特許無効審判
2020-800100
微細結晶
- 審判番号
- 2020-800100
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2005-506044
- 登録番号
- 4606326
- 請求日
- 2020年10月12日
- 審決日
- 2022年06月07日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】共和薬品工業 株式会社
- 【請求人代理人】多田 央子
- 【請求人代理人】神野 直美
- 【請求人】日医工 株式会社
- 【請求人代理人】多田 央子
- 【請求人代理人】神野 直美
- 【被請求人】協和キリン 株式会社
- 【被請求人代理人】松任谷 優子
- 【被請求人代理人】梅田 慎介
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 伊藤 佑一
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1113.121-Y (C07D) / P1113.537-Y (C07D) / P1113.536-Y (C07D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法123条1項2号特許法123条1項4号特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4606326号発明「微細結晶」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第4606326号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2004(平成16)年5月7日(優先権主張2003年5月9日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その特許権について、平成22年10月15日に設定登録を受けたものである(請求項の数5)。現在の特許権者は、協和キリン株式会社(以下「被請求人」という。)である。
その後、本件の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効にすることについて、令和2年10月12日に共和薬品工業株式会社及び日医工株式会社(以下「請求人」という。)から、本件審判の請求がされた。
本件審判の手続の経緯の概要は次のとおりである。
令和 2年10月12日 審判請求書
令和 3年 6月 4日 審判事件答弁書
訂正請求書
同年 8月 6日付け 通知書(口頭審尋において審尋する事項を知らせるもの)
同年 同月16日 上申書1(被請求人)
同年 9月17日 口頭審尋
同年10月 4日付け 審理事項通知書
同年 同月28日 口頭審理陳述要領書(1)(請求人)
同年 同月 同日 口頭審理陳述要領書(1)(被請求人)
同年11月11日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
同年 同月 同日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
同年 同月16日 上申書2(請求人)
同年11月18日 口頭審理
同年12月 1日 上申書3(請求人)
同年 同月22日 上申書4(被請求人)
令和 4年 1月21日付け 審決の予告
同年 4月 1日 訂正請求取下書
上申書は提出された順に「上申書1」等とした。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~5に係る発明は、登録時の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
0.5~20μmの平均粒径を有し、結晶化度が40%以上である
[図:0001406068000001.jpg]
で表される(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンの微細結晶。
【請求項2】
0.5~20μmの平均粒径を有し、結晶化度が40%以上である(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンの微細結晶を含むことを特徴とする固体医薬製剤。
【請求項3】
微細結晶が、(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンの結晶を粉砕して得られる微細結晶である請求項2記載の固体医薬製剤。
【請求項4】
微細結晶が、(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンの結晶と添加剤を混合し、得られた混合物を粉砕して得られる混合物中の微細結晶である請求項2記載の固体医薬製剤。
【請求項5】
粉砕が、ジェットミルを用いて行う粉砕である請求項3または4記載の固体医薬製剤。」
(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明5」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。また、(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンを「化合物1」ともいう。)
第3 請求人の請求の趣旨、無効理由の概要及び証拠方法等
1 請求人の請求の趣旨、主張する無効理由の概要
請求人の請求の趣旨は、「特許第4606326号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」であり、審判請求書、口頭審理陳述要領書(1)、口頭審理陳述要領書(2)、上申書2、上申書3において、以下の無効理由1~4を主張していると認められる。
(1)無効理由1(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到できたものであるため、特許法第29条第2項に規定する要件を満たさず、請求項1~5に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、無効とすべきである(同法第123条第1項第2号)。
(2)無効理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から、その全体にわたりその課題を解決することができると認識できないものであるため、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たさず、請求項1~5に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、無効とすべきである(同法第123条第1項第4号)
(3)無効理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、請求項に係る発明の範囲が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たさず、請求項1~5に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、無効とすべきである(同法第123条第1項第4号)。
(4)無効理由4(実施可能要件)
本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1~5に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないため、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たさず、請求項1~5に係る発明の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、無効とすべきである(同法第123条第1項第4号)。
2 請求人が提出した証拠方法等
請求人は、証拠方法として以下の書証を提出している。
(以下、書証は、その証拠番号により、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」などともいう。)
甲1 特開平6-211856号公報
甲2 特開平9-40652号公報
甲3 国際公開第97/04782号
甲4 宮崎正三他8名著、新しい図解薬剤学、1990年7月5日、株式会社南山堂発行、第1版、16~23頁
甲5 日本結晶成長学会誌、1996年、Vol.23、No.5、50~57頁
甲6 J.T.Carstensen編、永井恒司訳、医薬品の溶出、1979年9月20日、株式会社地人書館発行、初版第2刷、104頁
甲7 吉岡澄江著、医薬品の安定性-よりよい開発と評価のための基礎から実際まで-、1995年2月15日、株式会社南江堂、30、53、56、109、147頁
甲8 Die Pharmazie、41、(1986)、H.9、664~665頁
甲9 特開2000-103733号公報
甲10 薬局、2000年、Vol.51、No.5、22~23頁
甲11 病院薬学、2000年、Vol.26、No.5、532~541頁
甲12 特開2002-308762号公報
甲13 中井泉他1名編著、粉末X線解析の実際-リートベルト法入門、2002年2月10日、株式会社朝倉書店発行、初版、25~26、31、38~39、56頁
甲14 共和薬品工業株式会社 分析研究部 研究員 西川耀氏による、2020年9月29日との日付が付された、「非晶質の化合物1が経時的に結晶化することを確認する」ことを目的としたとされる、実験成績証明書
甲15 共和薬品工業株式会社 分析研究部 研究員 西川耀氏による、2020年9月29日との日付が付された、目的欄に「・・・(略)・・・特許第4606326号の化合物1の結晶は・・・(略)・・・そのピーク強度から求めた結晶化度は、結晶試料により異なることを確認する」が記載された、実験成績証明書
甲16 庄野利之他1名編著、入門機器分析化学、1996年10月20日、三共出版株式会社発行、初版第16刷、113~117頁
甲17 加藤誠軌著、X線で何がわかるか、1990年5月1日、株式会社内田老鶴圃発行、第1版、113~114頁
甲18 薬学雑誌、1985年、Vol.105、No.6、580~585頁
甲19 特開平7-10756号公報
(以上、審判請求書に添付して提出。)
甲20 A GUIDEBOOK TO PARTICLE SIZE ANALYSIS、2010年、HORIBA Instruments、Inc.、1~11頁
甲21 Interpreting Your PSA Results、2010年、HORIBA、Ltd.、1、29頁、<URL: https://www.horiba.com/fileadmin/uploads/Scientific/Documents/PSA/TR008.pdf>
甲22 平成17年(行ケ)第10189号判決
(以上、令和3年10月28日提出の口頭審理陳述要領書に添付して提出。)
甲23 請求人代理人弁理士多田央子氏により作成された乙5号証抄訳文
甲24 請求人代理人弁理士多田央子氏により作成された乙6号証抄訳文
(以上、令和3年11月11日提出の口頭審理陳述要領書(2)に添付して提出。)
甲25 共和薬品工業株式会社 製剤研究部 主任 山本珠実氏及び分析研究部 研究員 西川耀氏による、2021年11月25日との日付が付された実験成績証明書
(以上、令和3年12月1日提出の上申書3に添付して提出。)
第4 被請求人の答弁の趣旨、及び証拠方法等
1 被請求人の主張の概要
被請求人の答弁の趣旨は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」であり、審判事件答弁書、上申書1、口頭審理陳述要領書(1)、口頭審理陳述要領書(2)、上申書4において、請求人が主張する無効理由のいずれにも理由がない旨の反論をしている。
なお、審判事件答弁書第2頁の趣旨においては、「訂正の請求を認める」との記載があるが、前記第1に記載したように、本件の訂正の請求は取下げられているので、上記のとおり認定した。
2 被請求人が提出した証拠方法等
被請求人は、証拠方法として以下の書証を提出している。
乙1 医薬品インタビューフォーム 睡眠導入剤 ハルラック○R(当審注:丸の中に「R」が入る)錠0.125mg ハルラック○R(当審注:丸の中に「R」が入る)錠0.25mg、2020年4月改訂、第5版
乙2 医薬品インタビューフォーム アロマターゼ阻害剤/閉経後乳癌治療剤 アナストロゾール錠1mg「日医工」、2019年11月改訂、第7版
乙3 愛知学院大学 薬学部医療薬学科 製剤学講座 教授 薬学博士 山本浩充氏による、令和3年5月31日との日付が付された見解書
乙4 千葉大学大学院薬学研究院 製剤工学研究室 教授 薬学博士 森部久仁氏による、令和3年4月15日との日付が付された見解書
乙5 Pharmaceutical Research、2002年、Vol.19、No.12、1894~1900頁
乙6 JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES、2003年、Vol.92、No.1、35~44頁
乙7 神鋼パンテツク技報、1989年、Vol.33、No.3、1~6頁
乙8 PHARM TECH JAPAN、1999年、Vol.15、No.9、39~44、47~49頁
(以上、審判事件答弁書に添付して提出。)
乙9 協和キリン株式会社 生産本部 CMC研究センター 分析2グループ 内田喜子氏による、2021年8月16日との日付が付された実験成績証明書
(以上、令和3年8月16日提出の上申書1に添付して提出。)
乙10 ‘医薬品の安定性試験の実施方法’、[online]、[令和3年11月8日検索]、インターネット、<URL: https://www.pmda.go.jp/files/000208425.pdf>
