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特許無効審判

2020-800034

運動障害治療剤

審判番号
2020-800034
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2003-563566
登録番号
4376630
請求日
2020年03月31日
審決日
2021年10月27日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】東和薬品 株式会社
  • 【請求人代理人】早坂 巧
  • 【参加人】日医工 株式会社
  • 【参加人代理人】多田 央子
  • 【参加人代理人】神野 直美
  • 【参加人】共和薬品工業 株式会社
  • 【参加人代理人】多田 央子
  • 【参加人代理人】神野 直美
  • 【被請求人】協和キリン 株式会社
  • 【被請求人代理人】南条 雅裕
  • 【被請求人代理人】瀬田 あや子
  • 【被請求人代理人】原 秀貢人
審判長/審判官
  • 審判長 原田 隆興
  • 審判官 穴吹 智子
  • 審判官 藤原 浩子
分類
P1113.113-YAA(A61K) / P1113.121-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第126条第7項、特許法第134条の2第1項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4376630号発明「運動障害治療剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第4376630号の特許請求の範囲を、令和2年10月5日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第4376630号の請求項1に係る発明の特許についての無効審判請求は、成り立たない。 審判費用は、参加によって生じた費用を含めて請求人及び参加人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第4376630号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての出願は、2003年1月28日(パリ条約による優先権主張2002年1月28日、米国)を国際出願日として、特願2003-563566号として出願され、平成21年9月18日に特許権の設定登録がなされた。 そして、令和2年3月31日に、東和薬品株式会社(以下、「請求人」という。)から、本件特許の特許権者である協和発酵キリン株式会社(以下、「被請求人」という。)に対し、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効にすることを求める旨の本件特許無効審判請求がされた。 当該審判請求及び以後の主な手続の経緯は次のとおりである。 令和2年 3月31日付け 審判請求書及び甲第1号証~甲第6号証(請求人) 同年 8月27日付け 参加申請書(共和薬品工業株式会社) 同年 同月 同日付け 参加申請書(日医工株式会社) 同年10月 5日付け 答弁書及び乙第1号証~乙第9号証の2(被請求人) 同年 同月 同日付け 訂正請求書(被請求人) 同年11月26日付け 参加許否の決定(共和薬品工業株式会社) 同年 同月 同日付け 参加許否の決定(日医工株式会社) 令和3年 1月28日付け 弁駁書(請求人)及び甲第1号証の1、甲第7号証~甲第10号証 同年 同月 同日付け 弁駁書(共和薬品工業株式会社、日医工株式会社)及び丙第1号証~丙第18号証 なお、丙第7号証~丙第10号証は、令和3年4月27日に開催された口頭審理において、証拠の申出が撤回された。 同年 3月16日付け 審理事項通知書(当審) 同年 4月 5日付け 口頭審理陳述要領書(請求人) 同年 同月 同日付け 口頭審理陳述要領書(共和薬品工業株式会社、日医工株式会社)及び丙第19号証 同年 同月 6日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)及び乙第10号証~乙第18号証 同年 同月21日付け 上申書(被請求人)及び乙第19号証~乙第21号証 同年 同月27日 口頭審理 同年 5月10日付け 上申書(請求人)及び甲第11号証 以下では、請求人側参加人 共和薬品工業株式会社と、同参加人 日医工株式会社とを合わせて、「参加人ら」という。 第2 訂正請求について 1 訂正請求の趣旨 令和2年10月5日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。 2 訂正の内容 本件訂正の具体的な訂正事項は、以下の(1)~(3)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する」の直後に、「薬剤であって、」を挿入し、さらに、改行し、「前記薬剤は、パーキンソン病のヒト患者であって、L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者を対象とし、」を挿入し、さらに改行する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の「L-ドーパおよび/またはドーパミンアゴニスト療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させる」における「および/またはドーパミンアゴニスト」を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1の「L-ドーパおよび/またはドーパミンアゴニスト療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させる」の直前に「前記薬剤は、前記」を挿入し、直後に「ために前記患者に投与され、」を挿入し、さらに改行して、「前記薬剤は、前記L-ドーパ療法においてL-ドーパと併用して前記対象に投与される、」を挿入し、さらに改行して、「ことを特徴とする」を挿入する。 3 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、薬剤の適用対象患者を特定するものであり、訂正事項1による訂正後の請求項1の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、該訂正前の請求項1の発明のそれと同一である。 したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)には、パーキンソン病の患者がヒト患者であることについて明示の記載はないが、訂正前の請求項1に、「L-ドーパ療法および/またはドーパミンアゴニスト」における「ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させる」と記載されているし、また、本件特許明細書等の【0009】には、パーキンソン病の症状が進行すると、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動等の運動合併証が発症することが記載されている。さらに、実施例1(【0147】~【0156】)記載の多施設試験研究における被験者は、朝食とともに試験薬を服用し、運動日誌を記入し、来院する者であること、また、判定者が治験担当医師であるとされていることから、パーキンソン病のヒト患者であることは明らかである。そして、該ヒト患者は、「少なくとも1年間、L-ドーパ/カルビドパを服用しており」、「ウェアリング・オフ(wearing-off)をはじめとする運動合併症を起こしている」患者であるから、「L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者」であることもまた明らかである。 以上の記載によれば、本件特許明細書等には、(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する薬剤の適用対象が、訂正事項1における「パーキンソン病のヒト患者」、「L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者」であることが記載されていたといえる。 したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項1における「L-ドーパおよび/またはドーパミンアゴニスト療法」のうち、「ドーパミンアゴニスト療法」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (3)訂正事項3について 訂正前の請求項1には、「L-ドーパ療法および/またはドーパミンアゴニスト」における「ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させる薬剤」と記載されており、訂正前の請求項1の「薬剤」が、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために投与されるものであることが記載されているといえるから、訂正事項3は、該治療目的のために上記患者に投与されることを明示的に特定するものである。 そして、訂正前の請求項1の「薬剤」は、「L-ドーパおよび/またはドーパミンアゴニスト療法」における「ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させる」ものであり、ここで、「L-ドーパおよび/またはドーパミンアゴニスト療法」とは、パーキンソン病の治療薬である「L-ドーパおよび/またはドーパミンアゴニスト」を患者に投与する治療法であるから、訂正事項3は、訂正前の請求項1の「薬剤」について、「前記L-ドーパ療法においてL-ドーパと併用して前記対象に投与される」態様に特定するものであり、訂正事項3による訂正後の請求項1の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、該訂正前の請求項1の発明のそれと同一である。 したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 また、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (4)独立特許要件について 請求項1は特許無効審判が請求されている請求項であるから、上記訂正事項1~3に関して、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件に関する規定は適用されない。 (5)小括 以上によれば、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許第4376630号の特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、令和2年10月5日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、訂正後の請求項1に係る発明を、以下、「本件訂正発明」という。 「【請求項1】 (E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する薬剤であって、 前記薬剤は、パーキンソン病のヒト患者であって、L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者を対象とし、 前記薬剤は、前記L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために前記患者に投与され、 前記薬剤は、前記L-ドーパ療法においてL-ドーパと併用して前記対象に投与される、 ことを特徴とする薬剤。」 第4 請求人側の主張及び証拠方法 1 請求人の主張及び証拠方法 請求人が提出した審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書によれば、請求人は、特許第4376630号発明の、令和2年10月5日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明、すなわち本件訂正発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件訂正発明には、以下の無効理由1、2が存在する旨を主張し、証拠方法として甲第1号証~甲第11号証(以下、番号順に「甲1」~「甲11」という。)を提出している。 [無効理由1](新規性欠如) 本件訂正発明は、甲1に実質的に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。 よって、本件訂正発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 [無効理由2](進歩性欠如) 本件訂正発明は、甲1に記載された発明に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基いて、その優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、本件訂正発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (証拠方法) 甲1:Experimental Neurology, 2000, 162, pp.321-327 甲2:Annals of Neurology, April 1998, Vol.43, No.4 甲3:European Journal of Pharmacology, 2000, Vol.408, pp.249-255 甲4:医薬ジャーナル, 2001,Vol.37, S-1, pp.53-60 甲5:諏訪庸夫編,日本臨牀,Vol.60, No.1, pp.112-116, 2002-1, 2002年1月1日発行,株式会社 日本臨牀社 甲6:特許第2613355号公報 <以上、審判請求書に添付> 甲1の1:甲第1号証部分訳文 甲7:Neurology, 1999 Jun., Vol.52(9), p.1916 甲8:乙第1号証の部分訳文 甲9:Journal of Neurophysiology, 2001, Vol.86, No.1, p.249 甲10:乙第2号証の部分訳文 <以上、弁駁書に添付> 甲11:パーキンソン病治療ガイドライン2002,臨床神経学,Vol.42,No.5,pp.430-436, 484-493, 500, 2002年5月1日 <以上、上申書に添付> 2 参加人らの主張及び証拠方法 参加人らが提出した弁駁書(ただし、令和3年4月27日に開催された口頭審理において撤回した以下の(ア)~(エ)の主張を除く)、口頭審理陳述要領書によれば、参加人らは、本件特許に上記無効理由1、2が存在する旨を主張し、証拠方法として、丙第1~6、11~19号証(以下、番号順に「丙1」~「丙6」、「丙11」~「丙19」という。)を提出している。 「(ア)弁駁書18頁~19頁の「(1-1-2)甲第3号証からの容易想到性」全体。 (イ)同書19頁~20頁の「(1-1-3)・・甲第3号証と甲第4号証又は甲第5号証からの容易想到性」、同書22~23頁の「(1-2)予測外の顕著な効果は認められない」、同書24頁の「(1-3)小括」のうち、「甲第3号証」を主引例とする部分。 すなわち、同書19頁(1-1-3)の標題「又は甲第3号証」、19頁下から2行、20頁2行の「甲第3号証」、20頁4行の「又は甲第3号証」、22頁「(b)」の「及び甲第3号証」、24頁1行の「(甲第・・)3号証」及び24頁4行の「甲第3号証と甲第1号証」との記載に基づく主張。 (ウ)同書20~21頁の「(1-1-4)丙第7、8号証を考慮した甲第1号証からの容易想到性」全体。 (エ)同書24~28頁の「(2)丙第9号証、甲第5号証又は丙第7号証、丙第10号証、丙第11号証に対する進歩性の欠如」全体。」