特許異議申立
2020-700444
二酸化塩素含有ゲル状組成物
- 審判番号
- 2020-700444
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-245071外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月24日
- 審決日
- 2021年06月30日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.537-YAA(C08F) / P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6626706号発明「二酸化塩素含有ゲル状組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6626706号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。
特許第6626706号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
特許第6626706号の請求項4に係る特許に対する本件特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲
1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6626706号に係る出願(特願2015-245071号、以下「本願」ということがある。)は、平成27年12月16日に出願人アース製薬株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、令和元年12月6日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、令和元年12月25日に特許掲載公報が発行されたものである。
2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、令和2年6月24日に特許異議申立人株式会社日本触媒(以下「申立人」ということがある。)により、「特許第6626706号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」ということがある。)
3.審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6626706号の特許請求の範囲の全請求項に係る発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、本件特許異議の申立てに係る審理の対象外となる請求項は存しない。
4.以降の手続の経緯
令和2年10月22日付け 取消理由通知
令和2年12月 2日 面接(特許権者)
令和2年12月14日 意見書・訂正請求書
令和3年 1月14日付け 通知書(申立人あて)
令和3年 2月16日 意見書(申立人)
第2 申立人が主張する取消理由
申立人が主張する取消理由はそれぞれ以下のとおりである。
申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第10号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下の(1)ないし(3)が存するとしている。
(1)本件の請求項1ないし4に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
(2)本件の請求項1ないし4に係る発明は、いずれも、甲第1号証ないし甲第7号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)
(3)本件の請求項1ないし4は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項の規定に違反する特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由3」という。)
・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2015-66164号公報
甲第2号証:特開2013-230974号公報
甲第3号証:独立行政法人国民生活センターが平成22年11月11日に公表したものと認められる「二酸化塩素による除菌をうたった商品 -部屋等で使う据置タイプについて-」と題する報道発表資料(http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20101111_1.pdf)
甲第4号証:特開昭58-2312号公報
甲第5号証:特開昭61-36309号公報
甲第6号証:特開昭62-144748号公報
甲第7号証:特開平11-278808号公報
甲第8号証:特表2002-532154号公報
甲第9号証:申立人の従業員である松本智嗣が令和2年6月10日に作成したものと認められる実験成績証明書
甲第10号証:特表昭62-500500号公報
(以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第10号証」を、それぞれ、「甲1」ないし「甲10」と略す。)
第3 当審が通知した取消理由の概要
当審は、本件特許第6626706号に対する上記第2に示す特許異議の申立てを審理した上、以下の取消理由を通知した。
●本件特許の請求項1ないし4は、その記載が不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由A」という。)
第4 令和2年12月14日付訂正請求による訂正の適否
1.訂正内容
令和2年12月14日付訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、訂正前の請求項1及び同請求項1を引用する請求項2ないし4を一群の請求項ごとに訂正するものであって、以下の訂正事項を含むものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(A)亜塩素酸塩水溶液、(B)pH調整剤、(C)吸水性樹脂を含有し、(C)吸水性樹脂がスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩であることを特徴とする、二酸化塩素含有ゲル状組成物。」と記載されているのを、「(A)亜塩素酸塩水溶液、(B)pH調整剤、(C)吸水性樹脂および水酸化ナトリウムを含有し、(B)pH調整剤が25℃における二酸化塩素を含有する溶液のpHを4.5~6.5に調整するものであり、(C)吸水性樹脂がスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩であり、かつ、その粉体時の粒度が63~710μmであることを特徴とする、二酸化塩素含有ゲル状組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0026】に記載された「表5に示す粒度」を、「表6に示す粒度」に訂正する。
(この訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項1ないし4について請求されたものである。)
2.検討
以下の検討において、本件訂正前の請求項1ないし4をそれぞれ項番に従い「旧請求項1」のようにいい、訂正後の請求項1ないし4についてそれぞれ項番に従い「新請求項1」のようにいう。
(1)訂正の目的