乙11 協和キリン株式会社 生産本部 CMC研究センター 製剤2グループ 三浦誠司氏による、2021年10月22日との日付が付された実験成績証明書(2)
(以上、令和3年11月11日提出の口頭審理陳述要領書(2)に添付して提出。)
第5 各証拠に記載された事項
1 各甲号証の記載事項
(1)甲1には以下の記載がある。
記載(1a)
「【請求項1】 式(I)
【化1】
[図:0001406068000002.jpg]
{式中、R1 およびR2 は同一または異なってメチルまたはエチルを表し、R3は同一または異なって水素、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、R4 はシクロアルキル、-(CH2)n -R5 (式中、R5 は置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、nは0~4の整数を表す)または
【化2】
[図:0001406068000003.jpg]
[式中、Y1 およびY2 は同一または異なって水素、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、Zは置換もしくは非置換のアリール、
【化3】
[図:0001406068000004.jpg]
(式中、R6 は水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロまたはアミノを表し、mは1~3の整数を表す)または置換もしくは非置換の複素環基を表す]を表し、X1 およびX2 は同一または異なってOまたはSを表す}で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分とするパーキンソン氏病治療剤。
【請求項2】 式(I-A)
【化4】
[図:0001406068000005.jpg]
[式中、R3aは水素または低級アルキルを表し、Za は
【化5】
[図:0001406068000006.jpg]
(式中、R7 、R8 、R9 の少なくとも一つは低級アルキルまたは低級アルコキシを表し、他の基は水素を表し、R10は水素または低級アルキルを表す) または
【化6】
[図:0001406068000007.jpg]
(式中、R6 およびmは前記と同意義を表す)を表し、R1 およびR2 は前記と同意義を表す]で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩。」(特許請求の範囲)
記載(1b)
「【産業上の利用分野】本発明は、強力でかつ特異性の高いA2 拮抗作用を有するキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分とするパーキンソン氏病治療剤に関する。」(段落0001)
記載(1c)
「化合物(I)またはその薬理的に許容される塩はそのままあるいは各種の製薬形態で使用することができる。本発明の製薬組成物は活性成分として、有効な量の化合物(I)またはその薬理的に許容される塩を薬理的に許容される担体と均一に混合して製造できる。これらの製薬組成物は、経口的または注射による投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。
経口服用形態にある組成物の調製においては、何らかの有用な薬理的に許容される担体が使用できる。例えば懸濁剤およびシロップ剤のような経口液体調製物は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。粉剤、丸剤、カプセル剤および錠剤は、ラクトース、グルコース、シュークロース、マンニトール等の賦形剤、でん粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。錠剤およびカプセル剤は投与が容易であるという理由で、最も有用な単位経口投与剤である。錠剤やカプセル剤を製造する際には固体の製薬担体が用いられる。」(段落0120~0121)
記載(1d)
「実施例2
(E)-8-(3,4- ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチン(化合物2)
実施例1で得られた化合物1の1.20g(3.24 ミリモル) をジメチルホルムアミド25mlに溶解し、これに、炭酸カリウム1.12g(8.10 ミリモル) 次いでヨウ化メチル0.40ml(6.49 ミリモル) を加え、50℃で30分間攪拌した。冷却後、不溶物を濾過により除き、濾液に水100ml を加えた。クロロホルム50mlで3回抽出後、抽出液を水で2回次いで飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;40%酢酸エチル/ヘキサン)で分離・精製し、2-プロパノールより再結晶することにより、化合物2を840mg(収率68%)薄黄色針状晶として得た。」(段落0127)
記載(1e)
「【表1】
[図:0001406068000008.jpg]
」(段落0059)
(2)甲2には、以下の記載がある。
記載(2a)
「参考例3
(E)-1,3-ジエチル-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-7-メチルキサンチン(化合物b)の製造
実施例2で得られる化合物2、300g(0.773mol)にエタノール1.20L 及び4規定水酸化ナトリウム水溶液1.50L を加え、80℃で3時間撹拌後、25℃に冷却した。濃塩酸を加えてpHを7に調整した反応溶液にクロロホルム2.28L を加え、10分間撹拌、10分間静置後に分液した。有機層を0.74L になるまで減圧濃縮し、残渣にN,N-ジメチルホルムアミド3.96L 、炭酸カリウム161g(1.165mol)及びヨウ化メチル57.6mL(0.925mol)を加え、40℃で4時間撹拌した。反応混合物を25℃に冷却し、撹拌しながら水3.96L を30分かけて加え、さらに2時間撹拌した。析出した淡黄色針状結晶を濾取し、水0.24L で洗浄して、化合物bを231.8g(0.603mol,78.0%)得た。」(段落0039)
(3)甲3には、以下の記載がある。
記載(3a)
「水難溶性でかつ結晶性の高い薬物は消化管内での溶解度の低さと溶解速度の遅さから、一般にバイオアベイラビリティーが低い。この吸収性を改善するために、従来より薬物結晶を微粉砕したり、非晶質化する方法が検討されている。」(1頁8~10行)
記載(3b)
「非晶質化の方法としては、単独粉砕、固体分散体等がある。単独粉砕で非晶質化する薬物結晶は限られている。また、水難溶性の化合物を高分子に分散させて固体分散体とし、溶解性や吸収性を改善することが知られている。
しかし、難溶性薬物であるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩の固体分散体または固体分散体製剤は知られていない。
発明の開示
本発明は、 式 (I)
[図:0001406068000009.jpg]
(式中、 R1 および R2 は同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキル基を表し、Qは水素または水酸基を表す。)で表されるキサンチン誘導体[以下、化合物(I) という。] またはその薬理的に許容される塩と高分子を含む固体分散体に関する。」(1頁13行~2頁3行)
記載(3c)
「本発明の固体分散体は、例えば混合粉砕法、溶媒法、溶融法、加熱溶融混練法等により調製できる。
混合粉砕法とは、化合物(I) またはその薬理的に許容される塩を高分子とともに混合機器等を用いて混合したものを粉砕機等を用いて粉砕する方法をいう。」(4頁下から2行~5頁2行)
(4)甲4には、以下の記載がある。
記載(4a)
「難溶性薬物の溶解速度を大きくするために,結晶の粒子径を小さくしたり,結晶形を変えたりすることがしばしば行なわれる.」(16頁6~8行)
記載(4b)
「固体が溶媒に溶けるということは,固体と溶媒(または溶液)との間で起こる化学反応の一種とみなすことができる.したがって溶解過程は固液界面における化学反応過程と,生成物界面から溶液主部bulk solutionへ移動する拡散過程から成り立つ.そしてこのいずれが遅いかにより次の3つの形式に分けられる.
1)界面反応過程が律速段階となる場合(chemically controlled type)
2)拡散過程が律速段階となる場合(diffusion controlled type)
3)両過程が律速段階となる場合
一般には医薬品の溶解は2)の拡散過程が律速となる場合が多い.この機構で行われる溶解過程を図示すれば図1-14のようになる.固体表面に接する飽和層と,この層の外側に拡散層の2つの液の層があり,溶解速度は薬物分子が拡散層中を移動する速度により決まる.また飽和層の形成は瞬間的であり,この層の溶質濃度はその飽和濃度Csに等しい.」(16頁11~22行)
記載(4c)
「
[図:0001406068000010.jpg]
」(17頁)
記載(4d)
「a.Noyes-Whitneyの式
溶解過程が拡散律速であるとき,固体薬品の溶解の速さは次のノイエス・ホイットニー Noyes-Whitneyの式により表わされる.
[図:0001406068000011.jpg]
(1-7)
ここでCは時間tにおける溶液の濃度,Csはその溶媒に対する溶解度,Sは固体の表面積,kは溶解速度定数である.式(1-7)より固体薬品の溶解速度は,固体の表面積Sと濃度勾配に比例することがわかる.すなわち固体の表面積が大きければ溶解速度は大きくなる.また時間とともに次第に溶けにくくなるのは,溶解によって溶液の濃度Cが増加し,Cs-Cが小さくなるからである(図1-15).ただしこのとき固体の表面積は変化しないものとする.」(16頁12~最終行、18頁1~5行)
記載(4e)
「溶液の濃度Cが飽和濃度Csに比べてきわめて小さい値である(Cs≫C)とき,すなわちシンク条件sink conditionとすると式(1-7)は
[図:0001406068000012.jpg]
(1-8)
となる.この場合時間が経過してもCs-C≒Cs=一定で溶解速度はSだけの関数になるので溶解速度は次第に減少する.」(18頁6~10行)
記載(4f)
「a.温度
一般に薬物の溶解速度は温度の増加とともに増大する.これは,溶解度がふつう温度とともに増加するために溶解度Csと溶解濃度Cとの差が大きくなるためで,また拡散定数Dも温度上昇により増加するためである.」(20頁5~8行)
記載(4g)
「a.粒子径(表面積)
固体薬品の溶解速度を大きくするために,粉砕などにより粒子径を小さくすることが行なわれる.粒子径が減少すると比表面積が増加し溶解速度が増加する.粉末の比表面積Sw(単位重量あたりの表面積)は各粒子が球形であると仮定すると次のように表わされる.
[図:0001406068000013.jpg]
ここでdは平均粒子径,ρは密度である.
表1-8は粒子径と比表面積との関係を示したもので,比表面積は粒子径に反比例して大きくなっていることがわかる.」(20頁20~28行)
記載(4h)
「
[図:0001406068000014.jpg]
」(23頁図1-21)
(5)甲5には、以下の記載がある。
記載(5a)
「医薬品の分野で溶液から溶質を析出させるとき,結晶よりもむしろ非晶質として析出させることで,水に難溶性の薬物の溶解性を改善し結晶に比べて高いバイオアベイラビリティーを発揮させる試みが,非晶質の保存安定性とともに研究の対象となっている38,39).」(54頁右欄15~20行)
(6)甲6には、以下の記載がある。
記載(6a)
「粒子径を細かくして表面積を増加させると,溶解速度を増加させることができるはずである.しかし,単に表面積を増やすだけでは不十分で,増加すべきなのは有効表面積である.・・・薬物が疎水性で溶媒による濡れが劣る場合には,粒子径を小さくすると凝集が起こり,有効表面積がかえって小さくなる結果,溶解速度が遅くなることがある.」(104頁7~11行)
(7)甲7には、以下の記載がある。
記載(7a)
「加圧・粉砕などの機械的要因も安定性に影響を与える場合がある.」(30頁13~14行)
記載(7b)
「固体状態の薬物の安定性には,薬物自体の結晶状態が大きな影響を示すことが知られている.」(53頁2~3行)
記載(7c)
「非晶質状態の薬物は,結晶状態に比較して安定性が悪いことは種々の薬物について報告されている.非晶質状態は結晶状態よりも高いエネルギー状態にあるため,化学反応を起こしやすいのである.」(53頁13~15行)
記載(7d)
「医薬品の品質が温度や湿度,光などの環境因子の影響を受けてどのように経時的に変化するかを明らかにすること,さらにその結果に基づいて有効期間(shelf-life)を設定することが必要であり,医薬品の製造承認を申請するときには,その医薬品の安定性を科学的に評価した資料を提出しなければならない.これら安定性に関する資料を作成するための指針として,安定性試験ガイドラインが厚生省によって提示されている.」(147頁13~17行)
記載(7e)
「薬物とともに医薬品製剤に加えられる添加剤が薬物の安定性に影響を与えることは,古くから種々の薬物と添加剤の系について報告されている.溶液状態のアスコルビン酸に及ぼす糖などの安定化作用318),塩酸チアミンの粉末製剤の加水分解に及ぼすタルクの促進作用319,320),アミンの塩とラクトースの着色反応に及ぼすステアリン酸マグネシウムなどの促進作用321),アスピリンの錠剤の分解に及ぼすタルクの純度の影響322),ステアリン酸323,324)やコハク酸カルシウムなどの添加剤の影響325)など数多くの報告があるが,それらの作用についての詳細な機構は不明な場合が多い.この他にも配合変化に関する情報は,古くから非常に多く蓄積されている326~330).フロモキセフと糖類の配合変化331),高カロリー輸液と微量元素との配合変化332)など,最近に至っても続々と報告されている.
