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特許異議申立

2020-700966

フレキシブルデバイスの前面板

審判番号
2020-700966
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-529932
登録番号
6709220
請求日
2020年12月09日
審決日
2022年01月21日
公報発行日
2022年04月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友化学株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】三上 敬史
  • 【権利者代理人】沖田 英樹
  • 【権利者】三菱瓦斯化学株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】三上 敬史
  • 【権利者代理人】沖田 英樹
  • 【異議申立人】瀧瀬 洋輔
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 大島 祥吾
  • 審判官 細井 龍史
分類
P1651.121-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J) / P1651.161-YAA(C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条の2特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6709220号発明「フレキシブルデバイスの前面板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6709220号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]について訂正することを認める。 特許第6709220号の請求項1及び3ないし6に係る特許を維持する。 特許第6709220号の請求項2に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6709220号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)7月21日(優先権主張 平成27年7月22日)を国際出願日とする特許出願であって、令和2年5月26日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年6月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月9日に特許異議申立人 瀧瀬洋輔(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)がされ、令和3年3月26日付けで取消理由が通知され、同年5月28日に特許権者 住友化学株式会社(外1名)(以下、「特許権者」という。)から訂正の請求がなされるとともに意見書の提出がされ、同年6月4日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年7月9日に特許異議申立人から意見書の提出がされ、同年9月27日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、同年11月25日に特許権者から訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされたものである。 なお、令和3年5月28日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和3年11月26日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、特許法第120条の5第5項に定める特別な事情に該当し、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会は与えない。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について当審が付したものである。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「であって、当該ポリイミド系高分子は、」とあるのを、 「であって、当該樹脂フィルムが、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を更に含有し、当該樹脂フィルムが、シリカ粒子を更に含有し、当該ポリイミド系高分子は、」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「Aは、下記式(30)、式(31)、式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基であり、 式(30)~式(34)において、*は結合手を表し、」及び「 【化3】 [図:0001383266000001.jpg] 」とあるのを、それぞれ、 「Aは、下記式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基であり、 式(32)~式(34)において、*は結合手を表し、」 「【化3】 [図:0001383266000002.jpg] 」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6も同様に訂正する。 (2)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「当該樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、」とあるのを、 「前記ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、10,000~500,000であり、 当該樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6も同様に訂正する。 (2)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に」とあるのを、 「請求項1に」に訂正する。 請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし6についても同様に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、樹脂フィルムについて、これがトリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤及びシリカ粒子を更に含有するものであることを具体的に特定することで、更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書の段落【0047】、【0049】及び【0050】並びに実施例の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6の訂正についても同様である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の式(PI)中の「A」が「式(30)、式(31)、式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基」であったのを、当該群から式(30)及び式(31)を削除することで更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6の訂正についても同様である。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項1の訂正は、「ポリイミド系高分子」について、その重量平均分子量を10,000~500,000であることを具体的に特定することで、更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書の段落【0045】並びに実施例の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6の訂正についても同様である。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4に係る請求項2の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が引用していた請求項2を引用しないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項5に係る請求項3の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし6の訂正についても同様である。 3 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルムを有するフレキシブルデバイスの前面板であって、 当該樹脂フィルムが、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を更に含有し、 当該樹脂フィルムが、シリカ粒子を更に含有し、 当該ポリイミド系高分子は、式(PI)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有する重合体であり、前記式(PI)で表される構造単位は、当該ポリイミド系高分子の全繰り返し単位に対して40モル%以上であり、 【化1】 [図:0001383266000003.jpg] [式(PI)中、Gは、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)及び式(26)でそれぞれ表される基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、 式(20)~式(26)において、*は結合手を表し、 式(26)中のZは、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-又は-Ar-SO2-Ar-を表し、Arは、炭素数6~20のアリール基を表し(これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい)、 【化2】 [図:0001383266000004.jpg] Aは、下記式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基であり、 式(32)~式(34)において、*は結合手を表し、 式(32)中、Z1は、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 