(口頭審理調書による。) (証拠方法) 丙1:特願2003-563566号面接記録 p.1/10,2/10,7/10 丙2:リーダーズ英和辞典第2版第3刷,“may”,p.1555,“moderate”,p.1615,1999年5月,株式会社研究社 丙3:生体の科学,53巻6号, pp.592-600, 20002年12月,公益財団法人 金原一郎記念医学医療振興財団 丙4:萬年徹編,図説内科診断治療講座 第15巻/パーキンソン症候群と類縁疾患,pp.229-231, 1989年11月25日,株式会社メジカルビュー社 丙5:BRAIN nursing 第9巻 春季増刊(通巻第102号) パーキンソン患者のケア・ポイント,1993年2月14日,株式会社メディカ出版 丙6:医薬ジャーナル,第36巻,増刊号 「新薬展望 2000」,pp.39-44,2000年1月1日,株式会社医薬ジャーナル 丙11:神田知之,「運動不全モデルにおけるアデノシンA2A受容体拮抗薬の行動薬理学的作用解析 1999年 神田知之」, 大阪大学,(薬学)博士論文, 第2章,pp.20-57 丙12:「KW-6002 第2部(モジュール2):CTDの概要(サマリー) 2.5 臨床に関する概括評価」, p.1, 4, 5, 12, 13, 協和発酵キリン株式会社 丙13:コムタン(R)(注:原文は○の中にR, 以下同じ。)錠100mg添付文書 2018年8月改訂 ノバルティスファーマ株式会社 丙14:オンジェンティス(R)錠25mg添付文書 2020年8月改訂 小野薬品工業株式会社 丙15:エクフィナ(R)錠50mg添付文書 2020年12月改訂 エーザイ株式会社 丙16:甲1の抄訳文 丙17:甲2の抄訳文 丙18:甲3の抄訳文 <以上、弁駁書に添付> 丙19:リーダーズ英和辞典第2版第3刷,“threshold”,p.2564, 1999年5月,株式会社研究社 <以上、口頭審理陳述要領書に添付> 第5 被請求人の主張及び証拠方法 被請求人が提出した答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書によれば、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない」、「審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、本件特許には上記無効理由1~2は存在しない旨を主張し、証拠方法として乙第1~21号証(以下、番号順に「乙1」~「乙21」という。)を提出している。 乙1:Antiparkinsonian effect of a new selective adenosine A2A receptor antagonist in MPTP-treated monkeys,Neurology, 1999,Vol.52, pp.1673-1677 乙2:Reversal of levodopa-induced motor fluctuations in experimental parkinsonism by NMDA receptor blockade,Brain Research,1995, Vol.701, pp.13-18 乙3:An algorithm (decision tree) for the management of Parkinson’s disease (2001):Treatment Guidelines,Neurology, 2001, 6月, Vol.56(Suppl 5),pp.S1-S88中pp.S1~S13の抜粋 乙4:Adenosine A2A receptor antagonist istradefylline reduces daily OFF time in Parkinson’s disease,Movement Disorders, 2013, Vol.28, No.8, pp.1138~1141 乙5:Istradefylline as monotherapy for Parkinson disease: results of the 6002-US-051 trial,Parkinsonism and Related Disorders, 2010, Vol.16, pp.16~20 乙6:A rationale for dopamine agonists as primary therapy for Parkinson’s disease,The Canadian Journal of Neurological Sciences, 1992, Vol.19, No.1(Supplement), pp.108-112 乙7:知財高裁平成25年7月24日判決(平成24年(行ケ)第10206号) 乙8:最高裁令和元年8月27日判決(平成30年(行ヒ)第69号) 乙9の1:「Preladenant as an Adjunctive Therapy With Levodopa in Parkinson Disease: Two Randomized Clinical Trials and Lessons Learned」, JAMA Neurology, 2015, 12月, Vol.72, No.12, pp.1491~1500 乙9の2:ニュースサイトであるFIERCE BIOTECHのニュース記事 Merck Provides Update on Phase III Clinical Program for Preladenant, the Company's Investigational Parkinson's Disease Medicine, 2013年5月23日, Questex Media Group LLC(FIERCE BIOTECHの運営企業体) https://www.fiercebiotech.com/biotech/merck-provides-update-on-phase-iii-clinical-program-for-preladenant-company-s <以上、答弁書に添付> 乙10:冨山教授見解書,令和3年3月31日,弘前大学大学院 医学研究科脳神経内科学 冨山 誠彦 教授 乙11:黒川博士陳述書,令和3年3月24日,協和キリン株式会社 研究開発本部 中枢R&Dユニット 中枢神経研究所所長 黒川 昌子 博士 乙12:実験成績報告書,2001年3月31日,協和キリン株式会社 研究開発本部 中枢R&Dユニット 中枢神経研究所主任研究員 内田 真一 博士 乙13:神田知之,「運動不全モデルにおけるアデノシンA2A受容体拮抗薬の行動薬理学的作用解析 1999年 神田知之」,大阪大学,(薬学)博士論文, pp.58-67 乙14:萬年徹編,図説内科診断治療講座 15 パーキンソン症候群と類縁疾患,1989年,230~235頁,株式会社メジカルビュー社 乙15:国立国会図書館サーチによる、「異常運動疾患アンケート調査集計結果」に関する書誌情報,2021年,国立国会図書館 乙16:「パーキンソン病におけるlevodopa長期治療に伴う特殊症状-多変量解析を用いた検討-」,臨床神経学,1997, Vol.37, No.6, pp.469-475 乙17:A Double-Blind Crossover, Placebo- Controlled Study of the Adenosine A2A Antagonist Theophylline in Parkinson’s Disease,Clinical Neuropharmacology, Vol.25, No.1, pp.25-31, 2002年1月1日 乙18:Tolcapone improves motor function in parkinsonian patients with the “wearing-off” phenomenon: A double-blind, placebo-controlled, multicenter trial,NEUROLOGY,1998, Vol.50(Supplement 5), pp.S54~S59 <以上、口頭審理陳述要領書に添付> 乙19:コムタン(R)錠100mg添付文書 2018年8月改訂 ノバルティスファーマ株式会社 乙20:オンジェンティス(R)錠25mg添付文書 2020年8月改訂 小野薬品工業株式会社 乙21:エクフィナ(R)錠50mg添付文書 2020年12月改訂 エーザイ株式会社 <以上、上申書に添付> 第6 主な証拠の記載事項 1 甲号証の記載事項 甲1~甲7には、以下の記載がある。なお、原文が外国語で記載されているものについては、訳文を示す。 甲1 (甲1a) 「L-ドーパ又は選択的D1若しくはD2ドーパミンアゴニストとアデノシンA2AアンタゴニストKW-6002との併用は、抗パーキンソン活性を増強するがMPTP処置したサルにおいてジスキネジアは増強させない」(321頁 表題) (甲1b) 「新規の選択的アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKW-6002は、MPTP処置パーキンソンマーモセットにおいて、ジスキネジアを引き起こすことなしに運動障害を改善する。本研究において我々は、KW-6002がL-ドーパ又は選択的D1若しくはD2ドーパミン受容体アゴニストとの組合せにおいて、MPTP処置コモンマーモセットにおける抗パーキンソン活性を増強するか否かを検討した。KW-6002と選択的ドーパミンD2受容体アゴニストであるキンピロール又はD1受容体アゴニストであるSKF80723との組合せは、運動障害の相加的改善をもたらした。KW-6002と低投与量のL-ドーパとの組合せ投与もまた、運動障害における相加的改善をもたらし、自発運動活性を増大させた。抗パーキンソン活性を増強させるKW-6002の能力は、D1アゴニストとの組合せによるよりも、L-ドーパと、またキンピロールとの組合せで一層顕著であった。しかしながら、KW-6002は、抗パーキンソン応答の増強をもたらすにもかかわらず、予めL-ドーパに暴露させることでジスキネジアを示すようにしておいたMPTP処置コモンマーモセットにおいて、L-ドーパ誘発性のジスキネジアを増悪させなかった。KW-6002等のような選択的アデノシンA2A受容体アンタゴニストは、パーキンソン病治療において使用されるL-ドーパの投与量を低減させる一手段である可能性があり、そして単独療法として並びにドーパミン作動薬との組合せの双方において、当該疾患の治療のための新規のアプローチである可能性がある。」(321頁 要約) (甲1c) 「最近我々は、選択的アデノシンA2A受容体アンタゴニストKF17837が、ドーパミンアンタゴニストであるハロペリドール又はアデノシンA2A受容体アゴニストCGS21680によりマウスに誘発されたカタレプシー(強硬症)を低減させることを報告し(17)、アデノシンA2A受容体機能の阻害がパーキンソン病において治療的利益をもたらす可能性について示唆した。実際、それに続いて我々は、MPTP処置コモンマーモセットにおける運動障害をアデノシンA2A受容体アンタゴニストKW-6002が改善すること、及び不随意運動を示すようにL-ドーパで予め準備しておいたMPTP処置霊長類において、KW-6002による継続治療がジスキネジアを惹起しないことを報告した(25)。KW-6002は、MPTP処置霊長類において11時間以上にわたって運動障害の長時間持続する改善をもたらした(25)。」(322頁 左欄15~30行) (甲1d) 「本研究では、我々は、KW-6002が、MPTP処置コモンマーモセットに対し、追加の抗パーキンソン活性をもたらすか否か、あるいはL-ドーパとの組合せ又はドーパミンD1又はD2受容体アゴニストとの組み合わせで投与した場合に既に確立されているジスキネジアを惹起するか否かを検討した。」(322頁 左欄31~36行) (甲1e) 「方法 MPTP処置 本研究は、UKホームオフィスライセンスPPL 70/3563の下、UKの法的要求に従って実施された。 研究開始時に285~420 gで2~7年令であった雌雄の、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)を使用した。・・・動物を毎日2.0 mg/kg皮下の投与量のMPTPで5日間処置した(26)。MPTP処置に続いて、急性効果から動物を6~8週間にわたって回復させた。・・・行動試験に先立ち、MPTPへの曝露後6~8週から8カ月迄に、全ての動物が、基礎的自発運動活性(basal locomotor activity)の顕著な低下、より緩慢で協調に欠けた動き、身体の何らかの部位の異常な姿勢、並びに確認行動及び瞬目数の減少を示した。 ジスキネジアを誘発させるため、前報 (27) に従って、動物をL-ドーパ(12.5 mg/kg、 経口)及びカルビドパ(12.5 mg/kg、 経口、30分前)で毎日2回、21日間処置した。 運動障害率 訓練された観察者により一方向ミラーを通して観察することにより、動物を連続的にモニターした。MPTP処置及び薬理学研究の間、前報(26)に報告した判定スケールを用いて動物の運動障害をスコア化した。 自発運動活性の測定 自発運動活性は、動物のホーム・ケージと同一であるが水平方向に向けた8個セットの赤外光セルを備えたステンレス鋼のグリッド・ドアを備えた4個のアルミニウム・ケージ(50×60×70 cm)において、測定した。動物の動きによる光ビーム遮断回数を、Olivetti M290Sコンピュータを用いて記録した。・・・ 行動観察 常同行動の有無、運動性刺激又は阻害の程度、首捻りの頻度、著しい震え又は毛づくろい、口部運動、又は他の運動失調につき、動物を観察した。ジスキネジアの存在は、半定量的スコアリングシステム (27) を用いてスコア付けした。異常運動は、古典的に定義された基準に従って記述した。即ち:舞踏病 ― 速くランダムな振顫;アテトーゼ ― くねくねした捻じれた四肢運動;ジストニア ― 異常な維持姿勢;常同行動 ― 反復的で無目的又は半無目的運動。 薬剤 以下の薬剤を用いた。すなわち:MPTP(塩酸1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン;Research Biochemicals Inc. U.S.A.)、KW-6002〔(E)-1,3-ジエチル-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオン;協和発酵、東京、日本〕、L-ドーパ・・・、カルビドパ・・・、及びSKF80723・・・。」(322頁 左欄37行~右欄最終行) (甲1f) 「KW-6002によりもたらされる抗パーキンソン活性の持続 MPTP処置コモンマーモセットへのKW-6002の経口投与(10.0 mg/kg)は、基剤を投与した動物での観察に比べて、自発運動活性を約2倍に増大させ(図1A)、且つ運動障害を改善させた(図1B)。KW-6002のこれらの効果は、薬剤投与の7.5時間後まで明らかであったが、KW-6002による治療の24及び48時間後の動物観察時には運動障害の明らかな回復は見られなかった(図1A及び1B)。」(323頁 左欄22~最終行) (甲1g) 「 [図:0001403919000001.jpg] 図1.MPTP処置コモンマーモセットにおける自発運動活性及び運動障害に対するKW-6002の効果。(A) 6時間の合計自発運動活性。各データは平均合計自発運動カウントを示す(±標準誤差;n=4)。(B) 6時間の合計障害スコア。各データは、合計障害スコア(±標準誤差;n=4)。*P<0.05 対照(基剤治療群)との比較。」(323頁 図1) (甲1h) 「KW-6002とL-ドーパとの組合せの効果 閾値投与量のL-ドーパ(2.5 mg/kg)とカルビドパ(12.5 mg/kg)の経口投与は、自発運動活性と運動障害の、有意ではない回復をもたらした(図4A、及び4B)。対照的に、有効投与量のL-ドーパ(12.5 mg/kg)とカルビドパ(12.5 mg/kg)との経口投与は、有意な自発運動活性増大と運動障害の回復をもたらした(図4A、及び4B)。KW-6002(10.0 mg/kg、 経口、L-DOPAの90分前)とL-ドーパ(2.5 mg/kg、 経口)との組合せ投与は、自発運動活性と運動障害に対して有意な相加的応答をもたらした。