同年 6月 8日付け:拒絶理由通知 同年 7月15日 :意見書の提出 同年 8月 2日付け:拒絶査定 同年 同月26日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年10月14日 :上申書の提出 同年11月 2日付け:拒絶理由通知 同月 7日 :意見書、手続補正書の提出 同年12月15日付け:審決(特許査定) 平成30年 1月12日 :設定登録 (2) 訂正審判の経緯 平成31年 1月26日 :訂正審判の請求(訂正2019-3900 11号) 同年 2月27日付け:訂正拒絶理由通知 同年 3月 4日 :手続補正書、意見書の提出 同年 4月 8日付け:訂正審判の審決 (請求全部認容、確定済み) (3) 本件無効審判の手続の経緯 手続の経緯は、次のとおり。 令和2年12月11日 :無効審判請求書の提出(請求人) 令和3年 1月21日 :審判事件答弁書の提出(被請求人) (令和3年1月22日受付) 同年 4月22日付け:審理事項通知(請求人、被請求人) 同年 5月22日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) (同年5月24日受付) 同月31日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 同年 6月15日 :口頭審理 同年 7月13日 :上申書の提出(請求人) 同日 :上申書の提出(被請求人) (同年7月14日受付) 同年12月21日 :上申書の提出(請求人) (同年12月22日受付) 同日 :上申書の提出(被請求人) (同年12月22日受付) 同年 同月27日付け:審決の予告 令和4年 1月10日差出:訂正請求書の提出(被請求人) (令和4年1月11日受付) 同年 2月21日 :手続補正書(訂正請求書)、上申書、証拠 説明書の提出(令和4年2月22日受付) 同年 4月20日 :弁駁書(請求人)の提出 令和5年 3月 6日付け:審理終結の通知 同月12日 :上申書、審理再開申立書の提出 (被請求人)(令和5年3月13日受付) なお、本件について、被請求人から営業秘密に関する申出書が提出されている。 また、審判長は、被請求人が提出した審理再開申立書を検討したが、下記第8に記載する理由により、審理再開の必要性を認めなかった。 第3 訂正請求について 1 訂正請求の趣旨 令和4年2月21日提出の手続補正書により補正された同年1月10日差出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第6271790号の明細書、特許請求の範囲を、上記手続補正書により補正された訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるというものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりのものである。なお、当審により、訂正箇所に下線を付した。 (1) 訂正事項1 明細書の段落【0060】を削除する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「オクチルドデカノールと、 リモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と、 界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)と、 を含む角栓除去用液状クレンジング剤。」と記載されていたのを、 「水と、 オクチルドデカノールと、 水への溶解度より多い量のリモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と、 界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)と、 を含む角栓除去用液状クレンジング剤。」 と訂正する。 (3) 訂正事項3 明細書の段落【0005】を削除する。 3 訂正の適否 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的について 明細書の段落【0061】には、 「【0061】 第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合、水を含有する態様及び水を含有しない態様という、2つの態様がある。以下に、各態様について説明する。 なお、ここで、第2タンパク質抽出剤を液状化粧品に使用した場合の各成分の含量としては、液状化粧品の製品形態とした場合に好適な量を示すものであり、実際の使用態様において、これより薄い濃度にて使用することを許容するものである。 ・水を含有する態様 水を含有する態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において、炭化水素の配合量は、水への溶解度以上の量である。第2の高級アルコールの配合量は、炭化水素の体積に対し、1体積%以上から炭化水素の体積の2倍以下(200体積%以下)の範囲内の量である。第2のタンパク質抽出剤に炭化水素及び第2の高級アルコール以外の成分を配合する場合には、上記の炭化水素及び第2の高級アルコールの配合量の条件を満たし、かつ、該成分の配合量に相当する分だけ、炭化水素の体積を減らすように調整する。 ・水を含有しない態様 水を含有しない態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において、炭化水素の配合量は、第2のタンパク質抽出剤全体に対して3体積%以上99体積%以下である。第2の高級アルコールの配合量は、炭化水素の体積に対し、1体積%以上から炭化水素の体積の2倍以下(200体積%以下)の範囲内の量である。第2のタンパク質抽出剤に炭化水素及び第2の高級アルコール以外の成分を配合する場合には、上記の炭化水素及び第2の高級アルコールの配合量の条件を満たし、かつ、該成分の配合量に相当する分だけ、炭化水素の体積を減らすように調整する。上記の処方により化粧品を調整すると、該化粧品の性状は常温で液体となる。」(下線は当審による。以下も同様。) との記載がある一方で、段落【0060】には、 「第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合、「炭化水素」の含量としては、タンパク質抽出剤(液状化粧品)の「全量」に対して3体積%以上含まれていることが好適である。好ましくは「全量」に対して5体積%以上、より好ましくは7.5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、一層好ましくは12.5体積%以上、より一層好ましくは15体積%以上、さらに一層好ましくは17.5体積%以上、特一層好ましくは20体積%以上含まれていることが好適である。炭化水素の濃度が低い場合には、タンパク質抽出剤(液状化粧品)をより多く使用することにより、タンパク質の抽出は可能である。しかし、炭化水素の含有量が全量に対して3体積%を下回ると、化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため、好適ではない。」 との記載がある。 本件特許の請求項1に係る発明は、訂正により「水」を含むクレンジング剤となった。【0061】における、水を含む液状化粧品の態様についての記載と、液状化粧品の発明における炭化水素の量に関する【0060】における記載が、前者では「炭化水素の配合量は、水への溶解度以上の量である。」、後者では「「炭化水素」の含量としては、タンパク質抽出剤(液状化粧品)の「全量」に対して3体積%以上含まれていることが好適である。好ましくは「全量」に対して5体積%以上、より好ましくは7.5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、一層好ましくは12.5体積%以上、より一層好ましくは15体積%以上、さらに一層好ましくは17.5体積%以上、特一層好ましくは20体積%以上含まれていることが好適である。」となっており、炭化水素の含有量の範囲が整合せず、訂正後の請求項1に係る発明の構成との関係において、明瞭でないものとなるため、訂正事項1は、段落【0060】を削除してこれを解消するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること(新規事項の追加の有無) 訂正事項1は、段落【0060】を削除するものであるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、段落【0060】を削除するものであるため、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明である角栓除去用液状クレンジング剤において、構成成分として「水」を含む態様とし、そして、当該「水」との関係おいて炭化水素の量についても「水への溶解度より多い量」であることを特定し、全体として角栓除去用液状クレンジング剤の組成(角栓除去用液状クレンジング剤を構成する成分及びその配合量)を限定するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 請求項1に追加する記載は、段落【0061】に 「第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合、水を含有する態様及び水を含有しない態様という、2つの態様がある。」 「・水を含有する態様 水を含有する態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において、炭化水素の配合量は、水への溶解度以上の量である。」 