式(33)中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 前記式(30)、式(31)、式(32)及び式(33)で表される基は、フッ素系置換基が導入されていてもよく、 式(34)中、Z1及びZ3は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、Z2は、単結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 【化3】 [図:0001383266000005.jpg] 前記ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、10,000~500,000であり、 当該樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、樹脂フィルムの一方の面から樹脂フィルムに313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、当該樹脂フィルムが以下の条件: (i)光照射試験後の当該樹脂フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率を有する、及び、 (ii)光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し、当該樹脂フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である、 を満たし、 光照射試験後の当該樹脂フィルムが0.8%以下のヘイズを有する、 フレキシブルデバイスの前面板。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の面側に設けられた機能層と、を有する積層体を有する、請求項1に記載のフレキシブルデバイスの前面板。 【請求項4】 機能層が、紫外線吸収、粘着性、及び表面に高硬度を発現する機能からなる群から選択される少なくとも1種の機能を有する層である請求項3に記載のフレキシブルデバイスの前面板。 【請求項5】 前記樹脂フィルムと前記機能層との間に設けられたプライマー層を更に有する請求項3に記載のフレキシブルデバイスの前面板。 【請求項6】 前記樹脂フィルムと前記機能層との間に設けられたプライマー層を更に有する請求項4に記載のフレキシブルデバイスの前面板。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和2年12月9日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件) 本件特許の請求項1ないし6についての特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(特許法第29条の2:拡大先願) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その優先日後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願である甲第10号証の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 証拠方法 甲第1号証:特表2015-508345号公報 甲第2号証:特開2009-263654号公報 甲第3号証:国際公開第2012/173126号 甲第4号証:国際公開第2011/65131号 甲第5号証:国際公開第2014/162733号 甲第6号証:特開2015-21022号公報 甲第7号証:特開2012-87236号公報 甲第8号証:国際公開第2014/51050号 甲第9号証:特開2007-63417号公報 甲第10号証:特願2015-254466号(特開2016-125063号公報) 証拠の表記については、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。 以後、甲第1号証から甲第10号証については、それぞれ「甲1」から「甲10」のようにいう。 第5 取消理由<決定の予告>に記載した取消理由の概要 当審が令和3年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由<決定の予告>の概要は、次のとおりである。 取消理由1(甲1を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 第6 当審の判断 以下に述べるように、当審が令和3年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由<決定の予告>における取消理由1及び2には理由がないと判断する。 1 主な証拠に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「プラスチック基板」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。 ・「【請求項1】 ジアンヒドリド類とジアミン類との重合、またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定したときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと; 前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と; 前記ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層と;を含んでなることを特徴とする、プラスチック基板。」 ・「【背景技術】 【0002】 最近、ディスプレー方式が従来のCRT(Cathode Ray Tube)方式から平板ディスプレー方式、例えばプラズマディスプレー(Plasma Display Panel、PDP)、液晶ディスプレー(Liquid Crystal Display、LCD)、有機EL(Organic Light Emitting Diodes、OLED)などへ転換されている。特に、このような平板ディスプレーをフレキシブルディスプレーとして実現することができるように、全世界的に研究が盛んに行われている。 【0003】 上述したような平板ディスプレーでは、基本的に基板の素材としてガラスを用いる。一般な平板ディスプレーでは、TFT(薄膜トランジスタ)を形成させるための条件として高温熱処理が求められるので、これに最適な素材としてガラス基板が使われているのである。 【0004】 ところが、ガラス基板は、基本的に非常に硬い特性を持つので、可撓性が劣っており、フレキシブルディスプレーの基板には適さないという問題点がある。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0018】 本発明は、光透過度に優れるうえ、高硬度特性、ITO工程性および柔軟性を満たすプラスチック基板を提供しようとする。 【0019】 本発明は、ウィンドウフィルムと電極フィルムの機能を共に行うことが可能なプラスチック基板を提供しようとする。」 ・「【0032】 本発明の好適な一実施形態において、前記物性を満足するポリイミド系フィルムは、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(FDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(TDA)、9,9-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド(6FCDA)および4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)の中から選ばれた少なくとも1種、並びにピロメリト酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびオキシジフタル酸二無水物(ODPA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアンヒドリドに由来する単位構造と、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2-TFDB)、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(3,3’-TFDB)、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-134)、2,2’-ビス[3(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3-BDAF)、2,2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4-BDAF)、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’-6F)、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’-6F)およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジアミンに由来する単位構造とを含むポリイミド系樹脂、または、前記芳香族ジアンヒドリド由来の単位構造とテレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride、TPC)、テレフタル酸(Terephthalic acid)、イソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)および4,4’-ベンゾイルクロリド(4,4’-benzoyl chloride)の中から選ばれた少なくとも1種の芳香族ジカルボニル化合物に由来する単位構造と前記芳香族ジアミン由来の単位構造とを含むポリイミド系樹脂を含むものであってもよい。」 ・「【0039】 前記黄色度と透過度を満足する本発明のポリイミドフィルムは、既存のポリイミドフィルムが有する黄色により使用が制限された用途、例えば光学用ウィンドウや透過型ディスプレーなどの透明性が要求される分野への使用が可能であり、また、フレキシブルディスプレー基板(Flexible Display substrate)用としての使用が可能である。」 ・「【実施例】 【0056】 以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。 【0057】 <実施例1~3> 反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2-TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA3.10975g(0.007mol)を添加して完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌した。