上記訂正事項1及び2に係る各訂正では、旧請求項1について、本件特許に係る明細書の【0010】及び【0015】ないし【0019】の各記載に基づき、「(B)pH調節剤」につき「25℃における二酸化塩素を含有する溶液のpHを4.5~6.5に調整するもの」を使用すること及び「水酸化ナトリウム」を使用することをそれぞれ付加するとともに、旧請求項4に記載された「スルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩」である「吸水性樹脂」に係る「粉体時の粒度が63~710μmである」という事項を更に付加することによって、旧請求項1の特許請求の範囲を減縮して新請求項1としているものであって、旧請求項4の記載を全て削除しているものであるから、訂正事項1及び2に係る各訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る訂正では、本件特許に係る明細書の【0026】における記載につき、文脈上の不明確な記載を単に正したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、本件訂正における上記訂正事項1ないし3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる目的要件に適合する。
(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
上記(1)でそれぞれ説示したとおり、訂正事項1及び2に係る各訂正は、訂正前の明細書の記載及び旧請求項4の記載に基づいて、旧請求項1及び4に係る各特許請求の範囲を実質的に減縮していることが明らかであって、また、訂正事項3に係る訂正は、訂正前の明細書の不明確な記載を単に正しているものであるから、訂正事項1ないし3に係る訂正は、いずれも、新たな技術的事項を導入するものではなく、訂正前の各請求項に係る特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでもない。
したがって、上記各訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。
(3)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1ないし4の全ての請求項についてされているから、本件訂正に係る訂正の適否の検討において、独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。
3.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正を認める。
第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
訂正後の本件特許に係る請求項1ないし4には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)亜塩素酸塩水溶液、(B)pH調整剤、(C)吸水性樹脂および水酸化ナトリウムを含有し、
(B)pH調整剤が25℃における二酸化塩素を有する溶液のpHを4.5~6.5に調整するものであり、
(C)吸水性樹脂がスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩であり、かつ、その粉体時の粒度が63~710μmであることを特徴とする、二酸化塩素含有ゲル状組成物。
【請求項2】
(B)pH調整剤がリン酸塩またはクエン酸とクエン酸塩の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化塩素含有ゲル状組成物。
【請求項3】
(B)pH調整剤が、リン酸二水素ナトリウム、または、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムとの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の二酸化塩素含有ゲル状組成物。
【請求項4】
(削除)」
(以下、上記請求項1ないし4に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明4」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)
第6 当審の判断
当審は、
当審が通知した上記取消理由及び申立人が主張する上記取消理由についてはいずれも理由がなく、ほかに本件の各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきものであり、
請求項4に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、上記適法にされた本件訂正によって、同項に記載された事項が全て削除されたことにより、申立の対象を欠くものとなり不適法となったものであって、その補正ができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきもの、
と判断する。
以下、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由につき具体的に検討、詳述する。
I.取消理由1及び2について
申立人が主張する取消理由1及び2は、いずれも本件特許が特許法第29条に違反して特許されたものであることをいうものであるから、併せて検討する。
1.各甲号証に記載された事項及び各甲号証に記載された発明
上記取消理由1及び2につき検討するにあたり、申立書の記載(第7頁ないし第20頁)からみて、取消理由1は、甲1を引用例とし、取消理由2は甲1及び甲2を主たる引用例とするものであるから、甲1ないし甲7及び甲10に記載された事項を確認した上(甲8及び甲9は取消理由1及び2に係る証拠として提出されたものではないので除外する。)、記載された事項に基づき、甲1及び甲2に記載された各発明の認定を行う。
(記載事項に係る下線は、元々あるものを除き、当審が付した。)
(1)甲1
ア.甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放剤用吸水剤及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、徐放剤に用いられる特定の吸水性能を有する粒子状吸水剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、オムツに代表される水分を吸収する材(衛生材)として用いられるほかに、芳香剤や消臭剤等のように予め所定の薬剤を吸収させておき、徐々に放散させる徐放剤にも用いられている。
【0003】
特許文献1では、pH調整剤を含む亜塩素酸塩水溶液を架橋ポリアクリル酸塩系の高吸水性樹脂添加し、淡黄色のゲル状組成物を得ることが開示されている。また、特許文献2では、大量の薬剤を吸収させ、かつその揮散量を安定化させるために、酸基の一部がオニウムカチオンで置換された架橋体を用いることが開示されている。
【0004】
非特許文献1によれば、予め薬剤を吸収させてゲル状にした徐放剤は、使用直前にゲル化させた徐放剤に対して、薬剤の放散が不十分になることが記載されている。
・・(中略)・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前記徐放剤用途において、吸収した薬剤を長期間にわたり安定的に放散することが出来る、徐放剤及びその徐放剤に用いられる吸水剤を提供することである。」
(1b)
「【0105】
〔4〕徐放剤
本発明の徐放剤は、予め薬剤液と吸水性樹脂とを混合して用いるタイプが好ましく、二酸化塩素を主たる薬剤として揮散する薬剤液を用いる除菌剤用途が好ましい。
【0106】
