特許無効審判
2016-800112
セレコキシブ組成物
- 審判番号
- 2016-800112
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2000-584884
- 登録番号
- 3563036
- 請求日
- 2016年09月30日
- 審決日
- 2025年06月11日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】東和薬品 株式会社
- 【請求人代理人】速見 禎祥
- 【請求人代理人】溝内 伸治郎
- 【参加人】日本ケミファ 株式会社
- 【参加人代理人】丹治 彰
- 【参加人代理人】大槻 真紀子
- 【参加人代理人】牧野 知彦
- 【参加人代理人】松村 啓
- 【参加人】ヘキサル・アクチェンゲゼルシャフト
- 【参加人代理人】原 裕子
- 【参加人】日医工 株式会社
- 【参加人代理人】今村 正純
- 【参加人代理人】野津 万梨子
- 【参加人代理人】高崎 仁
- 【被請求人】ヴィアトリス ホールディングス リミテッド、ライアビリティ、カンパニー
- 【被請求人代理人】設樂 隆一
- 【被請求人代理人】今村 玲英子
- 【被請求人代理人】田村 明照
- 【被請求人代理人】飯塚 卓也
- 【被請求人代理人】岡田 淳
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 田中 耕一郎
- 審判官 井上 千弥子
- 分類
- P1113.536-ZAA(A61K) / P1113.537-ZAA(A61K) / P1113.113-ZAA(A61K) / P1113.121-ZAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第123条第1項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第3項、特許法第181条、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第3563036号「セレコキシブ組成物」の特許無効審判事件についてされた令和4年11月8日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項1、2、4、5、7~13、15、17~19に係る部分の審決取消しの判決(令和4年(行ケ)第10127号審決取消請求事件(以下「第1事件」という。)、同年(行ケ)第10128号審決取消請求事件(以下「第2事件」という。)、同年(行ケ)第10129号審決取消請求事件(以下「第3事件」という。)、同年(行ケ)第10130号審決取消請求事件(以下「第4事件」という。)及び令和5年(行ケ)第10027号審決取消請求事件(以下「第5事件」という。)、令和6年3月18日判決言渡)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第3563036号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7~19〕について訂正することを認める。
特許第3563036号の請求項1、2、4、5、7~13、15、17~19に係る発明についての特許を無効とする。
特許第3563036号の請求項3、6、14、16に係る発明についての審判請求を却下する。
審判費用は、参加により生じた費用も含め、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許無効審判の経緯
特許第3563036号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、1999年11月30日(パリ条約による優先権主張、1998年11月30日、米国(US))を国際出願日とする出願(特願2000-584884号)であって、平成16年6月11日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人 東和薬品株式会社は、平成28年9月30日に、本件特許の請求項1~19に係る発明についての特許を無効にすることについて、本件特許無効審判を請求した。
以後の主な手続の経緯は次のとおりである。
平成28年11月 2日 手続補正書(甲第14号証、甲第15号証
及び甲第17号証の翻訳文追加)の提出
(請求人)
同年12月20日 参加申請書(ニプロ株式会社)(請求人側
への参加申請)の提出
平成29年 2月 6日 答弁書及び訂正請求書の提出(被請求人)
同年 4月13日 参加申請書(日新製薬株式会社)(請求人
側への参加申請)の提出
同年 4月18日付け 参加許否の決定(当審)(ニプロ株式会社
の参加を許可)
同年 5月19日 意見書(日新製薬株式会社の参加申請に対
する意見)(被請求人)の提出
同年 6月 2日付け 審尋(当審)(参加申請人 日新製薬株式
会社に対して)
同年 6月10日 回答書(参加申請人 日新製薬株式会社)
の差出
同年 6月19日付け 参加許否の決定(当審)(日新製薬株式会
社の参加を許可)
同年 7月 4日付け 審理事項通知書(当審)
同年 8月 3日 参加申請書(日本ケミファ株式会社)(請
求人側への参加申請)の提出
同年 8月21日 上申書(参加申請人 日本ケミファ株式会
社)の提出
同年 9月 5日付け 参加許否の決定(当審)(日本ケミファ株
式会社の参加を許可)
同年 9月 5日付け 審理事項通知書(当審)(日本ケミファ株
式会社の参加を許可したことに伴うもの)
同年 9月 6日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
同年 9月 7日 口頭審理陳述要領書(請求人)の提出
同年 9月 8日 上申書(参加人 日新製薬株式会社)の差
出(平成29年9月21日の口頭審理にお
いて陳述しないこと及び口頭審理陳述要領
書を提出しないことの上申)
同年 9月 8日 口頭審理陳述要領書(参加人 日本ケミフ
ァ株式会社)の提出
同年 9月21日 口頭審理
同年 9月25日 参加申請書(ヘキサル・アクチェンゲゼル
シャフト)(請求人側への参加申請)の提
出
同年10月16日 上申書(請求人)の提出
同年10月30日 上申書(参加人 日本ケミファ株式会社)
の提出
同年11月 2日 上申書(参加人 日新製薬株式会社)の差
出
同年11月13日付け 参加許否の決定(当審)(ヘキサル・アク
チェンゲゼルシャフトの参加を許可)
同年12月11日 参加申請書(大原薬品工業株式会社)(請
求人側への参加申請)の提出
平成30年 1月22日付け 参加許否の決定(当審)(大原薬品工業株
式会社の参加を許可)
同年 1月30日付け 補正許否の決定(当審)(参加人 日本ケ
ミファ株式会社が平成29年9月8日に提
出した口頭審理陳述要領書による請求の理
由の補正を許可しない。)
同年 2月 1日付け 審決の予告(当審)
同年 5月 7日 訂正請求書(被請求人)の提出
同年 6月26日付け 一次審決(訂正を認める。請求項6に係る
発明についての審判請求を却下する。請求
項1~5、7~19に係る発明についての
審判請求は、成り立たない。)
同年 8月 2日 一次審決取消訴訟第1事件提起(原告東和
薬品株式会社)
同年 8月 3日 一次審決取消訴訟第2事件提起(原告日本
ケミファ株式会社)
同年11月 1日 一次審決取消訴訟第3事件提起(原告ヘキ
サル・アクチェンゲゼルシャフト)
令和 元年11月14日 一次審決取消訴訟判決言渡(一次審決中、
請求項1~5、7~19に係る部分の取
消。以下「一次判決」という。)
令和 2年 9月29日 一次審決取消訴訟の上告及び上告受理申立
案件である令和2年(行ツ)第94号及び
令和2年(行ヒ)第90号の棄却と不受理
の決定
同年10月 1日 訂正請求申立書(被請求人)の提出
同年10月 6日付け 審理再開通知書(当審)
同年10月14日 参加申請書(ダイト株式会社)(請求人側
への参加申請)の差出
同年10月16日 訂正請求書(被請求人)の提出
同年10月26日 参加申請書(ニプロ株式会社)(請求人側
への参加申請)の提出
同年11月11日 上申書(被請求人)の提出
同年11月25日 意見書(ニプロ株式会社の参加申請に対す
る意見)(被請求人)の提出
同年12月 1日 参加申請書(Meiji Seikaファ
ルマ株式会社)(請求人側への参加申請)
の提出
同年12月 8日 参加申請書(日医工株式会社)(請求人側
への参加申請)の提出
同年12月16日付け 参加許否の決定(当審)(ダイト株式会社
の参加を許可)
同年12月16日付け 参加許否の決定(当審)(ニプロ株式会社
の参加を不許可)
同年12月24日 弁駁書(請求人)の提出
同年12月25日 弁駁書(日本ケミファ株式会社)の提出
令和 3年 1月21日 弁駁書(ヘキサル・アクチェンゲゼルシャ
フト)の提出
同年 2月 2日付け 参加許否の決定(当審)(Meiji S
eikaファルマ株式会社の参加を許可)
同年 2月 2日付け 参加許否の決定(当審)(日医工株式会社
の参加を許可)
同年 2月 5日 上申書(日医工株式会社)の提出
同年 3月17日 上申書(Meiji Seikaファルマ
株式会社)の提出
同年 4月 7日 答弁書(請求人に対して)(被請求人)の
提出
同年 4月 7日 答弁書(日本ケミファ株式会社に対して)
(被請求人)の提出
同年 4月 7日 答弁書(ヘキサル・アクチェンゲゼルシャ
フトに対して)(被請求人)の提出
同年 4月 7日 答弁書(日医工株式会社に対して)(被請
求人)の提出
同年 6月30日付け 審決の予告(当審)
同年 9月10日 参加申請書(テバ・ホールディングス合同
会社)(請求人側への参加申請)の提出
同年10月 8日 意見書(テバ・ホールディングス合同会社
の参加申請に対する意見)(被請求人)の
提出
同年10月 8日 訂正請求書及び上申書(被請求人)の提出
同年11月25日 参加許否の決定(当審)(テバ・ホールデ
ィングス合同会社の参加を許可)
同年12月24日 弁駁書(請求人)の提出
同年12月27日 弁駁書(Meiji Seikaファルマ
株式会社)の提出
令和 4年 1月 4日 弁駁書(テバ・ホールディングス合同会
社)の提出
同年 1月31日 弁駁書(日本ケミファ株式会社)の提出
同年 2月 3日 上申書(テバ・ホールディングス合同会
社)の提出
同年 2月16日 弁駁書(ヘキサル・アクチェンゲゼルシャ
フト)の提出
同年11月 8日付け 二次審決(訂正を認める。請求項1、2、
4、5、7~13、15、17~19に係
る発明についての審判請求は成り立たな
い。請求項3、6、14、16に係る発明
についての審判請求は、却下する。)
同年12月15日 二次審決取消訴訟第1事件提起(原告テ
バ・ホールディングス合同会社)
同年12月16日 二次審決取消訴訟第2事件提起(原告東和
薬品株式会社)
同年12月16日 二次審決取消訴訟第3事件提起(原告日医
工株式会社)
同年12月16日 二次審決取消訴訟第4事件提起(原告日本
ケミファ株式会社)
令和 5年 3月16日 二次審決取消訴訟第5事件提起(原告ヘキ
サル・アクチェンゲゼルシャフト)
令和 6年 3月18日 二次審決取消訴訟判決言渡(二次審決中、
請求項1、2、4、5、7~13、15、
17~19に係る部分の取消。以下「二次
判決」という。)
同年 4月 2日 二次判決確定
同年 4月 3日 訂正請求申立書(被請求人)の提出
同年 5月 1日付け 審理再開通知書(当審)
同年 5月 9日 訂正請求書及び上申書(被請求人)の提出
同年 6月26日 弁駁書(テバ・ホールディングス合同会
社)の提出
同年 6月26日 弁駁書(日医工株式会社)の提出
同年 6月27日 弁駁書(日本ケミファ株式会社)の提出
同年 6月27日 弁駁書(請求人)の提出
同年 7月16日 弁駁書(ヘキサル・アクチェンゲゼルシャ
フト)の提出
同年 9月 5日付け 証拠調べ通知書(当審)
同年10月 7日 意見書(日医工株式会社)の提出
同年10月10日 意見書(請求人)の提出
同年10月10日 意見書(テバ・ホールディングス合同会
社)の提出
同年10月10日 意見書(日本ケミファ株式会社)の提出
同年10月29日 意見書(被請求人)の提出
同年10月30日 意見書(ヘキサル・アクチェンゲゼルシャ
フト)の提出
同年12月19日付け 審決の予告(当審)
令和 7年 3月21日 上申書(被請求人)の提出
同年 5月14日付け 審理終結通知書(当審)
同年 5月16日 参加(申請)取下書(テバ・ホールディン
グス合同会社)の提出
同年 5月16日 上申書(ヘキサル・アクチェンゲゼルシャ
フト)の提出
同年 5月19日 審理再開申立書(ヘキサル・アクチェンゲ
ゼルシャフト)の提出
同年 5月22日 応対記録(ヘキサル・アクチェンゲゼルシ
ャフトに対し、審理再開の必要性を認めな
かった旨の連絡)
なお、令和7年5月16日の上申書の提出が、同年5月14日付けの審理終結通知書の到達後であるか不明なため、当該上申書及び添付された証拠も審理の対象とした。
また、令和7年5月19日提出の審理再開申立書(ヘキサル・アクチェンゲゼルシャフト)について検討した結果、審理再開の必要性を認めなかった。
2 参加人について
以下では、請求人側参加人 日本ケミファ株式会社を「参加人日本ケミファ」、請求人側参加人 ヘキサル・アクチェンゲゼルシャフトを「参加人ヘキサル」、請求人側参加人 日医工株式会社を「参加人日医工」という。請求人及び請求人側参加人をまとめて、「請求人側」ということがある。
なお、一次審決時の請求人側参加人であったニプロ株式会社、日新製薬株式会社、大原薬品工業株式会社は、一次審決に対して審決取消訴訟を提起しておらず、これらの者との関係では一次審決は確定したと判断され、二次審決時の請求人側参加人であったダイト株式会社及びMeiji Seikaファルマ株式会社は、二次審決に対して審決取消訴訟を提起しておらず、これらの者との関係では二次審決は確定したと判断されるため、この差戻審においては、請求人側参加人としていない。
また、令和3年9月10日に、テバ・ホールディングス合同会社が請求人側に参加することを申請し、同年11月25日付けで同社の参加を許可する決定がなされたが、同社は令和7年5月16日に参加を取り下げた。
3 別件無効審判について
本件特許について、平成30年6月4日に別件無効審判(無効2018-800071号)が請求され、令和元年9月3日に審判請求は成り立たないとの審決(以下「別件審決」という。)がされたところ、別件審決の取消しを求める訴訟が提起され(知的財産高等裁判所令和元年(行ケ)第10137号)、令和2年10月28日に請求を棄却する判決がされ(以下「別件判決」という。)、令和4年3月22日の上告棄却及び上告不受理の決定により、別件判決及び別件審決は確定した。
別件審決において、請求項1~5、7~19を訂正し、請求項6を削除する訂正請求が認容され、別件審決の確定により、当該訂正請求の認容も確定している。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和6年5月9日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5及び7~19について訂正することを求めるものであって、その内容は、以下の(1)~(9)のとおりである。
また、訂正前の請求項2~5及び7~19は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1~5及び7~19は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
なお、平成29年2月6日提出の訂正請求書、平成30年5月7日提出の訂正請求書、令和2年10月16日提出の訂正請求書及び令和3年10月8日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する」とあるのを、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布を有し、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記粒子の最大長において、前記セレコキシブ粒子のD90が100μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の」とあるのを、「一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって、粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μm未満である粒子サイズの分布を有し、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「請求項3」とあるのを、「請求項2」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「最低約50%である」とあるのを、「約50%乃至約55%である」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1乃至5」とあるのを、「請求項1、2、4及び5」と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10に「さらに」とあるのを削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14及び16を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項17及び18に、「請求項1乃至5及び7乃至16」とあるのを、「請求項1、2、4、5、7乃至13及び15」と訂正する。
なお、訂正請求書では、「訂正事項13」と記載されているが、「訂正事項9」の自明な誤記と認める。
2 訂正事項の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の「製薬組成物」における「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布」を「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布」と訂正する(以下「訂正事項1a」という。)とともに、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」との構成を直列的に付加するもの(以下「訂正事項1b」という。)である。
(ア)訂正事項1aについて
訂正事項1aは、訂正前の「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する」におけるD90の数値を「200μm未満」から「30μm」と限定するものである。
したがって、訂正事項1aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項1bについて
訂正事項1bは、請求項1の「製薬組成物」において、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」との構成を新たに付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)以上によれば、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
(ア)訂正事項1aについて
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下「訂正前の特許請求の範囲」ともいう。)の請求項2には、「セレコキシブ粒子のD90が100μm未満」であることが記載され、同請求項3には、「セレコキシブ粒子のD90が40μm未満」であることが記載され、同請求項4には、「セレコキシブ粒子のD90が25μm未満」であることが記載されている。
また、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」ともいう。)の【0124】には、「例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される」と記載され、同【0190】には「粉砕 セレコキシブは、反対に回転するディスクによる衝撃式ピンミルにて混合された。・・・、粒子サイズは比較的狭い範囲(D90が30μm若しくはそれ以下)内で変化し、」と記載されている。
したがって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」ともいう。)には、セレコキシブのD90を30μmとすること(訂正事項1a)が記載されていたといえる。
(イ)訂正事項1bについて
訂正前の特許請求の範囲の請求項14には、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤をさらに含む」「製薬組成物」と記載されている。
また、本件明細書の【0075】には、「加湿剤 セレコキシブは水溶液にかなり溶解しにくい。したがって、本発明の製薬組成物は、任意であるが、好ましくは、キャリア材料として、一つ又はそれ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含む。・・・単独で又は組合わせて利用される適当な加湿剤には、オレイン酸;モノステアリン酸グリセリン;ソルビタンモノオレイン酸エステル;ソルビタンモノラウリン酸エステル;トリエタノールアミンオレイン酸塩;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル;オレイン酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウムがある。」と記載され、同【0076】には、「ラウリル硫酸ナトリウムは好ましい加湿剤である。」と記載され、さらに、本件明細書の表11-2A(【0173】)には、「組成物A」が加湿剤である「ラウリル硫酸ナトリウム」を含むことが記載されている。
したがって、本件明細書等には、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤をさらに含むこと(訂正事項1b)が記載されていたといえる。
(ウ)よって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしている。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2において、訂正前の請求項1を引用する形式の記載を、請求項1を引用しない独立形式の記載に改め(以下「訂正事項2a」という。)、訂正前の「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が100μm未満である粒子サイズの分布」を「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μm未満である粒子サイズの分布」と訂正する(以下「訂正事項2b」という。)とともに、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」という構成を付加するもの(以下「訂正事項2c」という。)である。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とし、上記(1)アと同様の理由により、同条同項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
(ア)訂正事項2aについて
訂正事項2aは、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする」訂正であり、この訂正により、実質的な内容は変更されないから、訂正事項2aは、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(イ)訂正事項2bについて
訂正前の特許請求の範囲の請求項2には、「セレコキシブ粒子のD90が100μm未満」であることが記載され、同請求項3には、「セレコキシブのD90が40μm未満」であることが記載され、同請求項4には、「セレコキシブのD90が25μm未満」であることが記載されている。
また、本件明細書の【0124】には、「カプセル若しくは錠剤の形で経口投与されると、セレコキシブ粒子サイズの減少により、セレコキシブの生物学的利用能が改善されるを発見した。したがって、セレコキシブのD90粒子サイズは約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは25μm以下である。例えば、例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される。」と記載され、同【0190】には「粉砕 セレコキシブは、反対に回転するディスクによる衝撃式ピンミルにて混合された。・・・、粒子サイズは比較的狭い範囲(D90が30μm若しくはそれ以下)内で変化し、」と記載されている。
したがって、本件明細書等には、セレコキシブのD90を30μm未満とすること(訂正事項2b)が記載されていたといえる。
(ウ)訂正事項2cについて
「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」こと(訂正事項2c)は、上記(1)イ(イ)のとおり、本件明細書等に記載されていたといえる。
(エ)したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項2は、上記アのとおり、他の請求項を引用しない形式に改めるとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしている。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしており、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項4において引用する請求項を、訂正前の請求項3よりも限定された請求項2に変更するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記(2)イ、ウのとおり、請求項2に係る訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないから、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項及び第5項に規定する要件を満たしている。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項5における相対的な生物学的利用能について、訂正前の「最低約50%である」を「約50%乃至約55%である」と訂正するもので、訂正前の相対的な生物学的利用能の数値範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
本件明細書【0124】に「例えば、例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される。」と記載されていることから、例11-2の「組成物A」に含まれるセレコキシブのD90粒子サイズは、約30μmであると推認できる。したがって、本件明細書の例11-2には、セレコキシブ粒子のD90が約30μmでラウリル硫酸ナトリウムが含まれる組成物Aの生物学的利用能が、メス犬においては31.2±2.9(表11-2C)で、オス犬においては49.4±12.0(表11-2D)であったことが記載されており、これらの各値について、それぞれ同じ表に記載された組成物Eの数値(溶液データ)(62.4±9.4、89.4±4.5)に対する割合を求めると、約50%(メス犬に対する値)及び約55%(オス犬に対する値)となること、すなわち、組成物Aの生物学的利用能が約50%乃至約55%であることが理解できる。
したがって、訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしている。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項3の削除に伴って、請求項7において引用する請求項から、請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしており、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項1及び2により、請求項1及び2に「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」ことを追加したことに伴い、請求項1又は2を間接的に引用する請求項10において、「加湿剤」は「さらに」含有する成分ではなくなったため、「さらに」を削除するものである。
したがって、訂正事項7は、訂正事項1及び2による訂正後の請求項1及び2の記載に整合させるための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たしている。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項14及び16を削除するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしており、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項3、14、16の削除に伴って、請求項17及び18において引用する請求項から請求項3、14、16を削除するものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしており、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5及び7~19について訂正することを認める。
なお、訂正前の請求項1~5及び7~19の全てに対して無効審判が請求されているので、訂正事項1~9に関し、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件(独立特許要件)は適用されない。
第3 訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~5及び7~19に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、7~13、15、17~19に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下、請求項の番号に従い「訂正発明1」等といい、まとめて「訂正発明」ということがある。)。
【請求項1】
一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって、
粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布を有し、
ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む
製薬組成物。
【請求項2】
一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって、
粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μm未満である粒子サイズの分布を有し、
ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む
製薬組成物。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記粒子の最大長において、前記セレコキシブ粒子のD90が25μm未満であることを特徴とする請求項2に記載の製薬組成物。
【請求項5】
前記同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有することを特徴とする請求項1記載の製薬組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記投与量単位は、錠剤、ピル、硬質若しくは軟質カプセル、ロゼンジ、サシェイ、又はパステルから選択されることを特徴とする請求項1、2、4及び5の何れか一項記載の製薬組成物。
【請求項8】
前記賦形剤は薬剤学的に許容な希釈剤、崩壊剤、結着剤、加湿剤及び潤滑剤から選択される単位投与量のカプセル又は錠剤の形態であることを特徴とする請求項7記載の製薬組成物。
【請求項9】
(a)前記製薬組成物の約10質量%乃至約85重量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な希釈剤と、
(b)前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な崩壊剤と、及び
(c)前記製薬組成物の約0.75質量%乃至約15質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な結着剤とを含有することを特徴とする請求項8記載の製薬組成物。
【請求項10】
前記製薬組成物の約0.4質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含有することを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項11】
前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有することを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項12】
前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有することを特徴とする請求項10に記載の製薬組成物。
【請求項13】
(a)前記希釈剤はラクトースを含み、(b)前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含み、(c)前記結着剤はポリビニルピロリドンを含むことを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
ステアリン酸マグネシウムを含有する潤滑剤をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患を治療するために、前記製薬組成物は被験者に好ましくは1日に1回又は2回経口投与することを特徴とする請求項1、2、4、5、7乃至13及び15の何れか一項に定義される製薬組成物。
【請求項18】
シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患の治療及び/又は予防処置での薬剤調製のための請求項1、2、4、5、7乃至13及び15の何れか一項に定義される製薬組成物の使用。
【請求項19】
前記状態又は疾患は、リウマチ様関節炎、骨関節炎又は痛みである請求項18による使用。
第4 当事者の主張及び提出した証拠方法
1 請求人側の主張及び提出した証拠方法
(1)請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人が提出した審判請求書、口頭審理陳述要領書(平成29年9月7日提出)、上申書(平成29年10月16日提出)、弁駁書(令和2年12月24日提出)、弁駁書(令和3年12月24日提出)、弁駁書(令和6年6月27日提出)、及び意見書(令和6年10月10日提出)によれば、請求人は、本件訂正前の請求項1~19に係る発明(訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に対応する)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、以下の無効理由I~IVを主張し、証拠方法として、甲第1号証~甲第29号証、甲第60号証~甲第80号証、甲第86号証~甲第95号証を提出している。以下、「甲第1号証」等を単に「甲1」等と表記する。
ア 無効理由I(明確性要件違反)
本件訂正前の請求項1~19に係る発明(訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に対応する)は、特許を受けようとする発明が明確ではないため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効にされるべきものである。
イ 無効理由II(実施可能要件違反、サポート要件違反)
本件訂正前の請求項1~19に係る発明(訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に対応する)は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されておらず、また、発明の詳細な説明に記載されていないため、本件特許は、特許法第36条第4項又は同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効にされるべきものである。
ウ 無効理由III(新規性欠如)
本件訂正前の請求項1、2、7、8及び17~19(訂正発明1、2、7、8及び17~19に対応する)は、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲8に記載された発明であり、また、本件訂正前の請求項1、2、7、18(訂正発明1、2、7、18に対応する)は、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲15に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
エ 無効理由IV(進歩性欠如)
本件訂正前の請求項1~19に係る発明(訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に対応する)は、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲8及び甲7、15~17に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
(証拠方法)
甲1:「粒子径計測技術」、日刊工業新聞社、1994年11月30日発行、表紙、8~27頁
甲2:「新しい図解薬剤学」、株式会社南山堂、1991年5月30日発行、表紙、146~163頁
甲3:「薬剤学」第2版、株式会社廣川書店、平成4年5月15日発行、表紙、152~161頁
甲4:「化学工学便覧」改訂六版、化学工学会編、丸善株式会社、平成11年2月25日発行、233~243頁
甲5:欧州特許庁審判T696/05における特許権者の2008年10月13日付けの書簡
甲6:「化学工学便覧」改訂五版、化学工学協会編、丸善株式会社、昭和63年3月18日発行、219~231頁
甲7:「医薬品の溶出」、株式会社地人書館、昭和52年10月30日発行、表紙、104~111頁
甲8:特表平9-506350号公報
甲9:東和薬品株式会社 原薬事業本部 プロセス研究部長 池和夫及び原薬分析部長 中井亨による「実験成績証明書」、2016年9月27日
甲10:欧州特許EP1049467に対するFako Ilaclari社の異議申立書
甲11:甲10に添付されたTEST ReportとAnnex
甲12:欧州特許庁審判T696/05におけるFako Ilaclari社の2004年11月19日付けの書簡
甲13:甲12に添付されたExperimental Protocol D33
甲14:欧州特許庁審判T696/05の審決
甲15:1997 AAPS Annual Meeting Contributed Papers Abstracts、発表番号3469、S-617頁
甲16:橋田充、「経口投与製剤の設計と評価」、株式会社薬業時報社、平成7年2月10日発行、表紙、167~171頁
甲17:Methods Find. Exp. Clin. Pharmacol.、1998、Vol.20、No.3、p.211-215
(以上、審判請求書に添付。)
甲18:"Physical Pharmacy"、4th Ed.、Lea & Febiger、1993、p.423-430
甲19:「新しい製剤学」、株式会社廣川書店、平成8年9月10日発行、80~84頁
甲20:「医薬品の開発 第15巻 製剤の物理化学的性質」、株式会社廣川書店、平成元年10月25日発行、221~224頁
甲21:牟田明徳「微粉体の正しい粒度分布について(従来の液中沈降法の問題点)」、材料、第17巻、第177号、昭和43年6月、467~474頁
甲22:高崎福祉健康大学薬学部 寺田勝英教授による「見解書」、2017年9月7日
甲23:「CMC Technical Report No.7 固形製剤とバイオアベイラビリティ」、株式会社シーエムシー、昭和56年2月4日、25~41頁
(以上、口頭審理陳述要領書(平成29年9月7日提出)に添付。)
甲24:「化学辞典」、株式会社東京化学同人、1995年5月10日発行、695頁
甲25:「結晶セルロース アビセル(R)(当審注:(R)は、○の中にRを示す。以下、同様。)」総合カタログ、旭化成工業株式会社刊(9頁右下隅に「●昭和53年10月1日発行 5000S ●昭和60年1月14日改編 85.102 H.K. ●昭和63年3月7日」との印字あり)
甲26:山本勝男「食品としてのセルロース」、繊維と工業、Vol.48、No.4、p.171~175(1992)
甲27:特開平7-76516号公報
甲28:特表2012-522825号公報
甲29:特表2015-518052号公報
(以上、上申書(平成29年10月16日提出)に添付。)
甲60:高崎福祉健康大学薬学部 寺田勝英教授による「見解書」、2018年9月10日
甲61:特表平8-509958号公報
甲62:特表平7-501533号公報
甲63:特表平10-508614号公報
甲64:特表平11-505848号公報
甲65:「医薬品の開発 第21巻 医薬品の生物学的利用能」、株式会社廣川書店、平成2年5月10日発行、51~55頁
甲66:「新しい製剤学」、株式会社廣川書店、平成5年9月10日発行、211~212頁
甲67:「製剤学 改稿版」、株式会社廣川書店、昭和57年11月1日発行、169~170頁
甲68:「製剤学 改訂第3版」、株式会社南江堂、1997年4月1日発行、168~169頁
甲69:「製剤工学 医薬品開発基礎講座X」、株式会社地人書館、昭和46年3月1日発行、7頁
甲70:「経口投与製剤の設計と評価」、株式会社薬業時報社、平成7年2月10日発行、208~215頁
甲71:欠番
甲72:東和薬品株式会社製品戦略本部知的財産部 井上明謹氏による「報告書」、平成30年9月27日
甲73:欠番
甲74:欠番
甲75:「製剤工学 医薬品開発基礎講座X」、株式会社地人書館、昭和46年3月1日発行、9頁
甲76:医薬品インタビューフォーム セレコックス錠(R)100mgセレコックス錠(R)200mg、2016年5月改訂(第12版)、3~4頁
甲77:第十七改正日本薬局方 通則第3~5頁、372~373頁、740~741頁
甲78:「固形製剤とバイオアベイラビリティ」、株式会社シーエムシー、昭和56年2月4日発行、109~121頁
甲79:「製剤学 改稿版」、株式会社廣川書店、昭和57年11月1日、174~178頁
甲80:「経口投与製剤の設計と評価」、株式会社薬業時報社、平成7年2月10日発行、89~92頁
甲81:欠番
甲82:欠番
甲83:欠番
甲84:欠番
甲85:欠番
甲86:上記一次判決の正本
甲87:「医薬品添加物事典」、株式会社薬事日報社、1994年1月14日発行、144頁
(以上、弁駁書(令和2年12月24日提出)に添付。)
甲88:神保 元二、「最近における微粉砕機の開発動向」、1985年、粉体工学会誌、22巻、6号、380~389頁
甲89:前田 健、「進歩性要件の意義と判断の方法」、日本工業所有権法学会年報、株式会社有斐閣、2020年、44号、91~112頁
(以上、弁駁書(令和3年12月24日提出)に添付。)
甲90:特開平10-59862号公報
甲91:特開平4-295420号公報
甲92:特開平8-325146号公報
甲93:「薬学生のための物理化学-第3版-」、株式会社廣川書店、平成9年2月25日発行、223~226頁
甲94:「製剤学 改訂第3版」、株式会社南江堂、平成9年4月1日発行、74~75頁
甲95:「’99年版 新ガイドライン 薬剤師国家試験 例題+ポイント 医療薬学II 薬剤学」、株式会社廣川書店、平成10年7月5日発行、54~57頁
(以上、弁駁書(令和6年6月27日提出)に添付。)
(2)参加人日本ケミファの主張及び提出した証拠方法
参加人日本ケミファが提出した口頭審理陳述要領書(平成29年9月8日提出)、上申書(平成29年10月30日提出))、弁駁書(令和2年12月25日提出)、弁駁書(令和4年1月31日提出)、弁駁書(令和6年6月27日提出)及び意見書(令和6年10月10日提出)によれば、参加人日本ケミファは、上記無効理由I~無効理由IVが存在する旨を主張し、証拠方法として、丙第3号証~丙第11号証を提出している。以下、「丙3」等と表記する。
(証拠方法)
丙3:「英日中化学用語辞典」、株式会社工業調査会発行、1998年10月20日、352頁
(以上、口頭審理陳述要領書(平成29年9月8日提出)に添付。)
丙4:仲井 由宣、花野 学、「製剤学」、株式会社南山堂、1974年9月20日発行、97~103頁
丙5:製剤機械技術研究会、「製剤機械技術ハンドブック」、株式会社地人書館、2000年9月10日発行、4~5頁
丙6:山田昌樹、「製品品質を左右する粉砕・造粒・乾燥・整粒・混合工程」、日本薬剤学会 製剤技術伝承委員会編集、「製剤の達人による製剤技術の伝承 製剤設計・製造技術の新たな潮流」、株式会社じほう、平成29年5月20日発行、66~69頁
丙7:槇野産業株式会社、「アルピネ粉砕機」のパンフレット、2018年11月3日、1~6頁