この際、23℃での溶液粘度2100poiseのポリアミド酸溶液を得た。 【0058】 前記ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2~4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20~180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1~10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80~100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得た。得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得た。これを用いて、製膜過程によって40~400℃の範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1~8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得た。 【0059】 得られたフィルムを基材として、フィルムの上部に、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物を用いてハードコート層を形成した。 【0060】 次に、ポリイミドフィルムの他の一面にITO電極層をスパッタ(sputter)を用いて蒸着し、RTA(Rapid Thermal Annealing)で熱処理して形成した。 【0061】 実施例1~3は、ハードコート層の厚さ、ITO電極層の厚さおよびITO工程の温度を互いに異ならせた一例であって、これを要約して表1として示した。 【0062】 <実施例4> 反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2-TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持した。ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA1.33275g(0.003mol)を添加して完全に溶解させた。そして、TPC0.8121g(0.004mol)を添加して、固形分濃度15重量%のポリアミド酸溶液を得た。 【0063】 こうして得られたポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法でプラスチック基板フィルムを製造した。 【0064】 具体的なポリイミドフィルムの厚さ、ハードコート層の厚さおよびITO電極層の厚さなどは表1に示した。 【0065】 <実施例5> 実施例1におけるポリアミド酸溶液の製造の際に組成を6FDAの代わりに6FCDA(9,9-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド)を用いてポリアミド酸溶液を製造し、これから実施例1と同様の方法でプラスチック基板フィルムを製造した。 【0066】 具体的なポリイミドフィルムの厚さ、ハードコート層の厚さおよびITO電極層の厚さなどは表1に示した。」 ・「【0077】 【表1】 [図:0001383266000006.jpg] 」 イ 甲1発明 甲1に記載された事項を、特に実施例1ないし5に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1実施例1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。 <甲1実施例1発明> 「反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2-TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持し、ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA3.10975g(0.007mol)を添加して完全に溶解させ、この際、固形分の濃度は20重量%であり、その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌し、この際、23℃での溶液粘度2100poiseのポリアミド酸溶液を得、当該ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2~4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20~180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1~10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80~100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得、得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得、これを用いて、製膜過程によって40~400℃の範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1~8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得、得られたフィルムを基材として、フィルムの上部に、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物を用いてハードコート層を形成し、次に、ポリイミドフィルムの他の一面にITO電極層をスパッタ(sputter)を用いて蒸着し、RTA(Rapid Thermal Annealing)で熱処理して形成したポリイミドフィルムであって、550nmの透過度が87.51、黄色度が2.78であるポリイミドフィルム。」 <甲1実施例2発明> 「反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2-TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持し、ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA3.10975g(0.007mol)を添加して完全に溶解させ、この際、固形分の濃度は20重量%であり、その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌し、この際、23℃での溶液粘度2100poiseのポリアミド酸溶液を得、当該ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2~4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20~180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1~10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80~100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得、得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得、これを用いて、製膜過程によって40~400℃の範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1~8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得、得られたフィルムを基材として、フィルムの上部に、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物を用いてハードコート層を形成し、次に、ポリイミドフィルムの他の一面にITO電極層をスパッタ(sputter)を用いて蒸着し、RTA(Rapid Thermal Annealing)で熱処理して形成したポリイミドフィルムであって、550nmの透過度が86.81、黄色度が2.82であるポリイミドフィルム。」 <甲1実施例3発明> 「反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2-TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持し、ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA3.10975g(0.007mol)を添加して完全に溶解させ、この際、固形分の濃度は20重量%であり、その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌し、この際、23℃での溶液粘度2100poiseのポリアミド酸溶液を得、当該ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2~4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20~180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1~10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80~100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得、得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得、これを用いて、製膜過程によって40~400℃の範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1~8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得、得られたフィルムを基材として、フィルムの上部に、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物を用いてハードコート層を形成し、次に、ポリイミドフィルムの他の一面にITO電極層をスパッタ(sputter)を用いて蒸着し、RTA(Rapid Thermal Annealing)で熱処理して形成したポリイミドフィルムであって、550nmの透過度が85.43、黄色度が3.01であるポリイミドフィルム。」 <甲1実施例4発明> 「反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2-TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持し、ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FDA1.33275g(0.003mol)を添加して完全に溶解させ、そして、TPC0.8121g(0.004mol)を添加して、固形分濃度15重量%のポリアミド酸溶液を得、当該ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2~4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20~180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1~10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80~100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得、得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得、これを用いて、製膜過程によって40~400℃の範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1~8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得、得られたフィルムを基材として、フィルムの上部に、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物を用いてハードコート層を形成し、次に、ポリイミドフィルムの他の一面にITO電極層をスパッタ(sputter)を用いて蒸着し、RTA(Rapid Thermal Annealing)で熱処理して形成したポリイミドフィルムであって、550nmの透過度が87.1、黄色度が4.56であるポリイミドフィルム。」 <甲1実施例5発明> 「反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの三口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)28.78gを入れ、反応器の温度を0℃に降温した後、2,2-TFDB3.2023g(0.01mol)を溶解させ、この溶液を0℃に維持し、ここにBPDA0.88266g(0.003mol)を添加し、1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた後、6FCDA(9,9-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボキシルジアンヒドリド)3.10975g(0.007mol)を添加して完全に溶解させ、この際、固形分の濃度は20重量%であり、その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌し、この際、23℃での溶液粘度2100poiseのポリアミド酸溶液を得、当該ポリアミド酸溶液に化学硬化剤として無水酢酸(Acetic Anhydride、Samchun社製)およびピリジン(Pyridine、Samchun社製)をそれぞれ2~4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20~180℃の温度内で10℃/minの速度で昇温させながら1~10時間加熱してポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化された溶液30gを水またはアルコール(メタノール、エタノール)などの非極性溶媒300gに投入して沈殿させ、沈殿した固形物を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80~100℃の真空乾燥オーブンで6時間乾燥させて約8gのポリイミド樹脂固形分粉末を得、得られたポリイミド樹脂固形分を重合溶媒たるDMAcまたはDMF溶剤32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得、これを用いて、製膜過程によって40~400℃の範囲で温度を10℃/minの速度で昇温させながら1~8時間加熱して厚さ100μmのポリイミドフィルムを得、得られたフィルムを基材として、フィルムの上部に、ポリシラザンまたはシリカ、およびアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む有無機ハイブリッド系のハードコート組成物を用いてハードコート層を形成し、次に、ポリイミドフィルムの他の一面にITO電極層をスパッタ(sputter)を用いて蒸着し、RTA(Rapid Thermal Annealing)で熱処理して形成したポリイミドフィルムであって、550nmの透過度が86.4、黄色度が4.35であるポリイミドフィルム。」 2 取消理由1について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1実施例1発明を対比する。 甲1実施例1発明の「ポリイミドフィルム」は、本件発明1の「ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルム」に相当する。 甲1実施例1ないし5発明のポリイミドフィルムを形成するモノマー成分は、それぞれ、「6FDA+BPDA+2,2-TFDB(モル比7:3:10)」または「6FDA+BPDA+TPC+2,2-TFDB(モル比3:3:4:10)」である。 ここで、6FDAは、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物 、BPDAは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-TFDB 、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、TPCは、テレフタロイルクロリドを表すから、甲1実施例1発明のポリイミドフィルムを形成するポリイミド系高分子は、本件発明1の「ポリイミド系高分子は、式(PI)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有する重合体であり、前記式(PI)で表される構造単位は、当該ポリイミド系高分子の全繰り返し単位に対して40モル%以上であり、 【化1】 [図:0001383266000007.jpg] [式(PI)中、Gは、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)及び式(26)でそれぞれ表される基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、 式(20)~式(26)において、*は結合手を表し、 式(26)中のZは、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-又は-Ar-SO2-Ar-を表し、Arは、炭素数6~20のアリール基を表し(これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい)、 【化2】 [図:0001383266000008.jpg] Aは、下記式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基であり、 式(32)~式(34)において、*は結合手を表し、 式(32)中、Z1は、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 式(33)中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 前記式(32)及び式(33)で表される基は、フッ素系置換基が導入されていてもよく、 式(34)中、Z1及びZ3は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、Z2は、単結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 【化3】 [図:0001383266000009.jpg] 」との発明特定事項を満たすと共に、本件発明1の「前記式(PI)で表される構造単位は、当該ポリイミド系高分子の全繰り返し単位に対して40モル%以上であ」ることを満足している。 甲1実施例1発明のポリイミドフィルムは、「黄色度が」2.78であり、本件発明1の「光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し」を満足している。 そうすると、本件発明1と甲1実施例1発明とは、 「ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルムであって、 当該ポリイミド系高分子は、式(PI)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有する重合体であり、前記式(PI)で表される構造単位は、当該ポリイミド系高分子の全繰り返し単位に対して40モル%以上であり、 【化1】 [図:0001383266000010.jpg] [式(PI)中、Gは、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)及び式(26)でそれぞれ表される基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、 式(20)~式(26)において、*は結合手を表し、 式(26)中のZは、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-又は-Ar-SO2-Ar-を表し、Arは、炭素数6~20のアリール基を表し(これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい)、 【化2】 [図:0001383266000011.jpg] Aは、下記式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基であり、 式(32)~式(34)において、*は結合手を表し、 式(32)中、Z1は、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 式(33)中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 