審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2020-700656

粉末積層造形に用いるための造形用材料

審判番号
2020-700656
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-250696
登録番号
特許第6656911号(P6656911)
請求日
2020年09月03日
審決日
2021年06月22日
公報発行日
2021年09月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社フジミインコーポレーテッド
  • 【権利者代理人】安部 誠
  • 【権利者代理人】大井 道子
  • 【権利者代理人】谷 征史
  • 【異議申立人】石川 宗利
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 大光 太朗
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(B28B) / P1651.121-YAA(B28B) / P1651.536-YAA(B28B) / P1651.537-YAA(B28B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6656911号発明「粉末積層造形に用いるための造形用材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6656911号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第6656911号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第6656911号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成27年12月22日に出願され、令和 2年 2月 7日にその特許権の設定登録がされ、令和 2年 3月 4日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~8について、令和 2年 9月 3日に特許異議申立人 石川 宗利(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和 2年12月 8日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和 3年 2月 8日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和 3年 4月 5日に意見書を提出した。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 前記訂正の請求は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の訂正であって、一群の請求項を構成する請求項1~8を訂正の単位とするものであるから、特許法第120条の5第4項及び同法同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従うものであるところ、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(3)のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 請求項1に係る「前記造粒焼結粒子の顆粒強度は、1MPaを超えて10000MPa未満であって、」を「前記造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上2500MPa以下であって、」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 請求項2に係る「前記造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上5000MPa以下である、」を「前記造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上1000MPa以下である、」に訂正する(請求項2を引用する請求項3~8も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 発明の詳細な説明の【0080】の「例の番号が増えるごとに焼結温度を10℃高くした。」という記載を「例の番号が増えるごとに焼結温度を10℃低くした。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「造粒焼結粒子の顆粒強度」について、その下限を「1MPaを超えて」から「10MPa以上」に、その上限を「10000MPa未満」から「2500MPa以下」に、さらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項1は、本件明細書の【0030】の「造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上であるのが好ましく」、「顆粒強度は5000MPa以下であるのが好ましく、2500MPa以下であるのがより好ましく」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に記載された「造粒焼結粒子の顆粒強度」の上限を「5000MPa以下」から「1000MPa以下」にさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項2は、本件明細書の【0030】の「顆粒強度は5000MPa以下であるのが好ましく、2500MPa以下であるのがより好ましく、1000MPa以下(例えば800MPa以下)であるのが特に好ましい。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、以下のとおり、誤記の訂正を目的とするものと認める。 本件明細書の【0064】には、「典型的には、使用する材料に対して焼成温度が高い程、および/または、焼成時間が長い程、焼結が進行して顆粒強度の高い造形用材料を得ることができる。」と記載されている。また、実施例の評価に関し、【0093】には、「しかしながら、例えば例4に示されるように、造形用材料の顆粒強度が高すぎる場合(10000MPa)は、セラミック粉末と金属粉末との焼結が十分に進行性して通常の二次粒子の形態に基づく効果が低減されたものと考えることができる。」と記載されており、表1の例4の造形用材料は焼結が十分に進行したものであると理解できる。そうしてみると、セラミック粉末と金属粉末との配合が例4と同じ例5~8において、造形用材料の顆粒強度が例4よりも小さいことから、例4の造形用材料は、例5~8の造形用材料よりも、高い焼結温度で焼成されたものであると理解するのが自然である。 以上を併せ勘案すると、本件訂正前の明細書【0080】の「例の番号が増えるごとに焼結温度を10℃高くした。」との記載は、「例の番号が増えるごとに焼結温度を10℃低くした。」との記載の誤記であると解するのが合理的であるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであると認められる。 