特許異議申立
2020-700345
暗記用ペン及び暗記用ペンセット
- 審判番号
- 2020-700345
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-131211
- 登録番号
- 6606886
- 請求日
- 2020年05月19日
- 審決日
- 2021年12月28日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】コクヨ株式会社
- 【権利者代理人】赤澤 一博
- 【権利者代理人】宮澤 岳志
- 【異議申立人】小林 保
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 吉村 尚
- 審判官 藤本 義仁
- 分類
- P1651.121-YAA(B43K) / P1651.537-YAA(B43K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6606886号発明「暗記用ペン及び暗記用ペンセット」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6606886号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第6606886号の請求項1,2,4ないし10に係る特許を維持する。
特許第6606886号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6606886号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は,平成27年6月30日の出願であって,令和1年11月1日にその特許権の設定登録がされ,令和1年11月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立て以後の経緯は,次のとおりである。
令和 2年 5月19日 : 特許異議申立人小林保(以下,「申立人」という。)による請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 2年 8月18日付け: 取消理由通知書
令和 2年10月26日 : 意見書,訂正請求書
令和 2年12月24日 : 意見書(申立人が提出)
令和 3年 2月 2日付け: 訂正拒絶理由通知書
令和 3年 3月 8日 : 意見書,手続補正書
令和 3年 4月26日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和 3年 7月 6日 : 意見書,訂正請求書
令和 3年 9月 3日 : 意見書(申立人が提出)
なお,令和2年10月26日に提出された訂正の請求は,特許法第120条の5第7項に規定するとおり,取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
令和3年7月6日付け訂正の請求について
1 訂正の内容(下線部は,当審で付した。以下同じ。)
(1)訂正事項1
請求項1の「透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色系統にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく構成された第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペン。」を,
「透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含し前記特定色の単一の着色シートを載置した際に黒色が視覚され印刷文字が不可視状態になるような着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペン。」と,訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項4,6ないし10も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項2の「前記ペンが,前記着色シートが有する赤系統の特定色に対する補色系統にある緑系統の色彩で筆記可能な前記第一のペン先を有している請求項1記載の暗記用ペン。」を
「透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペンであって,
前記ペンが,前記着色シートが有する特定色である赤色に対する捕色関係にある緑色で筆記可能な前記第一のペン先を有しているとともに,
前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所のみ消色液により消色可能であり,
前記第二のペン先によって記載された記載箇所は消色液により消色可能でない暗記用ペン。」と,訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項4,6ないし10も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
請求項4を「請求項1,2又は3」を引用するものから「請求項1又は2」を引用するものに訂正する。
(請求項4を引用する請求項6及び7も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
請求項5の「前記消色液が,前記第二のペン先により筆記された箇所の色を消し得ないものである請求項4記載の暗記用ペンセット。」を
「透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,前記特定色に対して同色系統(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)にある色彩で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディとを具備してなる暗記用ペンと,
前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所の色を消す消色液を塗布することができる第三のペン先を有する消色ペンとを具備してなる暗記用ペンセットであって,
前記消色液が,前記第二のペン先によって筆記された箇所の色を消し得ないものである暗記用ペンセット。」
(請求項5を引用する請求項6及び7も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
請求項8を「請求項1,2又は3」を引用するものから「請求項1又は2」を引用するものに訂正する。
(請求項8を引用する請求項9及び10も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0010】に記載された「すなわち本発明に係る暗記用ペンは,透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色系統にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,前記特定色に対して同色系統にある色彩で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく構成された第二のペン先と,これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディとを具備してなることを特徴とする。」を,
「すなわち請求項1記載の発明に係る暗記用ペンは,透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含し前記特定色の単一の着色シートを載置した際に黒色が視覚され印刷文字が不可視状態になるような着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディとを具備してなることを特徴とする。」に訂正する。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0012】に記載された「このようなものであれば,着色シートが呈する特定色に対して補色系統にある色彩による筆記を利用する作業であっても同色系統にある色彩による筆記を利用する作業であっても,」を,
「このようなものであれば,着色シートが呈する特定色に対して補色関係にある色彩による筆記を利用する作業であっても同色系統(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)にある色彩による筆記を利用する作業であっても,」に訂正する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0013】に記載された「使用者にとって利用し易い態様の一例として,着色シートが有する赤系統の特定色に対する補色系統にある緑系統の色彩で筆記可能な第一のペン先を有するものとしている態様を挙げることができる。」を,
「また,請求項2記載の発明にかかる暗記用ペンは,透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディとを具備してなる暗記用ペンであって,前記ペンが,前記着色シートが有する特定色である赤色に対する捕色関係にある緑色で筆記可能な第一のペン先を有しているとともに,前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所のみ消色液により消色可能であり,前記第二のペン先によって記載された記載箇所は消色液により消色可能でないことを特徴とする。このようなものであれば,使用者にとって利用し易いものとなる。」に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0014】を削除する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0016】に記載された「また消色液が,第二のペン先により筆記された箇所の色を消し得ないものであれば,消色ペンの利用が上記第二のペン先による筆記を誤って消してしまうことを避けたいという使用者の要望を有効に満たすことができる。」を,
「また,請求項5記載の発明にかかる暗記用ペンセットは,透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,前記特定色に対して同色系統(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)にある色彩で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディとを具備してなる暗記用ペンと,前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所の色を消す消色液を塗布することができる第三のペン先を有する消色ペンとを具備してなる暗記用ペンセットであって,前記消色液が,第二のペン先によって筆記された箇所の色を消し得ないものであることを特徴とする。このようなものであれば,消色ペンの利用が上記第二のペン先による筆記を誤って消してしまうことを避けたいという使用者の要望を有効に満たすことができる。」に訂正する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0027】に記載された「赤色に対して補色系統にある緑色で筆記可能な第一のペン先21」及び「赤色に対して同色系統にあるオレンジ色」を,
「赤色に対して補色関係にある緑色で筆記可能な第一のペン先21」及び「赤色に対して同色系統(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)にあるオレンジ色」に,それぞれ訂正する。
(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0028】に記載された「赤系統の特定色」を,
「特定色である赤色」に訂正する。
(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0030】に記載された「特定色に対して補色系統にある色彩」及び「特定色に対して同色系統にある色彩で筆記可能な第二のペン先22と,」を,
「特定色に対して補色関係にある色彩」及び「特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な第二のペン先22と,」に,それぞれ訂正する。
(15)訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0031】に記載された「緑系統の色彩で筆記可能な一端2aに配された第一のペン先21」及び「緑系統の色を呈する第一のインク23」を,
「緑色で筆記可能な一端2aに配された第一のペン先21」及び「緑色を呈する第一のインク23」に,それぞれ訂正する。
(16)訂正事項16
願書に添付した明細書の段落【0035】に記載された「緑系統の色彩」を,
「緑色」に訂正する。
(17)訂正事項17
願書に添付した明細書の段落【0047】に記載された「特定色に対して補色系統にある色彩」及び「同色系統にある色彩」を,
「特定色に対して補色関係にある色彩」及び「同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)」に,それぞれ訂正する。
(18)訂正事項18
願書に添付した明細書の段落【0048】に記載された「着色シート1を,赤系統の特定色を有するものとし,ペン2を,緑系統の色彩で筆記可能な第一のペン先21を有するものとしている。」を,
「着色シート1を,特定色である赤色を有するものとし,ペン2を,緑色で筆記可能な第一のペン先21を有するものとしている。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否,新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,独立特許要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正の内容
訂正事項1は,複数の訂正事項を含んでいるため,以下に示すとおり分けて検討する。
(ア)訂正事項1-1
訂正前の請求項1の「補色系統にある色彩」を「補色関係にある色彩」に訂正する。
(イ)訂正事項1-2
訂正前の請求項1の「印刷文字を包含する着色箇所」を「印刷文字を包含し前記特定色の単一の着色シートを載置した際に黒色が視覚され印刷文字が不可視状態になるような着色箇所」に訂正する。
(ウ)訂正事項1-3
訂正前の請求項1の「同色系統にある色彩」を「同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)」に訂正する。
(エ)訂正事項1-4
訂正前の請求項1の「筆記すべく構成された第二のペン先」を「筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先」に訂正する。
イ 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1-1
訂正事項1-1は,「系統」という語句によって,「補色以外」のどのような色彩の範囲までを含むものかが不明であった訂正前の「特定色に対して補色系統にある色彩」を,訂正により「補色関係」とすることで,単一の着色シートの色彩と第一のペン先の色彩とが互いに補色の関係にあることを明確にするものであるから,上記訂正事項1-1に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ) 訂正事項1-2
訂正事項1-2は,第一のペン先によって着色された箇所が「特定色の単一の着色シートを載置した際に黒色が視覚され印刷文字が不可視状態になる」ことを限定したものであるから,上記訂正事項1-2に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)訂正事項1-3
訂正事項1-3は,訂正前の「同色系統にある色彩」の機能を「特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩」であることを限定したものであるから,上記訂正事項1-3に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)訂正事項1-4
訂正事項1-4は,訂正前の「第二のペン先」の形状を「第一のペン先とは異なる形状」であることを限定したものであるから,上記訂正事項1-4に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(オ)まとめ