KW-6002の投与の24時間後にL-ドーパを投与したときは、L-ドーパの作用はこれを単独で投与した場合に比較して増強することが観察された。しかしながら、KW-6002の投与の48時間後においては、L-ドーパの投与は、そのベースライン効果と違わない効果をもたらした。L-ドーパ単独又はKW-6002との組合せは、常同行動やジスキネジアを誘発しなかった。」(323頁 右欄下から5行~324頁右欄2行) (甲1i) 「ジスキネジアに対するKW-6002とL-ドーパの組合せの効果 L-ドーパ(12.5 mg/kg、 経口、2回/日)とカルビドパ(12.5 mg/kg、 経口、2回/日)との3週間の継続的投与はジスキネジアを誘発させ、それはL-ドーパの各投与後に再現された。閾値投与量(2.5 mg/kg、 経口)のL-ドーパの投与は、中等度のジスキネジアを誘発させた(図5)。KW-6002(10 mg/kg/日)とL-ドーパ(2.5 mg/kg)との5日間に亘る毎日の組合せ投与も、中等度のジスキネジアをもたらしたが、これはL-ドーパ単独によってもたらされるジスキネジアと異ならなかった。」(324頁 右欄3行~325頁 左欄3行) (甲1j) 「 [図:0001403919000002.jpg] 図4.MPTP処置コモンマーモセットにおける自発運動活性及び運動障害に対するKW-6002とL-ドーパとの組合の効果 (A) 基剤(vehicle)又はL-ドーパの投与後、示した各時間から6時間の合計自発運動活性。各データは、平均合計自発運動カウント(±標準誤差;n=4)を表す。(B) 基剤又はL-ドーパの投与後、示した各時間から6時間の合計障害スコア。各データは、平均合計障害スコア(±平均誤差;n=4)を表す。*P<0.05 対照(基剤-基剤治療群)との比較;+P<0.05L-ドーパ対照(基剤-L-ドーパ、2.5 mg/kg、治療群)との比較。」(325頁 図4) (甲1k) 「 [図:0001403919000003.jpg] 図5.ジスキネジアを起こすようにL-ドーパで処置されたジスキネジアに対するKW-6002とL-ドーパの5日間連日の組合せ投与の効果。ジスキネジアを誘発させるために、予め動物に、L-ドーパ(12.5 mg/kg、 経口、1日2回)及びカルビドパ(12.5 mf/kg、経口、1日2回)を21日間に亘って継続投与した。各データは、4匹の動物についての最大ジスキネジアスコアの平均(±標準誤差)を表す。*P<0.05 対照(基剤 ― 基剤治療群)との比較。#P <0.05 高投与量L-ドーパ(12.5 mg/kg 治療群)との比較。」(325頁 左欄 図5) (甲1l) 「閾値投与量のL-ドーパとの組合せでKW-6002を投与したとき、キンピロールとの組合せで観察されたのと同様の挙動応答がもたらされた。最初、L-ドーパとKW-6002を一緒に投与したとき、相加的と見られる応答をもたらしたが、 KW-6002の投与の24時間後においては、KW-6002それ自体は運動活性化をもたらしていなかったにも拘わらずL-ドーパの投与で挙動応答の増強がもたらされた。このことは、アデノシンA2A受容体の阻害を通じた線条体の間接出力経路の変調が、MPTP処置霊長類における運動障害を回復させる低投与量L-ドーパの能力を、有意に強化することを示している。」(326頁 右欄3~15行) (甲1m) 「重要なことに、ジスキネジアを呈するよう準備されたMPTP処置コモンマーモセットに、閾値投与量のL-ドーパと共にKW-6002を投与したとき、この薬剤の組合せによりもたらされる抗パーキンソン活性の増強にも拘わらず、観察される不随意運動の大きさは、L-ドーパのみでもたらされるものに比べて大きくなかった。このことは、パーキンソン病の治療において重要な意味を持つ、というのも抗パーキンソン活性の増強は、例えばCOMT阻害剤(5-8)の使用で通常起こるように、ジスキネジアの増強を伴うからである。」(326頁 右欄20~30行) (甲1n) 「結論として、アデノシンA2A受容体アンタゴニストは、単独療法としてのみならず、L-ドーパ及びドパミンアゴニスト薬剤との組み合わせで、パーキンソン病の有用な治療剤となる可能性がある。特に、“ウェアリング-オフ”及び“オン-オフ”応答変動を有する患者において、KW-6002のような化合物は、ジスキネジアを長引かせることなしに、“オン時間”を増加させることができる可能性がある。」(326頁 右欄40~最終行) 甲2 (甲2a) 「L-ドーパ療法によるパーキンソン病の治療は、薬効の喪失及びジスキネジアの発症を含む長期の合併症をもたらす。線条体中のアデノシンA2A受容体は、線条体淡蒼球系のGABA性出力ニューロンに選択的に局在しており、その様な問題を回避する可能性がある。新規アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKW-6002が、MPTP処置した霊長類における抗パーキンソン活性について検討された。KW-6002の経口投与は、MPTP処置コモンマーモセットにおける運動障害を用量依存的に回復させた。但しKW-6002は、全体的な自発運動活性を控えめにだけ増大させ、常同運動等のような異常運動は引き起こさなかった。運動障害を回復させるKW-6002の能力は、21日間にわたる毎日の反復投与で維持され、耐性は観察されなかった。KW-6002は、L-ドーパに予め曝露させることでジスキネジアを呈するよう準備しておいたMPTP処置霊長類において、ジスキネジアを殆ど又は全く誘発しなかった。これらの結果は、選択的アデノシンA2A受容体アンタゴニストが、運動亢進の発生やジスキネジアの誘発なしに障害を改善する、新しいクラスの抗パーキンソン病剤を代表することを示唆している。」(要約) (甲2b) 「結果 他には薬物に曝されていないMPTP処置マーモセットにおいて、KW-6002(0.5~100 mg/kg)の経口投与は、長く継続する(10時間まで)自発運動活性を用量依存的に増大させた(図1)。KW-6002(10 mg/kg 経口)は、基剤治療によるのに比べて約2倍の自発運動活性をもたらした。より高い投与量のKW-6002では、更なる自発運動活性の増大は見られなかった。このKW-6002(10 mg/kg)によってもたらされた自発運動活性の増大は、10~11時間まで持続した(図1)。」(508頁 右欄下から9行~510頁 左欄2行) (甲2c) 「 [図:0001403919000004.jpg] 図1.MPTP処置コモンマーモセットにおける自発運動活性に対するKW-6002の効果。(A)自発運動に対するKW-6002(10 mg/kg 経口)の効果の時間推移。各点は、1時間の平均自発運動カウント(±標準誤差、n=4)を表す。〇= 基剤治療群;●= KW-6002治療群。(B)自発運動活性に対するKW-6002(0.5~100 mg/kg 経口)の効果の用量応答性。各データは、12匹の動物毎の平均自発運動カウントを表す(±標準誤差、n=4)。*p <0.05 対照(基剤処置群)との比較。 図2.MPTP処置コモンマーモセット及びにおける自発運動活性に対するKW-6002又はL-ドーパの効果、並びに無処置及びMPTP処置コモンマーモセットの基礎自発運動活性。(A)MPTP処置コモンマーモセットの自発運動活性に対するKW-6002(10 mg/kg 経口)又はL-ドーパ(10 mg/kg 経口、ベンセラジド 2.5 mg/kg 経口を追加)の、並びに基剤治療正常コモンマーモセットの、自発運動活性の時間推移。各点は1時間の平均自発運動活性(±標準誤差、n=4)を表す。〇=基剤治療正常マーモセット;□=基剤治療―MPTP病変マーモセット;●=L-ドーパ治療群;■=KW-6002治療群。(B)基剤、KW-6002又はL-ドーパを投与されたMPTP処置マーモセットの、又は基剤を投与された正常マーモセットの、合計自発運動活性。各データは、2時間の平均自発運動カウント(±標準誤差、n=4)を表す。#p <0.05 無処置動物(基剤治療群)との比較。*p <0.05 MPTP処置対照群(基剤を投与されたMPTP処置マーモセット)との比較。 [図:0001403919000005.jpg] 」(509頁 図1、図2) (甲2d) 「KW-6002(0.5 mg/kg 経口)は、運動障害における長く持続する減少(10~11時間まで)を用量依存性に引き起こした(図3)。」(510頁 右欄4~6行) (甲2e) 「 [図:0001403919000006.jpg] 図3.MPTP処置コモンマーモセットにおける運動障害に対するKW-6002の効果。(A)運動障害に対するKW-6002(10 mg/kg 経口)の効果の時間推移。各点は、10分間の平均障害スコア(±標準誤差、n=4)を表す。〇=基剤治療群;●=KW-6002治療群。(B)運動障害に対するKW-6002(0.5~100 mg/kg 経口)の効果の用量依存性。各データは、10時間に亘る平均障害スコア(±標準誤差;n=4)を表す。*p <0.05 対照(基剤治療群)との比較。」(510頁 図3) (甲2f) 「L-ドーパ(10 mg/kg 経口、1日2回)とベンセラジド(2.5 mg/kg 経口、1日2回)の21日間の投与は、MPTP処置マーモセットにおいて、四肢及び体幹のジスキネジアを誘発した。・・・(略)・・・3週間のL-ドーパ治療の後、全ての動物が顕著なジスキネジアを示し、L-ドーパ治療により一貫して惹起させることができた。 KW-6002(10 mg/kg/日)の21日間の経口投与は、L-ドーパで準備したこれらのMPTP処置マーモセットにおいて、殆ど又は全くジスキネジアを誘発しなかった(図4)。」(510頁 右欄下から14行~511頁 左欄1行) (甲2g) 「 [図:0001403919000007.jpg] 図4.ジスキネジアを呈するようにL-ドーパで準備したMPTP処置コモンマーモセットにおける、ジスキネジアに対して 21日間に亘り毎日投与されたKW-6002の効果。動物は、ジスキネジアを誘発するように予めL-ドーパ(10 mg/kg 経口、1日2回)及びベンセラジド(2.5 mg/kg 経口、1日2回)を21日間投与された。各データは、4匹の動物についての平均最大ジスキネジアスコアを表す。*p <0.05 対照(基剤治療群)との比較。#p <0.05 L-ドーパ治療群との比較。」(511頁 図4) (甲2h) 「KW-6002の単回経口投与(10 mg/kg)は、MPTP処置マーモセットの自発運動活性の2倍の増強と、これに対応する減少を運動障害スコアにもたらした。21日間のKW-6002の反復投与(10 mg/kg 経口)は、MPTP処置マーモセットにおける自発運動活性と運動障害の何れに対するKW-6002の効果も減弱させなかった(図5)。この長期投与療法の1週間後の一時のKW-6002(10 mg/kg 経口)の投与は、再度、最初に観察されたのと同一の自発運動活性増強と障害スコア減少とをもたらした(図5)。」(511頁 左欄4行~右欄7行) (甲2i) [図:0001403919000008.jpg] 図5.MPTP処置コモン・マーモセットの自発運動活性(A)及び運動障害(B)に対する、21日間のKW-6002長期投与の効果。KW-6002(10 mg/kg 経口)は1日1回投与された。各データは、12時間の平均自発運動活性(A、±標準誤差;n=4)又は10時間に亘る平均障害スコア(B、±標準誤差;n=4)。*p <0.05 対照(基剤処置群)との比較。」(511頁 図5) (甲2j) 「本研究の結果は、アデノシンA2A受容体アンタゴニストが、パーキンソン病患者の初期治療、並びにL-ドーパ治療によって惹起され確立されたジスキネジアを有する患者において、特に有用である可能性があることを示唆している。」(512頁 右欄14~18行) (甲2k) 「本研究は、アデノシンA2A受容体アンタゴニストが、MPTP-処理霊長類においてジスキネジアを誘導することなく抗パーキンソン病活性を発揮することを初めて示すものである。後続の臨床試験でKW-6002が抗パーキンソン病活性を発揮すれば、アデノシンA2A受容体アンタゴニストはパーキンソン病治療の新しい非ドーパミンのアプローチを提供する可能性がある。」(512頁 右欄28~最終行) 甲3 (甲3a) 「アポモルヒネ又はL-ドーパ(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)により誘発される回転運動に対する新規のアデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKF17837・・・及びKW-6002((E)-1,3-ジエチル-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2.6-ジオン)の効果を、片側6-ヒドロキシドーパミン病変を有するラットにおいて検討した。KF17837及びKW-6002は共に、それ自体、回転運動を僅かに誘発した。しかしながらKF17837及びKW-6002は、アポモルヒネにより誘発される回転の総カウントを、それぞれ3 mg/kg 経口と10 mg/kg経口の投与量、及び1 mg/kg経口とそれより高い投与量で、有意に増加させた。KF17837及びKW-6002はまた、L-ドーパによって誘発される回転運動も、3 mg/kg経口の投与量で強化した。更に、選択的アデノシンA2A受容体アゴニストであるCGS 21680・・・の脳室内注射(10 μg/20 μg)は、アポモルヒネにより誘発される回転運動を部分的に防止し、この阻害は、KW-6002(1 mg/kg経口)により元に戻った。 これらのアデノシンA2A受容体アンタゴニストによるアポモルヒネ誘発性の回転の総カウントの増加は、強度の増大よりも寧ろ、主として回転持続時間の延長によるものと思われる。これらの結果は、アデノシンA2A受容体アンタゴニストが、進行したパーキンソン病患者におけるドーパミン作動薬応答の持続時間の短縮を改善するのに有用である可能性があることを示唆している。」(249頁 要約) (甲3b) 「パーキンソン病に対する現在の療法は、ドーパミン補充療法に基づいている。にも拘わらず、この療法の利益は、ジスキネジアやウェアリング・オフ変動の発生を含む長期合併症によって、しばしば損なわれる(マースデン他、1982年)。このため、非ドーパミン性受容体を標的とするメカニズムが、魅力的な代替アプローチであり、アデノシンA2A受容体アンタゴニストは、その様な新規の療法の候補である(Richardson他、1997年; Kuwana他、1999年)。」(249頁 左欄2~10行) (甲3c) 「我々は最近、経口で活性なアデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKF17837・・・及びKW-6002((E)-1,3-ジエチル-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオン)を開発した(Shiozaki他,1999年a)。これらのアデノシンA2A受容体アンタゴニストは、薬物誘発性のカタレプシーモデル、及びMPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)又はレセルピンで誘発されるマウスパーキンソン病モデルの運動障害を緩和させる。より最近、我々は、KW-6002とドーパミン作動薬との組合せが、MPTP処置コモンマーモセット(Callithrix jacchus)においてジスキネジアを悪化させることなしに相乗的な抗パーキンソン病活性を生ずることを報告した(Kanda他、 1998a、b、 2000)。」(249頁 右欄下から8行~250頁 左欄7行) (甲3d) 「本研究において我々は、内側前脳束の6-ヒドロキシドーパミン病変を有するラットにおける、アデノシンA2AアンタゴニストであるKF17837及びKW-6002の効果を調べた、というのもこのパーキンソン病動物モデルは、候補化合物の有効性を評価するための最も信頼性のあるものの一つだからである(Ungerstedt他、 1970年)。本研究は、ドーパミン受容体アゴニストであるアポモルヒネ又はL-ドーパ(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)により誘発される回転運動を、KF17837又はKW-6002により変更することに焦点を置く。」