そして、訂正事項3は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2のとおり、本件訂正の請求は適法にされたものであり認容できるから、本件特許の請求項1~8に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認められる(以下、各請求項に係る発明を項番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 粉末積層造形に用いる造形用材料であって、 セラミックを含む第1粉末と、金属を含む第2粉末と、を含み、 前記第1粉末と、前記第2粉末とは、焼結により結合されて造粒焼結粒子を構成しており、 前記造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上2500MPa以下であって、 平均粒子径は50μm以下である、造形用材料。 【請求項2】 前記造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上1000MPa以下である、請求項1に記載の造形用材料。 【請求項3】 平均粒子径は、1μm以上100μm以下である、請求項1または2に記載の造形用材料。 【請求項4】 前記第1粉末および前記第2粉末の平均粒子径は、0.1μm以上20μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の造形用材料。 【請求項5】 前記第1粉末と前記第2粉末との合計に占める、前記第2粉末の割合は、10質量%以上90質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の造形用材料。 【請求項6】 前記第1粉末は炭化物セラミックである、請求項1~5のいずれか1項に記載の造形用材料。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載の造形用材料の三次元造形物である、物品。 【請求項8】 請求項1~6のいずれか1項に記載の造形用材料を用いて三次元造形を行う、三次元造形物の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和 2年12月 8日付けで特許権者に通知した取消理由は、本件訂正前の請求項1~8に係る特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない特許出願に対してされたものであり取り消されるべきものである、というものであり、特に、「顆粒強度の測定」及び「顆粒強度と焼結温度の関係」について指摘したものである。 2 取消理由(実施可能要件)についての当審の判断 (1)顆粒強度の測定について 顆粒強度の測定についての指摘は、要するに、発明の詳細な説明に記載の測定方法では、任意の10個以上の造粒焼結粒子の破壊強度σの算術平均値である顆粒強度として9.7~4854MPaの範囲外のものにはなり得ないにもかかわらず、本件明細書の表1には、顆粒強度として1MPaや5000MPa、10000MPaといった値が示されており、どのようにして「顆粒強度は、1MPaを超えて10000MPa未満」であるか否かを判別するのかを、当業者が理解することができない、というものである。 しかしながら、前記訂正事項1により、請求項1に記載された造粒焼結粒子の顆粒強度の範囲が、「10MPa以上2500MPa以下」に訂正されたことで、発明の詳細な説明に記載の測定に使用された、株式会社島津製作所製微小圧縮試験機MCT-500の試験力の範囲内(9.7~4854MPa)に含まれるものになった。 したがって、どのようにして「顆粒強度は、10MPa以上2500MPa以下」であるか否かを判別するかを、当業者が理解することができるものと解するのが相当であるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであり、前記取消理由(1)は妥当しない。 (2)顆粒強度と焼結温度の関係について 顆粒強度と焼結温度の関係についての指摘は、要するに、本件明細書【0080】に記載の例における焼結温度と顆粒強度との関係が、本件明細書【0064】の記載内容と矛盾する結果、顆粒強度と焼結温度の関係を理解することができず、どのようにして、「顆粒強度は、1MPaを超えて10000MPa未満」に制御するのかを、当業者は理解することができない、というものである。 しかしながら、前記訂正事項3により、本件明細書の【0080】の焼結温度の記載が、【0064】の記載と矛盾しない記載に訂正され、顆粒強度と焼結温度の関係を理解することができるものとなったので、前記取消理由(2)は妥当しない。 (3)小括 以上のとおりであるから、前記取消理由に理由はない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由のうち、前記第4の取消理由において採用しなかったものは、概略、以下のとおりである。 (1)申立理由1(新規性欠如) 本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。(特許異議申立書第33頁第20行~第48頁第22行) (2)申立理由2(進歩性欠如) 本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。(特許異議申立書第33頁第20行~第48頁第22行) (3)申立理由3(実施可能要件違反) 本件訂正前の請求項1~8に係る特許は、次のア~ウの点からみて、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 ア 記載不備1 本件発明と同様のWC-Coの粉末冶金法で作製される超硬合金(例えば、甲第9号証に示されるVM40)の圧縮強度でさえ4.7GPa(4700MPa)程度であるのに対し、本件発明において、顆粒の状態で5000MPa~10000MPaにも及ぶ強度が得られることは、当業者の技術常識からは、到底理解することができず、また、具体的な製造条件の記載もないため、これを実施することはできない。(特許異議申立書第29頁第6行~第11行)(以下、「記載不備1」という。) イ 記載不備2 本件明細書には具体的な焼結温度の数値が一切記載されておらず、焼結温度について、「焼結温度は、用いた金属粉末における金属の融点(Tm)の9割程度の温度(0.9×Tm℃)とした。」と記載されているにすぎず、甲第1号証の記載に鑑みれば、本件発明における金属の融点がどの程度の温度であるか不明である。そのため、本件発明において規定する範囲を実現するために、当業者に過度の試行錯誤を強いることは明らかである。(特許異議申立書第29頁第12行~第30頁第12行)(以下、「記載不備2」という。) ウ 記載不備3 本件明細書の表1をみると、本件訂正前の請求項1に係る発明の範囲である、顆粒強度が5000MPaである例16と、本件訂正前の請求項1に係る発明の範囲外である顆粒強度が1MPaである例8とで、造形物の気孔率がいずれも「10%以下」「○」と評価され、1層厚みもともに35μmであり、本件発明の課題・目的である「課題・目的」である「高密度な造形物」「効率的な造形」という点で差異がないから、当業者といえども本件発明の課題と前記数値による特定との実質的な関係を理解できず、本件発明に対応する課題の解決手段を理解できないから、本件発明の技術上の意義が不明である。(特許異議申立書第30頁第13行~第31頁第14行)(以下、「記載不備3」という。) (4)申立理由4(サポート要件違反) 本件訂正前の請求項1~8に係る特許は、次のアの点からみて、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 ア 記載不備4 本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例には、粉末積層造形法の中でも、粉末床溶融結合法において顆粒強度とその効果との関係が確認されているに過ぎず、指向性エネルギー堆積法を含む他の「粉末積層造形」については、顆粒強度の範囲と課題や効果との関係についての記載がないため、出願時の技術常識に照らしても、あらゆる粉末積層造形に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。