との記載があるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明を減縮するものであるため、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正前及び訂正後の本件特許の請求項1に係る発明のいずれにおいても、界面活性剤の量が全量に対して0~10体積%であるものを除く旨が規定され、そして、明細書の【発明の解決しようとする課題】を記載した段落【0005】及び【0006】のうちの訂正前の段落【0005】に、 「しかし、溶液中の対象物質を分離等するために使用されて来た従来の方法は、いずれも、界面活性剤の使用を前提としていた。他方、界面活性剤は、皮膚に負担をかけ、荒れ等を生じさせ得るため、界面活性剤を使用していないか、又は、界面活性剤の使用量が極少量である方法が求められていた。」 との記載があるところ、「水」を含む態様である訂正後の請求項1に係る発明において「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」として含まれる界面活性剤が、界面活性剤の使用に求められていたことについての当該記載に対して、整合していないと解される余地があるため、段落【0005】を削除してこれを解消するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、原出願から踏襲されていた原出願の段落【0005】を削除するものであるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、明細書の段落【0005】を削除するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (4)訂正請求に対する請求人の主張について ここで、上記訂正請求に対して、請求人は弁駁書において以下の3点を主張するので、それについて述べる。 ・訂正事項1について、段落【0060】の削除は、被請求人の裁判の判断(乙11)について、サポート要件違反の根拠となった【0060】を削除することで、不都合な記載を削除したいだけであり、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものではない。(弁駁書第2~4頁「(3)請求人の反論について」) ・訂正事項2について、「水への溶解度より多い量の」との記載は、炭化水素である「スクワラン」は水に不溶(水への溶解度はゼロ)であるから、スクワランの量は0より多ければよいこととなり、訂正前と同様に下限値がないのとかわらず、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。(弁駁書第4~6頁「(2)請求人の反論について」) ・訂正事項3について、段落【0005】の削除は、それ自体が不明瞭な記載ではなく、他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっているものでもないから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものではない。訂正審判(訂正2019-390011)の平成31年3月1日付発送の訂正拒絶理由通知においても、「本件明細粗の段落【0005】の下線部の記載は、溶液中の対象物を分離等するために使用される方法におけるニーズを説明したに過ぎない記載であり、それ自体が不明瞭な記載ではなく、また本件特許の請求項1に係る発明(なお、ここで請求人は「本件発明1」と略す旨を記載しているが、以下、合議体の略称に合わせてこれを略す場合は「本件発明」ということとする。)との関係において不合理を生じているものでもなく、明瞭でない記載は存在しない。」と判断されている。(弁駁書第6~8頁「(2)請求人の反論について」) これらの主張について、本件訂正後の請求項1に係る発明は、訂正前とは異なり、「水」が含まれる態様となり、訂正事項1~3は、これに関連してされた訂正(訂正事項1、2)や、訂正後の請求項1における構成との関係で明瞭でないとされる余地があるとしてされた訂正(訂正事項3)であり、特に、訂正事項1、3に対して「明瞭ではない記載の釈明」に相当しない旨の主張については、上記(1)、(3)で検討したとおり、これらの訂正は「明瞭でない記載の釈明」に該当するから、採用できない。 さらに、訂正事項2についての主張について、炭化水素としてリモネンが選択される場合には、リモネンの水に対する溶解度は「1.38x10^1mg/L (25℃)」であり、リモネンについてはその量を規定することになるので、上記(2)アで検討したとおり、訂正事項2は、全体として角栓除去用液状クレンジング剤の組成(角栓除去用液状クレンジング剤を構成する成分及びその配合量)を限定するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえ、その一部の文言のみについて「特許請求の範囲の減縮」に当たらないとの請求人の主張は採用することはできない。 また、訂正事項3の段落【0005】についての、訂正審判における訂正拒絶理由通知の判断に対する主張について、当該訂正拒絶理由通知での判断は、「水」を含む態様に特定がない訂正前の請求項1に係る発明との関係でなされたものであるところ、これに対して、「水」が含まれる態様となった本件訂正後の請求項1に係る発明を踏まえてした上記の判断が、殊更に整合しないとか不合理であるというものではない。 なお、訂正事項1に係る主張において、請求人は、被請求人が裁判の判決においてサポート要件違反の根拠となった不都合な記載を削除したいだけの訂正である旨の主張もしているので、段落【0060】、【0005】の削除が関係する訂正事項1、3について、サポート要件の判断への影響につき、念のため検討する。訂正事項1の段落【0060】の削除がされたとしても、段落【0061】に「水を含有しない態様」の記載があり、また、訂正事項3の段落【0005】の削除がされたとしても、段落【0065】に「また、本発明のタンパク質抽出剤は、界面活性剤等を含まなくとも、優れたタンパク質抽出効果を奏する。したがって、本発明のタンパク質抽出剤によれば、皮膚への負担を低減しつつ、所望の洗浄効果が得られる。」との記載があるから、これらの段落が削除されても、訂正の前後で、本件特許の請求項1に係る発明の課題についてのサポート要件に関する判断が影響されるものではない。 よって、上記弁駁書に記載した請求人の主張は採用できない。 5 小括 以上のとおり、本件訂正は、適法なものであるから、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、令和4年2月21日提出の手続補正書により補正された同年1月10日差出の訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 第4 本件発明 上記第3で述べたとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1に係る発明は、訂正後の請求項1に記載された事項より特定される、以下のとおりのものである。 なお、以下、本件特許の請求項1に係る発明を、「本件発明」という。 「水と、 オクチルドデカノールと、 水への溶解度より多い量のリモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と、 界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)と、 を含む角栓除去用液状クレンジング剤。」 第5 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張 請求人は、本件特許に対して以下の無効理由1~3を主張し、その証拠として甲第1号証~甲第13号証を提出している。 (1) 無効理由1(新規性欠如) 本件発明は、本件発明の優先日前に公知となった刊行物(甲第1~3号証)に開示されたものであって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2) 無効理由2(進歩性欠如) 本件発明は、甲第1号証乃至甲第3号証のいずれかに記載された内容(公知・周知技術)と、甲第5号証の1乃至甲第5号証の3に記載の公知・周知技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (3) 無効理由3(サポート要件違反) 本件発明は、発明の詳細な説明の開示と十分には整合しているとは認められず、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 2 証拠方法 甲第1号証: 「セルソアンEGFプロシリーズ「セルソアンクレンジングオイル」(株式会社バイオリンクの製品紹介ホームページ)のWayback Machineのウェブページ出力物、2013年8月11日(登録日)、<https://web.archive.org/web/20130811061328/http://www.biolink-hanbai.com/EGF_pro/egf_pro.htm>、令和2年11月13日(出力日) 甲第2号証: 「レセプトII クレンジングミルク」(エムディ化粧品販売株式会社のホームページ)のWayback Machineのウェブページ出力物、2013年6月5日(登録日)、<https://web.archive.org/web/20130605122358/http://www.mdcosme.co.jp/seibun/factor_r2.html>、令和2年11月20日(出力日) 甲第3号証: 「デイライト シェイクシェイク クレンジング」(Amazon.co.jpの製品販売ホームページ)のWayback