丙8:井上 義之、「食品分野における粉体技術-大豆の処理を中心として-」、日本食品科学工学会誌、2011年11月、58巻、11号、552~558頁
(以上、弁駁書(令和4年1月31日提出)に添付。)
丙9:特開平11-124330号公報
丙10:野沢靖夫ら、「ラウリル硫酸ナトリウムとのロール混合によるグリセオフルビンの溶解性改善」、薬剤学、1987年、47巻、4号、197~203頁
丙11:厚生省薬務局審査課長、「新医薬品の規格及び試験方法の設定に関するガイドラインについて」、薬審第588号、平成6年9月1日
(以上、意見書(令和6年10月10日提出)に添付。)
なお、参加人日本ケミファは、口頭審理陳述要領書(平成29年9月8日提出)において、本件訂正前の請求項1~4に係る発明及び本件訂正前の請求項7に係る発明は甲15に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している(口頭審理陳述要領書第6頁第20行~第12頁最終行(特に、第9頁第4~7行、第12頁第22~最終行))。
しかしながら、審判請求書において、本件訂正前の請求項1~4に係る発明及び本件訂正前の請求項7に係る発明が甲15に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする無効理由は記載されておらず、かかる主張の追加は、実質的に請求の理由の要旨を変更するものであるとして許可されていない(補正許否の決定(平成30年1月30日付け))。
(3)参加人ヘキサルの主張及び提出した証拠方法
参加人ヘキサルが提出した弁駁書(令和3年1月21日提出)、弁駁書(令和4年2月16日提出)、弁駁書(令和6年7月16日提出)、意見書(令和6年10月30日提出)及び上申書(令和7年5月16日提出)によれば、参加人ヘキサルは、上記無効理由I~無効理由IVが存在する旨を主張し、証拠方法として、戊第1号証~戊第56号証を提出している。以下、「戊1」等と表記する。
(証拠方法)
戊1:令和元年(行サ)第10024号行政上告提起事件、上告理由書
戊2:令和元年(行ノ)第10047号行政上告受理申立て事件、上告受理申立て理由書
戊3:令和2年(行ツ)第94号、令和2年(行ヒ)第90号 調書(決定)
(以上、弁駁書(令和3年1月21日提出)に添付。)
戊4:津田 恭介ら編、「製剤工学 医薬品開発基礎講座X」、株式会社地人書館、昭和46年3月1日発行、28~44頁
戊5:原 徹編、「工場操作シリーズ 改訂 粉砕」、株式会社化学工業社、昭和44年10月20日発行、66~70頁
戊6:粉体工学会編、「粒子設計工学 -新素材開発のキーテクノロジー-」、産業図書株式会社、1999年2月9日発行、51~54頁、
戊7:Kurt Leschonskiら、細川粉体工学研究所 訳編、「粉粒体単位操作の基礎」、日刊工業新聞社、昭和61年4月30日発行、77~86頁
戊8:佐川 良寿、「製剤操作の基礎知識 3 粉砕・応用編(その1)」、PHARM TECH JAPAN、平成11年11月1日発行、15巻、11号、65~72頁
戊9:佐川 良寿、「製剤操作の基礎知識 1 粉砕・入門編(その1)」、PHARM TECH JAPAN、平成11年9月1日発行、15巻、9号、39~49頁
(以上、弁駁書(令和4年2月16日提出)に添付。)
戊10:粉体と工業誌編集委員会、「粉体の仕様表示方法に関するガイドライン(案)-その1 粒径分布,比表面積および粒子形状-」、平成7年6月1日発行、「粉体と工業」、27巻、6号、49~68頁
戊11:島岡 治夫、「医薬品・食品分野での粒度分布測定」、島津評論、1995年9月発行、52巻、2号、177~183頁
戊12:河田 憲男、「粒度分布測定について」、PHARM TECH JAPAN、平成7年5月1日発行、11巻、5号、17~30頁
戊13:PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS, 1980 by MARCEL DEKKER, INC.,3~5頁
戊14:KENNETH J .FREDERICK,Performance and Problems of Pharmaceutical Suspensions,1961年6月、Vol.50、6号、531~535頁
戊15:B.A.MATTHEWS and C.T.RHODES,Particle Size of Commercial Griseofulvin with Reference to Official Standards, Journal of Pharmaceutical Sciences,1967年7月,Vol.56,No.7,838~842頁
戊16:L.J.BEAUBIEN and A.J.VANDERWIELEN,Particle-Size Analysis of Pharmaceutical Powders, Journal of Pharmaceutical Sciences,1980年6月,Vol.69,No.6, 651~655頁
戊17:MELGARDT M.DE VILLIERS,Influence of cohesive Properties of micronized drug powders on particle size analysis,Journal of Pharmaceutical & Biomedical analysis,Vol.13,No.3,191~198頁
戊18:JEFFREY D.STRUMら「Bioavailability of Sulfonamide Suspensions I: Dissolution Profiles of Sulfamethpizole Using Paddle Method」Journal of Pharmaceutical Sciences Vol.67,No.10,1978年10月、1399~1402頁
戊19:鈴木 郁生、「医薬品の開発 21巻 医薬品の生物学的利用能」、株式会社廣川書店、平成2年5月10日発行、85~87頁
戊20:S.M.BASTAMI and M.J.GROVES,SOME FACTORS INFLUENCING THE IN VITRO RELEASE OF PHENYTOIN FROM FORMULATIONS, International Journal of Pharmaceutics,1978年,151~164頁
戊21:渡辺 厚、大沼 惟子、「偏光顕微鏡による結晶性医薬品の研究(第10報1)フェニトイン粉末の粒度分析2)」、薬学雑誌、1988年2月15日、108巻、7号、659~664頁
戊22:U.S.PHARMACOPEIA, NATIONAL FORMULARY,USP23-NF18, SUPPLEMENT 2, 1995年5月15日,2715~2717頁
戊23:1994 ANNUAL BOOK of ASTM STANDARDS, General Methods and Instrumentation, Section 14, Vol.14.02, 17~24頁
戊24:財団法人 日本公定書協会 編「日本薬局方技術情報1998」、株式会社薬業時報社、平成10年3月10日発行、152~153頁
戊25:第十三改正 日本薬局方 第二追補解説書2000、株式会社廣川書店 平成12年1月24日発行、序文、79~84頁
戊26:神保 元二ら 編集、「微粒子ハンドブック」、株式会社朝倉書店、1991年9月1日、182~185頁
戊27:L. C. Kenny, A. P. Rood, Particle size analysis by automated optical microscopy, Microscopy-Techniques and Capabilities (Sira), SPIE Vol.368, (1982), 119~123頁
戊28:Harry G. Brittain ら, Physical Characterization of Pharmaceutical Solids, Pharmaceutical Research, Vol.8, No.8, 1991年, 963~973頁
戊29:Joel P. Zingerman ら, Validation of a computerized image analysis system for particle size determination Pharmaceutical applications, International Journal of Pharmaceutics, 88, (1992), 303~312頁
戊30:稲葉 敬三ら、研究論文「レーザー回折式粒径分布測定器を用いた粒子濃度の測定法」、粉体工学会誌、(1997)、34巻、7号、490~498頁
戊31:H.GRAHAM CANNONら編集委員, JOURNAL of the ROYAL MICROSCOPICAL SOCIETY, Vol.71, Series 3, 1951年, 209~222頁
戊32:日本工業規格「粒子径解析―画像解析法―第1部:静的画像解析法」、一般財団法人 日本規格協会、平成30年2月20日、1~19頁
戊33:J.C.WILLIAMS 編集, Particle Size Measurement, 1968年, 52~54頁
戊34:鈴木 郁生 編集、「医薬品の開発 16巻 プレフォーミュレーションと薬物物性試験」、株式会社廣川書店、平成2年1月15日発行、44~48頁
戊35:粉体工学会 編、「粒子径計測技術」、日刊工業新聞社、1994年11月30日発行、224~227頁
戊36:粉体工学研究会 編、「粉体粒度測定法」、株式会社養賢堂、昭和40年2月20日発行、48~53頁
(以上、弁駁書(令和6年7月16日提出)に添付。)
戊37:G. Levyら,Effect of Certain Tablet Formulation Factors on Dissolution Rate of the Active Ingredient III, Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol.52, No.12, 1963年, 1139~1144頁
戊38:E. Sjokvistら, Physicochemical aspects of drug release. XIV. The effects of some ionic and non-ionic surfactants on properties of a sparingly soluble drug in solid dispersions, International Journal of Pharmaceutics, Vol.79, 1992年,123~133頁
戊39:J. Singhら,INFLUENCE OF SURFACTANTS ON THE IN-VITRO RELEASE AND PERMEATION OF LORAZEPAM FROM TABLETS, Drug Development and Industrial Pharmacy, Vol.16, No.10, 1990年,1717~1723頁
戊40:J. Singh,EFFECT OF SODIUM LAURYL SULPHATE AND TWEENR80 ON THE THERAPEUTIC EFFICACY OF GLIBENCLAMIDE TABLET FORMULATION IN TERMS OF BSL LOWERING IN RABBITS AND DIABETIC HUMAN VOLUNTEERS, Drug Development and Industrial Pharmacy, Vol.12, No.6, 1986年,851~866頁
戊41:特公平7-61960号公報
戊42:野澤 靖夫、「ロール混合法による難溶性薬物の溶解促進」、表面、26巻、5号、1988年、336~346頁
戊43:参加人代理人作成、富士フイルム和光純薬株式会社のホームページを印刷した書面、「サリチル酸」、2024年9月印刷
(以上、意見書(令和6年10月30日提出)に添付。)
戊44:「最新薬剤学 -第四改稿版-」、株式会社廣川書店、昭和57年、308~309頁、342~343頁
戊45:「医薬品の開発 第12巻 製剤素材〔I〕」、株式会社廣川書店、平成2年、117~118頁
戊46:「ドラッグデリバリーシステム 新しい投与剤形を中心とした製剤学」、株式会社南江堂、1986年、78~81頁
戊47:「経口投与製剤の設計と評価」、株式会社薬業時報社、平成7年、186頁
戊48:Journal of Pharmaceutical Sciences,1976年,Vol. 65,No. 11,1702~1704頁
戊49:特開平11-228386号公報
戊50:特表平10-510527号公報
戊51:特表平5-501564号公報
戊52:特開昭58-59914号公報
戊53:特開昭57-106613号公報
戊54:Analytical Proceedings,1982年,Vol. 19,No. 7,368~370頁,349頁
戊55:特開昭59-110655号公報
戊56:特開昭63-303928号公報
(以上、上申書(令和7年5月16日提出)に添付。)
(4)参加人日医工の主張
参加人日医工が提出した上申書(令和3年2月5日提出)、弁駁書(令和6年6月26日提出)及び意見書(令和6年10月7日提出)によれば、参加人日医工は、上記無効理由I~無効理由IVのうち、特に無効理由II(実施可能要件違反、サポート要件違反)及び無効理由IV(進歩性欠如)が存在する旨を主張し、証拠方法として、己第1号証~己第15号証を提出している。以下、「己1」等と表記する。
(証拠方法)
己1:上記二次判決正本
己2:特開昭53-44617号公報
己3:特開平2-172918号公報
己4:「経口投与製剤の設計と評価」、株式会社薬業時報社、平成7年2月10日発行、90~92頁
己5:特開昭59-109252号公報
己6:特開平8-40895号公報
己7:矢木秀治、「懸濁針状結晶の攪拌による粉砕」、技苑、44号、昭和60年8月31日発行、27~31頁
己8:矢木秀治ら、「攪拌による針(棒)状硫酸カルシウム結晶のマクロアトリッション」、化学工学論文集、16巻、5号、1990年、977~981頁
己9:「医薬品添加物事典」、日本医薬品添加剤協会編、株式会社薬事日報社、1994年、244頁
己10:豊倉賢ら、「硫酸カルシウム二水塩針状結晶の成長と破砕」、石膏と石灰、226巻、1990年、127~134頁
己11:橋本順義ら、「大規模試験製造における針状α-FeOOH微粒子の粒度分布」、化学工学論文集、20巻、1号、1994年、14~20頁
己12:桜井修ら、「気相酸化による針状酸化亜鉛の生成と粒子形態の解析」、日本化学会誌、1984年、6巻、837~842頁
己13:特表平10-505061号公報
己14:国際公開第97/35571号
己15:特開昭59-95300号公報
(以上、弁駁書(令和6年6月26日提出)に添付。)
2 被請求人の主張及び提出した証拠方法
被請求人が提出した答弁書(平成29年2月6日提出)、口頭審理陳述要領書(平成29年9月6日提出)、上申書(令和2年11月11日提出)、審判事件答弁書(請求人に対し:令和3年4月7日提出)、審判事件答弁書(参加人日本ケミファに対し:令和3年4月7日提出)、答弁書(参加人ヘキサルに対し:令和3年4月7日提出)、答弁書(参加人日医工に対し:令和3年4月7日提出)、上申書(訂正請求書と同日提出:令和3年10月8日提出)、上申書(訂正請求書と同日提出:令和6年5月10日提出)、意見書(令和6年10月29日提出)及び上申書(令和7年3月21日提出)によれば、被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、前記無効理由I~無効理由IVはいずれも理由がない旨を主張し、証拠方法として、乙第1号証~乙第31号証を提出している。以下、「乙1」等と表記する。
(証拠方法)
乙1:大阪地裁平成18年(ワ)第11880号判決
乙2:知財高裁平成20年(ネ)第10013号判決
乙3:東京高裁平成16年(行ケ)第290号判決
乙4:知財高裁平成17年(行ケ)第10661号判決
乙5:蘭州大学ニンワング ビンチェン ホンビンツアイ氏による「セレコキシブ再結晶実験報告書」、2012年9月4日
乙6:第十七改正日本薬局方 目次、通則3~5頁及び899~900頁
(以上、答弁書(平成29年2月6日提出)に添付。)
乙7:「島津理化学器械’97~’98」、表紙、目次、178頁
乙8:「JSM-5500LV/JSM-5500 走査電子顕微鏡」カタログ、日本電子株式会社
乙9:「製品年表(1985~2010年)」、286~290頁
(以上、口頭審理陳述要領書(平成29年9月6日提出)に添付。)
乙10:アステラス製薬研究所 中村文郁氏らによる「試験報告書」、2019年3月7日
(以上、上申書(令和2年11月11日提出)に添付。)
乙11:「経口投与製剤の処方設計」、株式会社薬業時報社、平成10年4月15日発行、表紙、2~4頁、70~90頁、157~159頁
乙12:Pharmaceutical Technology、1994年3月、44頁、46~50頁、52頁、54頁、56頁、58頁、60頁
乙13:「製剤学(改訂第3版)」、株式会社南江堂、1997年4月1日発行、68~70頁
乙14:「経口投与製剤の処方設計」、株式会社薬業時報社、平成10年4月15日発行、46~55頁、102頁、103頁
乙15:「経口投与製剤の設計と評価」、株式会社薬業時報社、平成7年2月10日発行、167~171頁
乙16:「医薬品の溶出」、株式会社地人書館、昭和52年10月30日発行、104~111頁
乙17:「医薬品の開発 第21巻 医薬品の生物学的利用能」、株式会社廣川書店、平成2年5月10日発行、62~66頁
乙18:国際公開96/37465号
乙19:米国特許第5466823号明細書
(以上、答弁書(請求人に対し:令和3年4月7日提出)に添付。)
乙20:「新製剤学」、株式会社南山堂、1982年、233頁
(以上、意見書(令和6年10月29日提出)に添付。)
乙21:国際公開第98/27965号
乙22:「生物薬剤学概説」、医歯薬出版株式会社、昭和50年12月10日、66~71頁
乙23:「新製剤開発システム総合技術―基剤・添加物質篇―」、R&Dプランニング、昭和60年7月12日、206~207頁
乙24:掛見喜一郎ら、「ショ糖脂肪酸エステルの研究(第3報*1) 薬物の消化管からの吸収に及ぼす影響*2」、薬学雑誌、84巻、12号、1964年、1210~1214頁
乙25:特開平9-278656号公報
乙26:Zak T. Chowhan, Drug Substance Physical Properties and Their Relationship to the Performance of Solid Dosage Forms, Pharmaceutical Technology,1994年3月,44頁
乙27:特表平10-505574号公報
乙28:特開平8-59470号公報
乙29:Mitra Mosharrafら,The effect of particle size and shape on the surface specific dissolution rate of microsized practically insoluble drugs, International Journal of Pharmaceutics, 122,1995年,35~47頁
乙30:KARL H. Donnら,Bioavailability of Cefuroxime Axetil Formulations, Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol.83, No.6,1994年,842~844頁
乙31:Gary G. Liversidgeら,Particle size reduction for improvement of oral bioavailability of hydrophobic drugs: I. Absolute oral bioavailability of nanocrystalline danazol in beagle dogs, International Journal of Pharmaceutics, 125,1995年,91~97頁
(以上、上申書(令和7年3月21日提出)に添付。)
3 証拠調べ通知書で当審が通知した証拠方法
令和6年9月5日付けの証拠調べ通知書において、職権に基づく証拠調べによる参考文献A、Bを通知した。
参考文献A:「経口投与製剤の処方設計」、株式会社薬業時報社、平成10年4月15日発行、目次、120~129頁、162頁、奥付頁(当該書籍「経口投与製剤の処方設計」は、被請求人提出の乙11及び乙14の書籍と同じである。)
参考文献B:特開平8-333253号公報(元参加人の日新製薬株式会社が提出した丁第4号証と同じである。)
第5 証拠の記載事項
請求人側、被請求人が提出した主な証拠及び証拠調べ通知書で当審が通知した証拠には、以下の事項が記載されている。なお、原文が外国語で記載されているものについては、図面の一部を除き、日本語訳で示す。また、原文にない下線は、当審が強調のために付した。
1 甲3の記載事項
(甲3-a)「1 粉体を構成する粒子 粉体を構成する粒子 particle には一定の比重と形態をもった結晶もあれば,顆粒剤のように造粒された粒子もある。結晶の場合でも完全な単結晶粒子であることは少なく,小さな結晶子の集合体であることが多い.・・・粒子の表面積と溶解速度とは密接に関係する.また,粒子径は製剤や調剤を行うときの取り扱いやすさとも深くかかわっているから,粒子径を調節することは大変重要な問題である.」(152頁下から2行~153頁8行)
(甲3-b)「
[図:0001432287000001.jpg]
」(156頁下から3行~最下行、図4.17)
2 甲4の記載事項
(甲4-a)「
[図:0001432287000002.jpg]
」(233頁の表4・1)
(甲4-b)「
[図:0001432287000003.jpg]
」(240頁の表4・11)
3 甲7の記載事項
(甲7-a)「次式は,薬物の溶解速度が薬物の表面積に正比例することを示している。
・・・
粒子径を細かくして表面積を増加させると,溶解速度を増大させることができるはずである。しかし,単に表面積を増やすだけでは不十分で,増加すべきなのは有効表面積である。有効表面積とは薬物が試験液に接触する表面積である。薬物が疎水性で溶媒による濡れが劣る場合には,粒子径を小さくすると凝集が起こり,有効表面積がかえって小さくなる結果,溶解速度が遅くなることがある。」(104頁2~8行)
(甲7-b)「ここで,溶出液にポリソルベート80を0.2%加えると,フェナセチンは速やかに溶けるようになり,この場合には溶解速度は粒子径が小さくなるにつれて増大する。ポリソルベート80を添加すると,溶媒が薬物粉末の表面をよく濡らすようになるため,溶解速度が粉砕の程度に従って増すものと考えられる。
WursterおよびSeitz(42)は,細孔をもつ錠剤の溶出速度に及ぼす吸着空気の影響を研究した。蒸留水を使用した実験において,細孔が空気でふさがれているために細孔の表面は溶媒に十分に接触することができないことを示した。細孔から空気を除くと溶媒は全表面と接触し,溶出速度が上昇する。また,溶媒に界面活性剤を添加すると,細孔から空気を除く場合と同様の効果があった。」(106頁3~11行)
(甲7-c)「フェナセチンとフェノバルビタールの顆粒からの溶出速度は使用した薬物の粒子径が細かいほど速くなるということを図4.4および図4.5に示した。その理由は,造粒中に薬物粉体の表面が親水性となるので,粒子径を細かくするほど有効表面積が増加するためである。」(108頁8~11行)
(甲7-d)「すなわち,粉体が細かいほど比表面積は大きくなる。さらに,造粒により疎水性の表面が親水性となるので、造粒の効果は最も細かい粉体に一番強く現れるのである。」(109頁2~3行)
(甲7-e)「つぎの段階として,錠剤からの薬物の溶出速度に及ぼす薬物粒子径の影響を調べることが重要であるのはもちろんである。」(109頁8~9行)
(甲7-f)「本来は疎水性の薬物でも,親水性の賦形剤と混合すると混合物は親水性となる。純粋な高速空気粉砕品の場合には粉末の凝集が起こるが,この方法をとると擬集が避けられる。錠剤を水性溶媒中で崩壊させると,ばらばらの粒子に崩壊する。そのために高速空気粉砕品の錠剤の崩壊過程が著しく改善された。ところが噴霧乾燥品の場合には,錠剤にしても溶出速度はあまり変わらない。これは,粉体のみの溶出試験の際にも粒子の凝集が起きないからである。
しかしながら,かれらはその後の論文(20)で,錠剤中の賦形剤として用いた噴霧乾燥乳糖および微結晶セルロースの量を増やすと,噴霧乾燥したキナゾリノンの溶出速度が大きくなることを示した。その理由は,錠剤が崩壊した場合の有効表面積は崩壊および分散によって生じる粒子の数に比例し,その数は親水性の賦形剤を増やすことによって増大させることができるからだと考えられる。
錠剤からの溶出速度が,薬物の粒子径が小さくなることによって速められる現象を発見した研究者は他にもある。Yen(43)は,その現象がトリアムテレンまたはヒドロクロロチアジドを含む錠剤においても成立することを見いだした。また,デンマークのJohansen(17)は,北欧薬局方に従って作った錠剤について,同様の結果を発表している。
一方,錠剤の形で投与する薬物の吸収および薬理効果は,薬物の粒子径を細かくすることにより増大できるということは周知の事実である。例として,ビスヒドロキシクマリン,グリセオフルビン,フェニトイン,トルブタミドが挙げられる。」(109頁最下行~111頁3行)
(甲7-g)「この分野において行われた研究から,一般につぎのような結論をくだすことができる。すなわち,錠剤中の薬物の粒子径を細かくすると溶出および吸収が速まる。この原因は,おそらく錠剤製造に伴う操作にある。つまり,薬物を親水性の賦形剤と混合し,造粒すると本来は疎水性の薬物の表面が親水性になるためである。」(111頁4~7行)
4 甲8の記載事項
(甲8-a)「【特許請求の範囲】
1.式I:・・・の化合物、またはその薬剤学的に許容される塩。
2.請求の範囲第1項に記載の化合物であって、・・・、上記化合物、またはその薬剤学的に許容される塩。
3.請求の範囲第2項に記載の化合物であって、・・・、上記化合物、またはその薬剤学的に許容される塩。
4.請求の範囲第3項に記載の化合物であって、・・・、上記化合物、またはその薬剤学的に許容される塩
5.請求の範囲第4項に記載の化合物であって、・・・、上記化合物、またはその薬剤学的に許容される塩
6.請求の範囲第5項に記載の化合物であって、・・・、上記化合物、またはその薬剤学的に許容される塩。
7.以下よりなる群の化合物から選択される請求の範囲第6項記載の化合物、およびその薬剤学的に許容される塩:・・・。
8.化合物は、4-[5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド、またはその薬剤学的に許容される塩である、請求の範囲第6項に記載の化合物。」(2頁第1行~29頁第8行)
(甲8-b)「式Iの化合物は、患者の炎症の治療、および他の炎症関連疾患の治療(例えば疼痛および頭痛の治療における鎮痛薬として、または発熱の治療のための解熱薬として)に有用であるが、これらに限定されるものではない。例えば、式Iの化合物は、関節炎(慢性関節リウマチ、脊椎関節症(spondyloarthopathies)、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、および若年性関節炎を含むが、これらに限定されない)の治療に有用である。式Iのこのような化合物は、喘息、気管支炎、月経性痙攣、腱炎、滑液包炎、および皮膚関連症状(例えば、乾癬、湿疹、火傷および皮膚炎)の治療に有用である。式Iの化合物はまた、胃腸症状(例えば、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性大腸症候群および潰瘍性大腸炎)を治療するために、および結腸直腸癌の予防に有用である。式Iの化合物は、血管疾患、偏頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、リウマチ熱、I型糖尿病、重症筋無力症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、過敏症、結膜炎、損傷後発生する腫脹、心筋虚血などの疾患における炎症を治療するのに有用である。本化合物は、関節炎の治療などの抗炎症薬として有用であり、さらに有害な副作用が非常に少ないという利点を有する。
本発明は、好ましくはシクロオキシゲナーゼIよりもシクロオキシゲナーゼIIを選択的に阻害する化合物を含む。」(108頁9行~下から3行)
(甲8-c)「実施例2
[図:0001432287000004.jpg]
4-[5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド
工程1:1-(4-メチルフェニル)-4,4,4-トリフルオロブタン-1,3-ジオンの調製
4’-メチルアセトフェノン(5.26g、39.2mmol)をアルゴン下で25mLのメタノールに溶解して、メタノール中のナトリウムメトキシド12mL(52.5mmol)(25%)を添加した。この混合物を5分間撹拌して、5.5mL(46.2mmol)のトリフルオロ酢酸エチルを添加した。24時間還流後、この混合物を室温に冷却して濃縮した。100mLの10%HClを添加して、この混合物を4×75mLの酢酸エチルで抽出した。この抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過して濃縮して、8.47g(94%)の褐色油状物を得て、これをさらに精製することなく次に進んだ。
工程2:4-[5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミドの調製
75mLの無水エタノール中の工程1からのジオン(4.14g、18.0mmol)に、4.26g(19.0mmol)の4-スルホンアミドフェニルヒドラジン塩酸塩を添加した。この反応物をアルゴン下で24時間還流した。室温に冷却して濾過後、この反応混合物を濃縮して、6.13gの橙色の固体を得た。この固体を塩化メチレン/ヘキサンから再結晶して、淡黄色の固体として3.11g(8.2mmol、46%)の生成物を得た:融点157~159℃;元素分析:C17H14N3O2SF3の理論値:C,53.54;H,3.70;N,11.02。実測値:C,53.17;H,3.81;N,10.90。」(181頁17行~182頁16行)
(甲8-d)「本発明の化合物は、インビトロでCOX IIの阻害を示した。実施例に例示した本発明の化合物のCOX II阻害活性は、下記の方法により測定した。
・・・結果を表XIIに示す。
[図:0001432287000005.jpg]
」(277頁下から2行~280頁最下行)
(甲8-e)「本発明には、1つまたはそれ以上の非毒性の薬剤学的に許容しうる担体および/または希釈剤および/または補助剤(集合的に本明細書では「担体」物質と呼ぶ)と一緒にした、そして必要であれば、他の活性成分と一緒にした、1つまたはそれ以上の式Iの化合物を含む薬剤組成物の群も含まれる。本発明の化合物は、任意の適切な経路により、好ましくはこのような経路に適する薬剤組成物の形で、かつ目的とする治療に有効な用量で投与することができる。本化合物と組成物は、例えば、血管内、腹腔内、皮下、筋肉内または局所に投与することができる。」(281頁下から11~4行)
(甲8-f)「経口投与のために、本薬剤組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤または液剤の形にすることができる。本薬剤組成物は、好ましくは特定量の活性成分を含有する投薬単位の形に製造される。このような投薬単位の例は、錠剤またはカプセル剤である。本活性成分はまた、適切な担体として例えば生理食塩水、デキストロースまたは水が使用される組成物として注射により投与してもよい。」(281頁下から3行~282頁2行)
(甲8-g)「投与される治療活性のある化合物の量、および本発明の化合物および/または組成物により疾患症状を治療するための投薬法は、患者の年齢、体重、性別および健康状態、疾患の重篤度、投与の経路と頻度、および使用される特定の化合物を含む、種々の因子に依存し、従って広く変化しうる。本薬剤組成物は、約0.1~2000mgの範囲で、好ましくは0.5~500mgの範囲で、そして最も好ましくは約1と100mgの間で活性成分を含有してよい。1日用量は、約0.01~100mg/kg体重、好ましくは0.1と約50mg/kg体重の間、そして最も好ましくは約1~20mg/kg体重が適切であろう。この1日用量は、1日に1~4回の投薬で投与することができる。」(282頁3~11行)
(甲8-h)「治療目的のために、本発明の化合物は普通、必要な投与経路に適切な1つまたはそれ以上の補助剤と合わせられる。経口投与される場合本化合物は、ラクトース、ショ糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合して、次に投与に便利なように錠剤化またはカプセル化される。このようなカプセル剤または錠剤は、活性化合物をヒドロキシプロピルメチルセルロース中に分散して提供するなど、放出制御処方を含有してもよい。非経口投与のための処方は、水性または非水性の等張性無菌注射液または懸濁剤の形であってよい。これらの液剤および懸濁剤は、経口投与のための処方に使用のための1つまたはそれ以上の担体または希釈剤を含む無菌粉末または顆粒から調製することができる。この化合物は水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウムおよび/または種々の緩衝液に溶解することができる。他の補助剤や投与の様式は、製薬分野で周知である。」(282頁12~27行)
5 甲15の記載事項
(甲15-a)「SC-58635(セレコキシブ):シクロオキシゲナーゼ-2の高選択的阻害剤.ヒトの薬物動態及びその生体内変換における主要CYP450アイソザイムの同定」(S-617頁の右欄2~5行(タイトル))
(甲15-b)「方法.対象は、300mgの[14C]-SC-58635(100μCi)を微細な懸濁液として経口で単回、投与され、15日間の休薬期間の後、300mgのSC-58635をカプセルとして投与された。」(S-617頁の右欄14~16行)
(甲15-c)「[14C]の全量と未変化のSC-58365は、それぞれCmax値が1527(638)と1077(649)ng/mLでそれぞれ容易に吸収された。SC-58635のTmax値、t1/2値、及びAUC(0-48)値は、1.9(0.6)時間、15.6(3.5)時間、及び8763(2274)ng/mL*時間であった。」(S-617頁の右欄29~33行)
6 甲16の記載事項
(甲16-a)「1.はじめに
製剤には,医薬品を使いやすくするとともに,その有効性,安全性および安定性を確保し保証するという重要な使命がある。通常の経口製剤の場合には,その医薬品としての有効性と安全性を保証するために薬物のバイオアベイラビリティーを考慮しなければならない。すなわち,消化管から薬物が製剤設計通りに吸収され,また,製剤各個別ロット間で,その吸収性に差がないことを保証する必要がある。また,多くの場合,できる限り高い吸収率となるような製剤設計が要求される。・・・このように,溶解速度が小さいため吸収が悪い難溶性薬物の溶解性および吸収性の改善は,製剤設計者が直面する最も重要な解決課題の1つである。・・・
2.薬物単独系での溶解性改善
1)微細化
表面積を増大する方法として,薬物粒子を微細化する手段が最もよく利用される。・・・
(1)粉砕
薬物粒子は多くの場合,粉砕機を用いて粉砕される。粉砕機は圧縮,衝撃,剪断および摩砕などの力のいずれか,あるいはそれらを組み合わせて利用しており,ハンマーミル,ボールミル,ジェットミルなどがよく用いられ,通常有機薬物結晶では十数μmから数μm程度まで微細化できる。
微細化により粒子径が小さくなると,表面積の増加により溶解速度が増大する。・・・
微細化によりバイオアベイラビリティーを改善できることが多くの難溶性薬物,たとえば・・・で報告されている。・・・図7-1は,グリセオフルビン(griseofulvin)の粒子径が小さくなり,比表面積が大きくなるのに伴いバイオアベイラビリティーが増大することを示している8)。粒子径によりバイオアベイラビリティーに2倍以上の差が認められている。しかし,微粉になればなるほど凝集が起こりやすく,粉砕により水に接する表面積(有効表面積)が逆に小さくなり,溶解速度が小さくなることがある。特に疎水性物質は凝集性が強い。図7-2に示すように,グリセオフルビン微粉砕品は未粉砕品に比べ逆に溶出速度が低下している9)。ここに界面活性剤が存在すると,微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され,粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなる。また,この例では界面活性剤の可溶化効果も認められている。
このような場合,凝集を防ぐ目的で,流動化剤や界面活性剤を微細化助剤として加えて粉砕する手段が取られる。」(167頁3行~169頁4行)
(甲16-b)「
[図:0001432287000006.jpg]
」(169頁図7-1、図7-2)
7 甲17の記載事項
(甲17-a)「難溶性薬物では、消化吸収はその溶解速度に依存する。これらの薬物の粒子サイズを小さくすることで、その溶解速度が向上する。粉末を微粉化するために、ボールミル又は流体エネルギーミルのいずれかの微粉砕ミルが使用される。これらのプロセスを、グリセオフルビン、プロゲステロン、スピロノラクトン及びジオスミンに適用した。各薬剤について、微粒子化によって、それらの消化吸収、その結果としてそれらの生物学的利用能及び臨床的有効性を改善した。」(211頁「SUMMARY」)
8 甲19の記載事項
(甲19-a)「
[図:0001432287000007.jpg]
a) 顕微鏡法 microscopic method
図1.45に顕微鏡下の粒子投影像から粒子径を測定する方法を示す.」(82頁1~2行及び図1.45)
9 甲20の記載事項
(甲20-a)「
[図:0001432287000008.jpg]
」(222頁図5.1)
10 甲23の記載事項
(甲23-a)「(2)薬物の粒子径
水に対する溶解度が比較的小さな薬物では製剤中の薬物粉末の粒子径によって,溶解速度が大きく異なる。一般に粒子からの物質の溶解速度は,式4-1で示すNoyes-Whitneyの法則に従う。
-dM/dt=KS(Cs-C) ………式4-1
ただlMは粒子状態の物質の量,したがってdM/dtは溶解速度,Kは温度,溶剤,かくはん条件により定まる定数,Sは粒子の表面積,Csは物質の溶解度,Cは時間tにおけるその物質の濃度である。この式で明らかな様に,粒子の表面積Sに比例して溶解速度は大きくなる。」(38頁下から5行~39頁4行)
11 甲61の記載事項
(甲61-a)「1.(a)安全有効量の急速溶解性ビサコジル手段;及び
(b)剤形が小腸及び結腸間の結合部近くか又は結腸に達するまで管腔で剤形の輸送中に胃腸管の管腔中への剤形からのビサコジルの放出を妨げ、その後小腸及び結腸間の結合部近くか又は結腸内の管腔でビサコジルを放出する送達手段;を含んだ、小腸及び結腸とその間に結合部のある、内部が管腔になった胃腸管を有するヒト又はそれより下等の動物へのビサコジルの経口投与用の単位剤形をした医薬組成物。
2.ビサコジル手段が0.1~30mg、好ましくは0.5~15mg、更に好ましくは0.8~3mgの微粉化ビサコジルを含み、微粉化ビサコジルは粒子の90%以上、好ましくは99%以上が有効径10μm以下であるような粒度分布を有している、請求項1に記載の組成物。」(請求の範囲第1項及び第2項)
(甲61-b)「ビサコジル及びデスアセチルビサコジルは双方とも水に難溶性であり、小腸及び結腸双方からの吸収が報告されている。小腸からの吸収の方が結腸からよりも大きいようである。」(5頁下から6~4行)
(甲61-c)「本発明の好ましい急速溶解性ビサコジル手段は微粉化ビサコジルを含んでいる。好ましくは、本発明のある組成物中における実質上すべてのビサコジルは微粉化ビサコジルである。本明細書で用いられる“微粉化ビサコジル”とは、細かく分割された固体ビサコジルを意味する。微粉化ビサコジルの粒度分布は、好ましくは粒子の90%以上が有効径10μm以下、更に好ましくは95%以上が有効径10μm以下、更に一層好ましくは99%以上が有効径10μm以下であるような分布である。本明細書で用いられる“有効径”とは平均容積径を意味し、これは測定される粒子と等容積の球体の直径に相当する。
微粉化ビサコジルは、錠剤及びカプセルのような普通の剤形に処方されたとき、類似剤形の従来のビサコジル処方物と比較して、結腸の腸液に急速に溶解することがわかった。」(8頁7~17行)
12 甲62の記載事項
(甲62-a)「1.式
・・・
式(II)
式中、・・・
に対応する化合物を含有し;式(II)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする、改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物。
・・・
4.式(II)の有効成分が以下の特徴;
-200μmより小さい最大サイズ
-0.5から15μmの間の数平均粒子サイズ
-25μmより小さい、および好ましくは20μmよりも小さい粒子サイズを有する好ましくは数基準で90%の粒子
を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載の組成物。」(請求の範囲第1項及び第4項)
(甲62-b)「本発明は1,4-置換ピペリジン誘導体に基づく新規医薬剤形に関する。
・・・
これらの組成物、およびさらにより詳細には以下の化合物は式が・・・であり、国際的に承認されている名前はエバスタイム(ebastime)、または4-ジフェニルメトキシ-1-[3-(4-tert-ブチルベンゾイル)プロピル]ピペリジンであり、固体剤形中に配合された時にはきわめて平凡なバイオアベイラビリティーを表す。この不十分なバイオアベイラビリティーは一部水溶性の悪さに関連している。従って上記の特許に記載されている粗出発材料からは人が使用でき、かつ正しいバイオアベイラビリティーを表し、そして最終的には正しい生物活性を表す固体剤形中への配合は困難である。」(2頁右下欄3行~下から2行)
(甲62-c)「本発明は以下の式(II)の化合物に関する新規固体投与剤形を開発するために思案され、これは有効成分が向上した溶解性と、すなわち向上したバイオアベイラビリティーを表す。
本発明は以下の式(II)・・・に対応する化合物に基づく新規固体剤形に関し、・・・式(II)の有効成分は微細粉粒化されていることを特徴とする。
この剤形は、微細粉粒化されていない式(II)の化合物から得られた医薬品よりも約40%高い溶解初速度を示すことが利点である。
式(II)の化合物の溶解に関して、さらに改良された剤形によれば、生成物の微細粉粒化に加えて親水性化も行われ、これは微細粉粒化粉末も親水性化工捏もなされなかった式(II)の化合物を含有する固体剤形と比較して、およそ300%向上した溶解度を達成することができる。」(3頁左上欄下から4行~左下欄10行)
(甲62-d)「錠剤の調製
以下の製品をこの組成物を調製するために使用する。
-エバスタイム(式(1)の化合物) 10.0mg
-微結晶性セルロース 20.0mg
-ラクトース1水和物 88.5mg
-予めゲル化した澱粉 5.2mg
-架橋化カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0mg
-ステアリン酸マグネシウム 1.3mg
錠剤1錠について 130.0mg」(4頁左上欄7~16行)
13 甲63の記載事項
(甲63-a)「1.水に不溶性もしくは難溶性の純粋な活性化合物の粒子、または室温で固体状の2種もしくはそれ以上の活性成分の混合物であって平均粒径[光子相関分光分析(PCS)による値]が10~1000nmでありかつ平均粒径が5μmよりも大きな粒子の全母集団中の割合(クールター計数器によって測定する数分布)が0.1%よりも少ない粒子を含有する薬剤キャリヤー。
2.水または水性液体中に導入したときに、薬剤の飽和溶解度と溶解速度が粉状形態の場合に比べて増大する請求項1記載のキャリヤー。」(特許請求の範囲第1項及び第2項)
(甲63-b)「エアジェット中で粉砕し、レーザー回折計(LD)を用いて測定した薬剤RMKP22(4-[N-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-エタノールアミン)-2,7-ビス(シス-2,6-ジメチル―モルホリン-4-イル)-6-フェニル-プテリジン)の粒径分布を図1に例示する。・・・薬剤「RMKP22」の粒径分布から得られた50%、90%、95%および99%LD粒径を図2に示す。」(9頁1行~下から4行)
(甲63-c)「
[図:0001432287000009.jpg]
」(35頁【図2】)
14 甲65の記載事項
(甲65-a)「a)粒子径(表面積)
難溶性薬物の場合は溶解度が小さいために粒子表面の拡散層の濃度勾配が小さく,溶出速度が小さくなる.拡散層の濃度勾配は攪拌速度によっても変化するが,in vivoでは大きく変えられることはない.溶解速度を大きくするには、粒子を小さくして比表面積を増大させることにより可能となる.」(53頁下から7~2行)
(甲65-b)「
[図:0001432287000010.jpg]
」(54頁図2.2及び図2.3、当審注:図2.2の四角枠は請求人が付したものである。)
(甲65-c)「フェニトインを例として,図2.2,2.3に粒子径と溶出速度の関係ならびに粒子径とバイオアベイラビリティの関係について示した9).