(特許異議申立書第31頁第16行~第32頁第26行)(以下、「記載不備4」という。) (5)申立理由5(明確性要件違反) 本件訂正前の請求項1~8に係る特許は、次のア、イの点からみて、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 ア 記載不備5 本件訂正前の請求項1に係る造粒焼結粒子の顆粒強度に係る数値による限定「1MPaを超えて10000MPa未満」は、その技術的意味が明細書を参照しても明らかでなく、当業者は本件発明の外延を理解することができないから、本件発明は不明確である。(特許異議申立書第32頁下から2行~第33頁第3行)(以下、「記載不備5」という。) イ 記載不備6 本件明細書には、表1の「造形性」について、その「◎○×」の意味が記載されておらず、また、表1の「均一性」については、出願人の主観によるものであるから、これらの評価値を、本件発明の技術的範囲を特定するための指標とすることはできない。(特許異議申立書第33頁第4行~第18行)(以下、「記載不備6」という。) 2 甲各号証とその記載内容 (1)甲各号証 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 ・甲第1号証:国際公開第2015/162206号及び訳文 ・甲第2号証:国際公開第2012/002475号 ・甲第3号証:特表2017-519101号公報(甲第1号証の公表公報) ・甲第4号証:五日市, “溶射用粉末材料 -サーメット-”, 電気製鋼, 電気製鋼研究会, 2003年10月15日, 第74巻, 第4号, p.259-265 ・甲第5号証:特開2002-220652号公報 ・甲第6号証:“3Dプリンター用ガスアトマイズ粉末”, 山陽特殊製鋼技報, 山陽特殊製鋼株式会社, 2015年6月17日, 第22巻, 第1号, p.62-64 ・甲第7号証:特開平5-186859号公報 ・甲第8号証:“微小圧縮試験機 MCT-Wシリーズ”, [online], 株式会社島津製作所, [2020年08月20日検索], インターネット(インターネットアーカイブ WAYBACK MACHINEにおいてJAN24.2010付けで所蔵)<URL: https://web.archieve.org/web/20100124005235/http://www.shimadzu.co.jp/test/products/mtrl01/mtrl0104.html> ・甲第9号証:“製品総合カタログ”, [online], 2007年9月1日, 日本タングステン株式会社, [2020年8月20日検索], インターネット(インターネットアーカイブ WAYBACK MACHINEにおいてJAN16.2014付けで所蔵)<URL: https://web.archive.org/web/20140116072415/https://www.nittan.co.jp/tech/download/index.html> (2)甲各号証の記載内容 前記甲第1号証及び甲第2号証は、前記申立理由1、2(新規性・進歩性欠如)における主たる証拠であり、甲第4号証~甲第7号証は、同申立理由における本件出願時の周知技術を立証するための証拠であり、甲第8号証は、前記第4において検討した取消理由に関連する証拠であり、甲第9号証は、前記申立理由3(実施可能要件違反)を立証するための証拠であるから、ここでは、甲第1号証及び甲第2号証の記載内容を中心に摘記し、甲第4号証~甲第7号証についてはその概要のみを示すこととする。なお、甲第1号証は英語表記であるため、仮訳の作成に際しては、その公表公報である甲第3号証も申立人提出の訳文と併せて参照した。 ア 甲第1号証の記載内容 甲第1号証には、以下(1a)~(1e)の記載がある(当審注:「・・・」は当審による省略を表す。下線は当審による。以下、同様)。 (1a)「TECHNICAL FIELD The present disclosure relates to a method of making a powder of dense and spherically shaped cemented carbide or cermet granules. The present disclosure also relates to a powder produced by the method and use of said powder in additive manufacturing such as 3D printing by the binder jetting technique.」(第1頁第3~7行) (当審仮訳:技術分野 本開示は、緻密な球状の超硬合金又はサーメット顆粒の粉末の作製方法に関する。本開示は、当該方法により生産された粉末、及び、結合剤噴射技術による3D印刷などの付加製造における前記粉末の使用にも関する。) (1b)「The forming of spherically shaped granules comprising metal, hard constituents and organic binder is preferably performed by spray drying. The organic binder can for example be PEG (polyethylene glycol). The metal is typically Cobalt (Co) or a mixture of Co and one or more of Nickel (Ni), Iron (Fe), Chromium (Cr) and Molybdenium (Mo). The hard constituents may for example be WC, TiC, TiN, Ti(C,N) and/or NbC. The step of providing the granules with a spherical shape is important since the subsequent heating process will ideally make the granules to shrink but preserve their original spherical shape.」(第6頁第12~18行) (当審仮訳:金属、硬質成分、及び有機結合剤を含む球状顆粒の形成は、好ましくは噴霧乾燥によって実施される。有機結合剤は、例えばPEG(ポリエチレングリコール)であり得る。金属は典型的に、コバルト(Co)であるか、又は、Coとニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及びモリブデン(Mo)のうち一以上との混合物である。硬質成分は、例えば、WC、TiC、TiN、Ti(C,N)及び/又はNbCであり得る。