(250頁 左欄8行~右欄2行) (甲3e) 「 [図:0001403919000009.jpg] 図1. 6-ヒドロキシドーパミン病変ラットにおけるアポモルヒネ(0.1 mg/kg経口)注射後の回転の総カウントに対する、KF17837] (A) 及びKW-6002 (B) の効果。・・・KW-6002はアポモルヒネ注射の30分前に経口投与した。各データ及びバーは、アポモルヒネ注射後120分間の回転の総カウントの平均±標準誤差を表す。アポモルヒネのみの処置との有意差は、対応付けt-検定により評価した(n=8、*p < 0.05)。」(250頁 左欄 図1(B)) (甲3f) 「図2.6-ヒドロキシドパミン病変ラットにおける、アポモルヒネ(0.1 mg/kg皮下)誘発対側回転運動に対するKF17837及びKW-6002の効果。横軸はアポモルヒネ注射後の時間(分)を示す。KF17837(1 mg/kg (A)、 3 mg/kg (B)、 10 mg/kg (C))又はKW-6002(0.3 mg/kg (D)、 1 mg/kg (E)、 3 mg/kg (F)、 10 mg/kg (G) は、アポモルヒネの注射の30分前に経口投与された。各点は、各5分区間のカウントの平均±標準誤差を表す。対応する対照との有意差は、2元配置分散分析及びこれに続く対応付けt-検定により評価した(n=8、*P < 0.05)。) [図:0001403919000010.jpg] 」(250~251頁 図2) (甲3g) 「ラット(220~260 g)をペントバルビタール(30mg/kg、腹腔内)で麻酔し定位固定枠(Narishige、 Tokyo、 Japan)に配置した。6-ヒドロキシドーパミン(臭化水素酸6-ヒドロキシドーパミン、0.05%アスコルビン酸含有の生理食塩水2μL中8μg)を、左内側前脳束(・・・(略)・・・)に2分間かけて注射した(速度1μl/分)。ノルアドレナリン作動性ニューロンを保護するために、定位注射の30分前にラットに塩酸デシプラミン(25mg/kg腹腔内)を注射した。6-ヒドロキシドーパミン注射の少なくとも6日後に、病変を生じさせた動物にアポモルヒネを注射(0.1mg/kg皮下)し回転計(Ungerstedt他、 1970年)で回転運動を記録することにより試験した。」(252頁 左欄1~17行) (甲3h) 「2.4 回転行動の評価 病変から2週間より後で、ラットを、アポモルヒネ(0.1 mg/kg)に応答したそれらの対側回転(1回転は、360°のターンと定義した)に基づいてスクリーニングした。・・・アポモルヒネ及びL-ドーパは、KF27837又はKW-6002による処置の30分後に投与した。・・・応答の強度は、全ての5分区間における対側回転数により測定した。応答の持続時間は、回転率が結果としての平均値の半分に達した最初の5分区間と回転率が再び平均値の半分まで減少した最初の区間との間の時間により測定した。」(252頁 左欄18~42行) (甲3i) 「アポモルヒネ(0.1mg/kg皮下)は、約60分間にわたって強い対側回転をもたらした。最大強度は5分間で50カウントを超え、総カウントは120分間で約500であった。対照的に、KF17837(1~10mg/kg)又はKW-6002(0.1~1mg/kg)の経口投与自体は回転運動を誘発しなかった。KW-6002のみ、高投与量(3mg/kg及び10mg/kg)で対側回転をもたらしたが、これらの効果は比較的弱く、KW-6002の投与後25分においてのみ統計的に有意であった。」(252頁 右欄27~36行〕 (甲3j) 「投与量3mg/kg経口及び10mg/kg経口でのKF17837の、及び投与量1mg/kg経口及びこれより上でのKW-6002の投与は、アポモルヒネにより誘発される対側回転の総カウント(120分間)を有意に増加させた(図1)。図2において、薬物処置の効果は、KF17837の1mg/kg経口以外の全ての投与量において統計学的に有意であった(パネルA; P=0.8621、2元配置分散分析による)。アポモルヒネと共にKF17837及びKW-6002を投与された動物は、アポモルヒネのみを投与された動物に比べて、アポモルヒネに対するより長い応答持続時間を有した(図2B~G)。KF17837及びKW-6002(両化合物共に3 mg/kg経口)は、アポモルヒネに対する運動応答の持続時間を、それぞれ44%及び25%と最大に延長させた(表1)。」(252頁 右欄37行~欄末) (甲3k) 「表1 アポモルヒネ誘発回転運動に対するアデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKF17837及びKW-6002の効果 [図:0001403919000011.jpg] 持続時間の延長は、アポモルヒネのみに対する、アポモルヒネ(Apo)+アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKF17837又はKW-6002による回転持続時間の増加パーセントを示す。」(253頁 左欄 表1) (甲3l) 「 [図:0001403919000012.jpg] 図4.6-ヒドロキシドーパミン病変ラットにおけるL-ドーパ投与後の回転の総カウントに対する、KF17837 (A) 及びKW-6002 (B) の効果。KF17837又はKW-6002は、L-ドーパの投与の30分前に経口投与された。各データ及びバーは、それぞれ、L-ドーパ投与後150分間の回転の総カウントの平均±標準誤差を表す。L-ドーパのみの治療との有意差は、対応付けt-検定により評価した(n=8、 *P < 0.05)。」(253頁 右欄 図4(B)) (甲3m) 「他方、KW-6002(3 mg/kg経口)は、3 mg/kg経口又は10 mg/kg経口の投与量のL-ドーパにより誘発される回転の総カウントを有意に増加させたが、30 mg/kg経口のL-ドーパにより誘発される回転運動には影響を及ぼさなかった(図4B)。」(253頁 左欄末行~右欄5行) (甲3n) 「KF17837及びKW-6002は、パーキンソン病の症状を防止するのに治療上の有益な可能性のある新規の経口で活性なアデノシンA2A受容体アンタゴニストである(Richardson他、1997年;Kuwana他、1999年)。先に、これらのアデノシンA2A受容体アンタゴニストが、パーキンソン病のマウス及びサルモデルにおいて運動機能の顕著な且つ継続的な改善をもたらすことが示されていた(Kanda他、1998年a、b、2000年; Shiozaki他、1999年a)。本研究では、我々はKF17837及びKW-6002が、6-ヒドロキシドーパミン病変ラットにおけるアポモルヒネ誘発性の回転に対し強化効果を有することを実証した。更には、これらのアデノシンA2A受容体アンタゴニストは、パーキンソン病の治療のための現在の標準薬、即ちL-ドーパによって誘発される回転運動を強化した。」(253頁 右欄下から14行~欄末) (甲3o) 「アポモルヒネに対する応答の全体的強度は、ピーク効果の増加(アポモルヒネ治療後の5分の時点のみ)がみられたものの、KF17837及びKW-6002による大きな変化はなかった。従って我々は、アポモルヒネへの総回転応答に対する、これらのアデノシンA2A受容体アンタゴニストで観察された強化は、主として回転の持続時間に対する効果によるものであろうと考える。」(254頁 左欄下から19~12行) (甲3p) 「最後に、本研究の知見は、パーキンソン病の対症療法のための重要な意味を有している可能性がある。最も初期のパーキンソン病患者は終日、L-ドーパから持続する一貫した利益を得る。しかしながら、パーキンソン病が進行するにつれ、利益の持続時間は短くなる(ウェアリング・オフと呼ばれる)。L-ドーパの抗パーキンソン病作用の持続時間の基調をなす短縮を、応答強度を増強することなしに選択的に元に戻すことのできる薬物は、かなりの価値を有するかも知れない、何故なら、ピークドーズジスキネジアを誘発させるというリスクなしに、ウェアリング・オフ現象が消失するだろうからである(Papa他、1995年)。従って、KF17837及びKW-6002は、進行したパーキンソン病の治療において補助薬として有用である可能性がある。」(254頁右欄7~20行) (甲3q) 「結論として、本研究は、選択的なアデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKF17837及びKW-6002は、パーキンソン病の実験モデルにおいて、アポモルヒネ及びL-ドーパの運動効果を増強することを示した。類似の効果がヒトにおいて起こるならば、これらのアデノシンA2A受容体アンタゴニストは、パーキンソン病の治療への新規な非ドーパミン作動性のアプローチを提供できよう。」(254頁 右欄21~27行) 甲4 (甲4a) 「パーキンソン病治療においては,薬物療法が主体である。中でもL-Dopaは,現在はもちろん,将来にわたっても治療の主体となる薬物である。 近年,L-Dopa長期治療剤において種々の問題が起こり,患者の日常生活動作(activity of daily life; ADL)の低下が問題となっている。すなわち,wearing off, on-off, 神経症状,ジスキネジア・ジストニア等の付随運動が起こってくることである。」(53頁 要約1~5行) (甲4b) 「現在,パーキンソン病の治療の主体はL-Dopaを中心としたドパミン補充療法である(図1)。L-Dopaは,末梢でのドパミンへの変換を阻害する塩酸ベンセラジド,カルビドパの合剤が一般に使用されている。」(53頁 右欄2~6行) (甲4c) 「現在,パーキンソン病治療薬の課題となっているのは,L-Dopa長期療法によるwearing off, on-off, ジスキネジア等の不随意運動,神経症状の克服や,神経細胞の保護作用薬剤の模索である。」(55頁 左欄12~16行) (甲4d) 「2.L-Dopa長期投与における問題点 1) wearing off現象とon-off現象 L-Dopa長期服用を行っていると,残念ながら薬効時間が短くなり(wearing off現象),さらにはスイッチを切ったように突然効果が切れてしまう(off-off現象)ようなことが目立ってくる。 2) ジスキネジアとジストニア さらに脳内でのL-Dopa濃度のピークで出現する舞踏病様不随意運動が目立ったり(peak-dose dyskinesia),脳内L-Dopa濃度の上昇期及び下降期に2相性に出現するジストニアや舞踏病様不随意運動(biphasic dyskinesia)が出現する場合がある(図2)。(55頁 左欄17行~右欄6行) (甲4e) 「 [図:0001403919000013.jpg] 」(55頁 図2) (甲4f) 「いずれにしても線条体での長期にわたるドパミン濃度の不安定さ,D1,D2レセプターの感受性の変化により,線条体(被殻)からの出力系である淡蒼球外節,内節,視床下核が機能的アンバランスを生じ,結果的に視床-皮質回路が異常興奮しやすい状態になる。この状態により不随意運動が誘発されていることが考えられている。 対策としては,L-Dopaの少量頻回投与によって線条体での濃度変化を最小限にする。・・・ これらの知識を踏まえ,L-Dopa長期服用に伴う問題を最小限にとどめ長期的に安定した治療を継続するために,L-Dopaは必要最小限の至適量を考え,他剤を組み合わせる「低用量・多剤併用」を基本とすることである。」(57頁 左欄7~27行) (甲4g) 「4.ドパミンレセプター刺激剤 (ドパミンアゴニスト) ドパミンアゴニストは,比較的作用時間が長く,パーキンソン症状に対する効果はL-Dopaのように切れ味が良いわけではない。しかしL-Dopaの長期投与に伴うwearing offやon-offなどの薬効不安定(fluctuation)やジスキネジア,ジストニア,精神症状などを抑制する効果が明確となった。」(57頁 右欄下から15~7行) (甲4h) 「6.カテコール-O-メチル転移酵素 (COMT)阻害剤 カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)は,カテコールアミンをメチル化する酵素で血中でL-Dopaを代謝して3-OMD12,中枢神経内では3MTに変換する。これらの阻害剤はL-Dopaの代謝を抑制することが期待される。臨床的には,wearing offの改善を目的としている。」(59頁 右欄下から14~7行) (甲4i) 「 [図:0001403919000014.jpg] 」(59頁 右欄 図7) (甲4j) 「7. アデノシンA2Aアンタゴニスト (KW-6002,治験中) 特異的アデノシンA2A受容体拮抗作用を有するキサンチン誘導体である。協和発酵が開発を行っている。線条体出力ニューロンであるGABA作動性神経に存在し,パーキンソン病で活動亢進していることが明らかとなったアデノシンA2A受容体を阻害することによってL-Dopa長期治療によって生ずるジスキネジアを抑制することができる12)(図7)。」(60頁 左欄10~19行) 甲5 (甲5a) 「パーキンソン病は,中脳黒質緻密層から線条体に投射するドーパミン作動性ニューロン細胞死に起因して起こり,線条体でのドーパミン含量が正常の20%以下になると臨床的に安静時振戦,歯車様固縮,無動,姿勢反射障害の四大症候を呈すると考えられている.病理学的には黒質の選択的神経細胞死とレビー小体の出現を特徴とし,理論的な原因療法は神経細胞死抑制であるが,このような治療法はいまだ存在しない.したがって,病気の進行は阻止できないものの,不足したドーパミンを補充するL-ドーパ製剤(レボドーパ)の対症療法が基本となる. ところが,その長期間使用により,wearing-off現象,on-off現象といった効果の動揺,dyskinesiaなどの不随意運動,精神症状が出現し,十分な治療効果が得られぬケースが多く,長期的L-ドーパ製剤療法の最大の問題点となっている.こうした諸問題を克服するために開発されたのがドーパミン作動薬である.」(112頁 左欄2行~右欄下から2行) (甲5b) 「しかしながら,ドーパミン作動薬はL-ドーパ製剤に比べて,効果が弱いため,長期投与(3~5年)では病状進行に伴い,単独では十分な症状改善が得られず,L-ドーパ製剤を治療計画に加えねばならなくなる.こうしたドーパミン系を中心とした従来の治療法とは一線を画する治療法として有力視されているのが,アデノシンA2A受容体拮抗薬である.アデノシンA2A受容体拮抗薬は,パーキンソン病患者において機能不全に陥っている線条体ニューロンを,本来の健常なニューロンへと再構築する効果が期待されている. ・・・ カフェインなどのメチルキサンチンはホスホジエステラーゼ活性を阻害し,細胞内cAMP濃度を増加させることが知られている.ドーパミンにもD1受容体を介して同様の効果が認められ,パーキンソン病でもカフェインのL-ドーパ製剤増強効果が期待されていた.実際に,6-OHDAで中脳黒質ドーパミンニューロンを傷害したラットではL-ドーパやドーパミン作動薬による治療増強効果が認められたが1) 肝心なパーキンソン病患者には無効であった2).一方,テオフィリンの使用ではL-ドーパとの併用でパーキンソン病患者に著明な症状改善が認められた3). カフェインとテオフィリンの両者はアデノシンA1とA2受容体4)拮抗薬であり,脳内アデノシンA2A受容体は線条体,側坐核,嗅結節5,6)に限局して分布している点から,アデノシンA2A受容体が線条体での運動機能制御に重要な役割を果たしていることが推測された.」(113頁 左欄6~右欄1行) (甲5c) 「III. アデノシンA2A受容体拮抗薬(KW-6002)9) KF17837110)とKW-6002は協和発酵工業が創製した,アデノシンA2A受容体拮抗作用を有する新規化合物である.KF17837,KW-6002のラット線条体アデノシンA2AとA1受容体への結合は,それぞれの阻害定数(Ki)が1.0 nM,62 nMと2.2 nM, 150 nMであり,両者ともA2A受容体に高親和性結合を示し,A2A受容体選択性はA1受容体よりもそれぞれ62,68倍勝っている.