したがって,訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
同様に,訂正後の請求項4,6ないし10は,訂正後の請求項1の記載を引用することにより,訂正後の請求項4,6ないし10における不明瞭な記載を釈明するとともに,これら請求項4,6ないし10に係る発明をより具体的に特定し,さらに限定するものであるため,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項1-1
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)には以下の記載がある。
「【0027】
ここで,本実施形態に係る暗記用ペンセットAは,透光性を有した特定色たる赤色の着色シート1と,赤色に対して補色系統にある緑色で筆記可能な第一のペン先21および赤色に対して同色系統にあるオレンジ色で筆記可能な第二のペン先22を共通のボディ20に設けてなる暗記用ペンたるペン2とを具備してなるものである。以下,これら暗記用ペンセットAを構成する各構成要素について説明していく。」
つまり,本件特許明細書には「(第一のペン先21の)緑色」が「(着色シート1の)赤色」の補色系統の色であることが明記され,「(着色シート1の)赤色」と「(第一のペン先21の)緑色」が,互いに補色の関係にあることは色彩学に照らして明らかである。
したがって,本件特許明細書には「第一のペン先の色彩」を「特定色に対して補色関係にある色彩」とすることが記載されているものと認められる。
(イ)訂正事項1-2
本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0043】
そして図6及び図7に示すように,黒色インクにより文字等の一般印刷を施した印刷文字PLや,図示しないが使用者が鉛筆や黒色を呈する他の筆記具により書かれた文字を含む特定範囲を緑色を呈したペン2を用いて筆記することにより着色箇所Cを形成し,その後,透光性を有する赤色に着色した着色シート1を載置することによって,着色箇所Cの緑色と着色シート1の赤色が混色となった黒色が視覚され,印刷文字PLが不可視状態になる。すなわち,斯かる着色シート1とペン2からなる暗記用ペンセットAの具体的な使用方法を説明すると,ペン2にて塗布対象である紙P上に予め形成された印刷文字PLといった黒色印刷像を含む特定範囲に筆記して得られる緑色の筆跡である着色箇所Cは図6に示すように,通常の状態では緑色であり,且つ,当該緑色の筆跡を透して印刷文字PLは視認可能である。そして印刷文字PLを含む着色箇所C上に着色シート1を載置すると,緑色に彩色された箇所は着色シート1の赤色と補色関係により黒色に視覚されるため,着色箇所C内に存在する印刷文字PLは視認されなくなる。従って,使用者が印刷文字PLのうち,記憶したい印刷文字PLの上に第一のペン先21を用いて筆記を施した後,着色シート1を載置すると像が視覚不能になるため,暗記に有効である。」
つまり,本件特許明細書には,「黒色インクにより文字等の一般印刷を施した印刷文字PLや,図示しないが使用者が鉛筆や黒色を呈する他の筆記具により書かれた文字を含む特定範囲を緑色を呈したペン2を用いて筆記」することにより形成された「着色箇所C」に「透光性を有する赤色に着色した着色シート1」を載置することにより,「着色箇所Cの緑色と着色シート1の赤色が混色となった黒色が視覚され,印刷文字PLが不可視状態になる」ことが明記されている。
したがって,本件特許明細書には,訂正事項1-2に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(ウ)訂正事項1-3
本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0045】
そして本実施形態では,同一の着色シート1及びペン2を用いて,異なる方法での学習作業を行うことができる。すなわち図9に示すように,第二のペン先22によって記載した記載箇所Lは第二のインク24によりオレンジ色として視認可能である。そして記載箇所Lを含む領域上に着色シート1を載置すると,オレンジに彩色された箇所は着色シート1の赤色と同系統であるために紙Pにおける周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるため,記載箇所Lはほとんど視認できなくなる。従って,使用者が,記憶したい内容を記載した記載箇所Lの上に着色シート1を載置すると像が視覚不能になるため,暗記に有効である。すなわち本実施形態では,使用者は第一のペン先21に対して支持されるボディ20を一にする第二のペン先22を用いることにより2つの態様を適宜使い分けながら有効な暗記作業を行い得る。換言すれば使用者はペン2を持ち替えるだけで且つ同じ着色シート1をそのまま使いながら異なる態様の暗記作業を適宜使い分けることができる。」
つまり,本件特許明細書には,「第二のペン先22」によって「オレンジ色」に記載された「記載箇所L」に「着色シート1」を載置することにより,「オレンジに彩色された箇所は着色シート1の赤色と同系統であるために紙Pにおける周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となる」ことが明記されており,上記「記載箇所L」は,一般的な紙の色である「白色」部分に記載されたものであることは常識である。
したがって,本件特許明細書には,訂正事項1-3に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(エ)訂正事項1-4
本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0033】
第二のペン先22は,第一のペン先21とは異なる形状をなすものであり,ペン2の他端2b側において概略円錐形状に成形されその尖端27及びその付近にのみ第二のインク24を吐出し得るようにして,第一のペン先21による筆記よりも細い線を筆記し易くしたものである。」
つまり,本件特許明細書には「第一のペン先21による筆記よりも細い線を筆記し易く」するために「第二のペン先22は,第一のペン先21とは異なる形状」とする点が記載されている。
したがって,本件特許明細書には,訂正事項1-4に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(オ)まとめ
以上のことより,訂正事項1に係る訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また,訂正事項1は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,訂正事項1は,請求項1を引用する請求項2,4ないし10についても同様に訂正するものであるが,かかる訂正についても,上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項1に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の内容
訂正事項2は,複数の訂正事項を含んでいるため,以下に示すとおり分けて検討する。
(ア)訂正事項2-1
訂正事項2は,訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであるところ,請求項1を引用しないものとした上で,請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項としての請求項2へ改めるための訂正を含むものであり,訂正前の請求項2が,単純に訂正前の請求項1を引用したものを書き下すと,以下のとおりである。
「透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色系統にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく構成された第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペンであって,
前記ペンが,前記着色シートが有する赤系統の特定色に対する補色系統にある緑系統の色彩で筆記可能な前記第一のペン先を有している暗記用ペン。」(以下,「書き下した請求項2」という。)
上記「書き下した請求項2」を訂正事項2-1とする。
(イ)訂正事項2-2
書き下した請求項2の「補色系統にある色彩」を「特定色に対して補色関係にある色彩」に訂正する。
(ウ)訂正事項2-3
書き下した請求項2の「同色系統にある色彩」を「同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)」に訂正する。
(エ)訂正事項2-4
書き下した請求項2の「筆記すべく構成された第二のペン先」を「筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先」に訂正する。
(オ)訂正事項2-5
書き下した請求項2の「着色シートが有する赤系統の特定色に対する補色系統にある緑系統の色彩」を「着色シートが有する特定色である赤色に対する捕色関係にある緑色」に訂正する。
(カ)訂正事項2-6
書き下した請求項2の「暗記用ペン」を「前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所のみ消色液により消色可能であり前記第二のペン先によって記載された記載箇所は消色液により消色可能でない暗記用ペン」に訂正する。
イ 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項2-1
訂正事項2-1は,訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであるところ,請求項1を引用しないものとした上で,請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項としての請求項2へ改めるための訂正であるから,特許法第126条第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
(イ)訂正事項2-2
訂正事項2-2は,「系統」という語句によって,「補色以外」のどのような色彩の範囲までを含むものかが不明であった訂正前の「特定色に対して補色系統にある色彩」を,訂正により「補色関係」とすることで,単一の着色シートの色彩と第一のペン先の色彩とが互いに補色の関係にあることを明確にするものであるから,上記訂正事項2-2に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)訂正事項2-3
訂正事項2-3は,訂正前の「同色系統にある色彩」の機能を「特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩」であることを限定したものであるから,上記訂正事項2-3に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)訂正事項2-4
訂正事項2-4は,訂正前の「第二のペン先」の形状を「第一のペン先とは異なる形状」であることを限定したものであるから,上記訂正事項2-4に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(オ)訂正事項2-5
訂正事項2-5は,訂正前の着色シートが有する赤系統の特定色を「赤色」であることを限定し,該特定色に対する補色系統にある緑系統の色彩を「緑色」に限定するものであり,さらに「系統」という語句によって,どのような色彩の範囲までを含むものかが不明であった訂正前の「補色系統」を,訂正により「補色関係」とすることで,単一の着色シートの色彩と第一のペン先の色彩とが互いに補色の関係にあることを明確にするものであるから,上記訂正事項2-5に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。である。
(カ)訂正事項2-6
訂正事項2-6は,訂正前の「暗記用ペン」を「第一のペン先により筆記され着色された着色箇所のみ消色液により消色可能である」ことと,「第二のペン先によって記載された記載箇所は消色液により消色可能でない」暗記用ペンであることを限定したものであるから,上記訂正事項2-6に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(キ)まとめ
したがって,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするもの,及び特許法第126条第1項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
同様に,訂正後の請求項4,6ないし10は,訂正後の請求項2の記載を引用することにより,訂正後の請求項4,6ないし10における不明瞭な記載を釈明するとともに,これら請求項4,6ないし10に係る発明をより具体的に特定し,さらに限定するものであるため,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項2-1
訂正事項2-1は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項2-1は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項2-2
訂正事項2-2は,実質的に訂正事項1-1と同じ内容である。
したがって,「(1)訂正事項1について,ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否,(ア)訂正事項1-1」で述べたとおり,本件特許明細書には,訂正事項2-2に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(ウ)訂正事項2-3
訂正事項2-3は,実質的に訂正事項1-3と同じ内容である。
したがって,「(1)訂正事項1について,ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否,(ウ)訂正事項1-3」で述べたとおり,本件特許明細書には,訂正事項2-3に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(エ)訂正事項2-4
訂正事項2-4は,実質的に訂正事項1-4と同じ内容である。
したがって,「(1)訂正事項1について,ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否,(エ)訂正事項1-4」で述べたとおり,本件特許明細書には,訂正事項2-4に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(オ)訂正事項2-5
本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0027】
ここで,本実施形態に係る暗記用ペンセットAは,透光性を有した特定色たる赤色の着色シート1と,赤色に対して補色系統にある緑色で筆記可能な第一のペン先21および赤色に対して同色系統にあるオレンジ色で筆記可能な第二のペン先22を共通のボディ20に設けてなる暗記用ペンたるペン2とを具備してなるものである。以下,これら暗記用ペンセットAを構成する各構成要素について説明していく。」
つまり,本件特許明細書には「特定色」が「赤色」であること,「第一のペン先」の色彩が「緑色」であることが明記され,「(特定色である)赤色」と「緑色」とが,互いに補色の関係にあることは色彩学に照らして明らかである。
したがって,本件特許明細書には「特定色」を「赤色」とし,「第一のペン先の色彩」を「特定色である赤色に対して補色関係にある緑色」とすることが記載されているものと認められる。
(カ)訂正事項2-6
本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0044】
そして図8に示すように,例えば使用者によって確実に暗記できたと認識される着色箇所Cなど,着色シート1により視認され得なくする必要が無くなった着色箇所Cに対しては,消色ペン3を用いることにより容易に消色させることが可能である。具体的に説明すると,第三のペン先31を用いて着色箇所Cに対し消色液33を塗布すると,溶媒33bは揮発或いは蒸発するものの紙Pの表面には第一のインク23よりも高いpHを呈する消色剤33aが付着する。これにより第一のインク23のpHも高くなり,その結果当該第