後続する熱処理が顆粒を収縮させつつも元の球形状は維持することが理想的であるので、球形状を有する顆粒を提供する工程は重要である。) (1c)「In one embodiment of the present disclosure, the porosity inside each dense cermet or cemented carbide spherically shaped granule is less than 5 vol%, such as < 1 vol%, such as < 0.5 vol%. A low porosity is advantageous in applications benefitted by high green body densities and for which the obtainment of a high green density depends upon solid incompressible granules' ability to redistribute into a dense packing arrangement (e.g. gauged by TAP density). In such applications, the internal porosity of the spherically shaped granules adds to the porosity between the granules to make up the overall porosity and thereby shrinkage of the finally produced dense body. 3D printing by binder jetting and HIP constitute examples of such applications. In one embodiment of the present disclosure, the size of the sintered dense spherically shaped granules in the cermet or cemented carbide powder is distributed between 1-500 μm, more typically between 5-200 μm. Alternatively, the sintered dense spherically shaped granules are < 50 μm, such as < 30 μm. When using this powder for 3D printing of green bodies aimed to become subsequently sintered to almost full density or at least closed porosity, the spherically shaped granule size is preferably below 50 μm, such as below 30 μm. But even more important for such an application, the granule size fraction below 10 μm constitutes more than 10 wt% or more preferably 20 wt% of the complete distribution. In HIP applications the preferred continuous particle size distribution of the spherically shaped granules size is in the range of from about 5 to about 500 μm, such as about 10 to about 200 μm.」(第8頁第26行~第9頁第11行) (当審仮訳:本開示の一実施態様で、緻密なサーメット又は超硬合金の球状顆粒の各々の内部の気孔率は5vol%よりも低くてよく、例えば1vol%未満、例えば0.5vol%未満である。グリーンボディの密度が高いことが有益であり得る用途においては気孔率が低いことが有利であるので、高いグリーンボディ密度の取得は、固体の非圧縮性顆粒の緻密なパッキング配置への再分配能力(例えばTAP密度によって測定される)に依存する。そのような用途では、球状顆粒内部の気孔率が粒間の気孔率に加えられて全体としての気孔率となり、これにより最終的に生産される緻密体の収縮率となる。そのような用途の例は、結合剤噴射及びHIPによる3D印刷で構成される。 本開示の一実施態様で、サーメット又は超硬合金粉末の焼結された緻密な球状顆粒の粒径が、1-500μmの間、より典型的には5-200μmの間に分布する。代替的に、焼結された緻密な球状の粒径は50μm未満、例えば30μmであり得る。この粉末を、後で焼結してほぼ最大密度もしくは少なくとも閉鎖気孔率まで焼結されることを目的とするグリーンボディの3D印刷に使用する場合、球状顆粒の粒径は好ましくは、50μmを下回り、例えば30μmを下回る。しかし、そのような用途で更に重要なことは、10μmを下回る粒径を有する部分が、全分布のうち10wt%よりも多く、又はより好ましくは20wt%よりも多くを構成することである。HIP用途では、球状顆粒の粒径の好ましい連続的な粒度分布が、約5~約500μm、例えば約10~約200μmの範囲内にある。) (1d)「In one embodiment of the present disclosure, the heat treatment in the furnace chamber is performed at a sintering temperature ranging of about 30°C to about 100 °C, or from 30°C to 100°C, above the solidus temperature of the metal in the spherically shaped granules. Alternatively the sintering is performed at a sintering temperature of more than about 100 °C, or from 100 °C, above the solidus temperature.」(第9頁第29~33行) (当審仮訳:本開示の一実施態様で、炉室内での熱処理は、球状顆粒中の金属の固相線温度を約30℃~約100℃の範囲、又は約30℃~100℃上回る焼結温度で実施される。代替的に、焼結が、固相線温度を約100℃よりも上回る、又は100℃以上上回る焼結温度で、実施されてもよい。) (1e)「Example 1 - inhibitor powder of yttrium oxide Granules were formed from a slurry comprising powders of WC, Co, Cr, PEG and ethanol. The average grain size of the WC and the Co powder were 0.8 μm any 1.3 μm respectively. The slurry was spray dried in a Niro-spray drying equipment. The spray dried granules formed were sieved on a 63 μm net to leave only the smallest fraction from the granulated powder. In this example the final cemented carbide to be formed was a 10 wt% Co, 0.45 wt% Cr3 C2 and 89.44 wt% WC material and the relative composition of the powders in the slurry were adapted therefor. The spray dried granules comprised about 2 wt% PEG. ・・・ Two different sintering temperatures were evaluated, 1370°C and 1410°C in vacuum environment. The liquid temperature of the metal (Co and Cr) in the granules is about 1307°C. ・・・ The granule size of the sintered dense spherically shaped granules of the cemented carbide powder sintered at 1410°C was d(0.1): 22.4 μm, d(0.5): 32 μm and d(0.9): 46 μm. Several through cuts spherically shaped granules were studied showing a porosity of less than 0.02 vol% (<A02).」