テオフィリンやカフェインなどの非選択的アデノシン受容体拮抗作用をもつ薬剤に比し,格段優れたA2A受容体選択性と親和性が得られている.KW-6002はKFI7837のジエチルアナログであるが,経口投与薬として90倍ほど優れているため,現段階では最も優れたアデノシンA2A受容体拮抗薬である.現在英国,日本において抗パーキンソン病薬として臨床開発中であるが,米国では既にパーキンソン病患者を対象としたフェーズII試験が先行している.」(114頁 左欄5行~24行) (甲5d) 「[ln vivo characterization] 1.MPTPを投与されたサルでの検討 無動,寡動,屈曲姿勢,筋固縮,振戦などヒトパーキンソン病患者とほぼ同様の症状を呈すばかりでなく,L-ドーパ製剤に対する反応性や嘔気・L-ドーパ誘発性ジスキネジアなどの副作用の出現もパーキンソン病患者とほぼ同一で,抗パーキンソン薬の効果判定に最適なモデル動物と考えられている.このサルにKW-6002投与を行うと11),平均2倍程度の約10時間持続する投与濃度依存性な基礎運動量の回復(健常ザルの運動量程度まで)を認めた.ところが,L-ドーパやドーパミン作動薬投与後に認められる健常ザルの運動量をはるかに逸脱した過剰な運動量増加12)は引き起こすことはなく,KW-6002投与の効果は,いわゆるMPTPを投与前のサルの状態を回復させるものであった11).」(114頁 左欄25行~欄末) (甲5e) 「運動機能の回復は,checking movement, improved posture,reaction to stimuli, alertness の各項目において認められ,注目すべきことは,不随意運動,行動異常や嘔気・嘔吐などの副作用出現を認めなかったことである11).更に,KW-6002投与によるこうした運動量回復は,脳内移行性に優れるアデノシン(APEC)の脳室内投与で阻害されるが,アデノシンA1受容体選択的拮抗薬(DPCPX)では影響を受けぬことから,アデノシンA2A受容体の選択的阻害でパーキンソン病症状の回復が図られることが明らかとなった13). 更に,長期加療にて問題となるL-ドーパ誘発性ジスキネジアもほぼ完全抑制されることが明らかとなった11).また,ドーパミン作動薬で報告されている反復投与での耐性の出現は認められず,KW-6002は慢性投与でも急性投与後に回復した運動量の維持が可能であった.少量のL-ドーパやドーパミンD2受容体アゴニストとの併用効果も確認され,パーキンソン病症状の回復への単独投与やL-ドーパ減量にも有用性が確認された11).」(114頁 右欄1~22行) (甲5f) 「パーキンソン病の病態形成には,ドーパミン以外に,アデノシンA2A受容体を介したアデノシンが極めて密接にかかわっていることが明らかとなった.その選択的な拮抗薬は従来のドーパミン系薬物加療で問題となる副作用の発現や耐性の問題を克服し,そのうえ,パーキンソン病で傷害された線状体内のコリン作動性ニューロンやGABA作動性ニューロンのネットワークを健常なレベルまで修復し,また維持する機能をもつと考えられる.こうしたKW-6002で期待される効果が,実際に病状の進行を認めるパーキンソン病の患者においてどのように発揮されるか,またより長期的投与で本当にドーパミン系薬物でみられた問題点を克服できるかどうかなど,現在進行中のパーキンソン病患者を対象としたフェーズII試験の結果が待たれるところである.」(115頁 右欄下から17行~欄末) 甲6 (甲6a) 「【0093】試験例3 マウスパーキンソン氏病モデルの自発運動量に対する作用 1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)投与によって急性のパーキンソン症候群が発症することが知られており、これは、臨床症状(筋固縮・無動・振戦),病理所見(黒質-線条体系ドパミン神経の変性・細胞死)共に自然発症のパーキンソン氏病と酷似していることが知られている[サイエンス(Science ),219巻,979頁,1983年]。さらに,マウスにMPTPを投与することによって,ヒトと全く同じパーキンソン症候群が発症することも確認された[サイエンス(Science ),224巻,1451頁,1984年]。 【0094】特に、C57BL/6 マウスを用いたMPTP投与による実験的パーキンソン氏病モデルはヒトのパーキンソン氏病と酷似していることが知られており[ブレイン・リサーチ(Brain Res.),528巻 181頁,1990年]、このマウスでは、線条体ドパミン含量が大きく低下している他,著名な自発運動の低下が見られる。」(【0093】、【0094】) 甲7 (甲7a) 「テオフィリンは進行期のパーキンソン病患者において「オン」時間を増加させる」(表題) (甲7b) 「本試験の最も顕著な知見は、APD患者においてテオフィリンが「オン」相の持続時間を有意に延長させた(そして、その結果「オフ」相の持続時間を短縮させた)ことである。」(2頁 7~8行) (甲7c) 「方法.全ての患者は、・・・臨床的に明らかな特発性パーキンソン病(PD)を有すると診断され、初期PD(EPD;Hoehn & Yahr ステージ≦2且つ未だL-ドーパの投与無し)又はL-ドーパ誘発性の運動副作用を有する進行期PD(APD;Hoehn & Yahr ステージ>2かつL-ドーパ投与中)の何れかに分けられた;全てのAPD患者は、この試験の前少なくとも3ヶ月間、彼らの現在の抗PD薬剤投与計画の下で臨床的に安定であった。これらのPD患者の何れも、心臓、腎臓、肝臓、又は肺の疾患履歴がなく、授乳中でなく、別の薬物試験に参加しておらず、また本試験前の90日以内には如何なる実験的抗PD薬も使用していなかった。このベースライン受診(受診1)の後、患者は1週間の負荷相(毎日増量、100 mg 2回/日)、6週間の定常相(600 mg/日)、及び1週間のウォッシュアウト相(毎日減量、100 mg、2回/日)に付された。最後の受診は、テオフィリンが完全に停止された1週間後であった。」(3頁 1~9行) (甲7d) 「結果. ・・・L-ドーパで治療され(764+/-170 mg/日)、運動副作用(ウェアリング・オフ12名、突然の「オフ」8名、ピークドーズ ジスキネジア9名、及び2相性ジスキネジア2名)を有する12名のAPD患者のうち9名が試験を完了した(平均年齢60.1+/-10.9歳且つ疾患の平均持続期間8.0年+/-2.1年)。3名の脱落者のうち2名は追跡調査ができず、1名は試験から退いた。全ての患者において、テオフィリンはパーキンソン病の主観的改善と関連しており、何名かにおいては振戦の増悪と関連していた。テオフィリンはまた、全体的な統一パーキンソン病評価スケール(UPDRS;約10%)、及びUPDRS運動スコア(項目19~31;約15%)を、非有意に改善する傾向をもたらした。何れのAPD患者においても、自己評価された尺度の患者日誌により証拠づけられたところによれば、テオフィリンがジスキネジアの重症度を増悪させることはなかった。対照的に、APD患者において、テオフィリンは、「オン」時の持続時間の~30%の増加及び「オフ」時の持続時間の減少に関連づけられた(図)。」(3頁 13~25行) 2 丙号証の記載事項 丙4~丙6、丙11には、次のとおりの記載がある。なお、原文が外国語で記載されているものについては、訳文を示す。 丙4 (丙4a) 「中枢神経副作用 L-ドーパおよび他のパーキンソン病薬の長期使用に伴い,副作用である不随意運動,精神症状の出現頻度は増える(図11)。不随意運動は・・・パーキンソン症状改善のピーク時に著しい(図12)。」(229頁 右欄11~17行) (丙4b) 「 [図:0001403919000015.jpg] 」 (丙4c) 「 [図:0001403919000016.jpg] 」 (丙4d) 「薬効持続時間減少 2つの型があり,それぞれ次のように対処する。 ○の中に1 病気の進行により症状が増強する場合;抗パーキンソン病薬を増量する。 ○の中に2 抗パーキンソン病薬の長期投与により有効時間がしだいに短縮する場合(wearing-off現象);まず投薬の総量を変えずに投与回数を増す。さらに投与時間と個々の投与量を症例ごとに工夫する。睡眠をよくとり朝食後に服薬すると,午前中に最も症状が改善することが多い。その状態を目標にあとの投薬時間を工夫し量を決めるとよい。起床時すでに寡働が著しいときはただちに服薬する。服薬回数は最大6回までとする。 薬効不安定(on-off現象) L-ドーパを長期間使用すると,服薬時間に関係なく電灯をつけたり消したりするように,症状の著しい増悪と改善とが突然切り換わってあらわれることがある。これをon-off現象という(図12)。この状態は血中L-ドーパ濃度の変動とよく対応することが知られており,対策はまずL-ドーパ1回投与量を減らし投与回数を増す。」(231頁 左欄下から9行~右欄12行) 丙5 (丙5a) 「これは,1983年米国で,N-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)が,ヒト,サルを中心とする多種の動物でパーキンソン病を発症することが発見されたからである.」(47頁 下から2行~48頁 1行) (丙5b) 「MPTPパーキンソン病はヒトとサルが最も起こしやすいが,マウス,イヌ,カエル,サカナなど広範囲な種族の動物で運動障害を起こす。」(48頁 下から10~9行) (丙5c) 「現在のレボドパ療法は合剤による物が主体であるが,ドパ脱炭酸酵素阻害剤の併用により脳内でのドパミン濃度が上昇しやすくなることから,中枢性の副作用,すなわち精神症状やジスキネジアなどは逆に出現しやすくなった。・・・ADLの改善により罹患期間が延長し投薬期間が長期になるにつれ,次に述べるようなさまざまな問題点が出現してきた。 1.“wearing-off”現象 “wearing-off”現象とは薬効期間の短縮により,パーキンソン病症状の日内変動が出現する現象をいう.レボドパ治療初期には1日2回ないし3回の服薬により,24時間ほぼ安定した効果を得られるが,治療が長期にわたるにつれ,・・・レボドパ濃度の低下とともに症状が増悪するようになる.“wearing-off”現象の出現率は治療年数の経過とともに増加し,日本では欧米と比べるとやや頻度は低いが,4年後に30%,8年後には40%に出現するとされている.発生機序についてはレボドパ長期投与によるレボドパの吸収,代謝の変化や,パーキンソン病そのものの進行にる(注:原文のまま)」ドパミンニューロンのドパミン保持能の低下などが考えられている.・・・ 2.“on-off”現象 “on-off”現象はレボドパの服用時刻,血中濃度に関係のない,あたかも電気のスイッチを入れたり切ったりした時のような急激な症状の変化を示す現象である.・・・発生機序についてはレボドパ長期投与によるドパミン受容体の感受性の低下が推測されている.・・・ 3.不随意運動 レボドパによる不随意運動は,舞踏病様,パリスム様,ジストニア様等,さまざまなタイプのものがあり,・・・レボドパの過剰投与の場合は治療開始後早期でも出現しうるが,一般には投与期間が長くなってから出現することが多く,さらに治療量に達しないうちに不随意運動が出現することも稀でない.・・・ レボドパ服用後1~2時間後の血中濃度がピークに達した頃出現する(ピークドーズジスキネジア)ことが最も多いが,内服直後の血中濃度上昇期に出現し濃度の上昇とともにいったん消失するが下降期に再び出現する二相性ジスキネジアや,早期レボドパ濃度の最も低い時期に出現する早期ジスキネジアなどもある. ジスキネジア出現時にはレボドパの一回投与量を減量し,血中濃度が上昇しすぎないようにコントロールし,他剤との併用を試みる.・・・しかしながらジスキネジア出現時は,症状が最も良く改善している時刻であることが多く,患者本人はジスキネジアをほとんど気にしていないことが多い.またジスキネジアを消失させるための治療によりむしろパーキンソン症状が増悪してしまう場合も比較的多い.」(80頁 16行~82頁 8行) 丙6 (丙6a) 「パーキンソン病に対する治療薬として,新しいドパミン受容体刺激薬・・・アデノシンA2A受容体阻害薬を概説した。・・・パーキンソン病治療薬は現在でもL-ドパ製剤が主流であるが,長期投与によりwearing-off現象,on-off現象,ジスキネジア,精神症状出現等の問題点がある。上記薬剤によってこのような問題点が解決され,各患者の症状に合わせた治療の選択が拡大されることが期待されている。さらに,神経保護作用についても注目されている。」(39頁 要約) (丙6b) 「2)プラミペキソール(Pramipexole, SND919) (日本ベーリンガーインゲルハイム;治験中) プラミペキソールは非麦角アルカロイド系のドパミンアゴニストで,・・・進行したパーキンソン病に対しても日常生活動作と運動障害の改善,off期の短縮,L-ドパの減量が認められた6)。・・・わが国では第II相臨床研究に入っている。」(41頁 左欄2~14行) (丙6c) 「1)トルカポン(Tolcapone, Ro 40-7592) (日本ロシュ;申請中) トルカポンは,スイスのロシュ社によって開発されたCOMT阻害薬で・・・L-ドパ/DCI(脱炭酸酵素阻害剤)治療下でのwearing-offにも効果を認めた。 ・・・トルカポンは薬効の動揺を示すパーキンソン病患者で調子の良い時間を増加させる効果が分かっている。」(43頁 左欄18~32行) (丙6d) 「5.アデノシンA2A受容体アンタゴニスト (KW-6002)(共和発酵;治験中) KW-6002(8,1,3-diethyl-3,7-dihydro-7-methyl-1H-purine-2,6-dione)は,アデノシンA2A受容体に特異的な拮抗作用を有するキサンチン誘導体である。・・・アデノシンA2AアンタゴニストはMPTP(パーキンソニズム発症神経毒)投与のサルにおいてジスキネジアを中心とした運動障害を有意に改善すると報告されている18)19)。欧米で第II相臨床試験が終了している。」(43頁 右欄1~13行)。 丙11 (丙11a) 「MPTP処置霊長類はそのパーキンソニズムがヒト病態と良く似ており、また治療薬に対する反応や用量が相関することから、ヒトのパーキンソン病に極めて近い病態モデルであるとされている。MPTP処置コモンマーモセットにおいても同様で、ドーパミン作動薬で見られる副作用である嘔吐、dyskinesiaなどが認められ抗パーキンソン病薬の作用評価には有用な実験動物である53)。」(20頁 下から5行~21頁1行) 3 乙号証の記載事項 乙2、乙3、乙19~乙21には、次のとおりの記載がある。なお、原文が外国語で記載されているものについては、訳文を示す。 乙2 (乙2a) 「大脳基底核におけるドパミン受容系の変化は、パーキンソン病のレボドパ治療を困難にするウェアリング・オフ変動の発病の原因であると示唆されてきた。グルタミン酸作動性のメカニズムの関連する線条体遠心性経路機能の変化への関与を評価するために、我々は、片側パーキンソン病ラットに対するレボドパの継続的な投与が生じさせる運動応答の変化を、NメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体の遮断が修正する能力について調べた。片側にのみ6-ヒドロキシドパミンによって障害を負わせたラットは、3週間に渡って1日2回レボドパ/ベンセラジド(25/6.25mg/kg)を投与され、ウェアリング・オフ現象を伴うパーキンソン病患者に生じていることと同様の、レボドパへの運動応答の持続時間の累進的な短縮を示した。これらの動物に対する、MK-801(0.1mg/kg)の全身性の単回投与は、回転の持続時間の減少を完全に反転させた(P<0.01)。NMDAアンタゴニストの線条体内注射は、レボドパ反応の延長にさらに効果的であった(P<0.01)が、黒質内注射されたMK-801は、レボドパ誘発回転の持続時間に統計的に有意な変化を生じなかった。回転強度は、MK-801投与のすべての経路によって影響を受けなかった。これらの結果は、特に線条体でNMDA受容体を遮断できる薬剤が、進行性パーキンソン病患者の運動変動を改善するのに役立つ可能性があることを示唆している。」(13頁 要約) (乙2b) 「・・・‘ウェアリング・オフ’型の変動は、多くの場合、最初に現れる運動合併症であり、レボドパへの応答の持続時間が累進的に短縮することを反映している。