前記式(32)及び式(33)で表される基は、フッ素系置換基が導入されていてもよく、 式(34)中、Z1及びZ3は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、Z2は、単結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 【化3】 [図:0001383266000012.jpg] 当該樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、樹脂フィルムの一方の面から樹脂フィルムに313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、当該樹脂フィルムが光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有するものである 樹脂フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、樹脂フィルムを有する「フレキシブルデバイスの前面板」と特定するのに対し、甲1実施例1発明は、樹脂フィルムである点 <相違点2> 本件発明1は、「当該樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、樹脂フィルムの一方の面から樹脂フィルムに313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、当該樹脂フィルムが、 (i)光照射試験後の当該樹脂フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率を有する、及び、 (ii)当該樹脂フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である、を満たし 光照射試験後の当該樹脂フィルムが0.8%以下のヘイズを有する」と特定するのに対して、甲1実施例1発明は、この点を特定しない点 <相違点3> 本件発明1は、樹脂フィルムに関し、「トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を更に含有する」と特定するのに対し、甲1実施例1発明は、この点を特定しない点 <相違点4> 本件発明1は、樹脂フィルムに関し、「シリカ粒子を更に含有する」と特定するのに対し、甲1実施例1発明は、この点を特定しない点 <相違点5> 本件発明1は、ポリイミド系高分子に関し、「重量平均分子量は、10,000~500,000であり」と特定するのに対し、甲1実施例1発明は、この点を特定しない点 事案に鑑み、相違点3から検討する。 甲1実施例1発明は、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を配合しておらず、甲1のいずれにもトリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を配合することに関する記載はなく、示唆もない。また、提出されたいずれの証拠にも、甲1実施例1発明において、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を配合することを動機付ける記載はない。そして、本件発明1は、実施例及び比較例の記載からみて、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を配合することで、「屈曲時の視認性が向上する」という、当業者には予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。 してみれば、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者においても想到容易ということはできない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1実施例1発明から容易に発明をすることができたものということはできない。 イ 本件発明1と甲1実施例2発明を対比すると、上記アと同様であり、甲1実施例2発明のポリイミドフィルムは、「黄色度が」2.82であり、本件発明1の「光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し」を満足している。 そうすると、本件発明1と甲1実施例2発明とは、上記アの一致点で一致し、上記アの相違点1ないし5で相違する。そして、相違点3の判断は、上記アに記載のとおりであるから、本件発明1は、甲1実施例2発明から容易に発明をすることができたものということはできない。 ウ 本件発明1と甲1実施例3発明を対比すると、上記アと同様であり、甲1実施例3発明のポリイミドフィルムは、「黄色度が」3.01であり、本件発明1の「光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し」を満足している。 そうすると、本件発明1と甲1実施例3発明とは、上記アの一致点で一致し、上記アの相違点1ないし5で相違する。そして、相違点3の判断は、上記アに記載のとおりであるから、本件発明1は、甲1実施例3発明から容易に発明をすることができたものということはできない。 エ 本件発明1と甲1実施例4発明を対比すると、上記アと同様であり、甲1実施例4発明のポリイミドフィルムは、「黄色度が」4.56であり、本件発明1の「光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し」を満足している。 そうすると、本件発明1と甲1実施例4発明とは、上記アの一致点で一致し、上記アの相違点1ないし5で相違する。そして、相違点3の判断は、上記アに記載のとおりであるから、本件発明1は、甲1実施例4発明から容易に発明をすることができたものということはできない。 オ 本件発明1と甲1実施例5発明を対比すると、上記アと同様であり、甲1実施例5発明のポリイミドフィルムは、「黄色度が」4.35であり、本件発明1の「光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し」を満足している。 そうすると、本件発明1と甲1実施例5発明とは、上記アの一致点で一致し、上記アの相違点1ないし5で相違する。そして、相違点3の判断は、上記アに記載のとおりであるから、本件発明1は、甲1実施例5発明から容易に発明をすることができたものということはできない。 (2)本件発明3ないし6について 本件発明1が、甲1実施例1ないし5発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのは上記2のとおりであるから、本件発明1の特定事項をすべて有し、更に限定する本件発明3ないし6についても同様に、甲1実施例1ないし5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3)取消理由1についてのむすび したがって、取消理由1には理由がない。 3 取消理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細にはおおむね次の記載がある。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明者らの知見によれば、ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルムは、高い透明性を有しながら、優れた屈曲性を達成することができる。しかし、ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルムは、屈曲時にコントラスト及び色相の変化を生じることがあり、この点で更に改善が必要であった。フレキシブルデバイスの表示部材の基材、光学部材の基材及び/又は前面板の用途に適用される樹脂フィルムには、屈曲時の良好な視認性を有することが求められる。 【0005】 そこで、本発明の主な目的は、ポリイミド系高分子を含有し、かつ高い透明性を有する樹脂フィルムに関して、屈曲時の視認性を改善することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、ポリイミド系高分子を含有する。この樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、当該樹脂フィルムに当該樹脂フィルムの一方の主面側から313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、当該樹脂フィルムが以下の条件を満たす。 (i)光照射試験後の当該樹脂フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率を有する、及び、 (ii)光照射試験前の樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し、当該樹脂フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である 【0007】 これら条件(i)及び(ii)を満たす樹脂フィルムは、屈曲時にコントラスト又は色相の変化を生じ難く、良好な視認性を維持することができる。」 ・「【0010】 本発明の一態様に係る光学部材又は表示部材の基材、及び前面板は、上記樹脂フィルム又は積層体を有する。これらは、フレキシブルデバイスに適用されたときに、屈曲時の優れた視認性に寄与することができる。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、ポリイミド系高分子を含有する透明樹脂フィルムに関して、屈曲時の視認性を改善することができる。」 ・「【0015】 樹脂フィルム10から5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、樹脂フィルム10に主面10a側から313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、樹脂フィルム10が以下の条件: (i)光照射試験後の樹脂フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率を有する、及び、 (ii)光照射試験前の樹脂フィルムが5以下の黄色度(YI値)を有し、樹脂フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である、 を満たす。これら条件(i)及び(ii)を満たす樹脂フィルムは、屈曲時にコントラスト又は色相の変化を生じ難く、良好な視認性を維持することができる。 【0016】 条件(i)及び(ii)を満たす樹脂フィルムは、例えば、高い透明性を有するポリイミド系高分子を使用するとともに、紫外線吸収剤を樹脂フィルム中に含ませることにより、容易に得ることができる。