添加剤が薬物の安定性に影響を及ぼす機構および様式は多様である.」(56頁5~14行)
記載(7f)
「医薬品においてはしばしば,その薬効成分が非晶質として存在するように設計される.非晶質の方が一般的に溶解性が高いため,特に難溶性薬物の場合には薬物を非晶質状態で用いることが多い.しかし,非晶質は結晶状態に比べて一般にエネルギーが高い状態であるため,経時的に結晶化し、より安定な状態へ変化する傾向がある.」(109頁下から5~2行)
(8)甲8には、以下の記載がある。(訳文にて示す。)
記載(8a)
「
[図:0001406068000015.jpg]
図 整然とした状態からのエルゴカルシフェロールの分解依存。1:結晶性;2:粉砕しないアモルファス;3:粉砕したアモルファス」(665頁図)
(9)甲9には、以下の記載がある。
記載(9a)
「【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、リコピンが特に酸化安定性および光安定性であり、かつ前記公知技術の欠点を有しない、リコピン粉末製剤を製造することである。
【課題を解決するための手段】この課題は、20%を上回る結晶化度を有するリコピンを含有する、安定なリコピン粉末製剤により解決する。」(段落0018~0019)
(10)甲10には、以下の記載がある。
記載(10a)
「表3.錠剤の粉砕およびカプセル剤の開封に伴う主な問題点
1)製剤の物理的安定性に対する影響
・光に対する安定性(酸化分解など)
・・・」(23頁表3)
(11)甲11には、以下の記載がある。
記載(11a)
「粉砕方法の違いにより発生する問題点としては,粉砕物の吸湿,粉砕物中の主薬の安定性変化および溶出挙動の変化などが考えられる6).」(533頁左欄8~10行)
(12)甲12には、以下の記載がある。
記載(12a)
「本発明の課題は、ビソプロロールを含有する安定な製剤を提供することにある。より具体的には、流通段階や薬局において格別の保存条件を必要とせず、長期にわたって安定なビソプロロール含有製剤を提供することが本発明の課題である。本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、フマル酸ビソプロロール、乳糖及び特定のセルロース誘導体を非溶融状態で含む組成物が極めて優れた保存安定性を有しており、この組成物を含む製剤では低防湿包装形態下においても有効成分の含有量が低下せず、製剤表面の荒れや製剤硬度の低下が生じないことを見出した。」(段落0004)
記載(12b)
「
[図:0001406068000016.jpg]
」(段落0018表1)
記載(12c)
「
[図:0001406068000017.jpg]
」(段落0024表2)
記載(12d)
「
[図:0001406068000018.jpg]
」(段落0027表3)
(13)甲13には、以下の記載がある。
記載(13a)
「2.2 回折プロファイルの変形・変位
実測粉末回折プロファイルは,表2.2に列挙した様々な要因により変形・変位している6).」(25頁右欄下から2行~26頁左欄1行)
記載(13b)
「表2.2 集中法光学系における誤差要因
誤差の種類 誤差の原因 回折パターンへの影響
回折角 強度 半値幅
・・・
試料調整誤差 試料表面の形状 小 中 大
試料の厚み 中 大 中
試料の熱膨張 大 中 小
・・・」(26頁表2.2)
記載(13c)
「2.2.3 試料の調製と温度に起因する誤差
これらの誤差は,回折角の変位やプロファイルの広がりを引き起こす以外に,回折強度にも多大な影響を与える.
a.試料表面の平滑さ
集中法では,焦点円に沿った滑らかな試料表面だけでX線が回折するのが理想である.したがって,表面に凹凸が存在すると,正負両方向に偏心しているのと同様となり,凹凸の分布に対応したプロファイルの広がりが観測される.極端な場合,回折線が分裂することさえある.反射法による強度測定では,試料表面の凹凸は回折X線の自己吸収を増大させ,2θの減少とともに回折強度を低下させる.測定波長における線吸収計数の大きな試料では,この効果がとりわけ顕著になる.
b.試料の厚み
対称反射法による測定では,試料が薄いと,2.1.1で述べた照射体積一定の前提条件が成立せず,高角に向かうにつれて回折強度が低下する.
c.粗大結晶の残留
粉砕が不十分で,粗大結晶が残っていると,一部の反射強度が偶発的に強まり,実測回折強度の再現性が低下する(7.1.1参照).
d.選択配向
粉末回折による強度測定は,微結晶の方位が完全に無秩序であることを前提としている.しかし,層状化合物のようにへき開しやすい物質や,針状結晶を試料板に充填(当審注:原文は、つちへんに「眞」)すると,それぞれへき開面と伸長方向が平板試料面に沿って配向しやすく,回折強度に影響を与える(7.1.2参照).
e.試料の熱膨張
試料の温度が変化すると,試料の熱膨張率に対応した格子定数の変化が回折角の変位をもたらす.」(31頁左欄4行~右欄5行)
記載(13d)
「a.試料の調製
粉末X線回折で使用する試料は微細結晶であり,試料ホルダーに充填(当審注:原文は、つちへんに「眞」)した状態で,全体として結晶子の方位が完全に無秩序となっていることを前提として回折強度を測定する.ただし,へき開しやすい試料,針状結晶,集合組織を有する塊状試料の場合,この前提条件を満足させるのはかなりむずかしく,試料調製に工夫を凝らす必要がある.」(38頁右欄5行~39頁左欄1行)
記載(13e)
「(i)粉末試料 粉末試料の場合,粒径が回折強度に影響する.回折強度の再現性を確保するには,0.5~数μm程度の粒径が最適である.
粗大結晶が混入していると,デバイ-シェラー環に斑点が入り混じり,回折強度の再現性がなくなる(図2.48).」(39頁左欄6~11行)
記載(13f)
「4.1.5 定量分析用の試料調製
X線回折法による定量分析の精度は,よい場合で相対誤差1~5%,悪い場合には20~50%になってしまう.再現性は,よいもので1~3%,悪いものでは10~20%ものばらつきを示す試料もある.」(56頁右欄16~20行)
(14)甲14には、以下の記載がある。
記載(14a)
「 2020年9月29日
実験成績証明書
共和薬品工業株式会社
分析研究部 研究員
西川 耀
1.目的
非晶質の化合物1が経時的に結晶化することを確認する。
2.方法
特許第4606326号明細書の表1の4つの試料を再現した試料1~4と、化合物1の結晶(結晶化度97.1%)をHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を用いずにボールミルで粉砕した微結晶(試料5)を、ガラス瓶に入れて密栓し、55℃、75%RHの条件下で4週間保存し、試料調製直後、試験開始1週間後、2週間後、及び4週間後に結晶化度を測定した。
[図:0001406068000019.jpg]
」(1頁)
記載(14b)
「
[図:0001406068000020.jpg]
特許第4606326号の表1から抜粋した4つの試料1~4のうち、試料1、試料4で、結晶化度の経時的な上昇が認められた。比較的結晶化度が低い試料、即ち非晶質部分が多い試料では、結晶化度が経時的に上昇することが確認された。
また、試料1、3(特に、試料1)は、特許第4606326号の表1に記載の結晶化度と、結晶化度測定値が異なっていた。特許第4606326号明細書は、結晶化度の結果に影響を及ぼす測定条件を特定していないため、再現性が得られなかったことが分かる。」(2頁22行~3頁6行)
(15)甲15には、以下の記載がある。
記載(15a)
「 2020年9月29日
実験成績証明書
共和薬品工業株式会社
分析研究部 研究員
西川 耀
1.目的
X線回折シグナルの強度を正確に求めようとする際、試料は無配向試料であることが前提となっている。特許第4606326号の化合物1の結晶は針状結晶であり、特定方向に配向した場合に、無配向試料とは異なる粉末X線回折パターンを与えるため、そのピーク強度から求めた結晶化度は、結晶試料により異なることを確認する。
2.方法
異なる原薬メーカーの3種の化合物1の結晶について、結晶の向きを同じ方向に揃えた状態で粉末X線解析を行った。
具体的には、A社、B社、C社の各結晶を、微量用シリコン無反射板に同量ずつ乗せ、結晶の向きを揃えるように同じ一定方向に指で撫で、なるべく結晶同士の重なりのない状態にした。これについて、以下の条件で評価を行った。
・測定試料
A社、B社、C社の各結晶の走査型電子顕微鏡写真を下記に示す。各結晶はそれぞれ互いに異なる特定方向に配向している。
[図:0001406068000021.jpg]
[図:0001406068000022.jpg]
」(1頁~2頁上段の図)
記載(15b)
「3.結果
粉末X線解析の結果を下記図に示す。
[図:0001406068000023.jpg]
各結晶のシグナル位置には差が認められなかったことから、結晶形に差はないと判断した。
一方、それぞれのピーク強度の比について差が生じており、2θ=16°のピーク強度は各結晶により大きく異なっていた。
4.考察
2θ=16°のピーク強度が各結晶により大きく異なっており、これは原薬メーカーごとに異なる晶析条件を用いているために、各試料の結晶方位(配向方向)が異なったことが原因と考えられる。即ち、同じ結晶形でも結晶方位が異なるものは、同じ方向に揃えて解析すると、ピーク強度が異なっている。このことから、結晶試料が配向している場合は、2θ=16°のピークの積分値から求まる結晶化度の値は配向試料により異なることが示唆された。
以上の様に、無配向試料であることが保証されていない場合には、特許第4606326号の化合物1の結晶を用いて正確なピーク強度を求めることはできないことが分かった。
以上」(3頁)
(16)甲16には、以下の記載がある。
記載(16a)
「
[図:0001406068000024.jpg]
」(117頁図5-24)
(17)甲17には、以下の記載がある。
記載(17a)
「4.3.8 結晶化度
ある物質中に占める結晶性部分の割合を結晶化度(degree of crystallinity)と呼ぶ。結晶化度xは、結晶性部分の質量をmc、非晶性部分の質量をmaとすると、全体に対する結晶性部分の割合で表される。結晶性部分と非晶性部分の化学組成が同じであれば、全散乱強度はそれらの量比に関係なく一定である。したがって、結晶性部分による回折強度Icと非晶性部分による散乱強度Iaとの比Ic/Iaはそれらの質量比mc/maに比例する。実際には、非晶性部分の散乱強度にはコンプトン散乱、連続X線による散乱、螢光X線などのバックグラウンド成分を含んでいるので、それらを正確に分離することが難しい。」(113頁1~10行)
(18)甲18には、以下の記載がある。
記載(18a)
「シクロデキストリン(CyD)類はグルコースがα-1,4-glucoside結合により環状に結合した化合物で,種々の化合物と包接化合物を形成する性質を有しており多方面で研究されている.2)薬学領域では,医薬品の安定化,可溶化等への利用が多数報告されている.3)また,著者らはアスピリン,サリチル酸,安息香酸等の結晶性薬品とCyD類を混合粉砕することにより,これらの薬品がCyD類と共に非晶質化することも報告している.4)」(580頁日本語の要約1~4行)
(19)甲19には、以下の記載がある。
記載(19a)
「本発明の製剤に含まれる塩酸二カルジピン結晶は、公知の塩酸二カルジピン結晶を、必要に応じて通常の粉砕機例えばボールミル、ハンマーミル、ジェットミルなどで粉砕して調製することができる。」(段落0007)
(20)甲20には、以下の記載がある。訳文にて示す。
記載(20a)