フェニトインの市販原末(平均粒子径190μm)と微粉化した結晶(平均粒子径4.1μm)をそれぞれ1.59×10-2mmolとフェニトインNa塩を遊離酸体の3/4に減量した1.19×10-2mmolをヒトに投与し血中濃度を測定した.その結果原末に対し微粉末はAUC0-48hrで約4倍の吸収改善が認められ,pH5.0溶出試験の結果とよく対応しており,比表面積の増大による溶出改善と相関することが理解できる.」(54頁2行~55頁5行)
15 甲66の記載事項
(甲66-a)「3.1.1 粉砕 Milling,Comminution
粉砕とは機械的な外力を加えることによって粒子を破壊し,粒子径を減少させることであり,製剤工程では重要な単位操作の一つである.
粉砕の主な目的は,(1)粒子の比表面積を増加させることによって化学反応をよりスムーズに行わせること,(2)他の成分粒子との混合を容易にすることなどである.(1)については懸濁製剤の調製に際して粒子の分散性を改善したり,溶液製剤では溶解速度を向上させることなどに関係する.また,粒子径が固形製剤のバイオアベイラビリティに影響を及ぼすことはよく知られているが,これには消化管液と粒子との接触面積が関係している.更に(2)については,混合成分の粒子径が最終混合度に関係することが理論的にも認められている(次節参照).したがって,成分粒子の大きさが著しく異なる場合には,均一な混合物を得るために混合に先立ってあらかじめ同程度の粒子径になるように粉砕しておかねばならない.」(212頁5~15行:なお、(1)、(2)は、丸数字を表す。)
16 甲67の記載事項
(甲67-a)「1.1.1 粉砕 Comminution
製剤工程では乾燥された原料粉末が準備されると,まず最初に行われる操作が粉砕である.粉砕とは機械的な外力を加えることによって粒子を破壊し,その粒子径を減少させることであり,医薬品工業では重要な単位操作の一つである.
粉砕の目的として挙げられる理由の中で主なものは,1)化学反応に曝される粉体の比表面積を増加させること、2)他の成分粉体との混合を容易にすることなどである.1)については,これによって液中における粒子の分散や懸濁を可能にしたり, 溶解速度を向上させることができる.粒子径が固形製剤の生物学的利用率bioavailabiltyに影響を及ぼすことは広く知られているが,これにはすべて比表面積が関係している.更に2)については,混合成分の粒子径が最終混合度に関係することが認められている.したがって,成分粒子の大きさが著しく異なる場合には,均一な混合物を得るために混合する前にあらかじめほぼ同程度の粒子径に粉砕しておかねばならない.」(170頁8~19行)
17 甲68の記載事項
(甲68-a)「1.粉砕 communition,pulverization,size reduction
粉砕は,固体粒子の粒子径を適切な大きさに小さくするための単位操作である.粉砕の目的は,製剤工学的観点からは,溶解速度の増大といった物性の改善のみにとどまらず,固形製剤の添加剤を含めた原料粉粒体間の混合の均一性の向上,造粒性の増大,さらには顆粒や錠剤の機械的強度の増大などを期待することにある.」(168頁9~13行)
18 甲69の記載事項
(甲69-a)「製剤における粉砕(size reduction,comminution,pulverization)とは,・・・粒子を破砕(rupture)し,微細化して新しい粒子表面を生成させる操作のことをいい,この操作は生物薬剤学および製剤工学上重要な機械的単位操作の一つである。
まず,生物薬剤学の立場からすれば,薬剤の生体に対する作用,すなわち薬効が最も重要であることはいうまでもなく,このとき,薬剤粒子の大きさと薬効との間には密接な関係があるとする報告1)~6)が多くみられる。・・・一般には薬剤粒子に粉砕処理を施し,その比表面積を増大させるほど溶解・吸収の速度が大きく,より高い薬効の発現を期待しうることが認められている。
つぎに,製剤工学的な立場からすれば,
(1) 散剤・顆粒剤・カプセル剤・錠剤の製造では,その中間の工程で一般に2種以上の粉流体の混合を必要とし,このとき原料,中間品の粉粒体粒子の粒径を適当に小さくし,また異種粉粒体間の粒度差を小さくするほど混合における均一性が向上する。」(7頁3~16行)
19 甲80の記載事項
(甲80-a)「たとえば,原体が針状結晶の場合は嵩だかく,充填性のみならず流動性も悪いので,粉砕し造粒することがよく行われる。」(92頁1~2行)
20 甲87の記載事項
(甲87-a)「
[図:0001432287000011.jpg]
」(144頁「ラウリル硫酸ナトリウム」の項、当審注:表中のマーカーは請求人が付したものである。)
21 甲90の記載事項
(甲90-a)「【請求項1】シクロスポリンと陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤を含有する粉末あるいは固形の製剤。
・・・
【請求項3】 陰イオン性界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである請求項1および2記載の製剤。」(特許請求の範囲)
(甲90-b)「【発明の属する技術分野】本発明はシクロスポリンに異なる種類の界面活性剤を配合することにより、溶出性を高めた粉末あるいは固形の製剤に関するものである。」(【0001】)
(甲90-c)「【0005】本発明で用いることができる陰イオン性界面活性剤は、N-アシルアミノ酸塩、エーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、N-アシルタウリン酸塩、アルキル硫酸塩等、各種あるが、人体への安全性を考慮した場合、特にラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。」(【0005】)
(甲90-d)「【0009】本発明の製剤には薬学的に許容される添加剤として、賦形剤、結合剤、崩壊剤等を加えることができる。賦形剤としては、D-マンニト-ル、乳糖、白糖、デンプン、結晶セルロ-ス等があげられるが、特にD-マンニトールが好ましい。また、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアゴム等があげられるが、特に限定されるものではない。さらに崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等があげられるが、特に限定されるものではない。この他、医薬品に使用される添加剤、たとえば滑沢剤、着色剤、着香剤等を使用してもよいが、特に限定されるものではない。」(【0009】)
(甲90-e)「【0010】本発明の製剤を製造する方法の1つは、シクロスポリン原薬を微細に粉砕したのち陰イオン性界面活性剤を加えて十分混合し、さらに非イオン性界面活性剤と適当な添加剤を加えて散剤とするものである。シクロスポリンと陰イオン性界面活性剤を混合することにより、シクロスポリン原薬同士の凝集が抑制されるとともに、シクロスポリン原薬の表面に陰イオン性界面活性剤がまぶされる形態となるために、原薬の水ぬれ性と分散性が改善され、溶出性が向上する。さらには陰イオン性界面活性剤の滑沢剤様の効果により、粉末の流動性も向上し、他剤との混合性や服用性の向上も同時に達成される。」(【0010】)
(甲90-f)「【0034】その結果表5に示したように、実施例8はシクロスポリンとラウリル硫酸ナトリウムを十分混合することにより、シクロスポリンの粒子同士の凝集が除かれるとともに水ぬれ性が改善され、高い溶出率が得られていると考えられる。・・・」(【0034】)
(甲90-g)「【0028】実施例9
下記の配合比率でシクロスポリン、ラウリル硫酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、クロスカルメロースナトリウムをとり、はじめにシクロスポリンを乳鉢中で微細に粉砕したのちラウリル硫酸ナトリウムを加え、両者を十分混合した。別にモノステアリン酸グリセリンを乳鉢にとり、細かく粉砕したのちシクロスポリンとラウリル硫酸ナトリウムの混合物に加え、さらにクロスカルメロースナトリウムを混合して粉末状の製剤とした。
シクロスポリン 12.5 重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 25.0 重量%
モノステアリン酸グリセリン 12.5 重量%
クロスカルメロースナトリウム 50.0 重量%
100.0 重量%
【0029】実施例10
下記の配合比率でシクロスポリン、ラウリル硫酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、クロスカルメロースナトリウム及びヒドロキシプロピルセルロースをとり、はじめにシクロスポリンを乳鉢中で微細に粉砕したのちラウリル硫酸ナトリウムを加え、両者を十分混合した。別にモノステアリン酸グリセリンを乳鉢にとり、細かく粉砕したのちシクロスポリンとラウリル硫酸ナトリウムの混合物に加え、さらにクロスカルメロースナトリウムとヒドロキシプロピルセルロースを混合して粉末状の製剤とした。
シクロスポリン 12.5 重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 25.0 重量%
モノステアリン酸グリセリン 12.5 重量%
クロスカルメロースナトリウム 40.0 重量%
ヒドロキシプロピルセルロース 10.0 重量%
100.0 重量%」(【0028】~【0029】)
22 甲91の記載事項
(甲91-a)「【請求項1】 有効平均粒子サイズ約400nm未満を維持するのに十分量で表面に表面変性剤が吸着された結晶性薬物を必須のものとして含んでなる粒子。」(特許請求の範囲)
(甲91-b)「【0003】粒状薬剤の溶解速度は、表面積の増大、すなわち粒子サイズの低減につれて増加できることが知られている。従って、微細薬剤の調製方法が研究されてきたし、さらに医薬組成物中の薬剤粒子のサイズやサイズ範囲を調節することが行われてきた。」(【0003】)
(甲91-c)「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、安定で分散性の薬物微粒子および表面変性剤と共に粉砕媒体の存在下での湿式粉砕化によるそのような粒子の調製方法を発見した。これらの粒子は、著しく高い生体利用効率を示す医薬組成物に製剤することができる。」(【0009】)
(甲91-d)「【0020】好ましくは、適当な表面変性剤は、既知の有機および無機医薬賦形剤から選ばれる。このような賦形剤としては、各種ポリマー類、低分子オリゴマー類、天然物および界面活性剤が挙げられる。好ましい表面変性剤は非イオンおよび陰イオン界面活性剤を含む。・・・
【0021】特に好ましい表面変性剤としては、・・・、デュポノール(Duponol)P(これは、DuPontから入手できる、ラウリル硫酸ナトリウムである) 、・・・が挙げられる。」(【0020】~【0021】)
(甲91-e)「【0023】本明細書で使用する「粒子サイズ」とは、当該技術分野で周知の通常の粒子サイズ測定法、例えば、沈降フィールド・フロー・フラクショネーション、光子相関分光法(photon correlation spectroscopy)またはディスク遠心分離のような常用されている粒子サイズ測定法によって測定されるような数平均粒子サイズをいう。「約400nm未満の有効平均粒子サイズまたは有効平均粒子サイズ約400nm未満」とは、前記方法で測定した場合に、粒子の少なくとも90%が約400nm未満の重量平均粒子サイズを持つことを意味する。」(【0023】)
(甲91-f)「【0049】 生体利用効率試験
絶食した雄のビーグル犬で上述の微小粒子に由来するダナゾールの生体利用効率を、未粉砕ダナゾールの懸濁物に由来するものと比較した。この懸濁物は、ボールミル処理工程を除いて前記分散体と同様な方法により懸濁物として調製した。両製剤を経口ガバージュにより5匹の犬それぞれに投与し、次いで橈側皮静脈中のカニューレを介して血漿を得た。24時間中、血漿ダナゾールレベルをモニターした。
【0050】微小粒子分散体に由来するダナゾールの相対生体利用効率は、通常のエアージェットミル処理によって調製された約10ミクロンの平均粒子サイズを有するダナゾール粒子を含むダナゾール懸濁物より15.9倍高かった。経口血漿レベルをダナゾール静注後の用量補正血漿レベルにたとえると、平均絶対生体利用効率(±SEM)は微小粒子分散体について82.3±10.1%を与え、そして未粉砕物について5.1±1.9%を与えた。」(【0049】~【0050】)
23 甲92の記載事項
(甲92-a)「【請求項1】 微粒子化した薬物活性成分および界面活性剤または有機酸塩からなる核と部分アルファ化デンプンとを含有することを特徴とする医薬組成物。」(特許請求の範囲)
(甲92-b)「【0002】
【従来の技術】固形製剤、特に汎用される錠剤中の薬物活性成分を効率良く消化管から吸収させバイオアベイラビリティーを高めることは製剤学上の課題の一つである。・・・
【0003】製剤学的にバイオアベイラビリティーの低下を防止する方法としては、薬物活性成分を1.有機溶媒に溶解しゼラチンカプセルに充填した軟カプセル剤とする方法、2.高分子と共に溶媒に溶解し速やかに乾燥して固体分散体とするか、または高分子と共に溶融して固体分散体とする方法、3.有機溶媒に溶解した後、多孔性物質に微粒子状に吸着させて表面積を増大する方法、4.高分子の添加剤と共に混合粉砕し非晶質とする方法、5.薬物活性成分を単独あるいは添加剤と共に粉砕し微粒子化する方法、6.界面活性剤を製剤基剤に混合する方法等があげられるが、1~4の方法は高含量化が難しい等の問題がある。
【0004】5の微粒子化法においては、薬物活性成分のみを微粒子化した製剤(特開平5-97670号公報)や、糖あるいは糖アルコールと共に混合粉砕し超微粒子化する方法(特開平3-66613号公報)が知られている。また、6の界面活性剤を製剤基剤に混合することにより薬物の製剤からの放出が促進される方法が知られている〔ドラック デベロップメント アンド インダストリアル ファーマシー,16巻,10号,1717頁,1990年;同,12巻,6号,851頁,1986年〕。」(【0002】~【0004】)
(甲92-c)「【0006】本発明の目的は、打錠しやすく溶出性および生体への吸収性に優れた小型化された錠剤を提供することにある。」(【0006】)
(甲92-d)「【0009】薬物活性成分の微粒子化は、どのような方法を用いてもよいが、ジェット粉砕法、ハンマーミル法等により通常の高速攪拌粉砕機、衝撃粉砕機を用いて薬物活性成分を微粒子化すればよい。微粒子の径は30μm以下、好ましくは10μm以下である。」(【0009】)
(甲92-e)「【0010】本発明において用いられる界面活性剤は、経口製剤で許容される界面活性剤ならいかなるものでもよいが、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ショ糖脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム等があげられ、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムがあげられる。」(【0010】)
(甲92-f)「【0016】製剤上常用される添加剤としては、通常用いられる賦形剤、崩壊剤、滑沢剤等の中から主薬の安定性をそこなわず、かつ錠剤特性に影響を与えないものであればよく、例えば賦形剤としては乳糖、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、白糖、マンニトール、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等があげられる。崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルポリプラスドン、クロスカルメロースナトリウム等があげられる。滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、コロイド状シリカ等があげられ、これらの添加剤を単独あるいは組み合わせて用いてもよい。
」(【0016】)
24 甲93の記載事項
(甲93-a)「消化管内では攪拌速度はほぼ一定と考えられるので,溶解速度を増すためには,薬物の表面積を大きくする,すなわち微細な粒子にするほど溶解速度が大きくなり,薬効が増大する。また界面活性剤などを用いて固体表面を濡れ易くする,すなわち液体と接する面積Sを大きくして溶解速度を増す工夫も行われている。」(226頁1~5行)
25 甲94の記載事項
(甲94-a)「固体の微粉化は比表面積の増大により,一般に溶解速度を増加*2させる.しかし薬物が疎水性の場合*3,微粉化により気泡の付着や粒子の浮上が起こり有効表面積が減少し,かえって溶解速度が減少する.この改善には,界面活性剤の添加によるぬれの増大が有効である.」(75頁16~19行)
26 甲95の記載事項
(甲95-a)「
[図:0001432287000012.jpg]
」(55頁、当審注:「S」は「固体と液体の間の有効接触面積」である(54頁の「Key Point」の項目)。また、表中のマーカーは請求人が付したものである。)
27 己2の記載事項
(己2-a)「1,水難溶性小粒子主薬とβ-1,4グルカン粉末に、崩壊剤および界面活性剤を配合してなる直接打錠用製剤組成物。」(特許請求の範囲第1項)
(己2-b)「つまり、直打の問題点((1)湿打ほど十分な強度を持つ錠剤が容易には得られない。(2)錠剤間で主薬のバラツキが湿打に比較して大きい。(3)錠剤の崩壊または生薬の溶出が不十分である。)に遭遇し、その解決策を見つけるに至っていないからである。
主薬は全般に成形機能がなく、錠剤の強度アップを阻害する。そして、その程度は、主薬形状が針状であったり、粒子径が大きいほど阻害の程度は大きく、さらに主薬の溶出速度(薬効の指標として、主薬の溶出速度が代用特性として用いられる。)にも影響を及ぼす等のことから、本発明においては、主薬粒子径を1~30μとし、かつ短軸径と長軸径の比を1対1.5以下にすることが、成形性、浴出速度、および賦形剤との混合性、混合粉体の流動性等の面で最良であることを確認した。そして、この微粒子主薬に、成形機能の高いBGPを適量配合することにより、前記の(1)および(2)については完全に解決した。
しかし、生薬の微粒子化は、むしろ崩壊性を損ない、ひいては溶出速度の低下をもたらす傾向にあるので、前記(3)の解決にはならない。崩壊剤のみでは、BGPにより結合性の高められた錠剤は、日本薬局方に準じた試験法による崩壊度が改良できても、水難溶性主薬の溶出速度は、乳糖添加湿式製錠品に比較すると劣ることから、本発明においては、その解決策として、主薬と溶出媒との界面活性(主薬と液との接触を容易にする)を改善するため界面活性剤を配合したのである。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルフオン酸ソーダ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルキルナフタレンスルフオン酸ソーダ、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、グリセリンモノステアレート、グリセリルモノオレート等の製剤および食品分野で用いられる陰イオン界面活性剤および非イオン系界面活性剤があるが、中でも粉状小粒子が最も効果を示し、その粒子径は1~100μである。」(2頁右上欄8行~右下欄下から4行:なお、(1)~(3)は、丸数字を表す。)
(己2-c)「参考例1
水に難溶で成形の困難なフエナセチンの針状結晶〔保栄薬工(株)製、局方品(短軸径と長軸径の比が1対2.5~4.0)〕を粗粉砕後、篩分し粒子径を変えて60部取り、BGPの1例である平均粒子径40μの微結晶セルロース(市販品としては「アビセル」がある。以下、MCCと略記する)を38.5部、崩壊剤としてカルボキシメチルセルロース・カルシウム〔ニチリン化学工業(株)製品ECG-505(以下、ECG-505と略記する)〕を加えて、V型ブレンダーで45分混合した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム〔和光純薬(株)製(以下Mg-Stと略記する)〕を0.5部加え、15分間混合した後、・・・錠剤強度を第1図に、また崩壊度を第2図に示した。」(4頁左下欄4行~右下欄2行)
(己2-d)「実施例1
平均粒子径7μ、短軸径と長軸径の比が約1対1.2のフエナセチン60部にMCC37部、ECG-505 3部、界面活性剤〔花王アトラス(株)製エマール10平均粒子径150μ〕、ラウリル硫酸ナトリウムの0~5部とからなる混合粉体にMg-Stを0.5部加えて、・・・製錠し、錠剤強度、崩壊度および溶出速度の測定を行った。結果を第5表に示す。」(5頁左下欄下から8行~右下欄1行)
28 己5の記載事項
(己5-a)「医薬品の製剤化の工程には、薬剤を粉砕する工程が含まれることが多い。たとえば粒度の大きい結晶粒子を微細化して溶解速度を上げたり、針状結晶粒子を粉砕して流動性をよくしたり、二種以上の粉体の混合性をよくするために粉砕して粒度を調整したり、二種以上の粉体を混合し粉砕して特殊の効果を期待するなど、種々の目的で薬剤の粉砕が行われる。
この何れをとつても100ミクロン以下、望ましくは30ミクロン以下に微粉砕することが要求される。しかも、医薬品の特殊性から、その他にも種々の条件を満たさなければならない。」(1頁左下欄最下行~右下欄下から5行)
29 己6の記載事項
(己6-a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は薬学の領域に属し、抗鬱薬デュロキセチンの優れた腸溶性製剤を提供するものである。」(【0001】)
(己6-b)「【0013】デュロキセチンの粒度には若干の注意を払わなければならない。この化合物は針状結晶として沈殿し、非常に大きな結晶になり得る。大きい針状のデュロキセチンでビーズをコーティングすることは困難であり得る。本発明の製品と製造方法に使用する前に、磨砕するかあるいはデュロキセチンの粒度を約50μmより小さくすることが望ましい。」(【0013】)
30 己13の記載事項
(己13-a)「1.(a)1~75ミクロンの平均粒径を有する不溶性粒子0.05~40%(組成物中で上記粒子の95%以上は75ミクロン以下の径を有する)
(b)ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤及びそれらの混合物からなる群より選択される界面活性剤0.05~40%
(c)皮膚軟化剤0~50%、及び
(d)水20~99.85%
を含んでなる、非摩擦パーソナルクレンジング組成物。」(請求項1)
(己13-b)「加えて、平均粒径は本発明で使用上粒子の適合性を決める上で重要な唯一の考慮事項ではないことも認識されている。例えば、粒子サンプルが“適当な”平均粒径をたとえ有しているにしても、粒子分布は上記75ミクロンの触知閾値を超えた粒子について最少の割合を有するようなものであるべきだ。したがって、本発明の不溶性微粉化粒子は、組成物中に処方されたとき粒子の約95%以上が約75ミクロン以下の粒径を有し、好ましくは粒子の約97.5%以上が約75ミクロン以下の粒径を有し、更に好ましくは粒子の約99%以上が約75ミクロン以下の粒径を有し、最も好ましくは粒子の約99.5%以上が約75ミクロン以下の粒径を有するような粒径分布も有している。」(9頁下から14行~6行)
31 己14の記載事項
(己14-a)「1.粒子状であって、該粒子が約25ミクロン未満の平均粒径を有することを特徴とする、式I:
[図:0001432287000013.jpg]
の化合物、並びにその医薬的に許容される塩及び溶媒和物。
2.該粒子が約5~約20ミクロンの間の平均粒径を有する、請求項1に記載の化合物。
3.該粒子の少なくとも約90%が約50ミクロン未満の径を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
4.該粒子の少なくとも90%が約35ミクロン未満の径を有する、請求項3に記載の化合物。
・・・
9.ラロキシフェンでの骨粗鬆症の処置においてバイオアベイラビリティを高める方法であって、そのことを必要とするヒトに、請求項1~6のいずれかに記載の式Iの化合物、又は請求項7若しくは8に記載の医薬品製剤の有効量を投与することを含んでなる方法。
10.ラロキシフェンで血清脂質レベルを低下させる際のバイオアベイラビリティを高める方法であって、そのことを必要とするヒトに、請求項1~6のいずれかに記載の式Iの化合物、又は請求項7若しくは8に記載の医薬品製剤の有効量を投与することを含んでなる方法。
11.ラロキシフェンで乳癌を予防する際のバイオアベイラビリティを高める方法であって、そのことを必要とするヒトに、請求項1~6のいずれかに記載の式Iの化合物、又は請求項7若しくは8に記載の医薬品製剤の有効量を投与することを含んでなる方法。
・・・」(特許請求の範囲)
(己14-b)「ラロキシフェンの進歩は、バイオアベイラビリティと製造する際との両方に関して、その物理的特性により幾分妨げられている。例えば、それは一般に不溶性であって、このことが、そのバイオアベイラビリティに悪影響を及ぼし得る。明らかに、ラロキシフェンの物理的特性におけるいずれかの改善は、より有利な療法と製造能力の向上を与える可能性がある。
本発明は、粒子状であって、該粒子が約25ミクロン未満、好ましくは約5~約20ミクロンの平均粒径を有することを特徴とする、式I:
[図:0001432287000014.jpg]
の化合物、並びにその医薬的に許容され得る塩及び溶媒和物を提供する。
さらに本発明は、その粒子の少なくとも90%が約50ミクロン未満、好ましくは約35ミクロン未満の粒径を有する式Iの化合物を包含する。
・・・
現在、式Iの化合物を処理して、それらの粒径を規定された狭い範囲内にすることにより、それらの活性成分に関して、一貫したインビトロにおける溶解プロフィールとインビボにおけるバイオアベイラビリティとを示す医薬組成物を製造できることが見出された。これらの所望の溶解/バイオアベイラビリティ特性をもたらすことに加えて、狭い範囲への粒径の制御はまた、製造能力において顕著な改善をもたらす。
本発明により提示する式Iの化合物の平均粒径は、約25ミクロン未満、好ましくは約5~約20ミクロンである。さらに本発明は、その粒子の少なくとも90%が約50ミクロン未満、好ましくは約35ミクロン未満の粒径を有する式1の化合物を包含する。より好ましくは、その平均粒径範囲が約5~約20ミクロンであり、その粒子の少なくとも90%が約35ミクロン未満の径を有する。」(1頁32行~3頁16行)
(己14-c)「現在利用可能な様々な種類の粉砕装置、例えば、ハンマー、ピン、又は流体エネルギー摩砕機を利用した粉砕による、粉砕又は粒径低減工程によって径(size)が低減された全ての物質において、径(size)の大きなばらつきが見られるから、粒子の90%以上のサイズについて設定される限定が、本発明の粒子状化合物を、より広い径(size)分布を示す粒子状化合物とさらに区別するための限定であることは、粉砕処理技術に精通した者には当然に理解されるであろう。」(3頁17~27行)
(己14-d)「ラロキシフェンの化学名は、6-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-[4-(2-ピペリジノエトキシ)ベンゾイル]ベンゾ[b]チオフェンである。」(4頁1~3行)
(己14-e)「多くの場合、溶解性の乏しい化合物は、製剤化した粒子の表面積を増大させることにより、バイオアベイラビリティを高めることができる。一般的に、粒径が小さくなるにつれて、単位体積あたりの表面積が増加する。」(4頁15行~19行)
(己14-f)「典型的には、式Iの化合物の代表的な試料は、その未処理の状態で、約110-200ミクロンの平均当量球体積直径を有する粒子を広い径分布で含んでなると予想される。
その未処理の状態で、径に関して特徴付けた後、次いで、好ましくは、摩砕機回転速度及び供給量の適当な条件下にピン摩砕機を使用して、未処理の化合物を摩砕して、その粒径値を本発明による上述の範囲内とする。Horiba LA900 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzerを使用してサンプリングすることにより、摩砕効率を調べ、また最終粒径を同様の方法で調べる。
摩砕機を通す最初の通過が必要な径分布をもたらさないならば、1回又はそれ以上のさらなる通過を行う。」(5頁19~34行)
(己14-g)「以下のものは、本発明による組成物の製造例である。全ての実施例において、その化合物は、ピン摩砕機を使用して未処理の形態から製造され、また約5~20ミクロンの平均当量球体積直径を有する粒子からなり、その粒子の少なくとも90%が約35ミクロン未満の粒径を有する。
・・・
[図:0001432287000015.jpg]
これらの4つのバルクロットを手でカプセルに充填して、60.0mgのラロキシフェン塩酸塩を得、USP装置IIを50rpmのパドル速度で利用して、0.1%水性ポリソルベート80媒体中での溶解試験にかけた。データを10分、20分、30分、及び45分で集めて、溶解プロフィールを作成した。
[図:0001432287000016.jpg]
溶解プロフィールの範囲は、30分で溶解した25%~約80%の範囲の値で、バルク薬剤物質の様々な粒径分布から得られることが観察された。・・・
[図:0001432287000017.jpg]
このインビトロとインビボとの関係は、溶解法の識別能力の裏付けとなり、さらにはまた、バルク薬剤物質の粒径分布又は表面積のいずれかに関する制御法の必要性を強調する。このデータのさらなる評価は、粒径データが、溶解データ及びインビボにおける吸収において述べた相違とよりよく関連することを示した。・・・
インビトロにおける溶解とインビボにおける吸収により測定される、薬品性能に対するラロキシフェンHClの粒径の影響をさらに調査するために、単回用量の、血漿濃度対時間の試験をシノモルグスザルにおいて計画した。その試験は、48.1及び9.0ミクロンの平均粒径を有するラロキシフェンの2つのバルクロットから得られる吸収を比較した。そのロットを、ヒトへの使用のために錠剤に圧縮する造粒の代表的な造粒マトリックスに製剤化した。加えて、9.0の平均粒径をもつバルクロットを、所望の商業的な摩砕経路を表すピン摩砕技術によって得た。以下の表は、2つのバルクロットの粒径データを要約する。
[図:0001432287000018.jpg]
溶解プロフィールを作成することを目的として、顆粒を手でカプセルに充填して、60mg当量のラロキシフェン塩酸塩を与えた。パドル法を50rpmで利用して、0.1%水性Tween媒体中で作成した溶解データを以下に示す。
[図:0001432287000019.jpg]
粒径分布におけるこれらの相違は、さらにまた、0.1%水性ポリソルベート80溶解媒体中での溶解プロフィールにおいて顕著な相違をもたらした。その試験では、クロスオーバー試験計画により、サルに各々の製剤を与えて、反復試験期間を組み込んで、被験者内変動性(intrasubject variability)を可能とした。
以下の表11は、サルに25mg/kgの経口用量を投与した後の全ラロキシフェンの平均標準血漿濃度を示す。
[図:0001432287000020.jpg]
表11に記した血漿濃度対時間のプロフィールから分かるように、より微細な粒径バルク薬剤物質を含む製剤は、サンプリングした全ての時点で、より高い血漿濃度の全ラロキシフェンを与えた。より微細な粒径をもつ製剤から得られる優れた吸収は、その試験から得られた薬物動態学的パラメーターの以下の要約で説明するように、吸収の速度と程度の両方に反映される。
[図:0001432287000021.jpg]
示した相違は、統計的分析に基づいて有意であることが見出された(AUC、p<0.005及びCmax、p<0.02)。このデータは、バイオアベイラビリティに対するその影響についての、粒径分布の重要な性質のさらなる証拠である。
その試験はまた、インビトロにおける溶解法の識別能力とインビボにおける吸収に対するその関係も確かめる。再度、インビトロにおける溶解プロフィールで観察された相違を、インビボにおける吸収の相違に置き換えた。
先の研究と得られた物理的性質データに基づいて、粒径規格を確立した。本発明は、レーザー光回折により測定される平均粒径が約25ミクロン未満であるベきことを提供する。加えて、その粒子の90体積%は、50ミクロンより下であるべきであり、これは、分布の特徴付けを可能とする。好ましくは、その径が約5~約20ミクロンであって、その粒子の90%が約35ミクロン未満の径を有する。この範囲を正当化するために、バルクロットをピン摩砕により製造して、入手できる極限の試料を製剤化した錠剤に製造して、インビトロにおける溶解を試験した。ある試験では、ラロキシフェン塩酸塩の6つのバルクロット(約1kg)を得て、臨床第III相試験で利用される錠剤の代表的な60mgのラロキシフェンHClの製剤化した錠剤に製造した。利用したロットに関する粒径データを以下の表12に要約する。
表12
(粒径は全て、ミクロン単位である。)
[図:0001432287000022.jpg]
錠剤に製剤化した、これらの6つのバルクロット全てに関する0.1%水性ポリソルベート80中での溶解プロフィールは、全ての場合において同等である。
加えて、ロットは全て比較的速い溶解プロフィールを示し、20分で90%以上が溶解した。
表13
溶解した%-コア錠剤からのラロキシフェン塩酸塩
[図:0001432287000023.jpg]
・・・
7つの異なった粒径分布のバルク薬剤を用い、各々を、さらにまた、60mgの錠剤に製剤化して、別の同様の試験を行った。これらのロットに関する粒径データを表14に要約する。
表14
(粒径は全て、ミクロン単位である。)
[図:0001432287000024.jpg]
錠剤に製剤化した、これらの7つのバルクロットに関して、0.1%水性ポリソルベート80中で集めた溶解データを以下の表に記す。
表15
溶解した%-ラロキシフェン塩酸塩
[図:0001432287000025.jpg]
先の一連の粒径分布でのように、これらの粒径分布で得られた同等な溶解プロフィールは、本発明に記す粒径に関する範囲の裏付となる。インビトロにおける溶解とインビボにおける吸収との間の関係が示されると、本特許で請求する粒径分布範囲が、驚くほど一貫したインビボにおける吸収/バイオアベイラビリティ特性を与えるであろうという結論に達する。」(7頁6行~18頁13行)
(己14-h)「製剤例 13:
[図:0001432287000026.jpg]
・・・
製剤例 16:
[図:0001432287000027.jpg]
・・・
製剤例 23:
[図:0001432287000028.jpg]
・・・
製造例 24:
[図:0001432287000029.jpg]
・・・
製造例 25:
[図:0001432287000030.jpg]
」(28頁7行~35頁下から4行)
32 己15の記載事項
(己15-a)「1.基本構造式
・・・
を有し、粒状形であり、かつ約5μm~約20μmの平均等価球体積直径を有し、その95%が約50μmより小さい粒度を有する、2α-シアノ-4α,5α-エポキシ-3-オキソステロイド。」(特許請求の範囲第1項)
(己15-b)「本発明は、コントロールされた粒度の2-シアノ-4,5-エポキシ-3-オキソステロイド類およびそれらの組成物に関する。
・・・
これらのステロイド類の臨床的使用において直面する問題は、変動性の、予測不可能な吸収特性、血液レベルおよび生物有効性(bioavailability)であった。それゆえ、たとえば、トリロスタンの従来の製剤の臨床的使用の結果は、完全には満足すべきものではなかった。本発明によるコントロールされた粒度の2-シアノ-4,5-エポキシ-3-オキソステロイド類およびそれらの組成物を提供することにより、これらの問題は克服される。
化合物の面において、本発明は、基本構造式・・・を有し、粒状形であり、かつ約5μm~約20μmの平均等価球体積直径を有し、その95%が約50μmより小さい粒度を有する、2α-シアノ-4α,5α-エポキシ-3-オキソステロイドに、関する。(2頁左下欄3行~3頁左上欄5行)
(己15-c)「粒子の95%以上の大きさについての限定は、本発明の粒状化合物を、微粉砕または粒度の減少法、たとえば、現在入手可能な種々の微粉砕装置、たとえば、ハンマー、ピンまたは流体エネルギーミルを利用することにより、大きさを減少されたすべての粉末において見られる大きさな広い変動のために、広い大きさの分布を示す粒子と区別するために、追加的に必要な補助的限定である、ことを微粉砕法の知識をもつ人はもちろん理解するであろう。」(3頁右下欄10行~下から2行)
(己15-d)「生物学的有効性の試験
60mgのカプセル剤を、実施例1におけるように、湿式造粒技術により、(1)約10μmの平均等価球体積直径を有する粒子(粒子の少なくとも約95%は約50μmよりも小さい粒度を有する)、(2)約45μmの平均等価球体積直径を有する粒子、および(3)100μmより大き平均等価球体積直径を有する粒子からなるトリロスタンのバッチを用いて調製した。
・・・
これらの結果が示すように、血漿のトリロスタンおよび代謝物の濃度は、使用するトリロスタンの濃度に依存し、最小の粒度の材料、すなわち、本発明による材料は最高の血漿濃度を生ずる。」(7頁左上欄2行~左下欄8行)
33 戊40の記載事項
(戊40-a)「要約
グリベンクラミドの胃腸からの吸収は限定的である。そのため、薬物の吸収を高め、それにより成人発症糖尿病を患うウサギ及びヒトボランティアにおけるBSL低下を強化するために、異なる濃度のラウリル硫酸ナトリウム及びツイーンR80を錠剤製剤に配合した。界面活性剤は、錠剤製剤において高濃度に含まれると、ウサギと糖尿病患者の双方においてBSL低下の速度と程度を強化することが判明した。」(851頁「要約」)
(戊40-b)「はじめに
グリベンクラミド(HB419)は、スルホニル尿素系血糖降下薬であり、成人発症糖尿病患者の治療に有効であることが実証されている1。この薬は、英国薬局方(B.P.)2に収載されており、また、他の文献でも詳細に説明されている3,4。この薬は、人間と動物において強力な血糖降下作用を有している5-7。この薬は、水にほとんど溶けず、経口投与された場合、消化管から吸収されるのは45%のみである8。
この薬物の水溶性と消化管からの吸収性を高めるため、ラウリル硫酸ナトリウムとツイーンR80を様々な濃度で錠剤製剤に配合した。錠剤崩壊剤としてNymcel ZSB-16を使用した。ウサギの血糖値(BSL)を測定することで、治療効果の観点から薬物の生体内利用率を評価した。
糖尿病患者における24時間にわたる薬物の急性効果と、臨床現場における血糖降下剤としての価値に主眼を置いた報告が議論された9。したがって、24時間にわたる治療効果を測定するために、成人発症糖尿病を患うボランティアを対象に、本薬物の最適な製剤を用いた臨床試験が実施された。」(852頁「はじめに」)
(戊40-c)「界面活性剤を含む錠剤から放出される薬物の治療効果に関する生物学的利用能は、ウサギにおけるBSLの低下を測定することで研究された。結果を表3及び表4に示す。GSLS-1からGSLS-4のバッチの錠剤におけるラウリル硫酸ナトリウムの濃度の増加は、BSLの低下を促進することがわかった。GSLS-1バッチの錠剤におけるBSL低下の速度と程度は、溶液よりも小さいことを示した。GSLS-2とGSLS-3のバッチの錠剤は、低下の速度と程度の双方において、溶液との有意差を示さなかった(P>0.05)。しかし、GSLS-4バッチの錠剤は、溶液よりも優位に高いBSL低下速度と程度を示した(P<0.01)。」(860頁1~14行)
34 乙11の記載事項
(乙11-a)「
[図:0001432287000031.jpg]
」(79頁の表3-3-5)
35 乙14の記載事項
(乙14-a)「第4章 医薬品添加物と処方設計」(102頁上部)
(乙14-b)「(2)崩壊剤の種類
トウモロコシデンプン,カルメロースカルシウム,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース,クロスカルメロースナトリウム,カルボキシメチルスターチナトリウムなどがよく使用されている。
・・・
(2)結合剤の種類
ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ポビドン,トウモロコシデンプン,メチルセルロースがよく使用されている。」(102頁2~5行、103頁下から7行~5行)
(乙14-c)「(a)粉砕