一のインク23の特性により,緑色から透明へと消色する。ここで当該第三のペン先31は上述した通り第一のペン先21よりも寸法を大きく設定した,所謂相似形状をなすようにしているため,例えば同図のように太塗り部26により第一のインク23が筆記された箇所に対し,使用者が第三のペン先31の太塗り部36を使用して同様の線をなぞるように筆記するとき,太塗り部36の方が太い線を筆記し得る形状であるため,少々第三のペン先31による筆記が紙P上の第一のインク23が筆記或いは塗布された箇所からずれたとしても消色液33が第一のインク23を覆うように塗布されるので,第一のインク23は消色する。
【0045】
そして本実施形態では,同一の着色シート1及びペン2を用いて,異なる方法での学習作業を行うことができる。すなわち図9に示すように,第二のペン先22によって記載した記載箇所Lは第二のインク24によりオレンジ色として視認可能である。そして記載箇所Lを含む領域上に着色シート1を載置すると,オレンジに彩色された箇所は着色シート1の赤色と同系統であるために紙Pにおける周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるため,記載箇所Lはほとんど視認できなくなる。従って,使用者が,記憶したい内容を記載した記載箇所Lの上に着色シート1を載置すると像が視覚不能になるため,暗記に有効である。すなわち本実施形態では,使用者は第一のペン先21に対して支持されるボディ20を一にする第二のペン先22を用いることにより2つの態様を適宜使い分けながら有効な暗記作業を行い得る。換言すれば使用者はペン2を持ち替えるだけで且つ同じ着色シート1をそのまま使いながら異なる態様の暗記作業を適宜使い分けることができる。
【0046】
さらに本実施形態では,図12に示すように,第二のペン先22によって記載される第二のインク24は,消色液33の影響を何ら受けない。換言すれば,第三のペン先31により第一のインク23を消色させる作業中に誤ってオレンジ色を呈した記載箇所Lに消色液33を付着させたとしても,記載箇所Lのオレンジ色には何ら変化が現れないため,使用者が誤って必要な記載を消してしまうという不具合を有効に回避し得る。」
つまり,本件特許明細書には,「第一のペン先により筆記され着色された着色箇所は消色液により消色可能である」ことと,「第二のペン先によって記載された記載箇所は消色液により消色可能でない」ことが記載されている。
また,訂正事項2-6のうち「第一のペン先により筆記され着色された着色箇所のみ消色液により消色可能である」の「のみ」は,「第一のペン先により筆記され着色された着色箇所」と「「第二のペン先によって記載された記載箇所」を対比するに際し,前者を消して後者を消さないことを強調する意味で用いられたことは明らかである。
したがって,本件特許明細書には,訂正事項2-6に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(キ)まとめ
以上のことより,訂正事項2に係る訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また,訂正事項2は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,訂正事項2は,請求項2を引用する請求項4,6ないし10についても同様に訂正するものであるが,かかる訂正についても,上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項2は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項2に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は,請求項3を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は,請求項の削除であるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項3は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項3に係る本件特許の請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項3に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は,請求項3が削除されたことに伴い,請求項4において引用する請求項の数を減ずるものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は,引用する請求項の数を減ずるものであるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,訂正事項4は,請求項4を引用する請求項5ないし7についても同様に訂正するものであるが,かかる訂正についても,上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項4は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項4に係る本件特許の請求項4に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項4に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の内容
訂正事項5は,複数の訂正事項を含んでいるため,以下に示すとおり分けて検討する。
(ア)訂正事項5-1
訂正事項5は,訂正前の請求項5が請求項4を介して請求項1,2又は3を引用するものであるところ,請求項2および3を引用しないものとした上で,請求項4を介して請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項としての請求項5へ改めるための訂正を含むものであり,訂正前の請求項5が,単純に請求項4を介して請求項1を引用したものを書き下すと,以下のとおりである。
「透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色系統にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,前記特定色に対して同色系統にある色彩で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく構成された第二のペン先と,これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディとを具備してなる暗記用ペンと,
前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所の色を消す消色液を塗布することができる第三のペン先を有する消色ペンとを具備してなる暗記用ペンセットであって,
前記消色液が,前記第二のペン先により筆記された箇所の色を消し得ないものである暗記用ペンセット。」(以下,「書き下した請求項5」という。)
上記「書き下した請求項5」を訂正事項5-1とする。
(イ)訂正事項5-2
書き下した請求項5の「補色系統にある色彩」を「補色関係にある色彩」に訂正する。
(ウ)訂正事項5-3
書き下した請求項5の「同色系統にある色彩」を「同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)」に訂正する。
(エ)訂正事項5-4
書き下した請求項5の「筆記すべく構成された第二のペン先」を「筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先」に訂正する。
イ 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項5-1
訂正事項5-1は,訂正前の請求項5が請求項4を介して請求項1,2又は3を引用するものであるところ,請求項2および3を引用しないものとした上で,請求項4を介して請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項としての請求項5へ改めるための訂正であるから,特許法第126条第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
(イ)訂正事項5-2
訂正事項5-2は,「系統」という語句によって,「補色以外」のどのような色彩の範囲までを含むものかが不明であった訂正前の「特定色に対して補色系統にある色彩」を,訂正により「補色関係」とすることで,単一の着色シートの色彩と第一のペン先の色彩とが互いに補色の関係にあることを明確にするものであるから,上記訂正事項5-2に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)訂正事項5-3
訂正事項5-3は,訂正前の「同色系統にある色彩」の機能を「特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩」であることを限定したものであるから,上記訂正事項5-3に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)訂正事項5-4
訂正事項5-4は,訂正前の「第二のペン先」の形状を「第一のペン先とは異なる形状」であることを限定したものであるから,上記訂正事項5-4に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(オ)まとめ
したがって,訂正事項5は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするもの,及び特許法第126条第1項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
同様に,訂正後の請求項6及び7は,訂正後の請求項5の記載を引用することにより,訂正後の請求項6及び7における不明瞭な記載を釈明するとともに,これら請求項6及び7に係る発明をより具体的に特定し,さらに限定するものであるため,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項5-1
訂正事項5-1は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項5-1は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項5-2
訂正事項5-2は,実質的に訂正事項1-1と同じ内容である。
したがって,「(1)訂正事項1について,ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否,(ア)訂正事項1-1」で述べたとおり,本件特許明細書には,訂正事項5-2に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(ウ)訂正事項5-3
訂正事項5-3は,実質的に訂正事項1-3と同じ内容である。
したがって,「(1)訂正事項1について,ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否,(ウ)訂正事項1-3」で述べたとおり,本件特許明細書には,訂正事項5-3に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(エ)訂正事項5-4
訂正事項5-4は,実質的に訂正事項1-4と同じ内容である。
したがって,「(1)訂正事項1について,ウ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否,(エ)訂正事項1-4」で述べたとおり,本件特許明細書には,訂正事項5-4に係る発明特定事項が記載されているものと認められる。
(オ)まとめ
以上のことより,訂正事項5に係る訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また,訂正事項5は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,訂正事項5は,請求項5を引用する請求項6及び7についても同様に訂正するものであるが,かかる訂正についても,上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項5は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項5に係る本件特許の請求項5に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項5に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は,請求項3が削除されたことに伴い,請求項8において引用する請求項の数を減ずるものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は,引用する請求項の数を減ずるものであるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,訂正事項6は,請求項8を引用する請求項9及び10についても同様に訂正するものであるが,かかる訂正についても,上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項6は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項6に係る本件特許の請求項8に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項8に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は,訂正事項1により請求項1が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0010】の記載を,訂正後の請求項1と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項7は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項1に対応する訂正であるから,訂正事項7は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項7は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項7に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項8は,訂正事項1により請求項1が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0012】の記載を,訂正後の請求項1と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項8は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項1に対応する訂正であるから,訂正事項8は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項8は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項8に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項9は,訂正事項2により請求項2が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0013】の記載を,訂正後の請求項2と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項9は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項9は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項2に対応する訂正であるから,訂正事項9は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項9は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項9に