前記薬液剤としては、二酸化塩素及び/又は亜塩素酸塩を含む水溶液が好ましく、二酸化塩素及び亜塩素酸塩を含む水溶液が好ましい。更に、クエン酸等を含んでいると亜塩素酸塩との緩衝作用が起こり、特に好ましく、具体的には、特開平11-278808号公報に開示されている純粋二酸化塩素剤液が挙げられる。また、pH調整剤としてリン酸二水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムを含んでいてもよく、具体的には特開2013-075820号公報記載の純水二酸化塩素液剤が挙げられる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例に従って本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され解釈されるものではない。なお、本発明で得られる吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂粒子、吸水剤組成物及び吸収性物品は、特に指定がない限り、気温25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で測定した。
【0108】
(吸水剤の評価方法)
[テスト液(薬剤液)の調整〕
テスト液は、イオン交換水97.255質量部に亜塩素酸ナトリウム(関東化学株式会社製)2.42質量部と無水リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社)0.325質量部を溶解させることで作成した。
【0109】
[粒度〕
本発明に係る吸水性樹脂の粒度は、欧州特許0349240号に開示された測定方法に準じて行った。
【0110】
即ち、目開き850μm、500μm、300μm、212μm、150μmを有するJIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))又は相当する篩を用いて、粒子状吸水剤10gを分級し、各篩上に残った吸水性樹脂及び全篩を通過した吸水性樹脂の質量をそれぞれ測定した。
【0111】
[薬剤液吸収量〕
吸水性樹脂0.20gを不織布製の袋(120×180mm)に均一に入れヒートシールした後、25±3℃に調温しテスト液2L中に浸漬した。30分経過後、袋を引上げ、10分間吊り下げて水切りを行った。その後、袋の質量W9[g]を測定した。同様の操作を、吸収体を入れずに行い、そのときの袋の質量W10[g]を測定した。下記式1にしたがって吸収体の絶対吸収量(g)を算出した
・・(中略)・・
【0116】
・・(中略)・・
[製造例1]
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液〔a001〕とした。次に、この反応液〔a001〕を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気したのち、内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液温を30℃に保ちながら反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素が1ppm以下となるように窒素置換した。
【0117】
続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.8g及びL-アスコルビン酸の0.2質量%水溶液21.8gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体〔b001〕を取り出した。
【0118】
得られた含水ゲル状重合体〔b001〕は約1~5mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体〔b001〕を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥し、乾燥物〔b011〕とした。
【0119】
次いで、乾燥物〔b011〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き450μmと106μmの金網で連続的に分級した。450μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕した。106μmの金網を通過した粒子は、粉砕を行った全量に対して13質量%を占めていた。106μmの金網を通過した吸水性樹脂微粒子は、90℃に加熱された水を同量混合し、再度同条件で乾燥し、粉砕し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A010〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A010〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は47.6[g/g]であった。
【0120】
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A010〕100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部と、水2.5質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c001〕3.33質量部を混合した。上記の混合物を175℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A110〕を得た。
【0121】
吸水性樹脂粉末〔A110〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A111〕を得た。
・・(中略)・・
【0134】
[製造例5]
製造例1記載のポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)量7.5gを4.4gに変更して反応液〔a005〕とし、製造例1記載の方法と同様にして、乾燥物〔b015〕を得た。
【0135】
次いで、乾燥物〔b015〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き710μmと106μmの金網で連続的に分級した。710μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A050〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A050〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は41.7[g/g]であった。
【0136】
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A050〕100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.4質量部と、水2.0質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c005〕2.83質量部を混合した。上記の混合物を200℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A550〕を得た。
【0137】
吸水性樹脂粉末〔A550〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A551〕を得た。
・・(中略)・・
【0148】
[実施例1]
製造例5で得られた粒子状吸水剤〔A551〕を比較吸水剤1として、所物性を表1に記載した。
【0149】
[実施例2]
製造例6で得られた粒子状吸水剤〔A661〕を吸水剤5として、所物性を表1に記載した。
【0150】
[比較例5]
製造例7で得られた粒子状吸水剤〔A771〕を比較吸水剤2として、所物性を表1に記載した。
【0151】
【表1】
【0152】
表1の、実施例1と比較例5とを比べると、比較例5は薬剤液吸収量が多いにも関わらず、露出面積評価が低い。つまり、露出面積評価は、単純に吸収量の多寡に依存するものではないことが分かる。」
イ.甲1に記載された発明
甲1には、上記ア.の記載事項(特に摘示(1b)の下線部、「実施例1」に係る記載(【0116】ないし【0120】)並びに「吸水剤の評価方法」に係る記載(【0108】ないし【0111】)からみて、吸水性樹脂からなる粒子状吸水剤に水性液を吸収させた場合、一般にゲル状物となることは当業者に自明であるから、