Machineのウェブページ出力物、2008年9月14日(登録日)、<https://web.archive.org/web/20080914121627/https://www.amazon.co.jp/デイライト-シェイクシェイク-クレンジング/dp/B000FQLCMY>、令和2年11月13日(出力日) 甲第4号証の1: ポリソルベートについて、一般財団法人日本食品分析センターHP、https://www.jfrl.or.jp/storage/file/news_vol3_no16.pdf、令和2年11月22日(出力日) 甲第4号証の2: ポリソルベート85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)の安全データシート、富士フイルム和光純薬株式会社、平成30年6月6日 甲第4号証の3: ポリソルベート40(モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン)の安全データシート、関東化学株式会社、平成29年3月9日 甲第4号証の4: ポリソルベート80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)の安全データシート、関東化学株式会社、平成26年4月21日 甲第4号証の5: 2-n-オクチル-1-ドデカノールの安全データシート、東京化成工業株式会社、平成30年10月4日 甲第4号証の6: スクアランの安全データシート、東京化成工業株式会社、平成30年10月4日 甲第5号証の1: 特開2006-225266号公報 甲第5号証の2: 特開2009-143878号公報 甲第5号証の3: 特開2002-241260号公報 甲第6号証の1: 「デイライト シェイクシェイク クレンジング」(@COSMEの商品紹介ホームページ)のウエブページ出力物、<https://www.cosme.net/product/product_id/312596/top>、令和2年11月13日(出力日) 甲第6号証の2: 「CO・OPオリーブクレンジングオイル」(日本生活協同組合連合会の製品販売ホームページ)のWayback Machineのウエブページ出力物、2014年4月17日(登録日)、<https://web.archive.org/web/20140417143652/https://www.co-op.ne.jp/cosmetics/stuff/detail.html?JAN=4902220586486>、令和2年11月13日(出力日) 甲第6号証の3: 「DHCニューマイルドタッチクレンジングオイルを買ってみた、口コミや感想など」(脚やせ・美肌目指すブログ、投稿日2012年1月24日)のWayback Machineのウエブページ出力物、登録日:2014年9月10日、<https://web.archive.org/web/20140910212733/https://ashiyasebihada.com/2012/dhcreansing_24.html>、令和2年11月20日(出力日) (以上、審判請求書とともに提出) 甲第7号証の1: 「ナチュラルクレンジングオイル」(生活協同組合連合会グリーンコープ連合の商品紹介ホームページ)のWayback Machineのウェブページ出力物、登録日:2013年7月4日、<http://web.archive.org/web/20130704004156/http://www.greencoop.or.jp:80/syohin/cosme05.html>、令和3年5月17日(出力日) 甲第7号証の2: 「トゥヴェール ★パーフェクトクレンジング」(株式会社トゥヴェ-ルの商品紹介ホームページ)のWayback Machineのウェブページ出力物、2013年6月26日(登録日)、<https://web.archive.org/web/20130626024601/http://www.tvert.jp/fs/tvert/239>、令和3年5月17日(出力日) 甲第7号証の3: 「ソフティモ ディープクレンジングオイル」(株式会社住商ドラッグストアーズの商品紹介ホームページ)のWayback Machineのウェブページ出力物、2013年3月23日(登録日)、<https://web.archive.org/web/20130323004249/http://tomods-ap.com/shop/g/g4971710310818/>、令和3年5月17日(出力日) 甲第8号証: 岩田宏 著、「化粧品開発者のための処方の基礎と実践」、株式会社シーエムシー出版、平成23年12月26日、181~183頁 甲第9号証の1: 特開2007-055933号公報 甲第9号証の2: 特開平11-100309号公報 甲第10号証: 特開2008-237350号公報 甲第11号証: 令和元年(ネ)第10057号判決、令和2年11月25日言渡、知的財産高等裁判所 (以上、口頭審理陳述要領書とともに提出) 甲第4号証の1: 上記甲4号証の1が得られるHPのリンク頁を補充 甲第7号証の1: 上記甲第7号証の1をWayback MachineのウェブページのURLを追加したものへ差し替え 甲第7号証の2: 上記甲第7号証の2をWayback MachineのウェブページのURL追加し、欠陥頁を補完したものへ差し替え 甲第7号証の3: 上記甲第7号証の3を日付、Wayback MachineのウェブページのURLを追加したものに差し替え (以上、令和3年12月21日付け上申書とともに提出) 甲第12号証: 特願2013-249695号の明細書及び図面 甲第13号証: 令和2年(ワ)第22071号 原告第2準備書面(合議体注:原告は本件の被請求人) (以上、令和4年2月21日付け上申書とともに提出) 以下、甲号証は、号証番号に応じて「甲1」などという。 第6 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張 被請求人は、上記第5の1(1)~(3)の無効理由に対し、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、下記乙第1号証~乙第12号証を提出した。 2 証拠方法 乙第1号証: 平成20年(行ケ)第10096号判決 平成21年1月28日言渡 知的財産高等裁判所 乙第2号証: 特願2017-073338号の刊行物提出書の刊行物1 平成29年10月16日受付 乙第3号証: 水越興治 他、「年齢による毛穴の目立ちの実態調査」、J.Soc.Cosmet.Chem.Japan、2007、Vol.41、No.4、p262-268 (以上、審判事件答弁書とともに提出) 乙第4号証: 鈴木正人監修「有用性化粧品の処方とその活用」、2016年11月9日(普及版・第1刷)(2010年8月20日(初版))、株式会社シーエムシー出版、第4~7頁、表紙、奥付 乙第5号証: 森田浩 他、「EXCELでここまでできる実験計画法」、2011年9月22日、財団法人 日本規格協会、第138~139頁、表紙、奥付 乙第6号証: 水越興治、「毛穴の開きのメカニズム」、Fragrance Journal,2017.2,Vol.45,No.2,p12-21 乙第7号証: 飯田年以 他、「角栓の成長を抑えるケア法の開発」、Fragrance Journal,2017.2,Vol.45,No.2,p22-27 (以上、口頭審理陳述要領書とともに提出) 乙第8号証: 特開2008-63292号公報 乙第9号証: 安全データシート スクアラン、関東化学株式会社、平成15年11月7日(作成日)、平成25年4月24日(改訂日) 乙第10号証: Squalane、東京化成工業株式会社、令和3年6月6日(出力日) (以上、令和3年7月13日付け上申書とともに提出) 乙第6号証: 上記乙6号証の表紙の補充 乙第7号証: 上記乙7号証の表紙の補充 (以上、令和3年12月21日付け上申書とともに提出) 乙第11号証: 令和2年(ワ)第22071号判決 令和4年2月18日言渡判決 東京地方裁判所 乙第12号証: 訂正2019-390011号 平成31年2月27日付け訂正拒絶理由通知書 (以上、令和4年2月21提出の上申書とともに提出) 乙第13号証: 令和4年(ネ)第10029号 令和4年10月7日付け上告受理申立書 乙第14号証: 令和4年(ネ受)第10029号 令和4年11月2日付け上告受理申立理由書 乙第15号証: 令和5年(受)第242号 令和5年2月2日付け記録到着通知書 (以上、令和5年3月12日提出の審理再開申立書とともに提出) 以下、乙号証は、号証番号に応じて「乙1」などという。 なお、乙11については、令和4年3月2日に営業秘密に関する申出書が提出されている。 第7 無効理由1、2に対する当審の判断 1 証拠の記載事項 請求人が提出した甲1~3、甲4の1、甲5の1~甲5の3には、それぞれ以下の事項が記載されている。 また、下線は合議体が付した。 (1) 甲1の記載事項 甲1-ア 「 [図:0001413660000001.jpg] セルソアン クレンジングオイル オリーブオイルベースの洗い流し専用クレンジングオイル 内容量 200mL 価格8,400円(税込) * 業務用1L 業務用定価21,000円(税込) 内容成分 ミネラルオイル、オリーブ油、ポリソルベート85、トリオレイン酸ソルビタン、オクチルドデカノール、スクワラン、ゴマ油、ユーカリシトリオドラ油、ライム油、ウイキョウ油、レモン油、アンマロク果実エキス、ニンニクエキス、マスタード油、ヒトオリゴペプチド-1、マンニトール、ビタミンA油、トコフェロール、水 ご使用方法 1度に2~3プッシュのオイルを手のひらにとり、よくメイクとなじむようマッサージして下さい。