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項10は,訂正事項3により請求項3が削除されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0014】の記載を,削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項10は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項10は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項3に対応する訂正であるから,訂正事項10は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項10は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項10に係る本件特許の請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項3に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項11は,訂正事項5により請求項5が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0016】の記載を,訂正後の請求項5と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項11は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項11は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項5に対応する訂正であるから,訂正事項11は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項11は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項11に係る本件特許の請求項5に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(12)訂正事項12について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項12は,訂正事項1により請求項1が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0027】の記載を,訂正後の請求項1と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項12は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項12は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項1に対応する訂正であるから,訂正事項12は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項12は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項12に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(13)訂正事項13について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項13は,訂正事項2により請求項2が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0028】の記載を,訂正後の請求項2と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項13は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項13は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項2に対応する訂正であるから,訂正事項13は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項13は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項13に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(14)訂正事項14について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項14は,訂正事項1により請求項1が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0030】の記載を,訂正後の請求項1と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項14は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項14は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項1に対応する訂正であるから,訂正事項14は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項14は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項14に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(15)訂正事項15について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項15は,訂正事項2により請求項2が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0031】の記載を,訂正後の請求項2と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項15は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項15は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項2に対応する訂正であるから,訂正事項15は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項15は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項15に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(16)訂正事項16について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項16は,訂正事項2により請求項2が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0035】の記載を,訂正後の請求項2と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項16は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項16は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項2に対応する訂正であるから,訂正事項16は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項16は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項16に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(17)訂正事項17について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項17は,訂正事項1により請求項1が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0047】の記載を,訂正後の請求項1と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項17は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項17は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項1に対応する訂正であるから,訂正事項17は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項17は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項17に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
(18)訂正事項18について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項18は,訂正事項2により請求項2が訂正されたことに伴い,対応する発明の詳細な説明の段落【0048】の記載を,訂正後の請求項2と実質的に同様の内容で訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項18は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また,上記アのとおり,訂正事項18は,特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって,訂正事項2に対応する訂正であるから,訂正事項18は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって,訂正事項18は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び6の規定に適合する。
ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項18に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)は課されない。
4.一群の請求項について
訂正事項に係る訂正前の請求項1乃至10について,請求項2乃至10は,すべて直接的又は間接的に「請求項1」を引用しているものであって,訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって,訂正前の請求項1乃至請求項10は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
よって,訂正事項による訂正は,特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。
また,訂正後の請求項1,2,4乃至請求項10は,一群の請求項である。
5.小括
以上検討したとおり,本件訂正請求による訂正事項1ないし18は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,本件特許の特許請求の範囲及び明細書を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり,訂正後の請求項1ないし10について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし10に係る発明(以下,本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明を「本件訂正特許発明1」といい,項番に従い「本件訂正特許発明10」などという。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含し前記特定色の単一の着色シートを載置した際に黒色が視覚され印刷文字が不可視状態になるような着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペン。
【請求項2】
透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペンであって,
前記ペンが,前記着色シートが有する特定色である赤色に対する捕色関係にある緑色で筆記可能な前記第一のペン先を有しているとともに,
前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所のみ消色液により消色可能であり,前記第二のペン先によって記載された記載箇所は消色液により消色可能でない暗記用ペン。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
請求項1又は2記載の暗記用ペンと,
前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所の色を消す消色液を塗布することができる第三のペン先を有する消色ペンと
を具備してなる暗記用ペンセット。
【請求項5】
透光性を有した特定色の単一の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成すべく太塗り部を有する第一のペン先と,前記特定色に対して同色系統(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)にある色彩で筆記可能な前記第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形された第二のペン先と,これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディとを具備してなる暗記用ペンと,
前記第一のペン先により筆記され着色された着色箇所の色を消す消色液を塗布することができる第三のペン先を有する消色ペンとを具備してなる暗記用ペンセットであって,
前記消色液が,前記第二のペン先によって筆記された箇所の色を消し得ないものである暗記用ペンセット。
【請求項6】
前記第三のペン先が前記第一のペン先に対し略同じ形状をなすとともに,前記第二のペン先が前記第一,第三のペン先とは異なる形状をなす請求項4又は5記載の暗記用ペンセット。
【請求項7】
前記第三のペン先が,前記第一のペン先よりも大きく設定されるとともに前記第一のペン先よりも太い線を筆記し得るようにしている請求項4,5又は6記載の暗記用ペンセット。
【請求項8】
透光性を有した特定色の単一の着色シートと,請求項1又は2記載の暗記用ペンとを具備してなる暗記用ペンセット。
【請求項9】
前記着色シートが,シート本体と,このシート本体に設けられこのシート本体とともに紙葉類を挟持し得る挟持片を形成すべくシート本体の一部を切り欠いたスリットとを有するものであり,
前記シート本体が,当該シート本体及び前記挟持片により前記紙葉類の縁部を挟持したときに前記紙葉類に対し平面視はみ出し得る露出領域と前記紙葉類に対し平面視重複する挿入領域とを有している請求項8記載の暗記用ペンセット。
【請求項10】
前記着色シート及び前記暗記用ペンを保持し得る台紙を具備しているものであり,
この台紙が,前記着色シートを表裏から挟み込んで収容するシート収容部と,前記暗記用ペンを保持するペンホルダとを有している請求項8又は9記載の暗記用ペンセット。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし10に係る特許に対して,当審が令和3年4月26日付けで特許権者に通知した取消理由(予告)の要旨は,次のとおりである。
(1)本件の1,2,4,6ないし10の請求項に係る発明は,本件特許出願前に日本国内において,頒布された刊行物に記載された発明に基いて,本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1,2,4,6ないし10に係る発明の特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって,本件訂正特許発明1,2,4,6ないし10に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