高い透明性を有するポリイミド系高分子、及び紫外線吸収剤の具体例に関しては、後述される。 ・・・ 【0019】 ・・・式(PI)で表される繰り返し構造単位が、ポリイミド系高分子の主な構造単位であると、フィルムの強度及び透明性の観点で好ましい。式(PI)で表される繰り返し構造単位は、ポリイミド系高分子の全繰り返し構造単位に対し、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、殊更好ましくは90モル%以上であり、殊更さらに好ましくは98モル%である。 ・・・ 【0021】 式(PI)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。・・・ 【0022】 式(PI)中、Gで表される4価の有機基の有機基(以下、Gの有機基ということがある)としては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選ばれる基が挙げられる。Gの有機基は、樹脂フィルム10の透明性及び屈曲性の観点から、4価の環式脂肪族基又は4価の芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基及び2以上の芳香族環を有しそれらが直接又は結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基等が挙げられる。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、Gの有機基は、環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する単環式芳香族基、フッ素系置換基を有する縮合多環式芳香族基又はフッ素系置換基を有する非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。本明細書においてフッ素系置換基とは、フッ素原子を含む基を意味する。フッ素系置換基は、好ましくはフルオロ基(フッ素原子,-F)及びパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくはフルオロ基及びトリフルオロメチル基である。 ・・・ 【0025】 Gの具体例としては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)又は式(26)で表される基が挙げられる。・・・ 【0027】 式(PI)中、Aで表される2価の有機基の有機基(以下、Aの有機基ということがある)としては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される基が挙げられる。Aで表される2価の有機基は、2価の環式脂肪族基及び2価の芳香族基から選ばれることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、及び2以上の芳香族環を有しそれらが直接又は結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基が挙げられる。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、Aの有機基には、フッ素系置換基が導入されていることが好ましい。 ・・・ 【0030】 Aの具体例としては、以下の式(30)、式(31)、式(32)、式(33)又は式(34)で表される基が挙げられる・・・ ・・・ 【0044】 このようなポリイミド系高分子を使用すれば、特に優れた屈曲性を有し、高い光透過率(例えば、550nmの光に対して85%以上、好ましくは88%以上)、低い黄色度(YI値、例えば5以下、好ましくは3以下)、及び低いヘイズ(例えば1.5%以下、好ましくは1.0%以下)を有する樹脂フィルムが得られ易い。 ・・・」 ・「【0047】 樹脂フィルム10は、1種又は2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。ポリイミド系高分子と適切に組み合わせることのできる紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。 本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。 【0048】 紫外線吸収剤の配合量は、樹脂フィルム10が上述の条件(i)及び(ii)を満たすような量であればよい。具体的には、紫外線吸収剤の量は、樹脂フィルムの全体質量に対して、通常1質量%以上であり、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることが好ましく、通常10質量%以下であり、8質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることが好ましい。 【0049】 樹脂フィルム10は、無機粒子等の無機材料を更に含有していてもよい。無機材料は、ケイ素原子を含むケイ素材料が好ましい。樹脂フィルム10がケイ素材料等の無機材料を含有することで、屈曲性の点で特に優れた効果が得られる。 【0050】 ケイ素原子を含むケイ素材料としては、シリカ粒子、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等の4級アルコキシシラン、シルセスキオキサン誘導体等のケイ素化合物等が挙げられる。これらのケイ素材料の中でも、樹脂フィルム10の透明性及び屈曲性の観点から、シリカ粒子が好ましい。 【0051】 シリカ粒子の平均一次粒子径は、通常、100nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が100nm以下であると透明性が向上する傾向がある。 ・・・ 【0053】 樹脂フィルム10において、ポリイミド系高分子と無機材料との配合比は、両者の合計を10として、質量比で、1:9~10:0であることが好ましく、3:7~10:0であることがより好ましく、3:7~8:2であることがさらに好ましく、3:7~7:3であることがよりさらに好ましい。ポリイミド系高分子及び無機材料の合計質量に対する無機材料の割合は、通常20質量%以上であり、30質量%以上であることが好ましく、通常90質量%以下であり、70質量%以下であることが好ましい。ポリイミド系高分子と無機材料の配合比が上記の範囲内であると、樹脂フィルムの透明性及び機械的強度が向上する傾向がある。」 「【0123】 ・[実施例1] 窒素置換した重合槽に、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、触媒及び溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込んだ。仕込み量は、式(1)で表される化合物75.0g、式(2)で表される化合物36.5g、式(3)で表される化合物76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとした。式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とのモル比は3:7、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物の合計と式(1)で表される化合物とのモル比は、1.00:1.02であった。 【0124】 【化4】 [図:0001383266000013.jpg] 【0125】 重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合した。この加熱中に、液中の水を除去した。その後、精製及び乾燥により、ポリイミドを得た。 【0126】 次に、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液、トリアジンン系紫外線吸収剤(TINUVIN(登録商標)479、BASF社製)、及び、水を混合し、30分間攪拌した。これらの攪拌は、米国特許番号US8,207,256B2に記載の方法に準拠して行った。 【0127】 ここで、シリカ粒子とポリイミドの質量比を60:40、アミノ基を有するアルコキシシランの量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して1.67質量部、トリアジン系紫外線吸収剤の量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して3質量部、水の量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して10質量部とした。 【0128】 混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して乾燥した。その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱することで、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムにおけるシリカ粒子の含有量は60質量%である。 【0129】 [実施例2(積層体)] 実施例1で作製した樹脂フィルムの一方の面に、プライマー層として、2液硬化型のプライマー(商品名:アラコートAP2510、荒川化学工業社製)を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、厚さ1μmのプライマー層を形成した。 【0130】 次いで、プライマー層の上に、4官能アクリレート(商品名:A-TMMT、新中村化学社製)47.5質量部、3官能アクリレート(商品名:A-TMPT、新中村化学社製)47.5質量部、反応性ウレタンポリマー(商品名:8BR-600、大成ファインケミカル社製、40質量%品)12.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN(登録商標)479、BASF社製)3質量部、光重合開始剤(IRGACURE(登録商標)184、チバスペシャリティケミカルズ社製)8質量部、レベリング剤(商品名:BYK-350、ビックケミージャパン社製)0.6質量部、及びメチルエチルケトン107質量部を混合して調製した溶液を塗布して塗膜を形成した。その塗膜を乾燥及び硬化させて、厚さ10μmの「表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有する機能層」としての機能層を形成し、実施例2の積層体を得た。 【0131】 [比較例1] 樹脂フィルムを形成するための混合溶液に、トリアジン系紫外線吸収剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。 【0132】 [比較例2] 390℃のガラス転移温度を有するポリイミド(三菱ガス化学社製「ネオプリム」)を準備した。