「分布幅を決めるもう一つの一般的なアプローチは、図5に示されるように、X軸上の3つの値であるD10、D50、及びD90を引用することである。D50、メジアンは、集団の半分がこの値の下にある直径として上記のように定義されている。同様に、分布の90パーセントはD90の下にあり、集団の10パーセントはD10の下にある。」(6頁1~5行)
記載(20b)
「仕様として分布の単一ポイントを使用することよりむしろ、分布の幅を説明するために他のサイズパラメーターを含むことが勧められる。スパンは、分布幅:(D90-D10)/D50を数値化する一般的な計算である。しかし、粒子サイズ仕様の部分としてのスパンをみることは珍しい。より一般的な慣行は、分布の最も粗い及び最も細かい部分を説明する2ポイントを含むことである。これらは典型的にはD90とD10である。D50と同じ慣習を使用して、D90は分布の90パーセントがより小さいサイズを持ち、10パーセントがより大きいサイズを持つ直径であることを説明する。D10直径は、10パーセントがより小さく、90パーセントがより大きい。D10、D50、及びD90を特徴付ける3点仕様は、ほとんどの粒子状材料について、完全で適切であると考えられるだろう。」(11頁1~11行)
記載(20c)
「分布の100%は定められたサイズより小さいという要求を、どうしても含めたくなるかもしれない。これは、推奨されていないD100の計算を暗に意味する。D100の結果(そして、それほどの意味はないが、D0)は、どのような実験からも、最も確実性がない計算である。気泡や熱揺らぎのような測定中のどのような些細なかく乱もD100の値に有意に影響を与える。加えて、最大及び最小の粒子の数は余り多くない可能性があるため、この値(そして、D99、D1などの他の“極端な”値)の計算を伴う統計は、確実性がない。D100の広い広がりの可能性を考えると、粒子のD100は所定サイズより小さいという陳述を伴う特定にD100を使うことは推奨されない。」(11頁25~34行)
(21)甲21には、以下の記載がある。訳文にて示す。
記載(21a)
「あなたのPSA結果の解釈」(1頁標題)
記載(21b)
29頁には、標題として「最も一般的な統計」が記載されており、右下の枠内に、「D100を決して使うな!」との記載がある。
(22)甲22には、以下の記載がある。
記載(22a)
「しかし,上記のとおり,本件明細書には,本件発明1について500ppmの濃度が臨界的意義を有することを示す記載は一切存在しない。
特許請求の範囲において特定の数値限定のされた発明について当該数値の内外において特定の作用硬化が顕著に異なるという,いわゆる数値限定の臨界的意義に基づき発明の進歩性が認められるためには,当該数値限定の臨界的意義が明細書において開示されていることを要するものというべきである。原告の主張は,明細書の記載を離れて本件特許発明1の進歩性を主張するものであり,採用することができない。」(7頁30~37行)
記載(22b)
「また、原告の挙げる裁判例(東京高裁平成4年(行ケ)第168号同5年12月14日判決,東京高裁平成4年(行ケ)第12号同年11月5日判決)は,いずれも本件とは事案を異にするものであるから,これらの裁判例をもって,本件明細書に数値限定の臨界的意義が記載されていないとしても,審決取消訴訟において実験報告書を提出することにより進歩性についての審決の判断を争うことができるという原告の主張を是認する裁判例と解することはできない。」(7頁54行~8頁1行)
(23)甲23には、以下の記載がある。
記載(23a)
「1898頁右欄17行-1899頁左欄3行
スプレードライされた薬物粉末の特徴付け
調製された分散液をスプレードライした後、薬物粉末が得られる(図5b、図6b、図7b)。沈殿した薬物は、X線及びDSC分析が示した通り、通常の結晶と同形である。分散液の粒子サイズ分布は乾燥工程で固定される。しかし、懸濁液がスプレードライされるという事実であるから、粒子サイズはスプレードライ工程により影響を受けない。イブプロフェンの通常結晶(図5a)は、結晶化により調製され、比較的均質な粒子サイズを示す。しかし、ミルで調製された薬物であるイトラコナゾール及びケトコナゾールは非常に不均質な粒子サイズを示す(図6a及び図7a)。本研究で調製された薬物粉末は、均質な粒子からなっている。小さい粒子サイズのために、薬物は凝集する。その薬物粉末を水中に分散させた後、粒子サイズ分布(図8)は、スプレードライされる分散液におけるものとほぼ同じである。従って、凝集した結晶は脱凝集する。」(1頁28行~2頁6行)
記載(23b)
「
[図:0001406068000025.jpg]
」(2頁図1)
記載(23c)
「
[図:0001406068000026.jpg]
」(2頁図2)
記載(23d)
「
[図:0001406068000027.jpg]
」(3頁図3)
記載(23e)
「
[図:0001406068000028.jpg]
」(3頁図8)
(24)甲24には、以下の記載がある。
記載(24a)
「
[図:0001406068000029.jpg]
」(1頁図2)
記載(24b)
「
[図:0001406068000030.jpg]
」(2頁表3)
(25)甲25には、以下の記載がある。
記載(25a)
「 2021年11月25日
実験成績証明書
共和薬品工業株式会社
製剤研究部 主任 山本 珠実
分析研究部 研究員 西川 耀
1.目的
微細結晶の(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオン(特許第4606326号の化合物1、以下、「化合物1」という)が凝集しているか否かを確認する。
2.方法
2-1.本検討に使用した化合物1の微細結晶の粒子径の測定
化合物1の結晶をジェットミル(「Co-JETSystemα-mkIII」、株式会社セイシン企業製)で粉砕し(分散剤、安定化剤などの添加剤は不使用)、化合物1の微細結晶を得た。
得られた微粉結晶の粒子径をレーザー回折散乱法にて測定した結果を下表に示す。
[図:0001406068000031.jpg]
・粒子径の測定条件
微細結晶を適量とり、分散剤2mLを加えてなじませた後、水2mLを加えて試料溶液とした。試料溶液について以下の条件でレーザー回折散乱法により測定した。
・・・
2-2.結晶化度の測定
上記の操作より得られた微差結晶を以下の条件で1回評価し(n=1)、2θ=16°のシグナルの積分強度を用いて結晶化度を算出した。算出方法は特許第4606326号に従った。その結果、結晶化度は40%以上であった(65.0%)。
・測定条件
試料を微量用シリコン無反射板(0.2mm)に、なるべく均一に緻密に詰まるように充填し、プレパラートにて表面を平らにした。充填の際は室温で操作した。
・・・
・結晶化度の算出
[図:0001406068000032.jpg]
2-3.凝集の有無の確認
ジェットミル粉砕により得た微細結晶を精製水または分散剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を添加した精製水に添加し、約10秒間振とうした。微細結晶を添加しない試料である精製水または分散剤水溶液も同様にして調製し、標準試料とした。
各試料を調製直後に透過度を測定した。
・試料の組成
[図:0001406068000033.jpg]
・測定条件
紫外可視光分光光度計(「UV-2600シリーズ」、株式会社島津製作所製)
測定波長:285.0nm(化合物1の吸収が最も小さいのが約285nmであるため、285nmを
使用することで化合物1の吸収の影響を抑制)
・・・
3.結果(凝集の有無の確認)
各試料の調製直後の写真及び透過度を下記に示す。
[図:0001406068000034.jpg]
分散剤を添加することにより、透過率が1/100に低下した。分散剤の添加により分散性が著しく向上したことが分かる。このことから、化合物1の微細結晶は凝集していると考えられる。 以上」(1~3頁)
2 各乙号証の記載事項
(1)乙1には、以下の記載がある。
記載(1A)
「
[図:0001406068000035.jpg]
」(10頁)
(2)乙2には、以下の記載がある。
記載(2A)
「
[図:0001406068000036.jpg]
」(6頁5行~最終行)
(3)乙3には、以下の記載がある。
記載(3A)
「2.本見解書では、協和キリン株式会社が有する特許第4606326号(以下、「本件特許」)を読み、ここに記載された微細結晶及び固体医薬製剤に関して、以下の質問に対する見解を求められた。
【質問】
1)下記式で示される化合物Iについて、
[図:0001406068000037.jpg]
D100が8.7μmの微細結晶Aが、溶解性が良好で、製剤化の工程操作中に凝集することがないこと(試験例2)、及び、平均粒径=11μmの微細結晶Bが、ラットに経口投与した場合に優れた経口吸収性(バイオアベイラビリティー)を示すこと(試験例3)から、化合物Iは、平均粒径0.5~20μmの範囲においても、分散性がよく、溶解性・経口吸収性に優れた固体医薬製剤を提供しうると考えられるか。
3.まず、試験例2について、D100が8.7μmの微細結晶は、通常の粒子径分布、すなわち、シグモイド型の累積分布を考えると、平均粒径が2~3μm程度の微細結晶であると考えられる。
4.本件特許には、化合物Iは水に対する溶解性が低いという性質を有すると記載されているから、一般的には静電気を帯びやすく、凝集性が問題となることが想定されるが、D100が8.7μm、すなわち平均粒径が2~3μm程度でも凝集はみられていないことから、想定とは異なり、凝集しにくく、分散性の良い化合物である可能性がある。
5.本試験例では、ジェットミルで粉砕した微細結晶を使用しているが、ジェットミルは、工程中の温度上昇が少なく、化合物の安定性に影響を与えないので、平均粒径10μm以下の結晶を作製しようとする場合に適した粉砕方法である。ジェットミルの場合、粉砕して得られる最小の微細結晶は、平均粒径1~3μm程度ではないかと考えられる(粉砕限界)。
6.凝集しにくい化合物の場合、平均粒径1~3μm程度でも凝集しないことが予想されるが、それ以上に、一般的な乾式粉砕における粉砕限界は平均粒径5μm程度と言われているが、ジェットミルの場合は粉砕限界が平均粒径1~3μm程度である。このような、平均粒径の下限は粉砕装置や試料の物性などが関係する粉砕限界によって決まってくる。
化合物の凝集には重力と粒子間に作用する力が関与し、前者に比して後者の寄与が大きいと凝集が生じやすくなる。一般に化合物の平均粒径が5μm程度となると粒子間に作用する力の寄与が大きくなり、凝集が生じる傾向が強くなる。しかし、化合物Iはジェットミルで粉砕が行われていること、さらに粉砕後のD100=8.7μm(平均粒径2~3μm程度)の粒子でも凝集が生じていないことが確認できているから、適当な粉砕条件を選ぶことで、凝集を生じにくい微細結晶を得ることが期待できる。
7.本件では、平均粒径0.5~20μmであることに加えて、結晶化度が40%以上であるとの要件が記載されている。本試験例1では、重量比(未粉砕の「化合物1の結晶:HPMC)が1:2の試料は、ジェットミルで粉砕後の結晶化度が79.8%であり、結晶性が維持されやすい化合物であるから、平均粒径が小さくなっても結晶化度40%以上は期待できるだろう。
8.つぎに、試験例3について、平均粒径が11μmの微細結晶がラットで優れた経口吸収性を示すという結果から、平均粒径20μmの同じ化合物の微細結晶も同様に良好な経口吸収性を示すことが想像できる。なぜなら、溶解速度は比表面積に比例するが、平均粒径11μmと平均粒径20μmの結晶では、表面積は2倍程度しか違わず、溶解速度の立ち上がりは遅れたとしても、この程度の違いによって経口吸収性が大きく変わるとは考えられないからである。よって、発明者が当初平均粒径が50μmと記載したのも頷けるし、平均粒径30μmでも良好な経口吸収性は期待可能である。粉砕前の平均粒径181μmの結晶では、表面積は20倍以上異なるから、同じような経口吸収性は期待できない。