「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)を溶解して反応液〔a005〕とし、この反応液〔a005〕を重合してなる細分化された含水ゲル状重合体〔b005〕を熱風乾燥し、乾燥物〔b015〕とした後、粉砕し、さらに目開き710μmと106μmの金網で連続的に分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A050〕を得て、次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A050〕に、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び水からなる表面架橋剤水溶液〔c005〕を混合して加熱処理することにより得られた吸水性樹脂〔A550〕を含む粒子状吸水剤〔A551〕に、イオン交換水97.255質量部に亜塩素酸ナトリウム(関東化学株式会社製)2.42質量部と無水リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社)0.325質量部を溶解させたテスト液を吸収させてなるゲル状組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
(2)甲2
ア.甲2に記載された事項
上記甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【特許請求の範囲】
・・(中略)・・
【請求項3】
溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及び、pH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤、並びに高吸水性樹脂を含有するゲル状組成物であって、
前記pH調整剤が25℃における5%水溶液のpHが2.5~6.8となる緩衝性のある無機酸またはその塩であり、
当該溶存二酸化塩素ガスが当該亜塩素酸塩とは別に調製されたものであることを特徴とする、ゲル状組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のゲル状組成物であって、
前記「25℃における5%水溶液のpHが2.5~6.8となる緩衝性のある無機酸またはその塩」がリン酸またはその塩であることを特徴とする、
ゲル状組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のゲル状組成物であって、
前記高吸水性樹脂がデンプン系吸水性樹脂、セルロース系吸水性樹脂または合成ポリマー系吸水性樹脂であることを特徴とする、
ゲル状組成物。
・・(中略)・・
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のゲル状組成物であって、前記pH調整剤が、リン酸二水素ナトリウム、または、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムとの混合物であることを特徴とする、
ゲル状組成物。」
(2b)
「【0001】
本発明は、純粋二酸化塩素液剤、これを含有するゲル状組成物及び発泡性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素ガスは強力な酸化剤であり、その酸化作用により滅菌したり悪臭成分を分解したりすることが知られている。そのため、二酸化塩素は殺菌剤、消臭剤等として使用されている。二酸化塩素は、水に対してその容積の20倍溶解して黄褐色の水溶液となるので、取り扱いの容易性の観点から水溶液の形態で用いることが望まれるが、二酸化塩素水溶液は空気に触れると二酸化塩素ガスを急激に発生させる。そこで、二酸化塩素ガスを過酸化炭酸ナトリウム(Na2C2O6)水溶液に溶解させて亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)を主成分とするpH9に保持した水溶液、いわゆる安定化二酸化塩素水溶液とすることによって、安定性を維持しつつ二酸化塩素ガスを持続的に発生させることが提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、安定化二酸化塩素水溶液は、その安定性を維持するためにpH9のアルカリ性に保持されているので、亜塩素酸ナトリウムは水溶液中では次の式(1)に示すように解離している。
【0004】
【化1】
NaClO2 → Na++ClO2- (1)
【0005】
そのため、殺菌、消臭等の作用を発現させる遊離の二酸化塩素ガスの発生が極めて少なく、殺菌、消臭等の効果を十分に発揮し得ないという問題があった。
そこで、使用直前に、安定化二酸化塩素水溶液に刺激剤を添加したり、また酸を添加してそのpHを7以下にしたりして、二酸化塩素ガスを発生させることが提案されているが、そのための器具、設備等を必要とするためにコストがかかるという問題があった。
また、安定化二酸化塩素水溶液にあらかじめ刺激剤や酸を添加した場合には、二酸化塩素ガスの発生濃度及び発生持続性は、安定化二酸化塩素水溶液の濃度のみに依存するので、使用目的に応じて、二酸化塩素ガスの発生濃度及び発生持続性をコントロールすることができないという問題があった。更に、工場等の事業所で発生する廃ガス、有機廃棄物等を大規模に消臭処理したりするのに効果的に適用できても、室内、自動車内、冷蔵庫内等において、簡便に殺菌したり消臭するのに効果的に使用できないという問題があった。
なお、安定化二酸化塩素水溶液を寒天、ゼラチン、高吸水性樹脂等のゲル化剤でゲル化してゲル状組成物とすることが提案されているが、かかるゲル状組成物も二酸化塩素ガスの発生が極めて少なく、殺菌、消臭等の効果を十分に発揮し得ないという問題があった。
【0006】
そこで、上記の問題を解決するため、亜塩素酸塩にクエン酸などの有機酸を加えたものを溶存二酸化塩素液剤に加え、これにより二酸化塩素濃度を長期間、略一定に維持させるといった提案がなされた(特許文献2を参照)。
・・(中略)・・
【発明の開示】
【0007】
特許文献2に記載された技術によれば、ガス発生を急激に起こすことなく二酸化塩素濃度を長期間一定に保持でき、二酸化塩素が少しずつガスとして放出され続けても二酸化塩素濃度を略一定の範囲内に保持させることができる。しかし、保存安定性の点では必ずしも十分ではなく、改善の余地が残っていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、更に保存安定性に優れ、二酸化塩素濃度を更に長期間、略一定の範囲内に保持させることができる純粋二酸化塩素液剤を提供することを目的とする。」
(2c)
「【0017】
(pH調整剤)
本発明で使用し得るpH調整剤としては、25℃における5%水溶液のpHが2.5~6.8となる緩衝性のある酸(無機酸、有機酸)またはその塩であればよい。前記pHが2.5未満であっても、また6.8を超えても、溶存二酸化塩素の保存安定性が低下し、保存中における二酸化塩素液剤の液性(pH)の変動が大きくなる。なお、25℃における5%水溶液のpHが3.5~6.0となる緩衝性のある酸(無機酸、有機酸)またはその塩を使用することが好ましく、pH4.0~5.5であることがさらに好ましい。具体的には、リン酸、ホウ酸、メタリン酸、ピロリン酸、スルファミン酸、酢酸などが挙げられ、優れた保存安定性が得られるという点で無機酸またはその塩が好ましい。またその塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物などが挙げられる。なかでも、保存安定性に優れ、保存中における液性(pH)の変動を最小限に抑えることができ、それにより優れた殺菌作用、抗ウイルス作用、防カビ作用、防臭作用などの効果を発揮することができるという点で、リン酸またはその塩を使用することが好ましく、リン酸二水素ナトリウムを使用することがさらに好ましい。なお、pH調整剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。最終的に得られる純粋二酸化塩素液剤のpHは4.5~6.5とすることが、長期にわたる保存安定性に優れ、保存中のpH変動も少ないという理由で好ましく、5.5~6.0とすることがさらに好ましい。