(第13頁第8行~第14頁第18行) (当審仮訳:実施例1‐酸化イットリウムの阻害剤粉末 WC、Co、Cr、PEG、及びエタノールの粉末を含むスラリから顆粒が形成された。WC及びCo粉末の平均粒径はそれぞれ、0.8μmと1.3μmであった。Niro噴霧乾燥機器でスラリが噴霧乾燥された。形成された噴霧乾燥顆粒は63μmネットでふるい分けされ、顆粒粉末のうち最小の部分のみが残った。 この実施例で、最終的に形成されるべき超硬合金の材料は、10wt%のCo、0.45wt%のCr3C2、及び89.44wt%のWCであり、これに粉末のスラリ中の相対的な組成を適応させた。噴霧乾燥した粒は、約2wt%のPEGを含んでいた。 ・・・ 真空環境下で、1370℃及び1410℃の異なる2つの焼結温度が評価された。顆粒中の金属(Co及びCr)の液温は約1307℃である。 ・・・ 1410℃で焼結した超硬合金粉末の焼結された緻密な球状顆粒の粒径は、d(0.1):22.4μm,d(0.5):32μm、及びd(0.9):46μmであった。0.02vol%よりも低い(<A02)気孔率を示すスルーカット(through cuts)球状顆粒が幾つか観察された。) イ 甲第2号証の記載内容 甲第2号証には、以下(2a)~(2c)の記載がある。 (2a)「[0001] 本発明は、低温プロセス溶射用途で使用される溶射用粉末、及びその溶射用粉末を用いた溶射皮膜の形成方法に関する。 ・・・ [0013] 本実施形態の溶射用粉末は、造粒-焼結サーメット粒子からなる。各造粒-焼結サーメット粒子は、セラミックス微粒子及び金属微粒子が凝集してなる複合粒子であり、セラミックス微粒子及び金属微粒子の混合物を造粒して得られる造粒物(顆粒)を焼結することにより製造される。 ・・・ [0016] 造粒-焼結サーメット粒子の製造に使用されるセラミックス微粒子は、炭化タングステンや炭化クロムなどの炭化物、ホウ化モリブデンやホウ化クロムなどのホウ化物、窒化アルミニウムなどの窒化物、ケイ化物及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む硬質セラミックスからなることが好ましい。」 (2b)「[0023] 造粒-焼結サーメット粒子の平均径(体積平均径)の上限は30μmである。造粒-焼結サーメット粒子の平均径が30μm以下である場合には、造粒-焼結サーメット粒子が溶射時に加熱されやすいために、溶射用粉末の付着効率が向上する。また、溶射用粉末から形成される溶射皮膜の緻密度が増す結果、溶射皮膜の硬度及び耐摩耗性も向上する。 ・・・ [0027] 造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度は100~600MPaである。この場合、造粒-焼結サーメット粒子が溶射時に加熱されやすいために、溶射用粉末の付着効率が向上する。なお、造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度の測定は、例えば、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験装置“MCTE-500”を用いて行うことができる。 [0028] 造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度は、200MPa以上であることが好ましい。造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度が高くなるにつれて、溶射用粉末から形成される溶射皮膜の硬度及び耐摩耗性が向上する。 [0029] また、造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度は、500MPa以下であることが好ましく、より好ましくは400MPa以下である。造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度が低くなるにつれて、溶射用粉末の付着効率が向上する。」 (2c)「[0049] 表2の“造粒-焼結サーメット粒子の組成”欄には、各溶射用粉末の造粒-焼結サーメット粒子の化学組成を示す。同欄中、“WC-12%Ni”は12質量%のニッケルと残部の炭化タングステンのサーメットを表す。 ・・・ [0053] 表2の“圧縮強度”欄には、各溶射用粉末の造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度を測定した結果を示す。具体的には、式:σ=2.8×L/π/d2に従って算出される10個の造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度σ[単位MPa]の平均値を示す。上式中、Lは臨界荷重[単位N]を表し、dは造粒-焼結サーメット粒子の平均径[単位mm]を表す。臨界荷重は、一定速度で増加する圧縮荷重を圧子で造粒-焼結サーメット粒子に加えたときに、圧子の変位量が急激に増加する時点において造粒-焼結サーメット粒子に加えられた圧縮荷重の大きさである。この臨界荷重の測定には、(株)島津製作所製の微小圧縮試験装置“MCTE-500”を使用した。 ・・・ [0056] 表2の“皮膜形成能(その2)”欄には、表1に示す条件で各溶射用粉末を溶射したときに実用上好適な厚さの溶射皮膜を形成することができるか否かに基づいて各溶射用粉末の皮膜形成能を評価した結果を示す。具体的には、複数パスの繰り返しにより150μmの厚さの溶射皮膜を形成することができた場合には良(○)、150μmの厚さの溶射皮膜を形成することはできなかったが、100μmの厚さの溶射皮膜を形成することができた場合には可(△)、複数パスを繰り返しても100μmの厚さの溶射皮膜を形成することができなかった場合には不良(×)と評価した。 ・・・ [0057] [表1] [0058][表2] 」 ウ 甲第4号証の記載内容(顆粒強度に関する事項) 甲第4号証には、「溶射用粉末材料・サーメット」と題して、市販されているサーメット溶射材料の例、造粒-焼結法、及び、顆粒強度と1次粒子サイズの影響について記載され、具体的には、焼結温度が高くなるほど、構成する一次粒子の粒成長が促進され、顆粒強度は高くなることや、顆粒強度の異なるCr3C2/25%NiCr粉末として、顆粒強度が165MPa、440MPa、725MPaのものが記載されている(特に、「4.顆粒強度と1次粒子サイズの影響」という項目を参照した。)。 