・・・
10.いずれにしても、試験例2および試験例3を含む本件特許の記載から、この分野の研究者は、0.5~20μmの平均粒径を有し、結晶化度が40%上である化合物Iの微細結晶について、溶解性、安定性、経口吸収性、分散性が良好な固体医薬製剤を提供しうることを理解できる。
以上」(1頁7行~4頁最終行)
(4)乙4には、以下の記載がある。
記載(4A)
「2.本見解書では、協和キリン株式会社が有する特許第4606326号(以下、「本件特許」)を読み、ここに記載された微細結晶及び固体医薬製剤に関して、以下の質問に対する見解を求められた。
【質問】
1)下記式で示される化合物Iについて、
[図:0001406068000038.jpg]
上記特許明細書の記載から、0.5~20μm平均粒径を有し結晶化度が40%以上である化合物Iの微細結晶が、製剤工程中における分散性がよく、溶解性、安定性、経口吸収性(バイオアベイラビリティ)に優れた固体医薬製剤を提供しうると考えられるか。
3.試験例3には、平均粒径11μmの微細結晶Bがラットに経口投与した場合に、未粉砕の結晶に比べて優れた経口吸収性を有することが示されている。この経口吸収性の改善は溶解速度の改善によるものと思われるが、試験例2に示される微細結晶Aの溶出プロファイル(図2)から、溶解速度の改善には水への分散性の改善が影響していると考えられる。
4.特許明細書には、化合物Iの結晶は針状結晶であるため、製剤化の工程操作中に凝集するという課題を有することが記載されているが、試験例2には、D100が8.7μmの微細結晶Aが、未粉砕の結晶と比較して溶解速度が速く、製剤化の工程操作中に凝集するという現象もみられず分散性に優れることが判明したと記載されている。図2に示される微細結晶Aの溶解速度の立ち上がりから、微細結晶Aは製剤化工程における分散性に加えて水への分散性も改善し、その結果として優れた溶解性を示したものと考えられる。平均粒径11μmの微細結晶も同様に水への分散性が改善した結果、溶解速度が改善し、未粉砕の結晶よりも良好な経口吸収性(バイオアベイラビリティ)を示したものと考えられる。
5.粉砕して粒子径が小さくなると凝集を生じやすくなるのが一般的である。しかし、化合物Iは、微細化することによって分散性が改善するという点で特殊な化合物と言える。こうした粉砕による分散性の改善は、粉砕することにより疎水性の面に代わって親水性の面が表面にでてくることによると考えられる。つまり、親水性の表面がある一定量になることで、水へのぬれが良くなり、水への分散性が改善するからである。したがって、水への分散性の改善は、粒子径に依存して直線的によくなっていくというものではなく、粒子径においてある閾値をもって表出する現象と考えられるが、試験例2及び試験例3の結果から、その閾値は試験例3の平均粒径11μmの2倍程度の平均粒径20μmよりは大きなところにあると考えてよいと思われる。
6.化合物1は、未粉砕状態において水への溶解性が低い疎水性結晶であり、粉砕しても粒子の表面はやはり疎水性であって、依然として疎水性のままである可能性が高いと予想されるが、予想とは異なり、D100=8.7μmの微細結晶Aは、未粉砕の結晶よりも優れた溶解性を示している。D100が8.7μmというのは、乾式粉砕における粉砕限界に近いかなり小さな粒子であるが、そこまで微細化しても凝集がみられていないことから、化合物1は比較的凝集しにくい化合物と考えられる。
7.よって、平均粒径が20μm以下の微細結晶であれば、化合物Iが有する分散性の問題は改善され、溶解性が向上する結果、経口吸収性は良好であろうと考えられる。
8.ところで、D100が8.7μmの微細結晶Aは、84.6%という高い結晶化度を有しており、D100=8.7μmより小さく粉砕しても原薬の結晶化度はある程度高い値を維持することが可能である。これは、豆腐を小さな格子に切ることを思い浮かべてもらえば理解できる。豆腐の四角い形状を“結晶”に見立てると、小さく切ってもこの四角い形状は維持されるように、平均粒径が小さくなっても結晶化度は維持される。粉砕の場合には包丁で切るのとは異なり、必ずしもきれいな四角にならず、それが結晶化度の減少につながるわけだが、化合物Iの場合、D100が8.7μmのような微細結晶においても高い結晶化度が維持されていることから、過粉砕にならない範囲で粉砕限界近くまで粉砕しても、40%以上の結晶化度を維持することは可能であろう。
以上」(1頁7行~3頁下から3行)
(5)乙5には、以下の記載がある。訳文にて示す。
記載(5A)
「水難溶性薬物のin-situ微粒化による溶出速度の向上」(1894頁標題)
記載(5B)
「目的 本研究の目的は、水難溶性薬物の溶解速度を向上させるために、制御された結晶化によってナノまたはマイクロサイズの薬物粒子を製造するため、いかなるミリング技術も回避した新規のin situ微粒子化法を評価することである。
方法 イブプロフェン、イトラコナゾール、ケトコナゾールの微細結晶は、あらかじめ分子分散しておいた薬物を、急速溶媒交換プロセスを用いて会合させることにより調製した。ハイドロコロイドなどの安定化剤の存在下で、薬物はあらかじめ沈殿させておいた。得られた分散液は噴霧乾燥させた。粒子径、形態、溶出速度、比表面積、濡れ性を分析した。物理化学的特定は、示唆走査熱量計とX線回折法を用いて評価した。
結果 得られた分散液は均一な粒度分布を示した。薬剤は約2μm以下の平均粒径で得られている。高い比表面積が作られ、in situで安定化された。安定剤の違いにより、析出した薬剤が結晶へ成長することから守る効果に違いが見られた。吸着された安定剤により、表面は親水かされた。こうして、溶出速度が著しく向上した薬剤粉末が得られた。
結論 in situ微粒子化は、マイクロサイズの薬剤を製造するのに適した方法である。この技術は連続的にも非連続的にも行うことができ、一般的な技術設備のみを使用する。粉砕した製品と比較して、すべての粒子表面が自然に成長し、粒子径がより均一に分布し、粉末の凝集性が低いため、薬物の特定が最適化される。」(1894頁要約)
記載(5C)
「
[図:0001406068000039.jpg]
図1 沈殿(HPMC溶液)から60分後の分散液中の粒子径分布。(a)イブプロフェン,(b)ケトコナゾール」(1895頁図1)
記載(5D)
「沈殿させた分散液の特性
鎮痛剤のイブプロフェン、抗真菌剤のイトラコナゾールとケトコナゾールは、安定化剤の存在下で沈殿させると、平均粒子径が約2μm以下になる。形成された分散液中の粒子径分布を図1及び2に示す。すべてのケースで、緊密な粒子径分布が得られている。」(1898頁左欄7~13行)
(6)乙6には、以下の記載がある。訳文にて示す。
記載(6A)
「結晶化プロセスの制御による抗炎症薬の微小化と肺へのデリバリー」(35頁標題)
記載(6B)
「薬剤を微粒子化する一般的な方法であるジェットミリングは、いくつかの欠点がある。粒子径が小さいことに加えて、良好な脱凝集挙動が求められるため、肺での使用には薬剤の粉体特性が決定的な意味を持つ。本研究では、数種の抗炎症薬(・・・)を、粉砕プロセスを経ずに制御された結晶化によって微粒子化した。まず薬剤を有機溶媒(BDP/BV:4%、ECU-R2:1%をアセトンに溶解)に溶解し、安定化ハイドロコロイドとしてセルロースエーテル(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の存在下で溶媒交換法により沈殿させる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液(BDP/BV:0.005%、ECU-R2:0.025%)を1:16(BDP:BV)。1:4(ECU-R2)の割合(v/v)で攪拌しながら薬液に急速に注ぎ込むことで、それまで分子分散していた薬物が小さな粒子になり、同時に結晶成長に対する安定化が図られた。この分散液を噴霧乾燥することで、均一な粒度分布を持つ薬物粉末が得られ、薬物負荷は最大98%に達した(BDP、BV)。薬剤の平均粒子径は、ほとんどの場合5μm以下であり、結果的に呼吸可能な範囲にあった。ジェットミルで粉砕された薬剤の微粒子画分(5μm未満、賦形剤なし、吸入装置なしで測定)の微粒子率は、9.5(BDP)または13.1(ECU-R2)であるのに対し、噴霧乾燥品ではそれぞれ25.6%(ECU-R2)または78.2%(ECU-R2)の微粒子画分が得られた。小さな結晶を形成するためには、急速な溶媒交換プロセス、ハイドロコロイドの親和性、及び溶媒と非溶媒の溶解度の差が大きいことなどが必要であるが、親水性の高い薬物はより大きな粒子を形成するため、薬物の分配係数がこの方法を制限する。」(35頁要約)
記載(6C)
「沈殿させた分散液の特性
沈殿直後は、純水でもHPMC溶液でも、平均粒子径約1μmの均一な分散液が得られた。安定化剤としてHPMCを含む溶液を用いて薬物を沈殿させた場合、この分散液は顕著な結晶成長が起こらないため、保存中も安定している(図2)。しかし、純水を用いて結晶化処理を行うと、沈殿後60分で大きな結晶が形成された(図2)。これは、急速な結晶化によって形成された小さな粒子を安定化させるHPMCの効果を示している。その他の薬剤についても同様の結果が得られた。」(39頁左欄14~28行)
記載(6D)
「
[図:0001406068000040.jpg]
図2 分散液中のECU-R2の体積粒度分布(HPMC溶液で沈殿させてから60分後と24時間後、純水で沈殿させてから60分後)。」(図2)
(7)乙7には、以下の記載がある。
記載(7A)
「ジェットミルでいえば,粒子がある速度をもって壁や物にぶつかると,粒子は慣性力を持っているから,その力が効いて,ぶつかったとたんに衝撃力で粒子が砕かれることになります。」(1頁右欄3~6行)
記載(7B)
「2.湿式粉砕と乾式粉砕
粉砕の形式は二とおりに分かれます。媒質が溶液である湿式粉砕と,媒質が気体である乾式粉砕です。いままでの微粉砕機は,御社のコボールミルを含め,湿式が中心です。1つの例としてボールミルで炭酸カルシウムを粉砕した場合を第2図に示しますが、乾式で100分間粉砕を続けても3μm程度までしか粉砕が進まない,これが湿式になると100分で2μm,1000分では0.4μmとサブミクロンまで粉砕できています1)。一般にサブミクロンまで粉砕できるのは湿式粉砕といわれています。
・・・
乾式粉砕のデメリットは,湿式粉砕に比べると粉砕限界が粗い方にあるということです。乾式粉砕では“3ミクロンの壁”とよく言われるように,3μm以下に粉砕するのは難しく,現在いろいろな工夫を凝らし,やっと1μm程度には粉砕できるようになっているようです。
なぜ微粉砕が乾式で難しいのかというと,細かくなった粒子が、気流に乗って粉砕メディアの間をすり抜けてしまい,衝突効率が低下するパス現象が生じること,もう一つは,粒子が砕けると新しくできた表面の活性が高く,付着力が大きくなることです。粉砕メディアや粉砕室の壁面が粉砕された微粉でコーティングされると,粒子がメディアや壁にぶつかっても,クッショニング効果のため衝撃力が吸収され,粉砕エネルギーが有効に粒子に伝達されなくなり,粉砕効率が悪くなります。
さらに乾式粉砕の場合,操作が手軽なことから連続粉砕が多く,一般的に粒子が粉砕機の中に滞留する時間が短いので粉砕チャンスが非常に短くなり、なかなか3μmをきれないとも考えられます。」(2頁左欄8行~右欄6行)
記載(7C)
「4.超微粉体の製法