この短縮は、前シナプスにおけるドパミン作動性の末端によって通常は提供されるドパミンの貯蔵が失われることに起因すると、従前は考えられてきた[14,23]。しかしながら、最近の証拠は、ウェアリング・オフ現象の発病にとって、後シナプスにおけるメカニズムが最も重要な関与をすることを示唆している[5]。 パーキンソン病のラットに対する継続的なレボドパの投与はラットの運動応答の持続時間の顕著な減少をもたらし、これは、パーキンソン病患者における‘ウェアリング・オフ’現象に擬するものである[28]。」(13頁 左欄4~16行) (乙2c) 「MK-801並びに競合的NMDAアンタゴニストであるCPPは,片側パーキンソン病ラットにおいて,レボドパ誘発の回転運動を増強すると報告されている[22, 25]。我々の結果は,この増強は,応答強度の増大というよりむしろ,応答時間の増加を反映したものであり得ることを示唆している。」(16頁 右欄下から10~5行) 乙3 (乙3a) 「パーキンソン病(PD)の早期の間は、レボドパを単回投与した後の臨床応答は、レボドパの血漿中の半減期が約60~90分という比較的短い時間であるにもかかわらず、安定していて長期間(>4時間)続く134。実際、投与が失念されてもその利益はしばしば維持される(「持続時間の長い応答」)。PDが進行すると、患者はウェアリングオフ作用を経験し始め、レボドパ投与後の運動利益は持続時間が減少し、4時間未満しか続かない(「持続時間の短い応答」)。時間が経つと、レボドパの血漿中の薬物動態は疾患の過程を通して変化しないままであるが、レボドパの単回投与後の利益の持続時間はどんどん短くなり、血漿中の薬物半減期に近づく135-137。最終的に、患者は、「オン」期と「オフ」期の間の急で予測できない変動を経験し始めることもあり、これは「オン-オフ」現象として知られるものである。」(S10頁 右欄35~52行) (乙3b) 「運動合併症の原因となっている要因がより明らかになりつつある160、170。軽度、中程度、および重度の疾患を有するPD患者のグループにおけるレボドパ注入後の運動応答の持続時間は、全てのグループが同程度の血漿レボドパ薬物動態を有するという事実にもかかわらず、疾患の重症度と逆の相関がある137、138。これらの知見は、進行期のPD患者における運動変動が、ドパミン作動性末端の喪失によるレボドパ貯蔵能の低下と関係するという考えを生じさせた171。しかしながら、ドパミン作動性末端内に貯蔵されないアポモルヒネの注入後に同様の知見が得られている172、173。これらの知見は「貯蔵仮説」によって説明することができない。さらに、レボドパを繰り返し投与して処置された6-OHDA-損傷の齧歯類においては、病変は安定していてレボドパ貯蔵能はおそらく変わっていないが、運動応答の持続時間の短縮が生じる174。これらの知見は、運動合併症の発症に対して後シナプスの構成要素が存在するという考えを支持する。運動合併症は、前シナプス及び後シナプスの両方の事象が関係していて、これには、ドパミン受容体の正常でない間欠的な刺激、下流ニューロンにおける遺伝子およびタンパク質の調節不全、および、大脳基底核の出力ニューロンにおける発火パターンの変更が含まれることが現在明らかになっている(より詳細な議論についてはOlanow and Obeso170を参照)。」(S13頁 左欄7~35行) 乙19 (乙19a) 「 [図:0001403919000017.jpg] 」(1頁 左欄の【効能又は効果】) (乙19b) 「 [図:0001403919000018.jpg] 」(4頁 左欄上段の表) 乙20 (乙20a) 「 [図:0001403919000019.jpg] 」(1頁 左欄の【効能又は効果】) (乙20b) 「 [図:0001403919000020.jpg] 」(4頁 左欄〔臨床成績〕の1.の下段の表) 乙21 (乙21a) 「 [図:0001403919000021.jpg] 」(1頁 左欄の【効能又は効果】) (乙21b) 「 [図:0001403919000022.jpg] 」(4頁 右欄の上段の表1) 第7 当審の判断 本件訂正発明に係る特許は、無効理由1(新規性欠如)及び無効理由2(進歩性欠如)のいずれによっても無効とすることはできない。 1 パーキンソン病に関連する、本件特許の優先日当時の技術常識(以下、「技術常識」という。) 技術常識として、以下の(1)~(2)が認められる。 (1)パーキンソン病モデル動物について 丙5には、MPTPが、ヒト、サル等多種の動物でパーキンソン病を発症することが(摘記(丙5a)、(丙5b))、また、甲5には、MPTPを投与されたサルは、ヒトパーキンソン病患者とほぼ同様の症状を呈し、また、L-ドーパ製剤に対する反応性やジスキネジアなどの副作用の出現も同患者とほぼ同一で、抗パーキンソン薬の効果判定に最適なモデル動物と考えられていることが記載されている(摘記(甲5d))。そして、丙11には、MPTP処置霊長類はそのパーキンソニズムがヒト病態と良く似ており、ヒトのパーキンソン病に極めて近い病態モデルであるとされていること、MPTP処置コモンマーモセットにおいても同様で、ドーパミン作動薬で見られる副作用である嘔吐、dyskinesiaなどが認められ抗パーキンソン病薬の作用評価には有用な実験動物であること(摘記(丙11a))が記載されている。 以上によれば、本件特許の優先日当時、MPTPを投与されたサル、コモンマーモセットはパーキンソン病モデル動物であるとの技術常識が存在していたといえる。 (2)L-ドーパ長期投与において出現する状態について 摘記(甲4d)、(甲5a)、(丙4a)、(丙5c)の記載によれば、L-ドーパ長期投与により、ウェアリング・オフ現象(薬効時間が短くなる現象)、オン・オフ変動(スイッチを切ったように突然効果が切れてしまう現象)やジスキネジア(舞踏病様不随意運動が出現する現象)等の状態が出現することは本件特許の優先日当時の技術常識である。 しかし、ウェアリング・オフ現象、オン・オフ変動とジスキネジアとは、その症状及びL-ドーパ投与開始からの経過期間(摘記(丙4b))、投与時日内変動(摘記(甲4e)、(丙4c))のいずれの点からみても、異なる挙動を示すものであることもまた本件特許の優先日当時の技術常識であるといえる。 2 無効理由1についての判断 (1)甲1に記載された発明 甲1は、新規の選択的アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKW-6002 [(E)-1,3-ジエチル-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオン](摘記(甲1a)、(甲1b)、(甲1e))が、MPTP処置パーキンソンマーモセットに対し、追加の抗パーキンソン活性をもたらすか否か、あるいはL-ドーパとの組合せで投与した場合に既に確立されているジスキネジアを惹起するか否かについて検討された文献である(摘記(甲1a)、(甲1d))。 甲1には、自発運動活性と運動障害に対するKW-6002とL-ドーパとの組合せの効果について、毎日2.0mg/kg皮下投与量のMPTPで5日間処置し、6 ~8週間にわたって回復させたコモンマーモセットに対し、KW-6002(10.0mg/kg)を経口投与した90分後又は24時間後、48時間後に、閾値投与量のL-ドーパ(2.5mg/kg)とカルビドパ(12.5mg/kg)を経口投与する試験を行ったところ、投与後6時間の平均合計自発運動活性及び6時間の合計障害スコアが、90分後の組合せ投与では、自発運動活性と運動障害に対して有意な相加的応答をもたらしたこと、24時間後の組合せ投与では、L-ドーパの単独投与に比較して増強することが観察されたこと、48時間後の組合せ投与では、ベースライン効果と異ならない効果をもたらしたことが記載されている(摘記(甲1b)、(甲1e)、(甲1h)、(甲1j))。上記試験の結果は、KW-6002が、その経口投与の90分後又は24時間後にL-ドーパを経口投与した組合せ投与において、パーキンソン病モデル動物の自発運動活性と運動障害を改善する薬剤として有効であったことを示すものであるといえる。 そうすると、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。 「KW-6002を含有する薬剤であって、MPTP処置コモンマーモセットに対して、閾値投与量のL-ドーパ(2.5 mg/kg)及びカルビドパ(12.5mg/kg)が投与される90分前又は24時間前に、KW-6002(10.0mg/kg)が組合せ経口投与される、自発運動活性と運動障害を改善する薬剤。」の発明(以下、「甲1発明」という。) (2)本件訂正発明と甲1発明との対比 甲1発明のKW-6002は、(E)-1,3-ジエチル-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンである(摘記(甲1e))。そして、3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンはキサンチンともいうから(必要であれば、J-GLOBAL 「物質 キサンチン 日化辞番号:J2.371J」https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907016155923672参照)、甲1発明のKW-6002は、本件訂正発明の(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンである。したがって、甲1発明の「KW-6002を含有する」「薬剤」は、本件訂正発明の「(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する」「薬剤」に相当する。 また、本件特許の優先日当時、MPTPを投与されたコモンマーモセットはパーキンソン病モデル動物であるとの技術常識が存在していたといえることは上記1(1)に説示のとおりである。したがって、甲1発明の「MPTP処置コモンマーモセット」は、パーキンソン病動物である限りにおいて、本件訂正発明の「パーキンソン病のヒト患者」と一致する。 そして、甲1発明の「L-ドーパ(2.5 mg/kg)及びカルビドパ(12.5mg/kg)が投与される90分前又は24時間前に、KW-6002(10.0mg/kg)が組合せ経口投与される」は、本件訂正発明の「(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する薬剤」が、「L-ドーパと併用して」「対象」に投与されることに相当する。 そうすると、本件訂正発明と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する薬剤であって、 前記薬剤は、パーキンソン病動物を対象とし、 前記薬剤は、L-ドーパと併用して前記対象に投与される、薬剤。」 <相違点> 本件訂正発明は、「ヒト患者であって、L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者」を対象とし、「前記薬剤は、前記L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために前記患者に投与され」、「前記L-ドーパ療法」において投与される「薬剤」であるのに対し、甲1発明は、「MPTP処置コモンマーモセット」を対象とする「自発運動活性と運動障害を改善する薬剤」である点 (3)判断 MPTP処置コモンマーモセットとヒトパーキンソン病患者とは、明らかに別異の動物である。加えて、当該コモンマーモセットは、KW-6002の投与前にL-ドーパの長期投与を受けていないのであるから、甲1発明が、L-ドーパの長期投与に伴い出現する状態である、本件訂正発明の「L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の」との発明特定事項を備えていないことは明らかである。 したがって、上記相違点において、本件訂正発明の対象と甲1発明の対象とは実質的に相違しており、その余の点について検討するまでもなく、両発明は相違する。 (4)請求人、参加人の主張について ア 請求人の主張 (ア)請求人が認定する甲1記載の発明 請求人は、甲1には、(i)「アデノシンA2A受容体アンタゴニストは、L-ドーパとの組合せで、パーキンソン病の有用な治療剤となる可能性がある」こと、及び(ii)「“ウェアリング-オフ”及び“オン-オフ”応答変動を有する患者において、KW-6002のような化合物は、ジスキネジアを長引かせることなしに、“オン時間”を増加させることができる可能性がある」ことが記載されている(摘記(甲1n))。そして、KW-6002は(E)-8-(3,4ージメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンであり、また、オン時間の増加はオフ時間の減少と同義である。 以上によれば、甲1には、本件訂正発明と同一の甲1記載の発明が記載されている旨主張する(弁駁書p25 10行~p26 16行)。 (イ)請求人は、上記(ア)(ii)の記載は、図1、図4及び図5に示された試験結果に基づくものであるから、請求人が主張する甲1記載の発明が記載されている旨主張する(弁駁書p26 21行~p33 下から2行)。 イ 請求人の主張について (ア)請求人が主張する甲1記載の発明について 甲1には、パーキンソン病のヒト患者であって、L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者又はそれに対応するモデル動物に、KW-6002、すなわち、(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する薬剤とL-ドーパとの併用投与によるオン時間の増加を直接確認した結果は記載されていないから、上記ア(ア)(ii)の記載は、具体的な試験結果に基づくものとはいえず、請求人が主張する上記発明が甲1に記載されているとはいえない。 加えて、MPTP処置コモンマーモセットは、上記1(1)説示の技術常識に照らせば、パーキンソン病モデル動物であるとはいえるものの、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を呈する動物であるか否かについては、請求人、参加人が提出したいずれの証拠をみても記載はない。そして、甲5には、KW-6002などのアデノシンA2A受容体の選択的な拮抗薬について、従来のドーパミン系薬物加療で問題となる副作用の発現や耐性の問題を克服する機能を持つと考えられているとの記載があるものの、「期待される効果が実際に病状の進行を認めるパーキンソン病の患者においてどのように発揮されるか,またより長期的投与で本当にドーパミン系薬物でみられた問題点を克服できるかどうか」は、「パーキンソン病患者を対象としたフェーズII試験の結果が待たれる」との記載に照らせば(摘記(甲5f))、本件特許の優先日当時、実際に病状の進行を認めるパーキンソン病の患者に対する効能や、より長期的投与の問題点に関し、ヒト臨床試験結果をみることなく判断できるという状況にあったとは認められない。 以上によれば、請求人が指摘した甲1の上記記載は、未だ「可能性がある」との域を出るものではなく、請求人が指摘する上記記載があることをもって、甲1に本件訂正発明が実質的に記載されているということはできない。 (イ)以下、図1、図4及び図5に記載された試験結果について検討する。 ・図1について 請求人は、甲1には、「KW-6002によりもたらされる抗パーキンソン活性の持続」として、「MPTP処置したコモンマーモセットへのKW-6002の経口投与(10.0mg/kg)は、基剤を投与した動物での観察に比べて、自発運動活性を約2倍に増大させ(図1A)、且つ運動障害を改善させた(図1B)。KW-6002のこれらの効果は、薬剤投与の7.5時間後まで明らかであったが、KW-6002による治療の24及び48時間後の動物観察時には運動障害の明らかな回復は見られなかった(図1A及び1B)。」