【0018】
(高吸水性樹脂)
本発明の溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びpH調整剤(25℃における5%水溶液のpHが2.5~6.8(好ましくは3.5~6.0、さらに好ましくは4.0~5.5)となる緩衝性のある酸またはその塩)を含有する純粋二酸化塩素液剤は、高吸水性樹脂と混合してゲル状組成物とすることができる。高吸水性樹脂としては、デンプン系吸水性樹脂(デンプン-アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン-アクリル酸グラフト共重合体、デンプン-スチレンスルホン酸グラフト共重合体、デンプン-ビニルスルホン酸グラフト共重合体などのグラフト化デンプン系高吸水性樹脂など)、セルロース系吸水性樹脂(セルロース-アクリロニトリルグラフト共重合体、セルロース-スチレンスルホン酸グラフト共重合体、架橋カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系高吸水性樹脂、紙や布をリン酸エステル化したもの、布をカルボキシメチル化したものなど)、及び合成ポリマー系吸水性樹脂(架橋ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系高吸水性樹脂、架橋ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート架橋体などのアクリル系高吸水性樹脂、架橋ポリエチレンオキシド系高吸水性樹脂など)が挙げられる。
市販されているものとしては、例えば、デンプン/ポリアクリル酸系樹脂[サンウエット(三洋化成社製、粉末)]、架橋ポリアクリル酸系樹脂[アクアリック(日本触媒社製、粉末)、アラソーブ(荒川化学社製、粉末)、ワンダーゲル(花王社製、粉末)、アクアキープ(住友精化社製、粉末)、ダイアウエット(三菱油化社製、粉末)]、イソブチレン/マレイン酸系樹脂[KIゲル(クラレ社製、粉末)]、及び、ポバール/ポリアクリル酸塩系樹脂[スミカゲル(住友化学社製、粉末)]などがあり、これらの使用も本発明を妨げるものではない。」
(2d)
「【0024】
(実施例1)
次のようにして二酸化塩素液剤を調製した。すなわち、二酸化塩素ガス2000ppm溶存水250mlに水680mlを加えた。その後、まず亜塩素酸ナトリウム25%溶液80mlを加えて撹拌し、次にこの溶液のpHが5.5~6.0となる量のリン酸二水素ナトリウム(25℃における5%水溶液のpHは4.1~4.5)を加えて撹拌した。このようにして、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムからなる二酸化塩素液剤1000mlを得た。
(比較例1)
リン酸二水素ナトリウムの代わりに、クエン酸(25℃における5%水溶液のpHは1.8~2.2)を使用したという以外は実施例1と同様にして、比較対照用の二酸化塩素液剤を調製した。
(実施例2)
前記実施例1と同様の方法で調整した二酸化塩素液剤384mlを架橋ポリアクリル酸塩系の高吸水性樹脂[アクアリック(日本触媒社製、粉末)]16gに添加し、これを室温で十分に攪拌して淡黄色のゲル状組成物400gを得た。
(実施例3)
前記実施例1と同様の方法で調整した二酸化塩素液剤160ml、アルキルスルホン酸ナトリウムよりなる界面活性剤30ml、流動パラフィン10g、及び液化ブタンよりなるエアゾール噴射剤100gを密閉容器に入れて室温で十分に攪拌して淡黄色の発泡性組成物300gを得た。
・・(中略)・・
【0032】
(安定化試験)
実施例1で得た二酸塩素液剤を従来公知の方法を用いて希釈し、100ppmと500ppmの濃度をもつ二酸化塩素液剤とした。同様に、比較例1で得た二酸化塩素液剤を100ppmと500ppmの二酸化塩素濃度に調整した。
これら液剤の保存安定性を調べるべく、溶存二酸化塩素濃度(ppm)の経時的変化を測定した。なお、安定化試験は従来公知の方法に従って加速試験(測定温度:54℃。14日間が常温の1年に相当する)により行った。保存安定性の結果を下記[表]および[図]に示す(反応当量以上のリン酸二水素ナトリウムを加えた場合と、反応当量以上のクエン酸を加えた場合の比較データを示す)。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記した[表]および別紙の[図]から明らかなように、25℃における5%水溶液のpHが2.5~6.8となるpH調整剤を使用する方が、pH2.5~6.8から外れる緩衝性のある酸を使用するよりも二酸化塩素液剤の保存安定性が飛躍的に向上し、また保存中の液性(pH)の変動も小さいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、抗菌・除菌剤、抗ウイルス剤、除カビ・防カビ剤及び消臭・防臭剤等に好適に利用することができる。」
イ.甲2に記載された発明
甲2には、上記ア.の記載事項(特に摘示(2a)の【請求項3】、【請求項5】及び【請求項7】)からみて、
「溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、及び、pH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤、並びに合成ポリマー系吸水性樹脂である高吸水性樹脂を含有するゲル状組成物であって、
前記pH調整剤が25℃における5%水溶液のpHが2.5~6.8となる緩衝性のあるリン酸二水素ナトリウム、または、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムとの混合物であり、
当該溶存二酸化塩素ガスが当該亜塩素酸塩とは別に調製されたものであることを特徴とする、ゲル状組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
(3)他の甲号証に記載された事項
ア.甲3
甲3には、二酸化塩素又は塩素である塩素系ガスを放散することができる市販品についてのガスの放散速度の経時変化及び部屋における二酸化塩素の気中濃度の経時変化について記載されており(第4頁ないし第7頁)、ゲルタイプの製品の場合に放散開始から極めて低い放散速度のまま経時的に変化しないこと、ゲル生成タイプの製品の場合に放散当初は5日間程度の一定期間高放散速度であるものの経時的に低下し低放散速度となること及び錠剤タイプの場合に放散当初は7日間程度の一定期間不安定ではあるが高放散速度であるものの経時的に低下し21日間程度経過すると極めて低い放散速度となることが記載されている(第5頁「図2」)。
イ.甲4
甲4には、(A)2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸並びにそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の単量体から誘導された単位0.5ないし75重量%、(B)アクリル酸およびそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、メタクリル酸およびそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アクリルアミド並びにビニルピロリドンよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の単量体から誘導された単位23ないし99.49重量%、及び(C)少なくとも2個の官能基を有する架橋剤から誘導された単位0.01ないし2.0重量%からなる水中において膨潤性の電解質を含有する水溶液用の架橋共重合体が記載されている(特許請求の範囲第1項及び第4項)。