いままで粉砕限界の話をしてきたわけですが,現在ではサブミクロン以下の粒子が求められてきています。超微粉の製造方法の1つとしては同体摩擦法があります。同じ粉砕物の面をお互いに摩砕しあって,その表面からポロポロ小さな粒子を作り出していく方法です。この方法では平均で0.2~0.3μmの大きさの粒子が生成されます。生成速度は摩擦圧力に対応して決まってきます。生成量も摩擦する速度や粒子の表面粗さによって影響されます。
また混合粉砕という方法もあります。粉砕性の良い試料と粉砕されにくい試料を混ぜてミルで一緒に粉砕する。そうすると相乗的な効果が出て,粉砕性の悪いものは全然粉砕されず,粉砕性の良い方は非常に細かく粉砕される。このような現象があります。」(4頁右欄14~27行)
(8)乙8には、以下の記載がある。
記載(8A)
「
[図:0001406068000041.jpg]
」(41頁図)
(9)乙9には、以下の記載がある。
記載(9A)
「1 目的
本件特許明細書の第1表における結晶化度の測定を再現する。第1表の最上段の試料A(未粉砕の「化合物1の結晶」:HPMCの重量比1:2)を本件特許明細書試験例1の<試料調製方法>に記載される方法に準拠して調製し、<相対結晶化度の測定方法>に記載される方法に準拠して結晶化度の測定を行った。
2 検体の調製
2.1 試料A
KW-6002原薬(粉砕)1g及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)2gをステンレスビーカーにとり、ジクロロメタン15mLを加えて溶かし、35℃の水浴中で攪拌しながらジクロロメタンを留去した。得られた残留物をさらに40℃で4時間減圧乾燥した。乾燥後、得られた固体を錠剤粉砕機で約1分間粉砕し、355μmメッシュ篩で篩過して製した。なお、いずれの操作も遮光下で実施した。
2.2 検量線用物理混合物
KW-6002原薬(未粉砕)(未粉砕の、「結晶性のKW-6002」)を相対結晶化度100%試料(「結晶性のKW-6002」の含有率100%)、HPMCを相対結晶化度0%試料(「結晶性のKW-6002」の含有率0%)として、表1のようにKW-6002原薬(未粉砕)とHPMCをそれぞれ量り、200×150mmのビニール袋中でよく振り混ぜ、各相対結晶化度(「結晶性のKW-6002」の各含有率)の検量線用物理混合物とした。
表1 検量線用物理混合物の相対結晶化度及び混合量
[図:0001406068000042.jpg]
3 結晶化度の測定方法
3.1 検量線作成
各相対結晶化度(「結晶性のKW-6002」の各含有率)の検量線用物理混合物a)を粉末X線回折装置(反射法)により次の測定条件で繰り返し3階測定し、回折各2θ=約16°における回折ピークの積分強度を算出した。各検量線用物理混合物中の「結晶性のKW-6002」の含有率に対して回折ピークの繰り返し3回の平均積分強度をプロットし、検量線を作成した。
・・・
【注釈】
a)検量線用物理混合物はメノウ乳鉢で1分程度軽くすりつぶして、無配向化した後用いる。
3.2 結晶化度の測定方法
試料Aを粉末X線回折装置により3.1項の測定条件で繰り返し3回測定し、回折角2θ=約16°における回折ピークの積分強度を算出した。繰り返し3回の平均積分強度から検量線に基づいて試料A中の「結晶性のKW-6002」の含有率を算出した後、試料A中のKW-6002の相対結晶化度(%)を試料AのKW-6002原薬の含有率に対する「結晶性のKW-6002」の含有率の比として式(1)より算出した。さらに、試料A中のKW-6002の結晶化度(%)は、算出した相対結晶化度(%)と未粉砕の「結晶性のKW-6002」の結晶化度から式(2)を用いて比例計算し、算出した。
[図:0001406068000043.jpg]
4 結果
4.1 検量線
検量線用物理混合物中の「結晶性のKW-6002」の含有率に対して回折角2θ=約16°における回折ピークの平均積分強度をプロットし、最小二乗法による回帰分析を行った。プロット、回帰直線及び回帰式を図1に示す。
検量線として、相関係数0.980の回帰直線を得た。
[図:0001406068000044.jpg]
4.2 結晶化度
試料Aの回折角2θ=約16°における回折ピークの積分強度及び平均積分強度、検量線から求めた試料中の「結晶性のKW-6002」の含有率、相対結晶化度及び結晶化度を表2に示す。
試料Aの結晶化度は70.5%であり、本件特許発明の第1表における結晶化度の測定結果(68.9%)に近似の値を得た。
[図:0001406068000045.jpg]
」(1頁6行~3頁表2)
(10)乙10には、以下の記載がある。
記載(10A)
「
[図:0001406068000046.jpg]
」(1頁表1)
(11)乙11には、以下の記載がある。
記載(11A)
「 2021年10月22日
実験成績証明書(2)
協和キリン株式会社
生産本部 CMC 研究センター 製剤2グループ
三浦 誠司
1 目的
本件特許明細書の実施例2に記載の「化合物1の微細結晶」(微細結晶A、微細結晶の粒径D100=8.7μm)の平均粒径が2~3μm程度であることを示すため、KW-6002原薬(本件特許明細書の「化合物1」に相当)粉砕品の測定データ(2004年12月2日取得)を提出する。
2 方法
未粉砕のKW-6002原薬をジェットミルにより粉砕し、粒子径を測定した。
2.1 試料の調製
KW-6002原薬(未粉砕)(未粉砕の「結晶性のKW-6002」)をジェットミル粉砕機により以下の条件にて粉砕を行った。
粉砕機:CO-JET/株式会社セイシン企業
粉砕圧力:0.65MPa
供給速度:0.73kg/h(12.2g/min)
2.2 粒子径の測定
2.1にて調製したKW-6002粉砕品をレーザー回折式法により以下の条件にて測定を行った。
・・・
3 結果
下記表及び図に粒子径測定結果を示した。KW-6002粉砕品の粒径は対数正規分布をとった。粒径D100=11.2μmであるKW-6002粉砕品は、平均粒径は3.27μmであった。
この測定データから、粒径D100=8.7μmの微細結晶Aは平均粒径が2~3μm程度であると推定できる。
表.ジェットミル粉砕品の粒子径
[図:0001406068000047.jpg]
図.ジェットミル粉砕品の粒度分布
[図:0001406068000048.jpg]
」(1~2頁)
第6 当審の判断
当審は、無効理由1~4については理由がないと判断する。
その理由は以下のとおりである。事案に鑑み、無効理由2から検討する。
1 無効理由2について
(1)無効理由2の概要
無効理由2は、本件特許発明の課題は、溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等が良好な化合物1の結晶及びその結晶を含む固体医薬組成物を提供することであるが、本件特許の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識からは、平均粒径0.5~20μm、結晶化度40%以上の全体にわたり、化合物1の溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、及び医薬製剤中の分散性が得られるとは認識できないというものである。
(2)本件特許の発明の詳細な説明の記載
記載(a)
「本発明の目的は、例えば溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等が良好な化合物1の結晶およびその結晶を含む固体医薬製剤を提供することにある。」(本件特許公報2頁33~34行参照)
記載(b)
「本発明の「50μm未満の平均粒径を有する(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンの微細結晶」(「化合物1の微細結晶」)は、平均粒径が50μm未満の結晶性の化合物1であれば特に限定されないが、中でも0.5~20μmの平均粒径を有する微細結晶が好ましい。さらに結晶化度が20%以上である「化合物1の微細結晶」が好ましく、中でも結晶化度が30%以上である「化合物1の微細結晶」がより好ましく、さらに結晶化度が40%以上である「化合物1の微細結晶」が最も好ましい。」(本件特許公報3頁36~42行参照)
記載(c)
「以下に試験例により本発明の効果を具体的に説明する。
試験例1:化合物1の結晶化度と光安定性
<試料調製方法>
以下、「化合物1の結晶」とHPMCから固体分散体を調製した。
「化合物1の結晶」としては、特開平9-040652号公報に記載の方法により得られた未粉砕の「化合物1の結晶」(結晶化度87.2%)を使用した。
試料Aは、未粉砕の「化合物1の結晶」(10g)とHPMCとを、表1に示した配合比でジクロロメタンに溶解し、溶媒を留去した後、得られた固体を錠剤粉砕機(YM-100、湯山製作所製)で、粉砕翼の回転数10000rpmで1分間粉砕することにより得られた。
試料Bは、未粉砕の「化合物1の結晶」(100g)とHPMCとを、表1に示した配合比で混合した後、表1に示した粉砕機を用いて粉砕することにより得られた。
検量線作成用の物理混合物(標品)は、未粉砕の「化合物1の結晶」とHPMCとを種々の割合でそれぞれとり、200×150mmのビニール袋中でよく振りまぜて調製した。
<相対結晶化度の測定方法>
各試料における化合物1の結晶化度(以下、結晶化度ということもある)は、粉末X線回折装置により回折角2θを0°から40°まで変化させて各試料の回折ピークを測定し、下記の方法により算出した。
相対結晶化度の算出に用いる検量線は、種々の割合で調製した物理混合物を用いて、回折角2θ=約16°における回折ピークの積分強度を測定し、それぞれの物理混合物中の「結晶性の化合物1」の量と回折ピークの積分強度の比率をプロットして作成した。なお、結晶化度87.2%である未粉砕の「化合物1の結晶」を相対結晶化度100%(「結晶性の化合物1」の含有率100%)である標準試料、HPMCを相対結晶化度0%(「結晶性の化合物1」の含有率0%)である試料とした。
試料の回折角2θ=約16°における回折ピークの積分強度を測定し、上記の検量線に基づいて、測定した積分強度から各試料中の「結晶性の化合物1」の量を算出し、各試料の相対結晶化度(%)を「化合物1」の量(「結晶性の化合物1」と「非晶性の化合物1」)に対する「結晶性の化合物1」量の比率として下記の式により求めた。結晶化度(%)は、ここで求めた相対結晶化度(%)と未粉砕の「化合物1の結晶」の結晶化度87.2%から比例計算することにより決定した。
相対結晶化度(%)=(「結晶性化合物1の量」/「化合物1」の量)×100
<光安定性の測定法>
各試料の光安定性は、下記の方法により試料中の「化合物1」の残存率(%)を測定することで追跡した。
試料を秤量してつめた透明ガラスバイアルを蛍光灯下約5000lxで保存し、各試料とも照射開始の8時間後にサンプリングした。サンプリングした試料を水とアセトニトリルの混合溶媒(水:アセトニトリル=60:40)に溶解した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により試料中の「化合物1」の量を定量した。照射前の「化合物1」の量を100%とし、これに対する照射後の「化合物1」の量を残存率(%)として求めた。
試料AおよびBの結晶化度(%)および「化合物1」の残存率(%)を第1表に、結晶化度と安定性の相関を図1に示す。
・・・
[図:0001406068000049.jpg]
以上の結果、化合物1の結晶化度と光安定性には正の相関があり、「化合物1の結晶」の結晶化度が20%以上、好ましくは30%以上で光照射下での分解が減少することが判明した。つまり、一連の粉砕、分散化等の製剤化工程において「化合物1の結晶」の結晶化度を一定値以上に保持できれば、または一定値以上の結晶化度を有する「化合物1の結晶」を製剤化工程で用いれば、光照射下でも分解物の増加はみられず製剤化工程での化合物1の安定性を維持できると考えられる。」(本件特許公報5頁45行~7頁32行)