ことが記載されており(摘記(甲1f))、当該記載は、KW-6002単独の経口投与(10.0 mg/kg)が、投与後1.5~7.5時間まで明らかに、パーキンソン病モデル動物の自発運動活性を増大させ且つ運動障害を改善させたことを示していると主張する(審判請求書 p46 下から2行~p47 8行;弁駁書 p26 下から6~4行、p27 4~6行)。 しかし、上記図1記載の試験は、KW-6002投与前にL-ドーパの長期投与を受けていないコモンマーモセットを対象として行われたものであり、該対象は、L-ドーパの長期投与において出現するウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病モデル動物ではないから、本件訂正発明の「L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の」との発明特定事項を備えていない。そして、L-ドーパを長期投与していないパーキンソン病モデル動物において、ある薬剤を単独投与投与した場合に、1.5~7.5時間程度の自発運動活性を増大させ且つ運動障害を改善させる作用を有することが、L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させることを意味するものとはいえない。 ・図4について 請求人は、甲1の図4で表される試験結果が、閾値投与量、すなわち、単独での効果がほとんどみられない量のL-ドーパの投与においても、KW-6002が併用されていれば、自発運動活性や運動障害に対する効果が増大されること、及び当該作用は24時間という持続性のものであることを明らかにしていると指摘する。そして、「オフ状態」は、抗パーキンソン効果を引き起こさないレベルへと患者体内のL-ドーパが低下した状態となることであり、したがって、図4試験は、運動合併症の発症以前の動物を使用したものではあるが、進行期のヒトパーキンソン病患者において、KW-6002を投与しておけば、L-ドーパの投与の効果が薄れてしまう筈のウェアリング・オフの時間帯において、抗パーキンソン効果の増強(底上げ)がもたらされるであろうことを当業者に認識させるに充分であり、該抗パーキンソン効果の増強(底上げ)はL-ドーパのオン時間の延長(オフ時間の減少)をもたらすものであることを当業者は直ちに認識できると主張する(弁駁書p26下から3行~p29最終行)。 上記図4記載の試験の対象も、上記図1記載のそれと同様、KW-6002投与前にL-ドーパの長期投与を受けていないコモンマーモセットであって、L-ドーパの長期投与において出現するウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病モデル動物ではない。そして、L-ドーパを長期投与していないパーキンソン病モデル動物において、ある薬剤をL-ドーパと組合せ投与した場合に、24時間程度の自発運動活性を増大させ且つ運動障害を改善させる作用を有することが、L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させることを意味するものとはいえない。 そうすると、L-ドーパを長期投与したパーキンソン病モデル動物に対するKW-6002の作用・効果が図4からは不明である以上、図4に接した当業者といえども、KW-6002が、L-ドーパ療法によりウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病のヒト患者に、オフ時間を減少させるためにL-ドーパと併用して投与される薬剤であることを認識できるとはいえず、請求人の上記主張は採用できない。 ・図5について 請求人は、甲1には、閾値投与量のL-ドーパによりモデル動物に誘発されるジスキネジアは、KW-6002を併用した場合も程度が異ならなかった(即ち、KW-6002併用で増悪されない)ことが実験データと共に記載されていると主張する(審判請求書p47 最終行~p48 3行)。 しかし、ウェアリング・オフ現象、オン・オフ変動、及びジスキネジアはいずれもL-ドーパ長期投与における問題点ではあるものの、ウェアリング・オフ現象、オン・オフ変動とジスキネジアとは互いに異なる現象であることは本件特許の優先日当時の技術常識である(上記1(2))。一方、請求人、参加人が提出したいずれの証拠をみても、ジスキネジアを増悪させなければ、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少できるといった技術常識が本件特許の優先日当時に存在していたと認めることはできない。 そうすると、甲1(摘記(甲1i)(甲1k))に、L-ドーパ誘発性の中程度のジスキネジアを呈するMPTP処置コモンマーモセットに対して、KW-6002を閾値投与量、すなわち、単独での効果がほとんどみられない量のL-ドーパと併用して対象に投与した場合に、L-ドーパ誘発性のジスキネジアを増悪させないことが記載されていることをもって、L-ドーパ誘発性の、すなわちL-ドーパ療法において、ジスキネジアとは異なる現象であるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病のヒト患者を対象とし、L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために前記患者に投与することが記載されている又は記載されているに等しいということはできない。 ・図1、図4及び図5に示された試験結果について 甲1には、図1、図4及び図5に示された試験結果に関連して、「ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病のヒト患者を対象」とする点や、「L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために前記患者に投与すること」についてなんらの記載も示唆もないのであるから、甲1記載の試験結果を併せみても、上記相違点に係る本件訂正発明の構成が認識できるとはいえない。 以上によれば、甲1の、「“ウェアリング-オフ”及び“オン-オフ”応答変動を有する患者において、KW-6002のような化合物は、ジスキネジアを長引かせることなしに、“オン時間”を増加させることができる可能性がある」との記載(摘記(甲1n))が、それら図に示された試験結果を併せみても、それらの結果に基づくものであると認めることはできない。 よって、請求人が主張する甲1記載の発明が、甲1に記載されていると認定することはできない。 ウ 参加人の主張について (ア)参加人も、請求人と同様、甲1の摘記(甲1n)の記載は、合理的な実験データに基づき導かれた結論であると主張し(弁駁書p7 20~21行)、該実験データについては以下の指摘をしている。 ウェアリング・オフ現象は日内変動(摘記(丙4c))、即ち1日の覚醒時間内にオン・オフが繰り返される現象であるから、ウェアリング・オフ現象において、L-ドーパの薬効が得られないオフ時間にも、KW-6002が抗パーキンソン病活性を発揮することは明らかである。そして、オフ時間を減少させるには、L-ドーパの作用時間を延長することは要さないから(弁駁書p9下から10~9行)、上記抗パーキンソン病活性は結果としてオフ時間の減少として現れる。また、MPTP処理霊長類がヒトパーキンソン病患者の病態に極めて近い動物であることは技術常識であるから(要すれば、摘記(丙5a)、(丙11a))、MPTP処理霊長類を用いてヒトパーキンソン病患者への応用を念頭においた甲1の図4試験が、L-ドーパにKW-6002を併用投与すると、24時間にわたり薬効を発揮してL-ドーパの抗パーキンソン病活性を補完することを示している以上、L-ドーパの投与によりウェアリング・オフ現象が生じているヒトパーキンソン病患者に、KW-6002を併用投与すれば、L-ドーパの抗パーキンソン病活性が補完されてオフ時間が減少することは明らかである(弁駁書p6下から4行~p7 19行)。 (イ)参加人の上記主張は、要するに、KW-6002は24時間にわたりL-ドーパの抗パーキンソン病活性を補完することが甲1に記載されているのであるから、1日、すなわち24時間内に生じるであろうオフ時間においても上記補完効果を発揮し、その分だけオフ現象は生じないといえるから、オフ時間が減少するというものである。そして、その主張は、上記イに記載した請求人の主張と同じ趣旨のものであり、同様の理由によりこれを採用することはできない。 また、参加人は、MPTP処理霊長類がヒトパーキンソン病患者の病態に極めて近い動物であることは技術常識であるという。しかし、図4試験で使用しているMPTP処理コモンマーモセットが、L-ドーパを長期投与したモデル動物でないから、L-ドーパの長期投与において出現するウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動のオフ時間に対する作用効果を評価するためのモデル動物として適切であるとはいえない。 (5)小括 以上によれば、本件訂正発明は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえない。 したがって、本件訂正発明に係る特許は、無効理由1によって無効とすることはできない。 3 無効理由2について (1)甲1に記載された発明 甲1には、上記2(1)で説示したとおり、甲1発明が記載されていると認める。 (2)本件訂正発明と甲1発明との対比 本件訂正発明と甲1発明との一致点、相違点は、上記2(2)で説示のとおりである。 (3)判断 ア 相違点について (ア)甲1からの容易想到について 甲1には、「“ウェアリング-オフ”及び“オン-オフ”応答変動を有する患者において、KW-6002のような化合物は、ジスキネジアを長引かせることなしに“オン時間”を増加させることができる可能性がある」との記載(摘記(甲1n))がある。しかし、該記載が、甲1記載の試験結果から導き出されたものといえないことは、上記2(3)、2(4)イで説示したとおりである。また、甲1には、図4試験はもちろん、上記記載を除いて、「ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させる」ことに関して記載された箇所はない。 そして、本件特許の優先日当時の抗パーキンソン病薬の技術常識を示す甲4には、L-ドーパとの組合せ使用が検討されていた各種の薬物として、ドパミンアゴニストについては、L-ドーパの長期投与に伴うウェアリング・オフ現象、オン・オフ変動、ジスキネジア、ジストニア、精神症状などを抑制する効果が明確となったとの記載があり(摘記(甲4g))、また、COMT阻害剤については、これらの阻害剤はL-ドーパの代謝を抑制することが期待され、臨床的にはウェアリング・オフ現象の改善を目的としているとの記載がある(摘記(甲4h))。しかし、KW-6002等のアデノシンA2Aアンタゴニストについては、L-ドーパ長期治療によって生ずるジスキネジアを抑制することができるとの記載はあるが(摘記(甲4j))、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動に関する記載はなく、本件特許の優先日当時に、KW-6002等のアデノシンA2Aアンタゴニストを、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動の改善のためにL-ドーパと併用するとの技術常識が存在していたとはいえない。 そうすると、L-ドーパの長期投与においてウェアリング・オフ現象又はオン・オフ変動を示す状態のパーキンソン病ヒト患者又はそれに対応するモデル動物にKW-6002を投与する試験を行い、ウェアリング・オフ現象又はオン・オフ変動における効果を確認してみることなく、甲1に記載された試験結果から、KW-6002が、L-ドーパ療法によりウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病のヒト患者において、オフ時間を減少する薬剤として使用できることを、当業者が容易に想到し得たということはできない。 また、L-ドーパとの併用により自発運動活性や運動障害に対して24時間程度の増大作用を有する薬剤であれば、「ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動」のオフ時間を減少させる、との技術常識が本件特許の優先日当時に存在していたことは、提出されたいずれの証拠をみても理解できない。 以上のとおりであるから、甲1発明において、甲1に記載された事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が格別の創意を要することなくなしえたものとは認められない。 (イ)甲1~甲5からの容易想到について a 甲2には、L-ドーパの投与を受けていないMPTP処置コモンマーモセット又はL-ドーパ治療によって引き起こされ確立されたジスキネジアの状態を示すMPTP処置コモンマーモセットに対して、KW-6002を単独投与した場合に、KW-6002が奏する作用・効果についての試験結果が記載されている(摘記(甲2b)~(甲2i))。しかし、甲2には、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動について何らの記載もない。そして、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動はL-ドーパの長期投与において出現する状態であり、また、ジスキネジアはウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動とは異なる現象であることはすでに上記1(2)で説示のとおりである。そうすると、甲2に記載された事項は、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動のオフ時間に対するKW-6002の作用・効果についてなんらの知見も与えない。 b 甲3には、甲3記載の試験結果に関する記載に続いて、「これらの結果は、アデノシンA2A受容体アンタゴニストが、進行期パーキンソン病患者におけるドーパミン作動薬反応の持続の短縮を回復するのに有用である可能性があることを示唆している」(摘記(甲3a))との記載がある。しかし、甲3に記載されているのは、KW-6002の投与が、パーキンソン病モデル動物(摘記(甲3d))のアポモルヒネ誘発の回転運動応答の回転数を増加させ(摘記(甲3e))、また、その持続時間をより長くしたこと(摘記(甲3f)、(甲3k))や該モデル動物のL-ドーパに対する回転運動を増加させたこと(摘記(甲3l))であり、これら試験結果はいずれもウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階の動物を用いた試験によって得られたものではない。したがって、上記試験結果はウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階の動物においてKW-6002がその持続時間の短縮を回復させる、すなわち、オフ時間を減少させることを直接的に示すものではない。そもそも、上記試験は、アポモルヒネ誘発の回転運動応答についてのものであり、甲3に記載がないL-ドーパ誘発の回転運動応答において、L-ドーパとは異なる性質を有するアポモルヒネ(摘記(甲3d)、(乙3b))と同様の持続時間に対する作用・効果が得られるともいえない。 c 甲4には、L-ドーパ長期療法によるウェアリング・オフ現象、オン・オフ変動、ジスキネジアなどがパーキンソン病治療薬の課題となっていること(摘記(甲4c))が記載されている。そして、本件特許の優先日当時、L-ドーパ長期服用に伴う問題を最小限にとどめ長期的に安定した治療を継続するために他剤を組み合わせる併用が基本であることもまた記載されており(摘記(甲4f))、L-ドーパとの組合せ使用が検討されていた各種の抗パーキンソン病薬のうち、ドパミンアゴニストやCOMT阻害剤のいくつかの薬剤は、L-ドーパの長期投与に伴うウェアリング・オフ現象等を抑制又は改善する作用・効果を有することが知られていたといえる。しかし、本件特許の優先日当時、KW-6002などのアデノシンA2Aアンタゴニスト活性を有する薬物を、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動の改善のためにL-ドーパと併用するとの技術常識が見当たらないことは上記(ア)ですでに説示したとおりである。 