粉砕は,固体試料に衝撃,圧縮,摩擦などの機械的な外力を加えて粒子径を小さくする操作であり10,11),その目的は,粒子径を小さくし,溶解速度を大きくする,難水溶性薬物の経口吸収性を改善する11),混合状態を均―にする13,14),打錠時の成形性を高めることなどである。
一般に粉砕・微細化された粉体は表面エネルギーが高く,静電気の影響を受けやすく付着凝集性も高くなるので,取扱いは煩雑となる。また,結晶状態の変化に伴い安定性の低下を来す場合もあるので,製造工程に粉砕操作を組み入れる場合には,製剤品質への影響を見極めることが必要である。」(51頁下から12行~下から4行)
36 乙15の記載事項
(乙15-a)「微細化によりバイオアベイラビリティーを改善できることが多くの難溶性薬物,たとえばフェニトイン(phenytoin)3),ニトロフラントイン(nitrofurantoin)4)),ベノキサプロフェン(benoxaprofen)5)など6,7)で報告されている。図7-2は,グリセオフルビン(griseofulvin)の粒子径が小さくなり,比表面積が大きくなるのに伴いバイオアベイラビリティーが増大することを示している8)。粒子径によりバイオアベイラビリティーに2倍以上の差が認められている。しかし,微粉になればなるぼど凝集が起こりやすく,粉砕により水に接する表面積(有効表面積)が逆に小さくなり,溶解速度が小さくなることがある。特に疎水性物質は凝集性が強い。図7-2に示すように,グリセオフルビン微紛砕品は未粉砕品に比べ逆に溶出速度が低下している9)。ここに,界面活性剤が存在すると,微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され,粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなる。また、この例では界画活性剤の可溶化効果も認められている。」(168頁下から9行~169頁2行)
(乙15-b)「
[図:0001432287000032.jpg]
」(169頁図7-1)(当審注:乙15は甲16と同一の文献である。)
37 乙17の記載事項
(乙17-a)「界面活性剤の場合,バイオアベイラビリティへの影響に関しては非常に複雑で予想が困難である.薬物の吸収率を増大させる場合と減少させる場合が見受けられる.吸収への影響に関する一般的な考え方は,(1)溶解度あるいは溶出速度の増大,(2)生体膜の変化による膜透過性の増大,(3)ミセル形成による薬物の可溶化が起こり遊離の薬物の減少によるバイオアベイラビリティの低下などである.
界面活性剤によるバイオアベイラビリティの改善例として,Prescottらは,フェニトインの懸濁液中の粒子径と界面活性剤Tween80の添加効果を検討した.粒子の比表面積とバイオアベイラビリティが相関することを明らかにすると共に,微粒子(75μm以下)にTween80 0.1%を添加することにより更にバイオアベイラビリティが増大することを示した38).」(64頁1行~9行、当審注:(1)~(3)は、それぞれ○の中に1~3を示す。)
38 乙20の記載事項
(乙20-a)「また界面活性剤が形成するミセル中に薬が取り込まれた場合には,ミセルは消化管膜を通過しにくいので,薬の吸収が阻害される.」(233頁15行~17行)
39 乙21の記載事項
(乙21-a)「本発明は、ヒト及び家畜の治療に使用できる新規で安定な医薬組成物に関し、より詳細にはレイン及びジアセチルレイン(ジアセレイン)に適応し、活性成分のバイオアベイラビリティを実質的に向上した、新規なガレヌス製剤に関する。
・・・しかしながら、レイン及びジアセレインは、水及びアルコールに実質的に不溶であるという欠点がある。さらに、ジアセレインは、経口経路で投与されてもよいが、消化管で完全には吸収されず、この不完全な吸収により、望ましくない副作用、例えば緩下作用を生じることがある。
・・・
さらに、物質の可溶化及び/又は湿潤性は、一般的に活性成分のバイオアベイラビリティを促進する効果を有する界面活性剤による処理によって向上できることが知られている。また、ある種の水溶性ポリマーの存在下で不溶性活性成分を粉砕すると生成物の溶解性及びバイオアベイラビリティが向上することも知られている(Yamamotoら、J.Pharm.Sci.(1976)65,1484~1488頁)。
・・・
特許EP-A-330,532は、ラウリル硫酸ナトリウムの存在下でのフェノフィブレートの共超微粉砕を記載している。一方、M.Otsudaら(J.P.S.84(1995),1434~1437頁)は、界面活性剤の存在下でのフェニトインの超微粉砕を検討し、フェニトインの溶解性は、ラウリル硫酸ナトリウムやステアリン酸のスクロースエステル等の界面活性剤との共超微粉砕の場合には向上しないのに対し、デオキシコール酸ナトリウムとの共粉砕の場合には、粉末混合物と比較して30倍となることを示した。
さらに、たとえ界面活性剤や糖の存在下での物質の超微粉砕又は粉砕によりその溶解性が増加できるとしても、これらのパラメータは必ずしも十分ではない。
例えば、超微粉砕したプロゲステロンのバイオアベイラビリティは、十分ではなく、例えば、カルナウバワックスに分散することにより向上させなければならない。このような方法は、WO-89,02742に記載されている。
このように、超微粉砕又は粉砕により処理した物質の性質、特にその溶解性及びそのバイオアベイラビリティは予測できず、相反する結果が得られることがあると思われる。さらに、同一のガレヌス製剤処方で、ある物質では良好な結果を示し、別の物質では反対の結果を示すことがある。
本発明の要旨は、経口、直腸又は皮膚[経皮(パーキュテーネアス又はトランスダーマル)]経路による投与用ジアセレインを主薬とする、向上したバイオアベイラビリティを有する新規で安定な医薬組成物、より詳細には、炎症性疾病の治療用の前記医薬組成物にある。
本発明の医薬組成物は、レイン若しくはジアセレイン又はそれらの薬学的に許容される塩類若しくはエステル類の一つと、ラウリル硫酸ナトリウムとを、重量比3:1~30:1で共超微粉砕して含んでなることを特徴としている。」(1頁3行~3頁23行)
40 乙22の記載事項
(乙22-a)「界面活性剤
界面活性剤surface active agent, surfactantは,製剤添加物中もっとも重要なものの一つであり,いろいろな目的で液剤,半固形および固形製剤などほとんどすべての投与剤形に使用される.
界面活性剤が,ある種の薬物の吸収と効果の発揮に重要な役割を果たすことは,文献に明らかである.しかし,その役割がどんなものかということになると,非常にあいまいであって,活性剤の共存により吸収が増強されると主張する報告もかなりあるし,活性剤が薬物吸収を遅らせるという報告もほぼ同じくらい発表されている115).これは,薬物吸収や膜透過に対する界面活性剤の影響が画一的でなく,いろいろな変動因子が関係しているからであり,上に述べたようなちがった結論がでてもおかしくないことを知るには,各因子の影響の仕方と影響の程度とをくわしく検討する必要がある.関係因子としては,
(1)活性剤の濃度
(2)活性剤の化学的性質
(3)活性剤が生体膜に影響を与える可能性
(4)活性剤自体が薬理効果をもつ可能性
(5)活性剤と製剤中の添加物あるいは成分薬物が相互作用する可能性
などがあげられる.これらはたがいに反対の影響を与えることが多く,実際に薬物吸収に対してあらわれてくる影響は,各因子の相対的な影響の強さに支配されることになる.」(66頁4行~23行)
(乙22-b)「吸収に対する活性剤濃度の影響をはっきり示した例に,キンギョを用い各種の物質の吸収を検討した報告がある116).それによれば,ペントバルビタールpentobarbitalと セコバルビタールsecobarbitalの吸収速度は,非イオン性活性剤ポリソルベート80を飼育槽内の液中に低濃度に加えた場合は,増加し,高濃度に加えた場合は,減少している.図23はセコバルビタールについてのデータである.
ポリソルベート80が高濃度のとき,バルビツール酸誘導体の吸収が遅れる理由はつぎのモデルで説明できる.
(1)ミセル溶液は2相からなる.
(2)ミセル相と水相間の薬物の分配係数は一定で,薬物濃度に関係しない.
(3)ミセル中に入った薬物は,ほとんど吸収されない.
すなわち,ミセル相中の薬物は吸収に利用できないから,活性剤の濃度が高いほど薬物の有効濃度は見かけの濃度より低くなり,吸収速度の低下が起こる.」(67頁19行~68頁5行)
(乙22-c)「薬物自体の性質によって,活性剤の影響のしかたがちがってくることもある.たとえば,ラウリル硫酸ナトリウムsodium lauryl sulfateまたはポリソルベート80は,ヨウ化カリウムの吸収速度を4~5倍増加させるが,同じミセル濃度でもヨードホルムiodoformおよびトリヨードフェノールtriiodophenolの吸収速度は下がることが知られている117).吸収が早くなるのは活性剤の粘膜に対する分散および湿潤作用のためであり,遅れてくるのはミセル形成による可溶化が起こり,吸収に利用される割合が下がるからである.ヨウ化カリウムの場合は極性が大きすぎて,ミセル相互作用すなわち,可溶化が起こらず,吸収の遅れをきたさない.
界面活性剤による吸収増強は,生体膜に対する影響を介して起こるとはかぎらない.剤形に対する影響や薬物そのものの溶解速度に対する影響が関係して吸収がよくなることもある.すなわち,活性剤の界面張力低下作用により,溶液は効果的に固形製剤を濡らし,より接触がよくなるから,活性剤を添加して薬物の溶解有効表面積を増し,溶解および吸収速度を増すことができる.なお,“濡れ”の作用wetting effectはcmc以下の希薄な活性剤溶液においても認められる.
また,界面活性剤溶液の濃度がcmc以上のときに,吸収の増加が起こることもある.溶解と吸収は動的な過程だから,溶解した薬物の一部が非吸収型として拘束されていたとしても,なんらかの理由によって薬物の溶解速度を増加できれば,吸収速度も増してくるわけである.図24は,このような場合の薬物の動きを模型的に示したものである.吸収速度(速度定数k4)は胃腸管液中の非結合性薬物(U)の濃度に比例しており,ミセルが存在しないときのUの出現速度は薬物の溶解速度(速度定数k2)に左右される.したがってk2<<k4ならば,吸収は溶解速度律速となる.
いま,生体液に充分量の活性剤を加え,ミセル溶液が生成したとすれば,液中における薬物の総濃度は,溶解速度の増加とともに増すであろう.ミセル相から非ミセル相への薬物の分配は迅速だから,Uの出現速度は溶解速度の増しかたとほぼ同程度に増加し,吸収速度もこれに比例して増加することになる.」(68頁18行~70頁2行)
(乙22-d)「
[図:0001432287000033.jpg]
」(69頁図24)
41 乙23の記載事項
(乙23-a)「(b)薬物に対する影響
M.S.Samaligy31)らは,Sensit(フェンジリン)の塩基に対する界面活性剤の影響を調査し,ラウリル硫酸ナトリウム,ツイン80,ツイン20,スパン80の順に放出パラメータが増加し,in vivoでの最高血中濃度到達時間(Tmax)は,このin vitroの結果と相関性のあることを報告している(図-8,9)。
Sensitは水に不溶の白~微桃色の粉末で,塩基の場合の放出性は塩酸塩よりも低い。このように水に難溶性の薬物は界面活性剤の添加でその放出性が改善できるが,金子30)らはこれを次のように説明している。すなわち,図-10において,主薬が難溶性で処方した量が分泌液中に完全に溶けきらない場合,界面活性剤のcmc以上,可溶化濃度以下の添加(図-10のS2)では,主薬の溶解量は増加し,これとともに吸収も増加する。この場合,ミセルに包含された薬物は吸収されにくいが,遊離の薬物と可逆的な平衡関係にあり,遊離の薬物の吸収に伴いミセル中より新たに薬物が放出されることになる。しかしながら,過量(図-10のS3以上)の界面活性剤の添加は,ミセルに包含される薬物の割合を増やし,吸収の低下を起こすことになる。
掛見35)らはラットを用いたin situの還流実験で,テトラサイクリン,スルファミン,イソニアジドおよびサリチル酸に対する界面活性剤の影響を調べ,ポリソルベート80はサリチル酸,テトラサイクリンの吸収を減少させ,また,塩化ベンゼトニウムはサリチル酸の吸収を減少させることを報告している。一般的にin situ還流法やループ法の場合,薬物を溶解状態で注入することが多く,この場合には界面活性剤のcmc,可溶化濃度を考慮した実験系を組む必要がある。この他,薬物によっては界面活性剤の影響を受けないとの報告もあり,界面活性剤含有のSulfanylamide錠では,犬を用いた吸収実験でそれを含有しないものとの間に差が認められていない19)。
いずれにしても界面活性剤の薬物吸収に与える影響を調査する場合,1つの実験系で得られた結果ですべてを判断することは非常に危険であり,主薬および界面活性剤の物理化学的性質,生物学的性質,製剤特性,バイオアベイラビリティー等総合的な検討を行った上で評価すべきであろう。
(c) 特許から見た利用例
吸収改善を目的として固形製剤に界面活性剤を応用した代表的な特許を表-9に示す。ニフェジピン,ユビデカレノン(CoQ10)等の難吸収性薬物の吸収性を改善したものが多いが,これらの中から以下に2~3紹介する。」(206頁左欄15行~207頁右欄5行)
(乙23-b)「
[図:0001432287000034.jpg]
」(206頁図-10)
42 乙24の記載事項
(乙24-a)「ラット小腸還流法を用いて、各種界面活性剤の薬物吸収に及ぼす影響を検討した。被験薬としてテトラサイクリン(TC)、スルファニルアミド(SF)、イソニアジド及びサリチル酸(SA)を用い、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、塩化ベンゼトニウム、ポリソルベート80(PS-80)、モノステアリン酸スクロース及びジステアリン酸スクロースを用いた。
その結果、(1)界面活性剤のイオン的性質が吸収に大きく影響する、(2)TCの吸収速度はSLS、塩化ベンゼトニウム又はスクロースエステルの存在により加速される、(3)PS-80はSAとTCの吸収を著しく低下させる、(4)塩化ベンゼトニウムはSAの吸収を低下させる、(5)試験した濃度内のスクロースエステルは試験したすべての薬物の吸収を低下させないことがわかった。」(1210頁「要約」1行~11行)
(乙24-b)「一般に界面活性剤はそのまま医薬品として用いられることはまれで,乳化剤,溶解補助剤,懸濁化剤など種々のagentとして製剤中に配合されるものが多い.同一薬品を処方する場合であっても,そこに配合される界面活性剤の種類によってはその利用率がいちじるしく変化し,ある界面活性剤によっていちじるしく吸収が促進されるものが,他の界面活性剤の配合によって抑制され,全く逆の効果をさえ生ずる場合も考えられる.
医薬品の吸収におよぼす界面活性剤の影響についてはこれまでに多くの報告が見受けられるが,軟膏剤,坐剤など薬品の放出が吸収の律速段階となっているものが大部分で,消化管からの吸収についても多くの場合,水に難溶な薬品,色素類,特殊な転送機構を持った栄養物質などに限られ,医薬品について同一条件下で異なったタイプの界面活性剤を用い,比較検討された例は少ない.」(1210頁の日本語部分の1行~8行)
(乙24-c)「Fig.1~5はその結果を示すもので,界面活性剤を加えない対照の吸収率を1とした場合の各薬品の吸収率の比を縦軸に,界面活性剤の濃度を横軸にとりプロットしたものである.なお吸収率は還流前および還流後のおのおのの薬品の量を求めその差から%として算出した.
Fig.1はラウリル硫酸ナトリウム(SLS)添加の影響を示すものでTCの吸収率がSLSの濃度が増加するにつれ増しているほかは, SF INH, SAとも,SLSの影響はほとんど認めることはできなかった.」(1211頁1行~6行)
(乙24-d)「
[図:0001432287000035.jpg]
」(1211頁図1~4、当審注:Fig.1.の四角囲いは被請求人が付したものである。)
43 乙25の記載事項
(乙25-a)「【0006】従来、このような水に溶けにくい化合物の製剤化について、溶出性を改善するための様々な技術が報告されている。しかしながら、ある特定の化合物の溶出性を改善するために、どのような方法が適しているか、そして、どの程度溶出性が改善され得るかの問題は、その化合物が有する種々の物理的特性(例えば、結晶形、粒子径等)及び化学的特性(官能基の種類、数等)に依存しており、実際に、種々の方法によりその化合物を含有する種々の製剤を調製し、その製剤を評価することによって初めて解決される問題である、というのが実際である。」(【0006】)
44 乙26の記載事項
(乙26-a)「結晶性、多形性、及び水和物、溶媒和化合物、包接物などの分子付加物が関連する原薬の物理的特性は、現在、詳細な評価を必要とする重要因子として認識されている。これらの特性は、製剤における原薬の安定性及び生物学的利用性を最適化するため、徹底的に調査される。
粒子径、粒子形状、表面特性、粉末かさ密度などの原薬の物理的特性は十分調査されておらず、おそらく十分な理解も得られていない。これらの特性は、固形製剤の製造工程で用いられる粉末混合、湿式造粒、圧縮などの単位操作に影響を及ぼす可能性がある。これらの特性の作用を評価し、製剤の性能に対する影響を明らかにすることが重要である。合理的な方法が採用されたら、物理的特性の調節を導入することが重要である。このような調節により、高品質規格を満たす製剤の製造工程において原薬の安定した性能を確保することができる。
本稿は、製剤性能に対する粒径分布及び粒子形状の影響について検討する。原薬の水溶解度及び製剤内の原薬濃度は重要なパラメータであり、製薬の最適性能を得るためには、原薬の粒径分布及び粒子形状調節の根拠を確立する前に検討、評価されるべきである。in vitro溶解性、in vivo吸収性のほか、水和性、含量均一性、顆粒密度、造粒及び凝集の全工程、成形性を含む製造性パラメータなどの製剤性能基準について評価する必要がある。
原薬の水溶解度(0.1mg/mL未満:ほとんど溶けない~100mg/mL以上:溶けやすい)(I)及び製剤内の原薬濃度(1%~90%以上)に関連付けて行った本稿のケーススタディについて、その概要を表1に示す。ほとんどのケースで、粉砕速度、ふるいサイズ又はその両方が異なる3つの粉砕手順を用いた。本研究では、直接ブレンドカプセルのほか、湿式造粒錠あるいは直接ブレンド錠のどちらかの剤形を対象とした。」(44頁左欄1行~右欄最下行)
45 乙27の記載事項
(乙27-a)「【特許請求の範囲】
1.水性媒体への溶解性に優れ且つ消化管での吸収性に優れた、親水性担体中に分散した薬効物質の固体分散体の製造方法において、
環状アミドを有する非常に親水性の高い揮発性有機溶媒に薬効を有する有効成分を溶解し、得られる有機溶液を蒸発乾固させて、得られた共沈体を粉砕し、篩にかけ、製剤学的許容される賦形剤またはベヒクルを用いて希釈するかまたはそのまま使用することを特徴とする方法。
・・・
9.混合溶媒に界面活性剤を添加する請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
・・・」(特許請求の範囲)
(乙27-b)「発明の分野
本発明は治療化学に関するものであり、特に製剤学の分野に関するものである。
本発明の対象は有効成分の消化管での吸収に優れた製剤の製造方法にあり、特に、消化管を介して迅速かつ多量に吸収可能な乾燥製剤の調製方法にある。
本発明の対象は、特に、水性媒体への溶解性に優れ且つ消化管での吸収性に優れた、親水性担体中に薬効物質を分散させた固体分散体の製造方法にある。
・・・
従来の技術
・・・
水に対する溶解度が低い薬剤や胃を通過する際にほとんど塩化されない薬剤は部分的にしか吸収されない。公知文献には非イオン性界面活性剤を添加したり、可溶化剤を添加して粒径を最適化することによって消化管における吸収を良くすることができるということが記載されている。
粉末製品の比表面積を増加させるマイクロ化法が問題解決法の1つであるが、この方法は懸濁液やゲルのような特定の製剤にしか有効でなく、問題の一般的な解決方法ではない。
界面活性剤の添加によって有効成分の溶解度を上げ、吸収速度を良くすることができるが、それによって必ずしも血中濃度が上昇するとは限らず、また、一定の結果を得るには大量(25~50%)の界面活性剤を添加しなければならない場合が多い。この消化管通過の向上は表面張力が下がって消化粘膜透過性が高くなることに起因するものと思われる。
・・・
出願人達の研究の結果、有効成分の湿潤性を向上させて且つ場合によっては固体分散物の保存中に生じ、時間の経過と供に溶解動力学を低下させる結晶成長現象を抑制する界面活性剤が有機溶媒中に含まれると、溶解速度がさらに上昇するということが示された。」(5頁3行~7頁13行)
46 乙28の記載事項
(乙28-a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシクロペンタ[d]ピリミジン誘導体またはその薬理上許容される塩の溶出性を改善した製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、水難溶性化合物の溶出性を改善する手段として、
1)粉砕により粒子径を減少させて溶出性を改善する方法(「医薬品の溶出」、Leeson, Carstensen 編、永井恒司ほか訳、地人書館出版)、
2)界面活性剤による可溶化または濡れ性の改善により溶出性を改善する方法(W.L.Chiou 、 S.J.Chen and N.Athanikar 、 J.Pharm.Sci. 、vol.65、No.11、 1976/1702-1704 )、
・・・
が既に公知である。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明のシクロペンタ[d]ピリミジン誘導体は水難溶性であり、その低溶出性のために、化合物自体の懸濁液を経口投与した場合、消化管からの吸収性が悪い。
【0006】従って、本発明のシクロペンタ[d]ピリミジン誘導体の溶出性を改善するために、本発明者らはシクロペンタ[d]ピリミジン誘導体について上記に記載の各方法を試みた。しかしながら、1)法による単なる粉砕による粒子径の減少では溶出性は改善されなかった。また、2)法による界面活性剤を用いての可溶化効果はほとんど無く、界面活性剤による溶出性改善効果は無かった。・・・
【0008】そこで、混合粉砕法の問題点である粉砕時間の短縮化を解決するために、本発明らは混合粉砕法について鋭意検討した結果、本発明を完成した。」(【0001】~【0008】)
(乙28-b)「【0041】なお、このようにして得られた製剤は種々の形態で人体に投与できる。例えば、経口投与製剤として通常知られている細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの種々の剤形が含まれる。また、必要に応じて、着色剤、矯味剤、賦形剤(例えば乳糖、白糖、澱粉、結晶セルロースなど)、崩壊剤(例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウムなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウムなど)、界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)等の適当な添加剤を加えることが出来る。」(【0041】)
47 乙29の記載事項
(乙29-a)「難溶性微粒子の溶解速度に及ぼす粒子形状と粒子径の影響について研究した。グリセオフルビン、3つの異なる品質の硫酸バリウム、オキサゼパム、グリベンクラミドをモデル物質として選んだ。これらの物質は粒子径(1.8~3.8 μm)と粒子形状(丸みを帯びた等軸粒子から薄片状又は不規則な粒子まで)の両方が異なるため、溶解速度に対する複合効果を調べるために粒子径と粒子形状の異なる組み合わせを使用した。表面特異的溶解速度を、コールターカウンター法を用いて測定した。この値と平衡溶解度との比をすべての材料について計算し、微粒子の形状及びサイズとの関係を調べた。得られた結果から、難溶性薬物の溶解速度は粒子径だけでなく粒子形状にも関係していることが示された。同じ大きさの粒子では、薄片状や不規則性のレベルが高くなるにつれて溶解速度は低下した。この現象は、粒子が不規則になるにつれて平均流体力学的境界層の厚さが増すことで説明できる。したがって、表面形状因子と平均粒子径の積を用いて、これらの因子が難溶性薬物の溶出速度に及ぼす影響を検討した。」(35頁「要約」)
48 乙30の記載事項
(乙30-a)「要約 セフロキシムアキセチル錠は、様々な市中感染の治療に効果があることが証明されている。小児用に懸濁液製剤が開発された。セフロキシムアキセチル製剤が生物学的に同等であるかどうかを判断するために、2つの研究が実施された。最初のランダム化2期間クロスオーバー研究では、24人の健康な男性が、食後12時間ごとに250mgのセフロキシムアキセチル懸濁液及び錠剤製剤を7回投与された。各治療期間は4日間離れていた。血清及び尿の薬物動態パラメータの比較から、セフロキシムアキセチル懸濁液及び錠剤製剤は生物学的に同等ではないことが示された。最初の生物学的同等性研究の後、製造工程中に顆粒の均質性を保証するために、懸濁液に0.1%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)が添加された。その後のランダム化3期間クロスオーバー試験では、24人の健康な男性が、SLSを含まない懸濁液、SLSを含む懸濁液及び錠剤の3種類のセフロキシムアキセチル製剤を250mgずつ1回投与された。この場合も、各治療期間は4日間離れていた。薬物動態分析により、SLSを含む懸濁液とSLSを含まない懸濁液は生物学的に同等である一方、SLSを含む懸濁液と錠剤の間には生物学的同等性は見られなかった。したがって、懸濁液にSLS界面活性剤を追加しても、製剤の生物学的利用能は変わらなかった。」(842頁「要約」)
(乙30-b)「単回投与界面活性剤試験-SLSを含まない懸濁液、SLSを含む懸濁液及び錠剤の平均セフロキシム血清薬物動態パラメータと統計解析結果を表2にまとめた。3つの製剤の平均セフロキシム血清濃度対時間プロファイルを図2に示す。評価された薬物動態パラメータのいずれにおいても、2つの懸濁液間に有意差は認められなかった(表2)。いずれの懸濁液の単回経口投与後にも、尿中に排泄されたセフロキシムの量に有意差はなかった。2つの懸濁液の平均血清セフロキシム濃度対時間プロファイルはほぼ重なり合った(図2)。これらの結果は、懸濁液にSLSを添加しても、製剤のバイオアベイラビリティに変化はないことを示している。」(844頁左欄1行~14行)
(乙30-c)「表2-健康成人におけるセフロキシムアキセチルのSLS無添加懸濁液、SLS添加懸濁液及び錠剤の単回投与時の平均薬物動態パラメータ
[図:0001432287000036.jpg]
」(843頁の表2)
(乙30-d)「
[図:0001432287000037.jpg]
図2-健康成人におけるセフロキシムアキセチルSLS無添加懸濁液(○)、SLS添加懸濁液(■)及び錠剤(●)の単回後のセフロキシムの平均血清中濃度。」(844頁図2)
49 乙31の記載事項
(乙31-a)「要約
ダナゾールは水に溶けにくい化合物(10μg/ml)で、バイオアベイラビリティが低い。薬物結晶粒子サイズを200nm未満に小さくして溶解面積を増やし、粒子を安定化させて消化管内での凝集を防ぐことによるバイオアベイラビリティへの影響を評価した。絶食した雄のビーグル犬でランダム化3者間クロスオーバー試験を実施し、3種類の製剤のダナゾールの絶対経口バイオアベイラビリティを比較した。検討した3種類の製剤は、A、ナノ粒子ダナゾールの水分散液(平均粒子サイズ169nm)、B、ダナゾール-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPB)複合体、C、従来のダナゾール粒子の水懸濁液(平均粒子サイズ10μm)であった。3種類の製剤は1週間間隔で投与(200mg)され、4回目の試験ではダナゾール-HPBを3mg/kgの用量で静脈内投与した。血漿サンプルは24時間にわたって採取され、SPE-HPLCで分析された。各製剤の絶対経口バイオアベイラビリティは、同じイヌにおける経口AUC値と静脈内AUC値の比較によって決定され、20mg/kgの用量に標準化された。3つの製剤の絶対バイオアベイラビリティは、ナノ粒子ダナゾール、82.3±10.1%、シクロデキストリン複合体、106.7±12.3%、従来のダナゾール懸濁液、5.1±1.9%であった。ナノ粒子分散液とシクロデキストリン複合体のバイオアベイラビリティには有意差がなく(P=0.05)、これはナノ粒子分散液が、従来のダナゾール懸濁液で観察される溶解速度制限バイオアベイラビリティを克服したことを示している。このアプローチは、溶解速度制限吸収を伴う多くの難溶性薬物に一般的に適用できるはずである。」(91頁の「要約」)
(乙31-b)「消化管を通過する間のpHの変動は、ラウリル硫酸ナトリウムのような電荷安定化懸濁化剤の使用を妨げることがある。胃のpHが低いと、陽イオン界面活性剤安定化剤の電荷が中和され、ナノ粒子の不可逆的凝集につながる可能性がある。ラウリル硫酸ナトリウムで安定化されたダナゾールのナノ粒子は、模擬胃液にさらされると凝集する。」(95頁右欄14行~22行)
50 参考文献Aの記載事項
(A-a)「(6)湿潤剤
薬物のぬれや溶出速度の改善に用いられる湿潤剤の使用状況を調査した結果を図4-2-11に示す。・・・湿潤剤としては,おもに界面活性剤が使用されており,そのうちポリソルベート80とラウリル硫酸ナトリウムが同数の5社ずつであった(図4-2-12)。・・・。
[図:0001432287000038.jpg]
」(126頁)
(A-b)「(5)湿潤剤
湿潤剤の使用はほぼ半数の7社であった(図4-2-17)。使用される湿潤剤の種類を図4-2-18に示す。ポリソルベート80,ラウリル硫酸ナトリウムとともに,錠剤ではあげられていなかったステアリン酸ポリオキシル40の使用が認められた。・・・。
[図:0001432287000039.jpg]
」(129頁)
(A-c)「3 ぬれ性の改善
主薬の水へのぬれ性は,製剤の崩壊や主薬の分散および溶出などに大きな影響を与える。したがって,その製剤のバイオアベイラビリティー(bioavailability)に大きな影響を与えることが知られている。界面活性剤の添加は,主薬のぬれ性を改善する一つの手法である。しかし,界面活性剤の添加は,製剤の崩壊や主薬の分散および溶出を促進するが,一方ミセルの主薬の取込みによるバイオアベイラビリティーの低下,あるいは界面活性剤の生体膜への影響による薬物の膜透過性の変化などを引き起こす場合がある。
製剤添加剤によるぬれ性の改善は,難水溶性薬物のバイオアベイラビリティーを確保する製剤的手段の一つであり,実際の医薬品製剤にもしばしば応用されている。
図5-1-10に示した例は,粉体をカプセルに詰めた場合の溶出であるが,界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを添加した場合のほうが明らかに溶出速度が向上している13)。・・・。
[図:0001432287000040.jpg]
」(162頁)
51 参考文献Bの記載事項
(B-a)「【請求項1】 イルベサルタンまたはその医薬的に許容しうる塩を約20~約70重量%および1または2種以上の医薬的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物であって、該組成物を配合した錠剤が、該錠剤に含まれるイルベサルタンまたはその塩の約80%またはそれ以上が30分以内に溶出するという溶出挙動を示す医薬組成物。」(特許請求の範囲)
(B-b)「・・・イルベサルタンの水への溶解度が低いこともまた、錠剤を小さくすることに関して解決すべき問題を提供し、すなわち錠剤のヌレ、崩壊、最終的な迅速かつ完全な薬物の放出を促進するために加える賦形剤の量が限定される。・・・。」(【0002】)
(B-c)「本発明組成物で用いる「界面活性剤」は、錠剤のヌレの改良および/または溶出性の強化を行うことができる1または2種以上の化合物である。好ましい界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(0.2~6重量%の範囲で用いるのが最も好ましい);およびポロクサマー類、特にポロクサマー188などのポリ(オキシエチレン),ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合体(1~6重量%の範囲で用いるのが最も好ましい)である。・・・。」(【0014】)
第6 取消判決の拘束力
特許無効審判事件の審決取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは、審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理を行い審決をすることとなるが、審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから、再度の審理ないし審決には、同法33条1項の規定により、上記取消判決の拘束力が及ぶ。そして、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、審判官は取消判決の上記認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない(最三小平成4年4月28日判決、民集46巻4号245頁)。
1 一次判決について
(1)一次判決における本件発明
一次判決における本件発明は、平成30年5月7日にされた訂正請求により訂正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(一次判決4頁下から4行~7頁14行)。
「【請求項1】
一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み,一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって,粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する製薬組成物。
【請求項2】
前記粒子の最大長において,前記セレコキシブ粒子のD90が100μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項3】
前記粒子の最大長において,前記セレコキシブ粒子のD90が40μm未満であることを特徴とする請求項2に記載の製薬組成物。
【請求項4】
前記粒子の最大長において,前記セレコキシブ粒子のD90が25μm未満であることを特徴とする請求項3に記載の製薬組成物。
【請求項5】
前記同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して最低約50%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有することを特徴とする請求項1記載の製薬組成物。
【請求項7】
前記投与量単位は,錠剤,ピル,硬質若しくは軟質カプセル,ロゼンジ,サシェイ,又はパステルから選択されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の製薬組成物。
【請求項8】
前記賦形剤は薬剤学的に許容な希釈剤,崩壊剤,結着剤,加湿剤及び潤滑剤から選択される単位投与量のカプセル又は錠剤の形態であることを特徴とする請求項7記載の製薬組成物。
【請求項9】
(a)前記製薬組成物の約10質量%乃至約85重量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な希釈剤と,
(b)前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な崩壊剤と,及び
(c)前記製薬組成物の約0.75質量%乃至約15質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な結着剤とを含有することを特徴とする請求項8記載の製薬組成物。
【請求項10】
前記製薬組成物の約0.4質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な加湿剤をさらに含有することを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項11】
前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有することを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項12】
前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有することを特徴とする請求項10に記載の製薬組成物。
【請求項13】
(a)前記希釈剤はラクト-スを含み,(b)前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含み,(c)前記結着剤はポリビニルピロリドンを含むことを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項14】
ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項15】
ステアリン酸マグネシウムを含有する潤滑剤をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項16】
ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤と,ステアリン酸マグネシウムを含有する潤滑剤とをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項17】
シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患を治療するために,前記製薬組成物は被験者に好ましくは1日に1回又は2回経口投与することを特徴とする請求項1乃至5及び7乃至16の何れか一項に定義される製薬組成物。
【請求項18】
シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患の治療及び/又は予防処置での薬剤調製のための請求項1乃至5及び7乃至16の何れか一項に定義される製薬組成物の使用。
【請求項19】
前記状態又は疾患は,リウマチ様関節炎,骨関節炎又は痛みである請求項18による使用。」
(2)一次判決による拘束力の範囲
一次判決は、本件発明が特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件に適合するとした一次審決に対し、本件発明はこれに適合しないとして一次審決を取り消したものであるから、以下の事実認定及び法律判断につき拘束力が生じる。
(判示事項1-1)「本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識から,当業者が,本件発明1に含まれる「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90が200μm未満」の数値範囲の全体にわたり本件発明1の課題を解決できると認識できるものと認められないから,本件発明1は,サポート要件に適合するものと認めることはできない。」(一次判決95頁1~5行)
(判示事項1-2)「本件発明2ないし4は,「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90」の値の上限値は,本件発明1より低いものではあるが,本件発明1と同様に,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識から,当業者が,本件発明2ないし4に含まれる「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90」の値の数値範囲の全体にわたり本件発明1の課題を解決できると認識できるものと認められない。
したがって,本件発明2ないし4は,サポート要件に適合するものと認めることはできない。」(一次判決96頁4~11行)
(判示事項1-3)「本件発明5,7ないし19(請求項5,7ないし19)は,請求項1記載の製薬組成物を発明特定事項に含むものであるところ,本件発明1がサポート要件に適合するものと認めることができないことは前記(1)のとおりであるから,本件発明5,本件発明7ないし19についても,サポート要件に適合するものと認めることができない。」(一次判決96頁13~17行)
(判示事項1-4)「4 結論
以上によれば,原告ら主張の取消事由4は理由があるから,その余の取消事由について判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきである。」(一次判決96頁下から4行~2行)