記載(d)
「試験例2:化合物1の結晶の平均粒径と溶解度
実施例2で得られた結晶A(結晶の平均粒径;167μm、2mg)および微細結晶A(微細結晶の粒径D100=8.7μm、2mg)を用いて、それぞれの水(200mL)に対する室温での溶解度を測定した。
経過時間に対する結晶Aおよび微細結晶Aの溶解度(μg/mL)を図2に示す。
以上の結果、平均粒径の小さい微細結晶Aは、結晶Aと比較して、溶解速度が早く、良好な化合物1の溶解性を有することが判明した。 また、微細結晶Aでは、製剤化の工程操作中に化合物1の結晶が凝集するという現象はみられず、微細結晶Aは結晶Aと比較して分散性に優れることも判明した。」(本件特許公報7頁34~41行参照)
記載(e)
「試験例3:経口吸収性の比較
実施例3で得られた結晶B(結晶の平均粒径;181μm)および微細結晶B(結晶の平均粒径;11μm)を、それぞれ0.5重量/容量%メチルセルロース水溶液に懸濁させ、投与薬液(0.3mg/mL)を調製した。得られた投与薬液をSD系雄性ラット(体重209~233g;日本チャールス・リバー)に10mL/kgの容量で経口投与した。投与から0.25、0.5、1、2、4、6、8、12および24時間後の時点で、それぞれヘパリン処理されたキャピラリーチューブを用いて、経時的にラットの尾静脈より血液(各回約0.3mL)を採取した。得られた血液を遠心分離(1950×g、10分間、4℃)し、血漿を分離した。得られた血漿中の「化合物1」の濃度をHPLCにより測定し、ラット3例での平均値を算出した。
結晶Bおよび微細結晶Bをそれぞれラットに経口投与した場合の最高血漿中濃度(Cmax)、投与時点から最後に定量できた時点までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-t)および投与時点から無限大時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)を第2表に示す。
・・・
[図:0001406068000050.jpg]
以上の結果、平均粒径の小さい微細結晶Bを経口投与した場合、結晶Bを経口投与した場合と比較して、高いCmax、AUC0-tおよびAUC0-∞が得られ、平均粒径の小さい微細結晶Bの方が結晶Bよりも優れた経口吸収性を有していることが判明した。」(本件特許公報7頁42行~8頁第2表下3行参照)
記載(f)
「【実施例2】
特開平9-40652号公報に記載の方法により、未粉砕の「化合物1の結晶」(結晶A、結晶の平均粒径;167μm)を得た。上記結晶Aをジェットミル(PJMI-1.5;日本ニューマチック社製)で、供給速度50g/分、粉砕圧力0.4MPaで粉砕することにより「化合物1の微細結晶」(微細結晶A、微細結晶の粒径D100=8.7μm;粒子の100%が8.7μm以下であることを表す、結晶化度84.6%)を得た。」(本件特許公報8頁下から7~1行参照)
記載(g)
「【実施例3】
特開平9-040652号公報に記載の方法により、未粉砕の「化合物1の結晶」(結晶B、結晶の平均粒径;181μm、結晶化度71.6%)を得た。上記結晶Bをジェットミル(PJM-100SP;日本ニューマチック社製)で、供給速度50g/分、粉砕圧力0.25MPaで粉砕することにより「化合物1の微細結晶」(微細結晶B、結晶の平均粒径;11μm、結晶化度67.3%)を得た。」(本件特許公報9頁2~7行参照)
(3)判断
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件特許発明の解決しようとする課題
本件特許発明は、本件特許明細書等の全体の記載事項(特に、記載(a))及び出願時の技術常識からみて、「溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等が良好な化合物1の結晶およびその結晶を含む固体医薬製剤」の提供を解決しようとする課題とするものであると認められる。
ウ 本件特許発明に関するサポート要件の判断
本件特許明細書等には、本発明の化合物1の微細結晶は、平均粒径が50μm未満の結晶性の化合物であれば特に限定されないが、中でも0.5~20μmの平均粒径を有する微細結晶が好ましいこと、さらに結晶化度が20%以上である化合物1の微細結晶が好ましく、中でも30%以上である化合物1の微細結晶がより好ましく、さらに40%以上である化合物1の微細結晶が最も好ましいことが記載されている(記載(b))。
そして、本件特許明細書等では、「以下試験例により本発明の効果を具体的に説明する。」(本件特許公報5頁45行参照)との記載があり、当該記載以降に試験例1~3が示されている。
試験例1では、結晶の結晶化度が87.2%の「化合物1の結晶」と、当該「化合物1の結晶」HPMCを種々の割合でジクロロメタンに溶解し、溶媒を留去して得られた固体を錠剤粉砕機(YM-100、湯山製作所製)で粉砕した試料A、当該「化合物1の結晶」HPMCを種々の割合で混合し、ジェットミル、乳鉢、メカノミル、又はボールミルで粉砕した試料Bの、結晶化度と化合物1の残存率を測定して比較したところ、結晶化度が20%以上、好ましくは30%以上で光照射下での分解が減少することが示されている(記載(c))。
してみると、試験例1により、結晶化度が30%以上である請求項1に係る発明の結晶化度である40%以上の化合物1の微細結晶が、光安定性が良好であると、当業者は把握できる。
試験例2では、結晶の平均粒径が167μmである「化合物1の結晶」である結晶Aを、ジェットミル(PJM-100SP;日本ニューマチック製)で、供給速度50g/分、粉砕圧力0.4MPaで粉砕することにより、「化合物1の微細結晶」である微細結晶A(粒径D100=8.7μm、結晶化度84.6%)を得て(8頁下から6~1行)、結晶Aと微細結晶Aを比較したところ、微細結晶Aは、結晶Aと比較して、溶解性及び製剤工程中の分散性が良好であることが示されている(記載(d)、(f))。
ここで、微細結晶Aは、粒径D100の値は記載されているものの、平均粒径の値の明示はないが、乙3の記載(3A)、乙7の記載(7B)から明らかなように、ジェットミルの粉砕限界は1~3μm程度であることが技術常識であり、D100=8.7μmなのであるから、微細結晶Aの平均粒径は、1μm以上8.7μm未満であると認められる。
してみると、試験例2により、平均粒径が1μm以上8.7μm未満付近であって、結晶化度が84.6%付近の請求項1に係る発明の結晶化度である40%以上である化合物1の微細結晶が、溶解性及び製剤工程中の分散性が良好であると、当業者は把握できる。
試験例3では、結晶の平均粒径が181μmであり、結晶化度が71.6%の「化合物1の結晶」である結晶Bを、ジェットミル(PJM-100SP;日本ニューマチック製)で、供給速度50g/分、粉砕圧力0.25MPaで粉砕することにより、「化合物1の微細結晶」である微細結晶B(平均粒径;11μm、結晶化度67.3%)を得て(9頁3~7行)、結晶Bと微細結晶Bを、ラットに経口投与したところ、微細結晶Bの方が結晶Bよりも優れた経口吸収性を有していることが示されている(記載(e)、(g))。
してみると、試験例3から、平均粒径が11μm付近であって、結晶化度が67.3%付近である化合物1の微細結晶が、バイオアベイラビリティが良好であると、当業者は認識する。
また、乙7の記載(7B)、(7C)に記載されているように、サブミクロンまで粉砕する方法が存在することは、本件出願時の技術常識であるから、化合物1の結晶を粉砕することにより得られた0.5μm程度のサブミクロンの微細結晶も、試験例1~3で示されたように溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等が良好な結晶となるであろうことは、当業者が認識できたことである。
上記一般的記載、実施例の記載、平均粒径や結晶化度の値とその値の変化による溶解速度や光安定性の傾向及び上記本件出願時の技術常識を考慮すれば、請求項1に係る発明の範囲である平均粒径0.5~20μm、結晶化度40%以上の微細結晶において、当業者が上記課題を解決できるものと認識できる。
したがって、本件特許発明は、当業者が溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等が良好な化合物1の結晶およびその結晶を含む固体医薬製剤とすることができると当業者が認識する範囲内のものある。
よって、無効理由2は理由がない。
2 無効理由1について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、式(I)で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分とするパーキンソン氏病治療剤及び式(I)で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩が記載されており(記載(1a))、該キサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩が、強力でかつ特異性の高いA2拮抗作用を有するものであり、該キサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分とするパーキンソン氏病治療剤に関するものであることが記載されており(記載(1b))、該キサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を製薬形態で使用することができ、賦形剤等を用いて、経口服用形態である粉剤、丸材、カプセル剤、錠剤を製造することができることが記載されており(記載(1c))、実施例2として、(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチルキサンチンをジメチルホルムアミドに溶解し、これに炭酸カリウム次いでヨウ化メチルを加え、50℃で30分間攪拌し、冷却後、不溶物を濾過により取り除き、濾液に水を加え、クロロホルムで3回抽出後、抽出液を水で2回次いで飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去し、得られた粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離・精製し、2-プロパノールにより再結晶することにより(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンの薄黄色針状晶を得たことが記載されている(記載(1d)、(1e))。
よって、甲1には、
「(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンの薄黄色針状晶。」の発明(以下、「甲1結晶発明」という。)及び
「(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンの薄黄色針状晶を含む固体医薬製剤。」の発明(以下、「甲1製剤発明」という。)
が記載されているといえる。
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1結晶発明を対比すると、甲1に記載の(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンは、本発明の化合物1に相当することから、両者は「化合物1の結晶」という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1は平均粒径が0.5~20μmの微細結晶であると特定しているのに対して、甲1結晶発明は、平均粒径及び微細結晶であることの特定がない点及び