その後ぬるま湯を加えるとお肌の上で白く乳化しますので、そのまま洗い流して下さい。寒い季節などは手のひらで少し暖めてから使うとメイク落ちがよくなります。 Sales Point エクストラバージンオリーブオイルをベースに、オイル抽出された6種類の高濃度植物エキスとビタミンA、EGFの相乗効果で、お肌に負担をかけることなくメイクを落としてくれます。オイルなのに洗い流した後はべとつかずサッパリとした使用感です。毛穴の中までスルッと入り込み、落ちにくいメイクも毛穴の汚れもすっきりきれいに落とします。角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れもすっきり。」 (2) 甲2の記載事項 甲2-ア 「● レセプトII クレンジングミルク 成分名 ミネラルオイル 水 オクチルドデカノール ポリソルベート40 パルミチン酸ソルビタン BG イソステアリン酸ソルビタン フェノキシエタノール レシチン スクワラン ローズマリー油 クオタニウム-73 カミツレエキス キダチアロエエキス-1」 (3) 甲3の記載事項 甲3-ア 「デイライト シェイクシェイク クレンジング デイライト ・・・ 商品の説明 商品説明 「デイライト シェイクシェイク クレンジング」は、オイル成分、洗浄成分、うるおい成分が3層になった、シェイクして使用するタイプのクレンジングオイルです。お肌の負担になる界面活性剤や乳化剤を一切使用していないため、3層に分かれています。オイル成分には、100%オーガニックのオリーブとホホバから抽出した植物オイルを使用。保湿成分として、ひまわり種子エキス(セラミド)を配合。お肌にやさしい洗浄成分でしっかりクレンジングしながら、うるおいを保ちます。無香料、無着色料、無鉱物油。 ご使用方法 1.成分が3層に分かれていますので、ご使用になられる前にボトルを振ってください。 2.適量(ポンプ2-3プッシュ分)を手に取り、やさしくマッサージするように顔全体に伸ばしてください。 3.汚れが浮きあがってきたら、ぬるま湯でしっかり洗い流し、石鹸またはフォームで洗顔してください。 振って使用するタイプですのでボトル一杯に液剤が入ってません。ご使用期間中、3つの成分が均一に減っていない場合があっても使用効果には問題がありませんが、使用前にボトルを十分に振ってください。 全成分表示 グリセリン、ポリソルベート80、スクワラン、バルミチン酸イソプロピル、PEG-7グリセリルココエート、オリーブ油、水、ホホバ油、マルチトール、イソナン酸オクチル、フェノキシエタノール、銅クロロフィリンナトリウム、スピルナリプランテンシスエキス、トレハロース、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、フェネチルアルコール、水添クチドデkノール、オクチドデカノール、ひまわり種子エキス」 (4) 甲4の1の記載事項 甲4の1-ア 「ポリソルベートの構造とその特性 ポリソルベートは、ソルビタン脂肪酸エステル(非イオン性界面活性剤)に酸化エチレンを反応させて作られたもので、親水性の乳化剤です。」 甲4の1-イ 「ポリソルベート80 英名:Polyoxyethylene (20) sorbitan monooleate, Polysorbate 80 別名:モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80) CAS 番号:9005-65-6 定義:ソルビトール及び無水ソルビトールの水酸基の一部を主としてオレイン酸でエステル化し,酸化エチレン約20分子を縮合させたものである。 参考 ポリソルベート40 英名: Polyoxyethylene (20) sorbitan monopalmitate, Polysorbate 40 別名:モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン (Tween 40) CAS 番号:9005-66-7 ポリソルベート85 英名:Polyoxyethylene (20) sorbitan trioleate, Polysorbate 85 別名:トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン (Tween 85) CAS 番号: 9005-70-3」 (5) 甲5の1~甲5の3の記載事項 ア 甲5の1に記載された事項 甲5の1-ア 「【0001】 本発明は角栓除去効果に優れた角栓除去用組成物に関する。さらには、特定のノニオン性界面活性剤や水を配合し、メイク落しとして使用できる角栓除去用組成物に関する。」 (【0001】) 甲5の1-イ 「【0016】 本発明に用いられる(d)常温で液状乃至ペースト状であるHLB=6~17のノニオン性界面活性剤としては、常温(約25℃)で液状を呈すし、通常化粧料に使用されているものであれば特に制限はない。例えば、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、などが例示され、脂肪酸残基としてはオレイン酸残基、イソステアリン酸残基、ラウリン酸残基を含むものが好適である。またPOE硬化ヒマシ油系の界面活性剤やソルビタン系界面活性剤を用いることも可能である。 【0018】 本発明の角栓除去用組成物において、前記(d)常温で液状乃至ペースト状であるHLB=6~17のノニオン性界面活性剤を配合する場合は、角栓除去用組成物全量に対して5~40質量%配合され、好ましくは10~20質量%配合される。5質量%以下では、水での洗い流すことが難しく、また組成物の安定性が悪くなる。逆に40質量%以上配合しても、それ以上洗浄性を高めることはできず、また界面活性剤が皮膚に負担を与えるので好ましくない。」 (【0016】、【0018】) 甲5の1-ウ 「【0034】 【表2】 [図:0001413660000002.jpg] 【0037】 【表3】 [図:0001413660000003.jpg] 」 (【0034】表2、【0037】表3) イ 甲5の2に記載された事項 甲5の2-ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 毛穴との接触時間が少なくとも1分以上であり、使用後に洗い流す態様で使用される角栓除去用の化粧料組成物であって、1)水1~4質量%と、2)N-アシルアミノ酸のエステル0.05~3質量%と、3)分岐のアルキル基を分子内に有する親水性非イオン界面活性剤10~20質量%とを含有することを特徴とする、角栓除去用の化粧料組成物。」(特許請求の範囲の請求項1) 甲5の2-イ 「【0009】 本発明によれば、クレンジング料における角栓除去作用を向上させる技術を提供することができる。 【0012】 <3>本発明の化粧料組成物の必須成分である非イオン界面活性剤 本発明の化粧料組成物は、分岐のアルキル基を分子内に有する親水性非イオン界面活性剤を必須成分として、10~20質量%、より好ましくは12~15質量%含有することを特徴とする。ここで、親水性とは、HLB(親水性親油性バランス)が少なくとも8以上であり、具体的には、ポリオキシエチレン基を有するものであれば、付加モル数10以上のものが好ましい。又、分岐のアルキル基は、アルキル基として有しても良く、アシル基として有しても良い。アルキル基であれば、イソステアリル基、オクチルドデシル基などが好適に例示でき、アシル基であれば、2-エチルヘキサノイル基、イソパルミトイル基、イソステアロイル基などが好適に例示できる。好ましい界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(12)イソステアリン酸エステル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル等が好適に例示できる。かかる成分は、前記の如くに、水とともにミセルを形成し、組成物のウォッシュオフ性を担保するとともに、前記N-アシルアミノ酸のエステルとともに働いて、角栓を固着せしめている脂質を溶解し、角栓を毛穴の外へ抜き出す作用を有する。本発明の化粧料組成物では、通常のクレンジング剤でありながら、シート状の角栓除去剤と同程度の角栓除去効果を奏する。分岐のアルキル基を分子内に有する親水性非イオン界面活性剤の量が多すぎるとクレンジング機能を損なう場合が存し、少なすぎると、クレンジング機能、ウォッシュオフ機能、角栓除去機能を損なう場合が存する。」 (【0009】、【0012】) 甲5の2-ウ 「【実施例1】 【0017】 下記に示す処方に従って、本発明の化粧料組成物である、化粧料組成物1を得た。即ち、処方成分を80℃で加熱しながら、攪拌し可溶化し、攪拌冷却し、透明なオイル状の化粧料組成物1を得た。同様に操作して、「エルデュウPS203」をPOE(12)イソステアリン酸に置換した比較例1、POE(12)イソステアリン酸をPOE(10)オレイン酸に、且つ、イソステアリン酸POE(20)グリセリルをオレイン酸POE(20)グリセリルに置換した比較例2、水を炭酸ジカプリルに置換した比較例3及び「エルデュウPS203」並びにPOE(12)イソステアリン酸をPOE(10)オレイン酸に、イソステアリン酸POE(20)グリセリルをオレイン酸POE(20)グリセリルに、且つ、水を炭酸ジカプリルに置換した比較例4も同様に製造した。比較例1、比較例2は透明なオイル状を呈し、比較例3、比較例4は少し白濁したオイル状を呈した。 【0018】 【表1】 [図:0001413660000004.jpg] 【0019】 <評価1> 化粧料組成物1、比較例1~4について、化粧料組成物を化粧料(オイルクレンジング)として使用した場合の角栓除去効果を調べた。方法は、半顔に検体を延展し、3分間擦過した後、温水を用いて、洗顔料で洗顔した後、市販の角栓除去シートで角栓を除去し、シートに固着した単位面積あたりの角栓数を顕微鏡下計数した。