ウ.甲5
甲5には、スルホアルキル(メタ)アクリレート系単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体(A)20~100モル%、(メタ)アクリル酸系単量体から選ばれる1種又は2種以上の単量体(B)0~80モル%、およびその他の重合性単量体(C)0~50モル%(ただし、(A)、(B)および(C)成分の合計は100モル%である。)からなる単量体混合物(I)を、架橋剤(II)の存在下に重合して得られる水不溶性吸水性樹脂よりなる耐塩、耐光性吸水剤が記載されている(特許請求の範囲第1項)。
エ.甲6
甲6には、スルホアルキル(メタ)アクリレート系単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体(A)35~90モル%、(メタ)アクリルアミド系単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体(B)10~25モル%及び(メタ)アクリル酸系単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体(C)0~40モル%(ただし、(A)、(B)および(C)成分の合計は100モル%である。)からなる単量体混合物(I)を、架橋剤(II)の存在下に重合して得られる架橋重合体よりなる耐塩性吸水剤が記載されている(特許請求の範囲第1項)。
オ.甲7
甲7には、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩及びクエン酸であるpH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤並びに合成ポリマー系吸水性樹脂である高吸水性樹脂を含有することを特徴とするゲル状組成物が記載されている(【請求項7】、【請求項8】及び【請求項10】)。
カ.甲10
甲10には、ポリ電解質にスルホン酸塩部の量が水吸収活性を与えるために充分であり、膨潤性を与えるために充分な量で架橋されている、アルカリ金属スルホン酸塩含有ポリ電解質から成る4より小さいpHの水系媒体の形での水を吸収する水膨潤可能性ポリマーが記載されている(特許請求の範囲第1項)。
2.検討
本件の各発明につき、各甲号証に記載された発明又は記載に基づき検討する。
(1)甲1発明に基づく検討
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)を溶解して反応液〔a005〕とし、この反応液〔a005〕を重合してなる細分化された含水ゲル状重合体〔b005〕を熱風乾燥し、乾燥物〔b015〕とした後、粉砕し、さらに目開き710μmと106μmの金網で連続的に分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A050〕を得て、次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A050〕に、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び水からなる表面架橋剤水溶液〔c005〕を混合して加熱処理することにより得られた吸水性樹脂〔A550〕を含む粒子状吸水剤〔A551〕」は、本件発明1における「スルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩である」「(C)吸水性樹脂」との間で、「アクリル酸架橋重合物金属塩」である限りにおいて、一致する。
また、甲1発明における「亜塩素酸ナトリウム」は、イオン交換水とともにテスト液とした上で使用しているから、本件発明1における「(A)亜塩素酸塩水溶液」に相当するとともに、甲1発明における「無水リン酸二水素ナトリウム」は、本件発明1における「(B)pH調整剤」に相当する。
さらに、甲1発明における「ゲル状組成物」は、含水ゲル状重合体を乾燥して表面を架橋した吸水性樹脂とテスト液とを混合して吸収させたものであって、ゲル状組成物となっているものであり、二酸化塩素を徐放させるための剤であるものと解されるから、本件発明1における「二酸化塩素含有ゲル状組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)亜塩素酸塩水溶液、(B)pH調整剤及び(C)吸水性樹脂を含有し、(C)吸水性樹脂がアクリル酸架橋重合物金属塩である、二酸化塩素含有ゲル状組成物。」
で一致し、下記の点で相違する。
相違点1a:本件発明1では「水酸化ナトリウムを含有」するのに対して、甲1発明では、水酸化ナトリウムを含有するものでない点
相違点1b:本件発明1では「(C)吸水性樹脂がスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩であり、かつ、その粉体時の粒度が63~710μmである」のに対して、甲1発明では、「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)を溶解して反応液〔a005〕とし、この反応液〔a005〕を重合してなる細分化された含水ゲル状重合体〔b005〕を熱風乾燥し、乾燥物〔b015〕とした後、粉砕し、さらに目開き710μmと106μmの金網で連続的に分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A050〕を得て、次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A050〕に、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び水からなる表面架橋剤水溶液〔c005〕を混合して加熱処理することにより得られた吸水性樹脂〔A550〕」であり、吸水性樹脂がスルホン酸基を含有すること及び最終的な粒径につき特定されていない点
相違点1c:本件発明1では「pH調整剤が25℃における二酸化塩素を有する溶液のpHを4.5~6.5に調整するもの」であるのに対して、甲1発明では「無水リン酸二水素ナトリウム」につき溶液のpHを4.5~6.5に調整するものであることが特定されていない点
(イ)検討
上記相違点1aにつき検討すると、甲1には、甲1発明において、さらに水酸化ナトリウムを添加・含有させるべきことを認識し得る事項は記載されておらず、水酸化ナトリウムを添加・含有させることが当業者の技術常識であるとも認められないから、上記相違点1aは実質的な相違点である。
そして、甲1ないし甲7及び甲10(更には甲8及び甲9)の記載を検討しても、甲1発明において、更に水酸化ナトリウムを添加・含有させるべき動機となる事項が存するものとは認められない。
したがって、上記相違点1aは、実質的な相違点であって、さらに甲1ないし甲10に記載された事項を組み合わせたとしても、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、相違点1b及び1cにつき検討するまでもなく、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲10に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができない。
イ.他の本件発明について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2及び3についても、上記ア.で説示した理由と同一の理由により、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということもできない。
ウ.甲1発明に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲2発明に基づく検討