なお、(判示事項1-4)の「取消事由4」は、サポート要件の判断の誤りである(一次判決83頁1行)。また、一次判決中の「本件発明1」~「本件発明5」、「本件発明7」~「本件発明19」は、上記(1)のとおり、平成30年5月7日にされた訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~5、7~19に係る発明であり、当該訂正請求は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなされている。
2 二次判決について
(1)二次判決における本件訂正発明
二次判決における本件訂正発明は、令和3年10月8日にされた訂正請求により訂正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(二次判決6頁16行~7頁下から2行、別紙2)。
「【請求項1】
一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって、
セレコキシブ粒子が、ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕されたものであり、
粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布を有し、
ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む
製薬組成物。
【請求項2】
一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって、
セレコキシブ粒子が、ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕されたものであり、
粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μm未満である粒子サイズの分布を有し、
ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む製薬組成物。
【請求項4】
前記粒子の最大長において、前記セレコキシブ粒子のD90が25μm未満であることを特徴とする請求項2に記載の製薬組成物。
【請求項5】
前記同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有することを特徴とする請求項1記載の製薬組成物。
【請求項7】
前記投与量単位は、錠剤、ピル、硬質若しくは軟質カプセル、ロゼンジ、サシェイ、又はパステルから選択されることを特徴とする請求項1、2、4及び5の何れか一項記載の製薬組成物。
【請求項8】
前記賦形剤は薬剤学的に許容な希釈剤、崩壊剤、結着剤、加湿剤及び潤滑剤から選択される単位投与量のカプセル又は錠剤の形態であることを特徴とする請求項7記載の製薬組成物。
【請求項9】
(a)前記製薬組成物の約10質量%乃至約85重量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な希釈剤と、
(b)前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な崩壊剤と、及び
(c)前記製薬組成物の約0.75質量%乃至約15質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な結着剤とを含有することを特徴とする請求項8記載の製薬組成物。
【請求項10】
前記製薬組成物の約0.4質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含有することを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項11】
前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有することを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項12】
前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有することを特徴とする請求項10に記載の製薬組成物。
【請求項13】
(a)前記希釈剤はラクトースを含み、(b)前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含み、(c)前記結着剤はポリビニルピロリドンを含むことを特徴とする請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項15】
ステアリン酸マグネシウムを含有する潤滑剤をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項17】
シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患を治療するために、前記製薬組成物は被験者に好ましくは1日に1回又は2回経口投与することを特徴とする請求項1、2、4、5、7乃至13及び15の何れか一項に定義される製薬組成物。
【請求項18】
シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患の治療及び/又は予防処置での薬剤調製のための請求項1、2、4、5、7乃至13及び15の何れか一項に定義される製薬組成物の使用。
【請求項19】
前記状態又は疾患は、リウマチ様関節炎、骨関節炎又は痛みである請求項18による使用。」
(2)二次判決による拘束力の範囲
二次判決は、本件訂正発明の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件に適合するとした二次審決に対し、本件訂正発明の特許請求の範囲の記載はこれに適合しないとして二次審決を取り消したものであるから、以下の事実認定及び法律判断につき拘束力が生じる。
(判示事項2-1)「本件明細書等に加え本件出願日(明確性要件の判断の基準時)当時の技術常識を考慮しても、「ピンミルのような衝撃式ミル」の範囲が明らかでなく、「ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕」するというセレコキシブ粒子の製造方法は、当業者が理解できるように本件明細書等に記載されているとはいえないから、本件訂正発明は明確であるとはいえない。」(二次判決35頁下から5行~36頁1行)
(判示事項2-2)「本件訂正後の請求項1、2、4、5、7~13、15、17~19の記載は明確性要件に違反するものであり、取消事由3は理由がある。」(二次判決37頁5~7行)
(判示事項2-3)「以上のとおり、取消事由3は理由があるから、取消事由4,5について判断するまでもなく、原告らの請求は理由があるから、本件審決中、本件特許の請求項1、2、4、5、7~13、15、17~19に係る部分を取り消すこととし、主文のとおり判決する。」(二次判決53頁13~17行)
なお、(判示事項2-3)の「取消事由3」は、明確性要件に関する判断の誤りである(二次判決32頁9行)。また、二次判決中の「本件訂正発明」、「本件訂正後の請求項1、2、4、5、7~13、15、17~19」に係る発明は、上記(1)のとおり、令和3年10月8日にされた訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、7~13、15、17~19に係る発明であり、当該訂正請求は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなされている。
また、当審が審理及び審決を行う訂正発明は、一次判決における本件発明から減縮され、二次判決における本件訂正発明の「セレコキシブ粒子が、ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕されたものであり」との発明特定事項は削除されており、一次判決及び二次判決が前提とする発明とは異なる発明となっている。
第7 当審の判断
当審合議体は、訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に係る特許は、無効理由IVによって無効にすべきものと判断する。また、訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に係る特許は、無効理由I~IIIによっては、無効にすることはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
なお、事案に鑑み、無効理由I(明確性要件違反)、無効理由III(新規性欠如)、無効理由IV(進歩性欠如)、無効理由II(実施可能要件違反、サポート要件違反)の順に判断する。
1 無効理由I(明確性要件違反)について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1は、以下の発明特定事項1~3からなる製薬組成物と捉えることができる。
(発明特定事項1)「一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって、」
(発明特定事項2)「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布を有し、」
(発明特定事項3)「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」
イ 訂正発明1の明確性について、上記発明特定事項ごとに検討する。
(ア)発明特定事項1について
「一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた」「微粒子セレコキシブ」は、微粒子セレコキシブが賦形剤と密に混合されたことを示し、「10mg乃至1000mgの量」は、製薬組成物における微粒子セレコキシブの含有量を示しており、明確である。
「一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位」は、「経口運搬可能な」が、本件明細書【0042】に定義されるように、「被験者の口を介して、被験者の胃腸管に投与すること」、「投与量単位」が、本件明細書【0041】に定義されるように、「活性成分の1回の単位投与量を含む製薬組成物の部分」のことで、「錠剤又はカプセルのような個々の物品の形態」を意味するから、「一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位」は、明確である。
したがって、発明特定事項1は、明確である。
(イ)発明特定事項2について
a 粒子サイズを規定する「D90」とは、一般に、累積90%粒子径を意味する。そして、本件明細書の【0013】には、D90について以下のとおり記載されている。
「【0013】
さらに別の実施例では、組成物は、粒子の最長の大きさで、D90が約200μm以下であるように(サンプル粒子の90%はD90値よりも小さい)、セレコキシブ一次粒子サイズの分布を有する。」
したがって、発明特定事項2における「D90」は、明確である。
b また、セレコキシブ粒子の「粒子サイズ」に関して、本件明細書には、以下のとおり記載されている。
「【0022】
本発明の組成物は微粒子の形態のセレコキシブを包含する。セレコキシブの一次粒子は、例えば、製粉若しくは粉砕により、又は溶液から沈殿させて生成させ、凝集して二次の集合体粒子が形成される。本願で利用する用語「粒子サイズ」とは、特に本願で指摘しない限り、一次粒子の最長の大きさのことをいう。粒子サイズは、セレコキシブの臨床的効果に影響を与える重要なパラメータであると考えられる。よって、別の実施例では、発明の組成物は、粒子の最長の大きさで、粒子のD90が約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは約25μm以下であるように、セレコキシブの粒子分布を有する。通常、本発明の上記実施例によるセレコキシブの粒子サイズの減少により、セレコキシブの生物学的利用能が改良される。」
したがって、発明特定事項2における「粒子サイズ」は、「一次粒子の最長の大きさ」であることが明確である。
c 上記a、bによれば、発明特定事項2の「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布」は、セレコキシブ粒子の一次粒子について、最長の大きさの累積90%粒子径が30μmであることが理解できる。
したがって、発明特定事項2は、明確である。
(ウ)発明特定事項3について
本件明細書【0075】、【0076】には、「加湿剤」について、以下のとおり記載されている。
「【0075】
加湿剤
セレコキシブは水溶液にかなり溶解しにくい。したがって、本発明の製薬組成物は、任意であるが、好ましくは、キャリア材料として、一つ又はそれ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含む。かかる加湿剤は、水と親和性があるようにセレコキシブを維持させるように選択することが好ましく、その状態が製薬組成物の相対的生物学的利用能を改善させると考えられる。単独で又は組合わせて利用される適当な加湿剤には、オレイン酸;モノステアリン酸グリセリン;ソルビタンモノオレイン酸エステル;ソルビタンモノラウリン酸エステル;トリエタノールアミンオレイン酸塩;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル;オレイン酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウムがある。アニオン性界面活性剤である加湿剤が好ましい。」
「【0076】
ラウリル硫酸ナトリウムは好ましい加湿剤である。」
上記記載によれば、加湿剤は、水溶液にかなり溶解しにくいセレコキシブについて、水と親和性があるようにセレコシキブを維持させるように選択される界面活性剤等の物質であり、アニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムは好ましい加湿剤として記載されているから、発明特定事項3は、明確である。
ウ したがって、訂正発明1は明確である。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1の「D90が30μm」を「D90が30μm未満」とするものであるから、上記(1)と同様の理由により、訂正発明2は、明確である。
(3)訂正発明4、5、7~13、15、17~19について
訂正発明4、5、7~13、15、17は、製薬組成物の発明であって、訂正発明1又は2において、D90の値、生物学的利用能、投与量単位の形態、組成物を構成する成分、当該成分の含有割合、組成物の用途等をさらに特定するものである。
また、訂正発明18は、訂正発明1、2、4、5、7~13、15の製薬組成物の、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患の治療及び/又は予防処置での薬剤調製のための、使用に関するものであり、訂正発明19は、訂正発明18における「状態又は疾患」をさらに特定するものである。
そして、これらの請求項におけるさらなる発明特定事項は、いずれも明確である。
したがって、訂正発明1又は2をさらに特定する訂正発明4、5、7~13、15、17~19は、明確である。
(4)請求人側の主張について
ア 参加人日本ケミファの主張する無効理由I(明確性要件違反)について
(ア)参加人日本ケミファの主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年6月27日提出)18頁1行~16行)
訂正発明2及び4は、「セレコキシブ粒子のD90が30μm未満」であって、数値範囲の上限のみが特定されているから、発明が明確でない。
(イ)参加人日本ケミファの主張について検討する。
訂正発明2及び4におけるセレコキシブ粒子は、粒径の下限が0より大きい値であることは自明であるから、訂正発明2及び4の「セレコキシブ粒子のD90が30μm未満」は、「セレコキシブ粒子のD90」が0μmより大きく30μmより小さい値であることが明確に理解でき、数値範囲の上限のみが特定されていても、発明の範囲は明確である。
したがって、参加人日本ケミファの主張は、採用することができない。
イ 参加人ヘキサルの主張する無効理由I(明確性要件違反)について
(ア)参加人ヘキサルの主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年7月16日提出)6頁下から8行~50頁8行、上申書(令和7年5月16日提出)11頁1行~27頁12行)
医薬品粉末の一般論として、粒度分布といえば個数分布基準ではなく体積(重量)基準分布が用いられるから、訂正発明におけるD90とは、体積(重量)基準分布と理解するのが自然であるのに対し、被請求人は、個数分布基準によるものと主張し、二次審決でも個数分布基準によると判断しているから、結局、訂正発明のD90が、個数基準分布か体積(重量)基準分布か不明確である。また、個数基準を用いる場合と体積(重量)基準を用いる場合とでは、同じ粉体であってもD90の値は異なるから、「D90が累積90%粒子径を意味する」ことは当然の前提としても、訂正発明におけるD90が、どの基準を用いたときの累積粒子径との趣旨なのかは特定されず、発明の範囲は明確ではない。
(イ)参加人ヘキサルの主張について検討する。
個数基準を用いる場合と体積(重量)基準を用いる場合とでは、同じ粉体であってもD90の値は異なることがあるとしても、D90が累積90%粒子径を意味することが明確であることは、上記(1)イ(イ)のとおりであり、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布」は、セレコキシブの一次粒子について、最長の大きさの累積90%粒子径が30μmであることが理解できるのであるから、訂正発明は、明確である。
したがって、参加人ヘキサルの主張は、採用することができない。
(5)まとめ
以上のとおり、訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19は、明確であるから、無効理由I(明確性要件違反)は、理由がない。
2 無効理由III(甲8記載発明に基づく新規性欠如)について
無効理由III(甲8記載発明に基づく新規性欠如)の概要は以下のとおりである。
本件訂正前の請求項1、2、7、8、17~19に係る発明(訂正発明1、2、7、8、17~19に対応する)は、甲8に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
(1)甲8に記載された発明
甲8に記載された「4-[5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミド」(甲8-a)は、訂正発明における「セレコキシブ」に相当する。
そして、(甲8-a)、(甲8-c)、(甲8-f)及び(甲8-h)の記載を踏まえると、甲8には次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているといえる。
[甲8発明]
「以下の工程1~工程2によって得られるセレコキシブ結晶を投与経路に適切な1つ又はそれ以上の補助剤と合わせた錠剤又はカプセル剤の形態の経口投薬単位である製薬組成物。
工程1:1-(4-メチルフェニル)-4,4,4-トリフルオロブタン-1,3-ジオンの調製
4’-メチルアセトフェノン(5.26g、39.2mmol)をアルゴン下で25mLのメタノールに溶解して、メタノール中のナトリウムメトキシド12mL(52.5mmol)(25%)を添加した。この混合物を5分間撹拌して、5.5mL(46.2mmol)のトリフルオロ酢酸エチルを添加した。24時間還流後、この混合物を室温に冷却して濃縮した。100mLの10%HClを添加して、この混合物を4×75mLの酢酸エチルで抽出した。この抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過して濃縮して、8.47g(94%)の褐色油状物を得て、これをさらに精製することなく次に進んだ。
工程2:セレコキシブの調製
75mLの無水エタノール中の工程1からのジオン(4.14g、18.0mmol)に、4.26g(19.0mmol)の4-スルホンアミドフェニルヒドラジン塩酸塩を添加した。この反応物をアルゴン下で24時間還流した。室温に冷却して濾過後、この反応混合物を濃縮して、6.13gの橙色の固体を得た。この固体を塩化メチレン/ヘキサンから再結晶して、淡黄色の固体として3.11g(8.2mmol、46%)の生成物を得た。」
(2)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲8発明とを対比する。
甲8発明における「投与経路に適切な1つ又はそれ以上の補助剤」、「合わせた」及び「錠剤又はカプセル剤の形態の経口投薬単位である製薬組成物」はそれぞれ、訂正発明1における「一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤」、「密に混合させた」、「一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物」に相当する。
そうしてみると、訂正発明1と甲8発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させたセレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物。
[相違点8-1]製薬組成物に含まれるセレコキシブの量が、訂正発明1では、「10mg乃至1000mgの量」とされているのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
[相違点8-2]製薬組成物に含まれるセレコキシブが、訂正発明1では、「微粒子セレコキシブ」であり、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布を有」する「セレコキシブ粒子」であるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
[相違点8-3]製薬組成物が、訂正発明1では、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」とされているのに対し、甲8発明では、かかる特定がなされていない点。
そして、上記相違点8-1~相違点8-3は、実質的な相違点であるから、訂正発明1は、甲8発明と相違しており、甲8に記載された発明ではない。
イ 請求人の主張について
(ア)請求人は、甲8には、「本薬剤組成物は、約0.1~2000mgの範囲で、好ましくは0.5~500mgの範囲で、そして最も好ましくは約1と100mgの間で活性成分を含有してよい。」と記載されているから(甲8-g)、相違点8-1は、甲8に記載されており実質的な相違点ではないと主張している(弁駁書(令和6年6月27日提出)13頁16行~15頁下から3行)。
しかしながら、「10mg乃至1000mgの量」と重複する「約1と100mgの間」が記載されていても、その下限が10mgであることは記載されていないから、甲8には、「10mg乃至1000mgの量」が記載されているということはできず、相違点8-1は、実質的な相違点である。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
(イ)請求人は、甲8の実施例2の再現実験によれば、セレコキシブ粒子のD90は15.27~67.09μmであり、D90が30μmである場合が含まれていれば、30μm以外の場合があるとしても新規性は否定されるべきであり、相違点8-2は実質的な相違点ではないと主張している(弁駁書(令和6年6月27日提出)16頁9行~18頁下から5行)。
しかしながら、30μmになる場合も30μmにならない場合もあるのであれば、甲8の実施例2の、セレコキシブ粒子のD90が30μmであるということはできず、相違点8-2は、実質的な相違点である。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
ウ 小括
よって、訂正発明1は、甲8に記載された発明ではない。
(3)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1におけるD90の値「30μm」を「30μm未満」とするものである。
したがって、訂正発明2と甲8発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させたセレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物。
[相違点8-1]製薬組成物に含まれるセレコキシブの量が、訂正発明2では、「10mg乃至1000mgの量」とされているのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
[相違点8-2’]製薬組成物に含まれるセレコキシブが、訂正発明2では、「微粒子セレコキシブ」であり、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μm未満である粒子サイズの分布を有」する「セレコキシブ粒子」であるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
[相違点8-3]製薬組成物が、訂正発明2では、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」とされているのに対し、甲8発明では、かかる特定がなされていない点。
そして、上記相違点8-1、相違点8-2’及び相違点8-3は、実質的な相違点であるから、訂正発明2は、甲8発明と相違しており、甲8に記載された発明ではない。
(4)訂正発明7、8、17~19について
訂正発明7、8、17~19は、いずれも訂正発明1又は2を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正発明7、8、17~19を甲8発明と対比した場合にも、上記(2)、(3)のとおり上記相違点8-1、相違点8-2又は相違点8-2’、相違点8-3は存在する。
したがって、訂正発明7、8、17~19は、甲8発明と相違しており、甲8に記載された発明ではない。
(5)まとめ
以上のとおり、訂正発明1、2、7、8、17~19は、甲8に記載された発明ではないから、無効理由III(甲8記載発明に基づく新規性欠如)は、理由がない。
3 無効理由III(甲15記載発明に基づく新規性欠如)について
無効理由III(甲15記載発明に基づく新規性欠如)の概要は以下のとおりである。
本件訂正前の請求項1、2、7、18に係る発明(訂正発明1、2、7、18に対応する)は、甲15に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
(1)甲15に記載された発明
甲15の記載によれば、「SC-58635」は、訂正発明における「セレコキシブ」に相当する(甲15-a)。
そして、(甲15-a)及び(甲15-b)によれば、甲15には次の発明(以下「甲15発明」という。)が記載されているといえる。
[甲15発明]
「セレコキシブ300mgを含む経口投与用カプセル。」
(2)訂正発明1について
訂正発明1と甲15発明とを対比する。
甲15発明における「経口投与用カプセル」は、訂正発明1における「一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物」に相当する。
そして、甲15発明におけるセレコキシブの含有量300mgは、訂正発明1における「10mg乃至1000mg」に包含される。
また、経口投与用カプセルには、有効成分だけではなく、一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤を密に混合させて封入することは技術常識であるから、甲15発明における経口投与用カプセルに含まれるセレコキシブは、訂正発明1における「一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた」セレコキシブに相当する。
そうしてみると、訂正発明1と甲15発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量のセレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物。
[相違点15-1]製薬組成物に含まれるセレコキシブが、訂正発明1では、「微粒子セレコキシブ」であり、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布を有」する「セレコキシブ粒子」であるのに対し、甲15発明では、かかる特定はなされていない点。
[相違点15-2]製薬組成物が、訂正発明1では、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」とされているのに対し、甲15発明では、かかる特定がなされていない点。
そして、上記相違点15-1及び相違点15-2は、実質的な相違点であるから、訂正発明1は、甲15発明と相違しており、甲15に記載された発明ではない。
(3)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1におけるD90の値「30μm」を「30μm未満」とするものである。
したがって、訂正発明2と甲15発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量のセレコキシブを含み、一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物。
[相違点15-1’]製薬組成物に含まれるセレコキシブが、訂正発明2では、「微粒子セレコキシブ」であり、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μm未満である粒子サイズの分布を有」する「セレコキシブ粒子」であるのに対し、甲15発明では、かかる特定はなされていない点。
[相違点15-2]製薬組成物が、訂正発明2では、「ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含む」とされているのに対し、甲15発明では、かかる特定がなされていない点。
そして、上記相違点15-1’及び相違点15-2は、実質的な相違点であるから、訂正発明2は、甲15発明と相違しており、甲15に記載された発明ではない。
(4)訂正発明7、18について
訂正発明7、18は、いずれも訂正発明1又は2を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正発明7又は18を甲15発明と対比した場合にも、上記(2)、(3)の相違点15-1又は相違点15-1’及び相違点15-2が存在する。
したがって、訂正発明7又は18も、甲15発明と相違しており、甲15に記載された発明ではない。
(5)まとめ
以上のとおり、訂正発明1、2、7及び18は、甲15に記載された発明ではないから、無効理由III(甲15記載発明に基づく新規性欠如)は、理由がない。
4 無効理由IV(甲8記載発明に基づく進歩性欠如)について
無効理由IV(甲8記載発明に基づく進歩性欠如)の概要は以下のとおりである。
本件訂正前の請求項1~19に係る発明(訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に対応する)は、甲8に記載された発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1と甲8発明との対比
甲8には、上記2(1)で認定したとおりの甲8発明が記載されている。
訂正発明1と甲8発明の一致点及び相違点は、上記2(2)アのとおりの一致点及び相違点8-1~相違点8-3である。
イ 相違点8-1の判断
甲8には、「投与される治療活性のある化合物の量、および本発明の化合物および/または組成物により疾患症状を治療するための投薬法は、患者の年齢、体重、性別および健康状態、疾患の重篤度、投与の経路と頻度、および使用される特定の化合物を含む、種々の因子に依存し、従って、広く変化しうる。」との記載に続けて、「本薬剤組成物は、約0.1~2000mgの範囲で、好ましくは0.5~500mgの範囲で、そして最も好ましくは約1と100mgの間で活性成分を含有してよい。」と記載されている(甲8-g)。
そうすると、甲8発明における製薬組成物に含まれるセレコキシブの量を、この記載に基づいて好適化して、「約10mg乃至1000mgの量」とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点8-2及び相違点8-3の判断
(ア)本件優先日当時の周知技術又は技術常識
a 粒子径及び界面活性剤と溶出速度及びバイオアベイラビリティーについて
(a)甲7
甲7には、薬物の溶解速度はその有効表面積に正比例し、粒子径を細かくして有効表面積を増加させると溶解速度が増大できること、薬物が疎水性で溶媒による濡れが劣る場合には粒子径を小さくすると凝集が起こり溶解速度が遅くなることがあること、界面活性剤であるポリソルベート80(甲92-e参照)を加えると、溶媒が薬物粉末の表面をよく濡らすようになり,薬物は速やかに溶け、溶解速度は粉砕の程度に従って増大すること、薬物粒子径について、薬物の溶出速度に及ぼす影響を調べることが重要であることが記載されている(甲7-a~甲7-g)。
(b)甲16
甲16には、経口製剤の有効性と安全性を保証するために薬物のバイオアベイラビリティーを考慮しなければならないこと、溶解速度が小さいため吸収が悪い難溶性薬物の溶解性及び吸収性の改善は、製剤設計者が直面する最も重要な解決課題であること、薬物粒子の表面積を増大する方法として微細化が最もよく利用されること、粉砕によって粒子径が小さくなると、表面積の増加により溶解速度が増大しバイオアベイラビリティーを改善できるが、微粉になればなるほど凝集が起こりやすく、粉砕により水に接する表面積(有効表面積)が逆に小さくなり、溶解速度が小さくなることがあること、特に疎水性物質は凝集性が強いが、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなることが記載されている(甲16-a、甲16-b)。
(c)甲17
甲17には、薬物の粒子サイズを小さくすると溶解速度が向上すること、生物学的利用能が改善することが記載されている(甲17-a)。
(d)甲23
甲23には、水に対する溶解度が比較的小さな薬物では製剤中の薬物粉末の粒子径によって、溶解速度が大きく異なること、粒子の表面積Sに比例して溶解速度は大きくなることが記載されている(甲23-a)。
(e)甲65
甲65には、難溶性薬物の場合は溶解度が小さいために溶出速度が小さくなること、溶解速度を大きくするには、粒子を小さくして比表面積を増大させることにより可能となること、「フェニトイン」について、市販原末に対し、微粉化した結晶は、溶出速度とバイオアベイラビリティーが改善したことが記載されている(甲65-a~甲65-c)。
(f)甲66
甲66には、粉砕により粒子径を減少させることは、製剤工程では重要な単位操作の一つであり、粉砕により粒子の比表面積が増加し、粒子径が固形製剤のバイオアベイラビリティに影響を及ぼすことはよく知られていることが記載されている(甲66-a)。
(g)甲67
甲67には、製剤工程では原料粉末が準備されると、まず最初に行われる操作が粉砕であること、粉砕による粒子径の減少は、医薬品工業では重要な単位操作の一つであること、粉砕により粉体の比表面積は増加すること、粒子径が固形製剤の生物学的利用率bioavailabiltyに影響を及ぼすことは広く知られていることが記載されている(甲67-a)。
(h)甲68
甲68には、粉砕は、固体粒子の粒子径を適切な大きさに小さくするための単位操作であり、溶解速度の増大を目的としていることが記載されている(甲68-a)。
(i)甲69
甲69には、製剤における粉砕とは、粒子を微細化する操作であり、生物薬剤学及び製剤工学上重要な機械的単位操作の一つであること、一般に、薬剤粒子に粉砕処理を施し、その比表面積を増大させるほど溶解・吸収の速度が大きく、より高い薬効の発現を期待し得ることが記載されている(甲69-a)。
(j)甲93
甲93には、微細な粒子にするほど溶解速度が大きくなり薬効が増大すること、界面活性剤を用いて固体表面を濡れ易くして溶解速度を増す工夫も行われていることが記載されている(甲93-a)。
(k)甲94
甲94には、固体の微粉化は比表面積の増大により一般に溶解速度を増加させること、薬物が疎水性の場合は溶解速度が減少するが、この改善には、界面活性剤の添加によるぬれの増大が有効であることが記載されている(甲94-a)。
(l)甲95
甲95には、溶解速度を増加させる因子として、微粉化と界面活性剤の添加が記載され、界面活性剤は、ぬれの改善によって有効表面積を増加させることが記載されている(甲95-a)。
(m)乙15
乙15には、微細化によりバイオアベイラビリティーを改善できることが多くの難溶性薬物で報告されていること、しかし、微粉になればなるほど凝集が起こりやすく、粉砕により水に接する表面積(有効表面積)が逆に小さくなって溶解速度が小さくなることがあり、特に疎水性物質は凝集性が強いこと、ここに、界面活性剤が存在すると凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度が大きくなることが記載されている(乙15-a、乙15-b)。
(n)己14
己14には、多くの場合、溶解性の乏しい化合物は、製剤化した粒子の表面積を増大させることにより、バイオアベイラビリティーを高めることができること、一般的に、粒径が小さくなるにつれて、単位体積あたりの表面積が増加することが記載されている(己14-e)。
(o)乙21
乙21には、物質の可溶化及び/又は湿潤性は、一般的に活性成分のバイオアベイラビリティを促進する効果を有する界面活性剤による処理によって向上できることが知られていると記載されている(乙21-a)。
(p)乙22
乙22には、界面活性剤が、製剤添加物中もっとも重要なものの一つであり、いろいろな目的で固形製剤などのほとんどすべての投与剤形に使用されていること、界面活性剤が、ある種の薬物の吸収と効果の発揮に重要な役割を果たすことは文献に明らかであること(乙22-a)、界面活性剤の界面張力低下作用により、溶液は効果的に固形製剤を濡らし、より接触が良くなるから、界面活性剤を添加して薬物の溶解有効表面積を増し、溶解及び吸収速度を増すことができること(乙22-c)が記載されている。
(q)乙23
乙23には、界面活性剤の「(b)薬物に対する影響」として、水に難溶性の薬物は界面活性剤の添加でその放出性が改善できることが記載されている(乙23-a)。
(r)乙24
乙24には、医薬品の吸収に及ぼす界面活性剤の影響について多くの報告が見受けられること、消化管からの吸収については、「水に難溶な薬品」に関する報告が多くされていることが記載されている(乙24-b)。
(s)乙28
乙28には、水難溶性化合物の溶出性を改善する手段として、1)粉砕により粒子径を減少させて溶出性を改善する方法や、2)界面活性剤による可溶化又は濡れ性の改善により溶出性を改善する方法が既に公知であることが記載されている(乙28-a)。
上記(a)~(s)によれば、本件優先日当時、経口製剤の有効性と安全性を保証するために薬物のバイオアベイラビリティーを考慮して、溶解速度が小さいため吸収が悪い難溶性薬物の溶解性及び吸収性を改善する解決手段について、(i)粉砕によって薬物の粒子径を小さくし、比表面積(有効表面積)を増大させることにより、薬物の溶出が改善されるが、他方で、難溶性薬物については、溶媒による濡れ性が劣る場合には、粒子径を小さくすると凝集が起こりやすくなり、有効表面積が小さくなる結果、溶解速度が遅くなることがあること、(ii)疎水性の難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することは、周知技術又は技術常識であったといえる。
b 粒子径について
(a)甲3
甲3には、粒子径について以下の記載がある(甲3-a、甲3-b)。
「粒子の表面積と溶解速度とは密接に関係する.また,粒子径は製剤や調剤を行うときの取り扱いやすさとも深くかかわっているから,粒子径を調節することは大変重要な問題である.」
「
[図:0001432287000041.jpg]
」