残る半顔は石鹸で洗顔した後、市販の角栓除去シートで角栓を除去しシートに固着した、単位面積あたりの角栓数を顕微鏡下計数した。処理有りの角栓数を処理無しの角栓数で除し、100を乗じた値を角栓残存率とし、この多少で角栓除去能を評価した。結果を表2に示す。これより、本発明の化粧料組成物は角栓除去作用に優れることが分かる。 ウ 甲5の3に記載された事項 甲5の3-ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】粘度が5~80mPa・s/25℃の油分を50質量%以上含有することを特徴とする角栓除去用化粧料。 【請求項2】化粧料全体の粘度が10~70mPa・s/25℃であることを特徴とする請求項1記載の角栓除去用化粧料」(特許請求の範囲) 甲5の3-イ 「【0003】 【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる従来技術の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、粘度が5~80mPa・s/25℃の油分を50質量%以上配合した化粧料を用いて、皮膚をマッサージすると、皮膚に刺激を与えることなく、角栓を毛穴から効果的に浮き出させて除去しうることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0003】) 甲5の3-ウ 「【0007】本発明に用いられる粘度が5~80mPa・sの油分としては、たとえば、流動パラフィン(粘度24mPa・s、47mPa・s)、合成パラフィン(粘度30mPa・s)、スクワラン(粘度23mPa・s)オクタン酸セチル(粘度17mPa・s)、イソプロピルミリステート(粘度32mPa・s)、トリオクタン酸グリセリン(粘度35mPa・s)、イソステアリン酸(粘度51mPa・s)、オレイルアルコール(粘度54mPa・s)、オリーブオイル(粘度72mPa・s)、ジメチコーン(粘度8mPa・s)、シクロメチコーン(粘度7mPa・s)等があげられる。」(【0007】) 甲5の3-エ 「【0011】本発明にかかる角栓除去用化粧料には、必須成分である前記油分のほかに、界面活性剤、水、エタノール、高価アルコール、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、皮膚栄養剤など、通常化粧料に用いられるその他の成分を、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜適量配合することができる。」 甲5の3-オ 「【0021】実施例6:クレンジングオイル (質量%) (1)流動パラフィン(粘度:24mPa・s) 27.0 (2)メチルフェニルポリシロキサン(粘度:17mPa・s) 5.0 (3)オクタン酸セチル(粘度:17mPa・s) 20.0 (4)オリーブ油(粘度:72.5mPa・s) 30.0 (5)ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(POE12) 7.0 (5)ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(POE8) 3.0 (6)モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール(POE10)5.0 (7)アルコール 適量 (8)d-δ-トコフェロール 適量 (9)精製水 残余」 (【0021】) 2 引用発明 (1) 甲1に記載された発明 摘記甲1-アの記載から、甲1には以下の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。 「以下の成分からなる、角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れもすっきりするクレンジングオイル ミネラルオイル、オリーブ油、ポリソルベート85、トリオレイン酸ソルビタン、オクチルドデカノール、スクワラン、ゴマ油、ユーカリシトリオドラ油、ライム油、ウイキョウ油、レモン油、アンマロク果実エキス、ニンニクエキス、マスタード油、ヒトオリゴペプチド-1、マンニトール、ビタミンA油、トコフェロール、水。」 (2) 甲2に記載された発明 摘記甲2-アの記載からみて、甲2には、以下の発明が記載されている(以下、「甲2発明」という。)。 「以下の成分からなる、クレンジングミルク ミネラルオイル、水、オクチルドデカノール、ポリソルベート40、パルミチン酸ソルビタン、BG、イソステアリン酸ソルビタン、フェノキシエタノール、レシチン、スクワラン、ローズマリー油、クオタニウム-73、カミツレエキス、キダチアロエエキス-1。」 (3) 甲3に記載された発明 摘記甲3-アの記載からみて、甲3には、以下の発明が記載されている(以下、「甲3発明」という。)。 「以下の成分からなる、クレンジングオイル グリセリン、ポリソルベート80、スクワラン、バルミチン酸イソプロピル、PEG-7グリセリルココエート、オリーブ油、水、ホホバ油、マルチトール、イソナン酸オクチル、フェノキシエタノール、銅クロロフィリンナトリウム、スピルナリプランテンシスエキス、トレハロース、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、フェネチルアルコール、水添クチドデkノール、オクチドデカノール、ひまわり種子エキス。」(合議体注:誤記はそのままとした。) 3 甲1発明に対して (1) 対比 本件発明と甲1発明を対比する。 甲1発明の「水」は、本件発明の「水」に相当する。 甲1発明の「オクチルドデカノール」、「スクワラン」は、本件発明の「オクチルドデカノール」、「スクアラン」に相当する。また、本件発明の「水への溶解度より多い量の」との炭化水素に付された特定について、炭化水素であるスクワランが水に溶けないとの技術常識からみれば、その含有量が0より大であることとを意味するにすぎず、本件発明と甲1発明との間において相違点とはならない。 甲1発明の「ポリソルベート80」は、甲4の1-ア、イの記載からみて、「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン」であり、周知の非イオン性界面活性剤であるから、本件発明の「界面活性剤」に相当する。 甲1発明の「角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れもすっきりするクレンジングオイル」は、本件発明の「角栓除去用液状クレンジング剤」に相当する。 甲1発明に含まれる「オクチルドデカノール」、「スクワラン」、「ポリソルベート85」以外の成分について、本件発明も他の成分を含んでもよいから、この点は両発明における相違点とはならない。 そうすると、両発明は 「水と、 オクチルドデカノールと、 水への溶解度より多い量のスクアランと、 界面活性剤と、 を含む角栓除去用液状クレンジング剤」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点a> 本件発明は、界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」と特定しているのに対し、甲1発明ではこのような特定はない点。 (2) 判断 ア 無効理由1(新規性欠如)について 上記のように、本件発明と甲1発明は相違点aが存在するから、本件発明は、甲1に記載された発明ではなく、新規性に関する無効理由1はその理由がない。 イ 無効理由2(進歩性欠如)について (ア) 相違点aについて 相違点aについて検討する。 本件発明は、角栓除去用液状クレンジング剤に含まれる界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」と特定しているが、これは、特許権の設定登録に至る前の、拒絶査定不服審判(不服2017-012650)における平成29年11月2日付けで特許法第39条第2項に基づく拒絶理由が通知され、分割出願である本件特許の出願の原出願の特許第6120423号における特許請求の範囲に記載された請求項1に係る以下の発明と、同一の発明とならないことを目的として特定したものである。 「オクチルドデカノールと、 リモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と、 全量に対して0~10体積%である界面活性剤と、 を含む角栓除去用液状クレンジング剤。」 そして、液状クレンジング剤に含まれる界面活性剤の配合量として、甲5の1~3には、上記1(5)の摘記甲5の1-ア~甲5の3-オの記載があり、具体的には、 ・甲5の1には、角栓除去効果に優れた角栓除去用組成物に関して、特定のノニオン系界面活性剤と水を含むこと(摘記甲5の1-ア)、HLB値6~17のノニオン性界面活性剤が5~40質量%の割合で含まれることが記載され(摘記甲5の1-イ、ウ)、 ・甲5の2には、クレンジング料における角栓除去作用を向上させる技術に関して、角栓除去用の化粧料組成物に、水を1~4質量%、分岐のアルキル基を有する親水性非イオン性界面活性剤を10~20質量%含むことが記載され(摘記甲5の2-ア~甲5の2-ウ)、 ・甲5の3 甲5の3には、粘度が5~80mPa・s/25℃の油分を50質量%以上含有する角栓除去用化粧料が記載されており(摘記甲5の3-ア~エ)、クレンジングオイルとして、実施例6に、水と、界面活性剤が15重量%含まれるものが記載されている(甲5の3-オ)。 