相違点2:本件特許発明1は結晶化度が40%以上であると特定しているのに対して、甲1結晶発明は、結晶化度の特定がない点。
上記相違点1及び相違点2について検討する。
甲1は、キサンチン骨格を有し、強力でかつ特異性の高いA2拮抗作用を有する優れたパーキンソン氏病治療剤の提供を課題とするものであり、溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等の向上といった課題は見出せず、甲1には、化合物1の結晶の粒径の記載もないため、化合物1の結晶の粒径の検討に至る動機付けはない。
そして、甲2~11、18及び19の記載を見ても、甲1において化合物1の結晶を結晶化度が40%以上かつ平均粒径0.5~20μmに微細化する動機付けとなる記載は見当たらない。
また、甲1において、化合物1の結晶の粒径を検討したとしても、甲1には、結晶化度についての記載も示唆もないことから、化合物1の結晶を、結晶化度が40%以上かつ0.5~20μmであるものとする動機付けは見出せない。
さらに、上記1(2)で述べたとおり、本件特許発明は、本件明細書から、微細結晶の結晶化度を40%以上としかつ平均粒径を0.5~20μmとすることにより、良好な溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等が良好であるという効果を奏することが把握できるものであり、当該効果は、当業者が予測し得ない顕著なものである。
請求人は、甲3、4、7~9号証を挙げて、最適な平均粒径、結晶化度の検討が設計事項にすぎない旨主張しているが、甲1には化合物の平均粒径や結晶化度の数値範囲について具体的記載があるわけではないところ、どのように設計すれば良いのかについて具体的な指標を示していない別の文献を基に、上記平均粒径、結晶化度の検討が設計事項にすぎないということはできない。
したがって、本件特許発明1は甲1~11、18及び19に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1製剤発明を対比すると、甲1に記載の(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチンは、本発明の化合物1に相当することから、両者は「化合物1の結晶を含む固体医薬製剤」という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:本件特許発明2は含まれる結晶について平均粒径が0.5~20μmの微細結晶であると特定しているのに対して、甲1製剤発明は、平均粒径及び微細結晶であることの特定がない点及び
相違点4:本件特許発明2は含まれる結晶について結晶化度が40%以上であると特定しているのに対して、甲1製剤発明は、結晶化度の特定がない点。
上記相違点3及び相違点4について検討する。
甲1からは、溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等の向上といった課題は見出せず、甲1には、化合物1の結晶の粒径の記載もないため、化合物1の結晶の粒径の検討に至る動機付けはない。
そして、甲2~11、18及び19の記載を見ても、甲1において化合物1の結晶を結晶化度が40%以上かつ平均粒径0.5~20μmに微細化する動機付けとなる記載は見当たらない。
また、甲1において、化合物1の結晶の粒径を検討したとしても、甲1には、結晶化度についての記載も示唆もないことから、化合物1の結晶を、結晶化度が40%以上かつ0.5~20μmであるものとする動機付けは見出せない。
さらに、上記1(2)で述べたとおり、本件特許発明は、本件明細書から、微細結晶の結晶化度を40%以上としかつ平均粒径を0.5~20μmとすることにより、良好な溶解性、安定性、バイオアベイラビリティ、医薬製剤中の分散性等が良好であるという効果を奏することが把握できるものであり、当該効果は、当業者が予測し得ない顕著なものである。
したがって、本件特許発明2は甲1~11、18及び19に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3~5について
本件特許発明3~5は、本件特許発明2の発明特定事項すべてをその発明特定事項とし、さらに技術的に限定するものであるから、本件特許発明2が甲1~11、18及び19に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件特許発明3~5もまた、甲1~11、18及び19に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1~5は、甲1~11、18及び19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由1には理由がない。
3 無効理由3について
(1)無効理由3の概要
無効理由3は、本件特許明細書は、結晶化度は、粉末X線回折装置を用いて回折角2θを0°から40°まで変化させ、2θ=約16°における回折ピークの積分強度を測定し、結晶化度を算出し、標準試料について同様に測定した測定値から作成した検量線に基づいて算出した値であることを記載しているが、この算出した値は、本件特許明細書に記載されていない諸条件により変動するので、「結晶化度40%以上」は不明確であるというものである。
(2)本件特許の発明の詳細な説明の記載
上記1(2)参照。
(3)判断
請求人は、審判請求書において、本件特許発明1~6の「結晶化度40%以上」が不明確であると主張している。
以下、本件特許発明1~6の「結晶化度40%以上」が明確であるかについて検討する。
「結晶化度」という用語は、甲17の記載(17a)にも記載されるように、当業者には周知の用語であり、「結晶化度40%以上」はその値を40%以上に特定するものであるから、その文言上不明確な点はない。
記載(c)には、相対結晶化度の測定方法の記載がある。当該記載には、詳細な測定条件の記載はないが、当該記載及び技術常識を参酌することで、結晶化度を算出することができるものと認められる。
そして、記載(c)の第1表には、当該記載の方法を用いて算出された、各サンプルの結晶化度が記載されている。
してみると、「結晶化度」という用語の内容は、明細書の記載及び技術常識から、当業者が理解できるものであるから、「結晶化度40%以上」との記載は明確である。
したがって、無効理由3には理由がない。
(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、X線回折におけるピーク強度は、試料の調製方法により変わってくる点、本件明細書には、非晶質による散乱強度やバックグラウンドの寄与をどのように扱うかを記載していないことから、回折ピークの積分強度を一義的に定めることができない点及び結晶化度は経時的に変化する点から、本件明細書の記載に基づいて算出される結晶化度は変わるものであるから、明確でない旨主張している。
しかしながら、本件明細書に触れ、X線回折の分析に関する当業者であれば、X線回折におけるピーク強度への影響が少なくなるよう試料の粉末の粉砕状況や充填状況等の測定試料の調製方法を選択し、回折ピークの積分強度への影響が少なくなるように散乱強度やバックグラウンドを扱うであろうことは、合理的に理解できる。また、結晶化度が経時的に変化する点については、その時点で結晶化度が40%以上であれば本件特許発明の技術的範囲に含まれ、経時的に変化して結晶化度が40%以上という数値範囲から外れた場合は、本件特許発明の技術的範囲から外れるのであるから、明確性要件違反の根拠とはならない。
よって、上記主張には理由がない。
4 無効理由4について
(1)無効理由4の概要
無効理由4は、本件特許明細書は結晶化度の測定方法を一義的に定めていないため、発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないというものである。
(2)本件特許の発明の詳細な説明の記載
上記1(2)参照。
記載(h)
「本発明の「化合物1の微細結晶」の調製法は特に限定されないが、例えば欧州特許第0590919号明細書、特開平9-040652号公報等に記載の方法またはそれらに準じた方法により得られる「50μm以上の平均粒径を有する(E)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンの結晶」(「化合物1の結晶」)を粉砕および/または篩い分けすることにより調製され、粉砕および/または篩い分けは適宜組み合わせて数回行ってもよい。粉砕は一般的に使用される粉砕機で行うことができ、該粉砕機として、例えば乳鉢、メカノミル、ジェットミル等を用い、例えば粉砕機の回転速度、「化合物1の結晶」の供給速度、粉砕の時間等を適宜調整することにより所望の平均粒径および/または結晶化度を有する「化合物1の微細結晶」を得ることができる。中でもジェットミルによる粉砕が好ましく、例えば「化合物1の結晶」の供給速度10~1000g/分、粉砕圧力0.01~1.0MPaで、「化合物1の結晶」を粉砕することができる。」(本件特許公報3頁下から2行~4頁10行参照)
記載(i)
「混合粉砕法としては、例えば「化合物1の結晶」を分散剤とともに混合機器等を用いて混合したものを、一般的に使用される粉砕機例えば乳鉢、メカノミル、ジェットミル等を用いて粉砕する方法等があげられ、例えば粉砕機の回転速度、「化合物1の結晶」の供給速度、粉砕の時間等を適宜調整することにより所望の平均粒径または平均粒径および結晶化度を有する「化合物1の微細結晶」を含む固体分散体を得ることができる。中でもジェットミルによる粉砕が好ましい。」(本件特許公報4頁34~39行参照)
(3)判断
本件明細書の記載(h)、(i)に、所望の平均粒径および/または結晶化度の化合物1の微細結晶を得る方法についての記載があり、記載(c)には、相対結晶化度の測定方法の記載があり、実施例として、本件特許発明の範囲内の平均粒径及び結晶化度の微細結晶を得たことが記載されている(記載(g))。
してみると、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明における上記所望の平均粒径および/または結晶化度の化合物1の微細結晶を得る方法の記載、相対結晶化度の測定方法の記載、具体例としての実施例の記載及び技術常識に基づいて、本件特許発明を実施することができたものである。
よって、無効理由4には理由がない
(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本件明細書は結晶化度の測定方法を一義的に定めていないため、発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。
しかしながら、上記(3)で述べたとおり、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて、本件特許発明を実施することができたものであるから、上記主張には理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとはいえず、無効理由1によっては、無効とするべきではない。
また、本件特許発明1~5についての特許は、特許法第36条第6項第1号の規定、同法同条第6項第2号の規定、及び同法第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものであるとはいえず、無効理由2~4によっては、無効とするべきではない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、全額を請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-800100