d 甲5には、「アデノシンA2A受容体」の「選択的な拮抗薬」が「従来のドーパミン系薬物加療で問題となる副作用の発現や耐性の問題を克服」「する機能を持つ」と考えられるが、「KW-6002が、実際に、病状の進行を認めるパーキンソン病の患者において、期待される効果をどのように発揮するか、また上記問題点を克服できるかどうかについては、進行中のパーキンソン病患者を対象としたフェーズII試験の結果が待たれる」との記載がある(摘記(甲5f))。 上記問題となる副作用として、甲5には、L-ドーパ誘発性ジスキネジアが記載されているにとどまり(摘記(甲5e))、ウェアリング・オフ現象、オン・オフ変動については記載されていない。また、該「問題点を実際に克服できるかどうか」は、「パーキンソン患者を対象としたフェーズII試験の結果が待たれる」との上記記載によれば、本件特許の優先日当時、長期的投与の問題点に関し、ヒト臨床試験結果をみることなく判断できるという状況にあったとは認められない。 e 以上のとおり、甲1発明に甲1~甲5の記載事項を組み合わせても相違点に係る構成が導き出されるとはいえない。 イ 効果について 本件特許明細書には、実施例1として、L-ドーパ関連の運動合併症を伴うパーキンソン病患者に、L-ドーパとともに、KW-6002を4週間毎、3段階で、(5/10/20mg/日)、又は(10/20/40mg/日)のいずれか漸増的用量を投与したKW-6002群の被験者は、プラセボ群の被験者と比較して、オフ時間における有意な減少があったこと(図1)が記載されている。 そして、上記アで説示のとおり、(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンを含有する薬剤は、「パーキンソン病のヒト患者であって、L-ドーパ療法において、ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者を対象とし、」「前記L-ドーパ療法」において投与され、「前記L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために前記患者に投与され」という上記相違点に係る発明特定事項については当業者が容易に想到しえたといえないのであるから、その投与の結果もたらされる、L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるという効果は、甲1~甲5の記載事項及び本件特許の優先日当時の技術常識を参酌しても当業者が予測し得たものと認められないことは明らかである。 (4)請求人、参加人の主張について ア 甲1からの容易想到について (ア)請求人は、上記摘記(甲1n)の記載に加えて、次の甲1の記載事項を指摘の上、以下のとおり主張する。 甲1の、 (i)図1に関連する摘記(甲1g)の記載は、KW-6002単独の経口投与(10.0 mg/kg)が、投与後1.5~7.5時間まで明らかに、パーキンソン病モデル動物の自発運動活性を増大させ且つ運動障害を改善させたことを示している(審判請求書p47 6~8行)、 (ii)図4に関連する摘記(甲1h)、(甲1j)の記載によれば、閾値投与量2.5 mg/kgのL-ドーパ投与のみでは、モデル動物の自発運動活性と運動障害を統計学的に有意な回復効果は認められなかったが、 ・90分前にKW-6002を投与しておいた場合には、閾値投与量のL-ドーパの投与により自発運動活性及び運動障害の双方に対して統計学的に有意な効果が得られたこと、及び ・KW-6002投与から24時間後に閾値投与量のL-ドーパを投与したときにも、自発運動活性及び運動障害の双方に対して統計学的に有意な効果が得られたことが示されている(審判請求書p47 下から10~2行)、 (iii)図5に関連する摘記(甲1i)、(甲1k)及び(甲1m)の記載によれば、閾値投与量のL-ドーパによりモデル動物に誘発されるジスキネジアは、KW-6002の併用で憎悪されないことが実験データと共に記載されている(審判請求書p47 下2行~p48 3行)、 (iv)上記のとおり、摘記(甲1n)に記載されている結論は、上記実験結果と整合しており、それら一連の実験結果から導かれたものである(審判請求書p48 12~16行)、 また、その効果も、特に、L-ドーパの投与が、それのみでは薬効が殆ど発現しない閾値投与量で行われても、KW-6002と組合せた場合には、L-ドーパの投与がKW-6002の投与の90分後や24時間後であっても、自発運動活性と運動障害に対して有意な応答が得られる、という事実自体からも、当業者は、L-ドーパ療法を受けている患者において、L-ドーパの薬効が消失して行きウェアリング・オフが起こるはずの時間帯に至っても、KW-6002を併用しておけばL-ドーパの効果がKW-6002に支えられた分だけオン時間が延長する(即ち、オフ時間が減少する)ことを予測できた。 このため、甲1に接した当業者は、KW-6002が、「L-ドーパ療法」における「ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させる薬剤」として有効であろうと予測できたから、「オフ時間を減少させる」という本件訂正発明の効果は、予測を超えた顕著な効果ではない(請求書p48 17行~下から2行)。 (イ)参加人は、本件特許の優先日当時、L-ドーパの投与によりウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動が生じることは広く知られ、問題となっていた(摘記(丙4c))。そして、甲1は、実験データに基づき、KW-6002が、ウェアリング・オフ現象及びオン・オフ変動を示すヒト患者において、L-ドーパと組み合わせられて、オン時間を増加させる(即ち、オフ時間を減少させる)ことを記載している(摘記(甲1n))。 したがって、甲1の教示にしたがって、良く知られた課題を解決するために、KW-6002のオフ時間減少作用を再確認する動機付けがあり、本件訂正発明は、甲1に記載した事項にしたがって、KW-6002がウェアリング・オフ現象のオフ時間を減少させることを再確認したにすぎないと主張する(弁駁書 p12 12行~p13 2行)。 イ 甲1~甲5からの容易想到について (ア)請求人は、「甲1に加え、甲2~甲5の上記記載に触れた当業者は、KW-6002が、パーキンソン病モデル動物(コモンマーモセット)において裏付けられた、それ自体が有する持続的な基礎運動量回復効果、反復投与しても効果が減弱しないこと、及び閾値投与量のL-ドーパとの併用による運動障害の回復と自発運動活性の改善の効果から、パーキンソン病患者において、L-ドーパの血中濃度が閾値付近に低下してきた際でも、KW-6002を併用しておくことで運動障害回復と自発運動活性の改善の効果をある程度まで持続可能となり、その長さだけオン時間が増加する(即ち、オフ時間が減少する)可能性のあることを、本件優先日当時に予測することができたものであるから、本件訂正発明は、甲1~甲5に基づき当業者が容易に想到し得たものであると主張する(審判請求書p54 下から13~5行)。 また、請求人は、本件特許明細書記載の本件訂正発明が奏する効果に関して、オフ時間における減少割合から被験者の覚醒時間が常識的な数値を超える値になると計算されるから、その試験データの記載には誤りがあるとか、ベースラインの記載がなくオフ時間の変化の程度が不明なので、群内及び群間の差を考慮に入れた効果を評価することができないし、仮に評価し得るとしても、1日当たりのオフ時間減少は1.7時間程度にすぎないから、本件訂正発明に予想を超えた顕著な効果はない、と主張する(弁駁書p12下から11行~p15 10行)。 (イ)参加人は、本件特許の優先日当時、KW-6002について、治験中であり、フェーズII臨床試験が行われていたことが、甲4(摘記(甲4j))及び甲5(摘記(甲5c))に記載されていること、また、丙6には、アブストラクトの項目に、アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるKW-6002などの薬剤によって、ウェアリング・オフ現象の問題が解決されることが期待されているとの記載(摘記(丙6a))が、また、各論として、KW-6002について欧米で第II相臨床試験が終了しているとの記載(摘記(丙6d))があることから、丙6には、KW-6002のオフ時間減少効果について第II相臨床試験が行われたことが記載されているといえ、したがって、言甲1の結論(KW-6002はウェアリング・オフ現象のオフ時間減少のためにL-ドーパと併用できる可能性がある。)と、KW-6002のオフ時間減少効果についての第II相臨床試験が行われていることを見た当業者であれば、甲1の結論とそれを導いた実験データは、第II相臨床試験を行うだけの信頼性があるものであると考える筈であり、本件訂正発明は、甲1と甲4又は甲5から、容易に想到できると主張する(弁駁書p19下から12行~p20 5行)。 ウ 上記アの主張について 請求人や参加人が指摘する上記摘記(甲1n)の記載が、単にKW-6002の治療可能性を記したにすぎず、実質的に治療が記載されているとか、甲1記載の試験結果から治療が導き出されたものである、ということはできないし(上記2(4)イ~ウ)、また、本件特許の優先日当時、KW-6002等のアデノシンA2Aアンタゴニストを、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動の改善のためにL-ドーパと併用するとか、L-ドーパとの併用により自発運動活性や運動障害に対して24時間程度の増大作用を有する薬剤であれば、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動のオフ時間を減少させる、との技術常識が存在していたともいえない(上記(3)ア(ア))。したがって、L-ドーパの投与によりウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動が生じることが広く知られ、問題として認識されていたとしても、当業者が、甲1発明において、該問題を解決するために、上記可能性に係る記載事項の手段を採用して、上記相違点に係る構成とすることを動機付けられると認めることはできない。そして、本願訂正発明は、参加人が主張するような、甲1に記載した事項にしたがって、KW-6002がウェアリング・オフ現象のオフ時間を減少させることを再確認したにすぎないものでもない。 以上のとおり、上記アの請求人及び参加人の主張はいずれも採用できない。 エ 上記イの主張について 甲1~甲5には、KW-6002がウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階の動物において、L-ドーパとの併用において「オン時間」を延長する作用・効果を有することは記載されていない(上記(3)ア)。そして、L-ドーパを長期投与していないパーキンソン病モデル動物において、ある薬剤をL-ドーパと組合せ投与した場合に、24時間程度の自発運動活性を増大させ且つ運動障害を改善させる作用を有することが、L-ドーパを長期投与し、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病モデル動物においても、該薬剤が、自発運動活性を増大させ且つ運動障害を改善させる作用を有することを意味するものとはいえない。また、KW-6002等のアデノシンA2Aアンタゴニストがウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階の動物におけるオフ時間を減少させることが本件特許の優先日当時に知られていたといえないこともまた上記(3)ア(ア)で説示したとおりである。 そうすると、KW-6002が、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示していないパーキンソン病モデル動物(コモンマーモセット)において、持続的な基礎運動量回復効果を有し、反復投与しても効果が減弱せず、閾値投与量のL-ドーパとの併用による運動障害の回復と自発運動活性の改善の作用・効果を有するからといって、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動を示すに至った段階のパーキンソン病患者や当該モデル動物においても、L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるとは限らない。 また、効果についての上記請求人の主張は、覚醒時間が不変であるとの前提条件に立つものであり、覚醒時間が変化しうるものであることに照らすと、本件特許明細書記載の試験データが誤りであるということはできない。たしかに、ベースラインの数値の記載はないが、被験者は無作為に振り分けられ、試験群間ではベースライン特性の顕著な差が見られなかったとされているから(本件特許明細書の【0152】)、プラセボ群と被験者群の患者に効果について評価しえないほどの差があるとは認められない。また、1日当たり、1.7時間のオフ時間減少は、L-ドーパ製剤で治療中のパーキンソン病におけるウェアリング・オフ現象の改善薬として現在製造承認されている薬剤のそれと略同等であり(摘記(乙19a)、(乙19b)、(乙20a)、(乙2b)、(乙21a)、(乙21b))、効果がないというほど少ない数値ではない。 本件特許の優先日当時、KW-6002についてフェーズII臨床試験が行われていたことは、甲1の摘記(甲1n)の記載が該文献の実験データに基づくものであるか否かと直接的に関係するものではない。また、丙6には、KW-6002について欧米における第II相臨床研究が終了したことが記載されているが、当該研究において、KW-6002のオフ時間減少効果に関する試験が行われたことやその結果についてなんら明示的記載はない。本件特許の優先日当時、ある抗パーキンソン病への治療効果が期待される薬物についてフェーズII臨床試験を行うことが、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動のオフ時間を減少する作用・効果に関する試験が行われることを意味するとの技術常識があったとは認められない。そうすると、L-ドーパ製剤の長期投与によりウェアリング・オフ現象等の問題点が解決されることが期待されているとの一般的な記載をもって、アデノシンA2A受容体アンタゴニストについて上記試験が行われたことが記載されていたと解することはできない。したがって、本件特許の優先日当時、KW-6002についてオフ時間を減少する作用・効果についての試験研究がなされていたとも認められず、当業者が、甲1の摘記(甲1n)の記載と甲4、甲5記載の第II相臨床試験の実施に関する記載を併せみたとしても、甲1の試験データや摘記(甲1n)の記載に対する判断は変わらない。 以上のとおり、上記イの請求人及び参加人の主張はいずれも採用できない。 (5)小括 以上によれば、本件訂正発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものでも、また、甲1に記載された発明及び甲1~甲5に記載された事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 したがって、本件訂正発明に係る特許は、無効理由2によって無効とすることはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本件訂正は適法であり、本件訂正後の請求項1に係る特許は、請求人が主張する無効理由1、2のいずれによっても無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、参加によって生じた費用を含めて、請求人及び参加人の負担とする。 よって、結論のとおり、審決する。

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2020-800034

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