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「合成ポリマー系吸水性樹脂」は、本件発明1における「スルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩である」「(C)吸水性樹脂」が人工的な「合成ポリマー系吸水性樹脂」の一種である限りにおいて、一致する。
また、甲2発明における「亜塩素酸塩」は、水に溶解された状態で「二酸化塩素液剤」として使用している(摘示(2d))から、本件発明1における「(A)亜塩素酸塩水溶液」に相当する。
さらに、甲2発明における「pH調整剤」は、本件発明1における「(B)pH調整剤」に相当し、「pH調整剤」に係る甲2発明における「25℃における5%水溶液のpHが2.5~6.8となる緩衝性のあるリン酸二水素ナトリウム、または、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムとの混合物であ」るは、本件発明1における「25℃における二酸化塩素を有する溶液のpHを4.5~6.5に調整するものであ」るとの間で、pHの範囲が重複する。
そして、甲2発明における「ゲル状組成物」は、二酸化塩素を含有するものであるから、本件発明1における「二酸化塩素含有ゲル状組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、
「(A)亜塩素酸塩水溶液、(B)pH調整剤及び(C)吸水性樹脂を含有し、(B)pH調整剤が25℃における二酸化塩素を有する溶液のpHを4.5~6.5に調整するものであり、(C)吸水性樹脂が合成ポリマー系樹脂である、二酸化塩素含有ゲル状組成物。」
で一致し、下記の点で相違する。
相違点2a:本件発明1では「水酸化ナトリウムを含有」するのに対して、甲2発明では、水酸化ナトリウムを含有するものでない点
相違点2b:本件発明1では「(C)吸水性樹脂がスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩であり、かつ、その粉体時の粒度が63~710μmである」のに対して、甲2発明では、「合成ポリマー系吸水性樹脂」であり、当該樹脂がスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩であること及び当該樹脂の粒径につき特定されていない点
相違点2c:甲2発明では「亜塩素酸塩とは別に調製された」「溶存二酸化塩素ガス」を含有するのに対して、本件発明1では亜塩素酸塩とは別に調製された溶存二酸化塩素ガスを含有することが特定されていない点
(イ)検討
上記相違点2aにつき検討すると、甲2には、甲2発明において、さらに水酸化ナトリウムを添加・使用すべきことを認識し得る事項は記載されておらず、水酸化ナトリウムを添加使用することが当業者の技術常識であるとも認められないから、上記相違点2aは実質的な相違点である。
そして、甲1ないし甲7及び甲10(更には甲8及び甲9)の記載を検討しても、甲2発明において、更に水酸化ナトリウムを添加・使用すべき動機となる事項が存するものとは認められない。
したがって、上記相違点2aは、実質的な相違点であって、さらに甲1ないし甲10に記載された事項を組み合わせたとしても、甲2発明において、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、相違点2b及び2cにつき検討するまでもなく、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし甲10に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことができない。
イ.他の本件発明について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2及び3についても、上記ア.で説示した理由と同一の理由により、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるということはできず、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということもできない。
ウ.甲2発明に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3.取消理由1及び2に係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3は、いずれも、甲1又は甲2に記載された発明ではなく、甲1又は甲2に記載された発明並びに甲1ないし甲7及び甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、申立人が主張する取消理由1及び2は、いずれも理由がない。
II.取消理由3及び取消理由Aについて
申立人が主張する取消理由3及び当審が通知した取消理由Aは、いずれも特許法第36条第6項に係るものであり、いわゆるサポート要件に対する適否に係るものであるから、以下併せて検討する。
1.取消理由3及び取消理由Aの概要
(1)取消理由3
申立人が主張する取消理由3は、申立書の記載(第20頁中段ないし第25頁上段)からみて、要するに、
(a)本件の請求項1では、吸水性樹脂について「スルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩である」と規定されているのみであることにつき、本件発明の課題解決に則した効果は、吸水性樹脂の種類以外のスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物のスルホン酸基含有割合及び中和率、吸水性樹脂とpH調整剤との比率並びにpH調整剤の種類のいずれかが異なっても効果の発現が左右されるものであるから、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし4の記載では、各項に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、出願時の技術常識に照らしても、各請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるものではないというもの(第20頁中段~第23頁中段、「(4-5-1)理由(1)」の欄)
(b)本件の請求項1では、本件発明の二酸化塩素含有ゲル状組成物について、事前混合型及び用時混合型の区別につき規定されていないことにつき、本件発明の課題解決に則した効果が確認されているのは、用時混合型の組成物である場合のみであり、事前混合型の組成物である場合に同様の効果が得られるとまで認識できないから、たとえ出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし4に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるものではないというもの(第23頁下段~第25頁上段、「(4-5-2)理由(2)」の欄)
の2点につき、本件の請求項1ないし4の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとするものと認められる。
(2)取消理由A
当審が通知した取消理由Aは、要するに、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、訂正前の本件請求項1に記載された「(A)亜塩素酸塩水溶液、(B)pH調整剤、(C)吸水性樹脂を含有し、(C)吸水性樹脂がスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩であること」のみを具備する「二酸化塩素含有ゲル状組成物」が、本件発明の課題を解決できるであろうと当業者が認識できるような作用機序につき記載ないし示唆されているものとは認められない。