(2)本件の1,2,4ないし10の請求項に係る発明は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって,本件訂正特許発明1,2,4ないし10に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由(1)について
(1)訂正後の請求項に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項に係る本件訂正特許発明は,上記「3 訂正後の本件訂正特許発明」において示したとおりのものである。
(2)取消理由通知における引用文献,及び取消理由通知において引用文献としなかった甲号証の記載
ア 甲第1号証:特開2007-119676号公報
甲第1号証には以下の記載がある。
(ア)「【0021】
前記変色用塗布具(ボールペン,マーキングペン,筆ペン等)は,変色性インキを内蔵した変色性筆記具の一部,具体的には後部に設けて(所謂,両頭式筆記具構造),筆記により得られた筆跡を単一の筆記具により変色又は消色可能な携帯性に優れた筆記具とすることができる。
なお,前記変色液を筆記具形態の塗布具に収容して実用に供する場合,変色性インキにより形成された筆跡の幅よりも太い筆跡幅を形成できる塗布具が効率的に前記筆跡を変色又は消色させることができる。
【0022】
また,前記変色用塗布具と,変色性インキを内蔵した変色性筆記具とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできる。
前記筆記具セットは,単一の変色性筆記具と変色用塗布具により構成されていてもよいが,複数の色調の異なる変色性筆記具や複数の筆跡幅の異なる変色性筆記具と変色用塗布具とを組み合わせた筆記具セットとすることにより,バリエーションに富む筆跡や絵柄を形成できると共に,前記筆跡や絵柄を変色又は消色可能な意外性を有する筆記具セットが得られる。
なお,前記変色液を筆記具形態の塗布具に収容して実用に供する場合,変色性ボールペンにより形成された筆跡の幅よりも太い筆跡幅を形成できる塗布具が効率的に前記筆跡を変色又は消色させることができる。」
(イ)「【0031】
変色用塗布具Aの作製
前記変色液を軸筒内に直接収容し,櫛溝状のインキ流量調節部材を介して軸筒先端部にチゼル型繊維マーキングペンチップを取り付けてマーキングペン形態の変色用塗布具Aを得た。
なお,前記変色用塗布具には着脱自在のキャップを備えてなる。
【0032】
変色用塗布具Bの作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体に前記変色液を含浸させて軸筒内に収容し,軸筒先端部にチゼル型繊維マーキングペンチップを取り付けてマーキングペン形態の変色用塗布具Bを得た。
なお,前記変色用塗布具には着脱自在のキャップを備えてなる。」
(ウ)「【0034】
両頭式変色性筆記具bの作製
軸筒内部に5:5の容積となる仕切り壁を設けた両端開口形状の軸筒の一方に前記実施例4で調製したインキを収容し,櫛溝状のインキ流量調節部材を介して軸筒先端部に砲弾型繊維マーキングペンチップを取り付けた。
次いで,他方に別途作製した赤色の筆跡を形成できる変色性インキを収容し,櫛溝状のインキ流量調節部材を介して軸筒先端部に砲弾型繊維マーキングペンチップを取り付けて両頭式変色性筆記具bを得た。
前記筆記具を用いて紙面上に筆記すると,緑色と赤色の筆跡が得られ,前記筆跡上から変色用塗布具を用いて変色液を塗布すると筆跡は消色した。
【0035】
筆記具セット1の作製
前記両頭式変色性筆記具bと,前記変色用塗布具Bとを組み合わせて筆記具セット1を得た。
前記両頭式変色性筆記具bを用いて紙面上に筆記すると,緑色と赤色の筆跡が得られ,前記筆跡上から変色用塗布具Bを用いて変色液を塗布すると筆跡は消色した。」
(エ)「【0039】
応用例1
前記両頭式変色性筆記具aを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成した。なお,前記筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であった。
前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあり,黒色に視覚されるため,文字は視覚されなくなる。
次いで,赤色透明性シートを取り除き,筆跡上から他方に設けた変色液を塗布すると筆跡は消色するため,再び黒色の文字が視認されるのみとなり,暗記に適した筆記具が得られた。
【0040】
応用例2
前記筆記具セット1の両頭式変色性筆記具bを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成した。なお,前記筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であった。
前記文字上に同色の赤色透明性シートを載置すると,補色の関係により黒色に視覚されるため,文字は視覚されなくなった。
次いで,赤色透明性シートを取り除き,筆跡上から変色用塗布具Bにより変色液を塗布すると筆跡は消色するため,暗記に適した筆記具が得られた。
また,他方に設けた赤色インキにより前記文字上に形成した筆跡は,緑色透明性シートを載置すると,補色の関係により黒色に視覚されるため,文字は視覚されなくなり,暗記に適したものとなった。前記赤色の筆跡も変色液により消去できた。
【0041】
応用例3
前記筆記具セット2の変色性筆記具Aを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成した。なお,前記筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であった。
前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあり,黒色に視覚されるため,文字は視覚されなくなる。
次いで,赤色透明性シートを取り除き,筆跡上から変色用塗布具Aを用いて変色液を塗布すると筆跡は消色するため,再び黒色の文字が視認されるのみとなり,暗記に適した筆記具が得られた。
また,前記変色性筆記具Aを用いて,紙面上に文字を筆記して緑色の筆跡を形成した。
前記文字上に同色の緑色透明性シートを載置すると,文字は視覚されなくなった。
次いで,緑色透明性シートを取り除き,筆跡(文字)上に変色用塗布具Aを用いて変色液を塗布すると筆跡は消色するため,暗記に適した筆記具が得られた。」
(オ)段落【0034】の「実施例4で調製したインキ」は,【表1】を参照するに「Basic Green 1」が用いられていることからみて「緑色」の変色性インキである。
(カ)段落【0039】より,緑色の変色性インキを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成したところ,筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であり,前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあるため緑色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される緑色の筆跡によって,視覚されなくなることが理解できる。
(キ)段落【0040】より,赤色の変色性インキにより前記文字上に形成した筆跡は,緑色透明性シートを載置すると,筆跡の赤色とシートの緑色は補色の関係にあるため赤色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される赤色の筆跡によって,視覚されなくなることが理解できる。
(ク)段落【0041】より,緑色の変色性インキを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成したところ,筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であり,前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあるため緑色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される緑色の筆跡によって,視覚されなくなる。
また,緑色の変色性インキを用いて,紙面上に文字を筆記して緑色の筆跡を形成し,該緑色の文字上に同色の緑色透明性シートを載置すると,該緑色の文字は視覚されなくなることが理解できる。
(ケ)段落【0039】ないし【0041】より,両頭式変色性筆記具は暗記用筆記具セットを構成する筆記具である。
上記(ア)ないし(ケ)より,甲第1号証には以下の甲1発明が記載されていると認められる。
甲1発明:「軸筒内に変色液を含浸させて収容し,軸筒先端部にチゼル型繊維マーキングペンチップを取り付けた変色用塗布具と,
両端開口形状の軸筒の一方に緑色の変色性インキを収容し,軸筒先端部に砲弾型繊維マーキングペンチップを取り付け,他方に別途作製した赤色の筆跡を形成できる変色性インキを収容し,軸筒先端部に砲弾型繊維マーキングペンチップを取り付けた両頭式変色性筆記具とからなる筆記具セットにおいて,
緑色の変色性インキを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成したところ,筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であり,前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあるため緑色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される緑色の筆跡によって,視覚されなくなり,
赤色の変色性インキにより前記文字上に形成した筆跡は,緑色透明性シートを載置すると,筆跡の赤色とシートの緑色は補色の関係にあるため赤色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される赤色の筆跡によって視覚されなくなり,
緑色と赤色の両方の筆跡上に軸筒先端部にチゼル型繊維マーキングペンチップを取り付けてマーキングペン形態の変色用塗布具により変色液を塗布すると,該両方の筆跡は消色する,暗記用筆記具セット。」
また,上記(ク)より,甲第1号証には以下の甲1記載事項が記載されていると認められる。
甲1記載事項:「緑色の変色性インキを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成したところ,筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であり,前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあるため緑色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される緑色の筆跡によって,視覚されなくなり,また,前記緑色の変色性インキを用いて,紙面上に文字を筆記して緑色の筆跡を形成し,該緑色の文字上に同色の緑色透明性シートを載置すると,該緑色の文字は視覚されなくなる。」
イ 甲第2号証:特開2008-241860公報
(ア)「【0039】
前記ペン先は,繊維の樹脂加工体,熱溶融性繊維の融着加工体,フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30~70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり,一端を砲弾形状,長方形状,チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
前記チゼル形状のペン体にあっては,筆記面への当接位置を変えることにより細書き用,或いは太書き用として,更には一定線幅のマークを形成できる多用途性を有し,多様な熱変色性の筆跡を形成できる利便性に優れた筆記具を構成できる。
前記インキ吸蔵体は,捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり,プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて,気孔率が概ね40~90%の範囲に調整して構成される。
また,前記弁体は,従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが,筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0040】
更に,前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず,相異なる形態のペン先を装着させたり,相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた複合筆記具(両頭式やペン先繰り出し式等)であってもよい。」
(イ)「【0043】
前記学習セットには,筆記具と問題集と共に,着色透明シートを組み合わせて暗記用途等に用いることもできる。
前記着色透明シートは,透明性樹脂中に着色剤を含有させて成形したシート状物,或いは,透明性樹脂により成形したシート状物を着色したものであって,その大きさや厚みは特に限定されるものではなく,下敷き程度の大きさと厚みを有するもの,定規,短冊程度の大きさと厚みを有するものが挙げられる。
着色透明シートは,筆跡(加熱により消去可能なインキ(熱消色インキ))が呈する有色の色相や,問題集の印字の一部の色相と同色(類似色も含む)の色関係を満たす。
これを具体的に説明すると,有色として赤色を呈する場合や問題集が赤色印字部分を有する場合,着色透明シートも同様の赤色のシートである。また,緑色を呈する場合,着色透明シートも同様の緑色のシートである。前記の場合,筆跡や印字の色調に対して,着色透明シートの色調が濃色であると,シートを筆跡(印字)上に載置した際,筆跡(印字)の視覚を不能にする効果に優れる。
また,熱消色インキが呈する有色の色相や問題集の印字の一部の色相が着色透明シートの色相と同色を呈しない場合であっても,熱消色インキが呈する有色の色相や印字の色相が着色透明シートの色相の減法混色による構成色であることにより同様の効果を奏することができる。
これを具体的に説明すると,前記した筆跡や印字の色調と,筆跡や印字を視覚不能にするシートの色調の組み合わせとしては,黄色の筆跡(印字)と橙色,赤色,緑色のシート,橙色の筆跡(印字)と赤色のシート,ピンク色の筆跡(印字)と赤色,紫色のシート,青色の筆跡(印字)と紫色,緑色のシートの組み合わせが挙げられる。」
(ウ)「【0045】
前記した構成は暗記に適したものであるが,例えば,橙色から無色に色変化する熱変色性インキを収容した筆記具と,赤色透明シートからなるセットの場合,前記筆記具で紙面上に解答を筆記して得られる橙色の筆跡は,通常の状態では橙色であり,前記筆跡上に赤色透明シートを載置すると筆跡部分は全て視覚されなくなる。また,前記筆跡を摩擦体により擦過すると,擦過した部分の筆跡は無色に変色して視認されなくなる。」
(エ)「【0055】
学習セットの作製
前記二色のボールペン(橙色,青色)と共に,A4冊子形態で構成された社会の高校入試用問題集と,透明性樹脂を赤色に着色した赤色透明シート(220mm×150mm,厚み0.5mm)とを組み合わせて学習セットを得た。
前記高校入試用問題集は,受験でポイントとなる重要点,問題,地図,写真,グラフ,説明図等が紙面に黒字印刷(内容的に重要な部分は赤字印刷)されると共に,問題の解答を記入するための記入部(空白状解答欄や選択した記号に丸を付ける択一式解答欄)を備えている。また,問題と記入部からなる確認テスト形式のページを備えており,該ページの記入部右側近傍には,各問題の解答が加熱発色型インキ(付属の擦過部材8で擦過すると現出し,数秒後に消色する温度域)により印字されている解答部が枠に囲まれた状態で設けられている。
更に,問題集の使用方法を説明するページや解答集を記載したページが設けられており,使用方法を説明するページには,筆記具1で形成された筆跡を擦過部材8で擦過加熱することにより消去可能であることを説明した文面(表示部)が記載されている。」
(オ)「【0058】
更に,前記記入部に橙色の筆跡で解答を書き込んだ箇所や赤色印字部分は,筆跡上に赤色透明シートを載置すると,シートの減法混色による構成色のため視覚されなくなり,赤色印字部分上に赤色透明シートを載置すると,シートと同色のため視覚されなくなった。そのため,暗記用として使用することが可能となった。」