エ 甲第5~7号証の記載内容(溶射に関する事項) 甲第5号証には、「溶射用粉末およびその製造方法」(発明の名称)について記載され、具体的には、溶射用の粉末が肉盛りスプレーに用いられたり、逆に肉盛りやスプレー用の粉末が溶射に用いられること)や、造粒-焼結法によって調製されたサーメット粉末はそのまま溶射用粉末として使用されることなどが記載されている(特に、【0004】、【0010】を参照した。)。 甲第6号証には、「3Dプリンター用ガスアトマイズ粉末」と題して、金属粉末の方式には大まかにパウダーベット方式とデポジション方式の2種類があり、デポジション方式は、溶射や溶接に類似していることが記載されいている(特に、62ページを参照した。)。 甲第7号証には、「溶射による3次元物品の製作方法及び装置」(発明の名称)について記載され、具体的には、材料の薄い層を徐々に積み上げて3次元物品を創出するためのプロセスには、3次元印刷やニアネット溶射が含まれることが記載されている(特に、【0002】を参照した。)。 3 申立理由1、2(新規性・進歩性欠如)についての当審の判断 (1)甲第1号証を主引用例とする場合について ア 甲第1号証に記載された発明 前記2(2)ア(1a)~(1e)の記載を、実施例1の「造粒-焼結サーメット粒子」に注目して整理すると、甲第1号証には、 「3D印刷などの付加製造に使用される密な球状の超硬合金粉末であって、 WC粉末とCo粉末を含み、 前記WC粉末とCo粉末は焼結され超硬合金粉末を構成し、 焼結した超硬合金粉末の焼結された緻密な球状顆粒の粒径は、d(0.5):32μmである、 超硬合金粉末。」 の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「造粒焼結粒子の顆粒強度」を「10MPa以上2500MPa以下」の範囲に特定しているのに対し、甲1発明は、「超硬合金粉末」の顆粒強度の範囲を特定しておらず、その値が明らかでない点。 (イ)相違点1についての検討 以下、前記(ア)の相違点1について検討する。 甲1発明は、3D印刷などの付加製造に適した粉末として、密な球状の超硬合金粉末を提供しようとするものであるが、当該粉末の品質や特性として、そもそも「顆粒強度」には着目しておらず、そのような記載も示唆も見当たらない。本件発明1においては、造粒焼結粒子の顆粒強度を、造形のためのエネルギーによる造粒焼結粒子の崩壊や飛散を抑制すべく、顆粒強度の下限を設定する一方、造粒焼結粒子の溶融が困難にならないよう、その上限を設定したものであるが、甲第1号証には、そのような顆粒強度の範囲を設定することによる作用・効果についての記載もない。そうしてみると、甲1発明において、造粒焼結粒子の顆粒強度を、特定の範囲に調製する動機付けは存在しない。 また、前記ア(1d)、(1e)に記載されているように、甲1発明に関する粉末の焼結温度等の製造条件、気孔率等の製造条件、及び超硬合金粉末等の物性値は、本件発明1のそれと同じであるとは認められないから、甲1発明の超硬合金粉末の顆粒強度が、本件発明1において特定される顆粒強度の範囲に含まれるものとも認められない。 当該相違点1に係る本件発明1の構成ついて、申立人は、甲第2号証又は甲第4号証に記載された特定の粉末の顆粒強度(周知技術)にみられるように、本件発明1おける顆粒強度の数値範囲は至極一般的なものであるから、当該構成は、甲1発明が当然に具備する構成であるとか、甲1発明における単なる設計事項の範疇のものである旨主張するので、ここで検討すると、これらの証拠には、確かに低温プロセス溶射用途で使用される溶射用粉末としての造粒-焼結サーメット粒子として、圧縮強度が100~600MPaのもの(上記2(2)イ(2b)など)や、サーメット溶射材料であるCr3C2/25%NiCr粉末として、顆粒強度が165MPaのもの(上記2(2)ウ)などが記載されており、それらの数値だけをみれば本件発明1の顆粒強度の数値範囲内に当たるものを認めることができる。しかしながら、この事実はあくまで特定の粒子についてであり、甲1発明を含めた、造粒焼結粒子全般について広く当てはまる事項であるとまでいうことはできない。また、このような特定の粒子の顆粒強度を、甲1発明において採用しなければならない事情も見当たらないのであるから、当該主張を採用して本件発明1が新規性及び進歩性を欠如するということはできない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明及び申立人のいう周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、前記イに示した理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明に対して新規性及び進歩性を欠如するということはできない。 (2)甲第2号証を主引用例とする場合について ア 甲第2号証に記載された発明 前記2(2)イ(2a)~(2c)の記載を、実施例7の「造粒-焼結サーメット粒子」に注目して整理すると、甲第2号証には、 「低温プロセス溶射用途で使用される溶射用粉末であって、 溶射用粉末は、造粒-焼結サーメット粒子からなり、該造粒-焼結サーメット粒子は、WC及びCoが凝集してなる複合粒子であり、 圧縮強度が250MPaであり、 造粒-焼結サーメット粒子の平均径が14.3μmである溶射用粉末。」 の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 相違点2:本件発明1は、「粉末積層造形」に用いる材料に関するものであるのに対し、甲2発明は、「低温プロセス溶射」に用いる材料に関するものである点。 (イ)相違点2についての検討 以下、前記(ア)の相違点2について検討すると、 甲第2号証には、「低温プロセス溶射」に適した溶射用粉末を得るために、造粒-焼結サーメット粒子の平均径、造粒-焼結サーメット粒子の圧縮強度を含む物性値を調整する記載はあるものの、当該造粒-焼結サーメット粒子を「粉末積層造形」用途として用いることに関する記載も示唆もない。したがって、甲2発明の「低温プロセス溶射」に適した溶射用粉末を、粉末積層造形用途とする動機付けは存在しない。 当該相違点2に係る本件発明1の構成について、申立人は、甲第5号証~甲第7号証に記載されているように、溶射と肉盛りに定義の差はなく、溶射用の粉末も溶射に限定されるわけではなく、肉盛りにも用いられる点や粉末積層造形には溶射も含まれる点は周知の事項であり、溶射用粉末も「肉盛」や「粉末積層造形」に用いる粉末と異なるところがないことも周知の事項であるから、当該相違点2は実質的な相違点ではないか、当該構成は、類似の技術分野における粉末を単に適用・転用したにすぎない旨主張するので、ここで検討すると、たとえ「低温プロセス溶射」に適した溶射用粉末を、「粉末積層造形」用途に用いることが周知であったとしても、「低温プロセス溶射」に適した溶射用粉末に求められる物性値と、「粉末積層造形」用途に求められる物性値が同じであるとの証拠はないのであるから、甲2発明に係る特定の物性を有する溶射用粉末自体が、本件発明1のような粉末積層造形に用いる造形用材料として用いることを予定したものであるということはできず、当該主張を採用することはできない。 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとも、当該発明と申立人のいう周知技術基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ 本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、前記イに示した理由と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明に対して新規性及び進歩性を欠如するということはできない。 