上記によれば、粒子の表面積と溶解速度とは密接に関係し、粒子径は製剤や調剤を行うときの取り扱いやすさとも深くかかわっているから、粒子径を調節することは大変重要な問題であるところ、粒子径の測り方として、長径(l)、短径(b)、厚み(h)で特定する三軸径があり、長径(l)は、「粒子の最大長」であるから、甲3には、粒子径を特定するにあたり、「粒子の最大長」で特定することは通常の特定方法の一つであることが記載されているといえる。
(b)甲4
甲4には、粒子径について以下の記載がある(甲4-a)。
「
[図:0001432287000042.jpg]
」
上記のとおり、甲4にも、長軸径、すなわち、「粒子の最大長」で粒子径を特定することは通常の特定方法の一つであることが記載されている。
また、甲4には、粒子径について以下の記載がある(甲4-b)。
「
[図:0001432287000043.jpg]
」
上記のとおり、甲4には、針状のような形状の粒子を測定する際の代表径として「粒子の最大長」が記載されているといえる(表4・11、上から3番目と4番目の形状)。
(c)甲19
甲19には、粒子径について以下の記載がある(甲19-a)。
「
[図:0001432287000044.jpg]
」
上記のとおり、甲19にも、長軸(l)、すなわち、「粒子の最大長」で粒子径を特定することが通常の特定方法の一つであることが記載されている。
(d)甲20
甲20には、粒子径について以下の記載がある(甲20-a)。
「
[図:0001432287000045.jpg]
」
上記のとおり、甲20にも、三軸径における長径(l)、すなわち、「粒子の最大長」で粒子径を特定することが通常の特定方法の一つであることが記載されている。
(e)上記(a)~(d)によれば、本件優先日当時、粒子の表面積と溶解速度とは密接に関係し、粒子径は製剤や調剤を行うときの取り扱いやすさとも深くかかわっているから、粒子径を調節することは大変重要な問題であるところ、粒子径を特定するにあたり「粒子の最大長」で特定することは通常の特定方法の一つであることが周知技術又は技術常識であったといえる。また、針状のような形状の粒子についても、「粒子の最大長」で粒子径を特定することは、通常の特定方法の一つであったといえる。
c D90について
(a)甲61
甲61には、医薬組成物の有効成分である「ビサコジル」について、水に難溶性の化合物であるが、微粉化ビサコジルとすると急速溶解性となること、微粉化ビサコジルの粒度分布は、粒子の90%以上が有効径10μm以下であるような分布であることが記載されているから(甲61-a~甲61-c)、甲61には、難溶性の薬物を粉砕して溶解性を改善するにあたり、粉砕後の粒子を90%以上が有効径10μm以下、すなわち、D90で特定することが記載されているといえる。
(b)甲62
甲62には、医薬組成物の有効成分である「エバスタイム」について、不十分なバイオアベイラビリティーは水溶性の悪さに関連しているが、微粉化することで溶解初速度が改善されること、微粉化とは、25μmより小さい粒子サイズを有する数基準で90%の粒子であることが記載されているから(甲62-a~甲62-c)、甲62には、難溶性の薬物を粉砕して溶解性を改善するにあたり、粉砕後の粒子を25μmよりも小さい粒子サイズを有する90%の粒子、すなわち、D90で特定することが記載されているといえる。
(c)甲63
甲63には、水に不溶性もしくは難溶性の粒子について、平均粒径が5μmよりも大きな粒子の割合が0.1%よりも少ない粒子とすることで、薬剤の溶解速度が増大することが記載され、薬剤「RMKP22」について、90%の粒径を確認したことが記載されているから(甲63-a~c)、甲63には、難溶性の薬物を粉砕して溶解速度を改善するにあたり、粉砕後の粒子の90%の粒径、すなわち、D90で特定することが記載されているといえる。
(d)己14
己14には、溶解性の乏しい化合物は、粒径を小さくして表面積を大きくすることでバイオアベイラビリティーを改善できることが記載され(己14-e)、医薬の有効成分である「ラロキシフェン」について、不溶性でバイオアベイラビリティーが低い化合物であるが、少なくとも90%が約50ミクロン未満、好ましくは約35ミクロン未満の狭い粒径範囲にすることでインビトロにおける溶解プロフィールとインビボにおけるバイオアベイラビリティーが改善された医薬組成物とできることが記載され(己14-a~己14-e)、少なくとも90%が約35ミクロン未満としたラロキシフェンを含む製剤が、溶解性とバイオアベイラビリティーを改善したことが具体的に確認されている(己14-f、己14-g)。そうすると、己14には、難溶性の薬物を粉砕して溶解性を改善するにあたり、粉砕後の粒子を少なくとも90%が約35ミクロン未満、すなわち、D90で特定することが記載されているといえる。
(e)甲91
甲91には、粒状薬剤の溶解速度は粒子サイズの低減につれて増加できるため、医薬組成物中の薬剤粒子のサイズやサイズ範囲を調節することが行われてきたこと、安定で分散性の薬物微粒子が、著しく高い生体利用効率を示す医薬組成物とできること、その際、薬剤粒子のサイズは、粒子の少なくとも90%の粒径で特定することが記載されているから(甲91-b、甲91-c、甲91-e)、甲91には、粉砕することでバイオアベイラビリティーを改善するにあたり、粉砕後の薬物粒子を90%の粒径、すなわち、D90で特定することが記載されているといえる。
(f)己15
己15には、医薬の有効成分である「2-シアノ-4,5-エポキシ-3-オキソステロイド類」について、バイオアベイラビリティーに問題があったところ、粒度をコントロールすることでこの問題は解決すること、粉砕によりその95%が約50μmより小さい粒度とすることでバイオアベイラビリティーが改善されたことが具体的に記載されているから(己15-a~己15-d)、己15には、粉砕することでバイオアベイラビリティーを改善するにあたり、粉砕後の粒子を95%が50μmよりも小さい粒度、すなわち、D95で特定することが記載されているといえる。
(g)己13
己13には、平均粒径が粒子の適合性を決める上で重要な唯一の考慮事項ではなく、閾値を超えた粒子が最少の割合を有するようなものであるべきで、粒子の約95%以上が約75ミクロン以下の粒径を有するような粒径分布とすることが記載されているから(己13-b)、己13には、粒径を特定するにあたり、平均粒径のみならず、D95のように閾値を超えた粒子の割合で特定することが記載されているといえる。
(h)上記(a)~(g)によれば、本件優先日当時、D90、D95などにより粒径を特定することは広く行われており、上記(a)~(e)のとおり、難溶性の薬物を粉砕して溶解性を改善するにあたり、粉砕後の粒子をD90で特定することは周知技術であった。
また、上記(a)、(b)、(d)のとおり、薬物のD90の具体的な数値として、甲61、62、己14には、それぞれ「10μm以下」、「25μmよりも小さい」、「約35ミクロン未満」が記載されているから、薬物のD90として、30μmはごく通常の値にすぎないことが理解できる。
d ラウリル硫酸ナトリウムについて
(a)参考文献A
参考文献Aには、薬物のぬれや溶出速度の改善に用いられる湿潤剤としては主に界面活性剤が用いられること、錠剤について調査した結果、62%が湿潤剤を使用し、そのうち、38%がラウリル硫酸ナトリウムを使用しているとの結果であったこと、カプセル剤について調査した結果、54%が湿潤剤を使用し、そのうち、22%がラウリル硫酸ナトリウムを使用しているとの結果であったことが記載されている(A-a、A-b)。さらに、主薬の水へのぬれ性は、バイオアベイラビリティーに大きな影響を与えるため、ぬれ性の改善は難水溶性薬物のバイオアベイラビリティーを確保する手段の一つであり、実際の医薬品製剤にもしばしば応用されていること、粉体をカプセルに詰めた場合の溶出について、界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを添加した方が明らかに溶出速度が向上していることがデータと共に記載されている(A-c)。
(b)参考文献B
参考文献Bには、医薬の有効成分である「イルベサルタン」は、水への溶解度が低いところ、界面活性剤を用いることで、錠剤のぬれの改良、溶出性の強化を行うことができること、好ましい界面活性剤にはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられることが記載されている(B-a~B-c)。
(c)甲87
医薬品添加物事典である甲87のラウリル硫酸ナトリウムの項には、ラウリル硫酸ナトリウムが界面活性剤として用いられることが記載されている(甲87-a)。
(d)甲90
甲90には、医薬の有効成分であるシクロスポリンについて、界面活性剤と混合することにより、シクロスポリン原薬の凝集が抑制され、水ぬれ性が改善され、溶出性が向上すること、界面活性剤として特にラウリル硫酸ナトリウムが好ましいことが記載されている(甲90-a~90-c、甲90-e~90-f)。
(e)甲91
甲91には、表面変性剤により、薬物微粒子は安定で分散性となり、著しく高い生体利用効率を示す医薬組成物となること、好ましい表面変性剤は界面活性剤を含むこと、特に好ましい表面変性剤としてラウリル硫酸ナトリウムが挙げられることが記載されている(甲91-a、甲91-c、甲91-d)。
(f)甲92
甲92には、微粒子化した薬物活性成分、界面活性剤を含む医薬組成物が記載され、バイオアベイラビリティーを高める方法として、薬物活性成分を粉砕し微粒子化する方法と界面活性剤を混合する方法が記載され、界面活性剤を混合することで薬物の製剤からの溶出が促進されることが記載され、好ましい界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムが記載されている(甲92-a~甲92-c、甲92-e)。
(g)戊40
戊40には、医薬の有効成分である「グリベンクラミド」について、水にほとんど溶けず、消化管から吸収されるのは45%のみであるところ、薬物の水溶性と消化管からの吸収性を高めるためにラウリル硫酸ナトリウムとツイーン80を様々な濃度で配合した結果、ラウリル硫酸ナトリウムの濃度の増加は、BSL(ウサギの血糖値)の低下を促進し、薬物の生体内利用率(生物学的利用能)を改善したことが記載されている(戊40-a~戊40-c)。
(h)上記(a)~(g)によれば、薬物粒子のぬれ性、分散性及び溶出性の改善や、難溶性薬物のバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)を確保するために用いる界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウムは周知慣用のものであるといえる。
(イ)判断
a 上記(ア)の本件優先日当時の周知技術又は技術常識を踏まえて、相違点8-2及び相違点8-3について検討する。
甲8発明の「製薬組成物」における「セレコキシブ結晶」は、工程1において油状物として得られた後、工程2において塩化メチレン/ヘキサンから再結晶していることからみて難溶性薬物であるといえる。
そして、上記(ア)aのとおり、本件優先日当時、(i)粉砕によって薬物の粒子径を小さくし、比表面積(有効表面積)を増大させることにより、薬物の溶出が改善されるが、他方で、難溶性薬物については、溶媒による濡れ性が劣る場合には、粒子径を小さくすると凝集が起こりやすくなり、有効表面積が小さくなる結果、溶解速度が遅くなることがあること、(ii)疎水性の難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することは、周知技術又は技術常識であった。
したがって、難溶性薬物である甲8発明のセレコキシブ結晶について、溶出速度とバイオアベイラビリティーを改善するために、粉砕によって粒子径を小さくして「微粒子セレコキシブ」とし、「界面活性剤」を存在させることは、当業者が容易に行うことである。
その際、粉砕によって小さくした粒子径を、通常の特定方法の一つである「粒子の最大長」(上記(ア)b)で特定することは、粒子の形状に応じて当業者が適宜行うことであり、さらに、難溶性の薬物を粉砕して溶解性を改善するにあたり、粉砕後の粒子をD90で特定することは周知技術であり、D90として30μmはごく通常の値にすぎないことは、上記(ア)cのとおりであるから、上記「微粒子セレコキシブ」について、相違点8-2に係る「粒子の最大長においてD90が30μmの粒子サイズの分布を有する」ものと特定することに格別の困難性は見いだせない。
また、上記(ア)dのとおり、薬物粒子のぬれ性、分散性及び溶出性の改善や、難溶性薬物のバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)を確保するために用いる界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウムは周知慣用のものであるから、甲8発明においてセレコキシブの溶出性とバイオアベイラビリティーの改善を目的として「界面活性剤」を存在させるにあたり、相違点8-3に係る界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを選択することは、当業者が容易に行うことである。
b そして、粉砕によって粒子径を小さくして、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を存在させることにより、溶出速度とバイオアベイラビリティが改善する場合と改善しない場合の両方があるとしても、上記(ア)aのとおり、一般に、溶出速度とバイオアベイラビリティを改善するためにこれらの手段が有効であることが知られている以上、甲8発明においてもこれらの手段を試みることは、当業者が容易に行うことである。
特に、上記(ア)aの周知技術又は技術常識を裏付ける証拠として挙げた、甲7(「医薬品の溶出」)、甲16(「経口投与製剤の設計と評価」)、甲23(「CMC Technical Report No.7 固形製剤とバイオアベイラビリティ」)、甲65(「医薬品の開発 第21巻 医薬品の生物学的利用能」)、甲66(「新しい製剤学」)、甲67(「製剤学 改稿版」)、甲68(「製剤学 改訂第3版」)、甲69(「製剤工学 医薬品開発基礎講座X」)、甲93(「薬学生のための物理化学-第3版-」)、甲94(「製剤学 改訂第3版」)、甲95(「’99年版 新ガイドライン 薬剤師国家試験 例題+ポイント 医療薬学II 薬剤学」)、乙15(「経口投与製剤の設計と評価」)、乙22(「生物薬剤学概説」)、乙23(「新製剤開発システム総合技術―基剤・添加物質―」)は、いずれも製剤の分野における教科書といえる書籍であること、経口製剤であれば、バイオアベイラビリティを考慮しなければならず、溶解性及び吸収性の改善を試みることが重要であること(甲16-a)を考慮すれば、「錠剤又はカプセル剤の形態の経口投薬単位である製薬組成物」に係る甲8発明も、当然、バイオアベイラビリティを考慮し、溶解性及び吸収性の改善を試みるのであって、その際、教科書にも記載されている周知技術又は技術常識に基づいて、粉砕によって粒子径を小さくして、界面活性剤を存在させることに何ら困難性はなく、改善しない場合もあることでそれが妨げられるということはない。
c 以上によれば、甲8発明において、相違点8-2及び相違点8-3に係る構成のものとすることは、本件優先日当時の周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に行うことである。
エ 訂正発明1の効果について
(ア)本件明細書の記載
本件明細書には、訂正発明1の効果に関し、以下のとおり記載されている。
「【0022】
本発明の組成物は微粒子の形態のセレコキシブを包含する。セレコキシブの一次粒子は、例えば、製粉若しくは粉砕により、又は溶液から沈殿させて生成させ、凝集して二次の集合体粒子が形成される。本願で利用する用語「粒子サイズ」とは、特に本願で指摘しない限り、一次粒子の最長の大きさのことをいう。粒子サイズは、セレコキシブの臨床的効果に影響を与える重要なパラメータであると考えられる。よって、別の実施例では、発明の組成物は、粒子の最長の大きさで、粒子のD90が約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは約25μm以下であるように、セレコキシブの粒子分布を有する。通常、本発明の上記実施例によるセレコキシブの粒子サイズの減少により、セレコキシブの生物学的利用能が改良される。
・・・
【0075】
加湿剤
セレコキシブは水溶液にかなり溶解しにくい。したがって、本発明の製薬組成物は、任意であるが、好ましくは、キャリア材料として、一つ又はそれ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含む。・・・
【0076】
ラウリル硫酸ナトリウムは好ましい加湿剤である。
・・・
【0124】
カプセル及び錠剤中でのセレコキシブの粒子サイズ
カプセル若しくは錠剤の形で経口投与されると、セレコキシブ粒子サイズの減少により、セレコキシブの生物学的利用能が改善されるを発見した。したがって、セレコキシブのD90粒子サイズは約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは25μm以下である。例えば、例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される。
・・・
【0170】
・・・
例11:犬モデルでの生物学的利用能
9乃至13ポンド(4.1乃至5.9kg)の重量のある健康なメスのビーグル犬は、以下のセレコキシブの1回の投与を受けた:(1)kg体重当たり5.0mgのセレコキシブの静脈注入に続き、kg体重当たり5.0mgのセレコキシブの第二の静脈注入;(2)経口溶液形態のkg体重当たり5mgのセレコキシブ;(3)経口カプセルの形態のkg体重当たり5.0mgのニートな未調合セレコキシブを投与する。静脈及び経口溶液投与のビヒクルは、体積比で2:1の比率である平均分子量400(PEG‐400)を有するポリエチレングリコールと水の混合物であった。各静脈注入は、2回の注入に分け、15乃至30分で15分の間隔をおいて与えた。
【0171】
多くの血液サンプルを、ヘパリン化チューブへの静脈穿刺又は留置カテーテルにより各動物から集めた。血清中のセレコキシブ濃度はHPLCにて測定し、その結果データを、以下の表11-1に示す薬物速度論パラメータを計算するために利用した。
【0172】
【表12】
[図:0001432287000046.jpg]
例11-2:犬モデルでの調合の相対的生物学的利用能
セレコキシブ粒子サイズ、湿潤剤の増加濃度、pH及び懸濁液としてのセレコキシブの分散液のような調合パラメータの効果は、犬モデルの生物学的利用能への経口溶液に対して評価した。調合する前にセレコキシブを微粉化(平均粒子サイズ10乃至20μm)させる効果は、組成物Aにて試験した。微粉化、添加湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム)と増加したマイクロ環境pH(Na3PO412H2O)の組合わせ効果を、組成物Bにて試験した。湿潤剤(Tween80)をセレコキシブと密に接触させる効果(単純な乾燥混合に対する共沈殿の効果)を、組成物Cにて試験した。さらに微細化させた粒子サイズ(約1μm)と粒子を懸濁液に分散させた効果を、組成物Dにて試験した。例11-1(組成物E)にて利用したのと同様なセレコキシブ溶液を、参考として用いた。加えて、カプセル(組成物F)中の未粉砕、未調合セレコキシブの例11-1のデータも、参考として入れた。調合A、B、C、D、E及びFの特定の組成を表11-2Aにまとめる。
【0173】
【表13】
[図:0001432287000047.jpg]
(1)アンチソルベントとして5%のポリソルベート80の水溶液を利用して、エタノール溶液から沈殿させた。
(2)粒子が顕微鏡で評価した際に約1μm径になるまで、ポリソルベート80とポリビニルピロリドンのスラリーにて、薬をボールミルさせて、懸濁液として調製した。
(3)体積比2:1のPEG‐400と水の溶液。
上記組成物を3つのオス犬と3つのメス犬のグループに投与した。グループ1の犬には、選択乗換設計にて、kg体重当たり5mgのセレコキシブを含む溶液Eとカプセル調合A及びBを投与した。グループ2の犬には、選択乗換設計にて、kg体重当たり5mgのセレコキシブを含むカプセル調合Cと懸濁液Dを投与した。血漿サンプルを24時間かけて集め、HPLCによりセレコキシブを解析した。
【0174】
上記実験の結果(表11-2B,11-2Cおよび11-2C)から、粒子サイズを小さくする(組成物A)又は湿潤剤とともにセレコキシブを共沈殿させる(組成物C)は、例11-1に示す未調合の初期の研究と比較して、セレコキシブの生物学的利用能(AUC(0‐24)として測定)が増大した。セレコキシブの生物学的利用能は、PEG‐400/水溶液(組成物E)から懸濁液(組成物D)へと大きくなった。約1μmの粒子サイズを有する懸濁液からの生物学的利用能は、溶液からの生物学的利用能と同様であり、湿式顆粒された固体組成物からのセレコキシブ生物学的利用能は小さなセレコキシブ粒子サイズ(例えば、調合に先立ち、セレコキシブのピンミルによるもの)、セレコキシブの増大した濡れ性(例えば、顆粒液体にラウリル硫酸ナトリウムを含有させることによるもの)や分散改良(例えば、顆粒化にてクロスカルメロースナトリウムを含有させることによる)により改善可能であることを、強く示唆している。各調合に対する表11-2Cおよび11-2Dに示される生物学的利用能は、例11-1と例11-2の研究間の掛け橋として、溶液データ(組成物E)を利用して、セレコキシブの静脈投与に対する実験的に測定された生物学的利用能の割合として、上記調合の生物学的利用能を表わす。
【0175】
【表14】
[図:0001432287000048.jpg]
【0176】
【表15】
[図:0001432287000049.jpg]
【0177】
【表16】
[図:0001432287000050.jpg]
」
(イ)判断
a 一般的な記載について
上記(ア)のとおり、本件明細書には、セレコキシブの粒子サイズの減少により、生物学的利用能が改善されること(【0022】)、セレコキシブは水溶液に溶解しにくいため、ラウリル硫酸ナトリウムを添加することで生物学的利用能が改善されること(【0075】)についての一般的な記載がある。
しかしながら、上記ウ(ア)aのとおり、疎水性の難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することは、本件優先日当時の周知技術又は技術常識であり、上記ウ(ア)dのとおり、薬物粒子のぬれ性、分散性及び溶出性の改善や、難溶性薬物のバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)を確保するために用いる界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウムは周知慣用のものであるから、セレコキシブの粒子サイズを減少させ、界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを添加することで、溶出速度が大きくなり、生物学的利用能が改善することは、当業者が予測し得る効果である。
b 表11-2Aについて
本件明細書【0173】の表11-2Aには、「セレコキシブ(微粉化)、ラウリル硫酸ナトリウム、アビセル101を含有する組成物A」、「セレコキシブ(溶液)を含有し、ラウリル硫酸ナトリウム、アビセル101を含有しない組成物E」、「セレコキシブ(未粉砕)を含有し、ラウリル硫酸ナトリウム、アビセル101を含有しない組成物F」が記載されている。上記組成物Aに含まれる「セレコキシブ(微粉化)」の微粉化とは、「平均粒子サイズ10乃至20μm」であると記載され(【0172】)、D90の値は明記されていないが、本件明細書の【0124】に、「例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると・・・」と記載されていることから、例11-2Aの組成物Aに含まれる「セレコキシブ(微粉化)」と記載されたセレコキシブ粒子のD90は、約30μmであると推認できる。
c 表11-2C、表11-2Dについて(組成物Eに対する相対的生物学的利用能)
本件明細書【0174】~【0177】には、組成物Aの生物学的利用能が、メス犬においては31.2±2.9(表11-2C)で、オス犬においては49.4±12.0(表11-2D)であったことが記載されており、これらの各値について、それぞれ同じ表に記載された組成物Eの数値(62.4±9.4、89.4±4.5)に対する割合を求めると、約50%(メス犬に対する値)及び約55%(オス犬に対する値)となる。そうすると、「D90が約30μmと推認されるセレコキシブ(微粉化)、ラウリル硫酸ナトリウム、アビセル101を含有する組成物A」は、約50%及び約55%の相対的生物学的利用能を有することが理解できる。
しかしながら、上記aと同様に、セレコキシブの粒子サイズを減少し、界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを添加すると溶出速度が大きくなり、生物学的利用能が改善することは、当業者が予測し得る効果であるから、「D90が約30μmと推認されるセレコキシブ(微粉化)、ラウリル硫酸ナトリウム、アビセル101を含有する組成物A」について、生物学的利用能が改善されることで、その相対的生物学的利用能も改善されることは、当業者が予測し得る効果である。
そのうえ、組成物Aは、セレコキシブが微粉化されていることと、ラウリル硫酸ナトリウムが添加されていることの他、アビセル101を含有している点でも組成物Eとは相違する組成物である。そうすると、組成物Eに対する組成物Aの効果には、セレコキシブの微粉化とラウリル硫酸ナトリウムの添加の他に、訂正発明1では特定されていないアビセル101の添加も寄与している可能性があるところ、親水性の賦形剤であるアビセル101(微結晶セルロース)が、バイオアベイラビリティーを改善している(甲7-f)ことも考えられる。
したがって、組成物Eに対する組成物Aの相対的生物学的利用能に基づいて、訂正発明1が予測し得ないような優れた効果を奏すると理解することはできない。
d 表11-2C、表11-2Dについて(組成物Fとの比較)
さらに、表11-2C、表11-2Dには、「セレコキシブ(未粉砕)を含有し、ラウリル硫酸ナトリウム、アビセル101を含有しない組成物F」の数値よりも、「D90が約30μmと推認されるセレコキシブ(微粉化)、ラウリル硫酸ナトリウム、アビセル101を含有する組成物A」の数値の方が高いことが記載されている。
しかしながら、上記aと同様に、セレコキシブが微粉化され、ラウリル硫酸ナトリウムを含む組成物Aが、セレコキシブが未粉砕で、ラウリル硫酸ナトリウムを含有しない組成物Fよりも、生物学的利用能が改善することは、当業者が予測し得る効果であるから、表11-2C、表11-2Dに記載された組成物Fの数値よりも組成物Aの数値が大きいことは、当業者が予測し得る効果である。
そのうえ、表11-2C、表11-2Dにおける組成物Fの数値は、例11-2の犬モデルに投与した結果ではなく、例11-1の犬モデルに投与して得られた結果である「16.9%」(表11-1)を参考として入れたものであるから(【0172】)、表11-2Cに記載された組成物Aの数値(31.2±2.9)と組成物Fの数値(16.9%)は、異なる犬に投与した異なる実験系の結果であり、直接効果の程度を比較することができない。同様に、表11-2Dに記載された組成物Aの数値(49.4±12.0)と組成物Fの数値(16.9%)も、直接効果の程度を比較することができない。
仮に、組成物Eの結果が、表11-1では「57.1%」であるのに対し、表11-2Cでは「62.4%」であることと、組成物Fの結果が比例関係にあると仮定すると、組成物Fの表11-1における「16.9%」は、16.9×62.4/57.1=「18.5%」となる。してみると、表11-2Cに記載された組成物Aの31.2±2.9と対比すべき組成物Fの数値は16.9%よりも高い18.5%程度となり、組成物Fと組成物Aの生物学的利用能の差は、実際には、より小さいことが考えられる。同様に、表11-2Dの数値について検討すると、組成物Fの表11-1における「16.9%」は、16.9×89.4/57.1=「26.5%」となる。してみると、表11-2Dに記載された組成物Aの49.4±12.0と対比すべき組成物Fの数値は16.9%よりも高い26.5%程度となり、組成物Fと組成物Aの生物学的利用能の差は、実際には、より小さいことが考えられる。
したがって、組成物Fと比較した組成物Aの生物学的利用能に基づいて、訂正発明1が、予測し得ないような優れた効果を奏すると理解することはできない。
e 粒子径を最大長におけるD90の値で特定することによる効果について
本件明細書には、セレコキシブ粒子を、「粒子の最大長」における「D90」の値を用いて粒子サイズの分布を規定することの技術的意義や「粒子の最大長」における「D90」の値と生物学的利用能の改善との関係について説明した記載はない。
また、「粒子の最大長」以外の手段で特定した粒子径や、「D90」以外の手段で特定した粒子径と、「粒子の最大長」における「D90」で特定した粒子径を具体的に比較して、「粒子の最大長」における「D90」により粒子径を特定することで、他の手段による特定からは予測し得ない優れた効果を奏することも記載されていない。
したがって、訂正発明1が、「粒子の最大長」における「D90」の値を用いてセレコキシブ粒子の粒子サイズの分布を規定したことにより、当業者が予測し得ないような優れた効果を奏するということはできない。
f まとめ
以上のとおりであるから、訂正発明1が、当業者が予測し得ないような優れた効果を奏するということはできない。
オ 被請求人の主張について
(ア)上申書(令和6年5月10日提出)における被請求人の進歩性欠如(甲8記載発明に基づく進歩性欠如)に関する主張は、別件無効審判において、甲8を主引例とする進歩性欠如の無効理由は理由がないとした審決が確定しているから、訂正発明についても、確定した別件審決と同様に、甲8記載発明に基づく進歩性欠如は理由がないというものである(7頁下から2行~8頁下から4行)。
しかしながら、別件審決は、本件とは別の事件であり、当然にその結果に拘束されるものではない。
そして、本件特許無効審判では、特許請求の範囲が訂正され、別件無効審判では提出されていない証拠が提出され、さらに職権に基づく証拠調べによる新たな証拠も提示されており、そもそも進歩性の判断の前提となる事情が異なるのであるから、別件審決における甲8を主引例とする進歩性欠如の判断と、本件特許無効審判における甲8を主引例とする進歩性欠如の判断は、同じになるとは限らないといえる。
したがって、被請求人の主張は、採用することができない。
(イ)被請求人は、意見書(令和6年10月29日提出。以下、単に「意見書」という。)の主に「第4 甲8を主引例とする進歩性欠如の無効理由は成り立たないこと」、及び、上申書(令和7年3月21日提出。以下、単に「上申書」という。)において、以下のとおり主張している。なお、被請求人の主張における「生物学的利用能」は、「バイオアベイラビリティー」と同義である。
a 相違点8-3について
被請求人は、相違点8-3について、以下のとおり主張している。
(a)上記ウ(ア)aにおける「(ii)疎水性の難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することが周知技術又は技術常識であった」との認定の根拠とされた証拠のうち、界面活性剤について記載されている甲7、甲16、甲93~甲95には、「難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在するとバイオアベイラビリティーが改善すること」が記載されているとはいえないから、上記ウ(ア)aの(ii)における「難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在するとバイオアベイラビリティーが改善すること」は周知技術又は技術常識ではなく、むしろ、界面活性剤の種類によって相反する結果が得られることが知られていた。
(b)また、甲8には、医薬品の有効成分としてのセレコキシブが異常なほど低溶解性であり、その水濡れ性や溶出性を改善し生物学的利用能を向上させる必要があるという課題は全く記載されておらず、当該課題は、本件優先日前に全く知られていなかったから、当業者は当該課題を把握することができず、課題を解決することを動機付けられない。
(c)そして、仮に、課題を把握することができたとしても、界面活性剤の存在により、ミセルが形成され薬物の吸収が阻害されることが本件優先日前に知られていたから、セレコキシブ粒子とともに界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムが存在する場合に、セレコキシブの生物学的利用能が向上するのか低下するのかをあらかじめ予測することは困難であった。
(d)加えて、ラウリル硫酸ナトリウムを添加しても消化管吸収が改善されない薬物が多数知られていたから、セレコキシブにラウリル硫酸ナトリウムを添加することは、当業者が容易に行うことではなく、仮に界面活性剤を添加するとしても、セレコキシブのバイオアベイラビリティ改善に適した界面活性剤を選択するには実験による試行錯誤を繰り返す必要がある。
(e)したがって、溶出速度とバイオアベイラビリティの改善を目的として界面活性剤を存在させることも、甲8発明に、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する加湿剤を含めることも、当業者が容易になし得ることではないから、相違点8-3は、当業者が容易になし得ることではない。(意見書14頁下から7行~16頁2行、上申書5頁8行~12頁15行、上申書18頁7行~25頁下から5行)
b 上記aの主張について検討する。
(a)被請求人は、甲7、甲16、甲93~甲95には、「難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在するとバイオアベイラビリティーが改善すること」が記載されているとはいえないこと、具体的には、甲7、甲16には、特定の薬物と特定の界面活性剤について記載されているだけで、難溶性薬物全般と界面活性剤全般についてバイオアベイラビリティが改善することは記載されていないこと、甲93には、抽象的な溶解速度の傾向が記載されているだけで実験結果に基づく検証は行われていないこと、甲94には、バイオアベイラビリティについて記載されていないこと、甲95には、難溶性物質について記載されていないことを主張する。
しかしながら、上記ウ(イ)bでも述べたとおり、甲7、甲16は、製剤分野の教科書といえる書籍であり、特定の薬物と特定の界面活性剤についての実験を具体的な事例として挙げつつ、一般的な結論を記載しているから(甲7-a~甲7-g、甲16-a、甲16-b)、甲7、甲16には、特定の薬物と特定の界面活性剤について記載されているだけとの主張は採用することができない。
また、甲93~甲95には、上記ウ(ア)a(j)~(l)のとおりの事項、すなわち、微粉化と界面活性剤の添加により溶解速度が大きくなることが記載されている。そして、溶解速度の増大がバイオアベイラビリティの改善につながることは技術常識であるから(上記ウ(ア)a(b)、(c))、甲93~甲95の記載から、微粉化と界面活性剤の添加により溶解速度が大きくなりバイオアベイラビリティが改善することが理解できる。そうすると、甲93~甲95は、「難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在するとバイオアベイラビリティーが改善すること」が周知技術又は技術常識であることを裏付ける文献といえる。
さらに、上記ウ(イ)bのとおり、甲8発明は、「錠剤又はカプセル剤の形態の経口投薬単位である製薬組成物」に係る発明である以上、当然、バイオアベイラビリティを考慮しなければならず、溶解性及び吸収性の改善を試みるのであって、その際、教科書にも記載されている周知技術又は技術常識に基づいて、界面活性剤を存在させることに何ら困難性はなく、界面活性剤の種類によってはバイオアベイラビリティが改善しない例があることで界面活性剤の添加の試みが阻害されるということはないと認められる。
(b)また、甲8発明の「製薬組成物」における「セレコキシブ結晶」が難溶性薬物であるといえることは、上記ウ(イ)aのとおりであるから、当業者は、セレコキシブが難溶性、すなわち、溶解性に劣るとの課題を把握できるといえる。そうすると、当業者は甲8発明の課題を把握できず、課題を解決することを動機付けられないとの被請求人の主張は、採用することができない。
(c)そして、界面活性剤によりミセルが形成されることがあるとしても、ミセル相から非ミセル相に薬物が放出されることで吸収速度は増加することが知られているから(乙22-c、乙22-d、乙23-a、乙23-b)、ミセルが形成される可能性によって、界面活性剤の添加が妨げられるとはいえない。そもそも、上記ウ(ア)a及びウ(イ)aのとおり、疎水性の難溶性薬物について、界面活性剤が存在すると、凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することは周知技術又は技術常識であるから、甲8発明において、界面活性剤を存在させてみることは、当業者が容易に行うことであり、上記ウ(イ)bのとおり、溶出速度とバイオアベイラビリティーが改善しない場合があることで、界面活性剤を存在させることが妨げられるということはない。
(d)加えて、ラウリル硫酸ナトリウムを存在させて、バイオアベイラビリティーが改善されない場合があるとしても、実際にラウリル硫酸ナトリウムは、多くの錠剤やカプセル剤に用いられているから(A-a、A-b)、錠剤又はカプセル剤である甲8発明において、ラウリル硫酸ナトリウムを用いることに困難性はなく、ラウリル硫酸ナトリウムを選択するにあたり実験による過度の試行錯誤を要するということもないと認められる。
(e)したがって、上記aの主張は、採用することができない。
c 相違点8-2について
被請求人は、相違点8-2について、以下のとおり主張している。
(a)本件優先日前の当業者は、セレコキシブを経口固形製剤とする場合の課題を把握することができず、仮に、課題を把握することができたとしても、粉砕による微細化は、そもそも溶解特性改善のアプローチとして十分な調査が行われておらず、流動性を悪化させ、凝集性が起こりやすくなるため、溶解速度が低下し生物学的利用能が悪化すると予想されていたから、通常選択される手段ではなく、粉砕によりあらゆる薬物の溶出性が改善されるわけではない。
(b)また、長い針状のセレコキシブ粒子は、球形粒子とは異なり有効表面積の増大効果がわずかであり、当業者は、セレコキシブを粉砕しても溶解度や生物学的利用能が改善すると期待することはないから、粉砕による微小化をセレコキシブに適用しようとすることには、動機づけがないばかりか阻害要因すら存在する。
(c)そのうえ、製薬組成物に含まれる有効成分の粒子サイズの分布を、粒子の最大長におけるD90で規定し、それにより生物学的利用能が改善されることは、甲8に記載も示唆もされていないし、本件優先日における技術常識でもなく、「粒子の最大長」による粒子径の特定は、その粒子が球形ではなく長い径を有することが公知であるからこそ行われることである。
(d)したがって、相違点8-2は、当業者が容易に想到し得たものではない。(意見書17頁下から3行~21頁15行、上申書12頁16行~18頁6行)
d 上記cの主張について検討する。
(a)当業者は甲8発明の課題を把握できず、課題を解決することを動機付けられないとの主張が採用できないことは、上記b(b)のとおりである。
そして、被請求人が主張するように、粉砕による微細化は、流動性を悪化させ、凝集性が起こりやすくなるため、溶解速度が低下し生物学的利用能が悪化することがあるものの、上記ウ(ア)aのとおり、界面活性剤が存在することで、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することは、本件優先日当時の周知技術又は技術常識である。
したがって、上記ウ(イ)のとおり、難溶性薬物である甲8発明のセレコキシブ結晶について、溶出速度とバイオアベイラビリティーの改善を目的として、粉砕によって粒子径を小さくして、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を存在させることは、当業者が容易に行うことであり、改善しない場合もあることでそれが妨げられるということはない。
(b)その際、セレコキシブ結晶が長く凝集した針状の結晶形態であるか否かにかかわらず、難溶性薬物である以上、粒子径を小さくすることは、当業者が容易に行うことである。また、そもそも、針状の結晶形態は周知の形状であって、何ら特殊な形態ではなく(甲4-b(上から3番目と4番目の形状))、薬物が針状結晶である場合に、粉砕することもよく行われているから(甲80-a、己2-b、己2-c、己5-a、己6-a、己6-b)、セレコキシブ結晶が針状であっても粉砕により粒子径を小さくすることは当業者が容易に行うことである。