上記(ア)より,甲第2号証には以下の甲2発明の1が記載されていると認められる。
甲2発明の1:「ペン先の形状として,「砲弾形状」,「長方形状」,及び「筆記面への当接位置を変えることにより細書き用,或いは太書き用として,更には一定線幅のマークを形成できる多用途性を有するチゼル形状」のペン体を備え,相異なる形態のペン先を装着させたり,相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた複合筆記具。」
上記(イ)ないし(オ)より,甲第2号証には以下の甲2発明の2が記載されていると認められる。
甲2発明の2:「筆記具と問題集と共に,着色透明シートを組み合わせて暗記用途等に用いる学習セットであって,
着色透明シートは,筆跡(加熱により消去可能なインキ(熱消色インキ))が呈する有色の色相や,問題集の印字の一部の色相と同色(類似色も含む)の色関係を満たす,黄色の筆跡(印字)と橙色,赤色,緑色のシート,橙色の筆跡(印字)と赤色のシート,ピンク色の筆跡(印字)と赤色,紫色のシート,青色の筆跡(印字)と紫色,緑色のシートの組み合わせが挙げられ,
橙色の筆跡で解答を書き込んだ箇所や赤色印字部分は,筆跡上に赤色透明シートを載置すると,シートの減法混色による構成色のため視覚されなくなり,赤色印字部分上に赤色透明シートを載置すると,シートと同色のため視覚されなくなる,二色のボールペン(橙色,青色)と共に,A4冊子形態で構成された社会の高校入試用問題集と,透明性樹脂を赤色に着色した赤色透明シートとを組み合わせた学習セット。」
ウ 甲第3号証:特開2005-199695号公報
(ア)「【0028】
・インキ
前記第1のインキ貯溜部7A内には,第1のインキ8Aが貯溜され,第2のインキ貯溜部7Bには,第2のインキ8Bが貯溜される。前記第1のインキ8Aと第2のインキ8Bとは,互いに色が異なる組合せが採用される。前記第1のインキ貯溜部7A内の第1のインキ8A及び第2のインキ貯溜部7B内の第2のインキ8Bは,軸筒2が透明または半透明の材料よりなることから,外部より視認可能である。本実施の形態では,第1のインキ8A及び第2のインキ8Bは,蛍光顔料または蛍光染料を含むインキが採用される。それにより,発色の優れた,見栄えのよい両頭式筆記具1が得られる。前記第1のインキ8Aと第2のインキ8Bの色の組合せは,例えば,蛍光イエローと蛍光ピンクの組合せ,蛍光イエローと蛍光オレンジの組合せ,蛍光イエローと蛍光グリーンの組合せ,蛍光ピンクと蛍光オレンジの組合せ,蛍光ピンクと蛍光グリーンの組合せ,蛍光イエローと蛍光ブルーの組合せ,または蛍光イエローと蛍光バイオレットの組合せ等が,配色の見栄えが良い点から好ましい。」
(イ)「【0031】
・ペン先
前記第1のペン先4Aは,繊維加工体,毛筆体,または多孔質体よりなり,第1のインキ貯溜部7A内の第1のインキ8Aが含浸されることにより,外部より第1のインキ8Aの色が視認され,第1のペン先4Aが第1のインキ8Aの色に着色された状態となる。同様に,前記第2のペン先4Bも,繊維加工体,毛筆体,または多孔質体であり,第2のインキ貯溜部7B内の第2のインキ8Bが含浸されることにより,外部より第2のインキ8Bの色が視認され,第2のペン先4Bが第2のインキ8Bの色に着色された状態となる。本実施の形態では,第1のペン先4A及び第2のペン先4Bは,同一形状の,繊維の樹脂加工体(例えばポリエステル繊維の樹脂加工体)よりなる。
【0032】
前記以外にも,前記第1のペン先4A及び第2のペン先4Bは,例えば,両者の形状が異なる繊維加工体の組合せ,両者がボールペンチップの組合せ,両者が毛筆体の組合せ,両者が多孔質体の組合せ,両者が先端にスリットを備えた金属板製の万年筆状ペン先の組合せ,両者が合成樹脂の押出成形体よりなるペン体(プラスチックペン体)の組合せ,一方が繊維加工体で他方が多孔質体の組合せ,一方が繊維加工体で他方がプラスチックペン体の組合せ,一方が繊維加工体で他方が毛筆体の組合せ,一方が繊維加工体で他方が万年筆状ペン先の組合せ,一方が繊維加工体で他方がボールペンチップの組合せ,一方が多孔質体で他方がプラスチックペン体の組合せ,一方が多孔質体で他方が毛筆体の組合せ,一方が多孔質体で他方が万年筆状ペン先の組合せ,一方が多孔質体で他方がボールペンチップの組合せ,一方がプラスチックペン体で他方が毛筆体の組合せ,一方がプラスチックペン体で他方が万年筆状ペン先の組合せ,一方がプラスチックペン体で他方がボールペンチップの組合せ,一方が毛筆体で他方が万年筆状ペン先の組合せ,一方が毛筆体で他方がボールペンチップの組合せ,または,一方が万年筆状ペン先で他方がボールペンチップの組合せ等が挙げられる。前記ボールペンチップの場合,その外面が第1のインキ貯溜部7A及び第2のインキ貯溜部7B内のインキと同色に着色されることが好ましい。尚,本発明のペン先とは,ペン先と軸筒2との間に介在されるペン先ホルダーを含む。」
(ウ)「
[図:0001382344000001.jpg]
」
(エ)【図1】から,第1のペン先4A及び第2のペン先4Bは,いずれも「チゼル形状」であることが看て取れる。
上記(ア)ないし(エ)より,甲第3号証には以下の甲3発明が記載されていると認められる。
甲3発明:「両頭式筆記具であって,第1のペン先4A及び第2のペン先4Bのインキの組み合わせは,蛍光ピンクと蛍光グリーンの組合せであって,第1のペン先4A及び第2のペン先4Bの一方はチゼル形状の繊維加工体,他方はボールペンチップの組合せ,または両者の形状が異なる繊維加工体の組合せである両頭式筆記具。」
エ 甲第4号証:意匠登録第1498177号公報
(ア)「【意匠に係る物品】二色マーカー」
(イ)「
[図:0001382344000002.jpg]
」
(ウ)【キャップを外した状態の斜視図】から,単一のボディに二つのペン先を取り付ける二色マーカーにおいて,一方のペン先に,他方に比べて形状が異なる太いペン先を用いていることが看て取れる。
上記(ア)及び(ウ)より,甲第4号証には以下の甲4発明が記載されていると認められる。
甲4発明:「単一のボディに二つのペン先を取り付ける二色マーカーであって,一方のペン先に,他方に比べて形状が異なる太いペン先を用いる二色マーカー。」
オ 甲第5号証:実願昭56-72633号(実開昭57-93489号公報)のマイクロフィルム
(ア)「(1)ホルダーと,その両端から長手方向に互いに反対向きに突出しており,ホルダー内に保持された2つの別個のインキ筒によってそれぞれインキを供給されるようにした2つのペン先を備えた筆記具において,前記一方のペン先は細字用として構成され,前記他方のペン先は太字用として構成されており,それらのペン先により異る太さの,そして異る色の字を書くことができるようにしたことを特徴とする筆記具。」(【実用新案登録請求の範囲】)
(イ)「本考案は,1本のホルダーの両端にそれぞれ担持されたペン先(ボール・ポイント)を備えており,一方のペン先は金属製インク筒即ち「替え芯」の細字用ポール・ポイントであり,他方のペン先は,インク収容筒内に浸漬させたナイロン等の適当なプラスチック材製の心棒の先端部分として形成され,かつ一方のペン先より太い字が書けるように寸法づけされていることを特徴とする筆記具に関する。」(明細書第2ページ第10~18行)
(ウ)「この筆記具は,閉じられているとき,即ち両端にそれぞれのキャップがかぶせられているときは,通常のポケットペンと同じ外観を呈するが,異る太さの字を書くことができ,所望ならば,異る色の字を書くことができる。」(明細書第3ページ第3~7行)
上記(ア)ないし(ウ)より,甲第5号証には以下の甲5発明が記載されていると認められる。
甲5発明:「ホルダーの両端から長手方向に互いに反対向きに突出し,ホルダー内に保持された2つの別個のインキ筒によってそれぞれインキを供給されるようにした2つのペン先を備えた筆記具において,一方のペン先は細字用ポール・ポイントであり,他方のペン先は,インク収容筒内に浸漬させたナイロン等の適当なプラスチック材製の心棒の先端部分として形成され,かつ一方のペン先より太い字が書ける筆記具。」
カ 甲第6号証:実願昭47-94082号(実開昭49-52631号公報)のマイクロフィルム
(ア)「筒体(1)の一方の開口端(4)には太いキャップ(2)を嵌合すると共に太い芯材(6)を貫通させ,他方の開口端(5)には細いキャップ(3)を嵌合すると共に細い芯材(7)を貫通させ,該芯材(6),(7)の内端を夫々筒体1内に収容したインクの吸収材(8)に接触させてなるサインペン。」(【実用新案登録請求の範囲】)
(イ)第一図より,太い芯材(6)の先端はチゼル型,細い芯材(7)の先端は砲弾型であることが看て取れる。
上記(ア)及び(イ)より,甲第6号証には以下の甲6発明が記載されていると認められる。
甲6発明:「筒体(1)の一方の開口端(4)には太いキャップ(2)を嵌合すると共に太いチゼル型の芯材(6)を貫通させ,他方の開口端(5)には細いキャップ(3)を嵌合すると共に細い砲弾型の芯材(7)を貫通させ,該芯材(6),(7)の内端を夫々筒体1内に収容したインクの吸収材(8)に接触させてなるサインペン。」
キ 甲第7号証:特開2000-36786号公報
(ア)「【0011】上記から明らかなように,ペン先(1)(4)とペン先ホルダ(2)とインキタンク(10)を固定した直液構造のペン先ユニット(14)を筒軸(15)両端側に着脱自在に取付け,太さの異なる2本のペン先(1)(4)または着色の異なる2本のペン先(1)(4)を1本の筒軸(15)に装着させ,1本の直液構造のペンの多機能化並びに取扱い性向上などを図り,またペン先ユニット(14)の交換によってペン先(1)(4)の太さ及び色の組合せを変更させ,かつインキタンク(10)交換時に手などが汚れる等の不具合をなくすもので,着脱自在なキャップ(20)に内設させるペン先(1)(4)を筒軸(15)端部に取付ける筆記具において,ペン先(1)(4)を固定させるペン先ホルダ(2)をインキタンク(10)に内挿させて固定させ,インキタンク(10)を筒軸(15)に挿入させて着脱自在に固定させ,ペン先(1)(4)とペン先ホルダ(2)とインキタンク(10)をユニット構造に形成し,スペアインキ交換部品または色違いのペン先交換部品などを構成し,インキタンク(10)にペン先(1)(4)を一体的に固定させてインキタンク(10)交換などの取扱い性向上を図る。」
(イ)【図6】より,太いペン先(1)の先端はチゼル型,細いペン先(4)の先端は砲弾型であることが看て取れる。
上記(ア)及び(イ)より,甲第7号証には以下の甲7発明が記載されていると認められる。
甲7発明:「ペン先(1)(4)とペン先ホルダ(2)とインキタンク(10)を固定した直液構造のペン先ユニット(14)を筒軸(15)両端側に着脱自在に取付け,太さの異なる2本のペン先(1)(4)を1本の筒軸(15)に装着させ,太いペン先(1)の先端はチゼル型,細いペン先(4)の先端は砲弾型である筆記具。」
ク 甲第8号証:特開2009-23297公報
(ア)「【請求項1】
加熱により消色可能なインキを収容する筆記具と光透過性シートとからなる筆記具セットにおいて,前記筆記具による着色状態の筆跡が,被筆記面に形成された黒色印刷像表面に筆記した際に前記印刷像が視認可能であると共に,前記光透過性シートが,光輝性を有し且つ可視光透過率が0.2~50の範囲にあることを特徴とする筆記具セット。
【請求項2】
前記筆記具による着色状態の筆跡明度値が,2.6~7.0の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の筆記具セット。」
上記(ア)より,甲第8号証には以下の甲8発明が記載されていると認められる。
甲8発明:「加熱により消色可能なインキを収容する筆記具と光透過性シートとからなる筆記具セットにおいて,前記筆記具による着色状態の筆跡が,被筆記面に形成された黒色印刷像表面に筆記した際に前記印刷像が視認可能であると共に,前記光透過性シートが,光輝性を有し且つ可視光透過率が0.2~50の範囲にあり,前記筆記具による着色状態の筆跡明度値が,2.6~7.0の範囲にある筆記具セット。」
ケ 甲第9号証:特開昭53-65124公報
(ア)「(1)塩基性染料からなる着色系(A)と,亜二チオン酸塩からなる消色系(B)とを含む文字や画線を記載する用具。」(特許請求の範囲)
(イ)「本発明による前記着色系を含む記載用具は,通常,それらを含む筆型のセットとして販売される。たとえば,着色系を含む筆類と消色系を含む筆類をそれぞれ1つのセットとして包装販売するか,あるいは1つの軸体に両者を収容させ,一方の先端から染料インクを浸出させ,他方の先端から字消し成分を浸出させるようにした構造の筆類として販売することができる。」(明細書第4ページ左上欄第13行~20行)
上記(ア)及び(イ)より,甲第9号証には以下の甲9発明が記載されていると認められる。
甲9発明:「塩基性染料からなる着色系(A)と,亜二チオン酸塩からなる消色系(B)とを含む文字や画線を記載する用具であって,着色系を含む筆類と消色系を含む筆類をそれぞれ1つのセットとして包装販売するか,あるいは1つの軸体に両者を収容させ,一方の先端から染料インクを浸出させ,他方の先端から字消し成分を浸出させるようにした構造の筆類として販売することができる用具。」
コ 甲第10号証:特開2000-85295号公報
(ア)「【0038】これらの液体インク1A,1Bおよび消去液1a,1bを用い,図1(A)に示すマーカー(AB型マーカー)および図1(B)に示す消去ペン(ab型消去ペン)を作製する。
【0039】図1(A)に示すAB型マーカーは以下のような構造を有する。液体インク1Aおよび1Bは,それぞれインクホルダー6Aおよび6Bに収納されており,これらのインクホルダー6Aおよび6Bは基端部が互いに突き合わされて円筒状の胴部5内に一体的に保持されている。インクホルダー6Aおよび6Bの先端部には,それぞれフェルトホルダー2A,2Bが取り付けられ,フェルト3A,3Bを保持している。液体インク1A,1Bは毛管現象によりフェルト3A,3Bに吸い上げられ,フェルト3A,3Bの先端部で紙上に筆記できるようになっている。胴部5の両端には,フェルト3A,3Bの乾燥を防止するために,それぞれキャップ4A,4Bが嵌められている。
【0040】図1(B)に示すab型消去ペンは以下のような構造を有する。消去液1aおよび1bは,それぞれインクホルダー6aおよび6bに収納されており,これらのインクホルダー6aおよび6bは基端部が互いに突き合わされて円筒状の胴部5内に一体的に保持されている。インクホルダー6aおよび6bの先端部には,それぞれフェルトホルダー2a,2bが取り付けられ,フェルト3a,3bを保持している。消去液1a,1bは毛管現象によりフェルト3a,3bに吸い上げられ,フェルト3a,3bの先端部で紙上に塗布できるようになっている。胴部5の両端には,フェルト3a,3bの乾燥を防止するために,それぞれキャップ4a,4bが嵌められている。
【0041】AB型マーカーの液体インク1Aを用いて描いた画像は,ab型マーカーのいずれの消去液1a,1bを用いても消去できる。AB型マーカーの液体インク1Bを用いて描いた画像は,ab型マーカーのアルコール系消去液1aでは消去できないが,ケトン系消去液1bでは消去できる。」
上記(ア)より,甲第10号証には以下の甲10発明が記載されていると認められる。
甲10発明:「液体インク1Aおよび1Bが,それぞれインクホルダー6Aおよび6Bに収納されるAB型マーカーと,消去液1aおよび1bが,それぞれインクホルダー6aおよび6bに収納されるab型消去ペンであって,AB型マーカーの液体インク1Aを用いて描いた画像は,ab型マーカーのいずれの消去液1a,1bを用いても消去できるが,AB型マーカーの液体インク1Bを用いて描いた画像は,ab型マーカーのアルコール系消去液1aでは消去できないが,ケトン系消去液1bでは消去できるAB型マーカーとab型消去ペン。」
サ 甲第11号証:意匠登録第1183930号公報
(ア)「
[図:0001382344000003.jpg]
」
(イ)【正面図】から,本物品は,Tシャツ形状のしおりであって,両腕の付け根付近の肩と脇を結ぶ線のおおよそ中間点から鉛直下向きに,脇と裾を結ぶ線のおおよそ中間点まで,一定幅を有する鉛直方向のスリットを形成し,該左右二本の切れ込みの下端を一定幅を有する水平なスリットによって連結することにより,全体として上が開いたコ字状のスリットを有するものであることが看て取れる。
(ウ)「
[図:0001382344000004.jpg]
[図:0001382344000005.jpg]
」