4 申立理由3に対する判断 (1)記載不備1について 本件訂正により、本件発明1の「顆粒強度」の範囲は、「10MPa以上2500MPa以下」に限定されたため、前記第5の1(3)で実施できないと主張された「顆粒強度」の範囲(5000MPa~10000MPa)は、本件発明1の発明特定事項ではなくなったため、前記記載不備1は解消されたものと認められる。 (2)記載不備2について 本件明細書には、「焼成の温度は、一次粒子の粒径にもよるが、概ね、例えば、第2粉末における金属の(融点×0.8~0.95)程度の温度を目安に好適に設定することができる」(【0064】)、「焼結温度は、用いた金属粉末における金属の融点(Tm)の9割程度の温度(0.9×Tm℃)とした。」(【0080】)等と記載されており、当該記載を素直に読めば、金属粉末として採用した金属の融点を基準として設定したものと解することができ、本件明細書の表1の実施例を例に取ると、金属粉末であるCoやNiCrの融点の0.9倍の温度を焼結温度としたものであると解される。そうしてみると、第2粉末として採用した金属の融点から焼結温度を設定することは、当業者が過度な試行錯誤なくなし得るものといえる。また、焼成時間の具体的な値が本件明細書に記載されていなくとも、焼成の進行状況をもとに焼成時間を設定することは、当業者が通常行う事項であるといえ、この点についても過度な試行錯誤を要するとは認められない。 (3)記載不備3について 前記1(3)ウで具体的に指摘する例8(顆粒強度が1MPa)、例16(顆粒強度が5000MPa)で示された顆粒強度は、本件訂正により、本件発明1で特定する顆粒強度の範囲外になったため、前記記載不備3に理由はない。また、本件発明1の範囲内の例(例えば、例2、3、6、7)と、本件発明1の範囲外の例(例えば、例1、4、5、8)とを比較すると、造形物の気孔率、1層厚み、造形性は、本件発明1の範囲内の例の方がいずれも良好な特性を有しているものと認められる。してみれば、当業者が本件発明の課題と顆粒強度の数値による特定との関係は理解できるものといえるため、前記記載不備3は解消されたものと認められる。 5 申立理由4に対する判断 (1)記載不備4について ア サポート要件違反について 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か(以下では、両範囲をまとめて「当業者において課題解決できると認識できる範囲」という。)を検討して判断すべきものであると解される。 イ 本件発明の課題について 本件発明の課題は、発明の詳細な説明の【0007】によれば、「粉末積層造形に用いるための粉末状の造形用材料であって、セラミックを含みながらも高密度な造形物をより効率的に造形することが可能な新規な造形用材料を提供すること」であると認められる。 ウ 本件発明の課題に関連する記載について 本件発明の課題に係る特性、すなわち、「高密度な造形物」、「効率的な造形」に着目しながら、発明の詳細な説明をみると、以下(ア)~(ウ)の記載を認められる。 (ア)「【0030】 (顆粒強度) 造形用材料を構成する造粒焼結粒子の顆粒強度は、1MPaを超えるように規定することができる。これにより、造形のためのエネルギーにより造粒焼結粒子が崩壊したり、飛散したりするのを好適に抑制することができる。その結果、造形エリアへの材料粉末の供給が安定するため、ムラの無い高品質な造形物を造形できるために好ましい。なお、おおよその目安として、例えば、バインダにより造粒一体化された造粒粒子は、顆粒強度が1MPaに満たないと考えることができる。造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上であるのが好ましく、50MPa以上であるのがより好ましく、100MPa以上(例えば200MPa以上)であるのが特に好ましい。しかしながら、発明者らの検討によると、顆粒強度が強すぎると、造形用材料を十分に溶融させるのが困難となるために好ましくない。また、顆粒強度強すぎる造粒焼結粒子は、概ね造粒されていない単一粒子と類似した構成となるまで焼結が進行し、球状化した粒子とその性状が似たものとなってしまう。かかる観点から、顆粒強度は10000MPa未満とする。顆粒強度は5000MPa以下であるのが好ましく、2500MPa以下であるのがより好ましく、1000MPa以下(例えば800MPa以下)であるのが特に好ましい。」 (イ)「【0032】 このような造形用材料は、第1粉末を構成する粒子(典型的には一次粒子である)および第2粉末を構成する粒子(典型的には一次粒子である)の間には間隙が存在する。そして個々の一次粒子間には間隙が形成され、一次粒子は互いに3次元的に結合される。これによって、造形用材料はエネルギー源(熱源)からエネルギーを受け取りやすく、溶解しやすいという利点がある。その結果、二次粒子間の間隙は容易に消失されて、例えば鋳型を使用して製造する焼結体(バルク体)に近い、緻密性の高い高硬度な造形物を得ることができる。」 (ウ)「【0036】 このように一次粒子の平均粒子径を微細にすることで、例えば、かかる造形用材料を構成する二次粒子自体の融点よりも低い温度で軟化または溶融させることができる。このことは、これまでに予想されていない、全く新しい知見であり得る。したがって、かかる造形用材料は、例えば、粉末積層造形において従来のエネルギー(例えば、レーザにおいてはレーザ出力)よりも低い状態で軟化または溶融させることができ、プロセスのコストダウンが可能となる。また、二次粒子の軟化または溶融効率が上がるため、例えば、レーザ走査速度を低下させることなく、さらにはレーザ走査速度を速めて、気孔率の少ない緻密な三次元造形物の作製が可能となる。これにより、例えば、当該造形用材料のバルクに近い特性を有する三次元造形物の作製が可能となる。」 これらの記載から、本件発明の課題としている、高密度な造形物のより効率的な造形を実現するためには、造形のためのエネルギーが造形焼結粒子にかかる際に、造粒焼結粒子が崩壊したり、飛散したりすることを抑制するため、顆粒強度の下限を設定する一方、造形用材料の溶融が困難とならない上限を設定することが重要であると理解できる。 そして、発明の詳細な説明の表1に示される実施例において、顆粒強度が10MPa(例7、18)、100MPa(例6、17)、300MPa(例2、3、9-11、14、20-22)である造粒焼結粒子からの造形物は、「高密度」であり、「効率的」に造形できたことが示されているから、当該実施例により、当業者が所定の顆粒密度を有する造粒焼結粒子が、前記課題を解決できるものと認識することができる。 エ 「当業者において課題解決できると認識できる範囲」の認定 前記ウに照らすと、実施例で示された選択的レーザ溶融法以外の粉末積層造形法であっても、造形のためのエネルギーが造粒焼結粒子に付与される他の粉末積層造形においても同様に、本件発明の課題を解決することができると解するのが相当である。 そうすると、前記実施例の記載や技術常識などに照らすと、前記実施例に記載された特定の粉末積層造形による造形用材料と同等の特性を発現し、もって、当業者が本件発明の課題が解決できると認識できる範囲として、本件発明1が規定するような、「造粒焼結粒子の顆粒強度は、10MPa以上2500MPa以下であって、平均粒子径は50μm以下である、造形用材料」を認めることができるから、結局、「当業者において課題解決できると認識できる範囲」は、本件発明1の範囲を包含するものと解するのが合理的である。 