(c)また、甲8に粒子の最大長におけるD90で規定することが記載も示唆もされていなくとも、当業者であれば、粒子の最大長におけるD90を30μmとすることが容易に行うことであることは、上記ウ(イ)aのとおりである。被請求人は、「粒子の最大長」による粒子径の特定は、その粒子が球形ではなく長い径を有することが公知であるからこそ行われることであるとも主張するが、甲8発明のセレコキシブは再結晶によって結晶が取得されており、結晶が取得されれば、結晶の形状を確認することに何ら困難性はなく、また、上記ウ(イ)aのとおり、粉砕後の粒子について、その形状に応じ、「粒子の最大長」により粒子径を特定することは当業者が適宜行うことである。そうすると、甲8にセレコキシブが長い径を有する結晶であることが記載されていなくとも、粒子の形状に応じ、「粒子の最大長」により粒子径を特定することに困難性は見いだせない。
(d)したがって、上記cの主張は、採用することができない。
e 訂正発明の効果について
被請求人は、訂正発明の効果について、以下のとおり主張している。
セレコキシブは難溶性であり、かつ、本来的に凝集性が強い化合物であるから、粒子径を小さくすればさらに疑集し表面積が減少し溶解速度がさらに遅くなることや、流動性が悪化しブレンド均一性も悪化することが予測された。また、セレコキシブは長い針状の結晶形であるから、これを粉砕しても有効表面積の増加が見込まれないことが予測された。また、界面活性剤の存在により、ミセルが形成されて遊離の薬物が減少したり薬物の消化管からの吸収が阻害されることが知られていたから、界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムが存在する場合に、薬物の生物学的利用能が向上するのか低下するのかをあらかじめ予測することは困難であった。そうすると、「粒子の最大長におけるD90」が「30μm」または「30μm未満」のセレコキシブに、ラウリル硫酸ナトリウムという特定の界面活性剤を組み合わせた場合に、消化管からの吸収がどのように影響を受けるのか、またバイオアベイラビリティーが改善するのか否かは、実際に動物実験をしてみなければわからず、当業者があらかじめ予測することはできなかった。一方、本件明細書の例11-2には、訂正発明1の構成に対応する、D90が約30μmであるセレコキシブとラウリル硫酸ナトリウムを含有する「組成物A」の生物学的利用能が、実際に犬モデルを用いて確認されており、表11-2C及び表11-2Dによれば、「組成物A」が50~55%の相対的生物学利用能を有するという効果を奏することが理解できるから、訂正発明は、当業者の予測を超える効果を奏する発明である。(意見書34頁3行~下から3行、上申書25頁下から4行~29頁下から8行)
f 上記eの主張について検討する。
セレコキシブが難溶性で本来的に凝集性が強い長い針状の結晶形であるとしても、疎水性の難溶性物質の微粒子について、界面活性剤が存在すると、凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することが周知技術又は技術常識であったことは、上記ウ(ア)aのとおりであるから、被請求人の主張する効果は、当業者が予測し得る効果にすぎない。
また、被請求人は、実際にバイオアベイラビリティが改善するのかどうかは動物実験をしてみなければわからず、当業者があらかじめ予測することはできなかったと主張する。しかしながら、セレコキシブという具体的な薬物について実際にバイオアベイラビリティが改善するかどうかは動物実験をしなければ確認できないとしても、本件明細書から理解できる50%又は55%の相対的生物学的利用能を有するとの効果は、粉砕によって粒子径を小さくして、界面活性剤として周知慣用のラウリル硫酸ナトリウムを存在させることで、バイオアベイラビリティが改善されたという、周知技術又は技術常識から期待される効果にすぎず、当業者が予測し得ないような優れた効果とはいえないことは、上記エ(イ)のとおりである。
したがって、上記eの主張は、採用することができない。
g 平均値ではなく粒子の最大長におけるD90であることについて
被請求人は、平均値ではなく粒子の最大長におけるD90であることについて、以下のとおり主張している。
訂正発明は、セレコキシブに特有の、異常な低溶解性や長い針状の凝集性が強い結晶構造に起因する問題点に着目し、微小化した粒子中に残存する長い針状の結晶の割合こそが重要であり、その割合が限定されなければならないということを見出して、微小化したセレコキシブ粒子中に残存する長い針状の結晶の割合を、粒子の最大長におけるD90によって規定したものであり、ただ単にセレコキシブの粒子の平均値を減少させればよいというわけでなく、粒子の最大長におけるD90を約60μmから約30μmに減少させることが、生物学的利用能の改善に必要であるということを見出したものである。(意見書6頁7行~最下行、意見書7頁15~22行)
h 上記gの主張について検討する。
被請求人は、ただ単にセレコキシブ粒子の平均値を減少させればよいというわけでなく、粒子の最大長におけるD90を減少させることが必要であることを見出したと主張するが、上記ウ(イ)aのとおり、粒子の最大長での特定は、粒径の特定方法として通常の方法の一つであり、粉砕後の粒子をD90で特定することは周知技術であるから、「粒子の最大長におけるD90」で特定することに格別の困難性は見いだせない。
また、被請求人の主張は、「粒子の最大長におけるD90」と「粒子の平均値」が別個の特定事項であることを前提とするものであるが、「粒子の平均値」とは、「粒子の最大長」ではなくどこを測定した値なのか不明であり、また、どのように特定した値を「粒子の平均値」としたかも不明であるから、「粒子の平均値」ではなく、「粒子の最大長におけるD90」で特定することが必要と主張する意図が不明である。
すなわち、粒子径の測定方法としてはいくつかの方法があるが(甲3-b、甲4-a、甲4-b、甲19-a、甲20-a)、被請求人の主張は、「粒子の最大長」ではない、どこをどのように測定した値を「粒子の平均値」としているのか、また、「D90」ではなく、どのように特定した粒子径を以て「粒子の平均値」と主張しているのか明らかではない。そして、上記エ(イ)eのとおり、本件明細書にも、「粒子の最大長」以外の手段で特定した粒子径や、「D90」以外の手段で特定した粒子径と、「粒子の最大長におけるD90」で特定した粒子径を具体的に比較したことは記載されていない。
そうすると、上記エ(イ)eのとおり、セレコキシブの粒子サイズを「粒子の最大長におけるD90」で特定したことで、予測し得ないような優れた効果を奏するということはできない。
したがって、上記gの主張は、採用することができない。
i 消化管からの吸収について
被請求人は、消化管からの吸収について、以下のとおり主張している。
生物学的利用能の改善のためには、(i)製剤から有効成分が溶解して溶液となる溶出過程と、(ii)溶液が消化管から吸収される吸収過程の両方が良好であることが必要であるところ、訂正発明は、薬物の溶出性のみならず胃腸管での吸収も良好なものである。(意見書2頁下から3行~3頁最下行)
j 上記iの主張について検討する。
上記ウ(ア)aのとおり、本件優先日当時、疎水性の難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなりバイオアベイラビリティーが改善することは、周知技術又は技術常識であるところ、ここでいうバイオアベイラビリティーの改善とは、薬物の溶出性のみならず胃腸管での吸収の改善も意味していることは明らかであり、実際、界面活性剤が存在し、又は、粒子サイズを小さくすることで、溶出性のみならず、吸収及び薬理効果が向上することが多数の文献に記載されている(甲7-f、甲7-g、甲16-a、甲16-b、甲17-a、甲65-b、甲65-c、甲91-f、甲92-b、甲93-a、己14-g、己15-d、戊40-a~戊40-c)。
そうすると、訂正発明が薬物の溶出性のみならず胃腸管の吸収も良好であることは、本件優先日当時の周知技術又は技術常識から予測し得ることである。
したがって、上記iの主張は、採用することができない。
k 参考文献A、Bについて
被請求人は、参考文献A、Bについて、以下のとおり主張している。
参考文献Aの記載からは、ラウリル硫酸ナトリウムを使用する製剤はむしろ少数派と理解でき、ラウリル硫酸ナトリウムを使用すれば必ずバイオアベイラビリティーの確保ができると理解できるものでもなく、参考文献Bには、ラウリル硫酸ナトリウムを使用した製剤を製造したことやバイオアベイラビリティーを測定したことは記載されていないから、参考文献A、Bの記載からは、「薬物粒子の水ぬれ性、分散性及び溶出性の改善や難水溶性薬物のバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)を確保するために用いる界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウムが周知慣用のものである」ということはできない。(意見書9頁12行~12頁7行)
l 上記kの主張について検討する。
参考文献Aの図4-2-11、図4-2-17には、錠剤において62%、カプセル剤において54%もの割合で薬物のぬれや溶出速度の改善に湿潤剤を使用していることが記載され、さらに、図4-2-12、図4-2-18には、ラウリル硫酸ナトリウムは、錠剤でもカプセル剤でもポリソルベート80と並んで最も多い割合で使用される湿潤剤であることが記載されている(A-a、A-b)。
したがって、参考文献Aの記載からは、ラウリル硫酸ナトリウムを使用する製剤はむしろ少数派と理解できるということはできない。また、ラウリル硫酸ナトリウムを存在させて、バイオアベイラビリティーが改善しない場合があるとしても、実際に多くの製剤においてラウリル硫酸ナトリウムが用いられているのであるから、甲8発明においても、ラウリル硫酸ナトリウムを用いることは、当業者が容易に行うことである。
また、参考文献Bに、ラウリル硫酸ナトリウムを使用した製剤を製造したことやバイオアベイラビリティーを測定したことが記載されていなくとも、参考文献Bには、界面活性剤が錠剤の濡れの改良や溶出性の強化を行うことができること、好ましい界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムが記載されているから(B-c)、上記ウ(ア)dで認定したとおり、「薬物粒子のぬれ性、分散性及び溶出性の改善や、難溶性薬物のバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)を確保するために用いる界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウムは周知慣用のものである」ことを裏付ける事項が、参考文献Bには記載されているといえる。
したがって、上記kの主張は、採用することができない。
m 粉砕手段について
被請求人は、粉砕手段について、以下のとおり主張している。
本件明細書【0024】には、エアージェットミルによる粉砕では長い針状の結晶は残存する傾向が高いと記載されているように、甲8の実施例2で得られたセレコキシブを周知技術にしたがって粉砕したとしても、粒子の最大長におけるD90が30μmであるセレコキシブを得られるとする根拠はない。(意見書27頁下から3行~28頁7行)
n 上記mの主張について検討する。
本件明細書【0024】には、「ピンミル(pin mill)のような衝撃式ミルでセレコキシブを粉砕させて、本発明の組成物を作製することは、改善された生物学的利用能を提供するに際して効果的」であり、「衝撃粉砕により長い針状からより均一な結晶形へ、セレコキシブの結晶形態を変質させ、ブレンド目的により適するようになるが、長い針状の結晶はエアージェットミルでは残存する傾向が高いと仮定される。」と記載されているところ、己14及び己15には、医薬化合物を粉砕してD90やD95を小さくしてバイオアベイラビリティーの改善をするにあたり、ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕することが記載されている(己14-g、己15-c、己15-d)。
そうすると、仮に、エアージェットミルが粒子の最大長におけるD90を30μmとするのに適当ではなかったとしても、甲8発明のセレコキシブ結晶の粒子サイズを小さくするにあたりピンミルのような衝撃式ミルで粉砕することは、当業者が容易に採用し得る粉砕手段の一つであり、それにより、粒子の最大長におけるD90が30μmであるセレコキシブとすることは、当業者が容易に行うことである。
したがって、上記mの主張は、採用することができない。
o 参加人日本ケミファについて
被請求人は、参加人日本ケミファについて、以下のとおり主張している。
被請求人と参加人日本ケミファの間では、甲8を主引例とする進歩性欠如の無効理由は理由がないとした別件審決が確定しているから、合議体は、日本ケミファに対し、甲8を主引例とする進歩性欠如について弁駁書の提出や証拠調べ通知書で意見を求めるべきでなかったし、本件特許無効審判事件において日本ケミファが主張している甲8を主引例とする進歩性欠如に関する主張は、一切考慮すべきでない。(意見書35頁17行~37頁最下行、上申書29頁最下行~31頁最下行)
p 上記oの主張について検討する。
被請求人は、合議体は、日本ケミファに対し、甲8を主引例とする進歩性欠如について弁駁書の提出や証拠調べ通知書で意見を求めるべきでなかったと主張するが、被請求人から令和6年5月9日に訂正請求書及び上申書が提出されたので、請求人及び参加人にそれらの副本を送付して、訂正請求及び上申に対する意見があれば弁駁書を提出する機会を与え、証拠調べ通知書では、職権に基づく証拠調べを実施したので、その結果を当事者及び参加人に通知して意見を申し立てる機会を与えたのであり、甲8を主引例とする進歩性欠如について意見を求めたものではない。無効理由は甲8を主引例とする進歩性欠如以外にもあるから、上記機会を与えることは必要な手続である。
そして、本件特許無効審判における甲8を主引例とする進歩性欠如の判断では、参加人日本ケミファの主張を取り上げているものでも、参加人日本ケミファが提出した丙号証を採用しているものでもない。
したがって、上記oの主張は、採用することができない。
q 以上のとおりであるから、被請求人の主張は、いずれも採用することができない。
カ 小括
よって、訂正発明1は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)訂正発明2について
ア 訂正発明2と甲8発明との対比
訂正発明2と甲8発明の一致点及び相違点は、上記2(3)のとおりの一致点及び相違点8-1、相違点8-2’、相違点8-3である。
イ 相違点8-1の判断
相違点8-1が、当業者が容易になし得たことは、上記(1)イのとおりである。
ウ 相違点8-2’、相違点8-3の判断
相違点8-2’は、相違点8-2におけるD90の値「30μm」が「30μm未満」であるところ、上記(1)ウ(ア)cのとおり、薬物のD90の具体的な数値として、甲61、62、己14には、それぞれ「10μm以下」、「25μmよりも小さい」、「約35ミクロン未満」が記載されているから、薬物のD90として「30μm未満」は、ごく通常の値にすぎないことが理解できる。
そして、その余の点は、上記(1)ウ(イ)と同様の理由により、甲8発明において、相違点8-2’及び相違点8-3に係る構成のものとすることは、本件優先日当時の周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に行うことである。
エ 訂正発明2の効果について
訂正発明2の効果は、訂正発明1の効果と同様に、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識から当業者が予測し得る程度のものである。
オ 小括
以上のとおり、訂正発明2は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)訂正発明4について
訂正発明4は、訂正発明2におけるD90の値「30μm未満」を「25μm未満」とするものである。
そして、上記(2)ウと同様に、薬物のD90の具体的な数値として、甲61、62、己14には、それぞれ「10μm以下」、「25μmよりも小さい」、「約35ミクロン未満」が記載されているから、薬物のD90として「25μm未満」は、ごく通常の値にすぎないことが理解できる。
そして、その余の点は、上記(2)と同様の理由により、訂正発明4は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)訂正発明5について
ア 訂正発明5と甲8発明との対比
訂正発明5は、訂正発明1において、「前記同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有する」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明5と甲8発明を対比すると、訂正発明1における相違点8-1~相違点8-3に加えて、以下の点でも相違する。
[相違点8-4]訂正発明5は、「同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有する」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-4の判断
上記(1)ウ(イ)のとおり、難溶性薬物である甲8発明のセレコキシブ結晶について、溶出速度とバイオアベイラビリティーの改善を目的として、粉砕によって粒子径を小さくして「微粒子セレコキシブ」として、「界面活性剤」を存在させた結果、バイオアベイラビリティーが改善されるところ、改善されたバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)を、「同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較」する「相対的生物学的利用能」で特定することは、当業者が適宜行い得ることであり、その値として約50%乃至約55%程度は通常の範囲にすぎない。
したがって、甲8発明において、「同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有する」ものとすることは、当業者が容易に行うことであり、その効果も予測し得ないものとはいえない。
そして、その余の点は、上記(1)のとおりである。
ウ 小括
したがって、訂正発明5は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)訂正発明7について
訂正発明7は、訂正発明1、2、4、5において、「前記投与量単位は、錠剤、ピル、硬質若しくは軟質カプセル、ロゼンジ、サシェイ、又はパステルから選択される」ことを特定する発明である。
しかしながら、甲8発明は、「錠剤又はカプセル剤の形態の経口投薬単位」であるから、訂正発明7の「投与量単位は、錠剤、ピル、硬質若しくは軟質カプセル、ロゼンジ、サシェイ、又はパステルから選択される」ものに相当する。
したがって、訂正発明7と甲8発明の間に新たな相違点は、存在しない。
そして、その余の点は、上記(1)のとおりである。
よって、訂正発明7は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)訂正発明8について
訂正発明8は、訂正発明7において、「前記賦形剤は薬剤学的に許容な希釈剤、崩壊剤、結着剤、加湿剤及び潤滑剤から選択される単位投与量のカプセル又は錠剤の形態である」ことを特定する発明である。
しかしながら、甲8発明における「投与経路に適切な1つ又はそれ以上の補助剤」は、訂正発明8の「薬剤学的に許容な希釈剤、崩壊剤、結着剤、加湿剤及び潤滑剤から選択される」「賦形剤」に相当し、甲8発明における「錠剤又はカプセル剤の形態の経口投薬単位」は、訂正発明8の「単位投与量のカプセル又は錠剤の形態」に相当する。
したがって、訂正発明8と甲8発明の間に新たな相違点は、存在しない。
そして、その余の点は、上記(1)、(5)のとおりである。
よって、訂正発明8は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)訂正発明9について
ア 訂正発明9は、訂正発明8において、「(a)前記製薬組成物の約10質量%乃至約85重量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な希釈剤と、
(b)前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な崩壊剤と、及び
(c)前記製薬組成物の約0.75質量%乃至約15質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な結着剤とを含有する」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明9と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-5]訂正発明9は、「(a)前記製薬組成物の約10質量%乃至約85重量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な希釈剤と、
(b)前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な崩壊剤と、及び
(c)前記製薬組成物の約0.75質量%乃至約15質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な結着剤とを含有する」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-5の判断
甲8には、「本発明には、1つまたはそれ以上の非毒性の薬剤学的に許容しうる担体および/または希釈剤および/または補助剤(集合的に本明細書では「担体」物質と呼ぶ)と一緒にした、そして必要であれば、他の活性成分と一緒にした、1つまたはそれ以上の式Iの化合物を含む薬剤組成物の群も含まれる。」と記載されているから(甲8-e)、甲8には、甲8発明の製薬組成物が、1つまたはそれ以上の非毒性の薬剤学的に許容しうる希釈剤を含んでいても良いことが記載されている。
また、甲8には、「治療目的のために、本発明の化合物は普通、必要な投与経路に適切な1つまたはそれ以上の補助剤と合わせられる。経口投与される場合本化合物は、ラクトース、ショ糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合して、次に投与に便利なように錠剤化またはカプセル化される。」と記載されているところ(甲8-h)、デンプン粉末(スターチ)、アラビアゴム、ポリビニルピロリドンは、崩壊剤や結着剤であるから(乙11-a、乙14-b)、甲8には、甲8発明の製薬組成物が、崩壊剤と結着剤を含んでいても良いことが記載されている。
したがって、甲8発明において、希釈剤、崩壊剤、結着剤を好ましい量で添加することにより、「(a)前記製薬組成物の約10質量%乃至約85重量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な希釈剤と、
(b)前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な崩壊剤と、及び
(c)前記製薬組成物の約0.75質量%乃至約15質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な結着剤とを含有する」ものとすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)、(5)、(6)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明9は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)訂正発明10について
ア 訂正発明10は、訂正発明9において、「前記製薬組成物の約0.4質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含有する」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明10と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-6]訂正発明10は、「製薬組成物の約0.4質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含有する」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-6の判断
上記(1)ウ(イ)のとおり、甲8発明においてセレコキシブの溶出性とバイオアベイラビリティーの改善を目的として「界面活性剤」を存在させるにあたり、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを選択することは、当業者が容易に行うことであるところ、溶出性とバイオアベイラビリティーの改善に必要十分な量の界面活性剤、すなわち、加湿剤の含有量を検討することで、甲8発明において、「製薬組成物の約0.4質量%乃至約10質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含有する」ものとすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)、(5)~(7)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明10は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)訂正発明11について
ア 訂正発明11は、訂正発明9において、「前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有する」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明11と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-7]訂正発明11は、「前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有する」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-7の判断
甲8には、「治療目的のために、本発明の化合物は普通、必要な投与経路に適切な1つまたはそれ以上の補助剤と合わせられる。経口投与される場合本化合物は、ラクトース、ショ糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合して、次に投与に便利なように錠剤化またはカプセル化される。」と記載されているところ(甲8-h)、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムは、潤滑剤であるから(甲92-f、乙11-a)、甲8には、甲8発明の製薬組成物が、潤滑剤を含んでいても良いことが記載されている。
したがって、甲8発明において、潤滑剤を好ましい量で添加することにより、「前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有する」ものとすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)、(5)~(7)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明11は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)訂正発明12について
ア 訂正発明12は、訂正発明10において、「前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有する」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明12と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-8]訂正発明12は、「前記製薬組成物の約0.2質量%乃至約8質量%の量の一つ以上の薬剤学的に許容な潤滑剤をさらに含有する」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-8の判断
相違点8-8は、相違点8-7と同じであるから、上記(9)イと同様の理由により、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)、(5)~(7)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明12は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(11)訂正発明13について
ア 訂正発明13は、訂正発明9において、「(a)前記希釈剤はラクトースを含み、(b)前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含み、(c)前記結着剤はポリビニルピロリドンを含む」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明13と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-9]訂正発明13は、「(a)前記希釈剤はラクトースを含み、(b)前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含み、(c)前記結着剤はポリビニルピロリドンを含む」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-9の判断
甲8には、「治療目的のために、本発明の化合物は普通、必要な投与経路に適切な1つまたはそれ以上の補助剤と合わせられる。経口投与される場合本化合物は、ラクトース、ショ糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合して、次に投与に便利なように錠剤化またはカプセル化される。」と記載されているから(甲8-h)、甲8には、ラクトースやポリビニルピロリドンを含んでいても良いことが記載されている。
また、希釈剤としてラクトース(乳糖)、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム、結着剤としてポリビニルピロリドン(ポビドン)は、いずれも本件優先日当時、周知慣用の添加剤である(甲90-d、甲92-f、乙11-a、乙14-a、b)。
加えて、甲90には、ラウリル硫酸ナトリウムとクロスカルメロースナトリウムを併用した例が記載され(甲90-g)、己14には、ラウリル硫酸ナトリウムとクロスカルメロースナトリウムを併用した例(己14-hの製造例13)やラウリル硫酸ナトリウムとラクトースを併用した例(己14-hの製造例16、23~25)が記載され、甲62には、ラクトースと架橋化カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)を併用した例(甲62-d)が実際に記載されている。
したがって、甲8発明において、「(a)前記希釈剤はラクトースを含み、(b)前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムを含み、(c)前記結着剤はポリビニルピロリドンを含む」ものとすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)、(5)~(7)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明13は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(12)訂正発明15について
ア 訂正発明15は、訂正発明13において、「ステアリン酸マグネシウムを含有する潤滑剤をさらに含む」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明15と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-10]訂正発明15は、「ステアリン酸マグネシウムを含有する潤滑剤をさらに含む」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-10の判断
本件優先日当時、ステアリン酸マグネシウムは、周知慣用の滑沢剤(潤滑剤)であり(甲92-f、乙11-a)、上記(9)イのとおり、甲8にも、ステアリン酸マグネシウムを含んでいても良いことが記載されている。
加えて、己14には、ラウリル硫酸ナトリウム、架橋化カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、ステアリン酸マグネシウムを併用した例が実際に記載され(己14-hの製造例13)、甲62には、ラクトース、架橋化カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)、ステアリン酸マグネシウムを併用した例(甲62-d)が実際に記載されている。
したがって、甲8発明において、「ステアリン酸マグネシウムを含有する潤滑剤をさらに含む」ものとすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)、(5)~(7)、(11)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明15は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(13)訂正発明17について
ア 訂正発明17は、訂正発明1、2、4、5、7~13、15において、「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患を治療するために、前記製薬組成物は被験者に好ましくは1日に1回又は2回経口投与する」ことを特定する発明である。
したがって、訂正発明17と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-11]訂正発明17は、「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患を治療するために、前記製薬組成物は被験者に好ましくは1日に1回又は2回経口投与する」ものであるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-11の判断
甲8には、甲8記載の化合物は、シクロオキシゲナーゼIIを阻害する化合物であると記載され(甲8-b)、具体的に実施例2の化合物がシクロオキシゲナーゼIIを阻害したことも記載されているから(甲8-f)、甲8発明の製薬組成物を「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患を治療するため」に用いることは容易に行うことである。
その際、甲8には、「この1日用量は、1日に1~4回の投薬で投与できる。」と記載されているから(甲8-g)、より好ましい用量を検討して、「被験者に好ましくは1日に1回又は2回経口投与する」ものとすることは当業者の設計事項にすぎない。
したがって、甲8発明において、「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患を治療するために、前記製薬組成物は被験者に好ましくは1日に1回又は2回経口投与する」ものとすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)~(12)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明17は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(14)訂正発明18について
ア 訂正発明18は、訂正発明1、2、4、5、7~13、15において、「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患の治療及び/又は予防処置での薬剤調製のため」の「使用」であることを特定する発明である。
したがって、訂正発明18と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-12]訂正発明18は、「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患の治療及び/又は予防処置での薬剤調製のため」の「使用」の発明であるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-12の判断
上記(13)のとおり、甲8には、甲8記載の化合物は、シクロオキシゲナーゼIIを阻害する化合物であると記載され(甲8-b)、具体的に実施例2の化合物がシクロオキシゲナーゼIIを阻害したことも記載されている(甲8-d)。また、甲8発明の「製薬組成物」は、当然、薬剤調製されたものであると認められる。
したがって、甲8発明において、「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤による治療を必要とする被験者における病状又は疾患の治療及び/又は予防処置での薬剤調製のため」の「使用」の発明とすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)~(13)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明18は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(15)訂正発明19について
ア 訂正発明19は、訂正発明18において、「前記状態又は疾患は、リウマチ様関節炎、骨関節炎又は痛み」であることを特定する発明である。
したがって、訂正発明19と甲8発明を対比すると、さらに、以下の点で相違する。
[相違点8-13]訂正発明19は、「前記状態又は疾患は、リウマチ様関節炎、骨関節炎又は痛み」であるのに対し、甲8発明では、かかる特定はなされていない点。
イ 相違点8-13の判断
甲8には、甲8記載の化合物が、疼痛、関節炎、慢性関節リウマチなどを治療するのに有用であることが記載されている(甲8-b)。
したがって、甲8発明において、「前記状態又は疾患は、リウマチ様関節炎、骨関節炎又は痛み」とすることは、当業者が容易に行うことである。
そして、その余の点は、上記(1)~(14)のとおりである。
ウ 小括
以上のとおり、訂正発明19は、甲8発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(16)まとめ
よって、訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19は、甲8に記載された発明、甲8の記載事項、及び周知技術又は技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効理由IVは、理由がある。
5 無効理由II(実施可能要件違反)について
実施可能要件を定めた特許法第36条第4項は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る物を生産し、使用することができる程度のものでなければならない。また、方法の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る方法を使用することができる程度のものでなければならない。
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1は、「製薬組成物」という物の発明であるから、訂正発明1の製薬組成物を製造することができる程度に、本件明細書の発明の詳細な説明(以下単に「発明の詳細な説明」ともいう。)が記載されているか否かを検討する。
イ 発明の詳細な説明には、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布」を有する微粒子セレコキシブについて、以下の事項が記載されている。
「【0134】
セレコキシブ組成物の調製方法