(エ)【使用状態を示す参考正面図】,及び【使用状態を示す参考斜視図】から,しおりを本に挿入して使用するときは,本物品に設けられたコ字状のスリットで囲まれた部分とそれ以外の部分で本の紙葉の上縁部に挟むものであって,コ字状のスリットのうち左右の鉛直方向のスリット上端部を結ぶ線よりも上部分が紙葉に対し平面視ではみ出て露出し,それ以外の左右の前記鉛直方向のスリット上端部を結ぶ線よりも下部分が紙葉に対し平面視で重複することが看て取れる。
上記(ア)及び(エ)より,甲第11号証には以下の甲11発明が記載されていると認められる。
甲11発明:「Tシャツ形状のしおりであって,両腕の付け根付近の肩と脇を結ぶ線のおおよそ中間点から鉛直下向きに,脇と裾を結ぶ線のおおよそ中間点まで,一定幅を有する鉛直方向のスリットを形成し,該左右二本の切れ込みの下端を一定幅を有する水平なスリットによって連結することにより,全体として上が開いたコ字状のスリットを有し,
前記しおりを本に挿入して使用するときは,前記コ字状のスリットで囲まれた部分とそれ以外の部分で本の紙葉の上縁部に挟むものであって,左右の前記鉛直方向のスリット上端部を結ぶ線よりも上部分が紙葉に対し平面視ではみ出て露出し,それ以外の左右の前記鉛直方向のスリット上端部を結ぶ線よりも下部分が紙葉に対し平面視で重複する,しおり。」
シ 甲第12号証:LOOK UP 2007,2007年 総合カタログ,2007年1月1日 株式会社パイロットコーポレーション発行
(ア)甲12号証の「ラインマーカー」と左上隅に記載されたページの「商品番号C-ML25SET-RGの写真及び商品説明」から以下の事項が看て取れる。
a「レッドとグリーンの本体」と,「緑と赤の暗記用シート各1枚」とからなる,メモリーライン シートセットである。
b「レッドとグリーンの本体」は,メモリーラインと称されるラインマーカーであり,具体的には商品番号SVW-15ML-RGのものと同じ,1本の軸筒の両端部にレッドとグリーンのペン先を備えたマーキングペンであることは自明である。
c「緑と赤の暗記用シート」は,透光性を有した緑と赤のシートであることは自明である。
d「レッドとグリーンの本体」のグリーン側の先端(写真では下側の先端)は,黄色に着色された台紙の立ち上がり部に開けられた孔に挿入保持されている点が看て取れる。
e「暗記用筆記具の決定版!」などと表示された刃先形状の台紙が看て取れ,該台紙は陳列される際に最前面の台紙となることは自明である。
f「レッドとグリーンの本体」のレッド側の先端(写真では上側の先端)の上部にある略長円状の孔が看て取れ,該孔は,台紙に開けられているとともに,商品陳列の際に陳列装置の棒が挿入される孔であり,該台紙は,陳列時には最奥側の台紙となることは自明である。
g「暗記用筆記具の決定版!」などと表示された刃先形状の台紙の曲線縁部の下に看て取れる黒色状部は,「緑と赤の暗記用シート各1枚」が重ねて載置されたものであり,「最前面の台紙」と「最奥側の台紙」の間に挟持されることになるのは,自明である。
上記aないしgより,甲第12号証には以下の甲12発明が記載されていると認められる。
甲12発明:「暗記用シート及びメモリーラインと称されるラインマーカーを保持する台紙を具備し,該暗記シートは最前面の台紙と最奥側の台紙の間に挟持され,ラインマーカーは台紙の立ち上がり部に開けられた孔に挿入保持されるメモリーライン シートセット」
ス 甲第13号証:カラーコミュニケーションガイド,P7~15,平成14年,エックスライト在日事務所(なお,「平成14年」については,甲第13号証の最終頁の下部左欄下から8行目にある「X-Rite,incorporated 2002」の記載の「2002」を,この証拠が発行された西暦年としてみなして認定し,元号に置き換えて表記したものである。)
甲13号証には,色の数値的表現としての「CIELAB(L*a*b*)」及び「CIELCH(L*A*h*)」について,技術的内容,及び解説が記載されている。
(3)対比及び判断
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)本件訂正特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「赤色透明性シート」は,本件訂正特許発明1の「透光性を有した特定色の単一の着色シート」に相当し,シートの色が「特定色」と特定される色のことであるから,甲1発明における「赤色」は,「特定色」であるといえる。
甲1発明の両端開口形状の軸筒の一方に収容された「緑色の変色性インキ」は,赤色に対して補色関係にある色彩であって「赤色」が,「特定色」であることに照らせば,本件訂正特許発明1の「特定色に対して補色関係にある色彩」に相当する。
甲1発明の「両端開口形状の軸筒の一方に緑色の変色性インキを収容し」,「軸筒先端部に」取り付けられた「砲弾型繊維マーキングペンチップ」は,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成するから,印刷文字を包含する着色箇所を形成する点において,本件訂正特許発明1の「印刷文字を包含する着色」する「第一のペン先」に共通する。
甲1発明の「緑色の変色性インキを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成したところ,筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であり,前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあるため緑色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される緑色の筆跡によって,視覚されなくなり」は,緑色の変色性インキを収容する砲弾型繊維マーキングペンチップによる筆記を特定したものであって,本件訂正特許発明1の第一のペン先による「透光性を有した特定色の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含し前記特定色の着色シートを載置した際に黒色が視覚され印刷文字が不可視状態になるような着色箇所を形成」することに相当する。
甲1発明の両端開口形状の軸筒の他方に収容された「赤色の筆跡を形成できる変色性インキ」は,赤色に対して同色系統にある色彩であるから,本件訂正特許発明1の「特定色に対して同色系統にある色彩」に相当する。
甲1発明の「赤色の筆跡を形成できる変色性インキ」は,「特定色に対して同色系統にある色彩」であるから,本件訂正特許発明1の「特定色の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩」に相当する。
甲1発明の両端開口形状の軸筒の他方の軸筒先端部に取り付けられた「砲弾型繊維マーキングペンチップ」は,赤色の筆跡を形成するものであるから,本件訂正特許発明1の特定色に対して同色系統にある色彩で筆記可能な「第二のペン先」とは,「特定色に対して同色系統にある色彩で筆記可能な第二のペン先」である点において共通する。
甲1発明の「両端開口形状の軸筒」は,本件訂正特許発明1の「単一のボディ」に相当する。
したがって,本件訂正特許発明1と甲1発明とは以下の一致点で一致し,相違点で相違する。
<一致点>
「透光性を有した特定色の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含し前記特定色の着色シートを載置した際に黒色が視覚され印刷文字が不可視状態になるような着色箇所を形成する第一のペン先と
前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペン。」
<相違点>
相違点1
本件訂正特許発明1では「特定色の単一の着色シート」を用いる暗記用ペンであるのに対し,甲1発明においては,「透光性を有した特定色の着色シート」と「透光性を有した特定色と補色関係の着色シート」を用いる両頭式変色性筆記具である点。
相違点2
第一のペン先に関し,本件訂正特許発明1では「太塗り部を有する」ものであるのに対し,甲1発明においては,第一のペン先が「太塗り部を有する」ものではない点。
相違点3
第二のペン先に関し,本件訂正特許発明1では「第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形」されているのに対し,甲1発明においては,第二のペン先が「第一のペン先とは異なる形状に成形」されたものではない点。
(イ)検討及び判断
相違点1について検討する。
甲第1号証には,「緑色の変色性インキを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成したところ,筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であり,前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあるため緑色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される緑色の筆跡によって,視覚されなくなり,また,前記緑色の変色性インキを用いて,紙面上に文字を筆記して緑色の筆跡を形成し,該緑色の文字上に同色の緑色透明性シートを載置すると,該緑色の文字は視覚されなくなる」という甲1記載事項が記載されているところ,該甲1記載事項は,透光性を有した特定色の着色シートと,透光性を有した特定色と補色関係にある着色シートの二枚の着色シートを利用することを前提とした筆記具セットの使用にとどまり,本件訂正特許発明1のように,特定色の単一の着色シートの利用を前提とした,特定色に対して補色関係にある色彩と特定色に対して同色系統にある色彩とで筆記可能な暗記用ペンではない。
暗記用ペンによって筆記した着色箇所の色彩と,その上に載置する透光性を有した着色シートの色彩とが,補色関係にあれば着色箇所が黒く視認され,同色系統にあれば着色箇所が視認されにくくなることは色彩学の常識であるといえるところ,相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えることによって,単一の着色シートを利用して,省スペースを図ることができ,使用すべきシートの誤用を防ぎ,第一のペン先で「塗って覚える」暗記方法と,第二のペン先で「書いて覚える」暗記方法を1本の暗記用ペン及び単一の着色シートからなる最少の構成で実現することができるという効果を奏することは明らかである。
そして,本件訂正特許発明1のような特定色の単一の着色シートの利用を前提とした,特定色に対して補色関係にある色彩と特定色に対して同色系統にある色彩とで筆記可能な暗記用ペンについて,他の甲第2号証ないし甲第13号証には記載されず,筆記具の技術分野において,設計的事項程度のものであるとも,周知技術であるともいえない。
とすれば,甲1発明において,透光性を有した特定色の単一の着色シートのみを用いる,該特定色と補色関係にある色彩と同色系統にある色彩を備えた単一のボディに二つのペン先を取り付けるペンの暗記用ペンを想到することは,当業者が容易になし得たことではない。
相違点2及び3について検討する。
相違点2及び3は,ペン先の太さを含むペン先の形状に関連する相違点であるから,併せて検討する。
マーキングペンの技術分野において,チゼル型ペン先,及び砲弾型ペン先のいずれも,広く知られたペン先の形状であり,チゼル型ペン先が砲弾型ペン先に比べて太い線を筆記可能であることについては,技術常識に照らして明らかである。
そして,本件訂正特許発明1や甲1発明のような単一のボディに二つのペン先を取り付けるペンにおいて,どちらか一方のペン先を,他方に比べて形状の異なる太いペン先とすることは周知技術(以下,「周知技術1」という。)である。(必要であれば,甲第4号証:意匠登録第1498177号公報 【キャップを外した状態の斜視図】,甲第6号証:実願昭56-72633号(実開昭57-93489号)のマイクロフィルム 第2図,甲第7号証:特開2002-36786号公報 【図6】を参照されたい。)
また,甲第1号証の発明の詳細な説明の段落【0022】に「前記筆記具セットは,単一の変色性筆記具と変色用塗布具により構成されていてもよいが,複数の色調の異なる変色性筆記具や複数の筆跡幅の異なる変色性筆記具と変色用塗布具とを組み合わせた筆記具セットとすることにより,バリエーションに富む筆跡や絵柄を形成できると共に,前記筆跡や絵柄を変色又は消色可能な意外性を有する筆記具セットが得られる。」と記載されているとおり,甲第1号証には「筆跡幅が異なる変色性筆記具を備えた筆記具セット,すなわち一方のペン先が他方のペン先に比べて細い線が筆記できる筆記具セット」が示唆されている。
しかしながら,甲1発明は,緑色の変色性インキの筆記により覆われた黒色の文字は,赤色透明性シートを載置すると視覚されなくなり,赤色の変色性インキの筆記により覆われた黒色の文字は,緑色透明性シートを載置すると視覚されなくなるものであり,緑色の変色性インキの筆記のための砲弾型繊維マーキングペンチップと,赤色の変色性のインキの筆記のための砲弾型繊維マーキングペンチップとは,いずれも紙面に印刷された黒色の文字を覆うためものであることから,同じ形状の砲弾型繊維マーキングチップを用いているものと解され,上記技術常識や上記周知技術や上記甲第1号証の記載によっても,一方を「太塗り部を有する」ものとし,他方を一方よりも細い線を筆記すべく一方のペン先とは異なる形状に成形するものとする動機付けを見いだすことはできない。
また,甲第1号証には,「緑色の変色性インキを用いて,紙面に印刷された黒色の文字を覆うように筆記して緑色の筆跡を形成したところ,筆跡を透して黒色の文字は視覚可能であり,前記筆跡上に赤色透明性シートを載置すると,筆跡の緑色とシートの赤色は補色の関係にあるため緑色の筆跡は黒色に視覚され,紙面に印刷された黒色の文字は黒色に視覚される緑色の筆跡によって,視覚されなくなり,また,前記緑色の変色性インキを用いて,紙面上に文字を筆記して緑色の筆跡を形成し,該緑色の文字上に同色の緑色透明性シートを載置すると,該緑色の文字は視覚されなくなる」という甲1記載事項が記載されているものの,このマーキングペンチップは両頭式のものではなく,この甲1記載事項によっても,甲1発明において,他方のマーキングペンチップを一方マーキングペンチップよりも細い線を筆記すべく一方のマーキングペンチップとは異なる形状に成形するものとする動機付けは見いだせない。
これに対して,本件訂正特許発明1は,単純に第一のペン先と第二のペン先とを異なる形状としたものではなく,印刷文字を包含するような着色箇所を形成する第一のペン先を「太塗り部を有」するものとし,文字を記載する記載箇所を形成する第二のペン先を「第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記」するものと限定することで,第一のペン先で「塗って覚える」暗記方法と,第二のペン先で「書いて覚える」暗記方法を1本の暗記用ペン及び単一の着色シートからなる最少の構成で実現することができるという効果を奏することは明らかである。
そして,本件訂正特許発明1のような特定色の単一の着色シートの利用を前提とした,特定色に対して補色関係にある色彩と特定色に対して同色系統にある色彩とで筆記可能な暗記用ペンについて,特定色と補色関係にある色彩と同色系統にある色彩を備えた単一のボディに二つのペン先を取り付けるペンの暗記用ペンセットにおいて,特定色と補色関係にある色彩を備えたペン先を太く,同色系統にある色彩を備えたペン先を細くすることは,他の甲第2号証ないし甲第13号証には記載されず,筆記具の技術分野において,設計的事項程度のものであるとも,周知技術であるともいえない。
とすれば,甲1発明において,透光性を有した特定色の単一の着色シートのみを用いて,該特定色と補色関係にある色彩と同色系統にある色彩を備えた単一のボディに二つのペン先を取り付けるペンの暗記用ペンセットにおいて,特定色と補色関係にある色彩を備えたペン先を太く,同色系統にある色彩を備えたペン先を細くすることは,当業者が容易になし得たことではない。
したがって,甲1発明において,相違点1ないし3に係る本件訂正特許発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことということはできず,本件訂正特許発明1は,甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから,本件特許の請求項1に係る特許は,同条の規定に違反してされたものではなく,同法第113条第2号に該当しないから,取り消されるべきものではない。
イ 本件訂正特許発明2について
(ア)本件訂正特許発明2と甲1発明とを対比する。
上記「ア 請求項1について」を踏まえれば,本件訂正特許発明2と甲1発明とは以下の一致点で一致し,相違点で相違する。