そして、実施例(比較例)に係る記載を検討すると、いずれの実施例(比較例)においても、組成物のpHに対して影響があるものと解される強アルカリである水酸化ナトリウムが含まれ、リン酸水素ナトリウム組成物系又はクエン酸-クエン酸塩系などのpH4.5~6.5となるpH調節剤を使用した極めて限られた実施例(比較例)について記載されているのみであり、さらに「上記の試験検体調製方法のように、原液処方と粉体処方を混合する方法により、詳しくは、水酸化ナトリウムを原液処方に存在させることにより、原液の安定性が向上し、長期にわたり安定した二酸化塩素ガスの発生が得られる安定性の高いゲル状組成物が得られる」ことが記載されているほどであるから、当該記載からみて、水酸化ナトリウムを含むこと及びpH調節剤の種類(pH範囲)が規定されていない本件発明が、課題を解決できるであろうと当業者が認識できるものではない。
また、【表6】を検討すると、本件発明の「(C)吸水性樹脂」としては「スルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩」を使用したとしても、粒度が小さい場合(25-63μm)に、他の吸水性樹脂を使用した場合と同程度までしか初期の二酸化塩素の発生を抑えることができなかったことが記載されているから、当該粒度に係る規定がない本件発明が、課題を解決できるであろうと当業者が認識できるものではない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件の各請求項に記載された事項を具備する発明が、たとえ出願時の当業者の技術常識に照らしても、所期の課題を解決できるであろうと当業者が認識できるように記載又は示唆されているものとはいえないから、本件の各請求項の記載では、同記載された事項により特定される発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない、というものである。
2.検討
(1)本件発明の解決課題
本件発明に係る解決課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0001】、【0004】及び【0007】)からみて、「二酸化塩素の初期発生濃度を抑制し、長期間にわたり安定した二酸化塩素ガスの発生が得られ、空間中の二酸化塩素濃度を概略一定の範囲内に維持させることができる二酸化塩素含有ゲル状組成物」の提供にあるものと認められる。
(2)訂正後の請求項の記載に基づく検討
上記第4で説示した適法にされた本件訂正により訂正された請求項1の記載に基づき検討すると、本件発明1では、
●(A)、(B)及び(C)の3成分に加えて、更に水酸化ナトリウムを含有すること
●(B)pH調整剤が25℃における二酸化塩素を含有する溶液のpHを4.5~6.5に調整するものであること
●(C)吸水性樹脂の粉体時の粒度が63~710μmであること
の3事項が追加規定された。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明における、「(B)pH調節剤」として種々の材料が使用できるとともにpH4.5~6.5(25℃)に調節するものが好適であること(【0010】)、「(C)吸水性樹脂」としては「スルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物金属塩」であり、その粒度につき63~710μmのものが好適であること(【0011】)並びに「上記の試験検体調製方法のように、原液処方と粉体処方を混合する方法により、詳しくは、水酸化ナトリウムを原液処方に存在させることにより、原液の安定性が向上し、長期にわたり安定した二酸化塩素ガスの発生が得られる安定性の高いゲル状組成物が得られる」こと(【0023】)等の本件発明に係る記載から、本件の請求項1に係る事項を具備する発明(本件発明1)が、上記課題を解決できるであろうことは、当業者が認識することができるものと認められる。
また、本件特許明細書の実施例に係る記載からみても、上記3事項を具備する本件発明1の場合、上記課題を解決できることが看取できるものといえる。
そして、申立人が主張する上記1.(1)(a)の点につき検討すると、本件発明において、吸水性樹脂としてのスルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物として、いかなるスルホン酸基含有割合及び中和率のものを使用する場合であっても、二酸化塩素を有する溶液をpH4.5~6.5の範囲に調節できるようなpH調節剤の種別及び量比で使用すべきものなのであって、本件の請求項1に記載された事項を具備することにより、本件発明の解決課題を解決できると認識できることは、上述のとおりであるから、上記スルホン酸基含有アクリル酸架橋重合物のスルホン酸基含有割合及び中和率並びにpH調節剤の種別及び量比によって発明の効果が左右される旨の申立人の主張は、自説の理由を述べるだけで客観的な根拠を欠き、当を得ないものである。
さらに、申立人が主張する上記1.(1)(b)の点につき検討すると、本件発明に係るゲル状組成物は、徐放される二酸化塩素ガスにより住居空間等の長期間の殺菌又は消臭等の用途に使用するものである(本件特許明細書、特に【0007】、【0034】等参照。)ところ、当該用途に照らすと、用時混合型はいうに及ばず、事前混合型のものであっても、使用前の保管時に二酸化塩素ガスの発生・徐放を防止すべく、例えば密封等のガス発生・徐放を防止する手段を採ることは当業者が通常行うことであり、使用開始時まではガス発生・徐放を防止されているものと理解するのが自然であるから、用時混合型の組成物において本件発明に係る課題を解決できるであろう効果を奏している場合に、事前混合型の組成物についても同様の効果が得られるであろうことは、当業者に明らかであって、当該効果の発現を妨げる技術的要因があるものとも認められないし、申立人は当該技術的要因につき具体的に論証していない。よって、申立人の上記1.(1)(b)の点に係る主張は、根拠を欠き、当を得ないものである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本件の請求項1ないし3に記載された事項で特定される発明につき、上記課題を解決できると認識することができるように記載されているものといえるから、本件の請求項1ないし3の記載では、各項に記載された事項で特定される発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができる。
3.取消理由3及び取消理由Aに係る検討のまとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし3の各記載は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしているから、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでない。
よって、取消理由3及び取消理由Aはいずれも理由がない。
III.当審の判断のまとめ
結局、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由につき、いずれも理由がなく、取り消すことができない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正については適法であるからこれを認める。
また、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、当審が通知した理由並びに申立人が主張する理由及び提示した証拠によっては、取り消すことができない。
ほかに、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件の請求項4に係る特許に対する異議の申立ては、不適法なものであるから、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700444