このポリイミドの濃度20質量%のγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液、及び、水を混合し、30分間攪拌して混合溶液を得た。シリカ粒子とポリイミドの質量比が55:45で、アミノ基を有するアルコキシシランの量がシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して1.67質量部で、水の量がシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して10質量部であった。この混合溶液を用いて、実施例1と同様にして厚み80μmの樹脂フィルムを得た。 ・・・ 【0138】 【表1】 [図:0001383266000014.jpg] 」 (4)サポート要件の判断 発明の詳細な説明の【0004】及び【0005】によると、本件発明1及び3ないし8の解決しようとする課題は、「ポリイミド系高分子を含有し、かつ高い透明性を有する樹脂フィルムに関して、屈曲時の視認性を改善すること」(以下、「発明の課題」という。)である。 そして、上記(3)のとおり、発明の詳細な説明の【0015】には、「樹脂フィルム10から5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、樹脂フィルム10に主面10a側から313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、樹脂フィルム10が以下の条件: (i)光照射試験後の樹脂フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率を有する、及び、 (ii)光照射試験前の樹脂フィルムが5以下の黄色度(YI値)を有し、樹脂フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である、 を満たす。これら条件(i)及び(ii)を満たす樹脂フィルムは、屈曲時にコントラスト又は色相の変化を生じ難く、良好な視認性を維持することができる。」との記載があり、実施例1において、前記条件(i)及び(ii)を満たし、シリカ粒子を含有するとともにトリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を含有する特定のポリイミドフィルムが、高い透明性し、屈曲時の視認性が良いことを確認している。 そして、具体的に記載されている実施例及び比較例を見ると、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物とを重縮合した特定の化学構造と分子量を有するポリイミドとトリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤とシリカ粒子を含有する樹脂フィルムを用いた実施例1及び2で、その屈曲時の視認性が良かったことが示され、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を含まない以外は実施例1と同様の比較例1の樹脂フィルムでは、光照射前のフィルムの屈曲時の視認性が悪化したことが示されている。 そうすると、上記具体的な評価結果において示された特定の化学構造と分子量を有するポリイミドとトリアジン化合物を含む紫外線吸収剤とシリカ粒子とを含有し、上記条件(i)及び(ii)を満たす樹脂フィルムであれば、「屈曲時にコントラスト又は色相の変化を生じ難く、良好な視認性を維持することができる」こと、すなわち、発明の課題を解決できることを発明の詳細な説明から当業者は理解する。 そして、本件発明1は当該発明特定事項を有しているから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件発明1に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件を適合する。 また、本件発明3ないし6に関しても、同様に特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 なお、特許異議申立人は、令和3年7月9日に提出した意見書において、「特定の紫外線吸収剤(トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIX(登録商標)479、BASF社製))とは異なる、別の構造を有する紫外線吸収剤が、紫外線吸収機能を有するからといって、光照射試験前のフィルムの屈曲時の視認性を維持することができることを、発明の詳細な説明から当業者は認識できない」(上記意見書3ページ第12~16行)と主張するが、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を含有すれば発明の課題を解決できると当業者が理解するのは上記のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。 (5)取消理由2についてのむすび したがって、取消理由2は、理由がない。 第7 取消理由<決定の予告>に採用しなかった特許異議の申立ての理由について 取消理由<決定の予告>に採用しなかった特許異議の申立ての理由は、申立理由3(特許法第29条の2:拡大先願)であるので、以下、検討する。 1 先願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下、「先願明細書等」という。)の記載 職権で確認したところ、先願明細書等と同一の内容を開示していると認められる甲10には、以下の記載がある。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリアミドイミド共重合体を含むプラスチック基材、および前記プラスチック基材の少なくとも一方の面に配置されるハードコーティング層を含む表示装置用ウィンドウフィルムであって、 前記プラスチック基材は、ASTM D3363に従って角度90°の荷重1kgで測定される表面鉛筆硬度が3H以上であり、かつASTM E313に従って測定される黄色度(YI)が3以下である、表示装置用ウィンドウフィルム。」 ・「【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、高い硬度と優れた光学的物性とを有するプラスチック基材の表示装置用ウィンドウフィルムが提供される。」 ・「【0059】 本発明の一実施形態による表示装置用ウィンドウフィルムは、高い硬度および引張強度等の優れた機械的物性を有すると共に、低い黄色度のような優れた光学的特性を有することができる。特に、ガラス基材を使用しないので、軽量で、かつ高い柔軟性を示すことができ、フレキシブルディスプレイで有利に使用できる。 【0060】 本発明の一実施形態による表示装置用ウィンドウフィルムは、通常の添加剤、たとえば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、滑剤、分散剤、熱安定剤などを含んでもよい。また、本発明の表示装置用ウィンドウフィルムは、プラスチック基材およびハードコーティング層以外の他の層を含んでもよい。」 ・「【実施例】 【0063】 以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、単に本発明を例示によって説明するためのものであり、これによって本発明の範囲が制限されることではない。 【0064】 [実施例1] 窒素雰囲気下で、反応器に84000gのジメチルアセトアミドを入れ、ピリジン 15.614モルを投入した。前記反応器に2,2’-ビストリフルオロメチル-4,4’-ビフェニルジアミン(TFDB)15.614モルを添加し溶解して、TFDB溶液を製造した。前記TFDB溶液にテレフタロイルクロリド(TPCL)7.807モルを添加し、30℃で120分間攪拌して、ポリアミドを含むTFDB溶液を得た。前記ポリアミドを含むTFDB溶液に、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)2.3421モル、および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)5.4649モルを添加して、30℃で36時間反応を行って、ポリアミド-アミド酸共重合体を得た。 【0065】 得られたポリアミド-アミド酸共重合体溶液に、化学的イミド化触媒として無水酢酸11.7105モルを投入し、30分間攪拌した後、同じモル数のピリジンを添加して、30℃で36時間攪拌した。化学的イミド化を終えた溶液は、沈澱過程を通してパウダー形態に精製した。得られたパウダーを、120℃で24時間真空乾燥し、ジメチルアセトアミドにさらに溶解して、ポリアミドイミド共重合体溶液を製造した。 【0066】 製造した溶液を、ガラス板にドクターブレードを使用して塗布し、フィルム状に塗布した。その後、80℃のホットプレートで1時間プリベーク(pre-baking)した後、焼成炉(furnace)で1分当り3℃で昇温させ250℃まで加熱して、フィルムの乾燥および熱的イミド化を行い、厚さ50μmのフィルムを製造した。」 ・「【0079】 [4]UV照射前後の黄色度差(△YI) UVB波長領域の紫外線ランプを用いて、72時間UVB光を照射させ(積算光量200mJ/cm2以上)、UV照射前後の黄色度の差(UV照射後のYI-UV照射前のYI)を測定した。」 ・「【0082】 [図:0001383266000015.jpg] 」 2 先願明細書等に記載された発明 先願明細書等において実施例1として記載されているフィルムとして、次の発明(以下、「甲10先願発明」という。)が記載されていると認める。 「窒素雰囲気下で、反応器に84000gのジメチルアセトアミドを入れ、ピリジン 15.614モルを投入し、前記反応器に2,2’-ビストリフルオロメチル-4,4’-ビフェニルジアミン(TFDB)15.614モルを添加し溶解して、TFDB溶液を製造し、前記TFDB溶液にテレフタロイルクロリド(TPCL)7.807モルを添加し、30℃で120分間攪拌して、ポリアミドを含むTFDB溶液を得、前記ポリアミドを含むTFDB溶液に、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)2.3421モル、および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)5.4649モルを添加して、30℃で36時間反応を行って、ポリアミド-アミド酸共重合体を得、得られたポリアミド-アミド酸共重合体溶液に、化学的イミド化触媒として無水酢酸11.7105モルを投入し、30分間攪拌した後、同じモル数のピリジンを添加して、30℃で36時間攪拌し、化学的イミド化を終えた溶液は、沈澱過程を通してパウダー形態に精製し、得られたパウダーを、120℃で24時間真空乾燥し、ジメチルアセトアミドにさらに溶解して、ポリアミドイミド共重合体溶液を製造し、製造した溶液を、ガラス板にドクターブレードを使用して塗布し、フィルム状に塗布し、その後、80℃のホットプレートで1時間プリベーク(pre-baking)した後、焼成炉(furnace)で1分当り3℃で昇温させ250℃まで加熱して、フィルムの乾燥および熱的イミド化を行い、得られた厚さ50μmのフィルムであって、YI値が2.3であり、UVB波長領域の紫外線ランプを用いて、72時間UVB光を照射させ(積算光量200mJ/cm2以上)、UV照射前後の黄色度の差が0.5であるフィルム。」 