<一致点>
「透光性を有した特定色の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
を具備してなる暗記用ペン。」
<相違点>
相違点1
本件訂正特許発明2では「単一の着色シート」を用いる暗記用ペンであるのに対し,甲1発明においては,「透光性を有した特定色の着色シート」と「透光性を有した特定色と補色関係の着色シート」を用いる両頭式変色性筆記具である点。
相違点2
第一のペン先に関し,本件訂正特許発明2では「太塗り部を有する」ものであるのに対し,甲1発明においては,第一のペン先が「太塗り部を有する」ものではない点。
相違点3
第二のペン先に関し,本件訂正特許発明2では「第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形」されているのに対し,甲1発明においては,第二のペン先が「第一のペン先とは異なる形状に成形」されたものではない点。
相違点4
第一および二のペン先に関し,本件訂正特許発明2では「第一のペン先により筆記され着色された着色箇所のみ消色液により消色可能であり,第二のペン先によって記載された記載箇所は消色液により消色可能でない」のに対し,甲1発明においては,「緑色と赤色の両方の筆跡上に変色用塗布具により変色液を塗布すると,該両方の筆跡は消色する」点。
(イ)検討及び判断
相違点1ないし3については,「ア 請求項1について」で述べたとおりである。
したがって,相違点4を検討するまでもなく,甲1発明において,相違点1ないし3に係る本件訂正特許発明2の構成とすることは,当業者が容易になし得たことということはできず,本件訂正特許発明2は,甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから,本件特許の請求項2に係る特許は,同条の規定に違反してされたものではなく,同法第113条第2号に該当しないから,取り消されるべきものではない。
ウ 本件訂正特許発明4について
請求項4は,本件訂正特許発明1である請求項1,及び本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に,又は間接的に引用しており,本件訂正特許発明1及び2が甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定した請求項4に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない
エ 本件訂正特許発明6について
請求項6は,本件訂正特許発明1である請求項1,本件訂正特許発明2である請求項2,及び本件訂正特許発明5である請求項5に係る発明を直接的に,又は間接的に引用しており,本件訂正特許発明1,2,4及び5が甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正特許発明1,2,4及び5に発明特定事項を付加して限定した請求項6に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない
オ 本件訂正特許発明7について
請求項6は,本件訂正特許発明1である請求項1,本件訂正特許発明2である請求項2,本件訂正特許発明5である請求項5及び本件訂正特許発明6である請求項6に係る発明を直接的に,又は間接的に引用しており,本件訂正特許発明1,2,4,5及び6が甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正特許発明1,2,4,5及び6に発明特定事項を付加して限定した請求項6に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない
カ 本件訂正特許発明8について
請求項8は,本件訂正特許発明1である請求項1,及び本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に,又は間接的に引用しており,本件訂正特許発明1及び2が甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定した請求項8に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない
キ 本件訂正特許発明9について
請求項9は,本件訂正特許発明1である請求項1,本件訂正特許発明2である請求項2,及び本件訂正特許発明8である請求項8に係る発明を直接的に,又は間接的に引用しており,本件訂正特許発明1,2及び8が甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正特許発明1,2及び8に発明特定事項を付加して限定した請求項9に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない
ク 本件訂正特許発明10について
請求項10は,本件訂正特許発明1である請求項1,本件訂正特許発明2である請求項2,本件訂正特許発明8である請求項8及び本件訂正特許発明9である請求項9に係る発明を直接的に,又は間接的に引用しており,本件訂正特許発明1,2,8及び9が甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正特許発明1,2,8及び9に発明特定事項を付加して限定した請求項10に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない
コ 小括
以上のとおりであるから,本件特許の請求項1ないし4,6ないし10の請求項に係る発明は,したがって,当審が令和3年4月26日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)において指摘した上記(1)に係る取消理由は解消した。
2 取消理由通知に記載した取消理由(2)について
(1)本件訂正特許発明1について
取消理由(2)は,具体的には「請求項1に「同色系統にある色彩」とあるが,「系統」という語句によって,「同色以外」の色彩を含むことは明らかであるところ,上記摘記した発明特定事項によって,どのような色の範囲までを含むものとなっているのか理解できず,本件特許発明1は明確でない。」である。
訂正事項1-3により,「同色系統にある色彩」は,「同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)」と訂正された。
そして,本件の明細書の段落【0045】に「そして本実施形態では,同一の着色シート1及びペン2を用いて,異なる方法での学習作業を行うことができる。すなわち図9に示すように,第二のペン先22によって記載した記載箇所Lは第二のインク24によりオレンジ色として視認可能である。そして記載箇所Lを含む領域上に着色シート1を載置すると,オレンジに彩色された箇所は着色シート1の赤色と同系統であるために紙Pにおける周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるため,記載箇所Lはほとんど視認できなくなる。従って,使用者が,記憶したい内容を記載した記載箇所Lの上に着色シート1を載置すると像が視覚不能になるため,暗記に有効である。すなわち本実施形態では,使用者は第一のペン先21に対して支持されるボディ20を一にする第二のペン先22を用いることにより2つの態様を適宜使い分けながら有効な暗記作業を行い得る。換言すれば使用者はペン2を持ち替えるだけで且つ同じ着色シート1をそのまま使いながら異なる態様の暗記作業を適宜使い分けることができる。」と記載されているとおり,第二のペン先の色彩として,同色のみを特定することを意図していないことは明らかである。
また,「系統」という語句によって,「同色以外」の色彩のうち,どのような色の範囲までを含むかについては「特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩」であること,つまり第二のペン先の色彩は,特定色の単一の着色シートの色彩との関係によって定まることが明確になったため,取消理由(2)は解消した。
したがって,請求項1に係る本件訂正特許発明1は明確である。
(2)本件訂正特許発明2及び5について
訂正事項2-3及び訂正事項5-3により,請求項2及び請求項5においても,請求項1と同じ発明特定事項が限定されることとなったが,同様の理由により,請求項2に係る本件訂正特許発明2及び請求項5に係る本件訂正特許発明5も明確である。
(3)小括
上述のとおり,本件訂正特許1,2及び5は明確である。
また,訂正事項3により,請求項3は削除された。
そして,本件訂正特許4である請求項4,本件訂正特許6ないし10である請求項6ないし10は,直接的に又は間接的に本件訂正特許1,2及び5である請求項1,2及び5を引用するものであるところ,その請求項1に係る取消理由が解消されたのであるから,連動して請求項2,4ないし10の取消理由も解消されることとなる。
したがって,当審が令和3年4月26日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)において指摘した上記(2)に係る取消理由は解消した。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲に関し,請求項5に記載の発明は,甲第1ないし5号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,と主張している。
ここで,上記主張について検討する。
(1)本件訂正特許発明5と甲1発明とを対比する。
上記「1 取消理由通知に記載した取消理由(1)について,(3)対比及び判断,ア 本件訂正特許発明1について」を踏まえれば,本件訂正特許発明5と甲1発明とは以下の一致点で一致し,相違点で相違する。
<一致点>
「透光性を有した特定色の着色シートにおける前記特定色に対して補色関係にある色彩で筆記可能な,印刷文字を包含する着色箇所を形成する第一のペン先と,
前記特定色に対して同色系統にある色彩(特定色の単一の着色シートを載置した際に当該色彩で彩色された記載箇所と紙による周囲の白色を呈している箇所との見分けが困難となるような色彩)で筆記可能な第二のペン先と,
これら第一のペン先及び第二のペン先を取り付ける単一のボディと
消色液を塗布することができる第三のペン先を有する消色ペンとを具備してなる暗記用ペンセット。」
<相違点>
相違点1
本件訂正特許発明5では「単一の着色シート」を用いる暗記用ペンであるのに対し,甲1発明においては,「透光性を有した特定色の着色シート」と「透光性を有した特定色と補色関係の着色シート」を用いる両頭式変色性筆記具である点。
相違点2
第一のペン先に関し,本件訂正特許発明5では「太塗り部を有する」ものであるのに対し,甲1発明においては,第一のペン先が「太塗り部を有する」ものではない点。
相違点3
第二のペン先に関し,本件訂正特許発明5では「第一のペン先による筆記よりも細い線を筆記すべく前記第一のペン先とは異なる形状に成形」されているのに対し,甲1発明においては,第二のペン先が「第一のペン先とは異なる形状に成形」されたものではない点。
相違点5
暗記用ペンセットを構成する消色ペンに関し,本件訂正特許発明5では「第一のペン先により筆記され着色された着色箇所の色を消す」ことができるが,「第二のペン先によって筆記された箇所の色を消し得ない」ものであるのに対し,甲1発明においては,「緑色と赤色の両方の筆跡上に変色用塗布具により変色液を塗布すると,該両方の筆跡は消色する」点。
(イ)検討及び判断
相違点1ないし3については,「1 取消理由通知に記載した取消理由(1)について,(3)対比及び判断,ア 本件訂正特許発明1について」で述べたとおりである。
したがって,相違点5を検討するまでもなく,甲1発明において,相違点1ないし3に係る本件訂正特許発明5の構成とすることは,当業者が容易になし得たことということはできず,本件訂正特許発明5は,甲1発明及び甲第1号証の記載事項,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから,本件特許の請求項5に係る特許は,同条の規定に違反してされたものではなく,同法第113条第2号に該当しないから,取り消されるべきものではない。
第7 申立人の意見について
申立人は,令和3年9月3日付け意見書において,以下の主張を行っているので検討する。
意見1 訂正特許発明1は,甲1発明と周知技術から当業者が容易に発明できたものである。
意見2 訂正特許発明2は,甲1発明と周知技術,及び甲10発明から当業者が容易に発明できたものである。
意見3 訂正特許発明5は,甲1発明と周知技術,及び甲10発明から当業者が容易に発明できたものである。
意見4 訂正特許発明1,2及び5に記載される「同色系統」は,同色系統に含まれる色の範囲が不明確である。
1 意見1について
「1 取消理由通知に記載した取消理由(1)について,(3)対比及び判断,ア 本件訂正特許発明1について」で述べたとおり,本件訂正特許発明1は特定色の単一の着色シートの利用を前提とした,特定色に対して補色関係にある色彩と特定色に対して同色系統にある色彩とで筆記可能な暗記用ペンであって,少なくとも,この点について甲1発明に記載がなく,他の甲第2号証ないし甲第13号証には記載されず,筆記具の技術分野において,設計的事項程度のものであるとも,周知技術であるともいえない。
したがって,訂正特許発明1は,甲1発明と周知技術から当業者が容易に発明できたものであるとはいえず,申立人の主張を容れることはできない。
2 意見2について
「1 取消理由通知に記載した取消理由(1)について,(3)対比及び判断,イ 本件訂正特許発明2について」で述べたとおり,本件訂正特許発明2は特定色の単一の着色シートの利用を前提とした,特定色に対して補色関係にある色彩と特定色に対して同色系統にある色彩とで筆記可能な暗記用ペンであって,少なくとも,この点について甲1発明に記載がなく,他の甲第2号証ないし甲第13号証には記載されず,筆記具の技術分野において,設計的事項程度のものであるとも,周知技術であるともいえない。
したがって,甲10発明に,消色液に係る本件訂正特許発明の発明特定事項が記載されているとしても,本件訂正特許発明2は,甲1発明と周知技術,及び甲10発明から当業者が容易に発明できたものであるとはいえず,申立人の主張を容れることはできない。
3 意見3について
「第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について,(イ)検討及び判断」で述べたとおり,本件訂正特許発明5は特定色の単一の着色シートの利用を前提とした,特定色に対して補色関係にある色彩と特定色に対して同色系統にある色彩とで筆記可能な暗記用ペンであって,少なくとも,この点について甲1発明に記載がなく,他の甲第2号証ないし甲第13号証には記載されず,筆記具の技術分野において,設計的事項程度のものであるとも,周知技術であるともいえない。
したがって,甲10発明に,消色液に係る本件訂正特許発明の発明特定事項が記載されているとしても,本件訂正特許発明5は,甲1発明と周知技術,及び甲10発明から当業者が容易に発明できたものであるとはいえず,申立人の主張を容れることはできない。
4 意見4について
「2 取消理由通知に記載した取消理由(2)について,(1)本件訂正特許発明1について」で述べたとおり,訂正特許発明1,2及び5に記載される「同色系統」は明確である。
したがって,請求項1,2及び5に係る訂正特許発明1,2及び5は明確である。
また,これら請求項1,2及び5を直接的に,又は間接的に引用する請求項4,6ないし10に係る訂正特許発明4,6ないし10も明確であるから,申立人の主張を容れることはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1,2,4ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1,2,4ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正特許発明3に係る請求項3は,令和3年7月6日付け訂正請求により,削除されたため,請求項3に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなり,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する
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2020-700345