本発明は、セレコキシブを含む製薬組成物の調製方法にも関する。特に、本発明は、微粒子の形態であるセレコキシブを含む製薬組成物の調製方法に関する。・・・
【0135】
湿式顆粒化は、本発明の製薬組成物の好ましい調製方法である。湿式顆粒化過程にて、(必要ならば、一つ又はそれ以上のキャリア材料とともに)セレコキシブは先ず粉砕される若しくは所望の粒子サイズに微細化される。さまざなま粉砕器若しくは破砕器が利用することが可能であるが、セレコキシブのピンミリングのような衝撃粉砕により、他のタイプの粉砕と比較して、最終組成物に改善されたブレンド均一性がもたらせる。例えば、液体窒素を利用してセレコキシブを冷却することは、セレコキシブを不必要な温度へ加熱させることを回避するために、粉砕中に必要なことである。前記にて議論したように、上記粉砕工程中にD90粒子サイズを約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは約25μm以下に小さくすることは、セレコキシブの生物学的利用能を増加させるためには重要である。」
「【0190】
粉砕
セレコキシブは、反対に回転するディスクによる衝撃式ピンミルにて混合された。約8960rpm/5600rpm(回転rpm/反対回転rpm)乃至112000rpm/5600rpmの範囲にあるミル速度にて、粒子サイズは比較的狭い範囲(D90が30μm若しくはそれ以下)内で変化し、ミル速度はバルクドラック微粉化過程には厳密には重要でないことを示唆した。図2は好ましい実施例を示す工程系統図を示し、セレコキシブ出発物質は、キャリア材料とのブレンドに先立ち、衝撃式ミルにて、好ましくはピンミルにて粉砕される。」
ウ 上記イの記載によれば、セレコキシブを粉砕することで、「粒子の最大長において、セレコキシブ粒子のD90が30μmである粒子サイズの分布」を有する微粒子セレコキシブを製造できることが理解でき、それにより、訂正発明1の製薬組成物を製造できることを当業者は理解できる。
エ 次に、訂正発明1の製薬組成物を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が記載されているか否かを検討する。
発明の詳細な説明には、本件出願日前の技術常識として、セレコキシブは、シクロオキシゲナーゼ-2の選択的阻害剤であり、慢性関節リウマチ及び骨関節炎と関連した他の状態、疾患、病的状態を治療するために使用できることが、種々の本件出願前の公知文献をあげて記載されている(【0001】~【0007】)。
したがって、セレコキシブを含む訂正発明1の製薬組成物が医薬用途に使用できることは、発明の詳細な説明の記載から理解できる。
オ 以上によれば、発明の詳細な説明は、当業者が、訂正発明1の製薬組成物を製造し、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1におけるD90の値を30μm未満としたものであり、上記(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が、訂正発明2の製薬組成物を製造し、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(3)訂正発明4について
訂正発明4は、訂正発明2におけるD90の値を25μm未満としたものであり、上記(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が、訂正発明4の製薬組成物を製造し、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(4)訂正発明5について
ア 訂正発明5は、訂正発明1において「前記同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有する」ものとするものである。
イ 発明の詳細な説明の【0021】には、「本発明の一つの実施例では、経口投与されると、各経口運搬可能な投与量単位は、等量のセレコキシブを含有するセレコキシブの経口運搬された溶液と比較して、約50%以上、好ましくは70%以上の相対的な生物学的利用能を有する。」と記載され、本件明細書の例11-2には、組成物Aの生物学的利用能が、メス犬においては31.2±2.9(表11-2C)で、オス犬においては49.4±12.0(表11-2D)であったことが記載されており、これらの各値について、それぞれ同じ表に記載された組成物Eの数値(溶液データ)(62.4±9.4、89.4±4.5)に対する割合を求めると、約50%(メス犬に対する値)及び約55%(オス犬に対する値)となることが記載されている。
ウ 上記イの記載によれば、「前記同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有する」ものを製造できることが理解できる。
エ そうすると、上記(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が、訂正発明5の製薬組成物を製造し、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(5)訂正発明7~13、15、17~19について
訂正発明7~13、15、17~19は、訂正発明1、2、4、5について、投与量単位の形態、組成物を構成する成分、当該成分の含有割合、組成物の用途等を特定した物の発明又は対応する方法の発明であるが、発明の詳細な説明の記載及び技術常識からみて、(1)~(4)と同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が、訂正発明7~13、15、17の製薬組成物を製造し、使用することができ、訂正発明18、19の方法を使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(6)請求人側の主張について
ア 参加人日本ケミファの主張する無効理由II(実施可能要件違反)について
(ア)参加人日本ケミファの主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年6月27日提出)13頁11行~16頁最下行)
a 本件明細書に記載された衝撃式ピンミルの実施形態のみでは、衝撃式ピンミル以外の粉砕機を用いる場合に「再現性をもって比較的狭い範囲(D90が30μm若しくは30μm未満)の粒子サイズのセレコキシブ粒子が得られること」について明確かつ十分に記載されているとはいえない。
b 本件明細書に記載された「平均粒子サイズ10乃至20μm」のセレコキシブを用いる実施形態のみでは、「平均粒子サイズ10乃至20μm」の範囲を外れるセレコキシブを用いる場合に実施ができるとはいえない。
(イ)参加人日本ケミファの主張について検討する。
a 発明の詳細な説明に記載された実施の形態における粉砕機が衝撃式ピンミルのみであるとしても、衝撃式ピンミルを用いることで、訂正発明の製薬組成物を製造し、使用することはできるから、訂正発明を実施することができるといえる。衝撃式ピンミル以外の実施形態が記載されていなければ、訂正発明を実施することができないという理由はない。
b 発明の詳細な説明において具体的に開示された実施の形態が、「平均粒子サイズ10乃至20μm」のセレコキシブのみであるとしても、訂正発明の製薬組成物を製造し、使用することはできるから、訂正発明の実施をすることができるといえる。
したがって、参加人日本ケミファの主張は、採用することができない。
イ 参加人日医工の主張する無効理由II(実施可能要件違反)について
(ア)参加人日医工の主張の概略は、以下のとおりである。
(上申書(令和6年6月26日提出)3頁4行~8頁7行)
本件明細書には、粉砕により訂正発明の微粒子セレコキシブを製造する方法以外の方法、例えば、再結晶などにより直接製造するなどの手段は一切開示がない。
そうであれば、訂正発明の微粒子セレコキシブは、必ず、粉砕により調製されるものであって、粉砕前の原料として、長く凝集した針状の結晶形態を有するセレコキシブを用いることが必須であると理解すべきであるが、長く凝集した針状の結晶形態を有するセレコキシブの入手手段は本件明細書に記載されておらず、当業者であれば入手可能であるともいえない。
したがって、当業者は長く凝集したセレコキシブを入手して訂正発明を実施することができないから、訂正発明は、実施可能要件を満たさない。
(イ)参加人日医工の主張について検討する。
訂正発明は、粉砕前の原料として、長く凝集した針状の結晶形態を有するセレコキシブを用いることを特定しておらず、長く凝集した針状の結晶形態のセレコキシブが入手可能かどうかは、訂正発明1の実施可能要件の判断を左右しない。
したがって、参加人日医工の主張は、採用することができない。
ウ 参加人ヘキサルの主張する無効理由II(実施可能要件違反)について
(ア)参加人ヘキサルの主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年7月16日提出)74頁下から6行~77頁下から7行)
発明の詳細な説明の記載からは、衝撃式ピンミル以外の粉砕機でどのようにすれば、D90を30μmとできるのか不明であり、各種のミルで粉砕することによりD90を30μmとする方法は記載されておらず、技術常識を示す証拠もないから、訂正発明は、実施可能要件を満たさない。さらに、訂正発明2、4について、D90を30μm未満又は25μm未満である製薬組成物全体について実施できるとはいえず、例えば、D90が20μmのセレコキシブ粒子とするには、どのように粉砕条件を設定すればよいのか不明であるから、訂正発明2、4は、実施可能要件を満たさない。
(イ)参加人ヘキサルの主張について検討する。
発明の詳細な説明に記載された実施の形態における粉砕機が衝撃式ピンミルのみであるとしても、衝撃式ピンミルを用いることで、訂正発明の製薬組成物を製造し、使用することはできるから、訂正発明を実施することができるといえる。衝撃式ピンミル以外の実施形態が記載されていなければ、訂正発明を実施することができないという理由はない。
そして、当業者であれば、粉砕条件等を適宜設定することにより、D90を例えば20μm等の30μm未満又は25μm未満とすることに過度の試行錯誤を要するとはいえない。
したがって、参加人ヘキサルの主張は、採用することができない。
(7)まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明は、当業者が、訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているから、無効理由II(実施可能要件違反)は、理由がない。
6 無効理由II(サポート要件違反)について
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。特に、所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明について、特許請求の範囲の記載が同号の要件に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から、当該発明に含まれる数値範囲の全体にわたり当該発明の課題を解決することができると認識できるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。
(1)訂正発明1について
ア 訂正発明1の課題に関連して、本件明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
発明の分野
本発明は、活性成分として、セレコキシブ(celecoxib)を含有する経口運搬可能な製薬組成物と、かかる組成物の調製方法と、かかる組成物を被験者へ経口投与することを含むシクロオキシゲナーゼ-2媒介疾患の治療方法と、医薬品製造における、かかる組成物の使用に関する。
・・・
【0008】
・・・セレコキシブは、水溶性媒体には異常なほど溶解しない。例えば、カプセル形態で経口投与させた場合、未調合のセレコキシブは胃腸管にて急速に吸収されるために、容易には溶解せず、分散もしない。加えて、長く凝集した針を形成する傾向を有する結晶形態を有する未調合のセレコシブは、通常、錠剤成形ダイでの圧縮の際に、融合して一枚岩の塊になる。他の物質とブレンドさせたときでも、セレコキシブの結晶は、他の物質から分離する傾向があり、組成物の混合中にセレコキシブ同士で凝集し、セレコキシブの不必要な大きな塊を含有する、非均一なブレンド組成物になる。・・・
【0009】
より詳細には、未調合のセレコキシブ又は他のセレコキシブ組成物に対して、一つ又はそれ以上の、以下の特性を有する経口運搬可能なセレコキシブ調合の必要性が存在する:
・・・
後述するように、セレコキシブ治療は、シクロオキシゲナーゼ-2媒介状態及び疾患の幅広い分野でその必要性が指摘され、潜在的に指摘されている。したがって、さまざまな適応に特別に作られた生物学的利用能特性を有する、ある範囲の調合を提供することには、非常に有益である。」
イ 上記アの記載によれば、訂正発明1の解決しようとする課題は、「未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物の提供」であると認められる。
ウ 上記課題に関係する技術常識として、本件出願日当時、(i)粉砕によって薬物の粒子径を小さくし、比表面積(有効表面積)を増大させることにより、薬物の溶出が改善されるが、他方で、難溶性薬物については、溶媒による濡れ性が劣る場合には、粒子径を小さくすると凝集が起こりやすくなり、有効表面積が小さくなる結果、溶解速度が遅くなることがあること、(ii)疎水性の難溶性物質の微粒子であっても、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなることは、周知技術又は技術常識であったものと認められる(上記4(1)ウ(ア)a)。
エ 上記技術常識を踏まえて、訂正発明が上記課題を解決できると認識できる記載が本件明細書に開示されているかどうかにつき、さらに検討する。
(ア)本件明細書の【0022】には「本発明の組成物は微粒子の形態のセレコキシブを包含する。セレコキシブの一次粒子は、例えば、製粉若しくは粉砕により、又は溶液から沈殿させて生成させ、凝集して二次の集合体粒子が形成される。本願で利用する用語「粒子サイズ」とは、特に本願で指摘しない限り、一次粒子の最長の大きさのことをいう。粒子サイズは、セレコキシブの臨床的効果に影響を与える重要なパラメータであると考えられる。よって、別の実施例では、発明の組成物は、粒子の最長の大きさで、粒子のD90が約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは約25μm以下であるように、セレコキシブの粒子分布を有する。通常、本発明の上記実施例によるセレコキシブの粒子サイズの減少により、セレコキシブの生物学的利用能が改良される。」、【0124】には「カプセル及び錠剤中でのセレコキシブの粒子サイズ カプセル若しくは錠剤の形で経口投与されると、セレコキシブ粒子サイズの減少により、セレコキシブの生物学的利用能が改善されるを発見した。したがって、セレコキシブのD90粒子サイズは約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは25μm以下である。例えば、例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される。加えて又はあるいは、セレコキシブは約1μmから約10μmであり、好ましくは約5μmから約7μmの範囲の平均粒子サイズを有する。」としており、セレコキシブの粒子サイズを減少させることで、セレコキシブの生物学的利用能が改善されることが記載されている。
(イ)また、本件明細書の【0024】の「セレコキシブと賦形剤とを混合するに先立ち、ピンミル(pin mill)のような衝撃式ミルでセレコキシブを粉砕させて、本発明の組成物を作製することは、改善された生物学的利用能を提供するに際して効果的であるだけでなく、かかる混合若しくはブレンド中のセレコキシブ結晶の凝集特性と関連する問題を克服するに際しても有益であることを発見した。ピンミルを利用して粉砕されたセレコキシブは、未粉砕のセレコキシブ又は液体エネルギーミルのような他のタイプのミルを利用して粉砕されたセレコキシブよりは凝集力は小さく、ブレンド中にセレコキシブ粒子の二次集合体には容易に凝集しない。減少した凝集力により、ブレンド均一性の程度が高くなり、このことはカプセル及び錠剤のような単位投与形態の調合において、非常に重要である。これは、調合用の他の製薬化合物を調合する際のエアージェットミルのような液体エネルギーミルの有用性に予期せぬ結果をもたらす。特定の理論に拘束されることなく、衝撃粉砕により長い針状からより均一な結晶形へ、セレコキシブの結晶形態を変質させ、ブレンド目的により適するようになるが、長い針状の結晶はエアージェットミルでは残存する傾向が高いと仮定される。」との記載から、粉砕により粒子サイズを減少させることについて、ピンミルのような衝撃式ミルを使用して長い針状からより均一な結晶とし、ブレンド目的により適するものとできることが記載されている。
(ウ)本件明細書の【0075】には「加湿剤 セレコキシブは水溶液にかなり溶解しにくい。したがって、本発明の製薬組成物は、任意であるが、好ましくは、キャリア材料として、一つ又はそれ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含む。かかる加湿剤は、水と親和性があるようにセレコキシブを維持させるように選択することが好ましく、その状態が製薬組成物の相対的生物学的利用能を改善させると考えられる。・・・」、【0076】には「ラウリル硫酸ナトリウムは好ましい加湿剤である。存在するならば、ラウリル硫酸ナトリウムは、組成物の全重量の対して、約0.25%から約7%、好ましくは約0.4%から約6%、より好ましくは約0.5%から約5%の量を含む。」として、セレコキシブは水溶液にかなり溶解しにくいために、水と親和性があるようにセレコキシブを維持させる加湿剤を含むことが好ましいこと、好ましい加湿剤はラウリル硫酸ナトリウムであること、そのような加湿剤を添加することにより相対的生物学的利用能を改善できることが記載されている。
(エ)例11-2では、犬モデルでの調合の相対的生物学的利用能の試験がされている。
組成物A、Bは、セレコキシブが微粉化され、ラウリル硫酸ナトリウムが添加されている(【0173】、【0174】、表11-2A)。本件明細書の【0124】に「・・・例えば、例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される。・・・」と記載されていることから、組成物A、BのD90粒子サイズは約30μmと認められる。他方、組成物Fは、未粉砕、未調合のセレコキシブの例11-1のデータを参考として入れたものである(【0172】)。そして、生物学的利用能は、メス犬について、組成物Fが16.9%であるのに対し、組成物Aは31.2%、組成物Bは24.9%であり(【0176】、(表11-2C)、オス犬について、組成物Fが16.9%であるのに対し、組成物Aは49.4%、組成物Bは54.2%である(【0177】、表11-2D)とされている。
組成物Fは、上記のとおり、例11-1のデータを参考として入れたものであり、組成物A、Bのデータと直接比較できるものではないが、D90粒子サイズを約30μmに減少させた組成物A、Bにおいて生物学的利用能が高い結果が示されていることは明らかである。
オ 以上を総合すると、訂正発明1は、粒子の最大長においてD90が30μmであるセレコキシブ粒子、及び加湿剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを含有することを特定するものであるところ、これは、(i)セレコキシブが長い針状の結晶形態を有することに対応するため、粉砕によって薬物の粒子径を小さくし、比表面積を増大させることにより、薬物の溶出を改善させるために、セレコキシブの粒子サイズを「D90が30μm」に減少させ、また、(ii)セレコキシブのような難溶性薬物については、粒子径を小さくすると凝集が起こりやすくなり、有効表面積が小さくなる結果、溶解速度が遅くなるが、界面活性剤が存在すると、微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され、粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなることから、セレコキシブに、界面活性剤同様水に親和性を持たせる加湿剤であるラウリル硫酸ナトリウムを含有させることとしたものである。そして、(iii)具体的な実験結果においても、D90粒子サイズを約30μmとし、ラウリル硫酸ナトリウムを含有させたセレコキシブ組成物が、未粉砕、未調合のセレコキシブよりも生物学的利用能が高い結果を示していることは明らかであるから(例11-2)、訂正発明1は、本件明細書の記載及び技術常識から、「未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物を提供する」という課題を解決できると当業者が認識できる範囲の発明であるといえる。
したがって、訂正発明1は、サポート要件に適合する。
(2)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1におけるD90の値を30μm未満としたものであり、訂正発明1と同様、「未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物の提供」を課題とするものである。
そして、訂正発明2がサポート要件に適合するものであることは、上記(1)で示した理由と同様である。
(3)訂正発明4について
訂正発明4は、訂正発明2におけるD90の値を25μm未満としたものであり、訂正発明2と同様、「未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物の提供」を課題とするものである。
そして、訂正発明4がサポート要件に適合するものであることは、上記(1)で示した理由と同様である。
(4)訂正発明5について
ア 訂正発明5は、訂正発明1に対して、「前記同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有すること」という発明特定事項を付加するものであるから、訂正発明5の解決しようとする課題は、訂正発明1の課題に加えて、「同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有すること」も含むといえる。
そうすると、訂正発明5の解決しようとする課題は、「未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物の提供」であって、「同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有する」製薬組成物の提供である。
イ 上記相対的な生物学的利用能に関して、本件明細書【0021】に「本発明の一つの実施例では、経口投与されると、各経口運搬可能な投与量単位は、等量のセレコキシブを含有するセレコキシブの経口運搬された溶液と比較して、約50%以上、好ましくは70%以上の相対的な生物学的利用能を有する。」と記載されている。また、本件明細書の例11-2には、セレコキシブ粒子のD90が約30μmでラウリル硫酸ナトリウムが含まれる組成物Aの生物学的利用能が、メス犬においては31.2±2.9(表11-2C)で、オス犬においては49.4±12.0(表11-2D)であったことが記載され、これらの各値について、それぞれ同じ表に記載された組成物Eの数値(溶液データ)(62.4±9.4、89.4±4.5)に対する割合を求めると、約50%(メス犬に対する値)及び約55%(オス犬に対する値)となる。
そうすると、訂正発明5は、本件明細書の記載及び技術常識から、訂正発明1の課題に加えて、「同じ投与量のセレコキシブを含有する経口運搬された溶液と比較して約50%乃至約55%であるセレコキシブの相対的な生物学的利用能を有する」製薬組成物の提供という課題を解決できると当業者が認識できる範囲の発明であるといえる。
したがって、訂正発明5は、サポート要件に適合する。
(5)訂正発明7~13、15、17~19について
ア 訂正発明7~13、15、17~19は、訂正発明1、2、4、5について、投与量単位の形態、組成物を構成する成分、当該成分の含有割合、用途等を特定した物の発明又は対応する方法の発明であり、訂正発明1と同様、未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物及びその使用(方法)を提供することを課題とするものであると認める。
イ 投与量単位の形態、組成物を構成する成分、当該成分の含有割合、組成物の用途等は、本件明細書に記載の事項(【0014】、【0026】、【0069】、【0071】、【0073】、【0077】、【0132】、【0133】、【0134】、【0054】)であり、上記(1)~(4)のとおり、訂正発明1、2、4、5がサポート要件に適合するものであることからすれば、訂正発明7~13、15、17~19も、サポート要件に適合する。
(6)請求人側の主張について
ア 請求人の主張する無効理由II(サポート要件違反)について
(ア)請求人の主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年6月27日提出)3頁1行~11頁13行)
a 訂正発明は、液体エネルギーミル(エアージェットミル等)により粉砕された粒子を含有する組成物も包含する発明である。一方、本件明細書には、液体エネルギーミルで粉砕されたセレコキシブはピンミルで粉砕されたセレコキシブよりも、凝集力が大きく、長い針状結晶が残存すると記載されている。凝集力が大きく、長い針状結晶が残存する液体エネルギーミルにより粉砕されたセレコキシブ粒子を含有する組成物が、例11-2と同様の生物学的利用能やブレンド均一性改善効果を奏すると理解することはできないから、訂正発明は、課題解決できると認識できない構成を含んでおり、サポート要件を充足しない。
b 二次判決の取消事由2(サポート要件に関する判断の誤り)の判断は、拘束力がなく、審理の対象となっていない発明について、請求人側に主張の機会がないままされたものであるから、審理にあたり参酌されるべきものではない。
(イ)請求人の主張について検討する。
a 上記(1)エ(イ)のとおり、本件明細書の【0024】には、ピンミルのような衝撃式ミルを使用して長い針状からより均一な結晶とし、ブレンド目的により適するものとできることが記載されているが、生物学的利用能の改善に関しては、セレコキシブの「粒子サイズを減少」させることで改善されることが記載されている(上記(1)エ(ア))。
そうすると、ピンミルのような衝撃式ミルは、より適するものではあるものの、生物学的利用能の改善のためには、ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕することが不可欠ということはなく、粉砕手段にかかわらず、セレコキシブの「粒子サイズを減少」させることで、生物学的利用能を改善し課題を解決できると認識できる。
さらに、本件明細書には、粉砕機について以下の事項が記載されている。
「【0135】
湿式顆粒化は、本発明の製薬組成物の好ましい調製方法である。湿式顆粒化過程にて、(必要ならば、一つ又はそれ以上のキャリア材料とともに)セレコキシブは先ず粉砕される若しくは所望の粒子サイズに微細化される。さまざなま粉砕器若しくは破砕器が利用することが可能であるが、セレコキシブのピンミリングのような衝撃粉砕により、他のタイプの粉砕と比較して、最終組成物に改善されたブレンド均一性がもたらせる。」
「【0183】
例13
以下の調合を有するカプセルを調製し、評価した。
・・・
セレコキシブは、連続した小さなスクリーンサイズ(#14、#20、#40)を備えた振動ミルを介して何回も粉砕した。上記混合物に添加したセレコキシブ粒子のD90粒子サイズは、約37μm以下であった。セレコキシブ、ラクトース及びポリビニルピロリドンを遊星型ミキサーボールにて混合し、水を用いて湿式顆粒化させた。その後顆粒を60℃でトレイにて乾燥させ、40メッシュスクリーンを通して粉砕し、V―ブレンダーにてステアリン酸マグネシウムにより湿潤化させてドソナー型カプセル化器にてカプセル化させた。カプセルのインビトロ溶解プロファイルは、USP2法と溶解媒体として15mMのリン酸緩衝液とを利用して求めた。15分後には約50%のインビトロ溶解が達成され、約30分後には95%以上のインビトロ溶解が達成された。
【0185】
上記の100mg単位投与量カプセルの吸収、分散、代謝及び排除プロファイルは、14C‐セレコキシブの懸濁液プロファイルと比較した。その研究は、健康なオスの被験者にて行ったオープンラベルで、ランダム交差研究であった。懸濁液は、5%のポリソルベート80を含むエタノールにセレコキシブを溶解させて調製し、投与に先立ち、その混合物をアップルジュースに添加した。懸濁液を受けた被験者はセレコキシブの300mg投与量を摂取した。カプセル形態のセレコキシブを受けた被験者は、全体でセレコキシブを300mg投与させるために、100mg投与量単にのカプセルを3つ受け入れた。カプセルからの吸収速度は、懸濁液のそれよりも遅かったが、AUC(0-48)にて測定した際には、懸濁液同等であった。平均結果を、以下の表13Bに報告する。セレコキシブは尿又は大便の何れかに、約2.56%のみの放射線投与にて殆ど代謝された。・・・」
上記のとおり、本件明細書には、ピンミルのような衝撃式ミルによりブレンド均一性がもたらされるが、他にも様々な粉砕器や破砕器が使用できることが記載されている。そして、例13には、振動ミルによって何回も粉砕してD90を約37μm以下としたセレコキシブ粒子を含むことで、懸濁液と同程度まで生物学的利用能を改善できることが記載されており、例13は、訂正発明の具体例ではないものの、ピンミル以外の手段でも、D90を約37μm以下に減少できること、それにより、生物学的利用能が改善できることが理解できる。
以上によれば、訂正発明の課題を解決するためには、ピンミルで粉砕することが不可欠ということはない。
b 本件審理にあたり、訂正発明に対して請求人側には主張の機会があり、実際に請求人は令和6年6月27日に弁駁書を提出し、訂正発明に対するサポート要件について主張している。そして、当該請求人の主張が採用できないことは、上記aのとおりであり、訂正発明がサポート要件に適合することは、上記(1)~(5)のとおりである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
イ 参加人日本ケミファの主張する無効理由II(サポート要件違反)について
(ア)参加人日本ケミファの主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年6月27日提出)5頁4行~13頁10行)
二次判決の判断は、サポート要件に違反しないためには、ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕することが不可欠か否かについてなされたものであり、ピンミルのような衝撃式ミルで粉砕することが特定されない発明がサポート要件違反に違反しないことを判断したものではない。したがって、訂正発明のサポート要件を判断するにあたっては、改めて、本件明細書の記載との関係で判断すべきである。
そして、本件明細書において「具体的な実験結果」として示されている例11の「微粉化」は、「平均粒子サイズ10乃至20μm」とすることであるから、セレコキシブ粒子の「平均粒子サイズ10乃至20μm」であることが課題解決のために必要であると理解できる。
したがって、セレコキシブ粒子の「平均粒子サイズ10乃至20μm」であることを特定しない訂正発明は、サポート要件を満たさない。
(イ)参加人日本ケミファの主張について検討する。
本件明細書には、平均粒子サイズについて以下の事項が記載されている。
「【0022】
・・・粒子サイズは、セレコキシブの臨床的効果に影響を与える重要なパラメータであると考えられる。よって、別の実施例では、発明の組成物は、粒子の最長の大きさで、粒子のD90が約200μm以下、好ましくは約100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、最も好ましくは約25μm以下であるように、セレコキシブの粒子分布を有する。通常、本発明の上記実施例によるセレコキシブの粒子サイズの減少により、セレコキシブの生物学的利用能が改良される。
【0023】
加えて、あるいは、本発明の組成物におけるセレコキシブ粒子は、約1μmから約10μm、好ましくは約5μmから約7μmの平均粒子サイズを有することが望ましい。」
上記記載によれば、訂正発明の課題である生物学的利用能の改善のためには、セレコキシブ粒子のD90を減少させることが必要であり、平均粒子サイズについては、加えて、特定の範囲とすると望ましいことが記載されているにすぎない。
また、例11では、セレコキシブ粒子の平均粒子サイズが10乃至20μmであることのみならず、上記(1)エ(エ)のとおり、本件明細書の【0124】によれば、例11では、セレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させることで生物学的利用能が改善されたことが記載されている。
そうすると、セレコキシブ粒子について、D90に加えてさらに「平均粒子サイズ10乃至20μm」であることを特定しなくとも、訂正発明の課題である生物学的利用能の改善が解決できると認識することができるといえる。
そして、訂正発明のサポート要件を本件明細書の記載との関係で改めて検討した結果、訂正発明がサポート要件に適合することは、上記(1)~(5)のとおりである。
したがって、参加人日本ケミファの主張は、採用することができない。
ウ 参加人日医工の主張する無効理由II(サポート要件違反)について
(ア)参加人日医工の主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年6月25日提出)8頁8行~17頁下から5行)
a 本件明細書の【0178】には、ラウリル硫酸ナトリウムの添加方法が、乾燥パウダーとして添加されるか、湿付与されるかにより、濡れ性が異なることが記載されているから、ラウリル硫酸ナトリウムの添加方法を特定しない訂正発明は、サポート要件を満たさない。
b サポート要件に関し、一次判決のした判示に拘束力が及ばないとした二次判決の判断は誤りであり、一次判決に拘束力があることを前提とすると、訂正発明は、D90の数値限定はあるものの、それ以上に粒度分布を特定しておらず、一次判決で判示された粒度分布が特定されていないとの問題は克服されていない。
したがって、訂正発明は、サポート要件を満たさない。
(イ)参加人日医工の主張について検討する。
a 本件明細書に、ラウリル硫酸ナトリウムが、乾燥パウダーとして添加されるか湿付与されるかにより濡れ性が異なることが記載されていても、訂正発明の課題を解決するためにはラウリル硫酸ナトリウムを湿付与することが不可欠であるという理由はない。
b また、D90の数値限定以外に粒度分布を特定しなくとも、セレコキシブ粒子について、最大長においてD90が30μmであること、加湿剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを含有することで、訂正発明の課題を解決できると認識できることは、上記(1)オのとおりである。
したがって、参加人日医工の主張は、採用することができない。
エ 参加人ヘキサルの主張する無効理由II(サポート要件違反)について
(ア)参加人ヘキサルの主張の概略は、以下のとおりである。
(弁駁書(令和6年7月16日提出)50頁9行~74頁下から7行)
a 本件明細書の【0124】には、「・・・例えば、例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される。・・・」と記載されているから、例11には、D90粒子サイズが約60μmの組成物と約30μmの組成物が記載されていることが前提であるところ、例11のいずれの組成物が、D90粒子サイズが約60μmの組成物であるのか推認させる記載はないから、【0124】の記載自体に信憑性はなく、この記載を根拠として例11-2の組成物A、BのD90が30μmであると推認することはできず、例11は、訂正発明がサポート要件を満たしていることの根拠にはならない。
また、仮に、例11-2の組成物A、BのD90が30μmであるとしても、課題を解決できると認識できるのは、アビセル101、ラウリル硫酸ナトリウム、セレコキシブを特定の量で含む組成物A、Bの具体的構成のみであり、組成物A、Bの具体的構成を特定しない訂正発明は、サポート要件を満たさない。
b 本件明細書の【0024】には、「・・・衝撃粉砕により長い針状からより均一な結晶形へ、セレコキシブの結晶形態を変質させ、ブレンド目的により適するようになるが、長い針状の結晶はエアージェットミルでは残存する傾向が高いと仮定される。」と記載されている。すなわち、本件明細書には、組成物A、Bは、ピンミルにより粉砕されることが例示されており、ピンミルによる粉砕では、他のタイプのミルによる粉砕より生物学的利用能が改善され、特に、エアージェットミルのような液体エネルギーミルによる粉砕では長い針状の結晶が残存し、有用性がないことが記載されているから、液体エネルギーミルにより粉砕された物を含む訂正発明は、サポート要件を満たさない。
c 本件明細書の【0172】には、「例11-1(組成物E)にて利用したのと同様なセレコキシブ溶液を、参考として用いた。加えて、カプセル(組成物F)中の未粉砕、未調合セレコキシブの例11-1のデータも、参考として入れた。」と記載されているから、例11-2の組成物Fのデータは、例11-1の16.9%との数値を参考として入れたものであり、例11-1と例11-2では、投与される犬の個体差により生物学的利用能は異なるから、例11-2の組成物A、Bの数値と、例11-1の組成物Fの数値を比較して、組成物A、Bの生物学的利用能が組成物Fの生物学的利用能よりも高いと認定することはできない。
したがって、例11を根拠として訂正発明がサポート要件を満たすとはいえない。
(イ)参加人ヘキサルの主張について検討する。
a 例11のいずれの組成物が、D90が約60μmの組成物であるのか不明であるとしても、本件明細書【0124】の「・・・例えば、例11に例示するように、出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると、組成物の生物学的利用能は非常に改善される。・・・」との記載からは、30μmに減少させると生物学的利用能が改善することが理解できるから、訂正発明は、サポート要件を満たすといえる。また、組成物A、Bの具体的構成を特定しなくとも、粒子の最大長においてD90が30μmであるセレコキシブ粒子及び加湿剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを含有することで、訂正発明の課題を解決できると認識できることは、上記(1)オのとおりである。
b 上記ア(イ)aのとおり、訂正発明の課題を解決するためには、ピンミルで粉砕することが不可欠ということはないから、液体エネルギーミルにより粉砕された物を含む訂正発明も、サポート要件を満たすといえる。
c 例11-1と例11-2では、投与される犬の個体差により生物学的利用能が異なるために、例11-2の組成物A、Bの数値と、例11-1の組成物Fの数値を直接比較することはできないとしても、組成物A、Bの生物学的利用能が組成物Fの生物学的利用能よりもある程度高いことは理解できるから、訂正発明は、サポート要件を満たすといえる。
したがって、参加人ヘキサルの主張は、採用することができない。
(7)まとめ
以上のとおり、訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19は、サポート要件に適合するから、無効理由II(サポート要件違反)は、理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、訂正発明1、2、4、5、7~13、15、17~19に係る特許は、無効理由IVによって無効とすべきものである。
本件訂正により請求項3、14、16は削除され、別件審決において認められた平成30年6月4日付け訂正により請求項6は削除されたので、本件特許の請求項3、6、14及び16に係る発明についての審判請求は不適法な請求であり、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下する。
審判費用は、参加により生じた費用も含め、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-800112