そして、これらの記載から水を含む液状クレンジング剤における界面活性剤の割合として、体積%ではなく質量%の単位ではあるが10質量%を超える例が多々あることが理解できるから、このような技術常識からみて、界面活性剤の配合量を「全量に対して0~10体積%ではない」量とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 (イ) 本件発明の効果について 本件発明の効果について検討する。 本件発明の効果は、皮膚等に付着したタンパク質を抽出洗浄するというものであり(本件特許明細書【0064】、【0071】)、具体的には、角栓のある皮膚に対する市販の石けんよりも高い洗浄効果を示すというものであるところ(本件特許明細書【0141】、【0149】)、本件特許明細書には、界面活性剤が全量に対して0~10体積%の実施例しかないことから、界面活性剤を全量に対して0~10体積%であるものを除いた量で配合することにより、格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。そして、甲1には「角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れもすっきり。」との記載のとおり、角栓の除去についての記載もあるから当業者が当然に想起し得たものである。 (ウ) 被請求人の主張について a 被請求人の主張の概要 被請求人は、審判事件答弁書において、以下の主張をしている。 ・(主張1) 本件発明は、オクチルドデカノールと、スクワラン等の所定の炭化水素と、界面活性剤(但し、0~10体積%のものを除く。)と、の3種類が特定されている点において甲1発明と相違し(相違点1)、当業者が甲1に接しても、角栓除去効果をもたらす物質が何であるかは相当多数の試行錯誤を経なければ知りえず、甲1からオクチルドデカノールと、スクワランと、の組み合わせを見つけ出すのは困難であり、さらに界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)を組み合わせるのはなおさら困難であるから、甲1から本件発明を容易に発明できたとの論理付けは困難である(審判事件答弁書第9頁第9~18行)。 ・(主張2) この製品(商品名「セルソアン クレンジングオイル」)は、本件特許の審査における拒絶査定不服審判(不服2017-012650)において、第三者より提出された刊行物提出書により特許庁の審判官合議体に提出された刊行物1(乙2)に記載の製品である。 審判官合議体はこの製品の組成とその効果が公知であることを前提に本件特許にかかる出願に対して特許審決を行っている。 この事実からも、本件発明は甲1に対して新規性、進歩性を有する。(審判事件答弁書第9頁第19行~第10頁第2行) また、口頭審理陳述要領書においても同様の主張を行っており、さらに以下の主張もしている。 ・(主張3) 主引用文献である甲1と副引用文献である甲5の1~3を組み合わせたとしても、各副引用文献には界面活性剤が0~10体積%が含まれているため、主引用文献と副引用文献を組み合わせる際の阻害要因となる(口頭審理陳述要領書第5頁3行~第10頁第7行)。 そして、訂正請求書の手続補正書において、以下の主張もしている。 ・(主張4) 本件発明の「水の溶解量よりも多い量のリモネン、スクアラン、及びスクアレンからなる群から選ばれる1種以上の炭化水素と」との構成は、請求人の提出したいずれの証拠にも記載がなく、新規性がある。(訂正請求書の手続補正書第6頁第5~18行) ・(主張5) 本件発明においては炭化水素の油層ないし油を含む分子集合体にタンパク質を一度抽出し、これをオクチルドデカノールによって水層ないし水を含む分子集合体に再抽出するが、この技術思想は請求人の提出したいずれの証拠にも記載がなく、この構成の差により、本件発明では一度抽出されたタンパク質汚れは水層に存在するため、洗浄が極めて容易になるという各証拠にない効果を奏するものであり、請求人の提出した各証拠に接しても容易に発明できたとの論理付けは困難である。(訂正請求書の手続補正書第6頁第20行~第7頁第7行) b 被請求人の主張に対する判断 まず、主張1について検討する。 本件発明において、オクチルドデカノールと、スクワラン等の炭化水素と、界面活性剤との3種類の配合成分が「角栓除去効果をもたらす物質」であり、甲1発明からこれらの成分の組み合わせを見つけるのは容易ではない旨の主張するものの、本件発明においてこれらの3成分はそのような修飾を伴って特定されているわけではない。そして、甲1発明では、液状クレンジング剤に配合される成分の全てが液状クレンジング剤に必須のものとして特定されており、本件発明においてこのような特定があったとしても、液状クレンジング剤としてみた場合に、実質的に、本件発明と甲1発明のこれら成分が異なるものでもない。 また、界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」とする特定の点も原出願の特許との関係で特定した事項であり、この点について本件明細書に技術的な意義が記載されているものでもなく、本件明細書には実施例もないから、上記(ア)及び(イ)で検討したとおり、当業者が容易になし得た事項である。 主張2について検討するに、甲1と乙2とは、証拠として同じ「セルソアン クレンジングオイル」なる製品について記載するものではあるが、前者は、当該製品について紹介する株式会社バイオリンクのホームページのWayback Machineのプリントアウトであって、後者は、当該製品の購入を可能にするAmazonの記事のプリントアウトであり、証拠としては両者は異なり、また、各々の証拠により得られる情報も異なるから、これらの証拠に基づいたそれぞれの判断が必ずしも同じとならないことは特段不合理ではない。 主張3について検討するに、甲5の1~3等の副引用文献には界面活性剤が全量に対して0~10体積%が含まれる例があるものの、同時にそうでない例も記載されており、これは、液状クレンジング剤の界面活性剤の含有量には10質量%を優に超えるものもあることを示している。そして、後者の「そうでない例」は、液状クレンジング剤において「(界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」との範囲で、すなわち、全量に対して10体積%を超える範囲でも普通に界面活性剤が用いられていることの根拠となるから、甲5の1~3に界面活性剤が全量に対して0~10体積%含まれる例があったとしても、そのことをもって直ちに主引用文献である甲1と組み合わせる上での阻害要因とはならない。 主張4について検討するに、請求人の主張4の趣旨は、本件発明の「水への溶解度より多い量の」との炭化水素に係る特定により、甲1発明に対してさらに相違点が生じるというものと解されるが、上記(1)の対比で述べたとおり、本件発明における当該特定により、甲1発明に対して新たな相違点が生じるものではない。 主張5について検討するに、本件発明と甲1発明とは、界面活性剤の量の特定以外に相違点はなく、スクアラン、オクチルドデカノール、水、界面活性剤との同じ構成成分を含むものであり、甲1には、 「1度に2~3プッシュのオイルを手のひらにとり、よくメイクとなじむようマッサージして下さい。その後ぬるま湯を加えるとお肌の上で白く乳化しますので、そのまま洗い流して下さい。」、 「オイルなのに洗い流した後はべとつかずサッパリとした使用感です。毛穴の中までスルッと入り込み、落ちにくいメイクも毛穴の汚れもすっきりきれいに落とします。角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れもすっきり。」 などの記載があり、当業者は、甲1の記載から、本件発明がメイクや汚れを極めて容易に洗浄できるものであることを予測する。 したがって、被請求人の主張1~5はいずれも採用できない。 ウ 小活 以上のとおり、本件発明は、甲1に記載された発明並びに甲4の1、甲5の1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効にすべきものである。 4 甲2発明に対して (1) 対比 甲2発明を再掲する。 「以下の成分からなる、クレンジングミルク ミネラルオイル、水、オクチルドデカノール、ポリソルベート40、パルミチン酸ソルビタン、BG、イソステアリン酸ソルビタン、フェノキシエタノール、レシチン、スクワラン、ローズマリー油、クオタニウム-73、カミツレエキス、キダチアロエエキス-1。」 本件発明と甲2発明を対比する。 甲2発明の「水」は、本件発明の「水」に相当する。 甲2発明の「オクチルドデカノール」、「スクワラン」は、本件発明の「オクチルドデカノール」、「スクアラン」に相当する。また、スクワランは炭化水素であり、炭化水素が水に溶けないとの技術常識からみれば、本件発明の「水への溶解度より多い量の」との特定によって、甲2発明との間に、その含有量について何らかの差異が生じるものではない。 甲2発明のポリソルベート40は、甲4の1-ア、イの記載から「モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン」であって、周知の非イオン性界面活性剤であるから、本件発明の「界面活性剤」に相当する。 甲2発明の「クレンジングミルク」は、本件発明の「液状クレンジング剤」に相当する。 甲2発明に含まれる「オクチルドデカノール」、「スクワラン」、「ポリソルベート40」以外の成分について、本件発明も他の成分を含んでもよいから、この点は両発明における相違点とはならない。 そうすると、両発明は 「水と オクチルドデカノールと、 水への溶解度より多い量のスクアランと、 界面活性剤と、 を含む液状クレンジング剤。」 の発明である点で一致し、以下の2点で相違する。 <相違点b1> 本件発明は、界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」と特定しているのに対し、甲2発明はこのような特定はない点。 <相違点b2> 本件発明は、「角栓除去用」の液状クレンジング剤であるのに対し、甲2発明はこのような特定はない点。 (2) 判断 ア 無効理由1(新規性欠如)について 上記のように、本件発明と甲2発明には、相違点b1、b2が存在するから、本件発明は、甲2に記載された発明ではなく、新規性に関する無効理由1はその理由がない。 イ 無効理由2(進歩性欠如)について (ア) 相違点について a 相違点b1について まず、相違点b1について検討する。 液状クレンジング剤に含まれる界面活性剤の配合量については、上記3(2)イ(ア)において相違点aについて検討したのと同様であり、甲5の1~3の記載からみれば、液状クレンジング剤における界面活性剤の割合として、質量%の単位ではあるが10質量%を超える例が多々あることが理解できるから、このような技術常識からみて、界面活性剤の配合量を全量に対して0~10体積%ではない量とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 b 相違点b2について 次に、相違点b2について検討する。 甲5の3には、粘度が5~80mPa・s/25℃の油分を50質量%以上配合した化粧料を用いて、皮膚をマッサージすると、皮膚に刺激を与えることなく、角栓を毛穴から効果的に浮き出させて除去しうること(摘記甲5の3-ア、イ)、当該粘度が5~80mPa・sの油分としては、流動パラフィン(粘度24mPa・s、47mPa・s)、合成パラフィン(粘度30mPa・s)、スクワラン(粘度23mPa・s)等があげられることが記載されている(摘記甲5の3-エ)。 そして、甲2発明は、ミネラルオイル、スクワランなどの液状油分を含み、ミネラルオイルを主成分とする液状クレンジングミルクに関するものであり、ミネラルオイルは流動パラフィンの別名称であるから、甲5の3の上記記載を参考にして、甲2発明において、スクワランなどの粘度が5~80mPa・s/25℃の油分の含有量を50質量%以上とし、角栓を除去することを目的とすることに何ら困難はない。 そうすると、甲2発明において、甲5の3に記載された事項に基づいて、「角栓除去用」との用途を付与することは、当業者であれば容易になし得たことである。 (イ) 本件発明の効果について 本件発明の効果については、上記3(2)イ(イ)で述べたとおりであり、甲2発明に対して当業者が想起し得ないほどの格別顕著な効果を奏するとは認められない。 (ウ) 被請求人の主張について a 被請求人の主張の概要 被請求人は、審判事件答弁書において、以下の主張をしている。 ・(主張6) 本件発明は、オクチルドデカノールと、スクワラン等の所定の炭化水素と、界面活性剤(但し、0~10体積%のものを除く。)と、の3種類が特定されている点において相違する(相違点1)。 ここで、当業者が甲2に接しても、角栓除去効果をもたらす物質が何であるかは相当多数の試行錯誤を経なければ知りえない。 そうすると、甲2からオクチルドデカノールと、スクワランとの組み合わせを見つけ出すのは困難であり、さらに界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)を組み合わせるのはなおさら困難あるから、甲2から本件発明を容易に発明できたとの論理付けは困難である。(審判事件答弁書第10頁第15~26行) また、口頭審理陳述要領書においても同様の主張を行っている。 ・(主張7) 甲2発明と本件発明との相違点は、合議体が認定した相違点b1及び相違点b2に加え、次の相違点(以下、相違点b3という。)もある。 (相違点b3) 本件発明は、オクチルドデカノールと、スクワランと、界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)と、の三成分が特定されているのに対し、甲2発明においては有効成分の特定がなされていない点。(口頭審理陳述要領書第4頁第4~10行) ・(主張8) 甲2発明から本件発明が特定する成分を見つけ出すには、実施不可能な回数の試行錯誤が必要である。 そして、化粧品業界においてはこのような試行錯誤は通常行わない。(口頭審理陳述要領書第5頁第5~8行) さらに、訂正請求書の手続補正書において、上記3(2)イ(ウ)aの主張4、5について、甲1発明と同様に、甲2発明についても主張しているので、再掲する。 ・(主張4) 本件発明の「水の溶解量よりも多い量のリモネン、スクアラン、及びスクアレンからなる群から選ばれる1種以上の炭化水素と」との構成は、請求人の提出したいずれの証拠にも記載がなく、新規性がある。(訂正請求書の手続補正書第6頁第5~18行) ・(主張5) 本件発明においては炭化水素の油層ないし油を含む分子集合体にタンパク質を一度抽出し、これをオクチルドデカノールによって水層ないし水を含む分子集合体に再抽出するが、この技術思想は請求人の提出したいずれの証拠にも記載がなく、この構成の差により、本件発明では一度抽出されたタンパク質汚れは水層に存在するため、洗浄が極めて容易になるという各証拠にない効果を奏するものであり、請求人の提出した各証拠に接しても容易に発明できたとの論理付けは困難である。(訂正請求書の手続補正書第6頁第20行~第7頁第7行) b 被請求人の主張に対する判断 主張4について検討するに、上記(1)において判断したとおり、本件発明において「水への溶解度より多い量の」との炭化水素に係る特定により、甲2発明に対する新規性が生じるものではない。 主張5について検討するに、本件発明と甲2発明とは、本件発明界面活性剤の量の特定以外に相違点はなく、スクアラン(スクワラン)、オクチルドデカノール、水、界面活性剤との同じ構成成分を含むものであって、甲2に「クレンジングミルク」として記載されているとおり、甲2発明は、乳化形態のクレンジング剤であるから、当業者は、甲2の記載から本件発明がメイクや汚れを極めて容易に洗浄できるものであることを予測する。 主張6と、主張7及び8を合わせた主張は、ほぼ同じ内容に係るものであるからまとめて検討する。 本件発明において、「オクチルドデカノール」と、「スクワラン」等の炭化水素と、「界面活性剤(但し、0~10体積%のものを除く。)」との3種類の成分が、角栓除去効果をもたらす物質であるとの修飾を伴って特定されているわけではなく、甲2発明では、これらの成分が液状クレンジング剤における必須成分として配合されているのであるから、この点において両発明は相違しないし、主張6、8のように成分特定のための試行錯誤を行う必要性もない。 また、「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」とする特定の点も原出願の特許との関係で特定した事項であり、この点について本件特許明細書に技術的な意義が記載されているものでもない上に、本件特許明細書には本件発明に係る実施例もないから、上記(ア)及び(イ)で検討したとおり、当業者が容易になし得た事項である。 したがって、被請求人の主張4~8はいずれも採用できない。 ウ 小活 以上のとおり、本件発明は、甲2に記載された発明並びに甲4の1及び甲5の1~3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものである。 5 甲3発明に対して (1) 対比 甲3発明を再掲する。 「以下の成分からなる、クレンジングオイル グリセリン、ポリソルベート80、スクワラン、バルミチン酸イソプロピル、PEG-7グリセリルココエート、オリーブ油、水、ホホバ油、マルチトール、イソナン酸オクチル、フェノキシエタノール、銅クロロフィリンナトリウム、スピルナリプランテンシスエキス、トレハロース、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、フェネチルアルコール、水添クチドデkノール、オクチドデカノール、ひまわり種子エキス。」(合議体注:誤記はそのままとした。) 本件発明と甲3発明を対比する。 甲3発明の「水」は、本件発明の「水」に相当する。 甲3発明の「オクチドデカノール」はその化合物名からみて「オクチルドデカノール」の誤記と認められるから、甲3発明の「オクチドデカノール」は本件発明の「オクチルドデカノール」に相当し、また、甲3発明の「スクワラン」は、本件発明の「スクアラン」に相当する。また、スクワランは炭化水素であり、炭化水素が水に溶けないとの技術常識からみれば、本件発明の「水への溶解度より多い量の」との特定によって、甲3発明との間に、その含有量について何らかの差異が生じるものではない。 甲3発明のポリソルベート80は、甲4の1によれば「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン」であって、周知の非イオン性界面活性剤であるから、本件発明の「界面活性剤」に相当する(摘記甲4の1-ア、イ)。 甲3発明の「クレンジングオイル」は、本件発明の「液状クレンジング剤」に相当する。 甲3発明に含まれる「オクチドデカノール」、「スクワラン」、「ポリソルベート80」以外の成分について、本件発明も他の成分を含んでもよいから、この点は両発明における相違点とはならない。 そうすると、両発明は 「水と、 オクチルドデカノールと、 水への溶解度より多い量のスクアランと、 界面活性剤と、 を含む液状クレンジング剤。」 の発明である点で一致し、以下の2点で相違する <相違点c1> 本件発明は、界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」と特定しているのに対し、甲3発明はこのような特定はない点。 <相違点c2> 本件発明は、「角栓除去用」の液状クレンジング剤であるのに対し、甲3発明はこのような特定はない点。 (2) 判断 ア 無効理由1(新規性欠如)について 上記のように、本件発明と甲3発明には、相違点c1、c2が存在するから、本件発明は、甲3に記載された発明ではなく、新規性に関する無効理由1はその理由がない。 イ 無効理由2(進歩性欠如)について (ア) 相違点について a 相違点c1について 相違点c1について検討するに、液状クレンジング剤に含まれる界面活性剤の配合量については、上記3(2)イ(ア)において相違点aについて検討したのと同様であり、甲5の1~3の記載からみれば、液状クレンジング剤における界面活性剤の割合として、重量%(又は質量%)の単位であるが10重量%を超える例が多々あることが理解できるから、このような技術常識からみて、界面活性剤の配合量を全量に対して0~10体積%ではない量とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 b 相違点c2について 相違点c2について検討する。 甲5の3には、粘度が5~80mPa・s/25℃の油分を50質量%以上配合した化粧料を用いて、皮膚をマッサージすると、皮膚に刺激を与えることなく、角栓を毛穴から効果的に浮き出させて除去しうること(摘記甲5の3-ア、イ)、当該粘度が5~80mPa・sの油分としては、流動パラフィン(粘度24mPa・s、47mPa・s)、合成パラフィン(粘度30mPa・s)、スクワラン(粘度23mPa・s)、オリーブオイル(粘度72mPa・s)等があげられることが記載されている(摘記甲5の3-エ)。 そして、甲3発明は、スクワラン、オリーブ油などの液状油分を含むクレンジングオイルに関するものであるところ、甲5の3の記載を参考にして、甲3発明において、粘度が5~80mPa・s/25℃の油分に相当するスクワランやオリーブオイル等の油分の含有量を50質量%以上とし、角栓を除去することを目的とすることに何ら困難はない。 そうすると、甲3発明において、甲5の3に記載された事項に基づいて「角栓除去用」との用途を付与することは、当業者であれば容易になし得たことである。 (イ) 本件発明の効果について 本件発明の効果については、上記3(2)イ(イ)で述べたとおりであり、甲3発明に対して当業者が想起し得ないほどの格別顕著な効果を奏するとは認められない。 (ウ) 被請求人の主張について a 被請求人の主張の概要 被請求人は、審判事件答弁書において、以下の主張をしている。 (主張9) 本件発明は、オクチルドデカノールと、スクワラン等の所定の炭化水素と、界面活性剤(但し、0~10体積%のものを除く。)と、の3種類が特定されている点において相違する(相違点1)。 ここで、当業者が甲3に接しても、角栓除去効果をもたらす物質が何であるかは相当多数の試行錯誤を経なければ知りえない。 そうすると、甲3からオクチルドデカノールと、スクワランと、の組み合わせを見つけ出すのは困難であり、さらに界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)を組み合わせるのはなおさら困難あるから、甲3から本件発明を容易に発明できたとの論理付けは困難である。(審判事件答弁書第11頁第9~18行) また、口頭審理陳述要領書においても同様の主張を行っている。 ・(主張10) 甲3発明と本件発明との相違点は、合議体が認定した相違点c1及び相違点c2に加え、次の相違点(以下、相違点c3という。)もある。 (相違点c3) 本件発明は、オクチルドデカノールと、スクワランと、界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)と、の三成分が特定されているのに対し、甲3発明においては有効成分の特定がなされていない点。(口頭審理陳述要領書第4頁第15行~第5頁第2行) ・(主張11) 甲3発明から本件発明が特定する成分を見つけ出すには実施不可能は回数の試行錯誤が必要である。 そして、化粧品業界においてはこのような試行錯誤はしない。(口頭審理陳述要領書第5頁第56~8行) さらに、訂正請求書の手続補正書において、上記3(2)イ(ウ)aの主張4、5について、甲1発明と同様に、甲3発明についても主張しているので再掲する。 ・(主張4) 本件発明の「水の溶解量よりも多い量のリモネン、スクアラン、及びスクアレンからなる群から選ばれる1種以上の炭化水素と」との構成は、請求人の提出したいずれの証拠にも記載がなく、新規性がある。(訂正請求書の手続補正書第6頁第5~18行) ・(主張5) 本件発明においては炭化水素の油層ないし油を含む分子集合体にタンパク質を一度抽出し、これをオクチルドデカノールによって水層ないし水を含む分子集合体に再抽出するが、この技術思想は請求人の提出したいずれの証拠にも記載がなく、この構成の差により、本件発明では一度抽出されたタンパク質汚れは水層に存在するため、洗浄が極めて容易になるという各証拠にない効果を奏するものであり、請求人の提出した各証拠に接しても容易に発明できたとの論理付けは困難である。(訂正請求書の手続補正書第6頁第20行~第7頁第7行) b 被請求人の主張に対する判断 主張4について検討するに、上記(1)において判断したとおり、本件発明において「水への溶解度より多い量の」との炭化水素に係る特定により、甲3発明に対する新規性が生じるものではない。 主張5について検討するに、本件発明と甲3発明とは、本件発明界面活性剤の量の特定以外に相違点はなく、スクアラン(スクワラン)、オクチルドデカノール、水、界面活性剤との同じ構成成分を含むものであって、甲3に「お肌にやさしい洗浄成分でしっかりクレンジングしながら、うるおいを保ちます。」と記載されているとおり、甲3発明は、しっかり汚れを落とすことのできるクレンジング剤であるから、当業者は、甲3の記載から本件発明がメイクや汚れを極めて容易に洗浄できるものであることを予測する。 主張9と、主張10、11を合わせた主張は、ほぼ同じ内容に係るものであるからまとめて検討する。 本件発明において、「オクチルドデカノール」と、「スクワラン」等の炭化水素と、「界面活性剤(但し、0~10体積%のものを除く。)」との3種類の成分が、角栓除去効果をもたらす物質であるとの修飾を伴って特定されているわけではなく、甲3発明では、これらの成分が液状クレンジング剤における必須成分として配合されているのであるから、この点において両発明は相違しないし、主張6のように成分特定のための試行錯誤を行う必要性もないから、被請求人の3種類の成分の特定に関する主張及び試行錯誤に関する主張は採用できない。なお、甲3発明では、これらの3種類の成分が液状クレンジング剤における必須成分として配合されているから、本件発明において、角栓除去効果をもたらす物質である旨の用語を伴った特定がされたとしても、この用語を伴った特定のみでは、成分の配合量等において相違がないのであれば、液状クレンジング剤として区別がつくものとは解せない。 また、本件発明における「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」とする特定の点も原出願の特許との関係で特定した事項であり、この点について本件特許明細書に技術的な意義が記載されているものでもない上に、本件特許明細書には本件発明に係る実施例もないから、上記(ア)及び(イ)で検討したとおり、甲3発明において、このような範囲とすることも当業者が容易になし得た事項である。 したがって、被請求人の主張4、5、9~11はいずれも採用できない。 ウ 小活 以上のとおり、本件発明は、甲3に記載された発明並びに甲4の1及び甲5の1~3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものである。 第8 審理再開申立書について 被請求人は、令和5年3月12日に提出した審理再開申立書において、本件特許権に関する別件訴訟の判決について、被請求人が上告し、令和5年2月2日付けで最高裁判所第三小法廷から記録到達通知を受けており(乙15)、このまま進めば、上記上告事件の判決の直前に本件無効審判事件の審決がなされることとなると述べ、審理再開をすべき理由として、以下の点を主張している。 ・無効審決がなされると、被請求人は審決取消し訴訟を提起することとなり、訴訟経済の観点から妥当ではない。最高裁判所の判断を待って無効審判の審理を行えば、特許庁と裁判所との間の判断の齟齬が発生するリスクもなく、合理的である。 しかしながら、最高裁判所において審理されるのは、第1審の地方裁判所及び控訴審の知的財産高等裁判所において判断された、サポート要件違反に対する判断についてであり、一方、当審が、無効審判において、本件特許が無効であると判断するのは、進歩性欠如に関するものであって、根拠条文及び理由は異なるから、特許庁と裁判所との間において無効とする判断に齟齬は発生しない。 したがって、被請求人の上記主張は採用しない。 よって、審判長は、審理再開の必要は認めない。 第9 まとめ 以上のとおり、本件特許についての訂正の請求は、適法なものであり、これを認める。そして、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、請求人が主張する無効理由のうちの無効理由1により無効とすることはできない。 しかしながら、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当するから、無効理由3については判断するまでもなく、請求人が主張する無効理由のうちの無効理由2により無効とすべきものである。 そして、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-800119

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