3 本件発明1と甲10先願発明との対比・判断 甲10先願発明の「フィルム」は、その製造に利用するモノマー成分からみて、本件発明1の「ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルム」に相当する。 甲10先願発明のポリイミドフィルムを形成するモノマー成分は、「テレフタロイルクロリド(TPCL)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、2,2’-ビストリフルオロメチル-4,4’-ビフェニルジアミン(TFDB)(モル比50:35:15:100)」であるから、甲10先願発明のポリイミドフィルムを形成するポリイミド系高分子は、本件発明1の「ポリイミド系高分子は、式(PI)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有する重合体であり、前記式(PI)で表される構造単位は、当該ポリイミド系高分子の全繰り返し単位に対して40モル%以上であり、 【化1】 [図:0001383266000016.jpg] [式(PI)中、Gは、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)及び式(26)でそれぞれ表される基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、 式(20)~式(26)において、*は結合手を表し、 式(26)中のZは、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-又は-Ar-SO2-Ar-を表し、Arは、炭素数6~20のアリール基を表し(これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい)、 【化2】 [図:0001383266000017.jpg] Aは、下記式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基であり、 式(32)~式(34)において、*は結合手を表し、 式(32)中、Z1は、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 式(33)中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 前記式(32)及び式(33)で表される基は、フッ素系置換基が導入されていてもよく、 式(34)中、Z1及びZ3は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、Z2は、単結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 【化3】 [図:0001383266000018.jpg] 」との発明特定事項を満たすと共に、本件発明1の「前記式(PI)で表される構造単位は、当該ポリイミド系高分子の全繰り返し単位に対して40モル%以上であ」ることを満足している。 甲10先願発明のポリイミドフィルムは、「黄色度が」2.3であり、本件発明1の「光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有し」を満足している。 そうすると、本件発明1と甲10先願発明とは、 「ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルムであって、 当該ポリイミド系高分子は、式(PI)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有する重合体であり、前記式(PI)で表される構造単位は、当該ポリイミド系高分子の全繰り返し単位に対して40モル%以上であり、 【化1】 [図:0001383266000019.jpg] [式(PI)中、Gは、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)及び式(26)でそれぞれ表される基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、 式(20)~式(26)において、*は結合手を表し、 式(26)中のZは、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-又は-Ar-SO2-Ar-を表し、Arは、炭素数6~20のアリール基を表し(これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい)、 【化2】 [図:0001383266000020.jpg] Aは、下記式(32)、式(33)及び式(34)でそれぞれ表される基からなる群から選ばれるいずれかの基であり、 式(32)~式(34)において、*は結合手を表し、 式(32)中、Z1は、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 式(33)中、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 前記式(32)及び式(33)で表される基は、フッ素系置換基が導入されていてもよく、 式(34)中、Z1及びZ3は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、Z2は、単結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-又は―CO―NR-(Rは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、 【化3】 [図:0001383266000021.jpg] 当該樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、樹脂フィルムの一方の面から樹脂フィルムに313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、当該樹脂フィルムが光照射試験前の当該樹脂フィルムが5以下の黄色度を有するものである 樹脂フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点10-1> 本件発明1は、樹脂フィルムを有する「フレキシブルデバイスの前面板」と特定するのに対し、甲10先願発明は、樹脂フィルムである点 <相違点10-2> 本件発明1は、「当該樹脂フィルムから5cmの距離に設けられた出力40Wの光源によって、 樹脂フィルムの一方の面から樹脂フィルムに313nmの光を24時間照射する光照射試験を行ったときに、当該樹脂フィルムが、 (i)光照射試験後の当該樹脂フィルムが、550nmの光に対する85%以上の透過率を有する、及び、 (ii)当該樹脂フィルムの光照射試験前後での黄色度の差が2.5未満である、を満たし 光照射試験後の当該樹脂フィルムが0.8%以下のヘイズを有する」と特定するのに対して、甲10先願発明は、UVB波長領域の紫外線ランプを用いて、72時間UVB光を照射させ(積算光量200mJ/cm2以上)、UV照射前後の黄色度の差が0.5との特定である点 <相違点10-3> 本件発明1は、樹脂フィルムに関し、「トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を更に含有する」と特定するのに対し、甲10先願発明は、この点を特定しない点 <相違点10-4> 本件発明1は、樹脂フィルムに関し、「シリカ粒子を更に含有する」と特定するのに対し、甲10先願発明は、この点を特定しない点 <相違点10-5> 本件発明1は、ポリイミド系高分子に関し、「重量平均分子量は、10,000~500,000であり」と特定するのに対し、甲10先願発明は、この点を特定しない点 事案に鑑み、相違点10-3から検討する。 甲10先願発明は、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を配合しておらず、先願明細書等のいずれにもトリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を配合することに関する記載はなく、示唆もない。 そして、当業者において、甲10先願発明のフィルムに、トリアジン化合物を含む紫外線吸収剤を配合することが自明な事項ということもできないし、本件発明1は、実施例及び比較例の記載からみて、トリアジン系化合物を含む紫外線吸収剤を配合することで、「屈曲時の視認性が向上する」という、当業者には予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであることから、相違点10-3が課題解決のための具体的手段における微差ということもできない。 そうすると、相違点10-3は、実質的な相違点である。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1と甲10先願発明とは同一ということはできない。 4 本件発明3ないし6について 本件発明3ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明1を更に限定する発明であって、これらの発明と甲10先願発明とを対比すると、少なくとも上記3における相違点10-3で相違するから、本件発明3ないし6は、甲10先願発明と同一ということはできない。 5 まとめ したがって、申立理由3(特許法第29条の2:拡大先願)は理由がない。 第8 結語 以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由<決定の予告>及び特許異議申立人が主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1、3ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、3ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700966

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