オ サポート要件適合性について 前記アの判断手法に照らして、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、前記エの「当業者において課題解決できると認識できる範囲」のものであるか否かを検討すると、前記エのとおり、本件発明1は、「当業者において課題解決できると認識できる範囲」のものであるし、本件発明2~8についても同様であるから、本件の特許請求の範囲の請求項1~8の記載は、サポート要件に適合するものである。 (2) 小活 以上のとおりであるから、申立理由4は、理由がない。 6 申立理由5に対する判断 (1)記載不備5、6について 前記第4の2(1)で検討したとおり、本件訂正により顆粒強度の範囲が「10MPa以上2500MPa以下」に限定されたため、本件発明の外延は理解できるものとなった。 また、本件発明1は、本件明細書の表1で示される「造形性」、「均一性」等の評価値が発明特定事項に含まれるものではないから、「造形性」、「均一性」等の評価方法のあり方によって本件発明1の明確性についての判断が左右されるものではない。 よって、申立理由5は、理由がない。 第6 令和 3年 4月 5日付けの意見書における申立人の主張について 申立人は、令和 3年 4月 5日付けの意見書にて、 「・・・顆粒強度は「算術平均値」であることが明確に記載されており、・・・「算術平均値」は測定値にばらつきがある場合に用いることは技術常識であり、・・・本件において、造粒焼結粒子は「任意の10個」を選定して測定されるのであるから、・・・個々の顆粒強度の中には10MPa未満のものが当然に含まれることになる。かかる10MPa未満の範囲は、微小圧縮試験装置(MCT-500)の試験力から算出可能な破壊強度の範囲の下限9.7MPa(?10MPa)を下回ることになることから、そのような測定は不可能であるから、・・・実施例の表1における例7,例18の10MPaの顆粒強度は、当業者の技術常識に照らしても評価・実施ができないものである。・・・微小圧縮試験装置の試験力の下限が、顆粒強度算出の元となる上記臨界荷重よりも十分に小さくなければ、臨界荷重は測定できない。・・・すなわち、臨界荷重を基にして算出される顆粒強度が10MPaとして測定されることはありえない。」(令和 3年 4月 5日付け意見書第3頁下から4行~第5頁第19行) 「さらに付言すると、本件訂正事項1及び2によって、特許請求の範囲が減縮されても、実施例で記載された1MPa、5000MPa及び10000MPaとして測定されたという事実的記載は残る。・・・本件明細書において1MPa、5000MPa及び1000MPaが測定できると解釈できない以上、前記効果等も把握することができないのであり、かかる点からも、発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものということはできない。試験力が広い微小圧縮試験装置があるのであれば、それで全て測定するのが自然であり、顆粒強度の大きい側および小さい側をそれで評価しながら、その間の顆粒強度は別の微小圧縮試験装置を用いるということは、不自然であると言わざるを得ない。・・・」(令和 3年 4月 5日付け意見書第5頁第21行~第6頁第16行) 「・・・すなわち、配合比が異なる例2、3、9、10、11であっても、顆粒強度が300MPaで一定であったものが、配合比としてはそれらに挟まれる例4においてのみ、焼結温度が同じでありながら、顆粒強度は二桁も異なる10000MPaを示すことになる。かかる挙動は当業者の技術常識に照らしても理解することができない。・・・しかしながら、本件明細書には、これら2500MPa以下および1000MPa以下にするための条件は記載されておらず、実施例においても、上記制御の基となるべき、Tmの具体的な数値やその精度・・・も一切記載されていない。」(令和 3年 4月 5日付け意見書第6頁第18行~第7頁第24行) 等と主張する。 しかしながら、任意の10個の造粒焼結粒子の顆粒強度を測定する際に、個々の顆粒強度の中に10MPa未満のものが当然含まれるとの主張を裏付ける具体的証拠は存在せず、個々の顆粒強度の中に10MPa未満のものが含まれるか否かは、測定対象となる造粒焼結粒子の顆粒強度のばらつきに依存するものであって、当然含まれるとまではいえないと解すべきである。 また、本件発明1の比較例に相当する例における顆粒強度を別の微小圧縮試験装置により測定した、とする特許権者の主張が不自然であるとしても、そのことをもって、当業者が本件発明1を実施できないとはいえない。また、本件発明1が実施可能であることは、前記第5の4で検討したとおりである。 さらに、実施例に具体的な条件が記載されていないとする主張については、第5の4(2)で検討したとおりであって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。 よって、申立人の追加的主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-700656

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決54件(株式会社フジミインコーポレーテッド、石川 宗利)
  • 2018-700069異議申立 / 2019-03-15 / 訂正認容粉末積層造形に用いるための造形用材料
    同じ当事者: 株式会社フジミインコーポレーテッド、石川 宗利
  • 2024-700366異議申立 / 2024-12-09 / 訂正認容研磨用組成物および磁気ディスク基板製造方法
    同じ当事者: 株式会社フジミインコーポレーテッド
  • 2023-701121異議申立 / 2024-09-04 / 訂正認容研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、および半導体基板の製造方法
    同じ当事者: 株式会社フジミインコーポレーテッド
  • 2023-700304異議申立 / 2024-08-27 / 訂正認容研磨用組成物
    同じ当事者: 株式会社フジミインコーポレーテッド
  • 2023-701039異議申立 / 2024-05-29 / 訂正認容研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、および半導体基板の製造方法
    同じ当事者: 株式会社フジミインコーポレーテッド
同じ論点・分野の審決(審決分類)44件(113・B28B、121・B28B、536・B28B ほか)
  • 2024-700744異議申立 / 2026-03-25 / 訂正認容繊維補強モルタルの押出積層方法
    共通の審決分類: 113・B28B、121・B28B、536・B28B、537・B28B
  • 2019-700740異議申立 / 2021-03-30 / 訂正認容コンクリート瓦およびその成形材料
    共通の審決分類: 113・B28B、121・B28B、536・B28B、537・B28B
  • 2024-700941異議申立 / 2025-09-03 / 訂正認容石膏ボード中の起泡液化剤
    共通の審決分類: 113・B28B、121・B28B、537・B28B
  • 2022-701310異議申立 / 2023-09-26 / 訂正認容水硬性石灰を用いた成形体およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・B28B、121・B28B、537・B28B
  • 2021-700485異議申立 / 2022-08-23 / 訂正認容石膏プラスターボードの製造方法およびそれにより得られる石膏プラスターボード
    共通の審決分類: 113・B28B、121・B28B、537・B28B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存